(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105097
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】量子コンピュータの位相追跡及び補正
(51)【国際特許分類】
G06N 10/40 20220101AFI20220705BHJP
【FI】
G06N10/40
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072962
(22)【出願日】2022-04-27
(62)【分割の表示】P 2020205690の分割
【原出願日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】16/716,973
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
2.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・エー.・ウォーカー
(72)【発明者】
【氏名】ドミニック・ルッチェリ
(72)【発明者】
【氏名】ブライス・ジェイ.・ビョーク
(72)【発明者】
【氏名】キャロライン・フィガット
(72)【発明者】
【氏名】パトリシア・リー
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド・チェンバーズ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・アーキン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】量子コンピュータの位相追跡方法及び補正方法を提供する。
【解決手段】量子コンピュータシステムの量子オブジェクトの位相更新トリガ及び相互作用時間を識別するコントローラは、位相更新トリガを識別することに応答して、第1の時間と相互作用時間との間で、その場所及びそこで実行されるに基づいた量子オブジェクトの位相に対する場所/移送効果と、そこに適用される任意の量子演算に基づいた量子オブジェクトの位相に対する量子演算効果と、を決定する。第1の時間に、量子オブジェクトの直前の位相更新が発生している。コントローラは、場所/移送効果、量子演算効果及び相互作用時間に基づいて、量子オブジェクトの相互作用時間位相を決定し、操作源によって生成された信号の位相が相互作用時間における相互作用時間位相に対応するように、操作源の動作を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
量子システムに対応するコントローラによって、前記量子システムの特定の量子オブ
ジェクトの位相更新トリガを識別することであって、前記位相更新トリガは相互作用時間
に対応する、ことと、
前記位相更新トリガを識別することに応答して、前記コントローラによって、前記特
定の量子オブジェクトの1つ以上の場所と、第1の時間と前記相互作用時間との間に前記
特定の量子オブジェクトに対して実行された1つ以上の移送演算と、に基づいて、前記特
定の量子オブジェクトの位相に対する場所及び移送効果を決定することであって、前記第
1の時間に前記特定の量子オブジェクトの直前の位相更新が発生している、ことと、
前記コントローラによって、前記第1の時間と前記相互作用時間との間に前記特定の
量子オブジェクトに適用された任意の量子演算に基づいて、前記特定の量子オブジェクト
の前記位相に対する量子演算効果を決定することと、
前記場所及び移送効果、前記量子演算効果、並びに前記相互作用時間に基づいて、前
記コントローラによって、前記特定の量子オブジェクトの相互作用時間位相を決定するこ
とと、
前記コントローラによって、(a)1つ以上の操作源によって生成され、(b)前記
位相更新トリガに対応する1つ以上の信号の位相は、前記1つ以上の信号の前記位相が前
記相互作用時間における前記特定の量子オブジェクトの前記相互作用時間位相に対応する
ように調整されるようにすることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の信号が、前記相互作用時間に前記特定の量子オブジェクトに入射する
、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位相更新トリガは、前記1つ以上の信号の前記特定の量子オブジェクトへの適用
が前記相互作用時間に発生するようにスケジュールされていると決定することによって識
別され、前記特定の量子オブジェクトに対応する前記位相更新トリガを識別することと、
前記特定の量子オブジェクトの前記位相の前記場所及び移送効果を決定することと、前記
特定の量子オブジェクトの前記位相に対する前記量子演算効果を決定することと、前記1
つ以上の信号の前記位相が調整されるようにすることと、が互いに対してリアルタイム又
はほぼリアルタイムで実行される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な実施形態は、量子システム内の量子オブジェクト(例えば、量子ビット)の位
相を追跡し、量子システム操作源の位相補正を実行することに関する。例えば、様々な実
施形態は、量子コンピュータ内の量子ビットの位相追跡に関する。
【背景技術】
【0002】
量子システムは、量子オブジェクトの時間発展を正確に記述するために量子力学の使
用を必要とし、量子オブジェクトの量子状態を少なくとも部分的に記述するために位相を
使用し得る。様々な量子システムにおいて、量子システムの量子オブジェクトは、(例え
ば、電磁場及び/又は他の環境効果の不在下で)経時的な受動的位相発展とは異なる量子
オブジェクトの位相をもたらし得る様々な環境効果を経験し得る。例えば、量子システム
のイオンが、イオントラップ型量子コンピュータの量子ビットである場合、量子ビットは
、量子ビットが位置するイオントラップの場所又は領域/部分に応じて、電場及び/又は
磁場並びに温度に関連する様々な環境効果を経験し得る。これらの環境効果は、量子ビッ
トの位相に影響を及ぼし得る。加えて、量子ビットに対して量子演算(例えば、ゲート)
が実行されると、エネルギーが量子ビットに加えられ、その量子ビットの位相にも影響を
及ぼし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
第1の態様によれば、方法が提供される。例示的な一実施形態では、この方法は、量
子システムに対応するコントローラによって、量子システムの特定の量子オブジェクトの
位相更新トリガを識別することを含む。量子オブジェクトは、原子又はイオンである。位
相更新トリガは、相互作用時間に対応する。この方法は、位相更新トリガの識別に応答し
て、コントローラによって、特定の量子オブジェクトの1つ以上の場所と、第1の時間と
相互作用時間との間に特定の量子オブジェクトに対して実行された1つ以上の移送演算と
に基づいて、特定の量子オブジェクトの位相に対する場所及び移送効果を決定することと
、コントローラによって、第1の時間と相互作用時間との間に特定の量子オブジェクトに
適用された任意の量子演算に基づいて、特定の量子オブジェクトの位相に対する量子演算
効果を決定することと、を更に含む。第1の時間に、特定の量子オブジェクトの直前の位
相更新が発生している。この方法は、コントローラによって、場所及び移送効果、量子演
算効果、及び相互作用時間に基づいて、特定の量子オブジェクトの相互作用時間位相を決
定することを更に含む。この方法は、コントローラによって、(a)1つ以上の操作源に
よって生成され、(b)位相更新トリガに対応する1つ以上の信号の位相が、その1つ以
上の信号の位相が相互作用時間における特定の量子オブジェクトの相互作用時間位相に対
応するように調整されるようにすることを更に含む。
【0004】
例示的な一実施形態では、1つ以上の信号は、相互作用時間において特定の量子オブ
ジェクトに入射する。例示的な一実施形態では、1つ以上の操作源は、(a)1つ以上の
レーザー、又は(b)1つ以上の電圧源のうちの少なくとも1つを含む。例示的な一実施
形態では、量子演算効果はシュタルクシフトに対応する。例示的な一実施形態では、量子
システムは、イオントラップ型量子コンピュータの一部であり、特定の量子オブジェクト
は、イオントラップ型量子コンピュータの量子ビットである。例示的な一実施形態では、
1つ以上の信号のうちの1つの信号の位相は、信号の位相と特定の量子オブジェクトの相
互作用時間位相との間の差の絶対値が位相差閾値要件を満たすときに、特定の量子オブジ
ェクトの相互作用時間位相に対応する。例示的な一実施形態では、信号の位相と相互作用
時間位相との間の差の絶対値は、信号の位相と相互作用時間位相との間の差の絶対値が設
定された位相差閾値未満であるときに位相差閾値要件を満たす。例示的な一実施形態では
、位相更新トリガは、1つ以上の信号の特定の量子オブジェクト又は量子ビットへの適用
