(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104765
(43)【公開日】2022-07-11
(54)【発明の名称】信号センシングのためのシステムと方法
(51)【国際特許分類】
G01S 3/46 20060101AFI20220704BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20220704BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
G01S3/46
H04L27/26 420
G01S7/02 218
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021010104
(22)【出願日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】17/136,004
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】何 庭武
(72)【発明者】
【氏名】劉 家隆
(72)【発明者】
【氏名】徐 福得
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB15
5J070AC11
5J070AD06
5J070AD08
5J070AE09
5J070AH25
5J070AH31
5J070AH39
(57)【要約】
【課題】信号センシングのためのシステムおよび方法が提供される。
【解決手段】前記信号センシングのためのシステムは、センシングデバイスとプロセッサと前記センシングデバイスに結合されたタイムサーバとを含む。前記センシングデバイスは複数の受信機と該受信機に結合された発振器とを含む。前記受信機は、前記タイムサーバからの時間同期信号を受信することによって同期される。前記受信機は、前記発振器によって生成されたクロックに従って、対象物の複数の信号を監視し、前記信号に従って複数のチャネル状態情報(CSI)を取得する。前記プロセッサは、前記CSIに従って、前記信号の到来角を計算する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号センシングのためのシステムであって、該システムは、
複数の受信機と該受信機に結合された発振器とを備えるセンシングデバイスと、
該センシングデバイスに結合されたプロセッサと、
前記センシングデバイスに結合されたタイムサーバとを備え、
前記受信機は、前記タイムサーバからの時間同期信号を受信することによって同期され、
前記受信機は、前記発振器によって生成されたクロックに従って、対象物の複数の信号を監視し、前記信号に従って複数のチャネル状態情報(CSI)を取得し、
前記プロセッサは、前記CSIに従って、前記信号の到来角を計算する、システム。
【請求項2】
前記受信機は、起動時にクライアントモードに構成され、ネットワークタイムプロトコルによって前記タイムサーバから前記時間同期信号を受信する、請求項1に記載の信号センシングのためのシステム。
【請求項3】
前記受信機は、前記クライアントモードから前記信号を監視するスニファモードに構成され、前記信号は、時間情報を有する複数のCSIパケットを含む、請求項1または2に記載の信号センシングのためのシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、所定の時間間隔で前記受信機が受信したCSIパケットに従って前記到来角を計算する、請求項1から3のいずれか一項に記載の信号センシングのためのシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、アルゴリズムによって前記到来角を計算し、前記アルゴリズムは、MUSICアルゴリズムおよび位相差アルゴリズムを含む、請求項1に記載の信号センシングのためのシステム。
【請求項6】
前記受信機のそれぞれは、直交周波数分割多重(OFDM)受信機である、請求項1に記載の信号センシングのためのシステム。
【請求項7】
信号センシングのためのシステムにおいて使用される信号センシングのための方法であって、
信号センシングのためのシステムは、センシングデバイスと、プロセッサと、タイムサーバとを備え、前記センシングデバイスは、複数の受信機と、該受信機に結合された発振器とを備え、前記信号センシングのための方法は、
前記タイムサーバから時間同期信号を受信することによって前記受信機を同期させるステップと、
前記受信機の各々によって、前記発振器によって生成されたクロックに従って対象物の複数の信号を監視し、前記信号に従ってチャネル状態情報(CSI)を取得するステップと、
前記プロセッサによって前記CSIに従って前記信号の到来角を計算するステップと、を有する方法。
【請求項8】
前記タイムサーバから時間同期信号を受信することによって前記受信機を同期させるステップは、
前記受信機を、起動時にクライアントモードに構成するステップと、
ネットワークタイムプロトコルによって前記タイムサーバから前記時間同期信号を受信するステップと、を有する、請求項7に記載の信号センシングのための方法。
【請求項9】
前記対象物の複数の信号を監視するステップは、
