(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104841
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】検出装置、磁気組成物、及び管理システム
(51)【国際特許分類】
A61J 7/00 20060101AFI20220629BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61J7/00 Z
A61K49/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181120
(22)【出願日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】 JP2019-042954
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】399110306
【氏名又は名称】フジデノロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 進輔
(72)【発明者】
【氏名】熱田 諭志
(72)【発明者】
【氏名】財満 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】中本 敬三
(72)【発明者】
【氏名】戸谷塚 哲史
【テーマコード(参考)】
4C047
4C085
【Fターム(参考)】
4C047NN20
4C085HH20
4C085JJ11
4C085KA28
4C085KB28
4C085LL05
(57)【要約】
【課題】経口投与された磁性体を検出することが可能であり、且つ、小型化、低コスト化が可能な検出装置、磁気組成物、及び管理システムを提供する。
【解決手段】検出装置1は、人体内に経口投与され、磁性体を少なくとも含む磁気組成物9を検出する検出装置1である。検出装置1は、方向異方性を有する磁気センサを少なくとも異なる3つの方向に配置し、磁気組成物9に含まれる磁性体が形成する磁界ベクトルを計測する少なくとも1つの3次元磁気センサ5と、3次元磁気センサ5により計測された磁界ベクトルの平均を、平均ベクトルとして算出する平均算出手段と、平均算出手段により算出された平均ベクトルに基づき、人体内における磁気組成物9を検出する検出手段とを備えたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体内に経口投与され、磁性体を含む磁気組成物を検出する検出装置であって、
方向異方性を有する磁気センサを少なくとも異なる3つの方向に配置し、前記磁気組成物に含まれる前記磁性体が形成する磁界ベクトルを計測する少なくとも1つの3次元磁気センサと、
前記3次元磁気センサにより計測された前記磁界ベクトルを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記磁界ベクトルに基づき、前記人体内における前記磁気組成物を検出する検出手段と
を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記取得手段は、
前記磁界ベクトルの角度の時間変化を取得し、
前記検出手段は、
前記取得手段により取得された前記磁界ベクトルの角度の時間変化、又は、角度の時間変化を、前記磁界ベクトルの時間変化の大きさで除算した値が所定量より大きい場合、前記3次元磁気センサの検出範囲内の位置に前記磁気組成物があることを検出することを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
人体の異なる位置に各々装着される複数の前記3次元磁気センサを備え、
前記検出手段は、
複数の前記3次元磁気センサのうち、前記取得手段により取得された前記磁界ベクトルの角度の時間変化、又は、角度の時間変化を、前記磁界ベクトルの時間変化の大きさで除算した値が前記所定量より大きい前記3次元磁気センサの検出範囲内に前記磁気組成物があることを検出することを特徴とする請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
1つの前記3次元磁気センサを備え、
前記取得手段は、
所定時間毎に区分された複数の期間であるM(Mは2以上の整数)個の期間の夫々で、前記3次元磁気センサにより計測された前記磁界ベクトルを取得し、
前記取得手段により前記M個の期間の夫々で取得された前記磁界ベクトルの平均を、平均ベクトルとして算出する平均算出手段を更に備え、
前記検出手段は、
前記平均算出手段により算出されたM個の前記平均ベクトルのうち、前記M個の期間を時系列に並べた場合における順番が第N(Nは1以上M-1以下の整数)番目の期間である第N期間で取得された前記磁界ベクトルの前記平均ベクトルである第N平均ベクトルと、前記M個の期間を時系列に並べた場合における順番がN番目の次の期間に対応する第N+1番目の期間である第N+1期間で取得された前記磁界ベクトルの前記平均ベクトルである第N+1平均ベクトルとに基づき、前記人体内における前記磁気組成物を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
前記所定時間を決定する決定手段を備え、
前記平均算出手段は、
前記取得手段により取得された前記磁界ベクトルのうち、前記決定手段により決定された前記所定時間毎の平均を、平均ベクトルとして算出することを特徴とする請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記検出手段は、
前記第N平均ベクトルと前記第N+1ベクトルとの間のなす第1角度、
前記第N平均ベクトルと前記第N+1ベクトルとの差分ベクトルと、前記第N平均ベクトルとの間のなす第2角度、及び、
前記第1角度又は前記第2角度を前記差分ベクトルの大きさで除算した除算値
の少なくとも何れかである対象パラメータに基づき、前記磁気組成物を検出することを特徴とする請求項4又は5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記検出手段は、
複数の前記3次元磁気センサのうち、前記対象パラメータが所定条件を満たす前記3次元磁気センサの検出範囲内に前記磁気組成物があることを検出することを特徴とする請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記磁気センサは、計測された磁界に比例した電圧を出力することを特徴とする請求項4から7の何れかに記載の検出装置。
【請求項9】
加速度センサと、
前記加速度センサの出力結果に基づき、前記人体の位置変動の状態が所定条件を満たすか判定する判定手段と、
を備え、
前記取得手段は、
前記判定手段により前記位置変動の状態が前記所定条件を満たすと判定された場合、前記磁界ベクトルを取得することを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の検出装置。
【請求項10】
請求項1から9の何れかに記載の検出装置により検出される磁気組成物であって、人体内に経口投与され、磁性体を少なくとも含むことを特徴とする磁気組成物。
【請求項11】
前記磁気組成物は、
経口投与された後少なくとも1時間、胃内で滞留することを特徴とする請求項10に記載の磁気組成物。
【請求項12】
前記磁気組成物は、
経口投与された場合、生体内で崩壊せずに排出されることを特徴とする請求項10又は11に記載の磁気組成物。
【請求項13】
前記磁性体は酸化鉄を含むことを特徴とする請求項10から12の何れかに記載の磁気組成物。
【請求項14】
前記磁性体は、マグヘマイト、マグネタイト、イプシロン酸化鉄の少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする請求項10から12の何れかに記載の磁気組成物。
【請求項15】
前記磁気組成物は、
腸溶性物質を更に含むことを特徴とする請求項10から14の何れかに記載の磁気組成物。
【請求項16】
前記磁気組成物は、
水難溶性物質を更に含むことを特徴とする請求項10から15の何れかに記載の磁気組成物。
【請求項17】
前記磁気組成物は、
油脂を更に含むことを特徴とする請求項15又は16に記載の磁気組成物。
【請求項18】
前記磁気組成物は、
前記磁性体を核とした有核錠、又は、前記磁性体に、前記磁性体以外の物質が積層した多層錠であることを特徴とする請求項10から17の何れかに記載の磁気組成物。
【請求項19】
前記磁性体以外の物質は、薬剤物質、腸溶性物質、水難溶性物質、油脂、滑沢剤のうち少なくとも一以上の成分を含むことを特徴とする請求項18に記載の磁気組成物。
【請求項20】
磁気組成物と検出装置とを含む、薬剤物質の服薬を管理する管理システムであって、
前記検出装置は、
人体内に経口投与され、磁性体を含む前記磁気組成物を検出する検出装置であって、
方向異方性を有する磁気センサを少なくとも異なる3つの方向に配置し、前記磁気組成物に含まれる前記磁性体が形成する磁界ベクトルを計測する少なくとも1つの3次元磁気センサと、
前記3次元磁気センサにより計測された前記磁界ベクトルを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記磁界ベクトルに基づき、前記人体内における前記磁気組成物を検出する検出手段と
を備え、
前記磁気組成物は、
人体内に経口投与され、前記磁性体を少なくとも含み、検出装置により検出される
ことを特徴とする管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口投与される磁気組成物を検出する検出装置、検出装置により検出される磁気組成物、及び管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体内の磁性体を検出する為の検出システムが提案されている。特許文献1に記載の検出システムは、少なくとも2つのセンサ構成体を有する。各センサ構成体は、1~3つの異方性磁気抵抗センサを有する。検出システムでは、例えば、経口投与された磁性体に基づく磁界ベクトルが、各センサ構成体において計測される。次に、各センサ構成体において計測された磁界ベクトルの差分(ベクトル差という。)が算出される。検出システムは、算出されたベクトル差に基づいて磁性体を検出する。これにより検出システムは、磁性体の嚥下、磁性体の食道通過、消化時の蠕動による磁性体の移動等を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の検出システムでは、磁性体を検出する為にセンサ構成体が少なくとも2つ必要となる。このため、経口投与された磁性体を、人体の広範囲の領域で検出しようとした場合、多くのセンサ構成体が必要となる。従って、小型化、低コスト化が難しいという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、経口投与された磁性体を検出することが可能であり、且つ、小型化、低コスト化が可能な検出装置、磁気組成物、及び管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る検出装置は、人体内に経口投与され、磁性体を含む磁気組成物を検出する検出装置であって、方向異方性を有する磁気センサを少なくとも異なる3つの方向に配置し、前記磁気組成物に含まれる前記磁性体が形成する磁界ベクトルを計測する少なくとも1つの3次元磁気センサと、前記3次元磁気センサにより計測された前記磁界ベクトルを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記磁界ベクトルに基づき、前記人体内における前記磁気組成物を検出する検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
