(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105070
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】履物締結システム
(51)【国際特許分類】
A43C 11/00 20060101AFI20220705BHJP
A43B 23/02 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
A43C11/00
A43B23/02 104
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070537
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2020555823の分割
【原出願日】2019-04-01
(31)【優先権主張番号】62/657,267
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514144250
【氏名又は名称】ナイキ イノベイト シーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100139044
【弁理士】
【氏名又は名称】笹野 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】ベル トーマス ジー.
(72)【発明者】
【氏名】スパンクス ジェフリー シー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】履物であって、比較的簡単に足を差し入れたり引き抜いたりすることと、確実な調節を容易にできる履物について開示する。
【解決手段】履物は、ソール構造体と、該ソール構造体に固定されたアッパーと、アッパー及びソール構造体の少なくとも一方に固定された近位端部を有しアッパーから外方へ延びている複数の引張りケーブルと、を備える。ストラップが、複数の引張りケーブルの遠位端部に接続された近位端部を有するとともに、アッパーに取外し可能に固定され得る遠位端部を有し、引張りケーブルを引き締めるように構成されている。ウェブ状スペーサは、複数の引張りケーブルに固定されている。ウェブ状スペーサは、該ウェブ状スペーサによって複数の引張りケーブルの隣り合うものが離間されるように、複数の引張りケーブルの隣り合うものの間に延びている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソール構造体と、
上記ソール構造体に固定されたアッパーと、
上記ソール構造体の内側方の壁に固定され、該履物の中足領域内で上方へ延びている内側方フラップと、
上記アッパーの外側方に沿って上方へ延びている複数の引張りケーブルと、
上記アッパー及び上記内側方フラップのうちの少なくとも一方に固定された複数のループ状ケーブルと、
上記複数の引張りケーブルの遠位端部に接続された近位端部、及び上記引張りケーブルを締め付けるように上記アッパーに取外し可能に固定され得る遠位端部を有するストラップと、
を備え、
上記複数の引張りケーブルは、上記複数の引張りケーブルの近位端部と上記ストラップとの間において上記複数のループ状ケーブルを貫通していることを特徴とする、履物。
【請求項2】
上記複数の引張りケーブルに固定されたウェブ状スペーサであって、該ウェブ状スペーサによって上記複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものが互いに離間されるように、上記複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものの間に延びているウェブ状スペーサをさらに備え、
上記内側方フラップは、上記ウェブ状スペーサの近位端部に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の履物。
【請求項3】
上記内側方フラップは、上記アッパーの外面に押し付けられるように位置し、上記ストラップが上記アッパーに固定されているときに上記複数のループ状ケーブルのうちの少なくともいくつかを覆うことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の履物。
【請求項4】
上記複数の引張りケーブル及び上記複数のループ状ケーブルの両方が上記アッパーを貫通していることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の履物。
【請求項5】
上記内側方フラップは外方の内側方フラップであり、
該履物は、
上記アッパーの内側方に固定され、上記アッパーと上記外方の内側方フラップとの間に配置された内方の内側方フラップをさらに備え、
上記複数のループ状ケーブルは、上記内方の内側方フラップから上記外方の内側方フラップまで延在していることを特徴とする、請求項1に記載の履物。
【請求項6】
上記ソール構造体の外側方に固定され、該履物の中足領域内で上記アッパーの外側方に沿って上方へ延びている外側方フラップをさらに備え、
上記複数の引張りケーブルの各々が上記外側方フラップに固定され、上記外側方フラップの自由端縁から延在していることを特徴とする、請求項1に記載の履物。
【請求項7】
上記外側方フラップは、内層及び外層を有し、
上記外層は開口を有し、
上記複数の引張りケーブルのうちの少なくとも1つが上記開口を横切るように延在し、上記開口の位置で露出していることを特徴とする、請求項6に記載の履物。
【請求項8】
上記内側方フラップが外方の内側方フラップであり、
該履物は、
上記アッパーと上記外方の内側方フラップとの間に配置された内方の内側方フラップであって、足対向面の内側方周辺の内方において上記ソール構造体の足対向面に固定されている、内方の内側方フラップをさらに備え、
上記複数のループ状ケーブルは、上記内方の内側方フラップから上記外方の内側方フラップまで延在することを特徴とする、請求項1に記載の履物。
【請求項9】
上記内側方フラップは、上記ソール構造体から後方かつ上方へ延在する第1の部分、及び上記ソール構造体から前方かつ上方へ延在する第2の部分を有するように構成されており、
第2の部分の少なくとも一部が上記ソール構造体の位置で第1の部分よりも後方にあることを特徴とする、請求項1に記載の履物。
【請求項10】
上記ループ状ケーブルと上記ストラップとの間において上記複数の引張りケーブルに固定されたウェブ状スペーサであって、該ウェブ状スペーサによって上記複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものが互いに離間されるように、上記複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものの間に延びているウェブ状スペーサをさらに備える、請求項1に記載の履物。
【請求項11】
上記ウェブ状スペーサは、上記ストラップの遠位端部が上記アッパーに固定されると上記アッパーの外側方に押し付けられるように着座し、上記複数の引張りケーブルは、上記複数のループ状ケーブルの位置で向きを変えていることを特徴とする、請求項10に記載の履物。
【請求項12】
上記ストラップの遠位端部に固定された第1の固定具部と、
上記アッパーに固定された第2の固定具部と、
をさらに備え、
第1の固定具部は、第2の固定具部に固定できるように構成されていることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の履物。
【請求項13】
上記アッパーは、足受けキャビティを形成する前方セクション及び後方セクションを含み、
上記前方セクションは上記ソール構造体の前足領域に固定されており、
上記後方セクションは、該後方セクションの少なくとも一部が上記前方セクションよりも後方となる位置に、作動可能となるように上記ソール構造体に固定されているとともに、アクセス位置と使用位置との間で変化するように関節運動し、上記後方セクションが上記アクセス位置にあるときに上記足受けキャビティは該履物の踵領域で露出している一方で、上記後方セクションが上記使用位置にあるときに上記後方セクションの一部が上記踵領域の一部を取り囲んでおり、
上記後方セクションが上記使用位置にあるときに、上記ストラップは、上記前方セクションの外側方から上記前方セクションの内側方にかけて上記後方セクションの背面を覆い、上記アッパーの内側方に固定できるように構成されていることを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載の履物。
【請求項14】
上記ストラップは、上記ストラップの内側に沿って離間された複数の固定具部を有し、
上記アッパーは、後方セクション、上記前方セクションの外側方、及び上記前方セクションの内側方に固定された複数の固定具部を有し、
上記ストラップの上記固定具部は、上記アッパーの固定具部に固定できるように構成されていることを特徴とする、請求項13に記載の履物。
【請求項15】
上記アッパーの後方セクションは、該後方セクションの内側に固定具部を有し、
上記後方セクションが上記使用位置にあるときに、上記後方セクションの内側にある固定具部は、上記前方セクションの外面上にある上記固定具部に固定できることを特徴とする、請求項14に記載の履物。
【請求項16】
ソール構造体と、
前方セクション及び後方セクションを含むアッパーであって、
上記前方セクションは、上記ソール構造体の前足領域に固定され、上記ソール構造体の上方に足受けキャビティを画定し、上記後方セクションは、該後方セクションの少なくとも一部が上記前方セクションよりも後方となる位置に、作動可能となるように上記ソール構造体に固定されているとともに、アクセス位置と使用位置との間で変化するように関節運動し、上記後方セクションが上記アクセス位置にあるときに、上記足受けキャビティは該履物の踵領域で露出している一方で、上記後方セクションが上記使用位置にあるときに、上記後方セクションは上記踵領域の一部を取り囲んでいる、アッパーと、
複数の引張りケーブルであって、上記アッパーの前方セクション及び上記ソール構造体のうちの少なくとも一方に固定された近位端部から上記前方セクションに沿って上方へ延びている、複数の引張りケーブルと、
上記複数の引張りケーブルにおける引張りケーブルの遠位端部に接続された近位端部を有するストラップであって、該ストラップは、上記アッパーの第1の側方から第2の側方にかけて上記後方セクションの周りを覆うように構成されている、ストラップと、
上記アッパーの第2の側方に上記ストラップの遠位端部を固定するように構成された固定具と、
上記ストラップの近位端部に隣接し、上記複数の引張りケーブルに固定されたウェブ状スペーサであって、該ウェブ状スペーサによって上記複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものが互いに離間されるように、上記複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものの間に延びているウェブ状スペーサと、
を備える、履物。
【請求項17】
上記アッパー及び上記ソール構造体のうちの少なくとも一方に固定され、上記アッパーの前方セクションから外方へ延びているループ状ケーブルをさらに備え、
上記複数の引張りケーブルは、上記複数の引張りケーブルの近位端部と上記ウェブ状スペーサとの間において上記複数のループ状ケーブルを貫通しており、
上記複数の引張りケーブルは、該複数の引張りケーブルの近位端部から上記アッパーの第1の側方に沿って上方へ延在する一方で、上記複数のループ状ケーブルは、上記アッパーの際2の側から外方へ延在し、
上記ストラップが上記アッパーに固定されているときに、上記ウェブ状スペーサは上記アッパーの第1の側方に押し付けられるように着座し、上記複数の引張りケーブルは、上記複数のループ状ケーブルの位置で向きを変えていることを特徴とする、請求項16に記載の履物。
【請求項18】
上記ストラップは、上記ストラップの内側に沿って離間して配置された複数の固定具部を有し、
上記アッパーは、上記前方セクションの第1の側方と第2の側方に固定された複数の固定具部を有し、
上記ストラップの固定具部は、上記アッパーの固定具部に固定できるように構成されていることを特徴とする、請求項16又は請求項17に記載の履物。
【請求項19】
上記前方セクションの第1の側方が上記前方セクションの外側方である一方で、上記前方セクションの第2の側方が上記前方セクションの内側方であり、
上記前方セクションの後方内側方端縁が内側方インターフェイスの位置で上記後方セクションと接続する一方で、上記前方セクションの後方外側方端縁が外側方インターフェイスの位置で上記後方セクションと接続し、
上記アッパーの複数の固定具部は、前方セクションの内側方固定具部及び後方セクションの内側方固定具部を含み、この両者が上記内側方インターフェイスの境界を画定しており、上記アッパーの複数の固定具部は、前方セクションの外側方固定具部及び後方セクションの外側方固定具部をさらに含み、この両者が上記外側方インターフェイスの境界を画定しており、
上記後方セクションが上記使用位置にあるときに上記ストラップは、上記内側方インターフェイスと上記外側方インターフェイスとを越えることができ、上記ストラップの複数の固定具部は、上記前方セクションの内側方固定具部、上記後方セクションの内側方固定具、上記前方セクションの外側方固定具部、及び上記後方セクションの外側方固定具部に固定されることを特徴とする請求項18に記載の履物。
【請求項20】
上記前方セクションの内側方に固定された少なくとも1つの前方内側方磁気エレメント、及び上記後方セクションの内側方に固定された少なくとも1つの後方内側方磁気エレメントからなる内側方の一式の磁気エレメントと、
上記前方セクションの外側方に固定された少なくとも1つの前方外側方磁気エレメント、及び上記後方セクションの外側方に固定された少なくとも1つの後方外側方磁気エレメントからなる外側方の一式の磁気エレメントと、
をさらに備え、
上記内側方インターフェイスを越えて上記少なくとも1つの後方内側方磁気エレメントに上記少なくとも1つの前方内側方磁気エレメントを磁気カップリングさせることにより、さらには、上記外側方インターフェイスを越えて上記少なくとも1つの後方外側方磁気エレメントに上記少なくとも1つの前方外側方磁気エレメントをカップリングさせることにより、上記使用位置において、上記後方セクションの少なくとも一部が上記前方セクションに固定されることを特徴とする、請求項19に記載の履物。
【請求項21】
上記後方セクションは、後方へ折れ曲がることにより上記使用位置から上記アクセス位置まで関節運動し、