が、相互作用時間で発生するようにスケジュールされていると決定することによって識別
される。例示的な一実施形態では、特定の量子オブジェクトに対応する位相更新トリガを
識別することと、特定の量子オブジェクトの位相の場所及び移送効果を決定することと、
特定の量子オブジェクトの位相に対する量子演算効果を決定することと、1つ以上の信号
の位相が調整されるようにすることと、は、互いに対してリアルタイム又はほぼリアルタ
イムで実行される。例示的な一実施形態では、場所及び移送効果は、特定の量子オブジェ
クトの1つ以上の場所と、第1の時間と相互作用時間との間の1つ以上の場所を介した特
定の量子オブジェクトの移送とに基づいた、特定の量子オブジェクトの有効周波数への変
化に起因する位相変化に対応する。
【0005】
別の態様によれば、量子システムに関連付けられたコントローラが提供される。例示
的な一実施形態では、コントローラは、少なくとも1つの処理要素と、コンピュータプロ
グラムコードを含む/記憶する少なくとも1つのメモリと、を含む。少なくとも1つのメ
モリ及びコンピュータプログラムコードは、コントローラに、量子システムの特定の量子
オブジェクトに関する、相互作用時間に対応する位相更新トリガを少なくとも識別させる
ように、処理要素と共に構成される。少なくとも1つのメモリ及びコンピュータプログラ
ムコードは、コントローラに、少なくとも、位相更新トリガの識別に応答して、特定の量
子オブジェクトの1つ以上の場所と、第1の時間と相互作用時間との間に特定の量子オブ
ジェクトに対して実行された1つ以上の移送演算とに基づいて、特定の量子オブジェクト
の位相に対する場所及び移送効果を決定することと、第1の時間と相互作用時間との間に
特定の量子オブジェクトに適用された任意の量子演算に基づいて、特定の量子オブジェク
トの位相に対する量子演算効果を決定することと、場所及び移送効果、量子演算効果、及
び相互作用時間に基づいて、特定の量子オブジェクトの相互作用時間位相を決定すること
と、(a)1つ以上の操作源によって生成され、(b)位相更新トリガに対応する1つ以
上の信号の位相が、その1つ以上の信号の位相が相互作用時間における特定の量子オブジ
ェクトの相互作用時間位相に対応するように調整されるようにさせることと、を行わせる
ように、処理要素と共に更に構成される。第1の時間に、特定の量子オブジェクトの直前
の位相更新が発生している。
【0006】
例示的な一実施形態では、1つ以上の信号は、相互作用時間において特定の量子オブ
ジェクトに入射する。例示的な一実施形態では、1つ以上の操作源は、(a)1つ以上の
レーザー、又は(b)1つ以上の電圧源のうちの少なくとも1つを含む。例示的な一実施
形態では、量子演算効果はシュタルクシフトに対応する。例示的な一実施形態では、量子
システムは、イオントラップ型量子コンピュータの一部であり、特定の量子オブジェクト
は、イオントラップ型量子コンピュータの量子ビットである。例示的な一実施形態では、
1つ以上の信号のうちの1つの信号の位相は、信号の位相と特定の量子オブジェクトの相
互作用時間位相との間の差の絶対値が位相差閾値要件を満たすときに、特定の量子オブジ
ェクトの相互作用時間位相に対応する。例示的な一実施形態では、信号の位相と相互作用
時間位相との間の差の絶対値は、信号の位相と相互作用時間位相との間の差の絶対値が設
定された位相差閾値未満であるときに位相差閾値要件を満たす。例示的な一実施形態では
、位相更新トリガは、1つ以上の信号の特定の量子オブジェクト又は量子ビットへの適用
が、相互作用時間で発生するようにスケジュールされていると決定することによって識別
される。例示的な一実施形態では、特定の量子オブジェクトに対応する位相更新トリガを
識別することと、特定の量子オブジェクトの位相の場所及び移送効果を決定することと、
特定の量子オブジェクトの位相に対する量子演算効果を決定することと、1つ以上の信号
の位相が調整されるようにすることと、は、互いに対してリアルタイム又はほぼリアルタ
イムで実行される。例示的な一実施形態では、場所及び移送効果は、特定の量子オブジェ
クトの1つ以上の場所と、第1の時間と相互作用時間との間の1つ以上の場所を介した特
定の量子オブジェクトの移送とに基づく特定の量子オブジェクトの有効周波数への変化に
起因する位相変化に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
このように本発明を一般的な用語で説明してきたが、ここで、必ずしも縮尺どおりに
描かれていない添付図面を参照する。
【0008】
【
図1】例示的な一実施形態による、例示的な量子コンピュータシステムの概略図を提供する。
【0009】
【
図2A】例示的な一実施形態による、量子ビットの場所及び/又は移送に基づいて、量子ビットの位相の変化を追跡する例の概略図を提供する。
【0010】
【
図2B】例示的な一実施形態例による、
図2Aに提供される例の量子ビットの場所及び/又は移送に起因する量子ビットの位相の変化を追跡する例示的なプロセス、手順、及び/又は動作を示すフロー図を提供する。
【0011】
【
図3】例示的な一実施形態による、操作源によって生成された信号の量子ビットの適用に起因する量子ビットの位相の変化を追跡する例を示す概略図を提供する。
【0012】
【
図4】例示的な一実施形態による、例えば、
図8に示されるようなコントローラによって、量子ビットの位相を追跡し、量子ビットに適用される信号の位相を補正するために実行される例示的なプロセス、手順、及び/又は動作を示すフロー図である。
【0013】
【
図4A】量子オブジェクトが経験する環境効果が、量子システム内の量子オブジェクトの場所に基づいてどのように異なり得るかを示す図である。
【0014】
【
図5】例示的な一実施形態による、4つの量子ビットに対して単一量子ビットゲート及び2量子ビットゲートを実行する例示的なシナリオを示す。
【0015】
【
図6】例示的な一実施形態による、使用され得る例示的なユーザ計算エンティティの概略図を提供する。
【0016】
【
図7】例示的な一実施形態による、使用され得る例示的なシステム計算エンティティの概略図を提供する。
【0017】
【
図8】例示的な一実施形態による、使用され得る例示的なコントローラの概略図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、本発明を、本発明の全てではなくいくつかの実施形態が示される添付図面を
参照しながら以下により完全に説明する。実際に、本発明は、多くの異なる形態で具現化
されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきで
はなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供
される。「又は」という用語(「/」とも示される)は、別様に示唆されない限り、代替
的及び連言的な意味の両方で本明細書にて使用される。「図示の」及び「例示の」という
用語は、品質レベルの指示のない例として使用される。「概して」及び「およそ」という
用語は、別途記載のない限り、適切なエンジニアリング及び/若しくは製造許容範囲内、
並びに/又はユーザ測定能力内のものを指す。同様の数字は、全体をとおして同様の要素
を指す。
【0019】
上記のように、量子システムの量子オブジェクトは、量子オブジェクトの位相に影響
を及ぼし得る様々な環境効果を経験し得る。様々な実施形態において、量子システムは量
子コンピュータの一部であり、量子オブジェクトは量子コンピュータの量子ビットである
。例えば、量子システムは、量子演算及び/又は量子計算を実行するために使用され得る
。例えば、量子システムは超伝導量子コンピュータの一部であってもよく、量子オブジェ
クトは微小超伝導回路の状態である。別の例では、量子システムは、イオントラップ型量
子コンピュータ及び/又は光学格子量子コンピュータの一部であってもよく、量子オブジ
ェクトは原子オブジェクト(例えば、原子又はイオン)である。別の例では、量子システ
ムはフォトニック系量子コンピュータの一部であり、量子オブジェクトは光子である。イ
オントラップ型量子コンピュータの量子ビットの例では、量子ビットは、量子ビットが位
置するイオントラップの場所又は領域に応じて、量子ビットの位相に影響を与える電場及
び/又は磁場並びに温度に関する様々な環境効果を経験し得る。更に、量子演算(例えば
、ゲート)が量子コンピュータ内の量子ビットに対して実行されるとき、エネルギーが量
子ビットに追加される場合があり、量子ビットの位相にも影響を及ぼし得る。しかしなが
ら、操作源(例えば、電圧源、レーザー、ダイレクトデジタル合成(DDS)など)が、
信号(例えば、電圧、レーザービームなど)を量子ビットに適用したときに、信号の位相
が量子ビットの位相に対応していないと、量子ビットは揺れる可能性がある。量子ビット
のこのような揺れは、量子ビットコヒーレンス、量子ビットゲート忠実度、及び全体的な
量子コンピュータの誤り率に直接影響を及ぼし得る。
【0020】
