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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104570
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】永久磁石モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/22 20060101AFI20220701BHJP
   H02K 7/04 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
H02K1/22 B
H02K7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206175
(22)【出願日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】17/134,816
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボウマン ブレット
(72)【発明者】
【氏名】ハモンド ジョナサン
【テーマコード(参考)】
5H601
5H607
【Fターム(参考)】
5H601AA02
5H601BB11
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD25
5H601EE18
5H601GA02
5H601GA40
5H601GC02
5H601GC05
5H601GC12
5H601GC22
5H601KK20
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC01
5H607DD01
5H607EE40
5H607JJ05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】少量の体積のみを必要としながら圧縮機機構の適切なバランスをとることを可能にするブラシレス電気モータ用のロータ組立体を提供する。
【解決手段】永久磁石モータ16のためのロータ組立体26は、積層された強磁性層のロータ積層体32と、ロータ積層体の反対側の軸方向端部における部分端板38、40とを含み、ロータの各軸方向端部は、2つの部分端板を坦持し、2つの部分端板が各部分的円をカバーし、同じ軸方向端部における部分端板の他の1つと軸方向に重ならない。各軸方向端部の2つの部分端板は、第1の部分環状ディスクとして成形された第1の軸方向端板38と、プレス金属製で質量の異なる第2の部分環状ディスクとして成形された第2の部分端板40とによって形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ積層体の軸方向反対側端部に積層された強磁性層及び端板のロータ積層体を備え、
前記ロータ積層体が、各ロータの軸方向端部が2つの部分端板を担持し、
各部分端板が、部分円をカバーし、同じ軸方向端部で前記部分端板の他の1つと軸方向に重ならない、永久磁石モータ用のロータ組立体。
【請求項2】
前記各軸方向端部の前記2つの部分端板が、第1の部分環状ディスクとして成形された第1の軸方向端板と、第2の部分環状ディスクとして成形された第2の軸方向端板とによって形成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載のロータ組立体。
【請求項3】
前記第1の部分環状ディスク及び前記第2の部分環状ディスクが、プレス金属で作られている、請求項2に記載のロータ組立体。
【請求項4】
各軸方向端部の2つの部分端板の質量が異なる、請求項1に記載のロータ組立体。
【請求項5】
前記2つの軸方向端部のうち同じ1つの端部にある前記2つの部分端板は、前記2つの部分端板の一方の材料が、他方の部分端板の材料よりも高い密度を有するように、異なる材料から作製される、請求項4に記載のロータ組立体。
【請求項6】
前記2つの部分端板の一方の材料が銅を含み、前記他方の部分端板の材料がアルミニウムを含む、請求項5に記載のロータ組立体。
【請求項7】
前記2つの軸方向端部の同じ端部における前記2つの部分端板が、異なる軸方向厚さを有する、請求項4に記載のロータ組立体。
【請求項8】
前記2つの軸方向端部の同じ端部における前記2つの部分端板のそれぞれが、それぞれの角度範囲をカバーし、
前記2つの部分端板のそれぞれの角度範囲が互いに異なる、請求項4に記載のロータ組立体。
【請求項9】
他方の部分端板よりも大きい質量の前記一方の部分端板が、より小さい質量の前記他方の部分端板よりも、より大きい角度範囲にわたって延在する、請求項8に記載のロータ組立体。
