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  • 特開-ダイカスト製造方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104370
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】ダイカスト製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/22 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
B22D17/22 E
B22D17/22 T
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219547
(22)【出願日】2020-12-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】510095651
【氏名又は名称】株式会社ダイレクト21
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(71)【出願人】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(72)【発明者】
【氏名】岩本 典裕
(72)【発明者】
【氏名】長澤 理
(72)【発明者】
【氏名】谷口 圭司
(57)【要約】
【課題】プランジャーによる溶湯射出後にランナーの加圧を行うに際して、溶湯の逆流を有効に防止し、もってキャビティ内に射出された製品への追加加圧を有効にするダイカスト方法及び装置を提供する。
【解決手段】 ダイカスト金型に溶湯を射出する第1加圧手段と、キャビティに連通するランナーを加圧する第2加圧手段と、ランナーにおけるキャビティに直結する立上りランナー部に対応する面に形成したオリフィスと、からなる射出部を設けた。第1加圧手段により溶湯を射出した後、第2加圧手段によりキャビティに直結するランナーを通じて第2加圧を行うに際し、第2加圧手段の加圧経路にオリフィスにより溶湯の逆流を防止しつつ第2加圧手段により加圧を成す。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締された金型に第1加圧手段により溶湯を射出した後、第2加圧手段によりキャビティに直結するランナーを通じて第2加圧を行うに際し、第2加圧手段の加圧経路にオリフィスを設け、当該オリフィス部分でのメタルシールにより溶湯の逆流を防止しつつ第2加圧手段により加圧を成すことを特徴とするダイカスト方法。
【請求項2】
前記オリフィスはランナーにおけるキャビティに直結する立上りランナー部に対応する面に形成してメタルシールにより溶湯の逆流を防止したことを特徴とする請求項1に記載のダイカスト方法。
【請求項3】
前記オリフィスはランナーの分流子ランナー部と立上りランナー部の境界近傍に配置されて第1加圧手段の加圧終了とともに第2加圧手段の加圧を、メタルシールにより溶湯の逆流防止を図りつつ、行わせることを特徴とする請求項1に記載のダイカスト方法。
【請求項4】
ダイカスト金型に溶湯を射出する第1加圧手段と、
キャビティに連通するランナーを加圧する第2加圧手段と、
ランナーにおけるキャビティに直結する立上りランナー部に対応する面に形成したオリフィスと、
からなる射出部を設けたことを特徴とするダイカスト装置。
【請求項5】
前記オリフィスはランナーの分流子ランナー部と立上りランナー部との境界部近傍に形成してなることを特徴とする請求項4に記載のダイカスト装置。
【請求項6】
前記オリフィスは冷却手段を内蔵していることを特徴とする請求項4に記載のダイカスト装置。
【請求項7】
前記オリフィスは環状突起として形成してなることを特徴とする請求項4に記載のダイカスト装置。
【請求項8】
前記環状突起は角型、V字型、円弧型のいずれかによって形成されてなることを特徴とする請求項7に記載のダイカスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイカスト製造方法及び装置に係り、特に金型の溶湯入口であるランナー加圧を的確に行うことができるダイカスト製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト製品の鋳造方法は、金型で作ったキャビティにアルミ等の溶湯をプランジャーで押し込み、キャビティに倣った形状の製品を取り出して行う。製品として成形するときに巣が出来ないように、プランジャーを加圧動作することに合わせ、ランナーを更に加圧する方法が提案されている。
【0003】
