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2022-104540常温飲用時の香味が改善された容器詰めコーヒー飲料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104540
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】常温飲用時の香味が改善された容器詰めコーヒー飲料
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/24 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
A23F5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175099
(22)【出願日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2020219480
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391058381
【氏名又は名称】キリンビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】朝香 槙里子
(72)【発明者】
【氏名】大塚 望
(72)【発明者】
【氏名】山本 研一朗
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB24
4B027FC01
4B027FC02
4B027FK02
4B027FQ19
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、常温飲用時における香味が改善された容器詰めコーヒー飲料、及び、その製造方法、並びに、容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時の香味改善方法等を提供することにある。
【解決手段】Brix値が0.3~3.0である容器詰めコーヒー飲料であって、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量が2.0ppm以下(好ましくは1.2ppm以下)である、前記容器詰めコーヒー飲料。好ましくは、さらに、2,5-ジメチルピラジン含有量を0.45ppm以下、及び、2,6-ジメチルピラジン含有量を0.45ppm以下である容器詰めコーヒー飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Brix値が0.3~3.0である容器詰めコーヒー飲料であって、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量が2.0ppm以下である、前記容器詰めコーヒー飲料。
【請求項2】
コーヒー飲料中の、2-メチルピラジン含有量が1.2ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下である、請求項1に記載の容器詰めコーヒー飲料。
【請求項3】
Brix値が0.3~3.0である容器詰めコーヒー飲料の製造において、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量を2.0ppm以下に調整することを含む、前記容器詰めコーヒー飲料の製造方法。
【請求項4】
コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量を2.0ppm以下に調整することが、
(i-a)コーヒー抽出液を添加すること;
(ii-a)インスタントコーヒーを添加すること;
(iii-a)2-メチルピラジンの、コーヒー飲料への添加量を調整すること;及び、
(iv-a)2-メチルピラジンを含む香料の、コーヒー飲料への添加量を調整すること;
からなる群から選択される1種又は2種以上を含む方法である、請求項3に記載の容器詰めコーヒー飲料の製造方法。
【請求項5】
コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量を2.0ppm以下に調整することが、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量が1.2ppm以下に調整することであり、さらに、コーヒー飲料中の、2,5-ジメチルピラジン含有量を0.45ppm以下に、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量を0.45ppm以下に調整することを含む、請求項3又は4に記載の容器詰めコーヒー飲料の製造方法。
【請求項6】
コーヒー飲料中の、2,5-ジメチルピラジン含有量を0.45ppm以下に調整することが、
(i-b)コーヒー抽出液を添加すること;
(ii-b)インスタントコーヒーを添加すること;
(iii-b)2,5-ジメチルピラジンの、コーヒー飲料への添加量を調整すること;及び、
(iv-b)2,5-ジメチルピラジンを含む香料の、コーヒー飲料への添加量を調整すること;
からなる群から選択される1種又は2種以上を含む方法であり、
コーヒー飲料中の、2,6-ジメチルピラジン含有量を0.45ppm以下に調整することが、
(i-c)コーヒー抽出液を添加すること;
(ii-c)インスタントコーヒーを添加すること;
(iii-c)2,6-ジメチルピラジンの、コーヒー飲料への添加量を調整すること;及び、
(iv-c)2,6-ジメチルピラジンを含む香料の、コーヒー飲料への添加量を調整すること;
からなる群から選択される1種又は2種以上を含む方法である、
請求項3~5のいずれかに記載の容器詰めコーヒー飲料の製造方法。
【請求項7】
Brix値が0.3~3.0である容器詰めコーヒー飲料の製造において、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量を2.0ppm以下に調整することを含む、前記容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時の香味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温飲用時の香味が改善された容器詰めコーヒー飲料、及びその製造方法、並びに、容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時の香味改善方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー飲料は嗜好品として広く愛好されている。容器詰めコーヒー飲料は、いつでも手軽にコーヒー飲料を楽しむことができるなどの利便性があり、コーヒー飲料を工業的に生産した容器詰めコーヒー飲料が数多く上市されている。容器詰めコーヒー飲料の製品形態も多種多様に存在し、常温保存が可能な製品のほか、要冷蔵タイプの製品も販売されており、また、近年では再栓可能なペットボトル入りの製品も販売されている。また、再栓可能な容器詰めコーヒー飲料において比較的見られる傾向として、容器詰めコーヒー飲料を職場などにおいて少しずつ長時間かけて飲むといった態様も少しずつ広がりつつある。容器詰めコーヒー飲料は冷温にて販売されるのが最も一般的であるが、前述のように長時間かけて飲む態様では、時間が経過するにつれてコーヒー飲料の液温は上昇していき常温となる。
【0003】
コーヒー飲料の風味には、コク、キレ、香り等の多くの要素があり、容器詰めコーヒー飲料の香味を向上させるために、これまでに様々な試みがなされている。コーヒーの香気成分は約800種類あるといわれており、例えば、アルデヒド類、エステル類、フラン類、ケトン類、アルコール類、ピラジン類、ピロール類、ピリジン類、硫黄化合物などが知られている。例えば、特許文献1には、コーヒー飲料を容器に充填する工程において、コーヒー飲料の液温を10~50℃の範囲で容器に充填し、容器詰めコーヒー飲料の溶存酸素量を0.37~0.44mg/Lにし、2-メチルフラン、2-メチルブタナール及び3-メチルブタナールの減少を抑制することによって、コーヒー飲料の呈味及び香味を改善する方法が記載されている。また、特許文献2には、コーヒー抽出液を蒸留により濃縮液と留分に分離し、前記濃縮液を多孔質吸着体で処理した後、多孔質吸着体処理濃縮液と前記留分を混合する、濃縮コーヒー抽出液の製造方法が開示されている。特許文献2には、かかる製造方法により、後味の雑味成分であるグアイアコール類等に対する、香ばしさに富むピラジン類の存在比率を高めることができ、コク、香りが豊かで、かつ後味のキレの良い濃縮コーヒー抽出液が得られる旨が記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、クロロゲン酸を高濃度で含有し、かつ、5-ヒドロキシメチルフルフラール濃度が低減したコーヒー濃縮組成物が記載されている。特許文献3の[0018]には、2-メチルピラジンはコーヒー豆の焙煎により生成する香りに富む物質であり、香りを低下させる原因物質である3-メチルブタナールに対する2-メチルピラジンの含有比率が高いことが、コーヒー濃縮組成物の良好な香りを増強する点から好ましい旨が記載されている。また、特許文献4には、焙煎コーヒー豆の粉砕時に発生する香気を感じさせる香料組成物を、焙煎コーヒー豆を用いて製造する方法が記載されている。特許文献4の[0039]には、かかる香料組成物をコーヒー飲料に添加することによって、コーヒー飲料中の含有量を増加させることが好ましい物質が多数列挙されており、それらの物質の中に、2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジンなどのピラジン類が挙げられている。
【0005】
このように、コーヒー飲料において、2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジンなどのピラジン類は、コーヒーの香ばしさなどに関連する香気成分であり、コーヒー飲料におけるピラジン類の含有量は多い方が好ましいと考えられている香気成分である。しかし、容器詰めコーヒー飲料において、2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジンが、所定濃度以上であると、冷温飲用時と比較して常温飲用時に苦渋味が強く感じられ、また、飲用後のキレや止渇感が弱く感じられるなど、香味が悪化することは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4011097号公報