上記後方セクションの前方内側方端縁は、該後方セクションがアクセス位置にあるときよりも使用位置にあるときにおいて上記前方セクションの後方内側方端縁に近くなり、
上記後方セクションの前側外側方端縁は、該後方セクションがアクセス位置にあるときよりも使用位置にあるときにおいて上記前方セクションの後方外側方端縁に近くなることを特徴とする、請求項16又は請求項17に記載の履物。
【請求項22】
上記前方セクションの後方内側方端縁及び後方外側方端縁の全体が、該履物の踵部分に延在することを特徴とする、請求項16~21のいずれかに記載の履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、足を差し入れ易くかつ締め付け易いように構成されたアッパーと締結システムを有する履物に関する。
【0002】
なお、本願は2018年4月13日に出願された米国特許仮出願第62/657,267号明細書を優先権主張の基礎とするものであり、該仮出願の全体が本願の参照となる。
【背景技術】
【0003】
履物は、着用者の足を地面から離すように足の下に位置するソール構造体を含み得る。ソール構造体に取り付けられた履物のアッパーが足を受ける。アッパーは足を受けることができるほど緩くてもソール構造体に足を固定するために足周りにしっかり締まるように、アッパーを足にフィットさせることが締結システムを使って調節され得る。例えば、靴紐システムなどの閉合システムが、アッパー内に足が差し入れられた後に結ばれる靴紐を含み得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、履物を履くときには片手か両手を使って、アッパーの履き口を伸ばし、足を差し入れる間に後部を保持することが要求される。足が差し入れられた後には、靴紐を結ぶことなどによりアッパーがフィットするように調節される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
履物であって、比較的簡単に足を差し入れたり引き抜いたりすることと、確実な調節を容易にできる履物について開示する。本発明の履物は、ソール構造体と、該ソール構造体に固定されたアッパーと、アッパー及びソール構造体のうちの少なくとも一方に固定された近位端部を有する複数の引張り(テンション)ケーブルとを有する。複数の引張りケーブルは、アッパーから外方へ延在する。ストラップが引張りケーブルの遠位端部に接続された近位端部を有する。ストラップの遠位端部は、引張りケーブルを締めるためにアッパーに取外し可能に固定され得る。ウェブ状スペーサは、複数の引張りケーブルに固定される。該ウェブ状スペーサは、複数の引張りケーブルの隣り合うものの間に延在し、それによって複数の引張りケーブルの隣り合うものが互いに離間される。
【0006】
1つ又は複数の実施例において、ウェブ状スペーサは柔軟なポリマ材料からなる。ストラップの遠位端部がアッパーに固定されているときに、ウェブ状スペーサは、アッパーの第1の側方においてアッパーの外面に対して配置され得る。ウェブ状スペーサは、アッパーの外面に対して配置されたときに外面の形状に整合するほどに比較的細くて平らであり得る。アッパーにストラップが固定されると、ウェブ状スペーサがアッパーの第1の側方に着座することにより、ウェブ状スペーサは、第1の側方に力を受けて引張りケーブルが摩耗することを防ぐ(特には、引張りケーブルが第1の側方に配置されていて、ウェブ状スペーサに接続されていない場合と比較して)ことに寄与し得る。
【0007】
1つ又は複数の実施例において、ウェブ状スペーサは、近位端縁から遠位端縁まで先細に形成されており、複数の引張りケーブルの隣り合うものの間の隙間は、ウェブ状スペーサに沿ってストラップに近くなるほど狭くなっている。ストラップ自体の幅は、複数の引張りケーブルの最前列のものから最後列のものまでの近位端部における距離よりも狭くなり得る。複数の引張りケーブルの隣り合うものの間の隙間は、これらの近位端部から遠位端部に向かって次第に狭くなっている。
【0008】
1つ又は複数の実施例において、複数のループ状ケーブルが、アッパー及びソール構造体のうちの少なくとも一方に固定されており、アッパーから外方へ延在する。複数の引張りケーブルは、これらの引張りケーブルの近位端部とウェブ状スペーサとの間において複数のループ状ケーブルを貫通する。例えば、複数の引張りケーブルがアッパーの第1の側方に沿って複数の引張りケーブルの近位端部から上方へ延在し得る一方で、複数のループ状ケーブルは、アッパーの第2の側方で上方へ延在し得る。ストラップの遠位端部がアッパーに固定されると、ウェブ状スペーサがアッパーの外側方に着座する一方で、複数の引張りケーブルは、複数のループ状ケーブルの位置で向きを変えている。
【0009】
後方セクションの周りでストラップを一回引いて、該ストラップの遠位端部をアッパーの前方セクションに押し付けるだけで、該ストラップはアッパーに係止する。本発明の履物は、靴紐を締めたり結んだりすることを必要とせず、不器用な人でも素早く履くことができるという利点があり得る。さらに足を差し入れたり引き抜いたりし易くするために、ストラップ、複数の引張りケーブル、及びウェブ状スペーサを含む締結システムが、足を抜き差し易くするために関節運動するアッパーとともに使用され得る。例えば、1つ又は複数の実施例において、アッパーは、前方セクションと後方セクションを含む。前方セクションは、ソール構造体の前足領域に固定されている。後方セクションは、該後方セクションの少なくとも一部が前方セクションよりも後方となる位置に、作動可能となるようにソール構造体に固定されている。後方セクションは、アクセス位置と使用位置との間で変化するように関節運動する。後方セクションは、使用位置にあるときよりもアクセス位置にあるときに、足受けキャビティは履物の踵領域内で露出する(すなわち、より大きく開く)一方で、後方セクションが使用位置にあるときに、該後方セクションは、踵領域の一部を取り囲む。ストラップは、前方セクションの第1の側方から第2の側方にかけて後方セクションの背面を覆うように延在し、後方セクションが使用位置にあるときに前方セクションの第2の側方に固定できるように構成されている。
【0010】
ストラップがアッパーに取外し可能に固定されている場合、後方セクションを使用位置に保持することを支援するために協働する固定具部を該ストラップとアッパーが有し得る。例えば、第1の固定具部がストラップの遠位端部に固定される一方で、第2の固定具部がアッパーの前方セクションの第2の側方に固定される。第1の固定具部は、第2の固定具部に固定できるように構成されている。
【0011】
1つ又は複数の実施例において、ストラップは、該ストラップの内側に沿って互いに離間された複数の固定具部を有する一方で、アッパーは、前方セクションの第1の側方及び第2の側方に固定された固定具部であって、いくつかの実施例において後方セクションにも固定されている場合もある複数の固定具部を有する。ストラップの固定具部は、アッパーの固定具部に固定できるように構成されている。ストラップの材料が、固定具部と比較して弾力性を有する場合、該ストラップは、該ストラップに沿って複数の固定具部を互いに離間させることによって隣り合う固定具部の間において伸張することができ、ひいては、該ストラップをアッパー上に多様に位置決めして固定状態に保持させることが可能となる。
【0012】
1つ又は複数の実施例において、前方セクションの後方内側方端縁が、内側方インターフェイスの位置で後方セクションと接続する一方で、前方セクションの後方外側方端縁が外側方インターフェイスの位置で後方セクションと接続しており、アッパーの複数の固定具部が、前方セクションの内側方固定具部と後方セクションの内側方固定具部を含み、この両者によって内側方インターフェイスの境界が画定されている。アッパーの固定具部は、前方セクションの外側方固定具部と後方セクションの外側方固定具部も含み、この両者によって外側方インターフェイスの境界が画定されている。後方セクションが使用位置にあるときに、ストラップは内側方インターフェイスと外側方インターフェイスを越えて、該ストラップの複数の固定具部が、前方セクションの内側方固定具部、後方セクションの内側方固定具部、前方セクションの外側方固定具部及び後方セクションの外側方固定具部に固定されている。他の実施例において、単一の固定具部は後方セクションの内側方から外側方まで延在している。
【0013】
後方セクションの関節部分が使用位置まで関節運動し、及び/又は後方セクションを使用位置に維持することを支援するために追加的な特徴部が含まれる場合もある。1つ又は複数の実施例において、磁気カップリングが用いられる場合もある。詳しくは、履物が、内側方の一式の磁気エレメント(磁気素子)と外側方の一式の磁気エレメントをさらに含み得る。内側方の一式の磁気エレメントは、前方セクションの内側方に固定された少なくとも1つの前方内側方磁気エレメントと、後方セクションの内側方に固定された少なくとも1つの後方内側方磁気エレメントを含む。外側方の一式の磁気エレメントは、前方セクションの外側方に固定された少なくとも1つの前方外側方磁気エレメントと、後方セクションの外側方に固定された少なくとも1つの後方外側方磁気エレメントを含む。少なくとも1つの前方内側方磁気エレメントが内側方インターフェイスを越えて少なくとも1つの後方内側方磁気エレメントに磁気カップリングすることにより、及び少なくとも1つの前方外側方磁気エレメントが外側方インターフェイスを越えて少なくとも1つの後方外側方磁気エレメントに磁気カップリングすることにより、後方セクションの少なくとも一部が、使用位置において前方セクションに固定されている。
【0014】
代替的に、1つ又は複数の実施例において、磁気エレメントの代わりに又は磁気エレメントに加えて、後方セクションは、後方へ折れ曲がることにより関節運動(使用位置からアクセス位置に変化するような関節運動など)し得る。このような実施例において、後方セクションがアクセス位置にあるときよりも使用位置にあるときにおいて、後方セクションの前方内側方端縁は、前方セクションの後方内側方端縁に近づく一方で、後方セクションがアクセス位置にあるときよりも使用位置にあるときにおいて、後方セクションの前方外側方端縁は、前方セクションの後方外側方端縁に近づく。後方セクションの使用位置は、足が足受けキャビティに挿入される際の足首の周囲の長さに応じて前方セクションに対しては少しだけ前方か後方にずれることがあるが、すべての場合において、アクセス位置よりも前方にある。例えば、足首周りが比較的小さい場合には、後方セクションが使用位置にあるときに該後方セクションの前方内側方端縁は前方セクションの後方内側方端縁の前方かつ内方にある一方で、後方セクションが使用位置にあるときに該後方セクションの前方外側方端縁は前方セクションの後方外側方端縁の前方かつ内方にある。換言すると、後方セクションは、アッパーの内側方と外側方に対する靴の舌革と同様に、前方セクションの少し内方の位置に折れ曲がる。足首周りが比較的大きい場合には、後方セクションが使用位置にあるときに該後方セクションの前方内側方端縁は前方セクションの後方内側方端縁の僅かに後方となるように隣接する一方で、後方セクションが使用位置にあるときに該後方セクションの前方外側方端縁は前方セクションの後方外側方端縁の僅かに後方となるように隣接する。
【0015】
前方セクションは、足を差し入れるときに足の力を受けて足受けキャビティとの整列が少しずれたときにも、該前方セクションが崩れてしまうことを防ぐように支援するように構成されている。例えば、1つ又は複数の実施例において、前方セクションの後方内側方端縁と後方外側方端縁の全体が踵部分内でほぼ垂直に延びているので、内側方インターフェイスと外側方インターフェイスがほぼ垂直に延びている。この構成を有することで、足の差し入れ位置がずれたときにも(前方セクションの前方へ後方内側方端縁と後方外側方端縁が傾斜している場合と比較して)前方セクションがつぶれて崩壊しないように大きく抵抗することができる。加えて、インターフェイスに隣接する外側方及び内側方の一式の磁気エレメントを有する実施例において、これらの磁気エレメント、及びこれらの磁気エレメント用の種々のハウジングは、後方セクションが使用位置にあるとき特には内側方インターフェイスと外側方インターフェイスの全体が踵部分内においてほぼ垂直に延びているときに、足の外側方をいっそう支持することを支援することができるものである。
【0016】
1つ又は複数の実施例において、履物は、ソール構造体と、前方セクション及び後方セクションを含むアッパーと、を備える。前方セクションは、ソール構造体の前足領域に固定されており、その一部がソール構造体の上方に足受けキャビティを画定している。後方セクションは、該後方セクションの少なくとも一部が前方セクションよりも後方となる位置に、作動可能となるようにソール構造体に固定されているとともに、アクセス位置と使用位置との間で変化するように関節運動する。後方セクションがアクセス位置にあるときに、足受けキャビティは履物の踵領域において露出する一方で、後方セクションが使用位置にあるときに後方セクションの少なくとも一部が踵領域を取り囲む。複数の引張りケーブルは、アッパーの前方セクションとソール構造体のうちの少なくとも一方に固定された近位端部から前方セクションに沿って上方へ延在する。ストラップの近位端部は、引張りケーブルの遠位端部に接続されている。ストラップは、アッパーの第1の側方からアッパーの第2の側方にかけて後方セクションの周りを覆うように構成されている。固定具が、アッパーの第2の側方にストラップの遠位端部を固定するように構成されている。ウェブ状スペーサが、ストラップの近位端部に隣接しかつ複数の引張りケーブルに固定されている。ウェブ状スペーサは、該ウェブ状スペーサによって複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものが互いに離間されるように、複数の引張りケーブルの隣り合うものの間に延在する。
【0017】
1つ又は複数の実施例において、履物は、ソール構造体と、該ソール構造体に固定されたアッパーと、該ソール構造体の内側方の壁に固定され履物の中足領域内で上方へ延びている内側方フラップと、を備える。履物は、複数の引張りケーブルと、複数のループ状のケーブルと、ストラップと、を含む。引張りケーブルは、アッパーの外側方に沿って上方へ延在する。ループ状のケーブルは、アッパー及び内側方フラップのうちの少なくとも一方に固定されている。ストラップの近位端部は、引張りケーブルの遠位端部に接続されている。ストラップの遠位端部が、引張りケーブルを引き締めるようにアッパーに取外し可能に固定され得る。引張りケーブルは、該引張りケーブルの近位端部とストラップとの間にあるループ状ケーブルを貫通している。
