(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104553
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】LIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キット、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20220701BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20220701BHJP
C07K 14/435 20060101ALN20220701BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20220701BHJP
【FI】
G01N33/574 B
G01N33/543 521
G01N33/543 575
C07K14/435
C07K16/18
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021192080
(22)【出願日】2021-11-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】202011574376.5
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521518714
【氏名又は名称】遼寧師範大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼ 越
(72)【発明者】
【氏名】李 慶偉
(72)【発明者】
【氏名】滕 洪明
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045CA52
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA71
(57)【要約】 (修正有)
【課題】尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キットの提供。
【解決手段】本検査用キットは、捕捉試薬と検出用緩衝液と試験紙とを備え、前記捕捉試薬は、ビオチン化結合のヤツメウナギ免疫タンパク質LIPであり、前記検出用緩衝液は、50mMのTris base、0.15MのNaCl、0.01%のTween-20及び7.5%のBSAを含んでなり、前記試験紙は底板を有し、底板上には左から右の順で試料投入パッド、蛍光微小球結合釈放パッド、ニトロセルロース膜及び吸水パッドを段階状に順次固定され、前記蛍光微小球結合釈放パッドはユーロピウム蛍光ナノ粒子とストレプトアビジンSA及びウサギIgGの結合液をポリエステル繊維に吹き付けることにより調製され、ニトロセルロース膜には左から右の順でUMODモノクローナル抗体から構成された検出バンドとヤギ抗ウサギIgGから構成された参照バンドが順次設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕捉試薬と検出用緩衝液と試験紙とを備え、前記捕捉試薬は、ビオチン化結合のヤツメウナギ免疫タンパク質LIPであり、前記検出用緩衝液は、50mMのTris base、0.15MのNaCl、0.01%のTween-20及び7.5%のBSAを含んでなり、前記試験紙は、底板を有し、前記底板上には左から右の順で試料投入パッド、蛍光微小球結合釈放パッド、ニトロセルロース膜及び吸水パッドを段階状に順次固定され、前記蛍光微小球結合釈放パッドは、ユーロピウム蛍光ナノ粒子とストレプトアビジンSA及びウサギIgGの結合液をポリエステル繊維上に吹き付けることにより調製され、前記ニトロセルロース膜には左から右の順でUMODモノクローナル抗体から構成された検出バンドとヤギ抗ウサギIgGから構成された参照バンドが順次設けられる、ことを特徴とするLIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キット。
【請求項2】
濃度が0.5mg/mLであるヤツメウナギ免疫タンパク質LIPの水溶液とビオチンを1mL:2mgの投与量の比率で室温で十分に混合して混合液を得、混合液を脱塩カラムで純化してビオチン化結合のヤツメウナギ免疫タンパク質LIPを得る、ことを特徴とする請求項1記載のLIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キット。
【請求項3】
ユーロピウム蛍光ナノ粒子とストレプトアビジンSA及びウサギIgGの結合液は以下の調製方法に従って調製され、前記調製方法は、
活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を調製するステップと、
