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特開2022-104949多剤耐性腫瘍を治療するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104949
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】多剤耐性腫瘍を治療するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20220705BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20220705BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 31/7052 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61K31/337
A61K38/02
A61K31/7068
A61K31/136
A61K33/24
A61K31/4709
A61K31/7052
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022054325
(22)【出願日】2022-03-29
(62)【分割の表示】P 2020529783の分割
【原出願日】2017-08-08
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520045228
【氏名又は名称】スン・ヤット-セン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】SUN YAT-SEN UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】ホアン・イージュン
(72)【発明者】
【氏名】リウ・ダンヤン
(72)【発明者】
【氏名】パン・ジュンチョン
(72)【発明者】
【氏名】ホゥ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジュウ・ジュウ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多剤耐性(MDR)腫瘍を治療するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】対象でのマイコプラズマによって誘発された多剤耐性(MDR)腫瘍を治療するための医薬組成物であって、単位剤形中に、
1.治療有効量のマイコプラズマの膜タンパク質P37と対象の宿主細胞のアネキシンA2との間の相互作用を遮断する薬剤、
2.治療有効量の化学療法剤、および
3.医薬的に許容される担体、とを含み
該化学療法剤が、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、免疫療法剤、ホルモンまたはホルモン拮抗剤、タキサン、レチノイド、アルカロイド、血管新生阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、標的シグナル伝達阻害剤および生物学的応答調節剤よりなる群から選択され、該MDR腫瘍が、前記化学療法剤の群から選択される、少なくとも2種類の化学療法剤に対して耐性である、医薬組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における多剤耐性腫瘍の治療方法であって、該多剤耐性腫瘍がアルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗薬、免疫療法剤、ホルモンまたはホルモン拮抗剤、タキサン、レチノイド、アルカロイド、血管新生阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、標的シグナル伝達阻害剤および生物学的応答調節剤から選択される少なくとも2種類の化学療法剤に対して耐性があり、治療を必要とする該対象に治療有効量の抗マイコプラズマ剤および/またはマイコプラズマの膜タンパク質P37と該対象の宿主細胞のアネキシンA2との間の相互作用を遮断する薬剤を、化学療法の前に、それと同時に、またはその後に投与する、方法。
【請求項2】
抗マイコプラズマ剤が抗生物質および抗酸化剤から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗生物質が、マクロライド、テトラサイクリンおよびキノロンから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
抗生物質が、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ジョサマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、アセチルスピラマイシン、テリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、チゲサイクリン、シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、オフロキサシンおよびスパルフロキサシンからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
マイコプラズマの膜タンパク質P37と対象の宿主細胞のアネキシンA2との間の相互作用を遮断する薬剤が、P37阻害剤またはアネキシンA2阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
P37阻害剤が、P37タンパク質に対するdsRNA、siRNAおよびshRNAより選択されるアンチセンスオリゴマー、およびP37抗体またはその断片から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アネキシンA2阻害剤が、アネキシンA2タンパク質に対するdsRNA、siRNAおよびshRNAから選択されるアンチセンスオリゴマー、およびアネキシンA2抗体またはその断片から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
P37抗体がポリペプチドA2PPである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
多剤耐性腫瘍が、マイコプラズマによって誘発されたMDR腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
腫瘍が、黒色腫、線維肉腫、肝細胞癌、粘液肉腫、脂肪肉瘤、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮細胞肉腫、リンパ肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫、滑膜腫、中皮腫、鼻咽頭癌、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
化学療法が、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗薬、免疫療法剤、ホルモンまたはホルモン拮抗剤、タキサン、レチノイド、アルカロイド、血管新生阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、標的シグナル伝達阻害剤および生物学的応答調節剤から選択される、1または複数の化学療法剤を投与することによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
化学療法の前に投与がなされる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
単位剤形中に、治療有効量の抗マイコプラズマ剤および/またはマイコプラズマの膜タンパク質P37と対象の宿主細胞のアネキシンA2との間の相互作用を遮断する薬剤と、治療有効量の化学療法剤と、医薬的に許容される担体とを含み、ここで、該化学療法剤が、アルキル化剤、抗生物質、免疫療法剤、ホルモンまたはホルモン拮抗剤、タキサン、レチノイド、アルカロイド、血管新生阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、標的シグナル伝達阻害剤および生物学的応答調節剤から選択される、対象での多剤耐性(MDR)腫瘍を治療するための医薬組成物。
【請求項15】
抗マイコプラズマ剤が抗生物質および抗酸化剤から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
抗生物質が、マクロライド、テトラサイクリンおよびキノロンから選択される、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
抗生物質が、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ジョサマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、アセチルスピラマイシン、テリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、チゲサイクリン、シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、オフロキサシンおよびスパルフロキサシンからなる群より選択される、請求項15に記載の薬物組成物。
【請求項18】
マイコプラズマの膜タンパク質P37と対象の宿主細胞のアネキシンA2との間の相互作用を遮断する薬剤が、P37阻害剤またはアネキシンA2阻害剤である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
P37阻害剤が、P37タンパク質に対するdsRNA、siRNAおよびshRNAから選択されるアンチセンスオリゴマー、およびP37抗体またはその断片から選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
