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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104691
(43)【公開日】2022-07-11
(54)【発明の名称】読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20220704BHJP
   H04N 1/10 20060101ALI20220704BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
H04N1/00 519
H04N1/10
G06T1/00 430H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219803
(22)【出願日】2020-12-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】本山 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】小山 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】岡本 佳大
(72)【発明者】
【氏名】朱宮 和司
(72)【発明者】
【氏名】青山 健太郎
【テーマコード(参考)】
5B047
5C062
5C072
【Fターム(参考)】
5B047AA01
5B047AB04
5B047BA02
5B047BB02
5B047BC16
5B047BC23
5B047CB09
5B047CB23
5B047DC06
5B047EA01
5C062AA05
5C062AB02
5C062AB41
5C062AB43
5C062AC01
5C062AC22
5C062AC66
5C062BA01
5C072AA01
5C072BA01
5C072BA04
5C072CA05
5C072DA21
5C072EA07
5C072FB06
5C072LA02
5C072LA08
5C072UA11
5C072UA13
(57)【要約】
【課題】原稿の読取開始位置の特定精度を向上させるとともに、読取装置の小型化を実現する。
【解決手段】読取装置(1)は、光透過部材(20)に隣接して設けられる周辺部材(30)を備え、周辺部材(30)の裏面(31)側には基準穴(50)が形成され、基準穴(50)は、略くの字形状であって、基準穴(50)の縁を形成する第1縁と第2縁とは、基準穴(50)の略くの字形状の内側の縁である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に原稿が載置される光透過部材と、
前記光透過部材の周囲に当該光透過部材に隣接して設けられる周辺部材と、
前記光透過部材及び前記周辺部材の裏面側に設けられ、前記光透過部材と前記周辺部材とを含む範囲に亘って移動して読み取る読取部と、
制御部と、を備え、
前記周辺部材の裏面側には基準穴が形成され、
前記制御部は、
前記基準穴を含む読取範囲を前記読取部に読み取らせる読取処理を実行し、
前記基準穴の縁を形成する第1縁と第2縁のそれぞれの位置が交差する基準点を、前記読取部に読み取らせた読取結果に基づいて決定し、前記基準点から前記読取部による前記原稿の読取開始位置を決定する、読取装置であって、
前記基準穴は、略くの字形状であって、
前記第1縁と前記第2縁とは、前記基準穴の略くの字形状の内側の縁である、ことを特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記基準穴における前記第1縁と、前記第2縁とは、互いに直交することを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記基準穴の形状は、前記第1縁及び前記第2縁を含む略T字形状であることを特徴とする請求項2に記載の読取装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記読取処理において、前記基準穴の外側、かつ、前記第1縁と前記第2縁とが形成する略くの字形状の屈曲側に探索原点が設定され、前記基準穴と前記探索原点とを含む読取範囲を前記読取部に読み取らせ、
