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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104603
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20220701BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20220701BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20220701BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B60C11/03 100A
B60C5/00 H
B60C11/03 B
B60C11/12 A
B60C11/12 D
B60C11/13 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211260
(22)【出願日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2020218180
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】栗山 智久
(72)【発明者】
【氏名】池田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】大森 千聡
(72)【発明者】
【氏名】三好 康平
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC13
3D131BC44
3D131CB06
3D131EB05U
3D131EB19V
3D131EB19X
3D131EB20V
3D131EB20X
3D131EB82W
3D131EB83W
3D131EB86W
3D131EB87W
3D131EB99V
3D131EB99W
3D131EB99X
3D131EC01W
3D131EC01X
3D131EC02V
(57)【要約】
【課題】ドライ路面での操縦安定性を向上させたタイヤを提供する。
【解決手段】車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有するタイヤである。トレッド部2の陸部4は、クラウン陸部13と、第1ミドル陸部12と、第2ミドル陸部14とを含む。正規リムに正規内圧でリム組され、かつ、正規荷重の50%を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させた50%荷重負荷状態において、第1ミドル陸部12、クラウン陸13部、第2ミドル陸部14のタイヤ軸方向の接地面の幅をそれぞれW1m、Wc、W2mとしたとき、以下の式(1)を満足する。クラウン陸部13の外側接地面36及び内側接地面37のタイヤ軸方向の幅をそれぞれWco、Wciとしたとき、以下の式(2)を満足する。
タイヤ。
W1m>Wc>W2m…(1)
Wco>Wci…(2)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側となる第1トレッド端と、車両装着時に車両内側となる第2トレッド端と、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部は、タイヤ赤道上に配されたクラウン陸部と、前記クラウン陸部の前記第1トレッド端側に隣接する第1ミドル陸部と、前記クラウン陸部の第2トレッド端側に隣接する第2ミドル陸部とを含み、
正規リムに正規内圧でリム組され、かつ、正規荷重の50%の荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させた50%荷重負荷状態において、前記第1ミドル陸部、前記クラウン陸部、前記第2ミドル陸部のタイヤ軸方向の接地面の幅をそれぞれW1m、Wc、W2mとしたとき、以下の式(1)を満足し、
前記クラウン陸部は、タイヤ赤道よりも第1トレッド端側の外側接地面と、タイヤ赤道よりも第2トレッド端側の内側接地面とを含み、
前記外側接地面及び前記内側接地面のタイヤ軸方向の幅をそれぞれWco、Wciとしたとき、以下の式(2)を満足する、
タイヤ。
W1m>Wc>W2m…(1)
Wco>Wci…(2)
【請求項2】
前記外側接地面のタイヤ軸方向の幅は、前記クラウン陸部の接地面のタイヤ軸方向の幅の51%~55%である、請求項1のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1ミドル陸部には、タイヤ周方向に延びる第1縦サイプが設けられている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1縦サイプは、タイヤ周方向に連続して延びている、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第1縦サイプは、ジグザグ状に延びている、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1縦サイプは、タイヤ周方向に断続的に延びている、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1ミドル陸部は、前記第1トレッド端側の第1縦エッジと、前記第2トレッド端側の第2縦エッジと、前記第1縦エッジと前記第2縦エッジとの間の踏面とを含み、
前記第1ミドル陸部には、前記第1縦エッジに連通しかつ前記第1ミドル陸部内に途切れ端を有する外側第1ミドルサイプと、前記第2縦エッジに連通しかつ前記第1ミドル陸部内に途切れ端を有する内側第1ミドルサイプとが設けられている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記外側第1ミドルサイプのタイヤ軸方向の長さは、前記第1ミドル陸部のタイヤ軸方向の幅の20%~45%である、請求項7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記内側第1ミドルサイプのタイヤ軸方向の長さは、前記第1ミドル陸部のタイヤ軸方向の幅の20%~45%である、請求項7又は8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1ミドル陸部には、前記第1ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の第1ミドルサイプが設けられている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第1ミドルサイプは、タイヤ軸方向に対して傾斜し、
前記第2ミドル陸部には、タイヤ軸方向に対して前記第1ミドルサイプと同じ向きに傾斜した複数の第2ミドルサイプが設けられている、請求項10に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記第1ミドルサイプは、タイヤ軸方向に対して傾斜し、
前記クラウン陸部には、タイヤ軸方向に対して前記第1ミドルサイプと同じ向きに傾斜した複数のクラウンサイプが設けられている、請求項10又は11に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記周方向溝は、互いに向き合う第1溝壁及び第2溝壁を含み、
前記第1溝壁には、前記トレッド部の踏面の現れる前記周方向溝の溝縁よりも溝幅方向の外側に凹む複数の第1凹部が設けられており、
前記第2溝壁には、前記トレッド部の踏面の現れる前記周方向溝の溝縁よりも溝幅方向の外側に凹む複数の第2凹部が設けられており、
前記第1凹部及び前記第2凹部は、最も溝幅方向の外側に凹んだ最深部からタイヤ周方向の両側に向かって、前記溝縁からの凹み量が漸減しており、
前記周方向溝に隣接する前記陸部には、前記周方向溝に連通するサイプがタイヤ周方向に複数設けられ、
前記サイプの1ピッチ長さの1.0~3.0倍の長さの間に、前記第1凹部及び前記第2凹部が1つずつ設けられている、請求項1ないし12のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部にクラウン陸部及び一対のミドル陸部が区分された空気入りタイヤが提案されている。前記クラウン陸部及び前記ミドル陸部は、それぞれ、タイヤ周方向に連続して延びるリブとして形成されている。前記空気入りタイヤは、このような特徴により、走行中のノイズを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-132181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤのクラウン陸部及びミドル陸部は、直進走行時のみならず、旋回走行時においても、大きな接地圧が作用するため、ドライ路面での操縦安定性への寄与が大きい。開発者らは、これらの陸部の構成を見直すことにより、上記の性能をより一層向上できることを知見し、本開示を完成させるに至った。
