(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104937
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】流体噴射装置、ガスタービンエンジン及び流体噴射装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/232 20060101AFI20220705BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20220705BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20220705BHJP
F23R 3/28 20060101ALI20220705BHJP
F23D 11/36 20060101ALI20220705BHJP
B22F 10/20 20210101ALI20220705BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220705BHJP
【FI】
F02C7/232 B
F02C7/00 D
F01D25/00 X
F23R3/28 B
F23D11/36
B22F10/20
B33Y10/00
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050385
(22)【出願日】2022-03-25
(62)【分割の表示】P 2018022438の分割
【原出願日】2018-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】廣光 永兆
(72)【発明者】
【氏名】中谷 明義
(72)【発明者】
【氏名】福島 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】武藤 弘輝
(57)【要約】
【課題】限られたスペースにおいて流路を効率的に配置しつつ、小流量から大流量までの流体を適切に噴射することができる流体噴射装置、流体噴射装置を備えるガスタービンエンジン、及び流体噴射装置の製造方法を提供する。
【解決手段】流体噴射装置10は、少なくとも2つの流路20を備える。これらの少なくとも2つの流路20は、流体が流入する端部26では、並んで配置される。一方、流体が流出する端部では、一の流路20(第1流路21)が他の少なくとも一つの流路20(第2流路22)を取り囲むように設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの流路を備える流体噴射装置であって、
前記少なくとも2つの流路は、
それぞれ独立して、流体が流入する端部から前記流体が流出する端部まで、前記流路の壁面は滑らかに接続されており、
前記流体が流入する端部では、並んで配置され、
前記流体が流出する端部では、一の流路が他の少なくとも一つの流路を取り囲むように設けられている流体噴射装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つの流路の各々は、屈曲部を有し、
前記一の流路は、少なくとも前記屈曲部において、上流側よりも断面径が大きく且つ他の少なくとも一つの流路を取り囲むように設けられている請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つの流路は、第1流路及び第2流路を含み、
前記第1流路及び前記第2流路は、
前記屈曲部よりも上流側では、前記第1流路よりも前記第2流路の方が、前記流体が流出する端部に近接して配置され、
前記屈曲部では、前記第1流路の断面径が上流側より大きく且つ前記第1流路が前記第2流路を取り囲み、
前記屈曲部より下流側では、前記第1流路が前記第2流路を取り囲むように延在する請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの流路は第1流路及び第2流路を含み、
前記第1流路及び前記第2流路は、
前記屈曲部よりも上流側では、前記第2流路よりも前記第1流路の方が、前記流体が流出する端部に近接して配置され、
前記屈曲部では、前記第1流路の断面径が上流側より大きく且つ前記第1流路が前記第2流路を取り囲み、
前記屈曲部より下流側では、前記第1流路が前記第2流路を取り囲むように延在する請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記第1流路の断面は、少なくとも前記屈曲部より下流側において、線対称の形状を有する請求項3又は4に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記第1流路の断面は、少なくとも前記屈曲部より下流側において、円環状の形状を有する請求項5に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記少なくとも2つの流路は、直線的に延在する第1流路及び第2流路を含む請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項8】
前記第2流路を形成する壁部は、当該第2流路を形成する壁部よりも外側に配置される前記第1流路を形成する壁部に対し、保持部を介して接続される請求項3~7のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項9】
前記第2流路を形成する壁部は、2以上の前記保持部を介し、前記第1流路を形成する壁部に対して接続される請求項8に記載の流体噴射装置。
【請求項10】
前記2以上の保持部は、断面幅が相互に異なる複数の保持部を含む請求項9に記載の流体噴射装置。
【請求項11】
前記保持部は、前記第2流路の断面幅よりも大きい断面幅を有する保持部を含む請求項8~10のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の流体噴射装置を備え、
前記流体噴射装置の前記少なくとも2つの流路には流体燃料が流されるガスタービンエンジン。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の流体噴射装置の三次元形状データを特定するステップと、
前記三次元形状データを複数のスライスデータに変換するステップと、
前記複数のスライスデータに基づいて積層造形法により前記流体噴射装置を造形するステップと、を含む流体噴射装置の製造方法。
【請求項14】
前記積層造形法は、インコネル、コバルトクロム、ニッケル合金、チタン合金及びステンレスのうちの少なくとも1つの粉末を用いる請求項13に記載の流体噴射装置の製造方法。
【請求項15】
前記粉末の平均粒子径は、20マイクロメートル以下である請求項14に記載の流体噴射装置の製造方法。
【請求項16】
前記流体噴射装置が備える前記少なくとも2つの流路は、少なくとも一部において断面が変形する流路を含む請求項13~15のいずれか一項に記載の流体噴射装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置、流体噴射装置を備えるガスタービンエンジン及び流体噴射装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機用エンジンでは、エンジン着火からグランド・アイドリングを経て離陸(最大推力出力)に至る一連の過程において、必要とされる燃料の燃焼量が大きく変化し、燃料ノズルから噴射(吐出)させる燃料も小流量から大流量まで変えられる。
【0003】
小流量から大流量までの範囲を1系統の油路でカバーしようとする場合、小流量の燃料をノズルから噴射させる際には燃料圧力が低圧で済むが、大流量の燃料をノズルから噴射させる場合には燃料圧力を高圧にする必要があり、エンジンに搭載される燃料ポンプの負担が非常に大きい。そのため航空機用エンジンに搭載されるノズルは一般的に2系統の独立した油路を持ち、小流量時には1系統目の油路にのみ燃料が流され、燃料流量を増やす場合には1系統目の油路だけではなく2系統目の油路にも燃料を流すことで、低い燃料圧力で大流量の燃料を流すことを可能にしている。
【0004】
