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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104746
(43)【公開日】2022-07-11
(54)【発明の名称】抗がん剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/47 20060101AFI20220704BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
A61K31/47
A61P35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219884
(22)【出願日】2020-12-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、次世代がん医療創生研究事業「TERT-RdRP阻害剤によるがん治療法の開発」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(71)【出願人】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100109542
【弁理士】
【氏名又は名称】田伏 英治
(72)【発明者】
【氏名】増富 健吉
(72)【発明者】
【氏名】山下 太郎
(72)【発明者】
【氏名】金子 周一
(72)【発明者】
【氏名】安川 麻美
(72)【発明者】
【氏名】本間 光貴
(72)【発明者】
【氏名】小山 裕雄
(72)【発明者】
【氏名】深見 竹広
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、がんの予防または治療剤を提供することにある。
【解決手段】式(I):
(式中、各記号は明細書に記載の通りである。)
で表される化合物またはその塩を有効成分として含有する、がんの予防または治療剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、m個のRおよびn個のRは、互いに独立して、ハロゲン原子を示し、および
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数を示す。)
で表される化合物またはその塩を有効成分として含有する、がんの予防または治療剤。
【請求項2】
式(I)で表される化合物またはその塩が、式(Ia):
【化2】
(式中、R1a、R1b、およびR2aは、互いに独立して、ハロゲン原子を示し、および
2bは、水素原子またはハロゲン原子を示す。)
で表される化合物またはその塩である、請求項1に記載のがんの予防または治療剤。
【請求項3】
式(I)で表される化合物またはその塩が、以下の式:(RK-X)、(RK-Y)または(RK-Z):
【化3】
で表される化合物から選択される化合物またはその塩である、請求項1に記載のがんの予防または治療剤。
【請求項4】
がんが、固形がんである、請求項1~3に記載のがんの予防または治療剤。
【請求項5】
がんが、難治性固形がんである、請求項4に記載のがんの予防または治療剤。
【請求項6】
ヒトに投与するための、請求項1~5に記載のがんの予防または治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNA依存性RNAポリメラーゼ(以下、RdRPと表記する場合がある)の阻害作用を有するスルホンアミド誘導体を有効成分として含有するがん(特に難治性固形がん)の予防または治療剤に関するものであり、医薬の分野において有用である。
【背景技術】
【0002】
ヒトテロメレース逆転写酵素(human telomerase reverse transcriptase: hTERT)はヒトのがんの90%以上に高いレベルで発現が見られる一方で正常細胞では極めて発現量が低いことより抗がん剤開発の極めて有望な分子標的として考えられてきた。その一方で、世界的にも過去20年ほどに渡ってテロメレース阻害剤が抗がん剤として精力的に開発され臨床に導入する努力が進められたが、いずれも予想されたほどの成果のある抗がん剤として出回るには至っていない。
hTERTは、名前のごとくRNA dependent DNA polymerase(reverse transcriptase:RT)として同定された。その後遺伝学的系統樹解析や構造学的にはRTよりもむしろRNA dependent RNA polymerase(RdRP)と近縁にあることが予測されてはいたものの、長らくhTERT-RdRP活性の立証はなされなかったが、増富らは、hTERTはRT活性以外にRdRP活性を有することを報告した(非特許文献1)。さらに、その後の研究で、S期に合成されるテロメレース逆転写酵素複合体とは全く異なる複合体により、hTERTがM期特異的にRNA dependent RNA Polymerase(RdRP)活性を保証し、このhTERT-RdRPが、がん幹細胞の機能維持に関わっていることが見出された(非特許文献2および3)。
