(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104368
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】透視検査装置及び透視検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20220701BHJP
G01N 23/18 20180101ALI20220701BHJP
【FI】
G01N23/04
G01N23/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219544
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】503335272
【氏名又は名称】株式会社アイビット
(74)【代理人】
【識別番号】100102783
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 高明
(72)【発明者】
【氏名】向山 敬介
(72)【発明者】
【氏名】太田 眞之
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001FA11
2G001JA08
2G001JA09
2G001KA03
2G001KA04
2G001LA11
(57)【要約】
【課題】電子部品の端子が挿通された透孔内壁部の導体箔と当該端子との導通状態を検査できる透視検査装置及び透視検査方法を提供する。
【解決手段】透孔103に斜め側方から放射線を照射する放射線源1と、放射線の透孔103への入射方向を変化させる入射方向変更手段3、11と、透孔103を透過した放射線を検出する放射線検出器4と、検出された放射線量の二次元分布から放射線の入射方向が異なる複数の画像を生成し、複数の画像のうち少なくとも1つを左右反転及び/又は菱形変形して重ねて1つの画像を構成してノイズ画像を除去する画像化回路6とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板を略垂直に貫通した透孔の内周壁に被着形成された導体箔と、前記透孔に挿通された端子との導通状態を検査する透視検査装置であって、
放射線を発生し、前記透孔に斜め側方から前記放射線を照射する放射線源と、
前記放射線の前記透孔への入射方向を変化させる入射方向変更手段と、
前記透孔を透過した放射線を検出する放射線検出器と、
前記放射線検出器により検出された放射線量の二次元分布を画像化し、前記放射線の入射方向が異なる複数の画像を生成する信号処理手段と、
前記信号処理手段により生成された複数の画像のうちの少なくとも1つの画像を左右反転及び/又は菱形変形したうえで、これら複数の画像を重ねて1つの画像とする画像処理手段と、
を備え、
前記画像処理手段は、前記複数の画像を重ねたときに、対応する位置の画素のうち、前記放射線の透過率が高いことにより明度の高い画素のみを採用して前記1つの画像を構成することにより、前記透孔に重なっている異物によるノイズ画像を除去する
ことを特徴とする透視検査装置。
【請求項2】
前記放射線の入射方向が異なる複数の画像は、2画像、3画像、または、4画像である
ことを特徴とする請求項1記載の透視検査装置。
【請求項3】
前記放射線源が発生する放射線は、放射状に照射され、
前記入射方向変更手段は、前記透孔を、前記放射線の照射範囲内において移動させることにより、または、前記放射線源を移動させることにより、前記透孔への放射線の入射方向を変化させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の透視検査装置。
【請求項4】
前記放射線源が発生する放射線は、放射状に照射され、
前記入射方向変更手段は、前記透孔を、前記放射線の照射範囲内において回転させることにより、前記透孔への放射線の入射方向を変化させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の透視検査装置。
【請求項5】
回路基板を略垂直に貫通した透孔の内周壁に被着形成された導体箔と、前記透孔に挿通された端子との導通状態を検査する透視検査方法であって、
前記透孔に斜め側方から放射線を照射し、前記透孔を透過した放射線を検出して放射線量の二次元分布を画像化し、
前記放射線の前記透孔への入射方向を変化させ、前記透孔を透過した放射線を検出して放射線量の二次元分布を画像化し、
前記放射線の入射方向が異なる複数の画像のうちの少なくとも1つの画像を左右反転及び/又は菱形変形したうえで、これら複数の画像を重ね、対応する位置の画素のうち、前記放射線の透過率が高いことにより明度の高い画素のみを採用して1つの画像を構成することにより、前記透孔に重なっている異物によるノイズ画像を除去する
ことを特徴とする透視検査方法。
【請求項6】
前記放射線の入射方向が異なる複数の画像は、2画像、3画像、または、4画像である
