(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104693
(43)【公開日】2022-07-11
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220704BHJP
【FI】
G03G15/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219805
(22)【出願日】2020-12-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田尻 文威
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 雅光
(72)【発明者】
【氏名】野原 修平
(72)【発明者】
【氏名】堀川 竜太郎
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA02
2H033AA13
2H033AA35
2H033AA49
2H033BA13
2H033BA48
2H033BA58
2H033BE07
2H033CA23
2H033CA26
(57)【要約】
【課題】定着液の噴霧を停止した場合のノズルに付着する定着液を少なくする。
【解決手段】レーザプリンタは、トナーを用紙(P)に定着させるための定着液(L)を噴霧する噴霧ユニット(71)と、電圧印加回路(73)と、制御部(8)と、を備え、制御部(8)は、定着液(L)の噴霧を停止する場合、電圧印加回路(73)によって、ノズル電極(71B)と対向電極(71C)との間に、定着液(L)の噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせた後、電圧印加回路(73)による電圧の印加を停止させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光ドラムと、
前記感光ドラム上のトナーをシートに転写する転写部材と、
前記転写部材によってシートに転写されたトナーをシートに定着させるための定着液を噴霧する噴霧ユニットであって、
前記定着液を収容可能な筐体と、
前記筐体内の前記定着液を帯電させるノズル電極と、
前記ノズル電極と間隔を隔てて位置する対向電極と、
前記ノズル電極と前記対向電極との間である電極間の電位差が所定値以上である場合において、前記筐体内の前記定着液をトナーが転写されたシートに噴霧するノズルと、を有する噴霧ユニットと、
前記ノズル電極に電圧を印加する電圧印加回路と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する場合、前記電圧印加回路が印加する電圧によって、前記電極間に、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせた後、前記電圧印加回路による電圧の印加を停止させる、画像形成装置。
【請求項2】
前記電圧印加回路はさらに、前記対向電極に電圧を印加し、
前記制御部は、
前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する場合、前記電圧印加回路を用いて、前記ノズル電極及び前記対向電極のそれぞれに対して、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際に印加される電圧よりも絶対値が大きい電圧を印加させた後、前記電圧印加回路による電圧の印加を停止させる、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記電圧印加回路はさらに、前記対向電極に電圧を印加し、
前記制御部は、
前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する場合、前記電圧印加回路を用いて、前記ノズル電極に対して、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際に印加される電圧よりも絶対値が大きい電圧を印加させるとともに、前記対向電極に対して、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際に印加される電圧と絶対値が等しい電圧を印加させた後、前記電圧印加回路による電圧の印加を停止させる、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記電圧印加回路はさらに、前記対向電極に電圧を印加し、
前記制御部は、
前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する場合、前記電圧印加回路を用いて、前記対向電極に対して、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際に印加される電圧よりも絶対値が大きい電圧を印加させるとともに、前記ノズル電極に対して、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際に印加される電圧と絶対値が等しい電圧を印加させた後、前記電圧印加回路による電圧の印加を停止させる、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記定着液を前記噴霧ユニットに向けて供給する供給ユニットを備え、
前記制御部は、
前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する場合、前記供給ユニットに対して前記噴霧ユニットへの前記定着液の供給を停止させた後、前記電極間に、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせる、請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記供給ユニットは、
