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特開2022-104828フィブリンに富む/軟らかい血塊の機械的血栓除去デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104828
(43)【公開日】2022-07-11
(54)【発明の名称】フィブリンに富む/軟らかい血塊の機械的血栓除去デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20220704BHJP
【FI】
A61B17/22 528
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021214051
(22)【出願日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】17/136,346
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515248931
【氏名又は名称】ニューラヴィ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】デクラン・リー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE22
4C160MM36
(57)【要約】
【課題】改良された血塊回収デバイスを提供すること。
【解決手段】セルの拡張可能な内側本体が、セルの拡張可能な外側ケージ内で延びる二重層を有することができる、身体血管から硬い血塊及び軟らかい血塊の両方を除去することができるデバイスについての設計が開示されている。本設計は、拘束された送達構成と、拡張された展開構成と、を特徴とすることができる。外側ケージは、デバイスへの血塊の組み込みを可能にするために、広い開口部ストラットを有することができる。内側本体及び外側ケージの両方は、それに埋め込むことに加えて、血塊を挟持する形状で構成することができる。デバイスはまた、標的血塊と係合してそれを内在化した後に、外側ケージの一部分を折り畳み、近位に反転させることができる。これらの要因により、全ての組成物の血塊を捕捉するデバイスの能力を増加させることができ、より安全かつより効率的な血流回復を可能にすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管から血塊を除去するためのデバイスであって、
内部を通って延在する内腔を備える近位チューブ状シャフトと、
拘束された送達構成と、拡張された血塊係合展開構成と、少なくとも部分的に拘束された血塊挟持構成と、を有する、ストラットのフレームワークであって、前記ストラットのフレームワークが、
遠位端と、長手方向軸と、前記展開構成から前記血塊挟持構成への移動時に前記血塊を挟持するように構成された1つ又は2つ以上の血塊挟持セルと、を備える、細長い内側本体と、
前記細長い内側本体の前記遠位端に接続され、前記細長い内側本体よりも大きい径方向範囲に拡張可能な外側ケージと、を備える、ストラットのフレームワークと、
前記近位チューブ状シャフトの前記内腔を通って延在し、かつ前記外側ケージに固定的に接続された1つ又は2つ以上のプルワイヤであって、前記プルワイヤが、前記拡張された展開構成から反転された血塊収容構成へと前記外側ケージを移動させるように構成されている、1つ又は2つ以上のプルワイヤと、を備える、デバイス。
【請求項2】
前記内側本体及び前記外側ケージが、単一の連続チューブをレーザ切断することを通して、モノリシックに形成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
各挟持セルが、前記セルの前記近位及び遠位端に馬蹄形状のサドル点を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記プルワイヤが、クリンプクランプ、溶接、又は編組のうちの少なくとも1つによって、連結点において前記外側ケージに接続されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記外側ケージの前記ストラットは、前記外側ケージが前記拡張された展開構成から前記反転された血塊収容構成に移動されるときに、近位に反転するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記外側ケージの前記ストラットが、前記反転された血塊収容構成において、前記血塊及び前記細長い内側本体を取り囲む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記近位チューブ状シャフトが、0.533mm(0.021インチ)以下の外径を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記細長い内側本体が、前記拡張された展開構成において、およそ2.25mmの外径を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記外側ケージが、前記反転された血塊収容構成において、およそ5mmの外径を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
血管から硬い血塊及び軟らかい血塊の両方を除去するための血塊回収デバイスであって、
長手方向軸と、
近位シャフトと、
拘束された送達構成、拡張された展開構成、及び少なくとも部分的に拘束された血塊挟持構成と、
一連の血塊受容セルを形成するストラットを備える内側本体であって、前記セルが、前記拡張された展開構成において、前記長手方向軸に沿って略正弦波パターンで延在する、内側本体と、
一連のセグメントを備える外側ケージであって、各セグメントが、前記展開構成から前記血塊挟持構成への移動時に前記血塊を挟持するように構成された2つのセルを備える、外側ケージと、
前記外側ケージの前記遠位端に接続された先細のストラットメッシュであって、前記ストラットメッシュが、閉鎖端部を備え、血塊断片に対するバリアとして構成されている、先細のストラットメッシュと、を備える、デバイス。
【請求項11】
前記外側ケージの各セルが、前記セルの前記近位及び遠位端において馬蹄形状のサドル点を備え、前記サドル点は、前記デバイスが前記血塊挟持構成に移動される際に、前記血塊の少なくとも一部分を圧縮及び挟持するように構成されている、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記内側本体が、前記拡張された展開構成において、1.25mm~1.5mmの範囲の外径を有する、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記外側ケージが、前記拡張された展開構成において、およそ5mmの外径を有する、請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
前記血塊挟持構成は、カテーテルを、前記血塊の少なくとも一部分が前記カテーテルの前記先端と前記外側ケージの前記ストラットの少なくとも一部分との間で圧縮されるまで前記内側本体及び前記外側ケージの前記近位端の上に前進させることによって達成される、請求項10に記載のデバイス。
【請求項15】
前記外側ケージの前記セグメントが、可撓性コネクタストラットによって隣接するセグメントにヒンジ接合されており、前記コネクタストラットが、それぞれのセグメント間の唯一の接触点である、請求項10に記載のデバイス。
【請求項16】
前記内側本体の前記セルが、前記血塊の少なくとも一部分を埋め込み、かつ安定化させるように構成された少なくとも1つの屈曲部を備える、請求項10に記載のデバイス。
【請求項17】
前記外側ケージの前記近位端が、チューブ状外側カラーを備える、請求項10に記載のデバイス。
【請求項18】
前記内側本体が、前記外側ケージの前記外側カラーの内径よりも小さい外径を有するチューブをレーザ切断することによって、モノリシックに形成されている、請求項17に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、血管内医療処置中に身体血管から急性遮断物を除去するためのデバイス及び方法に関する。より具体的には、本開示は、血管から血塊を除去するための血塊回収デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