以上の通り、RT活性を保証する複合体とRdRP活性を保証する複合体が異なることから、従来のhTERT-RTを狙ったテロメレース阻害剤開発ではRdRP活性は依然として阻害されないため、期待したほどの抗腫瘍効果が得られなかったものと考えられる。従って、hTERT-RdRP阻害剤によるがん幹細胞を標的とした新たな治療法の確立が待たれていた。
【0003】
特許文献1には、糖尿病等の治療に用い得るPPAR-γ活性調節用化合物としてのスルホンアミド誘導体が記載されているが、RdRP阻害作用を有することについては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2001/00579号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nature 2009;461:230-235
【非特許文献2】PNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America) 2011;108:20388-20393
【非特許文献3】MCB(Molecular and Cellular Biology) 2014;34:1576-1593
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、RdRP阻害活性を有する化合物を有効成分として含有する優れたがんの予防または治療剤を提供することにより、上記の課題の解決を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる状況下、鋭意検討を重ねた結果、特定構造のスルホンアミド誘導体が、RdRP阻害作用を有し、がんの予防または治療に有効であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
[1]式(I):
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、m個のRおよびn個のRは、互いに独立して、ハロゲン原子を示し、および
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数を示す。)
で表される化合物またはその塩を有効成分として含有する、がんの予防または治療剤。
[2]式(I)で表される化合物またはその塩が、式(Ia):
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R1a、R1b、およびR2aは、互いに独立して、ハロゲン原子を示し、および
2bは、水素原子またはハロゲン原子を示す。)
で表される化合物またはその塩である、請求項1に記載のがんの予防または治療剤。
[3]式(I)で表される化合物またはその塩が、以下の式:(RK-X)、(RK-Y)または(RK-Z):
【0013】
【化3】
【0014】
で表される化合物から選択される化合物またはその塩である、上記[1]または[2]に記載のがんの予防または治療剤。
[4]がんが固形がんである、上記[1]~[3]のいずれかに記載のがんの予防または治療剤。
[5]がんが、難治性固形がんである、上記[1]~[3]のいずれかに記載のがんの予防または治療剤。
[6]ヒトに投与するための、上記[1]~[5]のいずれかに記載のがんの予防または治療剤。
【0015】
[7]式(I):
【0016】
【化4】
【0017】
(式中、m個のRおよびn個のRは、互いに独立して、ハロゲン原子を示し、および
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数を示す。)
で表される化合物またはその塩の有効量を、その投与を必要とする哺乳動物に投与することを含む、がんの予防または治療方法。
(*)好適な化合物(I)、好適な対象がん、および好適な対象者については、上記[2]~[6]を参照することができる。
【0018】
[8]がんの予防または治療における使用のための、式(I):
【0019】
【化5】
【0020】
(式中、m個のRおよびn個のRは、互いに独立して、ハロゲン原子を示し、および
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数を示す。)
で表される化合物またはその塩。
(*)好適な化合物(I)、好適な対象がん、および好適な対象者については、上記[2]~[6]を参照することができる。
【0021】
[9]がんの予防または治療のための医薬を製造するための、式(I):
【0022】
【化6】
【0023】
(式中、m個のRおよびn個のRは、互いに独立して、ハロゲン原子を示し、および
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数を示す。)
で表される化合物またはその塩の使用。
(*)好適な化合物(I)、好適な対象がん、および好適な対象者については、上記[2]~[6]を参照することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、がんの予防または治療に有効かつ安全に使用可能な薬剤が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】後記の試験例1で評価された、RK-X、RK-Y、RK-Z各化合物のhTERT-RdRP阻害活性を示す。