【0005】
本開示は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、ドライ路面での操縦安定性を向上させたタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、車両装着時に車両外側となる第1トレッド端と、車両装着時に車両内側となる第2トレッド端と、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、前記複数の陸部は、タイヤ赤道上に配されたクラウン陸部と、前記クラウン陸部の前記第1トレッド端側に隣接する第1ミドル陸部と、前記クラウン陸部の第2トレッド端側に隣接する第2ミドル陸部とを含み、正規リムに正規内圧でリム組され、かつ、正規荷重の50%の荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させた50%荷重負荷状態において、前記第1ミドル陸部、前記クラウン陸部、前記第2ミドル陸部のタイヤ軸方向の接地面の幅をそれぞれW1m、Wc、W2mとしたとき、以下の式(1)を満足し、前記クラウン陸部は、タイヤ赤道よりも第1トレッド端側の外側接地面と、タイヤ赤道よりも第2トレッド端側の内側接地面とを含み、前記外側接地面及び前記内側接地面のタイヤ軸方向の幅をそれぞれWco、Wciとしたとき、以下の式(2)を満足する、タイヤである。
W1m>Wc>W2m…(1)
Wco>Wci…(2)
【発明の効果】
【0007】
本開示のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ドライ路面での操縦安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。
図2】トレッド部の接地時の接地面形状を示す拡大図である。
図3図1の第1ショルダー陸部及び第1ミドル陸部の拡大図である。
図4図3のA-A線断面図である。
図5図3のC-C線断面図である。
図6図3のB-B線断面図である。
図7図3のD-D線断面図である。
図8図1の第1ミドル陸部、クラウン陸部及び第2ミドル陸部の拡大図である。
図9図1の第2ショルダー陸部の拡大図である。
図10図9のE-E線断面図である。
図11図1のF-F線断面図である。
図12図1のG-G線断面図である。
図13】他の実施形態の第1ミドル陸部の拡大図である。
図14】他の実施形態の第1ミドル陸部の拡大図である。
図15】本開示の他の実施形態のトレッド部の展開図である。
図16図15の第1ミドル陸部の拡大図である。
図17図16のH-H線断面図である。
図18】他の実施形態の第1ミドル陸部の拡大図である。
図19】基準タイヤのトレッド部の展開図である。
図20】比較例のタイヤのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1は、本開示の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本開示は、このような態様に限定されるものではなく、重荷重用の空気入りタイヤや、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤに適用されても良い。
【0010】
図1に示されるように、本開示のタイヤ1は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有する。トレッド部2は、タイヤ1の車両装着時に車両外側に位置することが意図された第1トレッド端T1と、車両装着時に車両内側に位置することが意図された第2トレッド端T2とを有する。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。
【0011】
第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2は、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重の50%が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置に相当する。
【0012】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0013】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0014】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0015】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、「正規荷重」は、タイヤの標準装着状態において、1つのタイヤに作用する荷重を指す。前記「標準装着状態」とは、タイヤの使用目的に応じた標準的な車両にタイヤが装着され、かつ、前記車両が走行可能な状態で平坦な路面上に静止している状態を指す。
【0016】
トレッド部2は、第1トレッド端T1と第2トレッド端T2との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝3と、周方向溝に区分された複数の陸部4とを有する。本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2が4本の周方向溝3に区分された5つの陸部4を含む所謂5リブのタイヤとして構成されている。
【0017】
周方向溝3は、例えば、第1ショルダー周方向溝5、第2ショルダー周方向溝8、第1クラウン周方向溝6及び第2クラウン周方向溝7を含む。第1ショルダー周方向溝5は、第1トレッド端T1とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。第2ショルダー周方向溝8は、第2トレッド端T2とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。第1クラウン周方向溝6は、第1ショルダー周方向溝5とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。第2クラウン周方向溝7は、第2ショルダー周方向溝8とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。
【0018】
タイヤ赤道Cから第1ショルダー周方向溝5又は第2ショルダー周方向溝8の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの25%~35%であるのが望ましい。タイヤ赤道Cから第1クラウン周方向溝6又は第2クラウン周方向溝7の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの5%~15%であるのが望ましい。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における第1トレッド端T1から第2トレッド端T2までのタイヤ軸方向の距離である。
【0019】
本実施形態の各周方向溝3は、例えば、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。各周方向溝3は、例えば、波状に延びるものでも良い。
【0020】
各周方向溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの2.0%~8.0%であるのが望ましい。本実施形態では、第1ショルダー周方向溝5が、4本の周方向溝3のうち最も小さい溝幅を有している。但し、本開示は、このような態様に限定されるものではない。各周方向溝3の深さは、乗用車用の空気入りタイヤの場合、例えば、5~10mmであるのが望ましい。
【0021】
本開示の陸部4は、クラウン陸部13、第1ミドル陸部12及び第2ミドル陸部14を含んでいる。クラウン陸部13は、タイヤ赤道C上に配されており、第1クラウン周方向溝6と第2クラウン周方向溝7との間に区分されている。第1ミドル陸部12は、クラウン陸部13の第1トレッド端T1側に隣接しており、第1ショルダー周方向溝5と第1クラウン周方向溝6とに区分されている。第2ミドル陸部14は、クラウン陸部13の第2トレッド端T2側に隣接しており、第2ショルダー周方向溝8と第2クラウン周方向溝7とに区分されている。
