(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104690
(43)【公開日】2022-07-11
(54)【発明の名称】トレーニング器具
(51)【国際特許分類】
A63B 21/062 20060101AFI20220704BHJP
A63B 23/035 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
A63B21/062
A63B23/035 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219802
(22)【出願日】2020-12-29
(71)【出願人】
【識別番号】503059301
【氏名又は名称】株式会社ワールドウィングエンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】小山 裕史
(57)【要約】
【課題】 複数の異なる運動をすることができ、なるべくコンパクトなトレーニング器具を提供する。
【解決手段】 本発明に係るトレーニング器具は、ユーザが着座するための着座部と、負荷付与部と、鉛直方向に伸びる円柱状の案内支柱と、案内支柱に案内されて上下方向に移動自在、かつ、案内支柱に対して回動自在に接続された昇降部と、昇降部に設けられた把持部と、ユーザの足裏を載置するための載置部と、スライドレールと、載置部を備え、スライドレールに対して摺動する摺動部と、一端が昇降部に接続され、他端が摺動部に接続され、負荷付与部による負荷を昇降部及び摺動部に対して付与する引張部材と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが着座するための着座部と、
負荷付与部と、
鉛直方向に伸びる円柱状の案内支柱と、
前記案内支柱に案内されて上下方向に移動自在、かつ、前記案内支柱に対して回動自在に接続された昇降部と、
前記昇降部に設けられた把持部と、
前記ユーザの足裏を載置するための載置部と、
スライドレールと、
前記載置部を備え、前記スライドレールに対して摺動する摺動部と、
一端が前記昇降部に接続され、他端が前記摺動部に接続され、前記負荷付与部による負荷を前記昇降部及び前記摺動部に対して付与する引張部材と、
を備えるトレーニング器具。
【請求項2】
前記引張部材は、滑車を介して、前記負荷付与部と接続されることを特徴とする請求項1に記載のトレーニング器具。
【請求項3】
前記引張部材は、前記昇降部に対して鉛直方向上向きに、前記負荷付与部による負荷を与える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のトレーニング器具。
【請求項4】
前記スライドレールは、前記着座部から遠ざかる方向に対して延伸し、
前記引張部材は、前記スライドレールが延伸する方向であって、前記着座部側に牽引する側に前記摺動部に対して、前記負荷付与部による負荷を与える
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のトレーニング器具。
【請求項5】
前記把持部は、前記昇降部に対して、回動自在に設けられた第1回動軸を介して接続される
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のトレーニング器具。
【請求項6】
前記摺動部は、
前記スライドレールに対して摺動する摺動部本体と、
前記摺動部本体に対して、回動自在に設けられた第2回動軸と、
前記第2回動軸を垂直に接続した接続板と、
前記接続板の両端に対して垂直に接続した2枚の側板と、
前記2枚の側板を接続する第3回動軸と、を備え、
前記載置部は、前記第2回動軸に対して回動自在に接続されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のトレーニング器具。
【請求項7】
前記引張部材は、
一端が前記昇降部に接続された第1引張部材と、
一端が前記摺動部に接続された第2引張部材と、
前記第1引張部材の他端と、前記第2引張部材の他端と、を接続する接続部と、
から成ることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のトレーニング器具。
【請求項8】
前記第1引張部材は、伸縮性を有するワイヤーであり、
前記第2引張部材は、伸縮性を有するチェーンである
ことを特徴とする請求項7に記載のトレーニング器具。
【請求項9】
前記着座部、前記案内支柱、前記スライドレールは、1つの枠組の所定位置に設けられ、
前記負荷付与部は、前記枠組に対して、上下動自在に、且つ、相互に連結離別自在に支持されるウェイトからなる
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のトレーニング器具。
【請求項10】
前記把持部は、前記昇降部に対して、第4回動軸を介して回動自在に接続されており、
前記昇降部は、前記把持部の前記第4回動軸を中心とする回動運動を伝達する回転伝達部と、
前記回転伝達部により伝達された回転運動を、前記引張部材の前記一端と接続している摺動軸の上下動に変換するクランク機構部と、
を備えることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のトレーニング器具。
【請求項11】
前記摺動部は、前記摺動部の前記第2回動軸を中心とする回動運動を伝達する回転伝達部と、
前記回転伝達部により伝達された回転運動を、前記引張部材の前記他端と接続している接続部の摺動運動に変換するクランク機構部と、
を備えることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のトレーニング器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーニング器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種のトレーニング器具が存在する。例えば、特許文献1には、両腕の運動をすることができるトレーニング器具が開示されている。特許文献1に記載のトレーニング器具によれば、筋肉の硬化を伴うことなく、筋肉痛や疲労など身体への負担少なく、柔軟で弾力性の富んだ肩部や背部の筋肉等を得ることができるトレーニング器具が開示されています。
【0003】