ことを特徴とする請求項5記載の透視検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の端子が挿通された透孔内壁部の導体箔と当該端子との導通状態(透孔中の半田充填率及び導体箔と端子との導通状態、または、導体箔とプレスフィット端子との導通状態)を検査する透視検査装置及び透視検査方法に関し、透孔を斜め側方から透過した放射線(X線、γ線、中性子線等)を検出して画像化し、導体箔と端子との導通状態の良否を検査する透視検査装置及び透視検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品や電子部品が実装された回路基板等の被検体に放射線(X線、ガンマ線などを含む)を透過させ、被検体を透過した放射線を検出することにより、被検体における放射線透過画像により異常箇所を検出する透視検査装置が提案されている。このような透視検査装置は、例えば、電子部品の実装(半田付け)状態の良否、例えば、ボンディングワイヤの切断の有無や、多層配線基板等の内部の層のパターンの非破壊検査を行うために使用されている。
【0003】
本願出願人は、特許文献1に記載されているように、放射状に拡散する放射線(X線)を被検体に透過させ、線状に配列された複数の感知部を有する放射線検出器によって、被検体を透過した放射線を検出するようにした透視検査装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の電子回路の高集積化及び高出力化(大電流化)に伴い、回路基板においては、いわゆるスルーホール(回路基板を略垂直に貫通し内周壁に導体箔が被着形成された透孔)の重要性が増大している。特に、自動車、航空機や宇宙船のように、激しい振動及び大きな温度変化に曝される環境下で使用される回路基板においては、スルーホールを採用しなければ、必要とされる耐久性を確保することができない。
【0006】
スルーホールには、
図12に示すように、電子部品101の棒状の端子105が挿通され、端子105と導体箔104との間に溶融半田106が充填され固化される。または、スルーホール103には、
図13及び
図14に示すように、いわゆるプレスフィット端子107が圧入され、プレスフィット端子107の弾性により導体箔104に圧着する。
【0007】
従来の透視検査装置では、回路基板の表面に平行な面方向について、実装(半田付け)状態の良否を検査できるが、スルーホールの内部のように回路基板の表面に垂直な方向については、導通状態の良否を検査することができない。
【0008】
なお、コンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomography)を用いれば、回路基板の表面に垂直な方向についての検査もできる。しかし、コンピュータ断層撮影では、一つの対象について撮影する回数が極めて多く、撮影された多数の画像を処理する計算量も膨大なものとなるので、撮影から画像処理に要する時間は長時間に及ぶ。したがって、コンピュータ断層撮影は、工業的過程における検査に用いることは現実的ではない。
【0009】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、電子部品の端子が挿通された透孔内壁部の導体箔と当該端子との導通状態(透孔中の半田充填率及び導体箔と端子との導通状態、または、導体箔とプレスフィット端子との導通状態)を検査できる透視検査装置及び透視検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る透視検査装置は、前記課題を解決するため、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0011】
第1発明に係る透視検査装置は、
回路基板を略垂直に貫通した透孔の内周壁に被着形成された導体箔と、前記透孔に挿通された端子との導通状態を検査する透視検査装置であって、
放射線を発生し、前記透孔に斜め側方から前記放射線を照射する放射線源と、
前記放射線の前記透孔への入射方向を変化させる入射方向変更手段と、
前記透孔を透過した放射線を検出する放射線検出器と、
前記放射線検出器により検出された放射線量の二次元分布を画像化し、前記放射線の入射方向が異なる複数の画像を生成する信号処理手段と、
前記信号処理手段により生成された複数の画像のうちの少なくとも1つの画像を左右反転及び/又は菱形変形したうえで、これら複数の画像を重ねて1つの画像とする画像処理手段と、
を備え、
前記画像処理手段は、前記複数の画像を重ねたときに、対応する位置の画素のうち、前記放射線の透過率が高いことにより明度の高い画素のみを採用して前記1つの画像を構成することにより、前記透孔に重なっている異物によるノイズ画像を除去する
ことを特徴とするものである。
【0012】
第2発明に係る透視検査装置は、第1発明に係る透視検査装置において、
前記放射線の入射方向が異なる複数の画像は、2画像、3画像、または、4画像である
ことを特徴とするものである。
【0013】
第3発明に係る透視検査装置は、第1又は第2発明に係る透視検査装置において、
前記放射線源が発生する放射線は、放射状に照射され、
前記入射方向変更手段は、前記透孔を、前記放射線の照射範囲内において移動させることにより、または、前記放射線源を移動させることにより、前記透孔への放射線の入射方向を変化させる
