(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104622
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】光学デバイスのための構造物、これを作製するための方法、及びそのための光硬化性シロキサン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/30 20060101AFI20220701BHJP
C08G 59/68 20060101ALI20220701BHJP
C08G 77/14 20060101ALI20220701BHJP
H01L 33/56 20100101ALI20220701BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
C08G59/30
C08G59/68
C08G77/14
H01L33/56
G02B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021213673
(22)【出願日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0184356
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0168678
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ヒョンタク
(72)【発明者】
【氏名】キム・チウン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・スンキョ
(72)【発明者】
【氏名】ホ・クン
【テーマコード(参考)】
4J036
4J246
5F142
【Fターム(参考)】
4J036AK17
4J036GA26
4J036JA07
4J246AA03
4J246BA12X
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA40X
4J246CA68X
4J246FA071
4J246FA131
4J246FA421
4J246FA431
4J246FB081
4J246GA01
4J246GA04
4J246HA29
5F142AA12
5F142AA66
5F142BA32
5F142CB11
5F142CD02
5F142CD16
5F142CG05
5F142CG13
5F142CG23
5F142FA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光学デバイスのための構造物、これを作製するための方法、及びそのための光硬化性シロキサン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】実施形態による光学デバイスのための構造物が、光硬化性シロキサン樹脂組成物301から形成される保護層を含み、保護層が、ミニLEDチップなどの発光要素200を外部熱又は湿気から保護又は封止するためだけでなく、光拡散効果によって発光要素から放射される光の輝度及びコントラスト比などの光学特性を改良するためにも役立つ。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層上に形成される発光要素と、前記発光要素を囲む保護層とを含む、光学デバイスのための構造物であって、
前記保護層が、光硬化性シロキサン樹脂組成物の光硬化した材料を含み、及び
前記光硬化性シロキサン樹脂組成物が、
(A)酸と反応する官能基を有するポリシロキサンと、
(B)光酸発生剤と、
(C)酸と反応する官能基を有する無溶媒型希釈剤とを含み、
前記ポリシロキサンの粘度が25℃で10,000cP~50,000cPであり、及び前記組成物中の溶媒の含有量が4.0重量%未満である、光学デバイスのための構造物。
【請求項2】
前記光硬化性シロキサン樹脂組成物が25℃で20,000cP~40,000cPの粘度を有する、請求項1に記載の光学デバイスのための構造物。
【請求項3】
前記保護層が、光を拡散させるためのレンズ形状を有する、請求項1に記載の光学デバイスのための構造物。
【請求項4】
前記保護層が、以下の関係式(1):
7.0>D/t (1)
(式中、Dが前記保護層の直径(mm)であり、tが前記保護層の厚さ(mm)である)を満たす、請求項3に記載の光学デバイスのための構造物。
【請求項5】
前記保護層が1.5以上の屈折率を有する、請求項1に記載の光学デバイスのための構造物。
【請求項6】
前記ポリシロキサンが、以下の式1:
[式1]
R1
pR2
qSiO(4-p-q)/2
(上記の式1において、p及びqが1≦p+q≦3及び0≦qを満たし、p:qが3:1~1:0であり、R1が、2~6個の炭素原子を有する環状エーテル基を含有し、及びR2が、6~15個の炭素原子を有するアリール基又はアラルキル基を含有する)によって表される平均構造を有する、請求項1に記載の光学デバイスのための構造物。
【請求項7】
前記ポリシロキサンが、(a-1)環状エーテル基を含有するシラン化合物に由来する構造単位と(a-2)アリール基又はアラルキル基を含有するシラン化合物に由来する構造単位とを含む、請求項6に記載の光学デバイスのための構造物。
【請求項8】
環状エーテル基を含有する前記シラン化合物が、以下の式2a:
[式2a]
R1
aSi(OR3)4-a
(式2aにおいて、aが1~3の整数であり、R1が各々、2~6個の炭素原子を有する環状エーテル基を含有し、及びR3が、1~6個の炭素原子を有するアルキル基である)によって表される少なくとも1つのシラン化合物又はその加水分解物である、請求項7に記載の光学デバイスのための構造物。
【請求項9】
アリール基又はアラルキル基を含有する前記シラン化合物が、以下の式2b:
[式2b]
R2
bSi(OR3)4-b
(式2bにおいて、bが1~3の整数であり、R2が各々、6~15個の炭素原子を有するアリール基又はアラルキル基を含有し、及びR3が、1~6個の炭素原子を有するアルキル基である)によって表される少なくとも1つのシラン化合物又はその加水分解物である、請求項7に記載の光学デバイスのための構造物。
【請求項10】