検出装置は、3次元磁気センサにより計測された磁界ベクトルの時間変化に基づき、人体内に経口投与される磁気組成物を検出する。つまり、検出装置は、1つの3次元磁気センサを用いて磁気組成物を検出可能である。従って検出装置は、小型化且つ低コスト化が可能となる。
【0008】
第一態様において、前記取得手段は、前記磁界ベクトルの角度の時間変化を取得し、前記検出手段は、前記取得手段により取得された前記磁界ベクトルの角度の時間変化、又は、角度の時間変化を、前記磁界ベクトルの時間変化の大きさで除算した値が所定量より大きい場合、前記3次元磁気センサの検出範囲内の位置に前記磁気組成物があることを検出してもよい。この場合、検出装置は、例えば磁気組成物が人体内で移動することに応じ、磁界ベクトルの角度が時間変化する場合、磁気組成物を検出できる。
【0009】
第一態様において、人体の異なる位置に各々装着される複数の前記3次元磁気センサを備え、前記検出手段は、複数の前記3次元磁気センサのうち、前記取得手段により取得された前記磁界ベクトルの角度の時間変化、又は、角度の時間変化を、前記磁界ベクトルの時間変化の大きさで除算した値が前記所定量より大きい前記3次元磁気センサの検出範囲内に前記磁気組成物があることを検出してもよい。この場合、検出装置は、人体の広範囲の領域から磁気組成物を精度良く検出できる。
【0010】
第一態様において、1つの前記3次元磁気センサを備え、前記取得手段は、所定時間毎に区分された複数の期間であるM(Mは2以上の整数)個の期間の夫々で、前記3次元磁気センサにより計測された前記磁界ベクトルを取得し、前記取得手段により前記M個の期間の夫々で取得された前記磁界ベクトルの平均を、平均ベクトルとして算出する平均算出手段を更に備え、前記検出手段は、前記平均算出手段により算出されたM個の前記平均ベクトルのうち、前記M個の期間を時系列に並べた場合における順番が第N(Nは1以上M-1以下の整数)番目の期間である第N期間で取得された前記磁界ベクトルの前記平均ベクトルである第N平均ベクトルと、前記M個の期間を時系列に並べた場合における順番がN番目の次の期間に対応する第N+1番目の期間である第N+1期間で取得された前記磁界ベクトルの前記平均ベクトルである第N+1平均ベクトルとに基づき、前記人体内における前記磁気組成物を検出してもよい。この場合、検出装置は、3次元磁気センサにより複数の期間の夫々で計測された磁界ベクトルの平均である平均ベクトルに基づき、人体内に経口投与される磁気組成物を検出する。つまり、検出装置は、1つの3次元磁気センサを用いて磁気組成物を検出可能である。従って検出装置は、小型化且つ低コスト化が可能となる。
【0011】
第一態様において、前記所定時間を決定する決定手段を備え、前記平均算出手段は、前記取得手段により取得された前記磁界ベクトルのうち、前記決定手段により決定された前記所定時間毎の平均を、平均ベクトルとして算出してもよい。この場合、検出装置は、磁気センサが取り付けられる人体の動きの速さに応じ、所定時間の長さを切り替えることができる。
【0012】
第一態様において、前記検出手段は、前記第N平均ベクトルと前記第N+1ベクトルとの間のなす第1角度、前記第N平均ベクトルと前記第N+1ベクトルとの差分ベクトルと、前記第N平均ベクトルとの間のなす第2角度、及び、前記第1角度又は前記第2角度を前記差分ベクトルの大きさで除算した除算値の少なくとも何れかである対象パラメータに基づき、前記磁気組成物を検出してもよい。この場合、検出装置は、例えば磁気組成物が人体内で移動することに応じて磁界ベクトルが変化する場合、磁気組成物を検出できる。
【0013】
第一態様において、前記検出手段は、前記対象パラメータが所定条件を満たす場合、前記3次元磁気センサの検出範囲内に前記磁気組成物があることを検出してもよい。この場合、検出装置は、磁気組成物の位置を精度良く検出できる。
【0014】
第一態様において、前記磁気センサは、計測された磁界に比例した電圧を出力してもよい。この場合、検出装置は、磁気センサから出力される電圧に基づいて磁気組成物を検出できる。
【0015】
第一態様において、加速度センサと、前記加速度センサの出力結果に基づき、前記人体の位置変動の状態が所定条件を満たすか判定する判定手段と、を備え、前記取得手段は、前記判定手段により前記位置変動の状態が前記所定条件を満たすと判定された場合、前記磁界ベクトルを取得してもよい。例えば検出装置は、加速度センサの出力結果に基づき、人体が平静状態である場合に磁界ベクトルを取得し、磁気組成物を特定する。この場合、人体の位置変動が測定結果に及ぼす影響を抑制できるので、検出装置は、人体内の磁気組成物を正確に検出できる。
【0016】
本発明の第二態様に係る磁気組成物は、第一態様に係る検出装置により検出される磁気組成物であって、人体内に経口投与され、磁性体を少なくとも含むことを特徴とする。この場合、磁気組成物は、第一態様と同様の効果を奏することができる。また、磁気組成物とすることにより、人体に投与し易くできる。また、磁性体の状態で投与するよりも正確に検出することができる。
【0017】
第二態様において、前記磁気組成物は、経口投与された後少なくとも1時間、胃内で滞留してもよい。検出装置は、胃に磁気組成物が滞留している期間内に間欠的に3次元磁気センサにより磁界ベクトルを計測すればよく、検出装置における処理負荷を軽減できるので、検出装置の省電力化が可能となる。
【0018】
第二態様において、前記磁気組成物は、経口投与された場合、生体内で崩壊せずに排出されてもよい。この場合、磁気組成物が崩壊することによって、検出装置による検出に必要な磁気ベクトルが減衰することを抑制できる。
【0019】
第二態様において、前記磁性体は酸化鉄を含んでもよい。この場合、検出装置において3次元磁気センサによる磁界ベクトルの計測を精度良く実施させることができる。
【0020】
第二態様において、前記磁性体は、マグヘマイト、マグネタイト、イプシロン酸化鉄の少なくとも何れか一つを含んでもよい。この場合、検出装置において3次元磁気センサによる磁界ベクトルの計測を、更に精度良く実施させることができる。
【0021】
第二態様において、前記磁気組成物は、腸溶性物質を更に含んでもよい。この場合、磁気組成物の腸内での挙動が所望通りとなるように磁気組成物を調製できる。
【0022】
第二態様において、前記磁気組成物は、水難溶性物質を更に含んでもよい。この場合、磁気組成物の腸内での挙動が所望通りとなるように磁気組成物を調製できる。
【0023】
第二態様において、前記磁気組成物は、油脂を更に含んでもよい。この場合、磁気組成物に液体が吸収される程度を小さくできるので、磁気組成物を人体内で適切に滞留させることができる。
【0024】
第二態様において、前記経口投与組成物は、前記磁気組成物を核とする有核錠や、前記磁性体に前記磁性体以外の物質が積層した多層錠であってもよい。又、少なくとも一層を前記磁気組成物とする多層錠であってもよい。前記磁性体以外の物質は、薬剤物質、腸溶性物質、水難溶性物質、油脂、滑沢剤のうち少なくとも一以上の成分を含んでいてもよい。又は、経口投与組成物は、磁気組成物とともに、医薬を含む粉末、細粒、顆粒あるいは小型錠剤を充填したカプセル剤であってもよい。
【0025】
本発明の第三態様に係る管理システムは、磁気組成物と検出装置とを含む、薬剤物質の服薬を管理する管理システムであって、前記検出装置は、人体内に経口投与され、磁性体を含む前記磁気組成物を検出する検出装置であって、方向異方性を有する磁気センサを少なくとも異なる3つの方向に配置し、前記磁気組成物に含まれる前記磁性体が形成する磁界ベクトルを計測する少なくとも1つの3次元磁気センサと、前記3次元磁気センサにより計測された前記磁界ベクトルを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記磁界ベクトルに基づき、前記人体内における前記磁気組成物を検出する検出手段とを備え、前記磁気組成物は、人体内に経口投与され、前記磁性体を少なくとも含み、検出装置により検出されることを特徴とする。
【0026】
第三態様において、磁気組成物は、他の食品や医薬のような経口投与組成物とともに投与することにより、経口投与組成物が人体内に投与されたことを確認できる。また、磁気組成物は、経口投与組成物に埋め込まれることで、経口投与組成物が人体内に投与されたことを確認できる。
【0027】
第三態様において、前記経口投与組成物は、前記磁気組成物に医薬や特定保健食品等の有効成分を含む形態であってもよい。
【0028】
第三態様に係る服薬管理システムは、発明の第一態様の検出装置、および第二態様の磁気組成物を用いて、経口投与組成物が人体に投与されたことを管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】検出装置1の概要、及び電気的構成を示す図である。
【
図7】第2メイン処理のフローチャートであって、
図6の続きである。
【
図9】実施例2における各サンプルの配合を示す表である。
【
図10】実施例2における重量減少率の測定結果を示す表である。
【
図11】実施例3における重量減少率の測定結果を示すグラフある。
【
図12】実施例4における仕込み量を示す表である。
【
図13】実施例4において、試験液中における錠剤の重量変化率を示す表である。
【
図14】実施例5において、ビーグル犬に投与された錠剤の重量変化率を示す表である。
【
図15】実施例5において、排出された錠剤の状態を示す表である。
【
図16】実施例6における仕込み量を示す表である。
【
図17】実施例7における仕込み量を示す表である。
【
図18】実施例10における仕込み量を示す表である。
【
図19】実施例10における磁束密度の測定結果を示すグラフである。
【
図20】実施例11における磁束密度の測定結果を示すグラフである。
【
図21】実施例11における磁束密度の測定結果を示すグラフである。
【
図22】実施例12における磁束密度の測定結果を示すグラフである。
【
図23】第1角度を用いて算出した値R(N)の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0031】
<検出装置1の概要>