血管から急性閉塞物を除去するために、機械的デバイス及び方法を使用することができる。急性閉塞物としては、血塊、誤配置されたデバイス、移動したデバイス、大きな塞栓などが挙げられ得る。血栓塞栓症は、血栓の一部又は全てが血管壁から剥離したときに発生する。この血塊(ここでは、塞栓と呼ぶ)は次いで血流の方向に搬送されるが、それによって多くの合併症が引き起こされ得る。虚血性脳卒中は、脳の血管系内に血塊が詰まった場合に結果として生じ得る。肺塞栓症は、血塊が静脈系で又は心臓の右側で発生し、かつ肺動脈又はその支脈内で詰まった場合に、結果として生じ得る。血塊はまた、解放されずに塞栓の形状で発達して血管を局所的に遮断し得るが、この機序は、冠状動脈の遮断物の形成において一般的である。本明細書におけるデバイス及び方法は、急性虚血性発作(acute ischemic stroke、AIS)に苦しむ患者の大脳動脈から、肺塞栓症(pulmonary embolism、PE)に苦しむ患者の肺動脈から、心筋梗塞(myocardial infarction、MI)に苦しむ患者の本来の又は移植された冠血管から、そして血塊が閉塞を引き起こしているその他の末梢動脈及び静脈から、血塊を除去するのに特に適している。
【0003】
標的部位にデバイスを送達することを困難にし得る、アクセスに関する多くの課題が存在する。アクセスが大動脈弓を誘導することを伴う場合(冠状動脈閉塞又は脳閉塞など)、一部の患者における大動脈弓の形状は、ガイドカテーテルを位置付けることを困難にする。蛇行の問題は、脳に近づく動脈では、更により深刻である。内頸動脈の遠位端においては、デバイスが、わずか数センチメートルの移動にわたって数回の危険を伴う屈曲を間断なく伴って血管部分を進まなければならないことも珍しくない。肺塞栓症の場合、静脈系を通り、次いで心臓の右心房及び右心室を通ってアクセスを得ることができる。右室流出路及び肺動脈は、不可撓性又は高プロファイルのデバイスによって容易に損傷する可能性のある繊細な血管である。これらの理由から、血塊回収デバイスは、可能な限り低プロファイルでかつ可撓性のアクセスカテーテルと適合性があることが望ましい。
【0004】
ステント様血塊レトリーバデバイスは、急性脳卒中患者の脳血管から血塊を除去するために、ますます使用されるようになっている。これらのデバイスは多くの場合、自己拡張型ステント様本体と血管壁との間に血塊を捕捉することによって血塊を把持する挟み込み(pinning)機構に依存する。このアプローチは、多くの欠点を有する。
【0005】
ステント様血塊レトリーバは、後退中、その外向きの径方向力に依存して血塊に対するその把持力を維持する。この圧縮力は、血塊を脱水する傾向があり、これはひいては、その摩擦係数を増加させ、血管から血塊を追い出すこと及び除去することをより困難にし得る。径方向力が小さすぎる場合、ステント様血塊レトリーバは、血塊に対するその把持力を失い得るが、径方向力が大きすぎる場合、ステント様血塊レトリーバは血管壁を傷つける場合があり、また引き抜くために過度に強い力が必要になる場合がある。したがって、全ての血塊タイプに対処するのに十分な径方向力を有するステント様血塊レトリーバは、血管外傷及び重篤な患者損傷を引き起こす場合があり、また非外傷性を維持するのに適切な径方向力を有するステント様血塊レトリーバは、多様な血栓除去術の状況において全ての血塊タイプを効果的に取り扱うことが可能でない場合もある。ステント様血塊レトリーバと血管壁との間に血塊を挟み込むことはまた、血塊が除去される際に血塊の側部に対して高い剪断力をもたらし、場合によっては血塊の断片を解放することになる。これらの断片がデバイスによって保持されない場合、それらは移動して遠位血管系内の更なる閉塞をもたらし得る。
【0006】
特定の従来の血栓除去デバイス設計はまた、それらのストラット要素が互いに接続される方法が原因で、血管の屈曲部内で張力下に置かれたときに、それらの拡張した形状をあまり良好に保持しないが、その結果、ストラットは後退中も張力下に置かれることになる。この張力は、デバイスと血管との間の摩擦に起因するものであり、付加的な荷重が、血塊によってもたらされる抵抗などの加荷重である場合に増加する。これにより、ステント様血塊レトリーバが蛇行状血管の屈曲部の周りで近位に引き抜かれるときに、血塊に対する把持力の低下が生じる可能性があり、捕捉された血塊が抜け出す可能性を伴う。屈曲部において、屈曲部の外部のストラットは、内部のストラットよりも高い張力下に置かれる。可能な限り低いエネルギー状態を達成するために、血塊回収デバイスの外面は、屈曲部の内面に向かって移動し、それによってストラットの張力を低減するが、デバイスの拡張時直径も低減させる。
【0007】
この環境での処置効率を求める際に、多数の本体を有する血塊回収デバイスが多くの場合、好ましい。このようなデバイスは、標的血管に足場組みすることができる外側本体と、血塊を埋め込み及び捕捉するための内側本体と、を有し得る。これらのデバイスは、血塊と係合すること及び血塊を追い出すことにおいては十分に機能し得るが、より大きく、また多くの場合はより剛性の高いストラットのネットワークを有することは、デバイスを後退させ、部分的に又は完全に折り畳んで外側カテーテル内にデバイスを再度鞘入れすることを潜在的により困難にし得る。加えて、これらのデバイスは、血塊が典型的には外側部材を通って径方向内側に移動することを求められるように設計されているため、デバイスは、血塊の周辺領域上ではあまり堅固な把持力を有さないことがある。
【0008】
加えて、従来の血栓除去デバイスは、通常、フィブリンに富む又は軟らかい血塊のいずれかを除去することを目的とする。現在、血栓除去デバイスの導入の前に、血塊がフィブリンに富んでいるか、軟らかくて砕けやすいか(又は2つの何らかの組み合わせか)どうかを識別する方式は存在せず、どのデバイスが初回通過成功の確率を改善して患者に対するリスクを低減するかを、ユーザが知ることを妨げている。更に、血塊の不均質性は、血塊が、血塊全体の解剖学的構造の近位、中央、又は遠位部分にフィブリンに富むコアを含むことができることを意味し得、均一かつ確実な把持をより困難にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
あらゆるデバイスが、あらゆるタイプの血塊を除去し、流れを回復させ、良好な患者転帰を容易にすることにおける高いレベルの成功をもたらすためには、上述した課題を克服する必要がある。本設計は、上記の欠陥に対処する改良された血塊回収デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示される設計は、内側及び外側部材が協調して作用して血塊を捕捉及び除去する可撓性二重層血塊回収デバイスを提供することによって、これらの問題を解決する。本設計は、フィブリンに富む粘着性のある血塊を捕捉するのに、軟らかく、砕けやすい血塊と同じくらい効果的である特徴を有する初回通過デバイスとしての使用を意図することができる。
【0011】
本設計は、拘束された送達構成と、拡張された展開構成と、を特徴とし得る。外側部材は、デバイスへの血塊の組み込みを可能にするために、広い開口部ストラットを有することができる。内側及び外側部材の両方は、それに埋め込むことに加えて、血塊を挟持するように構成及び成形することができる。いくつかの実施例では、デバイスの少なくともいくつかの部分は、標的血塊と係合してそれを内在化及び保護した後に、近位に折り畳み、反転することができる。これらの動作は、回収の全ての段階中に、血塊に対するデバイスの把持の確実性を増加させることができ、より安全でかつより効率的な血流回復を可能にする。
【0012】
デバイスは、内部を通って延在する内腔を用いて操作するための近位チューブ状シャフトを有することができる。シャフトは、用途に応じて様々なサイズであり得る。一実施例では、シャフトは、0.021インチ以下の外径を有するハイポチューブである。別の実施例では、シャフトは、およそ0.026インチの外径を有することができる。シャフトの遠位は、拘束された送達構成、標的部位に展開されたときの拡張された血塊係合展開構成、及び少なくとも部分的に拘束された血塊挟持構成を有するストラットのフレームワークとすることができる。
【0013】
いくつかの実施例では、ストラットのフレームワークは、細長い内側本体及び外側ケージを形成することができる。1つの場合では、内側本体及び外側ケージは、単一の連続ハイポチューブからレーザ切断することができる。別の場合では、近位シャフト、内側本体、及び外側ケージは全て、同じ連続ハイポチューブから切断することができる。内側本体は、デバイスが展開構成から血塊挟持構成に移行したときに血塊を挟持するように構成された、遠位端、長手方向軸、及び1つ又は2つ以上の血塊挟持セルを有することができる。外側ケージは、内側本体の周りに配置することができ、内側本体の遠位端から延在することができ、又はこれらの何らかの組み合わせであることができる。外側ケージは、拡張された内側本体よりも大きい径方向範囲に拡張可能であり得、又は同じ又は同様の径方向寸法を有することができる。