前記活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球と濃度が1.41mg/mLのストレプトアビジンSAと濃度が5mg/mLのウサギIgGとを2:3:0.5の体積比で混合した後、結合緩衝液を加えて前記活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を2mg/mLの濃度に希釈して、37℃で2時間反応させるステップと、
反応液を4℃、15000×gの条件下で15分間遠心分離して沈殿物Aを取るステップと、
前記沈殿物Aに洗浄液を加えて超音波処理を行って再懸濁し、4℃、15000×gの条件下で15分間遠心分離して沈殿物Bを取るステップと、
前記沈殿物Bにブロッキング液を加えて超音波処理を行って再懸濁し、微小球懸濁液を得るステップと、
4℃、15000×gの条件下で前記微小球懸濁液を15分間遠心分離して沈殿物Cを取るステップと、
前記沈殿物Cに保存液を加えて超音波処理を行って再懸濁し、4℃、15000×gの条件下で15分間遠心分離して沈殿物Dを取るステップと、
前記沈殿物Dを保存液で2mg/mLの濃度に希釈するステップであって、前記保存液は、pHが7.8であり、再蒸留水を溶媒とし、25mmol/Lの Tris baseと、0.15mol/Lの塩化ナトリウムと、1wt%のウシ胎児アルブミンと、0.05wt%のTween-20と、5wt%のトレハロースとを含むステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のLIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学的検出の技術分野に属し、特に、LIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
尿路上皮癌は、人間の生命と健康を厳しく脅かす重大な疾患の1つである。「早期発見、早期診断、早期治療」は、尿路上皮癌の診断及び治療のための目下重要な発展方向及び最も効果的な方法となり、患者の生存率を大幅に向上させることができる。尿路上皮癌は、腎盂癌や膀胱癌や尿管癌などを含む。臨床的に一般的に用いられている既存の検査方法には尿剥離細胞診や画像検査等がある。尿剥離細胞診の主なマーカーはNeu5Gc(N-グリコリルノイラミン酸)であり、検出原理は糖鎖抗体間の特異性反応に基づいて検出を行うが、Neu5Gcはヒトとニワトリを除くすべての哺乳動物の体内に存在するためマウスに強い免疫応答を引き起こすことができなく、モノクローナル抗体の調製がより難しい。Neu5GcはニワトリがIgY抗体を生ずるように誘導することができるが、誘導された抗体がポリクローナル抗体であるため、Neu5Gcの癌マーカーとして特異性が低くなる。
【0003】
関連研究により、シアル酸が細胞膜糖タンパク質の修飾のための重要な構成部分であることが表明されており、既に「ウロモジュリンの構造解析及びヒト尿路感染症におけるその機能研究」などのようにシアル酸によって修飾されたUMOD(ウロモジュリン)についての関連報告(Weiss Gregor L,et al.Architecture and function of human uromodulin filaments in urinary tract infections.[J].Science,2020,369:1005-1010)もあり、その補足資料の実験方法において、ヒト尿中のシアル酸修飾UMODの調製方法が開示され、すなわち、膀胱癌患者の尿を珪藻土で純化してNeu5Gcによって修飾されたUMOD糖タンパク質を調製する方法が開示されている。また、シアル酸修飾UMODが大腸菌の凝集を促進し、尿路の細菌感染を阻害する機能を有することも開示されている。
【0004】
中国特許文献(中国特許出願第201310501366.2号、発明名称が「ヤツメウナギリ氏タンパク質、その調製方法及び腫瘍性疾患の予防及び治療用薬物の調製ための使用」)は、ヤツメウナギ免疫タンパク質LIPの調製方法を開示している。
【0005】
LIPの腫瘍細胞に対しての特異的識別及び選択的殺傷機能は既に証明されている(Pang Yue,et al.A novel protein derived from lamprey supraneural body tissue with efficient cytocidal actions against tumor cells.[J].Cell Commun Signal,2017,15:42)。また、LIPが腫瘍細胞膜表面の脂質ラフト構造においてNeu5Gc末端によって修飾された糖型構造を特異的に認識できることについても報告されている(Pang Yue, Gou Meng, Yang Kai et al.Crystal structure of a cytocidal protein from lamprey and its mechanism of action in the selective killing of cancer cells.[J].Cell Commun Signal,2019,17:54.)。
【0006】
