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特開2022-104998アミロイド沈着疾患を治療するための方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104998
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】アミロイド沈着疾患を治療するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220705BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220705BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20220705BHJP
【FI】
A61K39/395 D ZNA
A61K39/395 N
A61K51/10 200
A61P1/00
A61P1/16
A61P9/00
A61P11/00
A61P13/12
A61P17/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P43/00 105
C07K16/46
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063456
(22)【出願日】2022-04-06
(62)【分割の表示】P 2020505320の分割
【原出願日】2018-07-24
(31)【優先権主張番号】62/539,821
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/637,609
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】508344512
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ コロンビア ユニバーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク
【氏名又は名称原語表記】THE TRUSTEES OF COLUMBIA UNIVERSITY IN THE CITY OF NEW YORK
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レンツ,スザンヌ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】既存のアミロイド沈着物を除去するのに有効で、ALA患者の予後を改善する治療方法、および医薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、キメラ(例えば、マウス-ヒト)抗体を使用してアミロイド沈着疾患を治療する方法および医薬組成物に関し、キメラ抗アミロイド原線維抗体を含む医薬組成物を投与して、心臓関与を含むアミロイド沈着疾患を治療する方法を含む。該方法は、心臓関与を含む軽鎖アミロイド軽鎖アミロイドーシス(ALA)と診断された患者の心筋機能を、処置から3週間以内に改善することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原発性アミロイドーシスの治療を必要とするヒト患者の当該原発性アミロイドーシスを治療するために使用されるキメラ抗体であって、配列番号47を含むVK領域と配列番号48を含むVH領域とを有し且つ前記原発性アミロイドーシスを治療するのに有効な複数回治療上有効量のキメラマウス-ヒト抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を、患者に投与する、キメラ抗体。
【請求項2】
前記キメラ抗体は、約500mg/m以下の用量で投与される、請求項1に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項3】
前記キメラ抗体の治療上の有効用量は、約1mg/kg~50mg/kgである、請求項1に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項4】
前記原発性アミロイドーシスは、心臓、腎臓、肝臓、肺、消化管、神経系、筋肉骨格系、軟部組織および皮膚からなる群から選択される少なくとも1つの臓器または組織の関与を含む、請求項1に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項5】
前記患者は、約1週間以内に治療反応の徴候を示す、請求項1に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項6】
前記原発性アミロイドーシスは、心臓の関与を含む、請求項4に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項7】
前記キメラ抗体の有効用量は、約2200mgである、請求項1に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項8】
前記患者は、前記キメラ抗体の投与前にニューヨーク心臓協会(NYHA)機能分類クラスIIまたはIIIに分類され、前記キメラ抗体の投与後にクラスIに分類される、請求項4に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項9】
前記原発性アミロイドーシスは、腎臓の関与を含む、請求項4に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項10】
前記キメラ11-1F4抗体は、ヒトIgG1に由来する定常領域を含む、請求項1に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項11】
前記アミロイド沈着疾患は、原発性軽鎖(AL)アミロイドーシスである、請求項1に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項12】
前記ALアミロイドーシスは、λ軽鎖原線維の凝集体を含む、請求項11に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項13】
前記治療上有効量の前記キメラ11-1F4抗体は、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、または6ヶ月に1回投与される、請求項1に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項14】
前記治療上有効量の前記キメラ11-1F4抗体は、半年ごとに投与される、請求項1に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項15】
前記ALアミロイドーシスは、難治性である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
κまたはλ軽鎖原線維凝集体沈着物を含む原発性アミロイドーシスを有するヒト患者のκおよび/またはλ軽鎖原線維凝集体沈着物の量を減少させるキメラ抗体の使用であって、原線維凝集体沈着物を減少させる複数回治療上有効な用量の抗体を、前記患者に投与するステップを含み、
前記抗体は、
(a)配列番号47を含むVK領域、
(b)配列番号48を含むVH領域、および
(c)ヒトIgG1定常領域、
を有し、
前記抗体の投与は、前記患者のκおよび/またはλ軽鎖原線維凝集体沈着物の量を減少させる、キメラ抗体の使用。
【請求項17】
前記原発性アミロイドーシスは、λ軽鎖原線維凝集体沈着物からなる、請求項16に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項18】
前記原発性アミロイドーシスは、κ軽鎖原線維凝集体沈着物からなる、請求項16に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項19】
前記抗体は、配列番号53を含む相補性決定領域(CDR)H1と、配列番号53を含むCDRH2と、配列番号54を含むCDRH3と、を有する可変重鎖(VH)、および配列番号49を含むCDRL1と、配列番号50を含むCDRL2と、配列番号51を含むCDRL3と、を有する可変軽鎖(VK)、を含む、請求項16に記載のキメラ抗体の使用。
【請求項20】
任意選択で、心臓関与を含む軽鎖アミロイドーシス(ALA)と診断された患者の心筋機能の改善を監視するステップをさらに含み、前記ステップは、治療上有効量のキメラ抗体またはその抗原結合断片の前記患者への投与から約3週間以内に、前記心臓関与を含むALAと診断された前記患者の心筋機能の改善を観察するステップを含む、請求項11に
記載のキメラ抗体の使用。
【請求項21】
患者の心臓関与を含むアミロイド軽鎖アミロイドーシス(ALA)を治療するキメラ抗体の使用であって、前記ALAは、血液学的に制御されておらず、前記キメラ抗体の使用は、複数回治療上有効量のヒト化またはキメラ抗体またはその抗原結合断片を、心臓関与および血液学的制御の欠如を特徴とするALAを有する前記患者に投与するステップを含み、
前記抗体または前記抗原結合断片は、
配列番号52を含む相補性決定領域(CDR)H1と、配列番号53を含むCDRH2と、配列番号54を含むCDRH3と、を有する可変重鎖(VH)、および
配列番号49を含むCDRL1と、配列番号50を含むCDRL2と、配列番号51を含むCDRL3と、を有する可変軽鎖(VK)、
を含む、キメラ抗体の使用。
【請求項22】
前記抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化、ヒトまたはキメラ抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記VK領域は、配列番号47を含み、前記VH領域は、配列番号48を含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[EFS-WEBを介して提出された配列表の参照]
本出願は、EFS-Webを介して電子的に提出された配列表を含み、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。「8441-0009-1_ST25」と題するこの配列表のASCIIファイルは、2018年6月15日に作成され、その大きさは17.4kbである。
【0002】
[政府の権利]
本発明は、米国食品医薬品局によって授与されたFD-U-005110の助成金の下、米国連邦政府の支援を受けてなされた。したがって、米国連邦政府は、本明細書および特許請求の範囲に記載の本発明において、一定の権利を有する。
【0003】
[優先権の主張]
本出願は、2017年8月1日に出願された米国特許仮出願第62/539,821号および2018年3月2日に出願された米国特許仮出願第62/637,609号の優先権を主張するものであり、それらの全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
本発明は、アミロイド沈着疾患、特に原発性アミロイドーシス(AL)を治療するのに有用なヒト化およびキメラ(例えば、マウス-ヒト)抗体およびその抗原結合断片、該抗体を含む医薬組成物、ならびに該抗体および医薬組成物を使用してアミロイド沈着疾患を治療する方法に関する。さらに、本発明は、アミロイド原線維反応性抗体でアミロイド沈着疾患を治療する方法に関する。特に、本発明は、心臓関与(すなわち、心臓内または心臓周囲のアミロイド沈着)を含むアミロイド軽鎖アミロイドーシス(ALA)と診断された患者の心筋機能を改善する方法に関する。このような患者は、軽鎖λアミロイドまたは軽鎖κアミロイドを含むALA沈着物を有し得る。さらに、患者は、血液学的に制御されたまたは制御されていない疾患を有し得る。
【背景技術】
【0005】
以下の説明は、単に読者の理解を助けるために提供されるものであり、先行技術を説明または構成することを認めるものではない。
【0006】
天然抗体は、通常、2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖で構成される約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つのジスルフィド結合によって重鎖に連結している。重鎖間の追加のジスルフィド結合の数は、様々な抗体アイソタイプによって異なる。最も単純なアイソタイプはIgGであり、これは2つの軽鎖および2つの重鎖のみを含み、2つの重鎖が2つのジスルフィド結合によって連結されている。各重鎖は、一端に可変ドメイン(V)を有し、いくつかの隣接定常ドメインを有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を有し、他端に定常ドメインを有する。該抗体の軽鎖および重鎖の各可変ドメインは、相補性決定領域(「CDR」)または超可変領域と呼ばれる3つのセグメントを含む。軽鎖の各CDRは、隣接重鎖の対応するCDRと共に、抗体の抗原結合部位を形成する。軽鎖には、その定常領域に応じて、κとλの2つの主要なタイプがある。κとλの両方の軽鎖は、様々な重鎖タイプのいずれかと結合し得る。
【0007】
原発性アミロイドーシスとも呼ばれるアミロイド軽鎖アミロイドーシス(ALアミロイドーシス、ALまたはALA)は、米国で最も一般的な形の全身性アミロイドーシスである。「アミロイドーシス」という用語は、共通の特徴、すなわち臓器および組織における病的不溶性原線維タンパク質の細胞外沈着を共有する疾患のクラスターを指す(Rodneyら、NEJM、25:898)。アミロイドーシスは、人の抗体産生細胞の機能不全によって引き起こされ、異常なタンパク質線維の産生を引き起こし、これが凝集して臓器および組織に不溶性アミロイド沈着物を形成する。アミロイドーシスの種類は、原線維沈着物を形成する前駆体タンパク質の性質によって決定される。原発性アミロイドーシスでは、原線維が免疫グロブリン軽鎖の断片を含み、続発性アミロイドーシスでは、原線維がアミロイドAタンパク質を含む。アミロイドーシスの現代の分類は、原線維沈着物を形成する前駆体血漿タンパク質の性質に基づいている。
【0008】
前駆体血漿タンパク質は多様であり、無関係である。それにもかかわらず、全ての前駆体沈着物は、原線維沈着物の典型的な染色特性を担う共通の典型的なβプリーツシート構造を共有するアミロイド沈着物を生成する。アミロイドーシスの発症の最終段階は、患者の臓器へのアミロイド原線維の沈着である。アミロイドーシスの死亡率は高く、現在の5年生存率は約28%である。
【0009】
これまで、ALの治療は、従来のまたは高用量の細胞傷害性化学療法を通して機能不全細胞を攻撃することにより、アミロイド形成前駆体軽鎖の合成を減らすことに向けられてきた。しかしながら、この治療法には2つの欠点がある。第一に、原線維沈着物は通常、かなりの沈着が起こるまで無症候性である。したがって、既にかなりの沈着物が生じてしまう前に治療が行われる可能性が低い。第二に、この治療はせいぜい前駆体異常タンパク質の産生を停止するのに最も有効なだけであり、既存の沈着物を除去するのに有効ではなく、AL患者の予後は病的沈着物の持続(または進行)のために非常に悪いままである(Solomonら、Int.J.Exp.Clin.Invest.、2:269)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
結果として、アミロイド沈着物の治療的標的化およびクリアランスは、医学的に極めて興味深い領域である。しかしながら、FDAはこれまでこのような治療用製品を承認していないため、未だに満たされていない重要な医学的必要性がある。本明細書に記載の組成物および方法は、この必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に、アミロイド沈着疾患、特に原発性(AL)アミロイドーシスを治療するための組成物および方法を記載する。本明細書に記載の組成物および方法は、アミロイド原線維(例えば、アミロイド軽鎖原線維)に特異的に結合して免疫系によるクリアランスのために原線維を標的化するヒト化またはキメラ抗体またはその断片を使用する。
【0012】
一態様において、本組成物および方法は、アミロイド沈着疾患、特に原発性(ALA)アミロイドーシスの治療に有用なヒト化またはキメラ抗体(例えば、マウス-ヒトキメラ抗体)を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体は、配列番号47を含むV領域と配列番号48を含むV領域とを有する。いくつかの実施形態において、該抗体は、ヒトIgG1に由来する定常領域を含む。いくつかの実施形態において、該抗体は、そのマウス同等物よりも高い親和性でアミロイド原線維に結合する。いくつかの実施形態において、該抗体は、配列番号36のV領域および配列番号35のV領域を含むマウス抗体よりも高い親和性でアミロイド原線維のβプリーツシート構造によって発現されるエピトープに結合する。また、いくつかの実施形態において、該抗体は、インビボでκおよびλアミロイド原線維に結合する。
【0013】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のヒト化またはキメラ抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を提供する。
【0014】
本方法および医薬組成物で有用なキメラ抗体は、ベクター構築物11-1F4VK.pKN100および11-F4VH.pG1D200の哺乳動物細胞へのコトランスフェクション、またはスーパーベクター構築物pG1KD200-11-1F4の哺乳動物細胞へのトランスフェクションによって産生されてもよい。いくつかの実施形態において、ベクター構築物11-1F4VK.pKN100および11-F4VH.pG1D200のコトランスフェクションまたはスーパーベクター構築物pG1KD200-11-1F4のトランスフェクションは、COS細胞で起こる。産生された抗体は、「キメラ11-1F4抗体」と呼ぶ。
【0015】
別の態様において、本発明は、アミロイド沈着疾患および/または疾患の症状を治療または改善する治療上有効量の本明細書に記載の抗体または断片の少なくとも1つを、該治療または改善を必要とするヒト患者に投与して、該治療を必要とするヒトの原発性(AL)アミロイドーシスなどのアミロイド沈着疾患を治療または改善するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体と薬学的に許容される担体とが投与されてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態において、アミロイド沈着疾患は、原発性アミロイドーシスである。いくつかの実施形態において、該抗体は、約500mg/m以下の用量で投与される。いくつかの実施形態において、キメラ11-1F4抗体の有効用量は、約2200mgである。また、いくつかの実施形態において、有効量は、約1mg/kg~50mg/kgである。
【0017】
