(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104842
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】土舗装材および土舗装方法
(51)【国際特許分類】
E01C 7/36 20060101AFI20220705BHJP
C09K 17/06 20060101ALI20220705BHJP
C09K 17/02 20060101ALI20220705BHJP
C09K 17/32 20060101ALI20220705BHJP
C09K 17/42 20060101ALI20220705BHJP
C09K 17/50 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
E01C7/36
C09K17/06 P
C09K17/02 P
C09K17/32 P
C09K17/42 P
C09K17/50 P
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219904
(22)【出願日】2020-12-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】520137497
【氏名又は名称】谷口 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100126170
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 義之
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真美
【テーマコード(参考)】
2D051
4H026
【Fターム(参考)】
2D051AA02
2D051AB03
2D051AF01
2D051AF17
2D051AG05
2D051AH02
2D051AH03
4H026CA02
4H026CA04
4H026CB08
4H026CC05
(57)【要約】
【課題】環境負荷の低減を可能とするように、SDGsやサーキュラーエコノミーに適合した土舗装を行う技術を提供する。
【解決手段】表土900上に土舗装を行うための土舗装材は、石材を加工する際に発生する石粉110と、米糠を炭化状態まで焼成した焼成米糠120と、固化材130とを含んでいる。この土舗装材に使用される固化材130は、焼石膏と消石灰との少なくとも一方からなっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表土上に土舗装を行うための土舗装材であって、
石材を加工する際に発生する石粉と、
米糠を炭化状態まで焼成した焼成米糠と、
固化材とを含み、
前記固化材は、焼石膏と消石灰との少なくとも一方からなる、
土舗装材。
【請求項2】
前記焼成米糠を、前記石粉の体積100に対して、体積80~120の配合比率で含み、前記固化材を、前記石粉の体積100に対して、体積20~80の配合比率で含む、請求項1記載の土舗装材。
【請求項3】
前記石材は、中性岩もしくは酸性岩である、請求項1または2記載の土舗装材。
【請求項4】
表土上に土舗装を行う土舗装方法であって、
請求項1ないし3のいずれか記載の土舗装材と、砂と、水とを混練して、スラリーを調製する工程と、
前記スラリーを前記表土上に敷設する工程と、
を備える、
土舗装方法。
【請求項5】
表土上に土舗装を行う土舗装方法であって、
請求項1ないし3のいずれか記載の土舗装材と、水とを混練して、スラリーを調製する工程と、
前記スラリーを前記表土上に敷設する工程と、
前記スラリーが固化する前に、前記スラリーと前記表土の表層部とを混合する工程と、
を備える、
土舗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、土舗装技術に関し、特に環境負荷の低減を可能とする土舗装技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然環境との調和に優れ、透水性や衝撃吸収性が高い舗装方法として、土や砂等の天然土を主成分とした土舗装(土系舗装)が注目されている。このような土舗装では、天然土に混合される硬化材(結合材)として、一般的にセメント(ポルトランドセメント)が使用されるが、セメントの使用量が多くなると、自然環境との調和等の土舗装の利点が損なわれる。そこで、土舗装の利点を生かすため、土舗装に使用されるセメントの使用量を低減することが、種々試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セメントは、その製造時において原料が高温に加熱されるため、原料に含まれる三価クロムが酸化し、六価クロムが生成される。このように生成された六価クロムは、通常、セメントの固化の際に生成される水和物中に閉じ込められるため、その溶出が十分に抑制されるが、土舗装に使用した場合、混合される天然土の種類や土舗装の施工状況によっては、環境中に溶出する虞がある。そのため、セメントを使用した土舗装は、「土地の劣化の阻止」等を謳う持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)に必ずしも適合しないものとなっている。