【0014】
血塊挟持構造は、様々な形態をとることができる。挟持構造体は、一連の血塊受容セルを有することができる。セルは、クラウン間に延在する1つ又は2つ以上の可撓性ストラットからなることができる。セルは、セルの近位端及び遠位端に馬蹄形状のサドル点を有することができ、それにより、セルは、ストラットが径方向圧縮にあるときに、セル内の血塊の部分を収縮させることができる。これらのパターンは、デバイスが拡張された展開構成から部分的に拘束された血塊挟持構成に移行する際に、カテーテルの先端とセルのストラットの少なくとも一部分との間で血塊を圧縮及び把持するために、マイクロカテーテル又は外側カテーテルが挟持構造セルの近位端の上に前進することを可能にする。別の実施例では、血塊挟持構造体は、波状又は螺旋状に配置されたストラットの平坦なパターンであることができる。
【0015】
内側本体及び外側ケージの特性は、互いに独立して調整され得る。外側ケージは、内側本体と同軸であってもよく、あるいは径方向にオフセットされていてもよい。内側本体は、実質的に外側ケージの内腔内に配置され得る。
【0016】
いくつかの実施例では、プルワイヤは、近位チューブ状シャフトの内腔を通って延在し、連結点で外側ケージに固定的に接続され得る。連結点は、クリンプクランプ、溶接、又は編組のうちの少なくとも1つであり得る。シャフトの近位端でプルワイヤを操作するユーザは、拡張された展開構成から反転された血塊収容構成に外側ケージを移行させることができる。この移行中、プルワイヤは、外側ケージを反転させることができ、それにより、その少なくとも一部が移行点で折られ、内側本体の上で近位に戻ることができる。したがって、外側ケージのストラットは、血塊及び血塊収容構成内の内側本体を取り囲むことができる。この反転は、後続の後退及び除去のために、血塊の軟らかい部分及び硬い部分の両方を内在化及び包含することができる。場合によっては、外側ケージの残りの遠位部分はまた、血塊回収中の断片保護要素として機能するように、プルワイヤの作動時に径方向外側に広がってもよい。
【0017】
いくつかの実施例では、内側本体及び外側ケージの径方向サイズは、用途及び血管系内の潜在的な標的閉塞の位置に応じて、熱処理及び変化させることができる。神経血管内の標的に関して、細長い内側本体は、拡張された展開構成において、およそ2.25mmの外径を有することができる。同様に、外側ケージは、拡張された展開構成及び反転された血塊収容構成において、およそ5mmの外径を有することができる。
【0018】
血塊回収デバイスの別の設計は、長手方向軸、近位シャフト、内側本体、外側ケージ、及び外側ケージの遠位端に接続された先細のストラットメッシュを有することができる。内側本体、外側ケージ、及びストラットメッシュは、拘束された送達構成、拡張された展開構成、及び少なくとも部分的に拘束された血塊挟持構成を有することができる。血塊にわたって展開された後、血塊挟持構成は、カテーテルを、血塊の少なくとも一部分が、カテーテルの先端と、内側本体、外側ケージ、又は内側本体及び外側ケージの組み合わせのストラットの少なくとも一部分との間で圧縮されるまで内側本体及び外側ケージの近位端の上に前進させることによって達成され得る。
【0019】
いくつかの実施例では、内側本体は、一連の血塊受容セルを形成するストラットを有し得る。セルは、拡張された展開構成において長手方向軸に沿って概して正弦波パターンで延在するように熱処理され得る。別の実施例では、セルは、軸の周りに螺旋パターンを形成する。1つの場合では、内側本体のセルは、拡張されたときに血塊と共に埋め込み、それを安定化するように構成される。別の場合では、内側本体のセルは、血塊の少なくとも一部分と共に埋め込み、それを安定化するように構成された少なくとも1つの屈曲部を有することができる。内側本体は、径方向サイズの範囲であり得る。いくつかの実施例では、内側本体は、拡張された展開構成において、1.25mm~1.5mmの範囲の外径を有することができる。
【0020】
外側ケージは、デバイスの長さに沿って軸方向に延在する一連のセグメントを有することができる。各セグメントは、1つ又は2つ以上のセルを有することができる。いくつかの実施例では、各セグメントは、2つのセルを有することができる。外側ケージの各セルは、デバイスが血塊挟持構成に移動される際に、血塊の少なくとも一部分を圧縮及び挟持するように構成された、セルの近位端及び遠位端に馬蹄形状のサドル点を有することができる。血塊挟持構成は、ストラットが径方向に圧縮される際に、カテーテルを、血塊の少なくとも一部分が、カテーテルの先端と外側ケージのストラットの少なくとも一部分との間で圧縮されるまで内側本体及び外側ケージの近位端の上に前進させることによって達成され得る。隣接する軸方向セグメントは、それぞれのセグメント間の唯一の接触点であり得る可撓性コネクタストラットによってヒンジ接合することができる。したがって、セグメントは、デバイスが血管系内の屈曲部を通って前進又は後退する際に、独立して曲がることができる。
【0021】
外側ケージは、血管系内の標的位置に応じて様々なサイズであることができる。一実施例では、外側ケージは、拡張された展開構成において、およそ3mmの外径を有することができる。別の実施例では、外側ケージは、拡張された展開構成において、およそ5mmの外径を有することができる。
【0022】
内側及び外側本体は、同じシャフトを共有し、長手方向軸の周りで同軸であることができる。シャフトとの近位インターフェース継手において、外側ケージは、シャフトに外接する完全に円周方向のチューブ状外側カラーを有することができる。内側本体は、外側ケージの外側カラーの内径よりも小さい外径を有するチューブをレーザ切断して形成することができる。したがって、内側本体は、外側カラー内で摺動することができる近位インターフェースにカラーを有することができる。
【0023】
開示された実施例を初回通過デバイスとして使用して、血管から硬い血塊及び軟らかい血塊の両方を取り出すための方法は、内側本体、外側ケージ、及び近位シャフトを有するデバイスを含むことができる。内側本体は、チューブをレーザ切断することによってモノリシックに形成することができ、血塊の少なくとも一部分と共に埋め込むように構成されたセルを形成するストラットを有する。場合によっては、外側ケージはまた、同じ連続チューブから切断され、内側本体の遠位に延在することができる。他の場合には、外側ケージは、長手方向軸に沿って内側本体の周りに延在し、内側本体よりも大きい径方向範囲に拡張可能であり得る。外側ケージはまた、血塊の少なくとも一部分と共に埋め込むが、血塊の一部が径方向内側に移動することを可能にするように構成されている、セルを形成するストラットを有することができる。デバイスは、拘束された送達構成、拡張された展開構成、及び少なくとも部分的に拘束された血塊挟持構成を有することができる。
【0024】
本方法は、標的血塊の部位に隣接する血管にデバイスを送達する工程を含むことができる。血塊組成物は、硬いか、軟らかいか、又は硬い部分及び軟らかい部分の両方で混合したものであり得る。デバイスは、拘束された送達構成から拡張された展開構成にデバイスを拡張することによって、外側ケージのセルのうちの少なくとも1つ及び内側本体のセルのうちの少なくとも1つを血塊内に埋め込むように抜き放すことができる。
【0025】
別の工程は、外側カテーテルが内側本体及び外側ケージの近位端と係合し、これに衝突して、内側本体、外側ケージと共に血塊の少なくとも硬い部分を圧縮して挟持するように、外側カテーテルを遠位に前進させることを含み得る。外側カテーテルは、マイクロカテーテル、アクセスカテーテル、又は別の好適な外側シースであることができる。デバイスが引き抜かれている間、挟持は維持され得、血塊上の把持力は失われない。
【0026】
いくつかの実施例では、内側本体及び/又は外側ケージのセルは、外側カテーテルの遠位前進によって圧縮されるように成形された屈曲部又は馬蹄形状のサドル点を形成するストラットを有することができる。本方法は、次いで、外側カテーテルと係合したときに、内側本体セルのうちの少なくとも1つの馬蹄形状のサドル点において血塊の少なくとも一部分を挟持する工程を更に含むことができる。代替的に、又はそれに加えて、本方法は、外側カテーテルと係合したときに、外側ケージセルのうちの少なくとも1つの馬蹄形状のサドル点において血塊の少なくとも一部分を挟持する工程を更に含むことができる。
