(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105086
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】抗菌性縫合糸を含む抗菌性創傷閉鎖材料、及びそれを用いた創傷閉鎖法
(51)【国際特許分類】
A61L 17/00 20060101AFI20220705BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220705BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220705BHJP
A61L 17/06 20060101ALI20220705BHJP
A61L 17/04 20060101ALI20220705BHJP
A61L 17/10 20060101ALI20220705BHJP
A61L 17/12 20060101ALI20220705BHJP
A61L 31/12 20060101ALI20220705BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20220705BHJP
A61K 31/549 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
A61L17/00 100
A61P17/02
A61P31/04
A61L17/06
A61L17/04
A61L17/10
A61L17/10 100
A61L17/12
A61L31/12
A61L31/16
A61K31/549
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022072064
(22)【出願日】2022-04-26
(62)【分割の表示】P 2018528205の分割
【原出願日】2016-08-18
(31)【優先権主張番号】62/292,597
(32)【優先日】2016-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/206,368
(32)【優先日】2015-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518057435
【氏名又は名称】コーメディクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ディルッチオ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ロレンク,ズィー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ミルビー,ランディ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】顕著な抗菌性を有し、かつ合理的なコストで製造できる新規抗菌性縫合糸を提供する。
【解決手段】少なくとも一つのフィラメント10と、前記少なくとも一つのフィラメントによって担持されたタウロリジン20とを含む抗菌性縫合糸。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのフィラメントと、前記少なくとも一つのフィラメントによって担持されたタウロリジンとを含む抗菌性縫合糸。
【請求項2】
前記少なくとも一つのフィラメントが単一フィラメントを含む、請求項1に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項3】
前記少なくとも一つのフィラメントが複数のフィラメントを含む、請求項1に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項4】
前記複数のフィラメントが単一構造を構成するように互いに付着している、請求項3に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項5】
前記複数のフィラメントが複合構造を形成するように共押出しされる、請求項4に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項6】
前記複数のフィラメントが単一構造を構成するように一緒に編組されている、請求項4に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項7】
前記少なくとも一つのフィラメントが再吸収性である、請求項1に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項8】
前記少なくとも一つのフィラメントが非再吸収性である、請求項1に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項9】
前記少なくとも一つのフィラメントがポリマーを含む、請求項1に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項10】
前記少なくとも一つのフィラメントがホモポリマーを含む、請求項9に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項11】
前記少なくとも一つのフィラメントがコポリマーを含む、請求項1に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項12】
前記少なくとも一つのフィラメントが、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(グリコリド-ラクチド)ランダムコポリマー(Vicryl(登録商標))、ポリ-p-ジオキサノン(PDS(登録商標)、PDSII(登録商標))、ポリ(グリコリド-トリメチレンカーボネートブロックコポリマー(Maxon(登録商標))、ポリ(グリコリド-e-カプロラクトン)(Monocryl(登録商標))、グリコリド-ジオキサノン-トリメチレンカーボネートトリブロックコポリマー(Biosyn(登録商標))、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)(Gore-Tex(登録商標))、ステンレススチール、ポリエステル、ポリエステル-エーテル、ポリエステル-カーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、フルオロポリマー、腸線、コラーゲン、再構成コラーゲン、綿、亜麻及び絹からなる群から選ばれる材料を含む、請求項1に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項13】
前記少なくとも一つのフィラメントが材料のマトリックスを含む、請求項1に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項14】
前記タウロリジンが前記材料のマトリックス内に配されている、請求項13に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項15】
前記タウロリジンが前記材料のマトリックス内に実質的に均等に分散されている、請求項13に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項16】
前記タウロリジンが前記材料のマトリックスの一つ又は複数の領域に限定されている、請求項13に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項17】
前記少なくとも一つのフィラメントが押出しされ、さらに前記タウロリジンが前記少なくとも一つのフィラメントと共押出しされる、請求項16に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項18】
前記タウロリジンがタウロリジンを含有する材料のマトリックスを構成し、さらに前記タウロリジン含有材料マトリックスの材料が前記フィラメントの前記材料のマトリックスの材料と同じである、請求項17に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項19】