前記定着液を前記筐体に向けて供給するポンプと、
前記ポンプと前記筐体とを接続し、前記定着液の通過を許容する供給管と、
前記供給管に設けられ、前記ポンプから前記筐体へ供給される前記定着液の流量を調整するバルブと、を有し、
前記制御部は、
前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する場合、前記ポンプに対して前記筐体への前記定着液の供給を停止させるときに前記バルブを閉じる、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する場合、前記電圧印加回路を用いて、前記電極間に、所定時間の間、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせる、請求項1から6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせた後、前記電圧印加回路による前記ノズル電極及び前記対向電極のそれぞれへの電圧の印加を同時に停止させる、請求項1から7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
感光ドラム上のトナーをシートに転写する転写工程と、
前記転写工程によってシートに転写されたトナーをシートに定着させるための定着液を噴霧する噴霧工程であって、
前記定着液を収容可能な筐体内の前記定着液を、ノズル電極を用いて帯電させる帯電工程と、
前記ノズル電極と、前記ノズル電極と間隔を隔てて位置する対向電極と、の間である電極間の電位差が所定値以上である場合において、ノズルを用いて、前記筐体内の前記定着液をトナーが転写されたシートに噴霧する噴霧工程と、
電圧印加回路を用いて前記ノズル電極に電圧を印加する電圧印加工程と、
前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する停止工程と、を含み、
前記停止工程にて、前記電圧印加回路が印加する電圧によって、前記電極間に、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせた後、前記電圧印加回路による電圧の印加を停止させる、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トナーを溶解または膨潤させる定着液を用紙上のトナーに塗布して、トナーを用紙上に定着する定着装置を備える画像形成装置が開示されている。特許文献1では、定着液をトナーに塗布する方法として、静電噴霧によって定着液をトナーに塗布する方法が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電噴霧によって定着液をトナーに塗布する方法では、定着液を噴霧するノズルからの定着液の噴霧を停止したときに、定着液がノズルの外周面に付着して残留すると、次回の噴霧開始時に正常な噴霧を行うことができない場合がある。そこで、本発明の一態様は、定着液の噴霧を停止した場合のノズルに付着する定着液を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る画像形成装置は、感光ドラムと、前記感光ドラム上のトナーをシートに転写する転写部材と、前記転写部材によってシートに転写されたトナーをシートに定着させるための定着液を噴霧する噴霧ユニットであって、前記定着液を収容可能な筐体と、前記筐体内の前記定着液を帯電させるノズル電極と、前記ノズル電極と間隔を隔てて位置する対向電極と、前記ノズル電極と前記対向電極との間である電極間の電位差が所定値以上である場合において、前記筐体内の前記定着液をトナーが転写されたシートに噴霧するノズルと、を有する噴霧ユニットと、前記ノズル電極に電圧を印加する電圧印加回路と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する場合、前記電圧印加回路が印加する電圧によって、前記電極間に、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせた後、前記電圧印加回路による電圧の印加を停止させる。
【0006】
ノズル電極と対向電極との間である電極間に、定着液の噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせることによって、定着液の噴霧を行う際よりも定着液にかかる静電力を強くすることができる。これにより、ノズルに滞留した定着液をより強く噴霧することができる。その結果、ノズルに付着する定着液を少なくすることができる。
【0007】
前記電圧印加回路はさらに、前記対向電極に電圧を印加し、前記制御部は、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する場合、前記電圧印加回路を用いて、前記ノズル電極及び前記対向電極のそれぞれに対して、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際に印加される電圧よりも絶対値が大きい電圧を印加させた後、前記電圧印加回路による電圧の印加を停止させる。
【0008】
ノズル電極及び対向電極のそれぞれに対して、ノズルによる定着液の噴霧を行う際に印加される電圧よりも絶対値が大きい電圧を印加させることにより、定着液にかかる静電力を強くすることができる。ノズルによる定着液の噴霧を停止する場合において、一時的に定着液にかかる静電力を強くすることで、ノズルに付着している定着液を吹き飛ばすことができる。結果として、ノズルに付着する定着液を少なくすることができる。