ランナーは、プランジャーの押し出し方向に沿う分流子ランナー部とこれに直交する立上りランナー部とからなるが、ランナーの局部的な加圧を行うために、キャビティに直結する立上りランナーに出入りする加圧ピンを設け、プランジャーの加圧が完了した後にランナーの加圧ピンを作動させて更なる加圧を行うようにしている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1のようなものでは、キャビティに押し込まれた溶湯は固まりかけているため、ランナー加圧により押し込まれた溶湯が逆流してしまい、プランジャー側に押し戻されてしまい、思ったようなキャビティ押し込み効果が得られなかった。このような観点から、特許文献2に掲げる技術が提案されており、立上りランナー部を形成する部材の内径と、加圧ピンの外径との間の隙間を、0.5~3.0mmとして、逆流防止機能を発揮させるようにし、押し込み効果が得られるようにしたものである。一般に、環状隙間の流量Qは環状隙間Δの3乗に比例し、その長さLに反比例する。したがって隙間Δを小さくすることは重要である。しかし、立上りランナー部を形成する部材の内径と加圧ピンの外径との間の隙間Δを0.5~3.0mmとしているが、実際上、そのような円筒状隙間を形成することが困難となっており、隙間が大きくなってしまい、隙間長さLもある程度必要となっている。このため、加圧ピンを加圧挿入しても隙間Δを通じて溶湯が逆流し、プランジャーが押し戻されてしまい、予定するような逆流防止効果は得られないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-117411
【特許文献2】特開2011-224650
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に着目し、プランジャーによる溶湯射出後にランナーの加圧を行うに際して、高圧で溶湯に圧力を加え続けて凝固させることで緻密なダイカスト製品を生産できるダイカスト方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、以下のように構成したものである。すなわち、本発明に係るダイカスト方法は、型締された金型に第1加圧手段により溶湯を射出した後、第2加圧手段によりキャビティに直結するランナーを通じて第2加圧を行うに際し、第2加圧手段の加圧経路にオリフィスを設け、当該オリフィス部分でのメタルシールにより溶湯の逆流を防止しつつ第2加圧手段により加圧を成すことを特徴としている。ここで、メタルシールとは溶湯が狭窄された金属の隙間に入ろうとした時、金属により湯先が冷やされ自らシールするものであり、後続の溶湯は先端が止まるので侵入できない。
【0008】
前記オリフィスはランナーにおけるキャビティに直結する立上りランナー部に対応する面に形成してメタルシールにより溶湯の逆流を防止している。更に、前記オリフィスはランナーの分流子ランナー部と立上りランナー部の境界近傍に配置されて第1加圧手段の加圧終了とともに第2加圧手段による加圧を、メタルシールにより溶湯の逆流防止を図りつつ、行っている。
【0009】
本発明に係るダイカスト装置は、ダイカスト金型に溶湯を射出する第1加圧手段と、キャビティに連通するランナーを加圧する第2加圧手段と、ランナーにおけるキャビティに直結する立上りランナー部に対応する面に形成したオリフィスと、からなる射出部を設けたことを特徴とする。
【0010】
前記オリフィスはランナーの分流子ランナー部と立上りランナー部との境界部近傍に形成してなる。また、前記オリフィスは冷却手段を内蔵する構成としてもよい。さらに、前記オリフィスは環状突起として形成しており、前記環状突起は角型、V字型、円弧型のいずれかによって形成する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、第1加圧手段としてプランジャーによる射出後に、第2加圧手段としての加圧ピンによる溶湯加圧を行うようにしているが、立上りランナー部に設けたオリフィスがその絞り効果によりメタルシールをなして逆流を遮蔽して圧力を維持し、もって製品部への追加加圧が可能となる。特に分流子ランナー部と立上りランナー部との境界近傍にオリフィスを設けることで加圧部が特定され、オリフィス部分に差し込まれた溶湯の粘性によってメタルシールと同等のシール効果となり逆流が有効に防止され、適格な第2加圧手段による加圧が可能となる。シール効果をより大きくするためにオリフィス部分に空冷・水冷若しくは油冷の冷却手段を設けて溶湯を凝固(半凝固)させることも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例に係るダイカスト製造装置の要部断面図である。