【0027】
血塊が砕けやすく、挟持を達成するのに十分な剛性がない場合、ユーザは、デバイスのシャフトが後退したとき、又は外側カテーテルが遠位に前進したときに、触覚抵抗の欠如を感じることができる。このシナリオでは、外側カテーテルを引き抜くことができ、デバイスを拡張構成に再展開して血塊を埋め込むことができる。いくつかの実施例では、外側ケージのストラットは、デバイスの上で反転させることができ、この方法は、ストラットを近位に反転させて血塊及び内側本体を内在化する工程を含むことができる。内側本体は、外側ケージストラットが反転されている間に適所に保持され得、その結果、血塊は近位に押されない。
【0028】
硬い及び/又は軟らかい血塊がデバイスによって捕捉されたとき、本方法は、血塊回収デバイス及び捕捉された血塊を患者から除去する工程を含むことができる。これは、例えば、吸引を使用して、デバイスをガイドカテーテル内に近位に回収することによって行うことができる。血塊の硬い部分が挟持され得る場合、血塊上の把持力が失われないように、この工程中、挟持を維持することができる。加えて、外側ケージのストラットが近位に反転されて(張力をかけられたプルワイヤ又は他の方法を使用して)血塊を内在化し、固定するのを助ける場合、この構成もまた維持することができる。
【0029】
閉塞性血塊の一部又は全てを回収した後、血管が開存している程度まで評価を行うことができる。閉塞物が血管内に残っている場合、付加的な通路が血塊回収デバイスによって形成され得る。次いで、標的血管が適切に再開通したことが確認されると、残りの全てのデバイスを患者から除去することができる。しかしながら、本開示のデバイスは、患者を治療するために必要とされるカテーテルの前進回数を最小限に抑えるための手段を提供し、それによって、複数の通路が必要とされる場合にも、血管損傷の可能性及び関連する血管解離のリスクを低減する。
【0030】
本開示の他の態様及び特徴は、以下の詳細な説明を添付の図と併せて考察することで、当業者には明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の上記及び更なる態様は、添付の図面と併せて以下の説明を参照して更に考察され、同様の参照番号は、機能的に類似又は同一の要素を示す。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、本発明の原理を例示することに主眼が置かれている。図は、限定としてではなく単なる例示として、本発明のデバイスの1つ又は2つ以上の実装形態を描写している。
図1】本発明の態様による、血塊回収デバイスの視図である。
図2】本発明の態様による、プルワイヤを使用して外側ケージのストラットが近位に反転された、図1の血塊回収デバイスを示す。
図3A】本発明の態様による、軟らかい構成要素及び硬い構成要素の両方を有する血塊を捕捉するための血塊回収デバイスの使用方法を図示する。
図3B】本発明の態様による、軟らかい構成要素及び硬い構成要素の両方を有する血塊を捕捉するための血塊回収デバイスの使用方法を図示する。
図3C】本発明の態様による、軟らかい構成要素及び硬い構成要素の両方を有する血塊を捕捉するための血塊回収デバイスの使用方法を図示する。
図4A】本発明の態様による、軟らかい血塊を捕捉するための血塊回収デバイスの使用方法を明示する。
図4B】本発明の態様による、軟らかい血塊を捕捉するための血塊回収デバイスの使用方法を明示する。
図5A】本発明の態様による、図4A図4Bの方法の工程の続きを描写する。
図5B】本発明の態様による、図4A図4Bの方法の工程の続きを描写する。
図6】本発明の態様による、血塊回収デバイスの別の例の平面図である。
図7】本発明の態様による、図6の血塊回収デバイスの立面図である。
図8】本発明の態様による、図6の血塊回収デバイスの内側本体の斜視図を示す。
図9a】本発明の態様による、図6の内側本体の平面図を図示する。
図9b】本発明の態様による、図6の内側本体の立面図を描写する。
図10】本発明の態様による、図6の血塊回収デバイスの例示的な近位継手の視図である。
図11】本発明の態様による、血塊回収デバイスの使用方法を概説するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
開示される設計の目的は、血管系内の様々な組成物の血塊をより効果的かつ効率的に除去する一方で、処置中に高いレベルの送達性及び可撓性を維持することが可能な血塊回収デバイスを作製することである。本設計は、血塊が硬くて粘着性があるか、軟らかく砕けやすいか、又は2つの組み合わせであるかにかかわらず、あらゆる血塊のタイプを除去するために使用することができる初回通過血塊回収デバイスにすることができる。
【0033】
本設計は、内部に内側拡張可能本体が延在する外側拡張可能ケージを有し得る。内側本体及び外側ケージは、大きな開口部を有することができ、径方向の力が、血塊の部分が開口部内に移動することを可能にする。内側本体及び外側ケージの一方又は両方のセルは、外側カテーテルがデバイスの上で遠位に前進するときに血塊の少なくとも一部分を挟持するように構成された特徴を有し得る。これらの挟持設計は、血塊回収デバイスの保持安全性を増加させる。デバイスはまた、デバイスの少なくとも一部分分が近位に反転して、回収中に血塊を内在化及び保護することができるように構成され得る。
【0034】
内側拡張可能部材及び外側拡張可能部材は共に、著しくひずんだ送達構成から解放されると、その形状を自動的に回復することができる材料から作製されるのが望ましい。好適な製造プロセスは、ニチノールチューブをレーザ切断し、次いで、結果として生じた構造体を熱処理及び電解研磨して、ストラット及び接続要素のフレームワークを作製することであり得る。記載されているように、これらの要素の各々について設計の範囲が想定され、これらの要素のいずれも、任意の他の要素と共に使用され得ることが意図されるが、繰り返しを避けるために、これらの要素は考えられる全ての組み合わせでは示されていない。
【0035】
冠状血管であるか、肺血管であるか、脳血管であるかにかかわらず、血管系内の様々な血管にアクセスして血塊に到達するには、周知の手技工程及び多くの従来の市販アクセサリ製品の使用を伴う。これらの製品は、実験室及び医療処置においてよく理解され、広く使用されている。これらの又は同様の製品が、以下の本明細書において本発明の開示物と共に使用される場合、それらの機能及び正確な構成を詳細に記載することはしない。
【0036】
ここで、図を参照して、本発明の具体的な実施例を詳細に説明する。本説明は、多くの場合、機械的血栓除去治療に関連しているが、本設計は、他の処置及び他の身体通路にも同様に適合させることができる。
【0037】
図1を参照して、血塊回収デバイス100は、細長いシャフト6を有することができ、そこから遠位に、折り畳まれた又は拘束された送達構成から血管閉塞又は血塊の標的部位での拡張された展開構成まで拡張可能な内側本体110及び外側ケージ210を備えたストラットフレームワーク102が延在する。送達方法は、例えば、標的位置のアクセス要件に応じて、マイクロカテーテル13あるいは他の外側カテーテル又はシースを通じたものであることができる。マイクロカテーテル13の遠位端を越えて露出されると、デバイス100は、図1に描写する展開構成に自己拡張することができる。閉塞は、典型的には、血管内の血流を妨げる血栓(血餅)である。内側本体110及び外側ケージ210の両方を備えた構成を有することにより、血塊がデバイス内に保持されることを可能にし、除去中の血管損傷のリスクを最小限に抑えることができる。
【0038】
内側本体110は、軸線方向の一連のセル116を形成するストラットのネットワークであり得る。セル116のストラットは、塊内のセルを相互貫入すること及び埋め込むことを支援するように、拡張されたときに、高い径方向力を有することができる。各セルの近位端及び遠位端は、実質的に「U」又は馬蹄形状のサドル点118に先細になることができる。サドル点118のこの形状は、マイクロカテーテル13又は別の外側カテーテルがデバイスの近位端を越えて前進するとき、セル116が径方向に収縮することを可能にする。この収縮は、セル又はセル(複数)内に埋め込まれた血塊の硬い部分を挟持することができる。
【0039】
複数の挟持セル116を有することは、血塊内の近位、中央、及び/又は遠位位置にフィブリンコアを有する血塊を捕捉するのに有益であり得る。セルは、抵抗が感じられるまでデバイスが外側カテーテル内に後退されるときに血塊をしっかり把持することができ、吸引で更に固定され得る挟持グリップを示す。
【0040】
