(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104843
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】有機廃棄物の過熱水蒸気処理装置
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20220705BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20220705BHJP
H05B 3/12 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B09B5/00 M ZAB
B09B3/00 303M
H05B3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219936
(22)【出願日】2020-12-30
(71)【出願人】
【識別番号】594206679
【氏名又は名称】海山 操
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】海山 操
【テーマコード(参考)】
3K092
4D004
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092QA01
3K092QA05
3K092QB02
3K092QB33
3K092QB59
3K092VV15
4D004AA01
4D004CA15
4D004CA22
4D004CB04
4D004CB08
4D004CB32
4D004CB45
4D004CC01
4D004DA06
4D004DA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】過熱水蒸気処理装置の加熱費用を抑えかつ容器本体を処理工程に従って容易に輸送可能にする。
【解決手段】過熱水蒸気処理装置は、上面に開閉可能な廃棄物投入口、底面に開閉可能な廃棄物放出口が設けられ、容器の壁面に電気ヒーター3が内蔵された本体容器1と、前記本体容器1の内部に配置された攪拌羽と、前記電気ヒーター3を電力供給手段に着脱可能に接続させる電源コネクタと、前記本体容器1を過熱水蒸気供給手段に着脱可能に接続させる水蒸気コネクタと、前記攪拌羽の回転軸を動力供給手段に着脱可能に接続させる動力コネクタと、前記本体容器1をガス回収手段に着脱可能に接続させる排ガスコネクタとを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開閉可能な廃棄物投入口、底面に開閉可能な廃棄物放出口が設けられ、容器の壁面に電気ヒーターが内蔵された本体容器と、
前記本体容器の内部に配置された攪拌羽と、
前記電気ヒーターを電力供給手段に着脱可能に接続させる電源コネクタと、
前記本体容器を過熱水蒸気供給手段に着脱可能に接続させる水蒸気コネクタと、
前記攪拌羽の回転軸を動力供給手段に着脱可能に接続させる動力コネクタと、
前記本体容器をガス回収手段に可能に着脱接続させる排ガスコネクタと、
を備えていることを特徴とする有機廃棄物の過熱水蒸気処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記電気ヒーターは、耐熱材をコーティングしたリボン状金属板を発熱体として、全体として板形状をなすように支持枠の内側で複数回屈曲させてなる平面型ヒーターであることを特徴とする有機廃棄物の過熱水蒸気処理装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記電気ヒーターは、耐熱材をコーティングしたリボン状金属板を発熱体として、全体として円筒形状となるように支持管の内側でらせん状に湾曲させてなる棒型ヒーターであることを特徴とする有機廃棄物の過熱水蒸気処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記過熱水蒸気処理装置は、処理施設内を可能に輸送するための輸送手段に対応していることを特徴とする有機廃棄物の過熱水蒸気処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴミの資源回収リサイクル設備に適した過熱水蒸気処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機廃棄物(ゴミ)を過熱水蒸気によって熱処理する技術が次の特許文献に開示され、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に有機廃棄物を過熱水蒸気によって熱処理する場合、予め処理装置を適温にすることが望ましい。