【0022】
本実施形態の陸部4は、さらに、第1ショルダー陸部11及び第2ショルダー陸部15を含んでいる。第1ショルダー陸部11は、第1トレッド端T1を含んでおり、第1ミドル陸部12の第1トレッド端T1側に隣接している。第2ショルダー陸部15は、第2トレッド端T2を含んでおり、第2ミドル陸部14の第2トレッド端T2側に隣接している。
【0023】
図2には、トレッド部2の接地時の接地面形状を示す拡大図が示されている。図2に示されるように、正規リムに正規内圧でリム組され、かつ、正規荷重の50%を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させた50%荷重負荷状態において、第1ショルダー陸部11、第1ミドル陸部12、クラウン陸部13、第2ミドル陸部14及び第2ショルダー陸部15のタイヤ軸方向の接地面の幅をそれぞれW1s、W1m、Wc、W2m及びW2sとしたとき、以下の式(1)を満足する。
W1m>Wc>W2m…(1)
【0024】
図1に示されるように、クラウン陸部13は、タイヤ赤道Cよりも第1トレッド端T1側の外側接地面36、タイヤ赤道Cよりも第2トレッド端側の内側接地面37を含む。本開示では、外側接地面36及び内側接地面37のタイヤ軸方向の幅をそれぞれWco、Wciとしたとき、以下の式(2)を満足する。
Wco>Wci…(2)
【0025】
本開示では、上記の構成を採用したことにより、ウェット性能を始めとするタイヤの諸性能を担保しつつ、ドライ路面での操縦安定性を向上させることができる。その理由として、以下のメカニズムが推察される。
【0026】
上記の構成により、本開示のタイヤ1は、トレッド部2の各陸部の剛性が、車両外側に向かって大きくなり、これにより、舵角量の増加に伴ってコーナリングフォースがリニアに増加し、ドライ路面での操縦安定性が向上する。とりわけ、クラウン陸部13が上記式(2)を満足しているため、上記効果が確実に発揮される。本開示のタイヤは、以上のようなメカニズムにより、ドライ路面での操縦安定性を向上させることができると推察される。
【0027】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本開示は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本開示のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0028】
本実施形態のタイヤ1は、50%荷重負荷状態において、以下の式(3)を満足するのが望ましい。このようなタイヤ1は、第1トレッド端T1に近い陸部がより大きな剛性を有する。このため、操舵によって接地面の中心が第1トレッド端T1側に移動するときにおいても、操舵の手応えが安定し、舵角の増加に対してリニアにコーナリングフォースが発生する。したがって、本実施形態のタイヤ1は、ドライ路面での操縦安定性(以下、単に「操縦安定性」という場合がある。)をより一層向上させることができる。
W1s>W1m>Wc>W2m≧W2s …(3)
【0029】
50%荷重負荷状態において、第1ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W1sは、クラウン陸部13のタイヤ軸方向の接地面の幅Wcの115%~125%であるのが望ましい。これにより、第1ショルダー陸部11の剛性が最適化し、上述の効果とともに、ノイズ性能も向上し得る。
【0030】
同様の観点から、50%荷重負荷状態において、第1ミドル陸部12の接地面のタイヤ軸方向の幅W1mは、クラウン陸部13のタイヤ軸方向の接地面の幅Wcの101%~107%であるのが望ましい。
【0031】
50%荷重負荷状態において、第2ミドル陸部14の接地面のタイヤ軸方向の幅W2mは、クラウン陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅Wcの90%~99%であるのが望ましい。これにより、直進時のノイズ性能が向上する。また、直進時のタイヤの振動が車体側に伝達され難くなり、乗り心地性も向上する。
【0032】
同様の観点から、50%荷重負荷状態において、第2ショルダー陸部15の接地面のタイヤ軸方向の幅W2sは、クラウン陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅Wcの90%~99%であるのが望ましい。
【0033】
さらに望ましい態様として、本実施形態では、50%荷重負荷状態において、第2ミドル陸部14の前記幅W2mが、第2ショルダー陸部15の前記幅W2sと同一とされている。これにより、第2ミドル陸部14と第2ショルダー陸部15との摩耗の進行が均一となり、耐偏摩耗性能が向上する。
【0034】
図1に示されるように、実施形態の各陸部4には、サイプ16が設けられている。本明細書において、「サイプ」とは、小さな幅を有する切れ込み要素であって、サイプ16の本体部における2つのサイプ壁間の幅が1.5mm以下のものを指す。サイプ16の前記幅は、望ましくは0.2~1.2mmであり、より望ましくは0.5~1.0mmである。サイプ16は、前記幅よりも大きい幅で開口する拡幅部や、前記幅よりも大きいフラスコ底部を含むものでも良い。
【0035】
図3には、第1ショルダー陸部11及び第1ミドル陸部12の拡大図が示されている。図3に示されるように、第1ショルダー陸部11には、サイプのみが設けられている。これにより、第1ショルダー陸部11の剛性が高められる。本実施形態では、第1ショルダー陸部11には、タイヤ軸方向に延びる複数の第1ショルダーサイプ21が設けられている。
【0036】
第1ショルダーサイプ21のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1は、例えば、第1ショルダー陸部11のタイヤ軸方向の踏面の幅W3の100%~130%である。なお、2つのサイプのタイヤ周方向の1ピッチ長さは、一方のサイプの横断面における幅方向の中心位置から、他方のサイプの前記中心位置までのタイヤ周方向に平行な距離である。また、前記距離がタイヤ軸方向に変化する場合は、その中間の距離が、前記1ピッチ長さに相当する。
【0037】
第1ショルダーサイプ21は、少なくとも、第1ショルダー周方向溝5に連通しているのが望ましい。本実施形態の第1ショルダーサイプ21は、例えば、第1ショルダー周方向溝5から第1トレッド端T1まで延びており、第1ショルダー陸部11の踏面を完全に横断している。但し、第1ショルダーサイプ21は、このような態様に限定されるものではなく、第1ショルダー陸部11内に途切れ端を有するものでも良い。
【0038】
第1ショルダーサイプ21は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1方向(本明細書の各図では、右上がりである)に傾斜している。第1ショルダーサイプ21のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~35°である。さらに望ましい態様では、第1ショルダーサイプ21は、第2トレッド端T2側に向かってタイヤ軸方向に対する角度が大きくなっている部分を含む。このような第1ショルダーサイプ21は、タイヤ軸方向にも摩擦力を発揮することができる。
【0039】
第1ショルダーサイプ21の踏面での開口幅W4は、例えば、第1ミドルサイプ30の踏面での開口幅W5よりも大きい。具体的には、第1ショルダーサイプ21の前記開口幅W4は、例えば、4.0~8.0mmである。第1ミドルサイプ30の前記開口幅W5は、例えば、2.0~6.0mmである。また、第1ミドルサイプ30の前記開口幅W5は、第1ショルダーサイプ21の前記開口幅W4の50%~90%である。このような第1ショルダーサイプ21及び第1ミドルサイプ30は、耐偏摩耗性能を向上させることができる。
【0040】
図4には、第1ショルダーサイプ21の横断面を示す図として、図3のA-A線断面図が示されている。図4に示されるように、第1ショルダーサイプ21は、タイヤ半径方向に延びる本体部21aと、陸部の踏面で開口しかつ本体部21aよりも大きい幅を有する拡幅部21bとを含む。本実施形態では、本体部の幅が、例えば、0.5~1.5mmとされる。
【0041】
