(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104471
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】加熱容器
(51)【国際特許分類】
C02F 1/04 20060101AFI20220701BHJP
F03G 6/00 20060101ALI20220701BHJP
F24S 20/20 20180101ALI20220701BHJP
F24S 90/00 20180101ALI20220701BHJP
【FI】
C02F1/04 A
F03G6/00 511
F24S20/20
F24S90/00 210
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020220072
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】521045782
【氏名又は名称】八木 崇人
(72)【発明者】
【氏名】八木 崇人
(72)【発明者】
【氏名】八木 宏樹
【テーマコード(参考)】
4D034
【Fターム(参考)】
4D034AA01
4D034BA03
4D034CA12
4D034DA01
(57)【要約】
【課題】 淡水不足の世界的地域は依然として多い。海には大量の水分があるのに、生活利用・産業利用される地域及び海水量は少ない。該当地域における水不足解消を主眼として、太陽熱を利用して淡水と電力及び塩を供給する内容である。
【解決手段】タワー型太陽熱発電を用い太陽熱をヘリオスタット(反射鏡)から集熱塔(タワー)に集め、熱転送・光転送により地上に下ろし、その熱を加熱容器に当てる。加熱容器内部の海水等水分は、沸点を超え蒸気となる。蒸気は加熱容器上部から蒸気流出管へと流れ、冷えて淡水・水となる。
蒸気流出管の手前に発電用回転物(風車、プロペラ、タービン等)を設置し、その回転から電力を得る。海水を蒸発させた場合、加熱容器内部に塩分が多量に残り、精製し塩も量産できる。初期設置以降は、環境負荷の著しく低い形で淡水・電力・塩の三成果物が量産できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光・太陽熱を集熱し、海水等水分の淡水化および同時に蒸気圧から電力を得ること。
集めた熱を加熱容器に集中し、送水管から出される一定量の海水等水分が、加熱容器内部で太陽照射時間中、沸騰されることで、蒸気を大量発生させ、蒸気流出管へ蒸気を導く。蒸気流出管の先で、蒸気は冷え、淡水となった水分を貯蔵することが出来る。蒸気流出管の加熱容器出口部分に、発電用回転物(風車、プロペラ、タービン等)を設置して、その回転から発電し電力を得る。
【請求項2】
海水から淡水化した場合、太陽照射時間の終えた加熱容器には、塩分を主体とした残留物が残る。取り出して塩精製工程に入り、連日の塩生産が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱を利用した淡水化技術及びその過程で出来る蒸気圧を利用した発電技術であり、かつ副産物として塩も製造できる太陽熱利用による淡水化と同時発電及び塩製造(オプション)の目的化プラント(工場)の発明である。
【背景技術】
【0002】
太陽熱発電には、タワー型(ヘリオスタット使用)、トラフ型、フレネル型、デッシュ型等がある。本発明は、ヘリオスタット(反射鏡)を使用するタワー型であり太陽熱利用による淡水化と同時発電及び塩製造である。
【0003】
従来の太陽熱発電では、発電・蓄電が最終成果物として得られるプラントである(例えば、非特許文献1参照。)。本発明は、海水等水分を淡水化して水を得ること、その過程で発電を得ること、及び(必要に応じ)塩精製が可能なプラントである。
【0004】
太陽熱の集熱には、タワーに熱集中して熱気を下部に送る従来方法(例えば、非特許文献1参照。)や、集熱上部に光を集中させ下部に反射で転送するビームダウン型太陽集光装置(例えば、特許文献1参照。)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】書籍「図解新エネルギー早わかり」、中経出版、早稲田聡著、2011年、p.83
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のタワー型太陽熱発電には、次のような欠点があった。
(イ)電気は量産できるが、淡水及び水は生産しない。
一方、従来の淡水化技術には、次のような欠点があった。
(ロ)水・淡水は精製できるが電気は製造しない。
(ハ)従来の逆浸透圧法(RO)や薬液投入淡水化では、大量の精度の高い淡水を得にくい。
技術進展しているものの世界では淡水の不足する地域が依然として多い。
本発明では、海水等水分という莫大にある資源を低コストで淡水化量産し、かつその工程において、環境負荷の著しく低い方法で電力及び塩を量産できることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
太陽光・太陽熱を集熱し、海水等水分の淡水化および同時に蒸気圧から電力を得て、副産物として塩を精製する。
