(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104912
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】渦電流を用いたスプール制動装置及びこれを備えた釣り用リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/02 20060101AFI20220705BHJP
A01K 89/015 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
A01K89/02 Z
A01K89/015 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021215478
(22)【出願日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0187386
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】500408898
【氏名又は名称】株式会社ドヨエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100118382
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 央子
(72)【発明者】
【氏名】玄 光昊
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108EB06
2B108HF05
(57)【要約】
【課題】回転しないマグネットと、スプールと一緒に回転するブレーキングプレートとの間に発生する渦電流を用いて、マグネットホルダーが前後進又は回転変位しつつ追加制動力の発生及び増加が行われるようにするスプール制動装置、及びこれを備えた釣り用リールを提供する。
【解決手段】本発明は、渦電流を用いて、マグネットが備えられたマグネットホルダーがスプールの軸方向に移動しながらスプールのブレーキングプレートに作用する磁力の差異によって前記スプールの回転速度を制御して、スプールの低速回転時にキャスティングの飛距離が減少することを防止するとともに、スプールの高速回転に合わせた適切な制動によってバックラッシュ現象が発生することを防止することができるようにする、スプール制動装置及びこれを備えた釣り用リールを提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプールの一側面に備えられるブレーキングプレートと、
前記ブレーキングプレートに対向するように形成されたマグネットを備えたマグネットホルダーと、
前記スプールの回転時に前記ブレーキングプレートとマグネットとの間に発生する渦電流を介して前記マグネットホルダーが変位するようにするホルダー可変手段と、
を含むことにより、
前記スプールが回転するとき、前記マグネットホルダーが前記スプールの軸方向に移動しながら、前記ブレーキングプレートとマグネットとの距離に応じて前記ブレーキングプレートに作用する磁力の差異によって前記スプールの回転速度を制御することを特徴とする、スプール制動装置。
【請求項2】
前記ホルダー可変手段は、
最低点と最高点とが傾斜するように連結されたカムで形成された被押動部もしくは押圧部又はこれらの両方と、
前記マグネットホルダーを前記ブレーキングプレートから離れる一側方向に弾性支持する第1弾性体と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のスプール制動装置。
【請求項3】
前記マグネットホルダーの軸設部が挟まれるスライドカムをさらに含み、
前記押圧部は、前記スライドカムから周方向に沿って他側に突出する第1端面カムで構成され、
前記被押動部は、前記軸設部の外周面から突出して前記第1端面カムに接触する被押動突起で構成されることを特徴とする請求項2に記載のスプール制動装置。
【請求項4】
前記マグネットホルダーは、スプールカバーの前面軸部に挟まれる軸設部を含み、
前記押圧部は、前記前面軸部の外周面から突出して周方向に沿って形成された第1端面カムで構成され、
前記被押動部は、前記軸設部の内周面から突出して前記第1端面カムに接触する被押動突起で構成されることを特徴とする請求項2に記載のスプール制動装置。
【請求項5】
前記マグネットホルダーと共に一方向又は双方向回転及び前後進可能に連結されているスライドカムを含み、
前記被押動部は、前記スライドカムの内周面から突出して最低点と最高点とが傾斜するように連結された第1端面カムで構成され、
前記押圧部は、前記スライドカムの一側から前記第1端面カムに向かって突出して前記第1端面カムに接触する押圧突起で構成されることを特徴とする請求項2に記載のスプール制動装置。
【請求項6】
前記スプールカバーとマグネットホルダーとの間に配列されて前記マグネットホルダーの移動距離を制御する押圧プレートを含むことを特徴とする請求項4に記載のスプール制動装置。
【請求項7】
前記ブレーキングプレートと前記マグネットホルダーに配列されたマグネットは非重畳対向面を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスプール制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦電流を用いて、マグネットが備えられたマグネットホルダーがスプールの軸方向に移動しながらスプールのブレーキングプレートに作用する磁力の差異によって前記スプールの回転速度を制御することにより、スプールの低速回転時にはキャスティングの飛距離が減少するのを防止するとともに、スプールの高速回転に合わせた適切な制動でバックラッシュ現象の発生を防止することができるようにする、スプール制動装置及びこれを備えた釣り用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣り用リールをキャスティングするとき、ルアーの飛行速度よりも釣り糸が繰り出されるスプールの回転速度がさらに速くなり、ルアーの飛距離が短くなったり釣り糸がもつれたりすることをバックラッシュ(backlash)現象という。