例示的実施形態は、量子システムの量子オブジェクトの位相を追跡し、量子オブジェ
クトに適用される操作源の信号の位相を補正するための方法、装置、及びシステムを提供
する。本明細書で使用するとき、量子オブジェクトは、量子システム内にトラップされ、
かつ/又は量子システム内で操作される、原子、イオン、又は他のオブジェクト若しくは
粒子であり得る。例えば、様々な実施形態は、イオントラップ型量子コンピュータの量子
ビットの位相を追跡し、かつ、量子ビットに適用される操作源(例えば、電圧源、レーザ
ービーム、DDSなど)の信号の位相を補正するための方法、装置、及びシステムを提供
する。様々な実施形態において、位相追跡は、リアルタイム又はほぼリアルタイムで実行
される。例えば、量子コンピュータの動作中に位相更新トリガを識別することに応答して
、特定の量子ビットの位相が決定され得る。様々な実施形態において、位相追跡はリアル
タイム又はほぼリアルタイムで(例えば、量子コンピュータの動作中に)実行されるため
、実行される量子アルゴリズム/プログラムの分岐が可能になる。例えば、様々な実施形
態のリアルタイム又はほぼリアルタイムの位相追跡は、量子アルゴリズム/プログラムの
実行中の量子アルゴリズム/プログラムの変更、分岐などを可能にする。
【0021】
様々な実施形態において、量子コンピュータ(又は他の量子システム)は、移送可能
なイオントラップを含む。例えば、量子システムは、移送可能なイオントラップ内にあり
得る。例えば、量子コンピュータ(又は他の量子システム)は、複数の領域を含むイオン
トラップを含み、量子ビット(又は他の量子オブジェクト)は、イオントラップ内に画定
された複数の領域のうちの1つ以上の間で移送され得る。様々な実施形態において、イオ
ントラップ内の量子ビットの場所及び/又は移送に起因する量子ビットの位相への影響が
追跡され得る。様々な実施形態において、量子演算の適用(例えば、量子ビットに入射す
る及び/又は量子ビットと相互作用する1つ以上のレーザービームを介して適用される量
子ゲート)は、量子ビットに位相シフト(例えば、シュタルクシフトに対応する)を経験
させ得る。様々な実施形態は、量子ビットの場所及び/又は移送、並びに量子ビットへの
量子演算(及び/又は操作源によって生成された他の信号)の適用に基づいて、量子ビッ
トの位相及び/又は量子ビットの位相の変化を決定する。
【0022】
様々な実施形態において、量子ビットの位相は、位相更新トリガの識別に応答して決
定される。例えば、位相更新トリガの識別に応答して、特定の量子ビットの最後の位相決
定及び/又は位相更新以降の特定の量子ビットの位相の変化が決定され得る。例示的な一
実施形態では、位相更新トリガは、操作源によって生成された信号の特定の量子ビットへ
の適用に対応するコマンドがスケジュールされている、特定の時間枠内で実行されるよう
にスケジュールされている、特定の量子ビットに対して発生する次のイベントになるよう
にスケジュールされている、コントローラによって実行される次のイベントになるように
スケジュールされている、などと決定することによって識別され得る。様々な実施形態に
おいて、位相更新トリガは、信号が操作源によって特定の量子ビットに提供されるように
スケジュールされていると決定することに応答して識別される。相互作用するとき(例え
ば、相互作用時間)の量子ビットの位相が決定され得、操作源によって提供される信号の
位相は、信号が量子ビットに入射するとき及び/又は量子ビットと相互作用するときに(
例えば、相互作用時間に)信号の位相が量子ビットの位相に対応するように修正及び/又
は調整され得る。例示的な一実施形態では、信号の位相は、信号の位相及び量子ビットの
位相が互いに一致する、及び/又は互いにほぼ等しいときに、量子ビットの位相に対応す
る。例えば、信号φsの位相は、量子ビットφqの位相に対応する信号φsの位相間の差
の絶対値が、閾値位相差ΔφT以下であるときに(例えば、|φs-φq|≦ΔφT量子
ビットφqの位相に対応する。様々な実施形態において、量子システムの性能(例えば、
結果の堅牢性及び/又は繰り返し性)は、閾値位相差ΔφTをより小さく(例えば、ゼロ
近くに設定)すると改善される。
【0023】
上述のように、様々な量子システムにおいて、信号が量子オブジェクトと相互作用す
る時間に、信号の位相が量子オブジェクトの位相に対応する、一致する、及び/又はほぼ
等しくなるように、操作源によって生成された信号を量子システムの量子オブジェクトに
適用することが重要である。様々な実施形態は、量子システムの量子オブジェクトの位相
の追跡と、量子オブジェクトに適用される操作源によって生成された信号の位相補正と、
を提供する。様々な実施形態において、量子オブジェクトの位相の追跡及び信号の位相補
正は、量子システムの量子オブジェクトの操作(例えば、量子オブジェクトへの信号の適
用を介する)に対してリアルタイム及び/又はほぼリアルタイムで実行される。様々な例
示的実施形態は、イオントラップ型量子コンピュータシステムに対応し、イオントラップ
型量子コンピュータの量子ビットの位相の追跡、及び量子ビットに適用される信号の位相
補正に対応する。様々な実施形態において、量子ビットの位相の追跡及び信号の位相補正
は、イオントラップ型量子コンピュータの量子ビットとの信号の相互作用に関してリアル
タイム及び/又はほぼリアルタイムで実行される。
例示的な量子コンピュータシステム
【0024】
図1は、量子システムがイオントラップ型量子コンピュータシステム100の一部で
ある、例示的な一実施形態による、例示的な量子システムの概略図を提供する。様々な実
施形態において、イオントラップ型量子コンピュータシステム100は、ユーザ計算エン
ティティ10と、システム計算エンティティ20と、量子コンピュータ110と、を備え
る。様々な実施形態において、量子コンピュータ110は、コントローラ30と、イオン
トラップ50を封入する極低温及び/又は真空チャンバ40と、1つ以上の操作源(例え
ば、レーザー、電圧源、DDSなど)を含む操作システム60と、を備える。様々な実施
形態において、操作システム60は、1つ以上の信号(例えば、操作源64(例えば、6
4A、64B、64C)によって生成された)を、信号経路66(例えば、66A、66
B、66C)を介してイオントラップ50内の1つ以上の量子ビットに提供するように構
成される。様々な実施形態において、信号66は、光路、光ファイバ、電気ケーブルなど
のうちの1つ以上を含む。様々な実施形態において、1つ以上の較正センサ62は、1つ
以上の操作源64及び/又は信号経路66に連結され、対応する操作源64及び/又は信
号の1つ以上の動作特性を監視し、1つ以上の動作特性の監視結果の指標をコントローラ
30に提供するように構成され得る。
【0025】
様々な実施形態において、ユーザ計算エンティティ10は、ユーザが、入力を(例え
ば、ユーザ計算エンティティ10のユーザインターフェースを介して)量子コンピュータ
システム100に提供し、量子コンピュータシステム100からの出力を受信、表示など
することを可能にするように構成される。ユーザ計算エンティティ10は、1つ以上の有
線又は無線ネットワーク120を介してシステム計算エンティティ20と通信し得る。シ
ステム計算エンティティ20は、1つ以上のユーザ計算エンティティ10とコントローラ
30との間の仲介として機能するように構成される。例えば、システム計算エンティティ
20は、ユーザ計算エンティティ10によって提供される情報/データ、量子計算アルゴ
リズムなどを、コントローラ30が理解及び/又は実施し得る計算言語、実行可能命令、
コマンドセットなどに変換、構成、フォーマット化などすることが可能である。
【0026】
様々な実施形態において、コントローラ30は、イオントラップ50、極低温及び/
若しくは真空チャンバ40内の温度及び圧力を制御する冷却及び/若しくは真空システム
(図示せず)、操作源64、並びに/又は量子コンピュータ110の他の構成要素(例え
ば、量子コンピュータの出力を「読み取る」ために構成された光学収集システム)を制御
するように構成される。様々な実施形態において、コントローラ30は、システム計算エ
ンティティ20によって提供される実行可能命令、コマンドセットなどに従って、量子コ
ンピュータ110の様々な構成要素を制御するように構成される。様々な実施形態におい
て、コントローラ30は、量子コンピュータ110から(例えば、光学収集システムから
)出力を受信し、出力及び/又は出力を処理した結果をシステム計算エンティティ20に
提供するように構成される。
【0027】
様々な実施形態において、コントローラ30はクロックを含む。1つ以上の実行可能
命令、コマンドなどは、コントローラ30によって受信されてもよく、それぞれは、クロ
ックによって決定されるような、特定の時間に実行されるようにスケジュールされ得る。
実行可能命令、コマンドなどのうちの1つ以上は、操作イベントに対応し得る。操作イベ
ントは、信号(例えば、操作源64によって生成された)に1つ以上の量子ビットと相互