第1ショルダーサイプ21の拡幅部21bは、本体部21aから踏面に延びる傾斜面22を含む。本実施形態の傾斜面22は、平面状であり、タイヤ半径方向に対して50~70°の角度θ1で傾斜している。このような拡幅部21bは、陸部に大きな接地圧が作用したときに傾斜面22の全面が接地できるため、トレッド部の実質的な接地面積を確実に拡大させる。したがって、操縦安定性がより一層向上する。
【0042】
第1ショルダーサイプ21の拡幅部21bの深さd1は、第1ショルダーサイプ21の最大の深さd3の10%~30%であり、望ましい態様では、0.5~2.0mmとされる。なお、第1ショルダーサイプ21の最大の深さd3は、例えば、周方向溝3の深さの70%~100%とされる。
【0043】
第1ショルダーサイプ21の拡幅部21bの幅W6(サイプの横断面における踏面に沿った幅である)は、例えば、2.0~4.0mmである。
【0044】
図5には、図3のC-C線断面図が示されている。図5に示されるように、第1ショルダーサイプ21は、底部が局所的に隆起した浅底部23を含む。本実施形態の浅底部23は、例えば、第1ショルダー周方向溝5との連通部に設けられている。第1ショルダーサイプ21の浅底部23の最小の深さd4は、第1ショルダーサイプ21の最大の深さd3の40%~60%である。浅底部23のタイヤ軸方向の長さL3は、第1ショルダー陸部11のタイヤ軸方向の幅W3(図3に示す)の10%~30%である。なお、浅底部23の前記長さL3は、例えば、浅底部23の高さ方向の中心位置で測定される。このような浅底部23を有する第1ショルダーサイプ21は、第1ショルダー陸部11の剛性を維持し、操縦安定性を向上させる。
【0045】
図3に示されるように、第1ミドル陸部12は、第1トレッド端T1側の第1縦エッジ12aと、第2トレッド端T2側の第2縦エッジ12bと、第1縦エッジ12aと第2縦エッジ12bとの間の踏面とを含む。また、第1ミドル陸部12には、サイプのみが設けられている。これにより、第1ミドル陸部12の剛性が高められる。本実施形態の第1ミドル陸部12には、タイヤ軸方向に延びる複数の第1ミドルサイプ30が設けられている。
【0046】
図6には、第1ミドルサイプ30の横断面を示す図として、図3のB-B線断面図が示されている。図6に示されるように、第1ミドルサイプ30は、タイヤ半径方向に延びる本体部30aと、陸部の踏面で開口しかつ本体部30aよりも大きい幅を有する拡幅部30bとを含む。本実施形態では、本体部の幅が、例えば、0.5~1.5mmとされる。
【0047】
第1ミドルサイプ30の拡幅部30bは、本体部30aから踏面に延びる傾斜面25を含む。本実施形態の傾斜面25は、平面状であり、タイヤ半径方向に対して30~60°の角度θ2で傾斜している。
【0048】
第1ミドルサイプ30の拡幅部30bの深さd2は、第1ミドルサイプ30の最大の深さd5の15%~30%である。また、第1ミドルサイプ30の拡幅部30bの深さd2は、例えば、1.0~3.0mmである。より望ましい態様では、第1ショルダーサイプ21の拡幅部21bの深さd1は、第1ミドルサイプ30の拡幅部30bの深さd2よりも小さい。第1ショルダーサイプ21の拡幅部21bの深さd1は、第1ミドルサイプ30の拡幅部30bの深さd2の50%~90%であり、望ましくは60%~80%である。
【0049】
第1ミドルサイプ30の拡幅部30bの幅W8(サイプの横断面における踏面に沿った幅である)は、例えば、1.0~3.0mmである。
【0050】
第1ミドルサイプ30は、第1縦エッジ12aから延びかつ第1ミドル陸部12内に途切れ端31aを有する外側第1ミドルサイプ31と、第2縦エッジ12bから延びかつ第1ミドル陸部12内に途切れ端32aを有する内側第1ミドルサイプ32とを含む。
【0051】
第1ミドルサイプ30は、トレッド平面視において、直線状に延びている。また、第1ミドルサイプ30は、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜している。より具体的には、外側第1ミドルサイプ31及び内側第1ミドルサイプ32のそれぞれが、トレッド平面視において直線状に延び、かつ、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜している。
【0052】
外側第1ミドルサイプ31のタイヤ軸方向に対する角度、及び、内側第1ミドルサイプ32のタイヤ軸方向に対する角度は、それぞれ、望ましくは20°以上、より望ましくは25°以上であり、望ましくは45°以下、より望ましくは40°以下である。このような外側第1ミドルサイプ31及び内側第1ミドルサイプ32は、タイヤ軸方向及びタイヤ周方向にバランス良く摩擦力を提供する。
【0053】
外側第1ミドルサイプ31と内側第1ミドルサイプ32との角度差は、望ましくは10°以下、より望ましくは5°以下であり、本実施形態ではこれらが平行に配されている。このような外側第1ミドルサイプ31及び内側第1ミドルサイプ32は、第1ミドル陸部12の偏摩耗を抑制することができる。
【0054】
外側第1ミドルサイプ31及び内側第1ミドルサイプ32は、それぞれ、第1ミドル陸部12のタイヤ軸方向の中心位置を横切ることなく途切れている。外側第1ミドルサイプ31のタイヤ軸方向の長さLaは、第1ミドル陸部12のタイヤ軸方向の幅W7の20%以上、より好ましくは25%以上であり、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下である。同様に、内側第1ミドルサイプ32のタイヤ軸方向の長さLcは、第1ミドル陸部12のタイヤ軸方向の幅W7の20%以上、より好ましくは25%以上であり、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下である。このような外側第1ミドルサイプ31及び内側第1ミドルサイプ32は、操縦安定性を維持しつつ、乗り心地性及びノイズ性能を向上させることができる。
【0055】
外側第1ミドルサイプ31の途切れ端31aと、内側第1ミドルサイプ32の途切れ端32aとは、タイヤ周方向に位置ずれしている。外側第1ミドルサイプ31の途切れ端31aと、内側第1ミドルサイプ32の途切れ端32aとのタイヤ周方向の距離Lbは、例えば、第1ミドルサイプ30のタイヤ周方向の1ピッチ長さP2の50%以下であり、望ましくは25%~40%である。さらに望ましい態様では、前記距離Lbは、以下の式(4)の範囲である。これにより、各サイプのピッチ音がホワイトノイズ化し易くなり、ノイズ性能が向上する。
Lb=2La±1(mm)…(4)
【0056】
なお、第1ミドルサイプ30の1ピッチ長さP2は、例えば、第1ショルダーサイプ21の1ピッチ長さP1の80%~120%とされ、より望ましい態様では、これらが同一とされる。
【0057】
本実施形態では、外側第1ミドルサイプ31が第1ショルダー周方向溝5に連通している。また、トレッド平面視において、外側第1ミドルサイプ31の拡幅部は、第1ショルダーサイプ21の拡幅部21bをその長さ方向に沿って延長した領域と重複する。これにより、外側第1ミドルサイプ31及び第1ショルダーサイプ21が協働してウェット性能をさらに向上させる。
【0058】
第1ミドルサイプ30は、その長さ方向に一定の深さを有する。より具体的には、外側第1ミドルサイプ31及び内側第1ミドルサイプ32が、それぞれ、その長さ方向に一定の深さを有している。内側第1ミドルサイプ32の深さは、例えば、周方向溝3の深さの70%~100%とされる。また、外側第1ミドルサイプ31の最大の深さは、内側第1ミドルサイプ32の最大の深さよりも小さい。外側第1ミドルサイプ31の最大の深さは、内側第1ミドルサイプ32の最大の深さの30%~70%であり、望ましい態様では1.0~2.5mmとされる。
【0059】
なお、外側第1ミドルサイプ31及び内側第1ミドルサイプ32には、それぞれ、図6で示されるサイプの断面形状を適用することができる。このような外側第1ミドルサイプ31及び内側第1ミドルサイプ32は、各サイプのピッチ音をホワイトノイズ化してノイズ性能を向上させ、かつ、乗り心地性及び操縦安定性をバランス良く向上させる。
【0060】
図3に示されるように、第1ミドル陸部12には、例えば、タイヤ周方向に延びる第1縦サイプ33が設けられている。本実施形態の第1縦サイプ33は、タイヤ周方向に連続して延びている。このような第1縦サイプ33は、ウェット走行時にタイヤ軸方向の摩擦力を提供する。なお、第1縦サイプ33のさらに別の実施形態は、後述される。
【0061】