前記第1縁と前記第2縁のそれぞれの位置を、前記読取部に読み取らせた読取結果に基づいて前記探索原点から探索を行い、前記探索に基づいて前記基準点を決定する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の読取装置。
【請求項5】
表面に原稿が載置される光透過部材と、
前記光透過部材の周囲に当該光透過部材に隣接して設けられる周辺部材と、
前記光透過部材及び前記周辺部材の裏面側に設けられ、前記光透過部材と前記周辺部材とを含む範囲に亘って移動して読み取る読取部と、
制御部と、を備え、
前記周辺部材の裏面側には基準穴が形成され、
前記制御部は、
前記基準穴を含む読取範囲を前記読取部に読み取らせる読取処理を実行し、
前記基準穴の縁を形成する第1縁と第2縁のそれぞれの位置が交差する基準点を、前記読取部に読み取らせた読取結果に基づいて決定し、前記基準点から前記読取部による前記原稿の読取開始位置を決定する、読取装置であって、
前記基準穴は、第1基準穴と第2基準穴とを有し、
前記第1基準穴は前記第1縁を有し、前記第2基準穴は前記第2縁を有し、
前記第1基準穴の前記第1縁の延長線と前記第2基準穴の前記第2縁の延長線とは、略くの字形状を形成する、ことを特徴とする読取装置。
【請求項6】
前記基準穴における前記第1縁の延長線と、前記第2縁の延長線とは、互いに直交することを特徴とする請求項5に記載の読取装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記読取処理において、前記基準穴の外側、かつ、前記第1縁の延長線と前記第2縁の延長線とが形成する略くの字形状の屈曲側に探索原点が設定され、前記基準穴と前記探索原点とを含む読取範囲を前記読取部に読み取らせ、
前記第1縁と前記第2縁のそれぞれの位置を、前記読取部に読み取らせた読取結果に基づいて前記探索原点から探索を行い、前記探索に基づいて前記基準点を決定する、ことを特徴とする請求項5または6に記載の読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットベッド方式による原稿の読み取りが可能な読取装置では、原稿が載置される光透過部材の下側に、主走査方向に沿った1ラインを読み取る読取部が副走査方向に移動可能に設けられている。
【0003】
従来の読取装置では、光透過部材に隣接して設けられる周辺部材の下側に、白領域と黒領域とを有するテープが設けられている。読取装置は、テープを読取部で読み取ることによって、読取部の原点位置であるホームポジションを決定している。ホームポジションから副走査方向に所定距離離れた読取開始位置が、設計値からテープの貼り付けによってズレるため、従来の読取装置は、周辺部材の下側に矩形の基準穴を設け、矩形の基準穴を読取部で読み取り、読み取った基準穴の縁を基準に読取開始位置を補正していた。
【0004】
特許文献1には、原稿を載置する透明な原稿載置板と、原稿載置板に載置された原稿を読み取る読取部と、基準マーク穴を有する基準位置特定プレートと、を備える画像読取装置が開示されている。特許文献1に開示の画像読取装置では、基準マーク穴の形状は、所定の方向と直交する方向に平行な第一縁及び所定の方向と平行な第二縁を含む矩形形状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-227971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示の画像読取装置では、読取部を用いて矩形の基準穴を読み取り、基準となる基準穴の縁を決定する場合、基準穴の縁を含む基準穴の外縁周辺を読み取る必要があり、周辺部材の大きさが基準穴の外縁周辺分、大きくなるという問題があった。
【0007】
本発明の一態様は、原稿の読取開始位置の特定精度を向上させるとともに、読取装置の小型化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る読取装置は、表面に原稿が載置される光透過部材と、前記光透過部材の周囲に当該光透過部材に隣接して設けられる周辺部材と、前記光透過部材及び前記周辺部材の裏面側に設けられ、前記光透過部材と前記周辺部材とを含む範囲に亘って移動して読み取る読取部と、制御部と、を備え、前記周辺部材の裏面側には基準穴が形成され、前記制御部は、前記基準穴を含む読取範囲を前記読取部に読み取らせる読取処理を実行し、前記基準穴の縁を形成する第1縁と第2縁のそれぞれの位置が交差する基準点を、前記読取部に読み取らせた読取結果に基づいて決定し、前記基準点から前記読取部による前記原稿の読取開始位置を決定する、読取装置であって、前記基準穴は、略くの字形状であって、前記第1縁と前記第2縁とは、前記基準穴の略くの字形状の内側の縁である。
