(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104549
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】中空スプルー
(51)【国際特許分類】
A61C 13/20 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
A61C13/20 B
A61C13/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186859
(22)【出願日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2020219438
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514306629
【氏名又は名称】株式会社DSi
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩志
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159HH02
4C159HH41
4C159HH54
(57)【要約】
【課題】金属技工物の製作過程においてワックス技工物とスプルーとの接着強度を高め、かつ金属技工物の原材料である金属の使用量を抑制することが可能な中空スプルーを提供する。
【解決手段】中空スプルーの使用方法は、中空スプルーの端部E1に溶融した接着部材を付着させるステップと、端部E1の切断面Sに形成された先端部Tをワックス技工物に貫入させるステップとを含む。好ましくは、複数の中空スプルー1を盤状の土台Bに植立するステップをさらに含み、このときの中空スプルー1の長さは、土台Bの中心に近いほど長い。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属技工物の鋳造に使用されるスプルーであって、
チューブ状の本体を有し、
前記本体の少なくとも一方の端部E1には、前記チューブの軸Xに対し傾斜した切断面Sが形成されていることを特徴とする
中空スプルー。
【請求項2】
前記本体の一方の端部E1の前記切断面Sに形成された先端部Tに溶融した接着部材を付着させ、前記先端部Tをワックス技工物に貫入させることにより、前記溶融した接着部材が前記本体の内部空洞内に流入することを特徴とする
請求項1記載の中空スプルー。
【請求項3】
チューブ状の本体を有し、前記本体の少なくとも一方の端部E1には、前記チューブの軸Xに対し傾斜した切断面Sが形成されていることを特徴とする中空スプルーの使用方法であって、
前記中空スプルーの前記端部E1に溶融した接着部材を付着させるステップと、
前記端部E1の前記切断面Sに形成された先端部Tをワックス技工物に貫入させるステップとを含む
中空スプルーの使用方法。
【請求項4】
複数の前記中空スプルーを盤状の土台に植立するステップをさらに含み、
前記植立するステップにおいて、前記中空スプルーの長さは、前記土台の中心に近いほど長い
請求項3記載の中空スプルーの使用方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の中空スプルーが複数植立された盤状の土台であって、
前記土台の中心に近いほど長い前記中空スプルーが植立されている
土台。
【請求項6】
前記土台は、第1の層と、前記第1の層より柔らかいワックスを材料とする第2の層とを含む複層構造を有する
請求項5記載の土台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工製品の鋳造過程において使用される中空スプルーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳造により製作される金属加工製品(典型的には歯科技工物や宝飾品等。以下、金属技工物と称する)の製造工程は典型的には次のようなものであった。
【0003】
(ステップA1)技工士(典型的には歯科技工士や宝飾品製造技術者等)は、ワックス(蝋)を材料とする技工物(以下、ワックス技工物と称する)を成形する。歯科技工物の場合は、まず患者の口腔内形状を型取りして石膏模型(口腔内模型という)を作成し、口腔内模型上にワックス技工物を成形することが一般的である。
