(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104633
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】音声認識機能で作動可能な自立起立・着座支援装置
(51)【国際特許分類】
A61G 7/14 20060101AFI20220701BHJP
A61G 5/14 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
A61G7/14
A61G5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021215181
(22)【出願日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2020218867
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521001788
【氏名又は名称】間森 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】間森 正広
(72)【発明者】
【氏名】石井 久夫
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA08
4C040HH02
4C040JJ02
4C040JJ07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】音声認識機能を備える被介護者の自立起立・着座支援装置の提供。
【解決手段】上方からの吊り下げ式で、被介護者の身体を抱かかえるように支持するためのスリング20と、該スリング20を被介護者の身体を抱かえつつ上方に上昇させ、又は下方に下降させる電動ホイスト10と、該電動ホイスト10を有線又は無線方式で作動させる手動式電動スイッチ30及び/又は音声認識機能を備える電動スイッチを備えてなり、被介護者自身が音声認識機能を有する電動スイッチを介して有線又は無線方式で電動ホイスト10を作動させると、被介護者の身体転倒を防止しつつ、被介護者を着座位置から起立位置への身体位置の変換、起立位置から着座位置への身体位置変換を支援可能である自立起立・着座支援装置を提供する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方からの吊り下げ式で、被介護者の身体を抱かかえるように支持するためのスリング20と、該スリング20を被介護者の身体を抱かえつつ上方に上昇させ、又は下方に下降させる電動ホイスト10と、該電動ホイスト10を有線又は無線方式で作動させる音声認識機能を備える電動スイッチ100を備えてなり、
前記スリング20は、前方から被介護者を抱かかえる介護者の両手の代わりをして被介護者の身体を保持するために、大略U字形をなし、被介護者の身体を背後から被介護者の
脇下を通ってその前方に回すように身体に装着され、被介護者の身体をスリングで抱かかえるように上方から吊り下げ支持し、起立・着座時の身体転倒を防止する一方、前記U字
形スリングは、牽引ロープ11を介して電動ホイスト10に牽引され、被介護者自身が音声認識機能を有する電動スイッチ100を介して有線又は無線方式で電動ホイスト10を作動させると、前記スリング20は前方上方に向け牽引上昇され、被介護者の身体転倒を防止しつつ、被介護者を着座位置から起立位置への身体位置の変換を支援可能であるとともに、前記スリング20は起立位置で身体転倒を防止しつつ、回転して前後身体位置を変換可能であり、さらに前記スリング20は前方から下方に向け牽引下降され、身体転倒を防止しつつ、被介護者を起立位置から着座位置への身体位置変換を支援可能である、ことを特徴とする被介護者自立起立・着座支援装置。
【請求項2】
上方からの吊り下げ式で、被介護者の身体を抱かかえるように支持するためのスリング20と、該スリング20を被介護者の身体を抱かえつつ上方に上昇させ、又は下方に下降させる電動ホイスト10と、該電動ホイスト10を有線又は無線方式で作動させる手動式電動スイッチ30及び/又は音声認識機能を備える電動スイッチ100を備える請求項1
記載の装置であって、