前記受信機を、前記クライアントモードから前記信号を監視するスニファモードに構成するステップと、を有し、
前記信号は、時間情報を有する複数のCSIパケットを含む、請求項7または8に記載の信号センシングのための方法。
【請求項10】
前記信号の前記到来角を計算するステップは、
所定の時間間隔で前記受信機が受信した前記CSIパケットに従って前記到来角を計算するステップと、を有する、請求項7から9のいずれか一項に記載の信号センシングのための方法。
【請求項11】
前記信号の前記到来角を計算するステップは、
アルゴリズムによって前記到来角を計算するステップと、を有し、前記アルゴリズムは、MUSICアルゴリズムおよび位相差アルゴリズムを含む、請求項7に記載の信号センシングのための方法。
【請求項12】
前記受信機のそれぞれは、直交周波数分割多重(OFDM)受信機である、請求項7に記載の信号センシングのための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号センシングのためのシステムおよび方法に関し、より詳細には、直交周波数分割多重(OFDM)技術に基づく信号センシングのためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダセンシング技術は、様々な異なるセンシング分野、例えば、健康管理、安全監視、スマートホーム、食品安全施行、及び他の応用において広く使用されている。既存のレーダーセンシングデバイス(例えば、ドップラーレーダー、ミリ波(mmWave)レーダーなど)はコストがかかりすぎる。消費者が価格を考慮して購入をすることにためらうことを考えると、安価なOFDM装置(例えば、WiFi、LTE、5Gなどの技術を用いた装置)をセンシングに使用することは、近年最もポピュラーな研究手法の1つである。
【0003】
室内位置決めの応用において、OFDM装置は、室内位置決めを行うためにスニファ(sniffer)機構を採用することができる。スニファ機構によって監視される目標対象物の信号は、室内位置決めを行うために信号の到来角(AoA)を計算するために、複数アンテナのチャネル状態情報(CSI)を含まなければならない。しかしながら、上述の方法は、まだ克服すべき2つの鍵となる課題を有している。
【0004】
[課題1:単一アンテナをサポートするだけのCSIを提供するOFDM装置]
【0005】
OFDMデバイスは、単一アンテナを介したCSI情報収集のみをサポートする。複数のOFDM装置を使用して信号を受信する場合、各受信端が異なるOFDM装置に属しているため、受信端で周波数オフセットの問題が発生し、場合によっては位置決め誤差が発生する可能性がある。
【0006】
[課題2:OFDM装置間に時間同期機構がない]
【0007】
複数のOFDM装置を用いてターゲット対象物の信号を受信する場合、OFDM装置に到着するターゲット対象物によって送信されるパケットの時点は異なる。信号のAoA を計算するには、同じパケットのCSI を使用する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、受信端における周波数オフセットの問題を解決し、OFDM装置間の時間同期機構をサポートし、それによって信号AoA計算の結果を改善する、信号センシングのためのシステムおよび方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、信号センシングのためのシステムを提供する。該信号センシングのためのシステムは、センシングデバイスとプロセッサと前記センシングデバイスに結合されたタイムサーバとを含む。前記センシングデバイスは複数の受信機と該受信機に結合された発振器とを含む。前記受信機は、前記タイムサーバからの時間同期信号を受信することによって同期される。前記受信機は、前記発振器によって生成されたクロックに従って、対象物の複数の信号を監視し、前記信号に従って複数のチャネル状態情報(CSI)を取得する。前記プロセッサは、前記CSIに従って、前記信号の到来角を計算する。
【0010】
本発明は、信号センシングのためのシステムにおいて使用される信号センシングのための方法を提供する。信号センシングのためのシステムは、センシングデバイスと、プロセッサと、タイムサーバとを含む。前記センシングデバイスは、複数の受信機と、該受信機に結合された発振器とを含む。前記信号センシングのための方法は、前記タイムサーバから時間同期信号を受信することによって前記受信機を同期させるステップと、前記受信機の各々によって、前記発振器によって生成されたクロックに従って対象物の複数の信号を監視し、前記信号に従ってチャネル状態情報(CSI)を取得するステップと、前記プロセッサによって前記CSIに従って前記信号の到来角を計算するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
上記に基づいて、本発明の信号センシングのためのシステムおよび方法は、OFDM技術に基づく複数の受信機を同じセンシングデバイスに統合し、受信機が同じ発振器を共有することを可能にし、それによって受信機間の周波数オフセット問題を解決する。さらに、本発明は、同じパケットのCSIを使用して信号のAoAを計算することができるように、時間サーバから時間同期信号を受信することによって受信機を同期させ、それによって、AoA推定結果の精度を向上させる。
