(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104812
(43)【公開日】2022-07-11
(54)【発明の名称】U字溝の製造方法
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20220704BHJP
【FI】
E03F5/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205878
(22)【出願日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2020219800
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592218816
【氏名又は名称】羽立化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】横山 雅学
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063CA02
2D063CA12
2D063CA41
(57)【要約】
【課題】省スペースで精度の良いU字溝を成形することができるU字溝の製造方法を提供する。
【解決手段】U字溝100の製造方法は、プレU字溝成形工程と、底部対向面除去工程とを含んでいる。プレU字溝成形工程は、プレU字溝200を成形する。プレU字溝200は、U字溝100における底部101、左側壁102、右側壁103、コーナ部104a,104b、蛇腹部110および連結部120a,120bをそれぞれ有するとともに、これらに加えて底部対向面201が成形されて筒状に構成されている。この場合、底部対向面201には、蛇腹状対向面202および連結部対向面203a,203bがそれぞれ形成されている。底部対向面除去工程は、プレU字溝200に形成された底部対向面201を切断して除去することでU字状のU字溝100を得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が流れる底部およびこの底部の幅方向の両端部からそれぞれ起立する2つの側壁を有して前記底部の上方が開放されたU字状の水路の少なくとも一部の前記底部および前記2つの側壁に山折りと谷折りとが交互に繰り返された蛇腹状の蛇腹部が形成された樹脂製のU字溝の製造方法であって、
前記底部および前記2つの側壁に加えて、前記2つの側壁にそれぞれ直接繋がって前記底部に対向する底部対向面を備えて前記U字溝の断面形状を略方形の筒状に形成したプレU字溝を成形するプレU字溝成形工程と、
前記プレU字溝における前記底部対向面を除去する底部対向面除去工程とを含むことを特徴とするU字溝の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載したU字溝の製造方法において、
前記蛇腹部は、
前記U字溝の左右方向および上下方向にそれぞれ屈曲可能に形成されていることを特徴とするU字溝の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したU字溝の製造方法において、
前記プレU字溝成形工程は、
前記底部対向面に、前記2つの側壁にそれぞれ形成された前記蛇腹部に対して連続的に繋がる蛇腹状の蛇腹状対向面を形成することを特徴とするU字溝の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したU字溝の製造方法において、
前記プレU字溝成形工程は、
前記2つの側壁と前記底部対向面との間の角部に傾斜面状または曲面状に延びる傾倒部を成形するものであり、
前記底部対向面除去工程は、
前記傾倒部の少なくとも一部を残した状態で前記底部対向面を除去することを特徴とするU字溝の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載したU字溝の製造方法において、
前記蛇腹部は、
前記山折り部分に対して前記谷折り部分の厚さが厚く形成されていることを特徴とするU字溝の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載したU字溝の製造方法において、
前記U字溝は、
同U字溝の両端部のうちの少なくとも一方の前記底部および前記2つの側壁が前記水が流れる方向にそれぞれ延びて他のU字溝と連結するための連結部が形成されており、
前記プレU字溝成形工程は、
前記底部対向面に、前記2つの側壁にそれぞれ形成された前記連結部に対して連続的に繋がる連結部対向面を形成するものであり、
前記底部対向面除去工程は、