いくつかの実施形態において、原発性アミロイドーシスは、心臓、腎臓、肝臓、肺、消化管、神経系、筋肉骨格系、軟部組織および皮膚からなる群から選択される少なくとも1つの臓器または組織の関与を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、アミロイドーシスが心臓に発症している場合、患者のN末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)レベルは、該抗体の投与後にベースラインレベルと比較して少なくとも約30%または約40%低下し得る。いくつかの実施形態において、患者のN末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)レベルは、該抗体の投与後に約9100ng/L未満、約8000ng/L未満、約7000ng/L未満、約6000ng/L未満、または約5000ng/L未満に低下し得る。いくつかの実施形態において、患者は、該抗体の投与前にニューヨーク心臓協会(NYHA)機能分類クラスIIまたはIIIに分類され、該抗体の投与後にクラスIに分類される。
【0019】
いくつかの実施形態において、アミロイドーシスが腎臓に発症している場合、患者の尿タンパク質レベルは、該抗体の投与後にベースラインレベルと比較して少なくとも約30%または約40%低下し得る。いくつかの実施形態において、患者の尿タンパク質は、該抗体の投与後に約7000mg/24時間未満、約6000mg/24時間未満、約5000mg/24時間未満、または約4000mg/24時間未満に減少し得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、該抗体の投与は、深刻な有害事象を引き起こさない。
【0021】
本発明は、心臓関与を含むALAを治療する方法を提供する。本明細書に記載の方法は、治療開始の約3週間以内に、極めて短い平均余命のために治療不能と以前は考えられていた患者集団で、有益な臨床結果を独自に提供することができる。
【0022】
一態様において、本発明は、心臓関与を含むアミロイド軽鎖アミロイドーシス(ALA)と診断された患者の心筋機能を改善する方法を提供する。本方法は、治療上有効量のヒト化またはキメラ抗体またはその抗原結合断片を、心臓関与を含むALAと診断された患者に投与するステップを含む。該抗体または抗原結合断片は、配列番号52を含む相補性決定領域(CDR)H1と、配列番号53を含むCDRH2と、配列番号54を含むCDRH3とを有する可変重鎖(V)、および配列番号49を含むCDRL1と、配列番号50を含むCDRL2と、配列番号51を含むCDRL3とを有する可変軽鎖(V)、を含む。これにより、該抗体またはその抗原結合断片の投与から約3週間以内に患者の心筋機能が改善する。
【0023】
別の態様において、本発明は、心臓関与を含む軽鎖アミロイドーシス(ALA)と診断された患者の心筋機能の改善を監視する方法を提供する。本方法は、治療上有効量のヒト化またはキメラ11-1F4抗体またはその抗原結合断片の患者への投与から約3週間以内に、心臓関与を含むALAと診断された患者の心筋機能の改善を観察するステップを含む。
【0024】
別の態様において、本発明は、患者の心臓関与を含むアミロイド軽鎖アミロイドーシス(ALA)を治療する方法を提供する。本方法において、ALAは、血液学的に制御されていない。本方法は、治療上有効量のヒト化またはキメラ抗体またはその抗原結合断片を、心臓関与および血液学的制御の欠如を特徴とするALAを有する患者に投与するステップを含む。該抗体またはその抗原結合断片は、配列番号52を含む相補性決定領域(CDR)H1と、配列番号53を含むCDRH2と、配列番号54を含むCDRH3とを有する可変重鎖(V)、および配列番号49を含むCDRL1と、配列番号50を含むCDRL2と、配列番号51を含むCDRL3とを有する可変軽鎖(V)を含む。
【0025】
上述した態様のいくつかの実施形態において、該抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化抗体であってもよい。また、いくつかの実施形態において、該抗体またはその抗原結合断片は、キメラ抗体であってもよい。
【0026】
上述した態様のいくつかの実施形態において、該抗体または抗原結合断片のV領域は、配列番号47を含んでもよく、V領域は、配列番号48を含んでもよい。
【0027】
上述した態様のいくつかの実施形態において、該抗体または抗原結合断片は、ヒトIgG1に由来する定常領域を含んでもよい。
【0028】
上述した態様のいくつかの実施形態において、本方法は、該抗体またはその抗原結合断片の投与から少なくとも3ヶ月持続する心筋機能の改善を提供してもよい。いくつかの実施形態において、改善は、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上の期間持続してもよい。
【0029】
上述した態様のいくつかの実施形態において、該抗体またはその抗原結合断片は、3ヶ月の期間内に1回、2回、3回、または4回以下で投与されてもよい。いくつかの実施形態において、該抗体または抗原である断片(antigen-being fragment)は、さらに少なく、例えば、2ヶ月に1回、または3ヶ月に1回投与されてもよい。
【0030】
上述した態様のいくつかの実施形態において、本方法は、治療前の長軸方向のグローバルストレイン(global longitudinal strain、GLS)レベルと比較したGLSの改善を含み得る心筋機能の改善を提供する。
【0031】
上述した態様のいくつかの実施形態において、患者は、650pg/mL超の治療前NT-proBNPレベルを示す。
【0032】
上述した態様のいくつかの実施形態において、治療上有効用量または量の抗体または抗体断片は、患者の治療前NT-proBNPレベルと比較して約300pg/mL以上の治療後NT-proBNPレベルの低下を引き起こすのに有効である。いくつかの実施形態において、NT-proBNPの減少量は、約400pg/mL以上、約500pg/mL以上、約600pg/mL以上、約700pg/mL以上、約800pg/mL以上、約900pg/mL以上、または約1000pg/mL以上であり得る。
【0033】
上述した態様のいくつかの実施形態において、本方法は、治療前NT-proBNPレベルと比較して約30%以上の治療後NT-proBNPレベルの低下を含み得る心筋機能の改善を提供する。
【0034】
上述した態様のいくつかの実施形態において、患者は、再発性または難治性ALAを患っていてもよい。
【0035】
上述した態様のいくつかの実施形態において、ALAは、軽鎖λアミロイド心臓関与を含むとしてさらに特徴付けられてもよい。また、いくつかの実施形態において、ALAは、軽鎖κアミロイド心臓関与を含むとしてさらに特徴付けられてもよい。
【0036】
上述した態様のいくつかの実施形態において、ALAは、血液学的に制御され得ない。例えば、対象の血清中の関与する遊離軽鎖と関与しない遊離軽鎖との差は、40mg/L超であってもよく、または対象が血液もしくは血清中に検出可能なレベルの毒性アミロイド前駆体タンパク質を有してもよい。
【0037】
上述した態様のいくつかの実施形態において、本方法は、化学療法化合物を患者に投与するステップをさらに含んでもよい。
【0038】
別の態様において、本発明は、標識抗体またはその抗原結合断片を投与し、患者における標識の存在を検出して、アミロイド沈着疾患を有する疑いがある患者のアミロイド沈着疾患を検出する方法を提供する。いくつかの実施形態において、標識は、124Iなどの放射標識であってもよいが、当業者によって他の種類の標識が容易に想起され得る。
【0039】
別の態様において、本発明は、アミロイド沈着疾患を有する患者を治療する方法を提供する。本方法は、治療上有効量のヒト化またはキメラ11-1F4抗体またはその抗原結合断片を、1ヶ月に1回よりも少ない頻度で患者に投与するステップを含む。例えば、いくつかの実施形態において、治療は、患者に治療上有効量のヒト化またはキメラ11-1F4抗体または抗原結合断片を、2ヶ月に1回のみ、3ヶ月に1回のみ、4ヶ月に1回のみ、5ヶ月に1回のみ、6ヶ月に1回のみ、7ヶ月に1回のみ、8ヶ月に1回のみ、9ヶ月に1回のみ、10ヶ月に1回のみ、11ヶ月に1回のみ、または1年に1回のみ投与することを要してもよい。
【0040】
本態様のいくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体は、ヒトIgG1に由来する定常領域を含む。
【0041】
本態様のいくつかの実施形態において、アミロイド沈着疾患は、原発性軽鎖(AL)アミロイドーシスであり、疾患がλ軽鎖原線維の凝集体を含んでもよい。いくつかの実施形態において、λ軽鎖原線維の凝集体の存在は、該抗体の投与後に大幅に減少する。
【0042】
本態様のいくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体または抗原結合断片の治療上有効量は、500mg/m以下である。また、いくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体または抗原結合抗体断片の治療上有効量は、約2200mgである。また、いくつかの実施形態において、治療上有効量は、約1mg/kg~50mg/kgである。
【0043】
本態様のいくつかの実施形態において、治療上有効量のヒト化またはキメラ11-1F4 mAbまたは抗原結合断片は、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、または6ヶ月に1回投与される。いくつかの実施形態において、治療上有効量のキメラ11-1F4 mAbまたは抗原結合断片は、半年ごとに、または1年に1回のみ投与される。
【0044】
別の態様において、本発明は、心臓に関与する原発性軽鎖(AL)アミロイドーシスを有する患者を治療する方法を提供する。本方法は、治療前レベルと比較してキメラ11-1F4抗体の投与後の患者のN末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)レベルの少なくとも30%の低下を引き起こすのに有効な用量のヒト化またはキメラ11-1F4抗体を、患者に投与するステップを含む。いくつかの実施形態において、ALアミロイドーシスは、難治性である。
【0045】
本態様のいくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体は、ヒトIgG1に由来する定常領域を含む。
【0046】
本態様のいくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体は、1ヶ月に1回投与される。また、いくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体は、1週間に1回投与される。
【0047】
本態様のいくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体の治療上有効量は、500mg/m以下である。また、いくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体の治療上有効量は、約2200mgである。また、いくつかの実施形態において、有効量は、約1mg/kg~50mg/kgである。
【0048】
本態様のいくつかの実施形態において、NT-proBNPの減少は、キメラ11-1F4抗体の投与から少なくとも約6ヶ月間患者で持続する。
【0049】
別の態様において、本発明は、腎臓に関与する原発性軽鎖(AL)アミロイドーシスを有する患者を治療する方法を提供する。本方法は、治療前レベルと比較してヒト化またはキメラ11-1F4抗体の投与後の患者のタンパク尿の少なくとも40%の減少を引き起こすのに有効な用量のヒト化またはキメラ11-1F4抗体または抗原結合抗体断片を、患者に投与するステップを含む。いくつかの実施形態において、ALアミロイドーシスは、難治性である。
【0050】
本態様のいくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体は、ヒトIgG1に由来する定常領域を含む。
【0051】
本態様のいくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体は、1ヶ月に1回投与される。また、いくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体は、1週間に1回投与される。
【0052】
本態様のいくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体の治療上有効量は、500mg/m以下である。また、いくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体の治療上有効量は、約2200mgである。また、いくつかの実施形態において、治療上有効量は、約1mg/kg~50mg/kgである。
【0053】
本態様のいくつかの実施形態において、タンパク尿の減少は、キメラ11-1F4抗体の投与から少なくとも約6ヶ月間患者で持続する。
【0054】
別の態様において、本発明は、κまたはλ軽鎖原線維凝集体沈着物の量の減少を必要とする患者の該量を減少させる方法を提供する。本方法は、(a)配列番号47を含むV領域、(b)配列番号48を含むV領域、および(c)ヒトIgG1定常領域を有する抗体を、ある用量で患者に投与するステップを含む。該用量は、抗体の投与は、患者のκまたはλ軽鎖原線維凝集体沈着物の量を減少させるのに有効である。
【0055】
本態様のいくつかの実施形態において、原発性アミロイドーシスは、λ軽鎖原線維凝集体沈着物からなる。また、いくつかの実施形態において、原発性アミロイドーシスは、κ軽鎖原線維凝集体沈着物からなる。また、他の実施形態において、原発性アミロイドーシスは、κおよびλ軽鎖原線維凝集体沈着物からなる。
【0056】
本態様のいくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体は、1ヶ月に1回投与される。また、いくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体は、1週間に1回投与される。
【0057】
本態様のいくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体の治療上有効量は、500mg/m以下である。また、いくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体の治療上有効量は、約2200mgである。また、いくつかの実施形態において、治療上有効量は、約1mg/kg~50mg/kgである。
【0058】
別の態様において、本発明は、ALアミロイドーシスを治療する方法を提供する。本方法は、11-1F4抗体の相補性決定領域(CDR)を含むモノクローナルを、ALアミロイドーシスを有する患者に投与するステップを含む。本方法において、該抗体は、マウス11-14Fではない。
【0059】
本態様のいくつかの実施形態において、該抗体は、マウス-ヒトキメラ抗体であってもよい。
【0060】
本態様のいくつかの実施形態において、該抗体は、ヒトIgG1定常領域を含む。
【0061】
上述した方法のいくつかの実施形態のいずれかにおいて、患者の臓器機能不全は、該抗体の投与後に減少する。上述した方法のいくつかの実施形態のいずれかにおいて、患者は、処置後5週間未満、時には処置後4週間未満、時には処置後3週間未満、時には処置後2週間未満で治療反応の徴候を示す。また、いくつかの他の実施形態において、患者は、処置後約1週間以内に治療反応の徴候を示す。
【0062】
上述した一般的な説明および以下の詳細な説明は例示的および説明的であり、本発明のさらなる説明を提供することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】ハイブリドーマ細胞株からマウスVおよびV遺伝子をクローニングするために使用される戦略を概説する図である。
図2】マウス11-1F4抗体V領域遺伝子のDNAおよびアミノ酸配列(それぞれ配列番号39および配列番号35)のリストである。
図3】マウス11-1F4抗体V領域遺伝子のDNAおよびアミノ酸配列(それぞれ配列番号40および配列番号36)のリストである。
図4】免疫グロブリンκ軽鎖発現ベクターpKN100のマップである。これはpSV2ベクター断片からなり、SV40初期プロモーターおよび不完全SV40後期プロモーター、SV40複製起点およびCo1E1複製起点を有する。これはまた、アンピシリン耐性遺伝子およびneo遺伝子を有する。不完全SV40後期プロモーターがneo遺伝子を駆動する。これはまた、HCMViプロモーター、免疫グロブリン可変領域遺伝子を挿入するためのマルチクローニングサイト(BamHIおよびHindIII制限部位を含む)、およびκ軽鎖発現カセットと同じ配向にあるspaC2終結シグナル配列(「Arnie」)によって終結するヒトκ定常領域遺伝子のcDNAを有する。
図5】免疫グロブリンγ1重鎖発現ベクターpG1D200のマップである。これはpSV2dhfrベクター断片からなり、SV40初期プロモーターおよび不完全SV40後期プロモーター、SV40複製起点およびCo1E1複製起点を有する。これはまた、アンピシリン耐性遺伝子およびdhfr遺伝子を有する。不完全SV40後期プロモーターがdhfr遺伝子を駆動する。結果として、発現が低い。これにより、比較的低レベルのメトトレキサートを使用して、多重遺伝子/高発現レベルのクローンを選択することができる。これはまた、HCMViプロモーター断片、マルチクローニングサイト、ヒトγ1定常領域遺伝子(イントロン(-))のcDNA、続いてspaC2終結シグナル配列(「Arnie」)を有する。
図6】改変マウス11-1F4抗体V領域遺伝子のDNAおよびアミノ酸配列(それぞれ配列番号42および配列番号47)ならびにV遺伝子を改変するために使用されるオリゴヌクレオチドプライマーの配列(それぞれ配列番号41および配列番号43)のリストである。
図7】改変マウス11-1F4抗体V領域遺伝子のDNAおよびアミノ酸配列(それぞれ配列番号45および配列番号48)ならびにV遺伝子を改変するために使用されるオリゴヌクレオチドプライマーの配列(それぞれ配列番号44および配列番号46)のリストである。
図8】アミロイド原線維結合ELISAアッセイの結果を示すグラフである。キメラ11-1F4抗体を含有するcos細胞上清を、精製マウス11-1F4抗体と共に同じELISAプレートで別々に試験した。吸光度をOD405で読み取った。新sv=pG1KD200-11-1F4。新コトランスフェクション=11-1F4VHpG1D200+11-1F4VK.pKN100。
図9】マウス11-1F4で処置したマウスにおけるヒトALκおよびヒトALλアミロイドーマのクリアランスを示す図である。マウスをマウス11-1F4の単回投与(パネルA)または複数回投与(パネルB)で処置した。結果は、マウス11-1F4がALκアミロイドーマを迅速に除去することを示しているが、ほとんどの例で、ALλアミロイドーマをマウスから除去するには複数回投与が必要であった。
図10】キメラ11-1F4の第1a/b相試験の投与/評価スキームを示す図である。パネルAは、第1a相のスキームを示し、パネルBは、第1b相のスキームを示す。パネルCは、これらの試験で使用した用量を示す。
図11】キメラ11-1F4の投与がほとんどの患者の心臓機能の改善を提供することを示す図である。パネルAは、第1a/b相試験の結果を棒グラフで示し、パネルBは、結果を箱ひげ図として示す。
図12】c11-1F4抗体の第1a/b相臨床試験中の例示的な患者の心臓反応(NT-proBNP)を示す図である。
図13】キメラ11-1F4の投与がほとんどの患者の腎臓機能の改善を提供することを示す図である。パネルAは、第1a/b相試験の結果を棒グラフで示し、パネルBは、結果を箱ひげ図として示す。
