(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104550
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】積層型キャパシタ及びその実装基板
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
H01G4/30 201C
H01G4/30 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187424
(22)【出願日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0184165
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0067719
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ユ クワン
(72)【発明者】
【氏名】チャ、バーム ハ
(72)【発明者】
【氏名】リー、カン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン ファ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョン ハン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC03
5E001AH09
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC19
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082FG54
5E082GG10
5E082PP06
(57)【要約】
【課題】向上された耐湿信頼性を有する積層型キャパシタ及びその実装基板を提供する。
【解決手段】
本発明は、複数の誘電体層と、上記誘電体層を間に挟んで交互に配置される複数の内部電極を含むキャパシタ本体と、上記キャパシタ本体上に上記内部電極と連結されるように配置される外部電極と、を含み、上記キャパシタ本体の幅方向のマージン及び上記内部電極の界面における上記内部電極の端部の気孔率が50%未満である積層型キャパシタ及びその実装基板を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層と、前記誘電体層を間に挟んで交互に配置される複数の内部電極を含むキャパシタ本体と、
前記キャパシタ本体上に前記内部電極と連結されるように配置される外部電極と、を含み、
前記キャパシタ本体の幅方向のマージン及び前記内部電極の界面における前記内部電極の端部の気孔率が50%未満である、積層型キャパシタ。
【請求項2】
前記キャパシタ本体の幅方向のマージン及び前記内部電極の界面における前記内部電極の端部の気孔率が24%以上である、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項3】
前記キャパシタ本体は、第1方向に互いに対向する第1面及び第2面、前記第1方向と垂直な第2方向に互いに対向する第3面及び第4面を含み、
前記内部電極が前記第1方向に交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極を含み、
前記外部電極が前記キャパシタ本体の第3面及び第4面に配置され、前記第1内部電極及び第2内部電極とそれぞれ接続される第1外部電極及び第2外部電極を含む、請求項1または2に記載の積層型キャパシタ。
【請求項4】
前記キャパシタ本体は、前記第1方向に前記第1内部電極及び前記第2内部電極が互いに重なる活性領域と、前記活性領域の上下面にそれぞれ配置される上部カバー及び下部カバーを含む、請求項3に記載の積層型キャパシタ。
【請求項5】
前記外部電極上に形成されるめっき層をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項6】
前記キャパシタ本体は、焼結時に600℃から900℃まで3000℃/min以上の速度で昇温して焼成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項7】
一面に複数の電極パッドを有する基板と、
前記電極パッドに外部電極が接続されて実装される積層型キャパシタと、を含み、
前記積層型キャパシタは、複数の誘電体層と、前記誘電体層を間に挟んで交互に配置される複数の内部電極を含むキャパシタ本体と、前記キャパシタ本体上に前記内部電極と連結されるように配置される外部電極と、を含み、前記キャパシタ本体の幅方向のマージン及び前記内部電極の界面における前記内部電極の端部の気孔率が50%未満である、積層型キャパシタの実装基板。
【請求項8】
前記キャパシタ本体の幅方向のマージン及び前記内部電極の界面における前記内部電極の端部の気孔率が24%以上である、請求項7に記載の積層型キャパシタの実装基板。