作用させることを含む。相互作用は、コントローラによって、相互作用時間に発生するよ
うにスケジュールされ得る。様々な実施形態において、相互作用時間における操作イベン
ト(例えば、1つ以上の信号(例えば、1つ以上の操作源64によって生成された)の特
定の量子ビット及び/又は量子ビットの対/群への適用)の発生に対応する及び/又は発
生を引き起こすコンピュータ実行可能命令、コマンドなどのスケジューリングは、特定の
量子ビット及び/又は量子ビットの対/群に対応する位相更新トリガとして識別され得る
。例示的な一実施形態では、操作イベント(例えば、1つ以上の信号(例えば、1つ以上
の操作源64によって生成された)の特定の量子ビット及び/又は量子ビットの対/群へ
の適用)の発生に対応する及び/又は発生を引き起こすコンピュータ実行可能命令、コマ
ンドなどが、現在時間の時間閾値(例えば、クロックによって決定されるような)内にあ
る相互作用時間において実行されるようにスケジュールされていると決定することで、位
相更新トリガが識別され得る。例示的な一実施形態では、操作イベント(例えば、1つ以
上の信号(例えば、1つ以上の操作源64によって生成された)の特定の量子ビット及び
/又は量子ビットの対/群への適用)の発生に対応する及び/又は発生を引き起こすコン
ピュータ実行可能命令、コマンドなどの次のセット/群が、コントローラによって実行さ
れるコンピュータ実行可能命令、コマンドなどの次のセット/群になるようにスケジュー
ルされていると決定することで、特定の量子ビット及び/又は量子ビットの対/群に対応
する位相更新トリガが識別され得る。
【0028】
相互作用時間並びに特定の量子ビット及び/又は量子ビットの対/群に対応する位相
更新トリガの識別に応答して、コントローラ30は、特定の量子ビットに関する及び/若
しくは量子ビットの対/群のそれぞれの量子ビットに関する場所及び/若しくは移送効果
並びに/又は位相変化を決定し得る。様々な実施形態において、特定の量子ビット及び/
又は量子ビットの対/群の位相は、量子ビットごとの位相の累積として追跡され得る。場
所及び/若しくは移送効果並びに/又は位相変化は、量子ビットの場所(複数可)及び/
又は第1の時間と相互作用時間との間に生じた場所間での移送に対応する。第1の時間は
、量子ビットの直前の相互作用時間が発生した時間である。加えて、コントローラ30は
、特定の量子ビットに関する及び/又は量子ビットの対/群のそれぞれの量子ビットに関
する量子演算効果及び/又は位相変化を決定し得る。量子ビットの量子演算効果及び/又
は位相変化は、第1の時間と相互作用時間との間に量子ビットに適用された任意の量子演
算(例えば、量子ゲート、レーザービームなど)に起因する。例えば、量子演算効果及び
/又は位相変化は、量子ビットに入射するレーザービームによって引き起こされる量子ビ
ットのシュタルクシフトに起因し得る。特定の量子ビット及び/又は量子ビットの対/群
のそれぞれの量子ビットの相互作用時間位相(例えば、相互作用時間における予期/決定
された位相)は、次いで、直前に決定された量子ビットの位相(例えば、特定の量子ビッ
トに対応する直前に識別された位相更新トリガ及び/又は特定の量子ビットに対応する初
期化工程に応答して決定された相互作用時間位相)、場所及び/又は移送効果、並びに量
子演算効果に基づいて決定され得る。
【0029】
コントローラ30は、次いで、信号の位相を、スケジュールされた操作イベント中に
特定の量子ビット及び/又は量子ビットの対/群に適用させて、特定の量子ビット及び/
又は量子ビットの対/群の相互作用時間位相に対応するように調整されるようにし得る。
例えば、コントローラ30は、操作源64によって生成された信号の位相が、相互作用時
間(例えば、信号が特定の量子ビットと相互作用する及び/又は特定の量子ビットに入射
するとき)における特定の量子ビットの相互作用時間位相に対応するように、操作源64
のリセット、操作源64の動作の修正及び/又は調整などを行い得る。
場所及び/又は移送効果の決定の例
【0030】
次に、1つ以上の量子オブジェクトの位相に対する場所及び/又は移送効果を決定す
る例を、例示的なイオントラップ型量子コンピュータ110に関して説明する。
図2Aは
、2領域イオントラップにおける量子ビット200の概略図を提供する。
図2Bは、イオ
ントラップ内に位置し、イオントラップの領域と量子ビット200の対応する位相との間
で移送される、量子ビット200の例示的なシナリオを示すフローチャートを提供する。
図2Bに提供される例示的なシナリオでは、量子ビット200に適用されるゲートは、量
子ビットの位相に影響を及ぼさない。例えば、
図2Bに関して記載されるゲートはマイク
ロ波ゲートであり得る。しかしながら、イオントラップにわたる磁場勾配及び/又は他の
環境効果により、量子ビットの位相は、イオントラップの異なる領域(単数又は複数)に
おいて異なって発展し得る。理解されるように、イオントラップは複数の量子ビットを有
してもよく、それぞれの量子ビットの位相が追跡され得る。
【0031】
例示的なシナリオでは、工程/動作221において、量子ビット200は、コントロ
ーラ30のクロックに従って、時間t1にイオントラップの第1の領域201で初期化さ
れる。量子ビット200は、位相φ1=0を有するように初期化される。量子ビット記録
(例えば、コントローラ30のメモリに記憶された)は、時間t1において、量子ビット
200が位相φ1=0を有することを示すように更新され得る。
【0032】
工程動作222において、量子ビット200は、第1の領域201内に配置されたま
まであり、時間t2において、ゲート(例えば、量子演算)が第1のDDS211を介し
て量子ビット200に適用される。第1の領域201では、量子ビット200の有効周波
数は第1の周波数f1である。第1の周波数f1は、第1の領域201に対応する環境要
因(例えば、印加電圧、経験された磁場、温度、第1のDDS211の周波数など)によ
って影響され得る。したがって、時間t2における量子ビット200の位相は、φ2=[
φ1+2πf1(t2-t1)]mod 2πによって与えられる。様々な実施形態にお
いて、位相はモジュロ2πで定義される。例えば、時間ti+1における量子ビット20
0の位相は、φi+1=[φi+Δφ]mod 2πであり、式中、φiは、量子ビット
200に対応する量子ビット記録が更新された直前の時間tiにおける量子ビット200
の位相であり、Δφは、時間tiと時間ti+1との間の位相の変化である。φ1=0の
ように、時間t1で実行される初期化工程により、時間t2における量子ビット200の
位相は、φ2=2πf1(t2-t1)mod 2πである。
【0033】
工程/動作223において、時間t
2とt
3との間に、量子ビット200は第1の領
域201から第2の領域202に移送される。第1の領域201から第2の領域202へ
の量子ビット200の移送中、量子ビットの周波数は、第1の領域201と第2の領域2
00との間の量子ビット200の場所の関数である移送周波数関数F
Tによって与えられ
る。例示的な一実施形態例では、移送周波数関数F
Tは、一定の有効移送周波数f
Tであ
ると想定される。例えば、様々な実施形態において、移送周波数関数F
Tは、第1の領域
201から第2の領域202への経路に沿った一定の有効移送周波数f
Tであると想定及
び/又は概算される。例示的な一実施形態では、移送周波数関数F
Tは関数F
T(x)で
あり、xは第1の領域201と第2の領域202との間の位置である。一般に、第1の領
域201から第2の領域202に量子ビット200を移送する移送演算にわたる量子ビッ
トの累積位相は、
【数1】
によって与えられる。したがって、時間t
3において、F
Tが一定の有効移送周波数
f
Tとして概算され得る例示的な一実施形態では、第1の領域201から第2の領域20
2へと量子ビットを移送する移送動作の完了時に、量子ビット200の位相は、φ
3=[
φ
2+2πf
T(t
3-t
2)]mod 2πによって与えられる。
【0034】
時間t4において、第2のDDS212による工程/動作224にて、第2の領域2
02内の量子ビット200に対してゲートが実行される。第2の領域202内では、量子
ビット200の有効周波数は第2の周波数f2である。様々な実施形態において、第2の
周波数f2は、第2の領域202に対応する環境要因(例えば、印加電圧、経験された磁
場、温度、第2のDDS212の周波数など)によって影響される。様々な実施形態にお
いて、第2の周波数f2は、第1の周波数f1及び/又は移送周波数fTと異なり得る。
したがって、時間t4において、量子ビット200の位相は、φ4=[φ3+2πf2(
t4-t3)]mod 2πである。本明細書に詳細に記載されていないが、時間t4に
おける量子ビットの位相に基づいて、時間t4における量子ビット200へのゲートの適
用に対応する位相補正が(例えば、第2のDDS212によって生成された信号に対して
)実行され得る。
【0035】