【特許文献2】特開2010-273674号公報
【特許文献3】特開2012-95647号公報
【特許文献4】再表2018/110585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常の容器詰めコーヒー飲料は冷温での飲用を想定しており、冷温においてコーヒー飲料を口に含んだ瞬間において、口腔内におけるコーヒーの香り立ちに優れ、及び、コーヒーの味覚の輪郭の明瞭さが感じられ、また、飲用後において、苦渋みが少なく、及び、キレや止渇感が感じられるような香味設計がなされている。本発明者らは、かかる香味設計で作製したコーヒー飲料を、常温で飲用したところ、コーヒー飲料を口に含んだ瞬間において、口腔内におけるコーヒーの味覚の輪郭がぼやけて感じられ、また、飲用後に口に残る苦渋みが大きく増加し、及び、キレや止渇感が低下する結果、美味しさを損なうことがあるという新たな課題を見出した。
【0008】
本発明の課題は、常温飲用時における香味が改善された容器詰めコーヒー飲料、及び、その製造方法、並びに、容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時の香味改善方法等を提供することにある。
上記の「常温飲用時における香味が改善された容器詰めコーヒー飲料」として、より具体的には、
冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒー飲料を飲んだ瞬間のコーヒーの香り立ちの向上が促進され、
冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒー飲料を飲んだ瞬間のコーヒーの味覚の輪郭がぼやけることが抑制され、
冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒー飲料の飲用後の苦渋みの増加が抑制され、かつ、
冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒー飲料の飲用後のキレや止渇感の低下が抑制された容器詰めコーヒー飲料が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、様々な方法を鋭意検討する中で、Brix値が0.3~3.0である容器詰めコーヒー飲料において、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン濃度を2.0ppm以下とすると、上記課題を解決し得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)Brix値が0.3~3.0である容器詰めコーヒー飲料であって、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量が2.0ppm以下である、前記容器詰めコーヒー飲料;
(2)コーヒー飲料中の、2-メチルピラジン含有量が1.2ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下である、上記(1)に記載の容器詰めコーヒー飲料;
(3)Brix値が0.3~3.0である容器詰めコーヒー飲料の製造において、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量を2.0ppm以下に調整することを含む、前記容器詰めコーヒー飲料の製造方法;
(4)コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量を2.0ppm以下に調整することが、
(i-a)コーヒー抽出液を添加すること;
(ii-a)インスタントコーヒーを添加すること;
(iii-a)2-メチルピラジンの、コーヒー飲料への添加量を調整すること;及び、
(iv-a)2-メチルピラジンを含む香料の、コーヒー飲料への添加量を調整すること;
からなる群から選択される1種又は2種以上を含む方法である、上記(3)に記載の容器詰めコーヒー飲料の製造方法;
(5)コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量を2.0ppm以下に調整することが、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量が1.2ppm以下に調整することであり、さらに、コーヒー飲料中の、2,5-ジメチルピラジン含有量を0.45ppm以下に、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量を0.45ppm以下に調整することを含む、上記(3)又は(4)に記載の容器詰めコーヒー飲料の製造方法;
(6)コーヒー飲料中の、2,5-ジメチルピラジン含有量を0.45ppm以下に調整することが、
(i-b)コーヒー抽出液を添加すること;
(ii-b)インスタントコーヒーを添加すること;
(iii-b)2,5-ジメチルピラジンの、コーヒー飲料への添加量を調整すること;及び、
(iv-b)2,5-ジメチルピラジンを含む香料の、コーヒー飲料への添加量を調整すること;
からなる群から選択される1種又は2種以上を含む方法であり、
コーヒー飲料中の、2,6-ジメチルピラジン含有量を0.45ppm以下に調整することが、
(i-c)コーヒー抽出液を添加すること;
(ii-c)インスタントコーヒーを添加すること;
(iii-c)2,6-ジメチルピラジンの、コーヒー飲料への添加量を調整すること;及び、
(iv-c)2,6-ジメチルピラジンを含む香料の、コーヒー飲料への添加量を調整すること;
からなる群から選択される1種又は2種以上を含む方法である、
上記(3)~(5)のいずれかに記載の容器詰めコーヒー飲料の製造方法;
(7)Brix値が0.3~3.0である容器詰めコーヒー飲料の製造において、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量を2.0ppm以下に調整することを含む、前記容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時の香味改善方法;
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、常温飲用時における香味が改善された容器詰めコーヒー飲料、及び、その製造方法、並びに、容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時の香味改善方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、
[1]Brix値が0.3~3.0である容器詰めコーヒー飲料であって、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量が2.0ppm以下である、前記容器詰めコーヒー飲料(以下、「本発明の容器詰めコーヒー飲料」とも表示する。);
[2]Brix値が0.3~3.0である容器詰めコーヒー飲料の製造において、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量を2.0ppm以下に調整することを含む、前記容器詰めコーヒー飲料の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。);
[3]Brix値が0.3~3.0である容器詰めコーヒー飲料の製造において、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量を2.0ppm以下に調整することを含む、前記容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時の香味改善方法(以下、「本発明の香味改善方法」とも表示する。);
などの実施態様を含んでいる。
【0013】
(コーヒー飲料)
本発明において「コーヒー飲料」とは、特に断りがない限り、コーヒー成分を原料として製造される飲料を意味する。コーヒー飲料の製品の種類や規格は、特に限定されないが、1977年に認定された「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」の定義である「コーヒー」、「コーヒー飲料」及び「コーヒー入り清涼飲料」等が含まれる。コーヒー成分を原料とした飲料においても、乳固形分が3.0重量%以上のものは「飲用乳の表示に関する公正競争規約」の適用を受け、「乳飲料」として取り扱われるが、これも、本発明のコーヒー飲料に含まれる。また、カフェインを90%以上除去したコーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー成分のみを使用した「コーヒー入り清涼飲料(カフェインレス)」に関しても、本発明のコーヒー飲料に含まれる。
【0014】
本明細書において「コーヒー成分」とは、焙煎コーヒー豆由来の成分を含有する液のことをいい、例えば、(a)コーヒー抽出液、すなわち、焙煎、粉砕されたコーヒー豆を水や温水などを用いて抽出した液、(b)コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキスを、水や温水などで適量に調整した液、(c)コーヒー抽出液を乾燥したインスタントコーヒーを、水や温水などで適量に調整した液、などが挙げられる。本明細書において「インスタントコーヒー」とは、コーヒー抽出液を乾燥処理して得られる固体の物質であり、典型的には、粉末状、顆粒状である。
【0015】
(本発明の容器詰めコーヒー飲料)
本発明の容器詰めコーヒー飲料は、Brix値が0.3~3.0である容器詰めコーヒー飲料であって、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量が2.0ppm以下である限り、用いる原料、その他の任意成分、及び容器詰めコーヒー飲料の製造方法並びに製造条件について特に制限はない。
【0016】
(Brix値)
本発明において「Brix値」とは、容器詰めコーヒー飲料中のコーヒー固形分の含有量(重量%)を意味する。本発明において「コーヒー固形分」とは、コーヒー成分を一般的な乾燥法(凍結乾燥、蒸発乾固など)を用いて乾燥させて水分を除いた後の、乾固物の重量のことをいう。すなわち、コーヒー飲料におけるコーヒー固形分は、コーヒー飲料に含まれ得る可溶性固形分のうち、乳成分、甘味成分、pH調整剤、香料等の、コーヒー豆に由来しない成分を除いた固形分をいう。上記「Brix値」は、糖度計(糖用屈折計)を用いて測定することができる。
