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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105041
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】ガラスアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20220705BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20220705BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20220705BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q1/52
H01Q1/22 C
B60J1/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067170
(22)【出願日】2022-04-14
(62)【分割の表示】P 2019219976の分割
【原出願日】2016-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2015092326
(32)【優先日】2015-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015183499
(32)【優先日】2015-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】土居 亮吉
(72)【発明者】
【氏名】徳田 健己
(57)【要約】      (修正有)
【課題】受信感度を向上することができる、ガラスアンテナを有するハイブリッド車両を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両は、リアガラス1の表面に形成されるガラスアンテナを有し、ガラスアンテナは、FMアンテナ素子2と、FMアンテナ素子2と距離S間において容量結合され、複数の加熱線31を有する加熱ヒータ3と、を備える。補機用バッテリと陽極バスバー32aと間に、コイル素子651を含むFMアンテナ素子2のためのノイズフィルタ65を設け、陰極バスバー32bと車体アース69との間には、ノイズフィルタを設けない。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と電動機とを駆動源とし、前記電動機用の駆動用バッテリと、補機用バッテリと、前記駆動用バッテリの電圧を、前記補機用バッテリに適した電圧に変換するDC-DCコンバータと、を備え、前記DC-DCコンバータが、前記自動車の後部に配置されており、前記DC-DCコンバータの駆動により発生するノイズの中心周波数Fが、76MHz≦F±7MHz≦108MHzを充足する、ハイブリッド車両であって、
リアガラスと、
当該リアガラスの表面に形成されるガラスアンテナと、を備え、
前記ガラスアンテナは、
FMアンテナ素子と、
前記FMアンテナ素子と容量結合され、複数の加熱線を有する加熱ヒータと、
を備え、
前記加熱ヒータは、前記補機用バッテリと接続され当該加熱ヒータに給電を行う陽極バスバーと、車体アースに接続された陰極バスバーと、を備え、
前記補機用バッテリと前記陽極バスバーと間には、コイル素子を含む前記FMアンテナ素子のためのノイズフィルタが設けられ、前記陰極バスバーと前記車体アースとの間には、ノイズフィルタが設けられていない、ハイブリッド車両。
【請求項2】
前記リアガラスの表面において、前記FMアンテナ素子に給電を行う給電端子は、前記陰極バスバー側に配置されている、請求項1に記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の窓ガラスの表面に形成されるガラスアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のリアガラスにアンテナパターンが形成されるガラスアンテナは、従来のロッドアンテナに比べて意匠面で出っ張りがないために外観上優れ、破損の心配がなく、風切り音が発生しない等の理由により、広く使用されるようになった。
【0003】
このようなガラスアンテナについては、種々のものが提案されており、例えば、ガラスアンテナのFMアンテナ素子をリアガラスに設けられたデフォッガと容量結合させることで、デフォッガもアンテナとして利用するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-4332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アンテナの感度特性には未だ改善の余地があり、さらなる改良が望まれていた。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、受信感度を向上することができる、ガラスアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<発明1>
項1.自動車の窓ガラスの表面に形成されるガラスアンテナであって、
FMアンテナ素子と、
前記FMアンテナ素子と容量結合され、複数の加熱線を有する加熱ヒータと、
を備え、
前記FMアンテナ素子と前記加熱ヒータとの間の距離Sが40mmより大きい、ガラスアンテナ。
【0007】
項2.前記距離Sが50mm以上である、項1に記載のガラスアンテナ。
【0008】
項3.前記自動車は、内燃機関と電動機とを駆動源とするハイブリッド車両であり、前記電動機用のバッテリの電圧を、当該電動機に適した電圧に変換するDC-DCコンバータが、前記自動車の後部に配置されており、前記DC-DCコンバータの駆動により発生するノイズの中心周波数Fが、76MHz≦F±7MHz≦108MHzを充足する、項1または2に記載のガラスアンテナ。
【0009】
上述した特許文献1のようなFMアンテナ素子は、種々のノイズを受ける得る可能性があるため、ノイズの低減に関しても改善が要望されていた。例えば、近年普及しているハイブリッド車両は、駆動用バッテリから補機用バッテリへ電圧を降下させて供給を行うため、DC-DCコンバータが用いられているが、このDC-DCコンバータがノイズの発生源となることが指摘されている。但し、これ以外のノイズについても、FMアンテナ素子に与える影響を遮断又は低減することが要望されていた。以下の発明2~5は、この問題を解決するためのものであり、具体的には、以下に掲げる態様の発明を提供する。
【0010】
<発明2>
項1.内燃機関と電動機とを駆動源とし、前記電動機用の駆動用バッテリと、補機用バッテリと、前記駆動用バッテリの電圧を、前記補機用バッテリに適した電圧に変換するDC-DCコンバータと、を備え、前記DC-DCコンバータが、前記自動車の後部に配置されており、前記DC-DCコンバータの駆動により発生するノイズの中心周波数Fが、76MHz≦F±7MHz≦108MHzを充足する、ハイブリッド車両であって、
リアガラスと、
当該リアガラスの表面に形成されるガラスアンテナと、を備え、
前記ガラスアンテナは、
FMアンテナ素子と、
前記FMアンテナ素子と容量結合され、複数の加熱線を有する加熱ヒータと、
を備え、
前記加熱ヒータは、前記補機用バッテリと接続され当該加熱ヒータに給電を行う陽極バスバーと、車体アースに接続された陰極バスバーと、を備え、
前記補機用バッテリと前記陽極バスバーと間には、コイル素子を含む前記FMアンテナ素子のためのノイズフィルタが設けられ、前記陰極バスバーと前記車体アースとの間には、ノイズフィルタが設けられていない、ハイブリッド車両。
【0011】
項2.前記リアガラスの表面において、前記FMアンテナ素子に給電を行う給電端子は、前記陰極バスバー側に配置されている、項1に記載のハイブリッド車両。
【0012】
<発明3>
項1.自動車の窓ガラスの表面に形成されるガラスアンテナであって、
FMアンテナ素子と、
前記FMアンテナ素子と容量結合され、複数の加熱線を有する加熱ヒータと、
前記FMアンテナ素子と前記加熱ヒータとの間に配置され、少なくとも水平方向に延びる水平エレメントを備えた、複数のノイズ除去エレメントと、
を備え、
前記複数のノイズ除去エレメントは、所定間隔をおいて、水平方向に沿って並んでいる、ガラスアンテナ。
【0013】