しかしながらガスや石油等の燃焼で炉(容器)を加熱する場合、目的の温度に達するまで時間を要する上に燃料代も高くなるという問題があった。また処理装置を処理工程に従って輸送することも難しかった。これに対して本発明は、これらの問題を解決した新規な構成の有機廃棄物処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による過熱水蒸気処理装置は、上面に開閉可能な廃棄物投入口、底面に開閉可能な廃棄物放出口が設けられ、容器壁面に電気ヒーターが内蔵された本体容器と、前記本体容器の内部に配置された攪拌羽と、前記電気ヒーターを電力供給手段に着脱可能に接続させる電源コネクタと、前記本体容器を過熱水蒸気供給手段に着脱可能に接続させる水蒸気コネクタと、前記攪拌羽の回転軸を動力供給手段に着脱可能に接続させる動力コネクタと、前記本体容器をガス回収手段に着脱可能に接続させる排ガスコネクタと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による有機廃棄物の過熱水蒸気処理装置は、容器壁面に電気ヒーターが内蔵された本体容器を備えるので、目的の温度に達するまで時間がかからず、電気代も安価である。また電力供給手段、過熱水蒸気供給手段、動力供給手段、排ガス回収手段に着脱可能に接続できるので、処理ステーションに順次場所を移動させながら処理が実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】(a)~(c)は、本発明の処理装置の平面図、側面図、正面図である。
【
図7】(a)~(c)は、本発明の処理装置の平面断面図、側面断面図、正面断面図である。
【
図8】(a)は本発明の処理装置の廃棄物投入口が開かれた状態の正面断面図、(b)は廃棄物放出口が開かれた状態の正面断面図である。
【
図11】処理ステーションの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る過熱水蒸気処理装置Aは、産業廃棄物等の有機廃棄物を気密な容器本体に収容し過熱水蒸気を注入して分解、減容させるためのものであり、本体容器の壁面に電気ヒーター3を内蔵している点が特徴である。
以下、容器本体の構造を詳細に説明する。
【0009】
図1は、容器本体の断面図、
図2は本体容器の壁面の断面図である。
この図に示す容器本体の壁面は次のような特徴を有する。
1.容器本体1の壁面は、SUS二重構造となっている。
2.容器本体1の内部2に有機廃棄物が入る。
3.電気ヒーター3を複数本埋設し、壁面の温度を600~700°Cに上げることを可能にする。
4.断熱の為に耐火断熱レンガ4が組み込まれる。
5.石綿ウール5で耐火断熱レンガ4を全体で押さえる。
6.ビス付き金網6で石綿ウール5を押さえる。
9.SUS304(9)で壁外面を構成する。
10.SUS316(10)で壁内面を構成する。
11.スペーサー12によって電気ヒーター3を支持する。
【0010】
図3は、電気ヒーターの断面図である。
この電気ヒーター3は次のような特徴を有する。
1.発熱体3bは、耐熱材をコーティングしたリボン状金属板である。リボン状金属板に替えて金属線材を用いてもよい。金属としては例えばSUS304を用いることができる。
2.発熱体3bは、らせん状に湾曲された状態で支持管3cの内側に収容されている。支持管3cは例えば銅菅にすることができる。
3.発熱体3bはチューブ配線7を通じて給電する。
【0011】
図4は、各種ヒーター線の熱変換効率を示す表である。この表に示すように、ニクロム線の熱変換効率は95.8%、SUS304の熱変換効率は87.2%、電気ヒーター3の熱変換効率は92%である。
【0012】
図5は、各種ヒーター線の発熱量を示す表である。この表の数値は電圧V=20[V]を90分間ヒーター線のそれぞれに印加したときに算出される発熱量である。
(1)ニクロム線ヒーターの発熱量
電圧V=20[V]、電流I=3.8[A]、抗値R=5.26[Ω]、
効率η=0.872
H=0.24×20×3.1×90×60×0.958=76977[CAL]