【0004】
(ステップA2)ワックスでできた土台の上に、スプルーを介してワックス技工物を設置する。スプルーとは、完全焼却できるプラスチック等でできたソリッドな(中身の詰まった)棒状の治具である。
図1に示すように、従来のスプルーの端面Eは、スプルーの中心線Xに対する角度αが略直角となるように切り落とされている。技工士は、スプルーの一方の端面に溶けたワックス(接着剤の役割をするワックス)を少量付けて技工物に接着(いわゆる面着)させ、スプルーの他方の端面は土台に植立させる。この際、スプルーと技工物の接続箇所、及びスプルーと土台の接続箇所の周囲には、接着強度を高めるために溶けたワックスを山状に適量盛り付ける(肉盛り)。
【0005】
(ステップA3)ワックス製の土台、スプルー及びワックス技工物を石膏に埋没させる。石膏の硬化後、これを加熱し、石膏内部のワックス製の土台、スプルー及びワックス技工物を溶出又は気化させる。これにより、石膏内部に土台、スプルー及びワックス技工物の形状を型取ったひと続きの空洞が形成される。
【0006】
(ステップA4)石膏内に形成された空洞の土台跡にあたる部分に、溶融した金属を流し入れる。スプルー跡にあたる空洞部が流路となり、溶融した金属がワックス技工物跡にあたる空洞部に流れ込む。
【0007】
(ステップA5)金属の硬化後、石膏を剥がすことで、金属技工物、スプルー及び土台が一体となった金属製品が得られる。金属技工物からスプルーを切断し、最後に金属技工物を研磨して、最終製品としての金属技工物が完成する。ここで金属技工物とスプルーとを切り離す際には、金属技工物側に肉盛りやスプルー端部がある程度残るように切断する。それから金属技工物表面に残った肉盛り等を研磨により除去する。これにより、切断の際に金属技工物が欠損することを防止できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ステップA5で説明したように、金属技工物の製造過程においては、金属技工物側に残った肉盛りやスプルー端部を研磨により除去する必要がある。しかしながら、金属技工物の原料となる貴金属の価格は近年上昇しており、この研磨工程により失われる原料のコストは今や無視できないものとなっている。
【0009】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、金属技工物の製作過程においてワックス技工物とスプルーとの接着強度を高め、かつ金属技工物の原材料である金属の使用量を抑制することが可能な中空スプルーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施の形態によれば、中空スプルーは、金属技工物の鋳造に使用されるスプルーであって、チューブ状の本体を有し、前記本体の少なくとも一方の端部E1には、前記チューブの軸Xに対し傾斜した切断面Sが形成されていることを特徴とする。
一実施の形態によれば、中空スプルーは、前記本体の一方の端部E1の前記切断面Sに形成された先端部Tに溶融した接着部材を付着させ、前記先端部Tをワックス技工物に貫入させることにより、前記溶融した接着部材が前記本体の内部空洞内に流入することを特徴とする。
一実施の形態によれば、中空スプルーの使用方法は、チューブ状の本体を有し、前記本体の少なくとも一方の端部E1には、前記チューブの軸Xに対し傾斜した切断面Sが形成されていることを特徴とする中空スプルーの使用方法であって、前記中空スプルーの前記端部E1に溶融した接着部材を付着させるステップと、前記端部E1の前記切断面Sに形成された先端部Tをワックス技工物に貫入させるステップとを含む。
一実施の形態によれば、前記中空スプルーの使用方法は、複数の前記中空スプルーを盤状の土台に植立するステップをさらに含み、前記植立するステップにおいて、前記中空スプルーの長さは、前記土台の中心に近いほど長い。
一実施の形態によれば、土台は、前記中空スプルーが複数植立された盤状の土台であって、前記土台の中心に近いほど長い前記中空スプルーが植立されている。
一実施の形態によれば、前記土台は、第1の層と、前記第1の層より柔らかいワックスを材料とする第2の層とを含む複層構造を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属技工物の製作過程においてワックス技工物とスプルーとの接着強度を高め、かつ金属技工物の原材料である金属の使用量を抑制することが可能な中空スプルーを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図10】技工物と中空スプルー1とを接続する様子を示す図である。