【0009】
前記電圧印加回路はさらに、前記対向電極に電圧を印加し、前記制御部は、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する場合、前記電圧印加回路を用いて、前記ノズル電極に対して、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際に印加される電圧よりも絶対値が大きい電圧を印加させるとともに、前記対向電極に対して、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際に印加される電圧と絶対値が等しい電圧を印加させた後、前記電圧印加回路による電圧の印加を停止させる。
【0010】
ノズル電極に対して、ノズルによる定着液の噴霧を行う際に印加される電圧よりも絶対値が大きい電圧を印加させることにより、定着液にかかる静電力を強くすることができる。
【0011】
前記電圧印加回路はさらに、前記対向電極に電圧を印加し、前記制御部は、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する場合、前記電圧印加回路を用いて、前記対向電極に対して、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際に印加される電圧よりも絶対値が大きい電圧を印加させるとともに、前記ノズル電極に対して、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際に印加される電圧と絶対値が等しい電圧を印加させた後、前記電圧印加回路による電圧の印加を停止させる。
【0012】
対向電極に対して、ノズルによる定着液の噴霧を行う際に印加される電圧よりも絶対値が大きい電圧を印加させるとともに、ノズル電極に対して、ノズルによる定着液の噴霧を行う際に印加される電圧と絶対値が等しい電圧を印加させる。これにより、ノズルから噴霧される定着液の噴霧幅が、シートへ定着液を噴霧させる場合よりも狭く噴霧されることになるため、定着液が周辺に飛び散らないように定着液を噴霧した後、定着液の噴霧を停止することができる。
【0013】
前記画像形成装置は、前記定着液を前記噴霧ユニットに向けて供給する供給ユニットを備え、前記制御部は、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する場合、前記供給ユニットに対して前記噴霧ユニットへの前記定着液の供給を停止させた後、前記電極間に、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせる。
【0014】
供給ユニットによる定着液の供給が停止されると、筐体内の定着液の量が減り、ノズル内の圧力が減る。これにより、ノズルから対向電極へ向けて定着液を噴霧する力が減った後に、ノズルによる定着液の噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせると、ノズルに付着する定着液をより少なくすることができる。
【0015】
前記供給ユニットは、前記定着液を前記筐体に向けて供給するポンプと、前記ポンプと前記筐体とを接続し、前記定着液の通過を許容する供給管と、前記供給管に設けられ、前記ポンプから前記筐体へ供給される前記定着液の流量を調整するバルブと、を有し、前記制御部は、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する場合、前記ポンプに対して前記筐体への前記定着液の供給を停止させるときに前記バルブを閉じる。
【0016】
ポンプに対して筐体への定着液の供給を停止させるときにバルブを閉じることにより、バルブを用いずにポンプに対して筐体への定着液の供給を停止させる場合に比べて、ノズル内の圧力をより早く減らすことができる。よって、ノズルによる定着液の噴霧をより早く停止することができる。
【0017】
前記制御部は、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する場合、前記電圧印加回路を用いて、前記電極間に、所定時間の間、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせる。
【0018】
所定時間の間、ノズルによる定着液の噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせることにより、定着液にかかる静電力を十分に強くすることができ、ノズルに付着する定着液を十分に少なくすることができる。
【0019】
前記制御部は、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせた後、前記電圧印加回路による前記ノズル電極及び前記対向電極のそれぞれへの電圧の印加を同時に停止させる。
【0020】
ノズル電極への電圧の印加の停止と対向電極への電圧の印加の停止を順番に行った場合、対向電極のみの電圧の印加によって定着液の噴霧が不規則に噴霧される。定着液の噴霧が不規則に行われると、定着液が定着装置の内部に付着してしまう。ノズル電極への電圧の印加と、対向電極への電圧の印加と、が同時に停止することによって、ノズルから不規則に定着液が噴霧された後、定着液の噴霧が停止されることを防止することができる。
【0021】