前記連結部対向面を除去することを特徴とするU字溝の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水が流れる底部およびこの底部の幅方向の両端部からそれぞれ起立する2つの側壁を有して底部の上方が開放された樹脂製のU字溝の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、土木工事、農業用、工業用または上水用の水を供給する用水路または排水のための側溝などに合成樹脂製のU字溝が使用されている。U字溝は、水が流れる底部およびこの底部の幅方向の両端部からそれぞれ起立する2つの側壁を有して底部の上方が開放された断面形状がU字状に形成されている。この場合、U字溝には、底部および2つの側壁に山折りと谷折りとが交互に繰り返された蛇腹部が形成されている。
【0003】
このようなU字溝を製造方法として、例えば、下記特許文献1には、2つまたは4つのU字溝を互いに対向配置した状態で軸線方向に連ねて成形する連続ブロー成形による製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたU字溝の製造方法においては、2つまたは4つのU字溝を同時にかつ連続的に形成するため極めて大掛かりな設備が必要になり製造設備の設置環境が限られるという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、省スペースで精度の良いU字溝を成形することができるU字溝の製造方法を提供することにある。
【発明の概要】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、水が流れる底部およびこの底部の幅方向の両端部からそれぞれ起立する2つの側壁を有して底部の上方が開放されたU字状の水路の少なくとも一部の底部および2つの側壁に山折りと谷折りとが交互に繰り返された蛇腹状の蛇腹部が形成された樹脂製のU字溝の製造方法であって、底部および2つの側壁に加えて、2つの側壁にそれぞれ直接繋がって底部に対向する底部対向面を備えてU字溝の断面形状を略方形の筒状に形成したプレU字溝を成形するプレU字溝成形工程と、プレU字溝における底部対向面を除去する底部対向面除去工程とを含むことにある。
【0008】
このように構成した本発明の特徴によれば、U字溝の製造方法は、2つの側壁にそれぞれ直接繋がって底部に対向する底部対向面を備えてU字溝の断面形状を略方形の筒状体に形成しているためU字溝を深さ方向において小さく成形することができる。この場合、作業者は、プレU字溝成形工程で成形した筒状体で構成されたU字溝の半製品であるプレU字溝に対して直ちに底部対向面除去工程を実行してもよいが、このプレU字溝が筒状体で構成されているため形状の経時的変化を抑えながら省スペースで長期間の保管または輸送することができ、U字溝が必要の際に工場でまたは施工現場で底部対向面除去工程を実行することができる。これらにより、本発明に係るU字溝の製造方法によれば、省スペースで精度の良いU字溝を成形することができる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、前記U字溝の製造方法において、蛇腹部は、U字溝の左右方向および上下方向にそれぞれ屈曲可能に形成されていることにある。
【0010】
このように構成した本発明の特徴によれば、U字溝の製造方法は、蛇腹部がU字溝の左右方向および上下方向にそれぞれ屈曲可能に形成された合成が低いU字溝についても、省スペースで精度の良いU字溝を成形することができる
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記U字溝の製造方法は、プレU字溝成形工程は、底部対向面に、2つの側壁にそれぞれ形成された蛇腹部に対して連続的に繋がる蛇腹状の蛇腹状対向面を形成することにある。
【0012】
このように構成した本発明の特徴によれば、U字溝の製造方法は、プレU字溝成形工程において2つの側壁にそれぞれ形成された蛇腹部に対して連続的に繋がる蛇腹状の蛇腹状対向面を底部対向面に形成しているため、底部対向面を除去する際に蛇腹状対向面におけるどの位置で底部対向面を除去しても側壁に連続的に繋がる蛇腹部を確保でき任意の長さの蛇腹部を有したU字溝を形成することができる。また、本発明によれば、筒状体で構成されたプレU字溝における天地がなくなり、本来の底部を底部対向面とし、本来の底部対向面を底部とすることができるため、精度よく成形できた側の底部または底部対向面を底部として利用するとともに他方を底部対向面として除去することができる。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、前記U字溝の製造方法において、プレU字溝成形工程は、2つの側壁と底部対向面との間の角部に傾斜面状または曲面状に延びる傾倒部を成形するものであり、底部対向面除去工程は、傾倒部の少なくとも一部を残した状態で底部対向面を除去することにある。
【0014】
このように構成した本発明の特徴によれば、U字溝の製造方法は、プレU字溝成形工程において2つの側壁と底部対向面との間の角部に傾斜面状または曲面状に延びる傾倒部を成形するものであり、底部対向面除去工程は傾倒部の少なくとも一部を残した状態で底部対向面を除去しているため、2つの側壁の上端部に内側に屈曲した傾倒部が形成されることで2つの側壁の剛性を高めることができる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、前記U字溝の製造方法において、蛇腹部は、山折り部分に対して谷折り部分の厚さが厚く形成されていることにある。
