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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104695
(43)【公開日】2022-07-11
(54)【発明の名称】複合吸収体及び高分子吸収剤
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20220704BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220704BHJP
   C08F 8/12 20060101ALI20220704BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
B01J20/26 D
B01J20/28 Z
C08F8/12
C08F220/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219810
(22)【出願日】2020-12-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(72)【発明者】
【氏名】高田 仁
(72)【発明者】
【氏名】岩浦 竜太
【テーマコード(参考)】
4G066
4J100
【Fターム(参考)】
4G066AB03D
4G066AC17B
4G066AC35B
4G066BA01
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA43
4G066DA07
4G066DA13
4G066EA05
4J100AB16Q
4J100AL03P
4J100BA17H
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA39
4J100FA03
4J100FA20
4J100HA08
4J100HB39
4J100JA15
(57)【要約】
【課題】本発明は、吸収効率の高い吸収体を提供するものである。
【解決手段】本発明の複合吸収体(1)は、液体を吸収するための複合吸収体(1)であって、親水性の連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤(4)を含み、前記高分子吸収剤(4)は、40g/cmの荷重を掛けてから5秒経過後の初期吸液量が5g/g以上であり、且つ、20秒以上経過後の吸液量が前記初期吸液量の110%以上であることを特徴とするものである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸収するための複合吸収体であって、
親水性の連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤を含み、
前記高分子吸収剤は、40g/cmの荷重を掛けてから5秒経過後の初期吸液量が5g/g以上であり、且つ、20秒以上経過後の吸液量が前記初期吸液量の110%以上であることを特徴とする複合吸収体。
【請求項2】
前記複合吸収体が高吸収性ポリマーを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の複合吸収体。
【請求項3】
前記高分子吸収剤から前記高吸収性ポリマーへの液移行量が5.0g/g以上であることを特徴とする、請求項2に記載の複合吸収体。
【請求項4】
前記高分子吸収剤は、吸収した液体成分の液吐出し率が65%以上であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の複合吸収体。
【請求項5】
前記高分子吸収剤は、モノリス状の吸収剤であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合吸収体。
【請求項6】
前記高分子吸収剤は、(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を含有する化合物の架橋重合体の加水分解物であり、且つ、少なくとも1個以上の-COONa基を含有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合吸収体。
【請求項7】
親水性の連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤であって、
40g/cmの荷重を掛けてから5秒経過後の初期吸液量が5g/g以上であり、且つ、20秒以上経過後の吸液量が前記初期吸液量の110%以上であることを特徴とする高分子吸収剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合吸収体及び高分子吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶液等の液体の吸収に用いられる吸収体として、高い吸収量を有する高吸収性ポリマー(いわゆる「SAP」)を含むものが知られている。かかる高吸収性ポリマーを含む吸収体は、例えば特許文献1~4に開示されているように、使い捨て紙おむつをはじめとして、結露防止シートや簡易土壌等の土木・建築資材、医薬品等の基材、漏出液体の吸収用資材などの様々な分野に適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-36638号公報
【特許文献2】特開2017-205225号公報
【特許文献3】特開昭63-75016号公報
【特許文献4】特開平8-38893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような高吸収性ポリマー(SAP)は、多量の液体成分を保持することができる(すなわち、保液能力が高い)一方で、吸収速度が遅いため、例えば使い捨て紙おむつのような従来の吸収体においては、一時的に素早く吸液・保持できるようにパルプと併せて用いられている。かかる従来の吸収体においては、液体成分が吸収体内のパルプによって素早く吸収されて、パルプ内に一時的に保持された後、保液能力の高いSAPへ受け渡されて、SAP内で保持されることとなる。
しかしながら、このような従来の吸収体では、パルプの保液能力が低いため、吸収の初期段階で保液可能な限界量を超えてしまうことで、液体が拡散して、SAPによって吸収・保持されにくくなり、結果的に液体の吸収効率が低くなる恐れがあった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、吸収効率の高い吸収体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様(態様1)は、液体を吸収するための複合吸収体であって、
親水性の連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤を含み、
前記高分子吸収剤は、40g/cmの荷重を掛けてから5秒経過後の初期吸液量が5g/g以上であり、且つ、20秒以上経過後の吸液量が前記初期吸液量の110%以上であることを特徴とする複合吸収体である。
【0007】
本態様の複合吸収体は、毛細管現象によって水溶液等の液体を連続空孔に取り込み得る高分子吸収剤が、上記特定の初期吸液量及び20秒以上経過後の吸液量を有していることで、吸収の初期段階における吸液量が大きく、液体を一時的に保持することができるとともに、所定時間経過後においても液体を吸収することができる。
これにより本態様の複合吸収体は、吸収体として高い吸収効率を発揮することができる。
【0008】
また、本発明の別の態様(態様2)では、上記態様1の複合吸収体において、前記複合吸収体が高吸収性ポリマーを更に含むことを特徴とする。
【0009】
本態様の複合吸収体は、上述の高分子吸収剤とともに高吸収性ポリマー(SAP)を含んでいるため、液体を複合吸収体内の高分子吸収剤によって素早く吸収して、一時的に保持した後、保液能力の高いSAPへ受け渡して、SAP内で保持することができる。