アネキシンA2阻害剤が、アネキシンA2タンパク質に対するdsRNA、siRNAおよびshRNAから選択されるアンチセンスオリゴマー、およびアネキシンA2抗体またはその断片から選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
P37抗体がポリペプチドA2PPである、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
多剤耐性腫瘍が、マイコプラズマによって誘発されたMDR腫瘍である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項23】
腫瘍が、黒色腫、線維肉腫、肝細胞癌、粘液肉腫、脂肪肉瘤、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮細胞肉腫、リンパ肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫、滑膜腫、中皮腫、鼻咽頭癌、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫からなる群より選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項24】
対象がヒトである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項25】
分離剤形中に、治療有効量の抗マイコプラズマ剤および/またはマイコプラズマの膜タンパク質P37と対象の宿主細胞のアネキシンA2との間の相互作用を遮断する薬剤と、治療有効量の化学療法剤とを含み、ここで、該化学療法剤が、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、免疫療法剤、ホルモンまたはホルモン拮抗剤、タキサン、レチノイド、アルカロイド、血管新生阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、標的シグナル伝達阻害剤および生物学的応答調節剤から選択される、対象での多剤耐性(MDR)腫瘍を治療するための医薬キット。
【請求項26】
抗マイコプラズマ剤が、抗生物質および抗酸化剤から選択される、請求項25に記載の医薬キット。
【請求項27】
抗生物質が、マクロライド、テトラサイクリンおよびキノロンから選択される、請求項26に記載の医薬キット。
【請求項28】
抗生物質が、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ジョサマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、アセチルスピラマイシン、テリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、チゲサイクリン、シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、オフロキサシンおよびスパルフロキサシンからなる群より選択される、請求項26に記載の医薬キット。
【請求項29】
マイコプラズマの膜タンパク質P37と対象の宿主細胞のアネキシンA2との間の相互作用を遮断する薬剤が、P37阻害剤またはアネキシンA2阻害剤である、請求項26に記載の医薬キット。
【請求項30】
P37阻害剤が、P37タンパク質に対するdsRNA、siRNAおよびshRNAから選択されるアンチセンスオリゴマー、およびP37抗体またはその断片から選択される、請求項29に記載の医薬キット。
【請求項31】
アネキシンA2阻害剤が、アネキシンA2タンパク質に対するdsRNA、siRNAおよびshRNAから選択されるアンチセンスオリゴマー、およびアネキシンA2抗体またはその断片から選択される、請求項29に記載の医薬キット。
【請求項32】
P37抗体がポリペプチドA2PPである、請求項30に記載の医薬キット。
【請求項33】
多剤耐性腫瘍が、マイコプラズマによって誘発されたMDR腫瘍である、請求項25に記載の医薬キット。
【請求項34】
腫瘍が、黒色腫、線維肉腫、肝細胞癌、粘液肉腫、脂肪肉瘤、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮細胞肉腫、リンパ肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫、滑膜腫、中皮腫、鼻咽頭癌、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫からなる群より選択される、請求項25に記載の医薬キット。
【請求項35】
対象がヒトである、請求項25に記載の医薬キット。
【請求項36】
対象において多剤耐性腫瘍を治療するための医薬組成物またはキットの製造における、抗マイコプラズマ剤、および/またはマイコプラズマの膜タンパク質P37と、対象の宿主細胞のアネキシンA2との間の相互作用を遮断する薬剤の使用であって、ここで該多剤耐性腫瘍が、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、免疫療法剤、ホルモンまたはホルモン拮抗剤、タキサン、レチノイド、アルカロイド、血管新生阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、標的シグナル伝達阻害剤および生物学的応答調節剤から選択される少なくとも2種類の化学療法剤に対して耐性のある、ところの使用。
【請求項37】
抗マイコプラズマ剤が、抗生物質および抗酸化剤から選択される、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
抗生物質が、マクロライド、テトラサイクリンおよびキノロンから選択される、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
抗生物質が、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ジョサマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、アセチルスピラマイシン、テリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、チゲサイクリン、シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、オフロキサシンおよびスパルフロキサシンからなる群より選択される、請求項36に記載の使用。
【請求項40】
マイコプラズマの膜タンパク質P37と対象の宿主細胞のアネキシンA2との間の相互作用を遮断する薬剤が、P37阻害剤またはアネキシンA2阻害剤である、請求項36に記載の使用。
【請求項41】
P37阻害剤が、P37タンパク質に対するdsRNA、siRNAおよびshRNAから選択されるアンチセンスオリゴマー、およびP37抗体またはその断片から選択される、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
アネキシンA2阻害剤が、アネキシンA2に対するdsRNA、siRNAおよびshRNAから選択されるアンチセンスオリゴマー、およびアネキシンA2抗体またはその断片から選択される、請求項40に記載の使用。
【請求項43】
P37抗体がポリペプチドA2PPである、請求項41に記載の使用。
【請求項44】
多剤耐性腫瘍が、マイコプラズマによって誘発されたMDR腫瘍である、請求項36に記載の使用。
【請求項45】
腫瘍が、黒色腫、線維肉腫、肝細胞癌、粘液肉腫、脂肪肉瘤、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮細胞肉腫、リンパ肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫、滑膜腫、中皮腫、鼻咽頭癌、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫から選択される、請求項36に記載の使用。
【請求項46】
対象がヒトである、請求項36に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多剤耐性腫瘍を治療するための方法および組成物に関するものである。いくつかの態様では、本発明は、対象に対して多剤耐性腫瘍(特にマイコプラズマによって誘発された多剤耐性腫瘍)を治療するための本明細書で特定される抗マイコプラズマ剤/ブロッカーの応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多剤耐性(MDR)は、構造のおよびメカニズム的に無関係ないくつかの薬物にさらされた癌細胞の生存の主な要因である。放射線療法と化学療法自体は、癌細胞のMDRを誘発することが知られているが、癌のMDRにおける他の環境因子(生物学的因子を含む)の機能はまだ解明されていない。
【0003】
マイコプラズマは、上皮組織および体腔(例えば、尿道、消化管や気道)に広く存在している最小の原核微生物である。マイコプラズマは、多くの種類のヒト癌(例えば、肺癌、胃癌、結腸癌、肝細胞癌)でも検出されており、主に腫瘍形成、上皮間葉移行、転移および浸潤に影響を与えることが知られている。最近の研究により、マイコプラズマ感染が癌細胞のヌクレオシド類似体に対する薬剤耐性をもたらすことが示されている。しかしながら、マイコプラズマが、より広い範囲の細胞毒性損傷に対する腫瘍細胞の感受性に影響を与えるかどうかはまだ検討されていない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様では、対象に対して多剤耐性(MDR)腫瘍を治療するための方法を提供し、そのうち、当該多剤耐性腫瘍は少なくとも2種類の化学療法剤に薬剤耐性を有する。当該方法は、化学療法の前、その同時、またはその後に、治療を必要とする対象に対して治療有効量の抗マイコプラズマ剤および/またはマイコプラズマの膜タンパク質P37と当該対象の宿主細胞のアネキシンA2(Annexin A2)との間の相互作用を遮断する薬剤を投与することを含む。
【0005】