このようなバックラッシュ現象を防止するために、釣り用リールは、大きく、物理的な摩擦を利用する摩擦ブレーキと、磁性の引力作用を利用するマグネットブレーキを使用する。
【0003】
従来の摩擦ブレーキは、例えば遠心力ブレーキが挙げられるが、キャスティングの初期に最大の回転力を有し、遠心力などによってブレーキシューがブレーキングプレートに直接接触して摩擦が発生するため次第に回転力が減少することにより、スプールの回転速度を減速させて摩擦ブレーキの回転制動力が減少(すなわち、スプールの回転力と制動力が比例する。)するようにするもので、マグネットブレーキよりも遠距離キャスティングには有利であるものの、制動力の微調整が難しいだけでなく、ブレーキシューとブレーキングプレートとの摩擦により摩耗が発生し易く、騒音が大きくなるという問題点がある。
【0004】
かかる問題点を解決するためのマグネットブレーキは、摩擦ブレーキとは異なる非接触式ブレーキであって、リール本体に備えられた複数のマグネットの磁性を用いて、回転するスプールに磁性の引力が作用してスプールの回転速度を減速させる。
従来のマグネットブレーキは、ブレーキングマグネットとブレーキングプレートとが互いに接触しないので、摩擦ブレーキとは異なり、騒音及び部品の摩耗が発生せず、制動力の微調整が容易であるという利点がある一方で、制動力がスプールの回転速度に関係なく常に一定なので、スプールの低速回転時にも制動力が発生し続けることにより、キャスティングの飛距離が減少するなどの問題点がある。
【0005】
また、前記マグネットブレーキに移動式スプールプレートを組み合わせて、スプールの回転時にスプールプレートが慣性力によってブレーキングマグネットに接近してスプールの回転速度を減速させる慣性力ブレーキがあるが、慣性力がスプールシャフトの軸直角方向に発生することにより、実際スプールの回転速度に対するスプールプレートの移動距離が正確でないため、制動力の加減が精密に制御されないという問題点がある。
参考までに、これに関連した従来技術としては、特許文献1、特許文献2、特許文献3などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2015-0006698号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10-2012-0112132号公報
【特許文献3】韓国公開特許第10-2012-0133584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためのもので、その目的は、回転しないマグネットと、スプールと一緒に回転するブレーキングプレートとの間に発生する渦電流を用いて、マグネットホルダーが前後進又は回転変位しつつ追加制動力の発生及び増加が行われるようにする、スプール制動装置及びこれを備えた釣り用リールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明によるスプール制動装置は、
スプールの一側面に備えられるブレーキングプレートと、
前記ブレーキングプレートに対向するように形成されたマグネットを備えたマグネットホルダーと、
前記スプールの回転時に前記ブレーキングプレートとマグネットとの間に発生する渦電流を介して前記マグネットホルダーが変位するようにするホルダー可変手段と、
を含むことにより、
前記スプールが回転するとき、前記マグネットホルダーが前記スプールの軸方向に移動しながら、前記ブレーキングプレートとマグネットとの距離に応じて前記ブレーキングプレートに作用する磁力の差異によって前記スプールの回転速度を制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明によるスプール制動装置において、前記ブレーキングプレートと前記マグネットホルダーに配列されたマグネットは、非重畳対向面を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明によるスプール制動装置において、
前記スプールカバーの一側でサイドカバーに設けられたダイヤルに結合され、前記ホルダー可変手段は、周方向に最低点と最高点とが傾斜するように連結されたカムで形成された被押動部もしくは押圧部又はこれらの両方と、前記マグネットホルダーを前記ブレーキングプレートから離れる一側方向に弾性支持する第1弾性体と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明によるスプール制動装置において、
前記マグネットホルダーの軸設部が挟まれるスライドカムをさらに含み、
前記押圧部は、前記スライドカムから周方向に沿って他側から突出する第1端面カムで構成され、
前記被押動部は、前記軸設部の外周面から突出して前記第1端面カムに接触する被押動突起で構成されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明によるスプール制動装置において、
サイドカバーのダイヤルに結合され、周方向に沿って他側に突出して最低点と最高点とが傾斜するように連結された第2端面カムを備えたダイヤルカムを含み、
前記スライドカムは、前記第2端面カムに接触するように突出したガイド突起を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明によるスプール制動装置において、
前記マグネットホルダーは、複数のマグネットが周方向に放射状に配列されて装着され、周方向の所定区間にマグネットが装着されていないマグネット未装着部を含み、