【0009】
従来の読取装置では、基準穴の形状が矩形形状である場合、基準穴の第1縁と第2縁とが交差する基準点を決定するため、基準穴の外側に在る探索原点から第1縁と第2縁とを探索する必要があるため、広範囲の読取範囲を読み取る必要がある。上記構成の読取装置では、基準穴の形状が略くの字形状であって、第1縁と第2縁とが形成する略くの字形状の屈曲側に探索原点を設けることができる。読取装置は、矩形形状の基準穴に比べて略くの字形状の基準穴である場合、周辺部材の大きさを小さくすることができる。
【0010】
前記基準穴における前記第1縁と、前記第2縁とは、互いに直交してもよい。
【0011】
前記基準穴の形状は、前記第1縁及び前記第2縁を含む略T字形状であってもよい。
【0012】
前記制御部は、前記読取処理において、前記基準穴の外側、かつ、前記第1縁と前記第2縁とが形成する略くの字形状の屈曲側に探索原点が設定され、前記基準穴と前記探索原点とを含む読取範囲を前記読取部に読み取らせ、前記第1縁と前記第2縁のそれぞれの位置を、前記読取部に読み取らせた読取結果に基づいて前記探索原点から探索を行い、前記探索に基づいて前記基準点を決定してもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る読取装置は、表面に原稿が載置される光透過部材と、前記光透過部材の周囲に当該光透過部材に隣接して設けられる周辺部材と、前記光透過部材及び前記周辺部材の裏面側に設けられ、前記光透過部材と前記周辺部材とを含む範囲に亘って移動して読み取る読取部と、制御部と、を備え、前記周辺部材の裏面側には基準穴が形成され、前記制御部は、前記基準穴を含む読取範囲を前記読取部に読み取らせる読取処理を実行し、前記基準穴の縁を形成する第1縁と第2縁のそれぞれの位置が交差する基準点を、前記読取部に読み取らせた読取結果に基づいて決定し、前記基準点から前記読取部による前記原稿の読取開始位置を決定する、読取装置であって、前記基準穴は、第1基準穴と第2基準穴とを有し、前記第1基準穴は前記第1縁を有し、前記第2基準穴は前記第2縁を有し、前記第1基準穴の前記第1縁の延長線と前記第2基準穴の前記第2縁の延長線とは、略くの字形状を形成する。
【0014】
前記基準穴における前記第1縁の延長線と、前記第2縁の延長線とは、互いに直交してもよい。
【0015】
前記制御部は、前記読取処理において、前記基準穴の外側、かつ、前記第1縁の延長線と前記第2縁の延長線とが形成する略くの字形状の屈曲側に探索原点が設定され、前記基準穴と前記探索原点とを含む読取範囲を前記読取部に読み取らせ、前記第1縁と前記第2縁のそれぞれの位置を、前記読取部に読み取らせた読取結果に基づいて前記探索原点から探索を行い、前記探索に基づいて前記基準点を決定してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、原稿の読取開始位置の特定精度を向上させるとともに、読取装置の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態1に係る読取装置の断面構成を示す断面図である。
図2図1に示す読取装置において装置本体側から光透過部材を見た構成を示す図である。
図3図1に示す読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4図1に示す読取装置が備える周辺部材の裏面に形成される基準穴の構成を示す模式図である。
図5】(A)実際の読取装置におけるホームポジションの位置と基準点との副走査方向における距離と、(B)設計上の読取装置におけるホームポジションの位置と基準点との副走査方向における距離と、の差異である補正値を説明するための図である。
図6図1に示す読取装置による補正値の算出処理の内容を示すフローチャートである。
図7】CISユニットによって、基準穴を含む読取範囲を読み取った読取結果であって、エッジ強調処理等が実行後の画像であるエッジ画像を示している。
図8図1に示す読取装置の読取部が有する光源によって基準穴が照射されている様子を示す断面図である。
