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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104952
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】AAV系条件的発現系
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20220705BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20220705BHJP
   C12N 15/35 20060101ALI20220705BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220705BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220705BHJP
   C12N 15/38 20060101ALI20220705BHJP
   C12N 15/34 20060101ALI20220705BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N15/864 100Z
C12N15/35
C12N15/11 Z
C12N5/10
C12N15/38
C12N15/34
C12Q1/70
【審査請求】有
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054998
(22)【出願日】2022-03-30
(62)【分割の表示】P 2018540017の分割
【原出願日】2017-01-30
(31)【優先権主張番号】16153329.4
(32)【優先日】2016-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518266820
【氏名又は名称】ジリオン バイオテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】コジノフスキー,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ランガー,ジモーナ
(72)【発明者】
【氏名】ルツジクス,ゾルト
(72)【発明者】
【氏名】ティリオン,クリスティアン
(57)【要約】
【課題】AAV系条件的発現系を提供すること。
【解決手段】5’~3’方向に所定の構成要素を含む核酸を含むビリオンであって、該ビリオンは、AAV cap遺伝子を含まない、ビリオン。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’~3’方向に、
(i) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
(ii) AAVp5プロモーターまたはAAVp5プロモーターとAAVp19プロモーターの組み合わせから選択されるプロモーター;
(iii) (ii)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列;
(iv) AAV2ゲノムの1700位から2287位まで伸長するAAV p40プロモーター、または該AAV p40プロモーターに少なくとも95%の配列同一性を示しかつAAV p40プロモーターのプロモーター活性を保持するプロモーター;
(v) (iv)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列;
(vi) ポリアデニル化部位;ならびに
(vii) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
を含む核酸を含むビリオンであって、該ビリオンは、AAV cap遺伝子を含まない、ビリオン。
【請求項2】
該ビリオンは、AAVキャプシドタンパク質を含み、好ましくは、該ビリオンは、請求項1に規定される核酸および該キャプシドタンパク質からなる、請求項1記載のビリオン。
【請求項3】
(aa) 5’~3’方向に、
(i) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
(ii) AAV2ゲノムの1700位から2287位まで伸長するAAV p40プロモーター、または該AAV p40プロモーターに少なくとも95%の配列同一性を示しかつAAV p40プロモーターのプロモーター活性を保持するプロモーター;および
(iii) (aa)(ii)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列;および
(iv) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列
を含む核酸;ならびに
(ab) 5’~3’方向に、
(i) AAVp5プロモーターまたはAAVp5プロモーターとAAVp19プロモーターの組み合わせから選択されるプロモーター;および
(ii) (ab)(i)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列
を含む核酸を含む細胞であって、該細胞は、AAV cap遺伝子を含まず、
(i) (aa)および(ab)の核酸の配列は、単一の環状核酸に含まれ、(ab)の核酸の配列は、5’~3’方向において、(aa)の核酸の配列内の(aa)(i)の後かつ(aa)(ii)の前に位置する;または
(ii) (aa)および(ab)の核酸の配列は、単一の直鎖状核酸に含まれ、(ab)の核酸の配列は、5’~3’方向において、(aa)の核酸の配列内の(aa)(i)の後かつ(aa)(ii)の前に位置する、細胞。
【請求項4】
(a)(aa) 5’~3’方向に、
(i) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
(ii) AAV2ゲノムの1700位から2287位まで伸長するAAV p40プロモーター、または該AAV p40プロモーターに少なくとも95%の配列同一性を示しかつAAV p40プロモーターのプロモーター活性を保持するプロモーター;
(iii) (aa)(ii)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列;および
(iv) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列
を含む核酸;
(ab) 5’~3’方向に、
(i) AAVp5プロモーターまたはAAVp5プロモーターとAAVp19プロモーターの組み合わせから選択されるプロモーター;および
(ii) (ab)(i)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列
を含む核酸;ならびに任意に
(b) 発現可能な形態で該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドをコードし、かつ任意に該1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドを提供する1つ以上の核酸、ここで、該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択されるウイルスから生じる、
を含むキットであって、該キットは、AAV cap遺伝子を含まず、
(i) (aa)および(ab)の核酸の配列は、単一の環状核酸に含まれ、(ab)の核酸の配列は、5’~3’方向において、(aa)の核酸の配列内の(aa)(i)の後かつ(aa)(ii)の前に位置する;または
(ii) (aa)および(ab)の核酸の配列は、単一の直鎖状核酸に含まれ、(ab)の核酸の配列は、5’~3’方向において、(aa)の核酸の配列内の(aa)(i)の後かつ(aa)(ii)の前に位置する、キット。
【請求項5】
(aa)および(ab)の該核酸は、細胞中に含まれ、該細胞は、AAV cap遺伝子を含まない、請求項4記載のキット。
【請求項6】
(i) (aa)および(ab)の両方の核酸の配列は、該細胞のゲノムDNAに含まれる、請求項3記載の細胞。
【請求項7】
5’~3’方向に、
(i) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
(ii) AAVp5プロモーターまたはAAVp5プロモーターとAAVp19プロモーターの組み合わせから選択されるプロモーター;
(iii) (ii)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列;
(iv) AAV2ゲノムの1700位から2287位まで伸長するAAVp40プロモーター;
(v) (iv)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列;ならびに
(vi) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列
を含む核酸を含む、
請求項3および6いずれか記載の細胞。
【請求項8】
(ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep78および/またはAAV Rep68ポリペプチドをコードし、好ましくは、(ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep52および/またはAAV Rep40ポリペプチドをさらにコードする、請求項3および6~7いずれか1項記載の細胞。
【請求項9】
配列同一性が、少なくとも98%の配列同一性である、請求項3および6~8いずれか1項記載の細胞。
【請求項10】
AAVp40プロモーターが、AP1 -40、SP1 -50、GGT -70、およびMLTF -100部位を含む、請求項3および6~9いずれか1項記載の細胞。
【請求項11】
AAVp40プロモーターが、伸長されたrep結合部位を含み、該部位は、AAVイントロンからのmRNAのスプライシングを増加させる、請求項3および6~10いずれか1項記載の細胞。
【請求項12】
AAV2ゲノムは、GenBankエントリーNC_001401.2に従う、請求項3および6~11いずれか1項記載の細胞。
【請求項13】
少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を示す該プロモーターが、AAV2ゲノムの1700位から2287位まで伸長する、請求項3および6~12いずれか1項記載の細胞。
【請求項14】
(i) (aa)および(ab)の両方の核酸の配列は、該細胞のゲノムDNAに含まれる、請求項4または5記載のキット。
【請求項15】
5’~3’方向に、
(i) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
(ii) AAVp5プロモーターまたはAAVp5プロモーターとAAVp19プロモーターの組み合わせから選択されるプロモーター;
(iii) (ii)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列;
(iv) AAV2ゲノムの1700位から2287位まで伸長するAAVp40プロモーター;
(v) (iv)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列;ならびに
(vi) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列
を含む核酸を含む、
請求項4、5および14いずれか記載のキット。
【請求項16】
(ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep78および/またはAAV Rep68ポリペプチドをコードし、好ましくは、(ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep52および/またはAAV Rep40ポリペプチドをさらにコードする、請求項4、5および14~15いずれか1項記載のキット。
【請求項17】
(b)の核酸は、
(i)ヘルパーウイルス中に含まれる;または
(ii)該細胞は、(b)の該核酸をさらに含む、
請求項4、5および14~16いずれか1項記載のキット。
【請求項18】
(aa)および(ab)の該核酸は、細胞中に含まれ、該細胞は、AAV cap遺伝子を含まず、ここで、
(a)該細胞は容器(vessel)中に提供される;
(b)該細胞は、複数の場合において、マルチウェルプレートのウェル中に提供される;および/または
(c)該キットは、指示を含む使用説明書を含む、
請求項4、5および14~17いずれか1項記載のキット。
【請求項19】
配列同一性が、少なくとも90%の配列同一性である、請求項4、5および14~18いずれか1項記載のキット。
【請求項20】
AAVp40プロモーターが、AP1 -40、SP1 -50、GGT -70、およびMLTF -100部位を含む、請求項4、5および14~19いずれか1項記載のキット。
【請求項21】
AAVp40プロモーターが、伸長されたrep結合部位を含み、該部位は、AAVイントロンからのmRNAのスプライシングを増加させる、請求項4、5および14~20いずれか1項記載のキット。
【請求項22】
AAV2ゲノムは、GenBankエントリーNC_001401.2に従う、請求項4、5および14~21いずれか1項記載のキット。
【請求項23】
5’~3’方向に、
(i) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
(ii) AAVp5プロモーターまたはAAVp5プロモーターとAAVp19プロモーターの組み合わせから選択されるプロモーター;
(iii) (ii)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列;
(iv) AAV2ゲノムの1700位から2287位まで伸長するAAVp40プロモーター;
(v) (iv)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列;ならびに
(vi) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列
を含む核酸を含む、
請求項1および2いずれか記載のビリオン。
【請求項24】
(ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep78および/またはAAV Rep68ポリペプチドをコードし、好ましくは、(ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep52および/またはAAV Rep40ポリペプチドをさらにコードする、請求項1、2および23いずれか記載のビリオン。
【請求項25】
配列同一性が、少なくとも90%の配列同一性である、請求項1、2、23および24いずれか1項記載のビリオン。
【請求項26】
AAVp40プロモーターが、AP1 -40、SP1 -50、GGT -70、およびMLTF -100部位を含む、請求項1、2および23~25いずれか1項記載のビリオン。
【請求項27】
AAVp40プロモーターが、伸長されたrep結合部位を含み、該部位は、AAVイントロンからのmRNAのスプライシングを増加させる、請求項1、2および23~26いずれか1項記載のビリオン。
【請求項28】
AAV2ゲノムは、GenBankエントリーNC_001401.2に従う、請求項1、2および23~27いずれか1項記載のビリオン。
【請求項29】
アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択されるウイルスが、抗ウイルス剤により阻害されるかどうかを決定するインビトロ方法であって、該方法は、請求項4、5および14~22いずれか1項記載のキットまたは請求項1、2および23~28いずれか1項記載のビリオンを、該ウイルスを含む試料と接触させる工程を含み、該接触は、細胞内で(i)該抗ウイルス剤の存在下および(ii)その非存在下でもたらされ、ケース(i)に比べてケース(ii)において、該キットまたはビリオンのそれぞれに従って画定されるトランスジェニックコード配列の産物の量がより多いことは、該ウイルスが該剤により阻害されたことを示す、インビトロ方法。
【請求項30】
請求項3および6~12いずれか1項に規定される細胞に、1つ以上のヘルパーポリペプチドをコードする、および、任意に、1つ以上のヘルパーポリヌクレオチドを提供する1つ以上の核酸を導入する工程を含み、それにより、該トランスジェニックコード配列によりコードされる産物を発現し、該1つ以上のヘルパーポリペプチドおよび1つ以上のヘルパーポリヌクレオチドは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択されるウイルスから生じる、条件的遺伝子発現のためのインビトロ方法。
【請求項31】
感染性ウイルスを検出および/または定量するインビトロ方法であって、該ウイルスは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択され、該方法は、請求項3および6~12いずれか1項に規定される細胞を、該感染性ウイルスを含むまたは含むと疑われる試料と接触させる工程を含み、該細胞に従って画定されるトランスジェニックコード配列の産物の存在および/または量は、該感染性ウイルスの存在および/または量を示す、インビトロ方法。
【請求項32】
ウイルスに対して抗ウイルス活性を有する化合物を同定するためのインビトロ方法であって、該ウイルスは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択され、該方法は、