【0016】
このように構成した本発明の特徴によれば、U字溝の製造方法は、山折り部分に対して谷折り部分の厚さが厚く形成されているため、筒状溝内を流れる水およびこの水の流れに含まれる異物の接触に対する耐久性を向上させることができる。また、本発明に係るU字溝の製造方法によれば、谷折り部分に対して山折り部分の厚さが薄く形成されているため、蛇腹部のU字溝の左右方向および上下方向への曲げ易さが向上させることができる。なお、この場合、蛇腹部は、2つの側壁における各谷折り部分から各山折り部分に向かって厚さが連続的に薄くなるように形成するとよい。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、前記U字溝の製造方法において、U字溝は、同U字溝の両端部のうちの少なくとも一方の底部および2つの側壁が水が流れる方向にそれぞれ延びて他のU字溝と連結するための連結部が形成されており、プレU字溝成形工程は、底部対向面に、2つの側壁にそれぞれ形成された連結部に対して連続的に繋がる連結部対向面を形成するものであり、底部対向面除去工程は、連結部対向面を除去することにある。
【0018】
このように構成した本発明の特徴によれば、U字溝の製造方法は、プレU字溝成形工程においてU字溝の端部に設けられた連結部の底部に対向する連結部対向面を備えてU字溝の断面形状を略方形の筒状体に形成しているためU字溝を深さ方向において小さく成形することができ省スペースで精度の良いU字溝を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るU字溝の製造方法によって製造されるU字溝の外観構成の概略を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すU字溝における蛇腹部の横断面図である。
【
図3】
図1に示すU字溝における蛇腹部の部分拡大断面図である。
【
図4】
図1に示すU字溝の製造工程を示すフローチャートである。
【
図5】
図4に示すプレU字溝成形工程にて成形されたプレU字溝から袋部を除去した状態の外観構成の概略を示す斜視図である。
【
図6】(A),(B)は、
図2に示すプレU字溝成形工程における加工の状態を模式的に示しており、(A)は一対の成形金型の間にパリソンを導入した状態を示す模式図であり、(B)はパリソン導入後成形金型を閉じてエアブローを行った状態を示す模式図である。
【
図7】
図4に示すプレU字溝成形工程にて成形されたプレU字溝の外観構成の概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るU字溝の製造方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るU字溝の製造方法によって製造されるU字溝100の外観構成の概略を示す斜視図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。
【0021】
(U字溝100の構成)
まず、本発明に係るU字溝の製造方法を説明する前に、このU字溝の製造方法によって製造されるU字溝100について説明する。U字溝100は、土木工事、農業用、工業用または上水用の水を供給する用水路または排水のための側溝など水が流れる水路を構成する部品であり、ポリエチレンなどの樹脂材で構成されている。
【0022】
この場合、U字溝100を構成する樹脂材料としては、ポリエチレンの他に、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどの硬質な合成樹脂、または不飽和プリエステルなどの樹脂材にガラス繊維、炭素繊維または有機繊維を含有させた繊維強化樹脂を用いることもできる。このU字溝100は、主として、底部101、左側壁102および右側壁103が一体的に形成されている。
【0023】
底部101は、U字溝100内を流れる水(図示せず)を下方から支持する部分であり、水平方向に帯状に延びる板状板で構成されている。左側壁102および右側壁103は、U字溝100内を流れる水を左右の側方から支持する部分であり、底部101におけるU字溝100の幅方向の両端部からそれぞれ上方に起立した壁状に形成されている。この場合、左側壁102および右側壁103は、U字溝100を流れる水の高さ(つまり、水嵩)以上の高さに形成されている。
【0024】
また、左側壁102および右側壁103は、各上端部分が内側に向かって湾曲した傾倒部102a,103aが形成されている。傾倒部102a,103aは、
図2に示すように、左側壁102および右側壁103の倒れ易さを抑制するための部分であり、U字溝100の溝内に向けて傾倒するように形成されている。本実施形態においては、傾倒部102a,103aは、U字溝100の内側に向かって円弧状に湾曲する曲面で構成されている。