図1を参照し、検出装置1の概要について説明する。検出装置1は、人体内に口から投与される磁気組成物9を検出するための装置である。磁気組成物9は、磁性体を少なくとも有する。磁気組成物9の詳細は後述する。検出装置1は、体内に経口投与された磁気組成物9の磁性体により形成される磁界ベクトルを、人体外から3次元磁気センサ5により計測し、磁気組成物9が人体内にあることを検出する。検出装置1は、制御回路部2、電源部31、表示部32、センサヘッド6A、6B(総称して「センサヘッド6」という。)、加速度センサ7を備える。
【0032】
センサヘッド6は、人体に着用されたウェアWに対し、面ファスナー等により取り付けられる。
図1の場合、センサヘッド6は、人体の正面のうち胃の前側近傍に配置される。センサヘッド6A、6Bは左右方向に並ぶ。センサヘッド6Aは、人体の左右方向中心に対して左側(人体から見て右側)に配置される。センサヘッド6Bは、人体の左右方向中心に対して左側(人体から見て左側)に配置される。センサヘッド6Aには、3次元磁気センサ51、52が組み込まれる。3次元磁気センサ51、52は上下方向に並ぶ。3次元磁気センサ51は、3次元磁気センサ52に対して上側に配置される。センサヘッド6Bには、3次元磁気センサ53、54が組み込まれる。3次元磁気センサ53、54は上下方向に並ぶ。3次元磁気センサ53は、3次元磁気センサ54に対して上側に配置される。つまり、3次元磁気センサ51~54は、各々、人体の異なる位置に取り付けられる。3次元磁気センサ51~54を総称して「3次元磁気センサ5」という。
【0033】
3次元磁気センサ5は、方向異方性を有する3つの磁気インピーダンスセンサ(MIセンサ)を、互いに直交する3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)に配置する。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は各々、例えば左右方向、前後方向、上下方向に対応する。各MIセンサは、磁気組成物9に含まれる磁性体により形成される磁界ベクトルのうち特定の方向成分(X軸成分、Y軸成分、Z軸成分)の強さを計測可能である。方向異方性を有するとは、各MIセンサにおいて、磁界ベクトルの特定の方向成分の強さのみを計測可能であることを示す。例えば、3つのMIセンサは、磁界ベクトルのX軸方向の成分を計測可能なX軸センサ、磁界ベクトルのY軸方向の成分を計測可能なY軸センサ、磁界ベクトルのZ軸方向の成分を計測可能なZ軸センサを含む。
【0034】
3次元磁気センサ5は、ケーブルC1を介して後述の制御回路部2に接続する。3次元磁気センサ5は、X軸センサ、Y軸センサ、Z軸センサの各々で計測した磁界ベクトルに比例した電圧信号を、制御回路部2に出力する。
【0035】
磁気組成物9の磁性体により形成される磁界ベクトルが3次元磁気センサ5により計測される場合において、所定以上の大きさの磁界ベクトルを検出することが可能な範囲を、検出範囲50Aという。
図1において、3次元磁気センサ51、52、53、54の各々に対応する検出範囲50Aを、検出範囲51A、52A、53A、54Aで示す。
【0036】
制御回路部2は、人体から離隔した位置に配置される。制御回路部2は、3次元磁気センサ5から出力される電圧信号を、ケーブルC1を介して取得する。制御回路部2は、取得した電圧信号により示される磁界ベクトルに基づき、磁気組成物9が人体内で検出されたか否かを判定する。電源部31は、ケーブルC2を介して制御回路部2に接続し、制御回路部2の駆動電源を供給する。表示部32は、ケーブルC3を介して制御回路部2に接続する。表示部32はLCDを有し、制御回路部2からの指示に応じて文字や図柄をLCDに表示する。なお、制御回路部2、電源部31、及び表示部32は、センサヘッド6と共に人体に直接取り付けられてもよい。電源部31及び表示部32は、制御回路部2と一体となっていてもよい。
【0037】
加速度センサ7は、人体に着用されたウェアWに対し、面ファスナー等により取り付けられる。加速度センサ7は、ケーブルC4を介して制御回路部2に接続する。加速度センサ7は、人体に連動したウェアWの動きに応じた大きさの加速度を計測する。加速度センサ7は、計測した加速度の大きさを示す信号を、制御回路部2に出力する。制御回路部2は、加速度センサ7から出力される信号を、ケーブルC4を介して取得する。制御回路部2は、取得した信号により示される加速度の大きさに基づき、ウェアWを着用した人体の位置変動の状態を判定する。
【0038】
<電気的構成>
図1に示すように、制御回路部2は、CPU21、記憶部22、インターフェース(I/F)回路23、入力部24を有する。CPU21は、検出装置1の動作を統括制御する。記憶部22は、CPU21により実行されるプログラム、計測された磁界ベクトル、設定パラメータ(例えば、後述の所定時間T)等を記憶する。I/F回路23は、ケーブルC1~C4を介して外部の機器と接続する為のインターフェース素子である。入力部24は、制御回路部2に対する入力操作を受け付ける。CPU21、記憶部22、I/F回路23、入力部24は互いに電気的に接続する。
【0039】
3次元磁気センサ5は、ケーブルC1及びI/F回路23を介してCPU21と電気的に接続する。電源部31は、ケーブルC2を介して制御回路部2と接続し、CPU21、記憶部22、I/F回路23に駆動電源を供給する。表示部32は、ケーブルC2及びI/F回路23を介してCPU21と電気的に接続する。加速度センサ7は、ケーブルC4及びI/F回路23を介してCPU21と電気的に接続する。
【0040】
<第1実施形態>
<検出方法>
3次元磁気センサ5により計測される磁界ベクトルのX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各々の成分を、Bx、By、Bzと表記する。Bx、By、Bzは、各々、3次元磁気センサ5のX軸センサが計測する磁界ベクトル、Y軸センサが計測する磁界ベクトル、Z軸センサが計測する磁界ベクトルに対応する。3次元磁気センサ5により計測される磁界ベクトルを、B又はB(Bx,By,Bz)と表記する。磁界ベクトルB,Bx,By,Bzの大きさの単位は、nTである。
【0041】
磁界ベクトルB(Bx、By、Bz)を時間微分した値B´(B´x、B´y、B´z)を、各々、次の式(1)により示す。
【数1】
式(1)は、実際には次の式(2)により算出される。尚、式(2)では、dBx/dtの算出式を示しているが、dBy/dt、dBz/dtの算出式も同様である。但し、Δtは、3次元磁気センサ5から出力される信号のサンプリング周期(例えば、0.1005s)を示す。Bx(t)は、計測開始から時間t(s)経過後に3次元磁気センサ5により計測された磁界ベクトルである。
【数2】
【0042】
磁界ベクトルBの角度θ(rad)を時間微分した時間変化θ´は、次の式(3)の関係を満たす。尚、|B|は、磁界ベクトルBの大きさを示す。|B´|は、磁界ベクトルBの時間変化B´の大きさを示す。
【数3】
【0043】
時間変化θ´を|B´|の単位量当たりの割合で示した値R´を定義する。値R´は、時間変化θ´を|B´|で除算した値に対応し、次の式(4)の関係を満たす。
【数4】
【0044】
ここで、人体内に経口投与された磁気組成物9が胃内に存在する時、胃の蠕動運動に応じて磁気組成物9も移動する。この時、磁性体により形成される磁界ベクトルの向きは、蠕動運動の周期で変動する。このため、制御回路部2のCPU21は、R´が-0.02rad以下又は0.02rad以上(R´≦-0.02rad又は0.02rad≦R´)であり、且つ、|B´|が50nT以上(50nT≦|B´|)の時、3次元磁気センサ5の検出範囲50A内に磁気組成物9があると判定する。なお、R´が-0.02rad以下又は0.02rad以上であることは、言い換えれば、|R´|が0.02rad以上であることに対応する。又、磁気組成物9により形成される磁界ベクトルBの角度の時間変化θ´を磁界ベクトルの時間変化B´の大きさ|B´|で除算した値が、所定量より大きいことを示す。時間変化θ´を直接判定せず、|B´|により除算した値R´を用いて判定したことの理由は、磁気組成物9の磁性体により形成される磁界以外の環境磁界等の影響を排除する為である。又、|B´|に下限を設けることにより、3次元磁気センサ5から出力される信号のノイズ成分の影響を排除している。なお、上記の±0.02rad(即ち、±1.1deg)は閾値の一例であり、他の値でもよい。
【0045】
<第1メイン処理>
図2を参照し、第1実施形態においてCPU21により実行される第1メイン処理について説明する。CPU21は、記憶部22に記憶されたプログラムに基づき、所定のサンプル周期(例えば、0.1005s)で第1メイン処理を実行する。
【0046】
サンプル周期が到来した時、CPU21は、加速度センサ7から出力される信号を取得し、加速度の大きさを特定する。CPU21は、特定した加速度の大きさと所定閾値とを比較する。CPU21は、加速度の大きさが所定閾値よりも大きい場合、ウェアWを介して加速度センサ7が取り付けられた人体の位置変動が大きいと判定する(S11:NO)。この場合、CPU21は第1メイン処理を終了する。一方、CPU21は、加速度の大きさが所定閾値以下の場合、人体の位置変動が小さいと判定する(S11:YES)。この場合、CPU21は処理をS13に進める。
【0047】
CPU21は、3次元磁気センサ51~54が出力する信号を取得し、各々によって計測された磁界ベクトルB(Bx、By、Bz)を、3次元磁気センサ51~54毎に特定する(S13)。CPU21は、式(1)~(3)に基づき、特定した磁界ベクトルBの時間変化θ´を3次元磁気センサ51~54毎に算出する(S15)。更にCPU21は、式(4)に基づき、値R´を3次元磁気センサ51~54毎に算出する(S17)。
【0048】
CPU21は、3次元磁気センサ51~54毎に以下の処理を実行する。CPU21は、3次元磁気センサ51~54毎に|B´|が50nT以上か判定する(S19)。CPU21は、|B´|が50nTよりも小さいと判定した場合(S19:NO)、処理をS27に進める。CPU21は、|B´|が50nT以上と判定した場合(S19:YES)、|R´|が0.02rad以上であるか判定する(S21)。CPU21は、|R´|が0.02rad以上であると判定した場合(S21:YES)、磁界ベクトルBの角度の時間変化θ´が所定量より大きいことになるので、人体内のうち対応する3次元磁気センサ5の検出範囲50A内の位置に磁気組成物9があると判定する(S23)。CPU21は、処理をS27に進める。なお、上記の50nTは閾値の一例であり、他の値でもよい。
【0049】
CPU21は、|R´|が0.02rad未満であると判定した場合(S21:NO)、人体内のうち対応する3次元磁気センサ5の検出範囲50A内の位置に磁気組成物9がないと判定する(S25)。CPU21は、処理をS27に進める。
【0050】