図14】キメラ11-1F4抗体の第1a/b相臨床試験中の例示的な患者の腎臓反応(タンパク尿)を示す図である。
【0064】
図15は、キメラ11-1F4モノクローナル抗体による長軸方向のグローバルストレインの変化を示すグラフである。
【0065】
図16は、キメラ抗体による処置前に臓器反応がなく且つ化学療法に対する部分的な血液学的反応を有した患者におけるキメラ11-1F4抗体による処置時の臓器反応(NT-proBNP)を示すグラフである。
【0066】
図17は、キメラ11-1F4 mAbによる処置後0週目および12週目の心臓関与を含むアミロイドーシス患者の心エコー図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明によれば、アミロイド沈着疾患または疾患の症状を治療または改善するための該疾患を患っているヒトへの投与に有用なヒト化抗体、キメラ抗体(例えば、マウス-ヒト抗体)またはその抗原結合断片を含む方法および組成物が提供される。本発明の抗体および抗体断片は、アミロイド沈着物に結合し、患者の免疫系を活性化して、結合した物質を除去しながら、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応をほとんどまたは全く生じさせない。また、本発明は、該抗体または抗体断片の少なくとも1つと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物、ならびにアミロイドーシスおよびアミロイドーシスの症状を治療または改善する方法を提供する。該治療または改善方法において、患者の臓器からアミロイド沈着物の少なくとも一部を除去するのに有効な量の抗体または抗体断片を患者に投与して、アミロイド沈着疾患およびその症状を治療または改善する。
【0068】
さらに、本発明によれば、アミロイド沈着疾患を治療する方法が提供される。特に、本発明は、心臓関与を含むアミロイド軽鎖アミロイドーシス(ALA)と診断された患者の心筋機能を改善することに関する。本方法は、アミロイド原線維沈着物、循環アミロイド、および毒性アミロイド前駆体タンパク質に結合するヒト化またはキメラ抗体(例えば、マウス-ヒト抗体)またはその抗原結合断片を、患者に投与するステップを含む。特に、本発明は、本明細書に記載のアミロイド原線維結合抗体を、心臓関与を含むALAと診断された患者に投与すると、治療前の長軸方向のグローバルストレイン(GLS)レベルと比較して改善したGLS、および/または治療前NT-proBNPレベルと比較したNT-proBNPレベルの低下が得られることを示す。さらに、疾患が血液学的に制御されていない場合(すなわち、患者が循環中に検出可能なレベルの毒性アミロイド前駆体タンパク質を有する、または関与する遊離軽鎖と関与しない遊離軽鎖との差が40mg/L超である場合)でも、疾患がκまたはλタンパク質の原線維を含むかどうかにかかわらず、患者を有効に治療することができる。
【0069】
[定義]
本方法は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されず、変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するために使用されるものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。本技術の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0070】
本明細書において使用される一定の用語は、以下の定義された意味を有し得る。本明細書および特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」および「the」には、文脈が明確にそうでないと示さない限り、単数参照および複数参照を含む。例えば、「細胞(a cell)」という用語は、単一細胞ならびに複数の細胞(これらの混合物を含む)を含む。
【0071】
本明細書において使用される「含む(comprising)」という単語は、組成物および方法が列挙された要素を含むが、他の要素を排除することを意図していない。「~から本質的になる(consisting essentially of)」は、組成物および方法を定義するために使用される場合、組成物または方法にとって本質的に重要な他の要素を排除することを意味する。「~からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲に定義する組成物および実質的な方法ステップにおいて、他の成分の微量元素を超えるものを排除することを意味する。これらの移行用語の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲に含まれる。したがって、方法および組成物は、追加のステップおよび成分を含む(含む(comprising))、あるいは重要でないステップおよび組成物を含む(~から本質的になる(consisting essentially of))、あるいは本明細書に記載の方法ステップまたは組成物のみからなる(~からなる(consisting of))ことができることを意図している。
【0072】
本明細書において使用される「約(about)」は、その値からプラスまたはマイナス10%を意味する。
【0073】
本明細書において使用される「任意の(optional)」または「場合により(optionally)」は、以下に記載する事象または状況が発生してもしなくてもよく、記載が、その事象または状況が発生する場合と発生しない場合を含むことを意味する。
【0074】
本明細書において使用される「個体(individual)」、「患者(patient)」または「対象(subject)」という用語は、個々の生物、脊椎動物、哺乳動物(例えば、ウシ、イヌ、ネコもしくはウマ)、またはヒトであり得る。好ましい実施形態において、個体、患者または対象は、ヒトである。
【0075】
本明細書において使用される「単離抗体(isolated antibody)」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことを意図している(例えば、アミロイド原線維に特異的に結合する単離抗体は、アミロイド原線維に結合しない抗体を実質的に含まない)。ただし、アミロイド軽鎖原線維(例えば、κおよび/またはλ原線維)のエピトープに特異的に結合する単離抗体は、アミロイドA原線維などの他のタンパク質に対して交差反応性を有する場合があるが、該抗体は、好ましくは常にヒトアミロイド軽鎖原線維に結合する。典型的には、単離抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない。
【0076】
本明細書において使用される「治療上有効量(therapeutically effective amount)」および「治療レベル(therapeutic level)」という用語は、上記のような治療を必要とする対象に抗体が投与されて具体的な薬理学的効果を提供する、すなわち、ALアミロイドーシスなどのアミロイド沈着疾患の効果または症状を軽減、改善または排除する、抗体用量または対象中の血漿濃度をそれぞれ意味する。薬物の治療上有効量または治療レベルは、たとえこのような投与量が当業者によって治療上有効量であるとみなされるとしても、本明細書に記載の状態/疾患の治療に常に有効とは限らないことが強調される。治療上有効量は、数ある因子の中でも、投与経路および剤形、対象の年齢および体重、ならびに/あるいは治療開始時のアミロイドーシスの種類および病期を含む対象の状態に基づいて変化する場合がある。
【0077】
ALアミロイドーシスなどのアミロイド疾患に関して本明細書で使用される「治療(treatment)」または「治療する(treating)」という用語は、アミロイド斑または沈着物のクリアランスまたは分解を含むアミロイドーシスの1つまたは複数の症状または効果を軽減、改善または排除すること、疾患の影響を受ける臓器(例えば、心臓、腎臓、肝臓等)の臓器機能を改善すること、および患者の寿命または5年生存を増加させることを指すが、これらに限定されるものではない。
【0078】
「治療反応(therapeutic response)」は、既存のアミロイド沈着物もしくは斑のサイズの減少、アミロイド沈着の速度の低下、または標準的な技術によって測定される臓器機能の改善などの、アミロイド疾患の少なくとも1つの尺度の改善を意味する。例えば、心臓にアミロイド沈着物を有する患者では、臓器機能の改善(すなわち、治療反応)が、患者のN末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)のレベルの低下または患者のニューヨーク心臓協会(NYHA)機能分類レベルの低下によって示され得る。腎臓にアミロイド沈着物を有する患者では、臓器機能の改善(すなわち、治療反応)が、尿中のタンパク尿またはタンパク質排出率の減少によって示され得る。
【0079】
本明細書において使用される「ヒト化抗体(humanized antibody)」という用語は、ヒト以外の哺乳動物由来の抗体のCDR、ならびにヒト抗体のフレームワーク領域(FR)および定常領域を含む抗体を指す。ヒト化抗体は、人体におけるヒト化抗体の抗原性が低下するため、本発明による治療薬の治療上有効成分として有用である。
【0080】
本明細書において使用される「心臓関与(cardiac involvement)」は、アミロイド疾患を患っている患者が心臓にアミロイド沈着物を有することを意味する。心臓のアミロイド沈着物は、NT-proBNPの放出および患者の血液中のNT-proBNPレベル上昇をもたらす。本明細書では、NT-proBNPが650pg/mL超である場合、患者は、心臓関与を含む。
【0081】
本明細書において使用されるALアミロイドーシスに関する「血液学的に制御されていない(not hematologically controlled)」という記載は、疾患が完全寛解でも非常に良好な部分寛解でもないことを意味する。例えば、患者が循環(すなわち、血液もしくは血清)中に検出可能なレベルの毒性アミロイド前駆体タンパク質を有する場合、または関与する遊離軽鎖と関与しない遊離軽鎖との差が患者の血液もしくは血清中で40mg/L超である場合、疾患は、血液学的に制御されていない。
【0082】
本明細書において使用される「深刻な有害事象(serious adverse event)」という用語は、連邦規則21巻第312.32(a)章で定義されるように、死に至る、生命を脅かす、入院患者の入院もしくは既存の入院の延長を要する、または永続的もしくは顕著な外観の低下もしくは能力低下をもたらす不都合な医学的事象を意味する。
【0083】
本明細書において使用される「薬学的に許容される担体(pharmaceutically-acceptable carrier)」という用語は、例えば「Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Delivery Systems」第10版(2014)に記載されているように、患者に投与するために医薬化合物(例えば、キメラ抗体)と混和するための材料を意味する。
【0084】
[抗AL抗体]
[[マウス抗原線維抗体]]
近年の動物研究では、マウス11-1F4抗体およびAL原線維に存在するβプリーツシート構造に共通のエピトープに対する他のマウス抗ヒト軽鎖特異的抗体を投与すると、ヒトALκおよびALλアミロイド沈着物が完全に分解されることが示されている。これらのマウス抗体のいくつかは、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,105,594号(以下「594号特許」)明細書に記載されている。
【0085】
マウス抗体は一般に、受容種がマウス抗体を抗原性として認識し、それに対する抗体を産生するために、他の動物種(ヒトなど)への投与には不適切である。ある種に由来する抗体が別の種に注入された場合の抗原性は、通常、定常ドメインの一部によって引き起こされる。このような抗原性応答は、マウス抗体の所望の治療効果を妨害または防止する。ヒトでは、この抗原性応答がヒト抗マウス抗体(HAMA)と呼ばれる。594号特許に記載されている抗体は、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を介して、ヒトで高度に免疫原性である可能性がある。HAMA応答は通常、ヒトのレシピエントからのマウス抗体の急速なクリアランスをもたらすので、HAMAはマウス抗体が有し得る潜在的なヒト治療上の利益を厳しく制限する。そのため、これらのマウス抗体は、患者におけるアミロイド原線維の沈着を停止または逆転させるための患者への投与に適さない。よって、本発明は、投与後の患者で免疫原性HAMA応答を生じる可能性が低いアミロイド沈着疾患を治療するための組成物および方法を提供する。
【0086】
[[ヒト化およびキメラ抗原線維抗体]]
本発明は、アミロイドーシスを治療するためのヒト化およびキメラ抗体またはその抗原結合断片を提供する。典型的には、抗体は、重(H)鎖ポリペプチドの2つの同一コピーと軽(L)鎖ポリペプチドの2つのコピーとを含む4つのポリペプチドからなる。典型的には、各重鎖は、1つのN末端可変(V)領域および3つのC末端定常(CH1、CH2およびCH3)領域を含み、各軽鎖は、1つのN末端可変(VまたはV)領域および1つのC末端定常(CL)領域を含む。また、該抗体の軽鎖および重鎖の各可変ドメインは、相補性決定領域(「CDR」)または超可変領域と呼ばれる3つのセグメントを含む。軽鎖の各CDRは、隣接重鎖の対応するCDRと共に、該抗体の抗原結合部位を形成する。軽鎖と重鎖の各ペアの可変領域は、抗体の抗原結合部位を形成する。その一方で、定常領域は、構造的支持を提供し、抗原結合によって開始される免疫応答を調節する。
【0087】
キメラ抗体は、非ヒト抗体の可変領域をヒト抗体の定常領域に組み込んでいる。例えば、キメラ11-1F4は、ヒトIgG1などのヒト抗体のFc領域と共にマウス可変領域を発現させることによって作成されてもよい。
【0088】
非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む、ヒト化型の非ヒト(例えばマウス)抗体を得ることができる。一般に、ヒト化抗体は、1つまたは2つ以上の可変ドメインを含んでもよい。ここで、可変領域が非ヒト免疫グロブリンに由来し、フレームワーク領域(FR)がヒト免疫グロブリン配列に対応する。よって、いくつかの実施形態において、ヒト化抗AL抗体は、ヒト抗体フレームワーク領域を含む。該抗体は、既知の技術によって調製することができる。
【0089】
マウス11-1F4モノクローナル抗体は、アラン・ソロモン医学博士(米国テネシー州ノックスビル市のテネシー大学医療科学センター)に寄託されたSP2/0ハイブリドーマ細胞によって産生される抗AL抗体である。ハイブリドーマ細胞株は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC寄託PTA-105)から入手可能である。11-1F4抗体のV領域(配列番号36)およびV領域(配列番号35)を以下の表1に示す。重鎖および軽鎖のCDR配列を表2に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
既知のヒト抗体配列を使用して、上述したVおよびV領域の遺伝子をクローニングして、キメラ11-1F4抗体を作製することができる。キメラ11-1F4抗体は、そのマウス対応物と同様に、アミロイドのβプリーツシート構造によって発現されるエピトープに結合する。驚くべきことに、以下の実施例6が示すように、キメラ抗体は、それが由来する11-1F4マウス抗体よりも高い親和性でALアミロイド原線維に結合する。
【0093】
既知のヒト抗体配列を使用して、CDR領域の遺伝子をクローニングして、ヒト化型の抗体を作製することもできる。キメラ型の11-1F4抗体と同様に、ヒト化型も、マウス対応物よりも高いアミロイド原線維に対する結合親和性を有し得る。
【0094】
当業者であれば、本明細書に記載のヒト化およびキメラ抗体が全ての異なるタイプのヒト定常領域および/またはフレームワーク領域を利用し得ることを理解するであろう。例えば、本明細書に記載のヒト化およびキメラ抗体は、ヒトIgG(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む)、IgA、IgE、IgH、またはIgMの定常領域および/またはフレームワーク領域を含んでもよい。好ましい実施形態において、本明細書に記載のヒト化またはキメラ11-1F4抗体は、ヒトIgG1定常領域を含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体は、アミロイド原線維(例えば、κおよび/またはλ軽鎖原線維)に結合する能力を維持する限り、1つまたは複数の置換、挿入または欠失を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のキメラ11-1F4抗体は、アミロイド原線維に結合する能力を維持する限り、本明細書に記載の対応する重鎖および軽鎖配列と比較して約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の同一性を有する重鎖および軽鎖を含んでもよい。いくつかの実施形態において、本発明のヒト化11-1F4抗体は、アミロイド原線維に結合する能力を維持する限り、本明細書に記載の対応するCDR配列と比較して約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の同一性を有するCDRを含んでもよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のヒト化またはキメラ抗体は、例えば実施例6に記載の直接結合ELISAアッセイによって決定した場合、インビトロおよび/またはインビボでそのマウス同等物よりも高い親和性でアミロイド原線維に結合する。本明細書に記載のヒト化およびキメラ11-1F4抗体が沈着物または原線維をまだ形成していない毒性循環アミロイドタンパク質に結合してこれを中和することができ、本明細書に記載のヒト化およびキメラ抗体がアミロイド沈着物を溶解することができると考えられるが、この理論に限定されるものではない。実際、キメラ11-1F4抗体は、原線維に結合し、マウスでヒトアミロイドーマを溶解することが実証された。前駆体軽鎖タンパク質は、心筋細胞に毒性であると考えられているため、臓器内に沈着した凝集したアミロイド原線維および循環毒性アミロイド前駆体タンパク質を標的化することができる治療アプローチが、たとえ患者の疾患が血液学的に制御されていない場合(すなわち、患者が患者の血液もしくは血清中に検出可能なレベルの毒性アミロイド前駆体タンパク質、または40mg/L超の関与する遊離軽鎖と関与しない遊離軽鎖との差を有する場合)でも、心筋関与を含むALアミロイドーシスを有する患者の心血管転帰を改善する可能性があることは、注目に値する。
【0097】
[略語]
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ウシ胎児血清(FBS)、リボ核酸(RNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、コピーDNA(cDNA)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、分(min)、秒(sec)、トリス-ホウ酸緩衝液(TBE)。
【0098】