例示的なシナリオでは、量子ビット200は、工程/動作225にて、時間t4から
時間t5まで第2の領域202から第1の領域201へと移送される。したがって、時間
t5において、第2の領域202から第1の領域201へと量子ビットを移送する移送演
算の完了にあたり、量子ビット200の位相は、φ5=[φ4+2πfT(t5-t4)
]mod 2πによって与えられる。
【0036】
工程/動作226にて、時間t
6において、ゲートが第1の領域201内の量子ビッ
ト200に適用される。例示的なシナリオでは、量子ビット200は、時間t
5と時間t
6との間に第1の領域201内に留まっており、量子ビット200の有効周波数はf
1で
ある。したがって、時間t
6における量子ビット200の位相は、φ
6=[φ
5+2πf
1(t
6-t
5)]mod 2πである。様々な実施形態において、ゲートの量子ビット
200への適用に対応する位相補正が、時間t
6に実行され得る。例えば、第1のDDS
211は、第1の周波数f
1で動作し得る。このように、第1のDDS211の位相が量
子ビット200の当時の位相に対応するように最後に調整された時間t
1から、第1のD
DS211が量子ビット200に別のゲートを適用する時間t
6まで、時間が進行するに
つれ、第1のDDS211の位相φ
sourceは、φ
source=2πf
1(t
6-
t
1)]mod 2πとして発展した。同じ期間に、量子ビット200の位相φ
qubi
tは、φ
qubit=2π[f
1(t
2-t
1)+f
T(t
3-t
2)+f
2(t
4-t
3)+f
T(t
5-t
4)+f
1(t
6-t
5)]mod 2πとして発展した。このよ
うに、f
2≠f
1mod 2π又はf
T≠f
1mod 2πのいずれかである場合、第1
のDDS211の位相φ
source及び量子ビット200の位相φ
qubitは、等し
くない、一致しない、などとなる。例えば、第1のDDS211の位相φ
sourceは
、量子ビット200の位相φ
qubitと同期しないことになる。第1のDDS211の
位相φ
sourceと、量子ビット200の位相φ
qubitとの間の差の絶対値が、位
相変化閾値
【数2】
を満たしていないと決定された場合、第1のDDS211の位相は、量子ビット20
0の位相に対応する、一致する、及び/又はほぼ等しくなるように調整され得る。例示的
な一実施形態では、第1のDDS211の位相は、第1のDDS211の位相が量子ビッ
ト200の位相とほぼ等しくなるようにシフトされ得る。例示的な一実施形態では、第1
のDDS211の位相は、量子ビット200の位相とほぼ等しくなるように設定される。
【0037】
上述したように、量子ビットの位相に対する量子演算効果がないシナリオでは、時間
ti+1における量子ビット200の位相はφi+1=[φi+Δφ]mod 2πであ
り、式中、φiは、量子ビット200に対応する量子ビット記録が更新された直前の時間
tiにおける量子ビット200の位相であり、Δφは、量子ビット200の場所及び/又
は領域間の量子ビット200の移送に起因する時間tiと時間ti+1との間の位相の変
化及び/又は位相の累積である。したがって、量子ビットの位相に対する量子演算効果が
ないシナリオでは、量子ビットの位相に対する場所及び/又は移送効果はΔφである。
量子演算効果の決定の例
【0038】
次に、1つ以上の量子オブジェクトに対する量子演算効果を決定する例を、例示的な
イオントラップ型量子コンピュータ110に関して説明する。
図3は、量子ビットの位相
に対する量子演算効果を決定し、操作源によって生成された信号の位相を補正する(例え
ば、ゲートを量子ビットに適用するため)例を示す概略図を提供する。図示されたシナリ
オでは、量子ビットは時間t
0に初期化される。線304によって示されるように、時間
t
1とt
2との間にマイクロ波ゲートが量子ビットに適用される。例えば、マイクロ波パ
ルスは、時間t
1~時間t
2の間に量子ビットと相互作用し得る。線306によって示さ
れるように、マイクロ波信号発生器周波数の周波数は全体にわたって一定である。線31
0及び312に示されるように、マイクロ波ゲートの量子ビットへの適用は、量子ビット
位相又は量子ビット周波数に影響を及ぼさない。
【0039】
線302によって示されるように、時間t3から時間t4まで、周波数シフトレーザ
ーによって生成されたレーザービーム及び/又はパルスは、量子ビットに入射し、かつ/
又は量子ビットと相互作用し得る。例えば、時間t3とt4との間に、周波数シフトレー
ザーは、量子ビットと相互作用する信号を発し得る。例示的な一実施形態では、周波数シ
フトレーザーは、レーザーによって生成されたレーザービーム、パルス、及び/又は信号
が量子ビットと相互作用するとき、量子ビットの周波数がシフトされるレーザーである。
例えば、周波数シフトレーザーによって生成されたレーザービーム、パルス、及び/又は
信号が、量子ビットと相互作用するとき、量子ビットはシュタルクシフトを経験する。例
えば、線310によって示されるように、時間t3から時間t4まで、量子ビットの周波
数は、そのシフトされていない周波数f0から、シフトされていない周波数f0とは異な
る、かつ/又は等しくない演算誘導周波数へシフトされる。例えば、周波数シフトレーザ
ーによって生成されたレーザービーム、レーザーパルス、及び/又は信号の相互作用は、
量子ビットのシフトされた周波数がf0+fgになるように、量子ビットの周波数をシフ
ト値fgだけシフトさせ得る。例えば、線312によって示されるように、周波数シフト
レーザーによって生成されたレーザービーム、レーザーパルス、及び/又は信号が量子ビ
ットと相互作用する時間中(例えば、時間t3とt4との間)、量子ビットの位相は、量
子ビットが周波数シフトレーザーによって生成されたレーザービーム、レーザーパルス、
及び/又は信号と相互作用していないときとは異なって発展する。例えば、量子ビットが
、周波数シフトレーザーによって生成されたレーザービーム、レーザーパルス、及び/又
は信号と相互作用するとき、量子ビットの位相は、時間t3とt4との間に(f0+fg
)Δt=f0Δt+fgΔt=f0Δt+p(式中、Δt=t4-t3)に従って発展す
る。対照的に、量子ビットが周波数シフトレーザーによって生成されたレーザービーム、
レーザーパルス、及び/又は信号と相互作用していない場合(例えば、量子ビットの周波
数がシフトされていない周波数に残っている場合)、量子ビットの位相は、時間t3とt
4との間にF0Δtに従って発展することになる。
【0040】
例えば、線306及び310の比較によって示されるように、マイクロ波信号発生器
周波数及び量子ビット周波数は、量子ビットが周波数シフトレーザーによって生成された
レーザービーム、レーザーパルス、及び/又は信号と相互作用していないあらゆる時間(
例えば、t3とt4との間以外の時間)に互いに一貫している。例えば、線308及び3
12に示されるように、マイクロ波信号発生器位相及び量子ビット位相は、時間t0から
時間t3まで互いに一貫している。次いで、時間t3とt4との間に、量子ビットが周波
数シフトレーザーによって生成されたレーザービーム、レーザーパルス、及び/又は信号
と相互作用しているとき、量子ビットの位相は、時間t4において量子ビット位相とマイ
クロ波信号発生器位相との間にpの差が存在するように、マイクロ波信号発生器位相に対
してシフトする。
【0041】
線304に示されるように、時間t5において、第2のマイクロ波ゲートは量子ビッ
トに適用される。マイクロ波信号源位相は、第2のマイクロ波ゲートが量子ビットに適用
されるように調整され、それにより、時間t5において、マイクロ波信号源の位相は量子
ビットの位相に対応する。例えば、時間t4と時間t5との間のある点で、量子ビットに
対応し、かつ時間t5の相互作用時間に対応する位相更新トリガが、コントローラ30に
よって識別され得る。量子ビットに対応し、かつ相互作用時間t5に対応する位相更新ト
リガを識別することに応答して、コントローラは、量子ビットの位相に対する、周波数シ
フトレーザーによって生成されたレーザービーム、レーザーパルス、及び/又は信号を量
子ビットに適用する量子演算効果を決定し得る。例えば、コントローラ30は、周波数シ
フトレーザーによって生成されたレーザービーム、レーザーパルス、及び/又は信号の量
子ビットへの適用が、p=(f0+fg)Δt-f0Δt=fgΔtの位相シフトをもた
らしたと決定し得る。このように、マイクロ波信号発生器位相は、時間t5においてマイ
クロ波ゲートを量子ビットに適用するときに、位相シフトpだけシフトされ得る。例えば
、線308によって示されるように、マイクロ波信号発生器位相は、マイクロ波信号発生
器によって提供される信号(例えば、第2のマイクロ波ゲートとして作用する)が、相互
作用時間(例えば、時間t5)に量子ビットの位相に対応する位相を有するように、pだ
けシフトされる。
【0042】
このように、
図3は、相互作用時間において、操作源によって生成された信号及び信