また、一般に「燃料ノズルに対して燃料が流入する方向」と「燃料ノズルから燃料が噴射される方向」とは異なっている。そのため上述の2系統の油路を備える従来の燃料ノズルは、独立した2系統の油路の各々が途中で急な角度で折れ曲がる構造を有する。
【0005】
例えば特許文献1は、ガスタービンエンジン用の燃料ノズル支持システムを開示する。
当該燃料ノズル支持システムは、細長いステムボディと、1次燃料流入口及び2次燃料流入口を有する流入側端部と、1次燃料流出口及び2次燃料流出口を有する流出側端部と、2次燃料流入口と2次燃料流出口とを連通させている同心状の長手方向2次燃料孔と、2次燃料孔の内部に配置されているとともに流入側端部及び流出側端部にシールされた状態で取り付けられており、1次燃料流入口と1次燃料流出口とを連通させている同心状の1次燃料管と、を備える。この燃料ノズル支持システムでは、特許文献1の
図1(断面図)に示されるように、「1次燃料流入口から1次燃料流出口に至る1系統目の油路」及び「2次燃料流入口から2次燃料流出口に至る2系統目の油路」がそれぞれ途中で急な角度で折れ曲がっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように従来の燃料噴射用のノズルは流路が急な角度で屈曲しているため、圧力損失が比較的大きくなる。圧力損失を抑えた状態で大流量の燃料を噴射するには配管径を大きくすればよいが、この場合、燃料噴射ノズル自体のサイズが大きくなってしまう。仮に燃料噴射ノズル自体のサイズを大きくせずに配管径を大きくしようとすると、燃料噴射ノズル自体の強度が低下し、必要な強度を確保するのが難しくなる。
【0008】
また、円形断面を有する深穴状の複数の油路が並列して配置される燃料噴射ノズルも考えられる。しかしながら、そのような油路構成を有する燃料噴射ノズルを小型に設ける場合には、各油路の断面積を大きくすることが難しく、各油路の圧力損失も大きい。
【0009】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、限られたスペースにおいて流路を効率的に配置しつつ、小流量から大流量までの流体(例えば燃料等)を適切に噴射することができる流体噴射装置、そのような流体噴射装置を備えるガスタービンエンジン及びそのような流体噴射装置の製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、良好な強度を有し且つ圧力損失が小さい流路を含む流体噴射装置、そのような流体噴射装置を備えるガスタービンエンジン及びそのような流体噴射装置の製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、少なくとも2つの流路を備える流体噴射装置であって、少なくとも2つの流路は、それぞれ独立して、流体が流入する端部から流体が流出する端部まで、流路の壁面は滑らかに接続されており、流体が流入する端部では、並んで配置され、流体が流出する端部では、一の流路が他の少なくとも一つの流路を取り囲むように設けられている流体噴射装置に関する。
【0011】
少なくとも2つの流路の各々は、屈曲部を有し、一の流路は、少なくとも屈曲部において、上流側よりも断面径が大きく且つ他の少なくとも一つの流路を取り囲むように設けられていてもよい。
【0012】
少なくとも2つの流路は、第1流路及び第2流路を含み、第1流路及び第2流路は、屈曲部よりも上流側では、第1流路よりも第2流路の方が、流体が流出する端部に近接して配置され、屈曲部では、第1流路の断面径が上流側より大きく且つ第1流路が第2流路を取り囲み、屈曲部より下流側では、第1流路が第2流路を取り囲むように延在してもよい。
【0013】
少なくとも2つの流路は第1流路及び第2流路を含み、第1流路及び第2流路は、屈曲部よりも上流側では、第2流路よりも第1流路の方が、流体が流出する端部に近接して配置され、屈曲部では、第1流路の断面径が上流側より大きく且つ第1流路が第2流路を取り囲み、屈曲部より下流側では、第1流路が第2流路を取り囲むように延在してもよい。
【0014】
第1流路の断面は、少なくとも屈曲部より下流側において、線対称の形状を有してもよい。
【0015】
第1流路の断面は、少なくとも屈曲部より下流側において、円環状の形状を有してもよい。
【0016】
少なくとも2つの流路は、直線的に延在する第1流路及び第2流路を含んでもよい。
【0017】
第2流路を形成する壁部は、当該第2流路を形成する壁部よりも外側に配置される第1流路を形成する壁部に対し、保持部を介して接続されてもよい。
【0018】
第2流路を形成する壁部は、2以上の保持部を介し、第1流路を形成する壁部に対して接続されてもよい。
【0019】
2以上の保持部は、断面幅が相互に異なる複数の保持部を含んでもよい。
【0020】
保持部は、第2流路の断面幅よりも大きい断面幅を有する保持部を含んでもよい。
【0021】
本発明の他の態様は、上記の流体噴射装置を備え、流体噴射装置の少なくとも2つの流路には流体燃料が流されるガスタービンエンジンに関する。
【0022】
本発明の他の態様は、上記の流体噴射装置の三次元形状データを特定するステップと、三次元形状データを複数のスライスデータに変換するステップと、複数のスライスデータに基づいて積層造形法により流体噴射装置を造形するステップと、を含む流体噴射装置の製造方法に関する。
【0023】
積層造形法は、インコネル、コバルトクロム、ニッケル合金、チタン合金及びステンレスのうちの少なくとも1つの粉末を用いてもよい。
【0024】
粉末の平均粒子径は、20マイクロメートル以下であってもよい。
【0025】
流体噴射装置が備える少なくとも2つの流路は、少なくとも一部において断面が変形する流路を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、流体噴射装置が備える少なくとも2つの流路のうちの一の流路が他の少なくとも一つの流路を取り囲むように設けられるため、限られたスペースに流路を効率的に配置しつつ、小流量から大流量までの流体を流体噴射装置から噴射することができる。また流体噴射装置が備える少なくとも2つの流路のうちの一の流路が他の少なくとも一つの流路を取り囲むように設けられることで、流体噴射装置の良好な強度を確保しつつ、圧力損失が小さい流路を実現することができる。そして本発明によれば、そのような流体噴射装置を備えるガスタービンエンジン及びそのような流体噴射装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る流体噴射装置の縦断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す流体噴射装置の斜視図であり、
図1の断面線II-IIよりも先端側の部分を取り除いた状態を示す。
【
図3】
図3は、
図1に示す流体噴射装置の斜視図であり、
図1の断面線III-IIIよりも先端側の部分を取り除いた状態を示す。
【
図4】
図4は、
図1に示す流体噴射装置の斜視図であり、
図1の断面線IV-IVよりも先端側の部分を取り除いた状態を示す。
【
図5】
図5は、
図1に示す流体噴射装置の斜視図であり、
図1の断面線V-Vよりも先端側の部分を取り除いた状態を示す。
【
図6】
図6は、
図1に示す流体噴射装置の斜視図であり、
図1の断面線VI-VIよりも先端側の部分を取り除いた状態を示す。
【
図7】
図7は、
図1の矢印Aで示される方向から見た流体噴射装置の先端部(流体流出部)の拡大図である。
【
図8】
図8は、他の例(比較例)に係る流体噴射装置の縦断面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る流体噴射装置の縦断面図である。
【
図10】
図10は、
図9に示す流体噴射装置の斜視図であり、
図9の断面線X-Xよりも先端側の部分を取り除いた状態を示す。
【
図11】
図11は、
図9に示す流体噴射装置の斜視図であり、
図9の断面線XI-XIよりも先端側の部分を取り除いた状態を示す。
【
図12】
