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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104468
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】ホットランナー装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/27 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
B29C45/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219725
(22)【出願日】2020-12-28
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】514011251
【氏名又は名称】有限会社ベストテクニカル
(74)【代理人】
【識別番号】100154195
【弁理士】
【氏名又は名称】丸林 敬子
(72)【発明者】
【氏名】浪岡 健
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AJ09
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK03
(57)【要約】
【課題】品質の良い成形品を多数個取りすることができるホットランナー装置を提供する
【解決手段】射出成形機のノズル8と成形型9との間に配置される本体部2の内部には、第1空間部3と、第1空間部3から成形型9の側に離れて配置された第2空間部4と、ノズル8から射出された溶融溶融樹脂を第1空間部3に導く少なくとも1つの第1通路部5と、第1空間部3に導かれた溶融溶融樹脂を第2空間部4に導く複数の第2通路部6と、第2空間部4に導かれた溶融溶融樹脂を成形型9に導く複数の第3通路部7とが設けられ、第1通路部5と第2通路部6とが互いに溶融溶融樹脂の射出方向Lに直交する横方向に位置をずらして配置され、第2通路部6と第3通路部7とが互いに溶融溶融樹脂の射出方向Lに直交する横方向に位置をずらして配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機のノズルと成形型との間に配置される本体部の内部には、第1空間部と、前記第1空間部から前記成形型の側に離れて配置された第2空間部と、前記ノズルから射出された溶融樹脂を前記第1空間部に導く少なくとも1つの第1通路部と、前記第1空間部に導かれた溶融樹脂を前記第2空間部に導く複数の第2通路部と、前記第2空間部に導かれた溶融樹脂を前記成形型に導く複数の第3通路部とが設けられ、前記第1通路部と前記第2通路部とが互いに前記溶融樹脂の射出方向に直交する横方向に位置をずらして配置され、前記第2通路部と前記第3通路部とが互いに前記溶融樹脂の射出方向に直交する横方向に位置をずらして配置されたことを特徴とするホットランナー装置。
【請求項2】
前記本体部が、前記ノズル側に配置されかつ前記第1通路を有する第1部材と、この第1部材の前記成形型側に配置されかつ前記第2通路を有する第2部材と、この第2部材と前記成形型との間に配置されかつ前記第3通路部を有する第3部材とから成り、前記第1部材と前記第2部材と第3部材とが互いに組み合わせられることで前記第1空間部と前記第2空間部とを構成したことを特徴とする請求項1記載のホットランナー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機のノズルから溶融樹脂を成形型に導くホットランナー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で開示されたホットランナー装置は、射出成形機のノズルから噴射された溶融樹脂の噴射方向に直線状に延びた第1通路部と、第1通路部から第1通路部の延びる方向に隣接配置されかつ噴射方向に直交する方向に延びた第2通路部とを有し、射出成形機のノズルから噴射された溶融樹脂を第1通路部から第2通路部を経由して成形型の形成空間部に射出する構造になっているので、ノズルから噴射された溶融樹脂がノズルに近い側の第2通路部からノズルから遠い側の第2通路部の側へと順に噴出されるだけで、ノズルから形成空間部に射出される経路で溶融樹脂の圧力を調整することができず、品質の良い成形品を多数個取りすることができないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