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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104491
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】打撃方法及び打撃装置
(51)【国際特許分類】
   B25D 9/16 20060101AFI20220701BHJP
   E02D 7/06 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B25D9/16
E02D7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055370
(22)【出願日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2020219326
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500435470
【氏名又は名称】有限会社丸高重量
(71)【出願人】
【識別番号】521049458
【氏名又は名称】俣木鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 節夫
【テーマコード(参考)】
2D050
2D058
【Fターム(参考)】
2D050CB11
2D058AA16
2D058CB03
2D058CB04
2D058CC07
(57)【要約】
【課題】空気圧の瞬発力を生かしつつ、設備面及び構造面において簡便であり、対象物の反発を抑制可能な打撃方法及び打撃装置を提供する。
【解決手段】打撃方法は、圧縮空気タンクATから打撃装置10に設けられているシリンダ20のキャップ側空間Aに圧縮空気を供給するステップAと、高圧油圧ポンプHPからシリンダ20のロッド21側空間Oに作動油を送油し、ロッド21に接続された打撃部50を持ち上げるステップBと、シリンダ20のロッド21側空間Oから作動油タンクOTに作動油を返油し、打撃部50を落下させるステップCと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃方法であって、
圧縮空気タンクから打撃装置に設けられているシリンダのキャップ側空間に圧縮空気を供給するステップAと、
高圧油圧ポンプから前記シリンダのロッド側空間に作動油を送油し、前記ロッドに接続された打撃部を持ち上げるステップBと、
前記シリンダのロッド側空間から作動油タンクに前記作動油を返油し、前記打撃部を落下させるステップCと、を備える、
ことを特徴とする打撃方法。
【請求項2】
前記ステップBにおいて、前記シリンダのキャップ側空間の空気圧と前記打撃部の荷重圧の合計を上回る押圧力をもって前記高圧油圧ポンプから前記シリンダのロッド側空間に前記作動油を送油する、ことを特徴とする請求項1に記載の打撃方法。
【請求項3】
前記ステップCにおいて、前記作動油を二段階に分けて返油することとし、第1段階で油圧路に設けられたサブバルブを開放して前記打撃部を自然落下させ、第2段階で前記油圧路に設けられたメインバルブを開放して自然落下を開始した前記打撃部を加速させる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の打撃方法。
【請求項4】
前記打撃装置は、杭打設装置、破砕装置、鍛造装置、プレス装置及び杵餅付き製造装置の1つであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の打撃方法。
【請求項5】
打撃装置であって、
シリンダと、
前記シリンダ内で往復運動するロッドと、
前記ロッドに接続された打撃部と、を備え、
前記シリンダのキャップ側空間に圧縮空気が供給され、
前記シリンダのロッド側空間に高圧の作動油が送油される、
ことを特徴とする打撃装置。
【請求項6】
前記作動油は、前記シリンダのキャップ側空間の空気圧と前記打撃部の荷重圧の合計を上回る押圧力をもって高圧油圧ポンプから前記シリンダのロッド側空間に送油される、ことを特徴とする請求項5に記載の打撃装置。
【請求項7】
前記作動油は、二段階に分けて返油され、第1段階で油圧路に設けられたサブバルブを開放して前記打撃部を自然落下させ、第2段階で前記油圧路に設けられたメインバルブを開放して自然落下を開始した前記打撃部を加速させる、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の打撃装置。