図9図1に示す読取装置による原稿の読取処理の内容を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施形態2に係る読取装置が備える周辺部材の裏面に形成される基準穴50Aの構成を示す模式図である。
図11】本発明の実施形態3に係る読取装置が備える周辺部材の裏面に形成される基準穴の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施形態1〕
<読取装置1の概略構成>
図1は、本発明の実施形態1に係るフラットベッド方式の読取装置1の断面構成を示す断面図である。図2は、図1に示す読取装置1において装置本体11側から光透過部材20を見た構成を示す図である。
【0019】
図1に示すように、読取装置1は、装置本体11と、原稿カバー12と、光透過部材20と、周辺部材30と、CIS(Contact Image Sensor)ユニット40(読取部の一例)と、を備える。原稿カバー12は、装置本体11に対して回動可能に接続されている。
【0020】
光透過部材20は、装置本体11の上側に設けられている。図2に示すように、光透過部材20の表面21には原稿MSが載置される。光透過部材20は、透明な材料から構成される平板状の部材であり、例えばガラス板である。原稿カバー12が装置本体11に対して閉じた状態では、光透過部材20は、原稿カバー12に覆われる。
【0021】
周辺部材30は、光透過部材20の周囲に光透過部材20に隣接して設けられる。周辺部材30は、装置本体11の上側に設けられている。周辺部材30の裏面31側には、基準穴50が形成される。また、裏面31には、基準部60が設けられている。基準部60は例えばテープであり、X方向に延伸するように裏面31に貼り付けされている。基準部60は、テープによって裏面31に貼り付けることによって構成されているため、人為的な公差が生じる可能性がある。
【0022】
基準部60は、一部を除いて白領域61から構成されており、基準部60のうち白領域61以外の部分が黒領域62から構成されている。黒領域62は、基準部60におけるX方向の両側の端部に形成されている。黒領域62は、当該両側の端部のうちYの正の方向側の角部に形成されている。これにより、基準部60のX方向の両側の端部の近傍では、白領域61と黒領域62とがX方向及びY方向に隣接している。
【0023】
読取装置1は、CISユニット40を用いて、基準部60を読み取り、白領域61と黒領域62との境界を検出する。読取装置1が検出した境界がホームポジションHPである。ホームポジションHPは、CISユニット40が副走査方向(Y方向)に移動する際の原点の位置(座標)となる。
【0024】
CISユニット40は、光透過部材20の裏面22及び周辺部材30の裏面31側に設けられ、Y方向である副走査方向に光透過部材20と周辺部材30とを含む範囲に亘って移動可能に設けられている。図8に示されるように、CISユニット40は、光源(不図示)と、ライトガイド41と、光電変換素子42と、を備えている。
【0025】
光源は、赤色、緑色および青色の3色のLED(Light Emitting Diode)を含む。ライトガイド41は、光源の光を伝搬する部材であり、透明材料からなり、副走査方向と直交するX方向である主走査方向に延びている。
【0026】
光電変換素子42は、複数の光電変換素子であって、主走査方向に一列に並べて配置されている。光源からの光がライトガイド41を通して、読取対象物に照射されて、読取対象物によって反射された反射光が、光電変換素子24に入射される。光電変換素子24は、入射された反射光を電気信号に変換し、AD変換回路(不図示)によって電気信号が8ビット(0~255)の濃度を有する画素毎の画像データに変換される。よって、CISユニット40による主走査方向の1ライン分の読み取りが実行される。CISユニット40は、副走査方向に沿って移動することで周辺部材30及び光透過部材20に載置された原稿MSを読み取ることができる。
【0027】
<読取装置1の電気的構成>
図3は、図1に示す読取装置1の電気的構成を示すブロック図である。図3に示すように、読取装置1は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)5と、ROM(Read Only Memory)7と、RAM(Random Access Memory)8と、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)9と、を備える。