ことを特徴とするものである。
【0014】
第4発明に係る透視検査装置は、第1又は第2発明に係る透視検査装置において、
前記放射線源が発生する放射線は、放射状に照射され、
前記入射方向変更手段は、前記透孔を、前記放射線の照射範囲内において回転させることにより、前記透孔への放射線の入射方向を変化させる
ことを特徴とするものである。
【0015】
第5発明に係る透視検査方法は、
回路基板を略垂直に貫通した透孔の内周壁に被着形成された導体箔と、前記透孔に挿通された端子との導通状態を検査する透視検査方法であって、
前記透孔に斜め側方から放射線を照射し、前記透孔を透過した放射線を検出して放射線量の二次元分布を画像化し、
前記放射線の前記透孔への入射方向を変化させ、前記透孔を透過した放射線を検出して放射線量の二次元分布を画像化し、
前記放射線の入射方向が異なる複数の画像のうちの少なくとも1つの画像を左右反転及び/又は菱形変形したうえで、これら複数の画像を重ね、対応する位置の画素のうち、前記放射線の透過率が高いことにより明度の高い画素のみを採用して1つの画像を構成することにより、前記透孔に重なっている異物によるノイズ画像を除去する
ことを特徴とするものである。
【0016】
第6発明に係る透視検査方法は、第5発明に係る透視検査方法において、
前記放射線の入射方向が異なる複数の画像は、2画像、3画像、または、4画像である
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る透視検査装置及び透視検査方法においては、電子部品の端子が挿通された透孔内壁部の導体箔と当該端子との導通状態を検査できる透視検査装置及び透視検査方法を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る透視検査方法を実施する本発明に係る透視検査装置の構成を示す側面図である。
【
図2】本発明に係る透視検査装置の原理を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る透視検査装置において得られる第1の画像(a)及び第2の画像(b)を示す平面図である。
【
図4】本発明に係る透視検査装置において得られる第3の画像(a)及び第4の画像(b)を示す平面図である。
【
図5】第1の画像(a)及び左右反転させた第2の画像(b)を示す平面図である。
【
図6】左右反転させた第3の画像(a)及び第4の画像(b)を示す平面図である。
【
図7】第1の画像と左右反転させた第2の画像とを重ねた第5の画像(a)及び左右反転させた第3の画像と第4の画像とを重ねた第6の画像(b)を示す平面図である。
【
図8】菱形変形させた第5の画像(a)及び菱形変形させた第6の画像(b)を示す平面図である。
【
図9】菱形変形させた第5の画像と菱形変形させた第6の画像とを重ねた第7の画像を示す平面図である。
【
図12】電子部品の端子が半田付けされる透孔を示す断面図である。
【
図13】いわゆるプレスフィット端子(1)が圧入される透孔を示す断面図である。
【
図14】いわゆるプレスフィット端子(2)が圧入される透孔を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明に係る透視検査方法を実施する本発明に係る透視検査装置の構成を示す側面図である。
【0021】
この透視検査装置は、回路基板を略垂直に貫通した透孔の内周壁に被着形成された導体箔と、透孔に挿通された端子との導通状態(透孔中の半田充填率及び導体箔と端子との導通状態、または、導体箔とプレスフィット端子との導通状態)を検査する透視検査装置である。この透視検査装置は、
図1に示すように、放射線、例えば、X線ビームXを発生し、電子部品101が実装された回路基板102(透孔103)に照射する放射線源となるX線管1を有している。このX線管1は、
図12に示すように、回路基板102を略垂直に貫通し内周壁に導体箔104が被着形成された透孔103に、斜め側方からX線ビームXを照射する。このX線管1は、X線制御装置2によって制御されている。X線制御装置2は、制御装置10により制御される。X線管1より発せられ、回路基板102(透孔103)を透過したX線ビームXは、放射線検出器であるX線検出器4により検出される。
【0022】
図12は、電子部品の端子が半田付けされる透孔を示す断面図である。
【0023】
透孔103には、
図12に示すように、電子部品101の棒状の端子105が挿通され、端子105と導体箔104との間に溶融半田106が充填され固化される。溶融半田106の体積充填率が、既定値(例えば80%)未満であると、端子105と導体箔104との導通状態は不良とされる。また、溶融半田106中に既定の気泡率(例えば3%)以上の気泡が存在すると、端子105と導体箔104との導通状態は不良とされる。
【0024】
図13は、いわゆるプレスフィット端子(1)が圧入される透孔を示す断面図である。
図14は、いわゆるプレスフィット端子(2)が圧入される透孔を示す断面図である。
【0025】
または、透孔103には、
図13及び