本発明の一態様に係る画像形成方法は、感光ドラム上のトナーをシートに転写する転写工程と、前記転写工程によってシートに転写されたトナーをシートに定着させるための定着液を噴霧する噴霧工程であって、前記定着液を収容可能な筐体内の前記定着液を、ノズル電極を用いて帯電させる帯電工程と、前記ノズル電極と、前記ノズル電極と間隔を隔てて位置する対向電極と、の間である電極間の電位差が所定値以上である場合において、ノズルを用いて、前記筐体内の前記定着液をトナーが転写されたシートに噴霧する噴霧工程と、電圧印加回路を用いて前記ノズル電極に電圧を印加する電圧印加工程と、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を停止する停止工程と、を含み、前記停止工程にて、前記電圧印加回路が印加する電圧によって、前記電極間に、前記ノズルによる前記定着液の噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせた後、前記電圧印加回路による電圧の印加を停止させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、定着液の噴霧を停止した場合のノズルに付着する定着液を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態1に係るレーザプリンタの構成を示す図である。
【
図2】
図1に示すレーザプリンタが備える定着装置の構成を示す模式図である。
【
図3】
図1に示すレーザプリンタによる噴霧及び噴霧を停止する際の処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図2に示す定着装置の噴霧ユニットが有するノズル電極及び対向電極に印加される電圧の波形を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係るレーザプリンタによる噴霧処理を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態2において、ノズルの先端付近を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態3に係るレーザプリンタによる噴霧処理を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態3において、ノズルの先端付近を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔実施形態1〕
<レーザプリンタ1の構成>
図1は、本発明の実施形態1に係るレーザプリンタ1の構成を示す図である。
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体筐体2と、フィーダ部3と、画像形成部4と、搬送ローラRDと、排紙ローラRと、を備える。レーザプリンタ1は画像形成装置の一例である。
【0025】
フィーダ部3は、シートの一例としての用紙Pを給紙するものであり、給紙トレイ31及び給紙機構32を有する。給紙トレイ31は、本体筐体2の下部に着脱可能に装着される。給紙機構32は、給紙トレイ31内の用紙Pを画像形成部4に向けて給紙する。給紙機構32は、給紙ローラ32A及びレジストローラ32Bを有する。給紙ローラ32Aは、給紙トレイ31から用紙Pを給紙する。レジストローラ32Bは、用紙Pの先端位置を揃えるローラであり、後述する制御部8によって適宜停止及び回転が切り替えられるようになっている。
【0026】
画像形成部4は、本体筐体2内に収容されており、主に、スキャナユニット5と、プロセスカートリッジ6と、転写ローラTRと、定着装置7と、を有する。画像形成部4は、用紙Pに画像を形成する。スキャナユニット5は、本体筐体2内の上部に設けられ、図示しないレーザ発光部、ポリゴンミラー、レンズ及び反射鏡等を有する。スキャナユニット5は、感光ドラム61の表面上にレーザビームを高速走査にて照射する。
【0027】
プロセスカートリッジ6は、本体筐体2に着脱可能となっている。プロセスカートリッジ6は、感光ドラム61と、トナー収容部62と、供給ローラ63と、現像ローラ64と、図示しない帯電器と、を有する。図示しない帯電器は、回転する感光ドラム61の表面を一様に帯電する。スキャナユニット5は、感光ドラム61の表面にレーザビームを出射して感光ドラム61の表面を露光することで、感光ドラム61の表面に画像データに基づく静電潜像を形成する。
【0028】
供給ローラ63は、トナー収容部62に収容されているトナーを現像ローラ64に供給する。回転駆動される現像ローラ64は、感光ドラム61の表面に形成された静電潜像にトナーを供給することで、感光ドラム61の表面にトナーを形成する。その後、感光ドラム61の表面に形成されたトナーは、用紙Pが感光ドラム61と転写ローラTRとの間で搬送される際に、転写ローラTRに引き寄せられて用紙Pに転写される。転写ローラTRは、感光ドラム61上のトナーを用紙Pに転写する転写部材の一例である。
【0029】
定着装置7は、トナーが形成された用紙Pに定着液Lを噴霧する。具体的には、定着装置7は、帯電された定着液Lを静電噴霧により用紙Pに形成されたトナーに供給することで、用紙Pにトナーを定着させる装置である。定着装置7の詳細な構成については後述する。
【0030】
定着装置7における用紙Pの搬送方向の下流側には、用紙Pを挟持して搬送する一対の搬送ローラRDが設けられている。搬送ローラRDは、用紙Pを排紙ローラRまで搬送する。排紙ローラRは、本体筐体2が有する排紙トレイ21上に用紙Pを排紙する。
【0031】
<定着装置7の構成>
図2は、
図1に示すレーザプリンタ1が備える定着装置7の構成を示す模式図である。
図2に示すように、定着装置7は、噴霧ユニット71と、供給ユニット72と、電圧印加回路73と、を有する。また、レーザプリンタ1は、
図2に示す制御部8を備える。
【0032】