【0017】
本発明の容器詰めコーヒー飲料のBrix値としては、0.3~3.0であればよく、目的とする製品の香味に応じて適宜調整することができるが、本発明の容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時における香味をより大きく改善する観点から、好ましくは0.8~2.3、より好ましくは0.8~2.0、さらに好ましくは0.9~1.8、より好ましくは0.9~1.5、さらに好ましくは1.1~1.5、より好ましくは1.2~1.4が挙げられる。
【0018】
かかるBrix値は、本発明の容器詰めコーヒー飲料を製造する際に用いるコーヒー成分の量や、コーヒー成分における焙煎コーヒー豆由来の成分の濃度などを調整することによって、調整することができる。
【0019】
(2-メチルピラジン)
本発明の容器詰めコーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量は2.0ppm以下である限り特に制限されないが、本発明の容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時における香味をより大きく改善する観点から、好ましくは1.2ppm以下、より好ましくは、1.0ppm以下、さらに好ましくは0.8ppm以下、より好ましくは0.7ppm以下、さらに好ましくは0.62ppm以下、より好ましくは0.6ppm以下、さらに好ましくは0.58ppm以下、より好ましくは0.45ppm以下、さらに好ましくは0.3ppm以下、より好ましくは0.12ppm以下、さらに好ましくは0.1ppm以下が挙げられる。2-メチルピラジン含有量の下限としては特に制限されないが、例えば0ppmや、0ppm超や、0.001ppm以上や、0.005ppm以上が挙げられる。
【0020】
本発明の容器詰めコーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量の調整方法としては、特に制限されないが、
(i-a)コーヒー抽出液を添加すること(好ましくは、さらに、かかるコーヒー抽出液の添加量を調整すること);
(ii-a)インスタントコーヒーを添加すること(好ましくは、さらに、かかるインスタントコーヒーの添加量を調整すること);
(iii-a)2-メチルピラジンの、コーヒー飲料への添加量を調整すること;及び、
(iv-a)2-メチルピラジンを含む香料の、コーヒー飲料への添加量を調整すること;
からなる群から選択される1種又は2種以上を含む方法が好ましく挙げられ、
より好ましくは、
(i-a)及び(ii-a)を含み、かつ、(iii-a)及び(iv-a)を含まない方法;
(ii-a)及び(iii-a)を含み、かつ、(i-a)及び(iv-a)を含まない方法;
(ii-a)及び(iv-a)を含み、かつ、(i-a)及び(iii-a)を含まない方法;
(i-a)、(ii-a)及び(iii-a)を含み、かつ、(iv-a)を含まない方法;
(i-a)、(ii-a)及び(iv-a)を含み、かつ、(iii-a)を含まない方法;
(ii-a)、(iii-a)及び(iv-a)を含み、かつ、(i-a)を含まない方法;
が挙げられる。
【0021】
上記の(i-a)のコーヒー抽出液における2-メチルピラジン含有量は特に制限されず、2ppm以下であってもよいし、2ppmを超えていてもよいが、通常の焙煎コーヒー豆から得たコーヒー抽出液における2-メチルピラジン含有量は2.5~4ppm程度であることが比較的多い。
【0022】
上記の(ii-a)のインスタントコーヒーにおける2-メチルピラジン含有量は特に制限されないが、同じBrix値のインスタントコーヒー溶液と、焙煎コーヒー豆から得た抽出液とを比較すると、インスタントコーヒー溶液の方が2-メチルピラジン濃度が低くなることが多いため、当業者であれば、容器詰めコーヒー飲料において目的とする2-メチルピラジン含有量に応じて、好適なインスタントコーヒーを適宜選択することができる。
【0023】
2-メチルピラジンや、2-メチルピラジンを含む香料は、市販されているものを使用することができる。また、2-メチルピラジンが所定の濃度範囲であるインスタントコーヒーは、例えば、市販のインスタントコーヒーの2-メチルピラジン含有量を例えば後述の方法で測定し、所定の2-メチルピラジン含有量であるインスタントコーヒーを選択して使用することができる。
【0024】
(2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン)
本発明の容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時における香味をより大きく改善する観点から、本発明の容器詰めコーヒー飲料は、2-メチルピラジン含有量が所定の濃度範囲内であることに加えて、2,5-ジメチルピラジン含有量及び2,6-ジメチルピラジン含有量が所定の濃度範囲内であることが好ましい。
【0025】
かかる好適な態様の本発明の容器詰めコーヒー飲料中の2,5-ジメチルピラジン含有量としては、本発明の容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時における香味をより大きく改善する観点から、好ましくは0.45ppm以下、より好ましくは0.4ppm以下、さらに好ましくは0.38ppm以下、より好ましくは0.36ppm以下、さらに好ましくは0.34ppm以下、より好ましくは0.3ppm以下、さらに好ましくは0.25ppm以下、より好ましくは0.1ppm以下が挙げられる。2,5-メチルピラジン含有量の下限としては特に制限されないが、例えば0ppmや、0ppm超や、0.001ppm以上や、0.005ppm以上が挙げられる。
また、前述の好適な態様の本発明の容器詰めコーヒー飲料中の2,6-ジメチルピラジン含有量としては、本発明の容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時における香味をより大きく改善する観点から、好ましくは0.45ppm以下、より好ましくは0.4ppm以下、さらに好ましくは0.35ppm以下、より好ましくは0.32ppm以下、さらに好ましくは0.3ppm以下、より好ましくは0.25ppm以下、さらに好ましくは0.1ppm以下が挙げられる。2,6-メチルピラジン含有量の下限としては特に制限されないが、例えば0ppmや、0ppm超や、0.001ppm以上や、0.005ppm以上が挙げられる。
なお、前述の好適な態様の本発明の容器詰めコーヒー飲料中の2,5-ジメチルピラジン含有量と、2,6-ジメチルピラジン含有量は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
本発明の容器詰めコーヒー飲料中の2,5-ジメチルピラジン含有量の調整方法としては、特に制限されないが、
(i-b)コーヒー抽出液を添加すること(好ましくは、さらに、かかるコーヒー抽出液の添加量を調整すること);
(ii-b)インスタントコーヒーを添加すること(好ましくは、さらに、かかるインスタントコーヒーの添加量を調整すること);
(iii-b)2,5-ジメチルピラジンの、コーヒー飲料への添加量を調整すること;及び、
(iv-b)2,5-ジメチルピラジンを含む香料の、コーヒー飲料への添加量を調整すること;
からなる群から選択される1種又は2種以上を含む方法が好ましく挙げられ、
より好ましくは、
(i-b)及び(ii-b)を含み、かつ、(iii-b)及び(iv-b)を含まない方法;
(ii-b)及び(iii-b)を含み、かつ、(i-b)及び(iv-b)を含まない方法;
(ii-b)及び(iv-b)を含み、かつ、(i-b)及び(iii-b)を含まない方法;
(i-b)、(ii-b)及び(iii-b)を含み、かつ、(iv-b)を含まない方法;
(i-b)、(ii-b)及び(iv-b)を含み、かつ、(iii-b)を含まない方法;
(ii-b)、(iii-b)及び(iv-b)を含み、かつ、(i-b)を含まない方法;
が挙げられる。
【0027】
上記の(i-b)のコーヒー抽出液における2,5-ジメチルピラジン含有量は特に制限されず、0.45ppm以下であってもよいし、0.45ppmを超えていてもよいが、通常の焙煎コーヒー豆から得たコーヒー抽出液における2,5-ジメチルピラジン含有量は0.5~1.0ppm程度であることが比較的多い。
【0028】
上記の(ii-b)のインスタントコーヒーにおける2,5-ジメチルピラジン含有量は特に制限されないが、同じBrix値のインスタントコーヒー溶液と、焙煎コーヒー豆から得た抽出液とを比較すると、インスタントコーヒー溶液の方が2,5-ジメチルピラジン濃度が低くなることが多いため、当業者であれば、容器詰めコーヒー飲料において目的とする2,5-ジメチルピラジン含有量に応じて、好適なインスタントコーヒーを適宜選択することができる。
【0029】
2,5-ジメチルピラジンや、2,5-ジメチルピラジンを含む香料は、市販されているものを使用することができる。また、2,5-ジメチルピラジンが所定の濃度範囲であるインスタントコーヒーは、例えば、市販のインスタントコーヒーの2,5-ジメチルピラジン含有量を例えば後述の方法で測定し、所定の2,5-ジメチルピラジン含有量であるインスタントコーヒーを選択して使用することができる。
【0030】
本発明の容器詰めコーヒー飲料中の2,6-ジメチルピラジン含有量の調整方法としては、特に制限されないが、
(i-c)コーヒー抽出液を添加すること(好ましくは、さらに、かかるコーヒー抽出液の添加量を調整すること);
(ii-c)インスタントコーヒーを添加すること(好ましくは、さらに、かかるインスタントコーヒーの添加量を調整すること);
(iii-c)2,6-ジメチルピラジンの、コーヒー飲料への添加量を調整すること;及び、
(iv-c)2,6-ジメチルピラジンを含む香料の、コーヒー飲料への添加量を調整すること;
からなる群から選択される1種又は2種以上を含む方法が好ましく挙げられ、
より好ましくは、
(i-c)及び(ii-c)を含み、かつ、(iii-c)及び(iv-c)を含まない方法;
(ii-c)及び(iii-c)を含み、かつ、(i-c)及び(iv-c)を含まない方法;
(ii-c)及び(iv-c)を含み、かつ、(i-c)及び(iii-c)を含まない方法;