この挟持は、特に実質的にフィブリンに富む血塊の場合に、血塊に対するデバイスの把持力を増加させることによって、血塊の除去を容易にする。この挟持はまた、血塊を伸長させ、それにより、追い出しプロセス中に血塊を血管壁から離れる方向に引くことによって、追い出し力を低減することができる。血塊の保持は、血塊の近位端を制御し、その近位端が側枝血管にひっかかるのを防止することによって、マイクロカテーテル又は外側カテーテルへの後退中に改善され得る。
【0041】
隣接するセル116の端部は、可撓性接続ストラット117によって接続され得る。接続ストラット117は、セル間のヒンジとして作用することができ、隣接するセル間の唯一の接触点とすることができる。結果として、個々のセルは、デバイスが血管系内の屈曲部を通って前進又は後退する際に独立して曲がることができ、捕捉された血塊によってデバイスに及ぼされる力に局所的に応答することができる。
【0042】
外側ケージ210は、内側本体110の遠位端114に固定的に接続することができる。外側ケージ210の緩やかに湾曲したループは、デバイス100に、遠位端4付近の非外傷性プロファイルを与えることができる。いくつかの実施例では、内側本体110及び外側ケージ210は、モノリシックに形成することができ、それによって、内側本体ストラットは、外側本体のストラットとなるように移行し、外側本体の形状をとる。これは、図1に図示されており、内側本体110の遠位端114における移行点115が、外側本体210の広いループ状構造への移行を行う。内側本体110及び外側ケージ210を同じチューブから切断及び加熱処理することにより、製造プロセスを簡略化し、デバイス内の剛性勾配から潜在的なねじれ点を除去することができる。
【0043】
外側ケージ210のストラットは、ストラットがプルワイヤ218又は他の好適な作動方法によって操作されて所望に応じて外側ケージの形状を変化させることを可能にするために、低い径方向力で非常に可撓性であり得る。ストラットの可撓性はまた、より狭い血管を通してナビゲートするために、外側ケージ210が内側本体110の外径122に折り畳まれることを可能にする。
【0044】
内側本体110及び外側ケージ210は、好ましくは、ニチノール又は高い回復可能なひずみ並びに好適に高い弾性率及び引張強度を有する他のそのような合金などの、超弾性又は擬似弾性材料から作製され得る。これらの材料を備えた自己拡張型本体を使用する利点は、標的血塊の体積特性及び剛性のため、抵抗によって、デバイス100は、血塊の全体にわたって展開されるときのその自在に拡張した直径の数分の一にしか初期には拡張され得ないことである。これにより、外側本体210は、後退されている間、より大きな直径へ更に拡張する能力を与えられ、それにより、外側本体は、漸進的により大きくかつより近位の血管へと後退されるときに、血管壁を並置することができる。
【0045】
一実施例では、内側本体110及び外側ケージ210は、シャフト6としても機能する単一の連続した管材片からレーザ切断することができる。チューブを兼ねるシャフト6を有することにより、シャフトチューブの内腔7を、必要に応じて、プルワイヤ218あるいは他の作動部材又はデバイスのための導管として使用することを可能にし得る。
【0046】
管材は、例えば、ニチノールハイポチューブのような原材料形態であることができ、それにより、内側本体110及び外側ケージ210のストラットをレーザ切断し、所望の形状及び寸法に熱処理することができる。例えば、内側本体110は、展開構成に拡張されたときにおよそ2.25mmの外径122を有するように熱処理され得る。同様に、同じ展開構成において、外側ケージ210は、およそ5.00mmの外径222を有するように熱処理することができる。したがって、デバイスは、マイクロカテーテル内に効果的にばね仕掛けされ、標的部位に展開されたときにこれらの寸法に拡張することができる。
【0047】
外側ケージ210のこの径方向寸法は、漸進的に径が大きくなる血管の中へとデバイスが近位に後退されるときに、外側ケージが血管壁との接触を維持し、血管壁と並置するだけでなく、血塊が遠位に移動することを阻止することを可能にし得る。血管壁との並置はまた、血管から血塊を最初に追い出すのに必要な軸方向力を低減し得る。
【0048】
図2は、血塊(図示せず)の捕捉後の図1のデバイス100の例示的な構成を示す。内側本体110のセル116は、血塊を安定させるための入口として機能し、デバイスが、後退されるとき、血塊が血管から引っ張られる方向に対して実質的に平行(すなわち、長手方向軸線8に対して実質的に平行)な方向において、血塊に力を加えることを可能にすることができる。これはまた、外側ケージ210によって血管系に適用される任意の外向きの径方向力が最小に保たれ得ることを意味する。
【0049】
内側本体110のセル116が血塊内に埋め込まれているとき、プルワイヤ218は、内側本体及び血塊を内在化するために示されるように、外側ケージ210の可撓性ストラットを近位に反転させるために張力をかけられ、後退させることができる。プルワイヤ218は、デバイスシャフトの近位端に位置付けられたハンドルを使用して回収することができる。ワイヤ218は、より大きな直径の外側ケージ210を引っ張ることができ、一方内側本体110は、適所に残され、その結果、挟持が、内側本体セル116のサドル点118、マイクロカテーテル13、及び記載されるような血塊の少なくとも硬い部分の間に維持され得る。
【0050】
反転されるとき、外側ケージ210は、長手方向軸8及び内側本体110の周りに配設された一連の広いループセグメント216を特徴付けることができる。内側本体の遠位端114において、内側本体/外側ケージ移行点115は、遠位クラウン220を形成して、血塊除去中に断片保護要素として作用して、破片の遠位移動を防止することができる。クラウン220はまた、標的血管と同様のフレア状直径を有することができ、それにより、血塊の砕けやすい部分から断片を確実に捕捉するのに役立ち得る。
【0051】
シャフト6は、一般的に入手可能な送達シースと互換性があるように選択されたストックチューブサイズであり得る。一実施例では、シャフト6の外径9は、0.021インチ内径マイクロカテーテルとの適合性を確保するために、およそ0.021インチ未満であり得る。別の例では、シャフト6は、0.027インチ内径マイクロカテーテルと互換性があるように、およそ0.026インチのわずかに大きい外径を有することができる。
【0052】
シャフト6及びデバイス100の他の部分はまた、挿入中にデバイスの遠位端がマイクロカテーテルの端部に接近していることをユーザに指示するか、あるいは処置中にデバイスの末端部をマーキングするための表示バンド又はマーカ(図示せず)を有し得る。これらの表示バンドは、シャフトの残りの部分から視覚的に区別されるように、コーティング用のシャフトのエリア、又は蛍光透視下で可視である放射線不透過性の要素を印刷、除去、又はマスキングすることによって形成され得る。
【0053】
シャフト6はまた、摩擦及び血栓形成を低減するために、ある材料でコーティングされるか、あるいは高分子ジャケットを有することができる。コーティング又はジャケットは、ポリマー、シリコンなどの低摩擦潤滑剤、又は親水性/疎水性コーティングからなり得る。このコーティングはまた、外側ケージ210及び内側本体110の一部又は全部に適用され得る。
【0054】
図3A図3Cは、デバイス100を血管系40内で使用して、硬い構成要素及び軟らかい構成要素の両方を有する不均質な血塊20、22を捕捉する方法を図示する。図3Aでは、デバイスは、内側本体110区画のセル116が血塊に露出されている血塊内でマイクロカテーテル13から展開され得る。次いで、マイクロカテーテル13を遠位に前進させて、内側本体110のセル116及びプルワイヤ218の少なくとも一部分を再シースすることができる。代替的に、別の外側カテーテル又はシースが使用され得る。サドル点118は、セル116の自然な変曲点を形成して、径方向に折り畳むことができる。血塊のフィブリンに富む部分20が存在する場合、図3Bに示されるように、セル116は、内側本体110とマイクロカテーテルとの間の血塊のこの区画上で挟持を達成することができる。
【0055】
挟持が達成され、ユーザが結果として得られる抵抗を感じると、プルワイヤ218は、シャフト6を通って後退させることができる。ワイヤは、挟持を維持するために内側本体110を適所に残しながら、連結点219において外側ケージ210のより大きな直径の熱処理部分を近位に引く。プルワイヤ218の回収は、図3Cに描写されるように、外側ケージ内の血塊全体を内在化するために、血塊の硬い部分20及び軟らかい部分22の両方にわたって、外側ケージ210のループセグメント216を引き抜く。次いで、デバイス全体を、血塊と共にガイドカテーテル又は他の外側シース内に引き抜くことができる。