【請求項10】
前記より大きい角度範囲が、最大180°である、請求項9に記載のロータ組立体。
【請求項11】
複数の締結ピンを更に備え、
前記締結ピンの各々が、前記ロータ積層体を軸方向に貫通し、各軸方向端部において、2つの部分端板のまさに1つを貫通して延びている、請求項1に記載のロータ組立体。
【請求項12】
複数の締結ピンを更に備え、
前記締結ピンの各々は、前記ロータ積層体を軸方向に貫通し、各軸方向端部において、前記軸方向端部に位置する全ての前記部分端板よりも少ない部分端板を貫通して延びている、請求項1に記載のロータ組立体。
【請求項13】
請求項1に記載のロータ組立体を備える、永久磁石モータ。
【請求項14】
前記永久磁石モータが、ブラシレス誘導電動機であるステータをさらに備える、請求項13に記載の永久磁石モータ。
【請求項15】
請求項13に記載の永久磁石モータを備える、電動スクロール圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、永久磁石モータに関する。特に、本開示は、自動車用HVACシステムのための圧縮機のようなスクロール機械のブラシレス永久磁石モータに関する。
【背景技術】
【0002】
剛性ロータを有する圧縮機のロータ、すなわち、特定の固有振動数よりもかなり低い回転数で運転されるロータは、一般に、圧縮機機構の可動部分のバランスをとるためのカウンタウェイトが設けられている。これは、不均衡による振動や応力を低減するための対策である。カウンタウェイトは、ロータ自体に取り付けることも、ロータによって駆動されるシャフトに取り付けることもできる。カウンタウェイトとバランスのとれたロータを備えたブラシレス永久磁石モータの使用例の1つは、電気自動車又はハイブリッド自動車のHVACシステムにおけるスクロール圧縮機である。
【0003】
ブラシレスモータのロータは、絶縁層と交互に並ぶ強磁性シートとの積層体で構成することができる。永久磁石は、積層体に形成された溝孔に挿入することができる。一般に積層体は、端板及び積層体を貫通して軸方向に端部から端部まで延びる締結ピンによって固定された非鉄端板によって一緒に保持される。圧縮機機構の不均衡は、軸と共に回転する全ての部品、例えば旋回スクロールを含むロータ組立体の全体形状に依存する。
【0004】
したがって、カウンタウェイトは圧縮機機構の可動部分のバランスをとるために必要であるが、特に実装スペースが非常に限られている自動車では、その貴重な実装スペースも占める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、少量の体積のみを必要としながら圧縮機機構の適切なバランスをとることを可能にするブラシレス電気モータ用のロータ組立体を製造することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これは、ロータ組立体の軸方向端部で分割された端板によって達成され、ここで、ロータ組立体の各軸方向端部は、2つの補完的な部分端板を坦持し、それぞれは、端面の部分円をカバーし、部分端板の他の1つと軸方向に重ならない。
【0007】
これらの端板は、異なる密度の非鉄材料で作ることができ、その結果、端板は、同じ形状及び体積で作られたとしても、依然として異なる質量を有することになる。したがって、端板自体は、余分なスペースを必要とせずにカウンタウェイトを構成する。例えば、第1の部分端板は、アルミニウム又は軽量アルミニウム合金から作製されてもよく、第2の部分端板は、黄銅又は別の非強磁性合金を含む別の高密度非強磁性金属から作製されてもよい。
【0008】
代替的に又は追加的に、第1及び第2の部分端板は、部分端板のうちのより厚い部分端板が、相補的な部分端板のうちのより薄い部分端板よりも大きな質量を有するように、異なる軸方向厚さを有してもよい。
【0009】
2つの補完的な部分端板は、シャフト周囲の同一の角度範囲を覆うことができ、その結果、2つの部分端板の間の隙間が、互いに180°ずれて、シャフトの反対側に配置される。しかしながら、代替的に、第1の部分端板の角度範囲は、第2の部分端板によってカバーされる角度範囲とは異なってもよく、その結果、端板間の隙間は、180°以外の角度だけ互いにオフセットされ、例えば、360°の円を、第1の部分端板については約180°±5°の区画に分割し、第2の部分端板については約160°(端板間の隙間は、それぞれ約10°に達してもよい)の区画に分割する。これらの角度範囲では、部分端板間の隙間幅は、2つの部分端板の合計角度範囲が360°未満になるように、部分端板の一方又は両方の角度範囲を減少させる。また、より重い重量の部分端板を180°を著しく超えて(例えば、10°超えて)延ばすことは、部分端板の一方の端部区域における質量が部分端板の反対側の端部区域における質量を相殺することになり、一方で、ロータの回転慣性を不必要に増大させることになる。したがって、重量部分端板は、最大で180°の範囲を占めるように制限されることが好ましい。