号と相互作用する量子ビットが対応する位相を有するように、量子ビットの位相に対する
量子演算効果を決定し、操作源(例えば、図示された例におけるマイクロ波信号発生器)
の位相をシフトし、かつ/又は操作源の位相をリセットする例を提供する。
例示的なリアルタイム又はほぼリアルタイムの位相追跡及び補正
【0043】
様々な実施形態において、リアルタイム及び/又はほぼリアルタイムの位相追跡及び
補正を実行することは、1つ以上の量子オブジェクトに対する場所及び/又は移送効果並
びに量子演算効果を追跡することを含む。
図4は、例示的な量子システムがイオントラッ
プ型量子コンピュータ110の一部である様々な実施形態による、リアルタイム又はほぼ
リアルタイムの位相追跡及び補正を実行するための様々なプロセス、手順、動作などを示
すフロー図を提供する。様々な実施形態において、量子システムに対応するコントローラ
30は、量子システムの量子オブジェクト及び量子システムの操作源に関して、位相追跡
及び補正を実行し得る。例えば、様々な実施形態において、リアルタイム又はほぼリアル
タイムの位相追跡及び補正は、イオントラップ型量子コンピュータ110のコントローラ
30によって実行されて、イオントラップ型量子コンピュータ110の量子ビットの位相
を追跡し、操作源64(例えば、レーザー、電圧源、DDSなど)によって生成された信
号の位相及び又は操作源64の位相を調整して、操作源によって生成された信号が量子ビ
ットと相互作用するときに、信号の位相が量子ビットの位相に対応するようにする。
【0044】
図4Aは、量子システム450にわたって環境効果(例えば、磁場及び/又は他の環
境効果)が変化する、例示的な量子システム450を示す。量子システム450の領域A
内の第1の量子オブジェクト452Aは、第1の磁場454Aを経験する。量子システム
450の領域B内の第2の量子オブジェクト452Bは、第2の磁場454Bを経験し、
量子システム450の領域C内の第3の量子オブジェクト452Cは、第3の磁場454
Cを経験する。
図4Aに示すように、第1、第2、及び第3の磁場454A、454B、
454Cは異なる。例えば、第1、第2、及び第3の磁場454A、454B、454C
は、方向及び/又は振幅が異なり得る。このように、
図4Aに示すように、環境効果は量
子システム450にわたって変化し得る。加えて、上記のように、1つ以上の量子オブジ
ェクトに対して実行される及び/又は施行される量子演算(例えば、ゲート)もまた、1
つ以上の量子オブジェクトの位相に影響を及ぼし得る。このように、様々な実施形態にお
いて、場所及び/又は移送位相効果及び量子演算位相効果の両方が追跡及び/又は補正さ
れる。
【0045】
図4の工程/動作402で始まり、イオントラップ50内の1つ以上の量子ビットの
初期化後に、イオントラップ型量子コンピュータのイオントラップ50内のそれぞれの量
子ビットの位置が追跡される。例えば、コントローラ30は、1つ以上の量子ビットのそ
れぞれが位置するイオントラップ50の領域、量子ビットがその領域内に位置する時間量
(他追えば、コントローラ30のクロックに基づく)、量子ビットが領域間で移送される
時間量(例えば、コントローラ30のクロックに基づく)、量子ビットに適用される量子
演算などを追跡し得る。例えば、コントローラ30は、システムコンピューティングエン
ティティ20からコンピュータ実行可能命令、コマンドなどを受信し得る。コントローラ
30は、次いで、実行可能命令、コマンドなど(例えば、コントローラ30の実行可能待
ち行列内)を特定の時間(例えば、コントローラ30のクロックに基づく)に実行される
ようにスケジュールし得る。コントローラ30は、次いで、スケジュールされた特定の時
間に、コントローラの実行可能な待ち行列内の実行可能命令、コマンドなどを実行し得る
。
【0046】
様々な実施形態において、コントローラ30は、イオントラップ50内の1つ以上の
量子ビットのそれぞれについて、量子ビット記録を(例えば、コントローラ30のメモリ
810内に)記憶する。例えば、イオントラップ50内のそれぞれの量子ビットは、量子
ビット識別子に関連付けられ得る。場所及び/又は移送情報/データ、位相累積情報/デ
ータ、量子演算情報/データなどを記録し、量子ビット識別子によって索引付けされる量
子ビット記録が、イオントラップ50内の1つ以上の量子ビットのそれぞれについて記憶
され得る。コントローラ30は、特定の量子ビットが作用される(例えば、ある領域から
別の領域に移送される、量子演算が適用される、など)たびに特定の量子ビット(例えば
、特定の量子ビットに対応する量子ビット識別子によって索引付けされた)に対応する量
子ビット記録(例えば、コントローラ30のメモリ810に記憶された)を更新して、特
定の量子ビットの位相を累積し、特定の量子ビットに関する場所及び/又は移送情報/デ
ータ(例えば、量子ビットが領域内に位置していた時間量、量子ビットが位置していた領
域、量子ビットが領域間で移送されていた時間量など)と、特定の量子ビットに関する量
子演算情報/データ(例えば、どの量子演算が量子ビットに適用されたか、どのように量
子演算が特定の量子ビットに適用されたか、など)と、を更新し得る。様々な実施形態に
おいて、量子ビット記録の位相情報/データは、特定の量子ビットに対応する位相更新ト
リガの識別に応答して更新され得る。
【0047】
例示的な一実施形態では、量子ビット記録は、量子コンピュータ110の動作セッシ
ョン中に実行される特定の量子ビットに対応する全てのアクティビティのログであり得る
。例示的な一実施形態では、量子ビット記録は、次に量子ビットの位相が更新されるとき
に、その更新が進行中の直前の更新から実行され得る(例えば、量子ビットが開始された
ときから始まる量子ビットの位相を更新しなければならないのではなく)ように、量子ビ
ットの位相が更新された時間を示し得る。例示的な一実施形態では、位相更新が実行され
たときに、量子ビット記録は書き換えられる。例えば、特定の量子ビットに対して位相更
新が実行されるたびに、対応する量子ビット記録は消去され、再始動される。
【0048】
工程/動作404において、位相更新トリガがコントローラ30によって識別される
。様々な実施形態において、位相更新トリガは、1つ以上の量子ビット(例えば、特定の
方法で作用される特定の量子ビットを含み得る)と、場合によっては相互作用時間と、に
対応する。様々な実施形態において、特定の量子ビットに対応する位相更新トリガは、相
互作用時間における操作イベント(例えば、1つ上の信号(例えば、1つ以上の操作源6
4によって生成された)の特定の量子ビットへの適用)の発生に対応する、かつ/又は発
生を引き起こす、コンピュータ実行可能命令、コマンドなどの実行のスケジューリング(
例えば、コントローラ30による)に応答して識別される。例示的な一実施形態では、特
定の量子ビットに対応する位相更新トリガは、操作イベント(例えば、1つ以上の信号(
例えば、1つ以上の操作源64によって生成された)の特定の量子ビットへの適用)は、
現在時間の時間閾値(例えば、クロックによって決定されるような)内である相互作用時
間に実行されるようにスケジュールされているという決定(例えば、コントローラ30に
よる)に応答して識別される。例示的な一実施形態では、特定の量子ビットに対応する位
相更新トリガは、コントローラ30によって実行されるようにスケジュールされた操作イ
ベントの発生に対応する、かつ/又は発生を引き起こす次のセット/群のコンピュータ実
行可能命令、コマンドなどが、信号及び/又は量子演算の特定の量子ビットへの適用を引
き起こすことになるという決定(例えば、コントローラ30による)に応答して識別され
得る。例示的な一実施形態では、特定の量子ビット又はイオントラップ50の特定の領域
に対応する位相更新トリガが識別され得る。例えば、位相更新トリガは、位相累積/更新
が、イオントラップ50の特定の領域内に位置する全ての量子ビットに対して(例えば、
対応する量子ビット記録に基づいて)実行されるべきであることを示し得る。例示的な一
実施形態では、このような位相更新トリガ(例えば、イオントラップ50の特定の領域に
対応する)は、イオントラップ50の特定の領域内の1つ以上の量子ビットに適用されて
いるゲートに応答して識別され得る。
【0049】
このように、様々な実施形態において、コントローラ30は、コントローラ30によ
って実行されるようにスケジュールされたコンピュータ実行可能命令、コマンドなどに基
づいて、1つ以上の量子ビット(例えば、特定の量子ビットを含む)に対応する、かつ場
合によっては相互作用時間に対応する位相更新トリガを識別し得る。コンピュータ実行可
能命令、コマンドなどのそれぞれのセット/群は、操作イベントに対応する相互作用時間
に実行されるようにスケジュールされる。操作イベントに対応する、かつ/又はそれを引
き起こすコンピュータ実行可能命令、コマンドなどの実行のためにスケジュールされた相
互作用時間は、コントローラ30の実行待ち行列から抽出され、識別された位相更新トリ