しかし、シアル酸修飾UMODをマーカーとした、LIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査に関する発明についてはまだ報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、先行技術における上記の技術的問題を解決するために、LIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を実現するための技術的手段は以下のとおりである。
【0009】
本発明のLIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キットは、捕捉試薬と検出用緩衝液と試験紙とを備え、前記捕捉試薬は、ビオチン化結合のヤツメウナギ免疫タンパク質LIPであり、前記検出用緩衝液は、50mMのTris base、0.15MのNaCl、0.01%のTween-20及び7.5%のBSAを含んでなり、前記試験紙は、底板を有し、底板上には左から右の順で試料投入パッド、蛍光微小球結合釈放パッド、ニトロセルロース膜及び吸水パッドが段階状になるように順次固定され、前記蛍光微小球結合釈放パッドは、ユーロピウム蛍光ナノ粒子とストレプトアビジンSA及びウサギIgGの結合液をポリエステル繊維上に吹き付けることにより調製され、前記ニトロセルロース膜には左から右の順でUMODモノクローナル抗体から構成された検出バンドとヤギ抗ウサギIgGから構成された参照バンドが順次設けられる。
【0010】
前記ビオチン化結合のヤツメウナギ免疫タンパク質LIPは、試験管に濃度が0.5mg/mLであるヤツメウナギ免疫タンパク質LIPの水溶液を加えた後、ビオチンを加えて、室温で十分に混合して混合液を得、混合液を脱塩カラムで純化することにより調製され、前記ヤツメウナギ免疫タンパク質LIPの水溶液とビオチンとの投与量の比率は1mL:2mgである。
【0011】
前記ユーロピウム蛍光ナノ粒子とストレプトアビジンSA及びウサギIgGの結合液の調製方法は、
活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を調製するステップと、
活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球と濃度が1.41mg/mLのストレプトアビジンSAと濃度が5mg/mLのウサギIgGとを2:3:0.5の体積比で混合した後、結合緩衝液を加えて活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を2mg/mLの濃度に希釈して、37℃で2時間反応させるステップと、
反応液を4℃、15000×gの条件下で15分間遠心分離して沈殿物Aを取るステップと、
沈殿物Aに洗浄液を加えて超音波処理を行って再懸濁し、4℃、15000×gの条件下で15分間遠心分離して沈殿物Bを取るステップと、
沈殿物Bにブロッキング液を加えて超音波処理を行って再懸濁し、微小球懸濁液を得るステップと、
4℃、15000×gの条件下で微小球懸濁液を15分間遠心分離して沈殿物Cを取るステップと、
沈殿物Cに保存液を加えて超音波処理を行って再懸濁し、4℃、15000×gの条件下で15分間遠心分離して沈殿物Dを取るステップと、
沈殿物Dを保存液で2mg/mLの濃度に希釈するステップであって、前記保存液は、pHが7.8であり、再蒸留水を溶媒とし、25mmol/LのTris baseと、0.15mol/Lの塩化ナトリウムと、1wt%のウシ胎児アルブミンと、0.05wt%のTween-20と、5wt%のトレハロースとを含むステップと、を含む。
【0012】
本発明において、ウサギIgGの代わりに、マウスIgGを用いてもよく、マウスIgGを用いる場合、それに応じてヤギ抗マウスIgGを用いて参照バンドを構成する。
【0013】
本発明は、シアル酸修飾UMODをマーカーとして、LIPに基づいて尿中のUMODを修飾したNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キットを提供し、即ち、LIPとUMOD糖タンパク質を修飾した尿中のNeu5Gcを結合させ、結合物中のNeu5Gc修飾UMODと検出バンドに事前にコーテイングされているUMODモノクローナル抗体を結合させることで、UMODを修飾した尿中のNeu5Gcの含有量を正確に検出し、さらに正常なヒトと良性疾患(炎症や嚢胞等の良性腫瘍)と尿路上皮癌とを区別することができる。本発明によって提供された検査用キットは、簡単な操作や高感度や特異性という利点を有し、大量の試料に対して迅速にスクリーニングを行うことが可能であり、優れた臨床検体検出機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る異なる人群別の尿検出結果を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る膀胱癌患者の各病期段階での尿検出結果を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の、LIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キットは、捕捉試薬と検出用緩衝液と試験紙とを備える。