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  • 特開-除菌剤及び除菌方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104517
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】除菌剤及び除菌方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 63/22 20200101AFI20220701BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220701BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20220701BHJP
   E03D 9/08 20060101ALI20220701BHJP
   A47K 3/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
A01N63/22
A01P3/00
A61L2/18
E03D9/08 B
A47K3/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139396
(22)【出願日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2020219546
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521001799
【氏名又は名称】株式会社カイコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細貝 利一郎
【テーマコード(参考)】
2D038
4C058
4H011
【Fターム(参考)】
2D038JA02
2D038JF04
2D038JF06
4C058AA07
4C058AA28
4C058BB07
4C058CC05
4C058JJ08
4H011AA02
4H011BB21
4H011DA14
4H011DD05
4H011DE15
(57)【要約】
【課題】雑菌や感染症の病原菌の増殖を抑制し、除菌効果を持続的に保つこと。
【解決方法】本発明は、トイレ、浴室、洗面所及び台所等を含む水回り設備と水回り設備に装備されるサニタリー用品、備品並びに備品のコントロール装置及び表示装置等とを含む除菌対象物を除菌するプロバイオティクスを主成分とした組成物からなる除菌剤と除菌方法である。これにより、悪臭の基となる雑菌の増殖を抑制して消臭することや感染症の病原菌の増殖を抑制し、除菌効果を持続的に保つことができる。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と枯草菌からなる除菌剤であって、
局部洗浄装置の局部洗浄ノズル、又は
浴槽の循環式の追い焚き器の配管に対して、
温水と混合した状態で除菌に用い、除菌後に残留除菌剤の除去が不要であることを特徴とする除菌剤。
【請求項2】
前記除菌剤は、さらにバチルス・リケニフォルミス、バチルス・メガテリウム、及びバチルス・アミロリケファシエンスを含む群から選ばれる少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の除菌剤。
【請求項3】
前記除菌剤は、さらに香料、防腐剤、及び分散剤の群から選ばれる少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の除菌剤。
【請求項4】
局部洗浄装置の局部洗浄ノズルの除菌方法であって、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の除菌剤を除菌剤タンクに準備する段階、
温水をポンプによって温水経路に供給する段階、
前記除菌剤タンクから前記除菌剤を除菌剤供給手段によって前記温水経路に供給する除菌剤注入口に供給する段階、
前記除菌剤注入口において前記除菌剤と前記温水とを任意の割合で混合する段階、
及び前記温水と混合した前記除菌剤を局部洗浄ノズルの配管に供給し、局部洗浄ノズルから噴出し残留する段階を含むことによって前記局部洗浄ノズルの配管内部及び前記局部洗浄ノズル内部を除菌することを特徴とする除菌方法。
【請求項5】
局部洗浄装置の局部洗浄ノズルの除菌方法であって、
前記温水と混合した前記除菌剤を、局部洗浄ノズルが収納部に収納された状態で局部洗浄ノズルから噴出することによって前記局部洗浄ノズルの配管の外面、前記局部洗浄ノズルの外面及び前記収納部を除菌することを特徴とする請求項4に記載の除菌方法。
【請求項6】
ノズルクリーニング用ノズル及び流路切替器をさらに備えた局部洗浄装置の局部洗浄ノズルの除菌方法であって、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の除菌剤を除菌剤タンクに準備する段階、
温水をポンプによって温水経路に供給する段階、
前記除菌剤タンクから前記除菌剤を除菌剤供給手段によって前記温水経路に供給する除菌剤注入口に供給する段階、
前記除菌剤注入口において前記除菌剤と前記温水とを任意の割合で混合する段階、
前記除菌剤注入口と局部洗浄ノズルの配管との間に位置する流路切替器で流路をノズルクリーニング用ノズルへ切り替える段階、
及び前記温水と混合した前記除菌剤を前記ノズルクリーニング用ノズルに供給し、前記ノズルクリーニング用ノズルから局部洗浄ノズルの外面へ噴出する段階を含むことによって前記局部洗浄ノズル配管の外面及び前記局部洗浄ノズルの外面を除菌することを特徴とする除菌方法。
【請求項7】
前記温水と混合した前記除菌剤を局部洗浄ノズルから人体の局部へ放出することによって局部を洗浄及び除菌することを特徴とする請求項4に記載の除菌方法。
【請求項8】
浴槽の水又は湯水に請求項1乃至3のいずれか1項に記載の除菌剤を投与する段階、
前記浴槽に接続された追い焚き器を駆動する段階、