【請求項9】
前記キャパシタ本体は、焼結時に600℃から900℃まで3000℃/min以上の速度で昇温して焼成される、請求項7または8に記載の積層型キャパシタの実装基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型キャパシタ及びその実装基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型キャパシタ(MLCC:Multi-Layer Ceramic Capacitor)は、受動素子部品の一つとして、回路上で電気的信号を制御する役割を果たす。
【0003】
最近では、電子機器の小型化及び軽量化に伴い、これに用いられる積層型キャパシタも高容量化及び小型化される方向で開発が求められている。
【0004】
小型且つ高容量の積層型キャパシタを開発するためには、誘電体層の薄層化が必須であるが、誘電体層が薄くなる場合、同一駆動電圧で誘電体の単位厚さ当たり印加される電界が強くなり、これにより、絶縁抵抗の低下が発生し易くて電子機器の駆動に困難性を伴うことがある。
【0005】
特に、高温高湿負荷環境下では、内部電極と誘電体層の剥離現象が発生し易く、これにより、積層型キャパシタの絶縁抵抗の低下もより容易に起こることがあり、このような絶縁抵抗の低下は、積層型キャパシタの耐湿信頼性を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1197921号
【特許文献2】日本公開特許第2012-129508号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、向上された耐湿信頼性を有する積層型キャパシタ及びその実装基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、複数の誘電体層と、上記誘電体層を間に挟んで交互に配置される複数の内部電極を含むキャパシタ本体と、上記キャパシタ本体上に上記内部電極と連結されるように配置される外部電極と、を含み、上記キャパシタ本体の幅方向のマージン及び上記内部電極の界面における上記内部電極の端部の気孔率が50%未満である積層型キャパシタを提供する。
【0009】
本発明の一実施形態において、上記キャパシタ本体は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面、上記第1方向と垂直な第2方向に互いに対向する第3及び第4面を含み、上記内部電極が上記第1方向に交互に配置される第1及び第2内部電極を含み、上記外部電極が上記キャパシタ本体の第3及び第4面に配置され、上記第1及び第2内部電極とそれぞれ接続される第1及び第2外部電極を含むことができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、上記キャパシタ本体は、上記第1方向に上記第1及び第2内部電極が互いに重なる活性領域と、上記活性領域の上下面にそれぞれ配置される上部及び下部カバーを含むことができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、上記外部電極上に形成されるめっき層をさらに含むことができる。
【0012】
本発明の一実施形態において、上記キャパシタ本体は、焼結時に600℃から900℃まで3000℃/min以上の速度で昇温して焼成されることができる。
【0013】
本発明の他の側面は、一面に複数の電極パッドを有する基板と、上記電極パッドに外部電極が接続されて実装される積層型キャパシタと、を含む積層型キャパシタの実装基板を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によると、キャパシタ本体の幅方向のマージン及び内部電極の界面における内部電極の端部の気孔率が50%未満になるようにし、積層型キャパシタの耐湿信頼性を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタの一部を切開して概略的に示した斜視図である。
【
図2】(a)及び(b)は、
図1の第1及び第2内部電極を示した平面図である。
【
図4】キャパシタ本体への水分浸透経路を概略的に示した断面図である。
【
図5】内部電極の端部の気孔率に応じた耐湿信頼性を示したグラフである。
【
図6】内部電極の端部の気孔率に応じた耐湿信頼性を示したグラフである。
【
図7】内部電極の端部の気孔率に応じた耐湿信頼性を示したグラフである。
【
図8】内部電極の端部の気孔率に応じた耐湿信頼性を示したグラフである。
【
図9】昇温速度に応じた内部電極の端部を示したSEM写真である。
【
図10】昇温速度に応じた内部電極の端部を示したSEM写真である。
【
図11】昇温速度に応じた内部電極の端部を示したSEM写真である。
【
