(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104715
(43)【公開日】2022-07-11
(54)【発明の名称】眼科情報処理システム、眼科情報処理サーバ、眼科情報処理プログラム、及び眼科情報処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/117 20060101AFI20220704BHJP
A61B 3/103 20060101ALI20220704BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
A61B3/117
A61B3/103
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219844
(22)【出願日】2020-12-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 義嗣
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AA03
4C316AA13
4C316AA24
4C316AA25
4C316AA26
4C316AA27
4C316AB01
4C316AB02
4C316FC14
(57)【要約】
【課題】眼圧測定を用いずに、被検者の負担を軽減して緑内障の早期発見を支援すること。
【解決手段】緑内障のおそれのある被検者を候補者として選別する眼科情報処理システム1であって、眼科装置200により測定された被検者の眼の測定情報を取得する情報取得部111と、情報取得部111が取得した測定情報に含まれる被検者の前房深度に基づいて、被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断する判断部112、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑内障のおそれのある被検者を候補者として選別する眼科情報処理システムであって、
眼科装置により測定された前記被検者の眼の測定情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した前記測定情報に含まれる前記被検者の前房深度に基づいて、前記被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断する判断部、
を備える眼科情報処理システム。
【請求項2】
前記判断部は、前記被検者の前記前房深度が2mm未満である場合に、前記被検者が緑内障のおそれがある候補者であると判断する、請求項1に記載の眼科情報処理システム。
【請求項3】
前記判断部は、さらに前記測定情報に含まれる前記被検者の眼軸長を用いて、前記被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断する、請求項1又は2に記載の眼科情報処理システム。
【請求項4】
前記判断部は、前記被検者の眼軸長が26.5mm以上である場合に、前記被検者が緑内障のおそれがある候補者であると判断する、請求項3に記載の眼科情報処理システム。
【請求項5】
前記判断部は、さらに前記測定情報に含まれる前記被検者の眼の屈折度数を用いて、前記被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断する、請求項1から4のいずれか一項に記載の眼科情報処理システム。
【請求項6】
前記判断部は、前記被検者の眼の屈折度数が-8Dよりも強い屈折度数である場合に、前記被検者が緑内障のおそれがある候補者であると判断する、請求項5に記載の眼科情報処理システム。
【請求項7】
緑内障のおそれのある被検者を候補者として選別する眼科情報処理サーバであって、
眼科装置により測定された前記被検者の眼の測定情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した前記測定情報に含まれる前記被検者の前房深度に基づいて、前記被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断する判断部、
を備える眼科情報処理サーバ。
【請求項8】
緑内障のおそれのある被検者を候補者として選別するための眼科情報処理プログラムであって、
情報取得部が、眼科装置により測定された前記被検者の眼の測定情報を取得する情報取得ステップと、
判断部が、前記情報取得部が取得した前記測定情報に含まれる前記被検者の前房深度に基づいて、前記被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断する判断ステップ、
をコンピュータに実行させるための眼科情報処理プログラム。
【請求項9】
眼科装置とコンピュータを用いて緑内障のおそれのある被検者を候補者として選別する眼科情報処理方法であって、
情報取得部が、眼科装置により測定された前記被検者の眼の測定情報を取得する情報取得ステップと、