【請求項8】
杭打設装置、破砕装置、鍛造装置、プレス装置及び杵餅付き製造装置の1つであることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の打撃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打撃方法及び打撃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な構築物の建設において、基礎工事として、鋼管杭など棒状の剛性体が地中に埋設される。これら剛性体を埋設する手段としては、現場で穴を掘削し鉄筋を挿入してコンクリートを流し込む場所打ち杭工法や、既成のコンクリートや鋼管製の杭を地中に挿入する既成杭工法(挿入する手段によって、埋め込み工法、打ち込み工法、回転圧入工法などあり)及びそれらに適合した各種装置が用いられている。これら各種の工法の中で剛性体を地中に打ち込む態様のものにおいても、種々の杭打設方法及び杭打設装置が使用されている。打ち込む態様の場合、油圧を利用した油圧式の杭打設装置及び杭打設方法が一般に用いられる。
【0003】
油圧式の杭打設装置100の一例を図2に示す。杭打設装置100は、上部構造として、シリンダ200と、バルブ・ユニット300と、アキュムレータ700(第1アキュムレータ710,第2アキュムレータ720)を備えている。シリンダ200の内側には上下に往復運動するロッドが設けられている。上部構造の下部には、ケーシング900が固定されており、その中には、近接スイッチ400と、ロッドに固定されたラムウエイト500、クッション600(ラム・クッション610,キャップ・クッション620)が設けられている。バルブ・ユニット300には油圧路800を介して高圧油圧ポンプHPが接続されており、高圧油圧ポンプHPやバルブ・ユニット300は、電気的に接続されたコントロール・ボックスCBによって適宜に制御される。シリンダ200内のロッドは、キャップ側空間及びロッド側空間のいずれにも高圧の作動油が送油されることによって上下に往復運動を行うが、その動作は、本実施形態と対比しつつ後述することとする。
【0004】
油圧式の杭打設装置100以外には、打ち込みの工程において電柱などの剛性体を曲げることなく地中に打ち込むことができる打込装置として、油圧ピストンと空圧ピストンを直列的に併設したものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、油圧ポンプ装置から供給される油圧によって油圧ピストンを用いて上下位置変更可能にしたチャック本体で剛体棒の外周面を強く把持し、この状態で、空圧供給部から供給される空気圧によって空圧ピストンを前進移動させて打撃受筒の打撃面に衝突させる技術を開示しており、地面が固い場合などでは、打ち込み力をチャック本体と剛体棒との間の摺動などで逃がすことができるので、剛体棒を曲げることなく地中に打ち込むことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-130724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、油圧式の場合、油圧路に設けられているアキュムレータ内で圧縮された空気圧と高圧油圧ポンプによるポンプ圧によってシリンダのキャップ側空間に作動油が送油されるが、空気圧の瞬発力が十分に生かされないという問題がある。また、特許文献1に開示されている杭打設装置では、油圧ピストンと空圧ピストンを併設しており、構造が複雑であるという問題がある。さらに、いずれの杭打設装置も、ラムウエイトの重量に対する反力によって生じる杭の抜け上りへの対策が講じられていないという問題がある。
【0007】
以上では杭打設装置について説明したが、油圧を用いて対象物に打撃を加えて仕事をする他の各種の打撃装置についても、それぞれの使用態様において同様又は同種の問題があり得る。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、空気圧の瞬発力を生かしつつ、設備面及び構造面において簡便であり、対象物の反発を抑制可能な打撃方法及び打撃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の第1の観点は、打撃方法であって、圧縮空気タンクから打撃装置に設けられているシリンダのキャップ側空間に圧縮空気を供給するステップAと、高圧油圧ポンプから前記シリンダのロッド側空間に作動油を送油し、前記ロッドに接続された打撃部を持ち上げるステップBと、前記シリンダのロッド側空間から作動油タンクに前記作動油を返油し、前記打撃部を落下させるステップCと、を備える、ことを特徴とする。