前記タウロリジンがタウロリジン含有材料マトリックスを構成し、さらに前記タウロリジン含有材料マトリックスの材料が前記フィラメントの前記材料のマトリックスの材料とは異なる、請求項17に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項20】
前記タウロリジンが前記少なくとも一つのフィラメント上にコーティングとして配置されている、請求項13に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項21】
前記コーティングが前記少なくとも一つのフィラメントと共押出しされる、請求項20に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項22】
前記コーティングがタウロリジン含有材料マトリックスを含み、さらに前記タウロリジン含有材料マトリックスの材料が前記フィラメントの前記材料のマトリックスの材料と同じである、請求項21に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項23】
前記コーティングがタウロリジン含有材料マトリックスを含み、さらに前記タウロリジン含有材料マトリックスの材料が前記フィラメントの前記材料のマトリックスの材料とは異なる、請求項21に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項24】
前記タウロリジンのコーティングの上面に配置されたオーバーコーティングをさらに含む、請求項20に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項25】
多数のフィラメントを含み、さらにタウロリジンがフィラメントの間の間隙に配されている、請求項1に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項26】
前記少なくとも一つのフィラメントが吸収性であり、さらにタウロリジン溶液が前記少なくとも一つのフィラメント中に導入される、請求項1に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項27】
抗菌性縫合糸中のタウロリジンの割合が約1重量%より高い割合を構成する、請求項1に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項28】
抗菌性縫合糸中のタウロリジンの割合が約2重量%より高い割合を構成する、請求項1に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項29】
抗菌性縫合糸中のタウロリジンの割合が約6重量%より高い割合を構成する、請求項1
に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項30】
抗菌性縫合糸中のタウロリジンの割合が約10重量%より高い割合を構成する、請求項1に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項31】
さらに逆とげを含む、請求項1に記載の抗菌性縫合糸。
【請求項32】
創傷の処置法であって、該方法は、
少なくとも一つのフィラメントと、前記少なくとも一つのフィラメントによって担持されたタウロリジンとを含む抗菌性縫合糸を用意し;そして
創傷を前記抗菌性縫合糸で処置する
ことを含む方法。
【請求項33】
抗菌性の手術用ステープルであって、
手術用ステープル;及び
前記手術用ステープルによって担持されたタウロリジン
を含む抗菌性の手術用ステープル。
【請求項34】
創傷の処置法であって、該方法は、
抗菌性の手術用ステープルを用意し、前記抗菌性の手術用ステープルは、手術用ステープル、及び前記手術用ステープルによって担持されたタウロリジンを含み;そして
創傷を前記抗菌性の手術用ステープルで処置する
ことを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
係属中の先行特許出願への参照
本特許出願は、
(i)CorMedix Inc.社及びRobert DiLuccioらによる係属中の先行米国仮特許出願第62/206,368号(2015年8月18日出願)「抗菌性縫合糸を含む抗菌性創傷閉鎖材料(ANTIMICROBIAL WOUND CLOSURE MATERIALS, INCLUDING ANTIMICROBIAL SUTURES)」(代理人整理番号CORMEDIX-2 PROV)に基づく利益と;
(ii)CorMedix Inc.社及びRobert DiLuccioらによる係属中の先行米国仮特許出願第62/292,597号(2016年2月8日出願)「抗菌性縫合糸を含む抗菌性創傷閉鎖材料」(代理人整理番号CORMEDIX-16 PROV)に基づく利益を主張する。
【0002】
上記2件の特許出願は引用によって本明細書に援用する。
技術分野
本発明は、医療用に使用される縫合糸、ステープルなどに関し、さらに詳しくは、抗菌性を有する縫合糸、ステープルなどに関する。
【背景技術】
【0003】
縫合糸は、創傷及び/又は手術部位切開を閉鎖するため、又は裂傷組織を修復するために一般に使用されている。縫合糸を使用する場合、感染防止が重要である。手術及び創傷閉鎖は滅菌条件下で実施されることが多いが、手術部位感染(SSI)は3番目に多い院内感染で、深刻な有病率及び死亡率とも関連しうる。60パーセント(60%)を超えるSSIが切開領域で発生しているので、抗菌性を有する縫合糸の使用は、そのような感染に対抗し、最終的には、これらのSSI型感染の数及び重症度を低減することによって患者の転帰を改善するのに有用な可能性を有している。
【0004】
抗菌性を有する縫合糸は現存している。現在、抗菌性縫合糸市場における業界リーダーは、Johnson & Johnson社のEthiconである。Johnson & JohnsonのEthicon抗菌性縫合糸は、主にトリクロサン系抗菌剤を利用している。
【0005】
トリクロサンは塩素化フェノール系殺生物剤防腐剤で、Johnson & Johnsonによれば、伝統的な抗生物質とは異なる作用機序を有している。それは多標的殺生物機序を有する“フェノール”で、細胞膜の活動に作用して望まざる微生物を死滅させる非特異的効果を有すると考えられている。また、トリクロサンは、細胞成分の構築及び細胞増殖に使用される脂肪酸合成の必須酵素であるエノイル-アシル輸送タンパク質レダクターゼ(ENR)の活性部位を遮断するとも考えられている。
【0006】
Ethiconのトリクロサン被覆縫合糸は、トリクロサンを含有していない縫合糸と同様の様式で抗菌機能を発揮できるようである。これまでに、トリクロサンが縫合糸の細菌コロニー形成を阻害することを示唆する公表データが存在する。Ford H R,Jones P,Reblock K,Simpkins D L,“被覆ポリグラチン910抗菌性縫合糸及び被覆ポリグラクチン910縫合糸の術中取扱い及び創傷治癒特性(Intra-operative Handling and Wound Healing Characteristics of Coated Polyglatin 910 Antibacterial Suture and Coated Polyglactin 910 Suture)”,Surg.Infec.2005;6;313-21参照。
【0007】
さらに、Ethiconのトリクロサン被覆縫合糸(すなわちEthiconのVICRYL PlusTM抗菌性縫合糸)のインビボ研究によれば、それらは黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、表皮ブドウ球菌(バイオフィルム陽性)及び大腸菌に対して阻害又は殺菌活性を有することが示されている。Storch M L,Rothenberger S J,Jacinto G,“黄色ブドウ球菌接種モルモットにおける被覆VICRYL+抗菌性縫合糸の実験的有効性試験(Experimental Efficacy Study of Coated VICRYL+Antibacterial Suture in Guinea Pigs Challenged with Staphylococcus Aureus),Surg.Infect.J.2004;5;2A1-288参照。