【0056】
連結点219におけるプルワイヤ218と外側ケージ210のストラットとの間の結合は、いくつかの方法によって行うことができる。いくつかの実施例では、クリンプ、編組、又はバルブ/アイレットの組み合わせなどの機械的接続を利用することができる。他の場合には、溶接又は鑞付けなどの熱プロセスを使用することができる。
【0057】
図4A図4B及び図5A図5Bは、軟らかい血塊22のみが存在する場合に、デバイスを使用するための方法を明示する。デバイスは、図4Aに示されるように、内側本体110のセル116が血塊に露出され、血塊に埋め込むことができるように、血塊22内に展開され得る。図4Bでは、マイクロカテーテル13を遠位に前進させて、内側本体110のセル116及びプルワイヤ218の少なくとも一部分を再シースして、図4Bに見られるように血塊を挟持することを試みることができる。ユーザが、内側本体110とマイクロカテーテルとの間に挟持の抵抗を感じない場合、血塊22が軟らかい(フィブリンに富む部分又は部分がない)ことを示唆する。次いで、デバイスをマイクロカテーテル13から再展開して、内側本体110を埋め込み、血塊を安定化させることができる(図5A)。次いで、ユーザは、プルワイヤ218を引っ張り、それらを近位に引き寄せて、軟らかい血塊22を内在化するために内側本体110を適所に残しながら外側ケージ210を反転させることができる(図5B)。クラウン220は、デバイス全体及び血塊がガイドカテーテル内に引き込まれる間、血塊断片の遠位移動を防ぐことができる。
【0058】
硬い血塊及び軟らかい血塊の両方を捕捉するための初回通過デバイスであることができる血塊回収デバイス300の別の例が、図6の平面図に見られる。デバイス300は、マイクロカテーテル、拡張された展開構成、及び硬い又はフィブリンに富む血塊を把持するための少なくとも部分的に拘束された血塊挟持構成を介して送達するための拘束された送達構成を有することができる。デバイス300は、長手方向軸8、近位シャフト6、及び内側本体310及び外側ケージ410を形成するストラットの拡張可能な構造体を有することができる。他の設計と同様に、内側本体310及び外側ケージ410は、ニチノールなどの形状記憶合金から切断されて、拡張されたときにストラットが所望の形状に熱処理されることを可能にすることができる。内側本体310及び外側ケージ410は、血塊が把持のために血管壁に対してブラッシングされないように、回収中に血管壁への損傷のリスクを低減するために、デバイス内に血塊を保持するのに役立ち得る。
【0059】
内側本体310は、除去プロセス中に血塊を安定させ、特に軟らかい血塊のための支持及び追加の把持を追加するように構成することができる。内側本体310は、「S波」又は正弦波の最終熱処理形状で設計された、低プロファイルの一連の血塊係合セルであることができる。低プロファイル設計は、デバイスが中間カテーテル又は他の外側カテーテル内に回収されたときに、血塊剪断を最小限に抑えるために、内側本体310と外側ケージ410との間により多くの血塊受容空間を可能にする。一実施例では、内側本体310は、およそ1.25~1.5mmの範囲の拡張された外径を有することができる。他の実施例では、内側本体は、内側本体及び外側ケージが標的部位への送達のためにマイクロカテーテル内に一緒にクリンプされるときの短縮の違いによって決定される拡張された直径を有することができる。
【0060】
図6からのデバイス300の立面側面図が、図7に描写されている。外側ケージ410は、内側本体310の周りに配設された軸線方向の一連の本体セグメント412を有することができ、内側本体の内径322よりも実質的に大きい外径422で熱処理されている。いくつかの好ましい実施例では、この外径422は、およそ5mmであることができる。各セグメント412は、各セルの近位端及び遠位端に馬蹄形状のサドル点418を有する1つ又は2つ以上のセル416を有することができる。
【0061】
図6図7に示されるデバイス300は、例えば、互いに垂直な長手方向軸8の周りのセグメント412当たり2つのセル416を有する。図6及び図7にそれぞれ示されるような平面図及び立面図からのセル416の垂直性のため、本体セグメント412の各セルは、180度の曲率度を有することができ、可撓性コネクタストラット417は、デバイス300が90度回転されたときに隣接するセルの頂部/底部として機能することを留意されたい。したがって、結果は、長手方向軸8の周りの外側ケージ410について円筒形状であり得る。
【0062】
外側ケージ410の拡張は、ストラットによって提供される足場支持体のレベルに応じて、拡張中の血塊の圧縮及び/又は変位を引き起こし得る。拡張可能本体が高レベルの足場を提供するとき、血塊は圧縮され得る。代替的に、拡張可能本体が脱出経路又は開口部を提供するとき、拡張する本体は、開口部に向かって血塊を付勢する。血塊自体は、多くの自由度を有することができ、また様々な異なる方向に移動することができる。デバイスが十分に長いとき、血塊にとって利用可能な移動自由度の多くが排除される。これにより、過度に圧縮することなく血塊を回収することができる。これは、血塊の圧縮によって血塊を脱水させ得るため有利であるが、今度は、摩擦特性及び剛性を増加させ、それによって、血塊を血管から係合解除及び除去することがより困難となる。この圧縮は、血塊が外側ケージのセルを通って内側に容易に移動することができる場合に回避することができる。
【0063】
結果として、図6及び図7に示されるデバイス300からのセル416は、血塊内に展開されると、血塊が外側ケージ410を通って径方向に移動することを可能にするために、広い開口部ストラットを有することができる。他の例と同様に、展開後にマイクロカテーテル又は他のカテーテルを遠位に前進させることにより、各セル416のサドル点418を圧縮して、除去中にしっかりと把持するために血塊のフィブリンに富む部分を挟持することができる。
【0064】
外側ケージ410の隣接するセグメント412は、可撓性コネクタストラット417によって接合することができる。サドル点418が各セグメント412のセル416の端部を点まで先細にするにつれて、単一のコネクタストラット417は、それぞれのセグメント間の唯一の接触点となり得る。これにより、セグメントをコネクタストラットの周りにヒンジで固定して、デバイスの可撓性及び血管壁の並置を改善することが可能になる。コネクタストラットはまた、個々のセグメントのセル416が、増加する直径に局所的に開くことを可能にして、内側本体310と外側ケージ410との間の血塊上の良好な把持を維持することができる。より大きな直径に局所的に増加する能力は、標的血塊の一部又は全てが、分岐部などの困難な解剖学的構造内に位置し、血塊が血管内に保持されることを可能にする状況において特に有用であり得る。
【0065】
外側ケージ410はまた、小さな断片が主血塊から離脱し、より小さい、より遠位の血管内で再閉塞するのを防止するために先細のメッシュ端部420を備えた最終セグメントを有することができる。メッシュ端部420はまた、回収中に、それらが転がるか又は形状を変化させるときに分離する血塊の区画に対して保護するのに役立つことができる。このセグメント420を形成する遠位ストラットは、外側ケージ410の遠位端が、それが使用される血管に対して非外傷性となるように、膨らむか又はフレア状にすることができる。これらのストラットの先細り及び収束はまた、有効な断片捕捉ゾーンを作り出すためにメッシュの孔径を低減することができる。
【0066】
図6及び図7からのデバイス300の内側本体310の斜視図が、図8に図示されている。本体セル316の正弦波形設計は、ストラットがパターンの振幅ピーク317間に屈曲部319を含むものとして見えている。セル316の屈曲部319は、外側ケージ410の血塊挟持セル416から離れる方向に、又は少なくとも同じ方向にではなく、動きを付勢することができ、その結果、デバイスの近位部分が血塊挟持構成において部分的に拘束されているときに、内側本体310は安定するが、血塊の部分を剪断しない。屈曲部又はクラウンはまた、血管から血塊を係脱する重要な最初の工程のために血塊と共に埋め込み、バランスをとることにより、血塊上のより良い把持力を提供するのを支援することができ、外側ケージ410がより低い径方向力で構成されることを可能にする。
【0067】
