(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104474
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】大型の魚の脊髄を吸引し除去する方法
(51)【国際特許分類】
A22C 25/00 20060101AFI20220701BHJP
A22B 3/08 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
A22C25/00 Z
A22B3/08
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020220092
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】520037566
【氏名又は名称】杉内 博之
(72)【発明者】
【氏名】杉内 博之
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011KA01
4B011KK04
(57)【要約】
【課題】 現在の大型の魚の神経弓門内の脊髄を破壊除去する方法は、脊髄のほとんどを破壊することが困難である。また吸引して除去する方法も提案されているが長い脊髄は吸引して除去できない。よって、信号が身肉に伝搬し続けるので、魚の旨味のもととなるATPの減少は続き美味しさが無くなっていくことになる。
【解決手段】 本発明は、吸引器1に接続されたチューブ4が神経弓門内7に差し込まれ、脊髄10を直接吸引するので大型の魚の長い脊髄10であってもそのほとんどを除去できる。また破壊でなく除去する方法なので作業に個人差が生じにくい。よって魚の旨味のもととなるATPの減少は極力抑えられ、より美味しい魚を提供できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引器に接続されたチューブを用い、大型の魚の脊髄を吸引し除去する方法であって、
前記チューブが、前記魚の頭蓋側及び尾側の両方あるいはいずれかの一方から神経弓門内に差し込まれ、前記チューブの先端から前記脊髄を吸引しつつ前記神経弓門内の奥へ押し込まれることを特徴とする脊髄を吸引し除去する方法。
【請求項2】
前記チューブが、前記魚の頭部に開けられた体表から脳函内に通じる穴を通過し、前記脳函と接続している神経弓門内に差し込まれることを特徴とする請求項1の脊髄を吸引し除去する方法。
【請求項3】
前記穴の全長より長いパイプが、前記穴に挿入されていることを特徴とする請求項2の脊髄を吸引し除去する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型の魚の旨味成分の減少を遅延させるために、魚の脊髄を吸引し除去する方法に関するものである。(大型魚は全長1.5メートルを超え重量は30KG以上を想定)
【背景技術】
【0002】
神経弓門の中の脊髄を破壊することで、脊髄を介して魚の身肉に伝わる脳からの信号を断ち、魚の旨味成分イノシン酸の元となるATP(アデノシン3リン酸)の減少を遅延させ、その効果で魚の旨味を長持ちさせることは周知の通りである。その方法は、刃物等を魚の脳に突き刺して破壊し、神経弓門の中に針金を差し込むことで脊髄を破壊するのが一般的である。針金を使わない技術として高圧ガスや水で脊髄を押し出す方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
刃物等を魚の脳に突き刺し、その後、針金を神経弓門の中に差し込む方法は、脊髄を破壊することが出来るが部分的に未破壊のものが残る。未破壊の脊髄が残った分だけ、信号が伝搬し続けるので、魚のATPの減少は続くことになる。大型の魚は脊髄の径が10mm程度であり針金では破壊不足になりやすい。また、この作業は破壊の程度に作業者の個人差が生じやすい問題もある。
【0006】
神経弓門の中の脊髄を除去する技術として、ノズルから高圧ガスや水を魚の尾側等から神経弓門の中に噴射し脊髄を除去する方法があるが、大型の魚の脊髄は長いので十分に脊髄が除去できない。また脊髄には枝分かれする多くの神経が繋がっており除去を妨げる。
水を神経弓門の中へ噴射する方法は、神経弓門から水が身肉へ入る問題があり、商品価値が下がる。
【0007】
特許文献1及び特許文献2は、吸引することで脊髄を除去するものであるが、大型の魚の脊髄は長いので神経弓門の端から吸引しても部分的にしか除去できない。
【0008】
以上述べたように、従来方法は大型の魚の脊髄の破壊及び除去が不十分であり、別の問題として水が身肉に入る等の問題もある。また細い針金では作業に個人差が生じやすい。
本発明は、大型の魚の脊髄のほとんどを吸引して除去でき、水が身肉に入る等の問題もなく、作業に個人差が出にくい方法を提供するものでもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、吸引器に接続されたチューブを用い、大型の魚の脊髄を吸引し除去する方法であって、前記チューブが、前記魚の頭蓋側及び尾側の両方あるいはいずれかの一方から神経弓門内に差し込まれ、前記チューブの先端から前記脊髄を吸引しつつ前記神経弓門内の奥へ押し込まれることを特徴とする脊髄を吸引し除去する方法である。