(a) 請求項3および6~12のいずれか1項に規定される細胞の集団の細胞に、1つ以上のヘルパーポリペプチドをコードする、および、任意に、1つ以上のヘルパーポリヌクレオチドを提供する1つまたは複数の核酸を導入する工程、ここで、該1つ以上のヘルパーポリペプチドおよび1つ以上のヘルパーポリヌクレオチドは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択されるウイルスから生じる;
(b) 該導入の後に、工程(a)の細胞集団により発現される(aa)(iii)の該トランスジェニックコード配列によりコードされる産物の量を決定する工程;
(c) 請求項3および6~12のいずれか1項に規定される細胞の集団と、試験されるべき化合物を接触させる工程;
(d) 工程(c)の細胞集団の細胞に、工程(a)に規定される該1つまたは複数の核酸を導入する工程;
(e) 該導入の後に、工程(d)の細胞集団により発現される該トランスジェニックコード配列によりコードされる産物の量を決定する工程;
(f) 工程(b)で決定された該産物の量と工程(e)で決定された該産物の量を比較する工程
を含み、工程(b)で決定された産物に比べて工程(e)で決定された産物が少ないことは、試験された化合物が抗ウイルス活性を有することを示す、インビトロ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(aa) 5’~3’方向に、(i) 少なくとも1つのアデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;(ii) 1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得るプロモーター;および(iii) (aa)(ii)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列を含む核酸;ならびに(ab) 5’~3’方向に、(i) 該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に該1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得るプロモーター;および(ii) (ab)(i)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列を含む核酸を含む細胞に関し、該細胞は、AAV cap遺伝子を含まない、および/または任意のAAV cap遺伝子産物を発現し得ない。
【0002】
本明細書において、特許出願および製造業者の使用説明書を含む多くの文書が引用される。これらの文書の開示は、本発明の特許性に関係がないと考えられるとはいえ、その全体において参照により本明細書に援用される。より具体的には、全ての参照された文書は、各個々の文書が具体的かつ個々に参照により援用されると示されたのと同じ程度まで参照により援用される。
【背景技術】
【0003】
機能的に関連のある遺伝子の条件的発現(conditional expression)は、ウイルス複製の研究、抗ウイルス物質のスクリーニング、臨床的に関連のあるウイルスを意図した(clinically relevant virus intentions)検出において、ウイルスベクターの増幅のために重要な分子生物学的方法となっている。標準的な条件的遺伝子発現系は、TetRベースの系についてはドキシサイクリン等の特定の薬物の投与またはCre/loxPベースの系の場合にはウイルスゲノムの改変のいずれかを必要とする(非特許文献1, 非特許文献2)。
【0004】
AAVは、小さなパルボウイルスであり、Ad調製物中の夾雑物として発見されたものであり(非特許文献3)、従って、アデノ随伴ウイルスと新しく命名された(coin)。パルボウイルス科のメンバーとして、AAVは、約5kbの単一の標準的なDNAを有する。天然には、AAVの溶解サイクルは、細胞がAAVおよびアデノウイルスに同時に感染させられた場合にも生じる(非特許文献4, 非特許文献5, 非特許文献6)。AAVは、ディペンドウイルス属に属する。この属名は、AAV感染単独では溶解性ではないので生まれた。AAVでの細胞の感染後、該ウイルスは、そのゲノムを宿主細胞に送達し、そこで、該ゲノムは該細胞のゲノムに組み込まれ、潜伏性のままになる。AAVの溶解サイクルを開始するためには、アデノウイルス(Ad)またはヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルスとの重複感染が必要である。
【0005】
AAVは、動物およびヒトに感染する。主に、AAV2、AAV3およびAAV5が、種々のAd血清型と一緒にヒトから単離された。AAVは、ヒトにおいていずれの疾患ももたらすとは知られていない(非特許文献7)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Rupp et al., J. Virol. 79, 486-94 (2005)
【非特許文献2】Ruzsics Z, Koszinowski UH. Mutagenesis of the cytomegalovirus genome. pp. 41-61 (2008)
【非特許文献3】Atchison et al., Science 149, 754-756 (1965)
【非特許文献4】Alazard-Dany et al., PLoS Pathogens 5 (2009)
【非特許文献5】McCarty et al., Annu Rev Genet. pp. 819-45 (2004)
【非特許文献6】Myers et al., J. Virol. 35, 65-75 (1980)
【非特許文献7】Monahan & Samulski, Mol. Med. Today 6, 433-440 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウイルス感染の治療経過における決定および新たな抗ウイルス剤の開発は、特定のウイルスの存在および既知または今なお決定すべき抗ウイルス剤に対するその応答性を決定するための確固とした信頼性のある手段および方法へのニーズを必然的に伴う。また、条件的発現系への絶え間ないニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特に、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科由来のウイルスの分野におけるかかるニーズに取り組む。
【0009】
従って、本発明は、(aa) 5’~3’方向に、(i) 少なくとも1つのアデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;(ii) 1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得るプロモーター;および(iii) (aa)(ii)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列を含む核酸;ならびに(ab) 5’~3’方向に、(i) 該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に該1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得るプロモーター;および(ii) (ab)(i)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子配列を含む核酸を含む細胞を提供し、該細胞は、AAV cap遺伝子を含まない、および/または任意のAAV cap遺伝子産物を発現し得ない。
【0010】
本発明は、また、(aa) 5’~3’方向に、(i) 少なくとも1つのアデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;(ii) 1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得る少なくとも1つのプロモーター;および(iii) (aa)(ii)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列を含む核酸;ならびに(ab) 5’~3’方向に、(i) 該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に該1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得るプロモーター;および(ii) (ab)(i)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列を含む核酸を含む細胞を提供し、該細胞は、AAV cap遺伝子を含まない、および/または任意のAAV cap遺伝子産物を発現し得ないことが理解される。
【0011】
該細胞は、インビトロ細胞、エキソビボ細胞、培養液中の細胞または細胞株の細胞であり得る。
【0012】
該細胞は、その最も広い意味で、任意の脊椎動物細胞であり得る。本願がヒトおよび獣医学的薬物に出願の焦点を合わせていることを考慮すれば、以下により詳細に記載されるように、好ましい細胞は、哺乳動物、齧歯類、霊長類またはヒト起源の細胞であることが理解される。例示的な細胞は、実施例から明らかである。
【0013】
用語「核酸」は、その技術において確立した意味を有し、ヌクレオチドの多重縮合物をいう。該ヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドであることが好ましい。好ましくはないものの、それにもかかわらず、1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10ヌクレオチド、または少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%もしくは少なくとも10%のヌクレオチドが、リボヌクレオチドである、および/または化学的に改変されたヌクレオチドであり、該化学的に改変されたヌクレオチドは、好ましくは2’位で改変されたものであり、例えば、2’-メトキシまたは2’-フルオロであることが構想される。ペプチド核酸などの糖リン酸骨格に対する代替物を含む核酸も構想される。
【0014】
塩基については、塩基のセットは、好ましくは、A、G、CおよびTに限定される。該細胞のコドン使用頻度および/またはコドン選択性(codon preference)は、公知の程度まで、核酸の設計において考慮され得る。
【0015】
(aa)の核酸および/または(ab)の核酸は、一過性トランスフェクションにより該細胞に導入され得る。該細胞は、核酸(aa)および(ab)の1つまたは両方のいずれかに関して、安定な細胞株の細胞であり得る。
【0016】
上記した核酸(aa)および(ab)の定義のそれぞれから明らかなように、アデノ随伴ウイルス(AAV)のゲノムの構造要素の使用がなされる。
【0017】
より詳細には:逆方向末端反復(ITR)配列は、AAVウイルスの公知の特徴である;例えば、Wang et al., J. Mol. Biol. 250, 573-580 (1995)を参照。例示的なITR配列は、公的に利用可能な配列データベースの対応するエントリー(entry)に見出され得る。例えば、AAV2のゲノム配列は、GenBank参照配列NC_001401.2に見出され得る。配列取り出しの目的のためには、2015年8月15日のGenBankバージョン209.0が使用され得る。上記した参照配列において、2つのITRは、1~145位および4535~4679位に見出され得る。約5.2 kbまでのサイズを有する核酸は、AAVキャプシドにパッケージングされ得、2つのITRを含み得る。1つのITRを含む核酸は同様にパッケージングされ得る。例証(exempli)において、Wu et al., 2010 (Wu et al., Effect of genome size on AAV packaging. Mol. Ther. (2010) 18:80-86)による公表に一致することであるが、AAV2がAAVキャプシドに5’ITR切断(truncated)核酸としてパッケージングされ得るので、これは、5.2 kbのパッケージング容量を超える核酸に当てはまる。パッケージングされた核酸は、この場合、1つのITRのみを含む。ベクターDNAの前もって形成されたキャプシドへのパッケージングのための過程は、3’ITRから始まる。
【0018】
ITR配列の存在は、核酸配列(aa)において必要である。好ましい態様において、ITR配列は、(ab)の核酸配列中に含まれるプロモーターの上流にも存在する。
【0019】
核酸(aa)および(ab)のいずれか1つは、1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得るプロモーターを必要とする。当該分野で公知であるように、転写は、プロモーターで始まり、該プロモーターは、活性であるためには、1つ以上のタンパク質、典型的には、多タンパク質複合体と接触している必要がある。本件の場合、AAV中に存在するプロモーターが好ましい。好ましいAAVプロモーターは、以下にさらに開示され、p40野生型プロモーター、AAVプロモーターに少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を示しかつプロモーター活性を保持するプロモーター、およびp40野生型プロモーターに少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を示しかつプロモーター活性を保持するプロモーターを含む。プロモーター活性は、さらなる苦労なく、例えば、実施例3に開示されるアデノウイルス誘導アッセイを実施することにより評価され得る。用語「p40」および「p40プロモーター」は、p40野生型プロモーターの上記ホモログを含む。p40の構造的および機能的詳細は、以下にさらに開示される。かかるプロモーターおよび本発明の任意のプロモーターは、(i) AAV rep遺伝子産物および(ii) 1つ以上のヘルパーポリペプチドおよび任意にヘルパーポリヌクレオチドに応答性である。該1つ以上のヘルパーポリペプチドは、1つ以上のrepタンパク質と一緒になって、典型的には会合し、該プロモーターを活性にする多タンパク質複合体を形成する。ヒトアデノウイルス由来のヘルパー機能は、ウイルス複製を開始し得、それ故、ITRを認識し得、ヒトおよび非ヒト種由来のAAVウイルスのプロモーターを活性化し得ることが示されている。例えば、サルAAV1の複製のためのヒトアデノウイルス5型の使用は、Xiao et al., J Virol. 73: 3994-4003 (1999)に記載された。ITRの認識および複製の開始についてのさらなる情報は、例えば、Gavin et al., J. Virol. 73, 9433-9445 (1999)に見出され得る。特に、プロモーターおよびrep遺伝子のそれぞれは、異なるAAVから選択され得る。
【0020】
これは、アデノ随伴ウイルスから生じるまたはそれに由来するプロモーターが機能する典型的な方法であるが、本発明に従って定義されるように、各々のプロモーターは、1つ以上のヘルパーポリペプチドおよび任意に1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得、即ち、いずれのrep遺伝子産物の非存在下においてもである。結果として、本発明を使用する場合、最初のrep遺伝子産物が存在しない状況から始まって、rep遺伝子産物のレベルは、増大する。rep遺伝子産物の量が経時的に増大するおかげで、各々のプロモーターのさらなる活性化が生じ、これは、トランスジーン(aa)(iii)の発現の増大を必然的に伴ういずれかのプロモーターのさらなる活性化を生じる。
【0021】
用語「ヘルパーポリペプチド」および「ヘルパーポリヌクレオチド」は、ヘルパーウイルスの概念に由来する。トランスジェニックコード配列の複製および転写が生じるためには、特定のヘルパー機能が、トランスで(in trans)提供される必要がある。これは、ヘルパーウイルスを介してなされ得るが、そうである必要はない。実際、本発明に従えば、該ヘルパー機能は、1つ以上のポリペプチドまたはかかる1つ以上のポリペプチドをコードする核酸、適用可能な場合、かかる1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドを提供する1つ以上の核酸の形態において提供され得る。該ヘルパーポリペプチドおよびヘルパーポリヌクレオチドは、アデノ随伴ウイルス、またはアデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択されるウイルスなどの天然に存在するウイルスから生じ得るかまたはそれに由来し得る。最も広い意味において、該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドは、核酸(aa)および(ab)のそれぞれに含まれる場合、および好ましくは、(ab)(ii)のAAV rep遺伝子によりコードされるrepタンパク質と共に含まれる場合、プロモーターを活性化し得るという要件により機能的に画定され得る。
【0022】
従って、AAVプロモーター、即ち、AAV中に存在するプロモーターに結合するヘルパーポリペプチドが好ましいことが理解される。さらに、好ましくは、該ヘルパーポリペプチドは、該AAVプロモーターを活性化する、即ち、該ヘルパーポリペプチドは、該プロモーターから生じる転写を引き起こすまたは増大させることが理解される。典型的にアデノウイルス科およびヘルペスウイルス科由来のウイルスのプロモーター結合ポリペプチドが、AAVプロモーターに結合し活性化し得ることは、当該分野で公知である。疑わしい場合、当業者は、さらなる苦労なく、プロモーター結合アッセイまたはプロモーター活性化アッセイにおいて、アデノウイルス科またはヘルペスウイルス科のメンバーの遺伝子によりコードされる所定のポリペプチドが、AAVプロモーターに結合し活性化し得るかどうかを決定し得る。