図2A】後記の試験例2で評価された、RK-Xの腫瘍細胞の増殖阻害活性を示す。
図2B】後記の試験例2で評価された、RK-Xの肝がん細胞及び正常細胞に対する増殖阻害活性を示す。
図3A】後記の試験例3における各試験条件下での、マウスから取り出した腫瘍を示す。
図3B】後記の試験例3における各試験条件下での、マウスから取り出した腫瘍体積の経日変化を示す。
図3C】後記の試験例3における各試験条件下での、マウスから取り出した腫瘍サイズを示す。
図3D】後記の試験例3における各試験条件下での、マウスから取り出した腫瘍のRdRP活性の平均値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、RdRP阻害作用を有する前記式(I)で表される特定構造のスルホンアミド誘導体またはその塩(以下、両者を総称して「化合物(I)」と表記する場合がある)を有効成分として含有する、がんの予防または治療剤;有効量の化合物(I)をその投与を必要とする哺乳動物に投与することを含む、がんの予防または治療方法;がんの予防または治療における使用のための、化合物(I);がんの予防または治療のための医薬を製造するための、化合物(I)の使用;に関する。
【0027】
以下、上記した本発明について詳述するが、特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味をもつ。
【0028】
(本発明の化合物(I)について)
本発明の化合物(I)は、以下の式:
【0029】
【化7】
【0030】
(式中、m個のRおよびn個のRは、互いに独立して、ハロゲン原子を示し、および
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数を示す。)
で表される化合物またはその塩である。
【0031】
上記化合物(I)において、好ましいものは、以下の式(Ia):
【0032】
【化8】
【0033】
(式中、R1a、R1b、およびR2aは、互いに独立して、ハロゲン原子を示し、および
2bは、水素原子またはハロゲン原子を示す。)
で表される化合物またはその塩である。
【0034】
上記各式中、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0035】
ここで、より好ましい化合物(I)は、以下の式(RK-X)、(RK-Y)または(RK-Z)で表される化合物またはその塩である。
【0036】
【化9】
【0037】
本発明の化合物(I)またはその塩は、当業者であれば、例えば、国際公開第2001/00579号に記載された方法(例えば、実施例178、180等)や当技術分野で公知の方法を適宜活用して製造し、本発明の実施のために使用することができる。また、化合物(I)またはその塩が市販されている場合は、購入して使用することもできる。
【0038】
本発明の実施に当たっては、化合物(I)は、遊離の形態、またはその塩(好ましくは、その医薬として許容される塩)の形態のいずれにおいても使用することができる。使用される個々の化合物(I)の特性を踏まえて当業者であれば両形態から適宜選択して本発明を実施することができる。
医薬として許容される塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、等の無機酸との塩、酢酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トシル酸塩、マレイン酸塩、等の有機酸との塩;グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等のアミノ酸との塩等が挙げられる。
【0039】
本発明を実施するに当たっては、化合物(I)はそのプロドラッグ(以下、両者を総称して、「本発明化合物」と表記する場合がある)の形態で使用することもできる。当業者であれば、適宜当該プロドラッグを設計することができ、また当該プロドラッグは自体公知の方法によって製造することができる。当該プロドラッグは、広川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻分子設計163頁から198頁に記載されているような、生理的条件で目的とする化合物(I)に変化するものであってもよい。
【0040】
(本発明のがんについて)
本発明においては、各種のがんがその予防・治療の対象となり得るが、より有効なものとしては、固形がんが挙げられる。かかる固形がんとしては、肺がん、胃がん、肝がん、膵がん、大腸がん、乳がん等の上皮細胞がん;肉腫(骨肉腫、軟骨肉腫、脂肪肉腫、神経内分泌腫瘍、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫等)等の非上皮細胞がん(特に、肝がん、膵がん、肉腫)が挙げられる。これらのがんの内、難治性のがんにも本発明は有効であることが期待される。
【0041】
本明細書中、「予防」には、疾患(病態の全体、もしくは1つまたは複数の病態)の発症の防止、および当該疾患の発症の遅延が含まれる。「予防有効量」とは、かかる目的を達成するに足る本発明化合物の用量をいう。
【0042】