図12は、ガスタービンエンジンの機能構成例を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、流体噴射装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、積層造形法を説明するための図であって、造形過程における流体噴射装置の状態を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、積層造形法を説明するための図であって、造形過程における流体噴射装置の状態を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、積層造形法を説明するための図であって、造形過程における流体噴射装置の状態を示す斜視図である。
【
図17】
図17は、積層造形法を説明するための図であって、造形過程における流体噴射装置の状態を示す斜視図である。
【
図18】
図18は、積層造形法を説明するための図であって、造形過程における流体噴射装置の状態を示す斜視図である。
【
図19】
図19は、積層造形法を説明するための図であって、造形過程における流体噴射装置の状態を示す斜視図である。
【
図20】
図20は、積層造形法を説明するための図であって、造形過程における流体噴射装置の状態を示す斜視図である。
【
図21】
図21は、流体噴射装置が備える複数の流路(第1流路及び第2流路)の断面形状例を示す。
【
図22】
図22は、流体噴射装置が備える複数の流路(第1流路及び第2流路)の断面形状例を示す。
【
図23】
図23は、流体噴射装置が備える複数の流路(第1流路及び第2流路)の断面形状例を示す。
【
図24】
図24は、流体噴射装置が備える複数の流路(第1流路及び第2流路)の断面形状例を示す。
【
図25】
図25は、流体噴射装置が備える複数の流路(第1流路及び第2流路)の断面形状例を示す。
【
図26】
図26は、流体噴射装置が備える複数の流路(第1流路及び第2流路)の断面形状例を示す。
【
図27】
図27は、流体噴射装置が備える複数の流路(第1流路及び第2流路)の断面形状例を示す。
【
図28】
図28は、流体噴射装置が備える複数の流路(第1流路及び第2流路)の断面形状例を示す。
【
図29】
図29は、流体噴射装置が備える複数の流路(第1流路及び第2流路)の断面形状例を示す。
【
図30】
図30は、流体噴射装置が備える複数の流路(第1流路及び第2流路)の断面形状例を示す。
【
図31】
図31は、流体噴射装置が備える複数の流路(第1流路及び第2流路)の断面形状例を示す。
【
図32】
図32は、流体噴射装置が備える複数の流路(第1流路及び第2流路)の断面形状例を示す。
【
図33】
図33は、流体噴射装置が備える複数の流路(第1流路及び第2流路)の断面形状例を示す。
【
図34】
図34は、流体噴射装置が備える複数の流路(第1流路及び第2流路)の断面形状例を示す。
【
図35】
図35は、第1流路及び第2流路の下流側流路近傍を一部抜粋した流体噴射装置の縦断面図であり、第1流路壁部及び第2流路壁部の接続態様の一例を説明するための図である。
【
図36】
図36は、第1流路及び第2流路の下流側流路近傍を一部抜粋した流体噴射装置の縦断面図であり、第1流路壁部及び第2流路壁部の接続態様の一例を説明するための図である。
【
図37】
図37は、第1流路及び第2流路の下流側流路近傍を一部抜粋した流体噴射装置の縦断面図であり、第1流路壁部及び第2流路壁部の接続態様の一例を説明するための図である。
【
図39】
図39は、流体噴射装置の一変形例を示す流体噴射装置の縦断面図であり、屈曲部を含まない流体噴射装置の一例を示す。
【
図42】
図42は、
図39の断面線XLII-XLIIに沿った流体噴射装置の横断面図である。
【
図43】
図43は、
図39の断面線XLIII-XLIIIに沿った流体噴射装置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面を参照して本発明の複数の実施形態及び変形例について説明する。なお説明及び理解を容易にするため、各図面に示される要素には、縮尺及び縦横の寸法比等を実物のそれらから変更された又は誇張された要素が含まれており、各要素の形状、サイズ及びその他の形態は、図面間で必ずしも厳密には一致していない。
【0029】
以下に説明する本発明の各実施形態は、少なくとも2つの流路を備える流体噴射装置に関する。これらの流路は、その上流側では並んで設けられる一方で、下流側では一の流路が変形して他の少なくとも一つの流路を取り囲むようにして設けられる。これにより、流体噴射装置は、自身のサイズの大型化を効果的に抑制しつつ、少流量から大流量までの流体を適切に噴射することができる。なお「上流側」及び「下流側」は、流体(燃料)の流れ方向を基準としており、上流側から下流側に向かって流体は流れる。
【0030】
以下では、一例として、相互に独立した2つの流路を備える流体噴射装置であって、液状の燃料(流体)を噴射する流体噴射装置(燃料噴射ノズル)について説明する。燃料油路(流路)の圧力損失を低減するために、独立した2系統の油路の各々は、それぞれの最大流量に応じた十分な断面積(流路面積)が確保されつつ、なだらかなカーブを描くように延在方向が変えられている。また製品自体の断面積を小さくするため、2系統の油路は、上流側では並列的に配置されるが、下流側では同心円状の横断面構造を有するように配置されている。とりわけ同心円状横断面構造の内側油路を形成する壁部と外側油路を形成する壁部とはリブ(保持部)を介して相互に連結され、或いは直接的に相互に接続されて一体的に設けられ、適切な油路強度が確保されている。なおこのようなリブは、燃料の流れを妨げないように、例えば、燃料の流れ方向に延在する板状の構造としつつ、厚みをできる限り薄くすることが好ましい。
【0031】
以下、具体的な実施形態について説明する。
【0032】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る流体噴射装置10の縦断面図である。
図2は、
図1に示す流体噴射装置10の斜視図であり、
図1の断面線II-IIよりも先端側の部分を取り除いた状態を示す。
図3は、
図1に示す流体噴射装置10の斜視図であり、
図1の断面線III-IIIよりも先端側の部分を取り除いた状態を示す。
図4は、
図1に示す流体噴射装置10の斜視図であり、
図1の断面線IV-IVよりも先端側の部分を取り除いた状態を示す。
図5は、
図1に示す流体噴射装置10の斜視図であり、
図1の断面線V-Vよりも先端側の部分を取り除いた状態を示す。
図6は、
図1に示す流体噴射装置10の斜視図であり、
図1の断面線VI-VIよりも先端側の部分を取り除いた状態を示す。
図7は、
図1の矢印Aで示される方向から見た流体噴射装置10の先端部(流体流出部27)の拡大図である。
【0033】
本実施形態の流体噴射装置10は、2つの流路20(第1流路21及び第2流路22)を備え、第1流路21及び第2流路22は、流体噴射装置10の流体流入部26から流体流出部27まで流体噴射装置10を貫通する。流体流入部26は、流体噴射装置10のうち燃料(流体)が流入する端部である。流体流出部27は、流体噴射装置10のうち燃料が流出する(噴射される)端部である。
【0034】
第1流路21及び第2流路22は、流体流入部26では並んで配置され、流体流出部27では、一の流路(本実施形態では第1流路21)が他の流路(本実施形態では第2流路22)を取り囲むように設けられている。なお図示の例では、第1流路21の横断面のほぼ中央(中心)に第2流路22が配置されている。
【0035】
第1流路21及び第2流路22の各々は屈曲部25を有する。第1流路21及び第2流路22のうち、屈曲部25よりも上流側の流路を上流側流路28と呼び、屈曲部25よりも下流側の流路を下流側流路29と呼ぶ。第1流路21及び第2流路22の各々の上流側流路28は流体流入部26において開口し、第1流路21及び第2流路22の各々の下流側流路29は流体流出部27において開口する。
【0036】
第1流路21(一の流路)は、少なくとも屈曲部25において(本実施形態では屈曲部25及び下流側流路29において)、上流側の上流側流路28よりも断面径が大きく、且つ、第2流路22(他の少なくとも一つの流路)を取り囲むように設けられている。ここでいう第1流路21の断面径は、第1流路21を流れる燃料の流れ方向(すなわち第1流路21の延在方向)と垂直な方向の横断面における第1流路21の径である。この第1流路21の断面径は、第1流路21を形成する第1流路壁部31によって囲まれる領域の断面径であり、後述のリブ35(本実施形態では第1リブ35a、第2リブ35b及び第3リブ35c)によって第1流路21が仕切られている場合にも同様にして第1流路21の断面径を定めることができる。