【0018】
1つ又は複数の実施例において、履物は、複数の引張りケーブルに固定されたウェブ状スペーサを含み、該ウェブ状スペーサは、該ウェブ状スペーサによって複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものが互いに離間されるように、複数の引張りケーブルの隣り合うものの間に延びている。内側方フラップは、ウェブ状スペーサの近位端部に固定され得る。ストラップがアッパーに固定されると、内側方フラップは、アッパーの外面に押し付けられるように位置し、複数のループ状ケーブルのうちの少なくともいくつかを覆う。複数の引張りケーブルと複数のループ状ケーブルの両方がアッパーを貫通している場合もある。
【0019】
1つ又は複数の実施例において、内側方フラップは、ソール構造体から後方かつ上方へ延在する第1の部分と、ソール構造体から前方かつ下方へ延在する第2の部分とを有するように構成されている。第2の部分の少なくとも一部が、ソール構造体において第1の部分の後方にある。
【0020】
1つ又は複数の実施例において、その内側方フラップは外方の内側方フラップである一方で、内方の内側方フラップがアッパーの内側方に固定され、アッパーと外方の内側方フラップの間に配置されている。ループ状ケーブルは、内方の内側方フラップから外方の内側方フラップまで延在する。
【0021】
1つ又は複数の実施例においては、その内側方フラップは外方の内側方フラップである一方で、内方の内側方フラップがアッパーと外方の内側方フラップとの間に配置されている。内方の内側方フラップは、足対向面(足に対向する面)の内側方の周縁の内方寄りにソール構造体の足対向面に固定されている。ループ状ケーブルは、内方の内側方フラップから外方の内側方フラップまで延在する。
【0022】
1つ又は複数の実施例において、外側方フラップは、ソール構造体の外側方に固定され、履物の中足領域内でアッパーの外側方に沿って上方へ延在する。複数の引張りケーブルの各々は、外側方フラップに固定され、外側方フラップの自由端から延在し得る。
【0023】
1つ又は複数の実施例において、外側方フラップは内層と外層を有する。外層は開口を有し、複数の引張りケーブルのうちの少なくとも1つが該開口の位置で露出するように横切っている。
【0024】
1つ又は複数の実施例において、ウェブ状スペーサは、ループ状ケーブルとストラップとの間において複数の引張りケーブルに固定されている。ウェブ状スペーサは、該ウェブ状スペーサによって複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものが互いに離間されるように、複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものの間に延在する。ストラップの遠位端部がアッパーに固定されると、ウェブ状スペーサが該アッパーの外側方に押し付けられる位置に着座する一方で、複数の引張りケーブルは複数のループ状ケーブルの位置で向きを変えている。
【0025】
1つ又は複数の実施例において、ストラップの遠位端部に第1の固定具部が固定されている一方で、アッパーに第2の固定具部が固定されている。第1の固定具部は、第2の固定具部に固定されるように構成されている。
【0026】
1つ又は複数の実施例において、アッパーは、足受けキャビティを形成する前方セクション及び後方セクションを含む。前方セクションは、ソール構造体の少なくとも前足領域に固定されている。後方セクションは、該後方セクションの少なくとも一部が前方セクションよりも後方となる位置に、作動可能となるようにソール構造体に固定されており、アクセス位置と使用位置との間で変化するように関節運動する。後方セクションがアクセス位置にあるときに、足受けキャビティが履物の踵領域内で露出する一方で、後方セクションが使用位置にあるときに、後方セクションの一部が踵領域を取り囲む。ストラップは、前方セクションの外側方から前方セクションの内側方まで亘る後方セクションの背面を覆い、後方セクションが使用位置にあるときに、アッパーの内側方に固定できるように構成されている。
【0027】
1つ又は複数の実施例において、ストラップは、該ストラップの内側に沿って互いに離間した複数の固定具部を有する。アッパーは、後方セクション、前方セクションの外側方、及び前方セクションの内側方に固定された複数の固定具部を有する。ストラップの固定具部は、アッパーの固定具部に固定できるように構成されている。
【0028】
1つ又は複数の実施例において、アッパーの後方セクションは、該後方セクションの内側に固定具部を有する。後方セクションの内側にある固定具部は、該後方セクションが使用位置にあるときに前方セクションの外面上の固定具部に固定される。
【0029】
本教示の上記の特徴及び利点並びに他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しつつ本発明を実施するための以下の詳細な説明から容易に明らかとなろう。
【0030】
以下の様々な実施形態の説明を明瞭なものとするために、本明細書において様々な語句が定義される。別段の記載のない限り、それらの定義は、本明細書(特許請求の範囲を含む)の全体に適用され得る。
【0031】
「履物」、「製造における履物」、及び「靴」との語句は、機械と製造物の両方に関するものとして考慮され得る。本明細書において、組立て済みの完成品の履物(例えば、靴、サンダル、ブーツなど)、並びに、完成品の履物にする最終的な組立て前の履物の別個の構成要素(ミッドソール、アウトソール、アッパー構成要素など)のことを単数又は複数の履物と呼ぶことがあり、単数と複数が互いに入れ替わることもある。
【0032】
「1つ」、「1つの」、「その」、「少なくとも1つの」、及び「1つ又は複数の」との語句は交換可能に用いられ、少なくとも1つの物品が存在することを示している。文章中で別段の断わりのない限り、複数のその物品が存在し得る。文章中(添付の特許請求の範囲を含む)で明確に別段の記載がない限り、この詳細な説明のパラメータ(例えば、量や条件)の数値のいずれもが、その数値の前に実際に「約」の記載がなくとも、すべての事項において「約」との語句によって修飾されるべきものと理解されたい。「約」が意味することは、言及された数値に若干の不正確性(正確な値に達するまでいくらかのアプローチを有する、その値にかなり近いこと)を許容することである。「約」との語句で与えられる不正確性が、当技術分野において別段の理解をされるのではない場合、本明細書において使用される「約」は、そのようなパラメータを使って通常の測定方法から生じ得るバリエーションが少なくともあることを示している。加えて、範囲の開示については、その範囲内のすべての値と、その範囲内においてさらに分断された範囲を具体的に開示しているものとして理解されたい。言及したすべての文献の全体が本願の参照となる。
【0033】
「備える」、「含む」、及び「有する」との語句には、包含している意味合いがあり、従って、言及された特徴部、ステップ、オペレーション、エレメントないし構成要素が存在することを特定しているが、1つ又は複数の他の特徴部、ステップ、オペレーション、エレメントないし構成要素が存在することつまり追加されることを除外するものではない。実施可能な追加的又は代替的なステップが採用され得る場合、ステップ、プロセス、及びオペレーションの順序は変更され得る。本明細書において使用される「又は」との語句は、関連する物品として挙げられたもののうちの1つを含む場合もあれば、すべての組合せを含む場合もある。「どの」との語句は、挙げられた物品の「うちの任意の1つ」を含む、挙げられた物品の種々の可能な組合せを含むことを意味するものと理解されたい。「いずれの」との語句は、引用された請求項の「うちの任意の1つ」を含む、添付の特許請求の範囲に記載の引用された請求項の種々の可能な組合せを含むものと理解されたい。
【0034】
この発明の詳細な説明において、一貫性と利便性を与えるために、図示された実施例に対応するように方向を示す形容詞が使われているが、当業者であれば、特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲に限定を加えることなく、図面に関して、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「上面」、「底面」等の語句が説明のために使用され得ることを理解されよう。
【0035】
この発明の詳細な説明及び特許請求の範囲において使用される「長手方向」との語句は、構成要素の長さが延びている方向を示している。例えば、靴の長手方向は、前足領域と靴の踵領域との間に延びている。「前方」ないし「前部」との語句は、概ね踵領域から前足領域へ向かう方向を示すために使用され、「後方」ないし「後部」との語句は、反対の方向すなわち前足領域から踵領域へ向かう方向を示すために使用されている。いくつかの場合、長手方向軸とともに、その軸に沿った前方への長手方向及び後方への長手方向を使って、構成要素が特定され得る。長手方向ないし軸もまた前後方向ないし軸として示される。
【0036】
この発明の詳細な説明及び特許請求の範囲において使用される「横断方向」との語句は、構成要素の幅方向に延びる方向を示している。例えば、靴の横断方向は、靴の外側方と内側方との間に延びている。横断方向又は横断軸に沿う方向のことを、外側方への方向ないし軸に沿う方向、中外側方への方向ないし軸に沿う方向ともいう。
【0037】
この発明の詳細な説明及び特許請求の範囲において使用される「垂直方向」との語句は、外側方への方向と長手方向のいずれともほぼ直交する方向のことを示す。例えば、靴が地面に平らに置かれた場合に、垂直方向は地面から上方へ延び得る。これらの方向を示す形容詞のうちのいくつかは、靴の構成要素にも使われ得ることが理解されよう。「上方」ないし「上方へ」との語句は、足の甲、アッパーの締結領域及び/又は履き口を含み得る構成要素の天部を指し示す垂直方向のことを示す。「下方」ないし「下方へ」との語句は、垂直方向に沿って上方への方向とは反対の方向すなわち構成要素の底面へ向かう方向のことであり、履物のソール構造体の底面へ向かう方向を概ね指し示している。
【0038】
靴などの履物の「内方」とは、その靴を着用者が履いているときにその着用者の足によって占有される空間の部分を示す。また、構成要素の「内側」とは、組立て完了後の履物において履物の構成要素の内方を指向している(又は指向する)構成要素の側ないし面のことを示す。構成要素の「外方」ないし「外側」とは、組立て完了後の靴における靴の内方から離れる方向を指向している(又は指向する)構成要素の側ないし面のことを示す。いくつかの場合、他の構成要素が、組立て済みの履物における構成要素の内側と内方との間にあり得る。さらに、「内方」及び「内方向」との語句は、靴などの履物の構成要素の内方へ向かう方向のことを示し、「外方」及び「外方向」との語句は、靴などの履物の構成要素の外方へ向かう方向のことを示し得る。加えて、「近位」との語句は、ある履物構成要素の中心部に近づく方向のことを示し、或いは履物の使用者が履物に足を差し入れて履いているときにおいては足に近づく方向のことを示す。同様に、「遠位」との語句は、その履物構成要素の中心から離れる方向のことを示し、或いは履物の使用者が履物に足を差し入れているときにおいて足から離れる方向を示す。つまり、遠位と近位との語句は、相対的な空間上の位置にあることを説明するためにほぼ反対語として用いられる語句である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】履物の内側方を概略的に示す図であって、アッパーの後方セクションが使用位置にあり、ストラップの遠位端部が該アッパーおよびその後方セクションまで延びている。
【
図2】
図1に示した履物の外側方を概略的に示す図。
【
図3】
図1に示した履物の前方を概略的に示す斜視図。
【
図4】
図1に示した履物の外側方を概略的に示す斜視図であり、ストラップの遠位端部が非固定位置にある一方で、アッパーの後方セクションがアクセス位置にある。
【
図5】本教示の代替的な実施例における履物の内側方を概略的に示す斜視図であって、使用位置においてストラップの遠位端部がアッパーの後方セクションに固定されている。
【
図6】
図5に示した履物の外側方を概略的に示す図。
【
図7】
図5に示した履物の内側方を概略的に示す斜視図であって、非固定位置にあるストラップの一部が示されているとともに、使用位置にあるアッパーの後方セクションが示されている。
【
図8】
図5に示した履物を概略的に示す前方斜視図。
【
図9】
図5に示した履物の外側方を概略的に示す斜視図であって、ストラップの遠位端部が非固定位置にあり、アッパーの後方セクションがアクセス位置にある。
【
図10】
図5に示した履物を概略的に示す背面図であって、ストラップが非固定位置にあり、後方セクションがアクセス位置にある。
【
図11】
図5に示した履物を概略的に示す背面図であって、ストラップが非固定位置にある一方で、後方セクションが使用位置にある。
【
図12】
図5に示した履物を概略的に示す背面図であって、ストラップが固定位置にあり、後方セクションが使用位置にある。
【
図13】本教示の代替的な実施例における履物の内側方を概略的に示す図であって、ストラップの遠位端部が、使用位置にあるアッパーの後方セクションに固定されている。
【
図14】本教示の代替的な実施例における履物を概略的に示す背面図であって、ストラップが非固定位置にある一方で、後方セクションが使用位置にある。
【
図15】
図14に示した履物を概略的に示す背面図であって、ストラップが固定位置にあり、後方セクションが使用位置にある。
【
図16】本教示の代替的な実施例における内側方フラップを有する履物の内側方を概略的に示す図であって、ストラップの遠位端部がアッパーの前方セクションに固定されている一方で、アッパーの後方セクションが使用位置にある。
【
図19】
図16に示した履物の外側方を概略的に示す斜視図であって、ストラップの遠位端部が非固定位置にあり、アッパーの後方セクションがアクセス位置にある。
【
図20】
図18に示した履物について
図18中の線20―20に沿って切り出される断面を概略的に示す図。
【
図21】本教示の代替的な実施例における履物を概略的に示す斜視図であって、ストラップの遠位端部がアッパーに固定されている。
【
図22】
図21に示した履物について
図21中の線22―22に沿って切り出される断面を概略的に示す図。
【
図24】本教示の代替的な実施例における履物を概略的に示す斜視図であって、ストラップの遠位端部がアッパーの後方セクションに固定されており、アッパーの後方セクションが使用位置にあり、アッパーの前方セクションに固定されている。
【
図25】