【0008】
Ethiconのトリクロサン被覆縫合糸に関する追加情報は、Ethiconのウェブサイトhttp://www.plussutures.comで見ることができる。Ethiconの抗菌性縫合糸に関する追加の議論は、Stephensonによる米国特許第4,024,871号(1997年5月24日)及びScalzoらによる米国特許第7,513,093号(2009年4月7日)に見出すことができる。特に、読者の注意は、これらEthiconの各特許における先行技術の議論に向けられる。というのは、様々な抗菌剤及び抗菌剤の縫合糸への配合法がその中で議論されているからである。
【0009】
Covidien plc社のTyco Healthcare Groupも、抗菌性縫合糸の分野で活躍している。Tyco抗菌性縫合糸の一例は、Robeyによる米国特許第6,878,757号(2005年4月12日)で議論されている。この特許では、生体吸収性コポリマーと混合された脂肪酸エステル塩を含有する抗菌性縫合糸コーティングが開示されている。
【0010】
別のTyco抗菌性縫合糸の特許出願は、Cohenによる米国特許出願公開第US2007/0010856 A1号(2007年1月11日公開)である。Cohenの抗菌性縫合糸は、複数のフィラメントと、その複数のフィラメントによって画定された間隙とを含み、抗菌溶液はその間隙内に配されている。抗菌性コーティングは複数のフィラメントの少なくとも一部に施されている。Cohenで使用されている好適な抗菌剤は、防腐剤、皮膜形成ポリマー、及び脂肪酸エステルの塩である。その例は、上記Cohenの公開特許出願の段落[0014]に示されている。
【0011】
さらに、Polymedix,Inc.社も抗菌性縫合糸を開発している。Polymedix社の縫合糸は、“新規ディフェンシン模倣化合物”と説明されるPolyCide(登録商標)ポリマーを採用している。これは、(Polymedix社によれば)ヒト及び実質的すべての生物に見出される最も古く最も効果的な抗菌防御系の一つである宿主攻撃タンパク質の合成模倣体である。これらのPolyCides(登録商標)は、細菌の細胞膜を直接破壊し、細菌の耐性発現が起こらないようにする作用機序を持つとされる。これらの抗菌性縫合糸に関する更なる情報は、www.polymedix.com に見出すことができる。Polymedix社の2010年6月11日付報道発表“感染に対抗するための抗菌性縫合糸の新規助成金支援開発(New Grant Supports Development of Antimicrobial
Sutures to Combat Infection)”も参照 (http://www.newswise.com/articles)。
【0012】
銀は、よく知られた抗菌性を持つ別の化合物であり、特定の物品に抗菌性を提供するために銀が使用されている。結紮糸に銀が使用された一つの早期の例は、Clarkによる米国特許第861,231号(1907年7月23日)に示されている。Clarkは、好ましくは銀のヨウ化物を塩として含む防腐剤の塩に浸漬した手術用結紮糸を創製した。
【0013】
抗菌性製品を製造するために銀を使用している別の例は、Indianoによる米国特
許出願公開第2010/0000196号(2010年1月7日公開)に示されている。Indianoでは、繊維製品(非縫合糸関連)に銀を配合し、製品を抗菌性にしている。
【0014】
上記製品は、おそらくそれらの意図する機能を果たしているであろうが、改良の余地は存在する。特に、感染に対して費用効果的な抑止手段を提供するために、顕著な抗菌性を有し、かつ合理的なコストで製造できる新規抗菌性縫合糸が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第4,024,871号
【特許文献2】米国特許第7,513,093号
【特許文献3】米国特許第6,878,757号
【特許文献4】米国特許出願公開第US2007/0010856 A1号
【特許文献5】米国特許第861,231号
【特許文献6】米国特許出願公開第2010/0000196号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Ford H R,Jones P,Reblock K,Simpkins D L,Surg.Infec.2005;6;313-21
【非特許文献2】Storch M L,Rothenberger S J,Jacinto G,Surg.Infect.J.2004;5;2A1-288
【非特許文献3】Polymedix社の2010年6月11日付報道発表
【発明の概要】
【0017】
本発明に従って、抗菌性を有する新規縫合糸を提供する。縫合糸の抗菌性は、タウロリジンを縫合糸に配合することによって提供される。
新規縫合糸は、一つ又は複数のフィラメントと、その一つ又は複数のフィラメントに担持されたタウロリジンとを含みうる。
【0018】
一つ又は複数のフィラメントは、モノフィラメント構造の形態でも又はマルチフィラメント構造の形態でもよい。一つ又は複数のフィラメントがマルチフィラメント構造の場合、一つ又は複数のフィラメントは、(例えば、押出後それらを一緒に融着することによって又はそれらを一緒に編組することによって)一緒に結合されるか、又は一つ又は複数のフィラメントは、複合構造として共押出し(co-extrude)されてもよい。
【0019】
タウロリジンは、タウロリジンをフィラメントのマトリックス内に実質的に均等に分散させることによって、又はタウロリジンをフィラメントのマトリックスの一つ又は複数の領域内に配することによって(例えばタウロリジンを含有するマトリックスをフィラメントのベースマトリックスと共押出しすることによって)、又はタウロリジンをフィラメントの表面に配することによって(例えば被覆又は共押出によって)、又はマルチフィラメント縫合糸の場合、タウロリジンを縫合糸の間隙内に(すなわちマルチフィラメント縫合糸を構成するフィラメント間の間隙に)配することによって、又はフィラメントが吸収性の場合、タウロリジン溶液をフィラメント内に導入することなどによって、一つ又は複数のフィラメントに担持させることができる。
【0020】
(本明細書において、“マトリックス”及び“マトリックス材料”という用語は、フィラメントが形成されるようにダイから押出しされうるか又はその他の方法で加工されうるポリマー又はその他の材料を意味するものとする。)
本発明の縫合糸は、吸収性でも又は非吸収性でもよく、様々なサイズにすることができ
る。
【0021】
吸収性縫合糸。本発明の新規縫合糸を形成するために使用できる吸収性縫合糸材料は、例えば、腸線(ヒツジの腸粘膜下組織由来コラーゲン縫合糸)、再構成コラーゲン、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(グリコリド-ラクチド)ランダムコポリマー(Vicryl(登録商標))、ポリ-p-ジオキサノン(PDS(登録商標)、PDSII(登録商標))、ポリ(グリコリド-トリメチレンカーボネートブロックコポリマー(Maxon(登録商標))、ポリ(グリコリド-e-カプロラクトン)(Monocryl(登録商標))、及びグリコリド-ジオキサノン-トリメチレンカーボネートトリブロックコポリマー(Biosyn(登録商標))などである。
【0022】
非吸収性縫合糸。本発明の新規縫合糸を形成するために使用できる非吸収性縫合糸材料は、天然繊維(例えば、絹、綿及び亜麻)を含むフィラメント及び合成繊維(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ(テトラフルオロエチレン)(Gore-Tex(登録商標)、及びステンレススチール)を含むフィラメントなどである。
【0023】