及び前記追い焚き器により前記除菌剤を含む水又は湯水を循環し残留する段階を含むことによって、浴槽及び循環式追い焚き器配管の内部を除菌することを特徴とする除菌方法。
【請求項9】
入浴しながら浴槽及び循環式追い焚き器配管の内部を除菌することを特徴とする請求項8に記載の除菌方法。
【請求項10】
入浴しながら浴槽及び循環式追い焚き器配管の内部を除菌し、入浴剤として肌の保湿性を高めることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の除菌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トイレ、浴室、洗面所及び台所を含む水回り設備と、トイレ、浴室、洗面所及び台所等を含む水回り設備に装備されるサニタリー用品、備品並びに水回り設備に装備される備品のコントロール装置及び表示装置等とを含む除菌対象物を除菌する生菌を含む除菌剤及び除菌方法に関する。
さらに、本発明は、温水洗浄器付き便座の局部洗浄装置に用いる又は浴槽の湯水循環路に用いる除菌剤及び除菌方法に係り、より詳しくは、局部洗浄装置の局部洗浄ノズル及びノズル配管用又は循環式追い焚き配管用の除菌剤及び除菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ、浴室、洗面所及び台所等の水周りは、カビだけでなく種々の雑菌が繁殖する場所でもある。繁殖した雑菌は異臭を放ったり、アルゲンになったりして有害なだけでなく、感染症の病原菌の場合には、日々の利用によって感染症が拡大する危険がある。特に、今日の社会では、感染症の拡大抑制のため、日常的に利用する場所を除菌して清浄な状態を維持することが急務である。
【0003】
従来、消毒や除菌には、塩素系除菌剤等が広く用いられている。しかし、人体に対して有害なため、使用後は、洗浄して残留する塩素系除菌剤を完全に除去する必要がある。さらに、刺激臭があるために取扱いに注意を要する等利用できる除菌対象物や除菌方法が限られる。清浄状態を維持するためには頻繁に除菌して洗浄を繰り返す必要がある。
除菌された清浄な状態に保つために、抗菌剤が徐々に溶解して放出されることによって除菌が持続的になされる抗菌樹脂の技術が開示されている(特許文献1)。除菌した後も清浄な状態に保つ必要のあるトイレや温水洗浄便座の局部洗浄ノズルに抗菌樹脂成形体を利用することが示されている。しかし、樹脂に混入される化学物質からなる除菌剤が、人体の特に敏感な肌や局部に接触するような使用は望ましくなく、抗菌樹脂の適用対象物は限られるという問題がある。さらに、局部洗浄ノズル内部及び配管内部の除菌にはノズル部を分解して、除菌剤を局部洗浄ノズル内部に流した後に残留除菌剤を完全に洗浄除去しなければならない。
一方、皮膚や粘膜に対して刺激が少ない石鹸からなる洗浄組成物(特許文献2)のエアゾールを温水洗浄便座の洗浄ノズルに吹きかけて除菌することが開示されている。しかし、刺激が少ない洗浄剤を用いた洗浄除菌では、除菌後の清浄な状態を維持するためには頻繁に噴霧しなければならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6638742号公報
【特許文献2】特許第3828921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の除菌剤および除菌方法の課題等に鑑み、これらを解消し残留除菌剤を除去する必要がなく、肌に接触する除菌対象物にも使用できるようとするものであり、生菌からなるプロバイオティクスを含む除菌剤(以下プロバイオティクス除菌剤と称する)を用いることにより、悪臭の基となる雑菌の増殖を抑制して消臭するだけでなく、感染症等の病原菌の増殖を抑制し、プロバイオティクス除菌剤は人体に対して無害であるために、人体の敏感な肌が触れる所にも使用でき、使用後完全除去する必要がなく、残留することにより除菌効果を持続的に保つことを簡単にかつ確実に行うことができ、トイレ、浴室、洗面所及び台所等を含む水回り設備と、トイレ、浴室、洗面所及び台所等を含む水回り設備に装備されるサニタリー用品、備品並びに水回り設備に装備される備品のコントロール装置及び表示装置等とを含む除菌対象物を除菌する除菌剤及び除菌方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明の目的は、温水洗浄器付き便座の局部洗浄装置の局部洗浄ノズル及びノズル配管の外面だけでなく内部を除菌することができ、人体の敏感な肌が触れる所にも使用でき、使用後完全除去する必要がなく、残留することにより除菌効果を持続的に保つことを簡単にかつ確実に行うことができる除菌剤及び除菌方法を提供することにある。
さらに、人体に対して無害であるために、入浴しながら浴槽の循環式追い焚き配管の内部を除菌することができる除菌剤及び除菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の除菌剤は、水と枯草菌からなる除菌剤であって、
局部洗浄装置の局部洗浄ノズル、又は
浴槽の循環式の追い焚き器の配管に対して、
温水と混合した状態で除菌に用い、除菌後に残留除菌剤の除去が不要であることを特徴とする。
本発明の局部洗浄装置の局部洗浄ノズルの除菌方法は、
本発明の除菌剤を除菌剤タンクに準備する段階、
温水をポンプによって温水経路に供給する段階、
除菌剤タンクから除菌剤を除菌剤供給手段によって温水経路に供給する除菌剤注入口に供給する段階、
除菌剤注入口において除菌剤と温水とを任意の割合で混合する段階、
及び温水と混合した除菌剤を局部洗浄ノズルの配管に供給し、局部洗浄ノズルから噴出し残留する段階を含むことによって局部洗浄ノズルの配管内部及び前記局部洗浄ノズル内部を除菌することを特徴とする。
【0007】
また、トイレ、浴室、洗面所及び台所等を含む水回り設備と、トイレ、浴室、洗面所及び台所等を含む水回り設備に装備されるサニタリー用品、備品並びに水回り設備に装備される備品のコントロール装置及び表示装置等とを含む除菌対象物を除菌する除菌剤であって、プロバイオティクスを含む組成物からなることを特徴とする除菌剤である。