(i-c)、(ii-c)及び(iii-c)を含み、かつ、(iv-c)を含まない方法;
(i-c)、(ii-c)及び(iv-c)を含み、かつ、(iii-c)を含まない方法;
(ii-c)、(iii-c)及び(iv-c)を含み、かつ、(i-c)を含まない方法;
が挙げられる。
【0031】
上記の(i-c)のコーヒー抽出液における2,6-ジメチルピラジン含有量は特に制限されず、0.45ppm以下であってもよいし、0.45ppmを超えていてもよいが、通常の焙煎コーヒー豆から得たコーヒー抽出液における2,5-ジメチルピラジン含有量は0.5~1.0ppm程度であることが比較的多い。
【0032】
上記の(ii-c)のインスタントコーヒーにおける2,6-ジメチルピラジン含有量は特に制限されないが、同じBrix値のインスタントコーヒー溶液と、焙煎コーヒー豆から得た抽出液とを比較すると、インスタントコーヒー溶液の方が2,6-ジメチルピラジンが低くなることが多いため、当業者であれば、容器詰めコーヒー飲料において目的とする2-メチルピラジン含有量に応じて、好適なインスタントコーヒーを適宜選択することができる。
【0033】
2,6-ジメチルピラジンや、2,6-ジメチルピラジンを含む香料は、市販されているものを使用することができる。また、2,6-ジメチルピラジンが所定の濃度範囲であるインスタントコーヒーは、例えば、市販のインスタントコーヒーの2,6-ジメチルピラジン含有量を例えば後述の方法で測定し、所定の2,6-ジメチルピラジン含有量であるインスタントコーヒーを選択して使用することができる。
【0034】
(2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジンの含有量の好適な組合せ)
本発明の容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時における香味をより大きく改善する観点から、本発明の容器詰めコーヒー飲料における2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジンの含有量の好適な組合せとして、以下のような場合が挙げられる。
後述の実施例に記載した方法による官能評価の総合判定が、△以上(△、〇又は◎)となる蓋然性が高い、又は、△以上となる容器詰めコーヒー飲料としては、例えば、
2-メチルピラジンの含有量が2ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下である場合;
好ましくは、2-メチルピラジンの含有量が2ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.3ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.3ppm以下である場合;や、
2-メチルピラジンの含有量が1.2ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下である場合;
などが好適に挙げられる。
【0035】
後述の実施例に記載した方法による官能評価の総合判定が、〇以上(〇又は◎)となる蓋然性が高い、又は、〇以上となる容器詰めコーヒー飲料としては、例えば、
2-メチルピラジンの含有量が1.2ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.4ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.4ppm以下である場合;
好ましくは、2-メチルピラジンの含有量が0.8ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.4ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.4ppm以下である場合;や、
2-メチルピラジンの含有量が0.7ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.4ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.4ppm以下である場合;や、
2-メチルピラジンの含有量が0.3ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下である場合;
などが好適に挙げられる。
【0036】
後述の実施例に記載した方法による官能評価の総合判定が、◎となる蓋然性が高い、又は、◎となる容器詰めコーヒー飲料としては、例えば、
2-メチルピラジンの含有量が0.62ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.38ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.32ppm以下である場合;
好ましくは、2-メチルピラジンの含有量が0.6ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.36ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.3ppm以下である場合;や、
2-メチルピラジンの含有量が0.62ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.34ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.28ppm以下である場合;や、
2-メチルピラジンの含有量が0.58ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.38ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.32ppm以下である場合;
などが好適に挙げられる。
【0037】
(2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジンの含有量の測定法)
コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量、2,5-ジメチルピラジン含有量や、2,6-ジメチルピラジン含有量の測定は、ガスクロマトグラフィー/マススペクトロメーター(GC/MS)を用いて測定でき、その方法は内部標準法により通常の手法で行うことができるが、例えば以下の分析方法及び定量方法で測定できる。
【0038】
<分析方法>
GC-MS分析条件は、以下のとおりである。
使用機器: GCMS-QP2020 SHIMADZU製、AOC-6000 AUTO INJECTOR SHIMADZU製
検出方法: 質量分析法。GCMS-QP2020 SHIMADZU製
カラム: Phenomenex製 ZB-WAX(60.0m×0.25μm×0.25mmID)
分析方法:ヘッドスペース固相マイクロ抽出(HS-SPME)法による

SPME条件:
ファイバー: スペルコ製 SPME Fiber Assembly 50/30μm DVB/CAR/PDMS Coating 型番;57329-U
Conditioning Temperature:270℃
Pre Conditioning Time:0分
IncubationTime(インキュベーション時間);5分
Incubation Temperature(インキュベーション温度);40℃
Agitator Speed(撹拌器スピード);250rpm
Sample Vial Depth(バイアル瓶へのファイバー挿入長);22mm
SampleExtract Time(抽出時間);15分
SampleDesorb Time(脱着時間);3分
Post Conditioning Time(ファイバークリーニング時間);20分

GC条件:
カラムオーブン温度;50℃
気化室温度;240℃
昇温プログラム;50℃に5分保持、4℃/分で昇温、230℃に5分保持
注入モード;スプリットレス
サンプリング時間;3.5分
キャリアガス;He、キャリアガス線速度一定モード
線速度;30cm/秒

MS分析条件:
イオン源温度;200℃
インタフェース温度;240℃
開始時間;5分
終了時間;55分
測定モード;スキャン
イベント時間;0.5秒
検出分子量;33-350m/z

サンプル調製: 20mlスクリューキャップ付きバイアル瓶に、サンプル5ml、内部標準を50μl、エタノール20μl封入
内部標準: 0.1%シクロヘキサノール
【0039】
<定量方法>
サンプル中の各成分濃度の定量は絶対検量線法で行う。
市販の2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジンを、市販のエタノールを用いて1%溶液として調整する。
その後、上記調整品を用いて、2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジンの終濃度がそれぞれ0.5、1、5、10ppmとなるようMilliQ水を用いて調整したものを検量線用サンプルとする。なお、検量線用サンプルはエタノールの終濃度が3960ppmとなるよう市販のエタノールを用いて調整した。
検量線用サンプルは[0038]と同様に内部標準を封入した条件で分析を行い、既知の調整濃度に対する検量線を得た。なお、サンプル調製時に合わせて封入したエタノールは、検量線サンプルの分析時には添加せず、代わりに同量のMilliQ水を添加した。
【0040】
(pH)
本発明の容器詰めコーヒー飲料のpHとしては特に制限されないが、例えば、ブラックコーヒーの場合、約5.0~約7.0の範囲内とすることができ、乳入りコーヒーの場合、約6.0~約7.2の範囲内とすることができる。pHの調整は後述するpH調整剤や酸味料を添加することにより行うことができる。
【0041】
(任意成分)
本発明の容器詰めコーヒー飲料におけるコーヒー飲料は、前述の「コーヒー成分」のみを含んでいてもよいし、コーヒー成分以外に、任意成分をさらに含んでいてもよい。かかる任意成分としては、乳原料、香料、乳化剤、砂糖などの糖類、食物繊維、pH調整剤、甘味料、保存料、酸味料、酸化防止剤、増粘安定剤などが挙げられ、特に、容器詰め飲料とするために適度なpHに調整することが求められることから、pH調整剤が好ましく挙げられる。本発明の容器詰めコーヒー飲料としては、常温飲用時における香味を改善するという本発明の効果をより多く享受する観点から、乳原料及び/又は乳化された植物油脂を含まないブラックコーヒーであることが好ましく、さらに糖類も含まないブラックコーヒーであることがより好ましく、コーヒー成分とpH調整剤と香料のみからなるブラックコーヒーや、コーヒー成分とpH調整剤のみからなるブラックコーヒーがさらに好ましい。