これにより本態様の複合吸収体は、より高い吸収効率を発揮することができる。
【0010】
本発明の更に別の態様(態様3)では、上記態様2の複合吸収体において、前記高分子吸収剤から前記高吸収性ポリマーへの液移行量が5.0g/g以上であることを特徴とする。
【0011】
本態様の複合吸収体は、高分子吸収剤からSAPへの液移行量が5.0g/g以上であるため、高分子吸収剤が一時的に保持した液体を、より確実にSAPへ受け渡すことができる。
これにより、本態様の複合吸収体は高い吸収効率を更に確実に発揮することができる。
【0012】
本発明の更に別の態様(態様4)では、上記態様2又は3の複合吸収体において、前記高分子吸収剤は、吸収した液体成分の液吐出し率が65%以上であることを特徴とする。
【0013】
本態様の複合吸収体は、高分子吸収剤の液吐出し率が65%以上であり、高分子吸収剤が吸収した液体成分を放出しやすいため、高分子吸収剤が一時的に保持した液体を、より容易にSAPへ受け渡すことができる。
【0014】
本発明の更に別の態様(態様5)では、上記態様1~4のいずれかの複合吸収体において、前記高分子吸収剤は、モノリス状の吸収剤であることを特徴とする。
【0015】
本態様の複合吸収体は、高分子吸収剤がモノリス状の吸収剤であるため、液体を素早く吸収することができる上、一時的に保持した液体をより着実にSAPへ受け渡すことができる。
【0016】
本発明の更に別の態様(態様6)では、上記態様1~5のいずれかの複合吸収体において、前記高分子吸収剤は、(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を含有する化合物の架橋重合体の加水分解物であり、且つ、少なくとも1個以上の-COONa基を含有することを特徴とする。
【0017】
本態様の複合吸収体は、高分子吸収剤が上記特定の構成を備えていることで、液体を吸収する時に、親水性の連続骨格が伸長しやすく、連続空孔も広がりやすいため、より多くの液体をより素早く連続空孔に取り込むことができ、吸収体として更に優れた吸収効率を発揮することができる。
【0018】
本発明の更に別の態様(態様7)は、親水性の連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤であって、
40g/cmの荷重を掛けてから5秒経過後の初期吸液量が5g/g以上であり、且つ、20秒以上経過後の吸液量が前記初期吸液量の110%以上であることを特徴とする高分子吸収剤である。
【0019】
本態様の高分子吸収剤は、上記特定の初期吸液量及び20秒以上経過後の吸液量を有していることで、吸収の初期段階における吸液量が大きく、液体を一時的に保持することができるとともに、所定時間経過後においても液体を吸収することができる。
したがって、本態様の高分子吸収剤を吸収体に用いると、吸収体は高い吸収効率を発揮することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、吸収効率の高い吸収体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態である複合吸収体1の分解斜視図である。
図2図2は、本発明の別の実施形態である複合吸収体1’の分解斜視図である。
図3図3は、高分子吸収剤の一例である吸収剤Aの製造過程について説明する図である。
図4図4は、吸収剤Aの拡大倍率50倍のSEM写真である。
図5図5は、吸収剤Aの拡大倍率100倍のSEM写真である。
図6図6は、吸収剤Aの拡大倍率500倍のSEM写真である。
図7図7は、吸収剤Aの拡大倍率1000倍のSEM写真である。
図8図8は、吸収剤Aの拡大倍率1500倍のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について、一実施形態である複合吸収体1を用いて、詳細に説明する。
なお、本明細書においては、特に断りのない限り、「展開状態で水平面上に置いた対象物(例えば、複合吸収体等)を、垂直方向の上方側から対象物の厚さ方向に見ること」を、単に「平面視」という。
【0023】
[複合吸収体]
図1は、本発明の一実施形態である複合吸収体1の分解斜視図である。
図1に示す複合吸収体1は、平面視にて略矩形状の外形形状を有しており、厚さ方向において、複合吸収体1の一方側の表面を形成する第1の保持シート2と、複合吸収体1の他方側の表面を形成する第2の保持シート3と、これらのシートの間に位置し且つ高分子吸収剤4及び高吸収性ポリマー5(SAP)の混合物からなる吸液性部材とを、基本構成として備えている。
【0024】
そして、複合吸収体1における吸液性部材は、第1の保持シート2と第2の保持シート3の間に位置する親水性の連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤4と高吸収性ポリマー5とによって、第1の保持シート2を透過してきた液体を吸収・保持し得るように構成されている。
さらに、上述の高分子吸収剤4は、40g/cmの荷重を掛けてから5秒経過後の初期吸液量が5g/g以上であり、且つ、20秒以上経過後の吸液量が初期吸液量の110%以上であるという特有の吸液性を有している。
【0025】
高分子吸収剤4は、毛細管現象によって液体を連続空孔に取り込むことができ、さらに、上記特定の初期吸液量及び20秒以上経過後の吸液量を有していることで、吸収の初期段階における吸液量が大きく、液体を一時的に保持することができるとともに、所定時間経過後においても液体を吸収することができる。
したがって、かかる高分子吸収剤4を含む複合吸収体1は、吸収体として高い吸収効率を発揮することができる。
【0026】
ここで、上記の40g/cmという荷重は、複合吸収体に掛かる一般的な圧力(例えば、体圧等)を想定した荷重であり、また、20秒以上経過後の吸液量は、所定温度条件下で上記荷重を掛けてから20秒経過後からそれ以降のいずれのタイミング(例えば、20秒経過後、60秒経過後、300秒経過後、3600秒経過後等のいずれのタイミング)における吸液量(質量;g/g)を意味する。なお、高分子吸収剤の上記特定荷重下における吸液量の測定方法については後述する。
【0027】
さらに、上記の20秒以上経過後の吸液量が初期吸液量の110%以上とは、初期吸液量である5秒経過後の吸液量を100%としたときに、これに対して110%以上であることを意味する。
【0028】
なお、本発明において、吸液性部材は上述の実施形態の複合吸収体1の態様に限定されず、吸液性部材は、少なくとも上記特有の吸液性を有する高分子吸収剤を含むものであれば、その他の吸液性材料を含んでいても、含んでいなくてもよい。
【0029】
また、本発明においては、複合吸収体の構成も上述の実施形態の複合吸収体1の態様に限定されず、複合吸収体は、例えば、図2に示す本発明の別の実施形態の複合吸収体1’のように、第1の保持シート2と吸液性部材(すなわち、高分子吸収剤4及び高吸収性ポリマー5)との間に位置する親水性繊維シート6を有していてもよい。
【0030】
本発明において、複合吸収体の外形形状や各種寸法、坪量等は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、各種用途や使用態様等に応じた任意の外形形状(例えば、円形状、長円形状、多角形状、砂時計形状、デザイン形状など)や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0031】
以下、本発明の複合吸収体の各種構成部材について、図1に示す実施形態の複合吸収体1を用いて更に詳細に説明する。
【0032】
(保持シート)