【
図11】技工物と中空スプルー1とを接続する様子を示す断面図である。
【
図12】中空スプルー1を貫入させたワックス技工物Wの一例を示す図である。
【
図16】鋳造工程において作成される鋳造品CAの一例を示す図である。
【
図18】カット工程において作成される金属技工物Dの一例を示す図である。
【
図19】中空スプルー1の使用方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する
<構造>
図2乃至
図9を用いて、本発明の実施の形態にかかる中空スプルー1の構造について説明する。
【0014】
図2は中空スプルー1の斜視図、
図3は中空スプルー1の正面図、
図4は中空スプルー1の背面図、
図5は中空スプルー1の平面図、
図6は中空スプルー1の底面図、
図7は中空スプルー1の左側面図、
図8は中空スプルー1の右側面図、
図9は中空スプルー1の断面図である。
【0015】
中空スプルー1はチューブ状の構造物である。すなわち、ドーナツ状の断面Cを、直交する軸Xに沿って押し出してなる柱状の物体である。中空スプルー1の長さL、外径R1、内径R2(<R1)の値はいずれも限定されないが、例えば歯科技工物の制作においては7mm<L<30mm、1mm<R1<3mm、0.1mm<肉厚(=R1-R2)<0.3mm程度であると使い勝手が良い。
【0016】
中空スプルー1の材質は、典型的には完全焼却できるプラスチック、すなわち加熱工程において完全に溶融又は気化するプラスチックである。なお、このようなプラスチックに限らず、常温においては個体であって加工が容易であり、かつ加熱することにより溶融又は気化する性質を持つ他の任意の材料を用いても構わない。但し、その材料の融点は、後述する石膏等の型材の融点よりも低く、ワックス技工物との接着剤として使用される溶融ワックスよりも高い必要がある。
【0017】
中空スプルー1の両端部E1,E2は、少なくとも一方が、軸Xに対し傾斜した切断面Sが形成されるように切り落とされる。例えば
図9の例では、端部E1が斜めに切り落とされて、鋭い先端部Tを有する切断面Sが形成されている。
【0018】
<製造方法>
中空スプルー1の典型的な製造方法について説明する。
(製法1)長さLL(>L)の中空プラスチック棒を、長さL毎に切断する。切断面は、中空プラスチック棒の軸Xに対して直交させず、傾斜角を設ける。これにより、両端部E1,E2にそれぞれ切断面Sが形成された中空スプルー1を製造できる。
【0019】
(製法2)長さLL(>L)の中空プラスチック棒を、長さ2L毎に切断する。この際の切断面は、中空プラスチック棒の軸Xに対して直交させても良い。次に、長さ2Lに切り出されたこの中空プラスチック棒を、長さLの位置で切断する。この際の切断面は、中空プラスチック棒の軸Xに対して直交させず、傾斜角を設ける。これにより、一方の端部E1には切断面Sが形成され、他方の端部E2には従来のような垂直な切断面等が形成された中空スプルー1を製造できる。
【0020】
<使用方法>
図19のフローチャートを用いて、中空スプルー1の典型的な使用方法について説明する。
【0021】
(ステップB1)技工士(典型的には歯科技工士や宝飾品製造技術者等)は、ワックス(蝋)でワックス技工物を成形する。歯科技工物の場合は、まず患者の口腔内形状を型取りして石膏模型(口腔内模型という)を作成し、口腔内模型上にワックス技工物を成形することが一般的である。
【0022】
(ステップB2)ワックスでできた土台の上に、中空スプルー1を介してワックス技工物を設置する。まず、ワックス技工物と中空スプルー1とを接着し、次に、この中空スプルー1をワックス製の土台に植立する(植立工程)。
【0023】
図10及び
図11は、ワックス技工物と中空スプルー1とを接続する様子を示す図である。技工士は、中空スプルー1の端部E1に形成された切断面Sの先端部Tを、ワックス技工物Wに貫入させる。この際、
図11に示すように、切断面Sの全部ではなく一部のみがワックス技工物Wに埋没する程度に貫入させることが好ましい。これにより、ワックス技工物Wと中空スプルー1とが交わる面の面積が、断面Cの面積よりも小さくなるようにする。