前記スライドカムは、前記第1端面カムの最高点から内側に突出して連結された段差部と、前記マグネット未装着部と対応する位置に備えられた翼部と、前記翼部に装着され、前記マグネットと同一極性の補助マグネットと、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明によるスプール制動装置において、
前記マグネットホルダーは、スプールカバーの前面軸部に挟まれる軸設部を含み、
前記押圧部は、前記前面軸部の外周面から突出して周方向に沿って形成された第1端面カムで構成され、
前記被押動部は、前記軸設部の内周面から突出して前記第1端面カムに接触する被押動突起で構成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明によるスプール制動装置において、
前記スプールカバーとマグネットホルダーとの間に配列され、前記マグネットホルダーの移動距離を制御する押圧プレートと、
前記スプールカバーの一側で前記押圧プレートに連結され、周方向に最低点と最高点とが傾斜するように連結された第2端面カムを備えるスライドカムと、
再度カバーのダイヤルに結合され、シュウ方向に沿って前記第2端面カラムと対応する形態で突出して前記第2端面カムと接触する第3端面カムを備えたダイヤルカムと、
前記スライドカムを前記スプールカバーから離れる一側方向に弾性支持する第2弾性体と、を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明によるスプール制動装置において、
前記マグネットホルダーと共に一方向又は双方向回転及び前後進可能に連結されているスライドカムを含み、
前記被押動部は、前記スライドカムの内周面から突出して周方向に最低点と最高点とが傾斜するように連結された第1端面カムで構成され、
前記押圧部は、前記スライドカムの一側から前記第1端面カムに向かって突出して前記第1端面カムに接触する押圧突起で構成されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明によるスプール制動装置において、サイドカバーのダイヤルに結合され、前記押圧突起を備えたダイヤルカムを含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明による釣り用リールは、スプール装着部を有するフレームと、前記スプール装着部に装着されるスプールと、上記のスプール制動装置と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る渦電流を用いたスプール制動装置及びこれを備えた釣り用リールは、
渦電流を用いて、マグネットが備えられたマグネットホルダーが、スプールシャフトの軸方向にスプールのブレーキングプレートに向かって前進しながら、前記マグネットによる追加制動力の発生及び増加が行われることにより、スプールの実際回転速度に合わせて制動力の加減が自動的に精密に制御されるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1a】本発明による第1実施形態を示す要部斜視図である。
【
図1b】本発明による第1実施形態を示す要部斜視図である。
【
図5a】本発明に係る第1実施形態の変形例を示す要部斜視図である。
【
図5b】本発明に係る第1実施形態の変形例を示す要部斜視図である。
【
図9a】本発明による第2実施形態を示す要部斜視図である。
【
図9b】本発明による第2実施形態を示す要部斜視図である。
【
図13a】本発明による第3実施形態を示す要部斜視図である。
【
図13b】本発明による第3実施形態を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を持つことができるもので、その具現例(様態、aspect)(または実施形態)をここに詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものと理解されなければならない。
【0022】
各図面において、同一の参照符号、特に十の桁及び一の桁、または十の桁、一の桁及びアルファベットが同じである参照符号は、同一または類似の機能を持つ部材を示し、特に言及がない場合、図面の各参照符号が指す部材は、このような基準に準ずる部材として把握すればよい。
また、各図面において、構成要素は、理解の便宜などのために、大きさや厚さを誇張して大きく(または厚く)或いは小さく(または薄く)表現しているか単純化して表現しているが、これによって本発明の保護範囲が制限されるものと解釈されてはならない。
【0023】
本明細書で使用する用語は、特定の具現例(態様、様態、aspectまたは実施形態)を説明するために使用されたもので、本発明を限定しようとするものではない。単数の表現は文脈上特に明記しない限り、複数の表現を含む。
本出願において、「含む」または「からなる」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組み合わせなどの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0024】
特に他に定義しない限り、技術用語や科学用語を含めて、ここで使われるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を持っている。一般的に使われる辞典に定義されている用語は、関連技術の文脈上で持つ意味と一致する意味を持つものと解釈されなければならず、本明細書で明らかに定義しない限り、理想的な意味または過度に形式的な意味に解釈されない。
本明細書において記載した「第1」、「第2」などは、互いに異なる構成要素を区分するためのものに過ぎず、製造された順序に拘らないものであり、発明の詳細な説明と請求の範囲においてその名称が一致しないこともある。
本発明による渦電流を用いたスプール制動装置及びこれを備えた釣り用リールを説明するにあたり、便宜のために、厳密でないおよその方向基準を