項2.前記複数のノイズ除去エレメントは、いずれも車体アースに接続されている、項1に記載のガラスアンテナ。
【0014】
項3.前記窓ガラスは、リアガラスであり、
前記自動車は、内燃機関と電動機とを駆動源とするハイブリッド車両であり、前記電動機用の駆動用バッテリと、補機用バッテリと、前記駆動用バッテリの電圧を、前記補機用バッテリに適した電圧に変換するDC-DCコンバータと、を備え、
前記DC-DCコンバータが、前記自動車の後部に配置されており、
前記DC-DCコンバータの駆動により発生するノイズの中心周波数Fが、76MHz≦F±7MHz≦108MHzを充足する、項1または2に記載のガラスアンテナ。
【0015】
<発明4>
項1.自動車の窓ガラスの表面に形成されるガラスアンテナであって、
FMアンテナ素子と、
AMアンテナ素子と、
前記AMアンテナ素子に接続されるアンテナ線のパターンにより形成され、AM放送の周波数帯の受信信号を通過させるとともに、FM放送の周波数域の受信信号を遮断又は減衰させる並列共振回路と、
を備えている、ガラスアンテナ。
【0016】
項2.前記並列共振回路は、前記アンテナ線を少なくとも1箇所で折り返すことで形成されている、項1に記載のガラスアンテナ。
【0017】
項3.前記並列共振回路は、前記アンテナ線を少なくとも2箇所で折り返すことで形成されている、項1に記載のガラスアンテナ。
【0018】
項4.前記FMアンテナ素子と容量結合され、複数の加熱線を有する加熱ヒータをさらに備え、
前記FMアンテナ素子と前記加熱ヒータとの間に、前記AMアンテナ素子が配置されている、項1から3のいずれかに記載のガラスアンテナ。
【0019】
項5.前記FMアンテナ素子と前記加熱ヒータとの間の距離Sが40mmより大きい、項2に記載のガラスアンテナ。
【0020】
項6.前記距離Sが50mm以上である、項5に記載のガラスアンテナ。
【0021】
項7.前記窓ガラスは、リアガラスであり、
前記自動車は、内燃機関と電動機とを駆動源とするハイブリッド車両であり、前記電動機用の駆動用バッテリと、補機用バッテリと、前記駆動用バッテリの電圧を、前記補機用バッテリに適した電圧に変換するDC-DCコンバータと、を備え、
前記DC-DCコンバータが、前記自動車の後部に配置されており、
前記DC-DCコンバータの駆動により発生するノイズの中心周波数Fが、76MHz≦F±7MHz≦108MHzを充足する、項1から5のいずれかに記載のガラスアンテナ。
【0022】
<発明5>
項1.FM帯域の電波を発信する機器が搭載された自動車の窓ガラスの表面に形成されるガラスアンテナであって、
FMアンテナ素子、及び水平方向に延びる複数の水平加熱線と垂直方向に延びる少なくとも1つの垂直エレメントとを有する加熱ヒータ、を備えたFMアンテナ受信部と、
前記加熱ヒータを挟んで、前記FMアンテナ素子とは反対側に配置され、前記機器からのノイズに影響を与えるノイズ抑制エレメントと、
を備えている、ガラスアンテナ。
なお、「FM帯域の電波を発信する機器」とは、例えば、ハイブリットに搭載されるDC-DCコンバータを例として挙げることができるが、FM放送波の受信に際してノイズを与えるものであれば、特には限定されない。
【0023】
項2.前記加熱ヒータと、前記ノイズ抑制エレメントとは、容量結合されている、項1に記載のガラスアンテナ。
【0024】
項3.前記ノイズ抑制エレメントは、前記自動車の車体アースに接続されている、項1または2に記載のガラスアンテナ。
【0025】
項4.前記加熱ヒータは、補機用バッテリと接続され当該加熱ヒータに給電を行う陽極バスバーと、車体アースに接続された陰極バスバーと、を備え、
前記補機用バッテリと前記陽極バスバーと間、及び前記陰極バスバーと前記車体アースとの間には、コイル素子を含む前記FMアンテナ素子のためのノイズフィルタが設けられている、項1から項3のいずれかに記載のガラスアンテナ。
【0026】
項5.前記加熱ヒータは、補機用バッテリと接続され当該加熱ヒータに給電を行う陽極バスバーと、車体アースに接続された陰極バスバーと、を備え、
前記補機用バッテリと前記陽極バスバーと間には、コイル素子を含む前記FMアンテナ素子のためのノイズフィルタが設けられ、前記陰極バスバーと前記車体アースとの間には、ノイズフィルタが設けられていない、項1から項3のいずれかに記載のガラスアンテナ。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るガラスアンテナによれば、受信感度をさらに改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係るガラスアンテナの第1実施形態が実装されるハイブリッド車両の概略図である。
図2図1のハイブリッド車両のリアガラスの正面図である。
図3】実施例1,2及び比較1~4における全FM周波数帯のノイズを示すグラフである。
図4】実施例1,2及び比較1~4における国内FM周波数帯のノイズの分布を示すグラフである。
図5】実施例1,2及び比較1~4における全FM周波数帯の受信感度を示すグラフである。
図6】実施例1,2及び比較1~4における全FM周波数帯の受信感度の分布を示すグラフである。
図7】第2実施形態に係るリアガラスの正面図である。
図8】実施例3及び比較5~7における全FM周波数帯のノイズを示すグラフである。
図9】実施例3及び比較5~7における全FM周波数帯のノイズの分布を示すグラフである。
図10】第3実施形態に係るリアガラスの正面図である。
図11】実施例4,5及び比較例8における全FM周波数帯のノイズを示すグラフである。
図12】第4実施形態に係るリアガラスの正面図である。
図13】スタブパターンの例を示す平面図である。
図14】電波の透過ロスの測定方法を示す図である。
図15】実施例6~8における全FM周波数帯のノイズを示すグラフである。
図16】第5実施形態に係るリアガラスの正面図である。
図17】ノイズ抑制エレメントの効果を説明する図である。
図18】第5実施形態に係るリアガラスの他の例を示す正面図である。
図19】ノイズ抑制エレメントの他の例を示す図である。
図20】実施例9~11に係るリアガラスを示す正面図である。
図21】実施例12に係るリアガラスを示す正面図である。
図22】比較例9に係るリアガラスを示す正面図である。
図23】実施例9~11及び比較例8における全FM周波数帯のノイズを示すグラフである。
図24】実施例9~11及び比較例8における全FM周波数帯の受信感度を示すグラフである。
図25】実施例Fに係るリアガラスを示す正面図である。
図26】リアガラスとDC-DCコンバータとの位置関係を示す断面図である。
図27】実施例Fに対する比較例に係るリアガラスの正面図である。
図28】実施例Fにおける長さAを変化させたときの感度を示すグラフである(国内FM帯域)。
図29】実施例Fにおける長さAを変化させたときの感度を示すグラフである(海外FM帯域)。
図30】実施例Fにおける長さBを変化させたときの感度を示すグラフである(国内FM帯域)。
図31】実施例Fにおける長さBを変化させたときの感度を示すグラフである(海外FM帯域)。
図32】実施例Fにおける長さCを変化させたときの感度を示すグラフである(国内FM帯域)。
図33】実施例Fにおける長さCを変化させたときの感度を示すグラフである(海外FM帯域)。
図34】実施例Fにおける長さDを変化させたときの感度を示すグラフである(国内FM帯域)。
図35】実施例Fにおける長さDを変化させたときの感度を示すグラフである(海外FM帯域)。
図36】実施例13~15における感度を示すグラフである。
図37】実施例13~15における車室電界強度を示すグラフである。
図38】実施例14、16、17における感度を示すグラフである。
図39】実施例14、16、17における車室電界強度を示すグラフである。
図40】実施例15,18、19における感度を示すグラフである。
図41】実施例15,18、19における車室電界強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<A.第1実施形態>
以下、本発明1に係るガラスアンテナの第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のガラスアンテナは、ハイブリッド車両のリアガラスに実装されたものである。図1は本実施形態に係るガラスアンテナが実装されるハイブリッド車両の概略図、図2図1のハイブリッド車両のリアガラスの正面図である。