判断部が、前記情報取得部が取得した前記測定情報に含まれる前記被検者の前房深度に基づいて、前記被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断する判断ステップ、
を備える眼科情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、緑内障のおそれのある被検者を候補者として選別する眼科情報処理システム、眼科情報処理サーバ、眼科情報処理プログラム、及び眼科情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障の早期発見には、非接触式眼圧計が用いられていた。
【0003】
例えば、従来例として特許文献1に示される非接触式眼圧計が知られている。従来例においては、被検者の被検眼の角膜に気流を吹き付けて角膜を変形させ、角膜の変形を光学的に検出して眼圧を測定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来例のような非接触式眼圧計では、非接触といっても、被検者にとっては気流が角膜に吹き付けられるという負担があった。このような眼圧測定によらず、緑内障の早期発見が求められている。
【0006】
以上により、本発明の目的は、眼圧測定を用いずに、被検者の負担を軽減して緑内障の早期発見を支援することができる、眼科情報処理システム、眼科情報処理サーバ、眼科情報処理プログラム、及び眼科情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本開示に係る眼科情報処理システムは、緑内障のおそれのある被検者を候補者として選別する眼科情報処理システムであって、眼科装置により測定された被検者の眼の測定情報を取得する情報取得部と、情報取得部が取得した測定情報に含まれる被検者の前房深度に基づいて、被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断する判断部、を備える。
【0008】
また、上記した目的を達成するために、本開示に係る眼科情報処理サーバは、緑内障のおそれのある被検者を候補者として選別する眼科情報処理サーバであって、眼科装置により測定された被検者の眼の測定情報を取得する情報取得部と、情報取得部が取得した測定情報に含まれる被検者の前房深度に基づいて、被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断する判断部、を備える。
【0009】
また、上記した目的を達成するために、緑内障のおそれのある被検者を候補者として選別する眼科情報処理プログラムであって、情報取得部が、眼科装置により測定された被検者の眼の測定情報を取得する情報取得ステップと、判断部が、情報取得部が取得した測定情報に含まれる被検者の前房深度に基づいて、被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断する判断ステップ、をコンピュータに実行させる。
【0010】
また、上記した目的を達成するために、眼科装置とコンピュータを用いて緑内障のおそれのある被検者を候補者として選別する眼科情報処理方法であって、情報取得部が、眼科装置により測定された被検者の眼の測定情報を取得する情報取得ステップと、判断部が、情報取得部が取得した測定情報に含まれる被検者の前房深度に基づいて、被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断する判断ステップ、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、眼圧測定を用いずに、被検者の負担を軽減して緑内障の早期発見を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態に係る眼科情報処理システムのシステム構成図である。
【
図3】前房深度、及び眼軸長について説明する模式図である
【
図4】判断部による緑内障のおそれのある者の判断の一例について示す図である。
【
図5】処理の主な流れについて説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(システム構成)
以下、本開示の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る眼科情報処理システム1を示すシステム構成図である。この図においては、眼科情報処理システム1は、情報管理サーバ101、眼科装置200、端末装置300が別異の装置であり、互いにネットワークNWで接続されている構成の例を示しているが、全ての構成を一体の装置としたスタンドアローン型の眼科情報処理システム1としてもよい。あるいは、眼科情報処理システム1による緑内障のおそれある者の選別機能が、眼科装置200の1つのモードとして搭載されていてもよい。ここで眼科装置200は、眼科情報処理システム1により緑内障のおそれのある被検者を候補者として選別するための、前房深度、眼軸長、屈折度数を測定し取得するための測定装置として機能するものである。また、前房深度、眼軸長、屈折度数は他の外部の眼科装置200から取得して記憶しておくことにより、選別の段階では直接的に眼科装置200を必要としない眼科情報処理システム1であってもよい。