【0010】
これに加えて、又はこれに代えて、ロータの一方の軸方向側又は両軸方向側の部分端板の一方又は両方を、ロータ組立体のバランスを微調整するために機械加工することができる。
【0011】
部分端板をカウンタウェイトとして使用することは、組み立てられたロータ又はシャフトに追加されるカウンタウェイトの省スペースの代替手段を提供するだけでなく、軸方向ピンのための孔を含む部分端板の費用節約のプレス加工を可能にする。
【0012】
さらなる詳細及び利点は、添付の図面に示される実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。図面は、純粋に例示的な目的のためにここに提供され、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示によるカウンタウェイトを有するロータを備えたスクロール圧縮機の概略断面図を示す。
図2】本開示によるカウンタウェイトを有する図1のロータの部分詳細断面図を示す。
図3図1及び図2のロータの第1の斜視図を示す。
図4図1及び図2のロータの第2の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、スクロール圧縮機10が、ほぼ円筒状のハウジング12と、ハウジング12を気密にシールする蓋14とを備えていることを示している。スクロール圧縮機は一般に当技術分野で公知であるので、本開示に関連する要素のみが示されており、任意のポート、コネクタ、導管及びベアリングは省略している。スクロール圧縮機10のハウジング12は、モータ16と、ハウジング12に対して静止したままの固定スクロール部材20及びシャフト24の偏心軸端部によって駆動される旋回スクロール22で構成されるスクロール組立体18とを収容する。一般に知られているように、固定スクロール部材及び旋回スクロールの各々は、旋回中に一定の間隔を有するインボリュート螺旋を形成するラップを生み、その間隔はシャフト24の偏心円を規定する。旋回スクロール部材のラップは、固定スクロール部材20のラップと噛み合い、それらの間に2つのキャビティを形成する。シャフト24は、モータ16のロータ26に固定的に連結され、回転する。ロータ26は、ロータ26を取り囲み、ハウジングに固着されるステータ28によって駆動される。
【0015】
ロータ26は、複数のロータ積層体32と複数の永久磁石(像面の外側)から形成されたロータ積層体30を含む。ロータ26は、さらに、上側カウンタウェイト装置34と、ロータ26の静的バランスのために、ロータの軸方向の両端に取り付けられた下側カウンタウェイト装置36とを備えている。上側及び下側のカウンタウェイト装置34及び36は、本来、軽量部分端板38と、この軽量部分端板38よりも重い重量部分端板40とを含む、カウンタウェイト装置34及び36の各々と同様の部品で構成されている。軽量部分端板38は、回転軸Aの周りで互いに180°オフセットされ、一方、重量部分端板40は、回転部品の静的及び動的バランスの両方を考慮するために互いに数度オフセットされてもよい。さらなる詳細は、後述する図3及び図4に示される。
【0016】
ロータ積層体32は、中央シャフト孔42、複数の磁石溝孔(像平面の外側)及び複数のピン孔44を定める。上側及び下側のカウンタウェイト装置34及び36は、ピン孔44と整列された締結孔46を有する。それぞれの締結ピン48は、ピン孔44の各々と、それぞれのピン孔44と位置合わせされた上側及び下側のカウンタウェイト装置34及び36の締結孔46とを貫通して延びている。
【0017】
図2は、上側カウンタウェイト装置34のみを含むロータ26上部の概略的な断面を示しており、図3及び図4は、ロータ26をそれぞれ反対側から示している。図3に上側カウンタウェイト装置34を、図4に下側カウンタウェイト装置36をそれぞれ示す。
【0018】
図2及び図3に示すカウンタウェイト装置34は、上側カウンタウェイト装置34のみであるが、図2及び図3を参照した説明は、同様に、図4に示す下側カウンタウェイト装置36にも適用される。
【0019】
カウンタウェイト装置34は、2つの部分環状ディスク50及び52から構成されている。第1の部分環状ディスク50は、第2の部分環状ディスク52よりも、その軸方向の厚さ及びその半径方向の幅の両方において小さい。第1の部分環状ディスク50は軽量の部分端板38を形成し、第2の部分環状ディスク52は重量の大きい重量部分端板40を形成する。
