(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104402
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着シート、及び光学部材
(51)【国際特許分類】
C09J 133/00 20060101AFI20220701BHJP
C09J 201/06 20060101ALI20220701BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220701BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220701BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J201/06
C09J11/06
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219600
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕也
(72)【発明者】
【氏名】狩野 肇
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA04
4J004AA10
4J004AA11
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA04
4J004CA05
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB02
4J004FA01
4J040BA101
4J040DF001
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4J040EE001
4J040EF282
4J040GA05
4J040GA07
4J040GA14
4J040HD30
4J040HD36
4J040HD43
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040LA01
4J040LA02
4J040LA08
4J040MA02
4J040MA05
4J040MA11
4J040MB03
4J040MB05
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難く、かつ、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層を形成できる粘着剤組成物、粘着シート、及び光学部材の提供。
【解決手段】架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位(A)、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位(B)を含み、上記構成単位(A)の含有率が全構成単位に対して0.01質量%~5質量%である(メタ)アクリル系共重合体と、環状分子が2つ以上の炭素原子を含む側鎖を有し、上記側鎖の末端が水酸基であるポリロタキサンと、架橋剤と、シランカップリング剤と、を含み、上記ポリロタキサンの含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して20質量部~50質量部であり、上記架橋剤の含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して5質量部~50質量部である粘着剤組成物、及びその応用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位(A)、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位(B)を含み、前記構成単位(A)の含有率が全構成単位に対して0.01質量%以上5質量%以下である(メタ)アクリル系共重合体と、
環状分子が2つ以上の炭素原子を含む側鎖を有し、前記側鎖の末端が水酸基であるポリロタキサンと、
架橋剤と、
シランカップリング剤と、
を含み、
前記ポリロタキサンの含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して20質量部以上50質量部以下であり、
前記架橋剤の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して5質量部以上50質量部以下である粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度が、0℃未満である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シート。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粘着剤組成物、粘着シート、及び光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートの使用環境の多様化に伴い、様々な環境下での使用を想定し、耐久性に優れた粘着剤層を形成できる粘着剤が求められている。
例えば、特許文献1には、高温耐久性に優れる粘着剤層を形成できる粘着剤として、アクリル系ポリマー100重量部と、イソシアネート系硬化剤5重量部~50重量部と、を含有する光学用粘着剤が開示されている。特許文献1では、アクリル系ポリマーに対して特定割合以上のイソシアネート系硬化剤を用いることにより、粘着剤層の凝集力を高めることで、高温耐久性の向上を実現できるとされている。
【0003】
ところで、近年、機能性材料の原料として、ポリロタキサンが注目されている。ポリロタキサンは、環状分子と、上記環状分子の開口部を串刺し状に貫通する直鎖状分子と、上記直鎖状分子の両端を封鎖する封鎖基とからなる化合物であり、上記直鎖状分子上を上記環状分子が自由にスライドする効果(所謂、スライド効果)を有している。ポリロタキサンを原料として用いた機能性材料については、種々の報告がなされている。
例えば、特許文献2には、2個以上のラジカル重合性基を有する環状分子を少なくとも1個有するポリロタキサンと、1官能の(メタ)アクリル酸エステルであるラジカル重合性モノマーと、を含む軟質材料用組成物が開示されている。
また、特許文献3には、活性エネルギー線硬化性成分と、活性エネルギー線重合性基を有するポリロタキサンと、を含む粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-37927号公報
【特許文献2】特許第6258228号公報
【特許文献3】特開2015-155530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粘着剤層付きの基材を加工する工程では、研磨機を用いた裁断が行われることがある。研磨機を用いた裁断では、研磨による熱が発生しやすいため、粘着剤層が変形する場合がある。このため、粘着剤層には、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難い性質が求められる。
【0006】
ところで、近年、様々な形状のデバイスが出回っており、特に、凹凸形状のエッジ部を有するデバイスが注目を浴びている。粘着シートを、凹凸形状のエッジ部を有する被着体に貼り付ける場合、従来のような全体が平面形状の被着体に貼り付ける場合とは異なり、粘着剤層には、常に基材の反発による応力がかかる。また、凹凸形状のエッジ部は、工程上、粘着剤層が薄くなる傾向があり、エッジ部の周辺では、粘着剤層の厚みがばらつき、粘着力にムラが生じやすい。一般に、粘着剤層の厚みが薄い部分は、厚い部分と比較して粘着力が低くなる傾向があるため、剥がれやすい。このため、粘着剤層には、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い性質が求められている。
【0007】
本発明者らは、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難く、かつ、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層の形成を実現するために鋭意研究を行い、粘着剤の原料として特定のポリロタキサンを用いることが有効であることを見出すに至った。
【0008】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難く、かつ、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を提供することにある。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難く、かつ、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層を備える粘着シートを提供することにある。
また、本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難く、かつ、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層を備える光学部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位(A)、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位(B)を含み、上記構成単位(A)の含有率が全構成単位に対して0.01質量%以上5質量%以下である(メタ)アクリル系共重合体と、
環状分子が2つ以上の炭素原子を含む側鎖を有し、上記側鎖の末端が水酸基であるポリロタキサンと、
架橋剤と、
シランカップリング剤と、
を含み、
上記ポリロタキサンの含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して20質量部以上50質量部以下であり、
上記架橋剤の含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して5質量部以上50質量部以下である粘着剤組成物。
<2> 上記(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度が、0℃未満である<1>に記載の粘着剤組成物。
<3> <1>又は<2>に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シート。
<4> <1>又は<2>に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える光学部材。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態によれば、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難く、かつ、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層を形成できる粘着剤組成物が提供される。
本開示の他の実施形態によれば、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難く、かつ、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層を備える粘着シートが提供される。