図1a及び
図1bを参照して特定すると、重力が作用する方向を下側にして見える方向のまま上下左右を定め、他の図面に関連した発明の詳細な説明及び請求の範囲においても、他に特別な記載がない限り、この基準に基づいて方向を特定して記述する。
【0025】
本発明によるスプール制動装置は、
スプールの一側面に備えられるブレーキングプレートと、
前記ブレーキングプレートに対向するように形成されたマグネットを備えたマグネットホルダーと、
前記スプールの回転時に前記ブレーキングプレートとマグネットとの間に発生する渦電流を介して前記マグネットホルダーが変位するようにするホルダー可変手段と、を含み、
前記スプールが回転するとき、前記マグネットホルダーが前記スプールの軸方向に移動しながら、前記ブレーキングプレートとマグネットとの距離に応じて磁力の差異によって前記スプールの回転速度を制御することを特徴とする。
【0026】
また、本発明によるスプール制動装置において、前記ホルダー可変手段は、
周方向に最低点と最高点とが傾斜するように連結されたカムで形成された被押動部もしくは押圧部又はこれらの両方と、
前記マグネットホルダーを前記ブレーキングプレートから離れる一側方向に弾性支持する第1弾性体と、を含むことを特徴とする。
【0027】
また、本発明によるスプール制動装置において、
前記マグネットホルダーの軸設部が挟まれるスライドカムをさらに含み、
前記押圧部は、前記スライドカムから周方向に沿って他側から突出する第1端面カムで構成され、
前記被押動部は、前記軸設部の外周面から突出して前記第1端面カムに接触する被押動突起で構成されることを特徴とする。
【0028】
また、本発明によるスプール制動装置において、
サイドカバーのダイヤルに結合され、周方向に沿って他側に突出して最低点と最高点とが傾斜するように連結された第2端面カムを備えたダイヤルカムを含み、
前記スライドカムは、前記第2端面カムに接触するように突出したガイド突起を含むことを特徴とする。
【0029】
また、本発明によるスプール制動装置において、
前記マグネットホルダーは、複数のマグネットが周方向に放射状配列されて装着され、周方向の所定区間にマグネットが装着されていないマグネット未装着部を含み、
前記スライドカムは、前記第1端面カムの最高点から内側に突出して連結された段差部と、前記マグネット未装着部と対応する位置に備えられた翼部と、前記翼部に装着され、前記マグネットと同一極性の補助マグネットと、を含むことを特徴とする。
【0030】
また、本発明によるスプール制動装置において、
前記マグネットホルダーは、スプールカバーの前面軸部に挟まれる軸設部を含み、
前記押圧部は、前記前面軸部の外周面から突出して円周方向に沿って形成された第1端面カムで構成され、
前記被押動部は、前記軸設部の内周面から突出して前記第1端面カムに接触する被押動突起で構成されることを特徴とする。
【0031】
また、本発明によるスプール制動装置は、
前記スプールカバーとマグネットホルダーとの間に配列され、前記マグネットホルダーの移動距離を制御する押圧プレートと、
前記スプールカバーの一側で前記押圧プレートに連結され、周方向に最低点と最高点とが傾斜するように連結された第2端面カムと接触する第3端面カムを備えたダイヤルカムと、
前記スライドカムを前記スプールカバーから離れる一側方向に弾性支持する第2弾性体と、を含むことを特徴とする。
【0032】
また、本発明によるスプール制動装置において、
前記マグネットホルダーと共に一方向又は双方向回転及び前後進可能に連結されているスライドカムを含み、
前記被押動部は、前記スライドカムの内周面から突出して周方向に最低点と最高点とが傾斜するように連結された第1端面カムで構成され、
前記押圧部は、前記スライドカムの一側から前記第1端面カムに向かって突出して前記第1端面カムに接触する押圧突起で構成されることを特徴とする。
【0033】
また、本発明によるスプール制動装置において、
前記ブレーキングプレートと前記マグネットホルダーに配列されたマグネットは、非重畳対向面を備えたことを特徴とする。
【0034】
また、本発明によるスプール制動装置は、サイドカバーのダイヤルに結合され、前記押圧突起を備えたダイヤルカムを含むことを特徴とする。
【0035】
また、本発明による釣り用リールは、
スプール装着部を有するフレームと、
前記スプール装着部に装着されるスプールと、
上記に記載されたスプール制動装置と、を含むことを特徴とする。
以下、本発明による渦電流を用いたスプール制動装置及びこれを備えた釣り用リールについて、添付図面を参照して説明する。
【0036】
本発明によるスプール制動装置は、大きく、ブレーキングプレート(図示せず)、マグネットMを備えたマグネットホルダー20A、20B、20C、及び前記マグネットホルダー20A、20B、20Cを変位させるホルダー可変手段を含み、
本発明による釣り用リールは、スプール装着部を有するフレーム(図示せず)、スプール(図示せず)及び前記スプール制動装置を含む。
【0037】
具体的に、前記フレームは、一側外面が開口したスプール装着部を有し、前記スプールは、前記スプール装着部に装着され、一側端にブレーキングプレートが備えられ、前記マグネットは、前記マグネットホルダーに装着されて前記プレーキングプレートの一側に所定間隔を隔てて設けられ、前記ブレーキングプレートに作用する磁力の差異によって前記スプールの回転速度を減速させる。
ここで、ホルダーの変位とは、ホルダーの最初状態でその位置又は角度が変わりながら差異を示すベクトル量であって、スプールの軸方向に各マグネットホルダー20A、20B、20Cの前後進位置が変わることを意味する。
【0038】
具体的には、本発明による一実施形態として、
図1a、
図1bないし
図17に示すように、前記スプール装着部の一側端に装着され、他側面が開口した収容部11を形成する底部11Aと側壁部11B、及び前記底部11Aの他側面から突出した前面軸部12Aを備えたスプールカバー10と、