CPU21は、S19、S21、S23、S25の処理を、3次元磁気センサ51~54の全てについて実行したか判定する(S27)。CPU21は、3次元磁気センサ51~54の全てについて処理を実行していないと判定した場合(S27:NO)、処理をS19に戻す。CPU21は、3次元磁気センサ51~54の全てについて処理をするまで、対象とする3次元磁気センサ5を変えながら、S19、S21、S23、S25の処理を繰り返す。CPU21は、3次元磁気センサ51~54の全てについて処理を実行したと判定した場合(S27:YES)、処理をS29に進める。
【0051】
CPU21は、3次元磁気センサ51~54の夫々について検出範囲51A~54Aの位置に磁気組成物9があるか否かを示す通知画像を、表示部32に表示する(S29)。CPU21は、第1メイン処理を終了する。
【0052】
<実施例1>
検出装置1を用いて行った実験の結果について説明する。
図1に示すセンサヘッド6A、6Bが用いられた。実験は、磁気組成物9が経口投与された場合とされない場合の夫々について、10分間ずつ行われた。10分間の実験期間中、検出装置1は、3次元磁気センサ5から出力される信号を、サンプル周期(0.1005s)で取得した。そして、人体内のうち3次元磁気センサ51~54の夫々の検出範囲50A内に磁気組成物9があるか否かが、サンプリング周期毎に合計6000回判定された。
【0053】
図3は、3次元磁気センサ51~54の夫々で検出範囲50A内に磁気組成物9があると判定された回数を示す。磁気組成物9の投与前において人体内に磁気組成物9があると判定された回数は、3次元磁気センサ51~54の夫々で0~2回の範囲内となった。これに対し、3次元磁気センサ51、52について、磁気組成物9の投与後において人体内に磁気組成物9があると判定された回数が10回以上となり、投与前に比べて回数が大幅に増加した。この結果から、磁気組成物9の投与後、3次元磁気センサ51の検出範囲51A、及び、3次元磁気センサ52の検出範囲52Aに磁気組成物9があることを検出可能であることが分かった。以上の結果から、検出装置1は、人体内に磁気組成物9があるか否かを判定できることが分かった。
【0054】
一方、3次元磁気センサ53、54については、磁気組成物9の投与後において人体内に磁気組成物9があると判定された回数は1、2回となり、投与前に対してほぼ変化しなかった。この結果から、3次元磁気センサ51、52が取り付けられた部位、言い換えれば、人体の左右方向中心に対して左側の部位に、投与後の磁気組成物9が存在する可能性が高く、右側の部位には、投与後の磁気組成物9が存在する可能性が低いことが推定される。以上の結果から、検出装置1は、複数の3次元磁気センサ5を用いることにより、人体内において磁気組成物9がある部位を詳細に特定できることが分かった。
【0055】
<第1実施形態の作用、効果>
検出装置1は、3次元磁気センサ5により計測された磁界ベクトルBの時間変化を算出し(S15)、算出結果に基づいて、人体内に経口投与される磁気組成物9を検出する(S21)。この場合、検出装置1は、1つの3次元磁気センサ5を用いて磁気組成物9を検出することが可能である。従って検出装置1は、磁気組成物9を検出する為に複数の3次元磁気センサを用いなければならない場合と比べて、機器の小型化且つ低コスト化が可能となる。
【0056】
検出装置1は、磁界ベクトルBの角度θの時間変化θ´を算出する(S15)。検出装置1は、磁界ベクトルBの角度θの時間変化θ´を、磁界ベクトルBの時間変化の大きさ|B´|で除算した値R´の絶対値|R´|が、所定量0.02より大きい場合(S21:YES)、3次元磁気センサ5の検出範囲50A内の位置に磁気組成物9があることを検出する(S23)。この場合、検出装置1は、例えば磁気組成物9が人体内で移動することに応じ、磁界ベクトルBの角度θが時間変化する場合、磁気組成物9を検出できる。具体的には、例えば、経口投与された胃の蠕動運動(約0.05Hz)に応じて磁気組成物9が人体内で移動する場合、磁界ベクトルBの角度θが時間変化する。従って検出装置1は、磁界ベクトルBの角度θの時間変化θ´に基づき、磁気組成物9が胃内にあることを適切に検出できる。
【0057】
検出装置1は、人体の異なる位置に各々取り付けられる3次元磁気センサ51~54を有する。検出装置1は、3次元磁気センサ51~54のうち少なくとも何れかについて、|B´|が50nT以上であり(S19:YES)、且つ、値|R´|が0.02radより大きいと判定された場合(S21:YES)、対応する3次元磁気センサ5の検出範囲50A内に磁気組成物9があることを検出する(S23)。この場合、検出装置1は、人体の広範囲の領域に3次元磁気センサ51~54を取り付けることによって、人体の広範囲の領域から磁気組成物9を精度良く検出できる。又、検出装置1は、人体のうち磁気組成物9が存在する位置を、より正確に特定できる。
【0058】
検出装置1は、加速度センサ7を備える。検出装置1は、加速度センサ7の出力結果に基づき、人体の位置変動が小さいか判定する(S11)。検出装置1は、人体の位置変動が小さいと判定した場合(S11:YES)、磁界ベクトルBの角度θの時間変化θ´を算出して磁気組成物9を検出する。この場合、検出装置1は、人体が平静状態である場合に磁界ベクトルBの角度θの時間変化θ´を取得し、磁気組成物9を検出できる。従って、検出装置1は、人体の位置変動が測定結果に及ぼす影響を最小限に抑制できるので、人体内の磁気組成物9を正確に検出できる。
【0059】
<第1実施形態の特記事項>
S15の処理を行うCPU21は、本発明の「取得手段」の一例である。S21の処理を行うCPU21は、本発明の「検出手段」の一例である。S11の処理を行うCPU21は、本発明の「判定手段」の一例である。
【0060】
<第2実施形態>
<検出方法>
磁界ベクトルB(Bx、By、Bz)は、所定時間T毎に区分された複数の期間(第1期間、第2期間、・・・第N-1期間、第N期間、第N+1期間・・・)(Nは整数)毎にn個(nは整数)ずつ計測される。次に、各期間にて計測されたn個の磁界ベクトルの平均が算出される。算出される磁界ベクトルを平均ベクトルといい、A又はA(Ax,Ay,Az)と表記する。Ax,Ay,Azは、算出される平均ベクトルのX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各々の成分を示す。Ax,Ay,Azは、次の式(5)により示される。Bx(i)、By(i)、Bz(i)は、各期間においてn個ずつ計測される磁界ベクトルBのうちi番目に計測される磁界ベクトルBのX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各々の成分に対応する。
【数5】
第N期間に計測されたn個の磁界ベクトルBを平均した平均ベクトルAを、第N平均ベクトルA(N)という。第N平均ベクトルA(N)のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各々の成分を、Ax(N),Ay(N),Az(N)と表記する。
【0061】
第N期間に計測された磁界ベクトルBに基づき算出された第N平均ベクトルA(N)と、第N期間の次の期間である第N+1期間に計測された磁界ベクトルBに基づき算出された第N+1平均ベクトルA(N+1)との差分ベクトルが算出される。算出される差分ベクトルを、第N差分ベクトルΔA(N)と表記する。第N差分ベクトルΔA(N)のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各々の成分を、ΔAx(N),ΔAy(N),ΔAz(N)と表記する。ΔAx(N),ΔAy(N),ΔAz(N)は、次の式(6)により示される。
【数6】
【0062】
第N平均ベクトルA(N)と、第N差分ベクトルΔA(N)とのなす角度θ(N)は、次の式(7)の関係を満たす。
【数7】
式(7)を、角度θ(N)について解くと、式(8)が導出される。
【数8】
式(8)を更に変形し、式(9)が導出される。
【数9】
【0063】
3次元磁気センサ5の近傍で磁気組成物9の位置変化が起きた場合、角度θ(N)は、磁気組成物9の磁極の向きや移動方向に応じて変化する。この時の角度θ(N)は、-π~+π[rad]の間のどのような値も取りうる。しかし、例えば体動に伴い、均一な環境磁場中で回転するようなノイズが3次元磁気センサ5に作用した場合、角度θ(N)は、π/2[rad]を中心とした非常に狭い範囲の値となる。
【0064】
このため、制御回路部2のCPU21は、角度θ(N)からπ/2[rad]を減算した角度が、所定の角度閾値θthよりも大きいか判定する。なお、角度θ(N)からπ/2[rad]を減算した角度をφ(N)と表記する。(式(10)参照)。
【数10】
CPU21は、式(10)を満たさない場合、3次元磁気センサ5の回転に伴うノイズが計測されている可能性があるため、無視すべきノイズと判定する。このようにCPU21は、3次元磁気センサ5の近傍に磁気組成物9があるか否かを判定する前に、式(10)に基づく判定を行い、3次元磁気センサ5の回転に伴うノイズの影響を排除する。
【0065】
又、3次元磁気センサ5の周囲の環境磁界の変動によるランダムなノイズが影響する場合もある。この時の角度θ(N)についても、-π~+π[rad]の間のどのような値も取りうる。しかしこの場合、3次元磁気センサ5の近傍で磁気組成物9の位置変化が起きた場合と比べ、第N差分ベクトルΔA(N)の絶対値は比較的小さい。
【0066】
このため、制御回路部2のCPU21は、第N差分ベクトルΔA(N)の絶対値が所定の大きさ閾値Mthよりも大きいか判定する(式(11)参照)。
【数11】
CPU21は、式(11)を満たさない場合、3次元磁気センサ5の周囲の環境磁界の変動によるランダムなノイズが計測されている可能性があるため、無視すべきノイズと判定する。このように、CPU21は、3次元磁気センサ5の近傍に磁気組成物9があるか否かを判定する前に、式(11)に基づく判定を行い、3次元磁気センサ5の周囲の環境磁界の変動に伴うノイズの影響を排除する。
【0067】
以上のように、制御回路部2のCPU21は、式(10)及び式(11)を用いることによって、体動ノイズや環境磁界の変動によるランダムなノイズの中でも、3次元磁気センサ5の近傍で磁気組成物9の位置変化が生じたことを正確に検出できる。
【0068】
制御回路部2のCPU21は、3次元磁気センサ5の近傍に磁気組成物9があるか否かを、以下の方法により判定する。ここで、人体内に経口投与された磁気組成物9が胃内に存在する時、胃の蠕動運動に応じて磁気組成物9も移動する。この時、磁気組成物9の磁性体により形成される磁界ベクトルの向きは、蠕動運動の周期で変動する。これに対し、CPU21は、角度φ(N)を差分ベクトルの大きさ|ΔA(N)|で除算した値R(N)を、次の式(12)に基づき算出する。
【数12】
【0069】
CPU21は、R(N)が-0.02[rad]以下又は0.02[rad]以上(R(N)≦-0.02[rad]又は0.02[rad]≦R(N))であり、且つ、|ΔA(N)|が50nT以上(50nT≦|ΔA(N)|)の時、蠕動運動の周期で磁気組成物9が移動していると判定する。この場合、CPU21は、3次元磁気センサ5の検出範囲50A内に磁気組成物9があると判定する。
【0070】