【0010】
(2)上記(1)の構成において、前記ステップBにおいて、前記シリンダのキャップ側空間の空気圧と前記打撃部の荷重圧の合計を上回る押圧力をもって前記高圧油圧ポンプから前記シリンダのロッド側空間に前記作動油を送油する。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記ステップCにおいて、前記作動油を二段階に分けて返油することとし、第1段階で油圧路に設けられたサブバルブを開放して前記打撃部を自然落下させ、第2段階で前記油圧路に設けられたメインバルブを開放して自然落下を開始した前記打撃部を加速させる。
【0012】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つの構成において、前記打撃装置は、杭打設装置、破砕装置、鍛造装置、プレス装置及び杵餅付き製造装置の1つである。
【0013】
(5)本発明の第2の観点は、打撃装置であって、シリンダと、前記シリンダ内で往復運動するロッドと、前記ロッドに接続された打撃部と、を備え、前記シリンダのキャップ側空間に圧縮空気が供給され、前記シリンダのロッド側空間に高圧の作動油が送油される、ことを特徴とする。
【0014】
(6)上記(5)の構成において、前記作動油は、前記シリンダのキャップ側空間の空気圧と前記打撃部の荷重圧の合計を上回る押圧力をもって高圧油圧ポンプから前記シリンダのロッド側空間に送油される。
【0015】
(7)上記(5)又は(6)の構成において、前記作動油は、二段階に分けて返油され、第1段階で油圧路に設けられたサブバルブを開放して前記打撃部を自然落下させ、第2段階で前記油圧路に設けられたメインバルブを開放して自然落下を開始した前記打撃部を加速させる。
【0016】
(8)上記(5)から(7)のいずれか1つの構成において、打撃装置は、杭打設装置、破砕装置、鍛造装置、プレス装置及び杵餅付き製造装置の1つである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、空気圧の瞬発力を生かしつつ、設備面及び構造面において簡便であり、対象物の反発を抑制可能な打撃方法及び打撃装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る打撃装置を説明する図である。
図2】従来の油圧式の打撃装置を説明する図である。
図3】従来の油圧式の打撃装置の油圧系統について説明する図であって、図3(a)はシリンダ内のロッドが上昇する場合を、図3(b)は同じくロッドが下降する場合を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明において、「上下」という方向を現す記載については、打撃装置10を鉛直方向に配置した場合を想定した方向を示している。打撃装置10は鉛直方向に限らず、斜め鉛直方向や水平方向に配置してもその機能を発揮するものであり、「上下」という方向は各要素間の相対的位置関係として理解されたい。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。
【0020】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、第1実施形態に係る打撃装置10について説明する。第1実施形態に係る打撃装置10は「杭打設装置」であり、基本的構成要素として、シリンダ20と、シリンダ20内で往復運動するロッド21と、ロッド21に接続された打撃部としてのラムウエイト50と、を備えている。
【0021】
ロッド21の上部には、クッションプランジャ22を介してピストン23が設けられている。さらに、第1実施形態においては、ピストン23の上部にはピストンヘッド24から位置センサ26(不図示)に繋がるワイヤ25が設けられている。位置センサ26は、ラムウエイト50の落下高さを制御するために用いられる。シリンダ20のキャップ側(ピストン23を挟んでロッド21の反対側)空間Aには、圧縮空気タンクATから空気供給口27を経由して圧縮空気が供給される。
【0022】