本発明の組成物であるプロバイオティクス除菌剤はプロバイオティクスと水からなり、さらに栄養素となるプレバイオティクスを含むことができる除菌剤であり、本発明の組成物であるプロバイオティクス除菌剤のプロバイオティクスは枯草菌である。
【0008】
本発明の除菌剤を用いた除菌方法は、液体、液滴若しくはジェルとして、除菌対象物に接触させて持続的に除菌することができる。除菌対象物への接触による除菌方法は、除菌剤を除菌対象物の外面に噴霧若しくは塗布又は、除菌対象物の内部に流動若しくは残留させることができる。プロバイオティクス除菌剤は人体に対して無害であるために、人体の敏感な肌が触れる所にも使用でき、使用後完全除去する必要がなく、残留することにより除菌効果を持続的に保つことを簡単にかつ確実に行うことができる。除菌対象物を除菌するために、プロバイオティクス除菌剤を肌に接触するように使用できる。
【0009】
本発明の除菌対象物は、便器の局部洗浄ノズル、便器の本体部、便器の蓋部、便器カバー部、浴槽、浴槽の追い焚き配管部、洗面台本体部、洗面台ボウル、台所流し本体、及びこれら水周りの排水管部であり、除菌対象物の外面に噴霧若しくは塗布又は、除菌対象物の内部に流動若しくは残留させる除菌方法によって除菌することができる。
【発明の効果】
【0010】
トイレ、浴室、洗面所及び台所等を含む水回り設備は日常的に使う設備であり、日々の利用によって種々の菌が残存する場所である。生菌を含むプロバイオティクス除菌剤はプロバイオティクスの善玉菌が増殖して、異臭の原因となる雑菌の増殖を持続的に抑制することによって消臭することができ、感染症の原因となる病原菌の繁殖を抑制して除菌した清浄な状態を維持することができる。プロバイオティクスは製薬や飲料にも使われており、人体に無害であるために、除菌対象物を選ばず、人体の肌や敏感な部位が接するところにも使用することができる。このため、除菌後に残留成分を完全除去する必要がなく、生菌のプロバイオティクス除菌剤が残留することによって、除菌された清浄な状態が持続的に保たれる。このように、環境にも人体にも優しく、人体にとって有害となる有害菌の繁殖をプロバイオティクスで抑制し、さまざまな除菌対象物に使用することができ、その効果が持続することが、従来の塩素系除菌剤や抗菌樹脂等の除菌剤にはない効果である。
本発明の除菌剤の除菌作用は、プロバイオティクスである枯草菌が、熱や薬品に対する耐久性が特に高いことが知られており、この耐環境性に優れた特性によって、同じ場所において雑菌の増殖を抑えることによって除菌することができる。
本発明の除菌剤の効果は、より詳しくは、人体の敏感な肌が触れる所にも使用できるために、局部洗浄装置の局部洗浄ノズルの除菌に用いることができ、排便後に、温水洗浄便座に座ったまま人体の局部洗浄や局部の除菌を行うことができる。このように、局部洗浄ノズルの除菌だけでなく、局部の除菌もできることは、他の除菌剤にないプロバイオティクス除菌剤の特徴的な効果である。
さらに、本発明の除菌剤は、人体に対して無害であるために、入浴剤として用いることによって、入浴しながら浴槽の循環式追い焚き配管の内部を除菌することができるという従来の除菌剤にない特徴を有し、プロバイオティクス除菌剤のプロバイオティクスである枯草菌が肌の保湿性を高める有効を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態である温水洗浄便座装置でのプロバイオティクス除菌剤による局部洗浄ノズルの除菌の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
飲料や健康食品にも使われているプロバイオティクスは人体に優しく、例えば、腸内においては、いわゆる善玉菌が増殖して、人体にとって好ましくない腸内細菌の増殖を抑えることによって、腸内フローラを整えることはよく知られたプロバイオティクスの働きである。トイレ、浴室、洗面所及び台所等を含む水回り設備等では、日々の利用によって種々の雑菌が残存する場所である。トイレ、浴室、洗面所及び台所等を含む水回り設備にプロバイオティクスを共存させるとプロバイオティクスの善玉菌が増殖して、異臭の原因となったり、感染症の原因となったりする有害な雑菌の繁殖が抑制され除菌された清浄状態となる。プロバイオティクスは人体に優しく、人体の肌や敏感な部位が接するところにも使用することができ、環境にも優しいために、除菌使用後に残留成分を完全に除去する必要がなく、残留させることによって、生菌のプロバイオティクスが持続的に除菌された清浄状態を保つことができる。
【0013】
本発明のプロバイオティクス除菌剤の除菌対象物は特に限定されるものではないが、トイレ、浴室、洗面所及び台所を含む水回り設備と、トイレ、浴室、洗面所及び台所を含む水回り設備に装備されるサニタリー用品、備品並びに水回り設備に装備される備品のコントロール装置及び表示装置等の除菌に適している。トイレの床、壁、ドア、便器、温水洗浄便座、暖房便座等の除菌、台所の壁、床、流し周り、浴室内の壁、床、ドア、浴槽及び洗面器等の浴室用の備品及び排水系や配管内部等の除菌に特に適している。
ここで、サニタリー用品とは、前記水回り設備に具備されるバケツや清掃用道具など移動可能な物品を示し、備品とは固定された物品を示している。水回り設備に装備される備品のコントロール装置及び表示装置等とは、例えばトイレの温水洗浄便座、浴室又は台所の給湯器等を示している。
【0014】
本発明の除菌対象物において、プロバイオティクス除菌剤は無臭であり、プロバイオティクスの働きにより除菌効果が持続するために、除菌対象物として、大型商業施設内のトイレ及び厨房等の水周り設備に、さらに適している。
大型商業施設内のトイレは不特定多数の利用者があり、頻繁に除菌作業を行うことなく除菌された清浄状態を保つ必要がある。
また、厨房施設は、日々定常的に食物残差や油脂成分が排出されるために、衛生上の除菌だけでなく雑菌による発酵作用によって排出される発酵臭や、嫌気状態で発生するアンモニア等の臭気が発生して周辺の悪臭問題となる。