(2)SUS304ヒーターの発熱量
電圧V=20[V]、電流I=4.6[A]、抵抗値R=4.35[Q]、
効率η=0.872
H=0.24×20×4.6×90×60×0.872=103970[CAL]
(3)電気ヒーター3の発熱量
電圧V=20[V]、電流I=7.3[A]、抵抗値R=2.74[Ω]、
効率η=0.92
H=0.24×20×7.3×90×60×0.92=174079[CAL]
【0013】
図5の表に示したように、電気ヒーター3は、ニクロム線ヒーターあるいはSUS304ヒーターよりも発熱量を多くできる。発熱量は、発熱体3bとされるSUS304の板材の幅、長さで容易に調節できる。電気ヒーター3の発熱量が大きいのは、発熱体3bの抵抗Rが小さく大電流が流れることに加えて、耐熱材からの赤外線輻射の寄与が大きいと考えられる。なお電気ヒーター3を用いると、その周囲を最高1200℃まで加熱できる。また電気ヒーター3が壁面に埋設されているので発熱が有効利用され、外部にガスヒーター、石油ヒーター等を設けた構成よりも低コストで済む。また通電後直ぐに発熱し通電を遮断すると瞬時に通常温度(3秒程度)に戻るという特徴があり、壁面を短時間で加熱できる。
【0014】
次いで本発明に係る過熱水蒸気処理装置Aの他例を説明する。
図6(a)~(c)は、過熱水蒸気処理装置の他例の正面図、平面図及び側面図であり、
図7(a)~(c)はそれらに対応した正面断面図、平面断面図及び側面断面図である。また
図8(a)は廃棄物投入口が開かれた状態の正面断面図、
図8(b)は廃棄物放出口が開かれた状態の正面断面図である。
【0015】
この本体容器1は、長方体型であり、上面には開閉可能な廃棄物投入口1a、底面には開閉可能な廃棄物放出口1bが設けられている。
【0016】
本体容器1の壁面に埋設する電気ヒーター3は、前記例とは別形式のものを用いている。
本体容器1の正面には、複数の水蒸気コネクタ1cが設けられている。水蒸気コネクタ1cは、外部に設置された水蒸気供給手段に対して簡単に接続、分離できる構造であり、水蒸気の漏出を防止するチェック弁を有し、本体容器1の内部では斜め下を向いたノズル1dに連通されている。
本体容器の背面には、排ガスコネクタ1eが設けられている。排ガスコネクタ1eは、外部に設置された排ガス回収手段に対して簡単に接続、分離できる構造であり、排ガスの漏出を防止するチェック弁を有している。
本体容器の底面には、複数の廃液放出口1fが設けられている。廃液放出口1fは、廃液の漏出を防止するチェック弁を有している。
本体容器の側面には、図示しない電源コネクタが設けられている。電源コネクタは、外部に設置された電力供給手段に簡単に接続、分離できる構造であり、ここから電気ヒーター3に電源を供給する。
本体容器1の内部には、有機廃棄物を攪拌する攪拌羽1gが配置されている。攪拌羽1gの軸棒は本体容器の側面に設けられた軸受1iによって回動可能に支持されている。軸受1iは、外部に設置された動力供給手段と簡単に接続・分離できる動力コネクタになっており、動力コネクタから入力された動力によって攪拌羽1gが回動される。
本体容器の底面の四隅には、過熱水蒸気処理装置Aを車輪付台車等の輸送手段に対応した脚部1hが設けられている。この輸送手段については後述する。
【0017】
図9は、電気ヒーターの他例の全体斜視図である。
この電気ヒーター3は、より具体的には、耐熱材をコーティングしたリボン状金属板を発熱体3bとして全体として板形状をなすように、マイカ板、シリカ板で形成された耐熱支持部材からなる梯子形状の支持枠3dの内側で複数回屈曲させてなる平面型ヒーターである。発熱体3bには、チューブ配線7が接続されている。
このような構造の電気ヒーター3は平面型であるため、本体容器1の周壁に埋設するのが容易であり、また発熱体3bを高密度にできるので、発熱量を大きくできる。なおこの電気ヒーター3をユニットとして本体容器1の周壁の端面に形成されたヒーター挿入口に挿入設置できるようにすれば、メンテナンス性が大きく向上する。
【0018】
図10は、本発明に係る過熱水蒸気処理装置を用いて構成された廃棄物処理施設の基本構成図である。
この廃棄物処理施設Aは、有機廃棄物を格納した状態で移動される複数の過熱水蒸気処理装置A…と、過熱水蒸気処理装置A…の移動経路31に沿って順番に配置された複数の処理ステーション20…とで構成されている。このとき移動経路31を一方通行のループにすると効率的である。また処理ステーション20…は、過熱水蒸気処理装置A…と同じ間隔で配置いておけば、複数の過熱水蒸気処理装置A…を並列同時に処理することが可能になる。