ところで、上記特許文献1に記載のトレーニング器具によれば主として、肩部や背部の筋肉等を鍛えることができるが、トレーニングは、バランスよく行うことが望ましい。そのため、上述した部位以外の部位についても、筋肉の硬化を伴うことなく、筋肉痛や疲労など身体への負担少なく、柔軟で弾力性の富んだ筋肉等を得るためのトレーニング器具の提供が望まれている。また、近年、人々がそれぞれの自宅に篭る状況が増えている。そこで、自宅にもトレーニング器具を備えることがあるが、そのようなトレーニング器具としては、コンパクトなサイズのトレーニング器具が求められるが、トレーニング器具は往々にしてサイズが大きいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記要望に鑑みてなされたものであり、肩部や背部以外の部位についても鍛えることができ、筋肉痛や疲労など身体への負担が少ないトレーニング器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るトレーニング器具は、ユーザが着座するための着座部と、負荷付与部と、鉛直方向に伸びる円柱状の案内支柱と、案内支柱に案内されて上下方向に移動自在、かつ、案内支柱に対して回動自在に接続された昇降部と、昇降部に設けられた把持部と、ユーザの足裏を載置するための載置部と、スライドレールと、載置部を備え、スライドレールに対して摺動する摺動部と、一端が昇降部に接続され、他端が摺動部に接続され、負荷付与部による負荷を昇降部及び摺動部に対して付与する引張部材と、を備える。
【0007】
上記トレーニング器具において、引張部材は、滑車を介して、負荷付与部と接続されることとしてもよい。
【0008】
上記トレーニング器具において、引張部材は、昇降部に対して鉛直方向上向きに、負荷付与部による負荷を与えることとしてもよい。
【0009】
上記トレーニング器具において、スライドレールは、着座部から遠ざかる方向に対して延伸し、引張部材は、スライドレールが延伸する方向であって、着座部側に牽引する側に摺動部に対して、負荷付与部による負荷を与えることとしてもよい。
【0010】
上記トレーニング器具において、把持部は、昇降部に対して、回動自在に設けられた第1回動軸を介して接続されることとしてもよい。
【0011】
上記トレーニング器具において、摺動部は、スライドレールに対して摺動する摺動部本体と、摺動部本体に対して、回動自在に設けられた第2回動軸と、第2回動軸を垂直に接続した接続板と、接続板の両端に対して垂直に接続した2枚の側板と、2枚の側板を接続する第3回動軸と、を備え、載置部は、第2回動軸に対して回動自在に接続されることとしてもよい。
【0012】
上記トレーニング器具において、引張部材は、一端が昇降部に接続された第1引張部材と、一端が摺動部に接続された第2引張部材と、第1引張部材の他端と、第2引張部材の他端と、を接続する接続部と、から成ることとしてもよい。
【0013】
上記トレーニング器具において、第1引張部材は、伸縮性を有するワイヤーであり、第2引張部材は、伸縮性を有するチェーンであることとしてもよい。
【0014】
上記トレーニング器具において、着座部、案内支柱、スライドレールは、1つの枠組の所定位置に設けられ、負荷付与部は、枠組に対して、上下動自在に、且つ、相互に連結離別自在に支持されるウェイトからなることとしてもよい。
【0015】
上記トレーニング器具において、把持部は、昇降部に対して、第4回動軸を介して回動自在に接続されており、昇降部は、把持部の第4回動軸を中心とする回動運動を伝達する回転伝達部と、回転伝達部により伝達された回転運動を、引張部材の一端と接続している摺動軸の上下動に変換するクランク機構部と、を備えることとしてもよい。
【0016】
上記トレーニング器具において、摺動部は、摺動部の第2回動軸を中心とする回動運動を伝達する回転伝達部と、回転伝達部により伝達された回転運動を、引張部材の他端と接続している接続部の摺動運動に変換するクランク機構部と、を備えることとしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様に係るトレーニング器具は、把持部を把持して昇降部を上下させることで、右腕または左腕に関する運動を行うことができる。また、上記トレーニング器具によれば摺動部を右足または左足により摺動させることで、右足または左足に関する運動を行うことができる。したがって、一つの器具で様々な運動を行うことができ、肩部や背部以外の部位も鍛えることができる。
【0018】
また、昇降部及び摺動部はともに一つずつしか備えないので、それぞれ、両手あるいは両足のために二つずつ備えるよりも、トレーニング器具をコンパクトなサイズとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】トレーニング器具の第1使用形態における第1の態様を示す側面図である。
【
図5】トレーニング器具の第1使用形態における第2の態様を示す側面図である。
【
図6】トレーニング器具の第1使用形態における第1の態様を示す正面図である。
【
図7】トレーニング器具の第1使用形態における第2の態様を示す正面図である。
【
図8】トレーニング器具の第2使用形態における第1の態様を示す側面図である。
【
図9】トレーニング器具の第2使用形態における第2の態様を示す側面図である。
【
図10】トレーニング器具の第2使用形態における第3の態様を示す側面図である。
【
図11】トレーニング器具の第3使用形態における第1の態様を示す側面図である。
【
図12】トレーニング器具の第3使用形態における第2の態様を示す側面図である。
【
図13】トレーニング器具の第3使用形態における第3の態様を示す側面図である。
【
図14】トレーニング器具の第3使用形態における第4の態様を示す側面図である。
【
図15】(a)~(c)は、トレーニング器具の座席部の拡大図である。
【
図16】トレーニング器具の他の使用形態を示す側面図である。
【
図17】昇降部内の負荷伝達部の構成を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施態様に係るトレーニング器具について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
<実施の形態>
<構成>
図1は、トレーニング器具1の外観を示す斜視図である。