別の態様では、本発明は、対象に対して多剤耐性(MDR)腫瘍を治療するための医薬組成物を提供し、それは、単位剤形で、治療有効量の抗マイコプラズマ剤および/またはマイコプラズマの膜タンパク質P37と当該対象の宿主細胞のアネキシンA2との間の相互作用を遮断する薬剤と、治療有効量の化学療法剤と、薬学的に許容されるベクターとを含み、そのうち、当該化学療法剤は、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗薬、免疫療法剤(immunotherapy)、ホルモンまたはホルモン拮抗剤、タキサン、レチノイド、アルカロイド、血管新生阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、標的シグナル伝達阻害剤および生物学的応答調節剤から選択される。
【0006】
別の態様では、本発明は、対象に対して多剤耐性(MDR)腫瘍を治療するための医薬キットを提供し、それは、分離剤の形で、治療有効量の抗マイコプラズマ剤および/またはマイコプラズマの膜タンパク質P37と当該対象の宿主細胞のアネキシンA2との間の相互作用を遮断する薬剤と、治療有効量の化学療法剤とを含み、そのうち、当該化学療法剤は、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗薬、免疫療法剤、ホルモンまたはホルモン拮抗剤、タキサン、レチノイド、アルカロイド、血管新生阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、標的シグナル伝達阻害剤および生物学的応答調節剤から選択される。
【0007】
別の態様では、本発明は、対象に対して多剤耐性(MDR)腫瘍を治療するための医薬組成物またはキットの調製における、抗マイコプラズマ剤および/またはマイコプラズマの膜タンパク質P37と対象の宿主細胞のアネキシンA2との間の相互作用を遮断する薬剤の適用を提供し、そのうち、当該多剤耐性腫瘍は、少なくとも2種類の化学療法剤に薬剤耐性がある。
【0008】
本発明の一つ以上の態様では、マイコプラズマの膜タンパク質P37と対象の宿主細胞のアネキシンA2との相互作用を遮断する薬剤は、P37阻害剤またはアネキシンA2阻害剤である。いくつかの実施形態では、P37阻害剤は、アンチセンスオリゴマー(それはP37タンパク質に対するdsRNA、siRNAおよびshRNAから選択される)およびP37抗体またはその断片から選択される。いくつかの実施形態では、アネキシンA2阻害剤は、アンチセンスオリゴマー(それはアネキシンA2タンパク質に対するdsRNA、siRNAおよびshRNAから選択される)およびアネキシンA2抗体またはその断片から選択される。いくつかの実施形態では、P37抗体はポリペプチドA2PPである。
【0009】
本発明の以下の詳細な説明を読むことにより、本発明の一つ以上の態様や特徴が容易に認識および理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】肝癌細胞に対する抗マイコプラズマ(anti-pcytoplasma)抗生物質の細胞毒性効果および抗マイコプラズマ効果。(A)図は、HCC97L/Hep3B細胞に対するAZI/MXFの細胞毒性効果(×200; bar、 50 μm)をそれぞれ示し、MTT分析は、それぞれ濃度を高めたAZI/MXFで処理したHCC97L/Hep3Bの細胞生存率を示す。(B)qPCRを使用して測定された相対マイコプラズマDNAコピー数は、AZI/MXFでHCC97L、Hep3BおよびPLC/PRF/5細胞を3、5または7日間処理した抗マイコプラズマ効果を示す。エラーバーは、3回繰り返して実行された3つの独立した試験における代表的な試験のSDを示す。対応のある両側t検定(paired two-tailed student’s t-test)を用いて統計的有意性を判定し、対照群と比較して、**** P <0.0001、*** P <0.001、*** P <0.01、* P <0.05。
【0011】
図2】異なる化学療法薬を単独使用し、または抗マイコプラズマ抗生物質が存在する場合に処理した肝癌細胞の細胞生存率。特定濃度のMXF/AZI のCDDP、GEMおよびMXがあるなしの場合で処理したHCC97L(A/B/CおよびD/E/F)、Hep3B(G/HおよびI/J)およびPLC/PRF/5細胞(K/L/MおよびN/O/P)の細胞生存率。エラーバーは、3回繰り返して実行された3つの独立した試験における代表的な試験のSDを示す。統計的検定は、追加の二乗およびFテストによってlogEC50値を比較することにより実行される。化学療法薬を単独使用する対照と比較して、**** P <0.0001、*** P <0.001、** P <0.01、* P <0.05。
【0012】
図3】HCC97Lの化学療法薬への感受性に対するA2PPの効果。(A、 BおよびC)GEMを単独使用する場合、MXFの存在下でGEMを使用する場合、またはGEMと濃度を高めたA2PPと共に使用して処理したHCC97L細胞の細胞生存率。(D)MXを単独使用し、MXFの存在下でMXを使用し、またはMXと160 μMのA2PPと共に使用して処理したHCC97L細胞の細胞生存率。統計的検定は、追加の二乗およびFテストによってlogEC50値を比較することにより実行される。各群と比較して、**** P <0.0001、*** P <0.001、** P <0.01、* P <0.05。(E)異なる濃度のA2PPまたは溶媒DMSOで72 h処理したHCC97L細胞の細胞生存率(×200; bar、 50 μm)。対応のある両側t検定を用いて統計的有意性を判定する。エラーバーは、3回繰り返して実行された3つの独立した試験における代表的な試験のSDを示す。
【0013】
図4】MXF処理があるなしのABCトランスポーターファミリータンパク質の発現と細胞内位置の変化。(A)処理なしの対照と比較して、MXFで7日間処理したHCC-97L細胞におけるABCB1、ABCC1およびABCG2のタンパク質発現。対応のない両側t検定を用いることにより統計的有意性を判定する。エラーバーは、3回繰り返して実行された3つの独立した試験における代表的な試験のSDを示す。MXFで7日間処理したHCC-97L細胞におけるABCB1 (B)、ABC1 (C)およびABCG2 (D)または処理しない対照の細胞内位置。ZO-1は膜(×400; bar、 100μm)を定義するために使用される。
【0014】
図5】鼻咽頭癌細胞に対する抗マイコプラズマ抗生物質の細胞毒性効果および抗マイコプラズマ効果。(A)図は、CNE1/CNE2/HONE1/SUNE1細胞に対するMXFの細胞毒性効果 (×100; bar、 100μm)を示し、(B) MTT分析は、3 μg/mL MXFで処理したCNE1/CNE2/HONE1/SUNE1細胞の細胞生存率を示す。(C)qPCRを使用して測定した相対マイコプラズマDNAコピー数は、MXFでCNE1/CNE2/HONE1/SUNE1細胞を7日間処理した抗マイコプラズマ効果を示す。エラーバーは、3回繰り返して実行された3つの独立した試験における代表的な試験のSDを示す。対応のある両側t検定を用いて統計的有意性を判定し、対照群と比較して、*** P <0.001、*** P <0.01、* P <0.05。
【0015】
図6】異なる化学療法薬を単独使用し、またはMXFの存在下で処理したNPC細胞株の細胞生存率。特定濃度のMXFの5-FU/CDDP/MXがあるなしの場合で処理したCNE1 (AおよびB)、CNE2 (C、 DおよびE)、HONE1 (F、 GおよびH) およびSUNE1 (IおよびJ)の細胞生存率。エラーバーは、3回繰り返して実行された3つの独立した試験における代表的な試験のSDを示す。統計的検定は、追加の二乗およびFテストによってlogEC50値を比較することにより実行され、そこで、両側t検定を用いた(A)を除く。化学療法薬を単独使用する対照と比較して、**** P <0.0001、*** P <0.001、** P <0.01、* P <0.05。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
用語「一」または「一つ」の実体は、当該実体の一つ以上を指すことに注意すべきであり、例えば、「抗マイコプラズマ剤」は、一つ以上の抗マイコプラズマ剤を表すと理解される。従って、「一」(または「一つ」)、「一つまたは複数」および「少なくとも一つ」という用語は、本明細書で互換的に使用される。
【0017】
本明細書で使用される「治療」という用語は、癌の進行や癌の多剤耐性の発生などの望ましくない生理学的変化または病症を予防または遅延(軽減)することを目的とする治療的処理および予防的または防護的措置を指す。有益または望ましい臨床結果は、検出可能または検出不能の症状寛解、疾患の範囲の縮小、疾患の状態の安定(すなわち、悪化しない)、疾患の進行の遅延または減速、疾患状態の改善または軽減や寛解(部分的または全部)を含むが、これらに限定されない。「治療」は、治療なしの予想生存期間より生存期間を延長する意味もあるのであろう。治療を必要とする対象には、既に当該疾患または病症を患っている対象、および当該疾患または病症を患いやすい対象、または当該疾患または病症を予防する対象が含まれる。
【0018】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」は、診断、予後または治療を必要とするあらゆる対象、特に哺乳動物対象を指す。哺乳動物対象は、例えば、犬、猫、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、牛、酪農牛などの、ヒト、家畜、農場の動物および動物園の動物、スポーツ動物またはペットを含む。本明細書の対象について、好ましくはヒトである。
【0019】
本明細書で使用される「治療を必要とする患者に対して」または「治療を必要とする対象」という語句は、例えば予防および/または治療のために、本発明で使用される抗マイコプラズマ剤または組成物/キットの投与による利益を得る哺乳動物対象などの対象を含む。
【0020】