図1に示す複合吸収体1において、当該複合吸収体1の一方側の表面を形成する第1の保持シート2は、平面視にて複合吸収体1の外形形状と同様の略矩形状の外形形状を有している。かかる第1の保持シート2は、複合吸収体1に供給された液体を透過させて、内側の吸液性部材に吸収・保持させることができる、液透過性のシート状部材によって形成されている。
【0033】
第1の保持シート2は、内側に配置される吸液性部材に比べて(すなわち、高分子吸収剤4等の配置領域に比べて)、全体的にやや大きいサイズを有しており、周縁部において複合吸収体1の厚さ方向の他方側に位置する第2の保持シート3と、任意の接着剤または熱融着手段等によって接合されている。
【0034】
一方、複合吸収体1の他方側の表面を形成する第2の保持シート3は、平面視にて複合吸収体1の外形形状と同様の略矩形状の外形形状を有している。かかる第2の保持シート3は、内側の吸液性部材に吸収・保持されなかった液体や吸液性部材から滲出した液体が複合吸収体1の外部へ漏出するのを防ぐ、液不透過性のシート状部材によって形成されている。
【0035】
本発明において、第1の保持シート及び第2の保持シートとして用い得る各々のシート状部材は、上述の実施形態のものに限定されず、本発明の複合吸収体は、第1の保持シート及び第2の保持シートのうちの少なくとも一方の保持シートが液透過性のシート状部材によって形成されていればよい。すなわち、本発明の複合吸収体は、第1の保持シート及び第2の保持シートのうちのいずれか一方の保持シートが液不透過性のシート状部材によって形成されていてもよい。
【0036】
なお、保持シートとして液透過性のシート状部材を用いる場合、その液透過性のシート状部材は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、各種用途や使用態様等に応じた任意の液透過性のシート状部材を採用することができる。そのような液透過性のシート状部材の例としては、親水性を有するエアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布等の不織布や織布、編布、多孔の樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0037】
さらに、液透過性のシート状部材として親水性の不織布や織布、編布等(以下、これらを総称して「繊維シート」と称する。)を用いる場合、これらの繊維シートは、単層構造を有していても、2層以上の多層構造を有していてもよい。かかる繊維シートの構成繊維の種類も特に制限されず、例えばセルロース系繊維や親水化処理を施した熱可塑性樹脂繊維などの親水性繊維が挙げられる。これらの繊維は単独で用いても、二種類以上の繊維を併用してもよい。
さらに、繊維シートの構成繊維に用い得るセルロース系繊維としては、例えば、天然セルロース繊維(例えば、コットン等の植物繊維など)や再生セルロース繊維、精製セルロース繊維、半合成セルロース繊維などが挙げられる。また、繊維シートの構成繊維に用い得る熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、6-ナイロン等のポリアミド系樹脂などの公知の熱可塑性樹脂からなる繊維が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。
【0038】
また、保持シートとして液不透過性のシート状部材を用いる場合、その液不透過性のシート状部材は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、各種用途や使用態様等に応じた任意の液不透過性のシート状部材を採用することができる。そのような液不透過性のシート状部材の例としては、任意の疎水性の熱可塑性樹脂繊維(例えば、PE、PP等のポリオレフィン系繊維、PET等のポリエステル系繊維、芯鞘型等の各種複合繊維など)によって形成された疎水性不織布;PEやPP等の疎水性の熱可塑性樹脂によって形成された有孔又は無孔の樹脂フィルム;該樹脂フィルムに不織布を貼り合わせた積層体;SMS不織布等の積層不織布などが挙げられる。
【0039】
本発明において、保持シートの外形形状や各種寸法、坪量等は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、各種用途や使用態様等に応じた任意の外形形状(例えば、円形状、長円形状、多角形状、砂時計形状、デザイン形状など)や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0040】
(吸液性部材)
図1に示す複合吸収体1において、吸液性部材は、上述のとおり第1の保持シート2と第2の保持シート3の間に位置する親水性の連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤4と高吸収性ポリマー5とによって、第1の保持シート2を透過してきた液体を吸収・保持し得るように構成されている。
【0041】
なお、複合吸収体1においては、吸液性部材の高分子吸収剤4及び高吸収性ポリマー5は、上述の第1の保持シート2及び第2の保持シート3の各々と、ホットメルト型接着剤等の任意の接着剤によって接合されているが、本発明の複合吸収体においては、高分子吸収剤は保持シートと接合されていなくてもよい。
【0042】
そして、吸液性部材は、上述のとおり、親水性の連続骨格及び連続空孔を備え且つ上記特有の吸液性を有する高分子吸収剤を、必須の構成成分として含んでいる。この高分子吸収剤については後述する。
【0043】
本発明において、第1の保持シート及び第2の保持シートの間に位置する吸液性部材は、少なくとも上記特有の吸液性を有する高分子吸収剤を含むものであれば、その他の吸液性材料を含んでいても、含んでいなくてもよい。すなわち、吸液性部材は、吸液性材料として上述の高分子吸収剤のみを含むものであっても、上述の高分子吸収剤のほかに、当分野において公知の吸液性材料を更に含むものであってもよい。そのような吸液性材料としては、例えば、親水性繊維や高吸収性ポリマーなどが挙げられ、更に具体的には、パルプ繊維(例えば、粉砕パルプ等)、コットン、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維;アクリル酸ナトリウムコポリマー等の高吸収性ポリマー(SAP)からなる粒状物;これらを任意に組み合わせた混合物などが挙げられる。
例えば、図1に示す実施形態の複合吸収体1では、第1の保持シート2と第2の保持シート3の間に位置する吸液性部材は、親水性の連続骨格及び連続空孔を備え且つ上記特有の吸液性を有する高分子吸収剤4のほかに、高吸収性ポリマー5を含んでいる。
【0044】
なお、本発明において、吸液性部材の外形形状(配置領域の平面視形状)や各種寸法、坪量等は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、各種用途や使用態様等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0045】
(親水性繊維シート)
また、本発明においては、複合吸収体は、例えば、図2に示す別の実施形態の複合吸収体1’のように、第1の保持シート2と吸液性部材(すなわち、高分子吸収剤4及び高吸収性ポリマー5)との間に位置する親水性繊維シート6を有していてもよい。
【0046】
本発明において、複合吸収体に用い得る親水性繊維シートは、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、各種用途や使用態様等に応じた任意の親水性繊維シートを採用することができる。そのような親水性繊維シートの例としては、親水性を有する不織布や織布、編布などが挙げられる。なお、親水性繊維シートは、単層構造を有していても、2層以上の多層構造を有していてもよい。
【0047】