前記捕捉試薬は、ビオチン化結合のヤツメウナギ免疫タンパク質LIPであり、前記検出用緩衝液は、50mMのTris base、0.15MのNaCl、0.01%のTween-20及び7.5%BSAを含んでなり、前記試験紙は、底板を有し、底板上には左から右の順で試料投入パッド、蛍光微小球結合釈放パッド、ニトロセルロース膜及び吸水パッドが段階状になるように順次固定されており、前記蛍光微小球結合釈放パッドは、ユーロピウム蛍光ナノ粒子とストレプトアビジンSA及びウサギIgGの結合液をポリエステル繊維に吹き付けることにより調製され、ニトロセルロース膜には、左から右の順でUMODモノクローナル抗体から構成された検出バンドとヤギ抗ウサギIgGから構成された参照バンドが順次設けられる。UMODモノクローナル抗体はABclonal会社から購入し、ヤギ抗ウサギIgGは上海生物生工株式会社から購入した。
【0016】
ビオチン化結合のヤツメウナギ免疫タンパク質LIPは、次の方法に従って調製する。
【0017】
試験管に質量濃度が0.5mg/mLであるヤツメウナギ免疫タンパク質LIPの水溶液1mLを加えた後、2mgのビオチンを加え、室温でボルテックスミキサーで2時間十分に混合して混合液を得る。混合液を脱塩カラムで純化し、4℃、5000×gの条件下で5分間遠心分離し、流出液をマイクロピペットで注意深く吸い取ってビオチン化結合のヤツメウナギ免疫タンパク質LIPを得る。ヤツメウナギ免疫タンパク質LIPとビオチンの供給源は次のとおりである。ヤツメウナギ免疫タンパク質LIPは、中国特許文献(出願番号が201310501366.2、発明名称が「ヤツメウナギリ氏タンパク質、その調製方法及び腫瘍性疾患の予防及び治療用薬物の調製のための使用」)に開示された調製方法に従って調製し、ビオチンはThermo生物会社から購入した。
【0018】
ストレプトアビジンSA及びウサギIgGがコーテイングされた蛍光微小球結合液は、次の方法に従って調製する。
【0019】
a.従来技術の方法に従って、活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を調製する:
1mLのカルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球の活性化緩衝液を試験管に加え、ボルテックスミキサーで十分に混合してカルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を懸濁し、4℃、15000×gの条件下で15分間遠心分離して上清液をマイクロピペットで吸い取り、このステップをもう1回繰り返す。カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球はThermo生物会社から購入した。
【0020】
14μLのカルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球の活性化試剤EDC及び130μLの試剤NHSを加え、ボルテックスミキサーで十分に混合してカルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を懸濁し、混合液を2mLの遠心分離管に移し、854μLの活性化緩衝液を加えて、室温下で微小球ミキサーで30分間旋回してから4℃、15000×gの条件下で30分間遠心分離し、上清液をマイクロピペットで吸い取る。
【0021】
1mLの結合緩衝液を加えて、カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を再懸濁し、超音波処理を行って微小球が均一に分散するように再懸濁した。超音波処理は、50Wで1秒間作動、1秒間停止、3分間持続作動を繰り返すように操作した。後述の超音波処理の条件も同様である。次いで、4℃、15000×gの条件下で30分間遠心分離して上清液をマイクロピペットで吸い取り、このステップをもう1回繰り返し、活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を得る。
【0022】
b.活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球、ストレプトアビジンSA及びウサギIgGを取って混合した後、結合緩衝液を加えて活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を2mg/mLの濃度に希釈し、37℃の条件下において、ボルテックスミキサーで十分に混合し、2時間結合反応させる。前記活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球、ストレプトアビジンSA及びウサギIgGの投与の体積はそれぞれ200mL、300mL及び50mLであり、ストレプトアビジンSAの濃度は1.41mg/mLであり、ウサギIgGの濃度は5mg/mLである。ストレプトアビジンSAはinvitrogenから購入し、ウサギIgGは上海生物生工株式会社から購入した。