セル316及び内側本体310の波形形状は、相当な引張力又は圧縮力を継手に適用することなく、デバイスが伸張によって、わずかな長さの差に対処することを可能にし得る。長さの差は、例えば、デバイスが小血管内で拡張されるか、折り畳まれるか、又は展開されるときに生じ得る。内側本体セル316のストラットの波形構成はまた、マイクロカテーテル内に装填されるとき、及び標的部位で自由に拡張されるときに、内側本体310及び外側ケージ410の長さが実質的に同じになり得るように、セルが十分に延長及び短縮することを可能にする。しかしながら、セルはまだ十分な構造的剛性を有することができ、そのため、デバイス300は、内側本体310及び外側ケージ410を過度に延長及び短縮することなく、前進又は後退させることができる。
【0068】
内側本体310はまた、単一のセル正弦波パターンから径方向に拡張されたストラット318の集合へと遠位に移行することができる。示された例では、4つの拡張ストラット318は、長手方向軸の周りに等間隔で90度離間して位置付けることができる。フレア状又は拡張ストラットは、外側ケージ410の遠位メッシュ断片セグメント420を補助することができる。拡張ストラットはまた、挿入ツール又はマイクロカテーテルへのデバイスのクリンプ中に、内側本体310及び外側ケージ410の短縮を整列させることができる。
【0069】
図9A及び図9Bは、デバイス300の外側ケージ410とは独立した、図8の内側本体310の上面図及び側面図をそれぞれ提供する。図9Aは、内側本体310内のセル開口部316のシーケンスを示す。各波は、単一のセル開口部316を有し得る。セルは、およそ1.25~1.5mmの直径を有することができ、あるいは、挿入ツール又はマイクロカテーテルへのデバイスのクリンプ中に、内側本体310及び外側ケージ410の短縮の差によって決定されるわずかに異なる直径を有することができる。遠位端314付近の拡張ストラット318は、内側本体310のセル316よりも大きい外径(外側ケージの拡張外径にはるかに近い)であり得、結果として、これらのストラットはまた、内側本体と外側ケージとの間に必要とされる巻き取り長さのかなりの量を構成することができる。
【0070】
図9Bは、内側本体310のセル316の正弦波パターン315を明確に示す図9Aの側面図を図示する。パターンの最も近位のセルは、それを内側本体の近位端312において部分的に円周方向の内側カラー328に連結する接続ストラット330で終端することができる。内側本体のストラットは、カラーの外径と等しい外径324を有する単一のハイポチューブを切断及び機械加工することによって、カラー328と共にモノリシックに形成することができる。内側本体310の遠位端314には、処置中にデバイスの末端部をマーキングするための放射線不透過性コイル310又はマーカバンドがあり得る。
【0071】
内側本体310及び外側ケージ410の細長いシャフト6への近位接続は、内側本体及び外側ケージが互いに対していくらかの少量の独立した並進を有することができるように構築され得る。並進は、例えば、軸線に沿った線形並進、一方の本体の他方に対する回転、又はこれらの何らかの組み合わせであり得る。これがカラーアセンブリ426で達成され得る継手の例が、図10の分解図に図示されている。外側ケージ410の近位端413は、細長いシャフト6を囲むチューブ状カラー427を有することができる。内側本体310の近位端312は、上述のように、細長いシャフト6上に乗る部分的に円周方向の内側カラー328を有することができる。部分的に円周方向の内側カラー328は、外側ケージ410のチューブ状カラー427の内径428よりも小さい外径324を有するハイポチューブから切断することができる。そのような構成により、内側カラー328がチューブ状外側カラー427の径方向内側に位置することを可能にすることができ、それにより、内側本体310又は外側ケージ410のいずれかの少量の回転が他方に対して可能となり得る。部分的に円周方向のセットアップはまた、内側カラー328が完全に円周方向の外側カラー427と共にシャフト6上に組み立てられることを可能にする。
【0072】
内側本体310の部分的内側カラー328及び外側ケージ410の外側カラー427の同軸カラーアセンブリ426は、血管系内での屈曲中に、2つの本体がデバイス300の中立軸と実質的に整列することを可能にすることができる。カラーアセンブリ426によって許容される外側ケージ410と内側本体310との間の回転の可能性はまた、さもなければ静的かつ固定された接続で生じ得る血塊剪断を防止するのに役立ち得る。
【0073】
図11は、かかるデバイスを用いて血栓除去処置を実施するための方法の工程をダイアグラムで示す。この方法の工程は、本明細書に記載され、当業者に既知である例示的なデバイス又は好適な代替物のいずれかによって実装され得る。本方法は、記載される工程の一部又は全てを有し得るが、多くの場合、工程は、以下に開示されるものとは異なる順序で実施され得る。
【0074】
図11に概説される方法11000を参照すると、工程11010は、未知の組成の標的血塊を横切って血塊回収デバイスを送達することを含み得る。血塊は、硬くてフィブリンに富む、軟らかくて砕けやすい、又は2つの何らかの組み合わせであり得る。血塊回収デバイスは、マイクロカテーテル又は他の好適な送達カテーテルを通して送達され得るものであり、送達中の折り畳まれた構成と、送達カテーテルが後退されるときの拡張された展開構成と、を有し得る。ユーザによってデバイスを操作するために、細長シャフトが使用され得る。
【0075】
ストラットの拡張可能な要素は、細長いシャフトの遠位端に取り付けられ、外側ケージの内腔内に外側ケージのセル及びの内側本体のセルを有することができる。工程11020は、拘束された送達構成から拡張された展開構成にデバイスを拡張することによって、外側ケージのセルのうちの少なくとも1つ及び内側本体のセルのうちの少なくとも1つを血塊内に埋め込むことを含むことができる。外側ケージの拡張からの径方向力は、血塊の少なくとも一部分を径方向内側に移動させることができる。
【0076】
工程11030において、内側本体及び外側ケージのセルの少なくともいくつかと係合させて、血塊の少なくとも硬い部分を圧縮して挟持するように、マイクロカテーテル又は他の外側カテーテルを遠位に前進させることができる。内側本体及び/又は外側ケージのセルは、デバイスが部分的に再シースされる際に、セルを径方向に折り畳むように成形された軸方向の頂点に屈曲部を有するように成形することができる。したがって、サドル点は、血塊組成物内の任意のフィブリンに富むコア上にしっかりした把持力を及ぼすことができる。
【0077】
外側カテーテルの遠位前進は、ユーザによって抵抗が感じられて挟持が達成されたことを示すまで続けることができ、又は抵抗が感じられないのは血塊のフィブリンに富む部分がないことを示す。挟持が達成されていない場合、工程11040は、外側カテーテルを引き抜いて、デバイスを再展開し、血塊内に埋め込むことを含むことができる。この再展開は、デバイスのセル内に軟らかい血塊を安定化させる。
【0078】
工程11050において、外側ケージのストラットの一部又は全ては、近位に反転されて、血塊及び内側本体の上に折り返され、血塊及び内側本体を内在化することができる。反転は、血塊を保護し、血管系内の摩擦、分岐、及び/又は鋭利な屈曲による、可能な相互作用又はひっかかりを低減することができる。ストラットは、ユーザが、引き込まれ、デバイスシャフトの内腔を通って走るプルワイヤを利用することによって、又は他の好適な手段によって、近位に引っ張ることができる。例えば、プルワイヤは、ハイポチューブデバイスシャフトを通って延在し、シャフトの近位端上に位置付けられたハンドルから作動させることができる。加えて、内側本体、外側ケージ、及び細長いシャフトの近位継手は、それらの間のいくらかの相対運動を可能にするように構成することができ、後退力及び血塊剪断のリスクを低減する。
【0079】
工程11060は、血塊回収デバイス及び捕捉された血塊を患者から除去することを含むことができる。これは、例えば、吸引の助けを借りてデバイスを外側カテーテル内に回収することによって達成することができる。挟持が達成された場合、引き抜き中にデバイス及び外側カテーテルの相対位置を保つことによって、挟持を維持することができる。必要に応じて、閉塞性血塊の追加セグメントが存在するとき、又は完全な再疎通のために更なるパスが必要な場合、血管系に再導入するためにマイクロカテーテルに再装填される前に、デバイスは生理食塩水ですすがれ、静かに洗浄され得る。
【0080】