【0012】
前述のことをより分かりやすくするために、図面を伴ういくつかの実施形態を以下のように詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本発明の例示的実施形態を図示し、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による、信号センシングのためのシステムの模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、信号センシング用モジュールの模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、信号センシングのためのシステムの模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるセンシングデバイスの模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態による周波数オフセット問題の一例の模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態による信号センシングのための方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明では、説明の対象物のために、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載されている。しかしながら、1つ以上の実施形態が、これらの特定の詳細なしに実施されてもよいことは明らかであろう。他の例では、図面を簡略化するために、周知の構造及び装置が概略的に示されている。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による、信号センシングのためのシステムの模式図である。
【0017】
図1を参照すると、信号センシングのためのシステム1000は、主に、信号センシング用モジュール101、信号平滑化用モジュール102、周波数分析用モジュール103、および特徴検出用モジュール104を含む。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態による、信号センシング用モジュールの模式図である。
【0019】
図2を参照すると、
図1の信号センシング用モジュール101は、信号生成用モジュール201と、センシングデバイス202と、エコー除去用モジュール203とを含む。信号生成用モジュール201は、パケット構成用モジュール201aと、パケット処理用モジュール201bとを含む。センシングデバイス202は、送信機202aと、受信機202bと、発振器202cとを含む。
【0020】
実施形態では、信号センシングのためのシステム1000は、プロセッサ(図示せず)および記憶回路(図示せず)をさらに含む。プロセッサは、記憶回路およびセンシングデバイス202に結合される。複数のコードセグメントが、信号センシング回路1000の記憶回路に記憶される。コードセグメントがインストールされると、コードセグメントはプロセッサによって実行される。例えば、複数のモジュールが記憶回路に含まれる。パケット構成用モジュール201a、パケット処理用モジュール201b、エコー除去用モジュール203、信号平滑化用モジュール102、周波数分析用モジュール103、及び特徴検出用モジュール104の各種操作が、それぞれ、モジュールによって実行され、各モジュールは、1つ以上のコードセグメントによって形成される。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。パケット構成用モジュール201a、パケット処理用モジュール201b、エコー除去用モジュール203、信号平滑化用モジュール102、周波数分析用モジュール103、及び特徴検出用モジュール104の各種操作は、他のハードウェア形式を使用することによっても実施することができる。
【0021】
特に、本発明の送信機202aおよび受信機202bは、直交周波数分割多重(OFDM)技術に基づく送受信機(または回路)であってもよい。
【0022】
発振器202cは、送信機202a及び受信機202bに結合されている。発振器202cは、仕様書に準拠したクロック信号を生成するように構成されており、発振源として送信機202a及び受信機202bに同時に供給される。実施形態において、送信機202a及び受信機202bは、発振器202cによって生成されたクロック信号を共有している。
【0023】
本実施形態では、信号生成用モジュール201は、パケット構成情報に従って複数のパケットを送信して信号を発生するように構成されている。より詳細には、信号生成用モジュール201におけるパケット構成用モジュール201aは、ユーザまたはデバイスによって設定されたパケット構成情報を受け取る。パケット構成情報は、パケットの送信頻度であってもよい。パケット処理用モジュール201bは、例えば、パケット構成情報に従って複数のパケットに送るべきデータをカットし、複数のパケットを送信して送信機202aを介して送信すべき信号を生成するようにしてもよい。
【0024】