また、本開示の他の実施形態によれば、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難く、かつ、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層を備える光学部材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の粘着剤組成物、粘着シート、及び光学部材について、詳細に説明する。以下に記載する要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0012】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、粘着剤組成物中の各成分の量は、粘着剤組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、粘着剤組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
【0014】
本開示において、「(メタ)アクリル系共重合体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位〔即ち、(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位〕の50質量%以上である共重合体を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリル系単量体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。
【0015】
本開示において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0016】
本開示において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0017】
本開示において、「粘着剤」と「粘着剤組成物」とは、同義である。
【0018】
[粘着剤組成物]
本開示の粘着剤組成物は、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位(A)、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位(B)を含み、上記構成単位(A)の含有率が全構成単位に対して0.01質量%以上5質量%以下である(メタ)アクリル系共重合体〔以下、「特定(メタ)アクリル系共重合体」ともいう。〕と、環状分子が2つ以上の炭素原子を含む側鎖を有し、上記側鎖の末端が水酸基であるポリロタキサン〔以下、「特定ポリロタキサン」ともいう。〕と、架橋剤と、シランカップリング剤と、を含み、上記ポリロタキサンの含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して20質量部以上50質量部以下であり、上記架橋剤の含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して5質量部以上50質量部以下である。
本開示の粘着剤組成物によれば、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難く、かつ、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層を形成できる。
本開示の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本開示の粘着剤組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0019】
本開示の粘着剤組成物では、次のような反応が起こると考えられる。まず、シランカップリング剤の有機基と特定ポリロタキサンの水酸基とが反応し、シランカップリング剤と特定ポリロタキサンとが結合する。この結合によって、特定ポリロタキサンが有するスライド効果がシランカップリング剤にも付与され、スライド効果を有するシランカップリング剤が形成される。次いで、このスライド効果を有するシランカップリング剤の有機基と、特定(メタ)アクリル系共重合体の架橋性官能基とが、架橋剤を介して結合することで、特定ポリロタキサンとシランカップリング剤と特定(メタ)アクリル系共重合体との架橋体が形成される。
粘着剤組成物が特定ポリロタキサンを含まない場合、特定(メタ)アクリル系共重合体同士の架橋体形成が主となるが、本開示の粘着剤組成物では、特定(メタ)アクリル系共重合体における架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位Aの含有率が特定割合以下であるため、また、水酸基を有する特定ポリロタキサンを含み、かつ、その含有量が比較的多いため、シランカップリング剤と特定ポリロタキサンとの反応体形成が優先して起こると考えられる。また、水酸基を有する特定ポリロタキサンの含有量が多すぎると、特定ポリロタキサン同士の架橋体形成が急激に起こり、特定ポリロタキサンとシランカップリング剤との反応体が形成され難くなるが、本開示の粘着剤組成物では、水酸基を有する特定ポリロタキサンの含有量が過度に多くないため、特定ポリロタキサンとシランカップリング剤との反応体形成が損なわれ難い。さらに、架橋剤の含有量が多すぎると、形成される粘着剤層の凝集力が過度に高くなり、特定ポリロタキサンによるスライド効果が妨げられるが、本開示の粘着剤組成物では、架橋剤の含有量が特定量以下であるため、形成される粘着剤層の凝集力が高くなりすぎず、特定ポリロタキサンによるスライド効果が十分に発揮される。
本開示の粘着剤組成物によれば、特定ポリロタキサンとシランカップリング剤と特定(メタ)アクリル系共重合体とが架橋した、スライド効果を有する架橋体が形成されるため、部分的な厚みのばらつきがあっても、架橋体のスライド効果によって粘着剤層に粘着力のムラが生じ難いと推測される。
【0020】
本開示の粘着剤組成物は、架橋剤の含有量が特定(メタ)アクリル系共重合体に対して特定割合以上であるため、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位(A)を含む特定(メタ)アクリル系共重合体が、比較的多量の架橋剤を介して架橋する。このため、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、凝集力が高く、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難いと推測される。
【0021】
一方、特許文献1(特開2011-37927号公報)に記載の粘着剤は、硬い粘着剤層を形成するための設計となっている。このため、特許文献1に記載の粘着剤により形成された粘着剤層を凹凸形状のエッジ部に貼り付けると、粘着剤層が硬いため、粘着剤層に過度の応力がかかり、剥がれが生じやすいと推測される。
【0022】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体〕
本開示の粘着剤組成物は、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位(A)、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位(B)を含み、上記構成単位(A)の含有率が全構成単位に対して0.01質量%以上5質量%以下である(メタ)アクリル系共重合体〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体〕を含む。
【0023】
<構成単位(A)>
特定(メタ)アクリル系重合体は、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位(A)を含み、上記構成単位(A)の含有率が、全構成単位に対して0.01質量%以上5質量%以下である。
【0024】
本開示において、「架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位」とは、架橋性官能基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0025】
架橋性官能基を有する単量体としては、例えば、1分子中に少なくとも1つの架橋性官能基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和基は、特に限定されない。
エチレン性不飽和基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0026】
架橋性官能基は、特に限定されない。
架橋性官能基の具体例としては、水酸基、カルボキシ基、及びアミノ基が挙げられる。
ここでいう「アミノ基」とは、一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を指す。
架橋性官能基は、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方であることが好ましい。
【0027】
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、例えば、他の単量体との共重合性が良好である観点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、他の単量体との相溶性が良好である観点、及び、架橋剤(特に、イソシアネート系架橋剤)との反応性が良好である観点から、炭素数が1~5のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが更に好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)が特に好ましい。
【0028】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、クロトン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート〔例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート〕、コハク酸エステル(例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸)、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びネオデカン酸ビニルが挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、架橋剤(特に、イソシアネート系架橋剤)との反応性が良好である観点から、アクリル酸(AA)が好ましい。
【0029】
アミノ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
一級アミノ基を有する単量体の具体例としては、アクリルアミド及びメタクリルアミドが挙げられる。
二級アミノ基を有する単量体の具体例としては、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、及びN-メトキシエチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0030】