【0030】
<1.ハイブリッド車両の概要>
まず、本実施形態に係るガラスアンテナが実装されるハイブリッド車両の概要について説明する。図1に示すように、このハイブリッド車両は、エンジンと電動機とを駆動源とするものであり、電動機用の駆動用バッテリが車両の後部、つまりトランク付近に配置されている。また、この車両の前部には、ECU,ABSなどの車載機器用の補機用バッテリが配置されている。そして、トランク付近には、駆動用バッテリの高電圧直流電圧を、補機用バッテリに適した低電圧直流電圧(例えば、12V)に変換し、補機用バッテリに供給するためのDC-DCコンバータが配置されている。
【0031】
このDC-DCコンバータが駆動すると、放射ノイズが発生することが知られており、その中心周波数をF(MHz)とすると、次の式(1)を満たす。
76MHz≦F±7MHz≦108MHz (1)
【0032】
<2.ガラスアンテナの概要>
次に、ガラスアンテナについて説明する。図2に示すように、本実施形態に係るガラスアンテナは、ハイブリッド車両のリアガラス1に配置されており、FMアンテナ素子2、及びデフォッガ3(加熱ヒータ)を備えている。
【0033】
リアガラス1の左縁の中央よりも上部寄りの位置には、給電端子4が設けられており、この給電端子4に、FMアンテナ素子2が接続されている。FMアンテナ素子2は、給電端子4から上方に延びる第1垂直エレメント21、及びこの第1垂直エレメント21の上端から水平方向に延びる第1水平エレメント22を備えている。第1垂直エレメント21は、リアガラス1の上端付近まで延び、第1水平エレメント22はリアガラス1の上端に沿って水平方向に延びている。また、このFMアンテナ素子2は、第1水平エレメント22の中央から下方へ延びる第2垂直エレメント23、及びこの第2垂直エレメント23の下端と接続され、水平方向に延びる第2水平エレメント24を備えている。第2垂直エレメント24の下端部は、上下方向において、給電端子4と概ね同じ位置に配置されている。そして、この第2垂直エレメント23に接続される第2水平エレメント24が、FMアンテナ素子2の最下部を構成している。
【0034】
なお、ここでいう「水平」とは、車両の設置面と概ね平行な方向を意味し、「垂直」とは「水平」と概ね直交する方向をいう。したがって、「水平」、「垂直」は必ずしも厳密な方向を示すものではなく、例えば、「水平」と称しても、車両の設置面と厳密に平行ではなく、多少傾いていてもよいこととする。そして、この「水平」、「垂直」の意味は、次に説明するデフォッガや、後述する各実施形態についても同じである。
【0035】
次に、デフォッガ3について説明する。デフォッガ3、FMアンテナ素子2の第2水平エレメント24の下方に実装されており、複数の水平エレメント(加熱線)31で構成されている。まず、デフォッガ3は、リアガラス1の両側縁に沿って上下方向に延びる一対の給電用のバスバー32a,32bを備えている。そして、右側のバスバー32aには補機用バッテリ(図示省略)から給電がなされ、左側のバスバー32bは車体アース(図示省略)に接続されている。そして、両バスバー32a,32bの間には、複数の水平エレメント31が所定間隔をおいて平行に配置されており、バスバー32a,32bからの給電により、防曇用の熱が発生するようになっている。そして、デフォッガ3の最上部の水平エレメント311と、FMアンテナ素子2の最下部の第2水平エレメント24とは、概ね平行となっており、これにより、両エレメント311,24とは、容量結合している。したがって、デフォッガ5は、防曇機能を果たすのに加え、FMアンテナ素子2とともにアンテナとしても機能する。
【0036】
また、デフォッガの水平エレメント311と、FMアンテナ素子2の第2水平エレメント24との距離Sは、40mmよりも大きいことが好ましく、50mm以上であることがさらに好ましく、60mm以上であることが特に好ましい。
【0037】
なお、以上の各アンテナ素子は、公知の導電性材料により構成され、スクリーン印刷などによってガラス面に実装される。
【0038】
<3.特徴>
以上のように構成されたガラスアンテナは、次のような効果を奏する。すなわち、上記のようなハイブリッド車両では、DC-DCコンバータが設けられており、このコンバータが駆動すると、放射ノイズが発生する。そして、このDC-DCコンバータはリアガラスに近い車両の後部に配置されているため、発生する放射ノイズは、面積の広いデフォッガ3に影響を与える。しかしながら、デフォッガ3とFMアンテナ素子2との距離Sは、上記のように40mmより大きくなっているため、デフォッガ3に影響を与えたノイズが、FMアンテナ素子2に及ぼす影響を低減することができる。
【0039】
また、本発明者は、上記のようにデフォッガ3とFMアンテナ素子2との距離Sを40mmよりも大きくすると、FMアンテナ素子2におけるノイズの低減に加え、FMアンテナ素子2の受信感度が向上することを見出した。すなわち、距離Sが大きくなるほど、FM電波の全周波数域で受信感度が向上することが見出されたが、特に、距離Sが40mmよりも大きくなると、88~108MHzの海外周波数帯における受信感度が向上することが見出された。なお、この受信感度の向上は、DC-DCコンバータを搭載したハイブリッド車両のみならず、通常のエンジンにより駆動する車両においても、距離Sを大きくすることで実現される。
【0040】
<4.変形例>
以上、本発明1に係る実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0041】
<4-1>
上記実施形態に係るFMアンテナ素子の形状、及びデフォッガ3の形状は、一例であり、少なくとも、両者の距離Sが40mmよりも大きく、容量結合していれば、他の種々の形状が可能である。例えば、FMアンテナ素子2に他のエレメントを加えたり、デフォッガ3に垂直エレメントを適宜加えてもよい。
【0042】
<4-2>
上記実施形態に係るリアガラスでは、アンテナ素子として、FMアンテナ素子のみが実装されているが、これに限定されず、FMサブアンテナ素子、AMアンテナ素子、及びキーレスエントリー用のキー用アンテナ素子などを適宜設けることもできる。この点は、以下の実施形態でも同じである。
【0043】
<4-3>
上記実施形態で示したハイブリッド車両は一例であり、これに限定されない。すなわち、上記実施形態に係るガラスアンテナは、ハイブリット車両のみならず、他の車両にも適用可能であり、すなわち、種々のノイズ源に対して適用可能である。この点は、以下の実施形態でも同じである。
【0044】
<5.実施例A>
以下、実施例Aについて説明する。但し、この実施例Aは一例であり、発明1を限定するものではない。
【0045】
図2に示すパターンのFMアンテナ素子及びデフォッガを有するガラスアンテナにおいて、両者の距離Sが異なる以下の実施例及び比較例を準備した。また、このガラスアンテナは、図1に示すような、後部にDC-DCコンバータを搭載したハイブリッド車両に設けられている。そして、このDC-DCコンバータにおいて発生する放射ノイズの中心周波数は76MHzであった。なお、図2に示すガラスアンテナの各部の寸法は、以下の通りである。
A1=480mm
A2=1147mm
A3=120mm
この寸法は、後述する各実施例B~Gにおいても、特に断りのない限り同じである。
【0046】
【表1】
【0047】
ハイブリッド車両に装着された上記のような実施例及び比較例を準備した。そして、車両に対してFM電波を放射し、ノイズ及び感度を測定した。測定に当たっての条件は以下の通りである。
・ガラスアンテナが実装されたガラスの取付角:水平方向に対して23度傾斜
・角度分解能:角度3度毎に自動車を360度回転させて測定
・周波数分解能:76~108MHzの範囲で1MHz毎に測定
・電波の発信位置とアンテナとの仰角:1.7度(地面と水平方向を0度、天頂方向を90度とする)
なお、この条件は、以下の実施例B~Gにおいても、特に断りのない限り同じである。
【0048】
ノイズに関する結果は、図3に示すとおりである。同図によれば、DC-DCコンバータのノイズの中心周波数Fである76MHzにおいて、距離Sが大きくなるほど、ノイズが低減していることが分かる。また、図4は、図3から76~90MHzの国内周波数帯のノイズを抽出し、この周波数域における実施例及び比較例のノイズの範囲と平均を示している。図4によれば、距離Sが40mmよりも大きくなると、ノイズの最大値が下がっていることが分かる。この傾向は、83MHz付近まで見られる。したがって、中心周波数Fとの差である7MHzを考慮し、中心周波数Fが、上述した式(1)を充足するようなノイズについては、本発明が特徴とする距離Sを40mmよりも大きくすることに意義がある。