【0028】
ASIC5はCPU6を有する。CPU6は、ROM7から読み出したプログラムにしたがって処理を行い、その処理の結果をRAM8またはNVRAM9に記憶させながら、読取装置1の各部を制御する。CPU6は制御部の一例である。ASIC5は、CISユニット40と、ROM7と、RAM8と、NVRAM9と、電気的に接続されている。
【0029】
ROM7には、各種のプログラムが記憶されており、各種のプログラムには、例えば、読取装置1の各部を制御するためのプログラムが含まれる。ROM7は不揮発性メモリである。RAM8は、CPU6が各種のプログラムを実行する際の作業領域及びデータの一時的な記憶領域として利用される揮発性メモリである。NVRAM9は、書き換え可能な不揮発性メモリである。ROM7、RAM8及びNVRAM9は、記憶部の一例である。
【0030】
<基準穴50の構成>
図4は、図1及び図2に示す読取装置1が備える周辺部材30の裏面31に形成される基準穴50の構成を示す模式図である。図4に示すように、基準穴50の形状は、略くの字形状であるL字形状の穴である。基準穴50は、略くの字形状の内側の縁を形成する第1縁51と第2縁52とを有している。第1縁と、前記第2縁とは、互いに直交する。第1縁51と第2縁52とが交わる交点が基準点KP1である。後述するように、読取装置1は、CISユニット40を用いて基準穴50を含む読取範囲を読み取ることで、ホームポジションHPから基準点KP1の座標を決定する。
【0031】
<読取装置1における実際のホームポジションと設計上のホームポジションのズレ>
図5は、(A)実際の読取装置1におけるホームポジションHPの位置と基準点KP1との副走査方向における距離Lと、(B)設計上の読取装置におけるホームポジションHPRの位置と基準点KP1との副走査方向(Y方向)における距離LRと、の差異である補正値HVを説明するための図である。
【0032】
基準穴50は、樹脂成形品である周辺部材30に設けられた穴であり、実際の読取装置1と設計上の読取装置との間で基準穴50の位置関係についてバラつきはほぼない。
【0033】
基準部60はテープによる貼り付けで構成されているため、読取装置1の基準部60の位置と設計上の読取装置との間でバラつきが生じる可能性があり、そのバラつきが距離Lと距離LRとの差である補正値HVである。
【0034】
ホームポジションHPの位置は、CISユニット40の副走査方向(Y方向)への移動する際の原点であって、Y座標としてはゼロとなる。例えば、読取装置1が、光透過部材20の端部である読取開始位置YPから、原稿MSをCISユニット40を用いて読み取る場合、ホームポジションHPの位置がズレると、光透過部材20の端部から正確に読み取ることができない。
【0035】
<読取装置1による補正値の算出処理>
図6は、読取装置1による補正値HVの算出処理の内容を示すフローチャートである。
【0036】
CPU6は、ホームポジション検出を実行する(S1)。ホームポジション検出において、CPU6は、以下の処理を実行する。CPU6は、CISユニット40を少なくとも基準部60より周辺部材30の端側に移動させる。その後、CPU6は、その位置からCISユニット40を副走査方向(Y方向)に移動させつつ、周辺部材30をCISユニット40によって1ラインずつ読み取らせる。CPU6は、CISユニット40によって白領域61を読み取った画像と黒領域62を読み取った画像から、白領域61と黒領域62の境界であるホームポジションHPを検出する。
【0037】
CPU6は、CISユニット40によって読み取られた白領域61の位置及び黒領域62の位置から、白黒基準位置RP1を原点座標(X=0、Y=0)に決定する(S2)。白黒基準位置RP1は、X方向における白領域61と黒領域62との境界線BL1と、Y方向における白領域61と黒領域62との境界線であるホームポジションHPと、の交点である。
【0038】
CPU6は、ホームポジション検出(S1)後、CISユニット40をホームポジションHP(Y=0)の位置から副走査方向(Y方向)に沿って移動させつつ、基準穴50を含む読取範囲をCISユニット40によって読み取らせ、読み取った画像の画像データをRAM8に記憶する(S3)。CPU6によるS3の処理が、読取処理の一例である。