かかる親水性繊維シートの構成繊維の種類も特に制限されず、例えばセルロース系繊維や親水化処理を施した熱可塑性樹脂繊維などの親水性繊維が挙げられる。これらの繊維は単独で用いても、二種類以上の繊維を併用してもよい。
さらに、親水性繊維シートの構成繊維に用い得るセルロース系繊維としては、例えば、天然セルロース繊維(例えば、コットン等の植物繊維など)や再生セルロース繊維、精製セルロース繊維、半合成セルロース繊維などが挙げられる。また、親水性繊維シートの構成繊維に用い得る熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、PE、PP等のオレフィン系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、6-ナイロン等のポリアミド系樹脂などの公知の熱可塑性樹脂からなる繊維が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。
【0048】
本発明において、親水性繊維シートの外形形状や各種寸法、坪量等は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、各種用途や使用態様等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0049】
以下、本発明の複合吸収体に用いられる高分子吸収剤について、更に詳細に説明する。
【0050】
[高分子吸収剤]
高分子吸収剤は、親水性の連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤であって、40g/cmの荷重を掛けてから5秒経過後の初期吸液量が5g/g以上であり、且つ、20秒以上経過後の吸液量が初期吸液量の110%以上であるという特有の吸液性を有するものであれば特に限定されず、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む2個以上のモノマーの架橋重合体の加水分解物であり、官能基に少なくとも1個以上の親水基を有する高分子化合物が挙げられる。より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を含有する化合物の架橋重合体の加水分解物であり、少なくとも-COONa基を有する高分子化合物が挙げられる。かかる高分子吸収剤は、一分子中に少なくとも1個以上の-COONa基を有する有機多孔質体であり、さらに、-COOH基を有していてもよい。多孔質体の骨格中には、-COONa基が略均一に分布している。
【0051】
高分子吸収剤がこのような(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を含有する化合物の架橋重合体の加水分解物であり、且つ、少なくとも1個以上の-COONa基を含有するものであると、後述するように、液体を吸収する時に親水性の連続骨格が伸長しやすくなり、連続空孔も広がりやすくなるため、より多くの液体をより素早く連続空孔に取り込むことができ、吸収体として更に優れた吸収効率を発揮することができる。
【0052】
なお、本明細書において(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルをいう。
【0053】
このような(メタ)アクリル酸エステルと、ジビニルベンゼンとの架橋重合体の加水分解物によって形成される高分子吸収剤においては、少なくとも-COONa基を有する有機ポリマーによって親水性の連続骨格が形成され、骨格間に吸収対象となる液体の吸収場となる連通孔(連続空孔)を有している。
なお、加水分解処理は、架橋重合体の-COOR基(すなわち、カルボン酸エステル基)を-COONa基又は-COOH基にするものであるため(図3を参照)、高分子吸収剤は、-COOR基を有していてもよい。
【0054】
親水性の連続骨格を形成する有機ポリマー中の-COOH基及び-COONa基の存在は、赤外分光光度法及び弱酸性イオン交換基の定量法で分析することにより確認することができる。
【0055】
ここで、図3は、高分子吸収剤の一例である吸収剤Aの製造過程について説明する図である。この図3において、上図は、重合の構成原料を示し、中図は、(メタ)アクリル酸エステルとジビニルベンゼンとの架橋重合体であるモノリスAを示し、下図は、中図のモノリスAに加水分解及び乾燥処理をして得られる吸収剤Aを示している。
【0056】
以下、高分子吸収剤の一例である、(メタ)アクリル酸エステルと、ジビニルベンゼンとの架橋重合体の加水分解物によって形成される吸収剤Aを用いて説明する。
【0057】
なお、高分子吸収剤としては、このような吸収剤Aに限られず、(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を有する化合物の架橋重合体の加水分解物、或いは、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む2種類以上のモノマーの架橋重合体の加水分解物などであってもよい。
但し、高分子吸収剤がモノリス状の吸収剤であると、液体を素早く吸収することができる上、当該高分子吸収剤に一時的に保持した液体をより着実にSAPへ受け渡すことができるという利点がある。
【0058】
なお、以下の説明において、「モノリスA」とは、加水分解処理がなされる前の(メタ)アクリル酸エステルとジビニルベンゼンとの架橋重合体からなる有機多孔質体であり、「モノリス状有機多孔質体」と称することがある。
また、「吸収剤A」は、加水分解処理及び乾燥処理がなされた後の(メタ)アクリル酸エステルとジビニルベンゼンとの架橋重合体(モノリスA)の加水分解物である。なお、以下の説明において、吸収剤Aは乾燥状態のものをいう。
【0059】
まず、吸収剤Aの構造について説明する。
吸収剤Aは、上述のとおり親水性の連続骨格と連続空孔を有している。親水性の連続骨格を有する有機ポリマーである吸収剤Aは、図3に示すように、重合モノマーである(メタ)アクリル酸エステルと、架橋モノマーであるジビニルベンゼンとを架橋重合し、得られた架橋重合体(モノリスA)を更に加水分解することにより得られる。
【0060】
親水性の連続骨格を形成する有機ポリマーは、構成単位として、エチレン基の重合残基(以下、「構成単位X」と称する。)と、ジビニルベンゼンの架橋重合残基(以下、「構成単位Y」と称する。)と、を有する。
さらに、親水性の連続骨格を形成する有機ポリマー中のエチレン基の重合残基(構成単位X)は、カルボン酸エステル基の加水分解により生成する-COONa基、又は-COOH基と-COONa基の両方の基を有する。なお、重合モノマーが(メタ)アクリル酸エステルである場合、エチレン基の重合残基(構成単位X)は、-COONa基、-COOH基及びエステル基を有する。
【0061】
吸収剤Aにおいて、親水性の連続骨格を形成する有機ポリマー中の、ジビニルベンゼンの架橋重合残基(構成単位Y)の割合は、全構成単位に対し、例えば0.1~30モル%であり、好ましくは0.1~20モル%である。例えば、メタクリル酸ブチルを重合モノマーとし、ジビニルベンゼンを架橋モノマーとした吸収剤Aにおいては、親水性の連続骨格を形成する有機ポリマー中の、ジビニルベンゼンの架橋重合残基(構成単位Y)の割合は、全構成単位に対し、例えば約3%であり、好ましくは0.1~10モル%であり、より好ましくは0.3~8モル%である。
なお、親水性の連続骨格を形成する有機ポリマー中のジビニルベンゼンの架橋重合残基の割合が0.1モル%以上であると、吸収剤Aの強度が低下しにくくなり、また、このジビニルベンゼンの架橋重合残基の割合が30モル%以下であると、吸収対象となる液体の吸液量が低下しにくくなる。
【0062】
また、吸収剤Aにおいて、親水性の連続骨格を形成する有機ポリマーは、構成単位X及び構成単位Yのみからなるものであってもよいし、或いは、構成単位X及び構成単位Yに加えて、構成単位X及び構成単位Y以外の構成単位、すなわち(メタ)アクリル酸エステル及びジビニルベンゼン以外のモノマーの重合残基を有していてもよい。