シリンダ20の下部には、ケーシングPが固定されており、ロッド21及びラムウエイト50は、ケーシングPの内側に位置している。シリンダ20の底部には、作動油供給口28を介して作動油をシリンダ20内に送油、又はシリンダ20外へ返油する油圧路80が接続されている。シリンダ20のロッド21側空間Oには、高圧油圧ポンプHPから高圧の作動油が送油される。その際、作動油は、シリンダ20のキャップ側空間Aの空気圧とラムウエイト50の荷重圧の合計を上回る押圧力をもって、高圧油圧ポンプHPからシリンダ20のロッド21側空間Oに送油される。
【0023】
油圧路80には、油圧源である高圧油圧ポンプHP及び作動油を貯留しておく作動油タンクOTとの間において、バルブ30が少なくとも3つ設けられている。まず、高圧油圧ポンプHPとシリンダ20は主油圧路81によって接続されており、その高圧油圧ポンプHP寄りには作動油の送油返油を制御するマスターバルブ31が設けられている。マスターバルブ31からは、作動油タンクOTへ第1分岐油圧路82が延在している。次に、主油圧路81のマスターバルブ31からみてシリンダ20寄りには第2分岐油圧路83がメインバルブ32(タイマーバルブが好適に用いられる)を経由して、さらにシリンダ20寄りには第3分岐油圧路84がサブバルブ33を経由して、作動油タンクOTへ延在している。
【0024】
なお、図1では図示していないが、高圧油圧ポンプHP及びマスターバルブ31、メインバルブ32、サブバルブ33を含む油圧系統を構成する各要素は、別に電気的に接続される制御系統によって制御される。
【0025】
作動油は、マスターバルブ31が開放、メインバルブ32とサブバルブ33が閉鎖された状態でシリンダ20のロッド21側空間Oに供給され、ロッド21ひいてはラムウエイト50を上方に持上げる。一方、ラムウエイト50を下方に向かって打ち込むときには、作動油は、二段階に分けて作動油タンクOTへ返油される。第1段階では、第3分岐油圧路84に設けられたサブバルブ33を開放してラムウエイト50を自然落下させ、第2段階で第2分岐油圧路83に設けられたメインバルブ32を開放して自然落下を開始したラムウエイト50を加速させる。ラムウエイト50は、シリンダ20のロッド21側空間Oが全縮小する前に杭を打撃する。
【0026】
これによって、シリンダ20内において、シリンダ20のキャップ側空間A内の圧縮空気エネルギと、シリンダ20のロッド21側空間O内の油圧圧力エネルギを組み合わせた打ち込みが可能となる。具体的には、ラムウエイト50は、作動油の返油によって圧縮空気の瞬発力を享受して下方に落下するが、その際、落下開始と同時に加速を与えるとラムウエイト50の重量が反力となって杭の上方への抜け上りが生じる。そこで、第1実施形態に係る杭打設装置10では、サブバルブ33をまず開放してラムウエイト50を瞬間的に自然落下させ、その後にメインバルブ32を開放してすでに自然落下を開始したラムウエイト50を加速させることにより、反力ひいては杭の抜け上りを回避することが可能となる。
【0027】
ここで、杭打設装置10の仕様の一例を示す。以下に示す数値はあくまで一例であり、第1実施形態はこれらの数値に限定されるものではない。
・最高圧力:7MP
・シリンダ20の内径,長さ:Φ50,500mm
・ロッド21の外径,長さ:Φ35,250mm
・上下減速機能:10~15mm
・圧縮空気タンクATの出力:10~50kW
・ラムウエイト50の重量:100~2000kg
・サブバルブ33の開放時間:約0.1秒
・油圧路80の規格:主油圧路81及び第2分岐油圧路83は6分油圧ホース、第1分岐油圧路82及び第3分岐油圧路84は3分油圧ホース
【0028】
次に、第1実施形態に係る杭打設工法について説明する。杭打設工法は、圧縮空気タンクATから杭打設装置10に設けられているシリンダ20のキャップ側空間Aに圧縮空気を供給するステップAと、高圧油圧ポンプHPからシリンダ20のロッド21側空間Oに作動油を送油し、ロッド21に接続されたラムウエイト50を持ち上げるステップBと、シリンダ20のロッド21側空間Oから作動油タンクOTに作動油を返油し、ラムウエイト50を落下させるステップCと、を備える。
【0029】
ステップBにおいては、シリンダ20のキャップ側空間Aの空気圧とラムウエイト50の荷重圧の合計を上回る押圧力をもって高圧油圧ポンプHPからシリンダ20のロッド21側空間Oに作動油を送油する。
【0030】
ステップCにおいては、作動油を二段階に分けて返油することとし、第1段階で油圧路80(第3分岐油圧路84)に設けられたサブバルブ33を開放してラムウエイト50を自然落下させ、第2段階で油圧路80(第2分岐油圧路83)に設けられたメインバルブ32を開放して自然落下を開始したラムウエイト50を加速させる。
【0031】