-193817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、品質の良い成形品を多数個取りすることができるホットランナー装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、射出成形機のノズルと成形型との間に配置される本体部の内部には、第1空間部と、前記第1空間部から前記成形型の側に離れて配置された第2空間部と、前記ノズルから射出された溶融樹脂を前記第1空間部に導く少なくとも1つの第1通路部と、前記第1空間部に導かれた溶融樹脂を前記第2空間部に導く複数の第2通路部と、前記第2空間部に導かれた溶融樹脂を前記成形型に導く複数の第3通路部とが設けられ、前記第1通路部と前記第2通路部とが互いに前記溶融樹脂の射出方向に直交する横方向に位置をずらして配置され、前記第2通路部と前記第3通路部とが互いに前記溶融樹脂の射出方向に直交する横方向に位置をずらして配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、射出成形機のノズルから射出された溶融樹脂が第1空間部と第2空間部とによる2段階の均一な圧力に調整されて複数の第3通路部から成形空間部に射出され、品質の良い成形品を多数個取りすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】発明を実施するための形態に係る本体部を1つの塊として表したホットランナー装置を示す断面図。
図2】A図は発明を実施するための形態に係るホットランナー装置の第1通路部と第2通路部と第3通路部との相互関係を図1に示す矢印a方向より見た平面図、B図はA図における第1通路部と第2通路部と第3通路部との違いを示す図表。
図3】発明を実施するための形態に係るホットランナー装置での溶融樹脂の流れを示す断面図に相当する模式図。
図4】対比例としてのホットランナー装置での溶融樹脂の流れを示す断面図に相当する模式図。
図5】発明を実施するための形態に係る本体部を構成する第1部材と第2部材と第3部材とからなる3つの部材を噴射方向に分解したホットランナー装置を示す断面図。
図6】発明を実施するための形態に係る本体部を構成する1部材と第2部材と第3部材とからなる3つの部材が噴射方向に組み立てられたホットランナー装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を用い、発明を実施するための形態に係るホットランナー装置1について説明する。ホットランナー装置1は、本体部2と第1空間部3と第2空間部4と第1通路部5と第2通路部6と第3通路部7とを備える。本体部2は、射出成形機のノズル8と成形型9との間に配置され、射出成形時には溶融された成形材料の合成樹脂としての溶融樹脂がノズル8と本体部2との間及び本体部2と成形型9との間から本体部2の外部とノズル8の外部と成形型9の外部とのそれぞれに漏れないように、本体部2とノズル8の先端部と成形型9とが互いに接触した状態になる。ノズル8及び成形型9は、ノズル8における溶融樹脂の直線的な一点鎖線の矢印Lで示す射出方向に離れて互いに対向する。
【0009】
第1空間部3は、ノズル側面11と成形型側面12と周面13とで囲まれた空間になっている。ノズル側面11及び成形型側面12は、射出方向に直交する方向で互いに射出方向に離れて対向している。ノズル側面11及び成形型側面12が、互いに平行しかつ射出方向に直交する方向の平面であっても適用可能である。又は、ノズル側面11及び成形型側面12が、互いに平行しかつ射出方向を中心とする弧面であっても適用可能である。又は、ノズル側面11及び成形型側面12が、射出方向を中心とし互いに逆向な弧面であっても適用可能である。又は、ノズル側面11及び成形型側面12の一方が射出方向を中心とする弧面であり、かつ、ノズル側面11及び成形型側面12の他方が射出方向に直交する方向の平面であっても適用可能である。
【0010】
周面13は、射出方向を中心として射出方向の周方向に一周する面を構成する。周面13の射出方向に直交する方向より視認される形状は、円形、楕円形、角形のいずれでも適用可能である。
【0011】