なお、R(N)が-0.02[rad]以下又は0.02[rad]以上であることは、言い換えれば、|R(N)|が0.02[rad]以上であることに対応する。又、角度φ(N)を差分ベクトルの大きさ|ΔA(N)|で除算した値が、所定量(50nT)より大きいことを示す。
【0071】
なお、角度φ(N)を直接判定せず、|ΔA(N)|により除算した値R(N)を用いて判定することの理由は、磁気組成物9の磁性体により形成される磁界以外の環境磁界等の影響を排除する為である。又、|ΔA(N)|に下限を設けることにより、3次元磁気センサ5から出力される電圧信号のノイズ成分の影響を排除している。なお、上記の±0.02[rad](即ち、±1.1[deg])、50nTは、閾値の一例であり、他の値でもよい。
【0072】
なお、一般的に胃の中の磁気組成物9は、0.5Hz以下で周期的に動くことが知られている。3次元磁気センサ5により計測される磁界ベクトルB(Bx,By,Bz)は、磁気組成物9のゆっくりとした周期の電圧信号に加えて、様々な外部環境から受ける比較的周波数の高いランダムなノイズ信号を含む。このため、磁界ベクトルBを時間微分した値B´(X軸方向成分B´x、Y軸方向成分B´y、Z軸方向成分B´z)は、これらの信号の影響を受け易い。従って、磁気組成物9の位置を検出するために値B´が用いられた場合、位置検出の精度が低下する可能性がある。これに対し、上記のように、計測された磁界ベクトルB(Bx,By,Bz)について複数の期間毎に平均ベクトルAを算出し、磁気組成物9の位置検出を判定する時のパラメータとして平均ベクトルAを用いることで、高周波で且つランダムなノイズを除去できるため効果的である。
【0073】
例えば、
図4は、3次元磁気センサ5により計測された磁界ベクトルBに基づき、式(9)を用いて計算された角度θを示すグラフである。
図5は、3次元磁気センサ5により計測された磁界ベクトルBに基づき、式(12)を用いて算出された値R(N)を示すグラフである。各々の横軸は時間(秒)を示す。
図4の縦軸は角度θ[deg]を示し、
図5の縦軸は値R(N)を示す。
図4、
図5は、体形が肥満型の被験者により行われた実験の結果である。
図4(A)~(C)、
図5(A)~(C)は、磁気組成物9を経口投与する前の結果を示し、
図4(D)~(F)、
図5(D)~(F)は、磁気組成物9を服用した後の結果を示す。
図4(A)、
図4(D)、
図5(A)、
図5(D)は、平均ベクトルAを算出する場合の所定時間Tを0.5sとした場合の結果を示す。
図4(B)、
図4(E)、
図5(B)、
図5(E)は、所定時間Tを1.0sとした場合の結果を示す。
図4(C)、
図4(F)、
図5(C)、
図5(F)は、所定時間Tを2.0sとした場合の結果を示す。なお、式(9)、(12)の適用は、3次元磁気センサ5により計測された磁界ベクトルBから高周波ノイズが除去された後、実行される。
【0074】
図4、
図5の夫々の結果から、経口投与前と経口投与後の角度θ及び値R(N)の変化の度合いが明確になることが分かる。又、3次元磁気センサ5を装着した人体の動きの速さに応じ、所定時間Tの長さを切り替えることも有効であることが分かる。
【0075】
<第2メイン処理>
図6を参照し、第2実施形態においてCPU21により実行される第2メイン処理について説明する。CPU21は、記憶部22に記憶されたプログラムに基づき、所定のサンプル周期(例えば、0.1005s)で第2メイン処理を実行する。最初に第2メイン処理が開始される場合、記憶部22に記憶された変数mに1が設定される。
【0076】
サンプル周期が到来した時、CPU21は、加速度センサ7から出力される電圧信号を取得し、加速度の大きさを特定する。CPU21は、特定した加速度の大きさと所定閾値とを比較する。CPU21は、加速度の大きさが所定閾値よりも大きい場合、ウェアWを介して加速度センサ7が取り付けられた人体の位置変動が大きいと判定する(S31:NO)。この場合、CPU21は第2メイン処理を終了する。一方、CPU21は、加速度の大きさが所定閾値以下の場合、人体の位置変動が小さいと判定する(S31:YES)。この場合、CPU21は処理をS33に進める。
【0077】
CPU21は、3次元磁気センサ51~54が出力する電圧信号を取得し、各々によって計測された磁界ベクトルB(Bx、By、Bz)を、3次元磁気センサ51~54毎に特定する(S33)。CPU21は、特定した磁界ベクトルBを、第m(=1)期間に計測された磁界ベクトルとして記憶部22に記憶する(S35)。CPU21は、記憶部22に記憶された所定時間Tを読み出して取得する。CPU21は、第m-1期間の終了から所定時間Tが経過したか判定する(S37)。なお、CPU21は、変数mに1が設定されている場合、最初に第2メイン処理が開始されてから所定時間Tが経過したか判定する。CPU21は、所定時間Tが経過していないと判定した場合(S37:NO)、第2メイン処理を終了する。
【0078】
第2メイン処理がサンプル周期で繰り返し起動され、所定時間Tが経過した場合(S37:YES)、CPU21は、第m(=1)期間に計測された磁界ベクトルBを、記憶部22から読み出して取得する(S39)。CPU21は、取得した磁界ベクトルBに基づき、第m(=1)平均ベクトルA(m(=1))を算出する(S41)。CPU21は、算出した第1平均ベクトルA(1)を記憶部22に記憶する(S43)。
【0079】
CPU21は、変数mが2以上であるか判定する(S45)。CPU21は、変数mが1である場合(S45:NO)、処理をS53に進める。CPU21は、変数mに1加算して更新し(S53)、第2メイン処理を終了する。
【0080】
更新された変数m(=2)に基づき、第2メイン処理がサンプル周期で繰り返し起動される。所定時間Tが経過した場合(S37:YES)、CPU21は、第m(=2)期間に計測された磁界ベクトルBを、記憶部22から読み出して取得する(S39)。CPU21は、取得した磁界ベクトルBに基づき、第m(=2)平均ベクトルA(m(=2))を算出する(S41)。CPU21は、算出した第2平均ベクトルA(2)を記憶部22に記憶する(S43)。CPU21は、変数mが2以上であるか判定する(S45)。CPU21は、変数mが2以上であると判定した場合(S45:YES)、処理をS47に進める。
【0081】
CPU21は、前回のS43の処理によって記憶部22に記憶された第1平均ベクトルA(1)と、今回のS43の処理によって記憶部22に記憶された第2平均ベクトルA(2)とに基づき、式(6)を適用して第1差分ベクトルΔA(1)を算出する(S47)。CPU21は、算出した第1差分ベクトルΔA(1)を式(8)(9)を適用し、角度θ(1)を算出する(S49)。CPU21は、算出した角度θ(1)からπ/2[rad]を減算し、角度φ(1)を更に算出する(S51)。CPU21は、処理をS71(
図7参照)に進める。
【0082】
図7に示すように、CPU21は、S51(
図6参照)の処理によって算出した角度φ(1)が角度閾値θthよりも大きいか判定する(S71、式(10)参照)。CPU21は、角度φ(1)が角度閾値θthよりも大きいと判定した場合(S71:YES)、3次元磁気センサ5の回転に伴うノイズが計測されている可能性があるため、処理をS83に進める。
【0083】
CPU21は、角度φが角度閾値θth以下と判定した場合(S71:NO)、第1差分ベクトルΔA(1)の絶対値が大きさ閾値Mthよりも大きいか判定する(S73、式(11)参照)。CPU21は、第1差分ベクトルΔA(1)の絶対値が大きさ閾値Mthよりも大きいと判定した場合(S73:YES)、3次元磁気センサ5の周囲の環境磁界の変動によるノイズが計測されている可能性があるため、処理をS83に進める。
【0084】
CPU21は、第1差分ベクトルΔA(1)の絶対値が大きさ閾値Mth以下の場合(S73:NO)、式(12)に基づき、角度φ(1)を差分ベクトルの大きさ|ΔA(1)|で除算して値R(1)を算出する(S75)。CPU21は、算出した値R(1)の絶対値|R(1)|が0.02rad以上であるか判定する(S77)。CPU21は、|R(1)|が0.02rad以上であると判定した場合(S77:YES)、人体内のうち対応する3次元磁気センサ5の検出範囲50A内の位置に磁気組成物9があると判定する(S79)。CPU21は、処理をS83に進める。
【0085】
CPU21は、|R(1)|が0.02radよりも小さいであると判定した場合(S77:NO)、人体内のうち対応する3次元磁気センサ5の検出範囲50A内の位置に磁気組成物9がないと判定する(S81)。CPU21は、処理をS83に進める。
【0086】
CPU21は、S39(
図5参照)~S81の処理を、3次元磁気センサ51~54の全てについて実行したか判定する(S83)。CPU21は、3次元磁気センサ51~54の全てについて処理を実行していないと判定した場合(S83:NO)、処理をS39(
図6参照)に戻す。CPU21は、3次元磁気センサ51~54の全てについて処理をするまで、対象とする3次元磁気センサ5を変えながら、S39~S81の処理を繰り返す。CPU21は、3次元磁気センサ51~54の全てについて処理を実行したと判定した場合(S83:YES)、処理をS85に進める。
【0087】
CPU21は、3次元磁気センサ51~54の夫々について検出範囲51A~54Aの位置に磁気組成物9があるか否かを示す通知画像を、表示部32に表示する(S85)。CPU21は、第2メイン処理を終了する。
【0088】
CPU21は、上記の処理を、変数mを1,2、・・・N、N+1・・・のように更新しながら、繰り返し実行する。例えば、変数mがN+1の場合、CPU21は、第N平均ベクトルA(N)と第N+1平均ベクトルA(N+1)とに基づき、式(6)を適用して第N差分ベクトルΔA(N)を算出する(S47)。CPU21は、第N差分ベクトルΔA(N)に基づき、角度θ(N)及び角度φ(N)を更に算出する(S49、S51)。CPU21は、角度φ(N)が角度閾値θth以下(S71:NO)、第N差分ベクトルΔA(N)の絶対値が大きさ閾値Mth以下(S73:NO)、且つ、値R(N)の絶対値|R(N)|が0.02rad以上である場合(S77:YES)、人体内のうち対応する3次元磁気センサ5の検出範囲50A内の位置に磁気組成物9があると判定する(S79)。
【0089】
<決定処理>
図8を参照し、決定処理について説明する。決定処理は、入力部24に対する入力操作を検出した場合、記憶部22に記憶されたプログラムをCPU21が読み出して実行することによって開始される。
【0090】
CPU21は、所定時間Tを入力するための入力操作が、入力部24を介して行われたか判定する(S91)。CPU21は、所定時間Tを入力するための入力操作が入力部24を介して行われたと判定した場合(S91:YES)、入力部24を介して入力された所定時間Tを、記憶部22に記憶される所定時間Tとして決定し、所定時間Tを記憶部22に記憶する(S93)。CPU21は、決定処理を終了する。一方、CPU21は、所定時間Tを入力する為の入力操作が、入力部24を介して行われていないと判定した場合(S91:NO)、決定処理を終了する。なお、CPU21は、第2メイン処理(