縫合糸サイズ。本発明の新規縫合糸は様々なサイズで提供できる。さらに詳しくは、縫合糸材料のサイズを言うのに二つの標準が一般に使用される。すなわち米国薬局方(USP)及びヨーロッパ薬局方(EP)である。
【0024】
USP標準が最も一般的に使用されている。USP標準では、サイズは一つ又は複数のアラビア数字で表されている。サイズ0は0.4mmの直径を有する(コラーゲン縫合糸用);0.4mmより大きいサイズ(コラーゲン縫合糸用)は昇順アラビア数字を有する。例えばサイズ1は0.5mmの直径を有し(コラーゲン用)、サイズ2は0.6mmの直径を有する(コラーゲン用)などである。そして0.4mmより小さいサイズ(コラーゲン縫合糸用)は、昇順アラビア数字に“-0”(又は“/0”)を付ける。例えば、サイズ2-0は0.35mmの直径を有し(コラーゲン用)、サイズ3-0は0.3mmの直径を有する(コラーゲン用)などである。
【0025】
直径の範囲が各USP縫合糸サイズに対して容認されているので、同じUSPサイズを有するが異なる材料から形成された縫合糸の引張強さは互いに異ることもある。制限なしに例を挙げると、二つの異なる製造業者製の同じUSPサイズの2種類のポリプロピレン縫合糸は、わずかに異なる直径のために縫合糸の断面積が異なる可能性があるため、異なる引張強さを有することがある。さらに、第一の製造業者によって製造され、より小さい直径を有するポリプロピレン縫合糸が、第二の製造業者によって製造され、より大きい直径を有する別のポリプロピレン縫合糸よりも高い引張破断強さを有することもある。さらに、例えば、一定の材料で製造された縫合糸は、それらの物理的性質がアニール又は延伸のいずれかによって変更されることもある。
【0026】
活性成分を縫合糸に配合する場合、活性成分を縫合糸のフィラメントのマトリックス内に配する(例えば、活性成分を縫合糸のマトリックス内に分散させることによって又は活性成分を含有するマトリックスをフィラメントのベースマトリックスと共押出しすることによって)、又は縫合糸のフィラメントの表面上に配する(例えばコーティングとして)、又は縫合糸のフィラメントと共押出しされたシース(外装)内に配する(例えば、活性成分を含有するマトリックスをフィラメントのベースマトリックスと共押出しすることによって)、又はマルチフィラメント縫合糸の場合、縫合糸の間隙内(すなわちマルチフィラメント縫合糸を構成するフィラメント間の間隙に)に配することによって、又は縫合糸のフィラメントが吸収性の場合、タウロリジン溶液をフィラメント内に導入することなどによって、活性成分の縫合糸への装填(loading)を最適化することが一般的に最善である。このようにして縫合糸の物理的性質は維持できる。
【0027】
従って、本発明の場合、タウロリジンは、縫合糸のフィラメントのマトリックス内に組み込まれる(例えば、タウロリジンを縫合糸のマトリックス内に分散させることによって又はタウロリジンを含有するマトリックスをフィラメントのベースマトリックスと共押出しすることによって)、又は縫合糸のフィラメントの表面上に配される(例えばコーティングとして)、又は縫合糸のフィラメントと共押出しされたシース(外装)内に配される(例えば、タウロリジンを含有するマトリックスをフィラメントのベースマトリックスと共押出しすることによって)、又はマルチフィラメント縫合糸の場合、縫合糸の間隙内(すなわちマルチフィラメント縫合糸を構成するフィラメント間の間隙に)に配される、又は縫合糸のフィラメントが吸収性の場合、タウロリジン溶液をフィラメント内に導入するなどである。
【0028】
本発明の別の側面に従って、抗菌性を有する縫合糸を製造するための方法も提供する。抗菌性は、タウロリジンを縫合糸に組み込むことによって提供される。本発明に従って、抗菌性を有する縫合糸を製造するための方法は、タウロリジンを縫合糸のフィラメントのマトリックスに混合する、又はタウロリジンを縫合糸のフィラメント内の一つ又は複数の領域に共押出しする(例えば、タウロリジンを含有するマトリックスをフィラメントのベースマトリックスと共押出しすることによって)、又はタウロリジンを縫合糸のフィラメントの表面上に被覆する、又はタウロリジンを縫合糸のフィラメントを覆うシースとして共押出しする(例えば、タウロリジンを含有するマトリックスをフィラメントのベースマトリックスと共押出しすることによって)、又はマルチフィラメント縫合糸の場合、タウロリジンを縫合糸の間隙内に(すなわちマルチフィラメント縫合糸を構成するフィラメント間の間隙に)配する、又はフィラメントが吸収性の場合、タウロリジン溶液をフィラメント内に導入することなどを含む。
【0029】
タウロリジンを共押出法を通じて縫合糸に添加する場合、(i)タウロリジンを含むマトリックス(すなわち“タウロリジン含有マトリックス”)、及び(ii)フィラメントのベースマトリックスを用意し、次いで“タウロリジン含有マトリックス”をフィラメントのベースマトリックスと共押出しすることによって、抗菌性縫合糸用の抗菌性フィラメントを形成させるのが多くの場合望ましいことは理解されるはずである。
【0030】
本発明の一つの好適な形態において、タウロリジンを組み込むマトリックス材料は、フィラメントの残りを構成するマトリックス材料と同じである。これは、タウロリジン含有マトリックスとフィラメント残りのマトリックス材料との界面における“相変化”の創出を回避するのに役立つ。
【0031】
しかしながら、所望であれば、タウロリジンを組み込むマトリックス材料は、フィラメントの残りのマトリックス材料とは異なっていてもよいことも理解されるはずである。
そして、フィラメントが多孔質構造を含む場合(例えば一定の天然繊維の場合のように)、フィラメントをタウロリジンを含有する溶液に暴露して、タウロリジンがフィラメントの多孔質構造に侵入するようにしてもよいことも理解されるはずである。得られる縫合糸は、“湿潤”状態(すなわち、タウロリジンを含有する溶液で湿らせるか又は該溶液中に浸漬する)で包装することも、又は“乾燥”状態(すなわち、乾燥させて液体を除去し、タウロリジンをフィラメントの多孔質構造内にのみ残す)で包装することもできる。
【0032】
本発明の新規縫合糸は、良好な“縫合糸”特性、すなわち、破断を防止するに足る引張強さと、高度に曲げられる糸のように振る舞えるに足る曲げ性及び展性を有しながらも、タウロリジンによって提供される抗菌活性も保有するように構成される。
【0033】
そして、本発明の新規縫合糸は、縫合糸にそれらの所望の物理的性質を保持させながら十分な抗菌性も提供するように、縫合糸中のタウロリジンの重量パーセントが少なくとも約1%、好ましくはそれより高くなるように構成される。
【0034】
さらに、タウロリジンを組み込んだ新規ステープルも本発明に従って提供される。
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントと、その少なくとも一つのフィラメントによって担持されたタウロリジンとを含む抗菌性縫合糸を提供する。
【0035】
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは、単一フィラメントを含む。
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは、複数のフィラメントを含む。
【0036】
本発明の一つの好適な形態において、複数のフィラメントは、単一構造を構成するように互いに付着している。
本発明の一つの好適な形態において、複数のフィラメントは、複合構造を形成するように共押出しされる。
【0037】
本発明の一つの好適な形態において、複数のフィラメントは、単一構造を構成するように一緒に編組されている。
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは、再吸収性である。
【0038】
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは、非再吸収性である。
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは、ポリマーを含む。