前記前面軸部12Aに外挿されて前記収容部11において前記スプールの回転方向に双方向回転可能にかつ前記スプールの軸方向に前後進可能に結合され、前面部にマグネットMが備えられたマグネットホルダー20A、20B、20Cと、
前記スプールの回転時に発生する渦電流を用いて前記マグネットホルダー20A、20B、20Cを変位させるホルダー可変手段と、を含み、
前記ホルダー可変手段は、前記マグネットホルダー20A、20B、20Cの一側に設けられ、前記被押動部が接触する押圧部と、前記マグネットホルダー20A、20B、20Cを前記ブレーキングプレートから離れる一側方向に弾性支持する第1弾性体と、を含み、
前記被押動部もしくは押圧部又はこれらの両方は、周方向に最低点と最高点とが傾斜するように連結された端面カムで形成され、
前記スプールが一定速度以下で回転するとき、前記第1弾性体の弾性力によって前記マグネットホルダー20A、20B、20Cが前記ブレーキングプレートに向かって前進していない状態で前記ブレーキングプレートに作用する基本制動力が発生し、
前記スプールが一定速度以上で回転するとき、前記ブレーキングプレートとマグネットMとの間に渦電流が増加して前記被押動部が端面カム構造に乗って上方に移動しながら前記マグネットホルダー20A、20B、20Cが前進するにつれて、前記マグネットMとブレーキングプレートとの距離が近くなり、前記スプールの高速回転に応じて、前記ブレーキングプレートに作用する追加制動力が発生及び増加することを特徴とする。
【0039】
前記フレーム、スプールは、釣り用リールの公知の構造であって、スプールカバー10がパーム(palm)側サイドカバー(図示せず)に結合されてフレームに脱着され、このとき、サイドカバーの脱着構造は、様々な方式で行われるが、代表的には、フレームに回転による係合構造で脱着されるロックレバーがある。
そして、本発明のスプールカバー10は、前記底部11Aの内、外側両面の中央に前面軸部12Aと後面軸部12Bがそれぞれ円筒状に突出しており、
各実施例別の押圧部として機能する端面カムの有無、スライドカム30A、30B、30Cの結合位置、及びマグネットホルダー20A、20B、20Cとスライドカム30A、30B、30Cとの連結のためのガイド孔11aと嵌合孔11cとガイド溝11dそれぞれの有無によって、第1~第3実施形態のスプールカバー10が区分される。
【0040】
このとき、各スプールカバー10を含む第1~第3実施形態はいずれも、スプールに固定されて共に回転するブレーキングプレートに対して、渦電流と端面カム構造を介して、マグネットMが備えられたマグネットホルダー20A、20B、20Cが直接前後進作動するという点で、本質的に同一である。
また、本発明は、複数のマグネットMがマグネットホルダー20A、20B、20Cの周方向に所定間隔を隔てて設けられ、このとき、マグネットMは、互いに異なる極性で交差配列され、マグネットがブレーキングプレートに重畳しない非重畳対向面を形成する。
【0041】
以下、本発明の核心的な構成を説明する。
まず、本発明の第1実施形態は、
図1a、
図1b~
図8a、
図8bに示すように、
前記前面軸部12Aに外挿されて前記収容部11において前記スプールの回転方向に双方向回転可能に結合され、周方向に沿って他側に突出する押圧部を形成する第1端面カム31Aを備えたスライドカム30Aを含み、
前記マグネットホルダー20Aは、前記前面軸部12Aと前記スライドカム30Aの内周面との間に挟まれる軸設部21と、前記軸設部21の外周面から突出して前記第1端面カム31Aに接触する被押動部を形成する被押動突起22Aと、を含むことを特徴とする。
【0042】
第1実施形態のスプールカバー10は、第2、第3実施形態における嵌合孔11cとガイド溝11dとが設けられず、ただし、前面軸部12A及び後面軸部12Bの両側にガイド突起が嵌め込まれるガイド孔11aが設けられ、両側縁部に昇降突起25が嵌め込まれる昇降孔11bが貫通して設けられる。
このようなスプールカバー10は、第2実施形態とは異なり、前面軸部12Aに押圧部として機能する端面カムが設けられず、前面軸部12Aに外挿されるスライドカム30Aに第1端面カム31Aが設けられて押圧部として機能するという点で、差異がある。
【0043】
そして、第1実施形態のマグネットホルダー20Aは、リング状の部材であって、マグネットホルダー20Aの他側面(内側前面)に周方向に沿って複数のマグネット装着溝が放射状に配列されて設けられ、一側面(外側後面)中央の軸設孔の縁から円筒状の軸設部21が突出している。
このとき、軸設部21の内径は、前記前面軸部12Aの外径及びスライドカム30Aの内径に対応し、軸設部21の外径は、スライドカム30Aに設けられた第1端面カム31Aの内径に対応して、第1端面カム31Aに内挿されたマグネットホルダー20Aがスライドカム30Aと共に前面軸部12Aに外挿されて支持される。
そして、前記軸設部21の外周面から突設された被押動突起22Aは、後端側(外側)に幅が漸次減少する楔状構造であって、軸設部21の周方向に沿って放射状に配列され、前記第1端面カム31Aの先端面に接触して組み立てられる。
このとき、基本的な第1実施形態において、マグネットホルダー20Aは、一側面の装着溝10aにリング状のマグネットプレートMPがさらに装着され、前記マグネットプレートMPは、伝導体であって、マグネットMの磁性がホルダーの後面側に作用することを防止することにより、ブレーキングプレートに対する基本磁力を増大させることができる。
【0044】
一方、本発明は、前記前面軸部12Aに内挿されて結合され、前面軸部12Aの外径よりも大きい内径を有するスカート部を備えたホルダーキャップ23と、両端がそれぞれ前記軸部と前記スカート部との間に支持されて圧縮反対方向に弾性力を発揮することで前記第1弾性体を形成する第1圧縮ばね24と、を含む。