被介護者の歩行通路上方の天井に、第1地点から目的地点に向けて何種類かの歩行方向に延びる敷設された走行レール40を備え、該走行レールに前記電動ホイスト10が装着され、手動式電動スイッチ30又は音声認識機能を有する電動スイッチ100を介して電動ホイスト10を走行レールに沿って走行させることが可能で、前記電動ホイスト10に連結したスリングにより起立した被介護者を吊り下げ支持し、歩行中の転倒を防止しつつ、目的地まで電動スィッチで被介護者の歩行とともに電動ホイストを走行させ、歩行も支援可能であることを特徴とする被介護者自立起立・着座支援装置。
【請求項3】
前記大略U字形のスリング20は、長手方向に延びる、帯状のフレキシブルな支持体か
らなり、中央部で折り返し、大略U字形に屈曲可能で、該U字形部を背後に当て、そこか
ら脇下に回して装着し、身体背部を支持し、身体両脇を通って前方に吊り上げるようにして用いる支持本体21と、該本体21の両端部に前記ホイストの牽引ロープ11を接続させる連結手段21aと、該支持本体21をホイスト10で前方に牽引して吊り上げる時、両脇を通って胸部前方に延びる支持本体21に前方吊り上げ力の内方に向かう、分力により両脇を締め付けることのないように該分力に抗し、胸部前方で水平方向に延びる支持枠22とからなることを特徴とする請求項1又は2記載の被介護者自立支援装置。
【請求項4】
前記支持枠22が被介護者の胸部前方で支持本体21に着脱自在に装着され、前記スリング20の身体装着を容易にする請求項1又は2記載の被介護者自立支援装置。
【請求項5】
さらに、腰部に巻き回される支持ベルト30と、該支持ベルト30の両脇を前記スリング20とともにホイスト10の牽引ロープ11に接続する補助ベルト31とを備え、被介護者の背部と臀部への同時牽引を可能する請求項1記載の被介護者自立支援装置。
【請求項6】
電動スイッチ100が音声認識機能を備え、被介護者の音声命令に反応して電動ホイスト10を作動させ、スリング20を装着した被介護者の身体を起立、着座、前進又は後
退させる請求項1又は2記載の被介護者自立支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被介護者が自力で着座位置から起立へ、起立位置から着座への動作が行えるように支援する自立起立・着座装置であって、音声認識機能により、被介護者の指令で作動可能であるとともに吊り下げ式で、動作中の被介護者の転倒防止しつつ被介護者の自力での起立・着座動作を、そして、ベッドサイドで起立した状態から目的地点まで歩行する際の歩行支援も行える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者等の要介護者の増大に伴い、介護要員の労力を軽減するため、各種介護支援用具により要介護者の介護を支援することが一般的に行われるようになっている。近年、高齢者のますますの増加に伴い、高度な介護支援が可能となる介護支援用具の需要が高まりつつある。
【0003】
このような介護支援用具として、従来は例えば、着座状態から起立状態へ移るときに補助が必要となる高齢者等の要介護者に対して、壁面に取り付けた手すりをアクチュエータで移動させ、これを把持する要介護者がスムーズに起立状態へ移行するのを支援する起立支援装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、上記支援装置は、なフレーム(枠体)に固定配置されているので,要介護者は、そのフレームの設置場所においてのみ恩恵を受けることができるにとどまる。また、着座状態から起立状態、起立状態から歩行状態への移行に それぞれ補助が必要とはいえ、このような支援装置は介
護者の介護支援動作にほど遠いものである。そこで、上記事情に鑑みて、ユーザの筋力が弱くても着座状態から 起立状態、起立状態から歩行状態へのそれぞれスムーズな移行を
支援でき、かつユーザの 運動能力の低下を抑制できる歩行訓練が提案されている(特許
文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-195814号公報
【特許文献2】特開2010-125296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の支援装置においては、ある程度、要介護者の自立動作の支援を目指しているものの、