図24に示した履物の外側方を概略的に示す斜視図であって、ストラップが非固定位置にある一方で、後方セクションがアクセス位置にある。
【
図26】
図24に示した履物について
図24中の線26-26に沿って切り出される断面を概略的に示す図であって、ストラップが僅かに持ち上げられている。
【発明を実施するための形態】
【0040】
各図を通じて、同様の参照符号は同様の構成要素を示している。足用開口部を広げるために手を使って履き口領域を引き延ばすことが必要なだけでなく、靴紐を締て結んで固定することが必要な従来の履物と比べて、手先の器用さをそれほど必要とせずに、素早く比較的簡単に足の差し入れと固定を可能にする特徴部を有する履物の様々な実施例を示す。具体的には
図1に示されるように、履物10が、ソール構造体12と、該ソール構造体12に固定されたアッパー16とを有する。このアッパー16によって形成されている足受けキャビティ18は、この足受けキャビティ18の開口を広げるために手を使ってアッパーを引っ張らなくても、足20(
図4において破線で示されている)を受けるように構成されている。アッパー16は、靴紐の調節も靴紐を結ぶことも必要としない締結システム22を使って、足20の周りに締めて固定される。
【0041】
本明細書において説明される履物10は、バスケットボールなどのスポーツ用に構成された運動靴として描かれるが、本発明の履物10及び締結システム22は、バスケットボールシューズ又は他のスポーツシューズに限定されるものではない。本発明の履物10の締結システム22及び他の特徴部は、ランニング、テニス、フットボール、サッカーなどの様々な他のスポーツ用の履物にも使用され得るが、これらの履物に限定されない。履物の締結システム22及び他の特徴部は、レジャー用の靴、ドレスシューズ、作業靴、サンダル、スリッパ、ブーツ、又は履物の他のカテゴリに含まれる靴にも適用され得る。
【0042】
図1に示されるように、履物10は、前足領域24、中足領域26、踵領域28、及び足首領域31に分断され得るものであり、各領域はそれぞれ、ソール構造体12及びアッパー16並びに該アッパー16によって画定される足首領域31の前足領域、中足領域及び踵領域でもある。前足領域24は概して、つま先と、中足骨を指骨に繋いでいる関節とに対応する履物10の部分を含む。中足領域26は概して、土踏まずの領域と足の甲に対応する履物10の部分を含み、踵領域28は、踵骨を含む足の後部に対応する。足首領域31は足首(踝)の位置に対応する。前足領域24、中足領域26、踵領域28、及び足首領域31とは、履物10の厳密な領域を規定することを意図するものではなく、以下の説明をし易くするために履物10のおよその領域を示すことを意図するものである。
【0043】
ソール構造体12は、ミッドソール32とアウトソール34を含む。ミッドソール32は、歩くとき、走るとき又は他の歩行活動の際に足20と地面との間で圧縮されたときに、地面からの反作用の力を緩和する(すなわち、クッション機能をもたらす)圧縮可能なポリマ発泡体エレメント(例えば、ポリウレタン又はエチルビニルアセテートの発泡体)から形成され得る。さらなる構成において、ミッドソール32は、流体の充填されたチャンバ、プレート、減速材又は他のエレメントを組み込んでいる場合があり、これらは、抗力を緩和し、安定性を向上させ、或いは足20の運動に影響する。ミッドソール32は、単一のワンピース構成のミッドソールである場合もあれば、複数の構成要素がユニットとして統合されたものである場合もある。いくつかの実施例において、ミッドソール32は、アウトソール34に統合されて単一のソールとされ得る。アウトソール34は、ワンピースからなる場合もあれば、いくつかのアウトソール構成要素からなる場合もあり、静止摩擦力を呈するようにテクスチャード加工され更には/或いはミッドソール32に固定されたクリートなどの静止摩擦エレメントを含む耐摩耗性ゴムから形成され得る。
【0044】
アッパー16は、前方セクション16Aと、別個の後方セクション16Bとを含む。
図1~4に含まれる実施例において、セクション16A,16Bは協働して、足が差し入れられた後に後方セクション16Bがアクセス位置(
図4)から使用位置(
図1)まで動くことを可能とするように構成されている。この動きは手を使うことなく実行される場合もあれば、手を使って実行される場合もある。例えば、着用者が他方の足を使って後方セクション16Bを使用位置まで動かすこともできる。本明細書において説明されるように、履物10のこれらの特徴及び他の特徴があることにより、アクセス位置において、手を使わず履物10へ足を差し入れることが容易となる。使用位置を維持することは、前方セクション16Aに後方セクション16Bを固定する締結システム22のストラップ40を使ってなされる。
【0045】
履物10の足受けキャビティ18内に足20が置かれると、その足20はミッドソール32の足対向面上に支持される。ミッドソール32の足対向面は、アッパー16の低位領域に固定されたストローベル(図示せず)によって覆われ得る。また、インソール(図示せず)が、ストローベル上に着座し得る一方で、ストローベルのない実施例においては直接ソール構造体12上に着座する場合もあり、その場合に足20は、ソール構造体12とインソールの両方に支持されることになる。
【0046】
履物10は、(
図2に示した)外側方42(第1の側方ともいう)と、(
図1に示した)内側方44(第2の側方ともいう)とを有する。外側方42と内側方44は、前足領域24、中足領域26、踵領域28及び足首領域31の各々に亘るように延在し、履物10の互いに対向する側にある。つまり各々は互いに、当業者によって理解され得るように、履物10の長手方向に延びる中央線に関して対称となる側である。そのように、内側方44は外側方42に対して反対側にあるものとして説明する。
【0047】
アッパー16は、皮革、織物、ポリマ、綿、発泡体、及び合成物等の様々な材料からなり得る。前方セクション16Aは本体30を含み、この本体30は、足を差し入れることを助け、履き心地を良くするために、後方セクション16Bの1つ又は複数の材料と比べて大きな弾力性若しくは優れた通気性を有する材料からなり、又は優れた弾力性と通気性を併せ持つ材料からなる。後方セクション16Bは、踵領域28に安定性をもたらすように前方セクション16Aの本体30よりも硬い1つ又は複数の材料からなり得る。例えば、前方セクション16Aは、弾力性を呈するポリマ材料からなる場合もあれば、網状の構成、編み物(例えば、縦編み)の構成、又は織物の構成を有する場合もある。
【0048】
本明細書において説明されるように、締結システム22は、ストラップ40と、ケーブル及び固定具とを含む。ストラップ40の遠位端部52は、前方セクション16Aへ向けて押されるだけで固定具54を介してアッパー16の前方セクション16Aの内側方44に取外し可能に固定され、アッパー16から離れる方向へ剥がされるだけで、前方セクション16Aの内側方44から取り外される。この締結システム22は、後方セクション16Bがアクセス位置にあるときに、足20の周りに前方セクション16Aの本体30を締めることを調節可能にして確実にフィットさせることができ、これにより、アッパー16の下に横たわるソール構造体12に対して足20を固定させることができる。
図4及び
図9に示されるように、ストラップ40がアッパー16から外方へ延びるように保持されているときに、ストラップの遠位端部52は、該ストラップ40の近位端部72よりもアッパー16から離れている。本明細書において、構成要素の「端部」とは、構成要素の終端縁に限定されるものではなく、終端部付近にある構成要素の部分も含む。
【0049】
図2~
図4を参照すると、締結システム22は、第1の複数の引張りケーブル56も含む。引張りケーブル56の近位端部58は、バイト(噛合)ライン50付近の外側方42に、前方セクション16A及びソール構造体12のうちの少なくとも一方に固定されている。複数の引張りケーブル56の近位端部58付近は、前方セクション16Aの本体30内か前方セクション16Aの外面60の少なくとも内面方寄りのいずれかに設けられており、ついには、これらの引張りケーブル56は前方セクション16Aの孔62の位置でアッパー16から表面に現れ、この位置から、該引張りケーブル56は前方セクション16Aの外へ延びている。例えば、引張りケーブル56は、前方セクション16Aの内層と外層との間に配置されている場合もあれば、これらを貫通している場合もあれば、前方セクション16A内に一体に織り込まれ又は固定されたチャネル内に配置されている場合もある。近位端部58が固定されるとともに複数の孔62が互いに離間して配置されることにより、近位端部58と孔62との間において引張りケーブル56の隣り合うものの部分どうしが互いにオーバラップすることなく、互いに離間されることが確保される。
【0050】
図1及び
図3に最もよく示されているように、締結システム22は、複数のループ状ケーブル64をさらに含む。ループ状ケーブル64の近位端部66は、内側方44のバイトライン50付近において、アッパー16の前方セクション16A及びソール構造体12のうちの少なくとも一方に固定されている。複数の引張りケーブル56は近位端部58から、前方セクション16Aの外側方42に沿って上方へ延びており、複数のループ状ケーブル64は前方セクション16Aの内側方44において、近位端部66から上方へ延びている。
【0051】
引張りケーブル56と同様に、ループ状ケーブル64の近位端部66付近が、前方セクション16A内か前方セクション16Aの外面60の少なくとも内面方寄りに設けられており、ついには、これらのループ状ケーブル64は前方セクション16Aの孔68の位置でアッパー16から表面に現れ、この位置で、ループ状ケーブル64のループ状端部70が前方セクション16Aの外方へ延びている(
図3に最もよく示されている)。ループ状ケーブル64は、前方セクション16Aの本体30の内層と外層との間に配置されている場合もあれば、前方セクション16A内に一体に織り込まれ或いは固定されたチャネル内に配置されている場合もある。近位端部66が固定され複数の孔68が離間して配置されることにより、近位端部66と孔68との間においてループ状ケーブル64の隣り合うものの部分どうしが互いにオーバラップすることなく、互いに離間して配置されることが確保される。ループ状端部70は、ループ状ケーブル64の一連のループからなり、該ケーブルの2つの終端部が近位端部66の位置にある。代替的に、ループ状端部70は、ケーブル64の2つの部分を互いに縫い合わせ又は結び付けてループを形成することにより実現される場合もあれば、ケーブル64の端部に孔を形成する種々の手段により実現される場合もある。
【0052】
本明細書において使用される、引張りケーブル56、ループ状ケーブル64などの「ケーブル」とは、柔軟で、細長く伸張性のあるエレメントのことであり、引張り荷重に耐える能力のある構造物のことであり、靴紐、ストランド、ワイヤ、コード、糸又は紐その他を含むがこれらに限定されない。ケーブル56,64は、(a)特定の方向ないし位置にアッパー16が伸びてしまわないように抵抗し、(b)ソール構造体12及びアッパー16に対して足が動き過ぎないように制限し、(c)ソール構造体12及びアッパー16に対して足が適正に位置決めされたままにし、(d)力の集中する位置を補強する、ように配置され得る。非限定的な実施例において、ケーブル56,64の適切な材料は、レーヨン、ポリアミド、ポリエステル、アクリル系ポリマ、絹、綿、カーボン(炭素)、ガラス、アラミド(例えば、パラアラミド繊維及びメタアラミド繊維)、超高分子量のポリエチレン、液晶ポリマ、銅、アルミニウム又はスチールから形成された様々なフィラメント、並びに繊維、編み糸、糸又はロープを含む。
【0053】
図3を引き続き参照すると、複数の引張りケーブル56は、該複数の引張りケーブル56の近位端部58と、ストラップ40の近位端部72に固定されたケーブル56の遠位端部71(
図2及び
図4に示されている)との間において、複数のループ状ケーブル64を貫通している。
図1に示されるように、ストラップ40の遠位端部52が前方セクション16Aに固定されている場合に、複数の引張りケーブル56は、複数のループ状ケーブル64の位置で向きを変えており、これらの起点(起源)である外側方42へ向かって戻るようにして重なる。
【0054】
複数の引張りケーブル56は、近位端部58から一緒に経路を辿って同一の孔62を通り、同じループ状ケーブル64を貫通している。例えば、
図3に最もよく示されているように、2本の引張りケーブル56(
図3に参照符号56A,56Bとして示されている)は、近位端部58から孔62まで互いに接触しつつ平行に延びており、孔62から表面に現れている。換言すれば、一対の引張りケーブル56が、各孔62から外へ延在し、本明細書において説明されるように、この一対は一緒に経路を辿るものである。一対で各孔62を貫通していることにより、さらに大きな張力が与えられ、調節時にケーブル56がループ状ケーブル64内を摺動するときに生じ得る種々の摩擦ないし摩耗が一対のケーブル56の両方の面上に分散される。本明細書において使用される、引張りケーブルの「隣り合うもの」とは、隣り合う孔62から延出する引張りケーブル56、又は隣り合う孔68から延出するループ状ケーブル64のことであり、同じ孔から延出する複数のケーブルのことではない。例えば、2本以上の引張りケーブル56が各孔62から延出する場合もある。同様に、各孔68から2本以上のループ状ケーブル64が延出しており、1本の引張りケーブル56(又は、同一の孔62から出現している一対の引張りケーブル)が、同一の孔68から延在するそのようなループ状ケーブル64の各々を貫通している場合もある。
【0055】
ストラップ40の近位端部72は、複数の引張りケーブル56の遠位端部71に接続されている。ウェブ状スペーサ80が、ストラップ40とループ状ケーブル64との間において複数の引張りケーブル56に固定されている。複数の引張りケーブル56は、複数の引張りケーブル56の近位端部58とウェブ状スペーサ80との間において複数のループ状ケーブル64を貫通している。ウェブ状スペーサ80はウェビング(網目状のもの)82を含み、該ウェブ状スペーサ80のウェビング82によって複数の引張りケーブル56のうちの隣り合うものが互いに離間されるように、該ウェビング82は、複数の引張りケーブル56のうちの隣り合うものの間に延びている。こうして、ウェブ状スペーサ80は、少なくともストラップ40が