【0039】
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは、ホモポリマーを含む。
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは、コポリマーを含む。
【0040】
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(グリコリド-ラクチド)ランダムコポリマー(Vicryl(登録商標))、ポリ-p-ジオキサノン(PDS(登録商標)、PDSII(登録商標))、ポリ(グリコリド-トリメチレンカーボネートブロックコポリマー(Maxon(登録商標))、ポリ(グリコリド-e-カプロラクトン)(Monocryl(登録商標))、グリコリド-ジオキサノン-トリメチレンカーボネートトリブロックコポリマー(Biosyn(登録商標))、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)(Gore-Tex(登録商標))、ステンレススチール、ポリエステル、ポリエステル-エーテル、ポリエステル-カーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、フルオロポリマー、腸線、コラーゲン、再構成コラーゲン、綿、亜麻及び絹からなる群から選ばれる材料を含む。
【0041】
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは、材料のマトリックスを含む。
本発明の一つの好適な形態において、タウロリジンは材料のマトリックス内に配されている。
【0042】
本発明の一つの好適な形態において、タウロリジンは材料のマトリックス内に実質的に均等に分散されている。
本発明の一つの好適な形態において、タウロリジンは材料のマトリックスの一つ又は複数の領域に限定されている。
【0043】
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは押出しされ、タウロリジンは少なくとも一つのフィラメントと共押出しされる。
本発明の一つの好適な形態において、タウロリジンは少なくとも一つのフィラメント上にコーティングとして配置されている。
【0044】
本発明の一つの好適な形態において、コーティングは少なくとも一つのフィラメントと共押出しされる。
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸はさらに、タウロリジンのコーティングの上面に配置されたオーバーコーティングを含む。
【0045】
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸は多数のフィラメントを含み、タウロリジンはフィラメント間の間隙に配されている。
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸は、吸収性である少なくとも一つのフィラメントを含み、タウロリジン溶液は少なくとも一つのフィラメントに導入されている。
【0046】
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸中のタウロリジンの割合は約1重量%より高い割合を構成する。
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸中のタウロリジンの割合は約2重量%より高い割合を構成する。
【0047】
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸中のタウロリジンの割合は約6重量%より高い割合を構成する。
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸中のタウロリジンの割合は約10重量%より高い割合を構成する。
【0048】
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸はさらに、逆とげ(barb)を含む。
本発明の別の好適な形態において、創傷の処置法を提供し、該方法は、
少なくとも一つのフィラメントと、その少なくとも一つのフィラメントによって担持されたタウロリジンとを含む抗菌性縫合糸を用意し;そして
創傷をその抗菌性縫合糸で処置する
ことを含む。
【0049】
本発明の別の好適な形態において、抗菌性の手術用ステープルを提供し、該ステープルは、
手術用ステープル;及び
該手術用ステープルによって担持されたタウロリジン
を含む。
【0050】
本発明の別の好適な形態において、創傷の処置法を提供し、該方法は、
抗菌性の手術用ステープルを用意し、その抗菌性の手術用ステープルは、手術用ステープル及び該手術用ステープルによって担持されたタウロリジンを含み;そして
創傷をその抗菌性の手術用ステープルで処置する
ことを含む。
【0051】
本発明のこれら及びその他の目的及び特徴は、以下の本発明の好適な態様の詳細な説明によってより十分に開示されるか又は明らかとなるであろう。詳細な説明は添付の図面と合わせて考慮されるものとする。図面中の同様の数字は同様の部品を指す。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】
図1は、本発明に従って形成された新規抗菌性縫合糸の概略図を示す。
【
図2】
図2は、本発明に従って形成された新規抗菌性縫合糸の概略図を示す。
【
図3】
図3は、本発明に従って形成された新規抗菌性縫合糸の概略図を示す。
【
図4】
図4は、本発明に従って形成された新規抗菌性縫合糸の概略図を示す。
【
図5】
図5は、本発明に従って形成された新規フィラメントの概略図を示す。
【
図6】
図6は、本発明に従って形成された別の新規フィラメントの概略図を示す。
【
図7】
図7は、本発明に従って形成された別の新規フィラメントの概略図を示す。
【
図8】
図8は、本発明に従って形成された別の新規フィラメントの概略図を示す。
【
図9】
図9は、本発明に従って形成された別の新規フィラメントの概略図を示す。
【
図10】
図10は、本発明に従って形成された新規抗菌性ステープルの概略図を示す。
【
図11】
図11は、本発明の二つの可能な構成を示す概略図である。
【
図12】
図12は、本発明の二つのその他の可能な構成を示す概略図である。
【
図13】
図13は、本発明の六つのその他の可能な構成を示す概略図である。
【
図14】
図14は、様々な濃度のタウロリジンを担持するフィラメントの、いくつかの例示的微生物に暴露された場合の阻害域試験をまとめた表を示す。
【
図15】
図15は、
図14の阻害域データのグラフ表示であり、阻害域は試験された各フィラメント中のタウロリジンの濃度の増加に伴って増大していることを示す。
【
図16】
図16は、試験されたフィラメントを取り囲む代表的阻害域を示す。
【
図17】
図17は、初期濃度の緑膿菌(PA01)の場合、各試験フィラメントによって観察された殺菌量は、各試験フィラメント中のタウロリジンの濃度と相関していることを示すグラフ表示である。
【
図18】
図18は、初期濃度の多剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)株SABAA44の場合、各試験フィラメントによって観察された殺菌量は、各試験フィラメント中のタウロリジンの濃度と相関していることを示すグラフ表示である。
【
図19】
図19は、初期濃度の表皮ブドウ球菌株S.epi 35984の場合、各試験フィラメントによって観察された殺菌量は、各試験フィラメント中のタウロリジンの濃度と相関していることを示すグラフ表示である。
【
図20】
図20は、本発明に従って形成された縫合糸のその他の例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
前述のように、先行技術の抗菌性縫合糸は当該技術分野において知られている。縫合糸に抗菌性を組み込んで、微生物(microbe)及び病原菌(germ)の増殖に対抗し、これらの微