ここで、従来の油圧式の杭打設装置100の動作と対比しつつ、第1実施形態に係る杭打設工法について説明を加える。
【0032】
図3は、「背景技術」で説明した従来の油圧式の杭打設装置100の油圧系統について説明する図であって、図3(a)はシリンダ200内のロッド210が上昇する場合を、図3(b)は同じくロッド210が下降する場合を、それぞれ示している。なお、図中、白太線矢印が作動油の流れを示している。
【0033】
杭打設装置100では、まず、図3(a)に示すように、作動油がシリンダ200のロッド210側空間に送油されることによってロッド210が上昇する。すなわち、バルブ310及びバルブ320が閉鎖され、バルブ330が開放された状態で高圧油圧ポンプHPが作動し、作動油が、シリンダ200のロッド210側空間及び第1アキュムレータ710に送油される。シリンダ200のロッド210側空間に送油された作動油は、その油圧によってロッド210をシリンダ200内で上昇させる。その結果、ロッド210に固定されているラムウエイト500が上昇する。第1アキュムレータ710に送油された作動油は、高圧を維持した状態で蓄積される。
【0034】
シリンダ200のキャップ側空間を満たしている作動油は、ロッド210の上昇に伴って、開放されているバルブ330を経由して、第2アキュムレータ720及び作動油タンクOTに返油される。
【0035】
次に、図3(b)に示すように、作動油がシリンダ200のキャップ側空間に送油されることによってロッド210が下降する。すなわち、バルブ330が閉鎖され、バルブ310及びバルブ320が開放された状態で高圧油圧ポンプHP及び第1アキュムレータ710が作動し、作動油が、シリンダ200のキャップ側空間に送油される。シリンダ200のキャップ側空間に送油された作動油は、その油圧によってロッド210をシリンダ200内で下降させる。その結果、ロッド210に固定されているラムウエイト500が下降する。
【0036】
シリンダ200のロッド210側空間を満たしている作動油は、ロッド210の下降に伴ってシリンダ200外へ流出した後、高圧油圧ポンプHPから送油された作動油と合流のうえ開放されているバルブ310を経由して、シリンダ200のキャップ側空間に還流する。
【0037】
このように、従来の油圧式の杭打設装置100では、シリンダ200内のロッド210を上昇下降させるにあたり、いずれの場合も作動油の油圧によって仕事を行う。空気圧のエネルギは、第1アキュムレータ710内に蓄圧された空気の膨張する力によって作動油を瞬間的に押し出すことによって放出される。
【0038】
しかし、この場合、空気圧をシリンダ200内に直接送り込むわけではないため、圧縮空気の空気圧による瞬発力が十分に生かされず、杭打設において半減するものであった。これに対し、第1実施形態に係る杭打設装置10を用いた杭打設工法では、シリンダ20のキャップ側空間Aに圧縮空気を封入していることから、シリンダ20のロッド21側空間Oの作動油を外部へ排出した瞬間に圧縮空気が作用し、空気圧の瞬発力を十分に生かすことができる。
【0039】
さらに、第1実施形態に係る杭打設工法では、ラムウエイト50を下方に向かって打ち込むときに、作動油は、シリンダ20のロッド21側空間Oから二段階に分けて作動油タンクOTへ返油される。すなわち、第1段階では、第3分岐油圧路84に設けられたサブバルブ33を開放してラムウエイト50を自然落下させ、第2段階で第2分岐油圧路83に設けられたメインバルブ32を開放して自然落下を開始したラムウエイト50を加速させる。ラムウエイト50は、シリンダ20のロッド21側空間Oが全縮小する前に杭を打撃する。
【0040】
これによって、シリンダ20内において、シリンダ20のキャップ側空間A内の圧縮空気エネルギと、シリンダ20のロッド21側空間O内の油圧圧力エネルギを組み合わせた打ち込みが可能となる。具体的には、ラムウエイト50は、作動油の返油によって圧縮空気の瞬発力を享受して下方に落下するが、その際、落下開始と同時に加速を与えるとラムウエイト50の重量が反力となって杭の上方への抜け上りが生じる。そこで、第1実施形態に係る杭打設装置10では、サブバルブ33をまず開放してラムウエイト50を瞬間的に自然落下させ、その後にメインバルブ32を開放してすでに自然落下を開始したラムウエイト50を加速させることにより、反力ひいては杭の抜け上りを回避することが可能となる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、同じく図1を参照して、第2実施形態に係る打撃装置10及び打撃方法について説明する。第2実施形態に係る打撃装置10は「破砕装置」であり、基本的には図1と同種の構成を有している。ただし、岩盤やコンクリートなどを破砕するという使用態様から、構成要素としては、図1に示されたもののうち、シリンダ20と、シリンダ20内で往復運動するロッド21を備えているが、ロッド21に接続されたラムウエイト50は備えておらず、ロッド21の先端がチゼルに形成されて打撃部50となる。