第2空間部4は、第1空間部3から成形型9の側に離れて配置されていると共にノズル側面14と成形型側面15と周面16とで囲まれた空間になっている。ノズル側面14及び成形型側面15は、射出方向に直交する方向で互いに射出方向に離れて対向する面を構成する。ノズル側面14及び成形型側面15が、互いに平行しかつ射出方向に直交する方向の平面であっても適用可能である。又は、ノズル側面14及び成形型側面15が、互いに平行しかつ射出方向を中心とする弧面であっても適用可能である。又は、ノズル側面14及び成形型側面15が、射出方向を中心とし互いに逆向な弧面であっても適用可能である。又は、ノズル側面14及び成形型側面15の一方が射出方向を中心とする弧面であり、かつ、ノズル側面14及び成形型側面15の他方が射出方向に直交する方向の平面であっても適用可能である。周面16は射出方向を中心として射出方向の周方向に一周する面を構成する。周面16の射出方向に直交する方向より視認される形状は、円形、楕円形、角形のいずれでも適用可能である。
【0012】
第1空間部3の容積は、第2空間部4の容積よりも大きい(第1空間部3の容積>第2空間部4の容積)。例えば、図1に示すように、第1空間部3のノズル側面11及び成形型側面12が互いに平行し、第2空間部4のノズル側面14及び成形型側面15が互いに平行し、第1空間部3の周面13の外形と第2空間部4の周面16の外形とが同じ寸法である場合では、第1空間部3のノズル側面11と成形型側面12との対向する間隔H1が第2空間部4のノズル側面14と成形型側面15との対向する間隔H2よりも大きな寸法になっている(H1>H2)。
【0013】
第1通路部5は、ノズル8から射出された溶融樹脂を第1空間部3に導く通路であって、ノズル8の個数と同じ個数設けられるが少なくとも1つ設けられる。第1通路部5は、射出方向に平行に延びる直線状であって、本体部2のノズル側面17と第1空間部3のノズル側面11とに開口する。第1通路部5の射出方向に平行に延びる直線状の中心線は、射出方向に重なり合っている。
【0014】
第2通路部6は、第1空間部3に導かれた溶融樹脂を第1空間部3から第2空間部4に導く通路であって、1個の第1通路部5に対し複数設けられる。第2通路部6は、射出方向に平行に延びる直線状であって、第1空間部3の成形型側面12と第2空間部4のノズル側面14とに開口する。第2通路部6の射出方向に平行に延びる直線状の中心線は、射出方向の周りに射出方向から所定間隔離れて配置される。複数の第2通路部6のそれぞれは、射出方向に直交する方向に互いに同一間隔離れて配置され、射出方向上に配置さていない。例えば、図1では4個の第2通路部6を図示したが4個に限定されるものではなく、2個、又は、3個、又は、5個以上であっても適用可能である。
【0015】
第3通路部7は、第2空間部4に導かれた溶融樹脂を第2空間部4から成形型9に導く通路であって、1個の第2通路部6に対し複数設けられ、第3通路部7の個数は第2通路部6の個数よりも多い個数なっている。第3通路部7は、射出方向に平行に延びる直線状であって、第2空間部4の成形型側面15と本体部2の成形型側面18とに開口する。第3通路部7のうちの1個は、射出方向に平行に延びる直線状の中心線は射出方向に互いに重なり合っている。第3通路部7のうちの残りの複数は、射出方向の周りに射出方向から所定間隔離れて配置される。上記残りの複数の第3通路部7のそれぞれは射出方向に直交する方向に互いに同一間隔離れて配置される。例えば、図1では5個の第3通路部7を図示したが5個に限定されるものではなく、2個、又は、3個、又は、4個、又は、6個以上であっても適用可能である。
【0016】
第1通路部5と第2通路部6とが互いに前記射出方向に直交する方向に位置をずらして配置されたことにより、第1通路部5のノズル側面11への開口が第2通路部6の成形型側面12への開口と射出方向で向き合うことなく第1空間部3の成形型側面12に対向する。これにより、第1通路部5から第1空間部3に射出された溶融樹脂は、第1空間部3の成形型側面12の第2通路部6の開口していない部分に衝突して成形型側壁面12に沿って放射状に流れて第1空間部3の周面13の側に誘導されて第1空間部3に万遍なく行き渡り、第1空間部3から第2通路部6に導かれる。
【0017】
また、第2通路部6と第3通路部7とが互いに前記射出方向に直交する方向に位置をずらして配置されたことにより、第2通路部6のノズル側面14への開口が第3通路部7の成形型側面15への開口と向き合うことなく第2空間部4の成形型側面15に対向する。これにより、第2通路部6から第2空間部4に射出された溶融樹脂は、第2空間部4の成形型側面15の第3通路部7の開口していない部分に衝突して成形型側壁面15に沿って放射状に流れて第2空間部4の周面16の側に誘導されて第2空間部4に万遍なく行き渡り、第2空間部4から第3通路部7に導かれる。
【0018】