図1に示すように、トレーニング器具1は、ユーザが着座するための着座部10と、負荷を付与する負荷付与部30と、鉛直方向に伸びる円柱状の案内支柱40と、案内支柱40に案内されて上下方向に移動自在、かつ、回動自在に接続された昇降部50と、昇降部50に設けられた把持部60と、ユーザの足裏を載置するための載置部71と、スライドレール22a、22bと、載置部71を備える摺動部70と、一端が昇降部50に接続され、他端が摺動部70に接続され、負荷付与部30による負荷を昇降部50及び摺動部70に対して付与する引張部材80と、を備える。
【0022】
以下、トレーニング器具1について図面を用いて詳細に説明する。まず、
図1~
図4を用いて、トレーニング器具1の構造を説明する。
図1は、前述の通り、トレーニング器具1の斜視図であり、
図2は、トレーニング器具1の昇降部50周りの拡大図であり、
図3は、摺動部70周りの拡大図である。
図4については、トレーニング器具1の使用形態を示す図ではあるが、本図面を用いて、トレーニング器具1の内部構造であって、引張部材80の構成について説明する。
【0023】
図1に示されるように、トレーニング器具1において、着座部10は、トレーニング器具1の基礎フレームとなる枠組20により支持される。枠組20は、トレーニング器具1全体の骨格となり、トレーニング器具1を床面に安定させて設置させる機能を担う。枠組20は、例えば、鉄鋼やアルミニウム、ステンレス、樹脂等の一定以上の剛性を有する素材からなる角柱パイプ材や板材などを加工して、ボルトや溶接等により固定して形成することができる。着座部10は、ユーザが着座する座席11と、座席11を支持する座席支柱12と、から成る。座席支柱12は、枠組20に対して固定される。そして、座席支柱12は、座席11を保持する。座席支柱12は、図示していないが、引張部材80を前後方向に通過させるための貫通孔を備える。座席11は、トレーニング器具1の使用者(ユーザ)が着座する箇所であり、
図1に示すように、トレーニング器具1の左右方向に長い長方形となっている。これは、座席11の右側と左側のいずれにも着座できるようにするためであるが、ユーザが無理なく着座できるのであれば長方形でなくともよく、正方形であってもよいし、円形であってもよい。なお、本実施形態において
図4を正面図とし、
図6を左側面図としてトレーニング器具1における前後左右を定義するものとする。
【0024】
図1に示すように、着座部10は、座席11の後方であって、負荷付与部30との間に、ユーザが使用時に体を支持させるための背もたれ15を備えてもよい。
【0025】
枠組20には、鉛直方向に伸びる案内支柱40が設けられる。
図1に示されるように、案内支柱40は、負荷付与部30よりも前方、かつ、着座部10よりも後方の位置に設けられる。
図1に示されるように、枠組20は、案内支柱40の後方に、内部で、引張部材80の伸長方向を誘導するための上部筐体25を備える。そして、案内支柱40は、その下端が枠組20に接続され、上端が上部筐体25に接続されて固定される。
【0026】
図1、
図2に示されるように、案内支柱40には衝撃吸収材41が設けられてもよい。衝撃吸収材41は、昇降部50が、上部筐体25及び枠組20に対して、接触する際の衝撃を緩和するための部材である。衝撃吸収材41は、一例としてゴムやスポンジ等により実現されてもよい。
【0027】
案内支柱40には、
図1、
図2に示される昇降部50が取り付けられる。
図1、
図2に示されるように、昇降部50は、案内支柱40に対して上下移動自在に取り付けられている。図示していないが、昇降部50は、案内支柱40を挿通するための貫通孔を有する。したがって、昇降部50は、案内支柱40に沿って上下移動する。また、昇降部50は、案内支柱40を中心軸として、案内支柱40に対して回動自在に、案内支柱40に取り付けられている。したがって、案内支柱40には一定の剛性が求められる。よって、案内支柱40は、一例として、ステンレス等により作成されてよい。
【0028】
図2に示されるように、昇降部50は、昇降部50の下面に対して回動自在に接続された回動軸64と、回動軸64に接続されたコの字型(U字型)の枠体63と、枠体63に対して回動自在に接続された把持部60と、を備える。把持部60は、ユーザが運動時に把持する箇所である。また、把持部60は、枠体63に固定されるだけであってもよい。即ち、把持部60は、枠体63に対して回動自在でなくともよい。
【0029】
また、
図2に示されるように、昇降部50の上面には、引張部材80(第1引張部材80a)と接続するための接続部80bが設けられ、接続部80bには、引張部材80が接続される。詳細は後述するが、引張部材80には、負荷付与部30が接続され、負荷付与部30の負荷により、昇降部50には上方に向けた張力が作用する。
【0030】
図1に示されるように、トレーニング器具1の摺動部70は、スライドレール22a、22bに沿って摺動する。そのスライドレール22aは、トレーニング器具1の枠組20と枠組20の前方に配される枠組21に懸架され、両端部で固定される。
図3は、トレーニング器具1のうちの摺動部70周りの拡大図である。
【0031】
図3に示されるように、摺動部70は、載置部71と、軸受72と、第3回動軸73と、側板74aと、側板74bと、接続板75と、第2回動軸76と、本体上部77と、本体下部78と、接続部79と、を備える。
【0032】
図3に示されるように、摺動部70は、スライドレール22a、22bの延伸方向に、スライドレール22a、22b上を摺動(スライド)自在に摺動する本体下部78と、本体下部78と接続し、本体下部78上に設けられる本体上部77とを備える。本体上部77と本体下部78とは互いに接続されて、摺動部本体を形成する。本体下部78は、スライドレール22a、22bを挟み込んで、スライドレール22a、22bに沿って摺動する。
【0033】
本体上部77には、本体上部77に対して回動自在に接続された第2回動軸76が設けられる。第2回動軸76は、接続板75と接続する。接続板75は、平板状の部材であり、その中央に垂直に第2回動軸76と接続される。
【0034】
接続板75の両端には、接続板75に対して垂直に接続された平板状の側板74a、74bが設けられる。側板74a、74bには、第3回動軸73が回動自在に垂直に接続される。
【0035】
第3回動軸73は、載置部71と、軸受72とにより挟持されて接続される。軸受72は、第3回動軸73に対して回動自在に嵌合する軸受部を有する。これにより、載置部71は、第3回動軸73回りに回動することができる。また、載置部71は、第2回動軸76回りに回動することができる。
【0036】
即ち、載置部71は、二つの互いに直交する異なる軸回りに回動することができる。したがって、