前記光酸発生剤の含有量が、前記ポリシロキサンの含有量の100重量部を基準として0.01~10重量部である、請求項1に記載の光学デバイスのための構造物。
【請求項11】
前記希釈剤の含有量が、前記ポリシロキサンの含有量の100重量部を基準として0.01~10重量部であり、前記光酸発生剤及び前記希釈剤の全含有量の100重量部を基準として30重量部以上である、請求項1に記載の光学デバイスのための構造物。
【請求項12】
前記希釈剤が、エポキシ基又はグリシジル基を有するモノマーである、請求項1に記載の光学デバイスのための構造物。
【請求項13】
前記発光要素が発光ダイオード(LED)チップを含む、請求項1に記載の光学デバイスのための構造物。
【請求項14】
基材層と前記基材層上に形成される発光要素とを作製する工程と、
光硬化性シロキサン樹脂組成物を前記発光要素に適用する工程と、
光を前記光硬化性シロキサン樹脂組成物に照射して、前記発光要素を囲む保護層を形成する工程とを含む、光学デバイスのための構造物を作製するための方法であって、
前記光硬化性シロキサン樹脂組成物が、(A)酸と反応する官能基を有するポリシロキサンと、(B)光酸発生剤と、(C)酸と反応する官能基を有する無溶媒型希釈剤とを含み、前記ポリシロキサンの粘度が25℃で10,000cP~50,000cPであり、及び前記組成物中の溶媒の含有量が4.0重量%未満である、方法。
【請求項15】
(A)酸と反応する官能基を有するポリシロキサンと、(B)光酸発生剤と、(C)酸と反応する官能基を有する無溶媒型希釈剤とを含む光硬化性シロキサン樹脂組成物であって、
前記ポリシロキサンの粘度が25℃で10,000cP~50,000cPであり、及び前記組成物中の溶媒の含有量が4.0重量%未満である、光硬化性シロキサン樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学デバイスのための構造物、これを作製するための方法、及びそのための光硬化性シロキサン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学デバイスは、電気信号を光学信号に変換する発光要素を意味する。典型的に、発光ダイオード(LED)は、光エネルギーの高い変換効率、小形化、重量軽減、及び低い電力消費量などの利点によって利用される。近年、LEDチップのサイズは徐々に小さくなっている。例えば、100μm~200μmのチップサイズのミニLED及び100μm未満のチップサイズのマイクロLEDが開発されている。ミニLED及びマイクロLED内のそれぞれのLEDチップは個々にピクセル又は光源として機能するので、ディスプレイのサイズ及び形状に関する制限は除かれ、従来の光源の画像特質よりも明確な画像特質を達成することができる。
【0003】
上記のものの中でミニLEDは、一般的なLEDとマイクロLEDとの間の中間段階の技術に基づいている。既存のLED生産ラインを使用できるという点で利点があるので、既存の生産プラント及び技術の寿命を拡大しながら採算性を高めることができる。特に、ミニLEDは、最近広範囲に使用されている有機発光ダイオード(OLED)よりも薄く、電力効率及び分解能を高めることができ、OLEDの不利な点であるバーンイン現象を改善することができる。
【0004】
LEDチップは保護のために封入剤で包み込まれ、その封入剤は、LEDチップを外部熱又は湿気から保護するのに役立つ。従来の封入剤は一般的に、熱酸発生剤又は熱塩基発生剤を導入してエポキシを硬化することによって又は白金触媒の存在下で二重結合を架橋することによって得られる。しかしながら、これらの慣例的な方法において、熱流はプロセスの間制御されないので硬化生成物の形状を再現することは難しく、硬化のために長い時間がかかるという点又は使用される白金触媒の量に応じて変色が生じ得るという点において問題がある。
【0005】
加えて、複合LEDにおいて、光を拡散させるためのレンズは封入剤上に形成され、このようなレンズは、光の拡散を促進する特定のレベルの厚さを有するドーム構造物内に形成されなければならない。特に、ミニLEDは、一般的なLEDの部品よりも小さい、光を生じる部品を有するので、レンズの光拡散効果によってLEDチップから生成される光の輝度又はコントラスト比を改良することが必要である。
【0006】
近年、LED封入剤を使用してLEDチップを封入し、レンズを形成する方法が開発されている。このために、LED封入剤とレンズの特性を同時に有することが必要とされる。しかしながら、従来の封入剤は、LEDチップから生成される熱がLEDパッケージングの温度を上昇させ、これが封入剤の接着性を低下させるか、又は光効率が焼け又は減少した透過率のために低減されるという点で問題がある。
【0007】
[先行技術文献]
(特許文献1)韓国特許出願公開第2014-0078655号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者によって行われた研究の結果として、酸と反応する官能基がポリシロキサンに導入され、熱酸発生剤の代わりに光酸発生剤が使用され、制御された粘度を有する無溶媒型光硬化性シロキサン樹脂組成物が使用され、それによって、硬化時間を短くしながらすぐれたパターン再現性及び光拡散特性を有する保護層を得ることができる。
【0009】
したがって、本発明の目的は、ミニLEDチップなどの発光要素を外部熱又は湿気から保護又は封止するためだけでなく、光拡散効果によって発光要素から放射される光の輝度及びコントラスト比などの光学特性を改良するレンズとしても役立つことができる、保護層を設けた光学デバイスのための構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、基材層と、基材層上に形成される発光要素と、発光要素を囲む保護層とを含む、光学デバイスのための構造物を提供し、保護層は、光硬化性シロキサン樹脂組成物の光硬化した材料を含む。
【0011】
光学デバイスのための構造物を作製するための方法は、基材層と基材層上に形成される発光要素とを作製する工程と、光硬化性シロキサン樹脂組成物を発光要素に適用する工程と、光を光硬化性シロキサン樹脂組成物に照射して、発光要素を囲む保護層を形成する工程とを含む。
【0012】