【0023】
該1つ以上のヘルパーポリペプチドおよび任意にヘルパーポリヌクレオチドは、ヘルパーウイルスの最小版として理解されるべきである。好ましい態様において、該1つ以上のヘルパーポリペプチドは、アデノ随伴ウイルスの溶解性複製の誘導に必要である。別の好ましい態様において、該1つ以上のヘルパーポリペプチドおよび任意にヘルパーポリヌクレオチドは、ヘルパーウイルスの溶解サイクルの産物である。ヘルパーポリペプチドの特に好ましいセットは、(a)アデノウイルス遺伝子座E1、E2およびE4によりコードされるポリペプチドを含むかまたはそれからなるセット;または(b)アデノウイルスタンパク質E1a、E1b-55K、E2aおよびE4orf6を含むかまたはそれからなるセットである;Samulski & Shenk, J. Virol. 62, 206-210 (1988)を参照。好ましいヘルパーポリヌクレオチドは、アデノウイルスVAである。VAは、RNAである(Winter et al., J. Virol., 86, 5099-5109 (2012)およびMatsushita et al., Journal of General Virology, 85, 2209-2214 (2004)参照)。ヘルパー機能の好ましい供給源は、アデノウイルス5である。ヘルパーポリペプチドの別の好ましいセットは、HSV-1タンパク質であるUL5、UL8、UL52およびUL29を含むかまたはそれからなるセットであり、前3つは、ヘリカーゼ/プライマーゼ複合体を形成し、後の1つは、一本鎖DNA結合タンパク質をコードする;Weindler & Heilbronn, J. Virol. 65, 2476-2483 (1991)も参照。これらのヘルパーポリペプチドの配列は、GenBank、特に、本明細書において同定されるGenBankのバージョンなどの配列データベースから取り出し得る。一般的に、そこからヘルパー機能を生じるウイルスのゲノム配列は、注釈をつけられ、該ヘルパー機能を提供する個々の遺伝子の配列についての情報を含む。これは、例えば、以下にさらに参照されるHSV-1およびAd5のゲノム配列に適用される。
【0024】
これらの特定のヘルパーポリペプチドおよびポリヌクレオチドの代わりに、機能的ホモログが使用され得ることが理解される。機能的ホモログは、上記されるそれぞれの親ポリペプチドまたはポリヌクレオチドのそれぞれに、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を示す。該ホモログは、それらのヘルパー機能、即ち、本明細書中に上記されるトランスジェニックコード配列の転写を引き起こす能力を保持する。好ましくは、該転写を引き起こす能力は、親配列が転写を引き起こす能力の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%である。
【0025】
第1の局面において述べた機能的要件に適合する、該ポリペプチド、および適用可能な場合はポリヌクレオチドに対するさらなる代替物は、さらなる苦労なく、当業者により決定され得る。例えば、該プロモーターの制御下で、タンパク質コード配列は、1つ以上のヘルパーポリペプチド、およびさらに任意に1つ以上のrep遺伝子産物と合わされ得る。タンパク質産物量の上昇は、該プロモーターが1つ以上のヘルパーポリペプチドにより活性化され得、1つ以上のrepタンパク質が任意に存在することを示す。該プロモーターの制御下での該タンパク質は、本発明の第1の局面の意味でのトランスジェニックコード配列であり得る。
【0026】
ヘルパー機能についてのさらなる例示的な情報は、例えば、McPherson et al., Virology 147, 217-222 (1985)に見出され得る。
【0027】
本発明の第1の局面の細胞は、AAV粒子を提供する手段ではない。これは、新たに作られた構造タンパク質VP1、VP2およびVP3が存在しないとの要件により表現される。特に、該細胞は、cap遺伝子を含まない、および/または任意のAAV cap遺伝子産物を発現し得ない。しかし、考えられることは、該細胞の製造の目的のために、形質導入が、AAV粒子を用いてもたらされるということである。該粒子は、構造タンパク質VP1、VP2およびVP3を含むが;該粒子も得られた細胞も、該構造タンパク質または任意のcap遺伝子産物を新たに作ることができない。
【0028】
驚くべきことに、かつcap遺伝子の非存在にも関わらず、本発明の細胞は、機能する条件的発現系を提供する。
【0029】
第1の局面の細胞は、1つ以上のヘルパーポリペプチドに応答して、トランスジェニックコード配列を発現するための手段である。以下に開示する本発明の好ましい適用から明らかなように、ヘルパーポリペプチド、および適用可能な場合、ヘルパーポリヌクレオチドは、ウイルス、特に、ヒトおよび獣医学の薬物に関連する病原性ウイルスにより提供され得る。ヘルパー機能、即ち、ヘルパーポリペプチドを提供し得るウイルスの存在は、トランスジェニックコード配列の発現を必然的に伴う。トランスジェニックコード配列の翻訳産物の存在および量は、ヘルパーの存在、量および/または活性を決定する手段である。ヘルパーの量および/または活性は、抗ウイルス剤の存在により影響を受け得るので、抗ウイルス剤の存在および/または活性は、また、本発明の第1の局面の細胞を使用することにより決定され得る。
【0030】
かかる細胞は、また、本明細書において、「条件的発現系」ともいい、該細胞に含まれる1つまたは複数の核酸は、「レプリコンベクター」ともいう。条件的発現系の利点は、それが、アデノウイルス感染およびヘルペスウイルス感染の両方により活性化され得るということである。なお、条件的発現系は、アデノウイルスゲノムまたはヘルペスウイルスゲノムのいずれにも相同性を示さない。これは、レプリコンベクターと目的のウイルスの間の任意の所望されない相同組換えを排除する。相同の場合に生じ得る問題点は、例えば、Mohr et al., PLoS Pathog 8(6): e1002728. doi:10.1371/journal.ppat.1002728 (2012)に記載される。さらに、条件的発現系は、エピソーム状態および組み込み状態の両方において良好に機能する(perform);以下のさらに開示される対応する好ましい態様を参照。条件的発現系の主な特徴は、その活性化が、(i)レプリコンベクターの複製および(ii)トランスジェニックコード配列の転写、および適用可能な場合、翻訳の両方に関与することである。
【0031】
第2の局面において、本発明は、(a)(aa) 5’~3’方向に、(i) 少なくとも1つのアデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;(ii) (b)の1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得るプロモーター;(iii) (aa)(ii)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列を含む核酸;(ab) 5’~3’方向に、(i) (b)の該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得るプロモーター;(ii) (ab)(i)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列を含む核酸;ならびに任意に(b) 発現可能な形態で該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドをコードし、かつ任意に該1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドを提供する1つ以上の核酸を含むキットに関し、該キットは、AAV cap遺伝子も任意のAAV cap遺伝子産物を発現する手段も含まない。
【0032】
その最も広い定義において、本発明の第2の局面のキットは、第1の局面に関して定義される2つの核酸(aa)および(ab)を含む。任意に、該キットは、発現可能な形態で上記した1つまたは複数のヘルパーポリペプチドをコードし、かつ適用可能な場合、該1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドを提供する1つ以上の核酸を含む。従って、および1つの好ましい態様において、該キットは、3つの別個の型の核酸(aa)、(ab)および(b)を含む。第1の局面に必要な細胞は、第2の局面のキットに含まれ得るが、その必要はない。
【0033】
該キットが細胞を含む限り、(aa)および(ab)の該核酸は、該細胞に含まれ、該細胞が、AAV cap遺伝子を含まない、および/またはAAV cap遺伝子産物を発現し得ないことが好ましい。その理由は、第1の局面に関して上記で説明したものであり;本発明は、AAV粒子を提供するための手段および方法を提供することを意図しない。
【0034】
好ましくは、該細胞は、AAV cap遺伝子のいずれかまたはVP1、VP2もしくはVP3のいずれかをコードする核酸を含まない。同じく好ましい態様は、以下により詳細に記載する第2の局面のキットに準用する。
【0035】
本発明の第1および第2の局面の両方の好ましいトランスジェニックコード配列は、発現の際に、トランスジェニックタンパク質、好ましくは検出可能なシグナルを生成するトランスジェニックタンパク質を産生するトランスジェニックコード配列である。具体例としては、ルシフェラーゼならびにEGFPおよびRFP等の蛍光レポーターを含む当該分野で公知の他のレポーター遺伝子が挙げられる。
【0036】
本発明のいずれかの局面の特に好ましい態様は、ルシフェラーゼをコードするトランスジーンコード配列に関し、核酸(aa)中のプロモーターはAAV p40であり、核酸(ab)中のプロモーターは、p19プロモーターと組み合わさったAAV p5プロモーターである。代替において、p40は、いずれかの核酸のために使用され得る。その場合において、p40を直接活性化し得る1つもしくは複数のヘルパーポリペプチドまたは1つもしくは複数のヘルパーウイルスのそれぞれが好ましい。
【0037】
さらに好ましいトランスジーンとしては、GFP等の蛍光タンパク質、ならびにその遺伝子産物がβ-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ(GUS)およびアルカリ性ホスファターゼ(AP)等の酵素アッセイにより検出され得るトランスジーンが挙げられる。
【0038】
用語「から生じる」は、対応する天然供給源中のその存在と同一である物質の組成物、特に、ポリペプチドまたは核酸をいう。
【0039】
用語「に由来する」は、該物質の組成物をその天然の存在と異ならしめるが少なくとも実質的な程度、機能を維持する改変を可能にする意味において、より一般的な意味を有する。実質的な機能の程度の維持は、好ましくは、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%の機能の維持または機能もしくは活性の完全な維持(100%)をいう。
【0040】
第1の局面のセットおよび第2の局面のキットの両方の好ましい態様において、(i) (aa)および(ab)の核酸の配列は、単一の環状核酸に含まれ、好ましくは、(ab)の核酸の配列は、5’~3’方向において、(aa)の核酸の配列内の(aa)(i)の後かつ(aa)(ii)の前に位置する;(ii) (aa)および(ab)の核酸の配列は、各々別個の環状核酸に含まれる;(iii) (aa)および(ab)の核酸の配列は、単一の直鎖状核酸に含まれ、好ましくは、(ab)の核酸の配列は、5’~3’方向において、(aa)の核酸の配列内の(aa)(i)の後かつ(aa)(ii)の前に位置する;または(iv) (aa)および(ab)の核酸の配列は、各々別個の直鎖状核酸に含まれる。
【0041】
環状核酸、即ち、選択肢(i)および(ii)が特に好ましい。これら2つの好ましい選択肢の中で、選択肢(i)、即ち、単一の環状核酸が特に好ましい。これは、とりわけ、宿主細胞の有害な反応が、環状DNAに比べて直鎖状DNAに対して一般的により強いからである。
【0042】
別の好ましい態様において、(aa)および(ab)の核酸の配列は、単一の直鎖状核酸に含まれ、好ましくは、(ab)の核酸の配列は、5’~3’方向において、(aa)の核酸の配列内の(aa)(i)の後かつ(aa)(ii)の前に位置し、トランスジェニックコード配列(aa)(iii)の後には、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列が逆方向において続く。
【0043】
かかる単一の核酸は、好ましくは、本発明のビリオンに含まれる。
【0044】
環状核酸(例えば、選択肢(i)および(ii)のもの)は特定の技術的効果を必然的に伴う。特に、環状核酸は、一旦、細胞中に存在すると、細胞機構により増幅される。
【0045】
一方、直鎖状核酸、即ち、選択肢(iii)および(iv)の直鎖状核酸は、宿主細胞のゲノムに安定に組み込まれ得る。
【0046】
各々の場合において、本発明の1つまたは複数の核酸は、repと該トランスジェニックコード配列の産物との融合タンパク質をコードしない。実際、(aa)(i)と(aa)(ii)の間に配列(ab)を有する上記選択肢(i)の構成は、融合タンパク質をコードしない。
【0047】
第1および第2の局面のさらに好ましい態様において、(i) (aa)および(ab)の両方の核酸の配列は、該細胞のゲノムDNAに含まれる;または(ii) (ab)の核酸の配列は、該細胞のゲノムDNAに含まれる。
【0048】
さらに好ましい態様において、(i) (aa)(ii)のプロモーターは、AAVプロモーターp40、p5、p19および該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドを天然にコードするウイルス由来の後期プロモーターからなる群より選択され、好ましくはAAV p40プロモーターである;および/または(ii) (ab)(i)のプロモーターは、プロモーターp5、p19およびp40から選択され、好ましくはp5またはp19であり、さらにより好ましくはp5およびp19プロモーターの組み合わせである。言及した後期プロモーターの例は、アデノウイルス主要後期プロモーター(major late promoter)(MLP)、HCMV由来のUL94-プロモーターおよびHSV-1由来のUL16プロモーターである。
【0049】
p40プロモーターに関連して上記したものの類似物として、用語「p5」および「p19」は、本明細書で使用する場合、その機能的ホモログを包含する。特に、p5およびp19野生型プロモーターのそれぞれと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を示し、プロモーターを保持するプロモーターが包含される。
【0050】
p5は、上記したGenBankデータベースエントリーに開示されるAAV2ゲノム配列の190位と310位の間に位置する。p5プロモーターについてのさらなる情報は、例えば、Chang et al., J. Virol. 63, 3479-3488 (1989)に見出され得る。プロモーターp19およびp40は、上記したGenBankエントリーNC_001401.2に開示されるAAV2ゲノム配列の720位~873位および1700位~1853位のそれぞれに位置する。各々のプロモーターについてのさらなる情報は、McCarty, J. Virol. 65, 2936-2945 (1991)に見出され得る。
【0051】
好ましい態様において、p40プロモーターは、伸長された(extended)rep結合部位を含む、および/またはAAV2ゲノムの上記1700位から2287位まで伸びる。1854位~2287位は、5’ UTRを含み、これは、小さなイントロン(1907~2227位)を含む。5’ UTRは、完全かつ厳重な調節が所望される場合、好ましくは、存在する。
【0052】
より詳細には、および特定の理論に拘束されることを望まないが、ヘルパーポリペプチドおよびヘルパーポリヌクレオチド、例えば、VA RNAによるp40プロモーターの活性化は、p5およびp19プロモーターの活性化/抑制解除を含み、これは、次いで、p40プロモーターを活性化するrepタンパク質の発現を導く。
【0053】
2つの好ましいアデノウイルスヘルパーポリペプチドについての分子機構は、以下のとおりである:
【0054】
アデノウイルスE1a:E1a:p300:YY1のp5プロモーターへの結合は、YY1活性化ドメインの露出を含み、rep発現を駆動するp5プロモーターの活性化を導き、p19およびp40プロモーターの活性化を導く。抑制された状態において、YY1転写因子は、p5rep結合要素に結合したrepタンパク質の近位にあり、これは、p5プロモーターの阻害を導く。(Shi et al., Cell. 1991 Oct 18;67(2):377-88. PMID: 1655281)
【0055】
アデノウイルスE2a:アデノ随伴ウイルスp5プロモーターおよびアデノウイルスE1aおよびE2a初期および主要後期プロモーターは、6~27倍の範囲で発現を増大させることによりDNA結合タンパク質に応答する(Chang, and Shenk, J. Virol. (1990), 64:2103-2109)。
【0056】
好ましいプロモーター要素は、以下のとおりである。
【0057】
p40プロモーターの調節および誘導は、インタクトのp40プロモーター構造、ならびに好ましくはさらにp5およびp19プロモーターの要素/配列を必要とする。