図3に示す構造を備えることにより、ユーザは、ストレスフリーで載置部71に足裏を載置して、自身の足を所望の角度で摺動部70を足で押すことができる。よって、ユーザは自身の望む形(角度や力)で、トレーニング器具1により、足を含む自身に対して負荷を与えることができる。
【0037】
摺動部本体後方には、
図3に示すように、引張部材80を接続するための接続部79が設けられる。引張部材80には、負荷付与部30が接続されるので、負荷付与部30の負荷に基づく張力が摺動部70に作用する。
【0038】
図4は、トレーニング器具の第1使用形態における第1の態様を示す側面図であるが、引張部材80の構成について説明するための図面でもある。また、
図4は、引張部材80がどのように負荷付与部30と、昇降部50と、摺動部70と接続しているかを示す図面でもある。
【0039】
図4に示すように、引張部材80は、第1引張部材80aと、第2引張部材80cと、が接続部材80dにより接続されてなる。そして、トレーニング器具1は、引張部材80の移動方向を規定するための、滑車85a~85hを図示の位置に備える。第1引張部材80aの一端は、接続部80bを介して昇降部50と接続し、他端は、滑車85a、滑車85bに誘導されて接続部材80dと接続する。また、第2引張部材80c(
図3参照)の一端は、接続部79を介して摺動部70(
図3参照)と接続し、他端は、滑車85h、滑車85g、滑車85f、滑車85e、滑車85d、動滑車85cに誘導されて接続部材80dと接続する。
【0040】
本実施形態においては、第1引張部材80aは、具体的には、ワイヤーにより構成され、第2引張部材80cは、チェーンにより構成される。接続部材80dは、一方で、チェーン(第2引張部材80c)と接続するように構成され、他方で、ワイヤー(第1引張部材80a)の端部を巻回して接合することで、第1引張部材80aと第2引張部材80cとを接続する。なお、接続手法は一例であり、他の手法を用いてもよい。第1引張部材80aをワイヤーとすることで、一定の強度を保って負荷付与部30の負荷を引くことができるとともに、第1引張部材80aの伸長方向に対して横方向にも伸ばすことができるので、昇降部50の案内支柱40に沿った上下運動、ならびに、案内支柱40を中心とした回動運動を実現することができる。また、第2引張部材80cをチェーンとすることでワイヤーよりも高い剛性を有する素材により、負荷付与部30の負荷を引くことができるので、トレーニング器具1としての耐久性を向上させることができる。
【0041】
引張部材80(第2引張部材80c)は、動滑車85cを介して、負荷付与部30と接続している。引張部材80には、負荷付与部30による負荷が動滑車85cを介して付与されるので、昇降部50の状態如何に関わらず(ユーザによって引き下ろされていようがいまいが)、また、摺動部70の状態如何に関わらず(ユーザによって押されていようがいまいが)、弛むことはない。
【0042】
負荷付与部30は、
図1に示すように、枠組20に対してその上下が固定された一対の円柱状のウェイト案内支柱32(
図1では紙面の関係上片方のみを示している)と、ウェイト案内支柱32に対して上下動自在に構成されたウェイトとからなる。ウェイトにはウェイト案内支柱32を挿通するための貫通孔が設けられている。負荷付与部30は、付与する負荷の大きさを調整可能に構成されてよく、具体的には、重量部材となるウェイトを板状の部材とし、その枚数によって、負荷を調整することとしてよい。したがって、負荷付与部30は、ウェイトを相互に連結離別自在とするクランプ(不図示)を備えることとしてもよい。ウェイトの板状の部材それぞれを固定の重量とすることで、段階的に負荷の大きさを変更することができる。また、ウェイト案内支柱32には、衝撃吸収材31が設けられてよく、ウェイトが枠組20と一定以上の衝撃を以て衝突することを抑制する。
【0043】
したがって、昇降部50が下降することで、あるいは、摺動部70がトレーニング器具1の前方に向けて摺動することで、引張部材80が引っ張られて、動滑車85cが鉛直上向きに上昇し、負荷付与部30のウェイトを引っ張り上げることができる。このとき、負荷付与部30の負荷が、昇降部50上向き、あるいは、摺動部70後方に向けて、付与される。その結果、把持部60を介して昇降部50を下ろそうとするユーザの腕、あるいは、摺動部70を押そうとするユーザの足に、負荷を付与することができる。
【0044】
ここで、昇降部50の構成とその機能について、
図17の概略斜視図を用い説明する。昇降部50は、案内支柱40にその一端側が上下動自在、且つ水平方向に回転自在に嵌合されている。昇降部50は、箱状覆体52により上方から覆われる枠体53の一端側に鉛直方向に開口する円筒状の案内部54を備えている。案内部54が案内支柱40に嵌合することにより、案内支柱40に対して昇降部50が上下動自在となるとともに、案内支柱40を中心に昇降部50が水平方向に回転自在となっている。
【0045】
把持部60は、ユーザがその手で把持するものであり、昇降部50の他端側に固定された軸51と連結して該昇降部50の下方に回転自在に設けられている。把持部60は、ユーザが手の指を掛ける手握部61と、その手の裏を当てる手裏当て部62と、手握部61と手裏当て部62とを支持する枠体63と、を具備する。手握部61は、親指を除く手の指を掛ける円柱形状である。手裏当て部62は、手握部61より下方の適切な位置において、手握部61に指を掛けた使用者の手の裏(手の甲)や手首の裏を当てて保護し、クッション性のある材質によりその周面が覆われた円柱形状である。枠体63は、手握部61と手裏当て部62とをそれぞれ両端にて支持固定し、枠体63の上面に軸51が固定されている。該軸51は、昇降部50の枠体53の上壁及び下壁に設けた軸受を介して昇降部50に軸支されている。これにより、把持部60を昇降部50に対して水平方向に軸回転できる。
【0046】
さらに、昇降部50内に設けられる負荷伝達部90は、昇降部50内において引張部材80の接続部80bと連結して負荷付与部30により把持部60の軸51を中心とする回転に負荷を与えるように設けられている。負荷伝達部90は、
図17から理解されるように、把持部60の軸51を中心とする回転運動を伝達する回転伝達部91(図中の符号91a,91b,91c,91d,91e)と、この回転伝達部91により伝達された回転運動を引張部材80の接続部80b側と連結している摺動軸57の上下動に変換するクランク機構部92(図中の符号92a,92b)とを具備している。把持部60を昇降部50に対して軸回転することにより、回転伝達部91及びクランク機構部92を介して摺動軸57が上下動することに伴い、クランプにより連結された負荷付与部30のウェイトが上下動する。