図14に示すように、いわゆるプレスフィット端子107が圧入され、プレスフィット端子107の弾性により導体箔104に圧着する。プレスフィット端子107は、例えばベリリウム銅の如き弾性を有する導体から形成されており、導体箔104に圧着するための膨出部または突出部が側面部に設けられている。プレスフィット端子107が既定の形状を外れて変形し、導体箔104への接触面積及び接触圧が既定値未満であると、プレスフィット端子107と導体箔104との導通状態は不良とされる。
【0026】
電子部品101が実装された回路基板102は、入射方向変更手段となる移動操作機構(X-Yステージ)3上に設置される。この移動操作機構3は、回路基板102をX線ビームXの照射範囲内においてX線ビームXを横切る方向に移動させる。回路基板102は、移動操作機構3により、
図1中矢印Aで示す2軸方向に移動操作、または、矢印Bで示すように回転操作される。また、移動操作機構3は、回路基板102ではなく、X線検出器4を移動させるようにしてもよい。また、X線発生器1、または、X線検出器4は、入射方向変更手段となる移動操作機構11によって移動操作される。
【0027】
制御装置10は、移動操作機構3、11により、回路基板102、X線管1及びX線検出器4のいずれか二つを移動させることによって、X線ビームXの透孔103への入射方向を変化させる。
【0028】
X線検出器4は、透孔103を透過した放射線量(X線量)の二次元分布を検出する。このX線検出器4としては、通常使用されている撮像管タイプのものを使用することができる。このタイプのX線検出器4は、感知部においてX線量に比例して帯電した電荷を電子ビームで走査して読み出すという原理で検出するものである。
【0029】
X線ビームXは、X線管1より発せられて放射状に拡散するビームであるので、回路基板102を透過した後も拡散してX線検出器4により検出される。したがって、X線検出器4においては、透孔103の拡大透過像が検出される。このときの拡大率は、X線管1から透孔103までの距離と、X線管1からX線検出器4までの距離との比率によって決まり、例えば、8乃至10倍程度となされる。
【0030】
X線検出器4は、検出器コントローラ5に接続され、この検出器コントローラ5によって制御されるとともに、検出した放射線強度情報を増幅されるようになっている。検出器コントローラ5で増幅された放射線強度情報は、信号処理手段及び画像処理手段となる画像化回路6に供給される。画像化回路6は、制御装置10によって制御され、X線検出器4により検出された放射線量の二次元分布を画像化し、画像信号を生成して表示装置7に送る。表示装置7は、画像化回路6から送られた画像信号に応じた画像を表示する。
【0031】
このようにして、この透視検査装置においては、回路基板102をX線により走査し、この回路基板102に形成された各透孔103が順次透視検査される。
【0032】
画像化回路6は、透孔103にX線ビームXが第1の方向から照射されたときの透過放射線量に基づく画像と、透孔103にX線ビームXが第2以降の方向から照射されたときの透過放射線量に基づく画像とを重ねることにより、透孔103に重なっている他の電子部品等によるノイズ画像を除去する。
【0033】
X線ビームXの入射方向が異なる複数の画像の数は、180°間隔の2画像、120°間隔の3画像、または、90°間隔の4画像であることが好ましい。ただし、角度間隔及び画像の数は、何ら限定されない。他の電子部品等の形状及び配置によって、ノイズ画像の除去のために必要となる画像の数は異なり、60°間隔(±30°)、90°間隔(±45°)や120°間隔(±60°)の2画像であってもよい。3画像、または、4画像であれば、ほぼすべてのノイズ画像を除去することができる。
【0034】
図10は、左右反転を説明する図である。
図11は、菱形変形を説明する図である。
【0035】
複数の画像を重ねるにあたっては、複数の画像のうちの少なくとも1つの画像について、左右反転及び/又は菱形変形を行ったうえで重ねる。ここで左右反転とは、
図10に示すように、画像の左右性を反転させることであって、鏡像にすることに相当する。また、ここで菱形変形とは、
図11に示すように、各画素の位置の縦軸値(または、横軸値)のみを、横軸値(または、縦軸値)に比例して増大(または、減少)させることに相当する。つまり、任意の画素の座標(x,y)を、座標(x,y+ax)(∵a:傾き)とする変形である。
【0036】
複数の画像を重ねたときには、対応する位置の画素のうち、X線ビームXの透過率が高いことにより明度の高い画素のみを採用して、1つの画像を構成する。このように画像を重ねることにより、透孔103に重なっている異物(他の電子部品等)によるノイズ画像が除去される。
【0037】
なお、回路基板102へのX線ビームXの入射角度(俯角)は、大きくしたほうが異物の透孔103への重なりが少なくなるが、透孔103の像が短くなり、端子105と導体箔104との導通状態の検出が困難となる虞がある。X線ビームXの入射角度(俯角)を小さくすると、異物の透孔103への重なりが大きくなるが、透孔103の像が長くなり、端子105と導体箔104との導通状態の検出が容易となる。本発明では、異物によるノイズ画像は除去されるので、回路基板102へのX線ビームXの入射角度(俯角)は、ノイズ画像の除去に問題のない範囲で小さくしたほうがよい。