アミノ酸は、IUPAC略語によって次の通り表される:アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、バリン(Val)。ヌクレオチドについても、同様に次の通り表される:アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)、アデニンまたはグアニン(R)、シトシンまたはチミン(Y)、グアニンまたはシトシン(S)、アデニンまたはチミン(W)、グアニンまたはチミン(K)、アデニンまたはシトシン(M)、シトシンまたはグアニンまたはチミン(B)、アデニンまたはグアニンまたはチミン(D)、アデニンまたはシトシンまたはチミン(H)、アデニンまたはシトシンまたはグアニン(V)、および任意の塩基(N)。
【0099】
[ヒト化またはキメラ抗体]
本発明のキメラ抗体を産生するために、米国特許第8,105,594号明細書に記載されているマウス11-1F4モノクローナル抗体重鎖およびκ軽鎖可変領域遺伝子をPCR改変して、哺乳動物細胞におけるキメラ11-1F4抗体の発現を促進した。改変された可変領域遺伝子の詳細な配列分析を実施した。改変された可変領域遺伝子を適切な哺乳動物発現ベクターにクローニングし、構築物11-1F4VHpG1D200および11-1F4VK.pKN100を作製した。EcoRI制限酵素消化およびライゲーションによって、11-1F4VHpG1D200および11-1F4VK.pKN100構築物から、単一スーパーベクター構築物pG1KD200-11-1F4を作製した。最後に、コトランスフェクションと単一スーパーベクタートランスフェクションの両方によって、キメラ11-1F4抗体をCOS細胞で一過的に発現させた。便宜上、コトランスフェクションまたはトランスフェクションのためにCOS細胞を選択したが、当業者であれば他の哺乳動物細胞株を使用できることを認識するであろう。アミロイド原線維に対するキメラ11-1F4抗体の結合能力の特性決定を、直接結合ELISAによって決定した。予想外かつ有益なことに、キメラ11-1F4抗体は、マウス11-1F4抗体よりも高い親和性でアミロイド原線維に結合した。
【0100】
典型的には、抗体は、重(H)鎖ポリペプチドの2つの同一コピーと軽(L)鎖ポリペプチドの2つのコピーとを含む4つのポリペプチドからなる。典型的には、各重鎖は、1つのN末端可変(V)領域および3つのC末端定常(CH1、CH2およびCH3)領域を含み、各軽鎖は、1つのN末端可変(VまたはV)領域および1つのC末端定常(CL)領域を含む。軽鎖と重鎖のペアのそれぞれの可変領域は、抗体の抗原結合部位を形成する。
【0101】
本発明の組成物および方法で有用な抗体は、配列番号47のV領域および配列番号48のV領域を含むキメラマウス-ヒトモノクローナル抗体、または配列番号49~54のCDR配列を含むヒト化モノクローナル抗体であってもよい。これらの抗体は、アミロイド原線維のβプリーツシート構造によって発現されるエピトープに結合する。さらに、驚くべきことに、これらの抗体は、配列番号36のV領域および配列番号35のV領域を含む、それらが由来する11-1F4マウス抗体よりも高い親和性でこのエピトープに結合する。本発明は、アミロイド沈着疾患の治療を必要とするヒト患者の該疾患を治療する方法を含む。本方法は、薬学的に許容される担体中の上記抗体の1つを治療上有効用量で患者に投与するステップを含む。投与される抗体の量は、例えば、患者の組織に沈着したアミロイド原線維の量を減らすのに有効である。該抗体組成物は、任意の従来の投与経路によって投与されてもよいが、非経口投与(静脈内など)が好ましい。薬学的に許容される担体は、当技術分野で周知であり、適切なものが医学分野の当業者によって選択され得る。アミロイド沈着疾患は、好ましくは原発性(AL)アミロイドーシスである。
【0102】
本明細書に記載され、特許請求される組成物および方法に有用なキメラ抗体(ならびにキメラ抗体を作製する方法)は、同日付で提出され、全体が本明細書に組み込まれる、共同所有の特許協力条約出願_________(2017年6月29日に出願された米国特許出願第62/526835号に基づく優先権を有する明細書8441-0004WO)に記載されている。本抗体を作製するのに有用な材料には、図5および図6にそれぞれ示す11-1F4VK.pKN100および11-F4VH.pG1D200からなる群から選択されるベクター構築物、ならびに上記2つのベクター構築物から作製された超構築物(superconstruct)pG.1KD20011-1F4が含まれる。他の有用な材料には、改変マウス11-1F4抗体V領域遺伝子(配列番号42)および改変11-1F4抗体V領域遺伝子(配列番号45)、ならびにそれぞれのプライマーである配列番号41、43、44および46が含まれる。本抗体は、ベクター構築物11-1F4VK.pKN100および11-F4VH.pG1D200または超構築物pG.1KD20011-1F4のCOS(チャイニーズハムスター卵巣)細胞などの適切な哺乳動物宿主細胞へのコトランスフェクションによって作製されてもよい。
【0103】
ヒト化またはキメラ11-1F4抗体を作製、試験および使用する方法を、以下の実施例の節でさらに詳細に説明する。
【0104】
[医薬製剤]
本明細書に記載の方法に使用するのに適した医薬組成物は、本明細書に記載のヒト化またはキメラ11-1F4抗体、ヒト化抗体、または抗原結合抗抗体断片と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含むことができる。
【0105】
組成物は、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、経口、経鼻、肺、眼、膣または直腸投与用に製剤化されてもよい。いくつかの実施形態において、抗体は、溶液、懸濁液、エマルジョン、リポソーム製剤等などの静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内投与用に製剤化される。医薬組成物は、当技術分野で知られている技術を使用して、即時放出組成物、持続放出組成物、遅延放出組成物等になるよう製剤化され得る。
【0106】
種々の剤形のための薬理学的に許容される担体は、当技術分野で知られている。例えば、固形製剤用の賦形剤、潤滑剤、結合剤および崩壊剤が知られており、液体製剤用の溶媒、可溶化剤、懸濁化剤、等張剤、緩衝剤および無痛化剤が知られている。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、1種または複数の保存剤、抗酸化剤、安定化剤などの1種または複数の追加の成分を含む。
【0107】
さらに、本明細書に記載の医薬組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高薬物濃度に適した他の秩序構造として製剤化され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合は必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。いくつかの実施形態において、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、または塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。注射可能な組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
【0108】
滅菌注射液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上述した成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒に組み込み、次いで滅菌精密濾過によって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒および上述した他の成分のうちの必要な成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、有効成分と任意の追加の所望の成分の粉末を前に滅菌濾過した溶液から生じる真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0109】
本発明の医薬組成物は、アミロイドーシスおよびアミロイド疾患の現在の標準治療の一部である他の治療薬と組み合わせて投与することができる。あるいは、本明細書に記載の医薬組成物は、アミロイドーシスおよびアミロイド疾患の従来の治療を以前に受けたが、従来の治療に反応しなかった(すなわち、疾患が難治性である、または進行し続けている)患者に投与されてもよい。
【0110】
[治療方法]
本発明では、少なくとも1つのキメラ抗体、ヒト化抗体またはその抗原結合抗体断片を、アミロイドーシスを患っている患者(例えば、ヒト患者)に投与して、患者の臓器に沈着したおよび/または患者の血流中を循環しているアミロイド原線維の少なくとも部分的分解および除去を促進する。いくつかの実施形態において、治療上有効量の抗体と、薬学的に許容される担体とを投与する。適切な薬学的に許容される担体は、以下に説明するように当技術分野で周知である。医学分野の当業者によく理解されているように、典型的な投与経路は非経口的(例えば静脈内、皮下または筋肉内)である。当然、他の投与経路も可能である。投与は、単回投与であってもよく、複数回投与であってもよい。投与される抗体の量および投与頻度は、特定の患者のために医師によって最適化されてもよい。
【0111】
アミロイドーシスは、様々な人の様々な臓器に発症することができ、様々な種類のアミロイドが存在する。アミロイドーシスは、心臓、腎臓、肝臓、脾臓、神経系および消化管に頻繁に発症する。重度のアミロイドーシスは、生命を脅かす臓器不全を引き起こし得る。
【0112】
アミロイドーシスの徴候および症状には、足首および下肢の腫脹、重度の疲労および衰弱、息切れ、手足のしびれ、刺痛もしくは疼痛、特に手首の疼痛(手根管症候群)、おそらく出血を伴う下痢または便秘、意図しない大幅な体重減少、肥大した舌、肥厚もしくはあざができやすいなどの皮膚の変化、目の周りの紫斑、不規則な心拍、または嚥下困難が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
一般に、アミロイドーシスは、アミロイドと呼ばれる異常なタンパク質の蓄積によって引き起こされる。アミロイドは、骨髄で産生され、いずれの組織または臓器にも沈着し得る。この状態の具体的な原因は、アミロイドーシスの種類に依存する。
【0114】
ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシスおよび遺伝性アミロイドーシスを含むいくつかのタイプのアミロイドーシスまたはアミロイド疾患がある。
【0115】
ALアミロイドーシス(免疫グロブリン軽鎖アミロイドーシス)は、最も一般的なタイプで、心臓、腎臓、皮膚、神経および肝臓に発症し得る。以前は原発性アミロイドーシスとして知られていたALアミロイドーシスは、骨髄が分解できない異常な抗体を産生すると発生する。抗体は、アミロイド斑として種々の組織に沈着し、組織または臓器の正常な機能を妨害する。
【0116】
以前は続発性アミロイドーシスとして知られていたAAアミロイドーシスは、一般に腎臓に発症するが、消化管、肝臓または心臓に発症する場合もある。これは通常、関節リウマチまたは炎症性腸疾患などの慢性感染性または炎症性疾患と共に発生する。
【0117】
遺伝性アミロイドーシス(家族性アミロイドーシス)は通常、肝臓、神経、心臓および/または腎臓に発症することが多い遺伝性障害である。出生時に存在する多くの異なるタイプの遺伝子異常が、アミロイド疾患または遺伝性アミロイドーシスのリスク増加と関連している。アミロイド遺伝子異常のタイプおよび場所は、一定の合併症のリスク、症状が最初に現れる年齢、および疾患の経時的進行に影響を及ぼし得る。
【0118】
アミロイド疾患が心臓に発症すると、多数のタイプの合併症を引き起こし得る。アミロイド沈着物または斑は、心臓が心拍の間に血液で満たされる能力を低下させる。各拍動で送られる血液が少なくなり、これが息切れにつながり得る。また、心臓内または心臓周囲のアミロイド沈着物または斑は、数ある他の臓器機能障害の中でも、不規則な心拍およびうっ血性心不全を引き起こし得る。
【0119】
アミロイド疾患が腎臓に発症すると、通常、腎臓の濾過能力が損なわれ、タンパク質が血液から尿に漏出することを可能にする(すなわち、タンパク尿)。さらに、腎臓が体から老廃物を除去する能力が低下し、最終的に腎不全につながり得る。
【0120】
本明細書において、アミロイド沈着疾患の治療を必要とする患者(例えば、ヒト患者)の原発性(AL)アミロイドーシスなどの該疾患を治療する方法が提供される。本方法は、アミロイド沈着疾患を治療するのに有効な量のヒト化またはキメラ11-1F4抗体と薬学的に許容される担体とを、患者に投与するステップを含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、アミロイド沈着疾患(例えば、原発性アミロイドーシス)は、心臓、腎臓、肝臓、肺、消化管、神経系、筋肉骨格系、軟部組織および皮膚からなる群から選択される少なくとも1つの臓器または組織の関与を含む。
【0122】
疾患が患者の心臓のアミロイド沈着物または斑を含む実施形態において、本明細書に記載のヒト化またはキメラ11-1F4抗体による処置は、患者のN末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)のレベルを、該抗体の投与前にとられたベースラインレベルと比較して少なくとも約30%低下させ得る。いくつかの実施形態において、NT-proBNPのレベルは、該抗体の投与前にとられたベースラインレベルと比較して少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%またはそれ以上低下され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のヒトまたはキメラ11-1F4抗体による処置は、患者のNT-proBNPレベルを、該抗体の投与後に約9100ng/L未満に低下させ得る。いくつかの実施形態において、患者のNT-proBNPレベルは、該抗体の投与後に約8000ng/L未満、7000ng/L未満、6000ng/L未満、5000ng/L未満、または4000ng/L未満に低下され得る。いくつかの実施形態において、患者は、最初に該抗体の投与前にニューヨーク心臓協会(NYHA)機能分類クラスIIまたはクラスIIIに分類され得るが、本明細書に記載のキメラ11-1F4抗体による治療後に、患者は、NYHA分類スケールでクラスIに分類され得る。
【0123】
本明細書において、心臓関与を含むアミロイドーシスを患っている患者の心筋機能を改善する方法、ならびに心臓関与(すなわち、NT-proBNPが650pg/mL超である)を有し、血液学的に制御されていないALAを有する患者などの特定の患者の亜集団を治療する方法が提供される。
【0124】
アミロイド疾患が心臓に発症すると、多数のタイプの合併症を引き起こし、この心臓関与が予後不良の前兆になる。アミロイド沈着物または斑は、心臓が心拍の間に血液で満たされる能力を低下させる。各拍動で送られる血液が少なくなり、これが数ある他の深刻な悪化因子の中でも息切れにつながり得る。心臓内または心臓周囲のアミロイド沈着物または斑はまた、数ある他の臓器機能障害の中でも、不規則な心拍およびうっ血性心不全を引き起こし得る。
【0125】
本明細書において、心臓関与を含むアミロイド軽鎖アミロイドーシス(ALA)と診断された患者の心筋機能を改善する方法が提供される。本方法は、治療上有効量のヒト化またはキメラ11-1F4抗体またはその抗原結合断片を、ALAと診断された患者に投与するステップを含む。該抗体またはその抗原結合断片は、直接結合ELISAによって決定した場合、マウス11-1F4抗体よりも高い親和性でアミロイド原線維に結合し得る。さらに、心筋機能の改善は、抗体またはその抗原結合断片を投与した後に、約3週間以内に明らかになり得る。例えば、心筋機能の種々の尺度の改善は、治療開始の約1週間以内、約2週間以内、約3週間以内、約4週間以内、約5週間以内、約6週間以内、約7週間以内、約8週間以内、約9週間以内、約10週間以内、約11週間以内、約12週間以内、約13週間以内、約14週間以内、または約15週間以内に見られる。
【0126】
心臓関与を含む患者の心筋機能は、N末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)レベルを測定することによって決定することができる。ALA患者の心臓のアミロイド沈着物によって引き起こされる組織損傷は、患者のNT-proBNPレベルを上昇させる。いくつかの実施形態において、心臓関与を含むALAと診断された患者は、650pg/mL超の治療前のNT-proBNPレベルを示す。
【0127】
SmisethらによるEur Heart J、37:1196に記載されているように、心エコーを使用して長軸方向のグローバルストレイン(GLS)を測定することで、心筋機能およびその改善を測定することができる。心エコーは、超音波を使用して心筋のセグメント内の平均変形を測定する。GLSは、全体的左室機能の尺度としてのこれらのセグメントの平均である。アミロイド沈着により、左右の心室壁が厚くなり、硬く非拡張型の心室となり、コンプライアンスに乏しい非拡張型の心室となり、心臓および血管系に「ストレイン(strain)」が生じ得る。心エコー用語では、「ストレイン」という用語は、心筋の変形を説明するために使用される。これには心筋の局所的な短縮、肥厚および/または延長が含まれてもよいが、これらに限定されるものではない。ストレインは、心室機能の尺度として使用され得る。当業者であれば、心エコーを使用してGLSを決定する方法を知っており、これを様々な方法で計算できることを理解するであろう。例えば、ラグランジュの式(ε=(L-L)/L=ΔL/L(式中、Lはベースライン長さであり、Lは得られた長さである))が、元の長さに対するストレインを無次元の尺度として定義する。短縮は負であり、伸長は正である。これは通常、パーセントで表される。代替定義であるオイラーストレインは、瞬間長さに関するストレインを定義する:ε=ΔL/L。経時変化の場合、ラグランジュストレインは、ε=ΣΔL/Lとなり、オイラーストレインは、ε=Σ(ΔL/L)となる。この用語は、正常な心筋と虚血性心筋の変形の局所的な差を説明するために、MirskyおよびParmleyによって最初に使用された。
【0128】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法における患者は、治療前GLSレベルと比較して長軸方向のグローバルストレイン(GLS)の改善を示す。例えば、本明細書に記載のキメラ抗体で処置された19人の患者の試験では、これらの患者のうちの10人がNT-proBNPレベルのスクリーニングにより心臓関与を含み、8人の患者がベースラインNT-proBNPにより心臓の評価が可能であり、心臓関与が650pg/mL超のNT-proBNPレベルを有することによって定義された。いくつかの実施形態において、心臓関与を含むALAを有する患者は、少なくとも650pg/mlのベースラインNT-proBNPを有し得る。また、いくつかの実施形態において、心臓関与を含むALAを有する患者は、少なくとも700pg/ml、750pg/ml、800pg/ml、850pg/ml、900pg/ml、950pg/ml、1000pg/ml、1050pg/ml、1100pg/ml、1150pg/ml、1200pg/ml、1250pg/ml、1300pg/ml、1350pg/ml、1400pg/ml、1450pg/ml、1500pg/ml、1550pg/ml、1600pg/ml、1650pg/ml、1700pg/ml、1750pg/ml、1800pg/ml、1850pg/ml、1900pg/ml、1950pg/ml、2000pg/ml、2050pg/ml、2100pg/ml、2150pg/ml、2200pg/ml、2250pg/ml、または2300pg/ml以上のベースラインNT-proBNPを有し得る。