【0047】
さらに詳しく述べると、回転伝達部91は、昇降部50内にて把持部60の軸51に設けられたスプロケット91aと、枠体53に上下端を軸支された軸に設けられたスプロケット91bと、スプロケット91a及びスプロケット91bに掛架されたチェーン91cと、スプロケット91bを設けた軸に設けられた傘歯車91dと、該傘歯車91dと噛合する傘歯車(冠歯車)91eと、を備える。傘歯車91eは、枠体53に水平に軸支されたクランク軸92aの把持部60側の自由端に設けられている。これにより、把持部60の軸51の水平方向の回転によってクランク軸92aが回転する。
【0048】
クランク機構部92は、クランク軸92aと、該クランク軸92aの中央部から突出する突起に一端側が回転自在に連結され、接続部80b側が摺動軸57の下端部に回転自在に連結された連結片92bとを備えている。これにより、クランク軸92aの回転によって摺動軸57が上下動する。このようにして、把持部60は負荷付与部30の負荷に比例する力によって回転付勢されている。そして、把持部60を昇降部50に対して回転付勢力に抗して軸回転することにより、摺動軸57が昇降部50に対して下方向に摺動(即ち、摺動軸57及び摺動軸57に接続している引張部材80を昇降部50内に引き込む)し、クランプにより連結された負荷付与部30のウェイトが引き上げられる。
【0049】
なお、摺動部70の内部構造も
図17と略同様の構成を有する。図示しての説明は省略するが、
図17における把持部60が設けられる位置に、載置部71が設けられ、案内支柱40に相当する構成がスライドレール22a、22bとなる。一方、昇降部50と異なり、摺動部70においては、摺動軸57に相当する接続部79が設けられる位置が
図17と反対側(
図17において摺動軸57が設けられている面の対面側)になる。しかし、摺動部70においても昇降部50と同様にクランク機構により、ユーザが足を載置した載置部71を回転させることで、クランク機構が回転し、接続部79及び接続部79が接続されている引張部材80が摺動部70内に引き込まれることで、引張部材80とその先に接続されている負荷付与部30のウェイトが引き上げられる。即ち、載置部71の回転運動が、接続部79の摺動部70に対する摺動運動に変換されて、引張部材80及び引張部材80が接続される負荷付与部30のウェイトを引き上げることができる。
【0050】
<第1使用形態>
図4~
図7は、トレーニング器具1の第1使用形態による運動の例を示す図である。
図4は、トレーニング器具の第1使用形態における第1の態様を示す左側面図である。
図5は、トレーニング器具の第1使用形態における第2の態様を示す左側面図である。
図6は、トレーニング器具の第1使用形態における第1の態様を示す正面図である。
図7は、トレーニング器具の第1使用形態における第2の態様を示す正面図である。つまり、
図6は、
図4に対応し、
図7は、
図5に対応する。
【0051】
第1使用形態は、ユーザが腕の運動をする例を示す。なお、腕の運動ではあるものの、腕に連動して、ユーザの各所(例えば、肩周りの筋肉や腰回りの筋肉等)を、あわせて鍛えることができる。
【0052】
図4、
図6は、第1使用形態における運動をする際の初期状態を示している。即ち、
図4、
図6は、
図1に示す状態のトレーニング器具1にユーザが着座した状態を示している。
図4、
図6に示すように、ユーザは、トレーニング器具1の右側、即ち、座席11の右側に着座する。即ち、ユーザは、摺動部70を正面に、背もたれ15を背にして、座席11に着座する。そして、
図4、
図6に示すように、ユーザは、左手で把持部60を把持する。
【0053】
この状態から、ユーザは、把持部60を介して昇降部50を下方に引きつつ、腕全体を自身の後方に向けて回転させる。
【0054】
その結果、
図5、
図7に示すように、ユーザは、肘がおよそ90度(90度に限定するものではない)になるまで昇降部50を引きつつ、体(左腕)を回転させる。これは、昇降部50が案内支柱40に対して回動自在に構成されていることで実現できる。また、図示していないが、滑車85aには、引張部材80を滑車85aの溝と嵌合させておくための部材を備えることにより、
図7に示す方向に引っ張られても、引張部材80が滑車85aから外れることはない。
【0055】
そして、
図5、
図7に示す状態から、ユーザは、逆に昇降部50を元の位置に戻す。このとき、昇降部50を一定の速度で戻すようにすることが望ましい。つまり、第1の使用形態においては、
図4、
図6及び
図5、
図7の間の姿勢を所定回数繰り返すようにする。
【0056】
この一連の過程の中で、昇降部50と上部筐体25との間の引張部材80には、負荷付与部30の負荷が鉛直上向きに付与される。したがって、ユーザが昇降部50を下ろそうとする力と、負荷付与部30の負荷により昇降部50を上向きに引っ張ろうとする力とが対向するので、負荷付与部30のウェイトの重みに応じて、ユーザは腕や肩、腰の筋肉等を鍛えることができる。
【0057】
具体的に説明すると、ユーザは、把持部60を把持した状態から、負荷付与部30の負荷に比例する力によって把持部60が正面方向(
図1に示す状態)を向くように回転付勢される力に抗して、把持部60を把持している腕(
図4~
図7の場合は左腕。以下左腕と記載するが逆側の腕でも同様である)の上腕を外側に捻り、把持部60を、手の甲が自身の背面方向を向くようにする。この状態において、屈筋と伸筋とが共に弛緩して肩や腕がリラックスした状態にすることができる。また、負荷付与部30の負荷により把持部60(昇降部50)が上方向に付勢されており、肩甲帯付近を含む周辺の筋肉が適度に「伸長」される(
図4、
図6に示す状態)。
【0058】
次に、ユーザは、適度に「伸長」された肩甲帯付近等の筋肉が反射を引き起こすように、負荷付与部30の負荷に抗して左腕を屈曲させて筋肉を「短縮」させて把持部60を引き下げる。即ち、
図4(
図6)から、
図5(