図2図1のダイカスト製造装置の射出部の溶湯断面図である。
図3】第2加圧手段による動作系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施例に係るダイカスト製造方法と製造装置を、図面を参照しつつ、詳細に説明する。なお、以下の説明は一つの実施例に過ぎず、本発明の趣旨を変えない限り、本発明には種々の変形例を含み得るものである。
【0014】
図1に本実施例に係るダイカスト製造装置の要部断面図を示している。ダイカスト製造装置10は、移動盤12に取り付けた可動金型14と、固定盤16に取り付けた固定金型18とを備え、両金型14,18を当接することにより形成されるキャビティ20内に溶湯を射出し、キャビティ20に倣った形状の製品ができあがる。製品は金型14,18を離反させ、可動金型14の背面部に設けた押し出しピン22を作動させてキャビティ20から取り出すことができる。
【0015】
このようなダイカスト製造装置10のキャビティ20に溶湯を供給するための射出部として給湯手段24がキャビティ20の下位に位置して配置されている。これは固定盤16を水平に貫通して取り付けられ固定金型18に達する射出スリーブ26と、射出スリーブ26内に配設されたプランジャー28と、プランジャー28の後方にあってプランジャー28を押し引き出来る加圧装置と、からなる第1加圧手段30から構成される。
【0016】
射出スリーブ26の前端にはキャビティ20に至る通路となるランナー32が形成されており、このランナー32は、射出スリーブ26からほぼ水平に延長された分流子ランナー部34と、キャビティ20の下部に直結するように上方向に向きを変えた立上りランナー部36とからなり、プランジャー28によって押し出された溶湯が、分流子ランナー部34を経由し、立上りランナー部36によって上方に向きを変え、キャビティ20に射出噴射するように構成されている。
【0017】
このようなランナー32における立上りランナー部36には、キャビティ20内の溶湯を二次的に加圧せしめる第2加圧手段38が設けられている。この第2加圧手段38は、金型14、18の下部に装備されたアクチュエータ40と、これによって立上りランナー部36の下部から上部にかけて出入り動作するように取り付けられた作動ピストン42とから構成されている。作動ピストン42の直径dは立上りランナー部36の内径Dより小さくして、作動ピストン42の立上りランナー部34における上下摺動を可能としている。したがって、作動ピストン42の立上りランナー部36への圧入量がキャビティ20による製品の密度を向上させることになる。
【0018】
ところで、本実施例では、特に、立上りランナー部36と分流子ランナー部34の交差部(図2のA-B区間)より上方の立上りランナー部36側(図2のB部分)に、その内径を絞るオリフィス44を形成している。これは立上りランナー部36の内径部分に断面矩形の環状突起46を形成したもので、その突起46の高さ(すなわち立上りランナー部36の内径寸法)をできるだけ作動ピストン42の外径dに合わせて、ここでメタルシールができるようにしている。具体的には、キャビティ20の大きさにもよるが、立上りランナー部36の内径Dと作動ピストン42の外径dの差の1/2が隙間寸法Δであるが、その隙間寸法Δが1/2~1/3以下となるように環状突起46の高さを決めている。すなわち環状突起46の内径と作動ピストン42の外径dの差の1/2がメタルシール部分の隙間寸法δであり、δ=Δ×1/2とし、望ましくはδ=Δ×1/3としており、下限値はメタルシールが破損するときの値である。また、環状突起46の軸方向長さLは10mm程度として、メタルシールが確実におこなわれるようにしている。
【0019】
このように構成された第2加圧手段38は、第1加圧手段30のプランジャー28による射出が完了した後に、図3(1)に示すような位置から加圧し始め、作動ピストン42が環状突起46に差し掛かると(図3(2))、オリフィス44部分に上位の溶湯が差し込んでメタルシールを形成し、その部分で遮蔽機能を発揮する。このため、このオリフィス44部分でのメタルシールによって、キャビティ20内への溶湯充填量が増し、作動ピストン42による押し込み動作により、ストロークが長くなって作業を完了するのである(図3(3))。
【0020】
この結果、ランナー加圧をしない通常の鋳造方式で製品を作った場合を「0」として、従来のキャビティ20の中央部を加圧する局部加圧方式では+4gの増加がみられたが(0.5%)、本実施例方式のランナー加圧方式によれば+14gの増加がみられ(1.7%)、本実施例による効果は顕著なものであった。
【0021】