また、第1通路部5の射出方向に直交する方向の直径Φ1は、第2通路部6の射出方向Lに直交する方向の直径Φ2よりも大きい(Φ1>Φ2)。第2通路部6の射出方向に直交する方向の直径Φ2は、第3通路部7の射出方向に直交する方向の直径Φ3よりも大きい(Φ2>Φ3)。つまり、直径Φ1>直径Φ2>直径Φ3の関係になっている。
【0019】
図2を用いて、第1通路部5と第2通路部6と第3通路部7との相互関係について説明する。図2のA図に示すように、第2通路部6は1個の第1通路部5の周囲に第1通路部5から等距離で縦横に複数配置されており、第3通路部7は1つの第2通路部6の周囲に第2通路部6から等距離で縦横に複数配置されている。図2のA図では第1通路部5と第2通路部6と第3通路部7とのそれぞれから引き出し線と符号とを省略し、図2のA図における第1通路部5と第2通路部6と第3通路部7との違いについては図2のB図を参照のこと。
【0020】
図1に戻り、成形型9は、固定型21と可動型22とを備える。固定型21は、図示のされていない射出成型機の型取付装置の固定側取付板に固定される。可動型22は、図示のされていない射出成型機の型取付装置の稼働側取付板に固定される。可動型22が射出成型機の型締めで固定型21と合わされることにより、可動型21と固定型22との内部に成形空間部23が形成される。
【0021】
図1では成形空間部23が固定型21だけに設けられた構造を例示したが、成形空間部23が可動型21と固定型22とに渡り設けられた構造でも適用可能である。図1では、成形空間部23の個数として第3通路部7の個数と同じ個数の複数の場合を例示したが、1個の成形空間部23が複数の第3通路部7を共用しても適用可能である。図1の場合、複数の成形空間部23が複数の第3通路部7に1個ずつ対応するように、固定型21がホットランナー装置1の本体部2と共に型取付装置の固定側取付板に取り付けられる。
【0022】
ホットランナー装置1と成形型9とが型取付装置に取り付けられた状態において、射出成型機が型締めと射出と保圧と冷却と型開き及び製品取り出しを順に繰り返すことにより、成形品を連続的に成形することができる。
【0023】
先ず、型締めにより、可動型21と固定型22とが合わされ、可動型21と固定型22との内部に成形空間部23が形成される。次に、射出により、射出成型機のシリンダーに接続されたノズル8の先端部が第1通路部5のノズル側面17における開口に接触した後、ノズル8から溶融樹脂がホットランナー装置1に射出される。
【0024】
前記ノズル8から射出された溶融樹脂は、第1通路部5から第1空間部3に射出されて万遍なく行き渡り、第1空間部3内の溶融樹脂の圧力が均一となり、溶融樹脂が均一な圧力で第1空間部3から第2通路部6の全部を経由して第2空間部4に射出されて万遍なく行き渡る。そして、第2空間部4内の溶融樹脂の圧力が均一となり、溶融樹脂が均一な圧力で第2空間部4から第3通路部7の全部を経由して成形空間部23に射出される。つまり、ノズル8から射出された溶融樹脂の圧力を低くしても、当該ノズル8から射出された溶融樹脂が第1空間部3と第2空間部4とによる2段階の均一な圧力に調整されて複数の第3通路部7から成形空間部23に射出され、品質の良い成形品を多数個取りすることができるる。そして、保圧と冷却と型開きと製品取り出しとを経て成形品が得られる。
【0025】
図3に示した発明を実施するための形態に係るホットランナー装置1と図4に示した対比例とについて説明する。図3に示すように、発明を実施するための形態に係るホットランナー装置1では、第1通路部5からの矢印61で示す溶融樹脂の注入に対して、第1空間部3の射出方向に直交する方向の直径つまり断面積が第1通路部5の射出方向に直交する方向の直径つまり断面積よりも大きい。また、第1空間部3への流入口としての第1通路部5と第1空間部3から流出口としての第2通路部6とは、射出方向に平行する同じ軸上にない。そのため、第1空間部3に流入した矢印61で示す溶融樹脂は、第1空間部3のノズル側面11と成形型側面12と周面13とからなる壁面に当たる。第1空間部3の断面積は、第1通路部5よりも大きいので矢印61で示す溶融樹脂の流動の抵抗が少ない。そのため、矢印61で示す溶融樹脂は第1空間部3に急速に広がる。よって、第1空間部3から矢印61で示す溶融樹脂の第2通路部6に流出するタイミングのずれを小さいすることができる。
【0026】