本明細書で使用される「多剤耐性腫瘍」、「多重薬剤耐性腫瘍」、「MDR腫瘍」、「多剤に対して薬剤耐性を有する腫瘍」または「薬剤耐性腫瘍」などの語句は、当該化学療法によってその症状が改善、寛解、軽減または治療されないように、一つ以上の化学療法薬を用いた治療に対して非常に低い感受性を示す腫瘍または癌を指す。いくつかの実施形態では、本明細書で使用されるMDR腫瘍は、少なくとも2種類の治療メカニズムの互いに異なる化学療法薬に薬剤耐性がある。いくつかの実施形態では、本明細書で使用されるMDR腫瘍は、少なくとも2種類の化学療法剤に薬剤耐性があり、当該化学療法薬剤は、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗薬、免疫療法剤、ホルモンまたはホルモン拮抗剤、タキサン、レチノイド、アルカロイド、血管新生阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、標的シグナル伝達阻害剤および生物学的応答調節剤から選択される。多剤耐性腫瘍は、化学療法薬による治療に対して原発性薬剤耐性を有する腫瘍であってもよい。代わりに、多剤耐性腫瘍は、非原発性薬剤耐性の腫瘍であってもよいが、当該化学療法薬の長期投与により腫瘍細胞内の遺伝子が突然変異したり、他の理由により薬剤耐性があるため、化学療法薬に対する感受性がなくなる。本発明において、薬剤耐性腫瘍は、化学療法薬の治療に対して薬剤耐性を示すあらゆるの腫瘍であってもよいが、特にこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、多剤耐性腫瘍は、マイコプラズマによって誘発されたMDR腫瘍であり、これは、当該腫瘍内のMDRが少なくとも部分的に、マイコプラズマ感染によって誘発、媒介され、または他の方法でそれに関連していることを意味する。
【0021】
本明細書で使用される「腫瘍」という用語は、制御不能に成長する(すなわち、過剰増殖性疾患)形質転換細胞を含む悪性組織を指す。腫瘍には、白血病、リンパ腫、骨髄腫、形質細胞腫など、および固形腫瘍が含まれる。本発明に従って治療できる固形腫瘍の例には、黒色腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍(Ewing’s tumor)、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞性腺癌、骨髄性癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌、ウィルムス腫瘍(Wilms’ tumor)、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫などの肉腫および癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
本発明で使用される「治療有効量」または「薬学的有効量」という用語は、臨床的に顕著な効果を発揮できる各活性成分の量を指す。調製方法、投与方法、患者の年齢、体重、性別、病状、食事、投与時間、投与間隔、投与経路、排泄率、反応感度などの要因に応じて、さまざまな方法で単回投与用の抗マイコプラズマ剤の薬学的有効量を決定することができる。例えば、単回投与用の抗マイコプラズマ剤の薬学的有効量は、0.001~100 mg/kgまたは0.02~10 mg/kgの範囲内であってもよいが、これらに限定されない。単回投与用の薬学的有効量は、単位剤形の単一製剤として調製されてもよく、または適切に分離された剤形で調製されてもよく、または複数回投与容器に収容されるように調製されてもよい。
【0023】
本明細書で使用される「抗マイコプラズマ剤」は、マイコプラズマ感染の治療に有効な薬剤であり、抗生物質および抗酸化剤を含む。マイコプラズマ感染の治療には、多くの異なる抗生物質が使用されている。 マクロライド類(例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ジョサマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、アセチルスピラマイシンおよびテリスロマイシン)、テトラサイクリン類(例えば、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリンおよびチゲサイクリン)は、マイコプラズマ感染の治療に使用できる。いくつかの実施形態では、キノロン類(例えば、シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、オフロキサシン、およびスパフロキサシン)も、良好な抗マイコプラズマ活性を有する。抗酸化剤(例えば、グルタチオン)は、非特定宿主免疫の強化効果および特定の抗レトロウイルスまたは抗マイコプラズマ効果を有するかもしれない。従って、上記の例示的な薬物のいずれか、およびヒトのマイコプラズマ感染を治療するための他の既知の薬物は、本方法において抗マイコプラズマ剤として使用することができる。
【0024】
本明細書で使用される「化学療法」という用語は、標準的な化学療法レジメンの一部として一つ以上の抗癌剤(化学療法剤)を使用する癌治療のカテゴリーである。化学療法は、治癒の目的で(ほとんどの場合、薬物の併用を伴う)投与し、または寿命を延ばすか症状を軽減する目的で投与することができる(緩和化学療法)。化学療法は、内科腫瘍学と呼ばれる癌の薬物療法を専門とする医学分野の主要なカテゴリーの一つである。
【0025】
本明細書で使用される化学療法という用語は、ホルモン療法および標的療法を含むことを意図する。重要なのは、薬物の使用(化学療法、ホルモン療法または標的療法のいずれか)は、血流に導入され、原則として体内のあらゆる解剖学的部位で癌を解決できるため、癌の体系的治療を構成する。体系的治療は一般に、癌の局所療法(すなわち、その有効性は、それが適用される解剖学的領域の治療に限定される)を構成する他の方式(例えば、放射線療法、手術および/または温熱療法(hyperthermia therapy))と組み合わせて使用される。
【0026】
本発明において、化学治療は、以下から選択される一つ以上の化学療法剤を投与することにより実行される:アルキル化剤であって、アドゼレシン、アルトレタミン(acltretamine)、ビゼレシン、ブスルファン、カルボプラチン、カルボキノン、カルムスチン、クロラムブシル(chlorambucil)、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、エストラムスチン、フォテムスチン、ヘプタンスルホンアミド(hepsulfam)、イホスファミド、インプロスルファン、イロフォーフェン、ロムスチン、メクロレタミン(mechlorethamine)、メルファラン、オキサリプラチン、ピポスルファン、スムスチン、ストレプトゾトシン、テモゾロミド、チオテパおよびトレスルファンを含むが、これらに限定されない;抗生物質であって、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノウビシン、アドリアマイシン、エピルビシン、イダルビシン、メノガリル、マイトマイシン、ミトキサントロン、ネオカルジノスタチン(neocarzinostatin)、ペントスタチンおよびプリカマイシンを含むが、これらに限定されない;代謝拮抗薬であって、アザシチジン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン(floxuridine)、フルダラビン、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、フトラフル(ftorafur)、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、チオプリン、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、チオグアニン、およびトリメトレキサートを含むが、こられらに限定されない;免疫療法剤であって、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ガリキシマブ(galiximab)、ゲムツズマブ、パニツムマブ、パーツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、90 Yイブリツモマブチウキセタン(90 Y ibritumomab tiuxetan)を含むが、これらに限定されない;ホルモンまたはホルモン拮抗剤であって、アナストロゾール、アンドロゲン、エチルアミド、ジエチルスチルベストロール、エキセメスタン、フルタミド、フルベストラント、ゴセレリン、イドキシフェン、レトロゾール、ロイプロリド、メゲストロール(magestrol)、ラロキシフェン、タモキシフェンおよびトレミフェンを含むが、これらに限定されない;タキサンであって、DJ-927、ドセタキセル、TPI 287、パクリタキセルおよびDHA-パクリタキセルを含むが、これらに限定されない;レチノイドであって、アリトレチノイン、ベザロチン、フェンレチニド、イソトレチノインおよびトレチノインを含むが、これらに限定されない;アルカロイドであって、エトポシド、ホモハリントニン、テニポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンを含むが、これらに限定されない;血管新生阻害剤であって、AE-941(GW786034、 Neovastat)、ABT-510、2-メトキシエストラジオール、レナリドマイドおよびサリドマイドを含むが、これらに限定されない;トポイソメラーゼ阻害剤であって、アムサクリン、edotecarin、イキサテカン、イリノテカン(c活性代謝物SN-38(7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン)とも呼ばれる)、ルビテカン、トポテカンおよび9-アミノカンプトテシンを含むが、これらに限定されない;キナーゼ阻害剤であって、エルロチニブ、ゲフィチニブ、flavopiridol、メシル酸イマチニブ、ラパチニブ、ソラフェニブ、スニチニブリンゴ酸塩、AEE-788、AG-013736、AMG706、AMN107、BMS-354825、BMS-599626、UCN-01(7-ヒドロキシスタウロスポリン)、ベムラフェニブ、ダブラフェニブおよびワタラニを含むが、これらに限定されない;標的シグナル伝達阻害剤であって、ボルテゾミブ、ゲルダナマイシンおよびラパマイシンを含むが、これらに限定されない;生物学的応答調節剤であって、イミキモド、α-インターフェロンおよびインターロイキン-2を含むが、これらに限定されない;および他の化学治療であって、イミキモド、インターフェロン-αおよびインターロイキン-2を含むが、これらに限定されない;および他の化学療法剤であって、3-AP(3-アミノ-2-カルボキシアルデヒドチオセミ尿素)、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブリオスタチン-1、シレンギチド、E7389、イクサベピロン、カルバジン、スリンダク、チシロリムス、ティピファルニブ、シレンギチド、E7389、イサピロン、メチルベンジルヒドラジン、スリンダク、シロリムス脂質、チピファルニブを含むが、これらに限定されない。本明細書で特定される抗マイコプラズマ剤またはブロッカーを使用せずに治療すると、本発明によって治療される腫瘍は、上記の化学療法剤の中の一つまたは複数に対する薬剤耐性を示す。本発明の抗マイコプラズマ剤またはブロッカーの投与は、化学療法剤の中の一つまたは複数に対する腫瘍の反応を増強または感作する。