本明細書において、「治療」には、疾患(病態の全体、もしくは1つまたは複数の病態)の治癒、当該疾患の改善、および当該疾患の重篤度の進展の抑制が含まれる。「治療有効量」とは、かかる目的を達成するに足る本発明化合物の用量をいう。
【0043】
(投与形態について)
本発明を実施するにあたっては、本発明化合物は、単独の形態で、または本発明化合物を有効成分として、医薬として許容される担体とともに含む医薬組成物の形態でのいずれの形態(本明細書中「医薬」と総称する場合がある)でも使用することができる。
【0044】
かかる医薬組成物としては、例えば錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠、舌下錠、口腔内崩壊錠、バッカル錠等を含む)、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤を含む)、トローチ剤、シロップ剤、液剤、乳剤、懸濁剤、放出制御製剤(例、速放性製剤、徐放性製剤、徐放性マイクロカプセル剤)、エアゾール剤、フィルム剤(例、口腔内崩壊フィルム、口腔粘膜貼付フィルム)、注射剤(例、皮下注射剤、静脈内注射剤(例、ボーラス)、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、経皮吸収型製剤、軟膏剤、ローション剤、貼付剤、坐剤(例、肛門坐剤、膣坐剤)、ペレット、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)、点眼剤等が挙げられる。
【0045】
本明細書において、「医薬として許容される担体」としては、製剤技術の分野で慣用されている各種の担体を用いることができる。
【0046】
「医薬として許容される担体」の具体例としては、例えば、固形製剤においては、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、コロイドシリカ等)、結合剤(例えば、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)および崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L-ヒドロキシプロピルセルロース等)、等を用いることができる。
【0047】
液状製剤においては、溶剤(例えば、注射用水、等張食塩水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、等)、溶解補助剤(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等)、懸濁化剤(例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等)、等張化剤(例えば、ブドウ糖、D-ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等)、緩衝剤(例えば、リン酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等)、および無痛化剤(例えば、ベンジルアルコール等)、等を用いることができる。
【0048】
必要により、防腐剤(例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、ソルビン酸等)、抗酸化剤(例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α-トコフェロール等)、着色剤、甘味剤等の製剤添加物をさらに添加してもよい。
【0049】
本発明の医薬組成物は、剤型、投与方法、担体などにより異なるが、本発明化合物を製剤全量に対して通常0.01~99%(w/w)、好ましくは0.1~85%(w/w)の割合で添加することにより、製造し得る。当該医薬組成物は、その形態に応じて、製剤技術の分野で慣用の方法により製造できる。本発明の医薬組成物は、有効成分を含む速放性製剤または徐放性製剤等の放出制御製剤に成形してもよい。
【0050】
(投与対象について)
本発明化合物は、毒性が低く、かつ副作用も少ないことが期待でき、医薬品として優れた性質も有している。従って、本発明化合物は、哺乳動物(例えば、ヒト、サル、イヌ、ウマ等)に対して、安全に投与し得る。
【0051】
(投与経路について)
本発明を実施するに当たっては、本発明化合物は、単独で、または医薬組成物として、経口的又は非経口的(例、静脈内、筋肉内、皮下、臓器内、鼻腔内、皮内、点眼、脳内、直腸内、膣内、腹腔内投与、および病巣への投与)に投与し得る。なかでも、経口投与が好ましい。
【0052】
(投与量について)
本発明化合物の投与量は、投与対象、投与経路および投与対象の年齢や症状によって異なるが、特に限定されない。
例えば、本発明化合物を経口投与する場合には、成人(体重約60kg)1日当りの投与量は、本発明化合物として約1ないし約8000mgであり、これらを1回または2ないし3回に分けて投与し得る。また、徐放性製剤の形態で投与する場合には、当該投与量に相当するように隔日投与あるいはそれ以上の間隔を空けて投与することも可能である。