生物及び病原菌による感染の創出及び伝播に対抗するのは有益である。こうした感染は、創傷又は手術部位に伴うことが多い合併及び有害事象である。微生物の殺滅及び/又は微生物増殖の遅延により、感染の機会及び/又は重症度が低減するので、治癒過程の促進に役立ち、処置の成功率も増大する。縫合糸は、通常、創傷又は手術部位を閉鎖するために使用される。従って、縫合糸に抗菌性を付与することは、創傷及び/又は手術部位に伴う感染を削減する機会を提供する。
【0054】
本発明に従って、縫合糸に抗菌性が提供されるように、タウロリジンが縫合糸に組み込まれる。
タウロリジン(ビス(1,1-ジオキソペルヒドロ-1,2,4-チアジアジニル-4
)-メタン)は、抗菌性及び抗リポ多糖性を有している。これはアミノ酸のタウリンに由来する。タウロリジンの免疫調節作用は、マクロファージ及び多核形白血球のプライミング及び活性化によって媒介されると報告されている。
【0055】
タウロリジンは、腹膜炎の患者の治療をするため、及び全身性炎症反応症候群の患者への抗内毒素剤(antiendoxic agent)として、使用されている。タウロリジンは、重症の腹
部敗血症及び腹膜炎のための救命抗菌剤である。タウロリジンは、グラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌、マイコバクテリウムのほか、様々な抗生物質に対して耐性を有するMRSA、VISA、VRSA、ORSA、VREなどの細菌も含む広範囲の微生物に対して活性である。さらに、タウロリジンは、多少の抗腫瘍性も示し、胃腸悪性腫瘍及び中枢神経系の腫瘍を治療するための薬物を用いた初期臨床試験で肯定的な結果が得られている。
【0056】
タウロリジンは、カテーテル関連血流感染(CRBSIs)の予防及び治療のための抗菌性カテーテルロック溶液の活性成分としても使用されるので、あらゆるカテーテルベースの血管アクセス器具への使用に適している。
【0057】
タウロリジンに対する細菌耐性は各種試験でこれまで観察されていない。
タウロリジンは、非選択的化学的反応によって作用する。水溶液中では、親分子のタウロリジンは、タウルルタム及びN-ヒドロキシメチルタウルルタムと平衡を形成し、タウリンアミドは下流誘導体である。
【0058】
タウロリジンの活性物質はタウルルタム及びタウリンアミドのN-メチロール誘導体で、これは細菌の細胞壁、細胞膜、及びタンパク質と反応するほか、内毒素及び外毒素の第一アミノ基とも反応する。微生物は殺滅され、結果として生ずる毒素は不活化される。インビトロにおける破壊時間は30分である。
【0059】
炎症性サイトカイン及び増強されたTNF-αレベルは、タウロリジンをカテーテルロック溶液として使用すると低減する。
タウロリジンは、線毛及び鞭毛を破壊することによって細菌及び真菌の宿主細胞への付着を低減するので、バイオフィルムの形成を防止する。
【0060】
2時間かけ、4時間毎、少なくとも48時間にわたる5g用量のタウロリジンを様々な敗血症状態の治療のために静脈内投与したところ、有益な結果が観察された。
本発明は、新規抗菌性縫合糸の提供及び使用を含み、新規抗菌性縫合糸は、一つ又は複数のフィラメントと、その一つ又は複数のフィラメントに担持されたタウロリジンを含みうる。
【0061】
一つ又は複数のフィラメントは、モノフィラメント構造の形態でも又はマルチフィラメント構造の形態でもよい。一つ又は複数のフィラメントがマルチフィラメント構造の場合、一つ又は複数のフィラメントは、(例えば、押出後それらを一緒に融着することによって又はそれらを一緒に編組することによって)一緒に結合されるか、又は一つ又は複数のフィラメントは、複合構造として共押出しされてもよい。
【0062】
タウロリジンは、タウロリジンをフィラメントのマトリックス内に実質的に均等に分散させることによって、又はタウロリジンをフィラメントのマトリックスの一つ又は複数の領域内に配することによって(例えばタウロリジンを含有するマトリックスをフィラメントのベースマトリックスと共押出しすることによって)、又はタウロリジンをフィラメントの表面に配することによって(例えば被覆又は共押出によって)、又はマルチフィラメント縫合糸の場合、タウロリジンを縫合糸の間隙内に(すなわちマルチフィラメント縫合糸を構成するフィラメント間の間隙に)配することによって、又はフィラメントが吸収性
の場合、タウロリジン溶液をフィラメント内に導入することなどによって、一つ又は複数のフィラメントに担持させることができる。
【0063】
本発明の一つの好適な形態において、ここで
図1を参照すると、少なくとも一つのフィラメントと、その少なくとも一つのフィラメントによって担持されたタウロリジンとを含む抗菌性縫合糸5が提供される。
【0064】
本発明の一つの好適な形態において、次に
図2を参照すると、抗菌性縫合糸は、単一フィラメント10(及び単一フィラメント10によって担持されたタウロリジン)を含む。
本発明の別の好適な形態において、次に
図3を参照すると、抗菌性縫合糸は、複数のフィラメント10(及び複数のフィラメント10の一つ又は複数によって担持されたタウロリジン)を含む。
【0065】
本発明の一つの好適な形態において、複数のフィラメント10は単一構造を構成するように互いに付着している。
本発明の一つの好適な形態において、複数のフィラメントは複合構造を形成するように共押出しされる。
【0066】
本発明の一つの好適な形態において、次に
図4を参照すると、複数のフィラメント10は単一構造を構成するように一緒に編組されている。
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは、再吸収性である。
【0067】
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは、非再吸収性である。
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは、ポリマーを含む。
【0068】
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは、ホモポリマーを含む。
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは、コポリマーを含む。
【0069】
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(グリコリド-ラクチド)ランダムコポリマー(Vicryl(登録商標))、ポリ-p-ジオキサノン(PDS(登録商標)、PDSII(登録商標))、ポリ(グリコリド-トリメチレンカーボネートブロックコポリマー(Maxon(登録商標))、ポリ(グリコリド-e-カプロラクトン)(Monocryl(登録商標))、グリコリド-ジオキサノン-トリメチレンカーボネートトリブロックコポリマー(Biosyn(登録商標))、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)(Gore-Tex(登録商標))、ステンレススチール、ポリエステル、ポリエステル-エーテル、ポリエステル-カーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、フルオロポリマー、腸線、コラーゲン、再構成コラーゲン、綿、亜麻及び絹からなる群から選ばれる材料を含む。
【0070】
本発明の一つの好適な形態において、次に
図5を参照すると、少なくとも一つのフィラメント10は、材料のマトリックス15を含み、タウロリジン20は材料のマトリックス内に実質的に均等に分散されている。
【0071】
本発明の一つの好適な形態において、次に
図6を参照すると、タウロリジン20は、材
料のマトリックス15の一つ又は複数の領域25に限定されている。
本発明の一つの好適な形態において、少なくとも一つのフィラメントは押出しされ、タウロリジンは少なくとも一つのフィラメントと共押出しされる。
【0072】
本発明の一つの好適な形態において、タウロリジンは少なくとも一つのフィラメントと共押出しされる。その場合、タウロリジンは、マトリックス材料+タウロリジンを含むマトリックス内に含有され、タウロリジン配合マトリックス材料はフィラメントの残りと同じマトリックス材料である。