ガに関連付けられた、かつ/又はそれに対応する相互作用時間として、識別された位相更
新トリガに関連付けられる。操作イベントの主題である特定の量子ビットを識別する量子
ビット識別子は、コンピュータ実行可能命令、コマンドなどから抽出され、識別された位
相更新トリガに関連付けられて、識別された位相更新トリガに関連付けられた、かつ/又
はそれに対応する特定の量子ビットを識別する。位相更新トリガがイオントラップの特定
の領域に対応するとき、コントローラは、どの量子ビットが特定の領域内に位置するかを
決定し、量子ビットが、識別された位相更新トリガに関連付けられ、かつ/又はそれに対
応するものとして特定の領域内に位置することを示す量子ビット記録に対応する量子ビッ
トを識別するため、量子ビット記録に照会し得る。
【0050】
工程/動作406において、1つ以上の量子ビットのそれぞれの位相に対する場所及
び/又は移送効果(例えば、特定の量子ビットを含む)は、コントローラ30によって決
定され得る。例えば、コントローラ30は、特定の量子ビットに対応する量子ビット記録
に記憶された場所及び/又は移送情報/データを使用して、特定の量子ビットに対応する
量子ビット記録に記憶された位相情報/データが最後に更新されたときと、相互作用時間
との間の期間における特定の量子ビットの位相に対する場所及び/又は移送効果を決定し
得る。例えば、上述のように、特定の量子ビットの位相に対する場所及び/又は移送効果
は、特定の量子ビットが特定の領域で使用される又は領域間で移送される時間量に、特定
の領域内にあるとき、又は領域間で移送されているときの特定の量子ビットの周波数を乗
じ、それぞれの領域及び/又は特定の量子ビットに対応する量子ビット記録に記憶された
位相情報/データが最後に更新されたときと相互作用時間との間の期間に発生した領域間
の移送を合計することによって決定され得る。特定の量子ビットが特定の領域内で使用さ
れる時間量と、特定の領域の識別子と、特定の量子ビットが領域間で移送されるのに使用
される時間量と、が量子記録の場所及び/又は移送情報/データによって提供される。特
定の領域内にあるとき、又は領域間で移送されるときの特定の量子ビットの周波数を決定
するため、較正テーブルに基づいて決定され得る。
【0051】
様々な実施形態において、コントローラ30は、イオントラップ50のそれぞれの領
域の領域周波数を示す較正テーブルを(例えば、メモリ810内に)記憶し得る。例示的
な一実施形態では、領域の領域周波数は、量子ビットが領域内に位置するときの量子ビッ
トの周波数である。様々な実施形態において、磁場勾配及び/又は他の環境効果は、第1
の領域の領域周波数が、第1の領域の近くにある、かつ/又はそれに隣接する第2の領域
の領域周波数と異なるようにし得る。様々な実施形態において、較正テーブルは、隣接す
る領域の対ごとの移送周波数を示す。例示的な一実施形態では、第1の領域並びに隣接す
る、かつ/又はすぐ近くにある第2の領域に対応する移送周波数は、量子ビットが第1の
領域から第2の領域に移送されているときの量子ビットの周波数である。例示的な一実施
形態では、移送周波数は、第1の領域から隣接する、かつ/又はすぐ近くにある第2の領
域までの移送経路に沿った時間及び/又は距離の関数として与えられる。このような実施
形態では、移送周波数は、移送経路にわたって統合されて、量子ビットの位相上の第1の
領域から第2の領域へと量子ビットを移送する効果を決定し得る。
【0052】
様々な実施形態において、較正されたテーブルは、周期的及び/又は規則的な基準で
較正される。例えば、較正テーブルは、量子コンピュータ110に連結された較正センサ
62(例えば、62A、62C)によってキャプチャされたセンサ測定値に基づいて、生
成、更新、入力などをされてもよい。例えば、較正センサ62は、較正センサ62が操作
源の1つ以上の動作特性及び/又は操作源によって生成された信号を監視し、監視された
動作特性(複数可)を示す信号をコントローラ30に提供するように、量子コンピュータ
110に連結されてもよい。様々な実施形態において、較正センサ62は、周波数センサ
、電圧センサ、電力センサなどであってもよい。例えば、電圧源の周波数は、電圧源に連
結された較正センサ62によって決定されてもよい。同様に、信号(例えば、操作源64
によって生成された)の電力は、信号に対応する操作源64、信号経路66などに連結さ
れた較正センサ62によって決定されてもよい。例えば、較正テーブルは、量子コンピュ
ータ110のそれぞれの動作セッションの開始時(例えば、量子オブジェクトがイオント
ラップ50に追加されるたび、量子アルゴリズムの実行の開始時など)に生成、更新、入
力などをされてもよい。例示的な一実施形態では、較正テーブルは、量子コンピュータ1
10の動作中に(例えば、30秒毎、1分毎、2分毎、5分毎、10分毎、15分毎など
)定期的な更新、再入力などが行われる。このように、操作源及び/又はそれによって生
成された信号の電力、電圧、周波数などの任意のドリフトは、較正テーブル内に記憶され
た情報/データ内で監視及び考慮され得る。
【0053】
工程/動作408では、特定の量子ビットに対応する量子ビット記録内の位相情報/
データが最後に更新されてから特定の量子ビットに適用された任意の量子演算による、特
定の量子ビットの位相に対する量子演算効果は、コントローラ30によって決定される。
例えば、コントローラ30は、特定の量子ビットに対応する量子ビット記録内の位相情報
/データが、量子ビット記録の量子演算情報/データに基づいて最後に更新されてから特
定の量子ビットに適用された任意の量子演算を識別し得る。次いで、特定の量子ビットの
位相に対する任意の識別された量子演算の効果が決定され得る。例えば、任意の識別され
た量子演算によって引き起こされるシュタルクシフトが決定され得る。例示的な一実施形
態では、量子演算効果の決定は、較正テーブルから情報/データにアクセスすることを含
む。例えば、レーザービームが入射しているために量子ビットによって経験されるシュタ
ルクシフトは、レーザービームによって量子ビットに送達される電力に依存する。したが
って、一実施例では、量子演算を適用するために特定の量子ビットに適用される信号の電
力は、較正テーブルからアクセスされ得る。
【0054】
工程/動作410において、相互作用時間における特定の量子ビットの位相は、コン
トローラ30によって決定される。例えば、コントローラ30は、決定された場所及び/
又は移送効果ΔφLT、決定された量子演算効果ΔφQO、及び特定の量子ビットに対応
する量子ビット記録の位相情報/データからの特定の量子ビットの前の位相φiを使用し
て、特定の量子ビットの相互作用時間位相φi+1(例えば、相互作用時間における特定
の量子ビットの位相)Φi+1=[φi+ΔφLT+ΔφQO]mod 2πを決定し得
る。例示的な一実施形態では、操作源及び/又は相互作用時間に操作源によって生成され
た信号の位相も決定され得る。例えば、操作源及び/又はそれによって生成された信号の
位相が(例えば、設定ではなく)シフトされる例示的な一実施形態では、相互作用時間に
おける操作源及び/又はそれによって生成された信号の位相が決定され、それによって位
相シフトが決定され得る。例えば、位相シフトは、操作源及び/又はそれによって生成さ
れた信号の位相が、相互作用時間(例えば、信号が特定の量子ビットと相互作用するとき
)における特定の量子ビットの位相に対応する、一致する、及び/又はほぼ等しくなるよ
うにシフトされる必要がある、位相の変化である。
【0055】
工程/動作412において、コントローラ30は、信号が相互作用時間において特定
の量子ビットと相互作用するときに、操作源64によって生成された信号の位相が相互作
用時間位相に対応するように、操作源64及び/又は操作源64によって生成された信号
の位相が調整されるようにする。例えば、コントローラ30は、信号が相互作用時間にお
いて特定の量子ビットと相互作用するときに、操作源64及び/又はそれによって生成さ
れた信号の位相が、特定の量子ビットの相互作用時間位相に対応する、一致する、及び/
又はほぼ等しくなるように、操作源64及び/又はそれによって生成された信号の位相を
(例えば、ドライバコントローラ要素815を介して)設定し得る。例えば、コントロー
ラ30は、信号が相互作用時間において特定の量子ビットと相互作用するときに、操作源
64及び/又はそれによって生成された信号の位相が、特定の量子ビットの相互作用時間
位相に対応する、一致する、及び/又はほぼ等しくなるように、操作源64及び/又はそ
れによって生成された信号の位相を(例えば、工程/動作410で決定された位相シフト
に基づいて、かつ/又はドライバコントローラ要素815を介して)シフトし得る。例え
ば、コントローラ30は、操作源64及び/又は操作源64に対応するドライバに電圧を
(例えば、ドライバコントローラ要素815を介して)印加させ、相互作用時間に信号が
特定の量子ビットと相互作用するときに、操作源64によって生成された信号の位相が相