本発明化合物を非経口的に投与する場合は、通常、液剤(例、注射剤)の形で投与する。本発明化合物の1回投与量は、例えば、通常体重1kgあたり約0.01ないし約100mg、好ましくは約0.01ないし約50mg、より好ましくは約0.01ないし約20mgの本発明化合物を静脈注射により投与し得る。
【0053】
(他剤との併用について)
本発明の実施に当たっては、本発明化合物は、他の薬剤と組み合わせて、対象疾患の予防または治療に用いることができ、他の薬剤との併用による優れた予防および/または治療効果が期待できる。また、かかる併用療法により他の薬剤の用量を下げて、これらが有する副作用を低減することも期待できる。
このような本発明の実施に当たって本発明化合物と組み合わせて用いられ得る薬剤(以下、併用薬剤と表記する場合がある)は、患者の疾患の種類、その症状の重篤度等に鑑みて、適宜選択することができる。具体的には、本発明化合物は、ホルモン療法剤、化学療法剤、免疫療法剤または細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤等の薬剤と併用して用いられ得る。
【0054】
「ホルモン療法剤」としては、例えば、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、ダナゾール、アリルエストレノール、ゲストリノン、メパルトリシン、ラロキシフェン、オルメロキシフェン、レボルメロキシフェン、抗エストロゲン(例、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェン)、ピル製剤、メピチオスタン、テストロラクトン、アミノグルテチイミド、LH-RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、酢酸リュープロレリン)、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、スルホン酸エチニルエストラジオール、アロマターゼ阻害薬(例、塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタン)、抗アンドロゲン(例、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミド、エンザルタミド)、5α-レダクターゼ阻害薬(例、フィナステリド、エプリステリド、デュタステリド)、副腎皮質ホルモン系薬剤(例、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン)、アンドロゲン合成阻害薬(例、アビラテロン)、レチノイドおよびレチノイドの代謝を遅らせる薬剤(例、リアロゾール)、甲状腺ホルモン、およびそれらのDDS(Drug Delivery System)製剤が用いられ得る。
【0055】
「化学療法剤」としては、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌性抗生物質、植物由来抗癌剤が用いられ得る。
【0056】
「アルキル化剤」としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード-N-オキシド、クロラムブチル、シクロフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ピポブロマン、エトグルシド、カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロフォスファミド、ジノスタチンスチマラマー、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレシンおよびそれらのDDS製剤が用いられ得る。
【0057】
「代謝拮抗剤」としては、例えば、メルカプトプリン、6-メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、ペメトレキセド、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、塩酸アンシタビン、5-FU系薬剤(例、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフール、カペシタビン)、アミノプテリン、ネルザラビン、ロイコボリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドキシウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチン、ベンダムスチンおよびそれらのDDS製剤が用いられ得る。
【0058】
「抗癌性抗生物質」としては、例えば、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、ネオカルチノスタチン、ミスラマイシン、ザルコマイシン、カルチノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシンおよびそれらのDDS製剤(例、ドキソルビシン内包PEGリボゾーム)が用いられ得る。
【0059】
「植物由来抗癌剤」としては、例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ビノレルビンおよびそれらのDDS製剤が用いられ得る。
【0060】