【0042】
(容器)
本発明の容器詰めコーヒー飲料における容器としては、材質や形状など、特に制限されず、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などが挙げられる。
【0043】
(殺菌処理)
本発明の容器詰めコーヒー飲料は、殺菌処理されていることが好ましい。コーヒー飲料は、例えば、金属缶のような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた殺菌条件で製造できる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで超高温瞬間殺菌(UHT)や高温短時間殺菌(HTST)を行った後、一定の温度まで冷却して容器に充填する等の方法が採用できる。
【0044】
(常温飲用時の香味が改善された容器詰めコーヒー飲料)
本発明の容器詰めコーヒー飲料は、常温飲用時の香味が改善された容器詰めコーヒー飲料であり、前述したように、より具体的には、
冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒー飲料を飲んだ瞬間のコーヒーの香り立ちの向上が促進され(以下、「冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒーの香り立ちの向上が促進され」とも表示する)、
冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒー飲料を飲んだ瞬間のコーヒーの味覚の輪郭がぼやけることが抑制され(以下、「冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒーの味覚の輪郭がぼやけることが抑制され」とも表示する)、
冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒー飲料の飲用後の苦渋みの増加が抑制され(以下、「冷温飲用時と比較した、常温飲用時における苦渋みの増加が抑制され」とも表示する)、かつ、
冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒー飲料の飲用後のキレや止渇感の低下が抑制された(以下、「冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるキレや止渇感の低下が抑制され」とも表示する)、容器詰めコーヒー飲料が挙げられる。
ここで、冷温飲用時としては、コーヒー飲料の液温が3~10℃の範囲内であるときが挙げられ、常温飲用時としては、コーヒー飲料の液温が15~35℃の範囲内、好ましくは20~30℃の範囲内であるときが挙げられる。
【0045】
本発明において、冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒーの香り立ちの向上が促進され;冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒーの味覚の輪郭がぼやけることが抑制され;冷温飲用時と比較した、常温飲用時における苦渋みの増加が抑制され;かつ、冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるキレや止渇感の低下が抑制された;容器詰めコーヒー飲料とは、Brix値が同じであって、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量が2.0ppm超であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm超であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm超である容器詰めコーヒー飲料(以下、「コントロール飲料」とも表示する。)と比較して、冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒーの香り立ちの向上が促進され;冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒーの味覚の輪郭がぼやけることが抑制され;冷温飲用時と比較した、常温飲用時における苦渋みの増加が抑制され;かつ、冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるキレや止渇感の低下が抑制された容器詰めコーヒー飲料を意味する。
【0046】
ある容器詰めコーヒー飲料における、冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒーの香り立ちの向上が、コントロール飲料におけるそれと比較してどのようであるか(例えば、促進されているかどうか)、あるいは、その促進の程度;
ある容器詰めコーヒー飲料における、冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒーの味覚の輪郭がぼやけることが、コントロール飲料におけるそれと比較してどのようであるか(例えば、抑制されているかどうか)、あるいは、その抑制の程度;
ある容器詰めコーヒー飲料における、冷温飲用時と比較した、常温飲用時における苦渋みの増加が、コントロール飲料におけるそれと比較してどのようであるか(例えば、抑制されているかどうか)、あるいは、その抑制の程度;及び、
ある容器詰めコーヒー飲料における、冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるキレや止渇感の低下が、コントロール飲料におけるそれらと比較してどのようであるか(例えば、抑制されているかどうか)、あるいは、その抑制の程度;
は、訓練されたパネラーであれば、容易かつ明確に決定することができる。評価の基準や、パネラー間の評価のまとめ方は、一般的な方法を用いることができる。容器詰めコーヒー飲料の上記の程度を評価するパネラーの人数は1名であってもよいが、客観性がより高い評価を得る観点から、パネラーの人数の下限を、例えば2名以上、好ましくは3名以上とすることができ、また、評価試験をより簡便に実施する観点から、パネラーの人数の上限を、例えば20名以下、10名以下とすることができる。パネラーが2名以上の場合の上記の程度の評価は、容器詰めコーヒー飲料におけるその程度についてのパネラー全員の評価の平均を採用してもよい。また、上記の程度についての各評価基準に整数の評価点が付与されている場合、パネラー全員の評価点の平均値をその容器詰めコーヒー飲料のその程度の評価として採用してもよい。前述のように、評価点の平均値を採用する場合は、その平均値の小数第1位又は第2位(好ましくは小数第2位)を四捨五入した値を採用してもよい。なお、パネラーが2名以上である場合には、各パネラーの評価のばらつきを低減するために、実際の官能評価試験を行う前に、各パネラーの評価基準ができるだけ揃うように評価基準を共通化する作業を行っておくことが好ましい。かかる共通化作業としては、上記のそれぞれの程度が既知の複数種の容器詰コーヒー飲料のその促進又は抑制の程度を各パネラーで評価した後、その評価点を比較し、各パネラーの評価基準に大きな乖離が生じないように確認することが挙げられる。また、このような評価基準に関する事前の共通化作業により、評価点が1点、2点、3点、4点、5点である場合の、各パネラーによるその促進又は抑制の程度の評価の標準偏差が0.5以内となるようにしておくことが好ましい。
【0047】
ある容器詰めコーヒー飲料における、冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒーの香り立ちの向上が、コントロール飲料におけるそれと比較してどのようであるか(例えば、促進されているかどうか)、あるいは、その促進の程度;
ある容器詰めコーヒー飲料における、冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒーの味覚の輪郭がぼやけることが、コントロール飲料におけるそれと比較してどのようであるか(例えば、抑制されているかどうか)、あるいは、その抑制の程度;
ある容器詰めコーヒー飲料における、冷温飲用時と比較した、常温飲用時における苦渋みの増加が、コントロール飲料におけるそれと比較してどのようであるか(例えば、抑制されているかどうか)、あるいは、その抑制の程度;及び、
ある容器詰めコーヒー飲料における、冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるキレや止渇感の低下が、コントロール飲料におけるそれらと比較してどのようであるか(例えば、抑制されているかどうか)、あるいは、その抑制の程度;
は、例えば、後述の実施例の試験2に記載の評価基準(表3及び/又は表4)等を用いた方法と同様の方法、好ましくは、後述の実施例の試験2に記載の評価基準(表3及び/又は表4)等を用いた方法と同じ方法を好適に用いることができる。より具体的には、コントロール飲料における上記の程度と比較して、香り立ちの向上についてはわずかにでも促進されていれば(好ましくは、香り立ちの向上の程度についての評価点(より好ましくは評価平均点)がわずかにでも増加していれば)、かつ、コーヒーの味覚の輪郭がぼやけること、苦渋みの増加、及び、キレや止渇感の低下についてはわずかにでも抑制されていれば(好ましくは、コーヒーの味覚の輪郭がぼやけることの抑制の程度、苦渋みの増加の抑制の程度、及び、キレや止渇感の低下の抑制の程度についての評価点(より好ましくは評価平均点)がわずかにでも増加していれば)、本発明における常温飲用時の香味が改善された容器詰めコーヒー飲料に含まれる。本発明における容器詰めコーヒー飲料としては、常温飲用時における香味がより大きく改善されている点で、より好ましくは、後述の実施例の試験2の表4の「官能評価の総合判定の評価基準」を用いた場合に、△以上(すなわち、△、〇又は◎)である容器詰めコーヒー飲料、さらに好ましくは、〇以上(すなわち〇又は◎)である容器詰めコーヒー飲料、特に好ましくは、◎である容器詰めコーヒー飲料が好適に挙げられる。また、本発明における容器詰めコーヒー飲料の他の好ましい態様として、後述の実施例の試験2の表3の「評価点の基準」を用いた場合に、項目A~項目Dの4つの項目の評価点(好ましくは評価点の平均点)の合計点が10点以上である容器詰めコーヒー飲料、より好ましくは、11点以上である容器詰めコーヒー飲料、特に好ましくは、12点以上である容器詰めコーヒー飲料が好適に挙げられる。なお、本発明の容器詰めコーヒー飲料において、「常温飲用時の香味」について、実際に官能評価を行う際には、後述の実施例の試験2に記載されているように、そのコーヒー飲料の冷温飲用時の香味と、常温飲用時の香味を比較評価すること等によるものであり、官能評価を行う際に、コントロール飲料における香味の評価との比較を必ずしも必要とするものではない。