【0010】
本発明は、前記チューブが、前記魚の頭部に開けられた体表から脳函内に通じる穴を通過し、前記脳函と接続している神経弓門内に差し込まれることを特徴とする請求項1の脊髄を吸引し除去する方法である。
【0011】
本発明は、前記穴の全長より長いパイプが、前記穴に挿入されていることを特徴とする請求項2の脊髄を吸引し除去する方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、吸引器に接続されたチューブを用い、大型の魚の脊髄を吸引し除去する方法であって、前記チューブが、前記魚の頭蓋側及び尾側の両方あるいはいずれかの一方から神経弓門内に差し込まれ、前記チューブの先端から前記脊髄を吸引しつつ前記神経弓門内の奥へ押し込まれることを特徴とする脊髄を吸引し除去する方法なので、チューブの先端が直接脊髄に接触して吸引するので、吸引除去が難しい大型の魚の長い脊髄であっても除去でき、さらに神経弓門内の奥へ奥へと押し込まれるので脊髄のほとんどを除去できる。またほとんどの脊髄を除去する方法なので作業に個人差がでにくい。水を魚の体内に噴射する方法ではないので水が身肉に入り品質を低下させることも無い。
【0013】
本発明は、前記チューブが、前記魚の頭部に開けられた体表から脳函内に通じる穴を通過し、前記脳函と接続している神経弓門内に差し込まれることを特徴とする請求項1の脊髄を吸引し除去する方法であり、魚の頭部を切断する必要がないので市場での魚の価値が下がらない。
【0014】
本発明は、前記穴の全長より長いパイプが、前記穴に挿入されていることを特徴とする請求項2の脊髄を吸引し除去する方法なので、空気がパイプとチューブの隙間から陰圧となった脳函へ流れ込み易くなり、さらには脊髄が無くなった神経弓門を通りチューブの先端まで到達するので、神経弓門内とチューブ内との差圧が大きくなり、先端から脊髄が吸引されやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】a)第二の実施例であるパイプの正面図 b)第二の実施例であるパイプの側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
下記の実施例をもって、発明を実施するための形態の説明も兼ねる。
【実施例0017】
図1は、本発明の第一の実施例を説明する図である。魚の頭部に脳函8内へ通じる穴5が開けられていて、吸引器1に接続されたチューブ4がその穴5を通して脳函8へ繋がっている神経弓門内7へ差し込まれる。(この段階で脳の一部も吸引されることが多い)チューブ4の先端16から脊髄10を吸引しつつさらに奥へチューブ4が押し込まれていく。チューブ4が脊髄10で詰まる場合は、一度に多くの脊髄10を吸引せず、チューブ4を押したり引いたりしながら脊髄10を小分けにし、吸引して除去しながら、魚の尾12付近まで押し込むことにより、ほとんどの脊髄10を吸引して除去できる。この作業では尾12側の11で神経弓門7と脊髄10を切断しておけば、神経弓門7が大気にさらされて吸引除去がやり易くなる。切断していない場合でも、穴5から空気が入るので吸引できる。(尾12側を切断せず神経弓門7が大気に晒されていなくても、吸引済の神経弓門7に出来た隙間(
図3の22)から空気が入ってくるので神経弓門内7とチューブ4内との差圧が大きくなり脊髄10が吸引できる)
また尾12側から神経弓門7内にチューブを差し込むことで脊髄10を吸引して除去できるが、図での説明は省く。(この時、尾は11で切断されているが、頭部又は尾を切り落とし、断面の神経弓門に直接チューブを差し込む方法は魚の商品としての価値が下がる)
チューブ4の材質はPTFEなどの自在に曲がる樹脂が適しており、チューブ4の外径は4mm~30mm程度が想定される。
【0018】
図3は、本発明の第二の実施例を説明する頭部の拡大図である。穴5にパイプ17が挿入されているのでパイプ17とチューブ4の隙間19から空気が脳函8内に流入する。空気が安定して流入するようにパイプ17の長さは穴5の長さ20より長くなければならない。またパイプ17の内径はチューブ4の外径より大きくなければならない。空気がパイプ17とチューブ4の隙間19から陰圧となった脳函8へ流れ込み易くなり、さらには脊髄10が無くなった神経弓門7内を通りチューブ4の先端16まで到達するので、神経弓門7内とチューブ4内との差圧が大きくなり、先端16から脊髄10が吸引されやすくなる。(第一の実施例で頭部に開けられた穴5が小さく、穴5とチューブ4とが密着し空気が脳函へ入らない場合の解決手段である)
【0019】
図6は、魚の脳を破壊する作業(脳殺)とパイプ挿入を同時に行うための締め具の実施例である。(
図5にパイプ
図4に魚の締め具を示し、
図6はそれらを合わせたものであり、脳を破壊すると同時にパイプを挿入できる)作業者が締め具の把持部23を握り、先端25を魚の脳函内まで刺す。同時にパイプ17も差し込まれることになる。その後把持部23のみ引けば、パイプ17は魚の頭に残される。
図3に示す状態となり、穴を開ける作業とパイプを挿入する作業が同時に行えるので作業時間が短縮できる。