「免疫療法剤」としては、例えば、ピシバニール、クレスチン、シゾフィラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウムパルブム、レバミゾール、ポリサッカライドK、プロコダゾール、抗CTLA4抗体(例、イピリムマブ、トレメリムマブ)、抗PD-1抗体(例、ニボルマブ、ペムブロリズマブ)、抗PD-L1抗体が用いられ得る。
【0061】
「細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤」における「細胞増殖因子」としては、細胞の増殖を促進する物質であればどのようなものでもよく、通常、分子量が20,000以下のペプチドで、受容体との結合により低濃度で作用が発揮される因子が挙げられ、具体的には、(1)EGF(epidermal growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質[例、TGFα]、(2)インシュリンまたはそれと実質的に同一の活性を有する物質[例、インシュリン、IGF(insulin-like growth factor)-1、IGF-2]、(3)FGF(fibroblast growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質[例、酸性FGF、塩基性FGF、KGF(keratinocyte g
rowth factor)、FGF-10]、(4)その他の細胞増殖因子[例、CSF(colony stimulating factor)、EPO(erythropoietin)、IL-2(interleukin-2)、NGF(nerve growth factor)、PDGF(platelet-derived growth factor)、TGFβ(transforming growth factor β)、HGF(hepatocyte growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)、ヘレグリン、アンジオポエチン]が用いられ得る。
【0062】
「細胞増殖因子の受容体」としては、上記の細胞増殖因子と結合能を有する受容体であればいかなるものであってもよく、具体的には、EGF受容体、ヘレグリン受容体(例、HER3)、インシュリン受容体、IGF受容体-1、IGF受容体-2、FGF受容体-1またはFGF受容体-2、VEGF受容体、アンジオポエチン受容体(例、Tie2)、PDGF受容体等が用いられ得る。
【0063】
「細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤」としては、EGF阻害剤、TGFα阻害剤、ハーレギュリン阻害剤、インシュリン阻害剤、IGF阻害剤、FGF阻害剤、KGF阻害剤、CSF阻害剤、EPO阻害剤、IL-2阻害剤、NGF阻害剤、PDGF阻害剤、TGFβ阻害剤、HGF阻害剤、VEGF阻害剤、アンジオポエチン阻害剤、EGF受容体阻害剤、HER2阻害剤、HER4阻害剤、インシュリン受容体阻害剤、IGF-1受容体阻害剤、IGF-2受容体阻害剤、FGF受容体-1阻害剤、FGF受容体-2阻害剤、FGF受容体-3阻害剤、FGF受容体-4阻害剤、VEGF受容体阻害剤、Tie-2阻害剤、PDGF受容体阻害剤、Abl阻害剤、Raf阻害剤、FLT3阻害剤、c-Kit阻害剤、Src阻害剤、PKC阻害剤、Smo阻害薬、ALK阻
害薬、ROR1阻害薬、Trk阻害剤、Ret阻害剤、mTOR阻害剤、Aurora阻害剤、PLK阻害剤、MEK(MEK1/2)阻害剤、MET阻害剤、CDK阻害剤、Akt阻害剤、ERK阻害剤、PI3K阻害剤等が用いられ得る。より具体的には、抗VEGF抗体(例、Bevacizumab、Ramucurumab)、抗HER2抗体(例、Trastuzumab、Pertuzumab)、抗EGFR抗体(例、Cetuximab、Panitumumab、Matuzumab、Nimotuzumab)、抗HGF抗体、Imatinib、Erlotinib、Gefitinib、Sorafenib、Sunitinib、Dasatinib、Lapatinib、Vatalanib、Ibrutinib、Bosutinib、Cabozantinib、Crizotinib、Alectinib、Vismodegib、Axitinib、Motesanib、Nilotinib、6-[4-(4-エチルピペラジン-1-イルメチル)フェニル]-N-[1(R)-フェニルエチル]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン(AEE-788)、Vandetanib、Temsirolimus、Everolimus、Enzastaurin、Tozasertib、リン酸 2-[N-[3-[4-[5-[N-(3-フルオロフェニル)カルバモイルメチル]-1H-ピラゾール-3-イルアミノ]キナゾリン-7-イルオキシ]プロピル]-N-エチルアミノ]エチル エステル(AZD-1152)、4-[9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[5,4-d][2]ベンズアゼピン-2-イルアミノ]安息香酸、N-[2-メトキシ-5-[(E)-2-(2,4,6-トリメトキシフェニル)ビニルスルホニルメチル]フェニル]グリシン ナトリウム塩(ON-1910Na)、Volasertib、Selumetinib、Trametinib、N-[2(R),3-ジヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)ベンズアミド(PD-0325901)、Bosutinib、Regorafenib、Afatinib、Idelalisib、Ceritinib、Dabrafenib等が用いられ得る。