図1の人間の基本起立着座動作の支援として適切なものと思えない。なぜなら、通常、被介護者は非力であるから、腕力を利用しての自力による起立着座は転倒の危険がある。すなわち、被介護者の起立着座動作は
図2に示すように、簡単でない。一般に
図2に示すように、被介護者はベッドの上で端座位を取り(1)、介護者は患者の腰を持ち上げ、患者の膝が折れないように介護者は自分の膝で固定し(2)、介護者に寄りかかってもらうようにして下着を下ろし、患者に座る合図をして静かに腰掛けさせる(3)。排泄後はこの逆の動作(3)、(2)、(1)を行うことになるが、衣服や下着の着脱は。大変であり、介護者2人が一人は患者の体を支え、もう一人が下着を下ろす動作を行う場合がある。そこで、ロボット式の支援装置も提案されてはいるが、高価であり、操作が簡単でない。
このような起立着座動作をなるべく、患者が自力で行うには、まず、起立又は着座しようとする患者の転倒を防止する必要があり、体重をどこかで支え、自力での動作を支援する必要がある。本発明は要介護者の転倒を防止しつつ、自力でバッドから起立し、起立状態から便座に着座することができるように支援することができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記転倒を防止しつつ、被介護者の自力での起立着座を支援するため、鋭意研究の結果、再び人間の自然な起立着座動作を着座、中間、起立の3つの観点から眺めると、
図1に示すように、着座(1)から立ち上がるには、まず、両足を少し後ろに引き、両足を引くと同時に頭を膝より前方に突きすと、頭が前方に突き出れば出るほど、お尻が浮くことになる(2)。そこで、お尻が椅子から完全に離れたら、徐々に腰を伸ばしていくと、立ち上がり、頭をもとに位置に戻しつつお尻を引くと直立姿勢となる(3)。しかし、健常者でないと、かかる動作を補助なくして行うことは難しい。
そこで、
図2の介護者による被介護者の介護支援の実態を見ると、身体を前方から介護者の両手を背後に回して身体を支持し、転倒の防止を図りつつ、被介護者を起立着座させることを支援している。したがって、要介護者の動作を支援するためには前方から介護者の両手の代わりをして身体を支持する必要がある。本発明は、かかる介護の実態に鑑みてなされたもので、
上方から吊り下げ式で、被介護者の身体を抱かかえるように支持するためのスリング20と、該スリング20を被介護者の身体を抱かかえつつ、上方に上昇させ、又は下方に下降させる電動ホイスト10と、該電動ホイスト10を作動させる手動及び/又は音声認識
機能の電動スイッチ30を備えてなり、
前記スリング20は、大略U字形をなし、前方から被介護者を抱かかえる介護者の両手
の代わりをして被介護者の身体を保持するために、被介護者の身体を背後から被介護者の脇下を通ってその前方に回すように身体に装着され、被介護者の身体をスリングで抱かかえるように上方から吊り下げ支持し、起立・着座時の身体転倒を防止する一方、前記U字
形スリングは、牽引ロープ11を介して電動ホイスト10に牽引され、被介護者自身が音声認識電動スイッチ30を介して電動ホイスト10を作動させると、前記スリング20は前方上方に向け牽引上昇され、被介護者の身体転倒を防止しつつ被介護者を着座位置から起立位置への身体位置変換を支援可能であるとともに、前記スリング20は起立位置で身体転倒を防止しつつ回転して前後身体位置を変換可能であり、さらに前記スリング20は前方から下方向け牽引下降され、身体転倒を防止しつつ被介護者を起立位置から着座位置への身体位置変換を支援可能である、ことを特徴とする被介護者自立起立・着座支援装置にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被介護者を介護者が両手で抱かかえるようにスリングで身体を支持できるので、起立着座時の転倒を防止することができ、これに伴い、被介護者は安全に、電動スイッチを作動してスリングを上昇又は下降させて自力で起立又は着座することができるようになる。
特に、前記身体を支持するU字形のスリング20が、被介護者の胸部近傍で支持本体2