【0049】
続いて、FM電波の受信感度について検討した。図5は全周波数域における受信感度である。また、図6は、図5に基づき、各実施例及び比較例の受信感度の範囲と平均を示している。これら図5及び図6によれば、距離Sが大きくなるほど、受信感度が向上していることが分かる。特に、距離Sが40mmよりも大きくなると、88~108MHzの海外周波数帯における受信感度が向上していることから、全周波数域の平均の受信感度は、距離Sが大きくなるにしたがって、向上することが分かった。
【0050】
<B.第2実施形態>
以下、本発明2に係るガラスアンテナの第2実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のガラスアンテナは、第1実施形態と同様のハイブリッド車両のリアガラスに実装されたものである。図7は、本実施形態に係るリアガラスの正面図である。
【0051】
<1.ガラスアンテナの概要と特徴>
図7に示すように、本実施形態に係るガラスアンテナは、第1実施形態に係るガラスアンテナとほぼ同様の構成を有しているので、以下では相違点を中心に説明する。
【0052】
まず、本実施形態に係るガラスアンテナでは、FMアンテナ素子2とデフォッガ3の距離は特には限定されず、40mm以下であってもよい。
【0053】
次に、図7に示すように、本実施形態のデフォッガ3では、右側のバスバー(陽極バスバー)32aと補機用バッテリとの間に、コイル(RFC:Radio Frequency Choke Coil)651を備えるノイズフィルタ65が接続されている。一方、左側のバスバー(陰極バスバー)32bと車体アース69との間にはノイズフィルタは接続されていない。ノイズフィルタ65は、デフォッガ3に対して補機バッテリ側からのノイズの流入を防止するためのものである。すなわち、デフォッガ3はFMアンテナ素子2と容量結合し、FMアンテナとしても機能するため、このようなノイズフィルタを設けることで、FMアンテナ素子2のノイズを低減することができる。このようなノイズ低減効果を得るため、ノイズフィルタ65のコイル651のインダクタンスは、例えば、0.5~5.0μHであることが好ましく、0.7~2.0μHであることがさらに好ましい。また、本実施形態では、FMアンテナ素子2の給電端子4を、給電側のバスバー32aとは、反対側に配置しているため、これによっても、FMアンテナ素子2が受け得るノイズを低減している。
【0054】
なお、本実施形態では、車体アースに接続された左側のバスバー32b側にノイズフィルタを設けていないが、その理由は、以下の通りである。本実施形態に係るガラスアンテナは、上述したハイブリッド車両に設けられるものであるため、ガラスアンテナのデフォッガ3は、DC-DCコンバータからの放射ノイズの影響を受けやすい。ここで、車体アース69側にもノイズフィルタを設けると、デフォッガ3が受けた放射ノイズが車体アース69側のノイズフィルタで止まり、ノイズが車体アース69側へ流出しないと考えられる。これにより、デフォッガ3に放射ノイズが溜まり、FMアンテナ素子2がこのノイズの影響を受けると考えられる。したがって、ノイズフィルタは、左側のバスバー32b側には設けていない。
【0055】
<2.変形例>
以上、本発明2に係る実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0056】
上記実施形態に係るFMアンテナ素子の形状、及びデフォッガ3の形状は、一例であり、少なくとも両者が容量結合していれば、他の種々の形状が可能である。例えば、FMアンテナ素子2に他のエレメントを加えたり、デフォッガ3に垂直エレメントを適宜加えてもよい。
【0057】
<3.実施例B>
以下、実施例Bについて説明する。但し、この実施例Bは一例であり、発明2を限定するものではない。
【0058】
図7に示すパターンのFMアンテナ素子及びデフォッガを有するガラスアンテナにおいて、距離Sを60mmとし、以下の実施例及び比較例を準備した。すなわち、実施例及び比較例においては、右側バスバーと補機用バッテリとの間、及び左側バスバーと車体アース側との間のいずれかに、RFCを含むノイズフィルタを配置したり、あるいは、いずれにも配置しないようにした。また、このガラスアンテナは、図1に示すような、後部にDC-DCコンバータを搭載したハイブリッド車両に設けられている。そして、このDC-DCコンバータにおいて発生する放射ノイズの中心周波数は76MHzであった。
【0059】
【表2】
【0060】
上記のような実施例及び比較例を準備し、FM電波の全周波数のノイズを測定した。結果は、図8に示すとおりである。また、図9は、図8から76~90MHzの国内周波数帯のノイズを抽出し、この周波数域における実施例及び比較例のノイズの範囲と平均を示している。図8及び図9によれば、実施例3は、比較例5~7に比べ、国内周波数帯のノイズが低減していることが分かる。例えば、バスバーの両側にノイズフィルタを設けている比較例6と比べても、ノイズの平均値が低下していることが分かる。
【0061】
<C.第3実施形態>
以下、本発明3に係るガラスアンテナの第3実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のガラスアンテナは、第1実施形態と同様のハイブリッド車両のリアガラスに実装されたものである。図10は、本実施形態に係るリアガラスの正面図である。
【0062】
<1.ガラスアンテナの概要と特徴>
図10に示すように、本実施形態に係るガラスアンテナは、第1実施形態に係るガラスアンテナとほぼ同様の構成を有しているので、以下では相違点を中心に説明する。
【0063】
まず、本実施形態に係るガラスアンテナでは、FMアンテナ素子2とデフォッガ3の距離は特には限定されず、40mm以下であってもよい。
【0064】
次に、本実施形態では、図10に示すように、FMアンテナ素子2と、デフォッガ3との間に、水平方向に延びる2本の線状のノイズ除去エレメント7が設けられている。これらノイズ除去エレメント7は、水平方向に沿って、所定間隔をおいて配置されている。各ノイズ除去エレメントの間隔は、特に規定はないが、例えば、10~200mmの範囲で自由に設計することができる。さらに、ノイズ除去エレメント7の長さは、特には限定されないが、例えば、上述した中心周波数Fに対して約λ/4±50mmとすることができ、好ましくは±30mmとすることができる。また、これらノイズ除去エレメント7は、それぞれ、車体アース63に接続されている。なお、ノイズ除去エレメント7は、FMアンテナ素子2やデフォッガ3と同じ材料で形成されている。
【0065】
このようなノイズ除去エレメント7を設けることで、FMアンテナ素子2が受けるノイズを低減することができる。
【0066】
<2.変形例>
以上、本発明3に係る実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0067】
<2-1>
上記実施形態では、ノイズ除去エレメント7のぞれぞれを車体アース69に接続しているが、車体アース69への接続は必須ではなく、接続しなくてもよい。
【0068】
<2-2>
上記実施形態では、ノイズ除去エレメントを2本にしているが、3本以上にすることもできる。
【0069】
<3.実施例C>
以下、実施例Cについて説明する。但し、この実施例Cは一例であり、発明3を限定するものではない。
【0070】
図10に示すパターンのFMアンテナ素子及びデフォッガを有するガラスアンテナにおいて、距離Sを60mmとし、以下の実施例及び比較例を準備した。また、ノイズ除去エレメントとデフォッガとの距離は10mmとする。すなわち、実施例4はノイズ除去エレメントを2本設け、それぞれを車体アースに接続した。各ノイズ除去エレメントの長さは530mmであり、両ノイズ除去エレメントの水平方向の間隔は12mmである。また、実施例5はノイズ除去エレメントを2本設けているが、車体アースには接続していない。さらに、比較例8では、ノイズ除去エレメントを設けていない。また、このガラスアンテナは、図1に示すような、後部にDC-DCコンバータを搭載したハイブリッド車両に設けられている。そして、このDC-DCコンバータにおいて発生する放射ノイズの中心周波数Fは83MHzであった。そして、この中心周波数Fの波長λを基準として、実施例4,5の各ノイズ除去エレメントの長さは、λ/4mmとした。