なお、オリフィス44を形成する環状突起46は、実施例のように角形断面としてもよいが、V字型、円弧型の断面形状とすることができる。この場合、V字型、円弧型の切っ先部分が鋭利となっているとメタルシールが取れないので、先端を削った形状とすることが望ましい。
【0022】
また、オリフィス44を形成している環状突起46には、冷却手段を配置することができる。これは水平方式・水冷方式でも、あるいは油冷方式でも可能で、第1加圧手段30による射出が完了し、第2加圧手段38による加圧が環状突起46にかかった時に(図3(2))冷却するとよい。こうすることによってメタルシールが形成しやすくなる。
【0023】
上記実施例ではオリフィス44を形成する環状突起46を別部品として形成し、ランナー32を形成する際にはめ込み構造で取り付けるようにしてもよい。これは金型の分割線でランナー32が割れる構造であるため、半円構造とした立上りランナー部36への装着が簡単にできるからである。
また、上記実施例はホットチャンバーのランナーを押すことにも、またプラスチックを成形する際にも応用できる。
【0024】
このように本実施例によれば、キャビティ20への射出を第1加圧手段30により行い、ランナー32に溶湯が充満した状態から第2加圧手段38を作動させる。そうすると、作動ピストン42が分流子ランナー部34と立上りランナー部36の交差部(図2A→B)に達する間は、通常の押し出し作用をなすが、分流子ランナー部34が切れて立上りランナー部36に達した途端に環状突起46が部分に達し、隙間δでメタルシールにより溶湯金属が固化し、ここで圧力が遮断する(図3(2))。したがって、作動ピストン42の上位に位置するまだ固まらないキャビティ20側のランナー溶湯は遮断された圧力を背景にキャビティ20側に押し込まれる。
【0025】
これによって、作動ピストン42を、従来のストロークより多く前進させることができ、第2加圧手段38により、より緻密な製品を製造することができる。この時の効果は同じ容積のキャビティ20に溶湯を充填した場合、1.7%の重量増のなり、この業界では驚異的な値である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、ダイカスト製造を第1加圧手段のプランジャー加圧に引き続き、第2加圧手段によりランナーを加圧することができ、製品密度を向上できる方法と装置である。
【符号の説明】
【0027】
10……ダイカスト製造装置、12……移動盤、14……可動金型、16……固定盤、18……固定金型、20……キャビティ、22……押し出しピン、24……給湯手段、26……射出スリーブ、28……プランジャー、30……第1加圧手段、32……ランナー、34……分流子ランナー部、36……立上りランナー部、38……第2加圧手段、40……アクチュエータ、42……作動ピストン、
44……オリフィス、46……環状突起。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締された金型に第1加圧手段により溶湯を射出した後、第2加圧手段によりキャビティに直結するランナーを通じて第2加圧を行うに際し、第2加圧手段の加圧経路にその内径を絞るオリフィスを設け、当該オリフィス部分でのメタルシールにより溶湯の逆流を防止しつつ第2加圧手段により加圧を成すことを特徴とするダイカスト方法。
【請求項2】
前記オリフィスはランナーにおけるキャビティに直結する立上りランナー部に対応する面に形成してメタルシールにより溶湯の逆流を防止したことを特徴とする請求項1に記載のダイカスト方法。
【請求項3】
前記オリフィスはランナーの分流子ランナー部と立上りランナー部の境界近傍に配置されて第1加圧手段の加圧終了とともに第2加圧手段の加圧を、メタルシールにより溶湯の逆流防止を図りつつ、行わせることを特徴とする請求項1に記載のダイカスト方法。
【請求項4】
ダイカスト金型に溶湯を射出する第1加圧手段と、
キャビティに連通するランナーを加圧する作動ピストンを備えた第2加圧手段と、
ランナーにおけるキャビティに直結する立上りランナー部に対応する面に形成され前記作動ピストンの通過経路において前記作動ピストンとの隙間でメタルシールをなすようにその内径を絞るオリフィスと、
からなる射出部を設けたことを特徴とするダイカスト装置。
【請求項5】
前記オリフィスはランナーの分流子ランナー部と立上りランナー部との境界部近傍に形成してなることを特徴とする請求項4に記載のダイカスト装置。
【請求項6】
前記オリフィスは冷却手段を内蔵していることを特徴とする請求項4に記載のダイカスト装置。
【請求項7】
前記オリフィスは環状突起として形成してなることを特徴とする請求項4に記載のダイカスト装置。
【請求項8】
前記環状突起は角型、V字型、円弧型のいずれかによって形成されてなることを特徴とする請求項7に記載のダイカスト装置。