【0014】
図1で示す眼科情報処理システム1は、情報管理サーバ101と、ユーザが使用する端末装置300とが、ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。ネットワークNWは、例えばインターネット、VPN(Virtual Private Network)等のネットワークである。説明の簡略化のため
図1では1人のユーザを想定して端末装置300のみを示しているが、情報管理サーバ101はネットワークNWを介して2以上の端末装置、2人以上のユーザと接続可能である。また、一台の端末装置を複数のユーザが使用しても構わない。
【0015】
眼科情報処理システム1は、主に眼科医等が緑内障の診断をするにあたり、眼科装置200により被検者の被検眼を測定し、取得した情報に基づいて緑内障のおそれがある被検者を候補者として自動的に選別するシステムである。緑内障であるか否かの診断は眼科医により行われるものであり、本開示の実施形態に係る眼科情報処理システム1では、その前段階における補助的な選別、いわゆるスクリーニングを行うためのシステムである。眼科情報処理システム1の運営業者は、当該システムを用いて眼科医等の診断等を支援するサービスを提供することが考えられる。運営業者は、複数の眼科医等に対してサービスを提供することができる。情報管理サーバ101は、眼科情報処理システム1の運営者が管理を行い、眼科医等が端末装置300や眼科装置200を使用するものである。なお、情報管理サーバ101は、眼科医自身が管理を行っても構わない。後述する前房深度、眼軸長及び屈折度数に関する測定情報を取得するための装置は、眼科装置200と同様の測定機能を有する測定装置であってもよく、測定主体、測定場所は眼科に限られず、例えば眼鏡販売店のような施設に設置された測定装置により行っても構わない。
【0016】
端末装置300は、例えばPCや、スマートフォン、タブレットPC、及び携帯電話のような装置である。端末装置300は、端末にインストールされた専用のアプリケーションソフトウェアによって情報管理サーバ101にアクセスしてもよい。また、情報管理サーバ101が提供する動作環境(API(アプリケーションプログラミングインタフェース)、クラウドサービス、プラットフォーム等)を利用して情報管理サーバ101にアクセスしてもよい。
【0017】
入力部320は、例えば、キーボードや、マウス、トラックボール、タッチパッド等のユーザが操作することにより情報の入力や選択が可能な装置である。また、スマートフォンやタブレット、PCにおける液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の出力部310と一体であるタッチパネルでもよい。入力部320は、音声入力装置であっても構わない。
【0018】
出力部310は、例えば情報等をユーザに表示する画面部を有するディスプレイ装置等である。端末装置300と独立したディスプレイ装置であっても構わないし、スマートフォンやタブレットにおける液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置であっても構わない。
【0019】
眼科装置200は、主に前房深度、眼軸長及び屈折度数に関する測定情報を取得するためのものである。ここに示す眼科装置200の例は、前房深度、眼軸長、屈折度数の全ての項目について、同一の装置により測定することができるものである。これらの全ての測定情報の測定能を有する眼科装置200を眼科情報処理システム1の構成として備えていることで、被検者の被検眼の測定情報を取得し、直ちに緑内障のおそれがある者の選別が可能になるという点で好適である。
【0020】
眼科装置200は、被検者の眼の前房深度、眼軸長及び屈折度数だけではなく、瞳孔間距離、角膜曲率、角膜径等の他の複数の項目も測定することができるものであってよい。前房深度、及び眼軸長の測定は、当該眼科装置200に含まれている、例えば光干渉断層計(OCT)や、非接触式光学式眼軸長測定装置の機能によって行うことができる。屈折度数の測定は、当該眼科装置200に含まれている、例えばオートレフラクトメータの機能によって行うことができる。これらの複数の測定機能を一の測定装置により備えている眼科装置200を用いることが好適である。
【0021】
そのような眼科装置200の概略構成について
図2に示す。眼科装置200は、眼科装置処理部210、眼科装置演算処理部211、眼内距離算出部212、眼屈折力算出部213、眼科装置制御部216、Zアライメント系221、XYアライメント系222、ケラト測定系230、レフ測定投射系241、レフ測定受光系242、OCT光学系250、固視撮影系260、前眼部観察系270、眼科装置移動機構291、眼科装置通信部292、眼科装置表示部293、眼科装置操作部294、を備えている。なお、本開示の眼科情報処理システム1の機能と関連性の低い構成、及び細部については説明を省略する。
【0022】