図6参照)のS37の処理において、決定処理にて変更された所定時間Tに基づき、所定時間Tが経過したか否かを判定する。
【0091】
<第2実施形態の作用、効果>
検出装置1は、3次元磁気センサ5により複数の期間の夫々で計測された磁界ベクトルBの平均を平均ベクトルAとして算出し(S41)、算出した平均ベクトルAに基づいて、人体内に経口投与される磁気組成物9を検出する(S79)。この場合、検出装置1は、1つの3次元磁気センサ5を用いて磁気組成物9を検出することが可能である。従って検出装置1は、磁気組成物9を検出する為に複数の3次元磁気センサを用いなければならない場合と比べて、機器の小型化且つ低コスト化が可能となる。
【0092】
検出装置1は、入力部24を介して所定時間Tの入力操作が行われた場合(S91:YES)、入力された所定時間Tを、記憶部22に記憶された所定時間Tとして決定する。検出装置1は、決定された所定時間T毎に区分された複数の期間の夫々で磁界ベクトルBを取得し、平均ベクトルAを算出する(S41)。この場合、検出装置1は、3次元磁気センサ5が取り付けられる人体の動きの速さに応じ、所定時間Tの長さを切り替えることができる。なお、人体の動きは周期的な脈の周波数1Hz、呼吸の周波数0.5Hz、胃の蠕動運動周波数0.05Hz等となる特徴がある。例えば1秒間の所定時間Tを決定した場合、1Hzの脈拍による振動ノイズは平均化されて減衰する。一方、呼吸や胃の蠕動運動に伴う磁気組成物9の動きはそれより遅いため、減衰しない。このため、所定時間Tを適切に決定することにより、磁気組成物9に起因する信号とノイズとを適切に分離できる。
【0093】
検出装置1は、第N平均ベクトルA(N)と第N+1平均ベクトルA(N+1)との第N差分ベクトルΔA(N)を算出する(S47)。更に、検出装置1は、第N差分ベクトルΔA(N)と第N平均ベクトルA(N)との間の角度θ(N)、及び、角度θ(N)からπ/2[rad]を減算した角度φ(N)とを更に算出する(S49、S51)。検出装置は、算出した角度φ(N)を第N平均ベクトルの大きさ|ΔA(N)|で除算した値R(N)に基づき、3次元磁気センサ5の検出範囲50A内に磁気組成物9があるか判定する(S77)。この場合、検出装置1は、例えば磁気組成物9が人体内で移動することに応じ、磁界ベクトルBが時間変化する場合、磁気組成物9を検出できる。具体的には、例えば、経口投与された胃の蠕動運動(約0.05Hz)に応じて磁気組成物9が人体内で移動する場合、磁界ベクトルBが時間変化する。従って検出装置1は、磁界ベクトルBの時間変化に基づき、磁気組成物9が胃内にあることを適切に検出できる。
【0094】
検出装置1は、人体の異なる位置に各々取り付けられる3次元磁気センサ51~54を有する。検出装置1は、3次元磁気センサ51~54のうち少なくとも何れかについて、角度φ(N)が角度閾値θthよりも大きく(S71:YES)、第N差分ベクトルΔA(N)の絶対値が大きさ閾値Mthよりも大きく(S73:YES)、且つ、値|R(N)|が0.02radより大きいと判定された場合(S77:YES)、対応する3次元磁気センサ5の検出範囲50A内に磁気組成物9があることを検出する(S79)。この場合、検出装置1は、人体の広範囲の領域に3次元磁気センサ51~54を取り付けることによって、人体の広範囲の領域から磁気組成物9を精度良く検出できる。又、検出装置1は、人体のうち磁気組成物9が存在する位置を、より正確に特定できる。
【0095】
検出装置1は、加速度センサ7を備える。検出装置1は、加速度センサ7の出力結果に基づき、人体の位置変動が小さいか判定する(S31)。検出装置1は、人体の位置変動が小さいと判定した場合(S31:YES)、磁界ベクトルBを計測して磁気組成物9を検出する。この場合、検出装置1は、人体が平静状態である場合に磁界ベクトルBを計測して磁気組成物9を検出できる。従って、検出装置1は、人体の位置変動が測定結果に及ぼす影響を最小限に抑制できるので、人体内の磁気組成物9を正確に検出できる。
【0096】
<第2実施形態の特記事項>
S35の処理を行うCPU21は、本発明の「取得手段」の一例である。S41の処理を行うCPU21は、本発明の「平均算出手段」の一例である。S79の処理を行うCPU21は、本発明の「検出手段」の一例である。S93の処理を行うCPU21は、本発明の「決定手段」の一例である。
【0097】
<磁気組成物9>
磁気組成物9は、人体内に経口投与され、検出装置1により検出される。磁気組成物9は、磁性体のみで構成されてもよいし、磁性体以外の成分を含んでいてもよい。すなわち、磁気組成物9は、薬剤物質、腸溶性物質、水難溶性物質、油脂、滑沢剤などのうち少なくとも一以上の成分(以下、「薬剤物質等」という)を含んでも良い。磁気組成物9は、経口投与しやすい形態とすることもできる。例えば、磁気組成物9が複数成分からなる場合には、これらの成分を混合して、圧縮成形することにより、固形状の錠剤とすることもできる。磁気組成物9の形状の種類として、圧縮成形した錠剤の他、有核錠と多層錠等であってもよい。有核錠は、磁性体を少なくとも含む核を有し、核の周囲に薬剤物質が付着することにより形成される。多層錠は、磁性体を少なくとも含む核に薬剤物質等が積層して形成される。
【0098】
薬剤物質は、経口投与されることにより人体の疾病の診断、治療、予防を行う為の医療用の薬品である。薬剤物質は、使用目的に合わせて薬物が調製されている。腸溶性物質は、胃では溶けず、腸で溶けるような特性を有する物質である。磁気組成物9に含められる腸溶性物質の種類及び含有量が調整されることに応じ、経口投与された磁気組成物9の胃内での滞留時間を調節可能である。本実施形態では、腸溶性物質としてメタクリル酸子ポリマーが用いられる。水難溶性物質は、腸で溶けないような特性を有する物質である。磁気組成物9に含められる水難溶性物質の種類及び含有量が調整されることに応じ、経口投与された磁気組成物9を腸で溶かすか否かを調節可能である。本実施形態では、水難溶性物質としてエチルセルロースが含められる。
【0099】
油脂は、人体内において磁気組成物9に付着する水分をはじき、磁気組成物9の内部に水分が浸透することに応じて磁気組成物9が崩壊することを抑制する。本実施形態において、油脂として硬化油が用いられる。滑沢剤は、磁気組成物9を錠剤として成形する時の成形装置に、磁気組成物9の原材料が付着することを抑制する。本実施形態において、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムが用いられる。磁性体は磁性を帯びた物質であり、酸化鉄を少なくとも含む。本実施形態において、磁性体は酸化鉄としてマグヘマイト、マグネタイト、イプシロン酸化鉄の少なくとも何れかを含む。
【0100】
磁気組成物9は、経口投与された後、少なくとも1時間胃内で滞留するように、各主成分(腸溶性物質、水難溶性物質、油脂、滑沢剤等)の種類及び含有量が調整される。これにより検出装置1は、胃に滞留する磁気組成物9を検出するのに要する時間を確保できるので、容易且つ精度良く磁気組成物9を検出することが可能となる。また、磁気組成物9は、体外に排出されるまで崩壊せず、形状を維持していても良い。
【0101】
<実施例2>
磁気組成物9の胃内及び腸内における崩壊特性について評価された。磁性体としてマグヘマイト(γ-MRD、チタン工業株式会社製)が用いられた。腸溶性物質としてメタクリル酸コポリマーLD(オイドラギッドL100-55、レーム社製)が用いられた。水難溶性物質としてエチルセルロース(エトセル10FP、ダウケミカル社製)が用いられた。油脂として硬化油(ラブリワックス101、フロイント産業株式会社製)が用いられた。滑沢剤として、ステアリン酸マグネシウム(マリンクロット社製)が用いられた。これらを、
図9に実験1~13で示す仕込み量(単位:g)となるように処方し、錠剤の調製を行った。仕込み量の割合の割り付けは、ボックスベンケン実験計画法に従った。
【0102】
ステアリン酸マグネシウムを除く各材料が計量され、乳鉢中で混合された。その後、1mLのエタノール(関東化学製)が添加され、乳鉢中で粉体が湿式練合された。練合粉体は、棚式乾燥機により60℃で一夜乾燥された後、目開き1mmの篩を用いて整粒された。次に、ステアリン酸マグネシウムが整粒顆粒に加えられて混合された。混合粉末は約50mgに計量され、単発打錠機(岡田精工社製、タブフレックス)を用いて5kNの力で圧縮成形された。これにより、直径4.8mmの錠剤が得られた。錠剤は20N以上の硬度を有していた(
図10参照)。
【0103】
錠剤の溶出特性が、溶出試験機(NTR-6300、富山産業製)を用いて次のように評価された。錠剤の重量が測定された後、胃液を模擬した900mLの0.1mol/L塩酸、又は、腸液を模擬したpH6.8リン酸緩衝液を入れたベッセルに錠剤が投入され、パドル回転数50rpm、試験液温度37℃で2時間攪拌された。2時間攪拌後に錠剤が取り出され、棚式乾燥機により60℃で一夜乾燥された後、試験後の錠剤の重量が測定された。結果を、
図10に示す。
【0104】
図10に示すように、0.1mol/L塩酸中の重量減少率は、何れの錠剤も1%程度であり、胃酸中では錠剤が殆ど崩壊しないことが分かった。一方、pH6.8リン酸緩衝液中の重量減少率は、錠剤によって大きく異なることが分かった。このことから、腸内での崩壊特性は、各材料の仕込み量によって任意に調整できることが分かった。
【0105】
<実施例3>
磁気組成物9の腸内における崩壊特性について評価された。腸溶性物質としてメタクリル酸コポリマーLD(オイドラギッドL100-55、レーム社製)が用いられた。水難溶性物質としてエチルセルロース(エトセル10FP、ダウケミカル社製)が用いられた。そして、重回帰分析により、pH6.8リン酸緩衝液中の重量減少率(%)を推定した。
【0106】
図11(A)は、油脂として硬化油が5%含められ、且つ、メタクリル酸コポリマーLDとエチルセルロースとの各々の仕込み量の割合が調整された場合における磁気組成物9の重量減少率を示す。
図11(B)は、油脂が含められず、且つ、メタクリル酸コポリマーLDとエチルセルロースとの各々の仕込み量の割合が調整された場合における磁気組成物9の重量減少率を示す。
【0107】
図11に示すように、メタクリル酸コポリマーLDの減少、又はエチルセルロースの増加により、腸内での磁気組成物9の崩壊を抑制できることが分かった。又、油脂の添加によって、腸内での磁気組成物9の崩壊を抑制できることが分かった。
【0108】
<実施例4>
磁気組成物9の体内における溶出特性について更に評価された。磁性体としてマグヘマイト(γ-MRD、チタン工業株式会社製)が用いられた。腸溶性物質としてアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(オイドラギットRS、レーム社製)が用いられた。水難溶性物質としてエチルセルロース(エチセル10FP、ダウケミカル社製)が用いられた。油脂として硬化油(ラブリワックス101、フロイント産業株式会社製)が用いられた。溶媒として、エタノール(関東化学株式会社製)が用いられた。滑沢剤として、ステアリン酸マグネシウム(マリンクロット社製)が用いられた。これらを、