【0064】
上記の薬剤の他に、アスパラギナーゼ、アセグラトン、塩酸プロカルバジン、プロトポルフィリン・コバルト錯塩、水銀ヘマトポルフィリン・ナトリウム、トポイソメラーゼI阻害薬(例、イリノテカン、トポテカン、indotecan、Indimitecan)、トポイソメラーゼII阻害薬(例、ソブゾキサン)、分化誘導剤(例、レチノイド、ビタミンD類)、他の血管新生阻害薬(例、フマギリン、さめ抽出物、COX-2阻害薬)、α-ブロッカー(例、塩酸タムスロシン)、ビスホスホン酸(例、パミドロネート、ゾレドロネート)、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド、5アザシチジン、デシタビン、プロテアソーム阻害薬(例、ボルテゾミブ、カルフィゾミブ、イクサゾミブ)、NEDD8阻害薬(例、Pevonedistat)、UAE阻害薬、PARP阻害薬(例、Olaparib、Niraparib、Veliparib)、抗CD20抗体(例、Rituximab、Obinutuzumab)、抗CCR4抗体(例、Mogamulizumab)等の抗腫瘍性抗体、抗体薬物複合体(例、トラスツマブ エムタンシン、ブレンキシマブ ベドチン)等も併用薬剤として用いられ得る。
【0065】
併用薬剤の投与形態は、特に限定されず、投与時に、本発明化合物と併用薬剤とが組み合わされ得る。例えば、(1)本発明化合物と併用薬剤とを組み合わせて含有する製剤の投与、(2)本発明化合物と併用薬剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時または別々の投与、(3)本発明化合物と併用薬剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時または別々の投与、等の形態で用いることができる。好ましい形態は、医療現場の実態に応じて、適宜選択することができる。
上記の本発明化合物と併用薬剤とを組み合わせて含有する製剤は、先に説明された本発明化合物を含有する医薬組成物に準じて、当業者であれば適宜製造することができる。
併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択し得る。また、本発明化合物と併用薬剤との配合比は、投与対象の疾患や症状、投与経路、用いる併用薬剤の種類、等により適宜選択し得る。通常は、用いる併用薬剤の一般的な臨床用量を基準にして医療現場の実態に応じて適宜決定し得る。
【実施例0066】
以下、実施例に沿って本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、本発明において使用する試薬や装置、材料は特に言及されない限り、商業的に入手可能であるか、当業者であれば適宜調製することが可能である。
【0067】
試験例1:hTERT-RdRP阻害活性試験
(1)M期集積細胞の作成
10%非働化ウシ胎児血清(IFS)、Penicillin(100U/mL)及びStreptomycin(100μg/mL)を添加したDMEM培地(Wako)を通常培地として、前日より培養したHeLa細胞(ATCC)を10cm dishあたり1x10個播種した。2日間培養した後、通常培地を、通常培地にThymidine(ナカライテスク、final2.5mM)をさらに添加した培地に交換して培養した。24時間培養した後、細胞をPBS(phosphate buffered saline)10mLで3回洗浄し、通常培地に交換して培養した。6時間培養した後、通常培地を、通常培地にNocodazole(Sigma、final0.1μg/mL)がさらに入った培地に交換して培養した。14時間培養した後、細胞を回収した。
【0068】
(2)免疫沈降
回収した細胞を冷却したPBSで洗浄後、1x10個を1mL Lysis buffer A(20mM Tris-HCl(pH7.4)、150mM NaCl、0.5% Nonidet P-40(NP-40))で懸濁、10秒間ソニケーション後遠心して上清を回収した。上清に40uL Protein A agarose(Thermo Fisher Scientific、bed volume 20μL)を加え4℃で30分ローテート、プレクリアを行った。遠心後上清を回収し40μL Protein A agarose(bed volume 20μL)と10μg 抗hTERT 抗体(MBL M216-3)を加え4℃で18時間ローテートし免疫沈降した。
【0069】
(3)RdRP活性測定
免疫沈降ビーズは以下の方法で洗浄した。