【0039】
CPU6は、ステップS3でRAM8に記憶した基準穴50を含む読取範囲の画像データから、基準穴50の基準点KP1の座標情報を検出する(S4)。なお、基準点KP1の座標情報は、ホームポジションの原点座標(X=0、Y=0)からの座標である。ステップS4について以下に具体的に説明する。
【0040】
CPU6は、ステップS3でRAM8に記憶した画像データに対してエッジ強調処理を実行する。エッジ強調処理は、画像データの注目画素、及び、その注目画素の周辺の画素に対して、それぞれ所定のフィルタ係数を乗算することで縦横の繋がりが強い画素については、画素の濃度が強調され、画像データの連続性の高い画素の部分が強調される。
【0041】
CPU6は、エッジ強調処理を実行した画像データに対して二値化処理を実行する。二値化処理は、注目画素の濃度が所定閾値以上である場合に注目画素の画素値が「1」に設定され、注目画素の濃度が所定閾値未満である場合に注目画素の画素値が「0」に設定されることで行われる。CPU6は、二値化処理を実行した画像に対して白黒反転処理を実行する。
【0042】
図7は、CISユニット40によって、基準穴を含む読取範囲を読み取った読取結果であって、CPU6による白黒反転処理を実行後の画像であるエッジ画像EGを示している。エッジ画像EGは、基準穴50の縁を画素値が「1」の集まりである黒線で表し、周辺部材30に付着したゴミが読み取られた結果として、丸状の黒線が在る。エッジ画像EGにおいて、基準穴50の縁や周辺部材30に付着したゴミ以外は、「0」で表される。
【0043】
CPU6は、基準穴50の第1縁51の位置と第2縁52の位置とを検出するために、エッジ画像EG、すなわち、読取範囲の範囲内で、基準穴50の外側の位置に探索原点TGを設定する。探索原点TGは、基準穴50の外側、かつ、第1縁51と第2縁52とが形成する略くの字形状の屈曲側に設定される。
【0044】
CPU6は、白黒反転処理を実行したエッジ画像EGに対して、第1縁51Eの位置を決定するために、探索原点TGを原点として図7の矢印A1の通り-Y方向に画素値の探査を実行する。CPU6は、Y方向の画素値の探査の際に最初に画素値が「1」である画素を発見した場合、当該画素を第1縁51Eの候補画素とする。CPU6は、探索原点TGから-X方向に所定距離分ズレた新たな探索原点から、再び矢印A1の通り-Y方向に画素値の探査を実行し、画素値が「1」である画素を発見した場合、当該画素を第1縁51Eの候補画素とする。CPU6は、探索原点TGから-X方向に所定距離分ズラしていくことによって新たな探索原点を設定し、第1縁51Eの候補画素の決定を繰り返し実行する。結果的に、CPU6は、複数の第1縁51Eの候補画素を決定する。
【0045】
CPU6は、複数の第1縁51Eの候補画素の中で、候補画素のY座標が多い分布を抽出し、Y座標の平均を演算することによって、第1縁51EのY座標、つまり、基準穴50の第1縁51のY座標を決定する。なお、複数の第1縁51Eの候補画素の中から候補画素のY座標が多い分布を抽出するのは、周辺部材30に付着したゴミを第1縁51Eとしないようにするためである。
【0046】
次に、白黒反転処理を実行したエッジ画像EGに対して、第2縁52Eの位置を決定するために、探索原点TGを原点として図7の矢印B1の通り-X方向に画素値の探査を実行する。CPU6は、-X方向の画素値の探査の際に最初に画素値が「1」である画素を発見した場合、当該画素を第2縁52Eの候補画素とする。CPU6は、探索原点TGから-Y方向に所定距離分ズレた新たな探索原点から、矢印B1の通り-X方向に画素値の探査を実行し、画素値が「1」である画素を発見した場合、当該画素を第2縁52Eの候補画素とする。CPU6は、探索原点TGから-X方向に所定距離分ズラしていくことによって新たな探索原点を設定し、第2縁52Eの候補画素の決定を繰り返し実行する。結果的に、CPU6は、複数の第2縁52Eの候補画素を決定する。
【0047】
CPU6は、複数の第2縁52Eの候補画素の中で、候補画素のX座標が多い分布を抽出し、X座標の平均を演算することによって、第2縁52EのX座標、つまり、基準穴50の第2縁52のX座標を決定する。
【0048】
CPU6は、決定した第1縁51のY座標を基準点KP1のY座標に設定し、決定した第2縁52のX座標を基準点KP1のX座標に設定する。このようにして、CPU6は、基準点KP1の座標を決定する。