特定(メタ)アクリル系重合体は、構成単位(A)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0031】
特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(A)の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して0.01質量%以上5質量%以下である。
特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(A)の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して0.01質量%以上であると、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難く、かつ、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。このような観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(A)の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、0.01質量%以上であり、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、1質量%以上であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(A)の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して5質量%以下であると、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。このような観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(A)の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、5質量%以下であり、4.5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3.5質量%以下であることが更に好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
【0032】
<構成単位(B)>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位(B)を含む。
構成単位(B)は、粘着剤層の粘着力の調整に寄与する。
【0033】
本開示において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
なお、本開示における「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」には、架橋性官能基を有する単量体に該当する単量体は、包含されない。
【0034】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体であることが好ましい。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、メタクリル酸アルキルエステル単量体であってもよく、アクリル酸アルキルエステル単量体であってもよいが、例えば、既述の架橋性官能基を有する単量体との共重合性が良好である観点から、アクリル酸アルキルエステル単量体であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
【0035】
アルキル基の炭素数は、例えば、基材との密着性に優れる粘着剤層を形成する観点から、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましい。
【0036】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、n-ブチルアクリレート(n-BA)及び2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、n-ブチルアクリレート(n-BA)がより好ましい。
【0037】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、構成単位(B)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0038】
特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(B)の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、50質量%~99.99質量%であることがより好ましく、60質量%~99.9質量%であることが更に好ましく、70質量%~99.9質量%であることが特に好ましい。
ここで、特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(B)の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して50質量%以上であることは、構成単位(B)が、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0039】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述の構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含むことができる。
【0040】
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
【0041】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0042】
特定(メタ)アクリル系共重合体がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体におけるその他の構成単位の含有率は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0043】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(「Tg」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、0℃未満であることが好ましく、-20℃以下であることがより好ましく、-30℃以下であることが更に好ましく、-40℃以下であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度が0℃未満であると、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度の下限は、例えば、-70℃以上であることが好ましい。
【0044】
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度は、下記の式1から計算により求められる絶対温度(単位:K;以下、同じ。)をセルシウス温度(単位:℃;以下、同じ。)に換算した値である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k-1)/Tg(k-1)+mk/Tgk (式1)
【0045】
式1中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k-1)、及びTgkは、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度をそれぞれ表す。m1、m2、・・・、m(k-1)、及びmkは、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k-1)+mk=1である。
なお、絶対温度から273を引くことで絶対温度をセルシウス温度に換算でき、セルシウス温度に273を足すことでセルシウス温度を絶対温度に換算できる。
【0046】
本開示において、「単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度」とは、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度で表されるガラス転移温度をいう。
単独重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)〔型番:EXSTAR6000、セイコーインスツル(株)製〕を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のガラス転移温度としたものである。
【0047】
代表的な単量体の「単独重合体としたときのセルシウス温度で表されるガラス転移温度」は、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が-76℃、2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)が-10℃、n-ブチルアクリレート(n-BA)が-57℃、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)が21℃、t-ブチルアクリレート(t-BA)が41℃、t-ブチルメタクリレート(t-BMA)が107℃、i-ブチルメタクリレート(i-BMA)が48℃、メチルアクリレート(MA)が5℃、メチルメタクリレート(MMA)が103℃、イソボニルメタクリレート(IBXMA)が155℃、イソボニルアクリレート(IBXA)が96℃、エチルアクリレート(EA)が-27℃、メタクリル酸が185℃、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)が-39℃、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)が-15℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が55℃、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(2HPA)が-7℃、アクリル酸(AA)が163℃、i-オクチルアクリレート(i-OA)が-75℃、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)が18℃、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートが-30℃、及び2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸が-40℃である。
【0048】