図1に示した固定位置にあるときに、ループ状ケーブル64とストラップ40との間において複数の引張りケーブル56のうちの隣り合うものの露出部分をも互いに離間させておくことに寄与する。ウェブ状スペーサ80は、引張りケーブル56の隣り合うものを互いに離して広げることによって、引張りケーブル56が絡まることを防ぐことにも寄与する。孔62及びループ状ケーブル64のこの配置と、ウェブ状スペーサ80とを併せ持つことにより、孔62とストラップ40との間において引張りケーブル56の隣り合うものが互いに離間して配置される。これによって、引張りケーブル56の隣り合うものが絡まることが防止され、ひいては、張力が複数のケーブル56全体に均等に分散すること、及び締め付けられた本体30の圧力がケーブル56,64の領域(足の甲の位置など)内で足全体に均等に分散することが維持される。
【0056】
ウェブ状スペーサ80は、柔軟なポリマ材料からなり得る。例えば、ウェブ状スペーサ80は、表皮とも呼ばれる弾力性のある(すなわち、伸縮可能な)膜状の内層80Aと外層80Bであり得る。非制限的な実施例において、ウェブ状スペーサ80の材料として、伸縮可能な熱可塑性ポリウレタン、又は比較的薄いLYCRA(登録商標)若しくはSPANDEX(登録商標)の織物材料若しくはこれらの材料を含む合成物、又は伸縮性の合成材料を含む他の比較的薄くて柔軟な材料がある。これらの材料から形成されることにより、ウェブ状スペーサ80は、比較的薄くて平坦に形成されており、
図1及び
図2に示したようにストラップ40の遠位端部52が前方セクション16Aに固定されているときに、前方セクション16Aの本体30の外面60に押し付けられて外面60の形状と整合し得る。
【0057】
図4に内層80Aが示されている一方で、
図2に外層80Bが示されている。このようなウェブ状スペーサ80を引張りケーブル56に取り付けるに際して、隣り合う引張りケーブル56が所望の間隔をもって配置されるように、複数の引張りケーブル56が内層80Aと外層80Bとの間に配置される。層80A,80B間にホットメルト・フィルム又は他の接着剤がさらに配置された後、これらの層80A,80Bは均一の熱加圧プロセスによって一体に結合される。ウェブ状スペーサ80の位置における引張りケーブル56の部分はこうして、これらの層80A,80Bに覆われ、固定され、若しくは層80A,80B間に捕捉され、ウェブ状スペーサ80内で摺動しないようにウェブ状スペーサ80に固定される。
【0058】
図2及び
図4に最もよく示されるように、ウェブ状スペーサ80は四角形の形状に形成されており、その角部に丸みを帯びている場合もあれば尖っている場合もある。ウェブ状スペーサ80の4つの側面は互いに平行ではない。ウェブ状スペーサ80の遠位端縁83は、該ウェブ状スペーサ80の近位端縁85よりも短い。ウェブ状スペーサ80の幅は、近位端縁85から遠位端縁83へ向かって先細となるように形成されている。ウェブ状スペーサ80が先細の形状に形成されていることにより、隣り合う引張りケーブル56の各対及びこれらの各対の間のそれぞれのウェビング82の間の間隔が、ウェブ状スペーサ80に沿ってストラップ40へ向かって(すなわち、近位端縁85から遠位端縁83へ向かって)に次第に狭くなっている。
図3に明確に示されているように、近位端縁85の幅は、複数のループ状ケーブル64のうちの最後列のものから該ループ状ケーブル64の最前列のものまでの距離よりも狭くつくられている。従って、ウェブ状スペーサ80は、隣り合う引張りケーブル64を互いに近づけるように徐々に集めること、及び互いに幅広く離間した複数のループ状ケーブル64から幅狭のストラップ40の位置における遠位端部71までの引張りケーブル56の道筋を案内するように先細の形状に形成されている。
【0059】
ストラップ40の遠位端部52が前方セクション16Aの内側方44に固定されると(
図3を参照)、ウェブ状スペーサ80は、前方セクション16Aの外側方42に押し付けられるように配置され着座する一方で、複数の引張りケーブル56は、複数のループ状ケーブル64の位置で向きを変えている。ストラップ40がこのように固定されると、ウェブ状スペーサ80は前方セクション16Aの外側方42に押し付けられるように着座するので、該ウェブ状スペーサ80は(特にはウェブ状スペーサのないものと比較して)引張ケーブル56が外側方42から抗力を受けて摩耗することを防ぐように役立つ。
【0060】
本明細書においてさらに説明されるように、ストラップ40上及びアッパー16上に配置された固定具54が、前方セクション16Aの内側方44と外側方42の両方の位置に所望の支持の組合せをもたらすとともに、ストラップ40の締付けと位置の調節を可能にしている。具体的には、固定具54がストラップ40上の固定具部54A,54A1と、アッパー16上の固定具部54B1,54B2とを含み、これらが協働して、前方セクション16Aにストラップ40を取外し可能に固定することを支援し、これによりストラップ40は、後方セクション16Bを使用位置に維持することができる。例えば、
図4に示されているように、第1の固定具部54A1は、ストラップ40の遠位端部52においてストラップ40の内側96に固定されている。第2の固定具部54B1が前方セクション16Aの内側方44に固定されている一方で、第2の固定具部54B2は、前方セクション16Aの外側方42に固定されている。第1の固定具部54Aは、第2の固定具部54B1に固定するように構成されている。図示した実施例において、固定具54は面ファスナ(フックアンドループ・ファスナ)であり、第1の固定具部54A,54A1がフックである一方で、第2の固定具部54B1,54B2がループである。或いは、第1の固定具部54A,54A1がループである一方で、第2の固定具部54B1,54B2がフックである場合もあり、第1の固定具部54A,54A1のいくつかがフックで他がループである一方で、第2の固定具部54B1,54B2のいくつかがフックで他がループである場合もあれば、第1の固定具部54A,54A1の1つ又は複数がフックとループの組合せである一方で、第2の固定具部54B1,54B2の1つ又は複数がフックとループの組合せである場合もある。さらには、留め金やボタン等の他の固定具が使用される場合もある。
【0061】
図4に最もよく示されるように、ストラップ40の複数の第1の固定具部54Aは該ストラップ40の内側86に沿って互いに離間されており、これによって、該ストラップ40をアッパー16上に様々に位置決めして固定状態にすることが可能となる。ストラップ40に沿って複数の第1の固定具部54Aを互いに離間させておくことにより、ストラップ40の材料の弾力性の方が固定具部54Aの材料の弾力性よりも大きい場合、隣り合う固定具54A間でストラップ40をさらに伸張させることが可能となる。換言すると、張力を受けたときに、隣り合う固定具部54A又は54A1間のストラップ40の部分が伸張し得る一方で、弾力性の劣る固定具部54A又は54A1が固定されているストラップ40の部分は伸張する能力が低い。
【0062】
アッパー16の前方セクション16Aは、該前方セクション16Aの外側方42に固定された第2の固定具部54B2と、該前方セクション16Aの内側方44に固定された他の第2の固定具部54B1とを有する。1つ又は複数の追加的な第2の固定具部(図示せず)が後方セクション16Bの外面に固定される場合もある。ストラップ40は、前方セクション16Aの外側方42から前方セクション16Aの内側方44にかけて後方セクション16Bの背後を巻くように構成されており、
図1及び
図2に示されるように、後方セクション16Bが使用位置にあるときに、前方セクション16Aの内側方44で第2の固定具部54B1に固定されている。固定具部54Aのいくつかは、第2の固定具部54B2に固定する。
【0063】
後方セクション16Bは、アクセス位置(
図4)と使用位置(
図1~
図3)との間で変化するように、前方セクション16Aに対して動くことができる。本明細書において使われるアクセス位置と使用位置「との間で変化する」とは、後方セクション16Bがある位置から別の位置まで動くことを意味する。
図4に示されるように、アクセス位置と使用位置のどちらにおいても、後方セクション16Bの少なくとも一部が前方セクション16Aの後方にある。後方セクション16Bは、折曲げ領域46の位置で前方セクション16Aに対して下方かつ後方へ折れ曲がると、足受けキャビティ18を後方から開いてアクセス位置となり、矢印Aで示されている前方かつ下方の方向に足20を差し入れることが可能となる。
図4に最もよく示されるように、折曲げ領域46は、図示した実施例においてソール構造体12から離間している。或いは、足受けキャビティ18に後方からさらにアクセスし易くするために、ソール構造体12とアッパー16との間のバイトライン50の位置などにおいて、後方セクション16Bは、ソール構造体12に近づくように前方セクション1Aに対して折れ曲がる場合もある。後方セクション16Bがアクセス位置にあるときに、足受けキャビティ18が履物10の踵領域で露出する一方で、後方セクション16Bが使用位置にあるときに、該後方セクション16Bの一部が踵領域28を取り囲む。足20自体は、その足を差し入れるときに、足20と足首周りを収めるのに必要な程度にまで前方セクション16Aの外側方と内側方42,44とを横断軸に沿う方向(すなわち、長手方向の中央線と直交する外方向)に、互いに離すように広げる。
【0064】
図1及び
図2に示されるように、後方セクション16Bが使用位置にあるときに、内側方インターフェイス84において前方セクション16Aの後方内側方端縁93と後方セクション16Bとが整合する一方で、外側方インターフェイス86において前方セクション16Aの後方外側方端縁95と後方セクション16Bとが整合する。前方セクション16Aの内側方44と外側方42上に設けられた固定具部54B1,54B2はそれぞれ、内側方インターフェイス84と外側方インターフェイス86の境界を画定している。後方セクション16Bが使用位置にあるときにストラップ40が内側方インターフェイス84と外側方インターフェイス86を越えることができ、ストラップ40の複数の固定具部54A,54A1は、内側方固定具部54B1(
図1)と外側方固定具部54B2(
図2)に固定されている。
【0065】
後方セクション16Bは、後方へ折れ曲がることにより使用位置からアクセス位置まで変化するように関節運動する。そのような実施例においては、後方セクション16Bがアクセス位置にあるときよりも使用位置にあるときに、該後方セクション16Bの前方内側方端縁97が前方セクション16Aの後方内側方端縁93に近づく一方で、後方セクション16Bがアクセス位置にあるときよりも使用位置にあるときに、該後方セクション16Bの前側外側方端縁99が前方セクション16Aの後方外側方端縁95の近くになる。後方セクション16Bの使用位置は、足受けキャビティ18内へ足20が差し入れられたときに足20と足首の周囲の長さに応じて前方セクション16Aに対して僅かに前後にずれることがあるにせよ、どの場合においても、アクセス位置よりも前方にある。例えば、足首周りが比較的小さい場合には、後方セクション16Bが使用位置にあるときに該後方セクション16Bの前方内側方端縁97は前方セクション16Aの後方内側方端縁93の前方かつ内方にある一方で、後方セクション16Bが使用位置にあるときに該後方セクション16Bの前方外側方端縁99は前方セクション16Aの後方外側方端縁95の前方かつ内方にある。換言すると、後方セクション16Bは、アッパーの内側方と外側方に対する靴の舌革と同様に、
図1に示した位置よりも、前方セクション16Aの僅かに前方かつ内方へ折れ曲がる。対照的に、足首周りが比較的大きい場合には、後方セクション16Bが使用位置にあるときに該後方セクション16Bの前方内側方端縁97が前方セクション16Aの後方内側方端縁93よりも後方にある一方で、後方セクション16Bが使用位置にあるときに該後方セクション16Bの前方外側方端縁99は、
図1に示した位置よりも前方セクション16Aの後方外側方端縁95の僅かに後方にある。これらの各場合において、後方セクション16Bは依然として、ストラップ40によって使用位置に保持されている。
【0066】
前方セクション16Aと後方セクション16Bは、足を差し入れるときに前方セクション16Aが足の力を受けて崩れ、足受けキャビティ18との整列が少しずれてしまうことを防ぐよう支援するように構成されている。例えば、後方内側方端縁93と後方外側方端縁95の全体が履物10の踵領域28においてほぼ垂直となっている。この構成を有することにより(後方内側方端縁と後方外側方端縁が前方へ傾斜している構成と比較して)、足の差し入れ位置がずれたときにも、前方セクション16Aがつぶれて崩壊しないように抵抗することができる。
【0067】
図5~
図12においては、本教示の範囲に含まれる代替的な実施例における履物110が示されている。履物110は、履物10に関して説明したのと同様に構成され機能する、履物10と同様の特徴部(同様の参照符号で示されている)の多くを有する。履物110は、異なる構成の第2の固定具部154Bを有し、少し異なる前方セクション116A、及び異なる関節運動をする後方セクション116Bを有し、後方セクション116Bが使用位置にあるときに前方セクション16Aに後方セクション116Bを磁気カップリングさせる一式の磁気エレメントを有する。
【0068】
図9、
図11及び
図12に最もよく示されているように、履物110は、外側方42から内側方44にかけて踵領域28の背面を取り囲むように延びているミュール部116Cを含む、ミュールとして構成された前方セクション116Aを有する。テザー(つなぎ)140が、前方セクション116Aに後方セクション116Bを結合させる。例えば、テザー140は、該テザー140の一端部において前方セクション116Aに縫い付けられているか或いは固定されており、該テザー140の他端において後方セクション116Bに縫い付けられているか或いは固定されている。テザー140は、引張荷重に耐性のある柔軟で細長い構造体である。テザー140は、例えば、織物ポリマなどの材料からなる。テザー140は、ストラップ、コード、フィラメント、ストランド、リボン、チューブ、束ね紐、細長片、ケーブル、靴紐、ベルト、紐、糸、ロープ、ワイヤ及びウェブのうちから選択された1つ又は複数のもの或いは2つ以上の組合せからなり得る。テザー140は弾力性を有しないものであるか、或いは張力(すなわち、テザー140を伸張させる力)を受けても該テザー140の長さの増加を最小限に抑えることができるほど小さい弾力性を有するものである。
【0069】
固定具部材154Bは、後方セクション116Bを使用位置に保持することを支援するように、特には前方セクション116Aと後方セクション116B上に配置されている。
図5及び