光硬化性シロキサン樹脂組成物は、(A)酸と反応する官能基を有するポリシロキサンと、(B)光酸発生剤と、(C)酸と反応する官能基を有する無溶媒型希釈剤とを含み、ポリシロキサンの粘度は25℃で10,000cP~50,000cPであり、組成物中の溶媒の含有量は4.0重量%未満である。
【0013】
発明の有利な効果
本発明による光学デバイスのための構造物は、光硬化性シロキサン樹脂組成物から形成される保護層を含み、保護層は、ミニLEDチップなどの発光要素を外部熱又は湿気から保護又は封止するためだけでなく、屈折率の改良による光拡散効果によって発光要素から放射される光の輝度及びコントラスト比などの光学特性を改良するためにも役立つことができる。
【0014】
具体的には、保護層の作製のために使用される光硬化性シロキサン樹脂組成物において、酸と反応する官能基がポリシロキサンに導入され、及び硬化するのに長い時間がかかる熱酸発生剤の代わりに光酸発生剤が使用され、それによって硬化時間を短くし、パターン再現性及び物理的特性を満たす。加えて、光硬化性シロキサン樹脂組成物は無溶媒型であり、光によって生成される酸は、プロセス時間を短くする触媒として作用する。それは白金触媒の使用を必要としないので、プロセスの間の白金吸着による変色に関する問題が生じない。加えて、光硬化性シロキサン樹脂組成物は制御された粘度を有し、それによって重力の方向の熱流のために従来の組成物は厚さを増加させることが難しいという問題を解決する。また、すぐれた直径対厚さ比を有する保護層を設けた光学デバイスのための構造物を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態による光学デバイスのための構造物の断面図を示す。
【
図2】実施形態による光学デバイスのための構造物の保護層の直径及び厚さを示す。
【
図3】実施形態による光学デバイスのための構造物を作製するための方法を示す。
【
図4】
図4aは、試験例においてすぐれた直径対厚さ比を有する実施例の保護層の写真である。
図4bは、試験例において不十分な直径対厚さ比を有する比較例の保護層の写真である。
【
図5】
図5aは、試験例においてすぐれた黄色度指数(Y.I.)を有する実施例の保護層の写真である。
図5bは、試験例において不十分な黄色度指数を有する比較例の保護層の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、下記で説明されているものに限定されない。むしろ、本発明の主旨が変更されない限り、それは、様々な形態へ修正することができる。
【0017】
本明細書の全体にわたり、ある部分がある要素を「含む(comprising)」と言われる場合、特に明記しない限り、他の要素が除外されるよりもむしろ、他の要素が含まれ得ると理解される。加えて、本明細書で用いられる成分の量、反応条件等に関する全ての数字及び表現は、特に明記しない限り、用語「約」で修飾されていると理解されるべきである。
【0018】
光学デバイスのための構造物
図1は、実施形態による光学デバイスのための構造物の断面図を示す。
図1を参照して、本発明による光学デバイスのための構造物は、基材層(100)と、基材層(100)上に形成される発光要素(200)と、発光要素(200)を囲む保護層(300)とを含む。
【0019】
基材層は、例えば、回路板であり得る。具体的には、基材層は、アルミニウム又は銅などの導電材料から構成される回路を含むことができる。加えて、基材層は絶縁材料をさらに含むことができる。絶縁材料は、例えば、ポリイミド、エポキシ、及びポリエステルなどのポリマー、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、アルミナ、又はガラスなどのセラミックを含むことができる。
【0020】
1つ以上の発光要素が基材層上に形成される。例えば、ダイボンディングによって発光要素を基材層上に設けることができる。加えて、導線、例えば、ボンディングワイヤーによって発光要素を基材層の回路に電気接続することができる。
【0021】
発光要素は発光ダイオード(LED)チップであり得る。例として、発光要素はミニLEDチップであり得、そのサイズは具体的には1mm以下、500μm以下、300μm以下、又は200μm以下、より具体的には100μm~200μmであり得る。別の例として、発光要素は、マイクロLEDチップであり得、そのサイズは具体的には100μm未満、より具体的には5μm~100μm未満であり得る。
【0022】
保護層を基材層上に形成して発光要素を囲む。それ故、保護層は、発光要素を外部熱又は湿気から保護するための発光要素の封入剤として役立つ。保護層の形状は特に限定されないが、それは、例えば、ドームなどの半球形の形状を有することができる。
【0023】
特に、保護層は、光を拡散させるためのレンズ形状を有することができる。したがって、保護層は、封入剤並びにレンズとして同時に機能することができる。
【0024】
実施例によると、保護層は、レンズとしてのその機能をさらに強化するために特定のレベルの直径対厚さ比を有することができる。
【0025】
図2は、光学デバイスのための構造物の保護層の直径(D)及び厚さ(t)を示す。
図2を参照して、保護層は以下の関係式(1)を満たし得る。
7.0>D/t(1)
ここで、Dは保護層の直径(mm)であり、tは保護層の厚さ(mm)である。
【0026】
関係式(1)のD/tの値は、例えば、7.0未満、6.5以下、6.0以下、6.0未満、5.5以下、又は5.0以下であり得る。加えて、関係式(1)のD/tの値は少なくとも特定のレベル、例えば、1.0以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、4.5以上、5.0以上、5.5以上、又は6.0以上であり得る。
加えて、保護層は少なくとも特定のレベルの屈折率を有することができる。例えば、それは1.2以上、1.3以上、1.4以上、又は1.5以上の屈折率を有することができる。具体的には、保護層は1.5以上の屈折率を有することができる。
【0027】
加えて、保護層の屈折率は3.0以下、2.5以下、2.0以下、1.7以下、又は1.6以下であり得る。
【0028】
保護層は、ミニLEDチップなどの光学デバイスを外部熱又は湿気から保護又は封止するだけでなく、屈折率の改良による光拡散効果によってLEDから放射される光の輝度及びコントラスト比などの光学特性を改良することにも役立つことができる。