1を水平方向に支える支持枠22を備えると、身体両脇を通って前方に吊り上げるようにして用いる支持本体21を前方に吊り上げる時、両脇を通って胸部前方に延びる支持本体21に前方吊り上げ力の内方に向かう、分力により両脇を締め付けようとするが、支持枠22はこれに不可なく抗し、脇に締め付けることがない。また、この支持枠は被介護者の胸部前方で支持本体21から着脱容易に装着されるように構成すると、前記スリング20の身体装着を容易にすることができる。さらに、前記スリングは腰部に巻き回される支持ベルト30を備えると、
図1に示す起立・着座動作をさらに容易にすることができる。
特に、電動ホイストを、音声認識スイッチを介して作動させると、被介護者は寝た状態で電動ホイストの動作を要求できるので、パジャマ等にスリング20を付けておけば、寝た状態からベッド端部に着座する動作が容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】健全者の起立動作の分解図(1)、(2)及び(3)である。
【
図2】介護者の被介護者の起立着座支援動作の分解図(1)、(2)及び(3)である。
【
図3A】本発明の起立着座支援装置の三種の態様の第1の(A)の概略図である。
【
図3B】本発明の起立着座支援装置の三種の態様の第2の(B)の概略図である。
【
図3C】本発明の起立着座支援装置の三種の態様の第3の(C)の概略図である。
【
図6A】要介護者の起立状態(1)から車いすへの着座動作(2)及び(3)の説明図である。
【
図6B】要介護者の起立状態(1)から起立状態から便座への着座動作(4)及び(5)の説明図である。
【
図8】実施形態に係る可搬式の電動スイッチの概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図3Aは、本発明の起立着座支援装置の具体例の概略図である。該装置は、上方から吊り下げ式で、被介護者の身体を抱かかえるように支持するためのスリング20と、該スリング20を被介護者の身体を抱かえつつ上方に上昇させ、又は下方に下降させる電動ホイスト10と、該電動ホイスト10を有線又は無線方式で作動させる手動式電動スイッチ30及び/又は音声認識機能を備える電動スイッチ100を備える。
図3Aでは、東西南北の四方に立脚する支柱F2で支えられる天井フレームF1に架設
され、前後方向に可動する横架フレームF3を備え、該横架フレームF3に電動ホイスト10が長手方向に走行可能に取り付けられている.該電動ホイスト10には牽引ロープ11を介して身体吊り下げ用スリング20が取り付けられ、手動スイッチ30で昇降できるようになっている。
【0010】
図3Bは天井フレームF1に代えて一対の支柱フレームF2を二等辺三角形に組み立て
、その一対の三角形頂点に横架フレームF3を架設した形式で、横架フレームF3に沿って電動ホイスト10が長手方向に走行可能に取り付けられている。
【0011】
図3Cは天井フレームF1に代えて一対の支柱フレームF2を逆T字形に立設し、その
頂点に横架フレームF3を架設した形式で、横架フレームF3に沿って電動ホイスト10が長手方向に走行可能に取り付けられている。
【0012】
図4は大略U字形をなすスリングの構成図である。。前記スリング20は、前方から被介護者を抱かかえる介護者の両手の代わりをして被介護者の身体を保持するために、大略U字形をなし、被介護者の身体を背後から被介護者の脇下を通ってその前方に回すように
身体に装着され、被介護者の身体をスリングで抱かかえるように上方から吊り下げ支持し、起立・着座時の身体転倒を防止する一方、前記U字形スリングは、牽引ロープ11を介
して電動ホイスト10に牽引され、被介護者自身が手動式電動スイッチ30及び/又は音声認識機能を有する電動スイッチ100を介して有線又は無線方式で電動ホイスト10を作動させると、前記スリング20は前方上方に向け牽引上昇され、被介護者の身体転倒を防止しつつ、被介護者を着座位置から起立位置への身体位置の変換を支援可能であるとともに、前記スリング20は起立位置で身体転倒を防止しつつ、回転して前後身体位置を変換可能であり、さらに前記スリング20は前方から下方に向け牽引下降され、身体転倒を防止しつつ、被介護者を起立位置から着座位置への身体位置変換を支援可能である。
【0013】