【0071】
【表3】
【0072】
上記のような実施例及び比較例を準備し、FM電波の全周波数のノイズを測定した。結果は、図11に示すとおりである。同図によれば、比較例8に比べ、実施例4,5は、特に、国内周波数帯のノイズが低減していることが分かる。
【0073】
<D.第4実施形態>
以下、本発明4に係るガラスアンテナの第4実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のガラスアンテナは、第1実施形態と同様のハイブリッド車両のリアガラスに実装されたものである。図12は、本実施形態に係るリアガラスの正面図である。
【0074】
<1.ガラスアンテナの概要>
次に、ガラスアンテナについて説明する。図12に示すように、本実施形態に係るガラスアンテナは、ハイブリッド車両のリアガラス1に配置されており、FMアンテナ素子2、及びデフォッガ3(加熱ヒータ)を備えている。
【0075】
リアガラス1の右縁の中央よりも上部寄りの位置には、給電端子4が設けられており、この給電端子4にFMアンテナ素子2が及びAMアンテナ素子8が接続されている。FMアンテナ素子2は、AMアンテナ素子8よりも上方に配置されており、AMアンテナ素子8の下方にはデフォッガ3が配置されている。すなわち、FMアンテナ素子2とデフォッガ3との間に、AMアンテナ素子8が配置されている。
【0076】
FMアンテナ素子1は、給電端子4から上方に延びる第1垂直エレメント25、及びこの第1垂直エレメント25の上端から水平方向に延びる第1水平エレメント26を備えている。また、第1水平エレメント26の中央よりも左寄りの位置から、L字型の第1L字型エレメント27が接続されており、さらに第1L字型エレメント27におけるリアガラス1の中央付近に、同じくL字型の第2L字型エレメント28が接続されている。第2L字型エレメント28は、第1L字型エレメント27よりも上下方向の長さが長く、その左端部は、給電端子4付近まで延びている。そして、第2L字型エレメント28の左端部からは、上方に延びる短い折り返し部281を介して、左側に延びる第2水平エレメント29が接続されている。
【0077】
次に、AMアンテナ素子8について説明する。AMアンテナ素子8は、給電端子4から下方に延びる第1垂直エレメント81を備え、この第1垂直エレメント81の下端部には、アンテナ線が折り返されたスタブ9が接続されている。このスタブ9については後述する。そして、スタブ9には左側に延びる第1水平エレメント82が接続されている。また、第1水平エレメント82の中央付近には、上方に延びる第2垂直エレメント83が接続され、この第2垂直エレメント83の上端部には左側に延びる第2水平エレメント84が接続されている。なお、アンテナ素子の寸法は特には限定されないが、例えば、AMアンテナ素子の第1水平エレメントとFMアンテナ素子の第2L字型エレメント28との距離A4を60mm、FMアンテナ素子の第2L字型エレメント28と第1水平エレメント26との距離A5を60mmとすることができる。
【0078】
続いて、スタブについて説明する。スタブは、上記のようにアンテナ線を折り曲げたものであり、並列共振回路を構成する。この並列共振回路は、AM放送の周波数域の受信信号を通過させるとともに、FM放送の周波数域の受信信号を遮断又は減衰させる機能を有する。これにより、AMアンテナ素子8において、スタブ9を挟んで給電端子4とは反対側にあるエレメント、つまり第1水平エレメント82、第2垂直エレメント83、及び第2水平エレメント84が受けた、FM放送の周波数域のノイズが、FMアンテナ素子側、つまり給電端子4へ流入するのが防止される。
【0079】
このような並列共振回路を構成するスタブ9は、種々のパターンが可能である。具体的には、図13に示している。図13(a)は、平行に延びる第1及び第2アンテナ線91,92の一端部同士を連結したものである(以下、スタブパターン1という)。また、このスタブパターン1は、アンテナ線の折り返し部分が1箇所であるといえる。図13(b)は、図12に示すスタブであり、スタブパターン1において、第2アンテナ線92の基端部から、これら第1及び第2アンテナ線91,92の間を通るように第3アンテナ線93を連結部分まで延ばしたものである(以下、スタブパターン2という)。また、このスタブパターン2は、アンテナ線の折り返し部分が2箇所であるといえる。さらに、図13(c)は、スタブパターン2において、第3アンテナ線93の端部から、第2アンテナ線92と第3アンテナ線との間を通るように、第2アンテナ線92の基端部まで延びる第4アンテナ線94を設けたものである(以下、スタブパターン3という)。このスタブパターン3は、アンテナ線の折り返し部分が3箇所である。スタブパターン1,2,3を比べると、折り返し部分が多いほど、水平方向の長さが短くすることができる。これにより、スタブをコンパクトにすることができる。
【0080】
次に、デフォッガ3について説明する。デフォッガ3は、第1実施形態と概ね同様であるが、バスバーが相違している。すなわち、この実施形態では、左側のバスバー32bに対して補機用バッテリから給電がなされ、右側のバスバー32aは車体アースに接続されている。そして、デフォッガ3の最上部の水平エレメント311と、FMアンテナ素子2の最下部の第2L字型エレメント28とは、概ね平行となっており、これにより、両エレメント311,28とは、容量結合している。したがって、デフォッガ5は、防曇機能を果たすのに加え、FMアンテナ素子2とともにアンテナとしても機能する。
【0081】
また、デフォッガ3の水平エレメント311と、FMアンテナ素子2の第2L字型エレメント28との距離Sは、特には限定されないが、例えば、40mmよりも大きいことが好ましく、50mm以上であることがさらに好ましく、60mm以上であることが特に好ましい。
【0082】
なお、以上の各アンテナ素子は、公知の導電性材料により構成され、スクリーン印刷などによってガラス面に実装される。
【0083】
<2.特徴>
以上のように構成されたガラスアンテナは、次のような効果を奏する。すなわち、この実施形態では、AMアンテナ素子8に並列共振回路を構成するアンテナパターン、つまりスタブ9を接続している。これにより、AMアンテナ素子8が受けたノイズのうち、FM放送の周波数域のノイズが、FMアンテナ素子2側、つまり給電端子4へ流入するのが防止される。特に、本実施形態のようなハイブリッド車両では、DC-DCコンバータが設けられており、このコンバータが駆動すると、放射ノイズが発生する。そのため、AMアンテナ素子8がノイズを受けやすくなるが、上記のようなスタブ9を設けることで、FMアンテナ素子2におけるノイズを遮断又は低減することができる。
【0084】
特に、本実施形態に係るガラスアンテナでは、FMアンテナ素子2とデフォッガ3との距離Sを第1実施形態で示したように離すことで、FMアンテナ素子2が受けるノイズを低減することができるが、FMアンテナ素子2とデフォッガ3との間にAMアンテナ素子8を配置すると、AMアンテナ素子8が受けるノイズがFMアンテナ素子2に影響を及ぼすという新たな問題が生じる。そこで、本実施形態では、AMアンテナ素子8を設けても、FMアンテナ素子2が受けるノイズを遮断または低減できるように、上述したスタブ9を設けている。
【0085】
また、図13に示したスタブ9の例では、折り返し箇所が多くなるほど、短くすることができるが、これにより、次の効果を得ることができる。すなわち、図12の例では、スタブ9の折り返し箇所が多くなるほど、短くなり、これにより、給電側のバスバー32bとスタブ9との距離が長くなる。そのため、スタブ9自体が給電側バスバー32bから受けるノイズを低減することができる。
【0086】
<3.変形例>
以上、本発明4に係る実施形態について説明したが、本発明4は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0087】
<3-1>
上記実施形態に係るFMアンテナ素子1の形状、AMアンテナ素子8の形状、及びデフォッガ3の形状は、一例であり、他の種々の形状が可能である。少なくとも、FMアンテナ素子とデフォッガとの間に、AMアンテナ素子8が配置され、FMアンテナ素子2とデフォッガ3とが容量結合されていればよい。
【0088】
<3-2>