【0038】
以下、X線ビームXの入射方向が異なる複数の画像の数を90°間隔の4画像とした場合について、実際に得られる画像の例示とともに説明する。
【0039】
図2は、本発明に係る透視検査装置の原理を示す斜視図である。
図3は、本発明に係る透視検査装置において得られる第1の画像(a)及び第2の画像(b)を示す平面図である。
【0040】
すなわち、
図2に示すように、まず、透孔103にX線ビームXを第1の方向(
図2中の「45°」)から照射させたときの透過放射線量に基づく第1の画像を得る。第1の画像は、
図3(a)に示す。この回路基板102には、6本の透孔103が一列に形成されている。次に、透孔103にX線ビームXを第2の方向(
図2中の「135°」)から照射させたときの透過放射線量に基づく第2の画像を得る。第2の画像は、
図3(b)に示す。
【0041】
図4は、本発明に係る透視検査装置において得られる第3の画像(a)及び第4の画像(b)を示す平面図である。
【0042】
次に、透孔103にX線ビームXを第3の方向(
図2中の「225°」)から照射させたときの透過放射線量に基づく第3の画像を得る。第3の画像は、
図4(a)に示す。次に、透孔103にX線ビームXを第4の方向(
図2中の「315°」)から照射させたときの透過放射線量に基づく第4の画像を得る。第4の画像は、
図4(b)に示す。これら第1乃至第4の画像には、透孔103に重なっている異物(他の電子部品等)によるノイズ画像が含まれている。
【0043】
図5は、第1の画像(a)及び左右反転させた第2の画像(b)を示す平面図である。
図6は、左右反転させた第3の画像(a)及び第4の画像(b)を示す平面図である。
【0044】
次に、
図5(b)に示すように、第2の画像を左右反転させる。第2の画像を左右反転させると、
図5(a)に示す第1の画像とで、対応する透孔103の像の形状が一致する。また、
図6(a)に示すように、第3の画像を左右反転させる。第3の画像を左右反転させると、
図6(b)に示す第4の画像とで、対応する透孔103の像の形状が一致する。
【0045】
図7は、第1の画像と左右反転させた第2の画像とを重ねた第5の画像(a)及び左右反転させた第3の画像と第4の画像とを重ねた第6の画像(b)を示す平面図である。
【0046】
次に、
図7(a)に示すように、第1の画像と、左右反転させた第2の画像とを重ねて、第5の画像とする。このとき、対応する位置の画素のうち、X線ビームXの透過率が高いことにより明度の高い画素のみを採用して第5の画像とすることにより、異物(他の電子部品等)によるノイズ画像が除去される。ここで、異物(他の電子部品等)が一列に配列されたものである場合には、2つの画像の重ね合わせによって十分に除去される。
【0047】
次に、
図7(b)に示すように、左右反転させた第3の画像と、第4の画像とを重ねて、第6の画像とする。このとき、対応する位置の画素のうち、明度の高い画素のみを採用して、第6の画像とする。
【0048】
図8は、菱形変形させた第5の画像(a)及び菱形変形させた第6の画像(b)を示す平面図である。
【0049】
次に、
図8(a)に示すように、第5の画像を菱形変形し、
図8(b)に示すように、第6の画像を菱形変形することにより、これら第5の画像及び第6の画像とで、対応する透孔103の像の形状を一致させる。
【0050】
図9は、菱形変形させた第5の画像と菱形変形させた第6の画像とを重ねた第7の画像を示す平面図である。
【0051】
そして、
図9に示すように、菱形変形させた第5の画像と、菱形変形させた第6の画像とを重ねて、第7の画像とする。ここでも、対応する位置の画素のうち、X線ビームXの透過率が高いことにより明度の高い画素のみを採用して第7の画像とすることにより、異物(他の電子部品等)によるノイズ画像が除去される。この第7の画像においては、異物(他の電子部品等)によるノイズ画像が除去され、各透孔103内の端子105、107と導体箔104との導通状態が検出される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、電子部品の端子が挿通された透孔内壁部の導体箔と当該端子との導通状態(透孔中の半田充填率及び導体箔と端子との導通状態、または、導体箔とプレスフィット端子との導通状態)を検査する透視検査装置及び透視検査方法に適用され、透孔を斜め側方から透過した放射線(X線、γ線、中性子線等)を検出して画像化し、導体箔と端子との導通状態の良否を検査する透視検査装置及び透視検査方法に適用される。
【符号の説明】
【0053】
1 X線源(放射線源)
2 X線制御装置
3,11 移動操作機構(入射方向変更手段)
4 X線検出器(放射線検出器)
6 画像化回路(信号処理手段、画像処理手段)
10 制御装置
101 電子部品
102 回路基板
103 透孔
104 導体箔
105 端子
106 溶融半田
107 プレスフィット端子
X X線ビーム(放射線)