【0020】
図示例では、第1の部分環状ディスク50は、アルミニウム又は軽量アルミニウム合金からなる。対照的に、第2の部分環状ディスク52は、真鍮、別の重量金属又は合金からなる。原則として、部分環状ディスクのいずれの材料も強磁性特性を有さない。
【0021】
このような例では、部分端板38,40が異なる密度の材料で構成されている場合、適切な材料を選択することによって、同一のサイズ、形状、容量の部分端ディスクと回転圧縮機機構をバランスさせることが可能である。しかしながら、軽量部分端板38には第1の所定材料を、重量部分端板40には別の所定材料を一貫して使用することが、シリーズ生産にとってより実現可能である。ロータ組立体の幾何寸法が知られているとき、重量部分端板40は、重量部分端板40によってカバーされる角度範囲にわたって必要なカウンタウェイトを追加する所定の厚さで予め製造されてもよい。
【0022】
図3及び図4に示すように、軽量部分端板38は、重量部分端板40よりも狭い角度範囲をカバーしている。重量部分端板40の各々は、円の半分、すなわち180°までカバーし、一方、軽量部分端板38は、各々、125°~140°の角度範囲をカバーする。図示の例では、部分端板38及び40間の隙間58と60は、厳密に半径方向に延在せず、むしろ互いに直線状に整列するように配置されている。隙間の方向は、ロータの質量分布と慣性にわずかな効力を与え、設計段階での計算で考慮することができる。図4に示すように、隙間58及び60は、ロータ26の少なくとも1つの軸方向端部上で、互いに反対側の軸方向端部上の重量部分端板40の重心が互いに180°よりもわずかに異なる角度、例えば、回転軸Aの周りで175°から179°ずれているように、動的バランスのために異なる幅を有する。
【0023】
ロータ組立体は、ロータ積層体内のピン孔44と、部分端板38及び40内の整列した締結孔46とを貫通して延びる6つの締結ピン48によって一緒に保持される。締結ピン48の数は、空間上の理由から、ロータ内の磁石溝孔の数に応じて変わり得る。
【0024】
2つの補完的な部分端板38及び40は、シャフトの周囲の同一の角度範囲をカバーすることができ、その結果、2つの部分端板間の隙間が、シャフトの反対側に見出され、互いに180°ずれている。しかしながら、或いは、軽量部分端板38の角度範囲は、重量部分端板40によって覆われた角度範囲とは異なり、ロータ積層体30の一方の軸方向端板の互いを補完する部分端板間の隙間が、互いに180°以外の角度だけオフセットされるようにしてもよい。例えば、360°の円を、重量部分端板によって覆われた角度範囲が約180°、軽量部分端板によって覆われた角度範囲が約160°の区間に分割するようにしてもよい(部分端板間の隙間は、それぞれ約10°にもなり得る)。これらの角度範囲では、部分端板38と40との間の隙間幅は、2つの部分端板の合計角度範囲が360°未満になるように、部分端板38と40の一方又は両方の角度範囲を減少させる。
【0025】
重量部分端板40を180°を超えて著しく延長すると、部分端板40の一端の質量が部分端板40の他端の質量を打ち消し、一方、ロータ26の回転慣性を不必要に増加させることになる。したがって、重量部分端板40は、約180°以下の角度範囲を占めるように制限されることが好ましい。隙間幅、部分端板の厚さ及び部分端板の各々がカバーする角度範囲の変動は、慣性、スペース要件及び全体の質量を念頭に置いて、回転圧縮機機構の全体形状によって決定される。
【0026】
図4から分かるように、各締結ピン48は、部分端板38,40の軸方向端面に当接する拡大ヘッド54を有する。締結ピン48の各々は、部分端板38及び40の一方を通って、ロータ積層体を通り、部分端板38及び40の他方を通って延びている。一般に、締結ピンの各々は、一方側では1つの軽量部分端板38を貫通し、反対側では重量部分端板40を貫通して延びている。拡大ヘッド54とは反対側の端部56において、締結ピン48の各々がリベット止めされて、部分端板38及び40を図3に示すようにロータ積層体30に固定する。
【0027】
図示の構成の変形例では、ロータ26の各軸方向端部上の重量部分端板40は、プレス加工板の2つ以上の積層された層で構成することができ、これにより、モジュール手法を可能にする。このように構成された部分端板の積み重ねられた層は、異なる又は同一の材料で作ることができる。
【0028】
上述の説明は、本発明の好ましい実施形態を構成するが、本発明は、変更、変形、及び変更が可能である。
図1
図2
図3
図4