【0058】
p5プロモーターは、rep78およびその選択的スプライシングバリアントp68の発現を調節する。Rep78およびRep68は、BおよびCパリンドロームの近位のアデノ随伴ウイルス(AAV)末端反復配列のAステムの25-bp配列内に含まれる直鎖状DNA配列に結合し得る(McCarthy et al., J. Virol. (1994), 68:4988-4997)。p5プロモーターは、YY1および主要後期転写因子MLTFに対する重要な転写因子結合部位を含む(参考文献Shi et al. 1991)。ITRにおけるいくつかのrep結合要素(Aステムrep結合部位)、p5およびp19プロモーターのそれぞれは、潜伏期の間にp5のrep媒介性プロモーター抑制を媒介するために重要である。次いで、ITRならびにp5およびp19プロモーターにおけるrepタンパク質結合部位は、アデノウイルスヘルパーウイルスの存在下での生産的産生の間にp19およびp40プロモーターの活性のためのトランスアクチベーターとして作用する(Pereira et al, J Virol. (1997), 71:1079-88)。p5プロモーター内のRep結合配列は、YY1イニシエーター配列とTATA結合部位の間に位置する(McCarthy et al., 1994)。p19プロモーターのrep媒介性活性は、主にSP1 -50部位およびCArG-140部位の2つの部位によりもたらされる。p40プロモーターのrep誘導は、SP1-50部位およびTATA -30部位ならびに以前に同定されたp19 CArG -140部位(Ph.D. thesis by Daniel Francis Lackner; University of Florida Digital Collections)に依存する。p19プロモーターは、転写開始部位の上流に位置するいくつかの転写因子結合部位:SP1 -50、GGT -110、SP1 -130、cArG-140を含む。-50、-110、および-130部位は、SP1に結合することが見出され、-140部位はSRE転写因子に結合する(Pereira and Muzyczka, J. Virol. (1997a), 71:1747-1756)。p40プロモーターは、AP1 -40、SP1 -50、GGT -70、およびMLTF -100部位を含む(Pereira and Muzyczka, J. Virol. (1997b), 71:4300-4309)。
【0059】
上記したように、p40プロモーターは、好ましくは、伸長されたrep結合部位を含み、これは、AAVイントロンからのmRNAのスプライシングを増加させる。従って、本発明の構築物は、好ましくは、nt 2287まで伸長する全長p40プロモーターを含む(Qiu and Pintel, Mol Cell Biol. (2002), 22:3639-52)。
【0060】
AAVプロモーターに由来する代替的または合成プロモーターは、好ましくは、少なくとも転写因子結合部位、およびAAVイントロンの効率的なスプライシングに必要なp40プロモーター近位部位を含むrep結合部位を含む。
【0061】
さらに好ましい態様において、(ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep78および/またはAAV Rep68ポリペプチドをコードし、好ましくは、(ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep52および/またはAAV Rep40ポリペプチドをさらにコードする。
【0062】
言及したrepタンパク質(GenBankバージョン209.0)についてのGenBankエントリーは以下のとおりである:YP_680422.1 (Rep68)、YP_680423.1 (Rep78)、YP_680424.1 (Rep40)およびYP_680425.1 (Rep52);図1Dおよび配列番号:6~9も参照。AAV複製におけるrepタンパク質の役割は、当該分野において周知であり、例えば、Labow et al., J. Virol. 60, 251-258 (1986); Hermonat et al., J. Virol. 51, 329-339 (1984); Ni et al., J. Virol. 68, 1128-1138 (1994);およびRyan et al., J. Virol. 70, 1542-1553 (1996)に記載される。上記の特定のrepタンパク質の代わりに、機能的ホモログが使用され得ることが理解される。機能的ホモログは、上記の特定の配列に少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を示し、複製を行うことが可能である。好ましくは、複製活性は、上記特定の配列により画定される親タンパク質の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%である。
【0063】
本発明の第1および第2の局面の両方のさらに好ましい態様において、(b)の核酸は、存在する限り、(i)ヘルパーウイルス中に含まれる;または(ii)該細胞は、(b)の該核酸をさらに含む。
【0064】
上記したように、1つ以上のヘルパーポリペプチドは、ヘルパーウイルスの最小版である。本好ましい態様の項目(i)は、該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドを提供する手段としてヘルパーウイルスの要件を導入する。ヘルパーウイルスは、本発明に従って細胞に感染し得、かつ本発明に従ってレプリコンベクターの複製およびトランスジーンコード配列の転写を誘導する遺伝子産物を提供し得るウイルスとして機能的に画定され得る。ヘルパー機能は、検出または特徴付されるべきウイルスにより提供され得る;以下にさらに開示される本発明の好ましい適用を参照。
【0065】
さらに好ましい態様において、(aa)の核酸配列は、2つのAAV逆方向末端反復配列を含み、第2の逆方向末端反復配列は、(aa)(iii)のトランスジェニック配列の後に逆方向において位置する。
【0066】
別の好ましい態様において、(b)の1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび、適用可能な場合、1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択されるウイルスから生じる。本態様に関して特に好ましいウイルスは、アデノウイルス5(Ad5)、HSV-1、HSV-2およびHCMVである。これらのウイルスのゲノム配列は、上記したデータベースに見出され得る。例えば、データベースエントリーAC_000008.1のAd5およびデータベースエントリーNC_001806.2のHSV-1。
【0067】
上記したように、好ましい態様において、該細胞は、真核生物、哺乳動物、齧歯類、霊長類またはヒトの細胞である。
【0068】
特に好ましい態様において、該ヘルパーウイルスは、HCMVであるか、または該1つ以上のヘルパーポリペプチドは、HCMVから生じるかもしくはそれに由来し、該細胞は、ヒト包皮線維芽細胞(HFF)またはMRC5細胞である。
【0069】
さらに特に好ましい態様において、該ヘルパーウイルスは、アデノウイルスであり、該細胞は293細胞である。
【0070】
さらに特に好ましい態様において、該ヘルパーウイルスは、HSV-1またはHSV-2であり、該細胞はHFF細胞である。
【0071】
さらに特に好ましい態様において、該ヘルパーウイルスは、HSV-1またはHSV-2であり、該細胞は293細胞である。
【0072】
さらに特に好ましい態様において、該ヘルパーウイルスは、HSV-1またはHSV-2であり、該細胞はVero細胞である。
【0073】
第2の態様のキットの特に好ましい態様において、(a)該細胞は容器(vessel)中に提供される;(b)該細胞は、複数の場合において、マルチウェルプレートのウェル中に提供される;および/または(c)該キットは、指示、好ましくは、以下にさらに開示される本発明の方法を実施するための指示を含む使用説明書を含む。
【0074】
上記好ましい態様における態様(b)は、ハイスループット適用のために前もって形成されたキットの実施に関する。例えば、該マルチウェルプレートのウェル中に含まれる細胞は、低温、好ましくは、-80°C以下で保存され得る。その使用の前に、細胞は、冷凍庫から取り出され、融解される。かかるマルチウェルプレートが使用され得る構想されたアッセイは、各ウェルに対する臨床試料の添加、所定の量の時間、例えば、2日のインキュベーション、および検出可能なシグナル、例えば、ルシフェラーゼにより生成される発光シグナルの続いての検出を含み、ルシフェラーゼは、上記したように、好ましいトランスジェニックコード配列である。
【0075】
同様に、ハイスループット形式ではない個々の試験のために設計される態様(a)に従う場合も、該細胞は、低温、好ましくは、-80°C以下で提供または保存され得る。
【0076】
第1および第2の局面により画定される条件的発現系ならびにその好ましい態様は、適用の宿主に接近可能(accessible)にする。適用は、以下のさらなる局面のものを含む。
【0077】
第3の局面において、本発明は、ウイルス、好ましくは、病原性ウイルス、および/または好ましくは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択されるものが、抗ウイルス剤により阻害されるかどうかを決定する方法を提供し、該方法は、第1の局面のキットを、該ウイルスを含む試料と接触させる工程を含み、該接触は、(i)該抗ウイルス剤の存在下および(ii)その非存在下でもたらされ、ケース(ii)において、該キットまたはビリオンのそれぞれに従って画定されるトランスジェニックコード配列の産物の量がより多いことは、該ウイルスが該剤により阻害されたことを示す。
【0078】
さらに説明するために、特定の病原性ウイルスが、アシクロビル等の抗ウイルス剤を用いた治療に対して耐性であるが、他はそうではないことが明らかになった。鑑別診断の目的のために、および治療の決定の補助として、第3の局面の方法は、所定の試料に含まれる場合、病原性因子が、アシクロビル等の所定の抗ウイルス剤に耐性であるかどうかを決定するために使用され得る。
【0079】
第3の局面の好ましい態様において、および特にアシクロビルが使用される限り、ヘルペスウイルス科のメンバーは、20μg/mlのアシクロビルの存在下で産生されるトランスジェニックタンパク質の量または該トランスジェニックタンパク質により放出されるシグナルが、アシクロビルの非存在下での量またはシグナル強度のそれぞれの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%、好ましくは50%である場合に耐性であると考えられる。第3の局面のさらに好ましい態様において、および特にアシクロビルが使用される限り、ヘルペスウイルス科のメンバーは、100μg/mlのアシクロビルの存在下で産生されるトランスジェニックタンパク質の量または該トランスジェニックタンパク質により放出されるシグナルが、アシクロビルの非存在下での量またはシグナル強度のそれぞれの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%、好ましくは少なくとも30%である場合に耐性であると考えられる。
【0080】
改変された実施において、候補抗ウイルス剤は、確立された抗ウイルス治療の代わりに使用され得、それにより、新規の抗ウイルス剤を同定および/または検証する手段および方法が利用可能になる。従って、本発明は、第3の局面に関する局面において、候補抗ウイルス剤がウイルスに対して抗ウイルス活性を有するかどうかを決定する方法を提供し、該ウイルスは、好ましくは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択され、該方法は、第1の局面のキットを、該ウイルスと接触させる工程を含み、該接触は、(i)該候補抗ウイルス剤の存在下および(ii)その非存在下でもたらされ、ケース(ii)において、該キットに従って画定されるトランスジェニックコード配列の産物の量がより多いことは、該候補抗ウイルス剤が該ウイルスに対して抗ウイルス活性を有することを示す。該実施において、該ウイルスは、好ましくは、アデノウイルス科、ヘルペスウイルス科またはアデノ随伴ウイルスから選択されるウイルスの実験室株である。代替において、臨床単離物が使用され得る。以下でさらに開示する第5の局面もこれに関連する。
【0081】
第4の局面において、本発明は、第1の局面において画定される細胞に、前述のいずれかの態様において画定される1つ以上のヘルパーポリペプチドをコードする、および、任意に、前述のいずれかの態様において画定される1つ以上のヘルパーポリヌクレオチドを提供する1つ以上の核酸を導入する工程を含み、それにより、該トランスジェニックコード配列によりコードされる産物を発現する、条件的遺伝子発現のための方法を提供する。
【0082】
該導入する工程は、一過性トランスフェクションによっても安定なトランスフェクションによってもよい。また、安定なトランスフェクションは、該1つ以上の核酸の第1のサブセットについて使用され得、一過性トランスフェクションは、該1つ以上の核酸の第2のサブセットについて使用され得る。
【0083】
第5の局面において、本発明は、感染性ウイルスを検出および/または定量する方法を提供し、該ウイルスは、好ましくは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択され、該方法は、第1の局面の細胞を、該感染性ウイルスを含むまたは含むと疑われる試料と接触させる工程を含み、該細胞に従って画定されるトランスジェニックコード配列の産物の存在および/または量は、該感染性ウイルスの存在および/または量を示す。
【0084】
好ましくは、該試料は、ヒト等の個体から採取された試料である。好ましくは、該試料は、組織生検または体液等の組織試料である。好ましくは、体液としては、気管支肺胞洗浄(BAL)、ヘルペス水疱およびそれに含まれる液体(fluid)が挙げられる。
【0085】
アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択されるウイルスを検出および/または定量する代わりに、第6の局面の該方法は、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択されるウイルスに基づいて、複製コンピテントな(replication competent)ウイルスベクターを検出および/または定量する目的に、類似して適用され得る。
【0086】
第6の局面において、本発明は、ウイルスに対して抗ウイルス活性を有する化合物を同定するための方法を提供し、該ウイルスは、好ましくは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択され、該方法は、(a) 前述する態様のいずれかにおいて画定される細胞の集団の細胞に、前述のいずれかの態様において画定される1つ以上のヘルパーポリペプチドをコードする、および、任意に、前述のいずれかの態様において画定される1つ以上のヘルパーポリヌクレオチドを提供する1つまたは複数の核酸を導入する工程;(b) 該導入の後に、工程(a)の細胞集団により発現される(aa)(iii)の該トランスジェニックコード配列によりコードされる産物の量を決定する工程;(c) 前述のいずれかの態様において画定される細胞の集団と、試験されるべき化合物を接触させる工程;(d) 工程(c)の細胞集団の細胞に、工程(a)に規定される該1つまたは複数の核酸を導入する工程;(e) 該導入の後に、工程(d)の細胞集団により発現される該トランスジェニックコード配列によりコードされる産物の量を決定する工程;(f) 工程(b)で決定された該産物の量と工程(e)で決定された該産物の量を比較する工程を含み、工程(b)で決定された産物に比べて工程(e)で決定された産物が少ないことは、試験された化合物が抗ウイルス活性を有することを示す。
【0087】
該導入する工程は、一過性トランスフェクションによっても安定なトランスフェクションによってもよい。また、安定なトランスフェクションは、該1つ以上の核酸の第1のサブセットについて使用され得、一過性トランスフェクションは、該1つ以上の核酸の第2のサブセットについて使用され得る。
【0088】
さらなる局面において、本発明は、5’~3’方向に、(i) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;(ii) 1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得る少なくとも1つのプロモーター、好ましくは、AAVプロモーターp5およびAAVプロモーターp19;(iii) (ii)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列;(iv) 該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に該1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得るプロモーター、好ましくは、AAVプロモーターp40;(v) (iv)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列;(vi) ポリアデニル化部位;ならびに(vii) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列を含む核酸を含むビリオンを提供し、該ビリオンは、AAV cap遺伝子を含まない、および/または任意のAAV cap遺伝子産物を発現し得ない。
【0089】