図6に最もよく示されているように、使用位置においては、内側方インターフェイス84において前方セクション116Aの後方内側方端縁93が後方セクション116Bの前方内側方端縁97に整合する一方で、外側方インターフェイス86において前方セクション116Aの後方外側方端縁95が後方セクション116Bの前方外側方端縁99と整合する。しかし、
図9に最もよく示されているように、アクセス位置においては、後方セクション116Bの前方内側方端縁97と前方外側方端縁99はそれぞれ、前方セクション116Aの後方内側方端縁93と後方外側方端縁95から離間している。
【0070】
アッパーの複数の固定具部154Bは、前方セクションの内側方固定具部154B1と後方セクションの内側方固定具部154B2を含み、この両者は、後方セクション116Bが使用位置にあるときに、内側方インターフェイス84(
図5を参照)の境界を画定している一方で、前方セクションの外側方固定具部154B3と後方セクションの外側方固定具部154B4をさらに含み、この両者は、後方セクション116Bが使用位置にあるときに、外側方インターフェイス86(
図6を参照)の境界を画定している。後方セクション116Bが使用位置にあるときに、ストラップ40は、内側方インターフェイス84と外側方インターフェイス86を越える一方で、ストラップ40の複数の固定具部54A(
図9に最もよく示されている)は、前方セクションの内側方固定具部154B1、後方セクションの内側方固定具部154B2、前方セクションの外側方固定具部154B3、及び後方セクションの外側方固定具部154B4に固定されている。追加的な複数の固定具部154B5,154B6が前方セクション116A上でさらに前方にあり、固定具部54Aはこれらにも固定する。
【0071】
後方セクション116Bが使用位置にあるときにストラップ40を介して前方セクション116Aに機械的に結合されていることに加え、後方セクション116Bは、使用位置にあるときに、前方セクション116Aに磁気的にも結合されている。詳しくは、履物110は、前方セクション116Aの内側方44の内側方端縁93付近において前方セクション116A内に固定された前方内側方の一式の磁気エレメント90A(
図10を参照)と、後方セクション116Bの内側方の前方内側端縁97付近において後方セクション116B内に固定された後方内側方の一式の磁気エレメント90B(
図9を参照)と、を含む。前方外側方の一式の磁気エレメント92Aが、後方外側方端縁95付近の前方セクション116Aの外側方42において前方セクション116A内に固定されている一方で(
図10を参照)、後方外側方の一式の磁気エレメント92Bが、前方外側方端縁99付近の後方セクション116Bの外側方において後方セクション116B内に固定されている。これらの磁気エレメントは、それぞれのセクション116A,116B内に縫い付けられ或いは固定されている。各一式の磁気エレメント90A,90B,92A,92B内に4つの磁気エレメントが示されているが、各一式の磁気エレメントが1つだけマグネット(磁石)を有する場合もあれば、様々に異なる数のマグネットを有する場合もある。磁気エレメント90A,92A,90B,92Bは磁気エネルギを有し或いは磁気エネルギに引き寄せられる(すなわち、これらは鉄鋼材であり或いは種々の磁性材料の組合せであるため、磁気エレメント90Aが磁気エレメント90Bに引き寄せられるととともに、磁気エレメント92Aが磁気エレメント92Bに引き寄せられる)。
【0072】
内側方インターフェイス84を越えて後方内側方の一式の磁気エレメント90Bに前方内側方の一式の磁気エレメント90Aを磁気カップリングさせるとともに、外側方インターフェイス86を越えて後方外側方の一式の磁気エレメント92Bに前方外側方の一式の磁気エレメント92Aを磁気カップリングさせることにより、後方セクション116Bの少なくとも一部が、使用位置において、前方セクション116Aに固定される。一式の磁気エレメント90A,90B,92A,92Bは、アッパー116のそれぞれのセクション116A,116B内に挿入されたハウジング内に配置されている場合もあれば、ハウジングなしに挿入される場合もある。後方セクション116Bが使用位置にあるときに、特には
図5及び
図6に示されるように、内側方と外側方のインターフェイス84,86の全体が履物110の踵領域28内でほぼ垂直に延びているときに、一式の磁気エレメント90A,90B,92A,92B、及び該一式の磁気エレメント用の種々のハウジングが、内側方44と外側方42において踵領域28内の足をいっそう支持するように支援する。履物10に関して説明したように、前方セクション116Aの後方の内側方と外側方の端縁93,95がほぼ垂直に延びていることは、足が差し入れられるときに、足20と足受けキャビティ18との整列がずれたときに前方セクション116Aが崩れてしまうことを防ぐことに寄与し得る。一式の磁気エレメント90A,92A、及びこれらが収容される種々のハウジングは、これらの磁気エレメント90A,92Aが端縁93,95付近に配置されているので、足が差し入れられるときに端縁93,95を垂直方向に維持し、踵領域28において足受けキャビティ18を開いた状態に保つことにも寄与し得る。
【0073】
磁気エレメントは、後方セクション116Bを使用位置まで引っ張ることを支援し且つ使用位置まで動かされた後方セクション116Bを使用者の活動中に使用位置に維持するのに充分な磁気の強さを有するのと同時に、この磁力は、履物110を脱ぐことが望ましいときに後方セクション116Bを後方へ引くことにより後方セクション116Bがアクセス位置まで戻されることを可能にするほど小さい磁力であるものが選択されており、いずれも過度な力を必要とすることなく、手を使って、或いは後方セクション116Bの上面に下方かつ後方へと反対側の足を使って力をかけて行われる。
【0074】
図13に示される代替的な実施例における履物210は、固定具部54Cがこれの高さ方向に沿ってソール構造体12から、内側方端縁から外側方端縁にかけての後方セクション16Bの全体つまり後方セクション16Bのほぼ全体に亘る後方セクション16Bの外面全体に沿って上方へ延びている構成以外については、
図1に示した履物10とすべて同じ構成を有する。この構成を有することで、ストラップ40の配置のバリエーションが増え、更に/或いは後方セクション16Bにストラップ40をいっそう固定することが可能となる。
【0075】
同様に、
図14及び
図15に示される履物310は、後方セクションの内側方固定具部154B2と後方セクションの外側方固定具部154B4が、後方固定具部154B7と置き換えられていること以外の点は、
図5に示した履物110とすべての態様が同様であり、この後方固定具部154B7は、後方セクション116Bの前方内側方端縁97から前方外側方端縁99まで後方セクション116Bの外面全体に沿って、及び後方セクション116Bの全体又はほぼ全体に沿うようにこれの低位端縁301から高位端縁302までこれの高さ方向に沿ってテザー140を覆うように延在している。
【0076】
図16~
図20に示される履物410は、ソール構造体12の内側方の壁45に固定され且つ履物410の中足領域26内でアッパー16の内側方44に沿って上方へ延びている内側方のフラップ443も含むこと以外は、履物210とすべての態様が同様である。或いは、内側方フラップ443は、バイトライン50の位置でアッパー16とソール構造体12との間に固定され得る。なお、これらのいずれの例においても、内側方フラップ443は内側方の壁45に固定されている。内側方フラップ443は、足受けキャビティ18内で足の外輪郭と概ね整合するのには充分な柔軟性を有するが、本体30と比べれば厚くて弾力性の劣るものである。このような内側方フラップ443を側壁45に固定することにより、足受けキャビティ18内の足は、横への動きで横方向の力を受けたときにも、ソール構造体12に対して所定の位置にしっかりと保持され得る。
【0077】
ループ状ケーブル64は、上述したように、アッパー16の本体30を貫通して、孔68から出ている。引張りケーブル56は、上述したように、外側方42にあるアッパー16,30を貫通して、孔62から出ている。ループ状ケーブル64と、ストラップ40に固定されている遠位端部71との間において、ウェブ状スペーサ480が引張りケーブル56に固定されている。ウェブ状スペーサ480は、
図2に示したウェブ状スペーサ80よりも僅かに大きいが、いくつかの同じ機能と特徴を有する。内側方フラップ443は、ウェブ状スペーサ480の近位端部に固定されている。ウェブ状スペーサ480は、該ウェブ状スペーサ480によって複数の引張りケーブル56のうちの隣り合うものが互いに離間されるように、複数の引張ケーブル56のうちの隣り合うものの間に延びている。
図16及び
図17に示されるように、ストラップ40の遠位端部52がアッパー16に固定されているときに、ウェブ状スペーサ480は、該アッパー16の前方セクション16Aの外側方42に押し付けられるように着座する。
【0078】
ストラップ40がアッパー16に固定されると、内側方フラップ443は、アッパー16の外面60に押し付けられるように着座し、複数のループ状ケーブル64のうちの少なくともいくつかを覆う。
図20において、内側方フラップ443は、外面60又は本体30に固定されていないものとして示すために、外面60から僅かに離れているように図示されている。加えて、ストラップ40は、構成要素を明瞭に示すために、持ち上げられて図示されている。しかし、
図16に示したようにストラップ40が固定されているときに、内側方フラップ443は、外面60に押し付けられるように着座している。内側方フラップ443は、もっと硬くて弾力性が小さいので、上述した通りにストラップ40が強く引っ張られてアッパー16に固定されると、足の内側方の特に土踏まずの位置を支持する。
【0079】
図16に最もよく示されているように、内側方フラップ443は、ソール構造体12から後方かつ上方へ延びている第1の部分443Aと、ソール構造体12から前方かつ上方へ延びている第2の部分443Bとを有し、第2の部分443Bの少なくとも一部が、ソール構造体の位置で第1の部分443Aの後方にある。
【0080】
図21~23に示される他の実施例における履物510は、履物10と同じ態様で機能する同じ特徴部(ウェブ状スペーサ80、ストラップ40、引張りケーブル56及びループ状ケーブル64など)のうちの多くを備える。アッパー516は、前方セクション、及び関節運動する後方セクションを有するものとしてよりも、一体的に示されている。アッパー516の踵部分は、ストラップ40の固定具部54A,54A1を固定する1つ又は複数の固定具部554を含む。
図21に示される固定具部554は、アッパー516の背面を取り囲むように外側方42まで延びている。代替的な実施例において、履物510にアッパー16が使用される場合もある。
【0081】
ツーピースからなる内側方フラップ553が、履物510に含まれている。例えば、内側方フラップ553は外方の内側方フラップ553Aを含み、この外方の内側方フラップ553A内をループ状ケーブル64が貫通している。換言すれば、ループ状ケーブル64はアッパー516を貫通しているのではなく、外方の内側方フラップ553Aを貫通している。その外方の内側方フラップ553Aは、ソール構造体12の内側方の壁45に固定され、履物510の中足領域26内でアッパー516の内側方44に沿って上方へ延びている。或いは、内側方フラップ553Aは、バイトライン50の位置でアッパー516とソール構造体12との間に固定され得る。なお、いずれの例においても、内側方フラップ553Aは、内側方の壁45に固定されている。内側方フラップ553は内方の内側方フラップ553Bをさらに含み、この内側方フラップ553Bは、アッパー516の内側方44に固定され且つアッパー516と外方の内側方フラップ553Aとの間に配置されている。内方の内側方フラップ553Aは内側方44の途中までしか延在しておらず、ストラップ40が強く引かれたときの外方の内側方フラップ553Aと同様に、内側方44に対して動くことができない。
【0082】
内方の内側方フラップ553Bと外方の内側方フラップ553Bのいずれもウェブ状スペーサ480の近位端部に固定されてはいない。内方の内側方フラップ553Aがあることにより、引張りケーブル56がピンと張られると、アッパー516の内側方44が上方へ引かれるとともに、足受けキャビティ18内の足に押し付けられる。外方の内側方フラップ553Aと内方の内側方フラップ553Bは、アッパー516の本体よりも厚くて小さい弾力性を有するが、足受けキャビティ18内にある足の外側の輪郭に概ね整合するのには充分な柔軟性を有する。
【0083】
ループ状ケーブル64は、内方の内側方フラップ553Bから外方の内側方フラップ553Aまで延在する。
図23に最もよく示されているように、ループ状ケーブル64は、外方の内側方フラップ553Aと内方の内側方フラップ553Bの各々の内層と外層との間に配置されている場合もあれば、外方の内側方フラップ553A及び内方の内側方フラップ553Bに統合されるように織り込まれ又は固定されたチャネルを貫通しているか、或いはチャネル内に配置されている場合もある。
【0084】
図21及び
図22に示されるように、履物510は外側方フラップ555をさらに含み、この外側方フラップ555は、ソール構造体12の外側方42に固定されているとともに、履物510の中足領域26内でアッパー516の外側方42に沿って上方へ延びている。外側方フラップ555は、ソール構造体12の外側方の壁47に固定されたものとして示されているが、バイトライン50の位置でアッパー516とソール構造体12との間に固定される場合もある。なお、いずれの実施例においても、外側方フラップ555は、外側方の壁47に固定されているものとする。複数の引張りケーブル56の各々は、外側方フラップ555に固定され、外側方フラップ555の自由端561から外方へ延びている。
図22に最もよく示されるように、ループ状ケーブル64が外方の内側方フラップ553Aを貫通しているのと同様に、引張りケーブル56は、外側方フラップ555を貫通している。引張りケーブル56を引き締めるようにストラップ40を引っ張ると、外側方フラップ555が引っ張られてアッパー516に押し付けられるとともに、内方の内側方フラップ553Bが引っ張られてアッパー516に押し付けられる。外側方フラップ555は、アッパー516に固定されるのではなく、外側方の壁47に固定されるが、このことを図示するために
図22において、アッパー516から僅かにずれた位置に図示されている。しかし、引張りケーブル56がきつく引かれると、外側方フラップ555は、アッパー516の外面60に押し付けられる位置に着座する。
【0085】
図24~