大型施設内には様々な施設が隣接するために、使用する除菌剤には制限があり、刺激臭の除菌剤は用いることができず、無臭で環境や人体に無害で且つ除菌効果が持続する除菌剤が望まれている。そのため、大型商業施設内のトイレ及び厨房等の水周り設備及び厨房設備の排水系周りの除菌には、無臭で除菌効果が持続するプロバイオティクス除菌剤が特に適している。
【0015】
本発明は、生菌であるプロバイオティクスを含む除菌用組成物を提供するものである。
本発明は、生菌であるプロバイオティクスを含む除菌用組成物を使用し、トイレ、浴室、洗面所及び台所を含む水回り設備と、トイレ、浴室、洗面所及び台所を含む水回り設備に装備されるサニタリー用品、備品並びに水回り設備に装備される備品のコントロール装置及び表示装置等の除菌対象物の除菌方法を提供するものである。本発明のプロバイオティクスは枯草菌であって、この枯草菌だけでなく、同じバチルス属細菌であってもよい。すなわち、本発明のプロバイオティクスが、バチルス・ズブチリス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・メガテリウムおよびバチルス・アミロリケファシエンスを含む群から選ばれる1種又は2種以上であってもよい。組成物であるプロバイオティクス除菌剤における枯草菌の濃度は質量%で、1~2%の範囲である。
本発明の除菌作用は、同じ場所における望ましくない雑菌の増殖を、バチルス属細菌が一般的に有する高い耐環境性によって、共存する雑菌の増殖を抑えることによって除菌することができる。
【0016】
本発明に用いられるプロバイオティクスは、枯草菌等の公知の培養方法を利用して増殖させることができる。得られた培養物又は培養物から回収した菌体を本発明のプロバイオティクス除菌剤として使用することも可能である。本発明の効果を損なわない限り、培養後に加熱、凍結乾燥等の追加操作を行ってもよい。当該培養物又は菌体からなるプロバイオティクス除菌剤の形態は本発明の目的とする効果が損なわれない範囲で、例えば、固体(例えば、菌粉末、錠剤等)、半固体、ジェル又は液体等のいずれでもよく、使用時に水に溶けやすい形態が好ましい。
【0017】
本発明の実施にあたっては、本発明の目的とする効果が損なわれない範囲で、本発明のプロバイオティクス除菌剤中に種々の物質を配合することができる。そのようなものの例としては、香料、顔料、染料、減粘剤、増粘剤、防腐剤、分散剤及び溶剤等が挙げられる。
【0018】
除菌方法として、本発明のプロバイオティクス除菌剤を除菌対象に対して適切に接触させることが挙げられる。継続的に接触させることにより、除菌状態を維持することができる。除菌対象としてトイレ、浴室、洗面所及び台所などを含む水回り設備と、トイレ、浴室、洗面所及び台所等を含む水回り設備に装備されるサニタリー用品、備品並びに水回り設備に装備される備品のコントロール装置及び表示装置等の外面に液体状のプロバイオティクス除菌剤を噴霧又は放出して塗布することにより除菌することができる。
排水系の除菌の場合には、トラップがあればトラップに投与することにより除菌することができる。プロバイオティクス除菌剤は環境に優しく人体に無害なために、噴霧、塗布、又は投与したままで良い。特に、プロバイオティクス除菌剤が残留することによって、除菌清浄状態が保たれるために望ましい。
【0019】
トイレの場合には、プロバイオティクス除菌剤を便器の内側や温水洗浄便座の局部洗浄ノズル等の外面に噴霧又は放出による塗布して除菌することができる。
温水洗浄便座の局部洗浄ノズルの除菌にプロバイオティクス除菌剤は特に適している。排便後に局部洗浄して、汚水によって汚染される洗浄用ノズルには、別に具備されるクリーニング用ノズルから、プロバイオティクス除菌剤を局部洗浄ノズルに放出して塗布することや、局部洗浄ノズルの管内部にプロバイオティクス除菌剤の流路を切り替えて流動させ、局部洗浄ノズルから放出させて除菌することができる。
【0020】
トイレの壁、床及び天井等のトイレ空間及び装備しているサニタリー用品や人の手の触れる、装備される備品のコントロール装置及び表示装置等の除菌には、プロバイオティクス除菌剤の液滴をミスト等として噴霧することによって広範囲に除菌することができる。プロバイオティクス除菌剤は人体に無害なために、従来の除菌剤の噴霧の場合と異なって、噴霧除菌中に無人にする必要もなく、隣接する施設への悪影響がないために、様々な施設が隣接する集合型商業施設内で利用することができる特徴を有する。また、温水洗浄便座付き便座の除菌には、温水洗浄便座の蓋の開閉と連動して、使用後、蓋が閉まった状態でプロバイオティクス除菌剤のミストを噴霧することによって、肌が直接触れる便座を含めた温水洗浄便座付き便器内を除菌することができる。
【0021】
プロバイオティクス除菌剤に増粘剤等を添加した粘稠なジェルでは、除菌対象物と一定時間接触させることができる。たとえば、水周りの排水管周辺や排水パイプにプロバイオティクス除菌剤ジェルを塗布することによって、金属やパイプ材質を変質させることなく持続的に除菌することができる。
【0022】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0023】
発明の実施にあたっては、本発明の目的とする効果が損なわれない範囲で、本発明のプロバイオティクス除菌剤中に種々の添加物質を配合することができる。このような添加物質の例としては、香料、顔料、染料、減粘剤、増粘剤、防腐剤、分散剤等が挙げられる。
【0024】
プロバイオティクス除菌剤としての一実施の形態は、プロバイオティクスを水に溶解させ、さらに必要に応じて、栄養素となるプレバイオティクスを含むことができる液体の他に香料、顔料、染料、減粘剤、増粘剤、防腐剤、分散剤等の添加物質を加えることにより、プロバイオティクス除菌剤の状態は液体、液滴及び(粘稠)ジェルとなり、除菌対象物との接触方法も除菌剤の状態又は除菌用途によって噴霧、塗布や一定期間接触し続ける方法等がある。
【0025】