図12】昇温速度に応じた内部電極の端部を示したSEM写真である。
【
図13】本発明の一実施形態の積層型キャパシタ及び基板の実装構造を概略的に示した斜視図である。
【
図14】内部電極の端部の気孔率に応じた耐湿信頼性を示したグラフである。
【
図15】内部電極の端部の気孔率に応じた耐湿信頼性を示したグラフである。
【
図16】内部電極の端部の気孔率に応じた耐湿信頼性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0017】
また、各実施形態の図面に示された同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を付与して説明する。
【0018】
さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0019】
以下、本発明の実施形態を明確に説明するために、キャパシタ本体の方向を定義すると、図面に示されているX、Y、及びZはそれぞれ、キャパシタ本体の長さ方向、幅方向、及び厚さ方向を示す。
【0020】
また、本実施形態において、Z方向は誘電体層が積層される積層方向と同一の概念として用いられる。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタの一部を切開して概略的に示した斜視図であり、
図2の(a)及び(b)は、
図1の第1及び第2内部電極を示した平面図であり、
図3は、
図1のI-I'線に沿った断面図である。
【0022】
図1~
図3を参照すると、本実施形態に係る積層型キャパシタ100は、キャパシタ本体110と第1及び第2外部電極131、132を含む。
【0023】
キャパシタ本体110は、複数の誘電体層111と、誘電体層111を間に挟んでZ方向に交互に配置される複数の第1内部電極121及び第2内部電極122を含む。
【0024】
キャパシタ本体110は、複数の誘電体層111をZ方向に積層した後、焼成したものであって、キャパシタ本体110の互いに隣接する誘電体層111との境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずに確認しにくいほど一体化することができる。
【0025】
このとき、キャパシタ本体110は、おおよそ六面体形状であることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。また、キャパシタ本体110の形状、寸法、及び誘電体層111の積層数が、本実施形態の図面に示されたものに限定されるものではない。
【0026】
本実施形態においては、説明の便宜のために、キャパシタ本体110のZ方向に互いに対向する両面を第1及び第2面1、2と、第1及び第2面1、2と連結され、X方向に互いに対向する両面を第3及び第4面3、4と、第1及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、Y方向に互いに対向する両面を第5及び第6面5、6と定義する。
【0027】
また、本実施形態において、積層型キャパシタ100の実装面は、キャパシタ本体110の第1面1であることができる。
【0028】
誘電体層111は、高誘電率のセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系またはチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)系セラミック粉末などを含むことができ、十分な静電容量が得られる限り、本発明がこれに限定されるものではない。
【0029】
また、誘電体層111には、上記セラミック粉末とともに、セラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、及び分散剤などがさらに添加されることができる。
【0030】
上記セラミック添加剤は、例えば、遷移金属酸化物又は遷移金属炭化物、希土類元素、マグネシウム(Mg)又はアルミニウム(Al)などが用いられることができる。
【0031】
このようなキャパシタ本体110は、キャパシタの容量形成に寄与する部分としての活性領域と、上下マージン部としてZ方向に上記活性領域の上下部にそれぞれ形成される上部及び下部カバー112、113を含むことができる。
【0032】
上部及び下部カバー112、113は、内部電極を含まないことを除いては、誘電体層111と同一の材質及び構成を有することができる。
【0033】
このような上部及び下部カバー112、113は、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を、上記活性領域の上下面にそれぞれZ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる第1及び第2内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0034】