【0037】
このように本実施形態の第1流路21及び第2流路22は、屈曲部25よりも上流側の上流側流路28では、第1流路21よりも第2流路22の方が、流体が流出する端部(すなわち流体流出部27)に近接して配置される。したがって流体流入部26における第1流路21及び第2流路22の開口位置についても、第1流路21の開口よりも第2流路22の開口の方が流体流出部27に近接して配置される。また屈曲部25では、第1流路21の断面径が上流側の上流側流路28より大きく、且つ、第1流路21が第2流路22を取り囲む。そして屈曲部25より下流側の下流側流路29では、第1流路21が第2流路22を取り囲むように、第1流路21及び第2流路22は延在する。
【0038】
第1流路21及び第2流路22の横断面は、少なくとも屈曲部25より下流側において(本実施形態では、流体流入部26から流体流出部27に至る全ての位置において)、線対称の形状を有する。なおここでいう第1流路21及び第2流路22の横断面は、燃料の流れ方向(すなわち流路の延在方向)と垂直な方向の切断面である。図示の例では、第1流路21は、上流側流路28では円形断面を有し、屈曲部25から下流側流路29にわたって線対称の円環状(アニュラス状)の横断面を有する(
図2~
図6参照)。一方、第2流路22は、流体流入部26から流体流出部27に至る全ての位置において、円形断面を有する。
【0039】
第2流路22を形成する第2流路壁部32は、第2流路壁部32よりも外側に配置される「第1流路21を形成する第1流路壁部31」に対し、リブ35(保持部)を介して接続されている。より詳細には、2以上のリブ35(本実施形態では3つのリブ35(第1リブ35a、第2リブ35b及び第3リブ35c))を介し、第2流路壁部32は第1流路壁部31に対して接続される。これらの2以上のリブ35(第1リブ35a、第2リブ35b及び第3リブ35c)は、断面幅が相互に異なる複数のリブ35を含む。
図2~
図3に示す例では、第2リブ35b及び第3リブ35cはほぼ同じ断面幅を有するが、第1リブ35aは第2リブ35b及び第3リブ35cよりも大きな断面幅を有し、特に本例の第1リブ35aは、第2流路22の断面幅よりも大きい断面幅を有する。なお、ここでいう断面幅は、燃料の流れ方向と垂直な方向の横断面における長さ(例えば投影の最大長さ)に基づいて定められる。
【0040】
上述のように複数のリブ35が設けられる場合には、第1流路壁部31及び第2流路壁部32をバランス良く支持する観点から、これらの複数のリブ35が第1流路壁部31と第2流路壁部32との間で第2流路22の周囲方向に関して等間隔に及び/又は対称的(例えば線対称的又は回転対称的)に配置されることが好ましい。
図2~
図7に示す例では、「第1リブ35aと第2リブ35bとの間の第1流路21」、「第2リブ35bと第3リブ35cとの間の第1流路21」及び「第1リブ35aと第3リブ35cとの間の第1流路21」がほぼ同じ横断面形状を有する。
【0041】
図8は、他の例(比較例)に係る流体噴射装置10aの縦断面図である。
図8に示す流体噴射装置10aでは、各流路20(第1流路21及び第2流路22)は、流体流入部26から流体流出部27に至るまで、相互に並列(平行)に延在する。本比較例の流体噴射装置10aでは、限られたスペースで第1流路21及び第2流路22の流路面積(断面積)を大きくすることが容易ではなく、第1流路21及び第2流路22の屈曲部25は非常に鋭い角度で湾曲する。そのため第1流路21及び第2流路22の屈曲部25における圧力損失は大きく、エネルギーロスが大きい。また本比較例の流体噴射装置10aの流路構成において、各流路20(第1流路21及び第2流路22)の強度を確保しつつ大きな流路面積を実現するには、流体噴射装置10a全体を大型化する必要があり、流体噴射装置10aの小型化が難しい。
【0042】
一方、第1実施形態に係る流体噴射装置10は、上述のように以下の構造的特徴を有する。
a. 燃料流入部(流体流入部26)では、独立した2系統の燃料油路(第1流路21及び第2流路22)が並列的に設けられている。
b. 2系統の燃料油路(第1流路21及び第2流路22)は、それぞれなだらかなカーブを描きつつ延在方向を変え、燃料流出部(流体流出部27)では同心円状の横断面構造を有する。
c. 第1流路壁部31と第2流路壁部32との間にはリブ35(第1リブ35a、第2リブ35b及び第3リブ35c)が設けられ、当該リブ35によって各燃料油路(第1流路21及び第2流路22)の強度が確保されている。
【0043】
これらの構造的特徴を有する第1実施形態に係る流体噴射装置10(
図1~
図7参照)によれば、第1流路21が第2流路22を取り囲むように設けられるため、流体噴射装置10全体の大型化を抑えつつ、第1流路21及び第2流路22の流路面積を比較的大きくすることができる。特に、屈曲部25において第1流路21が第2流路22を取り囲むようにすることで、十分な大きさの第1流路21及び第2流路22の横断面積(流路面積)を確保しつつ、屈曲部25における第1流路21及び第2流路22の曲がり具合を緩やかにする(すなわち曲率を小さくする)ことができる。これにより燃料は、圧力損失が小さい状態で、第1流路21及び第2流路22の屈曲部25をスムーズに流れることができる。さらに本実施形態では、屈曲部25よりも上流側では、第1流路21よりも第2流路22の方が流体流出部27に近接して配置されるため、屈曲部25において第1流路21の曲率を比較的小さくして第1流路21を緩やかに湾曲させることができる。その一方で、流体流入部26において第1流路21及び第2流路22を並列的に配置することで、外部から第1流路21及び第2流路22への燃料の導入を容易に行うことができる。またリブ(第1リブ35a、第2リブ35b及び第3リブ35c)によって、必要とされる強度を確保することができる。
【0044】
以上説明したように本実施形態の流体噴射装置10によれば、限られたスペースにおいて各流路20(第1流路21及び第2流路22)を効率的に配置しつつ、小流量から大流量までの燃料を適切に噴射することができ、また良好な強度を確保しつつ圧力損失が小さい流路を実現することができる。
【0045】
なお第1実施形態に係る流体噴射装置10の構成は、
図1~7に示す例に限定されず、種々の変形が可能である。そのような変形の具体例については、後述する。
【0046】
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態に係る流体噴射装置10の縦断面図である。
図10は、
図9に示す流体噴射装置10の斜視図であり、
図9の断面線X-Xよりも先端側の部分を取り除いた状態を示す。
図11は、
図9に示す流体噴射装置10の斜視図であり、
図9の断面線XI-XIよりも先端側の部分を取り除いた状態を示す。
【0047】
本実施形態において、上述の第1実施形態と同一又は類似の要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0048】
本実施形態に係る流体噴射装置10は、上述の第1実施形態に係る流体噴射装置10と外観上はほぼ同じ構成及び形状を有する。ただし、複数の流路20(第1流路21及び第2流路22)の構成が、本実施形態に係る流体噴射装置10と第1実施形態に係る流体噴射装置10との間で異なっている。
【0049】
すなわち本実施形態の第1流路21及び第2流路22は、屈曲部25よりも上流側の上流側流路28では、第2流路22よりも第1流路21の方が、流体が流出する端部(すなわち流体流出部27)に近接して配置される。したがって流体流入部26における第1流路21及び第2流路22の開口位置についても、第2流路22の開口よりも第1流路21の開口の方が流体流出部27に近接して配置される。また屈曲部25では、第1流路21の断面径が上流側の上流側流路28より大きく、且つ、第1流路21が第2流路22を取り囲む。また屈曲部25より下流側の下流側流路29では、第1流路21が第2流路22を取り囲むように延在する。
【0050】