前記ホルダーキャップ23は、フック突起23aが前面軸部12Aの内周面に係止されて装着され、これにより、ホルダーキャップ23を支持点として、前記マグネットホルダー20Aがブレーキングプレートから離れる方向である外側方向に後進するように弾性支持される。
【0045】
また、マグネットホルダー20Aは、前記マグネットプレートMPが備えられる装着溝10aの両側縁に、前記昇降孔11bに嵌め込まれる昇降突起25が突設され、マグネットホルダー20Aの前後進(昇降)を案内する。
前記スライドカム30Aは、前記軸設部21に相応するリング状部材であって、縁に沿って第1端面カム31Aが前記被押動突起22Aと対応する位置に配列されている。
【0046】
このような第1端面カム31Aは、
図2の円内展開図中の左側のように最低点31Lの一方向に最低点と最高点31Hとが上方傾斜するように連結されるか、又は、
図2の円内展開図中の右側のように最低点31Lの両側方向に最低点と2つの最高点31Hとが上方傾斜するように連結されることができ、一方向の第1端面カム31Aは、キャスティング時にのみマグネットホルダー20Aが第1端面カム31Aに乗って前進するようにし、リーリング時にはマグネットホルダー20Aの前進作動が行われず、双方向の第1端面カム31Aは、キャスティング時及びリーリング時の両方にマグネットホルダー20Aの前進作動が行われる。
【0047】
そして、本発明は、前記スプールカバー10の一側でサイドカバーに設けられたダイヤルDに結合されて周方向に双方向回転可能に結合され、周方向に沿って他側に突出するが、最低点41Lと最高点41Hとが傾斜するように連結された第2端面カム41を備えたダイヤルカム40Aを含み、
前記スライドカム30Aは、前記前面軸部12Aの軸方向に前後進可能に結合するが、一側面から突出して前記スプールカバー10を貫通して嵌め込まれ、前記第2端面カム41に接触するガイド突起32を備えることにより、
前記ダイヤルカム40Aの双方向回転に応じて前記ガイド突起32が前記第2端面カム41に乗って移動しながら前記スライドカム30Aによって前記マグネットホルダー20Aの前後位置が可変して、前記ブレーキングプレートに作用する基本制動力を調節できることを特徴とする。
【0048】
前記ガイド突起32は、円弧状の後端部を有するものであり、前記スプールカバー10のガイド孔11aを貫通して嵌め込まれる。
前記ダイヤルカム40Aは、縁に沿って一方向に上方傾斜するように形成された第2端面カム41が備えられるが、図面の如く、2つのガイド突起32と2つの第2端面カム41が備えられる場合、1回転あたりの可変高さを最大に延長することができるように、一側のガイド突起32が他側のガイド突起32よりもダイヤルカム40Aの縁側に偏重されるように備えられ、これに対応して2つの第2端面カム41が各ガイド突起32の回転経路上に位置して内外に互いに重畳する形態で配列される。
【0049】
このようなダイヤルカム40Aは、サイドカバーで回転可能に結合されたダイヤルDと連結され、ユーザがダイヤルDによってダイヤルカム40Aを回転操作することを可能にする。
したがって、このようなマグネット制動装置を備えた釣り用リールでキャスティング(及びリーリング)を行う場合、
スプールが低速で回転するときは、回転するブレーキングプレート(導体)と、該ブレーキングプレートに対して固定されたマグネットM(及びマグネットプレートMP)との間に発生する渦電流よりも前記第1圧縮ばね24の弾性力がさらに強いため、マグネットホルダー20Aがスプール回転方向に押圧されなくなり、前記被押動突起22Aが第1端面カム31Aの最低点31Lに位置することにより、マグネットM(及びマグネットプレートMP)がブレーキングプレートから最大限離れた状態が維持され、その結果、離隔距離に応じた最小限の基本制動力のみが発生する。
【0050】
そして、スプールが加速して高速で回転する場合、ブレーキングプレートとマグネットMとの間に発生する渦電流が強くなるにつれて、渦電流により発生したマグネットホルダー20Aの回転力が第1圧縮ばね24の弾性力を上回ることにより、マグネットホルダー20Aがスプールと共に同一方向に回転するように押圧され、これにより、第1端面カム31Aの最低点31Lに位置した被押動突起22Aは、第1端面カム31Aの先端面に沿って最高点31Hに向かって上昇し、その結果として、マグネットホルダー20Aがブレーキングプレートに向かって前進しながら近接することになり、マグネットM(及びマグネットプレートMP)の近接に応じた磁力の増加によりブレーキングプレート、すなわちスプールに作用する追加制動力が発生及び増加してバックラッシュ現象の発生を防止する。
【0051】
また、マグネットM(及びマグネットプレートMP)の制動によってスプールの回転速度が減少するにつれて渦電流が弱くなり、第1圧縮ばね24の弾性力がマグネットホルダー20Aに加わって被押動押突起22Aが第1端面カム31Aに乗って最低点31Lに向かって復帰移動しながらマグネットホルダー20Aが行進することになり、スプールの低速回転時の制動力が減少する。
また、スプール停止状態で、ユーザがサイドカバーのダイヤルDを掴んで一方向に回転させると、第2端面カム41の最下点41Lに位置したガイド突起32が第2端面カム41の最高点41Hに向かって上昇しながらスライドカム30Aが前進してマグネットM(及びマグネットプレートMP)の基本設定位置が変わる。
したがって、ユーザが、任意にスプールの低速回転状態で発生する基本制動力を増加するように調節することができ、このように基本制動力が増加する分だけスライドカム30Aの前進による追加制動力の発生時点を早くなるように調節することができるため、ユーザは、自分に合わせて制動力を精密制御することができる。
【0052】
一方、前記第1実施形態の変形例として、
図5a、
図5b~
図8a、
図8bに示すように、
前記マグネットホルダー20Aは、複数のマグネットMが周方向に放射状に配列されて装着されるが、周方向の所定区間にマグネットMが装着されていないマグネット未装着部26を含み、