プロバイオティクス除菌剤として液体の場合には、除菌対象物への接触方法として、プロバイオティクス除菌剤を除菌対象物の外面に噴霧又は放出によって塗布することによって除菌することができる。除菌対象物がノズル及び排水管の管内部の場合には、プロバイオティクス除菌剤を内部に流動させることによって除菌することができる。プロバイオティクス除菌剤は人体に無害なため、直接、肌等に接触するように流動させることも可能である。
【0026】
図1は本発明の一実施形態の温水便座装置でのプロバイオティクス除菌剤による局部洗浄ノズルの除菌説明図である。
図1に示す温水洗浄便座の局部洗浄装置本体1において、水道等の水源12からの水をヒーター(図1で省略)で加熱した温水を貯える温水タンク2の温水を、ポンプ3によって接続する温水経路4に搬送し、流路切替部6によって局部洗浄ノズル8又は局部洗浄ノズル8の外面を洗浄するノズルクリーニング用ノズル7から噴出させる。温水経路4のポンプ3と流路切替部6との間に、除菌剤タンク9のプロバイオティクス除菌剤を温水経路4に供給する除菌剤注入口5が設けてある。プロバイオティクス除菌剤は除菌剤タンク9から逆止弁10を経由し除菌剤供給手段11によって、除菌剤注入口5に搬送され、流路切替部6によってノズルクリーニング用ノズル7又は局部洗浄ノズル8から噴出させることができる。ポンプ3と除菌剤供給手段11によって、除菌剤注入口5においてプロバイオティクス除菌剤と温水を任意の割合で混合することができる。
【0027】
一形態として、除菌剤注入口5に搬送されたプロバイオティクス除菌剤は、流路切替部6によってノズルクリーニング用ノズル7から局部洗浄ノズル8の外面に噴出させて、局部洗浄ノズル8のノズル外面をプロバイオティクス除菌剤で除菌することができる。
【0028】
一形態として、除菌剤注入口5に搬送されたプロバイオティクス除菌剤は、流路切替部6によって局部洗浄ノズル8から噴出させ、局部洗浄ノズル8の配管内部や局部洗浄ノズル8を内側から除菌することができる。
さらに、局部洗浄ノズル8から放出されるプロバイオティクス除菌剤で、局部洗浄と共に排便後の局部の除菌を行うことも可能である。
【0029】
トイレの温水洗浄便座において、局部洗浄ノズルは、その構造上、排便後に局部を洗浄した汚水がノズルにかかることによりノズルが汚染される。この汚染したノズルを放置すると、ノズル外面だけでなくノズル内部まで菌が増殖する可能性がある。このノズルの清浄状態の不安から、公衆トイレの温水洗浄便座で、洗浄用ノズルを利用しない人が多い。
従来、局部洗浄ノズルの洗浄として、排便後に局部を洗浄した後に局部洗浄ノズルから水又は温水を流して行われてきた。また、ノズルクリーニング用ノズルを具備した温水洗浄便座では、排便後に局部を洗浄した後にノズルクリーニング用ノズルからの放出される水又は温水によって局部洗浄用ノズル外面を洗浄することができる。しかし、ノズルの除菌は温水だけでは不十分であり、除菌剤による除菌が望まれるが、残存した除菌剤が人体の敏感な局部に接することがないように、除菌後に完全に除去しなければならないために除菌剤は用いることができなかった。
【0030】
本発明の一実施形態では、プロバイオティクスは人体に無害であるため、残存したプロバイオティクス除菌剤の除去の必要がなく、温水便座の局部洗浄ノズルの除菌に用いることができる。さらに、局部洗浄ノズル外面だけでなく局部洗浄ノズルの配管内部に流動させ、配管内部や局部洗浄ノズル内部の除菌も可能である。また、排便後に、温水洗浄便座に座ったまま人体の局部洗浄や局部の除菌を行うことができる。このように、局部洗浄ノズルの除菌だけでなく、局部の除菌もできることは、他の除菌剤にないプロバイオティクス除菌剤の特徴である。
【0031】
また、便器全体の除菌の方法として、温水洗浄便座付き便器の蓋の開閉と連動して、使用後、蓋が閉まった状態でプロバイオティクス除菌剤の液滴をミスト等として噴霧することによって温水洗浄便座付き便器内を全体除菌することができる。便器の噴霧除菌後に、例えば、便座表面にプロバイオティクス除菌剤が残留していても、プロバイオティクスは人体の肌と接触しても無害であるだけでなく、医療用として消毒にも使われるために、臀部や局部の除菌の作用も期待できる。
【0032】
トイレ、浴室、洗面所及び台所などを含む水回り設備に備えられた用具、器具、装置、壁並びに床及び排水口周り並びに排水パイプ内部等の異臭の原因となる雑菌の繁殖を抑えるために、プロバイオティクス除菌剤の噴霧や塗布によって除菌することができる。
【0033】
プロバイオティクス除菌剤に増粘剤等を添加して、粘稠なジェルとすることによって、液体とは異なった用途に用いることができる。粘稠なジェルでは一定期間、一定量のプロバイオティクス除菌剤が放出され続け、排水口周り並びに排水パイプ内のヌメリの原因となる雑菌を除菌できる。塩素系のヌメリ取り剤と異なり、プロバイオティクス除菌剤は無臭で、金属やパイプ材質を変質させることなく使い続けることが可能である。
たとえば、調理終了後に台所又は厨房設備の排水系のグリストラップ(油脂分離阻集器)内にプロバイオティクス除菌剤を投与して、一晩放置することによって異臭の基となる雑菌の繁殖を抑制することができる。
このように、プロバイオティクス除菌剤は、無臭で金属等を変質させないために、残留させることにより除菌清浄状態を維持することができる特徴とする除菌剤である。
【0034】
プロバイオティクス除菌剤が人体に無害で人体の肌に接触する利用の一形態として、例えば、浴槽にプロバイオティクス除菌剤を入れ、入浴剤として用いるとともに、浴槽内の除菌だけでなく、浴槽に接続されている追い焚き配管内部を除菌することが可能である。
【実施例0035】
以下に実施例を詳述する。尚、実施例は本発明の一態様であり、本発明の技術的範囲は実施例に記載に限定されるものでない。
前述のように、本発明の組成物であるプロバイオティクス除菌剤はプロバイオティクスと水からなる除菌剤(プロバイオティクス除菌剤)であり、本発明のプロバイオティクス除菌剤のプロバイオティクスは枯草菌である。
以下、実施例で用いたプロバイオティクスは枯草菌(セティ株式会社、50億cfu/g)である。