【0005】
また、セメントを使用しない土舗装では、アスファルトや樹脂等が結合材として使用されるが、劣化した土舗装の改修の際や、土舗装からの原状復帰の際に、除去された土舗装が廃棄物として排出される。そのため、アスファルトや樹脂等を使用した土舗装は、近年、その実現が求められているサーキュラーエコノミー(Circular Economy)に必ずしも適合しないものとなっている。
【0006】
このように、従来の土舗装技術は、外観上は自然環境との調和という利点があるにも拘わらず、SDGsやサーキュラーエコノミーに必ずしも適合したものとはいえず、環境負荷の低減が十分になされていない。
【0007】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、環境負荷の低減を可能とする土舗装技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的の少なくとも一部を達成するために、本発明は、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]
表土上に土舗装を行うための土舗装材であって、石材を加工する際に発生する石粉と、米糠を炭化状態まで焼成した焼成米糠と、固化材とを含み、前記固化材は、焼石膏と消石灰との少なくとも一方からなる、土舗装材。
【0010】
この適用例によれば、土舗装材に石粉と焼成米糠とを使用することにより、土舗装の耐久性を維持しつつ、透水性と衝撃吸収性をより高くすることができる。
また、石材加工の産業廃棄物として排出されていた石粉と、精米の産業廃棄物として排出されていた米糠とが、廃棄されることなく有効に利用される。そして、石粉、焼成米糠および固化材である焼石膏や消石灰は、いずれも自然に無害であるので、土舗装を除去する際に、廃棄物として排出する必要がない。そのため、この適用例によれば、SDGsやサーキュラーエコノミーに適合した土舗装を行うことが可能となるので、土舗装の環境負荷をより低減することができる。
【0011】
[適用例2]
前記焼成米糠を、前記石粉の体積100に対して、体積80~120の配合比率で含み、前記固化材を、前記石粉の体積100に対して、体積20~80の配合比率で含む、適用例1記載の土舗装材。
【0012】
この適用例によれば、土舗装をより適切に行うことができる。
【0013】
[適用例3]
前記石材は、中性岩もしくは酸性岩である、適用例1または2記載の土舗装材。
【0014】
この適用例によれば、表土等がアルカリ化することを抑制することができる。
【0015】
[適用例4]
表土上に土舗装を行う土舗装方法であって、適用例1ないし3のいずれか記載の土舗装材と、砂と、水とを混練して、スラリーを調製する工程と、前記スラリーを前記表土上に敷設する工程と、を備える、土舗装方法。
【0016】
この適用例によれば、スラリーを表土上に敷設することにより土舗装を行うことができるので、土舗装の施工がより容易となる。
【0017】
[適用例5]
表土上に土舗装を行う土舗装方法であって、適用例1ないし3のいずれか記載の土舗装材と、水とを混練して、スラリーを調製する工程と、前記スラリーを前記表土上に敷設する工程と、前記スラリーが固化する前に、前記スラリーと前記表土の表層部とを混合する工程と、を備える、土舗装方法。
【0018】
この適用例によれば、土舗装の施工現場への砂の運搬等が省略できるので、大面積の領域に対して土舗装を行うことがより容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態の一適用形態を示す説明図。
【
図2】第1実施形態として土舗装を行う様子を示す説明図。
【
図3】第2実施形態として土舗装を行う様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を以下の順序で説明する。
A.第1実施形態:
A1.土舗装の適用形態:
A2.土舗装の方法:
A3.実施例:
B.第2実施形態:
C.変形例:
【0021】
A.第1実施形態:
A1.土舗装の適用形態:
図1は、本発明の第1実施形態としての土舗装の一適用形態を示す説明図である。