1mlのWash buffer I(1x acetate buffer(10mM Hepes-KOH(pH7.8)、100mM potassium acetate、4mM MgCl)containing 10%glycerol、0.1%Triton-X and 0.06x protease inhibitors(Roche、complete EDTA-free))で4回洗浄(4℃で5分ローテート)。次に2mM CaClを含むAGC solution(1x acetate buffer containing 10% glycerol and 0.02% CHAPS)で洗浄後、ビーズに付着した核酸を除くため、Micrococcal nuclease(MNase)(20U/μl、Takara)1μl、10x MNase reaction buffer 8μl、HO 51μlを加え25℃で15分反応させた。ビーズを3mM EGTAを含むAGC solutionで2回洗浄後、0.02%CHAPSを含む1x acetate bufferで洗浄した。
RdRP反応試薬の組成を以下に示した。
【0070】
【表1】
【0071】
阻害試験は、ビーズに上記試薬のうち0.07% CHAPS、HMD solution、HO、各濃度阻害剤0.4μl(最終濃度0-100μM)を加え、32℃で30分プレインキュベートした後、残りの試薬を加え、32℃で2時間反応させた。
反応終了後20mg/ml Proteinase K(Takara)を5.4μl、2x Proteinase K buffer(20mM Tris-HCl(pH7.6)、20mM EDTA and 1% SDS)を45.4μl加え37℃で30分反応させ、HOを109.2μl加えた後、200μlのacid phenol-chloroform(Ambion)を加え、Phe/Chl処理を2回行なってRNAを抽出、エタノール沈殿で精製RNAを得た。
Terminal transferase活性によるsingle stranded RNAsを除くため、RNAサンプルを20μl HOに溶かし、RNase One(10U/μl、Promega)0.2μl、10 x reaction buffer 20μl、HO 159.8μlを加えて37℃で2時間RNase処理を行った。
2.3μlの10% SDSを加え37℃で15分、さらに2μlの20mg/ml Proteinase K(Takara)を加え37℃で15分処理後、acid phenol-chloroform(Ambion)でRNAを抽出、エタノール沈殿で精製した。
精製サンプルは20μl HOに溶かし、2x loading buffer(95% formamide、20mM EDTA and 1% Orange G)を20μl加え95℃で10分処理した後急冷、7M Urea 15%アクリルアミドゲルで泳動後、ゲルを乾燥させ、X線フィルムで現像し、得られたシグナルの強度を測定することで、阻害剤の効果を検証した(図1)。
RK-X、RK-Y、RK-Z、について検討した結果、RdRP活性阻害のIC50は、それぞれ1.21μM、0.91μM、1.32μMと高い阻害効果が確認された。
【0072】
試験例2:腫瘍細胞増殖抑制活性試験
細胞増殖抑制はMTTアッセイにより試験した。
細胞を96穴プレートに播種し(2000個/ウエル)、一夜培養後、RK-Xを加えた培地(0~50μM)に交換し、120時間後にMTTアッセイを実施した。MTTアッセイ試薬はRoche社の細胞増殖キットIを用いて、プロトコールに従い実施した。
hTERTを発現している腫瘍細胞では、細胞増殖阻害のIC50は、3-18μM程度であったが(図2A)、腫瘍細胞に比較して、hTERTの発現のない正常細胞では増殖阻害は確認されなかった(図2B)。
【0073】
試験例3:マウスにおける抗腫瘍効果試験等の各種試験
(a)NOD/SCIDマウスを使用した。1x10個のMT細胞を無血清培地とマトリゲルの混合物に懸濁し、皮下注射した。腫瘍形成と腫瘍サイズを観察し、腫瘍定着後、RK-Xを60mg/kg、100mg/kg、それぞれ週3回、あるいは週5回、1日2回、腹腔内投与した。2週間後に取り出した腫瘍、腫瘍体積、腫瘍サイズ、を図3A,B,Cに示した。いずれの条件においてもRK-Xの抗腫瘍効果が確認できた。
(b)取り出した腫瘍は、ソニケーション後上清を抗hTERT抗体で免疫沈降し、1)で述べたRdRP活性測定プロトコールに準じて活性を測定した。腫瘍上清の調整方法は以下の通りである。
腫瘍はMagNA Lyser Green Beads(Roche Diagnostics)チューブに入れ、Lysis buffer Aを500μl加え、MagNA Lyser Instrument(Roche Diagnostics)を用いて破砕し、遠心後、蛋白濃度を測定し、それぞれ5mgを免疫沈降から活性測定に供した。
それぞれの腫瘍のRdRP活性平均値を図3Dに示した。RK-X投与により腫瘍内のRdRP活性が減少していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、RdRP阻害活性を有する化合物を有効成分として含有する、がんの予防または治療剤を提供するものであり、医薬の分野において有用である。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D