実施例の枯草菌の含有量はプロバイオティクス除菌剤全体に対して質量%で1%であり、残りは水である。
また、人体の肌に触れる除菌方法では0.1%以下であることが好ましい。
【0036】
消臭試験
1.試験方法
グリストラップを備えた、大型施設内の厨房施設内において、グリストラップ付近の臭気を採集し、カスクロマトグラフィー(GC)及びカスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)にてガス成分分析を行い、除菌前後の臭気の成分やその量の差異を調べ除菌効果について検証した。
【0037】
2.臭気採集場所
大型商業施設の厨房施設内グリストラップ付近(以下場所Aとする)
ホテルの厨房施設内グリストラップ付近(以下場所Bとする)
【0038】
実施例1
場所Aの大型施設内のグリストラップを備えた厨房施設内において、グリストラップ付近の臭気を採集し、臭気捕集後の臭気成分吸着剤をジエチルエーテルにて溶媒抽出後、エーテル相を0.2mlまで濃縮して、ガスクロマトグラフィー(GC:島津製作所GCMS-QP2020)及びガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS:日本電子 JMS-Q1000GC)にてガス成分分析を行い、除菌前後の臭気の成分やその量の変化を調べ除菌効果について検証した。試験開始日の調理作業終了後に臭気を捕集後、プロバイオティクスである枯草菌の含有量がプロバイオティクス除菌剤全体に対して質量%で1%であり、残りは水からなるプロバイオティクス除菌剤300mlをグリストラップに投入した。毎日調理作業終了後に同様にプロバイオティクス除菌剤300mlをグリストラップに投入を繰り返し、試験開始30日後に、試験開始日と同様にグリストラップ付近で臭気を採集して分析を行った。
【0039】
実施例2
場所Bの大型施設内のグリストラップを備えた厨房施設内において、試験開始日の調理作業終了後に臭気を捕集後、プロバイオティクスである枯草菌の含有量がプロバイオティクス除菌剤全体に対して質量%で1%であり、残りは水からなるプロバイオティクス除菌剤をグリストラップに300mlを投入した。毎日調理作業終了後にプロバイオティクス除菌剤300mlをグリストラップに投入を繰り返し、試験開始37日後に、試験開始日と同様にグリストラップ付近で臭気を採集して分析を行った。
以下、実施例1と実施例2のGC-MS分析結果を表1に示す。数値は各成分の規格化されたピーク強度である。
【0040】
【表1】
GC-MS分析では、油脂の酸化物の2、4-デカジエナール(酸化臭)と、油が腐敗した際に発生する腐敗臭の酪酸と、不快臭となる吉草酸、カプロン酸、及び長鎖カルボン酸とが検出された。実施例1では、試験開始前に比べ試験開始30日後に、酸化臭の2、4-デカジエナールで41%、腐敗臭の酪酸で40%の減少が得られた。実施例2では、試験開始前に比べ試験開始37日後に、腐敗臭の酪酸で88%の大幅な減少が得られた。以上の試験結果より、実施例1、2のいずれもプロバイオティクス除菌剤による消臭効果が実証され、また、試験開始30日以降でもその消臭効果が持続していることが確認された。異臭の発生を防ぐために、従来では毎日の調理作業終了後に、グリストラップの内容物を除去して洗浄する必要があったが、プロバイオティクス除菌剤を投与するだけで、除菌消臭できることが分かった。特に、大型施設内の厨房施設では定常的に食物残差や油脂成分が排出されており、このような排出状況下で除菌、消臭効果が維持されることは、実用上大変意義があり、本発明のプロバイオティクス除菌剤の特徴である。
【0041】
厨房排水水質試験
実施例3
場所Aのグリストラップからの排水を採取し、プロバイオティクスである枯草菌の含有量がプロバイオティクス除菌剤全体に対して質量%で1%であり、残りは水からなるプロバイオティクス除菌剤300mlのグリストラップへの投与による排水水質への効果を試験開始前の排水と比較して調べた。プロバイオティクス除菌剤を実施例1と同様に毎日の調理作業終了後に投与し続け、試験開始3ヵ月後及び6ヵ月後の排水を試験した。
排水の生物化学的酸素要求量(BOD)、臭気発生に関係する有機物やアンモニア量を示す窒素含有量、排水に混入する油量を示すノルマルヘキサン抽出物質量を日本工業規格 K0102の21、45に定める方法及び昭和49年環境庁告示第64号の付表4に掲げる方法にて分析した結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
試験開始前の厨房排水には、グリストラップ処理後も臭気発生に関係する有機物やアンモニア量を示す窒素含有量と共に排水に混入する油が多く含まれることが分る。従来の合成洗浄剤を用いて洗浄を行った場合には、このような有機物質や油は分解されることなく、水に可溶化され排出されることによって、環境汚染に繋がることが分かる。一方、プロバイオティクス除菌剤を毎日の調理作業終了後に投与すると、試験開始3ヵ月及び6ヵ月には窒素含有量及びノルマルヘキサン抽出物質量が減少しており、プロバイオティクスによって排水の油脂成分が分解されていることが明らかになった。すなわち、プロバイオティクス除菌剤は環境負荷に繋がる物質を分解する作用も有しており、従来の合成洗浄剤にない作用効果を有することが実証された。
【0043】
便座、局部洗浄ノズルの除菌試験
実施例4
便座、局部洗浄ノズルの外面にプロバイオティクスである枯草菌の含有量がプロバイオティクス除菌剤全体に対して質量%で1%であり、残りは水からなるプロバイオティクス除菌剤を1日1回毎日噴霧し、試験開始後2ヶ月後の各菌を培養したコロニー数を計測して、試験開始前との比較より除菌効果を調べた。
便座及び局部洗浄ノズルの外面を綿棒によってふき取り採取した検体試料液を、マイクロピペットを用いて100μLとり、90mm平板の各種培地へ添加した。その後塗り広げて恒温機内で培養を行った。被検菌の培養条件(培地)は、一般細菌(SCD)、大腸菌(DESO)は35~37℃48時間、真菌(サブロー)は20~25℃ 96時間であった。培養した後コロニー数を計測し、観測されたコロニー数を確認し、除菌効果を次の3段階で評価して表3に示す。