眼内距離算出部212は、OCT光学系250により得られた干渉光の検出結果を解析することにより、眼内の所定部位に相当する干渉光の検出結果のピーク位置を特定し、特定したピーク位置間の距離に基づいて、被検者の被検眼の前房深度や眼軸長を求めることができる。
【0023】
眼屈折力算出部213は、レフ測定投射系241により眼底に投影されたリング状光束(リング状の測定パターン)の戻り光をレフ測定受光系242の撮像素子が受光することにより得られたリング像(パターン像)を解析する。これにより、屈折度数を求めることができる。
【0024】
情報管理サーバ101は、情報取得部111、判断部112、情報記憶部121を備えている。
【0025】
情報記憶部121は、被検者ID及びこれに紐づけられる前房深度、眼軸長、屈折度数を記憶している。
【0026】
被検者IDは氏名、保険証番号、病院固有の診察券に診察券番号等を示す情報であって構わない。前房深度、眼軸長、屈折度数は、被検者の左右眼ごとのデータを含んでいる。これらのデータに関する測定タイミング情報は、すなわち、被検者の眼軸長を測定した、年月日を含む測定日、測定日における時刻等を示す情報を含んでいて構わない。
【0027】
図3は前房深度、及び眼軸長について説明する模式図である。前房深度は、この図に示すように角膜21から水晶体22までの距離であり、その単位は例えば(mm)である。眼軸長は、角膜21から網膜までの距離であり、その単位は同様に(mm)や(cm)である。屈折度数は、ディオプトリ(D)の単位によって表現され、一般的に値が大きくなるほど屈折度が強いものとして扱う。例えば-2Dよりも-4Dの方が屈折度は強いということになる。
【0028】
(緑内障のおそれのある被検者の選別機能)
以下では、各構成を説明しながら本開示の緑内障のおそれのある被検者の選別機能について説明する。
【0029】
情報取得部111は、眼科装置200により測定された被検者の眼の測定情報を取得する機能を有する。例えば、測定の結果、眼科装置演算処理部211の眼内距離算出部212によって算出された前房深度、眼軸長、及び眼屈折力算出部213によって算出された屈折度数について、眼科装置通信部292、ネットワークNW等を介して情報を取得する。
【0030】
判断部112は、情報取得部111が取得した測定情報に含まれる、前房深度、眼軸長、屈折度数に基づいて、被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断する機能を有する。
【0031】
より具体的には、眼科装置200により測定した、被検者の被検眼の前房深度、眼軸長、屈折度数の数値と、所定の基準数値とを比較して、各項目についての問題の有無を判断し、各項目の問題の有無の組み合わせに基づいて、被検者が緑内障のおそれがある、緑内障候補者であるかを判断する。眼科医等は、その判断を参考にして緑内障のおそれがあるかを診断し、経過観察をするか、他の検査を行うか、治療をするかなど、次のアクションをとることができる。
【0032】
各項目と、問題があるか否かの基準の一例について説明する。判断部112は、各項目の中で被検者の中で前房深度に問題があるかを最も重要視する。例えば、前房深度の基準は、前房深度が2.0mm未満であるか否かというものが好ましい。各項目における基準数値は適宜設定することができるが、このような適切な定量的な基準を設けることにより、より明確に判断することができる。前房深度が2.0mm未満など一定値よりも小さく(浅く)なると、眼圧が高まり、緑内障を発症する可能性が高まるためである。判断部112は、被検者の前房深度と基準値の前房深度とを比較して、被検者の前房深度が小さい(浅い)場合には、問題ありと判断した情報を出力する。前房深度についてはこの項目についてのみ問題がある場合でも、緑内障のおそれがある者として判断してもよい。
【0033】
また、他の項目として、眼軸長に問題があるか否かも参考にする。例えば、眼軸長の基準は、眼軸長が26.5mm以上であるか否かというものが好ましい。眼軸長が26.5mm以上であるなど、一定値よりも大きく(長く)なると、近視が進行しているということであり、近視は緑内障の危険因子の1つと考えられているからである。判断部112は、被検者の眼軸長と基準値の眼軸長とを比較して、被検者の眼軸長が大きい(長い)場合には、問題ありと判断した情報を出力する。眼軸長については、前房深度を最も重要な要因として、その判断をより確実なものにするための、補助項目として用いることが好ましい。したがって、この項目についてのみ問題がある場合に、緑内障のおそれがある者として判断することは好ましくない。前房深度と眼軸長を合わせて判断を行うことがより好ましく、例えば、前房深度に問題あり、かつ眼軸長についても問題あり、の場合に、総合的に緑内障のおそれのある者として判断するようにしてもよい。このように、前房深度以外の他の項目も参考にすることにより、より精度よく緑内障のおそれのある者を選別することができる。
【0034】