そして、送信機202aは、OFDMの動作原理に基づいて互いに直交する複数の副搬送波を生成し、パケット処理用モジュール201bからの信号を複数の副搬送波に分割し、複数の副搬送波に応じて複数の副搬送波をそれぞれ変調して複数の出力信号を生成する。次に、送信機202aは、発振器202cのパケット構成情報とクロック信号に応じた出力信号SGLを送信する。
【0025】
その後、受信機202bは、発振器202cのクロック信号に従う出力信号SGLにおいて、対象物OBを介して反射された少なくとも1つの出力信号SGL_1(第1の出力信号ともいう)を受信する。例えば、受信機202bは、出力信号SGL_1を発振器202cのクロック信号に従ってアナログ信号形式で受信し、出力信号SGL_1をデジタル信号形式でサンプリングする。
【0026】
出力信号SGL_1を得た後、受信機202bは、出力信号SGL_1に従ってチャネル状態情報を取得する。信号センシングのためのシステム1000のプロセッサは、チャネル状態情報に従って対象物OBの状態を識別し、対象物の状態を出力する。
【0027】
より詳細には、出力信号SGL_1に従ってチャネル状態情報を取得する動作において、出力信号SGL_1における干渉信号は、まずエコー除去用モジュール203を介してキャンセルされてもよい。特に、干渉信号は、送信機202aと受信機202bとの間の経路(第1の経路とも呼ばれる)を介して送信され、第1の経路は対象物OBを介して反射されない。言い換えれば、無線伝送のマルチパス問題に基づき、送信機202aによって送信された信号の一部は、反射されることなく、送信機202aから受信機202bに直接送信され、これらの信号は判定上誤差を生じる。したがって、これらの信号は干渉信号として識別される。干渉信号をキャンセルするためのエコー除去用モジュール203の方法は、ハードウェア方法、多重基準アクティブノイズ制御(多重基準ANC)、再帰最小二乗(RLS)、最小二乗平均(LMS)、フィルタリング済み-x LMS、(FxLMS)などであってもよい。
【0028】
図3は本発明の一実施形態による、信号センシングのためのシステムの模式図である。
図4は本発明の一実施形態によるセンシングデバイスの模式図である。
【0029】
図3および
図4を参照すると、信号センシングのためのシステム100は、センシングデバイス110と、センシングデバイス110に結合されたプロセッサ120と、センシングデバイス110に結合されたタイムサーバ130とを含む。一実施形態において、プロセッサ120は、センシングデバイス110に含まれてもよい。センシングデバイス110は、複数の受信機111と、受信機111に結合された発振器112とを含む。発振器112は、仕様書に準拠したクロック信号を生成するように構成され、同時に発振源として複数の受信器111に供給される。実施形態において、複数の受信機111は、発振器112によって生成されたクロック信号を共有する。受信機111は、例えば、OFDM技術に基づく直交周波数分割多重(OFDM)受信機であり、マイクロコントローラ(図示せず)を含む。マイクロコントローラは、例えば、160または240MHzのマイクロプロセッサと、520KBのSRAMとを含む。アンテナ113は、受信機111の各々と一体化されてもよい。
【0030】
一実施形態において、センシングデバイス110は、プロセッサ120に結合された記憶回路(図示せず)をさらに含む。複数のコードセグメントが、センシングデバイス110の記憶回路に記憶されてもよい。クロック同期モジュール140、信号監視モジュール150およびAoA推定モジュール160に対応するコードセグメントは、プロセッサ120および/または受信機111のマイクロコントローラによって実行されてもよい。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、クロック同期モジュール140、信号監視モジュール150及びAoA推定モジュール160は、他のハードウェア形成又はハードウェア及びソフトウェア/ファームウエア形成の組み合わせを使用することによって実施することができる。
【0031】
一実施形態では、受信機111が起動されると、受信機111はクロック同期モジュール140によってクライアントモードに構成されてもよく、受信機111は時間同期手順を実行するためにタイムサーバー130に自動的に接続してもよい。受信機111は、すべての受信機111が同期されるように、ネットワークタイムプロトコル(NTP)によってタイムサーバ130から時間同期信号を受信することができる。すべての受信機111が同期された後、受信機111は、絶対時間情報を有する複数のチャネル状態情報(CSI)パケットを含む環境で信号を監視するために、クライアントモードからのスニファモードに構成されてもよい。
【0032】
信号監視モジュール150において、センシングデバイス110内の受信機111は、同じ発振器112に結合して、アンテナ113を介して対象物170からの信号を受信し、その結果、周波数オフセット問題を克服することができる。例えば、LTE-A技術では、周波数オフセットは、広域で±50ppb、ローカルエリアで±100ppb、ホームで±250ppbであってもよい。802.11技術では、周波数オフセットは、2.4GHz (すなわち、2.4GHz±60KHz)の下で±25ppm、5.8GHz (すなわち、5.8GHz±116KHz)の下で±20であり得る。周波数オフセットの影響により信号の波長が変化し、位相誤差や振幅誤差が生じることがあり、位置決めの誤差を生じることがある。