なお本実施形態の流体噴射装置10も3つのリブ35(第1リブ35a、第2リブ35b及び第3リブ35c)を備え、これらのリブ35が第1流路壁部31と第2流路壁部32との間で第2流路22の周囲方向に関して第1実施形態と同様に等間隔且つ対称的に配置され、「第1リブ35aと第2リブ35bとの間の第1流路21」、「第2リブ35bと第3リブ35cとの間の第1流路21」及び「第1リブ35aと第3リブ35cとの間の第1流路21」がほぼ同じ横断面形状を有する。ただし本実施形態では、これらの3つのリブ35(第1リブ35a、第2リブ35b及び第3リブ35c)が相互に同じ断面幅及び断面形状を有し、各リブ35の断面幅は第2流路22の断面幅よりも小さい。
【0051】
この第2実施形態に係る流体噴射装置10によれば、第1実施形態の流体噴射装置10と同様に、第1流路21が第2流路22を取り囲むように設けられるため、流体噴射装置10全体の大型化を抑えつつ、第1流路21及び第2流路22の流路面積を比較的大きくすることができる。特に、屈曲部25において第1流路21が第2流路22を取り囲むようにすることで、十分な大きさの第1流路21及び第2流路22の横断面積(流路面積)を確保しつつ、屈曲部25における第1流路21及び第2流路22の曲がり具合を緩やかにして、圧力損失を小さくすることができる。また本実施形態によれば、リブ35をバランス良く配置することができる。
【0052】
以上説明したように本実施形態の流体噴射装置10によっても、限られたスペースにおいて各流路20(第1流路21及び第2流路22)を効率的に配置しつつ、小流量から大流量までの燃料を適切に噴射することができ、また良好な強度を確保しつつ圧力損失が小さい流路を実現することができる。
【0053】
なお第2実施形態に係る流体噴射装置10の構成は、
図9~11に示す例に限定されず、種々の変形が可能である。そのような変形の具体例については、後述する。
【0054】
<流体噴射装置の適用分野>
上述のような本発明に係る流体噴射装置10は、例えば航空機用エンジンに好適に適用可能であり、ジェットエンジンの小型化及び軽量化に寄与しうる。ただし本発明に係る流体噴射装置10の適用範囲は特に限定されず、民間機及び戦闘機として利用される航空機のエンジンだけではなく、流体の噴射が必要とされる他の様々な装置にも応用可能である。したがって、例えば液体又は気体の物質を、小流量から大流量にわたって可変的に噴射することが求められる装置に対し、本発明は好適に応用可能である。
【0055】
以下では一例として、本発明に係る流体噴射装置10をガスタービンエンジンに適用するケースについて例示する。
【0056】
図12は、ガスタービンエンジン50の機能構成例を示すブロック図である。
【0057】
ガスタービンエンジン50は、燃焼器52に燃焼用の圧縮された空気を供給する空気供給装置51と、燃焼器52における燃料の燃焼により発生する高温高圧の燃焼ガスが送り込まれて回転されるタービン53とを備える。本発明に係る流体噴射装置10は、燃焼器52に燃料を送り込むデバイスとして好適に用いられうる。
【0058】
<流体噴射装置の製造方法>
上述のような本発明に係る流体噴射装置10は、例えばAM(Additive Manufacturing)装置によって簡単且つ高精度に製造可能である。ただし本発明に係る流体噴射装置の製造方法は特に限定されず、「AM装置による立体造形技術」以外の他の技術に基づいて流体噴射装置10が製造されてもよい。
【0059】
以下では一例として、本発明に係る流体噴射装置10をAM装置(図示省略)によって製造するケースについて例示する。
【0060】
図13は、流体噴射装置10の製造方法の一例を示すフローチャートである。本例の流体噴射装置10の製造方法は、上述の流体噴射装置10の三次元形状データを特定するステップ(
図13のS11及びS12)と、三次元形状データを複数のスライスデータに変換するステップ(S13)と、複数のスライスデータに基づいて積層造形法により流体噴射装置10を造形するステップ(S14)と、を含む。ここでいう三次元形状データは、三次元構造体(流体噴射装置10)の形状を示すデータである。またスライスデータは、三次元構造体(流体噴射装置10)をスライスして得られる断面データであり、「三次元形状データを複数のスライスデータに変換するステップ(S13)」は、複数のスライスデータを三次元形状データから導出することができる任意の処理に基づいて実行可能である。上述の各ステップは、AM装置のコントローラー及び/又はAM装置を制御する制御デバイスのコントローラーの制御下で実行可能である。例えば、「三次元形状データの特定(S11及びS12参照)」及び「スライスデータの取得(S13参照)」を一又は複数のコントローラーによって行うことができる。
【0061】
なお、上述の各実施形態に係る流体噴射装置10が備える流路20(第1流路21及び第2流路22)は、少なくとも一部において横断面が変形しており、流体噴射装置10は比較的複雑な流路構成を有する。そのため本例の製造方法では、まず流体噴射装置10のうちの流路20(第1流路21及び第2流路22)の三次元形状データが特定され(S11)、その後に、流体噴射装置10のうちの他の要素の三次元形状データが特定される(S12)。
【0062】
上述の積層造形法は、典型的には、金属の粉末をレーザーによって焼結することで層状の構造体を形成し、複数の層状の構造体を順次積み重ねることで所望の3次元構造体を作り出す技術である。このような積層造形法において用いられる金属粉末は特に限定されないが、典型的には、インコネル、コバルトクロム、ニッケル合金、チタン合金及びステンレスのうちの少なくとも1つの粉末を用いることができる。また積層造形法において用いられる粉末の平均粒子径は、20マイクロメートルから40マイクロメートル程度のものを使用でき、特に20マイクロメートル以下であることが好ましい。
【0063】
図14~
図20は、積層造形法を説明するための図であって、造形過程における流体噴射装置10の状態を示す斜視図である。なお
図14~
図20に示す流体噴射装置10は、上述の第1実施形態の流体噴射装置10と同様の流路構成(第1流路21及び第2流路22)を有し、上流側流路28では第1流路21よりも第2流路22の方が流体流出部27に近接して配置され、屈曲部25及び下流側流路29では第1流路21が第2流路22を取り囲むように延在する。
【0064】
なお
図14~
図20には図中の左側に示される部分から右側に示される部分に向かって徐々に流体噴射装置10が作られる例が示されているが、積層造形法による造形方向については特に限定されない。したがって例えば、
図14~
図20の図中の下側に示される部分から上側に示される部分に向かって、流体噴射装置10が徐々に作られてもよい。
【0065】
上述の積層造形法によれば、層単位で徐々に流体噴射装置10が作られ、最終的には、所望の流路構成を有する流体噴射装置10を精度良く作ることができる。
【0066】
<変形例>
上述の流体噴射装置10の構成は一例に過ぎず、流体噴射装置10に対して種々の変形を加えることが可能である。以下に、具体的な変形例について説明する。
【0067】
<流路の横断面形状の変形例>
図21~
図34は、流体噴射装置10が備える複数の流路20(第1流路21及び第2流路22)の断面形状例を示す。各流路20(第1流路21及び第2流路22)の断面形状は特に限定されず、各流路の断面形状は、円状(真円形状及び楕円形状を含む)、多角形状(三角形状、四角形状及び五角形状を含む)及びその他の形状とすることが可能である。また流路20間の相対的な位置関係も特に限定されず、例えば第1流路21の横断面のほぼ中央に第2流路22が配置されてもよいし、第1流路21の横断面の中央から外れた位置に第2流路22等の他の流路20が配置されてもよい。また流体噴射装置10が3以上の流路20を備えてもよい。また流体噴射装置10が備える複数の流路20は、相互に異なる断面形状を有していてもよいし、相互に同じ断面形状を持つ2以上の流路20を含んでいてもよい。
【0068】
また第1流路21が他の流路(第2流路22等)を取り囲む態様も特に限定されず、他の流路の全周を第1流路21が取り囲んでもよいし、他の流路の周囲の一部のみを第1流路21が取り囲んでもよい。また第1流路21が他の流路(第2流路22等)を取り囲む態様は、屈曲部25及び屈曲部25よりも下流域(下流側流路29)にわたって同じであってもよいし、屈曲部25及び屈曲部25よりも下流域(下流側流路29)において複数の態様で第1流路21が他の流路(第2流路22等)を取り囲んでもよい。