【0027】
本明細書で使用される「マイコプラズマの膜タンパク質P37と宿主細胞のアネキシンA2との間の相互作用を遮断する薬剤」または「ブロッカー」と略称される語句は、マイコプラズマのP38タンパク質と対象のアネキシンA2との間の相互作用を阻害、阻害、低減、干渉または排除する薬剤を指す。これは、P37阻害剤またはアネキシンA2阻害剤によって達成できる。いくつかの実施形態では、P37阻害剤は、アンチセンスオリゴマーから選択され、当該アンチセンスオリゴマーは、P37タンパク質に対するdsRNA、siRNAおよびshRNA、および本発明の実施例で使用されるポリペプチドA2PPなどのP37抗体またはその断片から選択される。望ましくは、アネキシンA2阻害剤も適切であり、アンチセンスオリゴマーから選択されてもよく、当該アンチセンスオリゴマーは、アネキシンA2タンパク質に対するdsRNA、siRNAおよびshRNA、およびアネキシンA2抗体またはその断片から選択される。
【0028】
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、あらゆる長さのヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド)の重合形態を指す。これらの用語は、一本鎖、二本鎖または三本鎖DNA、ゲノムDNA、cDNA、ゲノムRNA、mRNA、DNA-RNAハイブリッドまたはプリンとピリミジン塩基を含むポリマー、または他の天然の、化学的および生化学的に修飾され、非天然または誘導されたヌクレオチド塩基を含む。ポリヌクレオチドの骨格は、可包含糖およびリン酸基(一般に、RNAまたはDNAに見られる)、または修飾または置換された糖またはリン酸基を含んでもよい。代わりに、ポリヌクレオチドの骨格は、合成されたサブユニット(例えば、ホスホルアミデート)のポリマーを含んでもよく、従って、オリゴデオキシヌクレオシドのホスホルアミデート(P-NH2)または混合したホスホルアミデート-ホスホジエステルオリゴマーであってもよい。
【0029】
ほかに、本発明はさらに、アンチセンスオリゴマーおよび類似物質がエンコードされたP37タンパク質またはアネキシンA2タンパク質の核酸分子を調節するための機能または効果を利用する。本明細書で使用されるP37タンパク質またはアネキシンA2阻害剤は、P37またはアネキシンA2の遺伝子の転写、P37またはアネキシンA2のmRNAの加工または翻訳、またはP37タンパク質またはアネキシンA2タンパク質の安定性を干渉することによって、P37タンパク質またはアネキシンA2の発現された分子を遮断または低減するように定義される。当該阻害剤は、MDR腫瘍細胞におけるATF3発現経路のカスケードを阻害するあらゆる分子であってもよい。これは、一つ以上のエンコードされたP37タンパク質またはアネキシンA2の核酸分子と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを提供することによって達成される。本明細書で使用される「標的核酸」および「エンコードされたタンパク質の核酸分子」という用語は、使いやすさのため、エンコードされたタンパク質のDNA、そのようなDNAから転写され、または新たに合成されたRNA(前の-mRNAおよびmRNAまたはその一部を含む)、およびそのようなRNAから誘導されたcDNAを含む。その標的核酸とハイブリダイズする本発明のオリゴマーは、通常「アンチセンス」と呼ばれる。従って、本発明のいくつかの好ましい実施形態の実施に含まれると考えられる好ましいメカニズムは、本明細書で「アンチセンス阻害」と呼ばれる。そのようなアンチセンス阻害は、一般に、オリゴヌクレオチド鎖またはセグメントの水素結合によるハイブリダイゼーションに基づくので、少なくとも一つの鎖またはセグメントが切断され、分解され、または他の方法で動作不能にされる。これに関して、現在、標的特異的核酸分子およびそのようなアンチセンス阻害に用いられる機能は好ましい。
【0030】
干渉されるDNAの機能は、複製および転写を含んでもよい。例えば、複製および転写は、内因性細胞テンプレート、ベクター、プラスミド構築物またはその他に基づいてもよい。干渉されるRNAの機能は、以下の機能を含んでもよく、例えば、当該RNAからタンパク質翻訳部位に移動し、当該RNAからRNA合成部位から離れた細胞内の部位に移動し、当該RNAからタンパク質を翻訳し、当該RNAをスプライスして一つ以上のRNA種を生成し、および当該RNAの触媒活性または複合体形成に関する機能である(当該RNAが関与し、または当該RNAによって促進される)。そのように標的核酸機能を干渉する好ましい結果の一つは、阻害剤発現の調節である。本発明の文脈において、「調節」および「発現の調節」とは、エンコードされた遺伝子の核酸分子(例えば、DNAまたはRNA)の量またはレベルが低減することを指す。mRNAは一般に、好ましい標的核酸である。
【0031】
本発明の文脈において、「ハイブリダイゼーション」とはオリゴマーの相補鎖のペアリングを指す。本発明において、好ましいペアリングメカニズムは、オリゴマー鎖の相補的ヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基(核酸塩基)との間の水素結合に関わり、それはWatson-Crick、HoogsteenまたはリバースHoogsteen水素結合であってもよい。例えば、アデニンおよびチミジンは、水素結合を形成することによってペアリングする相補的な核酸塩基である。ハイブリダイゼーションは、様々な状況で発生する。
【0032】
標的核酸へのオリゴマーの結合が当該標的核酸の正常な機能を干渉して活性の損失を引き起こす場合、アンチセンスオリゴマーが特異的にハイブリダイズし、かつ望ましい特異的な結合の条件で(すなわち、体内試験または治療の場合の生理学的条件で、および体外試験の場合の試験条件で)、アンチセンスオリゴマーと非標的核酸配列の非標的核酸配列との非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性が存在する。
【0033】
本分野で理解されるように、アンチセンスオリゴマーの配列は、それと特異的にハイブリダイズできる標的核酸の配列に100%相補する必要がない。なお、オリゴヌクレオチドは、一つ以上のセグメントでハイブリダイズすることができるので、中間または隣接するセグメントでハイブリダイゼーションイベント(例えば、ループ構造またはヘアピン構造)に関与しない。好ましくは、本発明のアンチセンス化合物は、標的核酸内の標的領域と、少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%の配列相補性を有し、より好ましくは、少なくとも90%の配列相補性を有し、さらに好ましくは、それらの標的とする標的核酸配列内の標的領域と少なくとも95%、または少なくとも99%の配列相補性を有する。例えば、そこで、アンチセンスオリゴマーの20個の核酸塩基中の18個が、標的領域と相補するため、特異的にハイブリダイズするアンチセンス化合物は90%の相補性を表す。この例では、残りの非相補的核酸塩基は、相補的核酸塩基とクラスター化または分散することができ、かつ互いに隣接する必要も相補的核酸塩基に隣接する必要もない。従って、核酸塩基の長さが18個で、4個(四つ)の非相補的核酸塩基(それは標的核酸と完全に相補する二つの領域の両側に位置する)を有するアンチセンスオリゴマーは、標的核酸と77.8%の全体的な相補性を有するため、本発明の範囲に含まれる。当技術分野で知られているBLASTプログラム(基本的なローカル配列検索ツール)およびPowerBLASTプログラムを使用して、従来通り、アンチセンス化合物と標的核酸領域との相補性のパーセントを決定することができる。
【0034】
なお、「非必須」のアミノ酸領域での保存的置換または変化を引き起こすヌクレオチドまたはアミノ酸の置換、欠失または挿入を行うことができる。例えば、一つ以上の単独なアミノ酸置換、挿入または欠失(例えば、一個、二個、三個、四個、五個、六個、七個、八個、九個、十個、十五個、二十個またはより多くの単独なアミノ酸置換、挿入または欠失)に加えて、特定のタンパク質に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、開始配列と同じにすることができる。いくつかの実施形態では、特定のタンパク質に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、開始配列に対して1~5個、1~10個、1~15個または1~20個の単独なアミノ酸置換、挿入または欠失を有する。
【0035】
本発明の文脈において、「オリゴヌクレオチド」という用語は、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)またはその模倣物、キメラ、類似体およびホモログのオリゴマーまたはポリマーを指す。当該用語は、天然に存在する核酸塩基、糖および共有ヌクレオシド間(骨格)結合からなるオリゴヌクレオチドと、類似の機能を有する非天然部分のオリゴヌクレオチドとを含む。例えば、細胞取り込みの強化、標的核酸に対する親和性の強化、およびヌクレアーゼの存在下での安定性の増加などの望ましい特性により、そのように修飾され、または置換されたオリゴヌクレオチドは、一般に、天然型よりも優れている。
【0036】