◎:99%以上の除菌
〇:90%以上99%未満の除菌
X:90%未満の除菌
【0044】
【表3】
表3より、便座及びノズルともプロバイオティクス除菌剤の噴霧によって、試験開始2か月後に大腸菌、一般細菌及び真菌の増殖の抑制が確認された。特に、一般細菌や真菌に対して大きな除菌効果が得られた。局部洗浄ノズルは排便使用時に洗浄汚水による汚染があり、プロバイオティクス除菌剤を噴霧する以外には洗浄等行っておらず、プロバイオティクス除菌剤を噴霧するだけで、清浄な状態を維持できることが確かめられた。
本局部洗浄ノズルの外面の除菌は、図1に示す温水洗浄便座の局部洗浄装置において、除菌剤注入口5に搬送されたプロバイオティクス除菌剤が、流路切替部6によってノズルクリーニング用ノズル7から局部洗浄ノズル8の外面に噴出させる上記の実施形態に相当するものである。
【0045】
局部洗浄ノズル管内部の除菌試験
実施例5
試験開始前に、局部洗浄ノズルを分解し、ノズル管内部から実施例4と同様に綿棒によって検体を採取した後、局部洗浄ノズルを組立て、プロバイオティクスである枯草菌の含有量がプロバイオティクス除菌剤全体に対して質量%で1%であり、残りは水からなるプロバイオティクス除菌剤を1/10に希釈して、局部洗浄ノズルから放出させて除菌した。但し、実施例4で行った局部洗浄ノズルへの外面への噴霧による除菌は行っていない。排便後の温水洗浄した後、毎回、図1の流路切替部6で温水の代わりにプロバイオティクス除菌剤に切り替えて、局部洗浄ノズル8から放出させた。試験開始後2ヵ月後に、局部洗浄ノズルを分解し、ノズル管内部から綿棒によって採取して実施例4と同様に菌検査を行い、観測されたコロニー数を確認し、除菌効果を次の3段階で評価して表4に示す。
◎:99%以上の除菌
〇:90%以上99%未満の除菌
X:90%未満の除菌
【0046】
【表4】
局部洗浄ノズルの管内部に大腸菌や一般菌が検出されたことより、排便後の使用による汚染によって、局部洗浄ノズルの外面だけでなく、ノズル管内部も汚染されていることが分かった。
プロバイオティクス除菌剤を局部洗浄ノズル管に流動、放出させることによって、試験開始2ヵ月後にはノズル管内部から大腸菌や一般雑菌とも検出されず、局部洗浄ノズル管内部まで除菌されることが確認された。
プロバイオティクスは人の肌や敏感な局部に接しても無害であるために、このようにプロバイオティクス除菌剤を局部洗浄ノズル内部に流動させ、ノズルから放出させるような除菌方法が可能である。このような人の肌や敏感な局部に接するような除菌方法は、従来の除菌剤を用いた除菌方法にない、プロバイオティクス除菌剤に特徴的な除菌方法である。
【0047】
浴槽の追い焚き器配管内部の除菌試験
実施例6
循環式の追い焚き器配管内部の洗浄をしていない浴槽300Lにプロバイオティクスである枯草菌の含有量がプロバイオティクス除菌剤全体に対して質量%で0.1%であり、残りは水からなるプロバイオティクス除菌剤10mlを入浴剤として投与し、入浴した後に浴槽のお湯を排水する。試験開始前の追い焚き器の給水口内部から、実施例4と同様に綿棒で採取した検体の菌検査と、1日一回の同様な入浴を30日繰り返した後、追い焚き器の給水口内部から採取した検体の菌検査を行い、観測されたコロニー数を確認し、除菌効果を次の3段階で評価して表5に示す。
◎:99%以上の除菌
〇:90%以上99%未満の除菌
X:90%未満の除菌
【0048】
【表5】
循環式の追い焚き器の場合には、人の垢やその他の汚れもお湯と一緒に配管内に吸い込んでいるため、配管内部は汚れが付着する。実際、循環式の追い焚き器給水口から一般細菌が検出され、循環式の追い焚き器の配管内部で雑菌が繁殖していることが示唆される。
一方、プロバイオティクス除菌剤を入浴剤として入浴時に使用するだけで、試験開始30日後には、浴槽の追い焚き器の給水口から一般細菌は検出されなくなった。
従来は、追い焚き器配管内部の除菌は管材を変質させない除菌剤を用いて洗浄する必要があった。一方、プロバイオティクス除菌剤の場合には入浴剤として通常の入浴使用で、浴槽の追い焚き器配管内の除菌が確認された。このように浴槽に直に入れて、入浴剤と同時に除菌剤として作用することは、人に無害であり、管材を変質させないプロバイオティクス除菌剤の特徴を活かした除菌方法である。
実施例7
浴槽300Lにプロバイオティクスである枯草菌の含有量がプロバイオティクス除菌剤全体に対して質量%で0.1%であり、残りは水からなるプロバイオティクス除菌剤10mlを入浴剤として投与し、入浴後、その角層水分量をプロバイオティクス除菌剤を投与しないお湯への入浴の場合と比較した。肌の角層水分量はキュートメーター(MPA580)にコルネオメータープローブを用いて、被験部位(へその左右の腹部それぞれ1箇所)の角層水分量を測定し平均した。角層水分量測定では、角層水分の入浴後1、2、3時間後経時的な変化を測定し、プロバイオティクス除菌剤を投与した場合と投与しないお湯の場合との比をそれぞれ5回測定して平均値を表6に示す。
【0049】
【表6】
入浴後直後(表6 入浴後の経過時間0)は入浴前に比べ、プロバイオティクス除菌剤を投与した場合及び投与しない場合のいずれの場合も角質水分量は減少し、その後、時間の経過とともに増加し入浴前の角質水分量に近づいた。プロバイオティクス除菌剤を投与しないお湯への入浴では、入浴後直後の減少から元の角質水分量への戻りは遅く、入浴後3時間経過しても入浴後直後からわずかに増加しただけだった。一方、プロバイオティクス除菌剤を投与した入浴の場合には直ちに元の角質水分量へ戻った。このため、表6に示すように、入浴後1時間では角質水分量比が大きくなった。その後、経過時間に従って角質水分量比は小さくなった。
以上のことより、プロバイオティクス除菌剤を入浴剤として投与した場合には、投与しないお湯への入浴の場合に比べて角質水分が保たれ保湿効果が確認された。