【0129】
以下の実施例9に記載する心臓関与を含む10人の患者のうちの9人は、図15に示すように、本明細書に記載のキメラ抗体への曝露で心筋機能の改善を示した。したがって、いくつかの実施形態において、治療上有効量のキメラ抗体で処置された患者は、治療前GLSレベルと比較して長軸方向のグローバルストレイン(GLS)の改善を示す。GLS低下に付随して、本明細書に記載の抗体で処置された患者は、NT-proBNPレベル低下も示す場合がある。
【0130】
いくつかの実施形態において、GLSの改善は、治療開始の約1週間以内、約2週間以内、約3週間以内、約4週間以内、約5週間以内、約6週間以内、約7週間以内、約8週間以内、約9週間以内、約10週間以内、約11週間以内、約12週間以内、約13週間以内、約14週間以内、または約15週間以内に起こり得る。いくつかの実施形態において、GLSの改善は、ラグランジュの式によって計算した場合、ベースラインと比較して1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、またはそれ以上のGLSの減少によって表され得る。ベースラインと比較して約2%以上のGLSレベルの低下は、臨床学的に関連があると見なされる。
【0131】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のヒト化またはキメラ11-1F4抗体またはその抗原結合断片による治療は、患者のN末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)のレベルを、該抗体の投与前にとられたベースラインレベルと比較して少なくとも約30%低下させ得る。いくつかの実施形態において、NT-proBNPは、該抗体の投与前にとられたベースラインレベルと比較して少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%またはそれ以上低下され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のキメラ11-1F4抗体による処置は、患者のNT-proBNPレベルを、該抗体の投与後に約9100ng/L未満に低下させ得る。いくつかの実施形態において、患者のNT-proBNPレベルは、該抗体の投与後に約8000ng/L未満、約7000ng/L未満、約6000ng/L未満、約5000ng/L未満、または約4000ng/L未満に低下され得る。いくつかの実施形態において、患者は、最初に該抗体の投与前にニューヨーク心臓協会(NYHA)機能分類クラスIIまたはIIIに分類され得るが、本明細書に記載のキメラ11-1F4抗体による治療後に、患者は、NYHA分類スケールでクラスIに分類され得る。
【0132】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、再発性または難治性ALAを患っている患者を治療することを含む。いくつかの実施形態において、患者は、κALAを有し得る。いくつかの実施形態において、患者は、λALAを有し得る。
【0133】
免疫グロブリンは、カッパ(κ)またはラムダ(λ)軽鎖の2つの軽鎖と、いくつかのタイプがある2つの重鎖とを含む4つのタンパク質鎖から構成される。ALアミロイドーシスでは、κ軽鎖またはλ軽鎖のいずれかがミスフォールドされ、アミロイド原線維または斑を形成し得る。したがって、一部の患者では、κ断片とλ断片の両方がミスフォールドされ得る。サブグループ分析により、実施例8に示すように、λ心臓関与とκ心臓関与の両方を有する患者が、治療前レベルと比較してGLSが低下したことで改善を示すことがわかった。したがって、いくつかの実施形態において、患者は、軽鎖λアミロイド心臓関与を含むとしてさらに特徴付けられる。いくつかの実施形態において、患者は、軽鎖κアミロイド心臓関与を含むとしてさらに特徴付けられる。
【0134】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の治療方法は、毒性前駆体タンパク質を生成している機能不全細胞を殺傷することを意図され得る化学療法薬を投与するステップをさらに含んでもよい。場合によっては、このような治療が成功し、それによって機能不全細胞の減少、および患者の血液中の循環毒性アミロイド前駆体タンパク質の量の付随する減少をもたらし得る。しかしながら、化学療法が、機能不全細胞の数および/またはこれらの細胞が毒性アミロイド前駆体タンパク質を産生する能力を低下させるのに無効である場合がある。血液中の検出可能な循環毒性アミロイド前駆体タンパク質のレベルを有し続けている患者は、血液学的に制御されていないALAを有すると言われる。
【0135】
本明細書に記載するヒト化およびキメラ11-1F4抗体は、タンパク質が凝集してアミロイド沈着物を形成する前でさえ、循環中の毒性アミロイド前駆体タンパク質に結合し、これを中和することができると考えられている。そのため、本明細書に記載の治療方法は、血液学的に制御されていない(すなわち、完全寛解でも非常に良好な部分寛解でもない)患者に特に有益であり得る。完全寛解は、陰性の血清および尿免疫固ならびに遊離軽鎖(FLC)アッセイにおける正常比として定義され、非常に良好な部分寛解は、40mg/L未満の関与する遊離軽鎖と関与しない遊離軽鎖との差を有するものとして定義される。
【0136】
[[改善の監視]]
心エコーは、非侵襲的であり、心臓関与を含む軽鎖アミロイドーシス(ALA)と診断された患者の心筋機能の改善を監視するために使用することができる。この監視は、治療上有効量のヒト化またはキメラ11-1F4抗体(c11-1F4 Ab)またはその抗原結合断片の患者への投与から約3週間以内に心臓関与を含むALAと診断された患者の心筋機能の改善を観察することを含む。ヒト化またはキメラ11-1F4 Abまたはその抗原結合断片は、直接結合ELISAによって決定した場合に、マウス11-1F4抗体よりも高い、アミロイド原線維に対する結合親和性を有する。したがって、実施例8に示すように、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体の投与から約3週間に、心筋機能の改善が観察され得る。いくつかの実施形態において、心筋機能の改善は、ヒト化またはキメラ11-1F4 Abまたはその抗原結合断片の投与から少なくとも3ヶ月に及ぶ期間持続する。
【0137】
疾患が患者の腎臓のアミロイド沈着物または斑を含む実施形態において、本明細書に記載のヒト化またはキメラ11-1F4抗体による処置は、患者の尿中のタンパク質(すなわち、タンパク尿)のレベルを、該抗体の投与前に決定されたベースラインレベルと比較して少なくとも約30%低下させ得る。いくつかの実施形態において、患者の尿中のタンパク質は、該抗体の投与前に決定されたベースラインレベルと比較して少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%またはそれ以上低下され得る。いくつかの実施形態において、患者の尿タンパク質排出量は、該抗体の投与後に約7000mg/24時間未満、約6000mg/24時間未満、約5000mg/24時間未満、約4000mg/24時間未満、または約3000mg/24時間未満に減少し得る。
【0138】
[[治療上有効用量および投与レジメン]]
いくつかの実施形態において、治療上有効用量の抗体は、3ヶ月の期間内に1回、2回、3回、または4回以下で投与されてもよい。いくつかの実施形態において、NT-proBNPの減少またはGLSの改善は、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体の投与から少なくとも約3ヶ月間患者で持続する。
【0139】
当業者によって容易に理解されるように、上述した方法の治療上有効用量および投与レジメンは、変化し得る。投与レジメンは、最適な所望の反応(例えば、アミロイド斑の治療反応クリアランスまたは沈着したアミロイド原線維の量の減少)を提供するよう調整されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において抗体が単回投与されてもよく、いくつかの実施形態において数回の分割用量が経時的に投与されてもよく、またはその後の投与において用量が状況に応じて比例的に減少もしくは増加されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体は、皮下、静脈内または筋肉内注射によって1週間に1回または2回投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片は、皮下、静脈内または筋肉内注射によって1ヶ月に1回または2回投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片は、皮下、静脈内または筋肉内注射によって1年に1回または2回投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片は、状況または患者の状態に応じて、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、6ヶ月に1回、7ヶ月に1回、8ヶ月に1回、9ヶ月に1回、10ヶ月に1回、11ヶ月に1回、1年に2回、または1年に1回投与されてもよい。
【0140】
さらに、本明細書に記載のデータは、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体による処置に対する患者の反応が持続するだけでなく、迅速でもあることを示している。いくつかの実施形態において、患者は、1週間以下、2週間以下、3週間以下、4週間以下、5週間以下、6週間以下、7週間以下、8週間以下、9週間以下、10週間以下、11週間以下、12週間以下、またはその間の任意の時間枠で、治療反応(すなわち、アミロイド沈着物もしくは斑のサイズの減少、斑形成速度の減少、または臓器機能の改善)を経験し得る。例えば、用量および投与レジメンに応じて、患者は、約1週間または約4.5週間に治療反応を経験し得る。
【0141】
患者に投与される抗体の治療上有効用量(単回投与で投与されるか複数回投与で投与されるかにかかわらず)は、患者の沈着アミロイド原線維の量を減らすのに十分である必要がある。このような治療上有効量は、患者の症候性変化を評価することによって、または沈着アミロイド原線維の量の変化を評価することによって(例えば、124Iタグ付き抗体を使用した沈着アミロイド沈着物の放射免疫検出によって)決定され得る。したがって、本発明の標識抗体を使用して、疾患を有する疑いがある患者のアミロイド沈着疾患の存在を検出すると同時に、治療の有効性を判定することができる。
【0142】
例示的な用量は、治療されている個体のサイズおよび健康、ならびに治療されている状態によって変化し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のヒト化またはキメラ11-1F4抗体の治療上有効量は、約500mg/m以下であってもよい。しかしながら、状況に応じて用量がそれよりも多くてもよい。いくつかの実施形態において、治療上有効用量は、10mg/m~1000mg/m、25mg/m~900mg/m、50mg/m~800mg/m、75mg/m~700mg/m、100mg/m~600mg/m、またはその間の任意の値であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、治療上有効量は、約1000mg/m、約975mg/m、約950mg/m、約925mg/m、約900mg/m、約875mg/m、約850mg/m、約825mg/m、約800mg/m、約775mg/m、約750mg/m、約725mg/m、約700mg/m、約675mg/m、約650mg/m、約625mg/m、約600mg/m、約575mg/m、約550mg/m、約525mg/m、約500mg/m、約475mg/m、約450mg/m、約425mg/m、約400mg/m、約375mg/m、約350mg/m、約325mg/m、約300mg/m、約275mg/m、約250mg/m、約225mg/m、約200mg/m、約175mg/m、約150mg/m、約125mg/m、約100mg/m、またはそれ以下であってもよい。
【0143】
同様に、いくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体の有効量は、約2200mgである。しかしながら、状況に応じて用量がそれよりも多くても少なくてもよい。いくつかの実施形態において、治療上有効量は、50mg~5000mg、60mg~約4500mg、70mg~4000mg、80mg~3500mg、90mg~3000mg、100mg~2500mg、150mg~2000mg、200mg~1500mg、250mg~1000mg、またはその間の任意の用量であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、治療上有効量は、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、約2000mg、約2100mg、約2200mg、約2300mg、約2400mg、約2500mg、約2600mg、約2700mg、約2800mg、約2900mg、約3000mg、約3100mg、約3200mg、約3300mg、約3400mg、約3500mg、約3600mg、約3700mg、約3800mg、約3900mg、約4000mg、約4100mg、約4200mg、約4300mg、約4400mg、約4500mg、約4600mg、約4700mg、約4800mg、約4900mg、約5000mg、またはそれ以上であってもよい。
【0144】
同様に、いくつかの実施形態において、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体の有効量は、約25mg/kgである。しかしながら、いくつかの実施形態において、濃度がそれよりも高くても低くてもよい。いくつかの実施形態において、有効量は、約1mg/kg~50mg/kg、約5mg/kg~40mg/kg、約10mg/kg~30mg/kg、または約15mg/kg~25mg/kg、またはその間の任意の値であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、有効量は、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、21mg/kg、22mg/kg、23mg/kg、24mg/kg、25mg/kg、26mg/kg、26mg/kg、28mg/kg、29mg/kg、30mg/kg、31mg/kg、32mg/kg、33mg/kg、34mg/kg、35mg/kg、36mg/kg、37mg/kg、38mg/kg、39mg/kg、40mg/kg、41mg/kg、42mg/kg、43mg/kg、44mg/kg、45mg/kg、46mg/kg、47mg/kg、48mg/kg、49mg/kg、50mg/kg、またはそれ以上であってもよい。
【0145】
状況に応じて、本明細書に記載の治療方法を他の既知の治療方法と組み合わせてもよい。例えば、ALアミロイドーシスの現在の標準治療は、一般に、自家造血幹細胞移植(ASCT)または自家骨髄移植を含む。多発性骨髄腫を治療する同じ化学療法薬の多くが、アミロイド/毒性アミロイド前駆体タンパク質を産生する異常または機能不全細胞の増殖を停止するためにALアミロイドーシスで使用される。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のヒト化またはキメラ11-1F4抗体は、他の既知の治療の前、後、またはこれと同時に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のヒト化またはキメラ11-1F4抗体は、他の治療選択肢が失敗した、または疾患が進行し続けた後にのみ投与されてもよい。換言すれば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体は、難治性ALアミロイドーシスなどの難治性アミロイド疾患を治療するために使用される。
【0146】
疾患が患者の腎臓のアミロイド沈着物または斑を含む実施形態において、本明細書に記載のキメラ11-1F4抗体による処置は、患者の尿中のタンパク質(すなわち、タンパク尿)のレベルを、該抗体の投与前に決定されたベースラインレベルと比較して少なくとも約30%低下させ得る。いくつかの実施形態において、患者の尿中のタンパク質は、該抗体の投与前に決定されたベースラインレベルと比較して少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、またはそれ以上低下され得る。いくつかの実施形態において、患者の尿タンパク質排出量は、該抗体の投与後に約7000mg/24時間未満、約6000mg/24時間未満、約5000mg/24時間未満、約4000mg/24時間未満、または約3000mg/24時間未満に減少し得る。
【0147】
本明細書において、アミロイド沈着疾患(例えば、ALアミロイドーシス)を有する患者を治療する方法が提供される。本方法は、治療上有効量のヒト化またはキメラ11-1F4抗体を、1ヶ月に1回よりも少ない頻度でそれを必要とする患者に投与するステップを含む。いくつかの実施形態において、ALアミロイドーシスは、λ軽鎖原線維の凝集体を含む場合がある。この場合、λ軽鎖原線維の凝集体の存在は、該抗体の投与後に大幅に減少する。
【0148】
いくつかの実施形態において、治療上有効用量の抗体は、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、6ヶ月に1回、または半年ごとに投与されてもよい。より具体的な投与レジメンを以下に記載する。
【0149】
本明細書において、心臓に関与する原発性軽鎖(AL)アミロイドーシスを有する患者を治療する方法が提供される。本方法は、治療前レベルと比較してヒト化またはキメラ11-1F4抗体の投与後のN末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)レベルの少なくとも30%の低下を引き起こすのに有効な用量のヒト化キメラ11-1F4抗体を、患者に投与するステップを含む。また、本明細書において、腎臓に関与する原発性軽鎖(AL)アミロイドーシスを有する患者を治療する方法も含まれる。本方法は、治療前レベルと比較してヒト化またはキメラ11-1F4抗体の投与後のタンパク尿の少なくとも40%の減少を引き起こすのに有効な用量のヒト化またはキメラ11-1F4抗体を、患者に投与するステップを含む。
【0150】
いくつかの実施形態において、NT-proBNPおよび/またはタンパク尿の減少は、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体の投与から少なくとも約6ヶ月間患者で持続する。
【0151】