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0049】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(「Mw」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、50万~250万であることが好ましく、60万~200万であることがより好ましく、70万~180万であることが更に好ましく、80万~170万であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が50万以上であると、高温を伴う裁断を行った場合でもより変形し難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が250万以下であると、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラがより生じ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0050】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系共重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める特定(メタ)アクリル系共重合体の質量割合を意味する。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量を測定する。
【0051】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKgel GMHXL〔東ソー(株)〕を4本使用
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0052】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、重合温度、重合時間、有機溶剤の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0053】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の含有率>>
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体の含有率は、特に限定されないが、例えば、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、50質量%~80質量%であることが好ましく、60質量%~80質量%であることがより好ましく、65質量%~80質量%であることが更に好ましく、65質量%~75質量%であることが特に好ましい。
本開示において、「粘着剤組成物中の全固形分量」とは、粘着剤組成物が溶媒を含まない場合には、粘着剤組成物の全質量を意味し、粘着剤組成物が溶媒を含む場合には、粘着剤組成物から溶媒を除いた残渣の質量を意味する。
本開示において、「溶媒」とは、水及び有機溶剤を意味する。
【0054】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系共重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合することにより製造できる。
重合方法としては、製造後に本開示の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0055】
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、例えば、窒素気流中、有機溶剤の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶剤、単量体、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0056】
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールに代表されるアルコール化合物が挙げられる。
【0057】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶剤の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系共重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチルの使用が好ましい。
【0058】
重合反応時には、有機溶剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0059】
重合開始剤としては、通常の溶液重合法で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN〕、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特に、アゾ化合物の使用が好ましい。
【0060】
重合反応時には、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0061】
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0062】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ピネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0063】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0064】
重合温度は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0065】
〔特定ポリロタキサン〕
本開示の粘着剤組成物は、環状分子が2つ以上の炭素原子を含む側鎖を有し、上記側鎖の末端が水酸基であるポリロタキサン(即ち、特定ポリロタキサン)を含み、上記特定ポリロタキサンの含有量が、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して20質量部以上50質量部以下である。
【0066】
ポリロタキサンは、環状分子と、この環状分子の開口部を串刺し状に貫通する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両端を封鎖する封鎖基とからなる化合物である。
特定ポリロタキサンは、ポリロタキサンの上記環状分子が2つ以上の炭素原子を含む側鎖を有し、上記側鎖の末端が水酸基である構造を有している。
以下、「2つ以上の炭素原子を含む側鎖を有し、上記側鎖の末端が水酸基である環状分子」を「特定環状分子」ともいう。また、「特定環状分子を形成する環状分子」を単に「環状分子」ともいう。
特定ポリロタキサンは、特定環状分子を1つ含んでいてもよく、2つ以上含んでいてもよい。
【0067】
環状分子は、開口部に直鎖状分子が串刺し状に貫通するように包接可能であり、かつ、直鎖状分子上で移動可能であれば、特に限定されない。
環状分子を直鎖状分子に包接する方法としては、従来公知の方法(例えば、特開2005-154675号公報に記載の方法)を用いることができる。
本開示において、環状分子の「環状」とは、実質的に環状であることを意味し、直鎖状分子上で移動可能であれば、完全な閉環構造体でなくてもよく、例えば、螺旋構造体であってもよい。
【0068】
環状分子の具体例としては、環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン等の環状ポリマー、及び、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン等のシクロデキストリンが挙げられる。
これらの中でも、環状分子としては、例えば、入手が比較的容易であり、かつ、封鎖基の種類を多数選択できる観点から、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン等のシクロデキストリンが好ましい。
【0069】
環状分子は、直鎖状分子の種類に応じて、適宜選択される。
例えば、直鎖状分子としてポリエチレングリコールを選択した場合には、環状分子は、得られる包接体の安定性の観点から、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又はγ-シクロデキストリンのいずれかであることが好ましい。
【0070】
環状分子には、特定(メタ)アクリル系共重合体との相溶性の向上に寄与し得る置換基が導入されていることが好ましい。
このような置換基としては、例えば、ポリエステル鎖、及びオキシアルキレン鎖が挙げられる。これらの置換基は、1種のみ導入されていてもよく、2種以上導入されていてもよく、ポリエステル鎖とオキシエチレン鎖とが導入されていることが好ましい。
これら置換基については、特許第6258228号公報の段落[0011]~[0013]に記載がある。これらの記載は、参照により本明細書に取り込まれる。但し、これらの記載において、「ラジカル重合性基」は「水酸基」に、また、「重合性モノマー」は「特定(メタ)アクリル系共重合体」に読み替えるものとする。
【0071】
特定ポリロタキサンは、2つ以上の炭素原子を含む側鎖を有し、上記側鎖の末端が水酸基である環状分子(即ち、特定環状分子)を含む。
側鎖が含む炭素原子の数は、2以上であり、5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、13以上であることが更に好ましい。
側鎖が含む炭素原子の数の上限は、特に限定されないが、例えば、60000以下であることが好ましい。
【0072】
直鎖状分子は、環状分子の開口部に串刺し状に包接され、化学的結合(例えば、共有結合)ではなく、機械的結合によって環状分子と一体化できる分子又は物質であって、直鎖状のものであれば、特に限定されない。
本開示において、直鎖状分子の「直鎖」とは、実質的に直鎖であることを意味し、直鎖状分子上で環状分子が移動可能であれば、直鎖状分子は分岐鎖を有していてもよい。
【0073】
直鎖状分子の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアクリル酸エステル、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンが挙げられる。
これらの中でも、直鎖状分子としては、ポリエチレングリコールが好ましい。
直鎖状分子の具体例については、特許第6258228号公報の段落[0018]に記載がある。この記載は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0074】
直鎖状分子の重量平均分子量は、3000以上であることが好ましく、5000以上であることがより好ましく、1万以上であることが更に好ましい。
直鎖状分子の重量平均分子量が3000以上であると、直鎖状分子上を環状分子が移動する量がより多くなるため、特定ポリロタキサンとシランカップリング剤と特定(メタ)アクリル系共重合体とが架橋した、スライド効果を有する架橋体のスライド効果がより発揮されやすくなる傾向がある。このため、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラがより生じ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