【0023】
c.4℃、15000×gの条件下で結合反応液を15分間遠心分離して沈殿物Aを取る。
【0024】
d.沈殿物Aに洗浄液を加えて超音波処理を行って再懸濁し、4℃、15000×gの条件下で15分間遠心分離して沈殿物Bを取り、このステップをもう1回繰り返す。
【0025】
e.沈殿物Bにブロッキング液を加えて超音波処理を行って再懸濁した後、別の遠心分離管に移し、ボルテックスミキサーで十分に混合してカルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を懸濁させ、1時間回転して標識を行い、微小球懸濁液を得る。
【0026】
f.4℃、15000×gの条件下で微小球懸濁液を15分間遠心分離して沈殿物Cを取る。
【0027】
g.沈殿物Cに保存液を加え、超音波処理によりカルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を再懸濁し、4℃、15000×gの条件下で15分間遠心分離して沈殿物Dを取り、このステップをもう1回繰り返す。
【0028】
h.沈殿物Dを保存液で2mg/mLの濃度に希釈する。保存液は、25mmol/L Tris base、0.15mol/Lの塩化ナトリウム、1wt%のウシ胎児アルブミン、0.05wt%のTween-20、及び5wt%のトレハロースを含み、保存液の溶媒は再蒸留水であり、保存液のpHは7.8である。
【0029】
本発明の、LIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キットは、以下のステップに従って使用する。
【0030】
C1.検体の準備:患者の尿1mLを採集して、3000×gの条件下で30分間遠心分離して、尿の残留物を取り除き、上清液を検体として採取する。
【0031】
C2.100μLのステップC1の検体と100μLの希釈した捕捉試薬(ビオチン化されたLIPタンパク質)とを混合して混合液を得る。希釈した捕捉試薬は、ビオチン化されたLIPタンパク質と検出用緩衝液を1:50の体積比で希釈することにより得られる。
【0032】
C3.100μLのステップC2で得られた混合液を試料投入パッドに滴下して2分間静置してから、試験紙を乾式蛍光免疫測定装置AFS1000に入れて検出を行い、検出バンドと参照バンドの蛍光を観察して記録し、すなわち、HTとHC及びその比率R(HT/HC)を検出する。検出バンドの蛍光強度が参照バンドの蛍光強度に比べて差(区別)がない場合、尿検体にUMOD糖タンパク質を修飾したNeu5Gcがないことを示し、検出バンドの蛍光強度が参照バンドの蛍光強度に比べて差がある場合、尿検体にUMOD糖タンパク質を修飾したNeu5Gcがあることを示す。標準曲線と比較して解析することで、検体におけるUMOD糖タンパク質を修飾したNeu5Gcの含有量を算出することができる。参照バンドに蛍光強度がない場合、結果は無効である。
【0033】
本発明により提供する尿路上皮癌の検査用キットは、4℃、3ヶ月以内の条件下で性能が安定し、検出指標に偏差が発生しない。
【0034】
標準曲線は、リン酸塩緩衝液(PBS:0.01mol/L、pH7.4)を用いて、濃度がそれぞれ0ng/mL、1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、20ng/mL、30/mL、50ng/mL、100ng/mLであるNeu5Gc修飾UMODの標準品溶液を調製し、検体の代わりにそれぞれの標準品溶液を用いて、上記の検出方法に従って検出を行い、2分後に検出された蛍光を観察するとのことにより得る。なお、並行実験を10回繰り返す。本発明において、Neu5Gc修飾UMODの検出に用いた標準品の最低濃度は30ng/mLである。Neu5Gc修飾UMOD標準品は、従来技術に報告された方法により調製する。具体的に、膀胱癌患者の尿を珪藻土で純化することによりNeu5Gcによって修飾されたUMOD糖タンパク質(Neu5Gc修飾UMOD)を調製する。
【0035】
本発明の検出原理は次のとおりである。被検者の尿タンパク質をLIP-ビオチン化溶液と混合した後、尿検体にNeu5Gcによって修飾されたUMOD糖タンパク質がある場合、UMOD糖タンパク質を修飾したNeu5GcがLIP-ビオチンと結合して複合体を形成することができる。複合体中のLIP-ビオチンは、蛍光微小球結合釈放パッド内のストレプトアビジンSA免疫蛍光微小球と結合することができ、検出バンドまでクロマトグラフィーされる時、複合体中のNeu5Gc修飾UMODは、検出バンドに事前にコーテイングされていたUMODモノクローナル抗体と結合する。検出バンドの蛍光強度は、尿検体中のNeu5Gc修飾UMOD糖タンパク質の濃度に正比例し、検体の検出結果を測定器で読み取って定量的に解析する。参照バンドまでクロマトグラフィーされる時、ウサギIgG結合蛍光微小球が参照バンドに事先にコーテイングされていたヤギ抗ウサギIgGと結合する。参照バンドに蛍光信号があるかどうかに基づいて、検体の投入及びクロマトグラフィー操作過程に問題があるかどうかを判断する。