【0048】
(本発明の容器詰めコーヒー飲料の製造方法)
本発明の容器詰めコーヒー飲料の製造方法としては、Brix値が0.3~3.0である容器詰めコーヒー飲料の製造において、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量を2.0ppm以下に調整することを含む、容器詰めコーヒー飲料の製造方法である限り、特に制限されない。
【0049】
本発明の容器詰めコーヒー飲料のBrix値は、前述したように、本発明の容器詰めコーヒー飲料を製造する際に用いるコーヒー成分の量や濃度を調整することによって、調整することができる。
【0050】
本発明の容器詰めコーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量の調整方法としては、前述したように、(i-a)、(ii-a)、(iii-a)及び(iv-a)からなる群から選択される1種又は2種以上を含む方法が好ましく挙げられ、より好ましくは、
(i-a)及び(ii-a)を含み、かつ、(iii-a)及び(iv-a)を含まない方法;
(ii-a)及び(iii-a)を含み、かつ、(i-a)及び(iv-a)を含まない方法;
(ii-a)及び(iv-a)を含み、かつ、(i-a)及び(iii-a)を含まない方法;
(i-a)、(ii-a)及び(iii-a)を含み、かつ、(iv-a)を含まない方法;
(i-a)、(ii-a)及び(iv-a)を含み、かつ、(iii-a)を含まない方法;
(ii-a)、(iii-a)及び(iv-a)を含み、かつ、(i-a)を含まない方法;
が挙げられる。
【0051】
本発明の容器詰めコーヒー飲料中の2,5-ジメチルピラジン含有量の調整方法としては、前述したように、(i-b)、(ii-b)、(iii-b)及び(iv-b)からなる群から選択される1種又は2種以上を含む方法が好ましく挙げられ、より好ましくは、少なくとも(i-b)を含む方法、さらに好ましくは、
(i-b)及び(ii-b)を含み、かつ、(iii-b)及び(iv-b)を含まない方法;
(ii-b)及び(iii-b)を含み、かつ、(i-b)及び(iv-b)を含まない方法;
(ii-b)及び(iv-b)を含み、かつ、(i-b)及び(iii-b)を含まない方法;
(i-b)、(ii-b)及び(iii-b)を含み、かつ、(iv-b)を含まない方法;
(i-b)、(ii-b)及び(iv-b)を含み、かつ、(iii-b)を含まない方法;
(ii-b)、(iii-b)及び(iv-b)を含み、かつ、(i-b)を含まない方法;
が挙げられる。
【0052】
本発明の容器詰めコーヒー飲料中の2,6-ジメチルピラジン含有量の調整方法としては、前述したように、(i-c)、(ii-c)、(iii-c)及び(iv-c)からなる群から選択される1種又は2種以上を含む方法が好ましく挙げられ、より好ましくは、
(i-c)及び(ii-c)を含み、かつ、(iii-c)及び(iv-c)を含まない方法;
(ii-c)及び(iii-c)を含み、かつ、(i-c)及び(iv-c)を含まない方法;
(ii-c)及び(iv-c)を含み、かつ、(i-c)及び(iii-c)を含まない方法;
(i-c)、(ii-c)及び(iii-c)を含み、かつ、(iv-c)を含まない方法;
(i-c)、(ii-c)及び(iv-c)を含み、かつ、(iii-c)を含まない方法;
(ii-c)、(iii-c)及び(iv-c)を含み、かつ、(i-c)を含まない方法;
が挙げられる。
【0053】
本発明の製造方法において、コーヒー抽出液を用いる場合や、インスタントコーヒーを用いる場合に、かかるコーヒー抽出液を得るのに用いられる、あるいは、インスタントコーヒーの原料として用いられるコーヒー豆の種類や産地は特に限定されず、種類としては、アラビカ種であってもよく、ロブスタ種であってもよく、リベリカ種であってもよく、これらをブレンドしたものであってもよく、産地としては、ブラジル、コロンビア、タンザニア、エチオピア、ベトナム、ラオス、インドネシア、イエメン、ジャマイカ、ウガンダ、ブルーマウンテン、モカ、キリマンジャロ、マンデリンが挙げられ、これらの1種又は2種以上をブレンドしたものであってもよい。
また、焙煎方法や焙煎温度も特に限定されるものではなく、焙煎方法としては、直火焙煎法、熱風焙煎法、遠赤外線焙煎法、炭火式焙煎法、マイクロ波焙煎法等の一般的にコーヒー豆の焙煎に使用されるいずれの方法で行ったものであってもよい。さらに、公知の焙煎前処理を行った生豆を焙煎したものであってもよい。
【0054】
可溶性固形分の抽出効率が高くなるため、焙煎コーヒー豆は、可溶性固形分が抽出される前に粉砕されていることが好ましい。焙煎コーヒー豆の粉砕は、ロールミル等の一般的な粉砕機を用いて行うことができる。粉砕度は特に限定されるものではなく、粗挽き、中粗挽き、中挽き、中細挽き、細挽きなどの種々の形状の焙煎コーヒー豆を用いることができる。
【0055】
コーヒー抽出液は、焙煎コーヒー豆に加熱した水を接触させて可溶性固形分を抽出させることにより得られる。抽出方法は、一般的にコーヒーを淹れる際に用いられる方法や、インスタントコーヒーを製造する際に、焙煎コーヒー豆の粉砕物から可溶性固形分を抽出する際に用いられる方法により行うことができる。具体的には、ドリップ式、エスプレッソ式、サイフォン式、パーコレーター式、コーヒープレス(フレンチプレス)式、高圧抽出、連続高圧抽出等のいずれを用いて行ってもよい。
【0056】
インスタントコーヒーは、市販品を用いてもよいし、コーヒー抽出液を乾燥して調製したものを用いてもよい。コーヒー抽出液を乾燥する方法としては、凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥等が挙げられる。また、コーヒー抽出液を乾燥する前に、必要に応じてコーヒー抽出液を濃縮してもよい。かかる該濃縮方法としては、熱濃縮、冷凍濃縮、逆浸透膜や限外濾過膜等を用いた膜濃縮等の汎用されている濃縮方法により行うことができる。
【0057】
本発明の製造方法において、本発明の容器詰めコーヒー飲料のpHを調整してもよく、例えば、ブラックコーヒーの場合、約5.0~約7.0の範囲内とすることができ、乳入りコーヒーの場合、約6.0~約7.2の範囲内とすることができる。pHの調整は後述するpH調整剤や酸味料を添加することにより行うことができる。
【0058】
本発明の製造方法において、前述の「コーヒー成分」のみを用いて本発明の容器詰めコーヒー飲料を製造してもよいし、コーヒー成分以外に、任意成分をさらに用いてもよい。任意成分を用いる場合、任意成分を用いる方法は特に制限されず、容器詰めコーヒー飲料の一般的な製造方法において、任意成分を用いる方法を使用することができる。
【0059】
本発明の製造方法において、コーヒー飲料を殺菌処理することが好ましく、殺菌処理の方法としては前述した方法が挙げられる。また、本発明の製造方法において、コーヒー飲料を容器に充填し、容器詰めコーヒー飲料とすることができる。
【0060】
(本発明の容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時の香味改善方法)
本発明の容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時の香味改善方法(本発明の香味改善方法)としては、Brix値が0.3~3.0である容器詰めコーヒー飲料の製造において、コーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量を2.0ppm以下に調整することを含む、容器詰めコーヒー飲料の常温飲用時の香味改善方法である限り、特に制限されない。
【0061】
本発明の容器詰めコーヒー飲料のBrix値は、前述したように、本発明の容器詰めコーヒー飲料を製造する際に用いるコーヒー成分の量や濃度を調整することによって、調整することができる。
【0062】
また、本発明の容器詰めコーヒー飲料中の2-メチルピラジン含有量の調整方法や、pH調整方法や、容器詰め方法、殺菌処理方法などについては、本発明の製造方法において前述したとおりである。
【0063】
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0064】
[試験1]市販の容器詰めコーヒー飲料や、一般的な抽出法によるコーヒー飲料における2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジンの濃度の測定
参考のために、市販の容器詰めコーヒー飲料や、一般的な抽出法によるコーヒー飲料における2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジン(以下、3種をまとめて「ピラジン類」とも表示する。)の濃度を測定した。
【0065】
(1.サンプルコーヒー飲料の調製など)
市販の容器詰めコーヒー飲料を3種類用意し、それぞれを試験例1~3とした。
次に、一般的な焙煎コーヒー豆粉砕物を5種類用意し、それぞれの焙煎コーヒー豆粉砕物300gを、3500mLのお湯で抽出し、コーヒー香気の香料を添加せずに調製したコーヒー飲料を、それぞれ試験例4~8とした。なお、試験例4ではブラジル産、焙煎度L15の焙煎コーヒー豆粉砕物を、試験例5ではブラジル産、焙煎度L20の焙煎コーヒー豆粉砕物を、試験例6ではブラジル産、焙煎度L25の焙煎コーヒー豆粉砕物を、試験例7ではベトナム産、焙煎度L20の焙煎コーヒー豆粉砕物を、試験例8ではエチオピア産、焙煎度L20の焙煎コーヒー豆粉砕物をそれぞれ用いた。
【0066】
(2.ピラジン類濃度の測定)
試験例1~8の各サンプルコーヒー飲料について、以下の分析方法及び定量方法で、ピラジン類の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0067】