【0024】
中空スプルー1をワックス技工物Wに貫入させる際には、中空スプルー1の先端部Tに予め加熱された溶融ワックスMを少量付けてから貫入させる。このとき、
図11に示すように、溶融ワックスMは中空スプルー1の内部の空洞に流入する。同時に、中空スプルー1の外周部にも少量付着して肉盛りを形成する。溶融ワックスMが徐々に冷却されて固まることで、ワックス技工物Wと中空スプルー1とが接着される。
【0025】
従来のスプルーでは、スプルー外周に付着した溶融ワックスMによる肉盛りが主にスプルーを支持していた。一方、中空スプルー1では、溶融ワックスMが、中空スプルー1を内側の空洞部においても支持するため、中空スプルー1とワックス技工物Wとをより強固に接着することができる。また、中空スプルー1では、溶融ワックスMと中空スプルー1との接触面積が従来のスプルーよりも増加するため、接着力はより強固になる。特に、本実施の形態では切断面Sが中空スプルー1の進行方向(軸X方向)に対して傾斜しているため、切断面Sを軸Xに対し垂直に設けた場合に比べ、より多くの溶融ワックスMが内部に流入しやすい。これにより、強い接着力を容易に得ることが可能である。
【0026】
このように、本実施の形態では、ワックス技工物Wと中空スプルー1とが交わる面の面積が、従来のスプルーの場合(断面Cの面積)よりも小さい。よって、その周囲に形成される肉盛りの大きさも従来より小さくて済む。また、溶融ワックスMが中空スプルー1の内部に入り込んで接着力を発揮するので、肉盛りの大きさをさらに小さくすることができる。
【0027】
図12は、中空スプルー1を貫入させたワックス技工物Wの一例である。この例では、長さLの異なる数種類の中空スプルー1が使用されている。好ましくは、長さLに応じて中空スプルー1の色を変えても良い。例えば、長さL1,L2,L3の3種類の中空スプルー1がある場合、長さL1の中空スプルー1は赤色、長さL2の中空スプルー1は黄色、長さL3の中空スプルー1は緑色にそれぞれ着色する。これにより、長さLの異なる中空スプルーを容易に見分けることができる。
【0028】
図13は、ワックス製の土台Bに複数の中空スプルー1を植立する工程を示している。ワックス製の土台Bは盤状の形状を備えており、この例では円盤状である。好ましくは、円盤状の土台Bは比較的硬いワックスを材料とする第1の層と、第1の層よりも柔らかいワックスを材料とする第2の層とを含む複層構造を有する。このうち第2の層の表面に中空スプルー1を植立する。これにより、第1の層が土台Bの剛性を担保しつつ、第2の層の柔軟性により中空スプルー1の植立が容易になるので、植立工程を効率的に進めることができる。なお、作業前に第2の層に予め熱を加えると、第2の層の表面が軟化するためさらに作業性が向上する。
【0029】
植立工程では、まず円盤の中心付近に最も長い中空スプルー1を植立する。つづいて他の中空スプルー1を植立していくが、このとき
図14の断面図に示すように、より円盤の中心に近い位置には長さLがより長い中空スプルー1を、中心から離れるにつれ長さLがより短い中空スプルー1を植立することが好ましい。例えば、長さLに応じて中空スプルー1が異なる色に着色されており、長さL1の中空スプルー1は赤色、長さL2の中空スプルー1は黄色、長さL3の中空スプルー1は緑色である場合を考える(L1>L2>L3)。この場合、まず赤色の中空スプルー1を土台Bの中心部に植立し、次に黄色の中空スプルー1を赤色の中空スプルー1の周囲に植立し、最後に緑色の中空スプルー1を黄色の中空スプルー1の周囲に植立する。こうすることで、後のカット工程(金属技工物とスプルーを切り離す工程)における作業が容易になる。
【0030】
(ステップB3)ワックス製の土台、中空スプルー1及びワックス技工物を石膏に埋没させる(埋没工程)。
図15は、埋没工程の様子を示している。まず、中空スプルー1を植立したワックス製の土台を、ステンレス製のキャスティングリングCR内に収める。次に、キャスティングリング内部に液体の石膏を流し込んで埋没させる。
石膏の硬化後、これを加熱し、内部のワックス及びプラスチックを溶出又は気化させる。これにより、石膏内部に土台、中空スプルー1及びワックス技工物の形状を型取ったひと続きの空洞が形成される。
【0031】