図5は前記スリング20の第1変形例である。前記大略U字形のスリング20は、長
手方向に延びる、帯状のフレキシブルな支持体からなり、中央部で折り返し、大略U字形に屈曲可能で、該U字形部を背後に当て、そこから脇下に回して装着し、身体背部を支持
し、身体両脇を通って前方に吊り上げるようにして用いる支持本体21と、該本体21の両端部に前記ホイストの牽引ロープ11を接続させる連結手段21aと、該支持本体21をホイスト10で前方に牽引して吊り上げる時、両脇を通って胸部前方に延びる支持本体21に前方吊り上げ力の内方に向かう、分力により両脇を締め付けることのないように前記分力に抗し、胸部前方で水平方向に延びる支持枠22とからなる。支持枠22はΦほぼ50cmのスリング径を形成する。前記支持枠22は被介護者の胸部前方で支持本体21に着脱自在に装着され、前記スリング20の身体装着を容易にするのがよい。また、腰部に巻き回される支持ベルトを設け、該支持ベルトの両脇を前記スリング20に連結し、ホイスト10の牽引ロープ11に補助ベルトで接続すると、被介護者の背部と臀部への同時牽引を可能するので着座から起立するのが容易となる。
【0014】
図6Aは本発明の支援装置を用いた場合の起立状態(1)から車椅子への着座動作(2
)及び(3)に至る動作支援の状態を示す。
図6Bは起立状態(1)から便座への着座動
作(4)及び(5)に至る動作支援を示す。いずれも要介護者は起立状態では吊り下げスリング20により転倒防止が図られている。その状態から要介護者はスリング20の上部を両手又は片手で把持すると、介護者が両手を背中に回し、支持した状態で着座していく状態と同じようになり、スムーズに着座していけるようになる。
【0015】
図7は歩行時の支援状態を示す。被介護者の歩行通路上方の天井に、第1地点から目的地点に向けて何種類かの歩行方向に延びる敷設された走行レール40を備え、該走行レールに前記電動ホイスト10が装着され、手動式電動スイッチ30又は音声認識機能を有する電動スイッチ100を介して電動ホイスト10を走行レールに沿って走行させることが可能で、前記電動ホイスト10に連結したスリングにより起立した被介護者を吊り下げ支持し、歩行中の転倒を防止しつつ、目的地まで電動スィッチで被介護者の歩行とともに電動ホイストを走行させ、歩行支援可能である。
【0016】
電動スイッチ100が音声認識機能を備えると、被介護者の音声命令に反応して電動ホイスト10を作動させ、スリング20を装着した被介護者の身体を起立、着座、前進又は後退させることができる。
図8は、本発明の実施形態に係る可搬式の無線通信式電動スイッチの概要を示す。電動スイッチ100はハウジ ング102を備え、ハウジング10
2内には、有線駆動部103、制御部110、情報出力部111、マイク112、無線通信部113、センサ114、メモリ117およびバッテリ18が配置される。バッテリ1
8は、ハウジング2の下端側に設けられ、電動スイッチ100における各構成要素に電
力を供給する。
【0017】
情報出力部111は、ユーザに対して情報を出力する出力インタフェースであって、情報を音声出力するスピーカおよび/または情報を画面出力するディスプレイを含んでよい。 マイク112は、周囲の音を集音して生成した音信号を入力する入力インタフェース
である 。情報出力部111およびマイク112の一部の構成は、ハウジング102の外
部に露出して設けられてもよい。無線通信部113は、外部の機器と無線通信するモジュールである。
【0018】
センサ114は、ホイストセンサ115およびタッチセンサ116を有する。ホイストセ ンサ115は、前後動センサおよび上下動指示センサを有し、ホイストセンサ115
の センサ値は、電動ホイストの前進後退および巻き上げ巻き下げの上下動を検出するた
めに利用される。タッチセンサ116は、抵抗膜方式や静電容量方式のセンサであって、
ユーザの接触を検知する。タッチセンサ116は、ハウジング102のグリップ部に設けられて、タッチセンサ116のセンサ値が、ユーザが電動スイッチ101を把持しているか検知するために利用されてよい。またタッチセンサ116は、ハウジング102の上部に設けられて、タッチセンサ116のセンサ値が、ユーザによる指示を検出するために利用されてよい。