本発明の一つ以上の態様では、多剤耐性腫瘍は、マイコプラズマによって誘発されたMDR腫瘍である。いくつかの実施形態では、前記腫瘍は、黒色腫、線維肉腫、肝細胞癌、粘液肉腫、脂肪肉瘤、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫、滑膜腫、中皮腫、鼻咽頭癌、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫から選択される。
【0037】
方法および治療法
本発明の一態様は、対象に対して多剤耐性腫瘍を治療するための方法に関するものである。当該方法は、化学療法の前、その同時またはその後に、必要のある対象に対して治療有効量の抗マイコプラズマ剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、当該方法は、化学療法の前、その同時、またはその後に、必要のある対象に対してマイコプラズマの膜タンパク質P37と対象の宿主細胞のアネキシンA2との間の相互作用を遮断する治療有効量の薬剤を投与することを含む。
【0038】
本方法では、抗マイコプラズマ剤/ブロッカーは、化学療法と組み合わせて投与される。一実施形態では、抗マイコプラズマ剤/ブロッカーは、化学療法の前に投与される。別の実施形態では、抗マイコプラズマ剤/ブロッカーは、化学療法と同時に投与される。別の実施形態では、抗マイコプラズマ剤/ブロッカーは、化学療法の後に投与される。
【0039】
いくつかの実施形態では、抗マイコプラズマ剤/ブロッカーは、経口投与される。いくつかの実施形態では、抗マイコプラズマ剤/ブロッカーは、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、経皮または皮内注射)投与される。
【0040】
いくつかの実施形態では、MDR腫瘍を治療する方法は、腫瘍の進行および/または腫瘍によって引き起こされた疾患の発症を防ぐ。従って、いくつかの実施形態では、本発明は、MDR腫瘍の進行および/またはMDR腫瘍によって引き起こされた疾患の発症を防ぐための方法を提供し、当該方法は、必要のある対象に対して有効量の抗マイコプラズマ薬物/ブロッカーを投与することを含む。いくつかの実施形態では、当該方法は、当該腫瘍に関連する症状の発症、進行および/または再発を阻止できるように、MDR腫瘍を治療することを含む。いくつかの実施形態では、本発明は、対象に対してMDR腫瘍に関連する症状を阻止するための方法を提供し、必要のある対象に対して有効量の抗マイコプラズマ剤/ブロッカーを投与することを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、予防の目的に使用することができる。例えば、一実施形態では、対象は、腫瘍におけるマイコプラズマ感染として特定される。対象は、化学療法に対する多剤耐性の危険に晒されており、またはその危険に晒される可能性がある。多剤耐性の出現を阻止するために、当該対象に対して本発明の抗マイコプラズマ剤/ブロッカーを投与して、腫瘍におけるマイコプラズマ感染を排除する。市場で広く使用されているPCRに基づく技術などの、当技術分野で知られている技術によって、対象の腫瘍におけるマイコプラズマ感染を特定することができる。
【0042】
本発明はさらに、対象に対して多剤耐性腫瘍(特に、マイコプラズマによって誘発された多剤耐性腫瘍)を治療するための医薬組成物または医薬キットの調製における、本発明で特定される抗マイコプラズマ剤/ブロッカーの用途を推測する。本発明はそれ以上さらに、対象に対して多剤耐性腫瘍(特に、マイコプラズマによって誘発された多剤耐性腫瘍)を治療するための本発明で特定される抗マイコプラズマ剤/ブロッカーの用途を推測する。
【0043】
組成物/キット
本発明の別の態様は、治療有効量の本発明の抗マイコプラズマ剤/ブロッカーと、治療有効量の一つ以上の化学療法剤と、薬学的に許容されるベクターと、を含む単位剤形の医薬組成物を提供する。当該医薬組成物は、対象に対してMDR腫瘍を治療することを旨とする。抗マイコプラズマ剤/ブロッカーおよび一つ以上の化学療法剤を薬学的に許容される適切なベクターまたは賦形剤に調製することができる。通常の保管および使用条件下では、これらの製剤は、微生物の増殖を防ぐための防腐剤を含んでもよい。注射用途に適した薬物形態は、滅菌水溶液または、滅菌注射溶液または分散体を一時的に調製するための分散剤および滅菌粉末を含む。すべての場合では、当該剤形は、滅菌しなければならず、かつ、注射しやすい程度に流動性でなければならない。それは、製造および保管の条件下で安定している必要があり、かつ微生物(細菌および真菌など)の汚染から保護されて保存されなければならない。
【0044】
ベクターは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールや液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物および/または植物油などを含む溶剤または分散媒であってもよい。例えば、コーティング(例えば、レシチン)を使用することによって、分散液の場合に所望の粒子サイズを維持することができ、また、界面活性剤を使用することによって、適切な流動性を維持することができる。様々な抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、tert-ブチルアルコール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)を使用して、生物学的効果を防ぐことができる。多くの場合に、より好ましくは、例えば、糖や塩化ナトリウムなどの等張剤を含む。吸収を遅らせる試薬(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の組み合わせを使用することにより、注射可能な組成物の吸収を延長することができる。
【0045】
例えば、水溶液での非経口投与の場合、必要に応じて、当該溶液を適切に緩衝すべき、また、最初に十分な生理食塩水またはグルコースで当該液体希釈溶液を等張させる。これらの水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内、および腹腔内投与に特に適している。これに関して、本発明によれば、当業者は、採用できる滅菌水性媒体を理解する。例えば、一回の投与量を1 mLの等張NaCl溶液に溶解し、または1000 mLの皮下注射液に加え、または推奨される注入部位に注射することができる(例えば、「 Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版、第1035-1038頁および1570-1580をご参照)。治療される対象の病状に従って、投与量に少々変更することが当然である。いかなる場合にも、投与の責任者は、個々の対象に対する適切な投与量を決定する。なお、ヒトへの投与の場合、製剤は、FDA事務所の生物学的基準で要求される滅菌性、発熱性、一般的な安全性および純度基準を満たす必要がある。
【0046】
必要に応じて、適正な溶剤において、必要量の活性化合物を上記で挙げられた様々な他の成分と混合し、ろ過および滅菌することによって、滅菌注射溶液を調製する。一般に、様々な滅菌活性成分を滅菌溶媒に混合することによって、分散体を調製し、前記滅菌溶媒は、基本的な分散媒および上記で挙げられた所望の他の成分を含む。滅菌注射溶液の滅菌粉末を調製する場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、それは、以前の滅菌ろ過溶液から活性成分および他の所望のあらゆる成分の粉末を生成する。
本明細書に開示される組成物は、中性または塩の形態に調製してもよい。薬学的に許容される塩は、無機酸(例えば、塩酸またはリン酸)または有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)から形成される酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成)を含む。遊離カルボキシル基から形成される塩は、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは鉄の水酸化物)、および有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)によって誘導されてもよい。調製後、剤形に適合した方法で、治療有効量で溶液を投与する。様々な剤形(例えば、注射溶液、薬物放出カプセルなど)で製剤を簡単に投与することができる。
【0047】
本明細書で使用する「ベクター」は、ありとあらゆる溶剤、分散媒、溶媒、コーティング、希釈剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、緩衝剤、ベクター溶液、懸濁液、コロイドなどを含む。そのような媒体および試薬が医薬活性物質に対する用途は、当技術分野で知られている。従来の媒体または試薬が活性成分と適合しない場合を除き、その治療用組成物への使用が予想される。補助活性成分も組成物に混入することができる。
【0048】
「薬学的に許容される」という語句は、ヒトに投与されたときに、アレルギーまたは同様の有害反応を引き起こさない分子実体および組成物を指す。活性成分としてタンパク質を含む水性組成物の調製は、当技術分野で知られている。一般に、そのような組成物は注射剤(液体溶液または懸濁液)として調製され、注射前に液体に溶解または懸濁するのに適した固体剤形にも調製することができる。
【0049】
別の態様では、本発明は、それぞれ別個の剤形としての、治療有効量の本発明の抗マイコプラズマ剤/ブロッカーと、治療有効量の一つ以上の化学療法剤と、を含む医薬キットを提供する。一実施形態では、医薬キットは、一つの区画において治療有効量の抗マイコプラズマ剤および薬学的に許容されるベクターを含み、かつ別の区画において治療有効量の一つ以上の化学療法剤および薬学的に許容されるベクターを含む。一実施形態では、医薬キットは、一つの区画において治療有効量のブロッカーおよび薬学的に許容されるベクターを含み、かつ別の区画において治療有効量の一つ以上の化学療法剤および薬学的に許容されるベクターを含む。代わりに、いくつかの実施形態では、医薬キットは、同じ区画において2種類の剤形を含む。いくつかの実施形態では、抗マイコプラズマ剤/ブロッカーは、化学療法剤と同じ剤形であり、例えば、両方とも錠剤などの経口剤形である。いくつかの実施形態では、抗マイコプラズマ剤/ブロッカーは化学療法剤形と異なり、例えば、前者は注射剤であり、後者は経口剤形である。抗マイコプラズマ剤/ブロッカーおよび一つ以上の化学療法剤の剤形は、それぞれの薬理学的特性、望ましい投与経路などに依存する。薬学的に許容されるベクターは上記のとおりである。