前記スライドカム30Aは、前記第1端面カム31Aの最高点31Hから内側に突出して連結された段差部31aと、前記マグネット未装着部26と対応する位置の外周面から突出した翼部34と、前記翼部34に装着され、前記マグネットMと同じ極性を有する補助マグネットM1とを含むことにより、
前記第1端面カム31Aの最高点31Hに到達した前記被押動突起22Aが前記段差部31aに係止されながら、前記マグネットMと補助マグネットM1との斥力の発生によって前記マグネットホルダー20Aが追加前進して、前記ブレーキングプレートに作用するマキシマム制動力が発生することを特徴とする。
【0053】
このような第1実施形態の変形例は、前記マグネットプレートMPが省略されることで、前記マグネット未装着部26上では磁力が発生しないようにする。
前記段差部31aは、第1端面カム31Aの最高点31Hからスプールシャフトの軸方向に突出することにより、前記被押動突起22Aがもはや回転移動することができないようにする。
【0054】
前記マグネット未装着部26は、前記第1端面カム31Aが形成されていない区間に対応する位置(翼部34)に設けられる。
前記補助マグネットM1は、前記複数のマグネットMと同じ極性であり、前記スライドカム30Aの被押動突起22Aが第1端面カム31Aの最低点31Lに位置するとき、前記翼部34が前記マグネット未装着部26と同一線上に位置することにより、マグネットMと補助マグネットM1との間に斥力が発生しない。
そして、スプールが高速回転するにつれて、前記被押動突起22Aが第1端面カム31Aの最高点31Hに向かって上昇しながら、前記翼部34の補助マグネットM1がマグネット未装着部26を外れる方向に移動する。
【0055】
そして、前記被押動突起22Aが第1端面カム31Aの最高点31Hに到達して段差部31aに係止されると、前記補助マグネットM1がマグネット未装着部26に最も近接する位置に配列されたマグネットMと同一線上に重畳しながら同一極性による斥力が発生する。このような斥力は、スライドカム30Aを瞬間的に内側に押して前進させることにより、マグネットMがブレーキングプレートに最大限に近接移動しながら磁力による制動力が最大値で発生する。
したがって、スプールが一定限度を超えて超高速で回転する場合、被押動突起22Aが第1端面カム31Aに沿って移動しながら制動力が次第に増加するのではなく、マグネットMと補助マグネットM1との斥力によって制動力が瞬間的に増加しながら、マキシマム制動力が即時発生することになり、スプールの超高速回転によるバックラッシュ現象を防止することができる。
【0056】
次に、本発明の第2実施形態として、
図9a、
図9b~
図12a、
図12bに示すように、
前記スプールカバー10は、前記底部11Aの他側面から突出した前面軸部12Aと、前記前面軸部12Aの外周面に突設され、周方向に沿って形成される押圧部を形成する第1端面カム13と、を含み、
前記マグネットホルダー20Bは、前記前面軸部12Aの外周面に嵌められる軸設部21と、前記軸設部21の内周面から突出して前記第1端面カム13に接触する押圧部を形成する被押動突起22Bと、を含むことを特徴とする。
【0057】
本発明の第2実施形態は、第1及び第3実施形態とは異なり、押圧部が別途のスライドカム又はダイヤルカムに設けられず、スプールカバー10の前面軸部12A自体に第1端面カム13が設けられて押圧部として機能するという点で、差異がある。
このとき、本明細書の図面には、前記第1端面カム13が最低点13Lから両側に向かって最高点13Hに上方傾斜した形態が代表的に示されているが、第1端面カム13が一方向にのみ形成されることも可能であり、最高点13Hには段差部13aが形成され、前記被押動突起22Bが最高点13Hを超えないようにする。
前記被押動突起22Bは、第1実施形態と同様の形態であり、ただし、マグネットホルダー20Bの内周面に突設されるという点で、差異がある。
【0058】
また、本発明は、
前記収容部11に装着されて前記マグネットホルダー20Bの一側面を支え、前記スプールカバー10を一側に貫通して嵌め込まれる連結突起51を備える押圧プレート50と、
前記連結突起51に結合されて前記スプールカバー10の一側で前記押圧プレート50と共にスプールシャフトの軸方向に前後進可能であり、内周面から突出して周方向に最低点と最高点とが傾斜するように連結された第2端面カム31Bを備えたスライドカム30Bと、
前記スライドカム30Bの一側でサイドカバーに設けられたダイヤルDに結合されて前後回転可能であり、周方向に沿って前記第2端面カム31Bと対応する形態で突出して前記第2端面カム31Bと接触する第3端面カム42を備えたダイヤルカム40Bと、
前記スライドカム30Bを前記スプールカバー10から離れる一側方向に弾性支持する第2弾性体と、を含むことにより、
前記ダイヤルカム40Bの双方向回転に応じて前記第2端面カム31Bが前記第3端面カム42に乗って移動しながら前記スライドカム30Bによって前記マグネットホルダー20Bの前後位置が可変して、前記ブレーキングプレートに作用する基本制動力を調節することができることを特徴とする。
【0059】
前記押圧プレート50は、前記マグネットホルダー20Bに対応するリング状であり、マグネットホルダー20Bの一側面(より厳密には、マグネットプレートMP)を覆いながら互いに接するように設けられるものであり、前記連結突起51が前記スプールカバー10の嵌合孔11cに嵌め込まれてマグネットホルダー20Bと共に前後進することができ、ただし、マグネットホルダー20Bは前後回転が可能であるのに対し、押圧プレート50は前後進のみが可能である。
前記スライドカム30Bは、第1実施形態とは異なり、前記スプールカバー10の後面軸部12Bに嵌合され、前記連結突起51によってマグネットホルダー20Bと連結されており、一緒に前後進可能である。
【0060】