上記実施形態では、1つの給電端子4にFMアンテナ素子1とAMアンテナ素子8とを接続しているが、例えば、給電素子を2つ設け、それぞれに、各アンテナ素子1,8を接続することもできる。このような場合であっても、AMアンテナ素子8で受信したノイズは、例えば、給電端子からAM用のアンプに伝達されるまでの間に近接するFMアンテナ素子用のリード線などを介してFM用のアンプに入る可能性がある。したがって、各アンテナ素子1,8ごとに給電端子が設けられているガラスアンテナであっても、AMアンテナ素子8にスタブ9を設けることは有効である。
【0089】
<3-3>
スタブの形状は、特には限定されず、上述した以外の形状も可能である。すなわち、4つ以上の折り返し部分を有するものであってもよい。
【0090】
<3-4>
上述した第1~第4実施形態において示した事項は、適宜、組合せ可能である。
【0091】
<4.実施例D>
以下、実施例Dについて説明する。但し、この実施例Dは一例であり、発明4を限定するものではない。
【0092】
以下では、スタブの形状について検討する。以下では、図13(a)に対応する実施例6(スタブパターン1),図13(b)に対応する実施例7(スタブパターン2),図13(c)に対応する実施例8(スタブパターン3)を用いて、電波の透過ロスを測定した。各実施例におけるスタブの寸法は以下の通りである。なお、83Hzを基準として設計している。
【0093】
【表4】
【0094】
電波の透過ロスの測定方法は、図14に示すとおりである。すなわち、各スタブの両端部の端子部に5mm角の端子用金属テープを配置し、それぞれ同軸ケーブルに接続した。さらに、両同軸ケーブルの間に、横20mm、縦10mmの接続用金属テープを配置し、各同軸ケーブルと電気的に接続した。なお、スタブ、金属テープは、ガラス板上に配置した。このようにセットした後、FM放送の周波数域の電波透過ロスを測定した。結果は、図15に示すとおりである。
【0095】
図15に示すとおり、実施例6は海外周波数帯も含めた全体域において、電波のカット効果が見られるが、実施例7、8は、特に、76~90MHzの国内周波数帯の電波をカットする効果が高いことが分かった。
【0096】
<E.第5実施形態>
以下、本発明5に係るガラスアンテナの第5実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のガラスアンテナは、第1実施形態と同様のハイブリッド車両のリアガラスに実装されたものである。図16は、本実施形態に係るリアガラスの正面図である。
【0097】
<1.ガラスアンテナの概要>
図16に示すように、本実施形態に係るガラスアンテナは、ハイブリッド車両のリアガラス1に配置されており、上方から下方に向かって、FMアンテナ素子20、デフォッガ3(加熱ヒータ)、及びノイズ抑制エレメント70が、この順で配置されている。
【0098】
本実施形態に係るFMアンテナ素子20は、いわゆる双極型アンテナであり、アンテナ本体エレメント201と、アース接続エレメント202とで構成されている。アンテナ本体エレメント201は、L字型に形成されており、リアガラス1の上縁の中央付近に配置された給電端子203から、下方に向かって延びている。一方、アース接続エレメント202は、給電端子203の左側に配置されたアース接続端子204から右側に延びている。具体的には、給電端子203の上方を越えて右側へ水平に延びる第1部位212と、給電端子203の右側で,第1部位212の右端部から右側へL字型に延びる第2部位222と、を備えている。また、アース接続端子204は、車体アース(図示省略)に接続されている。なお、アンテナ本体エレメント201は、アース接続エレメント202の第2部位222よりも右側に延びている。
【0099】
次に、デフォッガ3について説明する。デフォッガ3、FMアンテナ素子2のアンテナ本体エレメント24の下方に実装されており、リアガラス1の両側縁に沿って上下方向に延びる一対の給電用のバスバー32a,32bを備えている。そして、左側のバスバー(陽極バスバー)32aには補機用バッテリから給電がなされ、右側のバスバー(陰極バスバー)32bは車体アース69に接続されている。補機用バッテリと、バスバー32aとの間には、第2実施形態で示したのと同様のノイズフィルタ65が配置されている。
【0100】
両バスバー32a,32bの間には、複数の水平エレメント31が所定間隔をおいて平行に配置されている。また、両バスバー32a,32bの間には、垂直エレメント32が配置されており、複数の水平エレメント31と交差している。すなわち、垂直エレメント32は、最上部の水平エレメント311から最下部の水平エレメント312に亘って延びている。このように構成された水平エレメント31には、バスバー32a,32bからの給電により、防曇用の熱が発生するようになっている。一方、垂直エレメント32には、給電がなされず、加熱には寄与しないが、FMアンテナ受信部の1つとして機能する。
【0101】
そして、デフォッガ3の最上部の水平エレメント311と、FMアンテナ素子2のアンテナ本体エレメント201とは、概ね平行となっており、これにより、両エレメント311,201とは、容量結合している。したがって、デフォッガ5は、防曇機能を果たすのに加え、FMアンテナ素子2とともにFMアンテナ受信部として機能する。
【0102】
デフォッガ3の下方には、上述したノイズ抑制エレメント70が配置されている。ノイズ抑制エレメント70は、デフォッガ3の最下部の水平エレメント311と平行に延びる第1部位701と、第1部位701の下方で第1部位701と平行に延びる第2部位702と、第1部位701の中央から下方に延び、さらに第2部位702と交差して下方に延びる第3部位703と、備えている。第1部位701は、デフォッガ3の最下部の水平エレメント312と近接しており、これによって、ノイズ抑制エレメント70は、デフォッガ3と容量結合している。第2部位702は、第1部位701よりも水平方向の長さが長くなっている。また、第3部位703は、デフォッガの垂直エレメント32と対応する位置に配置されており、その下端部には、アース接続端子704が接続されている。そして、このアース接続端子704は、車体アース69に接続されている。このように、ノイズ抑制エレメント70を車体アース69に接続することで、ノイズ抑制エレメント70をアンテナとして機能させ、次に説明するように、FMアンテナ素子20と協働して、アレイアンテナを構成することができる。なお、ノイズ抑制エレメント70は、FMアンテナ素子2やデフォッガ3と同じ材料で形成されている。
【0103】
<2.特徴>
上記のように、ノイズ抑制エレメント70を設けると、FMアンテナ素子20とノイズ抑制エレメント70とで、アレイアンテナを構成することができる。これにより、FMアンテナ素子2が受けるノイズを抑制できるとともに、アンテナの感度を向上することができる。この点について、図17を参照しつつ説明する。
【0104】
図17は、自動車のリアガラス付近を示す断面図である。同図に示すように、FMアンテナ素子20のみを設けた場合、その指向性は側面視において概ね円形となる。これに対して、FMアンテナ素子20よりも下方に離れた位置にノイズ抑制エレメント70を設けることで、FMアンテナ素子20の指向性は、上下に押し潰されるように、車両の前後に延びる楕円形となる。これにより、FMアンテナ素子20の指向性の範囲は、ノイズ抑制エレメント20を設けることで、DC-DCコンバータから離れるため、DC-DCコンバータからの放射ノイズ(例えば、後述する実施例の車室電界強度)の影響を抑制することができる。このような効果を得るためには、FMアンテナ素子20とノイズ抑制エレメント70との距離(この距離については後述する)を1/4λ以上空けることが好ましい。また、両者20,70の距離のほか、両者の位相差についても影響を与えることがあるため、適宜調整することが好ましい。なお、図17の例は、FMアンテナ素子の指向性を模式的に表した例であり、実際の指向性の範囲を表したものではない。
【0105】
このように、FMアンテナ素子20の指向性は、FMアンテナ素子20から離れた位置、例えば、少なくとも半波長(1/2λ)離れた位置にノイズ抑制エレメント70を設けることで制御することができる。その際、距離をおいたFMアンテナ素子20とノイズ抑制エレメント70との間には、デフォッガ3を配置することができるため、限られた面積のリアガラス1を有効に活用することができる。
【0106】