【0029】
本発明の光学デバイスのための構造物において、保護層は光硬化性シロキサン樹脂組成物の光硬化した材料を含む。
【0030】
実施形態によると、光硬化性シロキサン樹脂組成物は、酸と反応する官能基が導入されているポリシロキサンを含み、熱酸発生剤の代わりに光酸発生剤を使用し、且つ制御された粘度を有する無溶媒型であり、それによって、硬化時間を短くしながらすぐれたパターン再現性及び光拡散特性を有する保護層を得ることができる。
【0031】
対照的に、従来の保護層は一般的に、熱酸発生剤若しくは熱塩基発生剤を導入してエポキシを硬化することによって又は白金触媒の存在下で二重結合を架橋することによって得られる。しかしながら、これらの慣例的な方法において、熱流はプロセスの間制御されないので硬化した材料の形状を再現することは難しく、硬化のために長い時間がかかること又は使用される白金触媒の量に応じて変色が生じることに問題がある。
【0032】
図3は、実施形態による光学デバイスのための構造物を作製するための方法を示す。
【0033】
図3を参照して、光学デバイスのための構造物において、基材層(100)上に形成される発光要素(200)に光硬化性シロキサン樹脂組成物(301)を適用し、(例えば、紫外線照射によって)光硬化して発光要素を囲む保護層を形成する。
【0034】
実施形態による光学デバイスのための構造物を作製するための方法は、(1)基材層と基材層上に形成される発光要素とを作製する工程と、(2)光硬化性シロキサン樹脂組成物を発光要素に適用する工程と、(3)光を光硬化性シロキサン樹脂組成物に照射して、発光要素を囲む保護層を形成する工程とを含む。
【0035】
光照射は、5秒~30秒間、例えば約10mJ/cm2~5,000mJ/cm2の照射量の紫外線(例えば、UV-A、UV-B、UV-C)を照射することによって行われてもよい。
【0036】
光硬化性シロキサン樹脂組成物
光硬化性シロキサン樹脂組成物は、(A)酸と反応する官能基を有するポリシロキサンと、(B)光酸発生剤と、(C)酸と反応する官能基を有する無溶媒型希釈剤とを含む。光硬化性シロキサン樹脂組成物は、任意選択的に、(D)接着補助剤又は他の添加剤をさらに含むことができる。
【0037】
ポリシロキサンは少なくとも特定のレベルの屈折率を有することができる。例えば、それは、1.2以上、1.3以上、1.4以上、又は1.5以上の屈折率を有することができる。一方では、ポリシロキサンの屈折率は、3.0以下、2.5以下、2.0以下、1.7以下、又は1.6以下であり得る。加えて、光硬化性シロキサン樹脂組成物はまた、その主成分であるポリシロキサンの屈折率と同じか又は同様な屈折率を有することができる。
【0038】
実施形態によると、ポリシロキサンは、25℃で10,000cP~50,000cPの粘度を有する。例えば、ポリシロキサンの粘度は、25℃で10,000cP以上、15,000cP以上、20,000cP以上、25,000cP以上、又は30,000cP以上、及びまた50,000cP以下、45,000cP以下、40,000cP以下、又は35,000cP以下であり得る。粘度は、ブルックフィールド粘度計で測定されるポリシロキサンの値であり得る。粘度が上記の範囲内である場合、全組成物の粘度を好ましい範囲内に調節して、プロセスに点在する作業の間に層が引き上げられるか又は流れることに起因する問題を改善することによって、再現可能な構造物を得るために有利である。
【0039】
光硬化性シロキサン樹脂組成物は無溶媒型として調製される。例えば、本発明の組成物中の溶媒の含有量は、4.0重量%未満、具体的には、3.0重量%未満、2.0重量%未満、又は1.0重量%未満であり得る。溶媒含有量が上記の範囲外である場合、組成物を使用するプロセスの間に溶媒の蒸気によって気泡が生成され得、均一に造形されたパターンを形成するのが難しいことがあり、プロセスに問題を引き起こし得る。一方では、本発明の組成物に微量に含有され得る任意の溶媒は、原材料を合成する間に除去され得ない残留溶媒であり得る。
【0040】
本発明の組成物は溶媒を使用しないが、酸と反応する官能基を有する希釈剤を使用して光酸発生剤などを十分に溶解し、粘度を調節する。
【0041】
加えて、光硬化性シロキサン樹脂組成物の粘度は、その中に含有されるポリシロキサンなどの成分の粘度によって影響され得る。例えば、光硬化性シロキサン樹脂組成物の粘度は、25℃で10,000cP以上、15,000cP以上、20,000cP以上、25,000cP以上、又は30,000cP以上、及びまた50,000cP以下、45,000cP以下、40,000cP以下、又は35,000cP以下であり得る。具体例として、光硬化性シロキサン樹脂組成物は25℃で20,000cP~40,000cPの粘度を有することができる。
【0042】
光硬化性シロキサン樹脂組成物において、酸と反応する官能基がポリシロキサンに導入されており、硬化するのに長い時間がかかる熱酸発生剤の代わりに光酸発生剤が使用され、それによって硬化時間を短くし、パターン再現性及び物理的特性を満たす。加えて、光硬化性シロキサン樹脂組成物は無溶媒型であり、光によって生成される酸は、プロセス時間を短くする触媒として作用する。それは白金触媒の使用を必要としないので、プロセスの間に白金吸着による変色についての問題が生じない。加えて、光硬化性シロキサン樹脂組成物は制御された粘度を有し、それによって重力の方向の熱流のために従来の組成物が厚さを増加させることは難しいという問題を解決する。また、すぐれた直径対厚さ比を達成することが可能である。
【0043】
本明細書では以下、光硬化性シロキサン樹脂組成物の各成分が詳細に説明される。
【0044】
(A)ポリシロキサン
光硬化性シロキサン樹脂組成物は、酸と反応する官能基を有するポリシロキサンを含む。
【0045】
例として、ポリシロキサンは、下記の式1:
[式1]
R1
pR2
qSiO(4-p-q)/2
によって表される平均構造を有することができる。
【0046】
式1において、p及びqは1≦p+q≦3及び0≦qを満たし、p:qは3:1~1:0であり、R1は、2~6個の炭素原子を有する環状エーテル基を含有し、R2は、6~15個の炭素原子を有するアリール基又はアラルキル基を含有する。
【0047】