プロバイオティクス除菌剤は、入浴しながら浴槽や循環式追い焚き配管内部を除菌するだけでなく肌の保湿性を高める入浴剤としての効果があることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
日常生活に欠かせないトイレ、浴室、洗面所及び台所等を含む水回り設備と、トイレ、浴室、洗面所及び台所等を含む水回り設備に装備されるサニタリー用品、備品並びに水回り設備に装備される備品のコントロール装置及び表示装置等は衛生上除菌された清浄状態に保つ必要性がある。そのために、水回り設備及び排水系に用いられる部材は除菌剤、特に塩素系除菌剤に対する耐薬品性も顧慮した部材が使われてきた。しかし、環境負荷がないプロバイオティクス除菌剤が利用されることにより材料選択の幅が広がり、また、従来の残留除菌剤の洗浄の必要がなく、水資源の節約につながり、産業資源への貢献も大きい。
大型厨房施設内から排出された食物残差や油脂成分を捕集するグリストラップは定期的な洗浄が必要である。この洗浄が不十分な場合には、微生物による発酵作用によって排出される発酵臭や嫌気状態で発生するアンモニア等の臭気が発生して周辺の悪臭問題となる。特に、大型商業施設内の厨房では、頻繁に清掃洗浄の必要があり、除菌消臭後の清浄状態が持続的に保たれれば、洗浄コストや人件費の削減につながる。また、大型施設内に様々な施設が隣接するために、使用する除菌剤は無臭で環境や人体に無害で且つ除菌効果が持続する除菌剤が望まれている。本発明のプロバイオティクス除菌剤は環境負荷がなく、人体に無害であり、厨房施設内から排出された食物残差や油脂成分の腐敗臭を低減でき、その除菌効果が持続するため様々な対象物の除菌消臭に利用可能であり、産業上の利用の可能性は大きいといえる。
【符号の説明】
【0051】
1 局部洗浄装置本体
2 温水タンク
3 ポンプ
4 温水経路
5 除菌剤注入口
6 流路切替部
7 ノズルクリーニング用ノズル
8 局部洗浄ノズル
9 プロバイオティクス除菌剤
10逆止弁
11除菌剤供給手段
12水源
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部洗浄装置の局部洗浄ノズル、又は
浴槽の循環式の追い焚き器の配管に対して、
温水と混合し、流動若しくは残留した状態で用るための除菌剤であって、
前記除菌剤は、水、枯草菌、並びに香料、防腐剤、及び分散剤の群から選ばれる少なくとも1つ以上からなり
前記除菌剤は、50億cfu/gで供給される枯草菌を質量%で前記除菌剤全体に対して1%含み、
前記枯草菌は、高い耐環境性によって増殖して、共存する雑菌の増殖を抑え、
除菌後に残留した除菌剤の除去が不要であり、
前記残留した除菌剤によって除菌された清浄状態を保つことができることを特徴とする人体の肌や敏感な部位に接するように使用するための除菌剤。
【請求項2】
前記除菌剤は、さらにバチルス・リケニフォルミス、バチルス・メガテリウム、及びバチルス・アミロリケファシエンスを含む群から選ばれる少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の人体の肌や敏感な部位に接するように使用するための除菌剤。
【請求項3】
前記温水と混合した前記除菌剤を局部洗浄装置の局部洗浄ノズルから人体の局部へ放出するための請求項1又は2に記載の人体の肌や敏感な部位に接するように使用するための除菌剤。
【請求項4】
局部洗浄装置の局部洗浄ノズルの除菌方法であって、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の除菌剤を除菌剤タンクに準備する段階、
温水をポンプによって温水経路に供給する段階、
前記除菌剤タンクから前記除菌剤を除菌剤供給手段によって前記温水経路に供給する除菌剤注入口に供給する段階、
前記除菌剤注入口において前記除菌剤と前記温水とを任意の割合で混合する段階、
前記温水と混合した前記除菌剤を局部洗浄ノズルの配管に供給する段階、
前記温水と混合した前記除菌剤を前記局部洗浄ノズルから局部に接するように噴出する段階、
及び前記温水と混合した前記除菌剤が前記局部洗浄ノズルから噴出し、前記局部洗浄ノズルの配管に残留する段階を含むことによって前記局部洗浄ノズルの配管内部及び前記局部洗浄ノズル内部を除菌することを特徴とする除菌方法。
【請求項5】
局部洗浄装置の局部洗浄ノズルの除菌方法であって、
前記温水と混合した前記除菌剤を、さらに、
局部洗浄ノズルが収納部に収納された状態で局部洗浄ノズルから噴出することによって前記局部洗浄ノズルの配管の外面、前記局部洗浄ノズルの外面及び前記収納部を除菌することを特徴とする請求項4に記載の除菌方法。
【請求項6】
ノズルクリーニング用ノズル及び流路切替器をさらに備えた局部洗浄装置の局部洗浄ノズルの除菌方法であって、
前記温水と混合した前記除菌剤を前記局部洗浄ノズルから噴出し、前記局部洗浄ノズルの配管に残留する段階の後に、さらに、
前記除菌剤注入口と局部洗浄ノズルの配管との間に位置する前記流路切替器で流路を前記ノズルクリーニング用ノズルへ切り替える段階、
及び前記温水と混合した前記除菌剤を前記ノズルクリーニング用ノズルに供給し、前記ノズルクリーニング用ノズルから前記局部洗浄ノズルの外面へ噴出する段階を含むことによって前記局部洗浄ノズル配管の外面及び前記局部洗浄ノズルの外面を除菌することを特徴とする請求項4に記載の除菌方法。
【請求項7】
浴槽の水又は湯水に請求項1又は2に記載の除菌剤を投与する段階、
前記浴槽に接続された追い焚き器を駆動する段階、
及び前記追い焚き器により前記除菌剤を含む水又は湯水を循環し残留する段階を含むことによって、浴槽及び循環式追い焚き器配管の内部を除菌することを特徴とする除菌方法。
【請求項8】
入浴しながら浴槽及び循環式追い焚き器配管の内部を除菌することを特徴とする請求項7に記載の除菌方法。
【請求項9】
入浴しながら浴槽及び循環式追い焚き器配管の内部を除菌し、入浴剤として肌の保湿性を高めることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載の人体の肌や敏感な部位に接するように使用するための除菌剤。