図12に示す仕込み量(単位:g)となるように処方し、錠剤の調製を行った。
【0109】
1Lスーパーミキサー(カワタ社製)にマグヘマイト、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、エチルセルロース及び硬化油が各々投入され、ブレード回転数1400rpmで3分間の混合が実施された。次に、1400rpmでブレードを回転させながらエタノールが投入され、3分間の造粒が実施された。造粒により得られた顆粒は、棚式乾燥機を用いて60℃で一夜乾燥された。その後、パワーミル(ダルトン社製)により、スクリーンメッシュサイズ1.0mm、ブレード回転数5000rpmで解砕整粒が実施された。この顆粒にステアリン酸マグネシウムが添加され、ポリ袋中で滑沢混合が実施された。
【0110】
顆粒は、ロータリー式打錠機(VIRGO、菊水製作所)により、ターンテーブル回転数30rpm、圧縮圧10kNで成形された。これにより、直径が6mm、重量が120mgの錠剤が得られた。
【0111】
上記により得られた錠剤の溶出特性が評価された。溶出特性の評価は、溶出試験機(NTR-6300、富山産業株式会社)を用いて行われた。錠剤は、重量が測定された後、胃液を模擬した試験液である900mLの0.1mol/L塩酸、又は、腸液を模擬した試験液であるpH6.8のリン酸緩衝液を入れたベッセルに投入された。そして、パドル回転数50rpm、試験液の温度37℃で24時間攪拌された。24時間の攪拌後、錠剤は取り出され、棚式乾燥機を用いて60℃で一夜乾燥された。その後、錠剤の重量が測定された。
【0112】
図13に示すように、0.1mol/L塩酸中、及び、pH6.8のリン酸緩衝液中の重量変化率は、共に1%以下となることがわかった。このことから、上記のように錠剤を調製することによって、人体中の消化管内で崩壊せず、錠剤のまま糞中排泄させることができる錠剤が得られることが分かった。
【0113】
<実施例5>
磁気組成物9の体内における溶出特性について、ビーグル犬に投与された錠剤が崩壊するか否かを確認することにより評価された。錠剤として、実施例4にて得られた錠剤が用いられた。錠剤は、ネオジウム磁石で磁化された後、000号ゼラチンカプセルに10錠ずつ充填された。そして、3匹のビーグル犬の各々に対して2カプセル(20錠)ずつ経口投与された。経口投与後は、定期的に糞が採取され、糞中に排泄された錠剤が回収された。
【0114】
図14に示すように、全てのビーグル犬で、経口投与された20錠が全て回収された。又、経口投与前と経口投与後との夫々の質量を比較すると、何れのビーグル犬の場合も約2%以下の変化となり、顕著な差異は認められなかった。又、
図15に示すように、23時間で排出された錠剤と、48時間で排出された錠剤とで著しい外観の差異は無かった。なお、
図15に示す写真は、各々の時間で排出された錠剤の代表例を示す。このことから、便秘等により消化管内での滞留時間が多少長くなっても、錠剤は崩壊しないことが推察された。
【0115】
<実施例6>
磁気組成物9の調製方法について評価された。100Lスーパーミキサー(カワタ社製)に、磁性体としてマグヘマイト、腸溶性物質としてメタクリル酸コポリマーLD、水難溶性物質としてエチルセルロース、及び、油脂として硬化油が各々投入された。各々は、実施例2と同じ製品が用いられた。ブレード回転数460rpmで3分間の混合が実施された。次に、460rpmでブレードを回転させながらエタノールが投入され、3分間の造粒が実施された。造粒により得られた顆粒は、棚式乾燥機を用いて60℃で一夜乾燥された。その後、パワーミル(ダルトン社製)により、スクリーンメッシュサイズ1.0mm、ブレード回転数2000rpmで解砕整粒が実施された。この顆粒に、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムが添加され、ポリ袋中で混合された。各材料の仕込み量を
図16に示す。
【0116】
顆粒は、ロータリー式打錠機(AQUA3、菊水製作所製)により、ターンテーブル回転数40rpm、圧縮圧13.5kNで成形された。これにより、直径が6mm、重量が140mgの錠剤が得られた。
【0117】
<実施例7>
磁気組成物9を有核錠として成形する方法について評価された。スプレードライ乳糖(スーパータブ11SD、DMV社製)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH-21、信越化学製)、ステアリン酸マグネシウム(マリンクロット社製)がポリ袋中で混合され、薬剤物質に対応する外層粉体が調製された。各々の材料の仕込み量を
図17に示す。この外層粉体と、実施例6で得られた錠剤とを用い、ロータリー式打錠機(AQUA-LD、菊水製作所製)により、ターンテーブル回転数15rpm、圧縮圧22kNで成形された。これにより、磁性体を少なくとも含む核の周囲に薬剤物質等が付着した有核錠が得られた。外層紛体の重量は270mgであった。有核錠の直径は9mmであり、重量は410mgであった。
【0118】
<実施例8>
磁気組成物9を多層錠として成形する方法について評価された。実施例6で錠剤が得られる過程で用いられた顆粒(重量140mg)と、実施例7で調製された外層粉体(重量270mg)とが用いられ、ロータリー式打錠機(AQUA-LD、菊水製作所製)により、ターンテーブル回転数15rpm、圧縮圧8kNで成形された。これにより、磁性体を少なくとも含む核の表面に薬剤物質等が積層した多層錠が得られた。多層錠の直径は9mmであり、重量は410mgであった。
<実施例9>
磁気組成物9の調製方法について評価する。100Lスーパーミキサー(カワタ社製)に、磁性体としてマグヘマイト、腸溶性物質としてメタクリル酸コポリマーLD、水難溶性物質としてエチルセルロース、油脂として硬化油、及び、薬剤物質が各々投入される。各々は、実施例2と同じ製品が用いられる。ブレード回転数460rpmで3分間の混合が実施される。次に、460rpmでブレードを回転させながらエタノールが投入され、3分間の造粒が実施される。造粒により得られる顆粒は、棚式乾燥機を用いて60℃で一夜乾燥される。その後、パワーミル(ダルトン社製)により、スクリーンメッシュサイズ1.0mm、ブレード回転数2000rpmで解砕整粒が実施される。この顆粒に、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムが添加され、ポリ袋中で混合される。
【0119】
顆粒は、ロータリー式打錠機(AQUA3、菊水製作所製)により、ターンテーブル回転数40rpm、圧縮圧13.5kNで成形される。これにより、直径が6mm、重量が140mgの錠剤が得られる。
【0120】
<実施例10>
検出装置1による磁気組成物9の検出可能性について評価された。溶出速度の遅い錠剤として、実施例6にて得られた錠剤(第1錠剤という。)が用いられた。溶出速度の速い錠剤は以下の方法で成形された。スプレードライ乳糖(スーパータブ11SD、DMV社製)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH-21、信越化学製)、マグヘマイト(γ-MRD、チタン工業株式会社製)、ステアリン酸マグネシウム(マリンクロット社製)が、
図18に示す仕込み量で計量され、乳鉢中で混合された。その後、約240mgの混合粉末が計量され、単発打錠機(岡田精工社製、タブフレックス)を用い、圧縮圧10kNで成形され、直径8mmの錠剤が得られた。この錠剤は、ネオジウム磁石により磁化された。以下、この錠剤を第2錠剤という。第1錠剤及び第2錠剤を総称して、サンプル錠剤という。
【0121】
サンプル錠剤を経口投与した場合における人体の胃内からの磁気信号を模擬する為、溶出試験機(NTR―6300、富山産業製)にMIセンサが取り付けられた。そして、0.1mol/L塩酸(溶出試験液という。)中にサンプル錠剤を投入して攪拌した場合に検出される磁気信号の磁束密度が、MIセンサにより計測された。錠剤からMIセンサ迄の距離は約15cmとされた。撹拌は、回転バスケットを用いて回転数200rpmで行われた。
【0122】
図19(A)のグラフは、サンプル錠剤のない状態で検出された磁気信号の磁束密度を示す。
図19(B)のグラフは、第2錠剤が溶出試験液に投入された直後の磁束密度を示す。
図19(C)のグラフは、第1錠剤が溶出試験液に投入された直後の磁束密度を示す。
図19(D)のグラフは、第1錠剤が溶出試験液に投入されてから1時間経過後の磁束密度を示す。
図19(E)のグラフは、第1錠剤が溶出試験液に投入されてから2時間経過後の磁束密度を示す。
図19(F)のグラフは、第1錠剤が溶出試験液に投入されてから4時間経過後の磁束密度を示す。
【0123】
図19(B)の結果から、第2錠剤は、溶出試験液へ投入すると速やかに崩壊し、数秒で磁気信号が消失することが分かった。一方、
図19(C)~(F)に示すように、第1錠剤では、4時間後も崩壊は認められず、磁気信号が維持されることがわかった。
【0124】
<実施例11>
磁気組成物9の検出可能性について評価された。人体の前腹部と側腹部との2箇所に3次元磁気センサ5(X軸センサ、Y軸センサ、Z軸センサ)が取り付けられた。実施例2で得られた錠剤が経口投与される前と、経口投与された後とのそれぞれで、X軸センサ、Y軸センサ、Z軸センサの各々により磁気信号が検出され、磁束密度が測定された。測定結果にはバンドパスフィルタが適用され、胃の蠕動運動の周波数成分(0.05Hz±0.03Hz)が抽出された。
【0125】
図20は、錠剤が経口投与されていない状態において、人体の2箇所(前腹部及び側腹部)に取り付けられたX軸センサ、Y軸センサ、Z軸センサの測定結果を示す。横軸は時間(秒)を示し、縦軸は磁束密度(nT)を示す。(A)は、昼食後2時間経過した時の測定結果を示す。(B)は、夕食前の測定結果を示す。(C)は、夕食後の測定結果を示す。
図21は、錠剤が経口投与された後の状態において、人体の2箇所(前腹部及び側腹部)に取り付けられたX軸センサ、Y軸センサ、Z軸センサの測定結果を示す。横軸は時間(秒)を示し、縦軸は磁束密度(nT)を示す。(A)は、錠剤が投与された直後の測定結果を示す。(B)は、錠剤の投与後2時間経過した時の測定結果を示す。(C)は、錠剤の投与後4時間経過した時の測定結果を示す。
【0126】
錠剤が投与されていない状態から投与された直後迄の測定結果(
図20(A)~(C)、
図21(A))から、これらの間に磁気信号はほとんど検出されないことが分かった。一方、錠剤の投与後2時間経過した時、及び、4時間経過した時の測定結果(
図21(B)(C)参照)から、これらの間に磁気信号が検出され、且つ、周期的な磁束密度の変化が確認された。以上から、検出装置1により検出可能な錠剤が、上記方法により得られることが分かった。
【0127】
<実施例12>