例えば、式1において、pは0.75以上又は1以上、及び3以下又は2.5以下であり得る。qは0以上又は0.25以上、及び0.75以下又は0.5以下であり得る。具体的には、式1において、pは0.75~3であり得、qは0~0.75であり得る。
【0048】
環状エーテル基は2~6個の炭素原子を有することができ炭素鎖の間に酸素原子を含むことができる。環状エーテル基の炭素原子数は2~6、2~5、又は2~4であり得る。それは1~3個の酸素原子を含むことができる。環状エーテル基を含有するR1の具体例には、エポキシ、グリシジル、グリシドキシ、グリシドキシメチル、グリシドキシエチル、グリシドキシプロピル、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルなどが含まれる。
【0049】
アリール基又はアラルキル基は6~15個の炭素原子を有することができ、芳香族炭化水素を含む。アリール基又はアラルキル基の炭素原子数は6~15、6~12、6~10、又は6~8であり得る。アリール基又はアラルキル基の具体例には、フェニル、ベンジル、フェネチル、トリル、ナフチル、ナフチルメチル、ナフチルエチルなどが含まれ得る。これらは非置換であるか、又は1つ以上のハロゲン、アミノ、アルキルなどで置換されていてもよい。
【0050】
式1において、R1対R2のモル比は75:25~100:0、75:25~90:10、75:25~80:20、80:20~100:0、85:15~100:0、又は80:20~90:10であり得る。
【0051】
具体的には、ポリシロキサンは、(a-1)環状エーテル基を含有するシラン化合物に由来する構造単位と、(a-2)アリール基又はアラルキル基を含有するシラン化合物に由来する構造単位とを含有することができる。
【0052】
(a-1)環状エーテル基を含有するシラン化合物に由来する構造単位
構造単位(a-1)は環状エーテル基を含有し、硬化した時に酸との反応によって網目構造を形成するのに役立ち、それによって耐久性及び光学的特性を高める。
【0053】
構造単位(a-1)は、環状エーテル基を含有するシラン化合物に由来する。環状エーテル基を含有するシラン化合物は、以下の式2a:
[式2a]
R1
aSi(OR3)4-a
によって表される少なくとも1つのシラン化合物又はその加水分解物であり得る。
【0054】
式2aにおいて、aは1~3の整数であり、R1は各々、2~6個の炭素原子を有する環状エーテル基を含有し、R3は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0055】
環状エーテル基は2~6個の炭素原子を有することができ、炭素鎖の間に酸素原子を含むことができる。環状エーテル基の炭素原子数は2~6、2~5、or2~4であり得る。それは1~3個の酸素原子を含むことができる。環状エーテル基を含有するR1の具体例には、エポキシ、グリシジル、グリシドキシ、グリシドキシメチル、グリシドキシエチル、グリシドキシプロピル、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルなどが含まれる。
【0056】
アルキル基は、1~6個の炭素原子、例えば1~5個、1~4個、又は1~3個の炭素原子を有することができる。アルキル基の具体例には、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが含まれ得る。
【0057】
式2aにおいて、化合物は、四官能性シラン化合物(式中、aは、0である)、三官能性シラン化合物(式中、aは、1である)、二官能性シラン化合物(式中、aは、2である)又は単官能性シラン化合物(式中、aは、3である)であり得る。
【0058】
環状エーテル基を含有するシラン化合物の具体例には、3-グリシドキシプロピル-トリメトキシシラン(γ-グリシドキシプロピル-トリメトキシシラン)、3-グリシドキシプロピル-メチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピル-トリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピル-メチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-トリメトキシシランなどが含まれる。
【0059】
構造単位(a-1)の量は、ポリシロキサンを構成する構造単位の合計モル数を基準にして、51~100モル%、好ましくは75~100モル%であり得る。上記の含量範囲内では、それは十分な接着及び硬度を有するために有利である。
【0060】
(a-2)アリール基又はアラルキル基を含有するシラン化合物に由来する構造単位
構造単位(a-2)はアリール基又はアラルキル基を含有し、屈折率を増加させることができ、それによって光拡散特性を高める。
【0061】
構造物単位(a-2)は、アリール基又はアラルキル基を含有するシラン化合物に由来する。アリール基又はアラルキル基を含有するシラン化合物は、以下の式2b:
[式2b]
R2
bSi(OR3)4-b
によって表される少なくとも1つのシラン化合物又はその加水分解物であり得る。
【0062】
式2bにおいて、bは1~3の整数であり、R2は各々、6~15個の炭素原子を有するアリール基又はアラルキル基を含有し、及びR3は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0063】
アリール基又はアラルキル基は6~15個の炭素原子を有することができ、芳香族炭化水素を含む。アリール基又はアラルキル基の炭素原子数は6~15、6~12、6~10、又は6~8であり得る。アリール基又はアラルキル基の具体例には、フェニル、ベンジル、フェネチル、トリル、ナフチル、ナフチルメチル、ナフチルエチルなどが含まれ得る。これらは非置換であるか、又は1つ以上のハロゲン、アミノ、アルキルなどで置換されていてもよい。
【0064】
アルキル基は、1~6個の炭素原子、例えば、1~5、1~4、又は1~3個の炭素原子を有することができる。アルキル基の具体例には、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが含まれ得る。
【0065】