【0042】
破砕装置の場合、ロッド21の先端(図中、下端)は、破砕に対応した鋭角的な先端形状となっており、チゼル(のみ、たがね)とも呼ばれているように、例えば、最も一般的なポイント(尖形)形状、ポイント形状の中央に合金工具鋼を圧入した芯入りポイント形状、溝掘りなどに適応したフラット(横一文字)形状、法面の整形などに適したワイドフラット(幅広横一文字)形状、砕石の2次破砕などに適したフラットエンド形状などとされている。第2実施形態は、いずれのロッド21にも適用可能である。
【0043】
この破砕装置に、図1を参照して説明した第1実施形態と同様の構成を適用することにより、シリンダ20内において、シリンダ20のキャップ側空間A内の圧縮空気エネルギと、シリンダ20のロッド21側空間O内の油圧圧力エネルギを組み合わせた打ち込みが可能となる。
【0044】
これにより、水中で使用することができない従来の破砕装置に対して、第2実施形態に係る打撃装置10としての破砕装置は、例えば護岸工事などにおいて、ロッド21を水中に水没させた状態で破砕作業を行う場合でも、圧縮空気と油圧を有効に組み合わせたシリンダ20を採用することによって、構造の簡素化と、より強力なパワーを用いた水中での使用が可能となる。当該破砕装置を用いた破砕方法についても同様である。
【0045】
(第3実施形態)
次に、同じく図1を参照して、第3実施形態に係る打撃装置10及び打撃方法について説明する。第3実施形態に係る打撃装置10は「鍛造装置」であり、基本的には図1と同種の構成を有している。ただし、対象物を鍛造するという使用態様から、構成要素としては、図1に示されたもののうち、シリンダ20と、シリンダ20内で往復運動するロッド21を備えているが、ロッド21にはラムウエイト50に代えて打撃部50としてのハンマーが備えられている。
【0046】
鍛造装置の場合、このように、ロッド21の先端(図中、下端)に設けられたハンマーを金敷の上に置かれた対象物に衝撃的に打ち付けることにより、対象物を加工する。ハンマーによる鍛造では、大きなエネルギを投入できるが、1回で目標の形状に鍛造できない場合には、数回の打撃を繰り返すことになる。また、鍛造には、ハンマーに打撃部50として金型を用いて対象物を押しつぶす自由鍛造や、凹凸が彫刻された一対の金型で材料をたたいて金型の形状を対象物に転写する型鍛造があるが、第3実施形態は、いずれの鍛造加工にも適用可能である。なお、型鍛造の場合、対象物と型との接触時間が短いため、対象物には熱が奪われにくく、型もあまり熱くならないため、熱間鍛造に適している。
【0047】
この鍛造装置に、図1を参照して説明した第1実施形態と同様の構成を適用することにより、シリンダ20内において、シリンダ20のキャップ側空間A内の圧縮空気エネルギと、シリンダ20のロッド21側空間O内の油圧圧力エネルギを組み合わせた打ち込みが可能となる。
【0048】
これにより、例えば、作業員が手作業で行うような鍛造加工であっても、第3実施形態に係る打撃装置10としての鍛造装置は、圧縮空気と油圧を有効に組み合わせたシリンダ20を採用することによって、より小型化、高速化、高出力とすることが可能となる。当該鍛造装置を用いた鍛造方法についても同様である。
【0049】
(第4実施形態)
次に、同じく図1を参照して、第4実施形態に係る打撃装置10及び打撃方法について説明する。第4実施形態に係る打撃装置10は「プレス装置」であり、基本的には図1と同種の構成を有している。ただし、対象物をプレスするという使用態様から、構成要素としては、図1に示されたもののうち、シリンダ20と、シリンダ20内で往復運動するロッド21を備えているが、ロッド21にはラムウエイト50に代えて打撃部50としての各種の金型等が備えられている。
【0050】
プレス装置の場合、このように、ロッド21の先端(図中、下端)に設けられた各種の金型等を金敷の上に置かれた対象物に押し当てることにより、対象物を加工する。プレス加工には、対象物を切断するせん断加工、対象物から不要な部分を打ち抜く抜き加工、対象物を所望の形に曲げる曲げ加工、凸の型(パンチ)により凹の形(ダイ)を動かすことで、継ぎ目が無い空容器を作る絞り加工があるが、第4実施形態は、いずれのプレス加工にも適用可能である。