また、直鎖状分子の重量平均分子量は、30万以下であることが好ましく、10万以下であることがより好ましく、5万以下であることが更に好ましい。
直鎖状分子の重量平均分子量が30万以下であると、特定ポリロタキサンと、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体との相溶性がより向上し得る。
直鎖状分子の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリエチレングリコール換算値として測定した値である。カラムとしては、東ソー(株)製のTSKgel SuperAWM-Hを用いることができる。
【0075】
封鎖基は、環状分子が包接された直鎖状分子の両末端に配置され、環状分子が脱離しないように作用する役割を有する。
直鎖状分子の両端を封鎖基で封鎖する方法としては、従来公知の方法(例えば、特開2005-154675号公報に記載の方法)を用いることができる。
【0076】
封鎖基の具体例としては、ジニトロフェニル基、アダマンチル基、及びトリチル基が挙げられる。直鎖状分子の両端は、異なる封鎖基で封鎖されていてもよい。
特定ポリロタキサンの封鎖基としては、アダマンチル基が好ましい。
封鎖基の具体例については、特許第6258228号公報の段落[0022]に記載がある。この記載は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0077】
環状分子が直鎖状分子を包接する際に、最大限に包接できる量(最大包接量)を100%とした場合に、環状分子が包接する直鎖状分子の量の割合は、0.1%~60%であることが好ましく、1%~50%であることがより好ましく、5%~40%であることが更に好ましい。
なお、上記最大包接量は、直鎖状分子の長さ及び環状分子の厚さによって決定される。例えば、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、かつ、環状分子がα-シクロデキストリンである場合の最大包接量は、実験的に求められている(Macromolecules 1993,26,5698-5703参照)。
【0078】
特定ポリロタキサンの好ましい態様としては、環状分子がα-シクロデキストリン由来の分子であり、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、封鎖基がアダマンタン基であり、α-シクロデキストリンのグルコース由来の水酸基の一部が、開環したラクトン化合物のカルボキシ基と反応しているか、或いは、ヒドロキシプロピル基で置換されており、ヒドロキシプロピル基が有する水酸基が、開環したラクトン化合物のカルボキシ基と反応しており、側鎖の末端に、開環したラクトン化合物由来の水酸基を有している態様である。
【0079】
特定ポリロタキサンの重量平均分子量は、10万以上であることが好ましく、15万以上であることがより好ましく、20万以上であることが更に好ましい。
また、特定ポリロタキサンの重量平均分子量は、100万以下であることが好ましく、90万以下であることがより好ましく、80万以下であることが更に好ましい。
特定ポリロタキサンの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算値として測定した値である。カラムとしては、東ソー(株)製のTSKgel SuperHM-Mを用いることができる。
【0080】
特定ポリロタキサンの水酸基価は、40mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることがより好ましく、60mgKOH/g以上であることが更に好ましい。
また、特定ポリロタキサンの水酸基価は、100mgKOH/g以下であることが好ましく、90mgKOH/g以下であることがより好ましく、80mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
特定ポリロタキサンの水酸基価は、JIS K 0070:1992に準拠した方法により測定した値である。
【0081】
特定ポリロタキサンは、例えば、特開2005-154675号公報、特開2009-270119号公報、及び国際公開第2009/145073に記載の方法によって得ることができる。
特定ポリロタキサンは、市販品としても入手可能である。
特定ポリロタキサンの市販品の例としては、(株)ASM製の「セルム(登録商標) スーパーポリマー SH3400P」〔全体の重量平均分子量:70万、直鎖状分子の重量平均分子量:3.5万、水酸基価:72mgKOH/g〕、「セルム(登録商標) スーパーポリマー SH2400P」〔全体の重量平均分子量:40万、直鎖状分子の重量平均分子量:2万、水酸基価:76mgKOH/g〕、及び「セルム(登録商標) スーパーポリマー SH1300P」〔全体の重量平均分子量:18万、直鎖状分子の重量平均分子量:1.1万、水酸基価:85mgKOH/g〕が挙げられる。
【0082】
本開示の粘着剤組成物は、特定ポリロタキサンを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0083】
本開示の粘着剤組成物における特定ポリロタキサンの含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して20質量部以上50質量部以下である。
本開示の粘着剤組成物における特定ポリロタキサンの含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、上記範囲内であると、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
本開示の粘着剤組成物における特定ポリロタキサンの含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して23質量部以上であることが好ましく、25質量部以上であることがより好ましく、28質量部以上であることが更に好ましく、30質量部以上であることが特に好ましい。
また、本開示の粘着剤組成物における特定ポリロタキサンの含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、48質量部以下であることが好ましく、45質量部以下であることがより好ましく、43質量部以下であることが更に好ましく、40質量部以下であることが特に好ましい。
【0084】
〔架橋剤〕
本開示の粘着剤組成物は、架橋剤を含み、上記架橋剤の含有量が、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して5質量部以上50質量部以下である。
本開示の粘着剤組成物において、架橋剤は、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難く、かつ、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層の形成に寄与する。
架橋剤の種類は、特に限定されない。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、及び金属キレート系架橋剤が挙げられる。
これらの中でも、架橋剤としては、水酸基との反応性が良好な架橋剤が好ましく、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0085】
本開示において、「イソシアネート系架橋剤」とは、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物(所謂、ポリイソシアネート化合物)を指す。また、「エポキシ系架橋剤」とは、1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物(所謂、2官能以上のエポキシ化合物)を指す。また、「金属キレート系架橋剤」とは、架橋剤として機能する金属キレート化合物を指す。
【0086】
イソシアネート系架橋剤の種類は、特に限定されない。
イソシアネート系架橋剤としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びトリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
また、イソシアネート系架橋剤としては、上記ポリイソシアネート化合物の2量体、3量体、又は5量体、上記ポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、上記ポリイソシアネート化合物のビウレット体なども挙げられる。
【0087】
イソシアネート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
イソシアネート系架橋剤の市販品の例としては、「コロネート(登録商標) HX」、「コロネート(登録商標) HL-S」、「コロネート(登録商標) L」、「コロネート(登録商標) L-45E」、「コロネート(登録商標) 2031」、「コロネート(登録商標) 2030」、「コロネート(登録商標) 2234」、「コロネート(登録商標) 2785」、「アクアネート(登録商標) 200」、及び「アクアネート(登録商標) 210」〔以上、東ソー(株)製〕、「スミジュール(登録商標) N3300」、「デスモジュール(登録商標) N3400」、及び「スミジュール(登録商標) N75」〔以上、住化コベストロウレタン(株)製〕、「デュラネート(登録商標) E-405-80T」、「デュラネート(登録商標) AE700-100」、「デュラネート(登録商標) 24A-100」、及び「デュラネート(登録商標) TSE-100」〔以上、旭化成(株)製〕、並びに、「タケネート(登録商標) D-110N」、「タケネート(登録商標) D-120N」、「タケネート(登録商標) M-631N」、「MT-オレスター(登録商標) NP1200」、及び「スタビオ(登録商標) XD-340N」〔以上、三井化学(株)製〕が挙げられる。
【0088】
エポキシ系架橋剤の種類は、特に限定されない。
エポキシ系架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリス(グリシジル)イソシアヌレート、トリス(グリシドキシエチル)イソシアヌレート、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)等が挙げられる。
【0089】
エポキシ系架橋剤としては、市販品を使用できる。
エポキシ系架橋剤の市販品の例としては、「TETRAD(登録商標)-X」及び「TETRAD(登録商標)-C」〔以上、三菱ガス化学(株)製〕が挙げられる。
【0090】
金属キレート系架橋剤の種類は、特に限定されない。
金属キレート系架橋剤としては、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、及びアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)に代表されるアルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、コバルトキレート化合物等が挙げられる。
【0091】
金属キレート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