図7)に示す状態に移行させる過程において、筋肉を徐々に「短縮」させることができる。このとき、上腕を外側に捻る動作によって把持部60を昇降部50に対して外側水平方向に軸回転させることにより、負荷付与部30のウェイトを引き上げることになり、左腕を引き下げる初動作における負荷が減少し、「弛緩」状態を生じる。即ち、左腕を用いて昇降部50を引き下ろす際に、把持部60を回転させることで、昇降部50におけるクランク機構90の回転に伴う摺動軸57の昇降部50内部への引き込み動作を発生させ、この機構がない場合に比して左腕に係る負荷を軽減させることができ、左腕に「弛緩」状態を生じさせることができる。即ち、
図5(
図7)に示す状態において、「弛緩」を発生させることができる。
【0059】
また、ユーザは、左腕を屈曲して把持部60を引き下げるとき、昇降部50が正面方向を向くように回転付勢される力に抗して、昇降部50が外側(ユーザの背面方向)を向くように左腕を外側に漸次広げる。昇降部50が正面方向を向くように回転付勢される力は滑車85aと引張部材80(80a)との接触点と昇降部50との距離に略逆比例するので、左腕を屈曲させて把持部60を引き下げることに伴い、左腕を外側(ユーザの背面方向)に広げることに対する抗力が減少する。そのため、左腕を屈曲させて把持部60を引き下げるとき、ユーザは左腕を外側に広げるように略一定の筋力を出力することにより、把持部60を引き下げながら、左腕を漸次外側に広げる動作を滑らかに行うことができ、筋の共縮を防ぐことが可能となる。
【0060】
次に、ユーザは、把持部60を肩の高さ付近まで引き下げた後、負荷付与部30による付勢力に従いながら、左腕を内側に捻って左腕を内側に閉じながら左腕を伸ばしていくことにより、把持部60を最初に把持した状態(
図4、
図6に示す状態)にゆっくりと戻す。即ち、
図5(
図7)から
図4(
図6)に示す状態に戻す過程で、筋肉は徐々に「伸長」されていき、
図4(
図6)に示す状態で最も「伸長」した状態となる。これにより、
図4~
図7に示す運動の1サイクルが終了する。ユーザは、自身に適した階数だけ、このサイクルを繰り返す。このように、トレーニング器具1を用いた運動では、左腕を屈曲して把持部60を引き下げて筋肉を「短縮」させ、さらに、上腕を外側に捻ることによって、筋肉を「弛緩」させ、把持部60を元に戻す過程で、「伸長」の動作を加えることにより、各筋肉群が「弛緩-伸長-短縮」のタイミングを得て、連動性よく動作を行うことができ、ユーザは、柔軟で弾力性の富んだ筋肉を得ることができる。なお、運動の開始は、
図4の状態を開始位置としてもよいし、
図5の状態を開始位置としてもよいが、弛緩が発生している状態から、運動を開始することが望ましい。いずれの位置から運動を開始してもよいが、「弛緩-伸長-短縮」のサイクルを含む運動が繰り返し行われる態様になっていればよい。
【0061】
トレーニング器具1は、初動負荷トレーニング(登録商標)により肩部や背部の筋肉等に対するトレーニングを適切に行うことが可能なものである。ここで、初動負荷トレーニングとは、「反射の起こるポジションへの身体変化及びそれに伴う重心位置変化等を利用し、主働筋の弛緩-伸張-短縮の一連動作過程を促進させるとともに、その拮抗筋並びに拮抗的に作用する筋の共縮を防ぎながら行うトレーニング」と定義されるものであり、最後まで負荷を与えて筋肉の緊張状態(硬化)を伴いながら筋肉を肥大化する終動負荷トレーニングとは全く異なるトレーニングである。初動負荷トレーニングは、負荷を与えるポイント、負荷を解き放つポイントと角度、リズム、筋出力の連続性など全体としての動作イメージを把握してトレーニングを行うことが必要であり、現段階での身体のバランスや部分的硬化等によって適切な動作やフォームを取ることが困難であるという問題があるが、このトレーニング器具1により理想的な一連動作やフォームを伴ったトレーニングが容易に誘導される。
【0062】
このトレーニング器具1を用いた初動負荷トレーニングによって、「中心部(身体根幹部)から末端部への分節間の力伝達」、すなわち、自らは伸びようとせず縮む特性を持つ人体の筋を弛緩させリラックスした状態とし、感覚受容器である筋紡錘・腱器官に適切な負荷を与え、適度に筋を伸張したところから、あるいは受動的に伸張されたところから筋が短縮する時の力発揮を誘発し、瞬時、連続性をもって負荷が漸減することにより、共縮を起こさないのは心筋だけと言われてきた人体の他の筋が心筋のように共縮を起こすことのない活動状態を得ることができ、神経筋制御を促進・発達させることが可能となる。
【0063】
このトレーニング器具1を用いた初動負荷トレーニングは、当該トレーニング器具1の負荷を利用して筋肉に反射を起こし、本来働かなければならない筋肉がうまく働き、筋肉と神経の機能を高めるトレーニングであり、弛緩した筋肉にタイミングの良い伸縮、短縮を促すための触媒として負荷を用いている。そして、このようなトレーニングによって、弛緩-伸張-短縮の一連動作の促進が図られ、さらに共縮が防止されることにより、神経と筋肉の機能や協調性を高め、筋肉痛や疲労など身体への負担が少なく、筋肉の硬化を伴うことなく、柔軟で弾力性の富んだ筋肉が得られることからことができる。また、強制的な心拍数や血圧の上昇が少なく有酸素的に代謝を促進させることにより、糖尿病、高血圧など生活習慣病の予防や靭帯損傷、骨折等の治癒促進に有効であるとともに、神経・筋肉・関節のストレスの解除、老廃物の除去等、身体に有益な状態を作り出すことができる。
【0064】
なお、図示していないが、
図4~
図7における座席11の反対側であってトレーニング器具1の左側に着座する、即ちユーザが自身の右側に摺動部70を左側に背もたれ15が位置するように座席11に着座することで、ユーザは右腕による運動をすることもできる。
【0065】
したがって、左右対称に、ユーザは、両腕を鍛えつつ、肩回りや腰回りの回転運動を行うことができ、自身の可動域を広げることができる。
【0066】
また、両腕ではなく片腕ずつ鍛える構造とすることで、一度に両方を鍛えるための昇降部50を用意する必要がないので、両腕に対応する形でトレーニング器具1を構成するよりもサイズをコンパクトにすることができる(昇降部50を両腕のために二つ備えるよりも幅を狭くすることができる)ので、トレーニング器具1の設置スペースとして用意するべきスペースの面積を小さくすることができる。
【0067】
<第2使用形態>
上記第1使用形態では腕の運動をする例を示したが、本第2使用形態では、ユーザがトレーニング器具1を用いて、足の運動をする例を説明する。なお、足の運動ではあるものの、足に連動するユーザの各所を鍛えることができる。
【0068】
図8~
図10は、第2使用形態による運動の例であって、足の運動をする例を示す左側面図である。
【0069】