また、第2空間部4でも前記第1空間部3と同様の効果を得られる。つまり、第2通路部6からの矢印62で示す溶融樹脂の注入に対して、第2空間部4の射出方向に直交する方向の直径つまり断面積が第2通路部6の射出方向に直交する方向の直径つまり断面積よりも大きい。また、第2空間部4への流入口としての第2通路部6と第2空間部4から流出口としての第3通路部7とは、射出方向に平行する同じ軸上にない。そのため、第2空間部4に流入した矢印62で示す溶融樹脂は、第2空間部4のノズル側面14と成形型側面15と周面16とからなる壁面に当たる。第2空間部4の断面積は、第1通路部5よりも大きいので矢印62で示す溶融樹脂の流動の抵抗が少ない。そのため、矢印62で示す溶融樹脂は第2空間部4に急速に広がる。よって、第2空間部4から矢印62で示す溶融樹脂の各第3通路部7に流出するタイミングのずれ及び流出する量に差が小さくなる。
【0027】
これに対し、図4に示した対比例は、第1通路部イから射出方向に直交する方向に延びる第2通路部ロを設け、第2通路部ロから射出方向に平行する方向に延びる第3通路部ハを設け、第3通路部ハから射出方向に直交する方向に延びる第4通路部ニを設け、第4通路部ニから射出方向に平行する方向に延びる第5通路部ホを設けるというに、トーナメント方式の形状になっている。矢印ト及びチで示す溶融樹脂は、第1通路部イから第2通路部ロと第3通路部ハと第4通路部ニとを順に経由して第5通路部ニに向かうが、各第1乃至第5通路部イからホのそれぞれにおける通路の長さや温度等の差により、各第1から第5通路部イからホに流れる流量に差が出て、射出口として複数の第4通路部ニから流出するタイミング及び流出する量に差が大きくなる。
【0028】
図5を用い、発明を実施するための形態に係るホットランナー装置1について説明する。ホットランナー装置1の本体部2が、板状の第1部材31と板状の第2部材32と板状の第3部材33とを備える。第1乃至第3部材31乃至33は、ノズル8の側から成形型9の側に順に配置される。第1部材31のノズル8の側と成形型9の側とに配置された2つの板面35及び36が矢印Lで示す射出方向に直交する方向に配置される。第1部材31の射出方向の位置する中心部には、第2通路部6が2つの板面35及び36に開口して設けられる。第1部材31は、2つの板面35及び36を有する板状に第1通路部5の形成された簡素な構造になっている。
【0029】
第2部材32のノズル8の側と成形型9の側とに配置された2つの板面37及び38が射出方向に直交する方向に配置される。第2部材32には、第2通路部6と第1凹部39と除去部40とが設けられる。第2通路部6は、第1凹部39の底面41と板面38とに開口する。第1凹部39は、第1空間部3を形成するためのものであって、板面37に開口し、板面37から第2部材32の内部への窪みとして設けられる。第1凹部39の板面37と底面41との間の寸法は、H1に設定されており、図1の周面13の寸法H1と同じ寸法になっている(H1=H1)。
【0030】
第2部材32における第1凹部39の側に位置する外周面42の板面37と段差部43との間の寸法は、H3に設定されている。除去部40は、第2部材32の第2通路部6の側の外周部を、第2部材32における第1凹部39の側に位置する外周面42から射出方向の側に向けて射出方向を中心として射出方向の周方向に一周する段差部43を構成するように除去した態様になっている。除去部40の板面38と段差部43との間の寸法は、H4に設定されている。第1凹部39の射出方向を中心として射出方向の周方向に一周する周面13は、図1の周面13を構成する。
【0031】
第2部材32は、2つの板面37及び38を有する板状に第2通路部6と第1凹部39と除去部40との形成された簡素な構造になっている。
【0032】
第3部材33のノズル8の側と成形型9の側とに配置された2つの板面44及び45が射出方向に直交する方向に配置される。第3部材33には、第3通路部7と第2凹部46と第3凹部47とが設けられる。第3通路部7は、板面45と第3凹部47の底面48とに開口する。
【0033】
第2凹部46は、第2部材32の第1凹部39の側を収容するためのものであって、板面44に開口し、板面44から第3部材33における成形型9の側の内部への窪みとして設けられる。第2凹部46の板面44と底面49との間の寸法は、H3に設定されており、外周面42の板面37と段差部43との間の寸法H3と同じ寸法である(H3=H3)。第2凹部46の矢印Lで示す噴出方向を中心として射出方向の周方向に一周する周面50は、第2部材32における第1凹部39の側を収容した場合に第2部材32の外周面42に接触し、相接する第2部材32に対す第3部材33の射出方向に直交する方向へのがたつきを防止する。
【0034】