用語「ビリオン」は、その技術分野で確立された意味を有し、ウイルス粒子に関する。好ましくは、該ウイルス粒子は、任意の細胞の外側にある。一般的に、ビリオンは、キャプシドにより囲まれる1つ以上の核酸分子を含むかまたはそれからなり、該キャプシドは、典型的には、ウイルスコードタンパク質を含むかまたはそれからなる。
【0090】
該ビリオンに含まれる核酸は、本発明の細胞および本発明のキットに関して上記にさらに開示される特徴を示す。本発明の細胞およびキットの好ましい態様は、適用可能な限り、本発明のビリオンの好ましい態様を画定する。
【0091】
好ましい態様において、該ビリオンは、上記した核酸および該キャプシドタンパク質からなる。
【0092】
キャプシドタンパク質をコードする遺伝子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6, AAV7、AAV8、AAV9およびrhAAV10から得られ得る。キャプシドタンパク質は、合成物であり得、ペプチド挿入物を含み得るか、または種々のAAV血清型由来のcap遺伝子の混合物を含むDNAファミリーシャッフリングにより得られ得る;例えば、Michelfelder S, Varadi K, Raupp C, Hunger A, Koerbelin J, Pahrmann C, Schrepfer S, Mueller OJ, Kleinschmidt JA, Trepel M. PLoS One. 2011;6(8):e23101; Mueller OJ, Kaul F, Weitzman MD, Pasqualini R, Arap W, Kleinschmidt JA, Trepel M. Nat Biotechnol. 2003 Sep;21(9):1040-6;およびGrimm D, Lee JS, Wang L, Desai T, Akache B, Storm TA, Kay MA. J Virol. 2008 Jun;82(12):5887-911を参照。好ましいキャプシドタンパク質は、VP1、VP2およびVP3である。
【0093】
典型的には、キャプシドタンパク質は、AAVのcap遺伝子によりコードされる。ビリオンが、典型的には、cap遺伝子産物を含むが、上記するように、および本発明の他の局面と一致して、本発明のビリオンは、AAV cap遺伝子を含まない、および/または任意のAAV cap遺伝子産物を発現し得ないことに留意することは重要である。
【0094】
好ましいキャプシドタンパク質は、VP1、VP2およびVP3である。
【0095】
本発明のビリオンは、好ましくは、感染性ビリオンである。従って、それは、別のウイルスに既に感染している細胞を含む細胞に感染し得、該他のウイルスは、好ましくは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択される。
【0096】
本発明のビリオンに含まれる核酸のトポロジーに関しては、直鎖状核酸が好ましい。特に好ましい直鎖状核酸は、配列番号:10に示される。配列番号:10は、配列番号:1の1~4854位に対応する。
【0097】
本発明のビリオンは、該ビリオンに含まれる核酸のための好ましい輸送媒介物(transport vehicle)である。
【0098】
本明細書、特に、特許請求の範囲中に特徴づけられる態様に関しては、従属項に規定される各態様が、該従属項が従属する各請求項(独立または従属)の各態様と組み合わせることが意図される。例えば、3つの選択肢A、BおよびCを記載する独立請求項1、3つの選択肢D、EおよびFを記載する従属請求項2ならびに3つの選択肢G、HおよびIを記載する請求項1および2に従属する請求項3の場合、本明細書は、そうでないと明確に記載されない限り、組み合わせA、D、G; A、D、H; A、D、I; A、E、G; A、E、H; A、E、I; A、F、G; A、F、H; A、F、I; B、D、G; B、D、H; B、D、I; B、E、G; B、E、H; B、E、I; B、F、G; B、F、H; B、F、I; C、D、G; C、D、H; C、D、I; C、E、G; C、E、H; C、E、I; C、F、G; C、F、H; C、F、Iに対応する態様を明白に開示すると理解されるべきである。
【0099】
同様に、および独立請求項および/または従属請求項が選択肢を記載しない場合においても、従属請求項が複数の先行する請求項を引用する場合、それが包含する内容(subject-matter)の任意の組み合わせが、明示的に開示されていると考えられると理解される。例えば、独立請求項1、請求項1を引用する従属請求項2ならびに請求項2および1の両方を引用する従属請求項3の場合、請求項3および1の内容の組み合わせは、請求項3、2および1の内容の組み合わせであるように明確かつ明白に開示されるということになる。請求項1~3のいずれかを引用するさらなる従属請求項4が存在する場合、請求項4および1、請求項4、2および1、請求項4、3および1、ならびに請求項4、3、2および1の内容の組み合わせが、明確かつ明白に開示されるということになる。
【0100】
即ち、本発明の要旨は、以下のものに関する。
項1
5’~3’方向に、
(i) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
(ii) AAVp5プロモーターまたはAAVp5プロモーターとAAVp19プロモーターの組み合わせから選択されるプロモーター;
(iii) (ii)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列;
(iv) AAV2ゲノムの1700位から2287位まで伸長するAAV p40プロモーター、または該AAV p40プロモーターに少なくとも95%の配列同一性を示しかつAAV p40プロモーターのプロモーター活性を保持するプロモーター;
(v) (iv)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列;
(vi) ポリアデニル化部位;ならびに
(vii) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
を含む核酸を含むビリオンであって、該ビリオンは、AAV cap遺伝子を含まない、ビリオン。
項2
該ビリオンは、AAVキャプシドタンパク質を含み、好ましくは、該ビリオンは、項1に規定される核酸および該キャプシドタンパク質からなる、項1記載のビリオン。
項3
(aa) 5’~3’方向に、
(i) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
(ii) AAV2ゲノムの1700位から2287位まで伸長するAAV p40プロモーター、または該AAV p40プロモーターに少なくとも95%の配列同一性を示しかつAAV p40プロモーターのプロモーター活性を保持するプロモーター;および
(iii) (aa)(ii)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列;および
(iv) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列
を含む核酸;ならびに
(ab) 5’~3’方向に、
(i) AAVp5プロモーターまたはAAVp5プロモーターとAAVp19プロモーターの組み合わせから選択されるプロモーター;および
(ii) (ab)(i)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列
を含む核酸を含む細胞であって、該細胞は、AAV cap遺伝子を含まず、
(i) (aa)および(ab)の核酸の配列は、単一の環状核酸に含まれ、(ab)の核酸の配列は、5’~3’方向において、(aa)の核酸の配列内の(aa)(i)の後かつ(aa)(ii)の前に位置する;または
(ii) (aa)および(ab)の核酸の配列は、単一の直鎖状核酸に含まれ、(ab)の核酸の配列は、5’~3’方向において、(aa)の核酸の配列内の(aa)(i)の後かつ(aa)(ii)の前に位置する、細胞。
項4
(a)(aa) 5’~3’方向に、
(i) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
(ii) AAV2ゲノムの1700位から2287位まで伸長するAAV p40プロモーター、または該AAV p40プロモーターに少なくとも95%の配列同一性を示しかつAAV p40プロモーターのプロモーター活性を保持するプロモーター;
(iii) (aa)(ii)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列;および
(iv) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列
を含む核酸;
(ab) 5’~3’方向に、
(i) AAVp5プロモーターまたはAAVp5プロモーターとAAVp19プロモーターの組み合わせから選択されるプロモーター;および
(ii) (ab)(i)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列
を含む核酸;ならびに任意に
(b) 発現可能な形態で該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドをコードし、かつ任意に該1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドを提供する1つ以上の核酸、ここで、該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択されるウイルスから生じる、
を含むキットであって、該キットは、AAV cap遺伝子を含まず、
(i) (aa)および(ab)の核酸の配列は、単一の環状核酸に含まれ、(ab)の核酸の配列は、5’~3’方向において、(aa)の核酸の配列内の(aa)(i)の後かつ(aa)(ii)の前に位置する;または
(ii) (aa)および(ab)の核酸の配列は、単一の直鎖状核酸に含まれ、(ab)の核酸の配列は、5’~3’方向において、(aa)の核酸の配列内の(aa)(i)の後かつ(aa)(ii)の前に位置する、キット。
項5
(aa)および(ab)の該核酸は、細胞中に含まれ、該細胞は、AAV cap遺伝子を含まない、項4記載のキット。
項6
(i) (aa)および(ab)の両方の核酸の配列は、該細胞のゲノムDNAに含まれる、項3記載の細胞。
項7
5’~3’方向に、
(i) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
(ii) AAVp5プロモーターまたはAAVp5プロモーターとAAVp19プロモーターの組み合わせから選択されるプロモーター;
(iii) (ii)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列;
(iv) AAV2ゲノムの1700位から2287位まで伸長するAAVp40プロモーター;
(v) (iv)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列;ならびに
(vi) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列
を含む核酸を含む、
項3および6いずれか記載の細胞。
項8
(ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep78および/またはAAV Rep68ポリペプチドをコードし、好ましくは、(ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep52および/またはAAV Rep40ポリペプチドをさらにコードする、項3および6~7いずれか1項記載の細胞。
項9
配列同一性が、少なくとも98%の配列同一性である、項3および6~8いずれか1項記載の細胞。
項10
AAVp40プロモーターが、AP1 -40、SP1 -50、GGT -70、およびMLTF -100部位を含む、項3および6~9いずれか1項記載の細胞。
項11
AAVp40プロモーターが、伸長されたrep結合部位を含み、該部位は、AAVイントロンからのmRNAのスプライシングを増加させる、項3および6~10いずれか1項記載の細胞。
項12
AAV2ゲノムは、GenBankエントリーNC_001401.2に従う、項3および6~11いずれか1項記載の細胞。
項13
少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を示す該プロモーターが、AAV2ゲノムの1700位から2287位まで伸長する、項3および6~12いずれか1項記載の細胞。
項14
(i) (aa)および(ab)の両方の核酸の配列は、該細胞のゲノムDNAに含まれる、項4または5記載のキット。
項15
5’~3’方向に、
(i) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
(ii) AAVp5プロモーターまたはAAVp5プロモーターとAAVp19プロモーターの組み合わせから選択されるプロモーター;
(iii) (ii)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列;
(iv) AAV2ゲノムの1700位から2287位まで伸長するAAVp40プロモーター;
(v) (iv)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列;ならびに
(vi) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列
を含む核酸を含む、
項4、5および14いずれか記載のキット。
項16
(ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep78および/またはAAV Rep68ポリペプチドをコードし、好ましくは、(ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep52および/またはAAV Rep40ポリペプチドをさらにコードする、項4、5および14~15いずれか1項記載のキット。
項17
(b)の核酸は、
(i)ヘルパーウイルス中に含まれる;または
(ii)該細胞は、(b)の該核酸をさらに含む、
項4、5および14~16いずれか1項記載のキット。
項18
(aa)および(ab)の該核酸は、細胞中に含まれ、該細胞は、AAV cap遺伝子を含まず、ここで、
(a)該細胞は容器(vessel)中に提供される;
(b)該細胞は、複数の場合において、マルチウェルプレートのウェル中に提供される;および/または
(c)該キットは、指示を含む使用説明書を含む、
項4、5および14~17いずれか1項記載のキット。
項19
配列同一性が、少なくとも90%の配列同一性である、項4、5および14~18いずれか1項記載のキット。
項20
AAVp40プロモーターが、AP1 -40、SP1 -50、GGT -70、およびMLTF -100部位を含む、項4、5および14~19いずれか1項記載のキット。
項21
AAVp40プロモーターが、伸長されたrep結合部位を含み、該部位は、AAVイントロンからのmRNAのスプライシングを増加させる、項4、5および14~20いずれか1項記載のキット。
項22
AAV2ゲノムは、GenBankエントリーNC_001401.2に従う、項4、5および14~21いずれか1項記載のキット。
項23
5’~3’方向に、
(i) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
(ii) AAVp5プロモーターまたはAAVp5プロモーターとAAVp19プロモーターの組み合わせから選択されるプロモーター;
(iii) (ii)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列;
(iv) AAV2ゲノムの1700位から2287位まで伸長するAAVp40プロモーター;
(v) (iv)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列;ならびに
(vi) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列
を含む核酸を含む、
項1および2いずれか記載のビリオン。
項24
(ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep78および/またはAAV Rep68ポリペプチドをコードし、好ましくは、(ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep52および/またはAAV Rep40ポリペプチドをさらにコードする、項1、2および23いずれか記載のビリオン。
項25
配列同一性が、少なくとも90%の配列同一性である、項1、2、23および24いずれか1項記載のビリオン。
項26
AAVp40プロモーターが、AP1 -40、SP1 -50、GGT -70、およびMLTF -100部位を含む、項1、2および23~25いずれか1項記載のビリオン。
項27
AAVp40プロモーターが、伸長されたrep結合部位を含み、該部位は、AAVイントロンからのmRNAのスプライシングを増加させる、項1、2および23~26いずれか1項記載のビリオン。
項28
AAV2ゲノムは、GenBankエントリーNC_001401.2に従う、項1、2および23~27いずれか1項記載のビリオン。
項29
アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択されるウイルスが、抗ウイルス剤により阻害されるかどうかを決定するインビトロ方法であって、該方法は、項4、5および14~22いずれか1項記載のキットまたは項1、2および23~28いずれか1項記載のビリオンを、該ウイルスを含む試料と接触させる工程を含み、該接触は、細胞内で(i)該抗ウイルス剤の存在下および(ii)その非存在下でもたらされ、ケース(i)に比べてケース(ii)において、該キットまたはビリオンのそれぞれに従って画定されるトランスジェニックコード配列の産物の量がより多いことは、該ウイルスが該剤により阻害されたことを示す、インビトロ方法。
項30
項3および6~12いずれか1項に規定される細胞に、1つ以上のヘルパーポリペプチドをコードする、および、任意に、1つ以上のヘルパーポリヌクレオチドを提供する1つ以上の核酸を導入する工程を含み、それにより、該トランスジェニックコード配列によりコードされる産物を発現し、該1つ以上のヘルパーポリペプチドおよび1つ以上のヘルパーポリヌクレオチドは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択されるウイルスから生じる、条件的遺伝子発現のためのインビトロ方法。
項31
感染性ウイルスを検出および/または定量するインビトロ方法であって、該ウイルスは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択され、該方法は、項3および6~12いずれか1項に規定される細胞を、該感染性ウイルスを含むまたは含むと疑われる試料と接触させる工程を含み、該細胞に従って画定されるトランスジェニックコード配列の産物の存在および/または量は、該感染性ウイルスの存在および/または量を示す、インビトロ方法。
項32
ウイルスに対して抗ウイルス活性を有する化合物を同定するためのインビトロ方法であって、該ウイルスは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択され、該方法は、
(a) 項3および6~12のいずれか1項に規定される細胞の集団の細胞に、1つ以上のヘルパーポリペプチドをコードする、および、任意に、1つ以上のヘルパーポリヌクレオチドを提供する1つまたは複数の核酸を導入する工程、ここで、該1つ以上のヘルパーポリペプチドおよび1つ以上のヘルパーポリヌクレオチドは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択されるウイルスから生じる;
(b) 該導入の後に、工程(a)の細胞集団により発現される(aa)(iii)の該トランスジェニックコード配列によりコードされる産物の量を決定する工程;
(c) 項3および6~12のいずれか1項に規定される細胞の集団と、試験されるべき化合物を接触させる工程;
(d) 工程(c)の細胞集団の細胞に、工程(a)に規定される該1つまたは複数の核酸を導入する工程;
(e) 該導入の後に、工程(d)の細胞集団により発現される該トランスジェニックコード配列によりコードされる産物の量を決定する工程;
(f) 工程(b)で決定された該産物の量と工程(e)で決定された該産物の量を比較する工程
を含み、工程(b)で決定された産物に比べて工程(e)で決定された産物が少ないことは、試験された化合物が抗ウイルス活性を有することを示す、インビトロ方法。
【発明の効果】
【0101】
本発明により、AAV系条件的発現系が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1A-B】A)本発明のレプリコンの概略表示。ITR、逆方向末端反復配列=AAV ori;REP、rep遺伝子=AAVの非構造タンパク質;GLuc、ガウシア(gaussia)ルシフェラーゼORF;HYG、ハイグロマイシン発現カセット;pBR332、細菌ベクター)。B)分析のためのAAVベースのレプリコンベクターの実験的設定。AAVベースのレプリコンを試験するために、標的細胞を、AAVレプリコンベクター(AAV-R)でトランスフェクトする。次いで、これらの細胞を、分析されるべきウイルス(例えば、複製コンピテントなアデノウイルス(Ad))で感染させた。アデノウイルスDNA複製の開始の後、Adゲノムは増幅する。同時に、およびアデノウイルスタンパク質およびRNAの発現(アデノウイルスヘルパー機能と一緒に)と共に、AAVレプリコンベクターを複製し、増幅する。次いで、目的のレプリコンコード遺伝子の発現を誘導し、分泌後、タンパク質を細胞培養上清中に検出し得る。
図1C-1】本発明の好ましいレプリコンベクターの配列。
図1C-2】本発明の好ましいレプリコンベクターの配列。
図1C-3】本発明の好ましいレプリコンベクターの配列。
図1C-4】本発明の好ましいレプリコンベクターの配列。
図1D】好ましいrepタンパク質の配列。
図1E】さらなる注釈を有する本発明のレプリコンの概略表示。
図2】A)一過性トランスフェクションの際にアデノウイルスはレプリコン応答を誘導した。293AおよびU2OS細胞を、pAV-GLuc-Hyg (GLuc)またはpAV-GFP-Hyg (GFP)でトランスフェクトし、かつm-Cherryタンパク質(ADChe)を発現するAD5で100のMOIで感染させるか、またはmock処理した(MOCK)。形質導入の24時間後、ルシフェラーゼ活性を測定し、値をそれぞれのmock感染細胞と比較した。3つの実験の典型。技術的な三連のもの(triplicate)の平均およびSDを示す。B)アデノウイルス感染後の安定な細胞株のレプリコン応答の誘導。AAVレプリコン陰性LE2A2および陽性LE2D8細胞株を、ADCheで100のMOIで感染させ、ルシフェラーゼの誘導を72 hpiに測定した。測定したルシフェラーゼ活性値を、それぞれのmock感染細胞と比較した。4つの実験の典型。技術的な三連のものの平均およびSDを示す。
図3】A)HSV-1感染はAAVレプリコンからのルシフェラーゼ発現を誘導した。293A細胞を、AAVレプリコンベクターでトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後、細胞を、HSV1で0.2、0.5および2のMOIで感染させ、上清のルシフェラーゼ活性を、24および48hpiに測定した。値を、MOCK感染細胞と比較した。技術的な三連のものの平均およびSDを示す。B)レプリコン含有安定細胞株のHSV1での感染後のルシフェラーゼ発現。細胞株LE2D8を、HSV1で0.1、1および10のMOIで感染させた。上清のルシフェラーゼ活性を、12、24、36および48hpiに測定した。値を、MOCK感染細胞と比較した。技術的な三連のものの平均およびSDを示す。
図4】A)AAVレプリコンの最適な誘導は生産的なヘルパーウイルス感染を必要とする。293AおよびU2OS細胞を、AAVレプリコンベクターpAV-GLuc-Hygでトランスフェクトし、3dptにmCherryを発現する第1世代のヒトアデノウイルス5型ベクター(ADChe)または野生型ヒトアデノウイルス5型(AD5-WT)で、それぞれ、1、10および100のMOIで感染させた。上清のルシフェラーゼ活性の2 dpiでの測定を、MOCK感染細胞と比較した。1つの代表的なデータセットの技術的な三連のものの平均およびSDを示す。B)AD5感染の際のレプリコンベクターの増幅。ゲノムおよびウイルスのDNAを、AAVレプリコンベクターでトランスフェクトし、かつADCheで形質導入された293AおよびU2OSから精製した。一倍体ゲノムあたりのGLucのコピー数を、相対的リアルタイムPCRで決定した。ハウスキーピング遺伝子GADPHの増幅を、293AおよびU2OS細胞株の一倍体ゲノム数を定量するために使用した。二連の試料の平均およびSDを示す。C)HSV1感染の際のLE2D8中のAAVレプリコンベクターの増幅。ゲノムおよびウイルスのDNAを、24および48時間後にHSV1で0.1、1および10のMOIで感染させたLE2D8細胞株から精製した。一倍体ゲノムあたりのGLucのコピー数を、半定量的リアルタイムPCRで決定した。細胞のハウスキーピング遺伝子GADPHの増幅を、細胞株の一倍体ゲノム数を定量するために使用した。二連の試料の平均およびSDを示す。
図5】A)ACV処理LE2D8細胞の、ACV感受性およびACV耐性HSV1株での感染。LE2D8細胞株を、野生型HSV-1またはACV耐性HSV-1のいずれかで0.035のMOIでの感染後に0.05~144μg/mlの範囲の種々の濃度のACVで処理した。48hpiにGLuc活性を、評価し、感染させたが処理していない細胞と比較した。3つの実験の典型。技術的な三連のものの平均およびSDを示す。B)終末点希釈アッセイ(endpoint dilution assay)によるACV感受性およびACV耐性HSV1株の耐性試験の検証。LE2D8細胞株を、野生型HSV1またはACV耐性HSV1のいずれかで0.035のMOIでの感染後に1~96μg/mlの範囲の種々の濃度のACVで処理した。感染を7 dpiに計数し、TCID50値を計算した。技術的な二連のものの平均およびSDを示す。
図6】臨床的HSV2単離物を用いたAAVレプリコンベースの耐性試験の適用可能性。LE2D8細胞株を、感受性HSV2(A)またはACV耐性HSV2株(B)で0.035のMOIでの感染後に種々の濃度のACV(0.8、4、20、100および500 μM)で処理した。48hpiにGLuc活性を評価した。技術的な三連のものの平均およびSDを示す。
図7】種々の種由来のヒトアデノウイルスは、レプリコン応答を誘導した。293A細胞を、pAV-GLuc-Hygでトランスフェクトし、かつ対照としてm-Cherryタンパク質を発現するAd5(ADChe)で、ならびにいくつかの異なる血清型:Ad12 (A種、A12)、Ad3およびAd11 (B種、B3およびB11)、Ad9およびAd17 (D種、D9およびD17)、Ad4 (E種、E4)で、1のMOIで感染させた。感染の24時間後、ルシフェラーゼ活性を測定し、値を、mock感染細胞のルシフェラーゼ活性と比較した。技術的な三連のものの相対的誘導値(誘導の倍数(fold induction))の平均およびSDを示す。
図8】既にトランスフェクトした細胞の凍結および前もっての播種はHSV-1感染によるAAVレプリコン誘導を可能にする。293A細胞を、pAV-GLuc-Hygでトランスフェクトし、凍結し、トランスフェクションの(A)24時間および(B)48時間後に96ウェルプレートに前もって播種した。トランスフェクトした細胞を融解し、融解の4、6、20および26時間後に、HSV-1で0.01、0.1および1のMOIで感染させた。48 hpiにGLuc活性を測定した。感染細胞とmock感染細胞の間のルシフェラーゼ活性の比を示す(誘導の倍数);技術的な三連のものの平均およびSDを示す。
図9】AAVレプリコン系形質導入の誘導可能性。(A) A549細胞を、示された密度(pt/細胞)でrAAVレプリコン粒子で形質導入し、6 hpt (形質導入後の時間(hours post transduced))にAd5でMOI 10で感染させたか、またはMOCK感染を維持した。48 hpiにGLuc活性を測定し、形質導入したが感染させていない細胞の発光と比較した。値は、3つの実験の平均を示す。(B) Vero細胞を、rAAVで形質導入し、6 hpt後にHSV-1またはHSV-2のいずれかでMOI 0,1で感染させた。24 hpiおよび48 hpiの上清中のルシフェラーゼ活性測定の結果を、MOCK感染形質導入細胞と比較した。値は、3つの実験の平均を示す。(C) 6 hptにrAAVレプリコン粒子形質導入HFF細胞を、HCMVでMOI 1で感染させ、Spを、p.i. 4および7日後に回収した。ルシフェラーゼ活性を測定し、値を、MOCK感染形質導入細胞のルシフェラーゼ活性と比較した。値は、1つの実験の平均を示す。エラーバーは、技術的な三連のものの平均からの標準偏差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0103】
本実施例は、本発明を説明する。
【実施例0104】
実施例1
例示的なレプリコンベクター
AAVレプリコン系の特徴を試験するために、本発明者らは、マーカー遺伝子としてルシフェラーゼORFを保有するAAVレプリコンベクターを構築した。これは、種々の実験設定においてAAVレプリコンの誘導可能性を試験することを可能にした。本発明者らは、AAV配列の供給源としてpAV1プラスミド(ATCC #VR37215)を使用した。本発明者らは、XhoIおよびApaIについての単一の認識部位の間のAAVを、pTRE-Hyg (Invitrogen)に由来するマルチクローニングサイト(multiple cloning site)およびハイグロマイシン耐性カセットを含む合成オリゴヌクレオチド配列と入れ替えた。XhoI部位は、AAV VP1 ORFの最初にあるp40転写開始部位の380 nt下流に位置し、ApaI部位は、capコード配列の最後にある右の(right)ITRの前(486 nt上流)に位置する。この中間体に、本発明者らは、pGLuc (NEB)由来のPCR増幅したルシフェラーゼORFを挿入した。この構築物を、pAV1-GLuc-Hygと命名した(図1Aおよび1Cならびに配列番号:1)。対照の理由(control reason)のために、本発明者らは、緑蛍光タンパク質(GFP)のORFも、pEGFP-N1 (Clontech)に存在するORFを増幅する同じ位置に挿入した。この対照構築物を、pAV1-GFP-Hygと命名した。
【0105】
本研究においてAAVレプリコンに基づく誘導性遺伝子発現系を調査するための実験設定は、以下の3つの構成要素を有した:標的細胞、目的の遺伝子のための発現カセットを有するAAVレプリコン構築物、および目的のウイルス。レプリコンベクターを、まず、標的細胞に導入し、次いで、レプリコンを保有する標的細胞を、目的のウイルスで感染させた。ウイルスで感染させることが、AAV複製を誘導し得る(AAVヘルパーウイルスである)場合、ウイルスの複製サイクルは、標的細胞中で進行する。ヘルパーウイルスの溶解サイクルの産物が、AAVレプリコンベクターの複製を誘導し、目的の遺伝子の発現を活性化する。トランスジーン発現を、感染後種々の時点の後分析し、非感染レプリコン保有標的細胞の遺伝子発現と比較した。
【0106】
実施例2
AAVベースのレプリコン系による標的細胞の提供:一過性および安定なトランスフェクタント
本発明者らは、2つの異なるトランスフェクションプロトコルを使用するAAVレプリコンベクターの誘導性発現を試験した。まず、本発明者らは、レポーター遺伝子を保有するAAVレプリコンベクターで種々の細胞型を一過的にトランスフェクトした。本アプローチは、種々の細胞株において本発明者らの系を試験することを可能にした。種々の細胞において一過性トランスフェクションプロトコルを使用することの利点は、AAVレプリコン技術の、特定の細胞株中で複製するヘルパーウイルスへの適用可能性である。本方法の欠点は、トランスフェクションプロトコルがアッセイ時間を長くし、実験間でトランスフェクション効率が異なるために、さらなるハウスキーピングマーカーによる遺伝子発現データの標準化が必要であることである。従って、本発明者らは、また、AAVレプリコンの完全な(integrated)コピーを保有する293A細胞に基づく安定な細胞株を生成した。安定な細胞株を生成するために、ヒト293A細胞(Invitrogen)を、pAV1-GLuc-Hygでトランスフェクトし、ハイグロマイシン耐性について選択した。安定なクローンを、ハイグロマイシンの連続的な存在における限界希釈法により単離した。得られたクローンのセットを試験した後、本発明者らは、レプリコン陰性(LE2A2)およびレプリコン陽性の安定クローン(LE2D8)を選択し、連続継代を用いてそれらを増殖させた。次いで、これらの293Aベースの細胞株を、安定トランスフェクションの背景においてAAVレプリコン技術を試験する以下の実験において使用した。本アプローチは、より短い試験時間および再現性をアッセイするためのアッセイを提供した。本技術の欠点は、遺伝子発現レベルが一過性の系を使用して得られたものより低いと予想されることである。
【0107】
実施例3
種々のウイルスを使用するレプリコン系の誘導
3.1 アデノウイルス誘導
AAVレプリコンベクターがその最も一般的に使用されるヘルパーウイルスに応答するかどうかを試験するために、本発明者らは、まず、アデノウイルス(Ad)感染に対するレプリコン応答を試験した。この目的のために、本発明者らは、SuperFectトランスフェクション試薬(Qiagen)のトランスフェクションプロトコルに従って、U2OSおよび293A細胞を、プレースホルダー(placeholder)DNAとして1μgのLitmus28で、ハウスキーピングマーカーとしてmCherryを構成的に発現する0.5μgのpO6-CMVmCheで、および0.5μgの特定の構築物でトランスフェクトした。該特定の構築物は、ルシフェラーゼ発現AAVレプリコン(pAV-GLuc-Hyg)およびGFP発現カセットを保有する対照レプリコンベクター(pAV-GFP-Hyg)であった。トランスフェクションの48時間後、トランスフェクトした細胞を、3.3×104/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種した。次いで、本発明者らは、常に技術的な三連のものを使用して、該細胞を、mCherryを発現する組換えアデノウイルス5型(ADChe)で100のMOI(感染多重度)で感染させた。このmCherryマーカーを発現するE1およびE3除去第1世代AD5ベクターを、相補(complementation)依存性アデノウイルスのモデルとして使用した。293A細胞は、この欠損ウイルス中に存在しないE1遺伝子をトランス相補し得るので、これらの細胞は、かかるAdの生産的ウイルスサイクルを支持する。しかし、U2OS細胞は、第1世代Adベクターの遺伝的欠損を相補し得ない。従って、これらの細胞においては、ウイルス侵入およびいくつかの初期遺伝的の発現のみが生じるが、DNA複製および生産的感染は進行し得ない。