【0063】
構成単位X及び構成単位Y以外の構成単位としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、(メタ)アクリル酸グリシジル、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのモノマーの重合残基が挙げられる。
【0064】
なお、親水性の連続骨格を形成する有機ポリマー中の、構成単位X及び構成単位Y以外の構成単位の割合は、全構成単位に対し、例えば0~50モル%であり、好ましくは0~30モル%である。
【0065】
また、吸収剤Aは、親水性の連続骨格の厚みが0.1~100μmであることが好ましい。吸収剤Aの親水性の連続骨格の厚みが0.1μm以上であると、多孔質体における液体を取り込むための空間(空孔)が吸収時に潰れにくくなり、吸液量が低下しにくくなる。一方、親水性の連続骨格の厚みが100μm以下であると、優れた吸収速度が得られやすくなる。
【0066】
なお、吸収剤Aの親水性の連続骨格の細孔構造は、連続気泡構造であるため、連続骨格の厚みの測定は、電子顕微鏡測定用の試験片に現れる骨格断面を厚みの評価箇所とする。連続骨格は、加水分解後の脱水・乾燥処理で取り除かれる水(水滴)同士の間隔で形成されるため、多角形の形状であることが多い。そのため、連続骨格の厚みは、多角形断面に外接する円の直径(μm)の平均値とする。また、稀に多角形の中に小さな穴が開いている場合もあるが、その場合は、小さな穴を囲んでいる多角形の断面の外接円を測定する。
【0067】
さらに、吸収剤Aは、連続空孔の平均直径が1~1000μmであることが好ましい。吸収剤Aの連続空孔の平均直径が1μm以上であると、多孔質体における液体を取り込むための空間(空孔)が吸収時に潰れにくくなり、吸収速度が低下しにくくなる。一方、連続空孔の平均直径が1000μm以下であると、優れた吸収速度が得られやすくなる。
【0068】
なお、吸収剤Aの連続空孔の平均直径(μm)は、水銀圧入法によって測定することができ、かかる水銀圧入法によって得られた細孔分布曲線の最大値を採用する。連続空孔の平均直径の測定用試料については、吸収剤Aのイオン形によらず、50℃の温度に設定した減圧乾燥器で18時間以上乾燥させたものを試料として用いる。なお、最終到達圧力は0Torrとする。
【0069】
ここで、図4は、吸収剤Aの拡大倍率50倍のSEM写真であり、図5は、吸収剤Aの拡大倍率100倍のSEM写真であり、図6は、吸収剤Aの拡大倍率500倍のSEM写真であり、図7は、吸収剤Aの拡大倍率1000倍のSEM写真であり、さらに、図8は、吸収剤Aの拡大倍率1500倍のSEM写真である。
これら図4図8に示す吸収剤Aは、メタクリル酸ブチルを重合モノマーとし、ジビニルベンゼンを架橋モノマーとする吸収剤の一例であり、それぞれ2mm角の立方体の構造を有している。
【0070】
図4図8に示す吸収剤Aは、多数の気泡状のマクロポアを有しており、さらに、これら気泡状のマクロポア同士が重なる部分を有している。吸収剤Aは、このマクロポア同士が重なる部分が共通の開口(メソポア)となる連続気泡構造を有している、すなわち、連続気泡構造体(連続マクロポア構造体)となっている。
【0071】
このマクロポア同士が重なる部分は、乾燥状態の平均直径が1~1000μm、好ましくは10~200μm、特に好ましくは20~100μmである共通の開口(メソポア)となっており、その大部分がオープンポア構造となっている。メソポアの乾燥状態の平均直径が1μm以上であると、吸収対象となる液体の吸収速度がより良好なものとなる。一方、メソポアの乾燥状態の平均直径が1000μm以下であると、吸収剤Aが脆化しにくくなる。
なお、このようなマクロポア同士の重なりは、1個のマクロポアで1~12個程度、多くのものは3~10個程度である。
【0072】
また、吸収剤Aがこのような連続気泡構造を有することにより、マクロポア群やメソポア群を均一に形成することができるとともに、特開平8-252579号公報などに記載されているような粒子凝集型多孔質体に比べて、細孔容積や比表面積を格段に大きくすることができるという利点がある。
【0073】
なお、吸収剤Aの細孔(空孔)の全細孔容積は、0.5~50mL/gが好ましく、2~30mL/gがより好ましい。吸収剤Aの全細孔容積が0.5mL/g以上であると、多孔質体における液体を取り込むための空間(空孔)が吸収時に潰れにくくなり、吸液量及び吸収速度が低下しにくくなる。一方、吸収剤Aの全細孔容積が50mL/g以下であると、吸収剤Aの強度が低下しにくくなる。
【0074】
なお、全細孔容積は、水銀圧入法で測定することができる。全細孔容積の測定用試料は、吸収剤Aのイオン形によらず、50℃の温度に設定した減圧乾燥器で18時間以上乾燥させたものを用いる。なお、最終到達圧力は0Torrとする。
【0075】
以下、吸収剤Aと液体が接触した場合の様子について説明するが、吸収剤Aを含む吸液性部材ないし複合吸収体と液体が接触した場合についても同様である。
【0076】
まず、図4図8に示す吸収剤Aが備える連続空孔は、複数の細孔(空孔)が互いに連通している空孔であり、外観からも空孔が多数設けられていることを肉眼で視認することができる。液体がこのような多数の空孔を備えた吸収剤Aに接触すると、毛細管現象によって、一定量の液体がこの多数の空孔内に入り込み、吸収剤Aに吸収されることとなる。このとき、吸収剤Aに吸収された液体のうち一部の液体が浸透圧によって親水性の連続骨格内に吸収されて、連続骨格が伸長する。一方、吸収剤Aに吸収された液体のうち親水性の連続骨格内に吸収されなかった液体が、空孔内に留められた状態で吸収されることとなる。
【0077】
このように吸収剤Aは、液体を吸収する時に親水性の連続骨格が伸長する性質を有している。この連続骨格の伸長は、ほぼ全方位にわたって生じる。さらに、このような連続骨格の伸長によって吸収剤Aの外形が大きくなるのに伴い、各空孔の大きさも大きくなる。このようにして空孔の大きさが大きくなると、空孔内の容積が大きくなるため、空孔内に留めることができる液体の量も増えることとなる。つまり、一定量の液体を吸収して大きくなった吸収剤Aは、毛細管現象によって、さらに所定量の液体を拡大した空孔内に吸収することができる。
さらに、吸収剤Aは、毛細管現象によって液体を吸収するため、液体の吸収を素早く行うことができる。
【0078】
また、吸収剤Aに吸収された液体は、親水性の連続骨格内に吸収される液体よりも、空孔内に留まる液体の方が多くなっている。吸収剤Aによる液体の吸収の大部分は、毛細管現象によって空孔内に液体を留めることによって行われるため、空孔の空隙の体積(全細孔容積)の割合である空隙率(吸収剤Aの体積に対する空孔の空隙の体積)が大きいほど、より多くの液体を吸収することができる。なお、この空隙率は85%以上であることが好ましい。
【0079】
例えば、上述の図4図8に示す吸収剤Aの空隙率を求めると、以下のようになる。
まず、水銀圧入法によって得られた吸収剤Aの比表面積は400m/gであり、細孔容積は15.5mL/gである。この細孔容積15.5mL/gは、1gの吸収剤Aの中にある細孔の容積が15.5mLであることを意味する。
ここで、吸収剤Aの比重を仮に1g/mLと仮定すると、1gの吸収剤Aの中で細孔が占める体積、すなわち細孔容積は15.5mLとなり、また、1gの吸収剤Aの体積は1mLとなる。
そうすると、1gの吸収剤Aの全容積(体積)は、15.5+1(mL)となり、そのうちの細孔容積の比率が空隙率となるため、吸収剤Aの空隙率は、15.5/(15.5+1)×100≒94%となる。
【0080】
そして、本発明においては、このような親水性の連続骨格及び連続空孔を備えた吸収剤A、すなわち高分子吸収剤が、例えば粒子状やシート状等の形態で複合吸収体に適用される。