【0050】
実施例
発明者は、マイコプラズマを除去することで、シスプラチン、ゲムシタビンおよびミトキサントロンに対する肝癌細胞の感受性が増加することを発見した。抗マイコプラズマ剤の効果と同様に、アネキシンA2ポリペプチドのN-末端を使用して、マイコプラズマ・ヒオリニス(Mycoplasma hyorhinis)膜タンパク質P37と宿主のアネキシンA2との間の相互作用を中断し、ゲムシタビンおよびミトキサントロンに対するHCC97L細胞の感受性を高める。これらの結果から分かるように、マイコプラズマが肝癌細胞で複数の薬物に対する薬剤耐性を誘発することは、P37とアネキシンA2との間の相互作用を必要としている。鼻咽頭癌細胞における抗マイコプラズマ治療によって、シスプラチン、フルオロウラシルおよびミトキサントロンに対する感受性の類似の増加が再現される。
【0051】
マイコプラズマを含む癌細胞に対して完全に異なるメカニズムを有する抗生物質、すなわち、トポイソメラーゼを阻害するフルオロキノロンであるモキシフロキサシン(MXF)と、細菌においてタンパク質合成のためにリボソームを標的とするマクロライドであるアジスロマイシン(AZI)と、を使用する。次に、それぞれ非細胞毒性濃度のMXFまたはAZIがあるなしの場合に、アルキル化剤シスプラチン(CDDP)、代謝拮抗性抗癌剤ゲムシタビン(GEM)、およびアントラサイクリントポイソメラーゼ阻害剤ミトキサントロン(MX)を用いて肝癌細胞を処理する。MXFまたはAZIと組み合わせた抗腫瘍治療による細胞毒性の増強の真因を特定するために、証拠を集約して分析し:(1)非細胞毒性濃度でMXFおよびAZIを導入した;(2)MXFおよびAZIによってマイコプラズマが除去された細胞株では、抗腫瘍薬物の細胞毒性が増強された;(3)マイコプラズマがMXFおよびAZIの細胞株で生存し、抗腫瘍薬物の細胞毒性がそのまま保持した。従って、マイコプラズマの存在がそれらの腫瘍細胞におけるMDRの推進力であると推測でき、かつマイコプラズマを除去することによってMDRを除去できるので、化学療法剤の抗腫瘍活性が増強される。鼻咽頭癌細胞では、抗マイコプラズマ治療により、CDDP、MXおよび別の代謝拮抗抗癌剤であるフルオロウラシル(5-FU)に対する細胞感受性も向上する。
【0052】
マイコプラズマ膜タンパク質P37は、腫瘍の挙動におけるその作用が深く研究された機能性タンパク質である。最近のデータから分かるように、P37は、宿主細胞におけるアネキシンA2(ANXA2)のN末端との相互作用によって腫瘍進行を促進する一方で、P37抗体ポリペプチドA2PP(ANXA2のN末端内の30個のアミノ酸のポリペプチド)および抗マイコプラズマ試薬(例えばMYCO I)はこのような相互作用を阻止することができる。発明者は、ここで、非細胞毒性レベルのA2PPが化学療法薬に対する腫瘍細胞の感受性を改善することを実証したが、これはマイコプラズマ除去の効果と非常に類似している。この結果は、P37とANXA2の相互作用がマイコプラズマによって誘発されたMDRの初期段階であり、かつ癌細胞におけるこの相互作用を中断することによって、化学療法剤に対する感受性が回復することを明確に示している。
【0053】
材料および方法
薬物および試薬:フルオロウラシル(5-FU)注射剤は、上海旭東海埔製薬有限公司(Shanghai、 China)から購入した。シスプラチン(CDDP)は、Hospira Australia Pty Ltd.(Victoria、 Australia)から購入する。注射用ゲムシタビン塩酸塩(GEM)は、Eli Lilly and Company(Indiana、 USA)から購入する。ミトキサントロン塩酸塩注射液(MX)は、四川盛和製薬有限公司(Sichuan、 China)から購入した。モキシフロキサシン塩酸塩塩化ナトリウム注射液(MXF)は、Bayer Ltd.(Leverkusen、 Germany)から購入した。注射用アジスロマイシン(AZI)は、Pfizer(Nk、 USA)から購入した。一次抗体は、ウサギモノクローナルABCB1抗体(Cell Signaling Technology、 Sydney、 Australia)、ウサギモノクローナルABCC1抗体(Cell Signaling Technology、Sydney、 Australia)およびマウスモノクローナルABCG2抗体(Santa Cruz Biotechnology、 Texas、 USA)である。ウサギモノクローナルβ-アクチン抗体(Thermo Fisher Scientific、 MA、 USA)は、内部参照として使用される。ウサギモノクローナルZO-1抗体(Thermo Fisher Scientific、 MA、 USA)およびウサギポリクローナルZO-1抗体(Thermo Fisher Scientific、 MA、 USA)は、免疫蛍光において膜を定義するために使用される。二次抗体は、ウエスタンブロット法(Western blotting)に使用されるウマ抗マウス/ウサギIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ(Cell Signaling Technology、 Sydney、 Australia)である。Alexa Fluor標識抗ウサギ抗体およびAlexa Fluor標識抗マウス二次抗体(Thermo Fisher Scientific、 MA、 USA)を蛍光に使用する。
【0054】
細胞培養:ヒト肝癌細胞株HCC97Lは、復旦大学付属中山医院(Shanghai、 China)から入手した。Hep3BおよびPLC/PRF/5細胞株は、米国典型培養物保存中心(ATCC、 Manassas、 USA)から入手した。鼻咽頭癌(NPC)細胞株CNE1およびCNE2は、中山大学実験動物中心(Guangzhou、 China)から入手した。HONE1およびSUNE1細胞株は、馬軍教授(中山大学癌センター)から寄付された。CNE1、CNE2、HONE1、SUNE1、HCC97LおよびHep3BをRPMI 1640培地(Corning、 NY、 USA)において培養し、而PLC/PRF/5をDMEMにおいて培養し、それは10%のウシ胎児血清(FBS、 Biowest、 Nuaille、 France)、100 U/mLペニシリンおよび100 U/mのLストレプトマイシン(PAN-Biotech GmbH、 AidenbachBavaria、 Germany)を含む。すべての細胞は、37°C、5%COおよび95%の相対湿度で培養される。
【0055】
定量的リアルタイムPCRを使用したマイコプラズマ検出:各グループからの5×10の細胞を0.5%Tween-20、50 mM Tris(pH 8.5)、1 mM EDTA および200 mg/LのプロテアーゼKにおいて70°Cで10 min消化させ、次に、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールによる抽出および酢酸ナトリウムによる沈殿によって、全DNAを抽出した。DNA沈殿物を70%エタノールで洗浄し、乾燥させ、20 μLの滅菌水に溶解する。細胞から抽出されたDNA (1 μL、 1.2 μg)を9 μLの反応溶液に加えて、総体積を10 μLにし、当該反応溶液は、PCR緩衝液(SuperRealPreMix、 SYBR Green; Tiangen Biotech、 Beijing、 China)およびマイコプラズマ検出および参照コントロール(β-actin)に使用されたプライマーペア(各プライマーの最終濃度は0.12 μM)を含む。リアルタイム定量PCR(qPCR)は次のとおりである:95°Cで1分間(プレインキュベーションし)、続いて95°Cで40サイクルで10 s(変性し)、60°Cで30 s(アニールおよび伸長する)。マイコプラズマ検出用のプライマー(表1)は、林中寧教授(厦門大学公衆衛生学院)から寄付され、ユニバーサルマイコプラズマ検出用の二つのフォワードプライマー(一つはMyco M. pirum.を検出するためのフォワードプライマーであり、もう一つはMyco A. laidlawii.に使用されるフォワードプライマーである)およびリバースプライマーの縮退プライマーとする混合物を含む。
【0056】
【表1】
【0057】
薬物治療および細胞毒性試験:HCC97L、Hep3BおよびPLC細胞は、それぞれ3 μg/mL (またはHep3B細胞株の場合は1 μg/mL)MXFまたは5 μg/mL AZIで5日間前処理した。CNE1、CNE2、HONE1およびSUNE1を3 μg/mL MXFで7日間処理した。次に、HCC97L (3×10-1)、Hep3B (4×10-1)、PLC (4×10-1)、CNE1 (1.75×10-1)、CNE2 (3.5×10-1)、HONE1 (2×10-1) およびSUNE1 (2×10-1)を96穴プレート(100 μL/穴)に接種し、かつ24 h単層培養した。その後、抗マイコプラズマ抗生物質のある場合、3種類の化学療法薬をそれぞれ使用して異なる濃度(図2に示すように)でヒト肝癌細胞株を48h処理した。MXFのある場合、4種類の化学療法薬をそれぞれ使用して異なる濃度で(図6に示すように)NPCcell細胞株を48時間処理した。P37-ANXA2中断実験では、A2PPをDMSOに溶解し、かつGEMまたはMX処理の24時間前にA2PPでHCC97L細胞を前処理した(図3に示すように)。10 μLのMTT(5 mg/ml最終濃度; MP Biomedicals、 LLC、 CA、 USA)を各穴に加えた。37°Cで4時間インキュベートした後、培地を除去し、かつ100 μL/穴 DMSO(GBCBIO Technologies、 Guangzhou、 China)を加えた。恒温ミキサーによってプレートをRTで5分間混合した。マイクロプレートリーダー(iMark、 Bio-Rad Laboratories、 CA、 USA)において570/655 nmで吸光度を測定した。
【0058】