磁気組成物9に対する磁性体の添加量と磁束密度との関係について評価された。実施例6で錠剤が得られる過程で用いられた顆粒が計量され、単発打錠機(岡田精工社製、タブフレックス)により圧縮成形された。これにより、顆粒の重量を約26mgとした第3錠剤、顆粒の重量を52mgとした第4錠剤、及び、顆粒の重量を129mgとした第5錠剤が得られた。第3錠剤の直径は3.5mmであり、約20mgのマグヘマイトが含まれている。第3錠剤は圧縮圧3kNで成形された。第4錠剤は直径5mmであり、約40mgのマグヘマイトが含まれている。第4錠剤は圧縮圧5kNで成形された。第5錠剤は直径6mmであり、約100mgのマグヘマイトが含まれている。第5錠剤は10kNで成形された。第3~第5錠剤は、ネオジウム磁石で磁化された。各錠剤から10cm、15cm、20cmの距離離れた位置での磁束密度が、MIセンサを用いて測定された。
【0128】
図22に示すように、測定される磁束密度は、マグヘマイトの含有量が多くなる程増加することが分かった。又、マグヘマイトの含有量と磁束密度との関係は、略線形となることが分かった。更に、錠剤と3次元磁気センサ5との間の距離が近くなる程、MIセンサにより計測される磁束密度が大きくなることが確認された。
【0129】
<磁気組成物9に関する作用、効果>
磁気組成物9は、腸溶性又は水難溶性を有し、経口投与された後、少なくとも1時間、胃内で滞留する。この場合、検出装置1は、胃に磁気組成物9が滞留している期間内に間欠的に3次元磁気センサ5により磁界ベクトルBを計測すればよく、検出装置1における処理負荷を軽減できるので、検出装置1の省電力化が可能となる。
【0130】
磁気組成物9は、生体内で崩壊せずに排出されるように調製できる。この場合、蠕動運動に起因して胃中の磁気組成物9から出力される磁気ベクトルの変化が極めて低周波(0.05Hz程度、約20秒に1回の周期)であっても、3次元磁気センサ5により磁気ベクトルを計測して磁気組成物9を検出できる。従って、磁気組成物9の検出精度を高めることができる。
【0131】
又、磁気組成物9を不溶化することにより、崩壊による磁気減衰の影響を抑制できる。又、磁気組成物9が胃内に滞留する時間を長くできるので、検出装置1は、長時間に渡り安定して3次元磁気センサ5により磁気ベクトルを計測できる。又、3次元磁気センサ5による計測周期を長く設定できることになるので、省電力化が可能となり、電池交換の頻度を少なくできる。
【0132】
磁気組成物9は、磁性体として酸化鉄を含む。より詳細には、磁気組成物9は、酸化鉄として、マグヘマイト、マグネタイト、イプシロン酸化鉄の少なくとも何れかを含む。この場合、検出装置1において3次元磁気センサ5による磁界ベクトルBの計測を精度良く実施させることができる。又、磁気組成物9には腸溶性物質が含められる。この場合、磁気組成物9の胃内での挙動が所望通りとなるように、磁気組成物9を調製できる。又、磁気組成物9には水難溶性物質が含められる。この場合、磁気組成物9の腸内での挙動が所望通りとなるように、磁気組成物9を調製できる。更に、磁気組成物9には油脂が含められる。この場合、磁気組成物9に液体が吸収される程度を小さくできるので、磁気組成物9を崩壊し難くできる。従って、磁気組成物9を人体内で適切に滞留させることができる。
【0133】
磁気組成物9は、磁性体を含むものであるが、磁性体を核として周囲に薬剤物質が付着した有核錠、又は、磁性体が積層した多層錠とすることも可能である。さらに、磁気組成物9と薬剤物質等のその他の成分を併せて経口投与用カプセルに封入させることも可能である。これらの場合、磁気組成物9を医薬組成物として人体に経口投与し易くできる。
【0134】
本発明により、薬剤物質を含む経口投与組成物(医薬組成物)に含まれる磁気組成物9を検出装置1で検出することにより、経口投与組成物、又は、経口投与組成物に含まれる薬剤物質について服薬管理することができる。具体的には、磁気組成物9を含む経口投与組成物を服用後、経口投与組成物の嚥下、食道通過、胃や腸内での移動について、磁気組成物9を検出装置1で検出することにより、経口投与組成物、又は、経口投与組成物に含まれる薬剤物質について服薬管理することができる。
【0135】
<変形例>
本発明は上記の第1実施形態及び第2実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。本実施形態において、検出装置1は、3次元磁気センサ51~54を有していた。検出装置1が有する3次元磁気センサ5の数は限定されない。例えば検出装置1は、1つの3次元磁気センサ5のみ有していてもよい。
【0136】
第1実施形態において、検出装置1は、|B´|が50nT以上であり(S19:YES)、且つ、値|R´|が0.02radより大きいと判定された場合(S21:YES)、3次元磁気センサ5の検出範囲50A内に磁気組成物9があることを検出した(S23)。これに対し、|B´|による判定を行わず、値|R´|による判定のみ実行することに依って、磁気組成物9があることを検出してもよい。又、検出装置1は、磁界ベクトルBの角度θの時間変化θ´を、所定の閾値と直接比較することにより、磁気組成物9があることを検出してもよい。更に、検出装置1は、磁界ベクトルBの角度θの時間変化θ´ではなく、磁界ベクトルBの大きさ|B|の時間変化に基づいて磁気組成物9を検出してもよい。
【0137】
第2実施形態において、検出装置1は、角度φ(N)が角度閾値θthよりも大きく(S71:YES)、第N差分ベクトルΔA(N)の絶対値|ΔA(N)|が大きさ閾値Mthよりも大きく(S73:YES)、且つ、値|R(N)|が0.02radより大きいと判定された場合(S77:YES)、3次元磁気センサ5の検出範囲50A内に磁気組成物9があることを検出した(S79)。これに対し、角度φ(N)及び絶対値|ΔA(N)|の何れか一方による判定を行わなくてもよい。更には、角度φ(N)及び絶対値|ΔA(N)|による判定を行わず、値|R(N)|による判定のみ実行することによって、磁気組成物9があることを検出してもよい。
【0138】
第2実施形態において、検出装置1は、第N平均ベクトルA(N)と第N+1平均ベクトルA(N+1)との間のなす角度(以下、第1角度という。)と所定の閾値との大小関係に基づいて、磁気組成物9があるか否かを判定してもよい。例えばCPU21は、第1角度からπ/2[rad]を減算した角度を、角度φ(N)として算出し(S49)、角度φ(N)が角度閾値θth以下の時(S71:NO)、第1角度から算出した角度φ(N)に基づいて値R(N)を算出してもよい(S75)。CPU21は、値R(N)の絶対値|R(N)|が0.02rad以上である場合(S77:YES)、人体内のうち対応する3次元磁気センサ5の検出範囲50A内の位置に磁気組成物9があると判定してもよい(S79)。
【0139】
CPU21は、第1角度、又は、第1角度を差分ベクトルの大きさ|ΔA(N)|で除算した値R(N)に基づいて、人体内における磁気組成物9を検出してもよい。
図23は、第1角度を差分ベクトルの大きさ|ΔA(N)|で除算した値R(N)を示すグラフである。横軸は時間(秒)を示し、縦軸は値R(N)を示す。
図23は、体形が肥満型の被験者により行われた実験の結果である。
図23(A)~(C)は、磁気組成物9を経口投与する前の結果を示し、
図23(D)~(F)は、磁気組成物9を服用した後の結果を示す。
図23(A)、
図23(D)は、平均ベクトルAを算出する場合の所定時間Tを0.5sとした場合の結果を示す。
図23(B)、
図23(E)は、所定時間Tを1.0sとした場合の結果を示す。
図23(C)、
図23(F)は、所定時間Tを2.0sとした場合の結果を示す。
図23に示すように、第2角度の代わりに第1角度を用いて値R(N)が算出された場合でも、経口投与前と経口投与後の変化の度合いが明確になることが分かった。
【0140】
第2実施形態において、CPU21は、θ(N)を絶対値|ΔA(N)|で除算した値を、R(N)として算出してもよい。更に、CPU21は、上記の第1角度を絶対値|ΔA(N)|で除算した値を、R(N)として算出してもよい。CPU21は、値R(N)の絶対値|R(N)|が0.02rad以上である場合(S77:YES)、人体内のうち対応する3次元磁気センサ5の検出範囲50A内の位置に磁気組成物9があると判定してもよい。
【0141】
検出装置1は、胃の蠕動運動の周波数0.05Hzを抽出することが可能なバンドパスフィルタを用い、3次元磁気センサ5から取得した測定結果をフィルタリングしてもよい。検出装置1は、フィルタリングにより得られた結果に基づき、磁気組成物9を検出してもよい。検出装置1は、加速度センサ7を備えなくてもよい。検出装置1は、人体の位置変動の状態に関わらず、磁気組成物9を検出してもよい。
【0142】
CPU21は、決定処理(
図8参照)において、入力部24を介して人体の動きの速さを取得してもよい。人体の動きの速さと所定時間Tとを対応付けたテーブルが、記憶部22に予め記憶されてもよい。CPU21は、取得した速さに対応する所定時間Tを、テーブルを参照して決定してもよい。CPU21は、記憶部22に記憶された所定時間Tを、決定した所定時間Tに更新してもよい。
【0143】
CPU21は、第2メイン処理において、一定時間継続して3次元磁気センサ51~54が出力する電圧信号を取得し、各々によって計測された磁界ベクトルB(Bx、By、Bz)を、3次元磁気センサ51~54毎に特定してもよい(S33)。CPU21は、特定した磁界ベクトルBを記憶部22に記憶してもよい(S35)。CPU21は、一定時間の経過後、決定処理(
図8参照)により決定した所定時間T毎に、記憶部22に記憶した磁界ベクトルBを取得し(S39)、S41~S53の処理を実行してもよい。例えばCPU21は、決定処理によって複数の所定時間Tを決定し、決定した複数の所定時間T毎に、記憶部22に記憶した磁界ベクトルBを取得し(S39)、S41~S53の処理を実行してもよい。
【0144】
磁気組成物9の胃での滞留時間は、1時間より小さくてもよい。磁気組成物9は、腸溶性物質及び水難溶性物質の少なくとも一方のみ備え、他方を備えなくてもよい。磁気組成物9は、腸溶性物質及び水難溶性物質の両方を有さなくてもよい。磁気組成物9は、油脂を有さなくてもよい。腸溶性物質、水難溶性物質、油脂として磁気組成物9に含められる材料は、本実施形態に限定されず、他の材料でもよい。
【0145】
磁気組成物9には、マグヘマイト、マグネタイト、イプシロン酸化鉄のうち2つ以上の材料を組み合わせた材料が、酸化鉄として含められてもよい。酸化鉄は、マグヘマイト、マグネタイト、イプシロン酸化鉄に限らず、他の材料でもよい。磁気組成物9に磁性体として含められる材料は、酸化鉄に限定されず、他の磁性体であってもよい。
【0146】
磁気組成物9において、有核錠又は多層錠の核は磁性体のみから形成されてもよい。磁気組成物9は、有核錠又は多層錠以外の形状で成形されてもよい。例えば磁気組成物9は、各材料がカプセルに封入されることにより成形されてもよい。
【符号の説明】
【0147】
1 :検出装置
5 :3次元磁気センサ
7 :加速度センサ
9 :磁気組成物
21 :CPU
51、52、53、54 :3次元磁気センサ