集めた熱を加熱容器に集中し、送水管から出される一定量の海水等水分が、加熱容器内部で太陽照射時間中、沸騰されることで、蒸気を大量発生させ、蒸気流出管へ蒸気を導く。蒸気流出管の先で、蒸気は冷え、淡水となった水分を貯蔵することが出来る。
蒸気流出管の加熱容器出口部分に、発電用回転物(風車、プロペラ、タービン等)を設置して、その回転から発電し、電力を得る。水分等は気化・蒸発する際にその体積が約1700倍となることから必要十分な回転が得られる。
加熱容器内部には、海水を使用して蒸発させた場合、塩分を主体とした残留物が残るので、精製し多量の塩を生産できる。(海水の平均塩分濃度は約3.5%である。)
上記一連の工程により、環境負荷の低い形で多量の良質な淡水、電力及び塩の量産が可能となる。なお、塩を精製しない場合、生態系及び環境変化を懸念して残留物は、海域に戻すことなく保管・貯蔵が必要となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明を実施することによる効果は、淡水と電力及び塩を同時に得ることで、その波及効果は大きい。具体的に列挙すると、該当地域での良質な飲料水/上水道の確保/生活用水の確保/工業用農業用水の確保/農畜産物の増産/緑化地域の拡大/電力供給/塩供給等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
内容が分かり易いよう成果物のできる工程順に記載する。
(イ)プラントの設置場所
晴天日が多く、海や自然水分の近い場所及び淡水や電力を必要とする地域が良く、気象データや太陽熱発電の設置・検討箇所から慎重に選定できる。
(ロ)海水等水分の貯水タンクへの汲み上げ
(ハ)貯水タンクから送水タンクへの送水
貯水タンクには沈殿物・浮遊物も入るので、中間層の比較的綺麗な海水等水分を送水タンクに送る。
(ニ)送水タンクから送水管へ海水等水分を圧力等で送る。
(ホ)送水管中の海水等水分を、加熱容器に入る前段階で加温する。
具体的には、太陽光発電トラフ型に見られる集光ミラーを用いたり、後述する蒸発蒸気の熱を利用(2つの管の近接等)したりして加温する。加熱容器に入る前に加温することで蒸発効率を上げる行為であるが、ヘリオスタットからの十分な集熱があれば、この工程は必ずしも必要としない。
(ヘ)(加熱容器の前に)ヘリオスタット・反射鏡について
太陽光を受け反射するヘリオスタットには、太陽追随型稼働装置が必要である。集熱量は、ヘリオスタットの枚数及び面積に比例して増減する。
(ト)ヘリオスタットからの集光集熱先について
従来型のタワーに集熱しそこから熱気を加熱容器に送る方法、並びにビームダウン型太陽集光装置(例えば、特許文献1参照。)を用いて送る方法等がある。
(チ)加熱容器について
加熱容器自体は、疲労やアクシデント及び交換用に備え複数個用意する。
前項(ト)にある集熱方式の違いによって大きく形状は2種類となる。
熱気を受ける場合は、〔
図1〕加熱容器(断面図・容器下方集熱時)のようになり、ビームダウン型を用いる場合は、〔
図2〕加熱容器(断面図・容器上方集熱時)のようになる。
(リ)加熱容器の特徴について
加熱容器は、加熱する部分(主に下部)と蒸気滞留部分(主に上部)とに分けて使用した方が次の点で合理的である。下部は集熱及び加熱を主目的とし、上部はその沸騰した蒸気が流れ出ていくことが主目的となる。下部には塩分を主体とする残留物が残るので清掃及び取り出しやすい方が良い。上部は蒸気の流れとなるので視認性があった方が良く、発電用回転物(風車、プロペラ、タービン等)の動作確認も出来る。
発生した蒸気が流出する蒸気流出管は、1本にして蒸気流出圧力を高め発電効率を上げる。
(ヌ)発電について
加熱容器上部の発電用回転物(風車、プロペラ、タービン等)が蒸気によって回転することにより、発電・蓄電する。
(ル)淡水について
蒸気流出管を流れていく蒸気は、常温に近づくにつれ淡水・お湯となって蒸気流出管を流れ、淡水タンクへと溜まっていく。
(ヲ)加熱容器内の残留物について
太陽照射時間後に塩分主体の残留物を取り除き、塩精製工程か残留物貯留工程に入る。
(ワ)清掃後の加熱容器について
複数個用意した過熱容器は、翌日使用の準備に事前に加温しておく。それは太陽照射開始から蒸気の発生効率を上げるためである。なお、加温方法については、幾通りの方法があるのでここでは明記しない。
一方で、太陽照射時間後も化石燃料等による加熱で蒸気発生は可能であるが、環境配慮型の一連の工場なので、ここでは考慮しない。
上述の発明を実施するための形態により、最終成果物の淡水・電力・塩が効率的に生産出来る。
【実施例0012】
ヘリオスタットによるタワー型太陽熱発電は現存し活躍しつつも、本発明による加熱容器を使用した三つの成果物(淡水・電力・塩)生産方式はまだ無い。
太陽光と太陽熱を集め、数百度の高温を作成することがタワー型太陽熱発電で可能なため、その加熱対象を海水等水分に焦点をあて、淡水と電力及び塩の三成果物を得る方法なので、充分に利用可能性があり実現可能性も極めて高い。
なお、太陽熱では数系統の太陽熱発電が実現稼動しており、蒸気においては歴史的に蒸気機関が産業革命を起こした経緯もあり、本発明による産業上の利用可能性は高いものである。