図1(a)は、土舗装が施される学校SCHのグラウンドGRDを示している。また、
図1(b)は、土舗装が施される前のグラウンドGRDの表層部の状態を示し、
図1(c)は、土舗装が施された後のグラウンドGRDの表層部の状態を示している。
【0022】
図1(b)に示すように、土舗装を施す前のグラウンドGRDの表層部は、表土900が露出している。そのため、雨水により表土900が泥濘化して、グラウンドGRDの使用が困難になり、あるいは、グラウンドGRDの表土900が飛散して、学校SCHやその周辺に砂埃による悪影響を与える虞がある。一方、
図1(c)に示すように、土舗装を施すことにより、グラウンドGRDの表層部の表土900は、土舗装層101により被覆され、表土900の泥濘化や飛散が抑制される。
【0023】
このように表土900を被覆する土舗装層101を形成して土舗装を行う際に、適切に調製された土舗装材(後述する)を用いて土舗装層101を形成することにより、土舗装層101の耐久性を維持しつつ、土舗装層101の透水性や衝撃吸収性をより高くすることができる。そのため、土舗装層101自体の泥濘化や飛散を抑制するとともに、生徒等のグラウンドGRDの使用者が故障し、あるいは、負傷することを抑制することができる。
【0024】
なお、
図1の例では、第1実施形態の一適用形態として、学校SCHのグラウンドGRDに土舗装を施す様子を示しているが、第1実施形態の土舗装は、学校のグラウンドの他、公園や遊園地等の園路、あるいは、遊園地の小山等の造成物や古墳の表面部分等、表土の泥濘化、飛散あるいは流出の問題や、舗装面からの衝撃による故障の問題等が発生し得る種々の場所に施すことができる。
【0025】
このような場所は、通常、透水性や衝撃吸収性が要求されるため、アスファルト舗装やコンクリート舗装に適さず、土舗装が施されるが、後述するように、第1実施形態の土舗装は、透水性や衝撃吸収性をより高くすることが可能であるので、第1実施形態は、アスファルト舗装やコンクリート舗装に適さない場所に特に好適に適用される。
【0026】
A2.土舗装の方法:
図2は、第1実施形態として土舗装を行う様子を示す説明図である。
図2(a)は、土舗装層101(
図1(c))を形成するためのスラリー100を調製する様子を示し、
図2(b)は、スラリー100を用いて表土900上に土舗装を施す工程を示している。
【0027】
土舗装材は、石粉110と、加熱処理(焼成)した米糠(焼成米糠)120と、焼石膏130とから構成される。そこで、第1実施形態では、
図2(a)に示すように、土舗装材を構成する石粉110、焼成米糠120および焼石膏130と、細骨材である山砂140と、水150とをミキサー800に投入し、投入されたこれらの混合物をミキサー800に設けられたモーター810により攪拌する。これにより、土舗装材としての石粉110、焼成米糠120および焼石膏130と、山砂140と、水150とを含むスラリー100が調製される。
【0028】
ここで、石粉とは、切断等の石材の加工の際に生ずる切粉であり、山砂等の砂よりも微細な粒子の粉末であり、土舗装材において耐久性を確保する資材となる。土舗装材として使用される石粉としては、花崗岩、玄武岩、安山岩等の火成岩や、硬砂岩等の堆積岩、片麻岩等の変成岩の種々の石材の加工時に生じたものを使用することができる。また、石粉として、異なる種類の石材を加工した際に生じたものを混合して使用することも可能である。
【0029】
但し、石粉としては、塩基性の低い岩石、すなわち、安山岩等の中性岩や花崗岩等の酸性岩からなる石材を加工した際に生じたものを使用するのが好ましい。また、上述のように、石粉は、微細な粒子の粉末となっているので、岩石中の鉱物の粒径の大小は石粉の特性に影響しない。そのため、中性岩や酸性岩としては、安山岩や花崗岩等と同様の成分を有する他の火成岩や、堆積岩(例えば、硬砂岩)、変成岩を使用するものとしても良い。このようにすれば、石粉の塩基性によって土舗装層101(
図1(c))や土舗装層101によって被覆された表土900がアルカリ化することを抑制することができる。
【0030】
焼成米糠は、土舗装材において透水性や衝撃吸収性を確保する資材であり、炭素含有量が30~50重量%程度となるように、米糠を炭化状態まで焼成したものが使用される。なお、土舗装材における焼成米糠の配合割合を多くすると、スラリー100が固化した土舗装層101(
図1(c))の耐久性が低下し、焼成米糠の配合割合を少なくすると土舗装層101の透水性や衝撃吸収性が低下する。このような特性を考慮して、土舗装材における焼成米糠の配合割合は、例えば、石粉の体積100に対して、焼成米糠の体積80~120に設定される。
【0031】
焼石膏は、硫酸カルシウム(CaSO
4)の2水和物である石膏(CaSO