上述したように、免疫グロブリンは、カッパ(κ)またはラムダ(λ)軽鎖の2つの軽鎖と、いくつかのタイプがある2つの重鎖とを含む4つのタンパク質鎖で構成される。ALアミロイドーシスでは、κ軽鎖またはλ軽鎖のいずれかがミスフォールドされ、アミロイド原線維または斑を形成し得る。一部の患者では、κ断片とλ断片の両方がミスフォールドされ得る。よって、本明細書において、κおよび/またはλ軽鎖原線維凝集体沈着物の量を減少させる必要がある患者の該量を減少させる方法が提供される。本方法は、患者のκまたはλ軽鎖原線維凝集体沈着物の量を減少させるのに有効な用量の、(i)配列番号47を含むV領域、配列番号48を含むV領域、または(ii)配列番号49~54を含むCDR配列、およびヒトIgG1定常領域を含む抗体を、κまたはλ軽鎖原線維凝集体沈着物を含む原発性アミロイドーシスを有する患者に投与するステップを含む。
【0152】
いくつかの実施形態において、原発性アミロイドーシスは、λ軽鎖原線維沈着物または斑からなる。また、いくつかの実施形態において、原発性アミロイドーシスはκ軽鎖原線維凝集体沈着物からなる。また、いくつかの実施形態において、原発性アミロイドーシスは、κおよびλ軽鎖原線維凝集体沈着物からなる。
【0153】
驚くべきことに、本明細書では、キメラ11-1F4がλ軽鎖原線維の除去において予想外に有効であることが発見された。実際、実施例7で提供されるマウス試験などの前臨床実験は、λ原線維がクリアランスに耐性であり、沈着物を除去するために複数の反復処置が必要であることを示唆した。ただし、実施例8に示すように、キメラ11-1F4抗体をヒトに投与した場合、処置により、単回投与後のλ鎖アミロイド沈着物の減少がもたらされた。この結果は、本明細書に記載の方法を実施する前は全く予想外であった。ヒト化11-1F4抗体は、λ軽鎖原線維を除去する同様の能力を示すと考えられる。
【0154】
上述した方法のいずれにおいても、本明細書に記載のヒト化またはキメラ11-1F4抗体の投与は、臓器機能障害を減少させると予想される。さらに、上述した方法のいずれにおいても、該抗体の定常領域は、ヒトIgG定常領域であってもよい。より具体的には、いくつかの実施形態において、該抗体の定常領域は、ヒトIgG1定常領域であってもよい。
【0155】
当業者によって容易に理解されるように、上述した方法の治療上有効用量および投与レジメンは変化し得る。投与レジメンは、最適な所望の反応(例えば、アミロイド斑の治療反応クリアランスまたは沈着したアミロイド原線維の量の減少)を提供するよう調整されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において抗体が単回ボーラス投与されてもよく、いくつかの実施形態において数回の分割用量が経時的に投与されてもよく、またはその後の投与において用量が状況に応じて比例的に減少もしくは増加されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体は、皮下、静脈内または筋肉内注射によって1週間に1回または2回投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体または機能的断片は、皮下、静脈内または筋肉内注射によって1ヶ月に1回または2回投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体または機能的断片は、皮下、静脈内または筋肉内注射によって1年に1回または2回投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体は、状況または患者の状態に応じて、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、6ヶ月に1回、7ヶ月に1回、8ヶ月に1回、9ヶ月に1回、10ヶ月に1回、11ヶ月に1回、1年に2回、または1年に1回投与されてもよい。
【0156】
さらに、本明細書に記載のデータは、ヒト化またはキメラ11-1F4抗体による処置に対する患者の反応が持続するだけでなく、迅速でもあることを示している。いくつかの実施形態において、患者は、1週間以下、2週間以下、3週間以下、4週間以下、5週間以下、6週間以下、7週間以下、8週間以下、9週間以下、10週間以下、11週間以下、12週間以下、またはその間の任意の時間枠で、治療反応(すなわち、アミロイド沈着物もしくは斑のサイズの減少、斑形成速度の減少、または臓器機能の改善)を経験し得る。例えば、用量および投与レジメンに応じて、患者は、約1週間または約4.5週間に治療反応を経験し得る。
【0157】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供される。しかしながら、本発明は、これらの実施例に記載される特定の条件または詳細に限定されるものではない。本明細書で参照される全ての出版物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例0158】
[マウス11-1F4抗体のPCRクローニングおよびDNA配列決定]
マウス11-1F4モノクローナル抗体重鎖および軽鎖可変領域遺伝子をPCRクローニングし、単離された全ての可変領域遺伝子(疑および機能性)の詳細な配列分析を実施した。マウス11-1F4抗体重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の詳細なDNAおよびアミノ酸配列を得た。
【0159】
[材料]
培地成分および他の全ての組織培養材料は、ライフテクノロジーズ社(英国)から入手した。RNA溶液キットはストラタジーン社(米国)から入手し、第1鎖cDNA合成キットはファルマシア社(英国)から購入した。AmpliTaq(登録商標)DNAポリメラーゼを含むRCR反応のための全ての構成成分および機器は、パーキンエルマー社(米国)から購入した。TOPO TA Cloning(登録商標)キットは、インビトロジェン社(米国)から入手した。アガロース(UltraPure(商標))は、ライフテクノロジーズ社(英国)から入手した。ABI PRISM(登録商標)Big Dye(商標)ターミネーターサイクルシーケンシング準備反応キットのプレミックスサイクルシーケンシングキットおよびABI PRISM(登録商標)310シーケンシングマシンは、共にPEアプライド・バイオシステムズ社(米国)から購入した。他の全ての分子生物学的製品は、ニュー・イングランド・バイオラボ社(米国)およびプロメガ社(米国)から入手した。
【0160】
[方法]
マウスモノクローナル抗体11-1F4を産生するハイブリドーマ細胞株からマウスVおよびV遺伝子をPCRクローニングするために使用される戦略を図1に概説する。
【0161】
α-ヒト軽鎖モノクローナル抗体11-1F4を産生するSP2/0ハイブリドーマ細胞株の2つのクローン(B2C4およびB2D6)は、親切にもアラン・ソロモン医学博士(米国テネシー州ノックスビル市のテネシー大学医療科学センター)によって提供された。ハイブリドーマ細胞株は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC寄託PTA-105)から入手可能である。細胞株を、20%(v/v)FBS、ペニシリン/ストレプトマイシンおよびL-グルタミンを補充したDMEM培地を使用して培養した。10個の細胞の総生細胞数に達するまで細胞を培養した。
【0162】
細胞を各クローンから別々に次の通り収穫した。マウスハイブリドーマ細胞株を、適切な培養培地で懸濁で、約10個の細胞の総生細胞数を提供するのに十分な量増殖させた。培養上清を収穫し、ハイブリドーマ細胞をベンチトップ遠心分離機(250g、5分)でペレット化した。細胞を20mlのPBSに穏やかに再懸濁し、生細胞計数のために100μlのアリコートを採取した。アリコートの細胞をもう一度ペレット化し、200μlのPBSおよび200μlのトリパンブルーを100μlの細胞に添加し、穏やかに混合した。10μlのこの混合物を使い捨て細胞計数スライドにピペットで入れ、9つの小さな正方形中の白血球の数を顕微鏡下で数えた。青色細胞(すなわち、死細胞)は数えなかった。計数工程を繰り返し、結果を平均し、平均結果に9×10を掛けて、20mlのPBS中の細胞の生細胞数を得た。十分な細胞を収穫して、これらをRNA単離のために10mlの溶液Dに再懸濁した(ストラタジーン社のRNA単離キットを使用、下記参照)。
【0163】
次いで、製造業者の指示書に従って、ストラタジーン社のRNA単離キットを使用して、各クローンの細胞から個別に総RNAを単離した。1mlの2M酢酸ナトリウム(pH4.0)を試料に添加し、管を繰り返し反転させて、管の内容物を完全に混合した。管に10.0mlのフェノール(pH5.3~5.7)を添加し、反転させて内容物を再び完全に混合した。混合物に2.0mlのクロロホルム-イソアミルアルコール混合物を添加し、管に蓋をして10秒間激しく振盪し、管を氷中で15分間インキュベートした。試料を、氷上で予冷した50mlの厚肉丸底遠心管に移し、管を10000×gの遠心分離機で4℃で20分間回転させた。遠心分離後に、管に2つの相が見えた。上部水相はRNAを含有し、下部フェノール相および中間相はDNAおよびタンパク質を含有していた。RNA含有上部水相を新しい遠心管に移し、下部フェノール相を捨てた。等量のイソプロパノールを水相に添加し、内容物を反転させて混合し、次いで、管を-20℃で1時間インキュベートしてRNAを沈殿させた。管を10000×gの遠心分離機で4℃で20分間回転させた。遠心分離後に、RNAを含有する管の底のペレットを取り出し、上清を捨てた。ペレットを3.0mlの溶液Dに溶解し、3.0mlのイソプロパノールを管に添加し、内容物をよく混合した。管を-20℃で1時間インキュベートした後に、10000×gの遠心分離機で4℃で10分間再度回転させ、上清を管から除去し、捨てた。(注:この時点まで、RNAはイソチオシアン酸グアニジンの存在によってリボヌクレアーゼから保護されていたが、ここでもはや保護されなくなった。)ペレットを75%(v/v)エタノール(DEPC処理水(25%))で洗浄し、ペレットを真空下で2~3分間乾燥させた。RNAペレットを0.5~2mlのDEPC処理水に再懸濁する。
【0164】
アマシャム・ファルマシア・バイオテク社の第1鎖cDNA合成キットに付属のNot I-d(T)18プライマーを使用して、製造業者の指示書に従って、11-1F4ハイブリドーマmRNAの1本鎖DNAコピーを産生した。後述するように、単離された2つのRNA試料の各々に1つの反応を実施した。使用した成分は、バルク第1鎖cDNA反応ミックス、クローニングFPLCpure(商標)マウス逆転写酵素、RNAguard(商標)、BSA、dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、200mM DIT水溶液、Not I-d(T)18プライマー:5’-d[AACTGGAAGAATTCGCGGCCGCAGGAA18]-3’、およびDEPC処理水であった。
【0165】
20μlのDEPC水中の全RNAのうちの約5μgを65℃で10分間加熱し、次いで、氷上で冷却した。バルク第1鎖cDNA反応ミックスを穏やかにピペッティングして均一な懸濁液を得て、0.5mlのマイクロ遠心管に反応を次の通り設定した:総量33μlの20μlの変性RNA溶液、11μlのバルク第1鎖cDNA反応ミックス、1μlのNot I-d(T)18プライマーおよび1μlのDTT溶液。反応物質をピペッティングして穏やかに混合し、37℃で1時間インキュベートした。
【0166】
次いで、マウス重鎖およびκ軽鎖可変領域遺伝子(それぞれV遺伝子およびV遺伝子)を、JonesおよびBendigによって記載された方法(Bio/Technology、9:88)を使用して、ssDNA鋳型からPCR増幅した。
【0167】
適切な定常領域プライマー(VについてMHC1-MHC3およびVについてMKCの等モル混合物)を使用して、変性リーダー配列特異的プライマー(VについてMHV1-MHV12およびVについてMKV1-MKV11)の各々に対して別々のPCR反応を準備した。表1および表2は、それぞれVおよびV領域遺伝子を増幅するために使用されるプライマーを詳述している。合計で、12の重鎖反応および11のκ軽鎖反応を実施した。後述するように全ての場合において、AmpliTaq(登録商標)DNAポリメラーゼを使用して鋳型cDNAを増幅した。
【0168】
完成したcDNAの第1鎖合成反応物を90℃で5分間加熱して、RNA-cDNA二本鎖を変性させ且つ逆転写酵素を不活性化し、氷上で冷却した。11本のGeneAmp(商標)PCR反応管をMKV1-11で標識した。各管について、各反応混合物が69.3μlの滅菌水、10μlの10×PCR緩衝液II、6μlの25mM MgCl、それぞれ2μlのdNTPの10mMストック溶液、2.5μlの10mM MKCプライマー、2.5μlの10mM MKVプライマーのうちの1つ、および1μlのRNA-cDNA鋳型ミックスを含有する100μlの反応混合物を調製した。次いで、管の各々に0.7μlのAmpliTaq(登録商標)DNAポリメラーゼを添加し、完成した反応ミックスに50μlの鉱油を重ねた。
【0169】
同様の一連の反応混合物を上記のように調製して、マウス重鎖可変領域遺伝子をPCRクローニングした。ただし、今回は12本の反応管を標識し、12のMHVプライマーのうちの1つと適切なMHCプライマーを各々に添加した。すなわち、例えば、マウスγ1重鎖の可変ドメイン遺伝子をPCR増幅するために、MHC G1プライマーを使用した。
【0170】
反応管をDNAサーマルサイクラーに装填し、(94℃で1.5分間の初期融解後)94℃で1分間、50℃で1分間および72℃で1分間、25サイクルにわたって処理した。最後のサイクルに続いて、72℃で10分間の最終伸長ステップを行った後に、4℃に冷却した。2.5分の延長したランプ時間を使用したアニーリング(50℃)ステップと伸長(72℃)ステップとの間を除いて、サイクルの各ステップの間で30秒間のランプ時間を使用した。各PCR反応からの10μlのアリコートを、0.5μg/mlの臭化エチジウムを含有する1%(w/v)アガロース/1×TBE緩衝液ゲルで泳動して、どのリーダープライマーがPCR産物を産生するかを決定した。陽性PCRクローンのサイズは約420~500bpであった。
【0171】
上記PCR増幅プロセスをさらに2回繰り返し、完全長可変ドメイン遺伝子を増幅すると思われるPCR反応を選択した。各潜在的PCR産物の6μlのアリコートを、製造業者の指示書に記載されるように、TA Cloning(登録商標)キットによって提供されるpCR(商標)IIベクターに直接クローニングした。形質転換大腸菌細胞の10.0%(v/v)、1.0%(v/v)および0.1%(v/v)のアリコートを、50μg/mlのアンピシリンを含有する個々の直径90mmのLB寒天プレートにピペットで移し、25μlのX-Galストック溶液および40μlのIPTGストック溶液を重ね、37℃で一晩インキュベートした。陽性コロニーをPCRスクリーニングによって同定した。
【0172】
【表3】
【0173】
【表4】
【0174】
各PCR反応からの5μlのアリコートを1%アガロース/TBE(pH8.8)ゲルに泳動して、正しいサイズ(約450bp)のPCR産物を産生したものを決定した。このように同定されたこれらの推定陽性PCR産物を、TA Cloning(登録商標)キットによって提供されるpCR2.1ベクターに直接クローニングし、製造業者のプロトコルに記載されるようにTOP10コンピテント細胞に形質転換した。正しいサイズのインサートを有するプラスミドを含有するコロニーを、GussowおよびClacksonの方法(Nucleic Acids Res.、17:4000)に従って、1212および1233オリゴヌクレオチドプライマー(表3)を使用してコロニーをPCRスクリーニングすることによって同定した。このように同定されたこれらの推定陽性クローンを、ABI PRISM 310 Genetic AnalyzerおよびABI PRISM BigDye(商標)ターミネーターを使用し、二本鎖プラスミドDNA配列決定した。B2C4ハイブリドーマ細胞株クローンからのVおよびV遺伝子のそれぞれ3つの陽性クローンを配列決定し、B2D6ハイブリドーマ細胞株クローンからのV遺伝子の4つの陽性クローンおよびV遺伝子の6つも同様に配列決定した。
【0175】
【表5】
【0176】
マウス11-1F4抗体重鎖可変領域遺伝子を増幅するために各ハイブリドーマクローン(B2C4およびBCD6)に対して実施した12のPCR反応の結果を表4(a)に示す。
【0177】
変性リーダー配列プライマーMHV7は、MHCGI-3定常領域プライマーのミックス(表1)と組み合わせると、B2C4ハイブリドーマ細胞株とB2D6ハイブリドーマ細胞株の両方に由来する鋳型cDNAから約600bpのPCR産物を産生した。このバンドは、平均V遺伝子についての予想サイズ(450bp)よりも大きかったので、さらには調査しなかった。逆に、変性リーダー配列プライマーMHV6は、MHCGI-3定常領域プライマーのミックス(表1)と組み合わせると、B2C4ハイブリドーマ細胞株とB2D6ハイブリドーマ細胞株の両方に由来する鋳型cDNAからV遺伝子について予想サイズ(450bp)のPCR産物を産生した。
【0178】
表4は、SP2/0ハイブリドーマ細胞株B2C4およびB2D6からマウス11-1F4モノクローナル抗体重鎖可変領域遺伝子(a)および軽鎖可変領域遺伝子(b)をクローニングするために実施したPCR増幅の結果を示す。3列目には、実際のPCR結果が記録されている。プライマーの特定の組み合わせでバンドが観察された場合、塩基対のサイズ(bp)が適切なスペースに記録された。
【0179】
【表6】
【0180】
B2C4由来PCR産物からの3つのクローンおよびB2D6由来PCR産物からの5つのクローンの配列分析によって、単一重鎖可変領域配列が明らかになった(図2)。
【0181】
使用したクローニング戦略(この領域に隣接するプライマー、すなわちリーダー配列および定常領域配列特異的プライマーを使用することによる可変領域遺伝子全体の増幅)によって、完全なFR1配列を同定することができた。配列決定された8つのクローンは全て、この領域で同一の配列を有していた(図2)。
【0182】
マウス11-1F4抗体κ軽鎖可変領域遺伝子を増幅するために各ハイブリドーマクローン(B2C4およびBCD6)に対して実施した11のPCR反応の結果を表4(b)に示す。
【0183】
変性リーダー配列プライマーMKV6は、MKC定常領域プライマー(表2)と組み合わせると、B2C4ハイブリドーマ細胞株のみに由来する鋳型cDNAから約200bpのPCR産物を産生した。このバンドは、V遺伝子についての予想サイズ(450bp)よりもずっと小さかったので、さらには調査しなかった。
【0184】
変性リーダー配列プライマーMKV2は、MKC定常領域プライマー(表2)と組み合わせると、B2C4ハイブリドーマ細胞株とB2D6ハイブリドーマ細胞株の両方に由来する鋳型cDNAからバンドの予想サイズ450bpよりも小さいPCR産物を産生した(アガロースゲル上で見た場合)。さらに、以前のVクローニングでは、MKV2プライマーが周知のκ軽鎖偽遺伝子を増幅することが分かった。したがって、この産物がマウス11-1F4抗体V遺伝子ではなく偽遺伝子であることを確認するために、各PCR産物の1つのクローンの配列分析を実施した。この配列分析によって、当該PCRクローンが実際に偽遺伝子であることが明らかになった。
【0185】
最後に、変性リーダー配列プライマーMKV1は、MKC定常領域プライマー(表1)と組み合わせると、B2C4ハイブリドーマ細胞株とB2D6ハイブリドーマ細胞株の両方に由来する鋳型cDNAから、V遺伝子についてほぼ予想サイズ(450bp)のPCR産物を産生した。