図5は、本発明の一実施形態による周波数オフセット問題の一例の模式図である。
図5を参照すると、チャート510は、本発明の実施形態による発振器112を共有する64の副搬送波の平均位相を示し、チャート520は、発振器を共有しない64の副搬送波の平均位相を示す。この例では、毎秒40パケットがピング(ping)で、合計2400パケットが測定される。チャート520の場合、周波数オフセットの影響によって変化したλ2は、元のλ1とは異なる場合があり、位相誤差PEおよび振幅誤差AEは、周波数オフセット問題によって発生し得る。
【0033】
図4に戻って参照すると、信号監視モジュール150は、発振器112によって生成されたクロックに従って対象物170の信号を監視し、その信号に従って複数のCSIを得るように受信機111に指示することができる。CSIは、対象物170の信号のAoA (到来角)を計算するために、AoA推定モジュール160に送信される。AoA推定モジュール160は、MUSIC (すなわち、Multiple Signal Classification、多重信号分類)アルゴリズム、位相差アルゴリズムまたは他のAoA計算アルゴリズムによって、CSIに従って信号のAoAを計算してもよい。例えば、MUSICアルゴリズムでは、AoA推定モジュール160は、信号を受信し、相関行列R
xx = E[XX
H]を計算する。次に固有分解R
xxv
i =λ
iv
i、i=1~M を行い、部分空間をλ
iにより定義する。ここで、λ
1 ≧λ
2≧...≧λ
N+1 =...=λ
M 、E
S=span{v
1、v
2、...、v
N}とE
N =span{v
N+1、v
N+2、...、v
M}である。最後に、AoA推定モジュール160は、MUSICスペクトルP
MUSIC(π)を計算し、MUSICスペクトルのN個のピークを見つける。ここで、P
MUSIC(θ)=1/(a
H(θ)E
NE
N
H a(θ))である。
【0034】
図6A~
図6Fは、本発明の一実施形態によるAoA推定例の模式図である。
【0035】
図6A~
図6Fを参照すると、センシングデバイス110は、対象物170によって送信される信号を監視する。対象物170は、例えば、携帯電話であり、ピング(ping)のAP信号を送信する。センシングデバイス110と対象物170との間の距離は2.2メートルであり、センシングデバイス110のベースラインBLと、対象物170に信号を送信するセンシングデバイス110の方向との間の実際の角度は30度である。この例では、センシングデバイス110は4つのOFDM受信機を有し、これはスニファ1~スニファ4とも呼ばれる。
図6Bのチャート610に示すように、OFDM受信機は、起動後に外部のタイムサーバによって同期され、対象物170によって送信される信号は、絶対時間情報を有するCSIパケットを搬送することを考慮すると、4つのOFDM受信機によってそれぞれ受信された4つのパケットが、所定の時間間隔(例えば、10ms)内に受信された場合にのみ、4つのパケットが同じパケットとみなされ、AoA推定に使用される。
図6Cのチャート620は、スニファ1およびスニファ2によって受信されるパケット間の位相差を示す。
図6Dのチャート630は、スニファ2およびスニファ3によって受信されるパケット間の位相差を示す。
図6Eのチャート640は、スニファ3およびスニファ4によって受信されるパケット間の位相差を示す。隣接するスニファによって受信されるパケット間の位相差は、むしろ小さいことを
図6C~
図6Eに示すことができる。最後に、
図6Fのチャート650は、AoA推定結果が39度であることを示す。
【0036】
図7は、本発明の一実施形態による信号センシングのための方法の模式図である。
【0037】
図7を参照すると、ステップS701において、タイムサーバから時間同期信号を受信することによって受信機を同期させる。
【0038】
ステップS702において、各受信機により、発振器によって生成されたクロックに従って対象物の複数の信号を監視し、その信号に従ってチャネル状態情報(CSI)を取得する。
【0039】
ステップS703において、プロセッサによるCSIに従って信号の到達角度を計算する。
【0040】
上記に基づいて、本発明の信号センシングのためのシステムおよび方法は、OFDM技術に基づく複数の受信機を同じセンシングデバイスに統合し、受信機が同じ発振器を共有することを可能にし、それによって受信機間の周波数オフセット問題を解決する。さらに、本発明は、同じパケットのCSIを使用して信号のAoAを計算することができるように、タイムサーバから時間同期信号を受信することによって受信機を同期させ、それによって、AoA推定結果の精度を向上させる。
【0041】