<分析方法>
GC-MS分析条件は、以下のとおりである。
使用機器: GCMS-QP2020 SHIMADZU製、AOC-6000 AUTO INJECTOR SHIMADZU製
検出方法: 質量分析法。GCMS-QP2020 SHIMADZU製
カラム: Phenomenex製 ZB-WAX(60.0m×0.25μm×0.25mmID)
分析方法:ヘッドスペース固相マイクロ抽出(HS-SPME)法による

SPME条件:
ファイバー: スペルコ製 SPME Fiber Assembly 50/30μm DVB/CAR/PDMS Coating 型番;57329-U
Conditioning Temperature:270℃
Pre Conditioning Time:0分
IncubationTime(インキュベーション時間);5分
Incubation Temperature(インキュベーション温度);40℃
Agitator Speed(撹拌器スピード);250rpm
Sample Vial Depth(バイアル瓶へのファイバー挿入長);22mm
SampleExtract Time(抽出時間);15分
SampleDesorb Time(脱着時間);3分
Post Conditioning Time(ファイバークリーニング時間);20分

GC条件:
カラムオーブン温度;50℃
気化室温度;240℃
昇温プログラム;50℃に5分保持、4℃/分で昇温、230℃に5分保持
注入モード;スプリットレス
サンプリング時間;3.5分
キャリアガス;He、キャリアガス線速度一定モード
線速度;30cm/秒

MS分析条件:
イオン源温度;200℃
インタフェース温度;240℃
開始時間;5分
終了時間;55分
測定モード;スキャン
イベント時間;0.5秒
検出分子量;33-350m/z

サンプル調製: 20mlスクリューキャップ付きバイアル瓶に、サンプル5ml、内部標準を50μl、エタノール20μl封入
内部標準: 0.1%シクロヘキサノール
【0068】
<定量方法>
サンプル中の各成分濃度の定量は絶対検量線法で行った。
市販の2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジンを、市販のエタノールを用いて1%溶液として調整する。
その後、上記調整品を用いて、2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジンの終濃度がそれぞれ0.5、1、5、10ppmとなるようMilliQ水を用いて調整したものを検量線用サンプルとする。なお、検量線用サンプルはエタノールの終濃度が3960ppmとなるよう市販のエタノールを用いて調整した。
検量線用サンプルは[0067]と同様に内部標準を封入した条件で分析を行い、既知の調整濃度に対する検量線を得た。なお、サンプル調製時に合わせて封入したエタノールは、検量線サンプルの分析時には添加せず、代わりに同量のMilliQ水を添加した。
【0069】
(3.Brix値の測定)
試験例1~8の各サンプルコーヒー飲料のBrix値を、糖度計を用いて測定した。その結果を表1に示す。なお、市販の容器詰めコーヒー飲料である試験例1~3のBrix値については、コーヒー成分以外の副原料(香料など)の可溶性固形分も含まれた数値である。ただし、試験例1~3のいずれの容器詰めコーヒー飲料も乳成分を含んでおらず、副原料によるBrix値への影響は小さい。
【0070】
【表1】
【0071】
[試験2]容器詰めコーヒー飲料の香味に与える、ピラジン類の影響
容器詰めコーヒー飲料の香味に対して、ピラジン類(すなわち、2-メチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン)がどのような影響を与えるかを調べるために、以下の試験を行った。
【0072】
(1.サンプルコーヒー飲料の調製)
インスタントコーヒー(以下、「インスタントコーヒーA」とも表示する。)をお湯に添加して、1重量%のインスタントコーヒー溶液を得た。そのインスタントコーヒー溶液に適量の炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)を添加してコーヒーベース液を調製した。コーヒーベース液に、所定量の2-メチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン又は2,5-ジメチルピラジンを添加した後、容器内に充填し、F値=4以上の条件(121℃、4分間以上)でレトルト殺菌を行って、サンプルコーヒー飲料(表5に記載の試験例9~20)を調製した。
【0073】
(2.ピラジン類濃度の測定)
試験例9~20の各サンプルコーヒー飲料について、試験1で用いた方法と同じ方法で2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジンの各濃度の測定を行った。その結果を表5に示す。
【0074】
(3.Brix値の測定)
試験例9~20の各サンプルコーヒー飲料について、試験1で用いた方法と同じ方法でBrix値の測定を行った。その結果を表5に示す。
【0075】
(4.官能評価)
各サンプルコーヒー飲料について、冷温(5℃)と常温(25℃)に調整したサンプルコーヒー飲料をそれぞれ用意した。各サンプルコーヒー飲料の官能評価は、訓練されたパネリスト6名によって、以下の表2の4つの各評価項目(項目A~項目D)について、表3の評価基準で行った。項目A~項目Dの評価項目ごとに、6名の評価点の平均点を算出し、その平均点をその評価項目の官能評価点とした。また、サンプルコーヒー飲料の4つの評価項目の官能評価点の合計点を算出した。また、パネリストが、常温飲用時のサンプルコーヒー飲料の香味を、項目A~項目Dの評価にとらわれずに総合的に評価する観点から、表4の基準で4段階評価し(◎、〇、△、×)、そのサンプルコーヒー飲料の官能評価の総合判定とした。
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
試験例9~20の各サンプルコーヒー飲料について、官能評価を行った結果を表5に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
表5の結果から、以下の<1>~<4>のことが示された。
<1>2-メチルピラジンの含有量が3ppmであり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.8ppmであり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.8ppmである場合は、官能評価の総合判定が×となり(試験例20)、本発明の効果(すなわち、冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒーの香り立ちの向上が促進され;冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるコーヒーの味覚の輪郭がぼやけることが抑制され;冷温飲用時と比較した、常温飲用時における苦渋みの増加が抑制され;かつ、冷温飲用時と比較した、常温飲用時におけるキレや止渇感の低下が抑制されること)が得られないものの、試験例9~19における3種のピラジン類含有量では、官能評価の総合判定が△以上(△、〇又は◎)となることが示された。これらのことから、2-メチルピラジンの含有量が2ppm以下である場合、好ましくは、2-メチルピラジンの含有量が2ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下である場合、より好ましくは2-メチルピラジンの含有量が1.2ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下である場合などは、官能評価の総合判定が△以上(△、〇又は◎)となる(試験例9~19)蓋然性が高いことが示された。
さらに、試験例19から試験例12、試験例9へと、3種のピラジン類のすべての濃度を低下させていくと、4つの各評価項目の評価点が全体的に高くなっていくことが示された。
また、表5の結果から、2-メチルピラジンの含有量が1.2ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下である場合は、官能評価の総合判定が〇以上(〇又は◎)となる蓋然性が高いことが示され(試験例9~17)、2-メチルピラジンの含有量が1.0ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.45ppm以下である場合は、総合判定が〇以上(〇又は◎)となる蓋然性がさらに高いことが示され(試験例9~17)、2-メチルピラジンの含有量が0.8ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.4ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.4ppm以下である場合は、総合判定が〇以上(〇又は◎)となる蓋然性がより高いことが示された(試験例9~17)。
また、表5の結果から、2-メチルピラジンの含有量が0.62ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.38ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.32ppm以下である場合は、官能評価の総合判定が◎となる蓋然性が高いことが示され(試験例9~14)、2-メチルピラジンの含有量が0.6ppm以下であり、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.36ppm以下であり、かつ、2,6-ジメチルピラジン含有量が0.3ppm以下である場合は、総合判定が◎となる蓋然性がさらに高いことが示された(試験例9~14)。
【0082】
<2>試験例19、試験例11は、2,5-ジメチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジンの濃度がいずれも0.3ppmである点で共通しているが、試験例19から試験例11へと、2-メチルピラジン濃度のみを低下させていくと、4つの各評価項目の評価点が全体的に向上していくことが示された。
【0083】