図26は、履物10と同じ特徴部の多くを有する履物610の他の例を示す。履物610は、ソール構造体12に固定されたアッパー616を含む。アッパー616は、ソール構造体12の少なくとも前足部に固定された前方セクション616Aと、後方セクション616Bとを有し、該後方セクション616Bは、該後方セクション616Bの少なくとも一部が前方セクション616Aの後方となる位置に、作動可能となるようにソール構造体12に固定されているとともに、アクセス位置(
図25)から使用位置(
図24)まで変化するように関節運動する。後方セクション616Bがアクセス位置にあるときに、足受けキャビティ18は、履物610の踵領域28において露出しており、後方セクション616Bが使用位置にあるときに、後方セクション616Bの少なくとも一部が踵領域28を取り囲んでいる。
図24に示されるように、ストラップ40は、前方セクション616Aの外側方42から前方セクション616Aの内側方44にかけて後方セクション616Bの背面を取り囲むように構成されている。
図24に最もよく示されているように、後方セクション616Bは、使用位置にあるときに前方セクション616Aの外方を覆うのに充分な寸法を有する。後方セクション616Bは、該後方セクション616Bの内面662(内側ともいう)の内側方と外側方に固定具部654Dを有し、これらは、該後方セクション616Bが使用位置まで動かされたときに、前方セクション616Aの外面60の内側方と外側方にある固定具部654Eに固定できるように構成されている。固定具部654E,654Dはその一部のみが図示されているが、履物610の内側方と外側方に対称的に配置されている。ストラップ40上の固定具部54,54Aは、後方セクション616Bの外面に配置された固定具部654Fに固定することができる。
【0086】
履物610は、外方の内側方フラップ653Aと内方の内側方フラップ653Bを含む内側方フラップ653を備える。外方の内側方フラップ653Aは、ソール構造体12の内側方の壁45に固定され、履物610の中足領域26内で上方へ延びている。或いは、外方の内側方フラップ653Aは、バイトライン50の位置でアッパー616とソール構造体12との間に固定される場合もある。なお、いずれの実施例においても、外方の内側方フラップ653Aは、内側方の壁45に固定されているものとする。内方の内側方フラップ653Bは、アッパー616と外方の内側方フラップ653Aとの間に配置されている。内方の内側方フラップ653Bは、ソール構造体12の足対向面17に該足対向面17の内側方周辺12Aの内方寄りに固定されている。本明細書において、内方の内側方フラップ653Bは、足対向面17に直接的に固定されている場合、或いは足対向面に間接的に(足対向面17に覆い被さる他の構成要素のストローベルに固定されることなどによって)固定されている場合に、足対向面17に固定されていると考えるものとし、足対向面17に対して動くことができない。図示した実施例において、内方の内側方フラップ653Bは、足対向面17の位置でミッドソール32に縫い目621の位置で縫い付けられている。この縫い目621は、前方セクション616Aを貫通している場合もある。前方セクション616Aは、内側方周辺616Cと外側方周辺616Dを有するものとして示されているが、前方セクション616Aは、断面が切り出されている位置においてソックスの構成を有し得る。
【0087】
内方の内側方フラップ653Bは、内側方周辺12Aの位置においてよりも、内側方周辺12Aと外側方周辺12Bとの間において足対向面17に固定されている。換言すれば、内方の内側方フラップ653Bは、内側方周辺12Aの内方寄りにおいて足対向面17に固定されている。内方の内側方フラップ653Bが足対向面17に固定される位置は、着用者の土踏まずのつくり(つまり、アーチの高低など)に応じて算出される足の圧力に基づいてカスタマイズされ得る。或いは、カスタマイズされない実施例において、内方の内側方フラップ653Bは、平均的な着用者の土踏まずのつくりに基づいて位置決めされ得る。非限定的な実施例において、内方の内側方フラップ653Bは、内側方周辺12Aから外側方周辺12Bへ向かうソール構造体12の横断方向の幅W2の少なくとも30%だけ離間した位置において、足対向面17に固定されている。従って、内側方周辺12Aから縫い目621の位置までの距離W1は、内側方周辺12Aから外側方周辺12Bまでの幅全体W2の少なくとも30%である。
【0088】
内方の内側方フラップ653Bは、縫い目621の位置だけで前方セクション616Aに固定されている。各図において、内方の内側方フラップ653Bは、前方セクション616Aに固定されているのではなく、該前方セクション616Aに対して動くことができると示すために、前方セクション616Aから僅かに離して図示されている。足受けキャビティ18内に足が差し入れられている使用時において、
図24に示されるように、ストラップ40が留められると、内方の内側方フラップ653Bは、足のアーチ(土踏まず)を持ち上げて支持するとともに、前方セクション16Aの外面60に押しつけられる位置となる。
【0089】
履物510と同様に、ループ状ケーブル64は、履物610の内側方44に沿って上方へ延在するとともに、フラップ653A,653Bの自由端の位置で、内方の内側方フラップ653Bを外方の内側方フラップ653Aに接続するように内方の内側方フラップ653Bから延びている。
【0090】
履物610は、外側方フラップ655をさらに含み、この外側方フラップ655は、ソール構造体12の外側方の壁47に固定され、履物610の中足領域26内でアッパーの外側方42に沿って上方へ延びている。
図26において、外側方のフラップ655は、前方セクション616Aに固定されているのではなく、前方セクション616Aに対して動くことができると示すために、前方セクション616Aから僅かに離れているように図示されている。足受けキャビティ18内に足が差し入れられている使用時において、外側方フラップ655は、前方セクション16Aの外面60に押し付けられるように位置している。
【0091】
図26に最もよく示されるように、外側方フラップ655は内層655Bと外層655Aを有し、これらの層655A,655B間に引張りケーブル56が延びている。引張りケーブル56が外側方フラップ655に固定されるように、外層655Aと内層655Bは互いに固定されている。例えば、外層655Aと内層655Bは互いに接着され或いは縫い付けられている。従って、外層655Aと内層655Bとの間に挟まれている引張りケーブル56の部分は、フラップ655に対して動かない。よって、引張りケーブル56を引き締めるようにストラップ40を引っ張ると、外側方フラップ655が引かれて前方セクション616Aに押し付けられるとともに、内側方フラップ653Bが引かれて前方セクション616Aに押し付けられる。
図26において明瞭に示すために、ストラップ40は、前方セクション616Aから持ち上げられて示されている。履物610は、アッパー616とストラップ40との間において引張りケーブル56に固定され該引張りケーブル56を覆うようなウェブ状スペーサを含まないが、他の実施例において、ウェブ状スペーサを含む場合もある。
【0092】
図25に示されるように、外層655Aは開口657(この開口657のことを窓ともいう)を有する。
図24~
図25に最もよく示されるように、複数の引張りケーブル56のうちの少なくとも1つが、開口657の位置で露出するように、該開口657を横切っている。複数の引張りケーブル56の各々が、外側方フラップ655の自由端661から延在し得る。外方の内側方フラップ653Aは窓658をさらに有する。しかし、ループ状ケーブル64が窓658を横切るように延びていることは図示されておらず、
図26に示されるように、窓よりも高い位置で終端し得る。
【0093】
複数の引張りケーブル56は、該複数の引張りケーブル56の近位端部58とストラップ40との間において複数のループ状ケーブル64を貫通している。
図26に最もよく示されるように、ストラップ40の近位端部72は、複数の引張りケーブル56の遠位端部71に接続されている。
図24に示されるように、ストラップ40の遠位端部52は、後方セクション616Bに取外し可能に固定され得るものであり、この後方セクション616Bが今度は、前方セクション616Aに取外し可能に固定され得るものである。詳しくは、第1の固定具部54Aが、後方セクション616Bに設けられた固定具部654Fに固定されている。なお、固定具部654Fのことを第2の固定具部ともいう。
【0094】
履物用のソール構造体の構成例について、以下に箇条書きの項目として提示する。
【0095】
項目1:ソール構造体と、上記ソール構造体に固定されたアッパーと、上記アッパー及び上記ソール構造体のうちの少なくとも一方に固定された近位端部を有する複数の引張りケーブルであって、上記アッパーから外方へ延びている複数の引張りケーブルと、上記複数の引張りケーブルにおける引張りケーブルの遠位端部に接続された近位端部、及び上記引張りケーブルを引き締めるように上記アッパーに取外し可能に固定され得る遠位端部を有するストラップと、上記複数の引張りケーブルに固定されたウェブ状スペーサであって、該ウェブ状スペーサによって上記複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものが互いに離間して配置されるように、上記複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものの間に延びているウェブ状スペーサと、を備える、履物。
【0096】
項目2:上記ウェブ状スペーサは柔軟なポリマ材料からなることを特徴とする、項目1に記載の履物。
【0097】
項目3:上記複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものの間の隙間が、上記ウェブ状スペーサに沿って上記ストラップに近いところほど狭くなっていることを特徴とする、項目1又は項目2に記載の履物。
【0098】
項目4:上記ストラップの遠位端部が上記アッパーに固定されているときに、上記ウェブ状スペーサは、上記アッパーの第1の側方で上記アッパーの外面に押し付けられるように配置されていることを特徴とする、項目1~3のいずれかに記載の履物。
【0099】
項目5:上記アッパー及び上記ソール構造体のうちの少なくとも一方に固定され、上記アッパーから外方へ延びている複数のループ状ケーブルをさらに備え、上記複数の引張りケーブルは、該引張りケーブルの近位端部と上記ウェブ状スペーサとの間において上記複数のループ状ケーブルを貫通していることを特徴とする、項目1~4のいずれかに記載の履物。
【0100】
項目6:上記複数の引張りケーブルが該複数の引張りケーブルの近位端部から上記アッパーの第1の側方に沿って上方へ延在する一方で、上記複数のループ状ケーブルは上記アッパーの第2の側方で上方へ延在し、上記ウェブ状スペーサは、上記ストラップの遠位端部が上記アッパーに固定されているときに上記アッパーの第1の側方に押し付けられるように着座しており、上記複数の引張りケーブルは、上記複数のループ状ケーブルの位置で向きを変えていることを特徴とする、項目5に記載の履物。
【0101】
項目7:上記アッパーは、足受けキャビティを画定している前方セクション及び後方セクションを含み、上記前方セクションは、上記ソール構造体の前足領域に固定されており、上記後方セクションは、該後方セクションの少なくとも一部が上記前方セクションよりも後方となる位置に、作動可能となるように上記ソール構造体に固定されているとともに、アクセス位置と使用位置との間で変化するように関節運動し、上記後方セクションが上記アクセス位置にあるときに上記足受けキャビティは該履物の踵領域で露出している一方で、上記後方セクションが上記使用位置にあるときに上記後方セクションの一部が上記踵領域を取り囲んでおり、上記後方セクションが上記使用位置にあるときに、上記ストラップは、上記前方セクションの第1の側方から上記前方セクションの第2の側方にかけて上記後方セクションの背面を覆い、上記前方セクションの第2の側方に固定できるように構成されていることを特徴とする、項目1~6のいずれかに記載の履物。
【0102】
項目8:上記ストラップの遠位端部の位置で上記ストラップに固定された第1の固定具部と、上記アッパーの前方セクションの第2の側方に固定された第2の固定具部と、 をさらに備え、第1の固定具部は、第2の固定具部に固定できるように構成されていることを特徴とする、項目7に記載の履物。
【0103】
項目9:上記ストラップは、上記ストラップの内側に沿って互いに離間して配置された複数の固定具部を有し、上記アッパーは、後方セクション、上記前方セクションの第1の側方及び第2の側方に固定された複数の固定具部を有し、上記ストラップの固定具部は、上記アッパーの固定具部に固定できるように構成されていることを特徴とする、項目7に記載の履物。
【0104】
項目10:上記前方セクションの第1の側方が上記前方セクションの外側方である一方で、上記前方セクションの第2の側方が上記前方セクションの内側方であり、上記前方セクションの後方内側方端縁が内側方インターフェイスの位置で上記後方セクションと接続する一方で、上記前方セクションの後方外側方端縁が外側方インターフェイスの位置で上記後方セクションと接続し、上記アッパーの複数の固定具部は、前方セクションの内側方固定具部と後方セクションの内側方固定具部を含み、この両者は上記内側方インターフェイスの境界を画定しており、上記アッパーの複数の固定具部は、前方セクションの外側方固定具部と後方セクションの外側方固定具部をさらに含み、この両者は上記外側方インターフェイスの境界を画定しており、上記後方セクションが上記使用位置にあるときに、上記ストラップは、上記内側方インターフェイスと上記外側方インターフェイスを越えることができ、上記ストラップの上記複数の固定具部は、前方セクションの内側方固定具部、後方セクションの内側方固定具部、前方セクションの外側方固定具部、及び後方セクションの外側方固定具部に固定されていることを特徴とする、項目9に記載の履物。
【0105】
項目11:上記前方セクションの内側方に固定された少なくとも1つの前方内側方磁気エレメント、及び上記後方セクションの内側方に固定された少なくとも1つの後方内側方磁気エレメントを含む内側方の一式の磁気エレメントと、上記前方セクションの外側方に固定された少なくとも1つの前方外側方磁気エレメント、及び上記後方セクションの外側方に固定された少なくとも1つの後方外側方磁気エレメントを含む外側方の一式の磁気エレメントと、をさらに備え、上記内側方インターフェイスを越えて上記少なくとも1つの後方内側方磁気エレメントに上記少なくとも1つの前方内側方磁気エレメントが磁気カップリングすることにより、さらには、上記外側方インターフェイスを越えて上記少なくとも1つの後方外側方磁気エレメントに上記少なくとも1つの前方外側方磁気エレメントがカップリングすることにより、上記使用位置において、上記後方セクションの少なくとも一部が上記前方セクションに固定されることを特徴とする、項目10に記載の履物。