【0049】
なお、第1縁51及び第2縁52の延伸方向は、X方向及びY方向の両方の方向と傾斜する方向であってもよい。第1縁51と第2縁52が略くの字形状を構成していてもよい。この場合、ステップS4において、CPU6は、予め設定された第2縁52の延伸方向と同一の方向に画素値の探査を実行し、第1縁51の位置を検出する。また、CPU6は、予め設定された第1縁51の延伸方向と同一の方向に画素値の探査を実行し、第2縁52の位置を検出する。
【0050】
CPU6は、下記(式1)に示すとおり、検出した基準点KP1のY座標と、設計上のホームポジションHPRから基準点KP1までのY方向の距離LRと、に基づき、補正値HVを算出する(S5)。
【0051】
補正値HV=基準点KP1のY座標-距離LR (式1)
CPU6は、決定した基準点KP1のY座標から、距離LRを差し引くことで得られる値を補正値HVとして算出する。
【0052】
CPU6は、ステップS5で算出した補正値HVをNVRAM9に記憶する。設計上のホームポジションHPRから基準点KP1までのY方向の距離LRは、ROM7に記憶されている。
【0053】
図8は、図1に示す読取装置1のCISユニット40が有する光源によって基準穴50が照射されている様子を示す断面図である。図8に示すように、CISユニット40はライトガイド41及び光電変換素子42を有する。基準穴50は、斜めからライトガイド41によって光が照射される。
【0054】
<読取装置1による原稿MSの読取処理>
図9は、読取装置1による原稿MSの読取処理の内容を示すフローチャートである。光透過部材20の端部である読取開始位置YPから、原稿MSをCISユニット40を用いて読み取る場合、読取装置1は、ホームポジションHPから読取開始位置YPまで実際の距離DIを取得する必要がある。
【0055】
図9に示すように、まず、CPU6は、CISユニット40の読取開始位置YPのY座標を次に示す方法で決定する(S21)。ROM7には、予め基準点KP1と光透過部材20とのY方向の距離LKYの情報が記憶されている。距離LKYは、実際の読取装置1と設計上の読取装置との間でバラつきが生じる可能性がほとんどない。
【0056】
基準穴50の基準点KP1のY座標に対して距離LKYを加算することによって、CPU6は、ホームポジションHPの原点座標から読取開始位置YPのY座標を決定する(S22)。なお、補正値HVを用いて、ホームポジションHPの原点座標から読取開始位置YPのY座標を決定してもよい。
【0057】
これにより、基準部60の貼り付け位置が予め決められた設計上の位置からずれていた場合であっても、CPU6は、読取開始位置YPのY座標を決定することができる。
【0058】
CPU6は、ステップS4で決定した基準点KP1の座標情報を用いて原稿MSの読取開始位置YPを決定しているため、CPU6は、CISユニット40が読み取った第1縁51の位置及び第2縁52の位置から、読取開始位置YPを特定していることになる。
【0059】
ステップS21の後、CPU6は、ステップS21で特定した原稿MSの読取開始位置YPから、光透過部材20の表面21に載置された原稿MSを読み取らせる制御信号をCISユニット40に出力する。CISユニット40は、原稿MSの読取開始位置YPから原稿MSを読み取る。
【0060】
従来の読取装置では、基準穴の形状が矩形形状である場合、第1縁と第2縁を探索する探索原点を基準穴の外側に設ける必要がある。従来の読取装置の周辺部材の大きさが基準穴の外側に探索原点を設ける分、大きくなるという問題がある。対して、読取装置1の基準穴50の形状は、略くの字形状であるL字形状であって、第1縁51と第2縁52とが形成する略くの字形状の屈曲側に探索原点TGを設けることができる。読取装置1は、矩形形状の基準穴に比べて略くの字形状の基準穴である場合、周辺部材30の大きさを小さくすることができる。
【0061】
CISユニット40による原稿MSの読み取りの設定が、上述したように光透過部材20の端部である読取開始位置YPから読み取りを開始するように設定されているとともに、基準部60の貼り付け位置が所望の位置からずれていた場合を考える。このような場合であっても、CISユニット40が第1縁51の位置及び第2縁52の位置を読み取るため、CISユニット40が原稿MSを読み取る際に原稿MSの外側の周辺部材30を読み取ってしまうことを防ぐことができる。