【0186】
B2C4由来PCR産物の3つのクローンおよびB2D6由来PCR産物の4つのクローンの配列分析によって、偽遺伝子として同定できなかった単一κ軽鎖可変領域配列が明らかになった。
【0187】
したがって、11-1F4抗体重鎖可変領域遺伝子を、ハイブリドーマmRNAから(定常領域特異的およびリーダー配列特異的プライマーを使用して)クローニングし、配列決定した。
【0188】
翻訳されると、配列はTVSSペプチド配列を示した。Kabatデータベース(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest)に記録された122個の再配列されたヒトV遺伝子の分析によって、これらの配列の84%がTVSSペプチド配列を有することが明らかになった。したがって、単離されたV遺伝子が正しい11-1F4抗体遺伝子配列であると結論付けられた。
【0189】
マウス11-1F4抗体可変領域κ軽鎖遺伝子も、非機能的V偽遺伝子と同様に、クローニングおよび配列決定に成功した。この偽遺伝子は、Carrollら(Molecular Immunology(1988)25:991)によって最初に同定された。この配列は、元のMOPC-21腫瘍(SP2/0を含む)に由来する全ての標準的な融合パートナーに存在する異常なmRNA転写産物から生じる。異常なmRNAの結果として、23位の不変システインがチロシン残基によって置き換えられ、VJジョイントがフレーム外になり、105位に停止コドンが生じる。
【0190】
リンパ系細胞またはハイブリドーマ細胞が、2つ以上の再配列された軽免疫グロブリンmRNAを合成することが一般的である。これらのmRNAは通常、機能的V遺伝子では通常見られない終止コドンまたはフレームシフトの存在のために非生産的である。これらの偽メッセンジャーは、機能的ポリペプチドをコードしていないという事実にもかかわらず、V領域PCRの非常に優れた基質であるため、ハイブリドーマから免疫グロブリン遺伝子をクローニングする際にしばしば大きな問題を引き起こす。
【0191】
11-1F4抗体V遺伝子配列は、2つの異なるPCR産物から単離された7つ別個のPCRクローンの詳細な配列分析後に同定され、配列番号36が得られた。全ての配列が同一であったので、これが正しい11-1F4抗体κ軽鎖可変領域配列として受け入れられた。
【0192】
クローニングVおよびV領域遺伝子を使用して、キメラマウス-ヒト11-1F4モノクローナル抗体を作製し、次いで、これを分析してAL原線維への特異的結合を確認した。
【実施例0193】
[キメラマウス-ヒト11-1F4(c11-1F4)抗体の構築]
キメラマウス-ヒト抗体の一部として哺乳動物細胞で上記の11-1F4のVおよびV可変領域遺伝子の一過的発現を可能にするためには、特異的に設計されたPCRプライマーを使用して5’末端および3’末端を改変することが必要であった(表5)。オリゴヌクレオチドプライマーF39836およびF39837を使用して11-1F4のV遺伝子をPCR改変し、プライマーF39835およびF58933を使用して11-1F4のV遺伝子をPCR改変した。逆方向(BAK)プライマーF39836およびF39835は、VおよびV遺伝子のそれぞれの5’末端に、HindIII制限部位、コザック翻訳開始部位および免疫グロブリンリーダー配列を導入した。順方向(FOR)オリゴヌクレオチドプライマーF39837は、V遺伝子の3’末端に、スプライスドナー部位およびBamHI制限部位を導入した。順方向(FOR)オリゴヌクレオチドプライマーF58933は、V遺伝子の3’末端に、ApaI制限部位を含むγ-1CH遺伝子の最初の22塩基対を付加した。
【0194】
【表7】
【0195】
コザックコンセンサス配列は、可変領域配列の効率的な翻訳に不可欠である(Kozak、J Mol Bio、196:947)。これは、リボソームが翻訳を開始する正しいAUGコドンを定義し、単一の最も重要な塩基は、AUG開始の上流-3位のアデニン(またはわずかに好ましくはグアニン)である。
【0196】
免疫グロブリンリーダー配列は、発現された抗体が培地に分泌され、したがって容易に収穫および精製されることを保証する。この例に使用されるリーダー配列は、VおよびVクローニングプロセス中にハイブリドーマcDNAからクローニングされたマウス11-1F4のVおよびVリーダー配列であった。
【0197】
スプライスドナー配列は、適切な定常領域への軽鎖可変領域の正しいインフレーム付着、したがって130bpのV:Cイントロンをスプライシングで切り出すのに重要である。重鎖可変領域を、Apal部位を介してその適切な定常領域遺伝子に直接付着させたので、スプライスドナー部位の必要性が排除された。
【0198】
サブクローニング制限部位HindIIIおよびBamHI、ならびにHindIllおよびApalは、それぞれ改変VおよびV可変領域遺伝子を挟む。様々なユニークな制限部位の使用によって、適切な哺乳動物発現ベクターへの方向性サブクローニングが保証された。
【0199】
11-1F4軽鎖可変領域遺伝子を最初に慎重に分析して、望ましくないスプライスドナー部位、スプライスアクセプター部位およびコザック配列を同定した(表6参照)。重鎖可変領域遺伝子と軽鎖可変領域遺伝子の両方を、機能的全抗体のサブクローニングおよび/または発現を後で妨害する余分なサブクローニング制限部位の存在について分析した。何も見つからなかった。
【0200】
【表8】
【0201】
可変領域遺伝子ごとに、別個のPCR反応を次の通り準備した。上述したプラスミド11-1F4のV.pCR2.1および11-1F4のV.pCR2.1を鋳型として使用した。100μlの反応混合物を各PCR管で調製した。各混合物は、最大41μlの滅菌水、10μlの10×PCR緩衝液I、8μlのdNTPの10mMストック溶液、1μlの10mM 5’順方向プライマー、1μlの10mM 3’逆方向プライマーおよび1μlの1/10希釈の鋳型DNAを含有した。最後に、0.5μlのAmpliTaq(登録商標)DNAポリメラーゼ(2.5ユニット)を添加した後に、完成した反応混合物に50μlの鉱油を重ねた。反応管をDNAサーマルサイクラーに装填し、(94℃で1分間の初期融解後)94℃で30秒間、68℃で30秒間および72℃で50秒間、25サイクルにわたって処理した。最後のサイクルに続いて、72℃で7分間の最終伸長ステップを行って、4℃に冷却した。各PCR反応管からの10μlのアリコートを、0.5μg/mlの臭化エチジウムを含有する1.2%(w/v)アガロース/1×TBE緩衝液ゲルで泳動して、PCR産物のサイズおよび存在を決定した。陽性PCRクローンのサイズは約420bpであった。このように同定されたこれらの推定陽性PCR産物を、Topo TA Cloning(登録商標)キットによって提供されるpCR2.1ベクターに直接クローニングし、製造業者のプロトコルに記載されるようにTOP10コンピテント細胞に形質転換した。GussowおよびClacksonの方法に従って、1212および1233オリゴヌクレオチドプライマー(表3)を使用してコロニーをPCRスクリーニングして、正しいサイズのインサートを有するプラスミドを含有するコロニーを同定した。ABI PRISM 310 Genetic AnalyzerおよびABI PRISM BigDye(商標)ターミネーターを使用して、上記推定陽性クローンを二本鎖プラスミドDNA配列決定した。それぞれTopo TAクローニングVおよびV遺伝子の2つの陽性クローンを配列決定した。
【0202】
正しく改変された11-1F4のVおよび11-1F4のV遺伝子を含むクローンを同定し、これらのクローンからの改変V遺伝子をそれぞれの発現ベクターにサブクローニングして、哺乳動物細胞におけるキメラ重鎖およびκ軽鎖の発現を促進した。改変された11-1F4のV遺伝子を、HindIII-BamHI断片として発現ベクターpKN100(図4)にサブクローニングした。このベクターは、ヒトκ定常領域遺伝子(アロタイプ:Km(3 Ala153、Ser191))を含んでいる。改変された11-1F4のV遺伝子も、HindIII-ApaI断片として発現ベクターpG1D200(図5)にサブクローニングした。このベクターは、ヒトγ1定常領域遺伝子(アロタイプ:G1m(-1 Glu377、Met38I、-2 Ala462、3 Arg222、Ser229))を含んでいる。使用されるκ定常領域アロタイプとγ1定常領域アロタイプの両方は、白人集団で一般的に見られる。次いで、ライゲーションした発現構築物、11-1F4VK.pKN100および11-1F4VH.pG1D200を使用してDH5αコンピテント細胞を形質転換し、元のPCR改変プライマー(表4)を使用して上述したPCRスクリーニング法を使用して陽性クローンを同定した。発現ベクターは容易に入手可能である。
【実施例0203】
[COS細胞におけるキメラ11-1F4の一過的発現のための単一スーパーベクターの構築]
キメラ11-1F4抗体の両方の免疫グロブリン鎖を発現する単一スーパーベクターを次の通り構築した。11-1F4κ軽鎖発現カセット(HCMViプロモーター、11-1F4κ軽鎖可変領域遺伝子およびκ軽鎖定常領域遺伝子を含んでいた)を、11-1F4VK.pKN100構築物(図4)から制限酵素消化(1位および2490位のEcoRI)し、次いで、ユニークなEcoRI(4297位、図5)を介して11-1F4VHpG1D200構築物にライゲートした。このライゲーションによって、11-1F4キメラ抗体の重鎖とκ軽鎖の両方を含むスーパーベクター構築物pG1KD200-11-1F4が構築された。
【実施例0204】
[COS細胞におけるキメラγ1/κ.11-1F4全抗体の一過的発現]
キメラ11-1F4抗体を、次の2つの方法で欧州細胞培養コレクション(ECACC)のCOS細胞で一過的に発現させた:
(i)それぞれ10μgのベクター構築物11-1F4VK.pKN100および11-1F4VH.pG1D200のコトランスフェクションによる。コトランスフェクションは2連で行った。
(ii)13μgの単一スーパーベクター構築物pG1KD200-11-1F4のトランスフェクションによる。スーパーベクターのトランスフェクションは5回行った。
【0205】
次の通りトランスフェクション法を使用した。COS細胞株を、150cmフラスコ中10%(v/v)FCS、580μg/mlのL-グルタミン、および50ユニット/mlのペニシリン/50μg/mlのストレプトマイシンを補充したDMEM(「培地」)でコンフルエントになるまで増殖した。細胞をトリプシン処理し、ベンチトップ遠心分離機で遠心沈殿させ(250g、5分間)、次いで、6mlの培地に再懸濁した後に、これを25mlの新鮮な予熱培地をそれぞれ含む3つの150cmフラスコに均等に分けた。細胞を5%CO中37℃で一晩インキュベートし、翌日、指数関数的に増殖している間に収穫した。各フラスコは約1×10個の細胞を含有していた。細胞を再度トリプシン処理し、前のようにペレット化し、20mlのPBSで洗浄し、次いで、細胞濃度が1×10細胞/mlになるように十分なPBSに再懸濁した。700μlのこれらの洗浄したCOS細胞をGene Pulser(登録商標)キュベットにピペットで入れ、次いで、そこに1μlの重鎖発現ベクターDNAとκ軽鎖発現ベクターDNA(それぞれ10μg)の両方または13μgのスーパーベクター構築物を添加した。Bio-Rad Gene Pulser(登録商標)装置を使用して、1900V、25μFの静電容量パルスを混合物に供給した。各実験トランスフェクションおよび(COS細胞をDNAの非存在下で電気穿孔した)「DNAなし」対照についてパルスを繰り返した。COS細胞の効率を試験するために、以前に発現した抗体の陽性対照も実施した。
【0206】
COS細胞を室温で10分間回復させ、次いで、10%(v/v)γ-グロブリンを含まないFBS、580μg/mlのLグルタミンおよび50ユニット/mlのペニシリン/50μg/mlのストレプトマイシンを補充した予熱DMEM8mlを含む直径10cmの組織培養皿に穏やかにピペットで移し、5%CO中37℃で72時間インキュベートした後に、分析のためにCOS細胞上清を収穫した。72時間のインキュベーション後に、培地を回収し、回転させて細胞片を除去し、キメラ抗体産生およびc11-1F4抗体の抗原結合についてELISAによって分析した。
【実施例0207】
[捕捉ELISAを介したキメラγ1/κ11-1F4抗体の定量化]
発現後に、COS細胞上清中に存在するIgG分子全体を、捕捉ELISAアッセイを使用して定量化した。IgG分子を、固定化ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ断片特異的抗体を介してNunc-Immuno MaxiSorb(商標)プレート上に捕捉し、抗ヒトκ軽鎖ペルオキシダーゼコンジュゲート抗体を介して検出した。以下と同じ方法で、同じプレート上の既知の濃度の標準IgG抗体を捕捉および検出して、標準曲線を作成した。96ウェル(穴)イムノプレートの各ウェルを、PBSで希釈した0.4μg/mlヤギ抗ヒトIgG抗体の100μlのアリコートでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。過剰なコーティング溶液を除去し、プレートを200μl/ウェルの洗浄緩衝液(1xPBS、0.1%TWEEN)で3回洗浄した。第2列のB行~G行のウェルを除く全てのウェルに、100μlのSEC緩衝液を分注した。ヒトIgG1/κ抗体のSEC緩衝液中1μg/ml溶液を標準として調製し、200μl/ウェルを第2列のB行およびC行のウェルにピペットで入れた。トランスフェクトしたcos細胞の培地を遠心分離し(250g、5分)、上清を保存した。(COS細胞をDNAの非存在下でトランスフェクトした)「DNAなし」対照からの上清200μlのアリコートを、第2列のD行のウェルにピペットで入れ、実験上清の200μl/ウェルのアリコートを第2列のE行、F行およびG行のウェルにピペットで入れた。第2列のB行~G行のウェルの200μlのアリコートを混合し、次いで、100μlを各ウェルから第3列の隣接ウェルに移した。このプロセスを、標準試料、対照試料および実験試料の一連の2倍希釈液で第11列まで続け、次いで、全てを37℃で1時間インキュベートし、全てのウェルを洗浄緩衝液の200μlのアリコートで6回すすいだ。ヤギ抗ヒトκ軽鎖ペルオキシダーゼコンジュゲートをSEC緩衝液で5000倍希釈し、100μlの希釈コンジュゲートを各ウェルに添加し、インキュベーションとすすぎステップを繰り返した。各ウェルに150μlのK-BLUE基質を添加し、暗所中25℃で10分間インキュベートした。50μlのRED STOP溶液を各ウェルに添加して反応を停止し、655nmで光学濃度を読み取った。
【実施例0208】
[キメラ11-1F4抗体の結合分析]
キメラ11-1F4抗体を、直接結合ELISAアッセイを使用して、アミロイド原線維への結合について試験した。合成原線維を免疫グロブリン軽鎖タンパク質から形成し、「低結合」ポリスチレンプレート(Costar、番号3474)を使用した固相ELISAベースアッセイで抗体の反応性を監視するために使用した。プレートをコーティングする直前に、250μgの原線維の塊をコーティング緩衝液(pH7.5のリン酸緩衝生理食塩水中0.1%ウシ血清アルブミン)で1mlに希釈した。次いで、最大値の40%に設定した出力でTekmar Sonic Disruptor超音波プローブを使用して、試料を20秒間超音波処理して、それぞれ最大2~5個のプロトフィラメントで構成される短い原線維の溶液を得た。次いで、この溶液を5mlに希釈し、ボルテックスで十分に混合し、プレートのウェルに等分した。このプロセスにより、各ウェルで50μg/mlの濃度の原線維溶液50μlが得られた。次いで、プレートを37℃のインキュベーターに蓋をせずに入れて、一晩乾燥させた。
【0209】
次いで、プレートを調製してから48時間以内にELISAアッセイを次の通り実施した。PBS中1%BSA100μlの添加によってウェルをブロッキングし、シェーカー上で室温で1時間インキュベートした。プレートをPBS、0.05%Tween20(v/v)で3回洗浄した。プレートの各ウェルに、50μlのc11-1F4の溶液(0.1%BSA/PBS中3μg/ml抗体)を添加し、プレートをシェーカー上で室温で1時間インキュベートした。プレートを再度(前回同様)3回洗浄し、ビオチン化ヤギ抗マウスIgG抗体(Sigma番号B-8774、抗重鎖および軽鎖)を使用して、結合抗体の検出を達成した。
【0210】
[結果]
改変に成功したVおよびV遺伝子の配列分析によって、正しい配列が存在することが明らかになった。改変された11-1F4のVおよびV遺伝子の詳細なDNAおよびアミノ酸配列を図3および図4に示す。改変されたVおよびV遺伝子の、哺乳動物発現ベクターpG1D200およびpKN100へのクローニングにそれぞれ成功し、得られた11-1F4VK.pKN100および11-1F4VHpG1D200構築物を、哺乳動物細胞のコトランスフェクションに使用した。
【0211】
次いで、11-1F4VK.pKN100および11-1F4VHpG1D200構築物を使用して、哺乳動物細胞でキメラ11-1F4抗体を発現する単一スーパーベクター(pG1KD200-11-1F4)も構築した。ECACCのCOS細胞のコトランスフェクションとスーパーベクタートランスフェクションの両方からのキメラ11-1F4抗体発現レベルを分析した。pG1KD200-11-1F4スーパーベクターのトランスフェクションから観察された発現レベル(10326ng/ml)は、11-1F4VK.pKN100および11-1F4VHpG1D200構築物の対応するコトランスフェクションから観察されたレベル(2820ng/ml)よりも3.7倍高かった。
【0212】
発現および定量化の後に、キメラ11-1F4抗体を直接結合ELISAによって標的抗原(親切にもNCIによって提供されたアミロイド原線維)への結合について試験した。結合ELISAの結果を図8に示す。2つの最良の個々のpG1KD200-11-1F4スーパーベクタートランスフェクションからの上清を、対応するコトランスフェクションからの1つの上清と並行して分析した。
【0213】
結果は、キメラ11-1F4抗体がそのマウス同等物よりも高い親和性でアミロイド原線維に結合することを示した。通常、キメラ抗体は元のマウス抗体に匹敵する結合親和性を有すると予想されるため、この結果は驚くべきものであり、予想外であった。特定の機構によって拘束されることを意図するものではないが、本発明者らは、11-1F4マウスV領域と、キメラ11-1F4抗体の作製に使用されるヒトγ1/κC領域とを組み合わせることで得られた正味の効果によって、より高い親和性を有する抗体が得られた可能性があると考えている。
【0214】
本明細書で使用したキメラ11-1F4モノクローナル抗体を分泌するCHO細胞(CAEL-101として特定)の試料は、ブダペスト条約に準拠して2018年6月27日にアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC寄託番号:PTA-125146)により寄託された。
【実施例0215】
[マウス11-1F4によるマウスアミロイドーマの試験]