噴霧ユニット71は、転写ローラTRによって用紙Pに転写されたトナーを用紙Pに定着させるための定着液Lを噴霧する。噴霧ユニット71は、筐体71Aと、ノズル電極71Bと、対向電極71Cと、ノズル71Dと、回収トレイ71Eと、を有する。噴霧ユニット71のうち、筐体71A、ノズル電極71B及びノズル71Dは、回収トレイ71Eの上方に配置される。特に、ノズル71Dは、下方に向けて定着液Lを噴霧するように配置される。
【0033】
筐体71Aは、定着液Lを収容可能なものである。ノズル電極71Bは、筐体71A内の定着液Lを帯電させる。対向電極71Cは、ノズル電極71Bと間隔を隔てて位置する。対向電極71Cは、回収トレイ71E内に配置される。対向電極71Cは、ノズル71Dに向かって伸びる複数の突起を有する。
【0034】
ノズル71Dは、ノズル電極71Bと対向電極71Cとの間である電極間の電位差が所定値以上である場合において、筐体71A内の定着液Lをトナーが転写された用紙Pに噴霧する。回収トレイ71Eは、ノズル71Dから噴霧された定着液Lを回収するためのものである。
【0035】
定着液Lは、良好に静電噴霧を行い、かつ、定着を行うために、トナーを溶解させる溶質を誘電率の高い溶媒に分散させたものを使用することができる。誘電率の高い溶媒として、安全な水を用いることができる。実施形態1では、トナーを溶解させる溶質を水に分散するタイプ、いわゆる、水中油滴型のエマルジョンでトナーの溶解を行っている。つまり、溶媒としての水に対して不溶または難溶な溶質を水に分散した定着液Lを用いている。また、エマルジョンを良好に形成するために界面活性剤を定着液Lに加えてもよい。
【0036】
供給ユニット72は、定着液Lを噴霧ユニット71に向けて供給する。供給ユニット72は、供給管72A~72Dと、タンク72Eと、カートリッジ72Fと、バルブ72G,72Hと、ポンプ72I,72Jと、を有する。供給管72A~72Dは、定着液Lの通過を許容する。供給管72Aは、ポンプ72Iと筐体71Aとを接続し、供給管72Bは、タンク72Eとポンプ72Iとを接続し、供給管72Cは、ポンプ72Jとタンク72Eとを接続し、供給管72Dは、カートリッジ72Fとポンプ72Jとを接続する。
【0037】
タンク72Eは、定着液Lを収容可能なものである。カートリッジ72Fは、定着液Lを収容するタンクであり、本体筐体2に着脱可能に取り付けられている。バルブ72Gは、供給管72Aに設けられ、ポンプ72Iから筐体71Aへ供給される定着液Lの流量を調整する電磁バルブである。バルブ72Hは、供給管72Dに設けられ、カートリッジ72Fからタンク72Eへ供給される定着液Lの流量を調整する電磁バルブである。
【0038】
ポンプ72Iは、タンク72Eから筐体71Aへ定着液Lを送り込むことにより、定着液Lを加圧する機能を有し、図示しないモータにより制御される。ポンプ72Iは、定着液Lを筐体71Aに向けて供給する。ポンプ72Jは、カートリッジ72Fからタンク72Eへ定着液Lを送り込むことにより、定着液Lを加圧する機能を有し、図示しないモータにより制御される。ポンプ72Jは、定着液Lをタンク72Eに向けて供給する。
【0039】
電圧印加回路73は、第1電圧印加回路73A及び第2電圧印加回路73Bを有する。第1電圧印加回路73Aは、ノズル電極71Bに接続され、ノズル電極71Bに電圧を印加する。第1電圧印加回路73Aは、ノズル電極71Bに一定の電流を出力することで電圧を印加する定電流源である。また、第1電圧印加回路73Aは、一定の電圧を出力することも可能である。
【0040】
第2電圧印加回路73Bは、対向電極71Cに接続され、対向電極71Cに電圧を印加する。第2電圧印加回路73Bは、対向電極71Cに一定の電圧を印加する定電圧源である。このとき、対向電極71Cから第2電圧印加回路73Bに電流が流れる。なお、第1電圧印加回路73A及び第2電圧印加回路73Bは、単一の回路基板上に構成されている。これにより、レーザプリンタ1の部品点数を削減できる。
【0041】
制御部8は、レーザプリンタ1の各部を制御し、特に、バルブ72G,72Hと、ポンプ72I,72Jと、第1電圧印加回路73Aと、第2電圧印加回路73Bと、を制御する。また、制御部8は、第1電圧印加回路73A及び第2電圧印加回路73Bに対してPWM(Pulse Width Modulation)制御を行う。ただし、制御部8は、PWM制御以外の制御方法で第1電圧印加回路73A及び第2電圧印加回路73Bを制御してもよい。
【0042】
<レーザプリンタ1による噴霧処理>
図3は、
図1に示すレーザプリンタ1による噴霧及び噴霧を停止する際の処理を示すフローチャートである。
図3に示すフローチャートは、レーザプリンタ1による用紙Pへの画像形成処理が開始され、転写ローラTRによる感光ドラム61上のトナーを用紙Pに転写する処理が行われた後の用紙Pへの定着液Lの噴霧処理を示す。
【0043】
図3に示すように、ステップS1において、制御部8は、ポンプ72I,72Jを起動させるとともに、バルブ72G,72Hを開放する。これにより、定着液Lがポンプ72Jによってカートリッジ72Fからタンク72Eに供給される。また、定着液Lがポンプ72Iによってタンク72Eから筐体71Aに供給される。
【0044】
ステップS1の後、ステップS2において、制御部8は、第1電圧印加回路73Aを用いて、ノズル電極71Bにノズル電圧V1を印加するとともに、第2電圧印加回路73Bを用いて、対向電極71Cに対向電圧-V2を印加する。ただし、V1>0かつV2>0であり、V1及びV2は電圧値である。
【0045】
このとき、電圧印加回路73は、ノズル電極71B及び対向電極71Cのそれぞれに電圧を印加する。また、ノズル電極71Bと対向電極71Cとの間である電極間に生じる電位差は、V1+V2となる。以降、ノズル電極71Bに印加される電圧をノズル電圧、対向電極71Cに印加される電圧を対向電圧と称する。
【0046】