4・2H
2O)を加熱処理して生成される半水和物(CaSO
4・1/2H
2O)であり、水和によりスラリー100を固化する資材(固化材)である。焼石膏としては、焼石膏として市販されているものほか、市販されている石膏を焼成して生成したものを使用することができる。なお、土舗装材における焼石膏の配合割合を多くすると、スラリー100が固化した土舗装層101(
図1(c))が過度に硬くなり、焼石膏の配合割合を少なくすると土舗装層101を固定化することが困難となる。このような特性を考慮して、土舗装材における焼石膏の配合割合は、例えば、石粉の体積100に対して、焼石膏の体積20~80に設定される。
【0032】
なお、第1実施形態においては、水和によりスラリー100を固化する固化材として焼石膏を用いているが、焼石膏に換えて消石灰を用いることも可能である。この場合においても、土舗装材における消石灰の配合割合は、例えば、石粉の体積100に対して、焼石膏の体積20~80に設定される。また、単体の焼石膏あるいは消石灰に換えて、焼石膏と消石灰とを任意の比率で混合した固化材を使用することも可能である。この場合においても、固化材の配合割合は、焼石膏や消石灰と同様に設定される。
【0033】
スラリー100を調製する際に、土舗装材に混合される山砂および水の配合割合は、目標とするスラリー100の硬さや山砂の特性等によって適宜調製される。一般的には、スラリー100における山砂および水の配合割合は、石粉の体積100に対して、山砂の体積200~800、水の体積50~300に設定される。なお、第1実施形態では、細骨材として山砂を使用しているが、細骨材としては、山砂のほか、川砂や海砂あるいは砕砂等の砂全般を使用することも可能である。
【0034】
さらに、山砂の配合割合を適宜設定することにより、スラリー100が固化した土舗装層101(
図1(c))の硬さを調製することができる。具体的には、山砂の配合割合を多くすると、土舗装層が柔らかくなり、高い衝撃吸収性等の土舗装としての特性が強く顕れる。一方、山砂の配合割合を少なくすると、衝撃吸収性等は低下するものの、土舗装層が硬くなり、雑掌の繁茂の抑制等に使用することができる。また、このように土舗装層を硬く形成することにより、後述するように環境負荷を低減しつつ、アスファルト舗装やコンクリート舗装を代替する舗装手段とすることも可能である。
【0035】
調製されたスラリー100は、
図2(b)に示すように、表土900上に敷設される。そして、表土900上に敷設されたスラリー100が固化することにより、
図1(c)に示すように、固定化された土舗装層101となり、土舗装層101により表土900が被覆される。
【0036】
このように、第1実施形態によれば、透水性と衝撃吸収性がより高く、十分な耐久性を有する土舗装を行うことができる。そして、石材の加工の際に発生する石粉と、精米の際に発生する米糠とが、廃棄されることなく有効に利用される。そのため、第1実施形態の土舗装を行うことにより、循環型社会(サーキュラーエコノミー)の実現に資することができ、土舗装による環境負荷をより低減することができる。
【0037】
また、土舗装材を構成する石粉、焼成米糠、および、焼石膏または消石灰のうち、石粉および消石灰については加熱処理が行われず、加熱処理によって生成される焼成米糠および焼石膏については、低温(500℃以下)での加熱処理で生成される。そのため、土舗装材中に六価クロム等の高温で生じる有害物質が含まれず、土舗装材は、自然環境に対して無害である。
【0038】
そして、焼石膏や消石灰に含まれるカルシウムは、植物の栄養分として表土に補給され、土壌改良資材としての効果を発揮するので、劣化した土舗装を補修する場合や、表土が露出した状態への原状復帰を行う場合においては、土舗装層101を破砕して表土900と混合すれば良く、土舗装層101を除去して廃棄物として排出する必要がない。そのため、第1実施形態によれば、SDGsやサーキュラーエコノミーに適合した土舗装を行うことができ、土舗装による環境負荷の増大が有効に抑制されるので、土舗装による環境負荷をより有効に低減することができる。
【0039】
A3.実施例:
本発明に係る土舗装材を用いて適切な土舗装が可能であることを確認するため、スラリーを調製し、調製したスラリーの固化状況の評価と、固化したスラリーが安定して固定化されるか否かを確認するための耐水性を評価とを行った。
【0040】
具体的には、100mlの石粉、100mlの焼成米糠および50mlの固化材と、山砂および水を容器中にて混練し実施例(実施例1~4)のスラリーを調製した。スラリーの調製にあたっては、固化材として、焼石膏(実施例1,2)と、消石灰(実施例3,4)とのそれぞれを用いた。また、実施例1,3となるスラリーでは、300mlの山砂と75mlの水を配合し、実施例2,4となるスラリーでは、600mlの山砂と200mlの水を配合した。