金属キレート系架橋剤の市販品の例としては、アルミキレート A〔商品名、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、川研ファインケミカル(株)製〕、アルミキレート D〔商品名、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、川研ファインケミカル(株)製〕、及びALCH-TR〔商品名、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、川研ファインケミカル(株)製〕が挙げられる。
【0092】
本開示の粘着剤組成物は、架橋剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0093】
本開示の粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、5質量部以上50質量部以上である。
本開示の粘着剤組成物における架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して5質量部以上であると、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難い粘着剤層を形成できる傾向がある。このような観点から、本開示の粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して5質量部以上であり、6質量部以上であることが好ましく、7質量部以上であることがより好ましく、8質量部以上であることが更に好ましい。
本開示の粘着剤組成物における架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して50質量部以上であると、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。このような観点から、本開示の粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して50質量部以下であり、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが更に好ましい。
【0094】
〔シランカップリング剤〕
本開示の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含む。
本開示の粘着剤組成物において、シランカップリング剤は、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層の形成に寄与する。
【0095】
シランカップリング剤は、特に限定されない。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代表される重合性不飽和基含有シラン化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシランに代表されるチオール基含有シラン系化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランに代表されるエポキシ基含有シラン化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランに代表されるアミノ基含有シラン化合物、並びに、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートに代表されるイソシアヌレート基含有シラン化合物が挙げられる。
【0096】
シランカップリング剤としては、市販品を使用できる。
シランカップリング剤の市販品の例としては、チオール基含有シラン化合物である「KBM-803」、「KBM-802」、「X-41-1810」、「X-41-1811」、「X-41-1805」、及び「X-41-1818」、エポキシ基含有シラン化合物である「KBM-403」、「KBM-303」、「KBM-402」、「KBE-402」、「KBE-403」、「X-41-1053」、及び「X-41-1056」、アミノ基含有シラン化合物である「KBM-573」及び「KBM-903」、並びに、イソシアヌレート基含有シラン化合物である「KBM-9659」〔いずれも商品名、信越化学工業(株)製〕が挙げられる。
【0097】
本開示の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0098】
本開示の粘着剤組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.1質量部~1質量部であることが好ましく、0.1質量部~0.8質量部であることがより好ましく、0.2質量部~0.5質量部であることが更に好ましい。
本開示の粘着剤組成物におけるシランカップリング剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1質量部以上であると、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラがより生じ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
本開示の粘着剤組成物におけるシランカップリング剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して1質量部以下であると、シランカップリング剤の縮合反応に起因する粘着剤層の粘着力の低下がより抑制される傾向がある。
【0099】
〔有機溶剤〕
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含むと、塗布性が向上し得る。
有機溶剤としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重合反応時に用いられる有機溶剤と同様のものが挙げられる。
【0100】
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含む場合、有機溶剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0101】
本開示の粘着剤組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0102】
〔その他の成分〕
本開示の粘着剤組成物は、その効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、特定(メタ)アクリル系共重合体以外の重合体、架橋触媒、粘着付与剤、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0103】
本開示の粘着剤組成物がその他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、適宜設定できる。
【0104】
<用途>
本開示の粘着剤組成物の用途は、特に限定されない。
本開示の粘着剤組成物は、例えば、光学部材に用いられる粘着剤組成物として好適である。本開示の粘着剤組成物は、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難いため、例えば、研磨機を用いた裁断を行う際に好ましく適用できる。また、本開示の粘着剤組成物は、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層を形成できるため、例えば、表面の形状が特殊な被着体に対して、好ましく適用できる。
本開示の粘着剤組成物の用途の具体例としては、微細な印刷が施された被着体と光学フィルムとを貼り合わせる用途、及び研磨処理が施された被着体と補強フィルムとを貼り合わせる用途に好適である。
【0105】
[粘着シート]
本開示の粘着シートは、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シートである。
本開示の粘着シートは、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難く、かつ、粘着剤層の部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い傾向を示す。
本開示の粘着シートの被着体としては、例えば、高温を伴う裁断が行われる被着体であって、かつ、表面の形状が特殊な被着体が好適である。このような被着体としては、例えば、微細な印刷が施された被着体、及び研磨処理が施された被着体が挙げられる。
【0106】
本開示の粘着シートは、基材を有しない無基材タイプの粘着シートでもよく、基材の少なくとも片面に粘着剤層を備える有基材タイプの粘着シートでもよい。
本開示の粘着シートにおいて、露出した粘着剤層の面は、剥離フィルムによって保護されていてもよい。
【0107】
剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離を容易に行えるものであれば、特に限定されず、例えば、片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤(例えば、シリコーン)、ワックス系剥離処理剤(例えば、パラフィンワックス)、フッ素系剥離処理剤(例えば、フッ素系樹脂)等が挙げられる。
剥離フィルムは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0108】
粘着剤層の厚さは、特に限定されず、被着体の形状、表面粗さ等に応じて、適宜設定できる。
粘着剤層の厚さは、一般には、1μm~100μmであり、5μm~50μmであることが好ましく、10μm~30μmであることがより好ましい。
【0109】
本開示における「粘着剤層の厚さ」は、粘着剤層の平均厚さを意味する。
粘着剤層の平均厚さは、以下の方法により測定される値である。
粘着剤層の厚み方向において、無作為に選択した10箇所で測定される粘着剤層の厚さの算術平均値を求め、得られた値を粘着剤層の平均厚さとする。粘着剤層の厚さは、膜厚計を用いて測定される。
【0110】
本開示の粘着シートが基材を備える場合、基材は、特に限定されない。
基材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)〕、アセテート系樹脂(例えば、トリアセチルセルロース樹脂)、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂を含むフィルムが挙げられる。
【0111】
基材の粘着剤層が設けられる側の面には、基材と粘着剤層との密着性を向上させる観点から、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の表面処理(所謂、易接着処理)が施されていてもよい。
【0112】
基材は、可塑剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
基材は、一部又は全体に、模様が施されていてもよい。
【0113】
基材の厚さは、特に限定されない。
基材の厚さは、一般には、10μm~500μmであり、10μm~300μmであることが好ましく、10μm~200μmであることがより好ましい。
【0114】
本開示における「基材の厚さ」は、基材の平均厚さを意味する。