ステップS2により、ノズル電極71Bにノズル電圧V1が印加されるとともに、対向電極71Cに対向電圧-V2が印加されることにより、ノズル電極71Bと対向電極71Cとの間である電極間の電位差が所定値以上となる。これにより、ノズル71Dは、筐体71A内の定着液Lを、転写ローラTRによってトナーが転写された用紙Pに噴霧することができる。
【0047】
制御部8は、第1電圧印加回路73Aを用いて、ノズル電極71Bにノズル電圧V1を印加する場合、ステップS3において、定電流制御を行う。このとき、制御部8は、ノズル電極71Bに一定の電流が出力されるように、第1電圧印加回路73Aを制御してノズル電圧を調整する。
【0048】
ステップS4において、制御部8は、用紙Pへ画像を形成する画像形成処理が終了したか否かを判定する。つまり、制御部8は、用紙Pが定着装置7を通過したか否かを判定する。ステップS4にてNOの場合、つまり、制御部8が、画像形成処理が終了していないと判定した場合、ステップS3に戻る。
【0049】
ステップS4にてYESの場合、つまり、制御部8が、画像形成処理が終了したと判定した場合、制御部8は、ステップS5において、ポンプ72I,72Jを停止させるとともに、バルブ72G,72Hを閉じる。制御部8は、ポンプ72Jを停止させることにより、ポンプ72Jに対してカートリッジ72Fからタンク72Eへの定着液Lの供給を停止させる。また、制御部8は、ポンプ72Iを停止させることにより、ポンプ72Iに対してタンク72Eから筐体71Aへの定着液Lの供給を停止させる。
【0050】
ステップS5の後、ステップS6において、制御部8は、第1電圧印加回路73Aを用いて、ノズル電極71Bにノズル電圧(V1+A)を印加するとともに、第2電圧印加回路73Bを用いて、対向電極71Cに対向電圧-(V2+B)を印加する。ただし、A>0かつB>0であり、A及びBは電圧値である。このとき、ノズル電極71Bと対向電極71Cとの間である電極間に生じる電位差は、V1+V2+A+Bとなる。
【0051】
つまり、制御部8は、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を停止する場合、電圧印加回路73を用いて、ノズル電極71B及び対向電極71Cのそれぞれに対して、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を行う際に印加される電圧よりも絶対値が大きい電圧を印加させる。これにより、定着液Lにかかる静電力を強くすることができる。ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を停止する場合において、一時的に定着液Lにかかる静電力を強くすることで、ノズル71Dに付着している定着液Lを吹き飛ばすことができる。結果として、ノズル71Dに付着する定着液Lを少なくすることができる。
【0052】
また、ノズル電極71Bと対向電極71Cとの間である電極間に生じる電位差は、ステップS2よりもステップS6の方が大きくなる。ステップS6では、ノズル71Dから定着液Lが噴霧され、ノズル71Dから噴霧された定着液Lは、回収トレイ71Eに回収される。
【0053】
ステップS7において、制御部8は、ステップS6の処理を実行した時点から所定時間が経過した後、ノズル電圧及び対向電圧の印加を停止する。具体的には、制御部8は、第1電圧印加回路73Aを用いて、ノズル電極71Bへのノズル電圧の印加を停止するとともに、第2電圧印加回路73Bを用いて、対向電極71Cへの対向電圧の印加を停止する。これにより、ノズル71Dからの定着液Lの噴霧が停止する。上記所定時間としては、例えば、50msである。
【0054】
ステップS6において、制御部8は、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせた後、ステップS7において、電圧印加回路73によるノズル電極71B及び対向電極71Cのそれぞれへの電圧の印加を同時に停止させる。ノズル電極71Bへの電圧の印加の停止と対向電極71Cへの電圧の印加の停止を順番に行った場合、対向電極71Cのみの電圧の印加によって定着液Lの噴霧が不規則に噴霧される。定着液Lの噴霧が不規則に行われると、定着液Lが定着装置7の内部に付着してしまう。ノズル電極71Bへの電圧の印加と、対向電極71Cへの電圧の印加と、が同時に停止することによって、ノズル71Dから不規則に定着液Lが噴霧された後、定着液Lの噴霧が停止されることを防止することができる。
【0055】
なお、制御部8は、電圧印加回路73によるノズル電極71B及び対向電極71Cのそれぞれへの電圧の印加を同時に停止させることが好ましいが、ノズル電極71B及び対向電極71Cのそれぞれへの電圧の印加を順番に停止させてもよい。これは、ステップS5でポンプ72Iが停止していることにより筐体71Aへの定着液Lの供給が停止し、筐体71A内の定着液Lの量が少なくなることから、筐体71A内の圧力が低下し、定着液Lの噴霧を確実に停止させることが容易であるためである。
【0056】
また、ステップS6及びS7により、制御部8は、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を停止する場合、電圧印加回路73を用いて、ノズル電極71Bと対向電極71Cとの間である電極間に、所定時間の間、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせる。これにより、定着液Lにかかる静電力を十分に強くすることができ、ノズル71Dに付着する定着液Lを十分に少なくすることができる。
【0057】