構造単位(a-2)の具体例には、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、p-クロロフェニルトリメトキシシラン、p-ブロモフェニルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、トリエトキシトリルシラン、1-ナフチルトリメトキシシラン、m-アミノフェニルトリメトキシシランなどが含まれる。
【0066】
構造単位(a-2)の量は、ポリシロキサンを構成する構造単位の合計モル数を基準にして、0~49モル%、好ましくは0~25モル%であり得る。上記の範囲内では、それは屈折率の増加、黄色度指数(Y.I.)値の改良、及び紫外線安定性のために有利である。
【0067】
ポリシロキサンの調製及び特性
上に例示されるような環状エーテル基を含有するシラン化合物とアリール基又はアラルキル基を含有するシラン化合物とを組み合わせて、ポリシロキサンの調製において使用することができる。具体的には、式2aのシラン化合物と式2bのシラン化合物とを組み合わせて、ポリシロキサンの調製において使用することができる。
【0068】
ポリシロキサンの調製のためのこれらのシラン化合物の加水分解物又は縮合物を得るための条件は特に限定されない。例えば、式2aのシラン化合物及び式2bのシラン化合物を溶媒、例えばエタノール、2-プロパノール、アセトン、ブチルアセテートなど、及び水で任意選択的に希釈し、酸(例えば、塩酸、酢酸、硝酸など)又は塩基(例えば、アンモニア、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウムなど)を触媒としてそれに加え、その後に、混合物を撹拌して、所望の加水分解物又はその縮合物を得る。
【0069】
溶媒又は酸若しくは塩基触媒のタイプ及び量は、特に限定されない。さらに、加水分解重合反応は、20℃以下の低温で行われ得る。代わりに、反応は、加熱又は還流によって促進され得る。
【0070】
必要とされる反応時間は、シラン化合物のタイプ及び濃度、反応温度などに応じて調節され得る。例えば、通常、反応は、このように得られた縮合物の分子量が概ね500~50,000となるまで進行するために15分~30日かかる。しかし、それは、これらに限定されない。
【0071】
ポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)は、2,000~10,000、好ましくは3,000~5,000の範囲であり得る。上記の分子量の範囲内では、溶媒を使用せずに組成物を調製する場合所望の粘度を達成するために有利である。
【0072】
本明細書において、重量平均分子量は、ポリスチレン標準を基準としてゲル透過クロマトグラフィー(GPC、溶離剤:テトラヒドロフラン)によって測定される重量平均分子量を意味する。典型的に、それは単位を伴わないが、g/モル又はDaの単位を有すると理解され得る。
【0073】
ポリシロキサン中の溶媒を除く固形分は、96重量%~99.9重量%であり得る。上記の範囲内では、それを無溶媒型として調製するための好ましい範囲内に全組成物中の溶媒含有量を制御するために有利である。
【0074】
ポリシロキサンは、25℃で10,000cP~50,000cPの粘度を有することができる。粘度は、ブルックフィールド粘度計で測定されるポリシロキサンの値であり得る。粘度が上記の範囲内である場合、全組成物の粘度を好ましい範囲内に調節することができ、プロセスに点在する作業の間に層が引き上げられるか又は流れることに起因する問題を改善することによって、再現可能な構造物を得るために有利である。
【0075】
ポリシロキサンの含有量は、光硬化性シロキサン樹脂組成物の全重量を基準として70~99重量%、好ましくは80~95重量%であり得る。含有量は、溶媒を除く含有量を基準とすることができる。上記の含有量の範囲内では、すぐれた光学的特性及び高度の硬化を有する構造物を得るためにそれは有利である。
【0076】
(B)光酸発生剤
光硬化性シロキサン樹脂組成物は、光酸発生剤を含む。
【0077】
光酸発生剤は、光で照射することによって酸を発生して、酸と反応する官能基を有するポリシロキサンを架橋する。
【0078】
加えて、光酸発生剤は、可視光、紫外線、深紫外線等によって硬化させることができるモノマーの重合を開始するのに役立つ。
【0079】
光酸発生剤の例には、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホンエステル化合物、及びスルホンイミド化合物が含まれるが、特にそれらに限定されない。
【0080】
オニウム塩化合物の例には、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩などが含まれる。オニウム塩化合物の具体例には、ジフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、及びトリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネートからなる群から選択される少なくとも1つが含まれる。
【0081】
ハロゲン含有化合物の例には、ハロアルキル基含有炭化水素化合物及びハロアルキル基含有複素環式化合物が含まれる。ハロゲン含有化合物の具体例には、1,10-ジブロモ-n-デカン、1,1-ビス(4-クロロフェニル)-2,2,2-トリクロロエタン、フェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-メトキシフェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、スチリル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ナフチル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジンなどが含まれる。
【0082】
ジアゾメタン化合物の具体例には、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどが含まれる。
【0083】
スルホンエステル化合物の具体例には、アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、及びイミノスルホネートが含まれる。好ましいスルホン酸化合物の具体例には、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジルp-トルエンスルホネートなどが含まれる。