さらに、この高分子吸収剤は、上述のとおり、40g/cmの荷重を掛けてから5秒経過後の初期吸液量が5g/g以上であり、且つ、20秒以上経過後の吸液量が初期吸液量の110%以上であるという特有の吸液性を有している。
【0081】
かかる高分子吸収剤は、毛細管現象によって液体を連続空孔に取り込むことができ、さらに、上記特定の初期吸液量及び20秒以上経過後の吸液量を有していることにより、吸収の初期段階における吸液量が大きく、液体を一時的に保持することができるとともに、所定時間経過後においても液体を吸収することができるようになっている。
これにより、このような高分子吸収剤を含む本発明の複合吸収体は、吸収体として高い吸収効率を発揮することができる。
なお、高分子吸収剤の初期吸液量及び所定時間経過後の吸液量は、次のようにして測定することができる。
【0082】
<特定荷重下における吸液量の測定方法>
(1)0.9%塩化ナトリウム水溶液25gを台座付きのシャーレ(内径:85mm、深さ:20mm、台座配置:底面(内面側)中央部に2個の台座を24mm間隔で平行に配置、台座幅:2mm、台座高さ:2mm、台座長さ:25mm)に入れる。なお、本測定方法は、温度25℃、湿度60%の条件下で行う。
(2)底面にナイロン製メッシュ材((株)NBCメッシュテック製、N-NO255HD 115(規格巾:115cm、255メッシュ/2.54cm、オープニング:57μm、線径:43μm、厚さ:75μm))を貼り付けたプラスチック製の円筒(内径:26mm、外径:32mm、高さ:33mm)の中に、測定用の試料(高分子吸収剤)0.16gを入れて、均一に広げる。なお、測定用の試料(高分子吸収剤)を複合吸収体の製品から回収して用いる場合は、後述する<測定用の試料(高分子吸収剤)の回収方法>に従って得ることができる。
(3)円筒内の試料の上に円柱状のプラスチックピストン(直径:25mm、質量:5g)を載せ、さらに、そのプラスチックピストンの上に所定質量(200g;荷重40g/cm用)の分銅を載せて、円筒の質量(g)を測定する。
(4)試料、プラスチックピストン及び分銅の入った円筒をシャーレの中央部の台座の上に置いて、円筒の底面を上記塩化ナトリウム水溶液に浸し、塩化ナトリウム水溶液を円筒内の試料に吸液させる。
(5)所定時間経過後(例えば、5秒経過後、20秒経過後、60秒経過後、300秒経過後、3600秒経過後等)に円筒を引き上げ、円筒を45°傾けて1分間水切りし、円筒の質量(g)を測定する。
(6)上記(5)で測定した吸液後の円筒の質量から上記(3)で測定した吸液前の円筒の質量を差し引くことにより試料の吸液量(g)を算出し、さらにこの吸液量を試料の質量(=0.16g)で除することにより試料(高分子吸収剤)の単位質量当たりの吸液量(g/g)を得る。
なお、上記(5)の所定時間(すなわち、吸液時間)が5秒の場合の吸液量(g/g)が、「40g/cmの荷重を掛けてから5秒経過後の初期吸液量」となり、上記の吸液時間が20秒以上の場合の吸液量(g/g)が、「20秒以上経過後の吸液量」となる。
【0083】
なお、上述の測定用の試料(高分子吸収剤)を複合吸収体の製品から回収して用いる場合は、次のようにして得ることができる。
【0084】
<測定用の試料(高分子吸収剤)の回収方法>
(1)複合吸収体の製品から保持シート等を剥がして、吸液性部材を露出させる。
(2)露出させた吸液性部材から測定対象物(高分子吸収剤)を含むすべての吸液性材料を落下させ、(粒子状の)測定対象物以外の吸液性材料(例えば、パルプや合成樹脂繊維等)を、ピンセット等を用いて取り除く。
(3)拡大観察手段として顕微鏡又は簡易ルーペを使用し、SAPとの違いを認識できる倍率又は多孔質体の空孔を視認できる倍率で観察しながら、ピンセット等を用いて測定対象物を回収する。なお、簡易ルーペの倍率は、多孔質体の空孔を視認できる倍率であれば特に限定されず、例えば25倍~50倍の倍率が挙げられる。
(4)このようにして回収した測定対象物を各種測定方法における測定用の試料とする。
【0085】
ここで、本発明例としての高分子吸収剤と、比較例としてのパルプ繊維(フラッフパルプ)と、同じく比較例としてのInfinity粒子体と、同じく比較例としての高吸収性ポリマー(SAP)とを用意し、それぞれの特定荷重下(すなわち、40g/cmの荷重下)及び非荷重下(すなわち、0g/cmの荷重下)における初期吸液量及び所定時間経過後の吸液量を測定した。この吸液量の測定結果を下記の表1に示す。
なお、上記のInfinity粒子体とは、P&G社製の吸収剤であり、高分子吸収剤と似た構造(発泡構造)を有しているものの、高分子吸収剤とは異なり、吸液して膨張する機能は備えていない。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示すように、高分子吸収剤は、特定荷重下及び非荷重下のいずれにおいても、パルプ繊維及びInfinity粒子体と同様に、SAPに比べて吸収の初期段階における吸液量が大きくなっている。さらに、20秒以上経過後の吸液量においては、パルプ繊維及びInfinity粒子体が共に飽和量に達しているのに対し、高分子吸収剤は、このような所定時間経過後においても更に吸液量が増大しており、従来のパルプ繊維やInfinity粒子体、SAP等にはない特有の優れた吸液性を有していることがわかる。
【0088】
また、本発明においては、複合吸収体が、上述の図1に示す実施形態のように、高分子吸収剤のほかに従来の高吸収性ポリマー(SAP)を更に含んでいることが好ましい。複合吸収体が高分子吸収剤とともにSAPを含んでいると、液体を複合吸収体内の高分子吸収剤によって素早く吸収して一時的に保持した後、液体を保液能力の高いSAPへ受け渡して、SAP内で保持することができるため、吸収体として、より高い吸収効率を発揮することができる。
【0089】
さらに、複合吸収体がこのような高分子吸収剤とSAPを含む場合、高分子吸収剤からSAPへの液移行量が5.0g/g以上であることが好ましい。高分子吸収剤からSAPへの液移行量が5.0g/g以上であると、高分子吸収剤が一時的に保持した液体を、より確実にSAPへ受け渡すことができるため、吸収体として、高い吸収効率を更に確実に発揮することができる。なお、高分子吸収剤からSAPへの液移行量は、23.0g/g以上がより好ましく、27.0g/g以上が更に好ましく、33.0g/g以上が特に好ましい。
この高分子吸収剤からSAPへの液移行量は、次のようにして測定することができる。
【0090】
<高分子吸収剤からSAPへの液移行量の測定方法>
(1)底面にナイロン製メッシュ材((株)NBCメッシュテック製、N-NO255HD 115(規格巾:115cm、255メッシュ/2.54cm、オープニング:57μm、線径:43μm、厚さ:75μm))を貼り付けたプラスチック製の円筒(内径:60mm、外径:70mm、高さ:52mm、質量:64g)の中に、測定用の試料(高分子吸収剤)を0.3g入れて均一にならし、円筒の質量(g)を測定する。なお、本測定方法は、温度25℃、湿度60%の条件下で行う。また、測定用の試料(高分子吸収剤)を複合吸収体の製品から回収して用いる場合は、前述の<測定用の試料(高分子吸収剤)の回収方法>に従って得ることができる。
(2)シャーレ(内径:85mm、深さ:20mm)の中にプラスチック製の円筒(内径:60mm、外径:70mm、高さ:52mm、質量:64g)を置き、高吸収性ポリマー(SAP)0.3gを円筒内に均等に振り入れた後、円筒を外し、シャーレの質量(g)を測定する。
(3)台座付きのシャーレ(内径:85mm、深さ:20mm、台座配置:底面(内面側)中央部に2個の台座を24mm間隔で平行に配置、台座幅:2mm、台座高さ:2mm、台座長さ:25mm)に0.9%塩化ナトリウム水溶液を60mL入れる。
(4)測定用の試料(高分子吸収剤)の入った円筒を台座付きのシャーレの中央部の台座の上に置いて、円筒の底面を上記塩化ナトリウム水溶液に浸し、塩化ナトリウム水溶液を円筒の中の試料に3分間吸液させる。