以上により、制御部8は、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を停止する場合、電圧印加回路73が印加する電圧によって、ノズル電極71Bと対向電極71Cとの間である電極間に、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせた後、電圧印加回路73による電圧の印加を停止させる。
【0058】
ノズル電極71Bと対向電極71Cとの間である電極間に、定着液Lの噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせることによって、定着液Lの噴霧を行う際よりも定着液Lにかかる静電力を強くすることができる。これにより、ノズル71Dに滞留した定着液Lをより強く噴霧することができる。その結果、ノズル71Dに付着する定着液を少なくすることができる。
【0059】
また、制御部8は、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を停止する場合、供給ユニット72のポンプ72Iに対して噴霧ユニット71の筐体71Aへの定着液Lの供給を停止させた後、ノズル電極71Bと対向電極71Cとの間である電極間に、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせる。
【0060】
供給ユニット72のポンプ72Iによる定着液Lの供給が停止されると、噴霧ユニット71の筐体71A内の定着液Lの量が減り、ノズル71D内の圧力が減る。これにより、ノズル71Dから対向電極71Cへ向けて定着液Lを噴霧する力が減った後に、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を行う際の電位差よりも大きい電位差を生じさせると、ノズル71Dに付着する定着液Lをより少なくすることができる。
【0061】
さらに、ステップS5のように、制御部8は、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を停止する場合、ポンプ72Iに対して筐体71Aへの定着液Lの供給を停止させるときにバルブ72Gを閉じる。これにより、バルブ72Gを用いずにポンプ72Iに対して筐体71Aへの定着液Lの供給を停止させる場合に比べて、ノズル71D内の圧力をより早く減らすことができる。よって、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧をより早く停止することができる。
【0062】
<ノズル電極71B及び対向電極71Cへ印加される電圧>
図4は、
図2に示す定着装置7の噴霧ユニット71が有するノズル電極71B及び対向電極71Cに印加される電圧の波形を示す図である。ステップS2及びS6において、例えば、第1電圧印加回路73Aは、
図4の(A)~(D)に示すいずれかの波形でノズル電圧をノズル電極71Bに印加してもよい。また、ステップS2及びS6において、例えば、第2電圧印加回路73Bは、
図4の(A)~(D)に示すいずれかの波形で対向電圧を対向電極71Cに印加してもよい。
【0063】
ただし、ノズル電極71Bに印加される電圧の波形は、対向電極71Cに印加される電圧の波形と同一であることが好ましい。
図4の(A)に示す波形は、矩形波であり、定電圧の波形である。
図4の(B)に示す波形は、複数の三角波が短期間に連続する波形である。
図4の(C)に示す波形は、電圧値が単調減少する、のこぎり波である。
図4の(D)に示す波形は、電圧値が単調増加する、のこぎり波である。
【0064】
<変形例>
なお、レーザプリンタ1の変形例として、電圧印加回路73は、第1電圧印加回路73Aを有し、第2電圧印加回路73Bを有しなくてもよい。この場合、対向電極71Cは、グランドに接続されている。また、ステップS2及びS6において、制御部8は、電圧印加回路73を用いて、ノズル電極71B及び対向電極71Cのうちノズル電極71Bのみに電圧を印加する。
【0065】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図5は、本発明の実施形態2に係るレーザプリンタによる噴霧処理を示すフローチャートである。
【0066】
図5に示すように、実施形態2に係るレーザプリンタによる噴霧処理のステップS11~S15,S17はそれぞれ、
図3に示すステップS1~S5,S7と同一である。ステップS15の後、ステップS16において、制御部8は、第1電圧印加回路73Aを用いて、ノズル電極71Bにノズル電圧(V1+A)を印加するとともに、第2電圧印加回路73Bを用いて、対向電極71Cに対向電圧-V2を印加する。ただし、A>0である。このとき、ノズル電極71Bと対向電極71Cとの間である電極間に生じる電位差は、V1+V2+Aとなる。
【0067】
つまり、制御部8は、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を停止する場合、電圧印加回路73を用いて、ノズル電極71Bに対して、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を行う際に印加される電圧よりも絶対値が大きい電圧を印加させるとともに、対向電極71Cに対して、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を行う際に印加される電圧と絶対値が等しい電圧を印加させる。この後、制御部8は、電圧印加回路73による電圧の印加を停止させる。これにより、定着液Lにかかる静電力を強くすることができる。
【0068】
図6は、本発明の実施形態2において、ノズル71Dの先端付近を示す断面図である。ステップS12において、ノズル電極71Bにノズル電圧V1が印加されるとともに、対向電極71Cに対向電圧-V2が印加されると、