【0084】
スルホンイミド化合物の具体例には、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミドなどが含まれる。
【0085】
光酸発生剤の含有量は、ポリシロキサンの含有量の100重量部を基準として0.01~10重量部であり得る。含有量は、溶媒を除く含有量を基準とすることができる。上記の含有量の範囲内では、透明性などの光学的特性及び組成物の高度の硬化を達成するためにそれは有利である。具体的には、光酸発生剤の含有量が0.01重量部未満である場合、硬化度は不十分な場合がある。それが10重量部を超える場合、硬化する間の収縮によるパターンの変色又はクラッキングが起こり得る。好ましくは、光酸発生剤の含有量は、ポリシロキサンの含有量の100重量部を基準として0.1~6重量部であり得る。
【0086】
加えて、光酸発生剤の含有量は、溶媒を除いて光硬化性シロキサン樹脂組成物の全重量を基準として0.01~10重量部であり得る。
【0087】
(C)希釈剤
光硬化性シロキサン樹脂組成物は、酸と反応する官能基を有する無溶媒型希釈剤を含む。
【0088】
希釈剤は、プロセス中に気化されていない間、溶媒を使用せずに光酸発生剤を均一に溶解するのに役立つ。
【0089】
酸と反応する、希釈剤中の官能基は、例えば、エポキシ又はグリシジルなどの2~6個の炭素原子を有する環状エーテル基であり得る。
【0090】
例えば、希釈剤は、エポキシ基又はグリシジル基を有するモノマーであり得る。具体的には、希釈剤は、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、及びアリルグリシジルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つであり得る。より具体的には、希釈剤は、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレート、又はグリシジルメタクリレートであり得る。
【0091】
希釈剤の含有量は、ポリシロキサンの含有量の100重量部を基準として0.01~10重量部であり得る。含有量は、溶媒を除く含有量を基準とすることができる。上記の含有量の範囲内では、それは組成物の直径対厚さ比(すなわち、アスペクト比)及びパターン再現性を高めるために有利である。具体的には、希釈剤の含有量が0.01重量部未満である場合、光酸発生剤は均一に溶解されないことがある。それが10重量部を超える場合、組成物の粘度は低下し得、それによって直径対厚さ比を低減し得る。好ましくは、希釈剤の含有量は、ポリシロキサンの含有量の100重量部を基準として0.1~6重量部であり得る。
【0092】
具体的には、希釈剤の含有量は、ポリシロキサンの含有量の100重量部を基準として0.1~10重量部であり得る。それは、光酸発生剤及び希釈剤の全含有量の100重量部を基準として30重量部以上、40重量部以上、又は50重量部以上であり得る。
【0093】
加えて、希釈剤の含有量は、溶媒を除いて光硬化性シロキサン樹脂組成物の全重量を基準として0.01~10重量部であり得る。
【0094】
(D)接着補助剤
本発明の光硬化性シロキサン樹脂組成物は、必要ならば、基材層への接着性を高める接着補助剤をさらに含むことができる。
【0095】
接着補助剤は、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、エポキシ基、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの反応性基を有することができる。
【0096】
接着補助剤の種類は、特に限定されない。これは、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン及びβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1つであり得る。好ましいのは、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン又はN-フェニルアミノプロピルトリメトキシシランであり、これは、膜保持率を増進させることができ、且つ基板層への接着性においてすぐれている。
【0097】
接着補助剤の含有量は、ポリシロキサンの含有量の100重量部を基準として0.01~10重量部であり得る。含有量は、溶媒を除く含有量を基準とすることができる。上記の含有量の範囲内では、それは組成物の接着性をさらに高めるために有利である。具体的には、接着補助剤の含有量が0.01重量部未満である場合、基材層への接着性は低下し得る。それが10重量部を超える場合、それは硬化度を低下させ得る。好ましくは、接着補助剤の含有量は、ポリシロキサンの含有量の100重量部を基準として0.1~3重量部であり得る。
【0098】
加えて、接着補助剤の含有量は、溶媒を除いて光硬化性シロキサン樹脂組成物の全重量を基準として0.01~10重量部であり得る。
【0099】
加えて、光硬化性シロキサン樹脂組成物は、組成物の物理的特性に悪影響を及ぼさない限り、酸化防止剤及び安定剤などの他の添加剤をさらに含むことができる。
【0100】
本発明の形態
以後において、以下の実施例を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。しかしながら、これらの実施例は、本発明を例示するために提供され、本発明の範囲は、これらの実施例のみに限定されない。
【実施例0101】
調製例1:ポリシロキサンA-1の調製
還流冷却器を備えた反応器に、58.6重量部の(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、16.4重量部のフェニルトリメトキシシラン、20重量部の蒸留水、及び5重量部のテトラヒドロフラン(THF)を装入し、引き続き混合物を0.1重量部のシュウ酸触媒の存在下で5時間還流し及び激しく撹拌した。
【0102】
反応溶液を冷却した後、室温(25℃)及び-760mmHgの最低圧力の真空炉内で水を除去した。次に、それをトレーに移し、40℃の減圧下でさらに蒸発させて、ポリシロキサンA-1を調製した。