基材の平均厚さは、既述の粘着剤層の平均厚さの測定方法に準拠した方法により測定される値である。
【0115】
[粘着シートの作製方法]
本開示の粘着シートは、公知の方法により作製できる。
本開示の粘着シートを作製する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
無基材タイプの粘着シートの場合、まず、本開示の粘着剤組成物を剥離フィルムの易剥離処理面に塗布することにより、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離フィルム上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、別途、準備した剥離フィルムの易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、剥離フィルム/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する、無基材タイプの粘着シートを作製できる。
【0116】
有基材タイプの粘着シートの場合、まず、本開示の粘着剤組成物を基材の易接着処理面に塗布することにより、基材上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、基材上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、剥離フィルムの易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、剥離フィルム/粘着剤層/基材の積層構造を有する、有基材タイプの粘着シートを作製できる。
【0117】
別の方法としては、例えば、以下の方法も挙げられる。
本開示の粘着剤組成物を剥離フィルムの易剥離処理面に塗布することにより、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離フィルム上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、基材の易接着処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する、有基材タイプの粘着シートを作製できる。
【0118】
粘着剤組成物の塗布方法は、特に限定されない。
粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
粘着剤組成物の塗布量は、特に限定されず、例えば、形成する粘着剤層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0119】
塗布膜の乾燥方法は、特に限定されない。
塗布膜の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、塗布膜の厚さ、塗布膜中の有機溶剤の量等に応じて、適宜設定される。
乾燥条件の一例としては、熱風乾燥機を用いて、70℃~120℃で30秒間~180秒間乾燥させる条件が挙げられる。
【0120】
養生は、例えば、雰囲気温度20℃~35℃、相対湿度45%~55%(即ち、45%RH~55%RH)の環境下で、4日間~7日間行う。
【0121】
[光学部材]
本開示の光学部材は、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える光学部材である。
本開示の光学部材は、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難く、かつ、粘着剤層の部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い傾向を示す。
光学部材としては、特に限定されず、例えば、画像表示装置、入力装置等の機器(所謂、光学機器)を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材が挙げられる。
光学部材の具体例としては、偏光板、AG(Anti-Glare)偏光板、波長板、1/2、1/4等の波長板を含む位相差板、視角補償フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、ITO(Indium-Tin Oxide)フィルム等の透明導電フィルム、プリズムシート、レンズシート、拡散板などが挙げられる。
光学部材の材質としては、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、及びポリエステル系樹脂)、アセテート系樹脂(例えば、トリアセチルセルロース樹脂)、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂が挙げられる。
【実施例0122】
以下、本開示の粘着剤組成物及び粘着シートを実施例により更に具体的に説明する。本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0123】
[(メタ)アクリル系共重合体の製造]
〔製造例A-1〕
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応装置の反応容器内に、酢酸エチル〔有機溶剤〕70質量部を仕込んだ。次いで、別の容器に、n-ブチルアクリレート〔n-BA;アクリル酸アルキルエステル単量体〕99.9質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート〔2HEA;架橋性官能基(種類:水酸基)を有する単量体〕0.1質量部からなる単量体混合物100.0質量部を準備した。この準備した単量体混合物を上記反応容器内に仕込んだ後、70℃に加熱した。次いで、上記温度条件下で、酢酸エチル50.0質量部と、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN;重合開始剤〕0.026質量部と、を120分間かけて上記反応容器内に逐次滴下し、滴下終了後に、更に150分間反応させ、反応を完結させた。反応完結後の溶液を、固形分濃度が15.0質量%となるように酢酸エチルを用いて希釈し、(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液を得た。
【0124】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液に占める(メタ)アクリル系共重合体A-1の質量割合を意味する。
以下の(メタ)アクリル系共重合体A-2~A-7の各溶液についても同様である。
【0125】
〔製造例A-2~A-7〕
製造例A-2~A-7では、(メタ)アクリル系共重合体の単量体組成を表1に示す単量体組成に変更したこと、並びに、有機溶剤の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量を表1に示す重量平均分子量に調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が15.0質量%である(メタ)アクリル系共重合体A-2~A-7の各溶液を得た。
【0126】
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-7の単量体組成(単位:質量%)、ガラス転移温度(Tg、単位:℃)、及び重量平均分子量〔Mw、単位:万(表中では、「×104と表記)〕を表1に示す。
【0127】
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-7のガラス転移温度は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度の計算方法と同様の方法により計算した。
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-7の重量平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定した。
【0128】
上記にて得られた(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-7のうち、(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-3、A-6、及びA-7は、本開示における特定(メタ)アクリル系共重合体に相当する。
【0129】
【0130】
表1中、「単量体組成[質量%]」の欄に記載の数値は、全て固形分換算値である。
【0131】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
「n-BA」;n-ブチルアクリレート
「2EHA」;2-エチルヘキシルアクリレート
<架橋性官能基を有する単量体>
「2HEA」;2-ヒドロキシエチルアクリレート(架橋性官能基:水酸基)
「AA」;アクリル酸(架橋性官能基:カルボキシ基)
【0132】
表1中、単量体組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する単量体を含んでいないことを意味する。
表1では、「ガラス転移温度」を「Tg」と表記し、「重量平均分子量」を「Mw」と表記した。
【0133】
[粘着剤組成物の調製]
〔実施例1〕
(メタ)アクリル系共重合体A-2の溶液667質量部(固形分として100質量部)と、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤であるコロネート(登録商標) L-45E〔商品名、トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:45質量%、東ソー(株)製〕22.2質量部(固形分として10.0質量部)と、シランカップリング剤としてKBM-403〔商品名、信越化学工業(株)製〕0.2質量部と、セルム(登録商標) スーパーポリマー SH3400P〔商品名、特定ポリロタキサン、(株)ASM製〕20.0質量部と、を十分に混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0134】
〔実施例2~15〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~15の各粘着剤組成物を得た。
【0135】
〔比較例1~10〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表3に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1~10の各粘着剤組成物を得た。
【0136】
[評価]
実施例1~15及び比較例1~10の各粘着剤組成物を用いて、以下の評価を行った。
結果を表2及び表3に示す。
【0137】
<評価用粘着シートXの作製>