【0036】
(実施例1)
本発明により提供する尿路上皮癌の検査用キットを用いて、正常なヒト639例、良性疾患25例(膀胱炎症8例、膀胱嚢胞7例、膀胱ポリープ6例、腎炎4例)、尿路上皮癌患者99例(膀胱癌52例、腎臓癌20例、前立腺癌27例)の尿検体を検査測定した。結果を
図1に示す。
図1に示すように、正常なヒトの尿検体においてLIP特異的に識別される、UMOD糖タンパク質を修飾したNeu5Gcの含有量は67.63±9.31ng/mgであり、良性疾患25例の尿検体においてLIP特異的に識別される、UMOD糖タンパク質を修飾したNeu5Gcの含有量は70.71±8.20ng/mgであって、正常な人に比べて有意差はない。この結果は、泌尿器系癌のスクリーニングにおいて、尿路の炎症などの良性の問題がある場合、LIP特異的に識別される、UMOD糖タンパク質を修飾したNeu5Gcの含有量が正常な人に比べて差はなく、偽陽性の結果が発生しないことを示す。膀胱癌患者52例の尿検体においてLIP特異的に識別される、UMOD糖タンパク質を修飾したNeu5Gcの含有量が260.25±29.38ng/mgであり、腎癌患者20例の含有量は280.54±11.81ng/mg、前立腺癌患者27例の含有量は264.34±30.63ng/mgである。従って、本発明の検査キットは、尿路上皮癌の診断に優れた特異性を備える。
【0037】
多数の検体を有する膀胱癌患者52例をさらに分析して結果を
図2に示す。
【0038】
図2に示すように、異なる病期段階の膀胱癌患者の尿においてLIP特異的に識別される、UMOD糖タンパク質を修飾したNeu5Gcの含有量に差があり、膀胱癌の病期段階が初期段階Taである場合、尿においてLIP特異的に識別される、UMOD糖タンパク質を修飾したNeu5Gcの含有量が大幅に増加している。検体においてLIP特異的に識別される、UMOD糖タンパク質を修飾したNeu5Gcの含有量と比べることにより、検体が尿路上皮癌であるかどうかを検出することが可能であり、その正解率は80%以上に達する。
【0039】
(付記)
(付記1)
捕捉試薬と検出用緩衝液と試験紙とを備え、前記捕捉試薬は、ビオチン化結合のヤツメウナギ免疫タンパク質LIPであり、前記検出用緩衝液は、50mMのTris base、0.15MのNaCl、0.01%のTween-20及び7.5%のBSAを含んでなり、前記試験紙は、底板を有し、前記底板上には左から右の順で試料投入パッド、蛍光微小球結合釈放パッド、ニトロセルロース膜及び吸水パッドを段階状に順次固定され、前記蛍光微小球結合釈放パッドは、ユーロピウム蛍光ナノ粒子とストレプトアビジンSA及びウサギIgGの結合液をポリエステル繊維上に吹き付けることにより調製され、前記ニトロセルロース膜には左から右の順でUMODモノクローナル抗体から構成された検出バンドとヤギ抗ウサギIgGから構成された参照バンドが順次設けられる、ことを特徴とするLIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キット。
【0040】
(付記2)
濃度が0.5mg/mLであるヤツメウナギ免疫タンパク質LIPの水溶液とビオチンを1mL:2mgの投与量の比率で室温で十分に混合して混合液を得、混合液を脱塩カラムで純化してビオチン化結合のヤツメウナギ免疫タンパク質LIPを得る、ことを特徴とする付記1記載のLIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キット。
【0041】
(付記3)
ユーロピウム蛍光ナノ粒子とストレプトアビジンSA及びウサギIgGの結合液は以下の調製方法に従って調製され、前記調製方法は、
活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を調製するステップと、
前記活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球と濃度が1.41mg/mLのストレプトアビジンSAと濃度が5mg/mLのウサギIgGとを2:3:0.5の体積比で混合した後、結合緩衝液を加えて前記活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を2mg/mLの濃度に希釈して、37℃で2時間反応させるステップと、
反応液を4℃、15000×gの条件下で15分間遠心分離して沈殿物Aを取るステップと、
前記沈殿物Aに洗浄液を加えて超音波処理を行って再懸濁し、4℃、15000×gの条件下で15分間遠心分離して沈殿物Bを取るステップと、
前記沈殿物Bにブロッキング液を加えて超音波処理を行って再懸濁し、微小球懸濁液を得るステップと、
4℃、15000×gの条件下で前記微小球懸濁液を15分間遠心分離して沈殿物Cを取るステップと、