【0062】
また、読取装置1では、第1縁51がX方向に延伸し、第2縁52がY方向に延伸するため、ステップS4においてX方向及びY方向の両方で探査可能な幅を十分に確保できる。このため、X方向またはY方向に幅が小さい矩形形状の基準穴の位置を読み取る場合に比べて、基準穴付近に異物が付着していたとしても、CPU6は、第1縁51の位置及び第2縁52の位置を十分に検出することができる。
【0063】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図10は、本発明の実施形態2に係る読取装置が備える周辺部材30の裏面31に形成される基準穴50Aの構成を示す模式図である。
【0064】
図10に示すように、基準穴50Aの形状は、第1縁51及び第2縁52を含む略T字形状である。略T字形状を有する基準穴50Aにおいても、CPU6は、基準穴50Aの外側であって、第1縁51と第2縁52とが形成する略くの字形状の屈曲側に探索原点TGを設けることができる。基準点KP2は、第1縁51と第2縁52とが交差する点である。CPU6は、基準点KP2の座標を、実施形態1にて実施した内容と同じ方法で探索原点TGから第1縁51と第2縁52の位置をそれぞれ決定することによって決定することができる。
【0065】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図11は、本発明の実施形態3に係る読取装置が備える周辺部材30の裏面31に形成される基準穴の構成を示す模式図である。本実施形態では、基準穴は、第1基準穴50Bと第2基準穴50Cとを有する。
【0066】
図11に示すように、周辺部材30の裏面31側には、第1縁51を含む第1基準穴50Bと、第2縁52を含む第2基準穴50Cと、が形成されてもよい。基準点KP3と基準点KP4は、第1縁51の延長線と第2縁52とが交差する点である。この場合においても、第1縁51に直交する第1直線L1と、第2縁52に直交する第2直線L2と、が交わる探索原点TGについて、第1基準穴50Bの第1縁51の延長線と第2基準穴50Cの第2縁52の延長線とは、略くの字形状を形成し、探索原点TGは、略くの字形状の屈曲側に在る。また、第1縁51の延長線と、第2縁52の延長線とは、互いに直交する。
【0067】
CPU6は、図11の(A)における基準点KP3の座標と、図11の(B)における基準点KP4の座標とをそれぞれの場合において、実施形態1にて実施した内容と同じ方法で探索原点TGから第1縁51と第2縁52の位置をそれぞれ決定することによって決定することができる。
【0068】
図11の(A)に示すように、第1基準穴50Bが、第2基準穴50Cよりも-Y方向側に配置されていてもよい。この場合、第1縁51のY座標と、第2縁52の最小のY座標と、が一致するように、第1縁51及び第2縁52が配置されている。また、図11の(B)に示すように、第1基準穴50Bの周縁に囲まれる領域と、第2基準穴50Cの周縁に囲まれる領域と、がY方向において重なっていてもよい。さらに、第1基準穴50Bと第2基準穴50Cとは1点でつながっていてもよい。
【0069】
図11に示すように、第1基準穴50B及び第2基準穴50Cの形状は長方形状であるが、これに限定されない。第1縁51及び第2縁52が形成されればよいため、第1基準穴50B及び第2基準穴50Cの形状は、例えば台形または半円であってもよい。
【0070】
読取装置1は、装置本体11に用紙に画像を形成する画像形成部を有していてもよい。実施形態では、ホームポジションHPの副走査方向(Y方向)のズレについて修正する点について述べているが、ホームポジションHPの主走査方向のズレについて実施形態1の内容を適用することも可能である。
【0071】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 読取装置
6 CPU(制御部)
7 ROM(記憶部)
20 光透過部材
21 光透過部材の表面
22 光透過部材の裏面
30 周辺部材
31 周辺部材の裏面
40 CISユニット(読取部)
50、50A 基準穴
50B 第1基準穴
50C 第2基準穴
51 第1縁
52 第2縁
MS 原稿
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11