第1及び第2内部電極121、122は、互いに異なる極性が印加される電極であり、誘電体層111を間に挟んでZ方向に沿って交互に配置され、一端がキャパシタ本体110の第3及び第4面3、4を介してそれぞれ露出することができる。
【0035】
このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111により互いに電気的に絶縁されることができる。
【0036】
このようにキャパシタ本体110の第3及び第4面3、4を介して交互に露出する第1及び第2内部電極121、122の端部は、後述するキャパシタ本体110の第3及び第4面3、4に配置される第1及び第2外部電極131、132とそれぞれ接続されて電気的に連結されることができる。
【0037】
また、キャパシタ本体110のY-Z方向の断面において、キャパシタ本体110のY方向のマージンと内部電極の界面における内部電極の端部の気孔率が50%未満であることができる。
【0038】
すなわち、Y方向にキャパシタ本体110のY方向のマージン及び第1及び第2内部電極の界面における端部に気孔を有する第1及び第2内部電極が第1及び第2内部電極全体のうち50%未満になることができる。
【0039】
上記のような構成により、第1及び第2外部電極131、132に所定の電圧を印加すると、第1及び第2内部電極121、122の間に電荷が蓄積される。
【0040】
このとき、積層型キャパシタ100の静電容量は、キャパシタ本体110の上記活性領域でZ方向に沿って互いに重なる第1及び第2内部電極121、122の重なり面積と比例するようになる。
【0041】
また、第1及び第2内部電極121、122を形成する材料は、特に制限されず、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、パラジウム-銀(Pd-Ag)合金などの貴金属材料、及びニッケル(Ni)、銅(Cu)のうち1つ以上の物質からなる導電性ペーストを用いて形成することができる。
【0042】
このとき、上記導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0043】
第1及び第2外部電極131、132は、互いに異なる極性の電圧が提供され、キャパシタ本体110のX方向の両端部に配置され、第1及び第2内部電極121、122の露出する部分とそれぞれ接続されて電気的に連結されることができる。
【0044】
この時、第1及び第2外部電極131、132は、キャパシタ本体110上に形成される導電層と上記導電層上に形成されるめっき層を含むことができる。
【0045】
上記めっき層は、上記導電層上に形成されるニッケル(Ni)めっき層と、上記ニッケル(Ni)めっき層上に形成されるスズ(Sn)めっき層を含むことができる。
【0046】
第1外部電極131は、第1接続部131a及び第1バンド部131bを含むことができる。
【0047】
第1接続部131aは、キャパシタ本体110の第3面3に形成されて第1内部電極121の露出する部分と接続される部分であり、第1バンド部131bは、第1接続部131aからキャパシタ本体110の第1面1の一部まで延長される部分である。
【0048】
このとき、第1バンド部131bは、固着強度の向上などのためにキャパシタ本体110の第5及び第6面5、6の一部及び第2面2の一部までさらに延長されることができる。
【0049】
第2外部電極132は、第2接続部132a及び第2バンド部132bを含むことができる。
【0050】
第2接続部132aは、キャパシタ本体110の第4面4に形成されて第2内部電極122の露出する部分と接続される部分であり、第2バンド部132bは、第2接続部132aからキャパシタ本体110の第1面1の一部まで延長される部分である。
【0051】
このとき、第2バンド部132bは、固着強度の向上などのためにキャパシタ本体110の第5及び第6面5、6の一部及び第2面2の一部までさらに延長されることができる。
【0052】
図4は、キャパシタ本体への水分浸透経路を概略的に示した断面図である。
【0053】
図4を参照すると、高温高湿下における積層型キャパシタは、外部またはめっき液から供給される水分がキャパシタ本体と外部電極との間の界面、外部電極と内部電極との間の界面、内部電極と誘電体マージンとの間の界面、内部電極と誘電体層との間の界面の経路を順に沿って、キャパシタ本体の内部に浸透するようになり、これに電離剥離を起こして、積層型キャパシタの耐湿信頼性を低下させる。
【0054】
一般的に、キャパシタ本体は、600℃から焼結が開始される内部電極と、900℃以上で焼結が開始される誘電体で構成される。
【0055】
積層型キャパシタの電気的特性を実現させるためには、900℃以上の焼結工程を経て誘電体を緻密化させる過程が必要であり、このとき、焼結開始温度が比較的低い内部電極が先に収縮し、誘電体を焼結させるために、追加的な熱を加える過程で内部電極の過収縮が発生して内部電極に気孔が発生するようになる。