図6の(A)に示すように、ノズル71Dから定着液Lが噴霧される。ステップS16において、ノズル電極71Bにノズル電圧(V1+A)が印加されるとともに、対向電極71Cに対向電圧-V2が印加されると、
図6の(B)に示すように、ノズル71Dから定着液Lが噴霧される。
【0069】
よって、
図6の(A)及び(B)に示すように、ノズル71Dから噴霧される定着液Lの噴霧幅は、ステップS12よりもステップS16の方が広くなる。具体的には、
図6の(B)に示す定着液Lの噴霧幅W2は、
図6の(A)に示す定着液Lの噴霧幅W1よりも広くなる。噴霧幅W1及びW2は、ノズル71Dの先端から所定距離だけ離れた位置での噴霧幅である。
【0070】
これは、ステップS12よりもステップS16の方が、ノズル電極71Bにノズル電圧が強く印加されることにより、定着液Lに供給される電荷の量が増え、定着液Lに供給された電荷が強く反発するためである。また、ステップS15でポンプ72Iが停止しているため、筐体71Aに定着液Lが供給されず、筐体71A内の定着液Lの量が少なくなり、定着液Lの単位体積あたりに供給される電荷の量が増えることになるためである。
【0071】
ステップS17において、ノズル電圧及び対向電圧の印加が停止すると、
図6の(C)に示すように、定着液Lは、表面張力によりノズル71Dの先端から凹んだ状態となる。この状態では、定着液Lがノズル71Dの外周面に付着して残留することを低減することができる。
【0072】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図7は、本発明の実施形態3に係るレーザプリンタによる噴霧処理を示すフローチャートである。
【0073】
図7に示すように、実施形態3に係るレーザプリンタによる噴霧処理のステップS21~S25,S27はそれぞれ、
図3に示すステップS1~S5,S7と同一である。ステップS25の後、ステップS26において、制御部8は、第1電圧印加回路73Aを用いて、ノズル電極71Bにノズル電圧V1を印加するとともに、第2電圧印加回路73Bを用いて、対向電極71Cに対向電圧-(V2+B)を印加する。ただし、B>0である。このとき、ノズル電極71Bと対向電極71Cとの間である電極間に生じる電位差は、V1+V2+Bとなる。
【0074】
つまり、制御部8は、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を停止する場合、電圧印加回路73を用いて、対向電極71Cに対して、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を行う際に印加される電圧よりも絶対値が大きい電圧を印加させるとともに、ノズル電極71Bに対して、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を行う際に印加される電圧と絶対値が等しい電圧を印加させる。この後、制御部8は、電圧印加回路73による電圧の印加を停止させる。
【0075】
図8は、本発明の実施形態3において、ノズル71Dの先端付近を示す断面図である。ステップS22においては、ステップS12と同様に、
図8の(A)に示すように、ノズル71Dから定着液Lが噴霧される。ステップS26において、ノズル電極71Bにノズル電圧V1が印加されるとともに、対向電極71Cに対向電圧-(V2+B)が印加されると、
図8の(B)に示すように、ノズル71Dから定着液Lが噴霧される。
【0076】
よって、
図8の(A)及び(B)に示すように、ノズル71Dから噴霧される定着液Lの噴霧幅は、ステップS22よりもステップS26の方が狭くなる。具体的には、
図8の(B)に示す定着液Lの噴霧幅W3は、
図8の(A)に示す定着液Lの噴霧幅W1よりも狭くなる。噴霧幅W1及びW3は、ノズル71Dの先端から所定距離だけ離れた位置での噴霧幅である。
【0077】
これは、ステップS22よりもステップS26の方が、対向電極71Cに対向電圧が強く印加されることにより、定着液Lに対して下方に引っ張られる力が強く働くためである。ステップS27においては、ステップS17と同様に、
図8の(C)に示すように、定着液Lは、表面張力によりノズル71Dの先端から凹んだ状態となる。
【0078】
以上により、実施形態3に係るレーザプリンタでは、対向電極71Cに対して、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を行う際に印加される電圧よりも絶対値が大きい電圧を印加させるとともに、ノズル電極71Bに対して、ノズル71Dによる定着液Lの噴霧を行う際に印加される電圧と絶対値が等しい電圧を印加させる。これにより、ノズル71Dから噴霧される定着液Lの噴霧幅が、用紙Pへ定着液Lを噴霧させる場合よりも狭く噴霧されることになるため、定着液Lが定着装置7の周辺に飛び散らないように定着液Lを噴霧した後、定着液Lの噴霧を停止することができる。
【0079】
〔ソフトウェアによる実現例〕
レーザプリンタ1の制御ブロック(特に制御部8)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0080】
後者の場合、レーザプリンタ1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0081】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1 レーザプリンタ(画像形成装置)
8 制御部
61 感光ドラム
71 噴霧ユニット
71A 筐体
71B ノズル電極
71C 対向電極
71D ノズル
72 供給ユニット
72A 供給管
72G バルブ
72I ポンプ
73 電圧印加回路
TR 転写ローラ