【0051】
このプレス装置に、図1を参照して説明した第1実施形態と同様の構成を適用することにより、シリンダ20内において、シリンダ20のキャップ側空間A内の圧縮空気エネルギと、シリンダ20のロッド21側空間O内の油圧圧力エネルギを組み合わせた打ち込み(押し込み)が可能となる。
【0052】
これにより、第4実施形態に係る打撃装置10としてのプレス装置は、圧縮空気と油圧を有効に組み合わせたシリンダ20を採用することによって、より小型化、高速化、高出力とすることが可能となる。当該プレス装置を用いたプレス方法についても同様である。
【0053】
(第5実施形態)
次に、同じく図1を参照して、第5実施形態に係る打撃装置10及び打撃方法について説明する。第5実施形態に係る打撃装置10は「杵突き餅製造装置」であり、基本的には図1と同種の構成を有している。ただし、対象物を製造するという使用態様から、構成要素としては、図1に示されたもののうち、シリンダ20と、シリンダ20内で往復運動するロッド21を備えているが、ロッド21にはラムウエイト50に代えて打撃部50としての杵が備えられている。
【0054】
杵突き餅製造装置の場合、このように、ロッド21の先端(図中、下端)に設けられ杵を臼の上に置かれた対象物に衝撃的に打ち付けることにより、対象物を加工する。従来、業務用に使用されている餅突き機では、杵をロッド21の先端に設けるもののほか、杵の動作をクランク式で上下させたり、杵を自由落下させたりするものがあるが、第5実施形態は、油圧を用いたロッド式のものに適用される。
【0055】
この油圧を用いたロッド式の杵突き餅製造装置に、図1を参照して説明した第1実施形態と同様の構成を適用することにより、シリンダ20内において、シリンダ20のキャップ側空間A内の圧縮空気エネルギと、シリンダ20のロッド21側空間O内の油圧圧力エネルギを組み合わせた打ち込みが可能となる。
【0056】
これにより、第5実施形態に係る打撃装置10としての杵突き餅製造装置は、圧縮空気と油圧を有効に組み合わせたシリンダ20を採用することによって、従来使用されている低圧力の当該装置に比べて、小型化、高速化、高出力とすることが可能となる。当該杵突き餅製造装置を用いた杵突き餅製造方法についても同様である。
【0057】
(実施形態の効果)
上記した第1から第5の実施形態に係る打撃方法は、圧縮空気タンクATから打撃装置10に設けられているシリンダ20のキャップ側空間Aに圧縮空気を供給するステップAと、高圧油圧ポンプHPからシリンダ20のロッド21側空間Oに作動油を送油し、ロッド21に接続された打撃部50を持ち上げるステップBと、シリンダ20のロッド21側空間Oから作動油タンクOTに作動油を返油し、打撃部50を落下させるステップCと、を備えることから、いずれも、それぞれの使用態様において、設備面及び構造面において簡便であり、対象物の反発を抑制可能な打撃方法を提供することができる。
【0058】
また、上記した第1から第5の実施形態に係る打撃装置10は、シリンダ20と、シリンダ20内で往復運動するロッド21と、ロッド21に接続された打撃部50と、を備え、シリンダ20のキャップ側空間Aに圧縮空気が供給され、シリンダ20のロッド21側空間Oに高圧の作動油が送油されることから、いずれも、それぞれの使用態様において、設備面及び構造面において簡便であり、対象物の反発を抑制可能な打撃装置を提供することができる。
【0059】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またそのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0060】
10…打撃装置(杭打設装置、破砕装置、鍛造装置、プレス装置、杵突き餅製造装置)
20…シリンダ
21…ロッド
22…クッションプランジャ
23…ピストン
24…ピストンヘッド
25…ワイヤ
26…位置センサ
27…空気供給口
28…作動油供給口
30…バルブ
31…マスターバルブ
32…メインバルブ
33…サブバルブ
50…打撃部(ラムウエイト、チゼル、ハンマー、金型、杵)
80…油圧路
81…主油圧路
82…第1分岐油圧路
83…第2分岐油圧路
84…第3分岐油圧路
A…シリンダのキャップ側空間
O…シリンダのロッド側空間
AT…圧縮空気タンク
HP…高圧油圧ポンプ
OT…作動油タンク
P…ケーシング
図1
図2
図3