【0108】
ルシフェラーゼ遺伝子発現の発現を分析するために、本発明者らは、感染した96ウェルプレートのアッセイしたウェルから直接移した20μl細胞培養上清のルシフェラーゼ活性を測定するBioLux(登録商標) Gaussia Luciferase Flex Assay Kitを使用した。ルミノメータ(luminometer)を以下のパラメータを使用して調節した:50μl GLucアッセイ溶液の注入、2秒の振盪、35~40秒の待機(delay)および10秒の統合(integration)。一次発光を、各試料について記録し、これらの値を、トランスフェクトしたが感染させていない細胞の一次発光と比較した。各測定を、各技術的な三連のものについて一回行い、データを、図2Aに示す。予想されるように、GFP発現レプリコンベクターでトランスフェクトした対照細胞は、ルシフェラーゼを発現しなかったので、感染後の発光に違いを示さなかった。pAV1-GLuc-HygトランスフェクトU2OS細胞においてルシフェラーゼシグナルの中程度の増大が観察され、これは、Ad感染の失敗が、いくらかのAAVレプリコン由来のルシフェラーゼ発現を誘導し得たことを示した。しかし、293A細胞において、ルシフェラーゼ発現は、約100倍増大し、これは、生産的アデノウイルス感染が、AAVレプリコンベースの遺伝子発現を強く誘導し得たことを示した。
【0109】
AAVベースのレプリコンが、安定な細胞株の背景においてAd感染により誘導され得るかどうかを試験するために、本発明者らは、LE2A2およびLE2D8細胞株をADCheで100のMOIで感染させた。図2Bに示すように、レプリコン陰性LE2A2細胞は、Ad感染に応答しなかったが、レプリコン陽性LE2D8において、細胞は、Ad感染に対して30倍を超えるルシフェラーゼ発現の増大を伴って、Ad感染に対して応答した。
【0110】
3.2 単純ヘルペスウイルス感染によるAAVベースのレプリコンベクターの誘導
AAVは、ヘルペスウイルス共感染によっても復活され得るので、本発明者らは、AAVレプリコンベクターのHSV-1感染に対する応答を試験した。この目的のために、293A細胞を、上記(2.1)するようにpAV1-GLuc-Hygでトランスフェクトし、トランスフェクションの3日後に(3 day after transfection)(dpt)、HSV1で0.2、0.5および2のMOIで感染させた。本実験において使用したHSV1株は、BAC由来単純ヘルペスウイルス1型(HSV1)実験室株であった(Nagel et al. J Virol., 82:3109-3124 (2008))。上清のルシフェラーゼ活性を、感染の24および48時間後(24 and 48 h after infection)(hpi)に測定し、mock感染細胞と比較した(図3A)。
【0111】
HSV1での感染の1日後、AAVレプリコンからのルシフェラーゼ発現の誘導は、全ての試料において検出可能であり、2のMOIで感染させた細胞について最も高い値(約50倍)を生じた。感染の2日後、ルシフェラーゼ活性はさらに高く、320倍(MOI 0.2)~390倍(MOI 2)の誘導の範囲の値であった。これらの値は、本研究の過程で本発明者らが測定した最も高い誘導であった。
【0112】
AAVレプリコンが安定系により提供される場合にHSV1でのレプリコン誘導が同様に存在するかどうかを試験するために、本発明者らは、細胞株LE2D8を、HSV1で0.1、1および10の種々のMOIで感染させ、12、24、36および48時間後に上清を回収した。ルシフェラーゼ発現を評価し、値を、mock感染細胞と比較した(図3B)。
【0113】
ルシフェラーゼ発現の12倍の誘導を、10のMOIで12hpiに既に検出した。ルシフェラーゼ誘導のウイルス負荷依存性増加は、24hpiに明白であった。最大誘導を、1のMOIで36hpi後にのみ得て、120倍誘導の値であった。
【0114】
本発明者らが驚いたことに、本発明者らは、HSV1が一過性の系および安定系の両方の背景において、AAVレプリコンベクターの最も強い誘導物質であったと結論し得る。
【0115】
3.3 レプリコン複製は遺伝子発現の誘導の機構に関与する。
次いで、本発明者らは、生産性(productive)ヘルペスウイルス複製が、最適なAAVレプリコン応答に必要であるかどうかを試験することを望んだ。この目的のために、293AおよびU2OS細胞を、トランスフェクション試薬としてSuperFectを使用して、1.25μgのLitmus28、0.5μgの特定のDNA (pAV-GLuc-Hyg)および0.25μgのハウスキーピングマーカーを使用してトランスフェクトした。上記最後のプラスミドは、ホタルルシフェラーゼのための発現ベクターである。本発明者らは、ルミノメトリー(luminometry)を使用する実験間での定量的標準化を可能にするために、トランスフェクション対照として(上記実験で使用したmCherry発現プラスミドの代わりに)該発現ベクターをアッセイに導入した。細胞を、3dptにADCheベクターおよび野生型(wt)Ad 5型(AD5-WT)で1、10および100のMOIで感染させた。上清を、48時間後に回収し、ルシフェラーゼ活性を上記したように測定した。全実験を3回繰り返し、ADChe誘導を6回繰り返した。
【0116】
図4Aに示すように、レプリコントランスフェクト293A細胞の感染後、ADCheの用量が増加するにつれて、ルシフェラーゼ発現の明確な増加を観察した。同様のことは、293A細胞におけるwt AD5での感染についても変わらない。しかし、U2OS細胞においては、同様の増加は、wt AD5感染についてのみ観察された。ADCheでの感染の後、中程度の誘導のみ観察され、これは、なお、用量依存性であった。ADCheは、E1遺伝子を欠損するU2OS細胞中では複製し得ないが、wt AD5は良好に複製し得るので、これらのデータは、AAVレプリコン応答が、2つの構成要素からなることを示した。1つ目は、任意の細胞において観察され得、Ad初期遺伝子のサブセットによるAAVプロモーターのトランス活性化に基づく可能性が最も高い。2つ目のより顕著な効果は、生産性Ad感染に依存するようである。
【0117】
生産性Ad感染が、レプリコンベクター増幅を含むAAVレプリコン機構を実際に誘導することを確認するために、本発明者らは、Ad感染の際に、一過的にトランスフェクトしたpAV-GLuc-Hygレプリコンベクターのコピー数の変化を直接測定するために、半定量的リアルタイムPCRを設定した。
【0118】
トランスフェクションの3日後、2ウェルのトランスフェクトした細胞を12ウェルプレートに播種し、ADCheで100のMOIで感染させたか、またはmock処理した。細胞を、1および2日後に回収し、細胞DNAを、製造業者の指示書に従ってDNeasy(登録商標) Blood & Tissue Kitを使用して精製した。標的配列の複製効率を分析するために、GLuc定量的PCRを、SYBR(登録商標) Green PCR Kitを使用したLightcyclerシステムにより実施した。リアルタイムPCR反応を、二連の試料を使用して実施した。熱サイクル条件は、95℃で15分;95℃で15秒(変性)、58℃で30秒(アニーリング)および70℃で30秒(伸長)の45増幅サイクルであった。融解曲線分析は、65℃で15秒で続き、最後に、37℃への冷却相が存在した。
【0119】
本発明者らは、GLuc遺伝子を増幅するために、プライマーGLucfor (GTGTAGGCCTCGGATCCAGCCACCATGGGAGTC;配列番号:2)およびGLucrev (CCATAGAGCCCACCGCATCCCC;配列番号:3)を使用し、ヒト細胞の各一倍体ゲノムについて1コピーで存在するヒトハウスキーピング遺伝子であるグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)を増幅するために、プライマーGADPHfor (TGGTATCGTGGAAGGACTCA;配列番号:4)およびGAPDHrev (CCAGTAGAGGCAGGGATGAT;配列番号:5)を使用した。一倍体ゲノムあたりのコピー数(コピー数/HG/)を、式:
コピー数/HG/=2(CTh-CTl)
(式中、HGはハウスキーピング遺伝子であり、CThはハウスキーピング遺伝子についてのCT値であり、CTlはGLuc増幅についてのCT値である。)
に従って倍加が線形相(linear phase)(CT)に達した点で決定した。GLuc特異的増幅についての基本的なコピー数(primary copy number)を、各増幅曲線のCT値を使用して計算し、GAPDHのコピー数に対して標準化した。これは、両方の日についてGLucコピー数の相対的定量を可能にした(図4B)。
【0120】
55~78 GLucコピーを、mock感染293A細胞において検出し、これは、トランスフェクトしたレプリコンベクターDNAの維持から生じたものであった。ADChe感染後第1日に、一倍体宿主ゲノムあたり約300のレプリコンゲノムを、293A細胞において検出し、これは、第2日に650コピー数まで増加した。これらのデータは、293A細胞において、生産性ウイルス感染が実際にAAVレプリコンベクターの複製を誘導したことを確認した。対照的に、ADCheが複製し得ないU2OS細胞において、一倍体ゲノムあたりのレプリコンベクターのコピー数は、mock処理の場合と同様に(160から65コピー)、第1日から第2日に減少した(170から130コピー)。この第2日における相対的コピー数の減少は、アッセイ時間の間の細胞分裂による細胞ゲノムコピーの増加により説明され得る。
【0121】
安定なトランスフェクションの背景においてAAVレプリコンベクターの複製を試験するために、本発明者らは、12ウェルプレート中でLE2D8細胞をHSV1実験室株で感染させた。AAVレプリコンコピー数の変化を、上記のように測定した。
【0122】
LE2D8細胞株を、HSV-1で0.1、1および10のMOIで感染させたか、またはmock処理した。全DNAを、感染の24および48時間後のいずれかに精製した。次いで、リアルタイムPCRを実施し、細胞のハウスキーピング遺伝子GAPDHおよびトランスジーンコード配列GLucを増幅した。GLuc特異的増幅の基本的なコピー数から計算したCT値を、GAPDHのCT値に対して標準化した。
【0123】
両方の日についてのGLucコピー数の定量は、GLucコピー数のウイルス負荷に対する依存性を明確に示した。mock感染および0.1のMOIで感染させた細胞において、GLucコピー数は、第1日において検出限界のあたりであった。しかし、0.1のMOIにおいて、第2日に、一倍体ゲノムあたり6 GLucコピーが検出可能であった。HSV1で1のMOIで感染させた細胞において、両方の日において、約30GLucコピーが検出可能であった;10のMOIにおいて、同様に、GLucコピーのさらなる中程度の増加が明白であった(第1日および第2日において39および42コピー数)(図4C)。これらのデータは、レプリコンベクターの複製は、実際に、一過性および安定なトランスフェクションの設定において、ヘルパーウイルス感染により誘導されたことを示した。
【0124】
実施例4
AAVベースのレプリコン技術は臨床ウイルス単離物の薬物感受性を試験するために使用され得る
レプリコン陽性細胞株LE2D8がHSV1複製に応答するという事実を考慮して、本発明者らは、薬物感受性臨床単離物と薬物耐性臨床単離物を区別するためのアッセイを確立した。アシクロビル(ACV)は、ヒトHSV1感染の治療のために使用される最も著名な薬物である。アシクロビルは、グアノシンアナログであり、ウイルスDNAポリメラーゼを阻害し、結果として、ACVは、HSV1複製を阻害する。AAVレプリコン応答がHSV1複製に依存性である場合、系は、ACVの存在下で、ACV感受性HSV1株(これはこの条件において複製できない)での感染と、ACV耐性株(これはこの条件において複製し得る)での感染に対して異なる応答をする筈である。
【0125】
細胞株LE2D8は、96ウェルプレートに3.3x104細胞/ウェルの密度で播種した。播種の2時間後、細胞を、処理しないままにしたか、または種々の濃度のACV(CAS: 59277-89-3)(0.05~144μg/mlの範囲)で処理した。処理の直後、細胞を、ACV感受性HSV-1実験室株またはACV耐性株(Dr. Gundula Jaeger, Max von Pettenkofer-Institute, LMU Munichから快く提供された)のいずれかで0.035のMOIを使用して感染させた。48 hpi後のみに、20μlの上清中のルシフェラーゼ活性を、前記した実験のように測定した。ACV処理細胞のルシフェラーゼ活性を、非処理細胞の感染後に得られたルシフェラーゼ活性と比較した。非処理細胞のルシフェラーゼ誘導を100%と設定し、ACV処理細胞の活性を、非処理値の%として示した(図5A)。
【0126】
既にACV濃度が6~12μg/mlである実験室株について、強い阻害効果が観察され、該効果は、ルシフェラーゼ活性を非処理細胞の20%まで減少させた。対照的に、耐性HSV1株は、非処理対照に類似するAAVレプリコン由来ルシフェラーゼ発現を誘導し、これは、ACV処理がウイルス複製を阻害し得なかったことを示した。
【0127】
新たに確立されたレプリコンベースのアッセイの検証について、本発明者らは、ACV処理の存在下で産生されたウイルスの量をモニターするために、終末点希釈アッセイを行った。ウイルス増殖を検出するための本標準アッセイは、非常に感受性であるが、結果を得るために5~7日必要なので非常に時間のかかるものである。標準方法を用いて本発明者らのアッセイ条件におけるウイルス産生を試験するために、種々の濃度のACV(n.t.、1、6、12、48および96μg/ml)で処理した感染LE2D8細胞の感受性およびACV耐性HSV-1含有アッセイ上清を回収した。続いて、終末点希釈アッセイを、96ウェルプレート形式においてHEK細胞を使用して行った。培養細胞感染用量50(TCID50)を、第7日の感染性総数(infectivity count)の回収後に計算した(図5B)。これらのデータは、ACV感受性実験室株のウイルス複製が、ACV処理により実際に阻害され、ACVはアッセイ条件においてLE2D8細胞における耐性HSV1株の複製を阻害し得ないことを確認した。
【0128】
次の段階として、本発明者らは、HSV2臨床単離物に対するAAVレプリコンベースの耐性試験の使用可能性を分析した。本発明者らは、FreiburgのUniversitaetsklinikum Freiburgの臨床診断と協力して種々の既知および未知のHSV-2単離物を試験した。
【0129】
単一のHSV-2ウイルス単離物を試験するために、常に、技術的な三連のものを使用して、LE2D8を、96ウェル形式において3.3×104細胞に播種し、2時間後、0.8、4、20、100および500μMのACVで処理し、1:10希釈されたHSV-2単離物で感染させた。48 hpi後、上清中のGLuc活性を、ルミノメトリーで測定し、値を、上記のように非処理およびmock感染細胞と比較した。図6Aおよび6Bにおいて、本発明者らは、ACV感受性HSV2単離物およびACV耐性HSV-2単離物の1つにより誘導したレプリコン応答の例を示す。
【0130】
AAVレプリコンベースの耐性試験は、HSV感染患者に由来するACV感受性HSV-2ウイルス単離物およびACV耐性HSV-2ウイルス単離物を区別し得た。図6Aにおいて、結果は、20μM以上の濃度のACVでの処理の際に非処理細胞に比べてGLuc活性の量が減少することにより、感受性株の典型的なパターンを示す。対照的に、耐性HSV-2株のルシフェラーゼ誘導パターンは異なる。試験したACV濃度について、GLuc誘導は、非処理値の50%未満には減少しなかった。
【0131】
種々のAdによるAAVベースのレプリコンベクターの誘導
ヒトアデノウイルスを含むマストアデノウイルスは、その遺伝的および生物学的特徴に従って、6つの種(A~F種)に分類される。AAVレプリコン系は、組換えおよび野生型ヒトアデノウイルス5型(Ad5)、C種のアデノウイルスにより良好に誘導されることが証明された。臨床実施において、アデノウイルス単離物は、C以外の種(主に、B種およびD種)からしばしば見出されるので、本発明者らは、他の種を示す種々のヒトアデノウイルスが、本発明者らがAd5について観察したものと同等のレプリコン応答を誘導し得るかどうかを試験した。この目的のために、293A細胞を、FuGene HDトランスフェクション試薬(Promega)のトランスフェクションプロトコルに従ってpAV1-GLuc-Hygでトランスフェクトし、感染を、トランスフェクションの3日後に続けた。細胞を、3.3x104細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、以下のヒトアデノウイルス血清型で1のMOIで感染させた:Ad12 (A種)、Ad3およびAd11 (B種)、Ad9およびAd17 (D種)、Ad4 (E種)。対照として、組換えアデノウイルス5型(ADChe)感染を、1のMOIで使用した。上清のルシフェラーゼ活性を、感染の48時間後(hpi)に測定し、対応するmock感染細胞と比較した(図7)。AAVレプリコン由来ルシフェラーゼ発現の誘導は、全てのアデノウイルス血清型での感染の際に観察され得、ADCheでの誘導(20倍)に対して同等の16~58倍の誘導値を生じた。これらのデータは、AAVレプリコン応答が、種々の種由来のヒトアデノウイルスの野生の範囲で良好に誘導され得ることを示す。
【0132】
実施例5
凍結したトランスフェクト細胞を使用した感染によるAAVレプリコンの誘導