【0069】
例えば
図21に示す例では、第2流路22が「図中の横方向に長軸が設定される楕円形状」の横断面を有し、第1流路21が「図中の縦方向よりも横方向に長い円環形状」の横断面を有する。
【0070】
図22に示す例では、第2流路22が「図中の縦方向に長軸が設定される楕円形状」の横断面を有し、第1流路21が「図中の横方向よりも縦方向に長い円環形状」の横断面を有する。
【0071】
図23に示す例では、第2流路22が円形状(具体的には楕円形状)の横断面を有し、第1流路21が三角形の外形を持つ環形状の横断面を有する。
【0072】
図24に示す例では、第2流路22が円形状(具体的には楕円形状)の横断面を有し、第1流路21が四角形の外形を持つ環形状の横断面を有する。
【0073】
図25に示す例では、第2流路22が円形状(具体的には楕円形状)の横断面を有し、第1流路21が五角形の外形を持つ環形状の横断面を有する。
【0074】
なお第1流路壁部31と第2流路壁部32とは、リブ35を介して接続されてもよいし(
図21~
図25参照)、第1流路壁部31と第2流路壁部32とが直接的に接続されて一体的に構成されてもよい(
図23参照)。
【0075】
図26に示す例では、第2流路22が円形状(具体的には真円形状)の横断面を有し、第1流路21が円環状の横断面を有し、第1流路壁部31と第2流路壁部32とがリブ35を介して接続されている。このリブ35の断面幅は、第2流路22の断面幅よりも大きく、且つ、第1流路21の断面幅よりも小さい。
【0076】
図27に示す例では、第2流路22が円形状(具体的には真円形状)の横断面を有し、第1流路21が円環状の横断面を有し、第1流路壁部31と第2流路壁部32とが複数のリブ35(2個のリブ35)を介して接続されている。複数のリブ35(2個のリブ35)は、第2流路22を間に挟んで相互に対向する位置に配設され、相互に異なる断面形状を有する。本例では、一方のリブ35の断面幅が第2流路22の断面幅よりも大きく、他方のリブ35の断面幅が第2流路22の断面幅よりも小さい。
【0077】
図28に示す例では、第2流路22が円形状(具体的には真円形状)の横断面を有し、第1流路21が円環状の横断面を有し、第1流路壁部31と第2流路壁部32とが複数のリブ35(2個のリブ35)を介して接続されている。複数のリブ35(2個のリブ35)は、第2流路22を間に挟んで相互に対向する位置に配設され、相互に同じ断面形状を有する。本例では、各リブ35の断面幅は第1流路21及び第2流路22の断面幅よりも小さい。
【0078】
図29に示す例では、第2流路22が円形状(具体的には真円形状)の横断面を有し、第1流路21が第2流路22の一部(
図29に示す例では図中の下側)を覆うような横断面を有し、第1流路壁部31と第2流路壁部32とは直接的に接続されている。
【0079】
図30に示す例では、3つの流路20が設けられている。すなわち、第2流路22及び第3流路23は並んで配置され、第1流路21は第2流路22及び第3流路23を取り囲むように設けられる。第2流路22及び第3流路23は円形状(具体的には真円形状)の横断面を有し、第1流路21は円環状の横断面を有する。本例では第2流路壁部32によって第2流路22及び第3流路23が形成され、第1流路壁部31と第2流路壁部32とはリブ35を介して接続されている。
【0080】
図31に示す例では、第1流路21の横断面の中心から外れた位置に第2流路22が設けられる。なお図示の例では、第1流路21及び第2流路22は円形状(具体的には真円形状)の横断面を有する。
【0081】
図32に示す例では、第1流路21、第2流路22、第1流路壁部31、第2流路壁部32及びリブ35が、
図26に示す例と同様の断面形状を有するが、リブ35の位置が、図中の左側に設けられている。
【0082】
図33に示す例では、第1流路21、第2流路22、第1流路壁部31、第2流路壁部32及びリブ35が
図26に示す例と同様の断面形状を有するが、リブ35の位置が、図中の下側に設けられている。
【0083】
図34に示す例では、第2流路22が四角形状(具体的には正方形状)の横断面を有し、第1流路21が四角形の外形を持つ環形状の横断面を有し、第1流路壁部31と第2流路壁部32とがリブ35を介して接続されている。
【0084】
各流路20(第1流路21、第2流路22及び第3流路23)は、屈曲部25及び下流側流路29の少なくとも一部において、
図21~
図34のうちのいずれか1図面又は2図面以上に示す断面形状を有することが可能である。
【0085】
<第1流路壁部31及び第2流路壁部32の接続態様に関する変形例>
図35は、第1流路21及び第2流路22の下流側流路29近傍を一部抜粋した流体噴射装置10の縦断面図であり、第1流路壁部31及び第2流路壁部32の接続態様の一例を説明するための図である。本例では、下流側流路29及び屈曲部25のうちの少なくとも下流側流路29の全域において、第2流路壁部32が第1流路壁部31に対して直接的に接続しており、第1流路壁部31及び第2流路壁部32は一体的に構成される。
【0086】
図36は、第1流路21及び第2流路22の下流側流路29近傍を一部抜粋した流体噴射装置10の縦断面図であり、第1流路壁部31及び第2流路壁部32の接続態様の一例を説明するための図である。本例では、下流側流路29及び屈曲部25のうちの少なくとも下流側流路29の全域において、流路20の延在方向(燃料の流れ方向)へ相互に離間して配置された複数のリブ35を介し、第2流路壁部32が第1流路壁部31に対して断続的に接続されている。
【0087】
図37は、第1流路21及び第2流路22の下流側流路29近傍を一部抜粋した流体噴射装置10の縦断面図であり、第1流路壁部31及び第2流路壁部32の接続態様の一例を説明するための図である。
図38は、
図37の矢印Bから流体噴射装置10(流体流出部27)を見た図である。本例では、下流側流路29及び屈曲部25のうちの少なくとも下流側流路29の全域において、複数のリブ35の各々が流路20の延在方向(燃料の流れ方向)へ延在し、当該複数のリブ35を介して第2流路壁部32が第1流路壁部31に対して連続的に接続されている。
【0088】
<屈曲部を含まない流路>
上述の各実施形態に係る流体噴射装置10では、各流路20(第1流路21、第2流路22及び第3流路23)が屈曲部25を有するが、各流路20は屈曲部25を有さなくてもよい。
【0089】
図39は、流体噴射装置10の一変形例を示す流体噴射装置10の縦断面図であり、屈曲部を含まない流体噴射装置10の一例を示す。
図40は、
図39の矢印Cから流体噴射装置10(流体流出部27)を見た図である。
図41は、
図39の断面線XLI-XLIに沿った流体噴射装置10の横断面図である。
図42は、
図39の断面線XLII-XLIIに沿った流体噴射装置10の横断面図である。
図43は、
図39の断面線XLIII-XLIIIに沿った流体噴射装置10の横断面図である。
【0090】
本例の流体噴射装置10では、第1流路21及び第2流路22が流体流入部26から流体流出部27まで直線的に延在する。本例においても、複数の流路20(第1流路21及び第2流路22)は、流体流入部26では並んで配置されるが、流体流入部26から流体流出部27に至る過程において、第1流路21が第2流路22を徐々に取り囲むように第1流路21の断面径が大きくなる(
図41~
図43参照)。そして流体流出部27では、第1流路21が第2流路22を取り囲み、リブ35を介して第1流路壁部31が第2流路壁部32に接続される(
図40参照)。
【0091】
<代表的な態様及び作用効果>
以下に、上述の「流体噴射装置10」、「ガスタービンエンジン50」及び「流体噴射装置10の製造方法」の代表的な特徴及びその作用効果を態様毎に列挙するが、本発明は以下の態様に必ずしも則っている必要はなく、他の態様に基づいていてもよい。
【0092】
[第1の態様]
流体噴射装置10は、少なくとも2つの流路20(上述の各実施形態及び変形例では第1流路21及び第2流路22(及び第3流路23))を備え、少なくとも2つの流路20は、流体(燃料)が流入する端部(流体流入部26)では、並んで配置され、流体が流出する端部(流体流出部27)では、一の流路(第1流路21)が他の少なくとも一つの流路(第2流路22(及び第3流路23))を取り囲むように設けられている。