処理ステーション20…は、有機廃棄物の熱処理の各段階に対応して設けられる。すなわち本体容器1に有機廃棄物等を投入するためのステーション、本体容器1に過熱水蒸気あるいは特定ガスを注入するための1乃至複数のステーション、炉に冷却用の水ミスト等を注入するためのステーション、本体容器1から処理済廃棄物を放出させるためのステーション等がある。
この例の過熱水蒸気処理装置Aは、本体容器1…の各々が車輪を備えた台車32に搭載され、リンクアーム(図示なし)等によって等間隔に連結されており、適所に配された電動機関車(図示なし)等によって、移動経路31に沿って一斉に移動、停止される。なお電動機関車を用いずに、一部の過熱水蒸気処理装置Aの台車32を電動式にしてもよい。このように廃棄物処理施設Aは、過熱水蒸気処理装置Aの輸送手段30、すなわち台車32や移動経路31等を含むものである。なお輸送手段30はこれに限らず、コンベアー等でもよい。あるいは過熱水蒸気処理炉…の各々を、自動運転機能を備えた車両に搭載してもよく、クレーン等の輸送手段30と組み合わせてもよい。つまり過熱水蒸気処理装置Aは、処理施設内を可能に輸送するための輸送手段30に対応したものになっている。
【0019】
図11は、処理ステーションの概略平面図である。
この処理ステーション20は、本体容器1に過熱水蒸気を注入する過熱水蒸気供給手段21と、本体容器1から排ガスを回収するガス回収手段22と、攪拌羽1gを回動させる動力供給手段23とで構成されている。
過熱水蒸気供給手段21及びガス回収手段22は、移動経路31に対してトンネル形態で設置されており、動力供給手段23は移動経路31に沿う形態で設置されている。また処理ステーション20は、図示しない電源装置も備えている。
水蒸気注入手段21は、図示しないボイラー等を備えており、耐熱チューブ21aを水蒸気コネクタ1cに着脱可能に接続して過熱水蒸気を注入できるように構成されている。なお耐熱チューブ21aの先端は連通コネクタになっている。
排ガス回収手段22は、図示しないガス分離手段、フィルター手段等を備えており、耐熱チューブ22aを排ガスコネクタ1eに着脱可能に接続して排ガスを回収できるように構成されている。なお耐熱チューブ22aの先端は連通コネクタになっている。
モーター手段23は、電動モーターや動力伝達機構を備えており、シャフト23aを動力コネクタに着脱可能に接続して攪拌羽1gを回動できるように構成されている。
なお電力供給手段24は、交流又は直流電源回路を備えており、電源ケーブルを電源コネクタに着脱可能に接続して電気ヒーター3に電力を供給するように構成されている。
【0020】
この例の説明から理解されるように、本発明に係る過熱水蒸気処理装置は、本体容器に過熱水蒸気を供給する等の機能を備えた処理ステーション20と組み合わせることで、有機廃棄物を過熱水蒸気で熱処理することを可能としている。そして過熱水蒸気の注入と同時に、本体容器1の面壁を電気ヒーター3によって発熱させることで、過熱水蒸気の温度低下が抑えられて効率的な熱処理が可能になる。この熱処理は酸素の供給無しに行われるので、排ガスに含まれる可燃ガス等の資源が多く回収できる。
また過熱水蒸気処理装置A…の個数や、処理ステーション20の個数及び構成を、廃棄物の種別や量に応じて適切に設定することで、無駄のない廃棄物処理施設Aを構築できる。特に有機廃棄物の種別によってどのような温度のときにどのような排ガスを生じるかということは予め予測できるので、その種別に応じた段階的な熱処理を行うことが望ましい。段階的な熱処理は、1つの処理ステーション20において、過熱水蒸気の温度等を段階的に上げていくことで可能になる。あるいは複数の処理ステーション20…を過熱水蒸気処理装置A…の移動経路31に沿って配置し、下流側の処理ステーション20ほど、過熱水蒸気の温度がより高くなるように設定しておいてもよい。
【符号の説明】
【0021】
A 過熱水蒸気処理装置
1 容器本体
1a 廃棄物投入口
1b 廃棄物放出口
1c 水蒸気コネクタ
1e 排ガスコネクタ
1g 攪拌羽
1i 動力コネクタ
21 過熱水蒸気供給手段
22 ガス回収手段
23 動力供給手段
24 電力供給手段
3 電気ヒーター
3b 発熱体
3d 支持枠
3c 支持管
30 輸送手段