【0041】
また、比較例として、石粉、焼成米糠、固化材、山砂および水の配合量を実施例と同様に設定し、固化材として石膏を用いたスラリー(比較例A,B)を実施例と同様の手法により調製した。
【0042】
そして、得られた実施例および比較例のスラリーを箱に流し込み、24時間経過後にスラリーの固化状況と、耐水性を評価した。なお、耐水性の評価は、固化した試料に上部から水をかけることにより行った。以下の表1は、実施例および比較例について、スラリーにおける各成分の配合量および固化材の種類と、スラリーの固化状況と耐水性の評価結果を示している。
【表1】
【0043】
表1に示すように、固化材として焼石膏および消石灰を用いた実施例のスラリーと、固化材として石膏を用いた比較例のスラリーとのいずれにおいても、山砂や水の配合量の多寡に拘わらず固化が確認できた。
【0044】
しかしながら、固化材に焼石膏および消石灰を用いた実施例では、固化した試料に上部から水をかけても試料に変化がなかったのに対し、固化材に石膏を用いた比較例では、固化した試料に上部から水をかけると試料が溶解した。
【0045】
以上の結果から、本発明に係る土舗装材を用いることにより、山砂や水の配合量の多寡に拘わらず耐水性があり固定化された土舗装層(
図1(c))の形成が可能であり、用途に応じて山砂等の量が調節された適切な土舗装が可能であることが確認できた。
【0046】
B.第2実施形態:
図3は、第2実施形態として土舗装を行う様子を示す説明図である。
図3(a)は、土舗装層を形成するためのスラリー200を調製する様子を示し、
図3(b)および
図3(c)は、スラリー200を用いて表土900上に土舗装を施す工程を示している。
【0047】
図3(a)に示すように、第2実施形態では、土舗装材としての石粉110、焼成米糠120および焼石膏130と、水150とを用いてスラリー200を調製している点、すなわち、スラリー200の調製に際して、細骨材である山砂を使用していない点で、第1実施形態と異なっている。他の点は、第1実施形態と同様であるので、スラリー200の調製に関する具体的な説明は省略する。
【0048】
このように調製されたスラリー200は、
図3(b)に示すように、表土900上に敷設される。表土900上へスラリー200の敷設の後、スラリー200が固化する前に、
図3(c)に示すように、スラリー200と表土900の表層部は、耕運機等のローター700により混合され、スラリー200と表土900とが混合された混合層202が形成される。
【0049】
そして、形成された混合層202が固化することにより、表土900は、混合層202が固化した土舗装層201によって被覆される。そして、表土900が固定化された土舗装層201によって被覆されることにより、第1実施形態と同様に、土舗装層201により被覆された表土900や土舗装層201自体の泥濘化や飛散を抑制することができる。
【0050】
このように、第2実施形態によっても、透水性と衝撃吸収性がより高く、十分な耐久性を有する土舗装を行うことができる。そして、第1実施形態と同様に、土舗装による環境負荷をより有効に低減することができる。
【0051】
さらに、第2実施形態によれば、スラリー200と、表土900の表層部とを混合することにより、土舗装層201が形成されるので、土舗装の施工現場に砂を運搬し、運搬された砂を載置することを省略できる。そのため、大面積の領域に対して土舗装を行うことがより容易となる。一方、第1実施形態では、耕運機等を使用することなく、混練されたスラリー100(
図2(b))を表土900上に敷設することで土舗装層101が形成されるので、土舗装の施工をより容易にすることができる。
【0052】
C.変形例:
本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0053】
上記各実施形態では、スラリー100,200の調製にあたって、石粉110と、焼成米糠120と、焼石膏(固化材)130とを別個に投入しているが、土舗装材である石粉と焼成米糠と焼石膏とを予め混合しておくものとしても良い。この場合、予め混合された土舗装材と、山砂と、水とを混合し、あるいは、予め混合された土舗装材と、水とを混合することにより、スラリーを調製することが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
100,200…スラリー
101,201…土舗装層
110…石粉
120…焼成米糠
130…焼石膏
140…山砂
150…水
202…混合層
700…ローター
800…ミキサー
810…モーター
900…表土
GRD…グラウンド
SCH…学校