【0019】
駆動信号部103は、手動スイッチ109の信号を制御部110で受けて発信器104と、これに連結される接続部105と発信機106を備えて、アンテナ107からの信号108は発信され、無線式に電動ホイスト10に伝達される。また、有線101を通じて電動ホイスト10に接続する。
【0020】
制御部110は、制御基板に搭載されるマイクロコンピュータなどにより実現される。制御部110は、電動スイッチ100を統括的に制御する機能を有し、電動スイッチ100に関する様々な処理を実行する。ハウジング102のグリップ部前側には、ユーザが操作可能な操作スイッチ109-1又は109-2が設けられる。操作スイッチ109-1及び109-2は、引き操作可能なトリガ式スイッチであってよい。制御部110は、操作スイッチ109-1の操作により電動ホイストのオ前進、後進を制御するとともに、操作スイ ッチ109-2の操作に応じて電動ホイストの巻き上げモータを制御して、モー
タに繋がるスリングを巻き上げて上昇させるか巻き戻して加工するかを調整する。
【0021】
実施形態の電動スイッチ100では、マイク112が、制御部110に音信号を入力
するための情報入力インタフェースとして機能し、制御部110が、マイク112に入力された音にもとづいて、電動スイッチ100に関する処理を実行可能とする。電動スイッチ100がマイク112を搭載したことにより、ユーザは、操作ボタン109-1から109-2を操作する代わりに、操作情報を発話することで、電動スイッチ100の動作を制御できる。
【0022】
作業開始前、ユーザは、電動スイッチ100に、ホイストのモータの動作を制御する ためのパラメータ値を設定する。ユーザは、パラメータの設定値を発話することで、制御部110が、マイク112に入力されたユーザ音声にもとづいて、パラメータ値をメモリ117に登録できる。
【0023】
電動ホイストの動作管理のためのモータの動作制御は、電動スイッチ100の種類に
応じて様々な手法で実用化されている。たとえば、スイッチの1回操作によるホイストの前進後退距離を50cm又は100cmとし、ホイストの巻き上げ巻き戻し距離を30cm又は50cmとし、自動停止するシャットオフ制御が行われる。
【0024】
動作制御は、たとえばユーザの体力に応じて設定するのがよい。たとえば、9つの選
択肢(L1~L9)の中の1つを設定する。L1)就寝位置から上半身起立、L2)上半身起立からベッド端部への移動、L3)ベッド端部への腰掛け、L4)起立動作、L5)着座動作、L6)右転回動作、L7)左回転動作、L8)前進歩行動作、L8)後退動作など、動作対象に応じてレベルが設定され、各動作の速度レベルが設定されることが好ましい。
【0025】
設定段数は、電動ホイスト10のモータを自動停止させるためのパラメータであり、
たとえばユーザは、100の選択肢(N00~N99 )の中の1つを設定することがで
きる。各設定段数には、ユーザの使いやすい動作速度と対応付けられて、たとえばN00には10cm/min、N01には12cm/min、N02には14cm/min、N03には16cm/min、と動作速度と対応付けられていてよい。
【0026】
体力レベルおよび動作設定段数のパラメータ値は、メモリ117においてマスターテ
ーブルに記憶されている。ユーザは、作業開始前に、目標動作最適値を得るための「動作レベル」と「動作速度設定段数」を発話することで、各パラメータ値を電動スイッチ100に設定する。また作業途中で作業対象に変更があると、ユーザは、変更された作業対象に応じた目標パラメータ値を得るための「動作レベル」と「動作速度設定段数」を発話することで 、各パラメータ値を電動スイッチ100に設定する。設定したパラメータ値は
、メモリ117に記憶されて、制御部110による電動ホイストのモータの駆動制御に用いられる。
【0027】
図9は、制御部110の機能ブロックを示す。制御部110は、例えば、操作受付部
130、駆動制御部131、実行機能判断部132、音処理部133を備えて、電動スイッチ1 00に関する様々な処理を実行する。音処理部133は、マイク112に入力さ
れた音を処理する機能を有し、入力音を周波数分析する音分析部134と、ユーザにより発話された音声を音声認識する音声認識部135とを有するように構成することができる。