図8に示すように、ユーザは、トレーニング器具1の右側、即ち、座席11の右側に着座する。即ち、ユーザは、摺動部70を左側、背もたれ15を右側にして、座席11に着座する。そして、
図8に示すように、ユーザは、左脚を摺動部70の載置部71に載置し、ひざを屈曲させた状態をとる。
【0070】
この状態から、ユーザは、左足を伸ばしていき、摺動部70を押す。すると、
図9に示すように、摺動部70は、スライドレール22a、22bに沿って摺動していく。このとき、摺動部70には、トレーニング器具1後方(
図8~
図10の紙面左方向)に向けて、接続部79に接続された引張部材80に接続された負荷付与部30の負荷が付与される。
【0071】
そして、
図9に示すように足を伸ばした状態から、ゆっくりと摺動部70をスライドレール22a、22bに沿って、元の位置に戻すように摺動させる。この運動を一定回数繰り返し実行する。つまり、ユーザは、
図8と
図9との間の姿勢を所定回数繰り返す。
【0072】
なお、ユーザは、
図10に示すように、
図9に示す状態よりも更に腰に捻りを加える方で、摺動部70をより遠くまで押してもよく、その場合により足を伸ばしつつ腰回りを鍛えることができる。このような姿勢が可能なのも、載置部71が、摺動部本体に対して回動自在に構成されているからである。ユーザは、
図8と
図9の間で足の伸縮運動を行ってもよいし、
図8と
図10の間で足の伸縮運動を行ってもよい。
【0073】
また、図示していないが、第2使用形態においても、
図8~
図10における座席11の反対側であってトレーニング器具1の左側に着座する、即ちユーザが自身の右側に摺動部70を左側に背もたれ15が位置するように座席11に着座することで、ユーザは右足による運動をすることもできる。
【0074】
したがって、左右対称に、ユーザは、両足を鍛えつつ、腰回りの回転運動を行うことができる。具体的には、ユーザは開脚して摺動部70を蹴るようにして押し出す動作を行う。このため、ユーザの股関節周り、骨盤の周囲、大腿部、膝等の筋肉の強化に好例である。
【0075】
この第2使用形態においても、上述の腕の場合と同様に、足についても、各筋肉群が「弛緩-伸長-短縮」のタイミングを得て、連動性よく動作を行うことができる。具体的には、
図8に示す状態では、左足には負荷付与部30の負荷がかからず、筋肉が「伸長」している状態であると言える。また、
図8に示す状態は、載置部71に、ただ、足を載置しているだけの状態でもあり、全体的にリラックスした状態であるので、「弛緩」している状態であるとも言える。
【0076】
ここから、ユーザが、足に力を加えて、負荷付与部30による負荷が加えられている摺動部70を押していく。即ち、
図8から
図9又は
図10に示す過程において、ユーザの左脚に負荷付与部30の負荷がかかり、ユーザの左脚の筋肉に、「短縮」状態を生じさせることができる。そして、
図9又は
図10に示す状態において、載置部71を摺動部70に対して回転させることで、内部のクランク機構により接続部79が摺動部70内に引き込まれることによって、足にかかる負荷付与部30による負荷が軽減される。即ち、
図9又は
図10に示すように、摺動部70を回転させる状態では、ユーザの足に、「弛緩」状態を生じさせることができる。
【0077】
そして、
図9や
図10に示す状態から
図8に示す過程において、足を
図8の状態に戻していくことで、筋肉の「伸長」状態を生じさせることができる。
【0078】
したがって、
図8に示す状態から、
図9や
図10に示す状態になるまで、摺動部70を動かし、そこから、
図8に示す状態に戻す運動のサイクルを繰り返すことで、「弛緩-伸長-短縮」のタイミングを生じさせて、連動性よく動作を行うことができる。なお、足の運動についても、
図8に示す状態を初期状態としてもよいし、
図9や
図10に示す状態を初期状態として1サイクルの運動を行うこととしてもよいが、腕の運動と同様に、「弛緩」した状態から運動を開始することが望ましいことから、他者の協力等を得て、
図9や
図10に示す状態から運動を開始することが望ましい。
【0079】
また、両足ではなく片足ずつ鍛える構造とすることで、一度に両方を鍛えるための摺動部70を用意する必要がないので、両足に対応する形でトレーニング器具1を構成するよりもサイズをコンパクトにすることができる(摺動部70を両腕のために二つ備えるよりも幅を狭くすることができる)ので、トレーニング器具1の設置スペースとして用意するべきスペースの面積を小さくすることができる。なお、
図8~
図9の運動において、ユーザは、トレーニング器具1に、対して、摺動部70を正面にし、背もたれ15を背にして着座部10に着座して、運動を行ってもよい。即ち、
図11、
図12に示す使用形態で、足の運動のみを行うこととしてもよい。体の向きを変えることによって、ユーザ自身の異なる箇所を鍛えることができる。
【0080】
<第3使用形態>
上記第1使用形態では腕の運動をする例を、上記第2使用形態では足の運動をする例について説明したが、これらは、同時に実行することもできる。以下、図面を参考に説明する。
【0081】
図11、
図12は、第3使用形態における第1の例を示している。
図11は、ユーザが左腕を伸ばして左手で把持部60を把持し、左脚を屈曲させて左足を載置部71に載置した状態を示している。この状態から、ユーザは、第1使用形態に示したように、左腕を曲げつつ腰を回転させながら、昇降部50を下していく。また、同時に、ユーザは、第2使用形態に示したように、左脚を伸ばしながら、摺動部70を押して、スライドレール22a、22bに沿って摺動させる。その結果、ユーザは、
図12に示すように、左腕を曲げつつ、左脚を伸ばした姿勢をとる。そして、ユーザは、ゆっくりと、
図11に示す姿勢に戻していく。ユーザは、
図11と
図12に示す姿勢を一定回数繰り返す。これにより、ユーザは、腕の運動をしつつ、足の運動をも行うことができる。
【0082】
図13、
図14は、第3使用形態における第2の例を示している。第1の例では、腕と足のうちいずれかを伸ばしているときには、他方を屈曲させる運動をする例を示したのに対し、第3使用形態における第2の例では、腕と足の伸縮を連動させる、即ち、腕を曲げているときには足も曲げ、腕を伸ばすときには、足も伸ばす運動をする。
【0083】
なお、第3使用形態において、第1使用形態や第2使用形態と同様に、ユーザは、トレーニング器具1の左側に座して、反対側の腕や足を鍛えることができる。
【0084】
<補足>