【0025】
また、底部101と左側壁102との間、および底部101と右側壁103との間には、コーナ部104a,104bがそれぞれ形成されている。コーナ部104a,104bは、底部101に対して左側壁102および右側壁103をそれぞれ繋ぐ部分であり、後述する蛇腹形状を維持した曲面で構成されている。
【0026】
これらの底部101、左側壁102、右側壁103およびコーナ部104a,104bには、蛇腹部110および連結部120a,120bがそれぞれ形成されている。蛇腹部110は、U字溝100の上下左右方向への屈曲を可能にするための部分であり、U字溝100の外側に向かって山形に尖って突出した山折りされた山部111とU字溝100の内側に向かって山形に尖って突出した谷折りされた谷部112とが交互に繰り返された蛇腹状に形成されている。
【0027】
この場合、蛇腹部110は、
図3に示すように、山部111の頂部から谷部112の最深部に向かって肉厚が厚くなるように形成されている。つまり、蛇腹部110は、谷部112の肉厚t
112が山部111の肉厚t
111よりも厚く形成されている。このように構成された蛇腹部110は、U字溝100の連結部120aと連結部120bとの間の底部101、左側壁102、右側壁103およびコーナ部104a,104bに一様に形成されている。なお、山部111の肉厚t
111および谷部112の肉厚t
112は、最小部の厚さが0.5mm以上かつ2mm以下でかつ最大部の厚さが2mm以上かつ5mm以下程度がよい。
【0028】
連結部120a,120bは、U字溝100に対して連結される他のU字溝100(図示せず)を連結するための部分であり、U字溝100の両端部にそれぞれ形成されている。より具体的には、連結部120a,120bは、U字溝100の内側で凹状に凹んだ溝状に形成されるとともにU字溝100の外側に向かって突出する嵌合部121a,121bを有して構成されている。
【0029】
これらの嵌合部121a,121bは、左側壁102と右側壁103との間で底部101およびコーナ部104a,104bをそれぞれ介して連続的に延びる溝状に形成されており、左側壁102および右側壁103の各上端部分で深さが浅くなるように形成されている。また、嵌合部121a,121bは、各連結部120a,120bにそれぞれ2つずつ形成されている。また、連結部120a,120bにおける左側壁102および右側壁103の各上端部は、平面状に延びた取付部122a,122bが形成されている。取付部122a,122bは、細長く延びる板状のアングル材(図示せず)を着脱自在に取り付ける部分である。
【0030】
(U字溝100の製造方法)
次に、このように構成したU字溝100の製造方法について
図4ないし
図7をそれぞれ参照しながら説明する。まず、U字溝100を製造する作業者は、第1工程として、プレU字溝200を成形するための成形金型300を用意する。ここで、プレU字溝200は、
図5に示すように、U字溝100が完成する前の半製品であり、成形金型300によって成形される。
【0031】
具体的には、プレU字溝200は、U字溝100における底部101、左側壁102、右側壁103、コーナ部104a,104b、蛇腹部110および連結部120a,120bをそれぞれ有するとともに、これらに加えて底部対向面201が成形されて構成されている。
【0032】
底部対向面201は、左側壁102および右側壁103にそれぞれ直接繋がった状態で左側壁102と右側壁103との間に形成されて左側壁102と右側壁103とを繋げる部分であり、底部101に対向する面状に形成されている。この底部対向面201は、蛇腹状対向面202および連結部対向面203a,203bをそれぞれ備えている。
【0033】
蛇腹状対向面202は、底部101に形成された蛇腹部110に対向して形成される部分であり、底部101に形成された蛇腹部110と同様の蛇腹状に形成されている。この蛇腹状対向面202における幅方向両端部には、蛇腹形状を維持した状態で曲面状に延びる傾倒部102a,103aがそれぞれ形成されている。この場合、傾倒部102a,103aは、コーナ部104a,104bと上下対称な同じ形状に形成されている。すなわち、プレU字溝200は、底部101、コーナ部104a,104b、左側壁102、右側壁103、傾倒部102a,103aおよび底部対向面201に蛇腹部110が一様に連続的に繋がった状態で形成されている。
【0034】
連結部対向面203a,203bは、底部101に形成された連結部120a,120bにそれぞれ対向して形成される部分であり、平面状に延びて形成されている。より具体的には、連結部対向面203a,203bは、取付部122a,122bの各先端部からそれぞれ内側に向かって曲面状に延びた後、底部101と平行に延びる平面状に形成されている。これらにより、プレU字溝200は、横断面形状が略方形状に形成されている。
【0035】