前記沈殿物Cに保存液を加えて超音波処理を行って再懸濁し、4℃、15000×gの条件下で15分間遠心分離して沈殿物Dを取るステップと、
前記沈殿物Dを保存液で2mg/mLの濃度に希釈するステップであって、前記保存液は、pHが7.8であり、再蒸留水を溶媒とし、25mmol/Lの Tris baseと、0.15mol/Lの塩化ナトリウムと、1wt%のウシ胎児アルブミンと、0.05wt%のTween-20と、5wt%のトレハロースとを含むステップと、を含む、ことを特徴とする付記1又は付記2記載のLIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キット。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
ユーロピウム蛍光ナノ粒子とストレプトアビジンSA及びウサギIgGの結合液、即ちストレプトアビジンSA及びウサギIgGがコーテイングされたユーロピウム蛍光微小球を含む結合液は、次の方法に従って調製する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
C2.100μLのステップC1の検体と100μLの希釈した捕捉試薬(ビオチン化されたLIPタンパク質)とを混合して混合液を得る。希釈した捕捉試薬は、ビオチン化されたLIPタンパク質と検出用緩衝液を1:50の体積比で希釈することにより得られる。検出用緩衝液は、50mMのTris base、0.15MのNaCl、0.01%のTween-20及び7.5%のBSAを含む水溶液である。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕捉試薬と検出用緩衝液と試験紙とを備え、前記捕捉試薬は、ビオチン化結合のヤツメウナギ免疫タンパク質LIPであり、前記検出用緩衝液は、50mMのTris base、0.15MのNaCl、0.01%のTween-20及び7.5%のBSAを含んでなり、前記試験紙は、底板を有し、前記底板上には左から右の順で試料投入パッド、蛍光微小球結合釈放パッド、ニトロセルロース膜及び吸水パッドを段階状に順次固定され、前記蛍光微小球結合釈放パッドは、ユーロピウム蛍光ナノ粒子とストレプトアビジンSA及びウサギIgGの結合液をポリエステル繊維上に吹き付けることにより調製され、前記ニトロセルロース膜には左から右の順でUMODモノクローナル抗体から構成された検出バンドとヤギ抗ウサギIgGから構成された参照バンドが順次設けられる、ことを特徴とするLIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キット。
【請求項2】
濃度が0.5mg/mLであるヤツメウナギ免疫タンパク質LIPの水溶液とビオチンを1mL:2mgの投与量の比率で室温で十分に混合して混合液を得、前記混合液を脱塩カラムで純化して、前記ビオチン化結合のヤツメウナギ免疫タンパク質LIPを得る、ことを特徴とする請求項1に記載のLIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キットの製造方法。
【請求項3】
ユーロピウム蛍光ナノ粒子とストレプトアビジンSA及びウサギIgGの前記結合液は以下の調製方法に従って調製され、前記調製方法は、
活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を調製するステップと、
前記活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球と濃度が1.41mg/mLのストレプトアビジンSAと濃度が5mg/mLのウサギIgGとを2:3:0.5の体積比で混合した後、結合緩衝液を加えて前記活性化カルボキシル化ユーロピウム蛍光ナノ微小球を2mg/mLの濃度に希釈して、37℃で2時間反応させるステップと、
反応液を4℃、15000×gの条件下で15分間遠心分離して沈殿物Aを取るステップと、
前記沈殿物Aに洗浄液を加えて超音波処理を行って再懸濁し、4℃、15000×gの条件下で15分間遠心分離して沈殿物Bを取るステップと、
前記沈殿物Bにブロッキング液を加えて超音波処理を行って再懸濁し、微小球懸濁液を得るステップと、
4℃、15000×gの条件下で前記微小球懸濁液を15分間遠心分離して沈殿物Cを取るステップと、
前記沈殿物Cに保存液を加えて超音波処理を行って再懸濁し、4℃、15000×gの条件下で15分間遠心分離して沈殿物Dを取るステップと、
前記沈殿物Dを保存液で2mg/mLの濃度に希釈するステップであって、前記保存液は、pHが7.8であり、再蒸留水を溶媒とし、25mmol/Lの Tris baseと、0.15mol/Lの塩化ナトリウムと、1wt%のウシ胎児アルブミンと、0.05wt%のTween-20と、5wt%のトレハロースとを含むステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のLIPに基づいてUMODを修飾した尿中のNeu5Gcを識別する尿路上皮癌の検査用キットの製造方法。
【外国語明細書】