前記第2端面カム31Bは、前記第1端面カム13と類似の形態であり、ただし、傾斜方向が一方向にのみ形成されているという点で、差異があり、
前記ダイヤルカム40Bの第3端面カム42は、前記第2端面カム31Bと対応する形態で形成されて互いに接している。
そして、前記連結突起51には第2圧縮ばね52が外挿され、前記スプールカバー10に対して前記スライドカム30Bをスプールカバー10の外側に離れる一側方向に後進するように弾性支持する。
【0061】
このような第2実施形態は、第1実施形態と同様に、スプールの高速回転時に発生する渦電流によって前記マグネットホルダー20Bが前記第1端面カム13に乗って回転しながら前記マグネットがブレーキングプレートに向かって前進することで追加制動力が発生及び増加し、サイドカバーのダイヤルDによって前記ダイヤルカム40Bを操作すると、スライドカム30Bの前進作動で押圧プレート50がマグネットホルダー20Bをブレーキングプレートに接近させることにより、未回転及び低速回転時に発生する初期制動力の設定を任意に調節して変更することができる。
また、前記押圧プレート50は、前面縁部から突出した制限突起53を含み、
前記マグネットホルダーは、前面縁部に所定長さで形成された長溝29を含むことにより、
前記マグネットホルダー20Bの前進時に前記長溝29が前記制限突起53の係止部に係合される。
【0062】
前記制限突起53は、係止部が長溝29から所定間隔隔たることができる長さを有する。
よって、前記マグネットホルダー20Bは、前記制限突起53に拘束されて最大前進位置が制限を受ける。
つまり、押圧プレート50の位置を問わず、前記マグネットホルダー20Bの最大前進距離は、前記制限突起53の係止部を外れることができず、これによりスプールの高速回転時に前記マグネットホルダー20Bがブレーキングプレートに向かって前進し続けて接触することを防止することができる。
【0063】
次に、本発明の第3実施形態として、
図13a、
図13b~
図17に示すように、
前記スプールカバー10は、周方向に所定長さを持つように形成されたガイド溝11dが放射状に配列されており、
前記マグネットホルダー20Cは、前記ガイド溝11dを貫通して嵌め込まれる嵌合突起27を含み、
前記嵌合突起27に結合されて前記スプールカバー10の一側で前記マグネットホルダー20Cと共に双方向回転及び前後進可能であり、内周面から突出して周方向に最低点と最高点とが傾斜するように連結される被押動部を形成する第1端面カム31Cを備えたスライドカム30Cと、
前記スライドカム30Cの一側から前記第1端面カム31Cに向かって突出して前記第1端面カム31Cに接触する押圧部を形成する押圧突起43と、を含むことを特徴とする。
【0064】
前記ガイド溝11dは、円弧状であり、前記嵌合突起27を介してスプールカバー10の前後面側にそれぞれ備えられたマグネットホルダー20Cとスライドカム30Cとが互いに連結されてガイド溝11dに沿って周方向に回転が可能となる。
前記スライドカム30Cは、前記スプールカバー10の後面軸部12Bに嵌められて軸設され、後面軸部12Bに外挿された圧縮ばね33が前記第1弾性体として機能するため、スライドカム30Cに結合されたマグネットホルダー20Cをブレーキングプレートから離れる外側方向に弾性支持することにより、スプールが低速回転するときに圧縮ばね33によってマグネットホルダー20Cが収容部内に行進するようにして追加制動力が調節される。
【0065】
さらに、前記スライドカム30Cの一側でサイドカバーに設けられたダイヤルDに結合されて周方向に双方向回転可能に結合され、前記押圧突起43を備えたダイヤルカム40Cを含むことにより、
前記ダイヤルカム40Cの双方向回転に応じて、前記押圧突起43が前記第1端面カム31Cに乗って移動しながら前記スライドカム30Cによって前記マグネットホルダー20Cの前後位置が可変して、前記ブレーキングプレートに作用する基本制動力を調節することができることを特徴とする。
このとき、前記第1端面カム31Cは、最低点が所定長さで連なっている平坦面31bから一方向に上方傾斜した傾斜面31cで構成され、
前記押圧突起43は、一側端部に前記傾斜面31cの傾斜度に対応するように形成されたテーパー部43aが備えられる。
【0066】
このような第3実施形態は、前記第1、第2実施形態と同様に、前記押圧突起43が前記第1端面カム31Cの平坦面31b(最低点)に位置した状態で、スプールの高速回転時に発生する渦電流により前記マグネットホルダー20Cが前記押圧突起43のテーパー部43aに乗って上方移動しながら、前記マグネットMがブレーキングプレートに向かって前進して追加制動力が発生及び増加し、サイドカバーのダイヤルDによって前記ダイヤルカム40Cを回転操作してキャスティング時にマグネットホルダー20Cの最初位置を変更することにより、初期制動力を任意に調節することができる。
【0067】
つまり、前記押圧突起43が前記傾斜面31cの中央部のいずれか一箇所に位置するようにダイヤルDを回転させると、その分だけマグネットホルダー20Cがブレーキングプレートに向かって前進して基本制動力が増加し、この状態でスプールが高速回転すると、第1端面カム31Cがテーパー部43aに乗って移動しながらマグネットMがブレーキングプレート方向に前進して追加制動力が発生及び増加する。
【0068】
以上、本発明を説明するにあたり、添付図面を参照して、渦電流を用いたスプール制動装置及びこれを備えた釣り用リールを中心に説明したが、本発明は当業者によって様々な修正、変更及び置換が可能であり、それらの修正、変更及び置換は本発明の保護範囲に属するものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0069】
M ブレーキマグネット
MP マグネットプレート
D ダイヤル
10 スプールカバー
20A、20B、20C、20D マグネットホルダー
30A、30B、30C スライドカム
40A、40B、40C ダイヤルカム
50 押圧プレート