したがって、成形金型300は、プレU字溝200を成形する形状、具体的には、プレU字溝200を反転させた凹状の形状に形成されている。この場合、成形金型300は、
プレU字溝200の左側半分を成形する左方金型301とプレU字溝200の右側半分を成形する右方金型302とで構成されている。そして、作業者は、用意した成形金型300を図示しないブロー成形機に取り付ける。ここで、ブロー成形機は、溶融した樹脂材料を金型内に導入して冷却することで樹脂成形品を得る公知の機械装置である。
【0036】
次に、作業者は、第2工程として、プレU字溝200を成形する。具体的には、作業者は、ブロー成形機を操作して、
図6(A)に示すように、一対の成形金型300を構成する左方金型301と右方金型302と間に樹脂材料を溶融させて筒状に形成したパリソンPを導入した後、左方金型301と右方金型302とを閉じてパリソンPの内側から気体を吹き込む。これにより、パリソンPは、
図6(B)に示すように、左方金型301および右方金型302の各内側表面に密着する。
【0037】
この場合、ブロー成型機は、パリソンPの導入タイミング、導入温度、導入量、導入速度、エアブローのタイミング、エアブローの供給量、エアブローの温度、成形金型300の温度および成形金型300の冷却タイミングなどを適宜制御してプレU字溝200を成形する。そして、ブロー成形機は、成形金型300を冷却した後、左方金型301と右方金型302とを開く。これにより、作業者は、プレU字溝200を得ることができる。
【0038】
この場合、プレU字溝200は、
図7に示すように、プレU字溝200の両端部のうちの成形金型300の底側となる連結部120aの端部が袋部204aによって閉塞された状態で成形されるとともに、パリソンPの導入側(図示上部側)がエアブローのための空間を残して袋部204bによって閉塞された状態で成形される。この第2工程におけるプレU字溝200を成形する工程が、本発明に係るプレU字溝成形工程に相当する。なお、袋部204a,204bは、本実施形態におけるブロー成形の製法上成形されるものであり、プレU字溝200に必ず必要なものではない。
【0039】
次に、作業者は、第3工程として、プレU字溝200における底部対向面201を除去する。具体的には、作業者は、ジグソーなどの切断工具を用いてプレU字溝200における袋部204a,204bをそれぞれ切除する(
図5参照)。次いで、作業者は、前記切断工具を用いてプレU字溝200における連結部対向面203a,203bをそれぞれ切除する。次いで、作業者は、前記切断工具を用いてプレU字溝200における蛇腹状対向面202を切除する。
【0040】
この場合、作業者は、傾倒部102a,103aの少なくとも一部が左側壁102および右側壁103の各上端部に残るように傾倒部102a,103aまたは蛇腹状対向面202を切除する。これにより、作業者は、U字溝100を完成させることができる(
図1参照)。この第3工程における底部対向面201を除去工程が、本発明に係る底部対向面除去工程に相当する。
【0041】
(U字溝100の作動)
このように構成されたU字溝100は、施工現場において複数のU字溝100が連結部120a,120bを介して長尺状に互いに連結された状態で外表面が土中またはコンクリートによって埋められる。これにより、U字溝100は、上方が開口した開渠構造の三面水路を構成することができる。この場合、U字溝100は、水路の形状に応じて適宜蛇腹部110が曲げられた状態で設置される。すなわち、作業者は、U字溝100における蛇腹部110を上下左右の各方向に曲げて設置することできる。
【0042】
この場合、作業者は、蛇腹部110における山部111の肉厚t111が谷部112の肉厚t112よりも薄く形成されているため容易に曲げることができる。すなわち、蛇腹部110は、谷部112よりも外側に位置する山部111の厚さを薄くすることで変形し易くすることで全体として屈曲し易くすることができる。
【0043】
そして、U字溝100は、U字溝100内に水が流れることで水路として機能する。この場合、U字溝100は、溝内における内側に張り出す谷部112の肉厚t112が山部111の肉厚t111に比べて厚く形成されているため、溝内を流れる水または異物の接触による摩耗または破れなどの損傷を抑制することができる。
【0044】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、U字溝100の製造方法は、2つの側壁である左側壁102および右側壁103にそれぞれ直接繋がって底部101に対向する底部対向面201を備えてU字溝100の断面形状を略方形の筒状体に形成しているためU字溝100を深さ方向において小さく成形することができる。この場合、作業者は、プレU字溝成形工程で成形した筒状体で構成されたプレU字溝200に対して直ちに底部対向面除去工程を実行してもよいが、このプレU字溝200が筒状体で構成されているため形状の経時的変化を抑えながら省スペースで長期間の保管または輸送することができ、U字溝100が必要の際に工場でまたは施工現場で底部対向面除去工程を実行することができる。これらにより、本発明に係るU字溝100の製造方法によれば、省スペースで精度の良いU字溝を成形することができる。