【0093】
本態様によれば、流体噴射装置10は少なくとも2つの流路20を備え、これらの流路20は、その上流側では並んで設けられ、下流側では一の流路20(第1流路21)の断面が拡大等の変形をして当該一の流路20が他の少なくとも一つの流路(第2流路22及び第3流路23)を取り囲むように設けられる。このように下流側で一の流路20が他の少なくとも一つの流路20を取り囲むことで、「2以上の流路20が下流側でも並んで設けられる場合」に比べ、流体噴射装置10は、サイズを大きくすることなく、少流量から大流量までの流体を適切に噴射することができる。また他の少なくとも一つの流路20が一の流路20によって取り囲まれることで、他の少なくとも一つの流路20は外部からの影響を受けにくくなる。例えば、他の少なくとも一つの流路20(第2流路22及び第3流路23)を流れる流体は、流体噴射装置10の周囲の温度が変化しても、温度が変化(上昇及び下降)しにくく、流体の温度変動を緩和することができる。
【0094】
なお、流路20は屈曲していてもよいし、屈曲していなくてもよい。また流路20の数は、典型的には2つであるが、3以上の流路が設けられていてもよい。また複数の流路20の配置も特に限定されず、下流方向を基準に複数の流路を左右に配置したり上下に配置したりできる。また一の流路20のうち、他の少なくとも一つの流路20を取り囲む部分の形態も特に限定されず、対称的な断面形状(例えば線対称の断面形状(円環断面形状、三角形の外形を持つ環断面形状、四角形の外形を持つ環断面形状、或いは多角形の外形を持つ環断面形状、等))を有していてもよいし、非対称的な断面形状を有していてもよい。
【0095】
[第2の態様]
少なくとも2つの流路20の各々は、屈曲部25を有し、一の流路20(第1流路21)は、少なくとも屈曲部25において、上流側よりも断面径が大きく且つ他の少なくとも一つの流路(第2流路22(及び第3流路23))を取り囲むように設けられていてもよい。
【0096】
本態様によれば、各流路20はその途中で屈曲し、少なくとも当該屈曲部25において、一の流路20(第1流路21)の断面積が上流側よりも拡大した状態で、一の流路20(第1流路21)が他の少なくとも一つの流路(第2流路22(及び第3流路23))を取り囲むことができる。このように屈曲部25において一の流路20が他の少なくとも一つの流路20を取り囲むように拡大することで、一の流路20における圧力損失を大幅に低減できる。
【0097】
[第3の態様]
少なくとも2つの流路20は、第1流路21及び第2流路22を含み、第1流路21及び第2流路22は、屈曲部25よりも上流側では、第1流路21よりも第2流路22の方が、流体が流出する端部(流体流出部27)に近接して配置され、屈曲部25では、第1流路21の屈曲部25の断面径が上流側より大きく且つ第1流路21が第2流路22を取り囲み、屈曲部25より下流側では、第1流路21が第2流路22を取り囲むように延在してもよい。
【0098】
本態様によれば、第1流路21及び第2流路22は上流側では並んで配置可能であり、一の流路(第1流路21)はその屈曲部25において、一の流路(第1流路21)の断面積を他の一つの流路(第2流路22)の断面積よりも大きくし、他の流路(第2流路22)を取り囲むように拡大できる。第1流路21及び第2流路22をこのように配置することで、流体噴射装置10全体のサイズを抑えつつ、屈曲部25における第1流路21の断面積を大きくすることが可能である。また相対的に断面積が大きい流路20の方が、相対的に断面積が小さい流路20よりも曲率を小さくでき、第1流路21及び第2流路22(特に第1流路21)の屈曲部25における圧力損失を効果的に低減できる。なお本態様では、下流方向を基準に複数の流路を上下に配置することができる。
【0099】
[第4の態様]
少なくとも2つの流路20は第1流路21及び第2流路22を含み、第1流路21及び第2流路22は、屈曲部25よりも上流側では、第2流路22よりも第1流路21の方が、流体が流出する端部(流体流出部27)に近接して配置され、屈曲部25では、第1流路21の断面径が上流側より大きく且つ第1流路21が第2流路22を取り囲み、屈曲部25より下流側では、第1流路21が第2流路22を取り囲むように延在してもよい。
【0100】
本態様によれば、第1流路21及び第2流路22は上流側では並んで配置可能であり、一の流路(第1流路21)はその屈曲部25において、一の流路(第1流路21)の断面積を他の一つの流路(第2流路22)の断面積よりも大きくし、他の流路(第2流路22)を取り囲むように拡大できる。第1流路21及び第2流路22をこのように配置することで、流体噴射装置10全体のサイズを抑えつつ、屈曲部25における第1流路21の断面積を大きくすることが可能であり、第1流路21及び第2流路22(特に第1流路21)の屈曲部25における圧力損失を効果的に低減できる。
【0101】
[第5の態様]
第1流路21の断面は、少なくとも屈曲部25より下流側において、線対称の形状を有してもよい。
【0102】
本態様によれば、他の一つの流路(第2流路22)を線対称に取り囲むように一の流路(第1流路21)を設けることができる。ここでいう線対称は、例えば流路の上流側が向かう方向と一致する方向に関して線対称であるケースを含む。このような「他の一つの流路(第2流路22)を線対称に取り囲む一の流路(第1流路21)」の断面形状(線対称形状)は特に限定されず、例えば円環状、三角形状、四角形状或いは他の多角形状等としうる。本態様の構成を採用することで、上流からの流体が下流に向かって対称的に流れるため、流体の流れがスムーズになって圧力損失を効果的に低減できる。
【0103】
[第6の態様]
第1流路21の断面は、少なくとも屈曲部25より下流側において、円環状の形状を有してもよい。
【0104】
本態様によれば、他の一つの流路(第2流路22)を円環状に取り囲むように一の流路(第1流路21)を設けることができる。このように、各流路20に屈曲部25が設けられる場合であっても、下流方向を基準に流路20を上下に配置し、流路20同士の取り囲み構造を線対称(例えば第1流路21の断面形状を円環状の線対称)とすることで、第1流路21の下流側において角部をなくすことが可能であり、流体の流れがスムーズになって圧力損失を効果的に低減できる。
【0105】
[第7の態様]
少なくとも2つの流路20は、直線的に延在する第1流路21及び第2流路22を含んでもよい。
【0106】
本態様のように、第1流路21及び第2流路22が屈曲部を含まない場合にも本発明は適用可能であり、限られたスペースにおいて流路20を効率的に配置しつつ、小流量から大流量までの流体を噴射可能であり、良好な強度を有し且つ圧力損失が小さい流路20を含む流体噴射装置10を実現できる。
【0107】
[第8の態様]
第2流路22を形成する壁部(第2流路壁部32)は、当該第2流路22を形成する壁部(第2流路壁部32)よりも外側に配置される第1流路21を形成する壁部(第1流路壁部31)に対し、保持部(リブ35)を介して接続されてもよい。
【0108】
本態様によれば、他の一つの流路(第2流路22)を、一の流路(第1流路21)を形成する第1流路壁部31の壁面(内壁面)に設けられた保持部(リブ35)によって強固に保持することができる。したがって流体噴射装置10に外力が加えられても、第2流路22は、第1流路21内において安定的に保持される。なお保持部の形態は特に限定されず、例えば、流体の流れ方向と垂直な方向に関する流路断面(断面視)を基準とした場合の上下左右のうちのいずれか一つ又は複数の位置に、流体の流れ方向に関して連続的(一体的)又は非連続的(断続的)に延在する1又は複数の保持部が設けられてもよい。
【0109】
[第9の態様]
第2流路22を形成する壁部(第2流路壁部32)は、2以上の保持部(リブ35)を介し、第1流路21を形成する壁部(第1流路壁部31)に対して接続されてもよい。
【0110】
本態様によれば、複数の保持部(リブ35)を設けることができ、第2流路22をバランス良く保持することができる。なお保持部の形態は特に限定されず、例えば、流体の流れ方向と垂直な方向に関する流路断面(断面視)を基準とした場合の上下左右のうちのいずれか一つ又は複数の位置に、流体の流れ方向に関して連続的(一体的)又は非連続的(断続的)に延在する複数の保持部が設けられてもよい。また複数の保持部は、相互に異なる断面幅(横断面におけるサイズ)を有していてもよいし、相互に同じ断面幅を有していてもよい。