AAVレプリコンは、一過性トランスフェクションにより導入され得るか、または安定細胞株が使用され得る。アッセイは、一過性トランスフェクションを適用した場合、細胞をトランスフェクションの後回復させるためにトランスフェクションと感染の間待機する必要があるので、3日長く費やし得る。一過性トランスフェクションにおいてこの72時間のアッセイ時間を省くために、本発明者らは、製造業者のプロトコルに従ってFuGeneを使用して、6ウェル中の2E+05 293A細胞を、0.6μg pAV1-GLuc-Hygおよび5μg Litmus 28 stuffer DNAでトランスフェクトした。24および48時間後、細胞を、凍結媒体(Dulbecco’s改変イーグル培地(DMEM)、20%ウシ胎仔血清(FBS)および10%ジメチルスルホキシド(DMSO))中に再懸濁し、3x104細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種した:プレートをシールし、次いで、-80℃で迅速に凍結した。プレートの融解のために、150μlの増殖培地を、各ウェルに直接添加し、細胞を、通常の細胞培養条件下で2時間インキュベートした。次いで、上清を、除去し、100μlの増殖培地を各ウェルに添加した。融解の4、6、20および26時間後、前もってトランスフェクトした293A細胞を、HSV-1実験室株で0.01、0.1および1のMOIを使用して感染させた。48 hpi後、ルシフェラーゼ活性を、以前の実験のように、20μlの上清中で測定した。ルシフェラーゼ活性の誘導を、HSV-1感染後の値とmock感染細胞を比較することにより計算した(図8)。
【0133】
HSV-1感染によるレポーター遺伝子の誘導を、ウイルス粒子の量とは独立して、トランスフェクションの12または48時間後のいずれかの96ウェルプレートの凍結について観察し得た。一般的に、誘導は、トランスフェクションの48時間後凍結したプレートを感染した後、より高かった。ここで、0,01のMOIでの感染は、トランスフェクションの24時間後プレートを凍結した後の3倍の誘導に比べて、8倍のルシフェラーゼの誘導を示した。最も高い誘導(58倍)は、トランスフェクションの48時間後プレートを凍結しかつ融解の28時間後1のMOIで感染させることにより得られた。
【0134】
このデータは、AAVレプリコントランスフェクト細胞の凍結および前もっての播種が、HSV-1感染の際のそれらの誘導可能性に影響することなく可能であることを示す。記載される方法は、迅速な方法において使用され得る標準化された産物の配置(configuration)を可能にする。
【0135】
実施例6
AAVレプリコン遺伝子を含む組換えAAV2ベクターの誘導
本発明者らは、特定の細胞株における低いトランスフェクション効率に基づく限界を克服することに興味があるので、本発明者らは、潜在的なレプリコンベクター形質導入系として、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)を調査した。このために、本発明者らは、製造業者のプロトコルに従って、PEI (Polyscience, PEI "Max", MW 40,000)を使用して、AAV産生のためにプラスミドpDP2rs (Grimm, D., M. A. Kay and J. A. Kleinschmidt (2003). "Helper virus-free, optically controllable, and two-plasmid-based production of adeno-associated virus vectors of serotypes 1 to 6." Molecular Therapy 7(6): 839-850)で、pAV1-GLuc-Hygと命名した本発明の構築物で、2,30E+08 HEK 293TN細胞をトランスフェクトした。48時間後、トランスフェクトした細胞を、3回の凍結融解により溶解した。放出されたrAAVレプリコン粒子を、精製し、イオジキサノール(iodixanol)密度遠心分離により濃縮した(Zolotukhin, S., B. J. Byrne, E. Mason, I. Zolotukhin, M. Potter, K. Chesnut, C. Summerford, R. J. Samulski and N. Muzyczka (1999). "Recombinant adeno-associated virus purification using novel methods improves infectious titer and yield." Gene Therapy 6(6): 973-985)。
【0136】
rAAVレプリコントランスジーン発現の誘導可能性を試験するために、96ウェルプレート形式において細胞あたり(pt/cell)種々の量のrAAVレプリコン粒子を使用して、組換えウイルス粒子を、A549、Vero細胞および一次細胞株HFFに形質導入した。6時間後、形質導入した細胞株を、Ad5で10のMOIで、HSV-1およびHSV-2で0,1のMOIで、ならびにHCMVで1のMOIを使用してのそれぞれで感染させたか、またはmock感染を維持した。続いて、形質導入したAd感染細胞の上清を、48 hpi後に回収し、HSV-1およびHSV-2感染細胞を24および48 hpi後に、HCMV感染細胞を、感染後4および7日後に回収した。ルシフェラーゼ活性を、以前の実験のように、20μlの上清において測定した。ルシフェラーゼ活性の誘導を、形質導入および感染後の値と形質導入しmock感染させた細胞を比較することにより計算した(図9)。
【0137】
まとめると、形質導入した細胞と形質導入しなかった細胞の間に発光の差はなく、これは、厳重に調節された系を示した。試験した全てのウイルスは、rAAVレプリコン粒子で形質導入した細胞において、レプリコン応答を誘導し得た。Ad5、HSV-1およびHSV-2感染の場合、増大するシグナル誘導が、rAAV粒子の量に依存して観察され得た。rAAV粒子の形質導入およびAd5感染の後、本研究過程におけるGLucの最大倍(13.500倍)の誘導が、測定された。レプリコン応答の同様の増加は、HSV-1について観察され得、これは、その最大で2800倍の増加を示した。さらに、HSV-2の場合の215倍のGLucの誘導およびHCMVの場合の215倍のGLucの誘導は、組換えAAV粒子を介してレプリコン系を形質導入することの有用性を確認する。
【0138】
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
[1]5’~3’方向に、
(i) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
(ii) 1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得る少なくとも1つのプロモーター、好ましくはAAVプロモーターp5およびAAVプロモーターp19;
(iii) (ii)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列;
(iv) 該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に該1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得るプロモーター、好ましくはAAVプロモーターp40;
(v) (iv)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列;
(vi) ポリアデニル化部位;ならびに
(vii) アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
を含む核酸を含むビリオンであって、該ビリオンは、AAV cap遺伝子を含まない、および/または任意のAAV cap遺伝子産物を発現し得ない、ビリオン。
[2]該ビリオンは、AAVキャプシドタンパク質を含み、好ましくは、該ビリオンは、[1]に規定される核酸および該キャプシドタンパク質からなる、[1]記載のビリオン。
[3](aa) 5’~3’方向に、
(i) 少なくとも1つのアデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
(ii) 1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得るプロモーター;および
(iii) (aa)(ii)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列を含む核酸;ならびに
(ab) 5’~3’方向に、
(i) 該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に該1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得るプロモーター;および
(ii) (ab)(i)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列
を含む核酸を含む細胞であって、該細胞は、AAV cap遺伝子を含まない、および/または任意のAAV cap遺伝子産物を発現し得ない、細胞。
[4](a)(aa) 5’~3’方向に、
(i) 少なくとも1つのアデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列;
(ii) (b)の1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得るプロモーター;
(iii) (aa)(ii)の該プロモーターの制御下にあるトランスジェニックコード配列
を含む核酸;
(ab) 5’~3’方向に、
(i) (b)の該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび任意に1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドにより活性化され得るプロモーター;
(ii) (ab)(i)の該プロモーターの制御下にある少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列
を含む核酸;ならびに任意に
(b) 発現可能な形態で該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドをコードし、かつ任意に該1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドを提供する1つ以上の核酸
を含むキットであって、該キットは、AAV cap遺伝子も任意のAAV cap遺伝子産物を発現する手段も含まない、キット。
[5](aa)および(ab)の該核酸は、細胞中に含まれ、該細胞は、AAV cap遺伝子を含まない、および/または任意のAAV cap遺伝子産物を発現し得ない、[2]記載のキット。
[6](i) (aa)および(ab)の核酸の配列は、単一の環状核酸に含まれ、好ましくは、(ab)の核酸の配列は、5’~3’方向において、(aa)の核酸の配列内の(aa)(i)の後かつ(aa)(ii)の前に位置する;
(ii) (aa)および(ab)の核酸の配列は、各々別個の環状核酸に含まれる;
(iii) (aa)および(ab)の核酸の配列は、単一の直鎖状核酸に含まれ、好ましくは、(ab)の核酸の配列は、5’~3’方向において、(aa)の核酸の配列内の(aa)(i)の後かつ(aa)(ii)の前に位置する;または
(iv) (aa)および(ab)の核酸の配列は、各々別個の直鎖状核酸に含まれる、
[1]もしくは[2]記載のビリオン、[3]記載の細胞、または[4]もしくは[5]記載のキット。
[7](i) (aa)および(ab)の両方の核酸の配列は、該細胞のゲノムDNAに含まれる、または
(ii) (ab)の核酸の配列は、該細胞のゲノムDNAに含まれる、
[3]もしくは[6]記載の細胞または[5]もしくは[6]記載のキット。
[8](i) (aa)(ii)のプロモーターは、AAVプロモーターp40、p5、p19および該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドを天然にコードするウイルス由来の後期プロモーターからなる群より選択され、好ましくはAAV p40プロモーターである;および/または
(ii) (ab)(i)のプロモーターは、プロモーターp5、p19およびp40から選択され、好ましくはp5またはp19であり、さらにより好ましくはp5およびp19プロモーターの組み合わせである、
前記いずれか記載の細胞、キット、またはビリオン。
[9](ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep78および/またはAAV Rep68ポリペプチドをコードし、好ましくは、(ab)(ii)の少なくとも1つのAAV rep遺伝子コード配列は、AAV Rep52および/またはAAV Rep40ポリペプチドをさらにコードする、前記いずれか記載の細胞、キット、またはビリオン。
[10](b)の核酸は、存在する限り、
(i)ヘルパーウイルス中に含まれる;または
(ii)該細胞は、(b)の該核酸をさらに含む、
前記いずれか記載の細胞またはキット。
[11](aa)の核酸配列は、2つのAAV逆方向末端反復配列を含み、第2の逆方向末端反復配列は、(aa)(iii)のトランスジェニック配列の後に逆方向において位置する、前記いずれか記載の細胞、キット、またはビリオン。
[12](b)の該1つまたは複数のヘルパーポリペプチドおよび、存在する限り、1つまたは複数のヘルパーポリヌクレオチドは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択されるウイルスから生じる、前記いずれか記載の細胞またはキット。
[13][5]を引用する限りにおいて、
(a)該細胞は容器(vessel)中に提供される;
(b)該細胞は、複数の場合において、マルチウェルプレートのウェル中に提供される;および/または
(c)該キットは、指示、好ましくは、[14]~[17]いずれか記載の方法を実施するための指示を含む使用説明書を含む、
[5]~[10]いずれか記載のキット。
[14]ウイルス、好ましくは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択されるものが、抗ウイルス剤により阻害されるかどうかを決定する方法であって、該方法は、[4]~[13]いずれか記載のキットまたは[1]、[2]、[6]、[8]、[9]もしくは[11]いずれか記載のビリオンを、該ウイルスを含む試料と接触させる工程を含み、該接触は、(i)該抗ウイルス剤の存在下および(ii)その非存在下でもたらされ、ケース(ii)において、該キットまたはビリオンのそれぞれに従って画定されるトランスジェニックコード配列の産物の量がより多いことは、該ウイルスが該剤により阻害されたことを示す、方法。
[15][3]、[6]~[9]、[11]または[12]いずれか1項に規定される細胞に、[11]および[12]が[3]または[6]~[9]を引用する限りにおいて、1つ以上のヘルパーポリペプチドをコードする1つ以上の核酸を導入する工程、および、任意に、前述のいずれかにおいて規定される1つ以上のヘルパーポリヌクレオチドを提供する工程を含み、それにより、該トランスジェニックコード配列によりコードされる産物を発現する、条件的遺伝子発現のための方法。
[16]感染性ウイルスを検出および/または定量する方法であって、該ウイルスは、好ましくは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択され、該方法は、[3]、[6]~[9]、[11]または[12]いずれか1項に規定される細胞を、[11]および[12]が[3]または[6]~[9]を引用する限りにおいて、該感染性ウイルスを含むまたは含むと疑われる試料と接触させる工程を含み、該細胞に従って画定されるトランスジェニックコード配列の産物の存在および/または量は、該感染性ウイルスの存在および/または量を示す、方法。
[17]ウイルスに対して抗ウイルス活性を有する化合物を同定するための方法であって、該ウイルスは、好ましくは、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科から選択され、該方法は、
(a) 前記のいずれかに規定される細胞の集団の細胞に、1つ以上のヘルパーポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸を導入する工程、および、任意に、前記のいずれかに規定される1つ以上のヘルパーポリヌクレオチドを提供する工程;
(b) 該導入の後に、工程(a)の細胞集団により発現される(aa)(iii)の該トランスジェニックコード配列によりコードされる産物の量を決定する工程;
(c) 前記のいずれかに規定される細胞の集団と、試験されるべき化合物を接触させる工程;
(d) 工程(c)の細胞集団の細胞に、工程(a)に規定される該1つまたは複数の核酸を導入する工程;
(e) 該導入の後に、工程(d)の細胞集団により発現される該トランスジェニックコード配列によりコードされる産物の量を決定する工程;
(f) 工程(b)で決定された該産物の量と工程(e)で決定された該産物の量を比較する工程
を含み、工程(b)で決定された産物に比べて工程(e)で決定された産物が少ないことは、試験された化合物が抗ウイルス活性を有することを示す、方法。
図1A-B】
図1C-1】
図1C-2】
図1C-3】
図1C-4】
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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