第1縦サイプ33は、例えば、第1ミドル陸部12をタイヤ軸方向に3等分したときの中央の領域に設けられている。第1縦サイプ33から第1ミドル陸部12のタイヤ軸方向の中心位置までのタイヤ軸方向の距離は、第1ミドル陸部12のタイヤ軸方向の幅W7の10%以下が望ましく、より望ましくは5%以下である。このような第1縦サイプ33の配置は、第1ミドル陸部12の偏摩耗を抑制できる。
【0062】
図7には、図2のD-D線断面図が示されている。図7に示されるように、第1縦サイプ33は、例えば、開口端から底に向かって一定の幅で構成されている。
【0063】
図8には、第1ミドル陸部12、クラウン陸部13及び第2ミドル陸部14の拡大図が示されている。図8に示されるように、クラウン陸部13は、第1トレッド端T1側の第1縦エッジ13aと、第2トレッド端T2側の第2縦エッジ13bと、第1縦エッジ13aと第2縦エッジ13bとの間の踏面とを含む。同様に、第2ミドル陸部14は、第1トレッド端T1側の第1縦エッジ14aと、第2トレッド端T2側の第2縦エッジ14bと、第1縦エッジ14aと第2縦エッジ14bとの間の踏面とを含む。
【0064】
外側接地面36のタイヤ軸方向の幅Wcoは、例えば、クラウン陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅W9の51%~60%であり、望ましくは51%~55%である。これにより、クラウン陸部13の偏摩耗が抑制されつつ、操縦安定性が向上する。
【0065】
クラウン陸部13には、サイプのみが設けられている。これにより、クラウン陸部13の剛性が高められる。
【0066】
クラウン陸部13には、タイヤ軸方向に対して前記第1方向とは逆向きの第2方向(本明細書の各図では、右下がりである。)に傾斜した複数のクラウンサイプ40が設けられている。本実施形態のクラウンサイプ40は、第2方向に傾斜して直線状に延びている。このようなクラウンサイプ40は、第1ミドルサイプ30と協働して多方向に摩擦力を提供し、ウェット性能を向上させる。
【0067】
クラウンサイプ40のタイヤ周方向の1ピッチ長さP3は、例えば、第1ミドルサイプ30のタイヤ周方向の1ピッチ長さP2(図3に示す)の80%~120%であり、本実施形態では、これらが同一とされている。このようなサイプの配置は、耐偏摩耗性能を向上させる。
【0068】
クラウンサイプ40のタイヤ軸方向に対する角度は、望ましくは20°以上、より望ましくは25°以上であり、望ましくは45°以下、より望ましくは40°以下である。クラウンサイプ40は、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向にバランス良く摩擦力を提供する。
【0069】
クラウンサイプ40は、第1縦エッジ40aから延びかつクラウン陸部13内に途切れ端41aを有する外側クラウンサイプ41と、第2縦エッジ40bから延びかつクラウン陸部13内に途切れ端42aを有する内側クラウンサイプ42とを含む。
【0070】
外側クラウンサイプ41と内側クラウンサイプ42との角度差は、望ましくは10°以下、より望ましくは5°以下であり、本実施形態ではこれらが平行に配されている。このような外側クラウンサイプ41及び内側クラウンサイプ42は、クラウン陸部13の偏摩耗を抑制する。
【0071】
外側クラウンサイプ41及び内側クラウンサイプ42は、それぞれ、クラウン陸部13のタイヤ軸方向の中心位置を横切ることなく途切れている。外側クラウンサイプ41のタイヤ軸方向の長さL4、及び、内側クラウンサイプ42のタイヤ軸方向の長さL5は、例えば、クラウン陸部13のタイヤ軸方向の幅W9の20%~35%である。このような外側クラウンサイプ41及び内側クラウンサイプ42は、操縦安定性と乗り心地性とをバランス良く向上させる。
【0072】
外側クラウンサイプ41の途切れ端41aと、内側クラウンサイプ42の途切れ端42aとは、タイヤ周方向に位置ずれしている。外側クラウンサイプ41の途切れ端41aと、内側クラウンサイプ42の途切れ端42aとのタイヤ周方向の距離L6は、例えば、外側第1ミドルサイプ31の途切れ端31aと内側第1ミドルサイプ32の途切れ端32aとのタイヤ周方向の距離Lbよりも小さいのが望ましい。具体的には、前記距離L6は、前記距離Lbの望ましくは70%以下、より望ましくは60%以下であり、望ましくは30%以上、より望ましくは40%以上である。このようなサイプの配置は、各サイプのピッチ音をホワイトノイズ化し、ノイズ性能を向上させる。
【0073】
外側クラウンサイプ41及び内側クラウンサイプ42は、それぞれ、その長さ方向に一定の深さを有している。内側クラウンサイプ42の深さは、例えば、周方向溝3の深さの70%~100%とされる。また、外側クラウンサイプ41の最大の深さは、内側クラウンサイプ42の最大の深さよりも小さい。外側クラウンサイプ41の最大の深さは、内側クラウンサイプ42の最大の深さの30%~70%であり、望ましい態様では、1.0~2.5mmとされる。
【0074】
外側クラウンサイプ41及び内側クラウンサイプ42には、それぞれ、図6で説明された第1ミドルサイプ30の断面形状の構成を適用することができる。したがって、ここでの説明は省略される。
【0075】
第2ミドル陸部14には、サイプのみが設けられている。これにより、第2ミドル陸部14の剛性が高められる。
【0076】
第2ミドル陸部14には、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜した複数の第2ミドルサイプ45が設けられている。本実施形態の第2ミドルサイプ45は、第2方向に傾斜して直線状に延びている。
【0077】
第2ミドルサイプ45のタイヤ周方向の1ピッチ長さP4は、例えば、クラウンサイプ40のタイヤ周方向の1ピッチ長さP3の80%~120%であり、本実施形態では、これらが同一とされている。このようなサイプの配置は、耐偏摩耗性能を向上させる。
【0078】
第2ミドルサイプ45のタイヤ軸方向に対する角度は、望ましくは20°以上、より望ましくは25°以上であり、望ましくは45°以下、より望ましくは40°以下である。クラウンサイプ40は、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向にバランス良く摩擦力を提供する。
【0079】
第2ミドルサイプ45は、第1縦エッジ14aから延びかつクラウン陸部13内に途切れ端46aを有する外側第2ミドルサイプ46と、第2縦エッジ14bから延びかつクラウン陸部13内に途切れ端47aを有する内側第2ミドルサイプ47とを含む。
【0080】
外側第2ミドルサイプ46と内側第2ミドルサイプ47との角度差は、望ましくは10°以下、より望ましくは5°以下であり、本実施形態ではこれらが平行に配されている。このような外側第2ミドルサイプ46及び内側第2ミドルサイプ47は、第2ミドル陸部14の偏摩耗を抑制する。
【0081】
外側第2ミドルサイプ46及び内側第2ミドルサイプ47は、それぞれ、第2ミドル陸部14のタイヤ軸方向の中心位置を横切ることなく途切れている。外側第2ミドルサイプ46のタイヤ軸方向の長さL7、及び、内側第2ミドルサイプ47のタイヤ軸方向の長さL8は、例えば、外側クラウンサイプ41の前記長さL4及び内側クラウンサイプ42の前記長さL5よりも大きい。また、外側第2ミドルサイプ46のタイヤ軸方向の長さL7、及び、内側第2ミドルサイプ47のタイヤ軸方向の長さL8は、第1ミドルサイプ30のタイヤ軸方向の長さよりも大きいのが望ましい。具体的には、外側第2ミドルサイプ46の前記長さL7及び内側第2ミドルサイプ47の前記長さL8は、第2ミドル陸部14のタイヤ軸方向の幅W10の25%~35%である。このような外側第2ミドルサイプ46及び内側第2ミドルサイプ47は、ウェット性能及び乗り心地性を向上させるのに役立つ。
【0082】
外側第2ミドルサイプ46の途切れ端46aと、内側第2ミドルサイプ47の途切れ端47aとは、タイヤ周方向に位置ずれしている。外側第2ミドルサイプ46の途切れ端46aと、内側第2ミドルサイプ47の途切れ端47aとのタイヤ周方向の距離L9は、例えば、外側第1ミドルサイプ31の途切れ端31aと内側第1ミドルサイプ32の途切れ端32aとのタイヤ周方向の距離Lbよりも小さく、望ましくは、外側クラウンサイプ41の途切れ端41aと内側クラウンサイプ42の途切れ端42aとのタイヤ周方向の距離L6よりも小さい。具体的には、前記距離L9は、前記距離L6の望ましくは80%以下、より望ましくは70%以下であり、望ましくは40%以上、より望ましくは50%以上である。このようなサイプの配置は、各陸部の剛性バランスを適正化し、操縦安定性と乗り心地性とをバランス良く向上させる。
【0083】