本発明は、記載された例に必ずしも限定されず、構成及び詳細において変化し得る。「遠位」及び「近位」という用語は、前述の説明を通して使用され、処置している医師に対する位置及び方向を指すことを意味する。したがって、「遠位」又は「遠位に」は、医師に対して離れた位置又は医師から離れる方向を指す。同様に、「近位」又は「近位に」は、医師に対して近い位置又は医師に向かう方向を指す。更に、文脈が明らかに既定しない限り、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、複数の指示対象を含む。
【0081】
本明細書で任意の数値や数値の範囲について用いる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるその意図された目的に沿って機能することを可能とする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「およそ」は、列挙された値の±20%の値の範囲を指し得、例えば「約90%」は、71%~99%の値の範囲を指し得る。
【0082】
例示的な実施形態について説明する際、明確にするために、専門用語が利用されている。各用語は、当業者によって理解されるその最も広い意味を有することが企図されており、本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく、同様の目的を実現するために同様の様式で作用する全ての技術的な均等物を含むことが意図される。方法の1つ又は2つ以上の工程への言及は、追加の方法工程又は明示的に識別されたそれらの工程間に介在する方法工程の存在を排除しないことも理解されたい。同様に、方法のいくつかの工程は、開示される技術の範囲から逸脱することなく、本明細書に述べられる順序とは異なる順序で実施することができる。明確さ及び簡潔さのために、全ての可能な組み合わせが列挙されているわけではなく、かかる変更例は、多くの場合、当業者には明らかであり、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【0083】
〔実施の態様〕
(1) 血管から血塊を除去するためのデバイスであって、
内部を通って延在する内腔を備える近位チューブ状シャフトと、
拘束された送達構成と、拡張された血塊係合展開構成と、少なくとも部分的に拘束された血塊挟持構成と、を有する、ストラットのフレームワークであって、前記ストラットのフレームワークが、
遠位端と、長手方向軸と、前記展開構成から前記血塊挟持構成への移動時に前記血塊を挟持するように構成された1つ又は2つ以上の血塊挟持セルと、を備える、細長い内側本体と、
前記細長い内側本体の前記遠位端に接続され、前記細長い内側本体よりも大きい径方向範囲に拡張可能な外側ケージと、を備える、ストラットのフレームワークと、
前記近位チューブ状シャフトの前記内腔を通って延在し、かつ前記外側ケージに固定的に接続された1つ又は2つ以上のプルワイヤであって、前記プルワイヤが、前記拡張された展開構成から反転された血塊収容構成へと前記外側ケージを移動させるように構成されている、1つ又は2つ以上のプルワイヤと、を備える、デバイス。
(2) 前記内側本体及び前記外側ケージが、単一の連続チューブをレーザ切断することを通して、モノリシックに形成されている、実施態様1に記載のデバイス。
(3) 各挟持セルが、前記セルの前記近位及び遠位端に馬蹄形状のサドル点を備える、実施態様1に記載のデバイス。
(4) 前記プルワイヤが、クリンプクランプ、溶接、又は編組のうちの少なくとも1つによって、連結点において前記外側ケージに接続されている、実施態様1に記載のデバイス。
(5) 前記外側ケージの前記ストラットは、前記外側ケージが前記拡張された展開構成から前記反転された血塊収容構成に移動されるときに、近位に反転するように構成されている、実施態様1に記載のデバイス。
【0084】
(6) 前記外側ケージの前記ストラットが、前記反転された血塊収容構成において、前記血塊及び前記細長い内側本体を取り囲む、実施態様5に記載のデバイス。
(7) 前記近位チューブ状シャフトが、0.533mm(0.021インチ)以下の外径を有する、実施態様1に記載のデバイス。
(8) 前記細長い内側本体が、前記拡張された展開構成において、およそ2.25mmの外径を有する、実施態様1に記載のデバイス。
(9) 前記外側ケージが、前記反転された血塊収容構成において、およそ5mmの外径を有する、実施態様1に記載のデバイス。
(10) 血管から硬い血塊及び軟らかい血塊の両方を除去するための血塊回収デバイスであって、
長手方向軸と、
近位シャフトと、
拘束された送達構成、拡張された展開構成、及び少なくとも部分的に拘束された血塊挟持構成と、
一連の血塊受容セルを形成するストラットを備える内側本体であって、前記セルが、前記拡張された展開構成において、前記長手方向軸に沿って略正弦波パターンで延在する、内側本体と、
一連のセグメントを備える外側ケージであって、各セグメントが、前記展開構成から前記血塊挟持構成への移動時に前記血塊を挟持するように構成された2つのセルを備える、外側ケージと、
前記外側ケージの前記遠位端に接続された先細のストラットメッシュであって、前記ストラットメッシュが、閉鎖端部を備え、血塊断片に対するバリアとして構成されている、先細のストラットメッシュと、を備える、デバイス。
【0085】
(11) 前記外側ケージの各セルが、前記セルの前記近位及び遠位端において馬蹄形状のサドル点を備え、前記サドル点は、前記デバイスが前記血塊挟持構成に移動される際に、前記血塊の少なくとも一部分を圧縮及び挟持するように構成されている、実施態様10に記載のデバイス。
(12) 前記内側本体が、前記拡張された展開構成において、1.25mm~1.5mmの範囲の外径を有する、実施態様10に記載のデバイス。
(13) 前記外側ケージが、前記拡張された展開構成において、およそ5mmの外径を有する、実施態様10に記載のデバイス。
(14) 前記血塊挟持構成は、カテーテルを、前記血塊の少なくとも一部分が前記カテーテルの前記先端と前記外側ケージの前記ストラットの少なくとも一部分との間で圧縮されるまで前記内側本体及び前記外側ケージの前記近位端の上に前進させることによって達成される、実施態様10に記載のデバイス。
(15) 前記外側ケージの前記セグメントが、可撓性コネクタストラットによって隣接するセグメントにヒンジ接合されており、前記コネクタストラットが、それぞれのセグメント間の唯一の接触点である、実施態様10に記載のデバイス。
【0086】
(16) 前記内側本体の前記セルが、前記血塊の少なくとも一部分を埋め込み、かつ安定化させるように構成された少なくとも1つの屈曲部を備える、実施態様10に記載のデバイス。
(17) 前記外側ケージの前記近位端が、チューブ状外側カラーを備える、実施態様10に記載のデバイス。
(18) 前記内側本体が、前記外側ケージの前記外側カラーの内径よりも小さい外径を有するチューブをレーザ切断することによって、モノリシックに形成されている、実施態様17に記載のデバイス。
(19) 硬い血塊及び軟らかい血塊の両方を除去するための方法であって、前記方法が、
拘束された送達構成、拡張された展開構成、及び少なくとも部分的に拘束された血塊挟持構成を有する血塊回収デバイスを血塊を有する血管に送達する工程であって、前記血塊回収デバイスが、
チューブをレーザ切断することによってモノリシックに形成された内側本体であって、前記内側本体が、血塊の少なくとも一部分と共に埋め込まれるように構成されたセルを形成するストラットを備える、内側本体と、
長手方向軸に沿って延在し、前記内側本体よりも大きい径方向範囲に拡張可能であることを含む、外側ケージであって、前記外側ケージが、血塊の少なくとも一部分と共に埋め込まれるように構成されたセルを形成するストラットを備える、外側ケージと、を備える、送達する工程と、
前記拘束された送達構成から前記拡張された展開構成に前記デバイスを拡張することによって、前記外側ケージの前記セルのうちの少なくとも1つ及び前記内側本体の前記セルのうちの少なくとも1つを血塊内に埋め込む工程と、
外側カテーテルが前記内側本体及び前記外側ケージと係合して、前記内側本体の前記セル及び前記外側ケージの前記セルを用いて前記血塊の少なくとも硬い部分を圧縮して挟持するように、前記外側カテーテルを前進させる工程と、
挟持が達成されていない場合には、前記外側カテーテルを引き抜いて、前記血塊回収デバイスを再展開し、軟らかい血塊内に埋め込む工程と、
前記血塊回収デバイス及び捕捉された前記血塊を患者から除去する工程と、を含む、方法。
(20) 前記外側ケージの前記ストラットを近位に反転させて、前記血塊及び前記内側本体を内在化させる工程を更に含む、実施態様19に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
【外国語明細書】