【0111】
[第10の態様]
2以上の保持部(リブ35)は、断面幅が相互に異なる複数の保持部を含んでもよい。
【0112】
本態様によれば、少なくとも2つの保持部(リブ35)が設けられ、流路20の屈曲部25において一の保持部(リブ35)の断面幅を「他の少なくとも一つの流路20(第2流路22(及び第3流路23))」の断面幅よりも大きくし、他の保持部(リブ35)の断面幅を当該一の保持部の幅よりも小さくすることができる。このようにして、2以上の保持部のうち断面幅が相対的に大きい一の保持部によって強度が確保されるので、他の保持部の断面幅を小さくして当該他の保持部により確保される強度を弱くすることができる。これにより、流体噴射装置10の小型化を図ることができる。なお保持部の形態は特に限定されず、例えば、流体の流れ方向と垂直な方向に関する流路断面(断面視)を基準とした場合の上下左右のうちのいずれか一つ又は複数の位置に、流体の流れ方向に関して連続的(一体的)又は非連続的(断続的)に延在する複数の保持部が設けられてもよい。
【0113】
[第11の態様]
保持部(リブ35)は、第2流路22の断面幅よりも大きい断面幅を有する保持部(リブ35)を含んでもよい。
【0114】
本態様によれば、屈曲部25において、保持部(リブ35)の断面幅を第2流路22の断面幅よりも大きくすることができる。このようにすることで、第2流路22を適切に位置決めしつつ、第1流路21に対する第2流路22の相対位置を安定的に定めることができる。なお保持部の形態は特に限定されず、例えば、流体の流れ方向と垂直な方向に関する流路断面(断面視)を基準とした場合の上下左右のうちのいずれか一つ又は複数の位置に、流体の流れ方向に関して連続的(一体的)又は非連続的(断続的)に延在する1又は複数の保持部が設けられてもよい。
【0115】
[第12の態様]
ガスタービンエンジン50は、上記の流体噴射装置10を備え、流体噴射装置10の少なくとも2つの流路20には流体燃料が流される。
【0116】
本態様によれば、流体噴射装置10の大型化を抑えつつ、少流量から大流量までの流体燃料を流体噴射装置10から適切に噴射することができる。したがって、小型化を効果的に図りつつ、流体燃料の様々な流量に柔軟に適応可能なガスタービンエンジン50を提供することができる。
【0117】
[第13の態様]
流体噴射装置10の製造方法は、上記の流体噴射装置10の三次元形状データを特定するステップと、三次元形状データを複数のスライスデータに変換するステップと、複数のスライスデータに基づいて積層造形法により流体噴射装置10を造形するステップと、を含む。
【0118】
本態様によれば、サイズの大型化を抑えつつ、少流量から大流量までの流体を適切に噴射することができる流体噴射装置10を容易且つ高精度に製造することができる。
【0119】
[第14の態様]
積層造形法は、インコネル、コバルトクロム、ニッケル合金、チタン合金及びステンレスのうちの少なくとも一つの粉末を用いてもよい。
【0120】
本態様によれば、高温耐性に優れた流体噴射装置10を製造することができる。
【0121】
[第15の態様]
粉末の平均粒子径は、20マイクロメートル以下であってもよい。
【0122】
本態様によれば、高温耐性に優れた流体噴射装置10を製造することができる。
【0123】
[第16の態様]
流体噴射装置が備える少なくとも2つの流路は、少なくとも一部において断面が変形する流路を含んでいてもよい。
【0124】
本態様によれば、複雑な流路を含む流体噴射装置であっても、確実且つ高精度に流体噴射装置を製造することができる。
【0125】
本発明は、上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形が加えられた各種態様も含みうるものであり、本発明によって奏される効果も上述の事項に限定されない。したがって、本発明の技術的思想及び趣旨を逸脱しない範囲で、特許請求の範囲及び明細書に記載される各要素に対して種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0126】
10 流体噴射装置
10a 流体噴射装置
20 流路
21 第1流路
22 第2流路
23 第3流路
25 屈曲部
26 流体流入部
27 流体流出部
28 上流側流路
29 下流側流路
31 第1流路壁部
32 第2流路壁部
35 リブ
35a 第1リブ
35b 第2リブ
35c 第3リブ
50 ガスタービンエンジン
51 空気供給装置
52 燃焼器
53 タービン
【手続補正書】
【提出日】2022-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの流路を備える流体噴射装置であって、
前記少なくとも2つの流路は、
それぞれ独立して、流体が流入する端部から前記流体が流出する端部まで、前記流路の壁面は滑らかに接続されており、
前記流体が流入する端部では、並んで配置され、
前記流体が流出する端部では、一の流路が他の少なくとも一つの流路を取り囲むように設けられており、
前記少なくとも2つの流路の各々は、屈曲部を有し、
前記一の流路は、少なくとも前記屈曲部において、上流側よりも断面径が大きく且つ他の少なくとも一つの流路を取り囲むように設けられており、
前記少なくとも2つの流路は、第1流路及び第2流路を含み、
前記第1流路及び前記第2流路は、
前記屈曲部よりも上流側では、前記第1流路よりも前記第2流路の方が、前記流体が流出する端部に近接して配置され、
前記屈曲部では、前記第1流路の断面径が上流側より大きく且つ前記第1流路が前記第2流路を取り囲み、
前記屈曲部より下流側では、前記第1流路が前記第2流路を取り囲むように延在する、流体噴射装置。
【請求項2】
前記第1流路の断面は、少なくとも前記屈曲部より下流側において、線対称の形状を有する請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記第1流路の断面は、少なくとも前記屈曲部より下流側において、円環状の形状を有する請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記第2流路を形成する壁部は、当該第2流路を形成する壁部よりも外側に配置される前記第1流路を形成する壁部に対し、保持部を介して接続される請求項1~3のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記第2流路を形成する壁部は、2以上の前記保持部を介し、前記第1流路を形成する壁部に対して接続される請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記2以上の保持部は、断面幅が相互に異なる複数の保持部を含む請求項5に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記保持部は、前記第2流路の断面幅よりも大きい断面幅を有する保持部を含む請求項4~6のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の流体噴射装置を備え、
前記流体噴射装置の前記少なくとも2つの流路には流体燃料が流されるガスタービンエンジン。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の流体噴射装置の三次元形状データを特定するステップと、
前記三次元形状データを複数のスライスデータに変換するステップと、
前記複数のスライスデータに基づいて積層造形法により前記流体噴射装置を造形するステップと、を含む流体噴射装置の製造方法。
【請求項10】
前記積層造形法は、インコネル、コバルトクロム、ニッケル合金、チタン合金及びステンレスのうちの少なくとも1つの粉末を用いる請求項9に記載の流体噴射装置の製造方法。
【請求項11】
前記粉末の平均粒子径は、20マイクロメートル以下である請求項10に記載の流体噴射装置の製造方法。
【請求項12】
前記流体噴射装置が備える前記少なくとも2つの流路は、少なくとも一部において断面が変形する流路を含む請求項9~11のいずれか一項に記載の流体噴射装置の製造方法。