また、ノイズ抑制エレメント70とデフォッガ3を容量結合させることで、デフォッガ3をアンテナの一部として機能させることができる。これに対して、例えば、ノイズ抑制エレメント単独でアンテナ機能を奏するようにすると、FM帯域のエレメント長(例えば、約1m)が必要であるところ、容量結合によりデフォッガ3をアンテナとして機能させれば、ノイズ抑制エレメント70をコンパクトにすることができる。なお、FMアンテナ素子20とノイズ抑制エレメント70とをアレイアンテナとして機能させるには、両者の間にある程度の距(例えば、半波長程度)があることを要するが、この距離とは、アンテナの実体中心間の距離、すなわち、本実施形態の例では、FMアンテナ素子20の給電点(給電端子203)と、ノイズ抑制エレメント70の給電点(アース接続端子704)との距離である。したがって、これらの間に、デフォッガ3を配置し、ノイズ抑制エレメント70と容量結合させたとしても、アレイアンテナの性能には影響はない。
【0107】
ノイズ抑制エレメント70は、上記のように、車体アース69に接続されているため、FMアンテナ素子20の指向性の制御が容易になる。また、車体を通じてアースしているため、アースが容易になる。また、アースの代わりに、抵抗を設けてもよい。
【0108】
ノイズ抑制エレメント70の垂直に延びる第3部位703を、デフォッガの垂直エレメント32と対応する位置に配置しているため、ノイズ抑制エレメントをアンテナとして機能させることがより容易になる。
【0109】
また、ノイズ抑制エレメント70の第1部位701の長さや、デフォッガ3の水平エレメント311と第1部位701との距離を変更することで、ノイズ抑制エレメント70とデフォッガ3との容量結合の強度を変更し、ノイズ抑制エレメント70のアンテナとしての性能を調整することができる。すなわち、これらを調整することで、アレイアンテナとしてのFMアンテナ素子20の指向性を調整することができる。この点については、後述する実施例Fにおいて説明する。
【0110】
<3.変形例>
以上、本発明5に係る実施形態について説明したが、本発明5は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0111】
<3-1>
上記実施形態では、ノイズ抑制エレメント70を車体アース69に接続しているが、必ずしも接続しなくてもよい。また、右側のバスバー32bと車体アース69との間にもノイズフィルタ65を設けることもできる。但し、ノイズフィルタ65は、必須ではなく、設けなくてもよい。
【0112】
<3-2>
ノイズ抑制エレメント70の形状は、特には限定されず、デフォッガ3を挟んで、FMアンテナ素子20とは反対側に配置されていればよい。例えば、図18に示すような態様にすることができる。図18に示すように、この例では、ノイズ抑制エレメント70は、デフォッガ3の垂直エレメント32の下端部に接続され,下方に延びる第1部位706と、第1部位706の下端部から水平に延びる第2部位705とを備え、全体としてT字型に形成されている。すなわち、このノイズ抑制エレメント70は、デフォッガ3と直接的に接続されている。したがって、ノイズ抑制エレメント70は、デフォッガ3に対して容量結合されていてもよいし、直接結合されていてもよい。
【0113】
<3-3>
また、図19に示すように、ノイズ抑制エレメント70を構成することもできる。図19(a)の例は、第2部位702のみでノイズ抑制エレメント70を構成している。図19(b)の例は、第1部位701と第2部位702との間に、第1部位701とほぼ同じ長さで、これと平行に延びる第4部位704を設けて、ノイズ抑制エレメント70を構成している。図19(c)の例は、第1部位701と第2部位702の両端同士をそれぞれ接続する第5部位708を設け、台形状のノイズ抑制エレメント70を構成している。図19(d)の例は、図19(c)の例において、垂直に延びる第3部位703を設けている。図19(e)の例では、上記第1部位701、第2部位702、及び第3部位703を設け、さらに、これらの両端部同士をそれぞれ接続する第6部位709を設け、ノイズ抑制エレメント70を構成している。そして、図19(f)の例では、図19(e)の例において、垂直に延びる第3部位703を設けている。
【0114】
以上のようなノイズ抑制エレメン70は、すべて、最も上にある部位が、デフォッガ3の直下に配置され、デフォッガ3と容量結合している。
【0115】
<3-4>
FMアンテナ素子20は、上記のような双曲型ではなく、単極型であってもよい。また、FMアンテナ素子20の形状も特には限定されない。さらに、FMアンテナ素子20は、上記実施形態のように、デフォッガ3と容量結合してもよいし、直接結合されていてもよい。
【0116】
<3-5>
デフォッガ3の形状も特には限定されず、垂直エレメント32は、少なくとも1つあればよい。
【0117】
<3-6>
上記実施形態では、FMアンテナ素子20をデフォッガ3の上方に配置しているが、FMアンテナ素子20をデフォッガ3の下方に配置し、ノイズ抑制エレメント70をデフォッガ3の上方に配置することもできる。
【0118】
<4.実施例E>
以下、実施例Eについて説明する。但し、この実施例Eは一例であり、発明5を限定するものではない。
【0119】
ここでは、以下の実施例及び比較例を準備した。すなわち、図16と同様に構成された実施例9、実施例9においてデフォッガにノイズフィルタを設けていない実施例10,実施例9においてノイズ抑制エレメントにアース接続端子を設けていない実施例11,図18と同様に構成された実施例12を準備した。但し、実施例12ではデフォッガにノイズフィルタを設けている。また、比較例9としては、実施例9の態様からノイズ抑制エレメントを取り外したものを準備した。図20は実施例9~11の寸法を示す図であり、図21は実施例12の寸法を示す図であり、図22は比較例9を示す図である。いずれも図中の単位はmmである。
【0120】
これら実施例9~12及び比較例9に係るガラスアンテナは、図1に示すような、後部にDC-DCコンバータを搭載したハイブリッド車両に設けられているものとし、DC-DCコンバータにおいて発生する放射ノイズの中心周波数は100MHzであった。
【0121】
続いて、上記実施例9~12及び比較例9に対し、実施例Aで示したのと同様の方法で、ノイズ及び感度を測定した。
【0122】
ノイズに関する結果は、図23に示すとおりである。同図によれば、実施例9~12は、概ねすべての周波数域で、比較例9よりもノイズが低減していることが分かる。実施例9~11を比較すると、ノイズフィルタを設けない場合、及び車体アースに接続しない場合には、ノイズ抑制効果が低くなることが分かる。したがって、ノイズの抑制には、ノイズフィルタ及び車体アースが必要であることが分かった。また、実施例12は、ノイズフィルタを設けているが、実施例10及び11と同様のノイズ抑制効果を奏した。したがって、ノイズ抑制エレメントは、デフォッガと容量結合させる方が、概ねよい結果を示すことが分かった。
【0123】
続いて、FM電波の受信感度について検討した。図24は全周波数域における受信感度である。実施例9,10,及び12は、概ね比較例9よりも高い受信感度を示している。但し、実施例11については、比較例9よりも受信感度が低かった。したがって、実施例11は、比較例に比べ、ノイズ抑制効果はあるものの、受信感度は低くなった。実施例11のように,ノイズ抑制エレメントをデフォッガと容量結合する態様では、車体アースへの接続が好ましいことが分かった。また、ノイズ抑制エレメントは、車体アースの接続が好ましいものの、デフォッガと容量結合させる方が、概ねよい結果を示すことが分かった。
【0124】
<5.実施例F>
以下、実施例Fについて説明する。但し、この実施例Fは一例であり、発明5を限定するものではない。
【0125】
ここでは、以下の実施例及び比較例を準備した。すなわち、図25に示す窓ガラス(図16に対応)を実施例として準備した。この例では、FMアンテナ素子、デフォッガ、及びノイズ抑制エレメントの寸法を変更しつつ、アンテナの感度を測定した。また、DC-DCコンバータと対応するような電界を図26の位置から発生させ、そこから受ける電界強度も測定した。
【0126】
さらに、図27に示すようなノイズ抑制エレメントを設けていない窓ガラスを比較例とした。
【0127】
<5-1.長さAの調整>