【0106】
項目12:上記後方セクションは、後方へ折れ曲がることにより上記使用位置から上記アクセス位置まで関節運動し、上記後方セクションの前方内側方端縁は、該後方セクションがアクセス位置にあるときよりも使用位置にあるときにおいて上記前方セクションの後方内側方端縁に近くなり、上記後方セクションの前方外側方端縁は、該後方セクションがアクセス位置にあるときよりも使用位置にあるときにおいて上記前方セクションの後方外側方端縁に近くなることを特徴とする、項目7に記載の履物。
【0107】
項目13:上記前方セクションの後方内側方端縁及び後方外側方端縁の全体が、該履物の踵部分においてほぼ垂直に延在することを特徴とする、項目7に記載の履物。
【0108】
項目14:ソール構造体と、前方セクション及び後方セクションを含むアッパーであって、上記前方セクションは、上記ソール構造体の前足領域に固定され、上記ソール構造体の上方に足受けキャビティを画定し、上記後方セクションは、該後方セクションの少なくとも一部が上記前方セクションよりも後方となる位置に、作動可能となるように上記ソール構造体に固定されているとともに、アクセス位置と使用位置との間で変化するように関節運動し、上記後方セクションが上記アクセス位置にあるときに、上記足受けキャビティは該履物の踵領域で露出する一方で、上記後方セクションが上記使用位置にあるときに、上記後方セクションは上記踵領域の一部を取り囲む、アッパーと、複数の引張りケーブルであって、上記アッパーの前方セクション及び上記ソール構造体のうちの少なくとも一方に固定された近位端部から上記前方セクションに沿って上方へ延びている、複数の引張りケーブルと、上記複数の引張りケーブルにおける引張りケーブルの遠位端部に接続された近位端部を有するストラップであって、該ストラップは、上記アッパーの第1の側方から第2の側方にかけて上記後方セクションの周りを覆うように構成されている、ストラップと、上記アッパーの第2の側方に上記ストラップの遠位端部を固定するように構成された固定具と、上記ストラップの近位端部に隣接し、上記複数の引張りケーブルに固定されたウェブ状スペーサであって、該ウェブ状スペーサによって上記複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものが互いに離間されるように、上記複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものの間に延びているウェブ状スペーサと、を備える、履物。
【0109】
項目15:上記アッパー及び上記ソール構造体のうちの少なくとも一方に固定され、上記アッパーの前方セクションから外方へ延びているループ状ケーブルをさらに備え、上記複数の引張りケーブルは、上記複数の引張りケーブルの近位端部と上記ウェブ状スペーサとの間において上記複数のループ状ケーブルを貫通しており、上記複数の引張りケーブルは、該複数の引張りケーブルの近位端部から上記アッパーの第1の側方に沿って上方へ延在する一方で、上記複数のループ状ケーブルは、上記アッパーの際2の側から外方へ延在し、上記ストラップが上記アッパーに固定されているときに、上記ウェブ状スペーサは上記アッパーの第1の側方に押し付けられるように着座し、上記複数の引張りケーブルは、上記複数のループ状ケーブルの位置で向きを変えていることを特徴とする、項目14に記載の履物。
【0110】
項目16:上記ストラップは、上記ストラップの内側に沿って離間して配置された複数の固定具部を有し、上記アッパーは、上記前方セクションの第1の側方と第2の側方に固定された複数の固定具部を有し、上記ストラップの固定具部は、上記アッパーの固定具部に固定できるように構成されていることを特徴とする、項目14又は項目15に記載の履物。
【0111】
項目17:上記前方セクションの第1の側方が上記前方セクションの外側方である一方で、上記前方セクションの第2の側方が上記前方セクションの内側方であり、上記前方セクションの後方内側方端縁が内側方インターフェイスの位置で上記後方セクションと接続する一方で、上記前方セクションの後方外側方端縁が外側方インターフェイスの位置で上記後方セクションと接続し、上記アッパーの複数の固定具部は、前方セクションの内側方固定具部及び後方セクションの内側方固定具部を含み、この両者が上記内側方インターフェイスの境界を画定しており、上記アッパーの複数の固定具部は、前方セクションの外側方固定具部及び後方セクションの外側方固定具部をさらに含み、この両者が上記外側方インターフェイスの境界を画定しており、上記後方セクションが上記使用位置にあるときに上記ストラップは、上記内側方インターフェイスと上記外側方インターフェイスとを越えることができ、上記ストラップの複数の固定具部は、上記前方セクションの内側方固定具部、上記後方セクションの内側方固定具、上記前方セクションの外側方固定具部、及び上記後方セクションの外側方固定具部に固定されることを特徴とする項目16に記載の履物。
【0112】
項目18:上記前方セクションの内側方に固定された少なくとも1つの前方内側方磁気エレメント、及び上記後方セクションの内側方に固定された少なくとも1つの後方内側方磁気エレメントからなる内側方の一式の磁気エレメントと、上記前方セクションの外側方に固定された少なくとも1つの前方外側方磁気エレメント、及び上記後方セクションの外側方に固定された少なくとも1つの後方外側方磁気エレメントからなる外側方の一式の磁気エレメントと、をさらに備え、上記内側方インターフェイスを越えて上記少なくとも1つの後方内側方磁気エレメントに上記少なくとも1つの前方内側方磁気エレメントを磁気カップリングさせることにより、さらには、上記外側方インターフェイスを越えて上記少なくとも1つの後方外側方磁気エレメントに上記少なくとも1つの前方外側方磁気エレメントをカップリングさせることにより、上記使用位置において、上記後方セクションの少なくとも一部が上記前方セクションに固定されることを特徴とする、項目17に記載の履物。
【0113】
項目19:上記後方セクションは、後方へ折れ曲がることにより上記使用位置から上記アクセス位置まで関節運動し、上記後方セクションの前方内側方端縁は、該後方セクションがアクセス位置にあるときよりも使用位置にあるときにおいて上記前方セクションの後方内側方端縁に近くなり、上記後方セクションの前側外側方端縁は、該後方セクションがアクセス位置にあるときよりも使用位置にあるときにおいて上記前方セクションの後方外側方端縁に近くなることを特徴とする、項目14又は項目15に記載の履物。
【0114】
項目20:上記前方セクションの後方内側方端縁及び後方外側方端縁の全体が、該履物の踵部分に延在することを特徴とする、項目14~19のいずれかに記載の履物。
【0115】
項目21:ソール構造体と、上記ソール構造体に固定されたアッパーと、上記ソール構造体の内側方の壁に固定され、該履物の中足領域内で上方へ延びている内側方フラップと、上記アッパーの外側方に沿って上方へ延びている複数の引張りケーブルと、上記アッパー及び上記内側方フラップのうちの少なくとも一方に固定された複数のループ状ケーブルと、上記複数の引張りケーブルの遠位端部に接続された近位端部、及び上記引張りケーブルを締め付けるように上記アッパーに取外し可能に固定され得る遠位端部を有するストラップと、を備え、上記複数の引張りケーブルは、上記複数の引張りケーブルの近位端部と上記ストラップとの間において上記複数のループ状ケーブルを貫通していることを特徴とする、履物。
【0116】
項目22:上記複数の引張りケーブルに固定されたウェブ状スペーサであって、該ウェブ状スペーサによって上記複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものが互いに離間されるように、上記複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものの間に延びているウェブ状スペーサをさらに備え、上記内側方フラップは、上記ウェブ状スペーサの近位端部に固定されていることを特徴とする、項目21に記載の履物。
【0117】
項目23:上記内側方フラップは、上記アッパーの外面に押し付けられるように位置し、上記ストラップが上記アッパーに固定されているときに上記複数のループ状ケーブルのうちの少なくともいくつかを覆うことを特徴とする、項目21~22のいずれかに記載の履物。
【0118】
項目24:上記複数の引張りケーブル及び上記複数のループ状ケーブルの両方が上記アッパーを貫通していることを特徴とする、項目21~23のいずれかに記載の履物。
【0119】
項目25:上記内側方フラップは外方の内側方フラップであり、該履物は、上記アッパーの内側方に固定され、上記アッパーと上記外方の内側方フラップとの間に配置された内方の内側方フラップをさらに備え、上記複数のループ状ケーブルは、上記内方の内側方フラップから上記外方の内側方フラップまで延在していることを特徴とする、項目21に記載の履物。
【0120】
項目26:上記ソール構造体の外側方に固定され、該履物の中足領域内で上記アッパーの外側方に沿って上方へ延びている外側方フラップをさらに備え、上記複数の引張りケーブルの各々が上記外側方フラップに固定され、上記外側方フラップの自由端縁から延在していることを特徴とする、項目21に記載の履物。
【0121】
項目27:上記外側方フラップは、内層及び外層を有し、上記外層は開口を有し、上記複数の引張りケーブルのうちの少なくとも1つが上記開口を横切るように延在し、上記開口の位置で露出していることを特徴とする、項目26に記載の履物。
【0122】
項目28:上記内側方フラップが外方の内側方フラップであり、該履物は、上記アッパーと上記外方の内側方フラップとの間に配置された内方の内側方フラップであって、足対向面の内側方周辺の内方において上記ソール構造体の足対向面に固定されている、内方の内側方フラップをさらに備え、上記複数のループ状ケーブルは、上記内方の内側方フラップから上記外方の内側方フラップまで延在することを特徴とする、項目21に記載の履物。
【0123】
項目29:上記内側方フラップは、上記ソール構造体から後方かつ上方へ延在する第1の部分、及び上記ソール構造体から前方かつ上方へ延在する第2の部分を有するように構成されており、第2の部分の少なくとも一部が上記ソール構造体の位置で第1の部分よりも後方にあることを特徴とする、項目21に記載の履物。
【0124】
項目30:上記ループ状ケーブルと上記ストラップとの間において上記複数の引張りケーブルに固定されたウェブ状スペーサであって、該ウェブ状スペーサによって上記複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものが互いに離間されるように、上記複数の引張りケーブルのうちの隣り合うものの間に延びているウェブ状スペーサをさらに備える、項目21に記載の履物。
【0125】
項目31:上記ウェブ状スペーサは、上記ストラップの遠位端部が上記アッパーに固定されると上記アッパーの外側方に押し付けられるように着座し、上記複数の引張りケーブルは、上記複数のループ状ケーブルの位置で向きを変えていることを特徴とする、項目30に記載の履物。
【0126】
項目32:上記ストラップの遠位端部に固定された第1の固定具部と、上記アッパーに固定された第2の固定具部と、をさらに備え、第1の固定具部は、第2の固定具部に固定できるように構成されていることを特徴とする、項目21~31のいずれかに記載の履物。
【0127】
項目33:上記アッパーは、足受けキャビティを形成する前方セクション及び後方セクションを含み、上記前方セクションは上記ソール構造体の前足領域に固定されており、上記後方セクションは、該後方セクションの少なくとも一部が上記前方セクションよりも後方となる位置に、作動可能となるように上記ソール構造体に固定されているとともに、アクセス位置と使用位置との間で変化するように関節運動し、上記後方セクションが上記アクセス位置にあるときに上記足受けキャビティは該履物の踵領域で露出している一方で、上記後方セクションが上記使用位置にあるときに上記後方セクションの一部が上記踵領域の一部を取り囲んでおり、上記後方セクションが上記使用位置にあるときに、上記ストラップは、上記前方セクションの外側方から上記前方セクションの内側方にかけて上記後方セクションの背面を覆い、上記アッパーの内側方に固定できるように構成されていることを特徴とする、項目21~32のいずれかに記載の履物。
【0128】
項目34:上記ストラップは、上記ストラップの内側に沿って離間された複数の固定具部を有し、上記アッパーは、後方セクション、上記前方セクションの外側方、及び上記前方セクションの内側方に固定された複数の固定具部を有し、上記ストラップの上記固定具部は、上記アッパーの固定具部に固定できるように構成されていることを特徴とする、項目33に記載の履物。
【0129】
項目35:上記アッパーの後方セクションは、該後方セクションの内側に固定具部を有し、上記後方セクションが上記使用位置にあるときに、上記後方セクションの内側にある固定具部は、上記前方セクションの外面上にある上記固定具部に固定できることを特徴とする、項目34に記載の履物。
【0130】
本発明の様々な実施例について説明したが、この説明は例示することを意図しており、限定することを意図するものではない。当業者であれば、本発明の実施例の範囲内において、さらに多くの実施例及び実施形態が可能であることを理解されよう。様々な実施例における種々の特徴部が組み合わされて使用される場合もあれば、他の特徴部ないしエレメントと交換される場合もある。従って、本発明の実施例は、添付の特許請求の範囲及びこれの均等物に照らすこと以外によって限定されない。また、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な修正や変更がなされ得る。
【0131】
本教示の多くの態様を実施するための様々な方法について詳細に説明したが、本教示の属する技術分野の知識を有する者であれば、添付の特許請求の範囲内において本教示を実行するために様々な代替的態様があることを理解されよう。上記の説明に含まれる事項及び添付の図面に示される事項のすべてが例示するためのものであると理解されるべきであり、当業者には理解され得る代替的な実施例の範囲全体の例が、発明の内容と構造的及び/又は機能的に同等物であるか、そうではなくても発明の内容に基づいて自明であるので、明確に記載されていることだけや説明された実施例だけに限定されるものではない。