<3>試験例18、試験例12、試験例10は、2,5-ジメチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジンの濃度がいずれも0.1ppmである点で共通しているが、試験例18から試験例12、試験例10へと、2-メチルピラジン濃度のみを低下させていくと、4つの各評価項目の評価点が全体的に向上していくことが示された。
【0084】
<4>試験例19の各評価点を基準として、試験例14の各評価点と、試験例18の各評価点とを比較すると、試験例14の方が試験例18よりも各評価点が全体的に向上していることが示された。
試験例14では、試験例19に対して、2-メチルピラジン濃度が約3分の1であること(なお、試験例14では、試験例19に対して、2,5-ジメチルピラジン濃度は少し高く、2,6-ジメチルピラジン濃度は少し低いため、2,5-ジメチルピラジン濃度と2,6-ジメチルピラジン濃度の合計濃度は、試験例14と試験例19ではおおむね同等であることから、試験例14と試験例19の各評価点の差のほとんどは2-メチルピラジン濃度が異なることに起因するものと考えられる)、並びに、試験例18では、試験例19に対して、2,5-ジメチルピラジン濃度及び2,6-ジメチルピラジン濃度が3分の1であることを考慮した上で、試験例14の方が試験例18よりも各評価点が全体的に高いことをさらに考慮すると、2,5-ジメチルピラジン濃度及び2,6-ジメチルピラジン濃度よりも、2-メチルピラジン濃度の方が、本発明の効果に与える影響が大きいことが示された。
【0085】
[試験3]コーヒー抽出液とインスタントコーヒーの混合による、ピラジン類の調整
ピラジン類を添加するのではなく、コーヒー抽出液とインスタントコーヒーを混合してピラジン類濃度を所定の濃度範囲に調整した場合にも、本発明の効果が得られるかを確認するために、以下の試験を行った。
【0086】
(1.サンプルコーヒー飲料の調製)
ブラジル産のコーヒー豆(L値20)粉砕物300gを、3500mLのお湯で抽出し、コーヒー抽出液を得た。
一方、インスタントコーヒーAをお湯に添加して、1重量%のインスタントコーヒー溶液を得た。
コーヒー抽出液、インスタントコーヒー溶液のそれぞれに適量の炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)を添加したものを、以下のコーヒー抽出液、インスタントコーヒー溶液として用いた。
【0087】
前述のコーヒー抽出液と、インスタントコーヒー溶液を、試験例21では重量比で1:9にて混合し、試験例22では重量比で5:5にて混合した。また、試験例23では、インスタントコーヒー溶液を用いず、前述のコーヒー抽出液のみを用いた。試験例21~23のコーヒー飲料をそれぞれ容器内に充填し、F値=4以上の条件でレトルト殺菌を行って、サンプルコーヒー飲料(表6に記載の試験例21~23)を調製した。
【0088】
(2.ピラジン類濃度の測定)
試験例21~23の各サンプルコーヒー飲料について、試験1で用いた方法と同じ方法で2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジンの各濃度の測定を行った。その結果を表6に示す。
【0089】
(3.Brix値の測定)
試験例21~23の各サンプルコーヒー飲料について、試験1で用いた方法と同じ方法でBrix値の測定を行った。その結果を表6に示す。
【0090】
(4.官能評価)
試験例21~23の各サンプルコーヒー飲料について、試験2で用いた方法と同じ方法で官能評価を行った。その結果を表6に示す。
【0091】
【表6】
【0092】
表6の結果から、ピラジン類を添加するのではなく、コーヒー抽出液とインスタントコーヒーを混合してピラジン類濃度を所定の濃度範囲に調整した場合にも、本発明の効果が得られることが示された。
【0093】
[試験4]容器詰めコーヒー飲料の殺菌方法の違いによる影響
試験例1~3における殺菌処理は、サンプルコーヒー飲料を容器内に充填した後に行うレトルト殺菌であったが、サンプルコーヒー飲料を容器内に充填する前に行う超高温殺菌法(UHT法)を用いた場合であっても、本発明の効果が得られるかを調べるために、以下の試験を行った。
【0094】
(1.サンプルコーヒー飲料の調製)
インスタントコーヒー(試験2で使用したインスタントコーヒーA)をお湯に添加して、1重量%のインスタントコーヒー溶液を得た。そのインスタントコーヒー溶液に適量の炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)を添加してコーヒーベース液を調製した。コーヒーベース液に、所定量の2-メチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン又は2,5-ジメチルピラジンと、コーヒー用の香料を添加した後、容器内に充填し、F値=4以上の条件(121℃、4分間以上)でレトルト殺菌を行って、サンプルコーヒー飲料(表7に記載の試験例24)を調製した。
【0095】
また、前述のコーヒーベース液に、所定量の2-メチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン又は2,5-ジメチルピラジンを添加した後、UHT法で殺菌を行い(132℃、30秒;F値=4相当以上)、容器内に充填してサンプルコーヒー飲料(表7に記載の試験例25)を調製した。
【0096】
(2.ピラジン類濃度の測定)
試験例24~25の各サンプルコーヒー飲料について、試験1で用いた方法と同じ方法で2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジンの各濃度の測定を行った。その結果を表7に示す。
【0097】
(3.Brix値の測定)
試験例24~25の各サンプルコーヒー飲料について、試験1で用いた方法と同じ方法でBrix値の測定を行った。その結果を表7に示す。なお、試験例24~25のBrix値は、コーヒー成分以外の香料の可溶性固形分も含まれた数値である。
【0098】
(4.官能評価)
試験例24~25の各サンプルコーヒー飲料について、試験2で用いた方法と同じ方法で官能評価を行った。その結果を表7に示す。
【0099】
【表7】
【0100】
表7の結果から、本発明の効果は殺菌方法に依らずに得られることが示された。
【0101】
[試験5]容器詰めコーヒー飲料のBrix値による影響
容器詰めコーヒー飲料のBrix値が変化しても本発明の効果が得られるかを確認するために、以下の試験を行った。
【0102】
(1.サンプルコーヒー飲料の調製)
インスタントコーヒー(試験2で用いたインスタントコーヒーA)をお湯に添加して、0.7重量%のインスタントコーヒー溶液を得た。そのインスタントコーヒー溶液に適量の炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)を添加してコーヒーベース液を調製した。このコーヒーベース液を容器内に充填し、F値=4以上の条件(121℃、4分間以上)でレトルト殺菌を行って、サンプルコーヒー飲料(試験例26)を調製した。
インスタントコーヒーの濃度を0.7重量%ではなく、1.9重量%としたこと以外は上記と同じ方法でサンプルコーヒー飲料(試験例27)を調製した。
【0103】
(2.ピラジン類濃度の測定)
試験例26~27の各サンプルコーヒー飲料について、試験1で用いた方法と同じ方法で2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジンの各濃度の測定を行った。その結果を表8に示す。
【0104】
(3.Brix値の測定)
試験例26~27の各サンプルコーヒー飲料について、試験1で用いた方法と同じ方法でBrix値の測定を行った。その結果を表8に示す。
【0105】
(4.官能評価)
試験例26~27の各サンプルコーヒー飲料について、試験2で用いた方法と同じ方法で官能評価を行った。その結果を表8に示す。
【0106】
【表8】
【0107】
表8の結果から、Brix値が表5記載のように1.22ではなく、0.75や2.30である場合であっても、本発明の効果が得られることが示された。
【0108】
[試験6]容器詰めコーヒー飲料の、使用する原料の種類による影響
インスタントコーヒーの種類等によっては、本発明の効果が得られない場合があるかを確認するために、以下の試験を行った。
【0109】
(1.サンプルコーヒー飲料の調製)
インスタントコーヒー(試験2、3で用いたインスタントコーヒーA)をお湯に添加して、2.0重量%のインスタントコーヒー溶液を得た。そのインスタントコーヒー溶液に適量の炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)を添加してコーヒーベース液を調製した。このコーヒーベース液を容器内に充填し、F値=4以上の条件(121℃、4分間以上)でレトルト殺菌を行って、サンプルコーヒー飲料(試験例28)を調製した。
【0110】
インスタントコーヒーAとは異なる市販品のインスタントコーヒーBをお湯に添加して、2.1重量%のインスタントコーヒー溶液を得た。そのインスタントコーヒー溶液に適量の炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)を添加してコーヒーベース液を調製した。このコーヒーベース液を容器内に充填し、F値=4以上の条件(121℃、4分間以上)でレトルト殺菌を行って、サンプルコーヒー飲料(試験例29)を調製した。なお、試験例28、29の前述の調製方法から分かるように、いずれにおいても香料を添加していない。
【0111】
(2.ピラジン類濃度の測定)
試験例28及び29の各サンプルコーヒー飲料について、試験1で用いた方法と同じ方法で2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジンの各濃度の測定を行った。その結果を表9に示す。
【0112】
(3.Brix値の測定)
試験例28及び29の各サンプルコーヒー飲料について、試験1で用いた方法と同じ方法でBrix値の測定を行った。その結果を表9に示す。
【0113】
(4.官能評価)
試験例28及び29の各サンプルコーヒー飲料について、試験2で用いた方法と同じ方法で官能評価を行った。その結果を表9に示す。
【0114】
【表9】
【0115】
表9の結果から、インスタントコーヒーの種類によっては、それを用いて調製したコーヒー飲料中の2-メチルピラジン濃度が2.0ppmを超えて、本発明の効果が得られない場合があることが示された。