本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明の実施形態に様々な修正および変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。以上のことを考慮すると、本発明は、変更および変形をカバーすることが意図されている。ただし、それらが以下の請求項の範囲およびそれらの均等物に含まれることを条件とする。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の信号センシングのシステム及び方法は、直交周波数分割多重(OFDM)技術に基づく信号センシングにおいて適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
100、1000 信号センシングのためのシステム
101 信号センシング用モジュール
102 信号平滑用モジュール
103 周波数分析用モジュール
104 特徴検出用モジュール
110、202 センシングデバイス
111、202b 受信機
112、202c 発振器
113 アンテナ
120 プロセッサ
130 タイムサーバ
140 クロック同期モジュール
150 信号監視モジュール
160 AoA推定モジュール
170 対象物
201 信号生成用モジュール
201a パケット構成用モジュール
201b パケット処理用モジュール
202a 送信機
203 エコー除去用モジュール
510、520、610、620、630、640、650 グラフ
S701~S703 ステップ
【手続補正書】
【提出日】2022-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号センシングのためのシステムであって、該システムは、
複数の受信機と該受信機に結合された発振器とを備えるセンシングデバイスと、
該センシングデバイスに結合されたプロセッサと、
前記センシングデバイスに結合されたタイムサーバとを備え、
前記受信機は、前記タイムサーバからの時間同期信号を受信することによって同期され、
前記受信機は、前記発振器によって生成されたクロックに従って、対象物の複数の信号を監視し、前記信号に従って複数のチャネル状態情報(CSI)を取得し、
前記プロセッサは、前記CSIに従って、前記信号の到来角を計算する、システム。
【請求項2】
前記受信機は、起動時にクライアントモードに構成され、ネットワークタイムプロトコルによって前記タイムサーバから前記時間同期信号を受信する、請求項1に記載の信号センシングのためのシステム。
【請求項3】
前記受信機は、前記クライアントモードから前記信号を監視するスニファモードに構成され、前記信号は、時間情報を有する複数のCSIパケットを含む、請求項2に記載の信号センシングのためのシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、所定の時間間隔で前記受信機が受信したCSIパケットに従って前記到来角を計算する、請求項3に記載の信号センシングのためのシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、アルゴリズムによって前記到来角を計算し、前記アルゴリズムは、MUSICアルゴリズムおよび位相差アルゴリズムを含む、請求項1に記載の信号センシングのためのシステム。
【請求項6】
前記受信機のそれぞれは、直交周波数分割多重(OFDM)受信機である、請求項1に記載の信号センシングのためのシステム。
【請求項7】
信号センシングのためのシステムにおいて使用される信号センシングのための方法であって、
信号センシングのためのシステムは、センシングデバイスと、プロセッサと、タイムサーバとを備え、前記センシングデバイスは、複数の受信機と、該受信機に結合された発振器とを備え、前記信号センシングのための方法は、
前記タイムサーバから時間同期信号を受信することによって前記受信機を同期させるステップと、
前記受信機の各々によって、前記発振器によって生成されたクロックに従って対象物の複数の信号を監視し、前記信号に従ってチャネル状態情報(CSI)を取得するステップと、
前記プロセッサによって前記CSIに従って前記信号の到来角を計算するステップと、を有する方法。
【請求項8】
前記タイムサーバから時間同期信号を受信することによって前記受信機を同期させるステップは、
前記受信機を、起動時にクライアントモードに構成するステップと、
ネットワークタイムプロトコルによって前記タイムサーバから前記時間同期信号を受信するステップと、を有する、請求項7に記載の信号センシングのための方法。
【請求項9】
前記対象物の複数の信号を監視するステップは、
前記受信機を、前記クライアントモードから前記信号を監視するスニファモードに構成するステップと、を有し、
前記信号は、時間情報を有する複数のCSIパケットを含む、請求項8に記載の信号センシングのための方法。
【請求項10】
前記信号の前記到来角を計算するステップは、
所定の時間間隔で前記受信機が受信した前記CSIパケットに従って前記到来角を計算するステップと、を有する、請求項9に記載の信号センシングのための方法。
【請求項11】
前記信号の前記到来角を計算するステップは、
アルゴリズムによって前記到来角を計算するステップと、を有し、前記アルゴリズムは、MUSICアルゴリズムおよび位相差アルゴリズムを含む、請求項7に記載の信号センシングのための方法。
【請求項12】
前記受信機のそれぞれは、直交周波数分割多重(OFDM)受信機である、請求項7に記載の信号センシングのための方法。
【外国語明細書】