また、他の項目として、屈折度数に問題があるか否かも参考にする。例えば屈折度数の基準は、屈折度数が-8Dよりも強い屈折を示すか否かというものが好ましい。屈折度数が-8Dであるなど、所定の基準よりも屈折度が大きく(強く)なると、近視が進行しているということであり、近視は緑内障の危険因子の1つと考えられているからである。判断部112は、被検者の屈折度数と基準値の屈折度数とを比較して、被検者の屈折度数が強い場合には、問題ありと判断した情報を出力する。屈折度数についても眼軸長と同様に、前房深度を最も重要な要因として、その判断をより確実なものにするための、補助項目として用いることが好ましい。したがって、この項目についてのみ問題がある場合に、緑内障のおそれがある者として判断することは好ましくない。前房深度と屈折度数を合わせて判断を行うこと、又は前房深度と眼軸長と屈折同数を合わせて判断を行うことが好ましい。例えば、前房深度に問題あり、かつ屈折度数についても問題あり、の場合に、総合的に緑内障のおそれのある者として判断するようにしてもよい。または、前房深度に問題あり、かつ眼軸長についても問題あり、かつ屈折度数についても問題あり、の場合に、総合的に緑内障のおそれのある者として判断するようにしてもよい。
【0035】
図4は、判断部112による、前房深度、眼軸長、屈折度数を用いた緑内障のおそれのある者の判断のロジックの一例について示す図である。本開示の実施形態に係る眼科情報処理システム、眼科情報処理サーバ、眼科情報処理プログラム、眼科情報処理方法においては、眼科装置200によって測定される項目をそのまま用いて緑内障のおそれのある者かどうかを判断することができる。特に、前房深度、眼軸長、屈折度数の全てを同一の装置で測定することができる眼科装置200を用いることにより、複数の項目により緑内障のおそれがあるか否かを判断することができる。そのような複数の項目を用いて判断をする場合の一例について説明する。
【0036】
この図に示すように前房深度に加えて、眼軸長又は屈折度数のいずれか1項目を加えた2項目で判断する場合には、例えば、例2-1や例2-3のように、より確実に判断するために、前房深度に加えて、眼軸長又は屈折度数のいずれかに問題ありの場合に、緑内障のおそれありと判断してもよい。前房深度のみならず、近視に関する要因を考慮して判断精度を高めることができる。また、例2-2や例2-4のように、眼軸長又は屈折度数のいずれか1項目に問題ありの場合でも、前房深度に問題がなければ、現時点では緑内障のおそれがある候補者として選別せず、経過観察とする、という判断をしてもよい。前房深度に問題がなく、近視に関する項目に問題がある場合は、近視であるにすぎない可能性が考えられるためである。
【0037】
また、前房深度、眼軸長、屈折度数の3項目全てを用いて判断する場合には、例3-1、例3-2、例3-3に示すように、3項目の比較結果に基づいて、緑内障のおそれが大~小など、段階的な評価をもって判断してもよい。例えば例3-1においては、前房深度に加えて、眼軸長と屈折度数にも問題があるとのことで、軸性近視と関連のある眼軸長と、屈折性近視と関連のある屈折度数の双方について参照していることにより、判断の精度を高めている。また、例3-2、3-3においては、補助項目としては、屈折度数よりも眼軸長を重視するということで、例3-3のほうがおそれは小さいという判断をするようにしてもよい。また、例3-4のように、眼軸長及び屈折度数の双方に問題ありの場合でも、前房深度に問題がなければ、現時点では緑内障のおそれがある候補者として選別せず、経過観察とする、という判断をしてもよい。同様に前房深度に問題がなく、近視に関する項目に問題がある場合は、近視であるにすぎない可能性が考えられるためである。
【0038】
(処理の流れ)
次に、
図5は、本開示の実施形態に係る眼科情報処理システム1の情報管理サーバ101において実行される処理の主な流れについて説明するフローチャートが示されており、以下、同フローチャートに沿って眼科情報処理方法を説明する。なお、当該フローチャートは一例であり、眼科情報処理方法は当該フローチャートの処理に限られるものではない。
【0039】
ステップS101において、眼科装置200が被検者の被検眼を測定し測定情報を入手する。
【0040】
ステップS102において、情報取得部111が、眼科装置200により測定された被検者の被検眼の測定情報を取得する。
【0041】
ステップS103において、判断部112が、情報取得部111が取得した、被検者被検眼の前房深度、眼軸長、屈折度数に基づいて、被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断する。
【0042】
ステップS104において、判断部112が判断した、被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かの結果について、端末装置300の出力部310に出力する。この出力された情報を参考にし、眼科医等が被検者についての処置を検討することができる。
【0043】