外側第2ミドルサイプ46及び内側第2ミドルサイプ47は、それぞれ、その長さ方向に一定の深さを有している。内側第2ミドルサイプ47の深さは、例えば、周方向溝3の深さの70%~100%とされる。また、外側第2ミドルサイプ46の最大の深さは、内側第2ミドルサイプ47の最大の深さよりも小さい。外側第2ミドルサイプ46の最大の深さは、内側第2ミドルサイプ47の最大の深さの30%~70%であり、望ましい態様では、1.0~2.5mmとされる。このような外側クラウンサイプ41及び内側クラウンサイプ42は、各サイプのピッチ音をホワイトノイズ化してノイズ性能を向上させ、かつ、乗り心地性及び操縦安定性をバランス良く向上させる。
【0084】
外側第2ミドルサイプ46及び内側第2ミドルサイプ47には、それぞれ、図6で説明された第1ミドルサイプ30の断面形状の構成を適用することができる。したがって、ここでの説明は省略される。
【0085】
第2ミドル陸部14には、例えば、タイヤ周方向に延びる第2縦サイプ48が設けられている。本実施形態の第2縦サイプ48は、タイヤ周方向に連続して延びている。また、第2縦サイプ48は、上述の第1縦サイプ33と同様の断面形状を具えている。このような第2縦サイプ48は、タイヤ軸方向の摩擦力を提供する。
【0086】
第2縦サイプ48は、例えば、第2ミドル陸部14をタイヤ軸方向に3等分したときの中央の領域に設けられている。第2縦サイプ48から第2ミドル陸部14のタイヤ軸方向の中心位置までのタイヤ軸方向の距離は、第2ミドル陸部14のタイヤ軸方向の幅W10の10%以下が望ましく、より望ましくは5%以下である。
【0087】
図9には、図1の第2ショルダー陸部15の拡大図が示されている。図9に示されるように、第2ショルダー陸部15には、サイプのみが設けられている。これにより、第2ミドル陸部14の剛性が高められる。
【0088】
第2ショルダー陸部15には、例えば、タイヤ軸方向に延びる複数の第2ショルダーサイプ50が設けられている。本実施形態では、第2ショルダーサイプ50の合計本数は、第1ショルダーサイプ21(図3に示され、以下、同様である。)の合計本数よりも大きい。このようなサイプの配置は、ノイズ性能及びウェット性能を向上させる。
【0089】
操縦安定性を維持しつつ、ノイズ性能及びウェット性能を向上させるために、第2ショルダーサイプ50の合計本数は、第1ショルダーサイプ21(図3に示す)の合計本数の望ましくは1.3倍以上、より望ましくは1.5倍以上、さらに望ましくは1.8倍以上であり、望ましくは2.8倍以下、より望ましくは2.5倍以下、さらに望ましくは2.2倍以下である。
【0090】
第2ショルダーサイプ50のタイヤ周方向の1ピッチ長さP5は、例えば、第2ミドルサイプ45のタイヤ周方向の1ピッチ長さP4(図8に示す)の30%~70%である。
【0091】
第2ショルダーサイプ50は、例えば、第1方向に傾斜している。すなわち、第1ショルダーサイプ21及び第2ショルダーサイプ50は、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。本実施形態の第2ショルダーサイプ50は、第1方向に傾斜して直線状に延びている。
【0092】
第2ショルダーサイプ50のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、20°以下であり、望ましくは15°以下、より望ましくは10°以下である。これにより、本実施形態では、第1ショルダーサイプ21のタイヤ軸方向に対する最大の角度は、第2ショルダーサイプ50のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きい。このようなサイプの配置により、ノイズ性能がより一層向上する。
【0093】
第2ショルダーサイプ50には、図4で説明された第1ショルダーサイプ21の断面形状の構成を適用することができる。したがって、ここでの説明は省略される。
【0094】
第2ショルダーサイプ50は、例えば、第2ショルダー陸部15をタイヤ軸方向に完全に横断する横断第2ショルダーサイプ51と、少なくとも第2トレッド端T2からタイヤ軸方向に延びかつ第2ショルダー陸部15内に途切れ端を有する途切れ第2ショルダーサイプ52とを含む。
【0095】
途切れ第2ショルダーサイプ52は、第1ミドルサイプ30、クラウンサイプ40及び第2ミドルサイプ45のいずれよりも、タイヤ軸方向の長さが大きい。第2ショルダーサイプ50のタイヤ軸方向の長さL10は、第2ショルダー陸部15のタイヤ軸方向の幅W11の望ましくは50%以上、より望ましくは60%以上であり、望ましくは90%以下、より望ましくは80%以下である。このような途切れ第2ショルダーサイプ52は、乗り心地性と操縦安定性とをバランス良く向上させる。
【0096】
図10には、図9のE-E線断面図が示されている。図10に示されるように、横断第2ショルダーサイプ51は、底部が局所的に隆起した浅底部53を含む。本実施形態の浅底部53は、例えば、第2ショルダー周方向溝8との連通部に設けられている。第2ショルダーサイプ50の浅底部53には、第1ショルダーサイプ21の浅底部23(図6に示す)の構成を適用することができ、ここでの説明は省略される。このような浅底部53を含む横断第2ショルダーサイプ51は、第2ショルダー陸部15の剛性を維持し、操縦安定性を向上させる。
【0097】
図1に示されるように、本実施形態では、5つの陸部4のそれぞれにおいて、サイプ16のみが設けられており、かつ、排水用の横溝が設けられていない。これにより、各陸部の剛性が維持され、かつ、横溝のポンピング音が発生しないためノイズ性能の向上が期待される。
【0098】
さらに望ましい態様として、本実施形態では、周方向溝3は、互いに向き合う第1溝壁3a及び第2溝壁3bを含み、第1溝壁3aには、トレッド部2の踏面の現れる周方向溝3の溝縁よりも溝幅方向の外側に凹む複数の第1凹部56が設けられている。また、第2溝壁3bには、トレッド部2の踏面の現れる周方向溝3の溝縁よりも溝幅方向の外側に凹む複数の第2凹部57が設けられている。このような第1凹部56及び第2凹部57は、周方向溝3の排水性を高め、ハイドロプレーニング現象を効果的に抑制することができる。また、第1凹部56及び第2凹部57は、周方向溝3が発生するノイズの音圧を減衰させる効果も期待でき、ノイズ性能を高めるのにも役立つ。
【0099】
第1凹部56は、最も溝幅方向の外側に凹んだ最深部からタイヤ周方向の両側に向かって、前記溝縁からの凹み量が漸減しているのが望ましい。同様に、第2凹部57は、最も溝幅方向の外側に凹んだ最深部からタイヤ周方向の両側に向かって、前記溝縁からの凹み量が漸減しているのが望ましい。このような第1凹部56及び第2凹部57は、陸部に、剛性が局所的に低下した部分が構成されるのを防ぎ、陸部の偏摩耗を抑制できる。
【0100】
上述の効果をさらに高めるために、第1凹部56及び第2凹部57は、タイヤ周方向に交互に設けられているのが望ましい。
【0101】
本実施形態では、陸部には、周方向溝3に連通するサイプが複数設けられており、サイプの1ピッチ長さの1.0~3.0倍の長さの間に、第1凹部56及び第2凹部57が1つずつ設けられている。換言すれば、一対の第1凹部56及び第2凹部57のタイヤ周方向長さが、サイプの1ピッチ長さの1.0~3.0倍とされている。これにより、陸部の剛性が維持されつつ、ノイズ性能が向上する。
【0102】
図11には、図1のF-F線断面図が示されている。図12には、図1のG-G線断面図が示されている。図11及び図12に示されるように、第1溝壁3aと第2溝壁3bとは、実質的に同じ形状を有している。また、第1凹部56と第2凹部57とは、実質的に同じ形状を有している。このため、以下で説明される第1溝壁3aの構成は、第2溝壁3bに適用できる。また、第1凹部56の構成は、第2凹部57に適用できる。
【0103】
第1溝壁3aは、周方向溝3の溝縁からタイヤ半径方向内側に向かって溝幅を小さくする向きに傾斜して延びる外側部18を含む。また、第1溝壁3aは、外側部18からタイヤ半径方向内側に向かって、溝幅を大きくする向きに傾斜して延び、溝底部に連なる内側部19を含む。この内側部19は、第1凹部56の底面を構成している。
【0104】
第1凹部56のタイヤ半径方向の高さh1は、例えば、周方向溝3の全深さd6の30%~70%であり、望ましくは40%~60%である。このような第1凹部56は、陸部の偏摩耗を抑制しつつ、ウェット性能及びノイズ性能を高めることができる。
【0105】