(5)3分間の吸液後に円筒を引き上げ、円筒を45°傾けて1分間水切りした後、円筒の質量(g)を測定する。
(6)上記(5)で測定した吸液後の円筒の質量(g)を上記(1)で測定した吸液前の円筒の質量(g)から差し引くことにより試料の吸液量(g)を算出し、さらにこの吸液量を試料の質量(=0.3g)で除することにより試料の単位質量当たりの吸液量(g/g)を得る。
(7)そして、上記(5)で水切りした後の円筒を、SAPを入れたシャーレの上に置き、円筒の中の試料とシャーレ内のSAPとを、円筒の底面(メッシュ材)を介して接触させる。
(8)試料とSAPを接触させてから3分後に、円筒を取り外し、シャーレの質量(g)を測定する。
(9)上記(8)で測定したシャーレの質量(g)を上記(2)で測定したシャーレの質量(g)で差し引くことによりSAPの吸液量(g)を算出し、さらにこの吸液量を試料の質量(=0.3g)で除することにより試料の単位質量当たりのSAPの吸液量(g/g)、すなわち試料の単位質量当たりのSAPへの液移行量(g/g)を得る。
【0091】
さらに、複合吸収体が上述のような高分子吸収剤とSAPを含む場合、高分子吸収剤は、吸収した液体成分の液吐出し率が65%以上であることが好ましい。高分子吸収剤の液吐出し率が65%以上であると、高分子吸収剤が吸収した液体成分を放出しやすいため、高分子吸収剤が一時的に保持した液体を、より容易にSAPへ受け渡すことができる。なお、高分子吸収剤の液吐出し率は、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることが特に好ましい。
この高分子吸収剤の液吐出し率は、次のようにして測定することができる。
【0092】
<高分子吸収剤の液吐出し率の測定方法>
(1)測定用の試料(高分子吸収剤)1gを10cm四方に切断したメッシュ袋((株)NBCメッシュテック製、N-NO255HD 115(規格巾:115cm、255メッシュ/2.54cm、オープニング:57μm、線径:43μm、厚さ:75μm))に封入する。なお、メッシュ袋は、予め質量(g)を測定しておく。また、本測定方法は、温度25℃、湿度60%の条件下で行う。さらに、測定用の試料(高分子吸収剤)を複合吸収体の製品から回収して用いる場合は、前述の<測定用の試料(高分子吸収剤)の回収方法>に従って得ることができる。
(2)試料を封入したメッシュ袋を0.9%塩化ナトリウム水溶液に1時間浸漬する。
(3)メッシュ袋を5分間吊るして水切りした後の質量(g)を測定する。
(4)上記(3)で測定した水切り後のメッシュ袋の質量から試料の質量(=1g)及びメッシュ袋の合計質量を差し引くことにより試料の吸液量(g)を算出し、さらにこの吸液量を試料の質量(=1g)で除することにより試料(高分子吸収剤)の単位質量当たりの吸液量(g/g)を得る。
(5)さらに、上記(3)で水切りした後のメッシュ袋に、150Gで90秒間の遠心処理を施し、その遠心処理後のメッシュ袋の質量(g)を測定する。
(6)上記(5)で測定した遠心処理後のメッシュ袋の質量から試料の質量(=1g)及びメッシュ袋の合計質量を差し引くことにより試料の液吐出し量(g)を算出し、さらにこの液吐出し量を試料の質量(=1g)で除することにより試料(高分子吸収剤)の単位質量当たりの液吐出し量(g/g)を得る。
(7)上記(6)で得た単位質量当たりの液吐出し量を上記(4)で得た単位質量当たりの吸液量で除して100を乗ずることにより、試料(高分子吸収剤)の吸液量に対する液吐出し量、すなわち液吐出し率(%)を得る。
【0093】
以下、このような高分子吸収剤の製造方法について、上述の吸収剤Aを例にして詳細に説明する。
【0094】
[高分子吸収剤の製造方法]
上述の吸収剤Aは、図3に示すように、架橋重合工程と加水分解工程を経ることにより得ることができる。以下、これらの各工程について説明する。
【0095】
(架橋重合工程)
まず、架橋重合用の油溶性モノマーと、架橋性モノマーと、界面活性剤と、水と、必要に応じて重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルションを得る。この油中水滴型エマルションは、油相が連続相となって、その中に水滴が分散したエマルションである。
【0096】
そして、上述の吸収剤Aにおいては、図3の上図に示すように、油溶性モノマーとして、(メタ)アクリル酸エステルであるメタクリル酸ブチルを用い、架橋性モノマーとして、ジビニルベンゼンを用い、界面活性剤としてソルビタンモノオレエートを用い、さらに重合開始剤としてイソブチロニトリルを用いて架橋重合させ、モノリスAを得る。
【0097】
具体的には、吸収剤Aにおいては、図3の上図に示すように、まず、油溶性モノマーとしてのメタクリル酸t-ブチル9.2gと、架橋性モノマーとしてのジビニルベンゼン0.28gと、界面活性剤としてのソルビタンモノオレエート(以下、「SMO」と略す。)1.0gと、重合開始剤としての2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.4gとを混合し、均一に溶解させる。
次に、メタクリル酸t-ブチル/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)の混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて減圧下で撹拌し、油中水滴型エマルションを得る。
【0098】
さらに、このエマルションを速やかに反応容器に移して密封し、静置下で60℃、24時間の条件で重合させる。重合終了後に内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリスAを得る。なお、モノリスAの内部構造をSEMにより観察した結果、モノリスAは、連続気泡構造を有しており、連続骨格の厚みは5.4μmであった。また、水銀圧入法により測定した連続空孔の平均直径は36.2μm、全細孔容積は15.5mL/gであった。
【0099】
なお、全モノマーに対するジビニルベンゼンの含有量は、0.3~10モル%であることが好ましく、0.3~5モル%であることがより好ましい。また、メタアクリル酸ブチルとジビニルベンゼンの合計に対するジビニルベンゼンの割合が0.1~10モル%であることが好ましく、0.3~8モル%であることがより好ましい。なお、上述の吸収剤Aにおいては、メタアクリル酸ブチルとジビニルベンゼンの合計に対するメタアクリル酸ブチルの割合が97.0モル%であり、ジビニルベンゼンの割合が3.0モル%である。
【0100】
界面活性剤の添加量は、油溶性モノマーの種類及び所望のエマルション粒子(マクロポア)の大きさに応じて設定することができ、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2~70%の範囲とすることが好ましい。
【0101】
なお、モノリスAの気泡形状やサイズなどを制御するために、メタノール、ステアリルアルコール等のアルコール;ステアリン酸等のカルボン酸;オクタン、ドデカン、トルエン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルなどを重合系内に共存させてもよい。
【0102】
また、油中水滴型エマルションを形成させる際の混合方法は特に制限されず、例えば各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などの任意の混合方法を採用することができる。
【0103】
さらに、エマルションを形成させるための混合装置も特に制限されず、所望のエマルション粒径に応じて、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等の任意の装置を採用することができ、さらには、被処理物を混合容器に入れ、該混合容器を傾斜させた状態で公転軸の周りに公転させながら自転させることにより被処理物を攪拌混合する、いわゆる遊星式攪拌装置なども用いることができる。