このように、本開示の実施形態に係る眼科情報処理システム、眼科情報処理サーバ、眼科情報処理プログラム、眼科情報処理方法によれば、緑内障のおそれのある被検者を候補者として選別する眼科情報処理システム1であって、眼科装置200により測定された被検者の眼の測定情報を取得する情報取得部111と、情報取得部111が取得した測定情報に含まれる被検者の前房深度に基づいて、被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断する判断部112、を備えることにより、従来例のような眼圧測定を用いずに、被検者の負担を軽減して緑内障の早期発見を支援することができる。
【0044】
また、判断部112は、被検者の前房深度が2mm未満である場合に、被検者が緑内障のおそれがある候補者であると判断することにより、適切な定量的な基準を設けられ、より明確に判断することができる。
【0045】
また、判断部112は、さらに測定情報に含まれる被検者の眼軸長を用いて、被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断することにより、前房深度以外の他の項目も参考にすることで、より精度よく緑内障のおそれのある者を選別することができる。
【0046】
また、判断部112は、被検者の眼軸長が26.5mm以上である場合に、被検者が緑内障のおそれがある候補者であると判断することにより、適切な定量的な基準を設けられ、より明確に判断することができる。
【0047】
また、判断部112は、さらに測定情報に含まれる被検者の眼の屈折度数を用いて、被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断することにより、前房深度以外の他の項目も参考にすることで、より精度よく緑内障のおそれのある者を選別することができる。
【0048】
また、判断部112は、被検者の眼の屈折度数が-8Dよりも強い屈折度数である場合に、被検者が緑内障のおそれがある候補者であると判断することにより、適切な定量的な基準を設けられ、より明確に判断することができる。
【0049】
(プログラム)
図6は、コンピュータ801の構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ801は、CPU802、主記憶装置803、補助記憶装置804、インタフェース805を備える。
【0050】
ここで、各実施形態に係る情報管理サーバ101を構成する各機能を実現するためのプログラムの詳細について説明する。
【0051】
情報管理サーバ101は、コンピュータ801に実装される。そして、情報管理サーバ101の各構成要素の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置804に記憶される。CPU802は、プログラムを補助記憶装置804から読みだして主記憶装置803に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU802は、プログラムに従って、上記した記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置803に確保する。
【0052】
当該プログラムは、具体的には、コンピュータ801において、緑内障のある被検者を候補者として選別する眼科情報処理プログラムであって、情報取得部111が、眼科装置200により測定された前記被検者の眼の測定情報を取得する情報取得ステップと、判断部112が、情報取得部111が取得した測定情報に含まれる被検者の前房深度に基づいて、被検者が緑内障のおそれがある候補者であるか否かを判断する判断ステップ、をコンピュータに実行させる機能を実現するプログラムである。
【0053】
なお、補助記憶装置804は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース805を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムがネットワークNWを介してコンピュータ801に配信される場合、配信を受けたコンピュータ801が当該プログラムを主記憶装置803に展開し、上記処理を実行してもよい。
【0054】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
更に、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置804に既に記憶される他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0055】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
101 情報管理サーバ
111 情報取得部
112 判断部
121 情報記憶部
200 眼科装置
210 眼科装置処理部
211 眼科装置演算処理部
212 眼内距離算出部
213 眼屈折力算出部
216 眼科装置制御部
221 Zアライメント系
222 XYアライメント系
230 ケラト測定系
241 レフ測定投射系
242 レフ測定受光系
250 OCT光学系
260 固視投影系
270 前眼部観察系
291 眼科装置移動機構
292 眼科装置通信部
293 眼科装置表示部
294 眼科装置操作部
300 端末装置
310 出力部
320 入力部
NW ネットワーク