同様の観点から、第1凹部56の深さd7は、例えば、1.0~3.0mmであり、望ましくは1.5~2.5mmである。なお、前記深さd7は、第1凹部56が設けられていない第1溝壁3aから第1凹部56の最深部までの溝幅方向(踏面と平行な方向である)の距離に相当する。なお、上述の第1凹部56の高さh1及び深さd7は、第2凹部57に適用できるのは、言うまでもない。
【0106】
以下、本開示の他の実施形態が説明される。他の実施形態を示す図において、既に説明された要素には、上述のものと同じ符号が付されており、上述の構成を適用することができる。
【0107】
図13には、他の実施形態の第1ミドル陸部12の拡大図が示されている。図13に示されるように、この第1ミドル陸部12に設けられた第1縦サイプ33は、タイヤ周方向にジグザグ状に延びている。第1縦サイプ33は、例えば、滑らかな曲線で波状に延びるものでも良い。この第1縦サイプ33のタイヤ軸方向の振幅量A1(ピークトゥピークの値である。)は、例えば、第1ミドル陸部12のタイヤ軸方向の幅W7の1.0%~8.0%である。また、第1縦サイプ33は、第1ミドルサイプ30の2ピッチに対し1周期となるようにジグザグ状に延びている。このような第1縦サイプ33は、タイヤ周方向にも摩擦力を提供できる。
【0108】
図14には、さらに他の実施形態の第1ミドル陸部12の拡大図が示されている。図14に示されるように、この第1ミドル陸部12に設けられた第1縦サイプ33は、タイヤ周方向に断続的に延びている。すなわち、第1縦サイプ33は、タイヤ周方向に並んだ複数の縦サイプ片54から構成されている。1つの縦サイプ片54のタイヤ周方向の長さL11は、例えば、第1ミドルサイプ30のタイヤ周方向の1ピッチ長さP2の20%~60%である。このような第1縦サイプ33は、第1ミドル陸部12の剛性を維持しつつ、タイヤ軸方向の摩擦力を提供できる。
【0109】
図13及び図14に示される第1縦サイプ33の構成は、第2ミドル陸部14に設けられた第2縦サイプ48にも適用することができる。
【0110】
図15には、さらに他の実施形態のトレッド部2の展開図が示されている。この実施形態においても、上述の接地面の構成を具えており、ここでの説明は省略される。図16には、図15で示される実施形態の第1ミドル陸部12の拡大図が示されている。図16に示されるように、この実施形態の第1ミドル陸部12には、上述の第1縦サイプ33に加え、第1ミドル陸部12をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の第1ミドルサイプ30が設けられている。このような第1ミドルサイプ30は、操縦安定性を維持しつつ、ウェット路面で大きな摩擦力を提供できる。
【0111】
複数の第1ミドルサイプ30のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1は、例えば、第1ミドル陸部12の接地面の幅W7の100%~150%である。これにより、操縦安定性とウェット性能とがバランス良く向上し得る。
【0112】
この実施形態の第1ミドルサイプ30は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第1方向(右上がり)に傾斜して直線状に延びている。第1ミドルサイプ30のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、30~50°である。このような第1ミドルサイプ30は、ウェット走行時、タイヤ軸方向にも摩擦力を提供できる。
【0113】
第1ミドルサイプ30は、例えば、図6で示されるものと同様の断面形状を具えている。すなわち、図16で示される第1ミドルサイプ30は、本体部30aと、陸部の踏面で開口しかつ本体部30aよりも大きい幅を有する拡幅部30bとを含む。より望ましい態様として、この実施形態の第1ミドルサイプ30の拡幅部30bの幅は、第1ショルダー周方向溝5から第1クラウン周方向溝6まで連続して大きくなっているのが望ましい。このような第1ミドルサイプ30は、第1ミドル陸部12の踏面に作用する接地圧を均一にし、偏摩耗を抑制するのに役立つ。
【0114】
図17には、図16のH-H線断面図が示されている。図17に示されるように、第1ミドルサイプ30は、例えば、底部が局部的に隆起した第1ミドルタイバー34を含んでいる。第1ミドルタイバー34は、例えば、第1ミドルサイプ30をタイヤ軸方向に3等分したときの中央の領域に配されている。第1ミドルタイバー34のタイヤ軸方向の長さL12は、第1ミドル陸部12の接地面のタイヤ軸方向の幅W7(図16に示す)の30%~50%である。なお、第1ミドルタイバー34のタイヤ軸方向の長さが、タイヤ半径方向で変化する場合、前記長さは、タイヤ半径方向の中心位置で測定されるものとする。第1ミドル陸部12の接地面から第1ミドルタイバー34の外面までの深さd9は、第1ミドルサイプ30の最大の深さd8の50%~70%である。このような第1ミドルタイバー34は、第1ミドル陸部12の剛性を維持でき、操縦安定性をより一層向上させることができる。
【0115】
図16に示されるように、この実施形態の第1ミドル陸部12には、第1縦サイプ33が設けられている。この実施形態の第1縦サイプ33は、例えば、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。第1縦サイプ33の開口幅は、例えば、0.5~2.0mmであり、深さは1.0~4.0mmである。第1縦サイプ33には、既に説明された第1縦サイプ33の構成を適用できる。したがって、図15及び図16で示される実施形態に、既に説明された第1縦サイプ33の構成が適用されても良い。
【0116】
したがって、この実施形態の第1ミドル陸部12には、タイヤ周方向に断続的に延びる複数の第1縦サイプ33が設けられて適用されても良い(図示省略)。この場合、複数の第1縦サイプ33が、第1ミドルサイプ30に連通せずに配されるのが望ましい。換言すれば、第1ミドルサイプ30が第1縦サイプ33に交差せず、かつ、第1ミドルサイプ30のタイヤ周方向の両端が、2つの第1ミドルサイプ30の間のブロック内で途切れているのが望ましい。また、この場合、1つの第1縦サイプ33のタイヤ周方向の長さは、第1ミドルサイプ30の1ピッチ長さP1の70%以上であるのが望ましい。このような実施形態は、第1ミドルサイプ30と第1縦サイプ33が連通しないため、第1ミドル陸部12の偏摩耗を抑制することができる。
【0117】
図18には、図15の実施形態における第1縦サイプ33の変形例が示されている。図18で示されるように、この第1縦サイプ33は、タイヤ軸方向に振幅して波状に延びている。第1縦サイプ33は、例えば、正弦波状に延びるのが望ましい。この第1縦サイプ33のタイヤ軸方向の振幅量A2(ピークトゥピークの値である。)は、例えば、第1ミドル陸部12の踏面のタイヤ軸方向の幅W7の1.0%~8.0%である。また、第1縦サイプ33の波長L13は、第1ミドルサイプ30の1ピッチ長さP1の150%~250%であり、望ましくは180%~220%である。このような第1縦サイプ33は、第1ミドル陸部12の剛性を維持しつつ、ウェット性能を高めることができる。
【0118】
図15に示されるように、この実施形態の第2ミドル陸部14には、上述の第1ミドルサイプ30と同様の複数の第2ミドルサイプ45が設けられている。すなわち、第2ミドルサイプ45は、タイヤ軸方向に対して第1ミドルサイプ30と同じ向きに傾斜している。このような第2ミドルサイプ45は、第1ミドルサイプ30と協働して操縦安定性及びウェット性能を高めることができる。また、第2ミドル陸部14には、第1縦サイプ33と同様の第2縦サイプ48が設けられている。この第2縦サイプ48には、上述の第1縦サイプ33の構成を適用することができる。
【0119】
また、この実施形態のクラウン陸部13には、タイヤ軸方向に対して第1ミドルサイプと同じ向きに傾斜した複数のクラウンサイプ40が設けられている。また、これらのクラウンサイプ40は、拡幅部の幅がタイヤ赤道C側に向かって小さくなっている。このようなクラウンサイプ40は、クラウン陸部13のタイヤ赤道C付近の接地面積を大きく確保し、優れた操縦安定性を高めることができる。なお、図15の実施形態のクラウンサイプ40には、既に説明された種々の構成を適用することができる。
【0120】
この実施形態の第1ショルダー陸部11に設けられた第1ショルダーサイプ21は、第1ショルダー周方向溝5からタイヤ軸方向に対して傾斜して延びる傾斜部26と、傾斜部26に連なり、かつ、タイヤ軸方向に沿って延びる軸方向部27とを含んでいる。第2ショルダー陸部15にも、同様のサイプが設けられている。このようなサイプは、ウェット路面において、タイヤ軸方向にも摩擦力を提供できる。
【0121】