上記にて調製した粘着剤組成物を、シリコーン系剥離処理剤で表面処理された剥離フィルムP〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010 No.23、厚さ:100μm、藤森工業(株)製〕の表面処理面に、乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布し、塗布膜を形成した。次いで、形成した塗布膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、乾燥温度100℃、乾燥時間1分間の乾燥条件で乾燥させ、剥離フィルムP上に粘着膜を形成した。次いで、粘着膜の露出した面を、別途準備したシリコーン系剥離処理剤で表面処理された剥離フィルムQ〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)25E-0010 BD、厚さ:25μm、藤森工業(株)製〕の表面処理面に重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に4日間静置し、養生を行い、評価用粘着シートXを作製した。作製した評価用粘着シートXは、剥離フィルムQ/粘着剤層(厚さ:100μm)/剥離フィルムPの積層構造を有する。
【0138】
<評価用粘着シートYの作製>
上記にて調製した粘着剤組成物を、シリコーン系剥離処理剤で表面処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010 No.23、藤森工業(株)製〕の表面処理面に、乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗布し、塗布膜を形成した。次いで、形成した塗布膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、乾燥温度100℃、乾燥時間1分間の乾燥条件で乾燥させ、剥離フィルム上に粘着膜を形成した。次いで、粘着膜の露出した面を、易接着処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名:東洋紡エステル(登録商標)フィルム、型番:G2P2、厚さ:50μm、東洋紡フィルムソリューション(株)製〕の易接着処理面に重ね、加圧ニップロールを通すことにより圧着して貼り合わせた後、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に4日間静置し、養生を行い、評価用粘着シートYを作製した。作製した評価用粘着シートYは、剥離フィルム/粘着剤層(厚さ:20μm)/PETフィルム(基材)の積層構造を有する。
【0139】
<評価用粘着シートZの作製>
評価用粘着シートYの作製において、上記にて調製した粘着剤組成物を、シリコーン系剥離処理剤で表面処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010 No.23、藤森工業(株)製〕の表面処理面に、乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布し、塗布膜を形成したこと以外は、評価用粘着シートYの作製と同様の操作を行い、評価用粘着シートZを作製した。作製した評価用粘着シートZは、剥離フィルム/粘着剤層(厚さ:10μm)/PETフィルム(基材)の積層構造を有する。
【0140】
1.高温を伴う裁断を行った場合の変形
高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難い粘着剤層であるか否かは、85℃における粘着剤層の弾性率を指標として評価した。具体的には、以下のような評価を行った。
上記にて作製した評価用粘着シートXを25mm×150mmの大きさに切断した評価用粘着シート片を4枚準備した。次いで、準備した4枚の評価用粘着シート片〔構成:剥離フィルムQ/粘着剤層(厚さ:100μm)/剥離フィルムP〕から剥離フィルムP及び剥離フィルムQを剥離し、粘着剤層の面同士を貼り合わせ、厚さ400μmの粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層を測定用冶具PP8〔Anton Paar社製〕に合わせて切り抜き、試験片を作製した。作製した試験片について、雰囲気温度85℃、50%RHの環境下における弾性率(単位:Pa)を、測定装置としてAnton Paar社製の動的粘弾性測定装置〔型番:MCR301〕を用いて測定した。そして、下記の評価基準に従って、評価を行った。
評価結果が「A」、「B」、又は「C」であれば、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難い粘着剤層であると判断した。
【0141】
-評価基準-
A:弾性率が1.0×105Pa以上であった。
B:弾性率が5.0×104Pa以上1.0×105Pa未満の範囲であった。
C:弾性率が1.0×104Pa以上5.0×104Pa未満の範囲であった。
D:弾性率が1.0×104Pa未満であった。
【0142】
2.部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラ
部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層であるか否かは、厚さの異なる2つの粘着剤層の粘着力の差を指標として評価した。具体的には、以下のような評価を行った。
上記にて作製した評価用粘着シートYを25mm×75mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片Yを準備した。次いで、準備した評価用粘着シート片Y〔構成:剥離フィルム/粘着剤層(厚さ:20μm)/PETフィルム(基材)〕の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、無アルカリガラス〔商品名:イーグルXG、コーニング社〕(以下、単に「ガラス」と称する。)の面に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させて圧着し、積層体Yを作製した。作製した積層体Yは、ガラス板(被着体)/評価用粘着シート片Y〔構成:粘着剤層(厚さ:20μm)/PETフィルム(基材)〕の積層構造を有する。次いで、作製した積層体Yを、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に24時間静置し、試験片Yとした。
次に、上記にて作製した評価用粘着シートZを25mm×75mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片Zを準備した。次いで、準備した評価用粘着シート片Z〔構成:剥離フィルム/粘着剤層(厚さ:10μm)/PETフィルム(基材)〕の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、無アルカリガラス〔商品名:イーグルXG、コーニング社〕(以下、単に「ガラス」と称する。)の面に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させて圧着し、積層体Zを作製した。作製した積層体Zは、ガラス板(被着体)/評価用粘着シート片Z〔構成:粘着剤層(厚さ:10μm)/PETフィルム(基材)〕の積層構造を有する。次いで、作製した積層体Zを、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に24時間静置し、試験片Zとした。
次いで、試験片Y及び試験片Zのそれぞれについて、ガラスから粘着シート片を長辺(75mm)方向に180°剥離したときの粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として(株)エー・アンド・デイ製のシングルコラム型材料試験機〔型番:STA-1225〕を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定し、試験片Yの粘着力と試験片Zの粘着力との差を求めた。そして、下記の評価基準に従って、評価を行った。
評価結果が「A」、「B」、又は「C」であれば、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難い粘着剤層であると判断した。
【0143】
-評価基準-
A:粘着力の差が3.0N/25mm未満であった。
B:粘着力の差が3.0N/25mm以上4.0N/25mm未満の範囲であった。
C:粘着力の差が4.0N/25mm以上5.0N/25mm未満の範囲であった。
D:粘着力の差が5.0N/25mm以上であった。
【0144】
【0145】
【0146】
表2及び表3中、「-」は、その欄に該当する成分を配合していないことを意味する。
表2及び表3中、「質量部」の欄に記載の数値は、全て固形分換算値である。
【0147】
表2及び/又は表3に記載の架橋剤、シランカップリング剤、及びポリロタキサンの詳細は、以下に示すとおりである。
<架橋剤>
-イソシアネート系架橋剤-
「コロネート L-45E」〔商品名、トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:45質量%、東ソー(株)製〕
「タケネート D-110N」〔商品名、キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:75質量%、三井化学(株)製〕
「スミジュール N75」〔商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のビウレット体、固形分濃度:75質量%、住化コベストロウレタン(株)製〕
上記「コロネート」、「タケネート」、及び「スミジュール」は、いずれも登録商標である。
【0148】
<シランカップリング剤>
「KBM-403」〔商品名、エポキシ基含有シラン化合物、固形分濃度:100質量%、信越化学工業(株)製〕
「KBM-903」〔商品名、アミノ基含有シラン化合物、固形分濃度:100質量%、信越化学工業(株)製〕
「X-41-1810」〔商品名、チオール基含有シラン化合物、固形分濃度:100質量%、信越化学工業(株)製〕
【0149】
<ポリロタキサン>
-特定ポリロタキサン-
「SH3400P」〔商品名:セルム スーパーポリマー SH3400P、水酸基価:72mgKOH/g、重量平均分子量:70万、(株)ASM製〕
-その他のポリロタキサン-
「SA1305P-20」〔商品名:セルム スーパーポリマー SA1305P-20、環状分子が2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリロタキサン、アクリル当量:7000g/eq、重量平均分子量:20万、50質量%酢酸エチル溶液、(株)ASM製〕
上記「セルム」は、登録商標である。
【0150】
表2に示すように、実施例1~15の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温を伴う裁断を行った場合でも変形し難く、かつ、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラが生じ難いことが確認された。
一方、表3に示すように、比較例1~10の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温を伴う裁断を行った場合の変形、及び、部分的な厚みのばらつきに起因する粘着力のムラの少なくとも1つの評価において、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層よりも劣ることが確認された。
なお、その他のポリロタキサンを含む比較例10では、シランカップリング剤とポリロタキサンとの反応が起きていないと推測される。