第3凹部47は、第3部材33における第2通路部6の側を収容するためのものであって、第2凹部46の底面49に開口し、底面49から第3部材33における成形型9の側の内部への窪みとして設けられる。第3凹部47の射出方向を中心として射出方向の周方向に一周する周面51は、第2部材32における第2通路部6の側を収容した場合に第2部材32の除去部40に接触し、相接する第2部材32と第3部材33との間の射出方向に直交する方向へのがたつきを防止する。周面51の底面48と底面49との間の寸法は、H5に設定されており、除去部40の板面38と段差部43との間の寸法H4よりも大きい寸法である(H5>H4)。
【0035】
第3部材33は、2つの板面44及び45を有する板状に第3通路部7と第2凹部46と第3凹部47との形成された簡素な構造になっている。
【0036】
2つの板面35及び36を有する板状に第1通路部5の形成された簡素な構造の第1部材31と、2つの板面37及び38を有する板状に第2通路部6と第1凹部39と除去部40との形成された簡素な構造の第2部材32と、2つの板面44及び45を有する板状に第3通路部7と第2凹部46と第3凹部47との形成された簡素な構造の第3部材33とが次のように組み立てられることによってホットランナー装置1が構成される。
【0037】
具体的には、第2部材32の除去部40が第3部材33の板面44の側から第2凹部46を経由して第3部材33の第3凹部47に挿入されるのに伴い、除去部40と周面51とが射出方向に直交する方向にがたつかないよういに接触しかつ嵌め合わされ、また、第2部材32の第1凹部39の側が板面44の側から第2凹部46に挿入されるに伴い、周面42と周面50とが射出方向に直交する方向にがたつかないよういに接触しかつ嵌め合わされ、さらに、段差部43と底面49における射出方向を中心として射出方向の周方向に一周するように第3凹部47の開口を囲む段差部52とが射出方向で互いに接触し、第2部材32の板面37と第3部材33の板面44とが射出方向に直交する方向で面一になり、第2部材32の板面38と第3凹部47の底面48との間に寸法H5と寸法H4との差H5-H4による第2空間部4(図6参照)としての空間部が形成される。
【0038】
そして、第1部材31の板面36が射出方向に直交する方向で面一となった板面37と板面44とに射出方向で互いに接触するように、第1部材31が第2部材32と第3部材33とに被せられた後、第1部材31と第3部材33とが図示のされていない例えばボルトとナットとかなる固定具で射出方向に平行する方向に互いに結合されることにより、第1部材31と第2部材32と第3部材33とが図6に示す構造に組み立てられてホットランナー装置1となる。
【符号の説明】
【0039】
1 ホットランナー装置
2 本体部
3 第1空間部
4 第2空間部
5 第1通路部
6 第2通路部
7 第3通路部
8 ノズル
9 成形型
11 第1空間部3のノズル側面
12 第1空間部3の成形型側面
13 第1空間部3の周面
14 第2空間部4のノズル側面
15 第2空間部4の成形型側面
16 第2空間部4の周面
17 本体部2のノズル側面
18 本体部2の成形型側面
21 成形型9の固定型
22 成形型9の可動型
23 成形型9の形成空間部
31 第1部材
32 第2部材
33 第3部材
35 第1部材31の板面
36 第1部材31の板面
37 第2部材32の板面
38 第2部材32の板面
39 第2部材32の第1凹部
40 第2部材32の除去部
41 第1凹部39の底面
42 第2部材32の外周面
43 第2部材32の段差部
44 第3部材33の板面
45 第3部材33の板面
46 第3部材33の第2凹部
47 第3部材33の第3凹部
48 第3凹部47の底面
49 第2凹部46の底面
50 第2凹部46の周面
51 第3凹部47の周面
52 第3部材33の段差部
61 溶融樹脂の流れを示す矢印
62 溶融樹脂の流れを示す矢印
H1 第1空間部3のノズル側面11と成形型側面12との対向する間隔
H2 第2空間部4のノズル側面14と成形型側面15との対向する間隔
L 溶融樹脂の射出方向を示す矢印
Φ1 第2通路部6の直径
Φ2 第2通路部6の直径
Φ3 第3通路部7の直径
イ 対比例の第1通路部
ロ 対比例の第2通路部
ハ 対比例の第3通路部
ニ 対比例の第4通路部
ホ 対比例の第5通路部
ト 対比例の溶融樹脂の流れを示す矢印
チ 対比例の溶融樹脂の流れを示す矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6