また、第1ショルダー陸部11には、第1ショルダー周方向溝5から延び、かつ、第1トレッド端T1に達することなく途切れる途切れサイプ28が設けられている。このような途切れサイプ28は、第1ショルダー陸部11の剛性を維持しつつ、ウェット性能を高めることができる。
【0122】
以上、本開示の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本開示は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0123】
図1の基本パターンを有するサイズ235/55R19のタイヤが表1~3の仕様に基づき試作された。また、ノイズ性能を比較するための基準となるタイヤ(基準タイヤ)として、図19に示されるパターンを有するタイヤが試作された。
【0124】
この基準タイヤの各陸部には、図1で示されるサイプから拡幅部を除去したものが配されている。また、基準タイヤは、第1ショルダー陸部aの幅Waと、第2ショルダー陸部eの幅Weとが同一とされている。また、第1ミドル陸部bの幅Wb、クラウン陸部cの幅Wc及び第2ミドル陸部dの幅Wdが同一とされている。また、前記幅Wa、Weは、幅Wc、Wd、Weよりも大きい。これにより、基準タイヤは、50%荷重負荷状態において、第1ショルダー陸部a、第1ミドル陸部b、クラウン陸部c、第2ミドル陸部d及び第2ショルダー陸部eのタイヤ軸方向の接地面の幅をそれぞれW1s、W1m、Wc、W2m及びW2sとしたとき、下記の式(5)を満足する。また、クラウン陸部cの外側接地面の幅Wco及び内側接地面の幅Wciとが同一となっている。
W1s=W2s>W1m=Wc=W2m…(5)
【0125】
また、比較例として、図20に示されるパターンを有するタイヤが試作された。比較例のタイヤは、陸部の幅の分布が基準タイヤと同じであり、かつ、図1と同様に各サイプに拡幅部が設けられている。比較例のタイヤは、上述の事項を除き、図1で示されるものと実質的に同じである。各テストタイヤのドライ路面での操縦安定性及びノイズ性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:19×7.0J
タイヤ内圧:230kPa
テスト車両:排気量2000cc、四輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0126】
<ドライ路面での操縦安定性>
上記テスト車両で一般道を走行したときのドライ路面での操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例の前記操縦安定性を100とする評点であり、数値が大きい程、ドライ路面での操縦安定性が優れていることを示す。
【0127】
<ノイズ性能>
上記テスト車両でドライ路面を40~100km/hで走行し、このときの車内のノイズの最大の音圧が測定された。結果は、基準タイヤの前記音圧との差である音圧減少量が、比較例の前記音圧減少量を100とする指数で示されている。この指数が大きい程、前記ノイズの最大の音圧が小さく、優れたノイズ性能を発揮していることを示す。
テストの結果が表1~3に示される。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
【0131】
テストの結果、実施例のタイヤは、ドライ路面での操縦安定性が向上していることが確認できた。また、実施例のタイヤは、ノイズ性能も向上させていることが確認できた。
【0132】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0133】
[本開示1]
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側となる第1トレッド端と、車両装着時に車両内側となる第2トレッド端と、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の陸部は、タイヤ赤道上に配されたクラウン陸部と、前記クラウン陸部の前記第1トレッド端側に隣接する第1ミドル陸部と、前記クラウン陸部の第2トレッド端側に隣接する第2ミドル陸部とを含み、
正規リムに正規内圧でリム組され、かつ、正規荷重の50%の荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させた50%荷重負荷状態において、前記第1ミドル陸部、前記クラウン陸部、前記第2ミドル陸部のタイヤ軸方向の接地面の幅をそれぞれW1m、Wc、W2mとしたとき、以下の式(1)を満足し、
前記クラウン陸部は、タイヤ赤道よりも第1トレッド端側の外側接地面と、タイヤ赤道よりも第2トレッド端側の内側接地面とを含み、
前記外側接地面及び前記内側接地面のタイヤ軸方向の幅をそれぞれWco、Wciとしたとき、以下の式(2)を満足する、
タイヤ。
W1m>Wc>W2m…(1)
Wco>Wci…(2)
[本開示2]
前記外側接地面のタイヤ軸方向の幅は、前記クラウン陸部の接地面のタイヤ軸方向の幅の51%~55%である、本開示1のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示3]
前記第1ミドル陸部には、タイヤ周方向に延びる第1縦サイプが設けられている、本開示1又は2に記載のタイヤ。
[本開示4]
前記第1縦サイプは、タイヤ周方向に連続して延びている、本開示3に記載のタイヤ。
[本開示5]
前記第1縦サイプは、ジグザグ状に延びている、本開示4に記載のタイヤ。
[本開示6]
前記第1縦サイプは、タイヤ周方向に断続的に延びている、本開示3に記載のタイヤ。
[本開示7]
前記第1ミドル陸部は、前記第1トレッド端側の第1縦エッジと、前記第2トレッド端側の第2縦エッジと、前記第1縦エッジと前記第2縦エッジとの間の踏面とを含み、
前記第1ミドル陸部には、前記第1縦エッジに連通しかつ前記第1ミドル陸部内に途切れ端を有する外側第1ミドルサイプと、前記第2縦エッジに連通しかつ前記第1ミドル陸部内に途切れ端を有する内側第1ミドルサイプとが設けられている、本開示1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示8]
前記外側第1ミドルサイプのタイヤ軸方向の長さは、前記第1ミドル陸部のタイヤ軸方向の幅の20%~45%である、本開示7に記載のタイヤ。
[本開示9]
前記内側第1ミドルサイプのタイヤ軸方向の長さは、前記第1ミドル陸部のタイヤ軸方向の幅の20%~45%である、本開示7又は8に記載のタイヤ。
[本開示10]
前記第1ミドル陸部には、前記第1ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の第1ミドルサイプが設けられている、本開示1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示11]
前記第1ミドルサイプは、タイヤ軸方向に対して傾斜し、
前記第2ミドル陸部には、タイヤ軸方向に対して前記第1ミドルサイプと同じ向きに傾斜した複数の第2ミドルサイプが設けられている、本開示10に記載のタイヤ。
[本開示12]
前記第1ミドルサイプは、タイヤ軸方向に対して傾斜し、
前記クラウン陸部には、タイヤ軸方向に対して前記第1ミドルサイプと同じ向きに傾斜した複数のクラウンサイプが設けられている、本開示10又は11に記載のタイヤ。
[本開示13]
前記周方向溝は、互いに向き合う第1溝壁及び第2溝壁を含み、
前記第1溝壁には、前記トレッド部の踏面の現れる前記周方向溝の溝縁よりも溝幅方向の外側に凹む複数の第1凹部が設けられており、
前記第2溝壁には、前記トレッド部の踏面の現れる前記周方向溝の溝縁よりも溝幅方向の外側に凹む複数の第2凹部が設けられており、
前記第1凹部及び前記第2凹部は、最も溝幅方向の外側に凹んだ最深部からタイヤ周方向の両側に向かって、前記溝縁からの凹み量が漸減しており、
前記周方向溝に隣接する前記陸部には、前記周方向溝に連通するサイプがタイヤ周方向に複数設けられ、
前記サイプの1ピッチ長さの1.0~3.0倍の長さの間に、前記第1凹部及び前記第2凹部が1つずつ設けられている、本開示1ないし12のいずれかに記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0134】
2 トレッド部
3 周方向溝
4 陸部
12 第1ミドル陸部
13 クラウン陸部
14 第2ミドル陸部
36 外側接地面
37 内側接地面
T1 第1トレッド端
T2 第2トレッド端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20