【0073】
本発明の一つの好適な形態において、タウロリジンは少なくとも一つのフィラメントと共押出しされる。その場合、タウロリジンは、マトリックス材料+タウロリジンを含むマトリックス内に含有され、タウロリジン配合マトリックス材料はフィラメントの残りとは異なるマトリックス材料である。
【0074】
本発明の一つの好適な形態において、次に
図7を参照すると、タウロリジン20は、少なくとも一つのフィラメント上のコーティング30として配置されている。
本発明の一つの好適な形態において、コーティング30は、少なくとも一つのフィラメントと共押出しされる。
【0075】
本発明の一つの好適な形態において、タウロリジン含有コーティング30は、少なくとも一つのフィラメントと共押出しされる。その場合、タウロリジンは、マトリックス材料+タウロリジンを含むマトリックス内に含有され、タウロリジン配合マトリックス材料はフィラメントの残りと同じマトリックス材料である。
【0076】
本発明の一つの好適な形態において、タウロリジン含有コーティング30は、少なくとも一つのフィラメントと共押出しされる。その場合、タウロリジンは、マトリックス材料+タウロリジンを含むマトリックス内に含有され、タウロリジン配合マトリックス材料はフィラメントの残りとは異なるマトリックス材料である。
【0077】
本発明の一つの好適な形態において、次に
図8を参照すると、少なくとも一つのフィラメントはさらに、タウロリジンのコーティング30の上面に配置されたオーバーコーティング35を含む。
【0078】
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸は多数のフィラメントを含み、タウロリジンはフィラメント間の間隙に配されている。
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸は少なくとも一つのフィラメントを含み、少なくとも一つのフィラメントは多孔質構造を含む。これをタウロリジンに暴露し(例えば、タウロリジンを含有する溶液で湿らせるか又は該溶液中に浸漬する)、タウロリジンが少なくとも一つのフィラメントの多孔質構造内に存在するようにする。
【0079】
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸は多孔質構造を含む少なくとも一つのフィラメントを含み、抗菌性縫合糸は、タウロリジンを含む溶液中に浸漬されるか又は該溶液で湿らせて包装される(すなわち、抗菌性縫合糸は“湿潤”状態で包装される)。
【0080】
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸は多孔質構造を含む少なくとも一つのフィラメントを含み、抗菌性縫合糸は、タウロリジンを含有する溶液に暴露された後、乾燥されてから包装される(すなわち、抗菌性縫合糸は“乾燥”状態で包装される)。
【0081】
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸中のタウロリジンの割合は約1重量%より高い割合を構成する。
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸中のタウロリジンの割合は約2重量%より高い割合を構成する。
【0082】
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸中のタウロリジンの割合は約6重量%より高い割合を構成する。
本発明の一つの好適な形態において、抗菌性縫合糸中のタウロリジンの割合は約10重量%より高い割合を構成する。
【0083】
本発明の一つの好適な形態において、次に
図9を参照すると、抗菌性縫合糸はさらに、逆とげ40を含む。
本発明の別の好適な形態において、創傷の処置法を提供し、該方法は、
少なくとも一つのフィラメントと、その少なくとも一つのフィラメントによって担持されたタウロリジンとを含む抗菌性縫合糸を用意し;そして
創傷をその抗菌性縫合糸で処置する
ことを含む。
【0084】
本発明の別の好適な形態において、次に
図10を参照すると、抗菌性の手術用ステープル45が提供される。抗菌性の手術用ステープル45は、一般的に、手術用ステープル50とその手術用ステープルによって担持されたタウロリジンとを含む。制限なしに例を挙げると、抗菌性の手術用ステープル45は、タウロリジンを含むモノフィラメント構造を含みうる。タウロリジンは、例えば、上記抗菌性縫合糸の少なくとも一つのフィラメントにタウロリジンが組み込まれるのと同様の方法でモノフィラメント構造に組み込まれている。
【0085】
本発明の別の好適な形態において、創傷の処置法を提供し、該方法は、
抗菌性の手術用ステープルを用意し、その抗菌性の手術用ステープルは、手術用ステープル及び該手術用ステープルによって担持されたタウロリジンを含み;そして
創傷をその抗菌性の手術用ステープルで処置する
ことを含む。
【0086】
本発明に従って、制限なしに例を挙げると、新規抗菌性ナイロン縫合糸が提供できる。その場合、モノフィラメントタイプの“糸(thread)”はプラスチック製の釣り糸のようなものであるが、一般的にははるかに細い。縫合糸のナイロンコアの直径は、好ましくは約2.5デシテックスである。“デシテックス”は、繊維フィラメントの厚さ又は直径の測定単位で、各1万メートルの糸(yarn)の重量グラム数のことである。より一般的な提説としては、デシテックス数は、糸のサイズ、又はその粗さを定義するために使用される数字で、一般的には高いデシテックス数ほど粗い糸に関連する。また、デシテックスは、ある程度、糸の強度とも相関し、高いデシテックス数ほど、低いデシテックス数を有する糸より強い糸を示す傾向がある。その厚さに加えて、特定の糸の強度は、糸に使用された材料の種類にも依存する。それでも、特定の種類の糸材料に関し、高いデシテックス数は通常、より強い糸を示す。別の類似の測定パラメーターは“デニール”という用語である。デニールはアメリカの測定単位で、9千メートルの糸の重量に関連する。
【0087】
新規抗菌性縫合糸の様々な例示的構造を
図11~13に示す。新規抗菌性縫合糸は、一つ又は複数の個々の構造フィラメントを含むことができ、構造フィラメントは好ましくはナイロンコアを含む構造部分を有する。ナイロンコアは、抗菌性部分を含有する外面を有しうる。別の態様において、ナイロン縫合糸のコアは抗菌性材料を有していなくてもよいが、フィラメントのシースは抗菌剤を含有しうる。十分な抗菌剤(例えばタウロリジン)がポリマーのマトリックスに又はフィラメントのコーティングとして添加され、縫合糸に抗菌性を提供する一方で、縫合糸の物理的性質はなお維持されている。
【0088】
抗菌剤の量とナイロン又はフィラメントとの間の比を決定する場合、一般的にはうまくバランスを取るのが望ましい。使用される抗菌剤が少なすぎると、製品の抗菌性に悪影響を及ぼしそうである。他方、使用される抗菌剤が多すぎると、縫合糸の材料特性に影響を及ぼす可能性があり、及び/又は不必要に高騰した抗菌性縫合糸のコストをもたらすことになる。
【0089】
また、抗菌性縫合糸の製造においてバランスを取ることも一般的に望ましい。制限なしに例を挙げると、ポリマーの押出温度(押出ポリマーフィラメントの場合)と抗菌剤のバランスを取り、製造過程で抗菌剤が分解しないようにすることが重要である。
【0090】
本発明の一つの形態において、抗菌性縫合糸材料は、押出しされた後、長いロールにして縫合糸製造業者に送られる。縫合糸製造業者は、縫合糸の“糸”のロールを予め決められたサイズのセグメントに切断し、所望長さの縫合糸セグメントを作製する。次いで、典型的には針が切断縫合糸セグメントに付け加えられる。典型的には、完成した縫合糸/針アセンブリは、縫合糸と針が無菌プラスチックパウチに密封されるように包装される。
【0091】
このようにして形成された縫合糸は、現在市場に出回っている抗菌性縫合糸、例えばJohnson & JohnsonのETHICON部門から販売されているトリクロサン縫合糸と一般的には同一の外観と感触を有する。縫合糸は強靱かつ柔軟である。