【0056】
内部電極と誘電体層との間の界面では、このような内部電極の端部にある気孔を介してキャパシタ本体に水分が速く浸透するようになり、このような水分浸透によって、誘電体層と内部電極との間の剥離が発生して絶縁抵抗の低下を誘発するようになり、このような絶縁抵抗の低下が直ちに積層型キャパシタの耐湿信頼性の低下に繋がる。
【0057】
したがって、耐湿信頼性の低下を防止するためには、外部からキャパシタ本体内部への水分浸透経路を遮断する方法が重要であり、従来には外部電極の組成及び積層型キャパシタの構造設計を介して、このような浸透経路を遮断する方法が開示されている。
【0058】
しかし、積層型キャパシタが小型化されることによって、外部電極も薄層化される傾向にあり、限られた構造設計及び薄層化された外部電極では、水分浸透経路の遮断に限界がある。
【0059】
本実施形態においては、内部電極の焼結開始時点から誘電体の焼結が開始される時点までの急速昇温を介して、誘電体と内部電極が同時に焼結されるようにして内部電極の過収縮を抑制させる。
【0060】
このような作用により、Y方向にキャパシタ本体のマージン及び内部電極が接する界面における内部電極の端部に気孔がないようにするか、誘電体で満たされるようにするか、または誘電体や内部電極から誘導される成分の反応によって形成されるガラス状によって満たされるようにして、内部電極の端部の気孔率が50%未満になるようにすることができる。
【0061】
このように、内部電極及び誘電体の同時焼結によってY方向にキャパシタ本体のマージン及び内部電極の界面における内部電極の端部の気孔率が50%未満になるようにすることにより、耐湿浸透経路中の内部電極と誘電体マージンとの間の界面に該当する部分での水分伝達経路を最大限に遮断することができ、積層型キャパシタの絶縁抵抗の低下を防止することができる。
【0062】
これにより、材料的な変化や他の微細構造的な変化がなくても積層型キャパシタの耐湿信頼性を向上させることができ、高温高湿環境での信頼性が向上された高信頼性、高容量の積層型キャパシタを提供することができる。
【0063】
以下、キャパシタ本体のY方向のマージン及び内部電極の界面における内部電極の端部の気孔率と耐湿信頼性の相関関係を調べるための試験を実施する。
【0064】
下記表1は、耐湿信頼性が劣化したチップと正常なチップにおける内部電極端部の気孔率を分析した結果である。
【0065】
この時、IR測定条件は、温度85℃、湿度85%、静圧4V、時間30時間で、それぞれ40個のサンプルをテストした。
【0066】
【0067】
図5~
図8は、内部電極の端部の気孔率に応じた耐湿信頼性を示したグラフである。
【0068】
ここで、気孔率は、積層型キャパシタ3つを用意し、YZ面をX方向に1/2程度の深さまで研磨してYZ断面を露出し、Z方向の中央位置で内部電極とY方向に接触している誘電体マージンとの間の界面にある気孔数をSEMを用いて30Kの倍率で内部電極層数50層以上100層以下が見えるように撮り、50層以上100層以下を測定し、該当領域内で測定した内部電極層数に対する端部に気孔がある内部電極の個数をパーセントで計算した後、3つの気孔率の平均値を端部の気孔率として算定した。
【0069】
図5は、#1に対するIR変化を示したものであり、
図6は、#2に対するIR変化を示したものであり、
図7は、#3に対するIR変化を示したものであり、
図8は、#4に対するIR変化を示したものである。
【0070】
表1及び
図5~
図8を参照すると、比較例において、#1の場合、IR劣化率は40個のうち7個が不良で18%の劣化率を示し、#2の場合、IR劣化率は40個のうち7個が不良で18%の劣化率を示した。実施例の場合、#3及び#4で不良が一つも現れなかった。
【0071】
また、耐湿信頼性が劣化されたチップ(#1、2)の場合、内部電極の端部からの気孔率がすべて50%以上であり、気孔形成が抑制されて耐湿信頼性が劣化されなかったチップ(#3、4)の場合、内部電極の端部からの気孔率がすべて50%未満であることが分かる。
【0072】
したがって、本発明のように、キャパシタ本体のY方向のマージン及び内部電極の界面における内部電極の端部の気孔率を50%未満にすると、耐湿信頼性を向上させることができるといえる。
【0073】
図14~
図16は、内部電極の端部の気孔率に応じた耐湿信頼性を示したグラフである。
【0074】
ここで、気孔率は、上述した方法と同様の方法で算定するため、これに対する説明は省略する。そして、積層型キャパシタは0603サイズのX5Rの温度特性、公称容量4μF以上を有するものを用い、IR測定条件は、温度85℃、湿度85%、静圧9.45V、時間は24時間で、それぞれ40個のサンプルをテストした。
【0075】
【0076】
図14は、#9に対するIR変化を示したものであり、
図15は、#10に対するIR変化を示したものであり、