(ステップB4)石膏内に形成された空洞の土台跡にあたる部分に、溶融した金属を流し入れる(鋳造工程)。中空スプルー1跡にあたる空洞部が流路となり、溶融した金属がワックス技工物跡にあたる空洞部に流れ込む。
【0032】
(ステップB5)金属の硬化後、石膏を剥がすことで、金属技工物、スプルー及び土台が一体となった金属製品(鋳造品CA)が得られる(
図16)。技工士は、丸鋸SWなどを使用して鋳造品CAから金属技工物Dを切り離し(カット工程)、最後に金属技工物を研磨して(研磨工程)、最終製品としての金属技工物が完成する。
【0033】
この際、
図17に示すように、土台の外周側に植立されている金属技工物Dから作業を始め、土台のより中心側に植立されている金属技工物Dに順に着手していくと良い。本実施の形態の植立工程では、土台の外周側ほど短い中空スプルー1が、中心側ほど長い中空スプルー1が使用された。そのため、外周側に植立された金属技工物Dを切り離した後、スプルー(正確に言えば、鋳造品CAのうち中空スプルー1跡に相当する部位)が土台に残った状態にしておいても、これが障害となることなく、より中心側に植立された金属技工物Dを無理なく丸鋸SWでカットすることができる。仮に、全ての中空スプルー1が同じような長さであったとすれば、中心側の金属技工物Dを丸鋸SWでカットする際に、外周側のスプルーが邪魔になる。そのため、まず金属技工物Dが切り離された外周側のスプルーを土台から取り除いてから、中心側の金属技工物Dのカット工程を実施することになる。または、金属技工物Dが切り離された外周側のスプルーを回避するように丸鋸SWを傾けながら、中心側の金属技工物Dのカット工程を実施する必要がある。前者の場合、工程が増えるため作業効率は悪化する。後者の場合、中心側のカット工程では作業精度に制約が生じるため、金属技工物D側に余分な金属が残りやすい。この余分な金属は研磨工程で失われ、高価な金属材料が無駄になってしまう。しかし、本実施の形態によれば、
図18に示すように、土台にスプルーを残したまま金属技工物Dを切り出すことができる。つまり土台からスプルーを取り除く必要がないため、作業効率が著しく向上する。また、土台の中心部に植立した金属技工物Dにも無理なく丸鋸SWがアクセスでき、高精度でカットすることができるため、金属材料の無駄を抑制できる。
【0034】
ここで金属技工物とスプルーとを切り離す際には、金属技工物側に肉盛りやスプルーの端部がある程度残るように切断する。それから金属技工物表面に残った肉盛り等を研磨により除去する。これにより、切断の際に金属技工物が欠損することを防止できる。
【0035】
本実施の形態では、中空スプルー1本体の少なくとも一方の端部E1に、中空スプルー1の軸Xに対し傾斜した切断面Sを形成した。これにより、ワックス技工物と中空スプルー1とが交わる面の面積や、肉盛りの量を従来より小さくすることができる。これにより、金属技工物表面に残される肉盛りや中空スプルー1の残骸は従来よりも少なくなる。そのため、研磨工程により失われる金属の量が従来よりも減少し、金属技工物の製造コストを抑制することが可能となる。
【0036】
また、本実施の形態では、円盤状のワックス製土台に複数の中空スプルー1を植立する際、土台の中心に近いほど長い中空スプルー1を使用した。これにより、カット工程において土台からスプルーを取り除く必要がなくなるため、作業効率を向上させることが可能である。
【0037】
なお、円盤状の土台の代わりにドーム状の土台を使用すると、同じ長さの中空スプルー1を複数植立しても同様の効果を得ることが可能である。但し、中空スプルー1を垂直に植立する作業は円盤状の土台の方がはるかに実施しやすい。また、全ての中空スプルー1が略垂直に植立されていれば、カット工程においても丸鋸の角度を略一定に保ちながら次々に金属技工物を切り離していくことができるので作業性が良い。一方、ドーム状の土台に対して植立を行うと中空スプルー1が傾斜しやすい。中空スプルー1の植立角度がばらばらであると、カット工程においてはスプルーごとに異なる角度で丸鋸を当てる必要があり、作業性が低下しやすく、金属材料の無駄も生じやすい。
【符号の説明】
【0038】
1 中空スプルー
E,E1,E2 端部
X 軸
L スプルーの切断面間距離
R1 スプルーの外径
R2 スプルーの内径
S スプルー端部の切断面
α 切断面Sと軸Xとのなす角度
T 切断面Sの先端部
W ワックス技工物
M 溶融ワックス
B 土台