ウエスタンブロット:細胞を冷めたPBSで洗浄し、かつTris-NaCl緩衝液(50 mM Tris pH 7.4、150 mM NaCl、25 mM EDTA、1 mM NaF、プロテアーゼ阻害剤混合物、1 mM PMSFおよび1%Triton X-100)で20分間クラックした。次に、12000 rmpで裂解液を4 °Cで15分間遠心分離した。製造業者の推奨に従って、Thermo Scientific Pierce BCAタンパク質試験キット(Pierce、 Rockford、 IL、 USA)を使用してタンパク質の濃度を決定した。タンパク質の分離について、8%SDS-ポリアクリルアミドゲルによって等量のタンパク質(30 μg)を電気泳動分離し、かつそれをポリフッ化ビニリデンフィルム(Millipore Corporation、 MA、 USA)に転写した。ブロットを5%脱脂乳でRTで1 hブロックし、かつ一次抗体と4°Cで一晩インキュベートした後、二次抗体とRTで1hインキュベートした。ブロットをTBS-Tで毎回5分間、3回洗浄し、その後、Western Lightning Chemiluminescence Reagent Plus ECL キット(Amersham、 USA)と共にト1分間インキュベーし、それによって、タンパク質の発現を測定した。Image J (National Institutes of Health)ソフトウェアを使用して、タンパク質バンド密度を測定した。
【0059】
免疫蛍光染色:ガラススライドで細胞を培養および処理し、かつRTで4%ホルムアルデヒドで15分間固定した。PBSでガラススライドを毎回5分間、3回すすぎ洗い、細胞を5%BSAで1 hブロックした。一次抗体を4 °Cで一晩置いて、細胞に適用し、その後、蛍光色素結合した二次抗体およびHoechst33342を室温で暗所で細胞に1-2 h適用した。Nikon A1共焦点システム(Nikon、 Tokyo、 Japan)を使用して、特定のタンパク質の位置を観察した。デジタル画像は、Adobe Photoshop CS4(Adobe Systems)によって編成された。
【0060】
統計的分析:すべての実験は3回実行された。全てのデータは、平均値±SDとして表される。対応のある両側t検定は、二つのグループを比較するために使用され、追加の二乗のF検定は、用量反応曲線(図6aに示す図解を除く)に使用され、かつ、いずれもGraphPad PRISM 5(GraphPad Software、 San Diego、 California、 USA)を使用した。有意水準はP <0.05に設定された。この研究では、ランダム化または盲検化は使用されなかった。
【0061】
結果
モキシフロキサシンおよびアジスロマイシンによってヒト肝癌細胞におけるマイコプラズマが除去された。
2種類の抗生物質で細胞を処理する:マクロライド薬物アジスロマイシン(AZI)およびフルオロキノロン薬物モキシフロキサシン(MXF)。細胞形態学およびMTT試験から分かるように、3 μg/mL MXFおよび5 μg/mL AZIがHCC97L細胞に対して非毒性であり、また、1 μg/mL MXFおよび5 μg/ mL AZIがHep3Bに対して同様に非毒性である(図1A)。リアルタイムPCR分析から分かるように、1 μg/mLおよび3 μg/mL MXFがそれぞれHep3BおよびHCC97L細胞でマイコプラズマを完全に排除するが、5 μg/mL AZIが両方の細胞株においてもマイコプラズマを顕著に除去する。しかしながら、PLC/PRF/5細胞株において、3 μg/mL MXFまたは5 μg/mL AZIの処理で、マイコプラズマがそのまま保持する(図1B)。
【0062】
モキシフロキサシンおよびアジスロマイシンによって化学療法薬に対する肝癌細胞の感受性が増強された。
次に、それぞれ非細胞毒性濃度のMXFまたはAZIがあるなしの場合に、アルキル化剤シスプラチン(CDDP)、代謝拮抗性抗癌剤ゲムシタビン(GEM)およびアントラサイクリントポイソメラーゼ阻害剤ミトキサントロン(MX)を用いて細胞を処理する。MTT試験の結果から分かるように、MXFおよびAZIによって、CDDP、GEMとMXに対するHCC97L細胞の感受性、およびGEMとMXに対するHep3B細胞の感受性が増強された。PLC/PRF/5細胞株において、MXFもAZIも抗腫瘍薬物の効果を改善できなかった(図2)。
【0063】
マイコプラズマ関連のMDRは、P37とアネキシンA2との相互作用を必要とする。
感染関連のMDRの開始を調べるために、ANXA2へのP37タンパク質の結合を避けるためにA2PPを使用した。A2PP濃度が増加すると、GEMは、単独で処理した場合よりも、HCC97L細胞株においてより強い阻害効果を発揮する。A2PPと共に使用したGEMの最大効果は、MXFを使用した効果と同じである(図3A、BおよびC)ことが印象的である。MXと共に使用する場合、A2PPによる機能増強が再現される(図3D)。また、細胞形態学およびMTT試験から分かるように、A2PPが細胞生存に影響を与えず(図3E)、A2PPの抗腫瘍効果の増強はその直接的な細胞毒性によって引き起こされたものではない。
【0064】
ABCトランスポーターがマイコプラズマ関連のMDRに関与しない。
マイコプラズマ関連MDRの原因となる細胞エフェクターを見つけるために、ABCトランスポーターの三つのメンバー(ABCB1、ABCC1およびABCG2)の発現および細胞内位置を測定した。興味深いことに、MXFの処理では、これらのトランスポーターのタンパク質数に実質的変化が観察されなかった。細胞膜でのこれらのタンパク質の分布も変化しなかった(図4)。
【0065】
モキシフロキサシンによってヒト鼻咽頭癌細胞におけるマイコプラズマが除去された。
細胞形態学およびMTT試験から分かるように、3 μg/mL MXFがCNE1、CNE2、HONE1およびSUNE1細胞株のNPC細胞に対して非毒性である(図5A、5B)。リアルタイムPCR試験から分かるように、四つのNPC細胞株のすべてで3 μg/mL MXFがマイコプラズマを完全に除去した(図5C)。
【0066】
モキシフロキサシンによって化学療法薬に対する鼻咽頭癌細胞の感受性が増強された。
次に、それぞれ3 μg/mL MXFがあるなしの場合に、CDDP、MXおよび別の代謝拮抗性抗癌剤フルオロウラシル(5-FU)を用いてNPC細胞を処理した。MTT試験結果から分かるように、MXFによって5-FU、CDDPおよびMXに対するCNE2およびHONE1細胞の感受性が増強された。MXFによって、CDDPとMXに対するCNE1細胞の感受性、および5-FUとMXに対するSUNE1細胞の感受性も増強された(図6)。
【0067】
発明者は、驚くべきことに、マイコプラズマ感染がヒト癌細胞のMDRを引き起こすことを発見した。マイコプラズマの除去またはマイコプラズマと宿主細胞との間の相互作用の遮断は、マイコプラズマによって誘発されたMDRを阻害する。マイコプラズマ感染によって引き起こされた癌細胞におけるシグナル経路を中断するあらゆる薬物も、マイコプラズマによって誘発されたMDRを低下させる可能性があると予想される。マイコプラズマによって誘発されたMDRを阻害することで、癌に対する併用化学療法で抗マイコプラズマ措置を試すことができる。
【0068】
本発明は、好ましい実施形態および選択される特徴を通して具体的に開示されたが、当業者は、本明細書に開示された実施例を修正、改善および変形することができ、かつそのような修正、改善および変形は、本発明の範囲内に含まれると考えられることが理解すべきである。本発明で提供された材料、方法および実施例は、好ましい実施形態を例示的に示すものであり、本発明の範囲に対する制限として意図されていない。
【0069】
ここで、本発明を広範囲で一般的に説明した。本発明の一般的な開示範囲内に含まれる各狭い種類および従属グループも本開示の一部を形成する。切除された材料が本明細書に具体的に記載されているかどうかにかかわらず、それは、本発明の一般的な説明に含まれ、その付随条件または否定的な制限はその種からのあらゆる主題を削除する。さらに、本発明の特徴または態様がマーカッシュグループに関して説明される場合、本発明はそれによって、マーカッシュグループのあらゆるメンバーまたはサブグループメンバーに関して説明すべきことは、当業者にとって認識される。
【0070】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、あたかもそれぞれが単一の文献によって組み込まれるのと同じ程度に、参照によりその全体が明確的に組み込まれる。矛盾する場合、本明細書に含まれる定義に準ずる。本明細書に具体的に開示されていない要素、制限がない場合、ここで例示的に記載された本発明を適切に実施することができる。従って、例えば、「含む」、「備える」、「含有」などの用語は、制限ではなく、広く理解されるべきである。さらに、本明細で使用される用語および表現は、制限ではなく説明的な用語として使用されており、そのような用語および表現を使用して、表示および説明される特徴またはその部分のあらゆる同等の形式を排除することを意図していないが、保護請求された発明の範囲内で様々な修正が可能であることを認識すべきである。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
【手続補正書】
【提出日】2022-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象でのマイコプラズマによって誘発された多剤耐性(MDR)腫瘍を治療するための医薬組成物であって、単位剤形中に、
1.治療有効量のマイコプラズマの膜タンパク質P37と対象の宿主細胞のアネキシンA2との間の相互作用を遮断する薬剤、
2.治療有効量の化学療法剤、および
3.医薬的に許容される担体、とを含み
該化学療法剤が、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、免疫療法剤、ホルモンまたはホルモン拮抗剤、タキサン、レチノイド、アルカロイド、血管新生阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、標的シグナル伝達阻害剤および生物学的応答調節剤よりなる群から選択され、
該MDR腫瘍が、前記化学療法剤の群から選択される、少なくとも2種類の化学療法剤に対して耐性である、医薬組成物。
【外国語明細書】