アミロイドをヒトから抽出し、特性評価した。すなわち、ALアミロイドーシスを有する患者から死後に得られた30g~40gの新鮮凍結(-80℃)または10gの凍結乾燥した脾臓または肝臓を、Virtis-Tempest装置(米国ニューヨーク州ガーディナー町のVirTis社)を使用して、約300mlの冷生理食塩水中でホモジナイズした。ホモジネートを6℃で30分間、17000rpmで遠心分離し、得られた上清のODがA280で0.10未満になるまで、ホモジナイゼーションと洗浄を繰り返して残留生理食塩水可溶性物質を除去した。次いで、ペレットを繰り返しホモジナイズし、冷脱イオン水で洗浄し、遠心分離し、アミロイド含有上清を凍結乾燥した。回収されたタンパク質の量は、出発材料の重量のおよそ3分の1~5分の1となった。アミロイドの軽鎖組成およびVLサブグループを、6mol/LグアニジンHClで水溶性材料から抽出された還元され、ピリジルエチル化されたタンパク質のトリプシン消化によって得られた高速液体クロマトグラフィー分離ペプチドのアミノ酸配列決定(米国カリフォルニア州フォスター市のアプライド・バイオシステムズ社によるProcise Protein Sequencing System)およびイオン化質量分析(米国コネチカット州ノーウォーク市のパーキンエルマー社によるPE SCIEX API 150 EX)を用いて決定した。プロテオグリカンヘパラン硫酸の存在は、Azureアッセイを使用して確立した。
【0216】
アミロイド抽出物の組成は、化学、イムノブロッティング、アミノ酸配列、およびイオン化質量分析によって確立し、主なタンパク質種は、ほとんどの場合、主に可変領域(VL)と最初の約50残基の定常領域(CL)、および他では、VL断片またはインタクト分子からなるκまたはλ軽鎖関連分子であることが分かった。さらに、これらの抽出物は、予想されるアミロイド関連P成分、ならびにプロテオグリカンヘパリン硫酸を含有していた。
【0217】
凍結乾燥した水溶性アミロイド抽出物を25mlの滅菌生理食塩水に懸濁し、PCU-2 Polytron装置(スイス連邦ルツェルン州Brinkman社)を使用してホモジナイズした。原線維を、6℃で30分間、17000rpmでの遠心分離によって沈殿させ、得られたペレットを1mlの滅菌生理食塩水に再懸濁し、再ホモジナイズした。この溶液を、6mlシリンジに取り付けられた18ゲージ針を使用して、BALB/c、CD-18ヌル、およびC.B-17 SCIDマウスの肩甲骨の間に皮下注射した。結果として生じるアミロイドーマのサイズを、毎日の触診によって測定し、剖検で確認した。microCat装置(米国テネシー州オークリッジ市のオークリッジ国立研究所)を使用して、高解像度X線コンピュータ断層撮影像を取得した。
【0218】
注射された物質は、動物の背中に容易に見える、触知可能な塊を形成し、その大きさは、注射された物質の量に依存した(例えば、最大直径0.2~2.5cm)。アミロイドーマは、高解像度X線コンピュータ断層撮影によって証明されるように、約10日~24日間、局在したままで変化しなかった。その時点の後に、アミロイドーマは退行し始め、最終的には約4日間で消失した。この反応は、κもしくはλの性質、またはアミロイド抽出物のVLサブグループに関係なく発生した。しかしながら、5つの異なるκおよび7つのλアミロイドーマを含む試験では、ALλ抽出物が典型的に、ALkよりもゆっくりと分解した(ALλ、18+/-6日対ALκ、13+/-3日)。アミロイドの組織源に関係なく、この効果が健康な若い動物で再現性があることが分かった12例のうち8例で実験を少なくとも4回繰り返すのに十分な材料が利用可能であった。しかしながら、誘発されたアミロイドーマの溶解は、高齢マウス(18月齢超)および免疫不全マウスで3ヶ月を超えて一貫して遅延した。
【0219】
退行性アミロイドーマの運命を決定する組織学的試験は、コンゴレッド染色によって証明されるように、アミロイドが他のマウス組織に再分配されないことを実証した。さらに、アミロイドーマには、ナフトールAS-Dクロロ酢酸陽性、α-ナフチル酢酸陰性、多形核細胞、すなわち好中球が浸潤してした。対照的に、この細胞反応はCD-18ヌルマウスでは発生せず、ヒトALアミロイドーマの消散にはかなり長い期間(すなわち3ヶ月)を要した。さらに、アミロイドーマ誘発時および3日目に再び与えられた250mgの抗好中球mAb Gr-1の同時投与によって大いに好中球減少症になった動物ではアミロイド溶解(amyloidolysis)が遅延した。
【0220】
アミロイド除去は、ヒト軽鎖含有物質に対する体液性マウス反応にも依存していた。アミロイドーマ誘発のおよそ10日~20日後に、本発明者らは、イムノブロッティング実験で、マウス血清が、注射されたアミロイドタンパク質の軽鎖成分だけでなく、異種ALκまたはALλ抽出物も認識する抗体を含有することを示した。対照的に、相同アミロイド前駆体タンパク質、すなわち、ベンス・ジョーンズタンパク質または試験された他のモノクローナル軽鎖との反応性はなかった。同じアミロイド製剤をこれらの免疫動物に再投与すると、その消失率はおよそ2倍に増加した。
【0221】
マウス11-1F4の治療有効性を試験するために、ヒトALアミロイドーマを保有するマウスのペアに100μg用量の抗体を投与する一連の実験を開始した。ALkの場合、2つの異なる抽出物を含む試験により、抗体を1回注入しただけでも、未処置動物と比較してアミロイド腫瘍が急速かつ完全に消失することが明らかになった(表7、図9)。ALkλアミロイドーマの質量は、対照動物と比較して、抗体注射後4日以内に90%超減少した。しかしながら、一定のALλ型アミロイドーマで同様の反応を達成するためには、試薬の複数回投与が必要であった。これらを、アミロイドーマが誘発された時点(0日目)から開始して、次いで、2日目、4日目、および6日目に、再び、一連の100μg注射として投与した(図9B)。表7に示すように、マウスモデルで5つの異なるヒトALλアミロイドーマを試験した実験では、11-1F4による処置が、アミロイド腫瘍の排除時間を4倍も減少させることが分かった。特に、AL原線維を認識する他の2つの抗軽鎖mAb(例えば、31-8C7)の単回または反復投与は、アミロイド分解を促進し、11-1F4試薬は、異なる速度であるが、ALκとALλの両方のアミロイドの除去を加速したという点で特有であった。対照的に、試験された他の3つの抗軽鎖mAbはそのような活性を欠いていた。
【0222】
【表9】
【0223】
また、AA-、ATTR-、ALyS-、AApoA1-およびAb含有組織の免疫組織化学分析で証明されるように、11-1F4が他のタイプのアミロイドを認識することも決定された。各場合において、11-1F4およびこれら5つの異なるタイプのアミロイドタンパク質に特異的な抗体で、同様の反応性パターンが得られた。
【実施例0224】
[キメラ11-1F4抗体の第1a/b相試験]
GMPグレードのアミロイド原線維反応性キメラIgG1 mAb 11-1F4は、難治性のALアミロイドーシスを有する患者を処置する第1a/b相試験のためにNCIの生物資源部門によって製造された。キメラIgG1 mAb 11-1F4を産生するCHO細胞株は、CAEL-101として同定されている。
【0225】
以前に抗形質細胞処置を受けた再発性または難治性ALアミロイドーシス患者を登録した。患者は、キメラIgG1 mAb 11-1F4を1回の静脈内注入(第1a相)または4週間の一連の毎週の注入(第1b相)として受けた。0.5mg/m、5mg/m、10mg/m、50mg/m、100mg/m、250mg/m、および500mg/mの連続用量を投与した第1a相と第1b相の両方で、用量漸増「アップダウン」設計を使用した。
【0226】
この試験の主要目的は、キメラ11-1F4の最大耐用量を確立することであり、副次目的は、(1)発症した臓器肥大の減少および/または臓器機能改善によって証明されるアミロイド負荷の減少の実証、(2)単回IV注入(第1a相)または一連の毎週のIV注入(第1b相)として投与された場合の11-1F4の薬物動態の決定、および(3)250mg/m用量と500mg/m用量の差の決定を含んでいた。
【0227】
主要な選択基準は、21歳以上、以前に全身療法を受けていた患者、形質細胞標的療法を必要としなかった患者、および米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス(performance status)が3以下だった患者を含んでいた。
【0228】
主要な除外基準は、2.5mm超の脳室内中隔、30cc/分未満のクレアチンクリアランス、施設正常値上限の3倍超のアルカリホスファターゼ、および3.0mg/dL超のビリルビンを含んでいた。
【0229】
第1a相試験では、用量漸増が「アップダウン設計」に従った。忍容性が得られた後に、患者がそれぞれ次第により高用量のキメラ11-1F4 mAbを受け、2人の患者が500mg/m用量で登録された。500mg/m用量を受けた患者でさえ、用量を制限する毒性を報告しなかった。図9Aに示すように、0週目に患者を評価し、1週目にキメラ11-1F4を投与し、2週目、3週目、4週目、および8週目に再評価した。
【0230】
第1b相試験では、0.5mg/mから開始して4週間にわたって1週間に1回注入を行った。忍容性が得られた後に、患者がそれぞれ次第により高用量のキメラ11-1F4 mAbを受け、6人の患者が500mg/m用量で登録された。投与スキームを図9Bに示す。
【0231】
[結果]
27人の患者をキメラ11-1F4A抗体で処置した。26人の患者が反応について評価可能であった。8人の患者が第1a相を完了し、19人の患者が第1b相で処置を完了した。第1a相および第1b相の中央年齢は68歳であった。全ての患者が、第1a相と第1b相の両方で、与えられた用量のmAbキメラ11-1F4および最高用量レベル500mg/mまで忍容性を示した。薬物関連のグレード4または5の有害事象(AE)も用量を制限する毒性もなかった。2人の患者が、注入後3~4日でグレード2の発疹を発症した。1人の患者が、第1a相(用量レベル4)および第1b相で撤退した際に皮膚発疹を発症した。免疫組織化学染色による皮膚生検は、付随する好中球浸潤を伴うアミロイド原線維へのキメラ11-1F4の結合を示した。この患者と別の患者とが、第1b相で同様の発疹を発症した。これは、キメラ11-1F4が軽鎖アミロイド原線維に直接結合するという臨床的相関データをさらに提供している。全体として、評価可能な患者の63%(8人中5人)が、第1a相でmAb c11-1F4の1回注入後に臓器反応を実証した。第1a相での反応までの平均時間は、治療完了後4.5週間であった。第1b相では、評価可能な患者の61%(18人中11人)が、顕著な臓器反応を示し、反応までの平均時間が治療開始後1週間であり、高投与量でより速い反応の傾向があった。
【0232】
評価可能な患者のサブセットの患者特徴を以下の表8に示す。
【0233】
【表10】
【0234】
第1a/b相試験の終了時に、18人の患者が評価可能な反応を示した(N=1に測定可能な疾患はなく、N=2は処置を完了しなかった)。18人中12人(67%)が、臓器反応改善を示した。具体的には、第1a相では、測定可能な疾患負荷の患者の63%(8人中5人)が、mAb 11-1F4の1回の注入後に臓器反応を実証した(腎臓2人、心臓2人およびGI 1人)。第1b相試験では、測定可能な疾患負荷を有する患者の70%(10人中7人)が、臓器反応を示した。心臓関与を含む反応について評価した4人中3人の患者が、心臓反応を示した。腎臓関与を含む反応について評価した4人中4人の患者が、腎臓反応を示した。GI反応を有する1人の患者を評価した。軟部組織反応を有する1人の患者が、3→1の関節炎の改善を示した。
【0235】
[心臓反応]
8人の患者を心臓反応について評価した。評価された測定基準の中には、NT-proBNPおよびNYHAクラス基準があった。これらの患者全てのベースラインレベルが、650pg/ml以上であった。患者のうちの5人(63%)は応答の大幅な改善を示し(すなわち、NT-proBNPの30%以上の減少および/またはNYHAクラスIIIからクラスIへの移行)、2人の患者は安定したままであり、1人のみが疾患進行の何らかの徴候を示した。患者群の心臓の結果を図11に示す。1人の例示的な患者のNT-proBNPの減少を図12に示す。
【0236】
[腎臓反応]
8人の患者を腎臓反応について評価した。ここでは、タンパク尿が反応性を決定するための主要な測定基準であった。6人の患者(75%)が応答の大幅な改善(すなわち、タンパク尿の30%以上の減少、または腎臓進行のない状態で0.5g/24時間未満への減少)を示し、2人の患者は安定したままであった。腎臓疾患進行の徴候(eGFRで25%超の悪化)を示した患者はいなかった。患者群の腎臓の結果を図13に示す。1人の例示的な患者のタンパク尿の減少を図14に示す。
【0237】
[試験結果概要]
キメラ11-1F4による処置は、忍容性が良好で安全であった。500mg/mのMTDまで薬物関連のグレード4または5の有害事象(AE)も用量を制限する毒性もなかった。さらに、キメラ11-1F4は、臨床的に有効である。ほとんどの患者が、1回の注入としてまたは4週間にわたる週1回の注入として、早期の持続的な臓器反応を経験した。心臓、腎臓、GI、皮膚および軟部組織の反応を含む組織/臓器にわたって反応改善が観察された。実際、キメラ11-1F4は、患者の67%でアミロイド消散を安全に促進し、ALλ沈着を有する患者でさえ、単回投与後に臓器機能の改善をもたらした。キメラ11-1F4に対する患者の反応は、迅速で持続的であった。実際、キメラ11-1F4は、第1a相試験で4.5週間、第1b相試験でわずか1週間の中央反応時間でアミロイド原線維を標的とする他の既知の治療薬よりも速く陽性反応を提供する。キメラ11-1F4によるアミロイド原線維の急速な破壊は、臓器機能を改善し、ひいては、この一様に致命的な疾患を有する患者の死亡率を大幅に改善する。
【実施例0238】
[長軸方向のグローバルストレインを使用したALアミロイドーシスを有する患者におけるキメラ原線維反応性モノクローナル抗体11-1F4に対する心臓反応:第1b相試験の結果]
キメラ11-1F4 mAbの非盲検第1b相臨床試験を完了し、以下に示す有望な結果が得られた。この試験は、長軸方向のグローバルストレイン(GLS)を使用してmAb投与に対する心筋機能の反応を評価するために実施した。
【0239】
再発性または難治性ALアミロイドーシスを有する患者19人を試験に登録した(年齢±SD、63±12、男性68%)。53%が軽鎖κアミロイドを有し、52%が650pg/ml超のNTpro-BNPレベルによって定義される心臓関与を含んでいた。19人の患者のNTpro-BNPスクリーニングおよびベースラインレベルを以下の表9に示す。これらの心臓病患者は、スクリーニングとベースラインNT-proBNP値の違いにより、心臓で評価可能な一次臨床分析に参加していない2人の患者を含んでいた。
【0240】
【表11】
【0241】
mAbを、用量漸増設計で0.5mg/m、5mg/m、10mg/m、50mg/m、100mg/m、250mg/m、および500mg/mの連続用量で4週間にわたって毎週投与した。ベースラインと治療12週間後の臨床心エコー(ECHO)検査を比較した。左室駆出率(LVEF)(シンプソンの二方向法を使用して計算)および長軸方向のグローバルストレイン(GLS)を含むいくつかの心エコー変数を得た。GLSは、スペックルトラッキング(ドイツ国のTomTec社のTomTec-Arena1.2)を使用して測定し、4、2、および3チャンバーベースの測定値の平均として計算した。対応のあるスチューデントのt検定を使用して、ベースライン時とmAbによる治療の12週間後の心エコー変数を比較した。心エコー図パラメータの分析を以下の表10に示す。
【0242】
【表12】
【0243】
全体的なコホートについて、ベースラインから12週間の試験まででLVEF(56.2±8.6%対56.2±9.5%、p=0.985)でもGLS(-19.04±-5.11%対-19.73±-4.1%、p=0.119)でも大幅な変化はなかったが、心臓関与を含む患者は、図15に図示するように、GLSの改善を示した(前-15.58±-4.14%と後-17.37±-3.53%、p=0.004)。キメラ11-1F4 mAbによる治療前および治療後12週目での心臓関与を含む患者の例示的な心エコー図を図17に示す。図17に示す患者は、治療前のベースラインレベルのNT-proBNPが2549pg/mLで、GLS値が-9.58であった。12週間のキメラ11-1F4 mAbによる治療後に、患者は-13.39へのGLS減少および、1485pg/mLへのNTproBNP減少を示した。サブグループ分析は、λアミロイド心臓関与を含む患者のGLSの改善(前-14.3±-4.38%と後-16.17±-3.74%、p=0.02)およびκアミロイド心臓関与での改善傾向(前-16.60±-4.10%と後-18.16±-3.48%、p=0.07)を示した。さらに、試験の臨床分析で定義される心臓病評価可能集団(スクリーニング値ではなくベースラインNT-proBNP値を使用)も、GLS%の統計学的に大幅な減少(p値0.0163)をもたらし、ECHO群(-1.69)によって提供される分析と数値的に類似の減少(-1.71)であった。以下の表11は、心臓病患者対心臓病評価可能な患者および非心臓病患者のGLSの減少の分析を示している。
【0244】
【表13】
【0245】
結論として、この試験は、ALアミロイド心臓関与を含む対象において抗原線維特異的mAbへの曝露後のGLSの大幅な改善を示す。図15に示すように、心臓関与を含む10人中9人の患者が、GLS%で改善した。薬物効果がないという帰無仮説の下で9人以上の患者が改善する確率は約0.0107であり、10人中9人の患者が改善することを観察することは、薬物が本当に有効でない限り、非常に起こりにくい結果であることを示唆している。この予備データは、大規模な臨床試験の設計に役立つ。さらに、GLSを利用して心筋機能を評価する大規模な試験が正当化される。
【実施例0246】
[血液学的に制御されていない患者におけるキメラ原線維反応性モノクローナル抗体11-1F4に対する臓器反応]
6回の化学療法処置を受け、臓器反応のない処置で血液学的部分反応を達成した患者に、キメラアミロイド原線維反応性モノクローナル抗体(mAb)11-1F4を投与した。投与後の3連続期間にわたって、11-1F4を受けた後にNT-proBNPの一貫した減少があり、患者は、図16に記載されるように臓器反応を達成した。ただし、抗体をやめると、遊離軽鎖が増加し、患者の状態が悪化した。また、試験の完了後に、臓器進行が見られた。この患者の反応パターンにより、研究者らは、臓器反応はキメラ11-1F4抗体処置によるものであり、化学療法による血液学的反応とは無関係であると結論付けた。
【0247】
本明細書の説明および特許請求の範囲において使用される「含む(comprise)」という単語、ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などを含む当該単語の変形は、特に明示されていない限り、他の特徴、添加剤、成分、整数またはステップを排除することを意図していない。これらの単語の範囲は、排他的な意味ではなく包括的な意味を有するように広く解釈されるものである。
【0248】
以上、本明細書において本発明の組成物および方法を、実施例を参照して説明した。しかしながら、本発明はこれらに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の教示から逸脱することなく、当業者に知られているように種々の変形が可能であることが理解されるであろう。
図1
図2
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【配列表】
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