【0045】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態においては、プレU字溝成形工程で底部対向面201に蛇腹状対向面202を形成した。しかし、プレU字溝成形工程においては、プレU字溝200に対して底部対向面201を形成すればよい。したがって、プレU字溝成形工程においては、例えば、底部対向面201を平坦な平面に形成することもできる。
【0047】
また、上記実施形態においては、プレU字溝成形工程は、ブロー成形によってプレU字溝200を成形するように構成した。しかし、プレU字溝成形工程は、ブロー成形以外の加工方法、例えば、回転成形、射出成形、真空成形、圧空成形および押出成形などの各種成形手法を用いてプレU字溝200を成形することができる。
【0048】
また、上記実施形態においては、底部対向面除去工程にて作業者は、切断工具を用いた手作業で底部対向面201の除去を行った。しかし、作業者は、成形金型300からのプレU字溝200の取り出しも含めて底部対向面201の除去作業を機械装置を用いて自動的に行ってもよいことは当然である。
【0049】
また、上記実施形態においては、作業者は、第2工程におけるプレU字溝成形工程の後、直ちに底部対向面除去工程を実行した。しかし、第3工程に係る底部対向面除去工程は、第2工程に係るプレU字溝成形工程の後、U字溝100を出荷するタイミングまたはU字溝100を使用するタイミングで実行することができる。すなわち、第3工程に係る底部対向面除去工程は、第2工程に係るプレU字溝成形工程の後、一時的に保管された後に実行またはU字溝100の仕様現場に輸送された後に現場にて実行されてもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、U字溝100は、連結部120a,120bを備えて構成した。しかし、U字溝100は、連結部120a,120bを省略して構成されていてよい。この場合、プレU字溝200は、連結部対向面203a,203bも省略することができる。
【0051】
また、上記実施形態においては、U字溝100は、蛇腹部110が上下左右の各方向に屈曲可能に形成されている。すなわち、U字溝100は、2つのU字溝100同士を可動的に連結する継手として構成した。しかし、U字溝100は、蛇腹部110が屈曲不能な剛性を有して構成されていてもよい。U字溝100は、2つのU字溝100同士を固定的に連結する継手、または屈曲不能に延びる水路を構成するU字溝として構成することもできる。
【0052】
また、上記実施形態においては、U字溝100は、蛇腹部110と連結部120a,120bとを備えて構成した。しかし、U字溝100は、底部101、左側壁102および右側壁103に蛇腹部110を備えて構成されていればよい。したがって、U字溝100は、底部101、左側壁102および右側壁103に蛇腹部110のほかに、蛇腹形状ではない平坦な水路部分を有して構成されていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、U字溝100は、傾倒部102a,103aを備えて構成した。これにより、U字溝100は、左側壁102および右側壁103の剛性を向上させることができる。しかし、U字溝100は、傾倒部102a,103aを省略して構成することもできる。この場合、プレU字溝成形工程においては、プレU字溝200に対して傾倒部102a,103aの成形は不要である。
【0054】
また、上記実施形態においては、傾倒部102a,103aは、曲面で構成した。しかし、傾倒部102a,103aは、曲面以外の形状、例えば、傾斜面で構成することができる。この場合、プレU字溝成形工程においては、プレU字溝200に対して傾斜面からなる傾倒部102a,103aを成形する。
【0055】
また、上記実施形態においては、蛇腹部110は、山部111の厚さ(肉厚t111)を谷部112の厚さ(肉厚t112)よりも薄く形成した。これにより、U字溝100は、蛇腹部110を屈曲させ易くすることができる。しかし、蛇腹部110は、山部111の厚さを谷部112の厚さよりも厚く形成してもよいし、山部111の厚さと谷部112の厚さを同じ厚さに形成することもできる。
【符号の説明】
【0056】
P…パリソン、t111…山部の肉厚、t112…谷部の肉厚、
100…U字溝、
101…底部、102…左側壁、102a…傾倒部、103…右側壁、103a…傾倒部、104a,104b…コーナ部、
110…蛇腹部、111…山部、112…谷部、
120a,120b…連結部、121a,121b…嵌合部、122a,122b…取付部、
200…プレU字溝、201…底部対向面、202…蛇腹状対向面、203a,203b…連結部対向面、204a,204b…袋部、
300…成形金型、301…左方金型、302…右方金型。