【0103】
ポリシロキサンは、重量平均分子量(Mw)についてはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって、粘度についてはブルックフィールド粘度計によって、及び水分含有量については容量法KF水分晶析法(Volumetric KF moisture crystallization method)によって測定され、それは固形分に変換された。それらを下の表1に示す。
【0104】
調製例2~9:ポリシロキサンA-2~A-9の調製
調製例1の手順を表1に示されるモノマーの含有量比に従って繰り返して、ポリシロキサンA-2~A-9を調製した。重量平均分子量、粘度、及び固形分を示す。しかしながら、ポリシロキサンA-9を合成する間に不均一な沈殿が生じた。
【0105】
調製例3:アクリルコポリマーA-10の調製
調製例1の手順を以下の表2に示されるモノマーの含有量比に従って繰り返して、アクリルコポリマーA-10を調製した。重量平均分子量、粘度、及び固形分を示す。
【0106】
【0107】
【0108】
実施例1
ステップ1:光硬化性シロキサン樹脂組成物の調製
5.6重量部の光酸発生剤(B)を5.6重量部の希釈剤(C-1)で希釈し、次にそれを調製例1のポリシロキサン(A-1)100重量部に添加した。8時間にわたって振盪機を用いて得られたものを混合して、それによって実施例1の液相組成物を調製した。
【0109】
ステップ2:光学デバイスのための構造物の調製
上記のステップ1において調製される組成物は、ピペットを使用してミニLEDチップを設けた印刷回路板(PCB)上に約3mmの直径及び500μm以上の厚さを有する小さなドーム形状に適用された。その後、露光機(2,500mWの標準強度を有するHeraeus Noblelight Benchtop Conveyor/UV-A)を使用して3J/cm2の照射量で12秒間露光することによってそれを十分に硬化して、レンズ形保護層を形成した。結果として、PCB上のミニLEDチップがレンズ形保護層によって囲まれる光学デバイスのための構造物が得られた。
【0110】
実施例2~7及び比較例1~10
以下の表3に示される実施例2~7及び比較例1~10の組成物に従って実施例1のステップ1の手順を繰り返して、液相組成物を調製した。このように得られた組成物をそれぞれ使用して、実施例1のステップ2の手順に従って光学デバイスのための構造物を作製した。
【0111】
【0112】
【0113】
試験例1
実施例及び比較例のステップ1で得られた組成物について以下の試験を実施した。
【0114】
(1)組成物の粘度の評価
組成物の粘度は25℃でブルックフィールド粘度計で測定された。
【0115】
(2)無溶媒調製の評価
裸眼で観察される時に組成物が完全に透明であるかどうか検査した。
-○:裸眼で固形物は観察されなかった
-×:裸眼で固形物が観察された
【0116】
(3)屈折率の評価
組成物の屈折率を測定した。結果として、実施例1~7の組成物の屈折率は全て、測定すると1.5以上であった。
【0117】
試験例2
実施例及び比較例のステップ2で得られた光学デバイスのための構造物の保護層について以下の試験を実施した。
【0118】
(1)気泡の評価
保護層内の気泡の有無を光学顕微鏡で検査した。
-○:気泡が観察されなかった
-×:気泡が観察された
【0119】
(2)パターン形状の評価
保護層のパターン形状を光学顕微鏡で検査した。
-○:規則的なドーム形状
-×:不規則なドーム形状
【0120】
(3)再現性の測定
5つの保護層の直径及び厚さをノギスで測定し、直径対厚さ比(アスペクト比)を計算することによって再現性を評価した。
-○:再現性がよい
-×:再現性がよくない
【0121】
(4)硬化度の測定
保護層の上部を垂直方向に指の爪で押し、爪あとの有無及び保護層の破断を検査した。
-○:指の爪で押した時に爪あとが生じなかった
-×:指の爪で押した時に爪あと又は破断が生じた
【0122】
(5)黄色度指数(Y.I.)の測定
保護層の黄色度指数(Y.I.)を分光光度計(日本電色工業製のSD4000)で測定した。
-○:1.0以下のY.I.(
図5aを参照)
-×:1.0超のY.I.(
図5bを参照)
【0123】
(6)直径対厚さ比(アスペクト比)の評価
図2を参照して、保護層の直径(D)及び厚さ(t)をノギスで測定し、直径対厚さ比(D/t)をそれに基づいて計算した。
【0124】
加えて、直径対厚さ比を以下の規準に従って評価した。
-○:直径が3.0±0.1mmであり、厚さが500μm超であった場合(
図4aを参照)
-Δ:直径が3.0±0.1mmであり、厚さが200~500μmであった場合
-×:直径が3.0±0.1mmであり、厚さが200μm未満であった場合(
図4bを参照)
【0125】
試験結果を下の表に示す。
【0126】
【0127】
【0128】
溶媒を用いずに無溶媒希釈剤を使用する、実施例1~7において調製された組成物の上記の試験結果から見ることができるように、それらの透明な特徴を維持し、それらの粘度を特定の範囲内に調節し、及びそれらの屈折率はすぐれていた。加えて、実施例1~7の組成物において、酸と反応する官能基をポリシロキサンに導入し、光酸発生剤を使用し、それによって硬化時間を短くし、パターン再現性及び物理的特性を満たした。白金触媒を使用する必要はないので、プロセスの間の白金吸着による変色についての問題は生じない。したがって、実施例1~7の組成物の光硬化によって得られた保護層は気泡を有さず、規則的且つ再現可能なパターン形状を有し、すぐれた硬化度を有し、低い黄色度指数を有することが確認された。特に、実施例1~7の保護層は直径対厚さ比においてすぐれており、その結果、それらはミニLEDチップを外部熱又は湿気から保護するだけでなく、光拡散効果によってLEDチップから放射される光の輝度及びコントラスト比などの光学特性を改善することにも役立つことができる。
【0129】
対照的に、比較例1~10において調製される組成物は本発明の好ましい構造の範囲外であるので(すなわち、ポリシロキサンの粘度が特定のレベルの範囲外であり、アクリルバインダーが使用され、熱酸発生剤が使用され、希釈剤は、酸と反応する官能基を有さず、或いは溶媒が特定のレベルを超える含有量で使用されるので)、それらは少なくとも1つの試験において不十分であった。