図16は、#11に対するIR変化を示したものである。
【0077】
表2及び
図14~
図16を参照すると、比較例において、#9の場合、IR劣化率は40個のうち7個が不良で18%の劣化率を示し、気孔率が24%である#10の場合、IR劣化率は40個のうち0個と不良がなく、気孔率が27%である#11の場合にも、IR劣化率は40個のうち0個と不良が一つも現れなかった。
【0078】
また、耐湿信頼性が劣化したチップ(#9)の場合、内部電極の端部からの気孔率が50%以上であり、耐湿信頼性が正常だったチップ(#10、11)の場合、内部電極の端部からの気孔率がそれぞれ24%、27%で、いずれも50%未満であることが分かる。
【0079】
一方、キャパシタ本体のY方向のマージン及び内部電極の界面における内部電極の端部の気孔率が小さいほど積層型キャパシタの不良発生確率が減少すると予測することができるが、実験によって確認された結果、気孔率を24%未満に減少させることはできなかった。
【0080】
したがって、表1及び表2に基づいて、キャパシタ本体のY方向のマージン及び内部電極の界面における内部電極の端部の気孔率が積層型キャパシタの耐湿信頼性の低下を防止するレベルは、24%以上、50%未満であるといえる。
【0081】
そして、昇温速度に応じた内部電極の端部の気孔率の差及び耐湿信頼性を調べるための試験を実施する。
【0082】
このため、X5Rの温度特性、公称容量22μFを有するように、通常の誘電体及び内部電極組成で設計された積層型キャパシタを用意した後、下記表3のように、内部電極の焼結開始温度から誘電体の焼結開始温度までの昇温速度を異ならせて内部電極の端部の気孔形成の程度を制御した4種の試料を用意した後、微細構造及びIR変化を介して耐湿信頼性の差異を分析した。
【0083】
【0084】
表3は、積層型キャパシタを製造する過程で、積層体を焼成する際に昇温速度に応じた内部電極の端部の気孔率及び耐湿信頼性を評価した結果である。
【0085】
図9~
図12は、それぞれ#5~#8の内部電極の端部を示したSEM写真である。
【0086】
表3を参照すると、#5及び#6は比較例として、#5及び#6のように、昇温速度を3,000℃/min未満にする場合、誘電体に比べて内部電極が先収縮された状態で、誘電体を緻密化させるのための追加的な熱によって内部電極の過収縮が発生し、これによって
図9及び
図10に示したように内部電極の端部の気孔が50%以上多量形成された。
【0087】
これに対し、#7及び#8のように3,000℃/min以上の急速昇温を行う場合、内部電極と誘電体の焼結を同時に進行させて、内部電極と誘電体の収縮率が類似するようになることで、
図11及び
図12に示したように、内部電極の端部に気孔が形成されないか、誘電体の緻密化によって内部電極の端部の気孔が満たされるか、または誘電体や内部電極から形成されるガラス状が内部電極の端部の気孔を満たすことで、内部電極の端部の気孔率が50%未満に減少することがある。
【0088】
このような内容から見ると、積層体を焼成する際に、昇温速度は3000℃/m以上が好ましく、これより低い速度では、誘電体と内部電極の同時焼成の効果が減少して内部電極の端部の気孔が50%以上形成されることができる。
【0089】
図13は、本発明の一実施形態の積層型キャパシタ及び基板の実装構造を概略的に示した斜視図である。
【0090】
図13を参照すると、本実施形態に係る積層型キャパシタの実装基板は、積層型キャパシタ100が実装される基板210と、基板210の上面に互いに離隔されるように配置される第1及び第2電極パッド221、222を含む。
【0091】
積層型キャパシタ100は、第1及び第2外部電極131、132が第1及び第2電極パッド221、222上にそれぞれ接触されるように位置した状態で接続されて基板210に実装される。
【0092】
このとき、第1外部電極131は、はんだ231により第1電極パッド221と接合されて電気的及び物理的に連結されることができ、第2外部電極132は、はんだ232により第2電極パッド222と接合されて電気的及び物理的に連結されることができる。
【0093】
ここで、積層型キャパシタ100は、上述した本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタであるため、以下における詳細な説明は、重複を避けるために省略する。
【0094】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0095】
100 積層型キャパシタ
110 キャパシタ本体
111 誘電体層
112 上部カバー
113 下部カバー
121 第1内部電極
122 第2内部電極
131 第1外部電極
132 第2外部電極
131a 第1接続部
132a 第2接続部
131b 第1バンド部
132b 第2バンド部
210 基板
221 第1電極パッド
222 第2電極パッド
231 はんだ
232 はんだ