上記実施の形態に係るトレーニング器具1は、上記実施の形態に限定されるものではなく、他の手法により実現されてもよいことは言うまでもない。以下、各種変形例について説明する。
【0085】
(1)上記実施形態において、引張部材80を、第1引張部材80aと、第2引張部材80cと、の二つの部材を接合して形成する例を示したが、引張部材80は、全体として一つの部材により形成することとしてもよい。例えば、引張部材80は、ワイヤーのみで構成してもよいし、チェーンのみで構成してもよい。引張部材80全体を一つの部材で構成することで、引張部材80の耐久性を向上させることができるとともに、作成時に第1引張部材80aと第2引張部材80cとを接合する処理を省略することができる。
【0086】
(2)
図4に示す滑車の個数や配置は、負荷付与部30の負荷が、摺動部70及び昇降部50に上述した方向に適切に付加されるのであれば、滑車の数は、
図4に示す以外の個数や配置位置であってもよい。
【0087】
(3)上記実施形態では図示していないが、着座部10は、座席11の座席支柱12に対する高さを調整することができる高さ調整部を備えてもよい。一例として、高さ調整部は、以下のように実現されてよい。即ち、座席11に対して垂直な内部柱を設けるとともに、座席支柱12を中空とする。そして、座席支柱12に内部柱を挿入する。座席支柱12及び内部柱それぞれには、その側面に互いに対向し得る複数の側面孔を設ける。そして、座席支柱12に設けられた複数の側面孔のうちの一つの側面孔と、内部柱に設けられた複数の側面孔のうちの一つの側面孔とが、互いに対向する状態で、対向させた双方の側面孔に高さ調整用の杭を挿入することで、高さを調整する。これにより座席11の高さを調整することができるので、どのような体格、慎重のユーザでも使用可能なトレーニング器具1を提供することができる。
【0088】
また、上記実施形態において着座部10の座席11は、高さ方向だけでなく、水平方向に位置が調整できるように構成されてもよい。
図15を用いて説明する。
【0089】
図15(a)及び
図15(b)に示すように、座席11は、トレーニング器具1の右側寄り、あるいは、左側寄りに、移動可能に構成されてもよい。即ち、着座部10は、
図15(a)の状態と、
図15(b)の状態との間で、座席11が、座席支柱12に対して、左右方向にスライド可能なようにスライド機構(不図示)を備えてもよい。スライド機構としては、一例として、座席11の裏面にスライドレールを設け、座席支柱12の天面にスライドレールと摺動自在に嵌合する嵌合部材を設けることで実現されてよいがこれに限定するものではない。また、嵌合部材には、スライドをロックするためのスライドロックが設けられてもよい。座席11の位置を左右方向にスライドさせることができることで、様々な体型のユーザも利用できるとともに、座席11の位置とユーザの座り方によって、ユーザに対して付与する負荷のかかり具合を変えることができるので、同じ運動であっても鍛える箇所を変えることができる。
【0090】
また、座席11は、座席支柱12を中心に回動可能に構成されてもよい。即ち、座席11は、
図15(a)に示す状態から、
図15(c)に示す状態に移行し、さらに、
図15(b)に示す状態に移行可能なように、構成されてもよい。具体的には、座席支柱12を中空にし、座席11に座席支柱12に挿入可能な円柱を設け、その円柱を座席支柱12に挿入することで回転させることとしてもよい。なお、回転機構はこれに限定するものではない。また、回転の向きは、
図15(b)から
図15(c)、
図15(c)から
図15(a)に変化する方向での回転であってもよい。このように構成すると、トレーニング器具1を使用しないときには、
図15(c)の状態とすることで、トレーニング器具1全体をスリム化することができ、スペースの有効利用を実現することができる。
【0091】
(4)上記実施形態において、スライドレール22a、22bは、摺動部70が摺動可能に構成されていれば、伸縮自在に構成されていてもよい。また、あるいは、スライドレール22a、22bは、複数の部品が繋ぎ合わされて構成されたレールであってもよく、その場合に、それら部品の数を調整することで、スライドレール22a、22bの長さを調整することができるように構成されていてもよい。これにより、様々な足の長さのユーザに対応することができるとともに、トレーニング器具1を収納する際に、そのサイズをコンパクトにすることができる。
【0092】
(5)上記実施形態において、特に記載していないが、載置部71には、ユーザが足を載置した際に、ユーザの足が載置部71からはずれにくくするための固定部材を備えてもよい。例えば、固定部材は、バンド等であってよく、ユーザが載置部71に足を載置した際にバンドによって括ることで、ユーザの足を載置部71に固定するように構成してもよい。
【0093】
(6)上記実施形態において、負荷付与部30は、板状の重量物を複数積層したウェイトを用いて負荷をかけることとしているが、負荷は、単に重量物により付与されるものでなくてもよい。一例として、電磁力や油圧、空気圧などを利用した機構を用いてもよい。
【0094】
(7)上記実施形態においては、ユーザが着座部10の座席11に着座して利用する使用形態を示したが、着座部10への着座は必須ではない。
図16(a)、(b)に示すように、トレーニング器具1の側方に立って利用することも可能である。
図16(a)は、ユーザが、トレーニング器具1の右側に立ち、左手で把持部60を把持する。そして、
図16(b)に示すように、そこから、把持部60を引いて昇降部50を下す。そして、
図16(a)と
図16(b)との間の姿勢を繰り返す。
図16(a)、
図16(b)では、ユーザは立った状態を維持しているが、ユーザは、更に、足を開いて、体全体を沈めるようにしてもよい。そうすることで、腕の運動だけでなく、アキレス腱を伸ばしつつ、開脚の運動を行うことができる。また、
図16(a)、
図16(b)では、ユーザは、右足を前に、左脚を後ろにしているが、これは、逆であってもよい。即ち、左脚を前にし、右足を後ろにして腕の運動を行うこととしてもよい。また、この運動は、トレーニング器具1の左側に立つことで、右腕の運動も行うことができる。
【0095】
(8)上記実施形態並びに各補足は適宜組み合わせることとしてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 トレーニング器具
22a、22b スライドレール
30 負荷付与部
40 案内支柱
50 昇降部
60 把持部
70 摺動部
80 引張部材