【0092】
上記縫合糸は、一般的に外的縫合糸としての使用によく適応する。しかしながら、内的に使用される縫合糸の場合、修正が好ましいであろう。例えば、フィラメントの表面付近だけに抗菌剤を使用するより、縫合糸のコア内に抗菌剤を含有する縫合糸を使用するのが好適であろう。
【0093】
さらに、包装には幅広いバリエーションがあることが予想される。例えば、一部の包装縫合糸は縫合糸の長さが数センチメートルしかないかもしれない。他の縫合糸は、例えば1本の非常に長い縫合糸を必要とする作業用に40メートルもの長さになることもある。縫合糸の様々な種類、サイズ及び長さは、www.suturedirect.comなどの複数のウェブサイトで見出すことができる。
【実施例0094】
例として、タウロリジン含有抗菌性縫合糸の性能を評価するために、以下の評価を実施した。3種類の微生物に対する阻害域試験のほか、初期濃度の3種類の試験微生物に浸漬された抗菌性フィラメントの溶液暴露を実施した。
【0095】
フィラメント製造。フィラメントを、タウロリジンと、縫合糸材料を代表する2種類の試験ポリマーとを用いて製造した。ポリマーは、ポリε-カプロラクトンとp-ジオキサノンであった。タウロリジンを、Thermo Haake社の単一ホールダイ(hole die)を備えた16mm二軸スクリュー押出機を使用し、ポリマーに押し出した。得られた構造体は、フィラメントのマトリックス全体に分散された2、6及び10%のタウロリジンを含有する非延伸フィラメントであった。タウロリジンは粉末として導入されるが、ポリマーはペレットとして供給される。次いで、フィラメントを更なる評価に先立ち、包装した。
【0096】
阻害域の評価。阻害域試験は、問題の特定細菌株に対する抗菌性物質の阻害効果を評価するための慣用法である。阻害域アッセイは拡散性薬剤の試験に有用である。薬剤がディスクから拡散すると、濃度は対数的に減少する。微生物の薬剤に対する感受性は、外観及び増殖が起こらない領域のサイズ、すなわち阻害域によって判定される。
【0097】
実施例1
ポリε-カプロラクトン及びp-ジオキサノン中に含浸させたタウロリジンの阻害域の実証
400μlの早期緑膿菌(PAOl)、表皮ブドウ球菌(S.epi 35984)、及び多剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)株(SA BAA-44)を角皿に別々に播種した。それぞれ200μlを25cm×25cmのプレートに、100μlを15cm×15cmのプレートに導入した。4片の各フィラメントを個々にプレートに入れた。試験されたフィラメントは、ポリε-カプロラクトン中に分散された2、6及び10%のタウロリジン、及びp-ジオキサノン中に分散された2、6及び10%のタウロリジンを担持していた。24時間の暴露後、各フィラメントサンプル周囲の阻害域をmmで測定した。
【0098】
阻害域試験の結果を
図14にまとめた(すべての測定ともmm)。
明らかに、阻害域は、試験した各フィラメント中のタウロリジン濃度の増加と共に増大している。
【0099】
結果のグラフ表示を
図15に示す。
図16は、試験されたフィラメント周囲の代表的な阻害域を示す。
生存培養物に対するフィラメントの溶液暴露。タウロリジン含有フィラメントの生存培養物への溶液暴露の効果を調べるために更なる試験を実施した。
【0100】
実施例2
生存微生物含有溶液に入れた薬物担持フィラメントによる殺菌の実証(溶液暴露実験)
この試験では、各フィラメントを、それぞれ3種類の細菌:緑膿菌(PAOl)、表皮ブドウ球菌(S.epi 35984)、及び多剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)株(SA BAA-44)の早期培養物100μlを含有するトリプチック・ソイ・バッファー(Tryptic Soy Buffer)1ml入り12ウェル底培養皿に入れた。24時間の暴露後、3種類の試験微生物について
図17、18及び19に示す結果が得られた。
【0101】
さらに詳しくは、
図17は、初期濃度の緑膿菌(PA01)の場合、各試験フィラメントによって観察された殺菌量は、それぞれにおけるタウロリジンの濃度と良く相関していたことを示す。
図17において、試験された各フィラメントは次の通りであった。
【0102】
PC1=ε-カプロラクトン中2%タウロリジン
PC2=ε-カプロラクトン中6%タウロリジン
PC3=ε-カプロラクトン中10%タウロリジン
PVD=p-ジオキサノン中0%タウロリジン
PD1=p-ジオキサノン中2%タウロリジン
PD2=p-ジオキサノン中6%タウロリジン
PD3=p-ジオキサノン中10%タウロリジン
ε-カプロラクトン中6%以上のタウロリジンを含有していたフィラメントでは完全殺菌が観察された。
【0103】
図18は、初期濃度の多剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)株SA BAA-44の場合、各試験フィラメントによって観察された殺菌量は、それぞれにおけるタウロリジンの濃度と良く相関していたことを示す。
図18において、試験された各フィラメントは次の通りであった。
【0104】
SC1=ε-カプロラクトン中2%タウロリジン
SC2=ε-カプロラクトン中6%タウロリジン
SC3=ε-カプロラクトン中10%タウロリジン
SVD=p-ジオキサノン中0%タウロリジン
SD1=p-ジオキサノン中2%タウロリジン
SD2=p-ジオキサノン中6%タウロリジン
SD3=p-ジオキサノン中10%タウロリジン
2%以上のタウロリジンを含有していた全ε-カプロラクトンフィラメント、及びp-ジオキサノン中6%以上のタウロリジンを含有していたフィラメントでは完全殺菌が観察された。
【0105】
図19は、初期濃度の表皮ブドウ球菌株S.epi 35984の場合、各試験フィラメントによって観察された殺菌量は、それぞれにおけるタウロリジンの濃度と良く相関していたことを示す。
図19において、試験された各フィラメントは次の通りであった。
【0106】
EC1=ε-カプロラクトン中2%タウロリジン
EC2=ε-カプロラクトン中6%タウロリジン
EC3=ε-カプロラクトン中10%タウロリジン
EVD=p-ジオキサノン中0%タウロリジン
ED1=p-ジオキサノン中2%タウロリジン
ED2=p-ジオキサノン中6%タウロリジン
ED3=p-ジオキサノン中10%タウロリジン
図19では、ε-カプロラクトン中6%以上のタウロリジンを含有しているフィラメントは表皮ブドウ球菌の完全殺菌をもたらしたことが分かる。
【0107】
追加実施例
フィラメントの組成、及びフィラメントに担持されるタウロリジンの量が様々なフィラメントを創製することは可能である。例えば、10種類の例示的フィラメントの組成を示す
図20参照。
【0108】
変更
本開示に鑑みて、本発明のなお更なる態様が当業者には明らかであることは理解されよう。本発明は、本明細書中に開示された及び/又は図面に示された特定の構成に決して限定されないばかりか、本発明の範囲内に含まれるあらゆる変更又は等価物も含むことは理解されるはずである。
前記タウロリジンがタウロリジンを含有する材料のマトリックスを構成し、さらに前記タウロリジン含有材料マトリックスの材料が前記フィラメントの前記材料のマトリックスの材料と同じである、請求項17に記載の抗菌性の手術用ステープル。
前記タウロリジンがタウロリジン含有材料マトリックスを構成し、さらに前記タウロリジン含有材料マトリックスの材料が前記フィラメントの前記材料のマトリックスの材料とは異なる、請求項17に記載の抗菌性の手術用ステープル。
前記コーティングがタウロリジン含有材料マトリックスを含み、さらに前記タウロリジン含有材料マトリックスの材料が前記フィラメントの前記材料のマトリックスの材料と同じである、請求項21に記載の抗菌性の手術用ステープル。
前記コーティングがタウロリジン含有材料マトリックスを含み、さらに前記タウロリジン含有材料マトリックスの材料が前記フィラメントの前記材料のマトリックスの材料とは異なる、請求項21に記載の抗菌性の手術用ステープル。