【0028】
操作受付部130は、ユーザによる操作スイッチ109の操作を受け付け、駆動制御
部131に 提供する。駆動制御部31は、操作スイッチ9のオン操作に応じて電動ホイ
スト10のモータに電力を供給して、ホイストの動作を制御する。上記したように実施形態の電動スイッチ100において、ユー ザは作業開始前に、トルク管理のためのパラメ
ータ値を設定しており、駆動制御部131は 、メモリ117に記憶されたパラメータ値
にもとづいて、電動ホイストのモータの回転を制御する。
【0029】
電動スイッチ100の電源がオン状態にあるとき、マイク112には、ユーザが発話
した音声や、 作業中に電動スイッチ100により発生する動作音など、様々な音が入力
される。制御部110は、 マイク112に入力された音にもとづいて、電動スイッチ1
00に関する様々な処理を実行可能とする。実施形態では、音声認識部135が、ユーザの発話を音声認識処理する機能を有し、制御部110における各機能は、マイク112に入力された音を音声認識部135が音声認識処理した結果にもとづいて、電動スイッチ100に関する処理を実行可能とする。つまりユーザは、マ イク112に向かって発話す
ることで、様々な処理を制御部100に実行させることができる。
【0030】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした
変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解される。 マイク112は、通信機能を有する別の端末装置に設けられて、当該端末装置が、マイク112で集音した音信号を、電動スイッチ1に送信してもよい。また当該端末装置が 音処理部133の機能をさらに
有して、マイク12で集音した音信号を処理した結果を、電動スイッチ100に送信してもよい。これにより電動スイッチ100における制御部110は、別の端末装置に設けられたマイク112に入力された音にもとづいて、電動スイッチ100に関する処理を実行できる。端末装置は、マイクおよび無線通信モジュールを有するスマートフォンやタブレッ トなどの携帯型の端末装置であってよい。 制御部110は、入力された音を音声認識処理した結果にもとづいて、当該電動スイッチ(1)に関する処理を実行可能としてもよい。すなわち、制御部110は、操作スイッチ(9)がオン状態にあるとき、音声認識処理を行わず 、操作スイッチ(9)がオフ状態にあるとき、音声認識処理を行ってよい。
制御部110は、当該電動スイッチ100がユーザにより把持されていない状態にあるとき、音声認識処理を行わず、当該電動スイッチ100がユーザにより把持された状態にあるとき、音声認識処理を行ってよい。制御部110は、当該電動スイッチ100がユーザにより把持されて、所定の姿勢をとるとき、または所定の動きをさせられるとき、音声認識処理を行ってよい。 制御部100は、入力された音を音声認識処理した結果にもとづ
いて、駆動部103の動作を制御するためのパラメータ値を設定してよい。制御部110は、作業に関する 情報にもとづいて、パラメータ値を設定してよい。 制御部110は、操作スイッチ109がオン状態にあるとき、パラメータ値の設定を行わず、操作スイッチ109がオフ状態にあるとき、パラメータ値の設定を行ってよい。 制御部110は、当
該電動スイッチ100がユーザにより把持されていない状態にあるとき 、パラメータ値
の設定を行わず、当該電動スイッチ100)がユーザにより把持された状態にあ るとき
、パラメータ値の設定を行ってよい。制御部110は、ユーザにパラメータ値を 設定す
ることを通知した後に、パラメータ値の設定を行ってよい。
【符号の説明】
【0031】
10・・・電動ホイスト、20…スリング、30・・・電動スイッチ、40・・・天井レール、100・・・電動スイッチ、103・・・駆動部、104・・・発信器、107・・・
アンテナ、109・・・操作ス イッチ、110・・・制御部、111・・・情報出力部
、112・・・マイク、117・・・メモ リ、118・・・バッテリ、132・・・実
行機能判断部、133・・・音処理部、134・・・ 音分析部、135・・・音声認識
部