まず、FMアンテナ素子のアンテナ本体エレメントの水平方向の長さAを調整した。このとき、長さB=312mm,長さC=100mm,長さD=400mmとした。そして、長さAを調整しつつ、V偏波アンテナ感度と、DC-DCコンバータからの車室電界強度の平均値を測定した。そのときの70~90MHzの国内FM帯域の平均値を図28のグラフに示している。また、同様の条件で、88~108MHzの海外FM帯域の平均値を図29のグラフに示している。なお、縦軸の感度は、比較例における感度を0としたときの差分を示している。この点は、以下においても同様である。
【0128】
図28に示すように、国内FM帯域では、ノイズ抑制エレメントを設けることで、長さAが変化しても、車室電界強度は、比較例よりも低下していることが分かる。したがって、DC-DCコンバータからの放射ノイズを抑制できていることが分かる。また、長さAが360mmであるときには、比較例よりも、車外からのFM波の受信感度が向上していることが分かる。
【0129】
同様に、図29に示すように、外国FM帯域でも、ノイズ抑制エレメントを設けることで、長さAが変化しても、車室電界強度は、比較例よりも低下していることが分かる。また、長さAが260~460mmであるときには、比較例よりも、車外からのFM波の受信感度が向上していることが分かる。
【0130】
<5-2.長さBの調整>
次に、デフォッガの垂直方向の長さB、つまりFMアンテナ素子とノイズ抑制エレメントとの距離を調整した。このとき、長さA=360mm,長さC=100mm,長さD=400mmとした。そして、長さBを調整しつつ、V偏波アンテナ感度と、DC-DCコンバータからの車室電界強度の平均値を測定した。そのときの70~90MHzの国内FM帯域の平均値を図30のグラフに示している。また、同様の条件で、88~108MHzの海外FM帯域の平均値を図31のグラフに示している。
【0131】
図30に示すように、国内FM帯域では、ノイズ抑制エレメントを設けることで、長さBが変化しても、車室電界強度は、比較例よりも低下していることが分かる。特に、Bの長さが、232~272mmであるときには、車室電界強度が他の長さに比べて特に低下していることが分かる。また、長さBが272mmより長いと、比較例よりも、車外からのFM波の受信感度が概ね向上していることが分かる。
【0132】
一方、図31に示すように、外国FM帯域では、長さBが312mm以上であれば、車室電界強度が、比較例よりも低下していることが分かる。また、車外からのFM波の受信感度は、長さBがいずれの長さであっても比較例よりも向上していることが分かる。
【0133】
<5-3.長さCの調整>
次に、ノイズ抑制エレメントの第1部位の長さCを調整した。このとき、長さA=360mm,長さB=312mm,長さD=400mmとした。そして、長さCを調整しつつ、V偏波アンテナ感度と、DC-DCコンバータからの車室電界強度の平均値を測定した。そのときの70~90MHzの国内FM帯域の平均値を図32のグラフに示している。また、同様の条件で、88~108MHzの海外FM帯域の平均値を図33のグラフに示している。
【0134】
図32に示すように、国内FM帯域では、ノイズ抑制エレメントを設けることで、長さCが変化しても、車室電界強度は、比較例よりも低下していることが分かる。特に、Cの長さが、150~350mmであるときには、車室電界強度が他の長さに比べて特に低下していることが分かる。また、長さCが200mmより短いと、比較例よりも、車外からのFM波の受信感度が概ね向上していることが分かる。
【0135】
一方、図33に示すように、外国FM帯域では、長さBが150mm以下であれば、車室電界強度が、比較例よりも低下していることが分かる。また、車外からのFM波の受信感度は、長さCがいずれの長さであっても比較例よりも向上していることが分かる。
【0136】
<5-4.長さDの調整>
次に、ノイズ抑制エレメントの第2部位の長さDを調整した。このとき、長さA=360mm,長さB=312mm,長さC=100mmとした。そして、長さDを調整しつつ、V偏波アンテナ感度と、DC-DCコンバータからの車室電界強度の平均を測定した。そのときの70~90MHzの国内FM帯域の平均値を図34のグラフに示している。また、同様の条件で、88~108MHzの海外FM帯域の平均値を図35のグラフに示している。
【0137】
図34に示すように、国内FM帯域では、ノイズ抑制エレメントを設けることで、長さDが変化しても、車室電界強度は、比較例よりも低下していることが分かる。特に、Dの長さが、500~700mmであるときには、車室電界強度が他の長さに比べて特に低下していることが分かる。また、長さDが600mmより短いと、比較例よりも、車外からのFM波の受信感度が概ね向上していることが分かる。
【0138】
一方、図35に示すように、外国FM帯域では、長さBが500mm以下であれば、車室電界強度が、比較例よりも低下していることが分かる。また、車外からのFM波の受信感度は、長さDがいずれの長さであっても比較例よりも概ね向上していることが分かる。
【0139】
<6.実施例G>
以下、実施例Gについて説明する。但し、この実施例Gは一例であり、発明5を限定するものではない。
【0140】
ここでは、ノイズ抑制エレメントの形状を変化させ、その効果を検証した。図25に示す窓ガラスを実施例14として準備した。その他の実施例13、15~19は、図25において、ノイズ抑制エレメントの形状を以下の表のように、図18に示す形態に変更した。これらノイズ抑制エレメントにおいては、第1部位の長さが100mm,第2及び第3部位の長さを200mmとした。そして、アンテナの感度を測定するとともに、DC-DCコンバータと対応するような電界を図26の位置から発生させ、そこから受ける車室電界強度も測定した。また、比較例としては、図27に示すノイズ抑制エレメントを有さない窓ガラスを準備した。
【0141】
【表5】
【0142】
まず、ノイズ抑制エレメントの水平に延びるエレメントの数について検討した。結果は、図36及び図37に示すとおりである。図36に示すように、実施例13~15は、いずれもほぼすべての周波数域で、比較例よりも外部からのFM波の受信感度が高いことが分かった。特に、水平に延びるエレメントの数が減少するほど、高周波域での受信感度が高くなることが分かった。
【0143】
一方、図37に示すように、DC-DCコンバータからの車室電界強度は、概ねすべての実施例で、比較例よりも低いが、特に、エレメントの数が少ない実施例13では、全周波数域に亘って、比較例よりも車室電界強度が低くなっている。また、水平に延びるエレメントの数が多くなるほど、低周波域での車室電界強度が低下することが分かる。
【0144】
次に、ノイズ抑制エレメントの水平に延びるエレメントの数を2本にしたときについて検討した。結果は、図38及び図39に示すとおりである。図38に示すように、実施例14、16、17は、いずれもほぼすべての周波数域で、比較例よりも外部からのFM波の受信感度が高いことが分かった。特に、両端の第5部位がない実施例14は、高周波域での受信感度が高くなることが分かった。
【0145】
一方、図39に示すように、DC-DCコンバータからの車室電界強度は、概ね低周波域で、実施例14、16、17が比較例よりも低いが、特に、第5部位のない実施例14では、高周波域以外は、比較例よりも車室電界強度が低くなっている。また、実施例16及び17は、概ね同じ結果であった。すなわち、中央の垂直のエレメントの有無は、感度に大きく影響しないことが分かった。
【0146】
続いて、ノイズ抑制エレメントの水平に延びるエレメントの数を3本にしたときについて検討した。結果は、図40及び図41に示すとおりである。図40に示すように、実施例15、18、19は、いずれもほぼすべての周波数域で、比較例よりも外部からのFM波の受信感度が高いことが分かった。
【0147】
一方、図41に示すように、DC-DCコンバータからの車室電界強度は、概ね低周波域で、実施例15、18、19が比較例よりも低くなっている。また、実施例15及び19は、概ね同じ結果であった。すなわち、第6部位の有無は、感度に大きく影響しないことが分かった。
【符号の説明】
【0148】
1 :リアガラス
2 :FMアンテナ素子
3 :デフォッガ(加熱ヒータ)
31 :水平エレメント(加熱線)
F :中心周波数
S :距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
図12
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