【0104】
また、混合条件についても特に制限されず、所望のエマルション粒径に応じて、攪拌回転数や攪拌時間等を任意に設定することができる。なお、上記の遊星式攪拌装置では、W/Oエマルション中の水滴を均一に生成させることができ、その平均径を幅広い範囲で任意に設定することができる。
【0105】
油中水滴型エマルションの重合条件は、モノマーや開始剤の種類等に応じて様々な条件を採用することができる。例えば、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム等を用いる場合は、不活性雰囲気下の密封容器内において、30~100℃の温度で1~48時間加熱重合すればよく、重合開始剤として過酸化水素-塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム-酸性亜硫酸ナトリウム等を用いる場合は、不活性雰囲気下の密封容器内において、0~30℃の温度で1~48時間重合すればよい。
【0106】
なお、重合終了後は、内容物を取り出して、イソプロパノール等の溶剤でソックスレー抽出を行うことにより未反応モノマーと残留界面活性剤を除去し、図3の中図に示すモノリスAを得ることができる。
【0107】
(加水分解工程)
続いて、モノリスA(架橋重合体)を加水分解して、吸収剤Aを得る工程(加水分解工程)について説明する。
【0108】
まず、モノリスAを、臭化亜鉛を加えたジクロロエタンに浸漬させて40℃で24時間撹拌し、メタノール、4%塩酸、4%水酸化ナトリウム水溶液及び水にこの順で接触させて加水分解を行った後、乾燥させてブロック状の吸収剤Aを得る。さらに、このブロック状の吸収剤Aを所定の大きさに粉砕して粒子状の吸収剤Aを得る。なお、この吸収剤Aの形態は粒子状に限定されず、例えば、乾燥させる際に又は乾燥後にシート状に成形してもよい。
【0109】
また、モノリスAの加水分解の方法は特に制限されず、種々の方法を採用することができる。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフランやイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、メタノールやエタノール等のアルコール系溶媒、酢酸やプロピオン酸等のカルボン酸系溶媒または水を溶媒として、水酸化ナトリウム等の強塩基と接触させる方法、或いは、塩酸等のハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のブレンステッド酸または臭化亜鉛、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化チタン(IV)、塩化セリウム/ヨウ化ナトリウム、ヨウ化マグネシウム等のルイス酸と接触させる方法などが挙げられる。
【0110】
また、吸収剤Aの親水性の連続骨格を形成する有機ポリマーの重合原料のうち、(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸のC1~C10(すなわち、炭素数1~10)のアルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸のC4(すなわち、炭素数4)のアルキルエステルが特に好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸のC4のアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸t-ブチルエステル、(メタ)アクリル酸n-ブチルエステル、(メタ)アクリル酸iso-ブチルエステルが挙げられる。
【0111】
また、架橋重合に用いるモノマーは、(メタ)アクリル酸エステル及びジビニルベンゼンのみであってもよいし、(メタ)アクリル酸エステル及びジビニルベンゼンに加えて、(メタ)アクリル酸エステル及びジビニルベンゼン以外の他のモノマーを含有していてもよい。
後者の場合、他のモノマーとしては、特に限定されないが、例えばスチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、イソブテン、ブタジエン、イソブレン、クロロプレン、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
なお、架橋重合に用いる全モノマー中の、(メタ)アクリル酸エステル及びジビニルベンゼン以外の他のモノマーの割合は、0~80モル%が好ましく、0~50モル%がより好ましい。
【0112】
また、界面活性剤は、上述のソルビタンモノオレエートに限定されず、架橋重合用モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルションを形成し得るものであればよい。そのような界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン基ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン基ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン基ソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤、オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は一種類を単独で用いても、二種類以上を併用してもよい。
【0113】
また、重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。さらに、重合開始剤は、水溶性でも油溶性でもよく、例えば、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素-塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム-酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィドなどが挙げられる。ただし、場合によっては、重合開始剤を添加しなくても加熱のみや光照射のみで重合が進行する系もあるため、そのような系では重合開始剤の添加は不要である。
【0114】
なお、本発明の複合吸収体は、特に限定されないが、例えば、結露防止シートや簡易土壌等の土木・建築資材、医薬品等の基材、漏出液体の吸収用資材などの様々な分野の複合吸収体に適用することができる。したがって、複合吸収体の吸収対象となる液体も特に限定されず、例えば、水や水溶液(例えば、海水など)、酸(例えば、塩酸など)、塩基(例えば、水酸化ナトリウムなど)、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)など)が挙げられる。なお、これらの液体は、2種類以上の液体の混合物であってもよい。
【0115】
また、本発明は、上述の実施形態等に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや代替、変更等が可能である。なお、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数は、当該序数が付された事項を区別するためのものであり、各事項の順序や優先度、重要度等を意味するものではない。
【符号の説明】
【0116】
1 複合吸収体
2 第1の保持シート
3 第2の保持シート
4 高分子吸収剤
5 高吸収性ポリマー(SAP)
6 親水性繊維シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8