互作用時間位相に対応するように、操作源64及び/又は操作源64によって生成された
信号が調整されるようにし得る。コントローラ30は、次いで、信号の位相及び特定の量
子ビットの位相が互いに対応する、一致する、及び/又はほぼ等しくなるように、操作イ
ベントを発生させる(例えば、信号が操作源によって生成され、信号は特定の量子ビット
と相互作用する)コンピュータ実行可能命令、コマンドなどを相互時間に実行し得る。
【0056】
様々な実施形態において、操作源64及び/又は操作源64によって生成された信号
の位相は、信号が量子ビットに対して単一の量子ビットゲートを施行している相互作用時
間において、信号が特定の量子ビットと相互作用しているときに操作源64によって生成
された信号の位相が相互作用時間位相に対応するように調整される。コントローラ30が
、位相不感の2量子ビットゲートを施行するように構成されている様々な実施形態におい
て、操作源64及び/又は操作源64によって生成された信号の位相は、信号が2つ以上
の量子ビットに対して2量子ビット以上のゲートを施行しているときには調整されない。
しかしながら、2量子ビットゲートの作用によって2つ以上の量子ビットに提供されるシ
ュタルクシフト(又は他の位相シフト)は、将来の参照のために追跡される。コントロー
ラ30が、位相感応2量子ビットゲートを施行するように構成されている様々な実施形態
では、2つ以上の操作源64は、2量子ビット以上のゲートによって作用される単一の量
子ビットにアドレスする信号をそれぞれ提供するために使用され得る。操作源64及び/
又は操作源64によって生成された信号の位相は、操作源64によって生成された信号の
位相が、信号が量子ビットと相互作用するときに、その操作源64によってアドレスされ
ている2つ以上の量子ビットゲートによって作用される量子ビットの相互作用時間位相に
対応するように調整され得る。コントローラ30が、位相感応2量子ビットゲートを施行
するように構成されている様々な実施形態では、2量子ビット以上のゲートによって作用
される2つ以上の量子ビットの位相の差にアドレスする及び/又はその差を補正するため
に、1つ以上の補正パルスが使用され得る。
【0057】
様々な実施形態では、位相更新トリガの識別、場所及び/又は移送効果の決定、量子
演算効果の決定、相互作用時間位相の決定、並びに操作源64及び/又はそれによって生
成される信号の位相が調整されるようにすることは、互いに対してリアルタイム及び/又
はほぼリアルタイムで実行される。具体的には、特定の量子ビットの相互作用時間位相は
、量子コンピュータ110の動作中(例えば、量子アルゴリズムの実行中)に決定される
。例えば、特定の量子ビットの相互作用時間位相は、その特定の量子ビットが関与してい
る操作イベントの発生に対してリアルタイム又はほぼリアルタイムで決定され得る。様々
な実施形態では、(特定の量子ビットを伴う操作イベントに関する)特定の量子ビットの
相互作用時間位相のリアルタイム又はほぼリアルタイムの決定は、量子アルゴリズムが、
量子アルゴリズムの実行中に分枝及び/又は修正されるように実行されることを可能にす
る。例えば、量子アルゴリズムは実行中に修正され得る。加えて、様々な実施形態では、
定期的に更新された較正テーブルに基づいた(特定の量子ビットを伴う操作イベントに関
する)特定の量子ビットの相互作用時間位相の決定は、校正テーブルに記憶された情報/
データによって操作源内の任意のドリフトが考慮されるため、相互作用時間位相がより正
確に決定されることを可能にする。更に、様々な実施形態では、相互作用時間位相は、場
所及び/又は移送効果並びに量子演算効果の両方に基づいて決定され、相互作用時間位相
のより正確な決定を可能にする。相互作用時間位相をより正確に決定することによって、
操作源64は、特定の量子ビットの実際の位相により正確に対応する、一致する、かつ/
又はほぼ等しい位相を有する(例えば、閾値位相差ΔφTがより小さくなり得る)信号を
提供するように動作され、改善された量子ビットコヒーレンス、量子ビットゲートの忠実
度、及び全体的により低い量子コンピュータの誤り率をもたらし得る。
例示的なシナリオ
【0058】
図5は、例示的な一実施形態による、4つの量子ビットに対して単一量子ビットゲー
ト及び2量子ビットゲートを実行する例示的なシナリオを示す。図示されている例示的な
シナリオでは、量子システムはイオントラップ型量子コンピュータ110の一部であり、
量子オブジェクトはイオントラップ50内のイオンである。例示的なシナリオは、セクシ
ョンA、B、C、D、E、F、及びGを有するイオントラップ50内で施行される。例示
的なシナリオでは、量子演算中のみ(例えば、移送演算、単一量子ビットゲート演算、2
量子ビットゲート演算、状態調製演算、測定演算など)の適用中のみ時間を掛けて進めら
れる。様々なコマンドが処理デバイス805によって実行されて、それぞれ量子コンピュ
ータ110の量子ビットに対応する、メモリ810に記憶された量子ビット記録を更新し
得る。
【0059】
図5に示す例示的なシナリオでは、コントローラ30は、Configure、Tr
ansport、StatePrep,SQGate、及びTQGateを含む複数の演
算及び/又はコマンドを使用するように構成されている。様々な実施形態では、Meas
ureコマンドも使用されてもよい。Configureコマンドは、それぞれの量子ビ
ットの場所及びトラップ50のそれぞれのセクションの周波数を引数として取り、(例え
ば、処理デバイス805によって)実行されると、初期量子ビットセクション(例えば、
それぞれの量子ビットが位置するイオントラップ50のセクション)を設定し、量子ビッ
ト位相アキュムレータΔφ
q(例えば、下付き文字qは、特定の量子ビット(例えば、本
実施例では0、1、2、又は3)を示す)と、イオントラップ50のそれぞれのセクショ
ンの周波数f
S(例えば、下付き文字Sは、イオントラップ50の特定のセクション(例
えば、この例では、A、B、C、D、E、F、又はG)を示す)と、を初期化する。例え
ば、量子ビットの現在の位置、量子ビットの直前の位置、及び量子ビットの量子ビット位
相アキュムレータは、対応する量子ビット記録において更新/初期化され得る。Tran
sportコマンドは、移送演算が完了した後にそれぞれの量子ビットが位置するセクシ
ョンを引数として取り、(例えば、処理デバイス805によって)実行されると、量子ビ
ットの現在位置が、Transportコマンド引数によって示されるセクションを示し
、量子ビットが領域を移動した場合、その量子ビットの直前の位置が適宜更新されるよう
に、それぞれの量子ビット記録が更新されるようにする。様々な実施形態では、Tran
sportコマンドの実行(例えば、処理デバイス805による)は、実行される移送演
算に基づいて、1つ以上の量子ビット記録の量子ビット位相アキュムレータΔφ
qが更新
されるようにし得る。StatePrepコマンドは、状態調製演算によって作用される
イオントラップ50のセクションを取り、(例えば、処理デバイス805によって)実行
されると、指定されたセクション内に位置する量子ビットの量子ビット記録が、量子ビッ
ト記録の量子ビット位相アキュムレータΔφ
qを0に設定するため(例えば、量子ビット
位相アキュムレータを初期化するため)に更新されるようにする。SQGateコマンド
は、単一量子ビットゲートが施行されるセクション(複数可)と、量子回路及び/又はア
ルゴリズムの設計者及び/又はプログラマによって設定及び/又は構成され得るゲートの
1つ以上のパラメータに対応するΘ値と、単一量子ビットゲートのパラメータである位相
最適化値Φと、を取る。様々な実施形態では、位相最適化値Φは、量子ビットの相互作用
時間位相を決定し、ゲートの位相補正を決定する際に、単一量子ビットゲートによって作
用される量子ビットに対応する量子ビット記録の量子ビット位相アキュムレータΔφ
qに
加算され得る。様々な実施形態では、単一の量子ビットゲートによって作用される量子ビ
ットに対応する量子ビット記録の量子ビット位相アキュムレータΔφ
qは、量子ビットに
対して実行される追加演算(例えば、位相補正演算、ゲートの様々な位相効果を調整する
ためのブロッホ球上の量子ビットベクトルの回転など)の必要性を防止するために、位相
最適化値Φによって調整され得る。SQGateコマンドの実行(例えば、処理デバイス
805による)は、単一の量子ビットゲートによって作用される量子ビットの位相に影響
を及ぼすシュタルクシフト又は他の量子演算効果に基づいて、単一の量子ビットゲートに
よって作用される量子ビットに対応する量子ビット記録の量子ビット位相アキュムレータ
Δφ
qが更新されるようにする。TQGateコマンドは、2量子ビットゲートが施行さ
れるセクション(複数可)を引数として取る。TQGateコマンドの実行(例えば、処
理デバイス805による)は、2量子ビットゲートによって作用される量子ビットの位相
に影響を及ぼすシュタルクシフト又は他の量子演算効果に基づいて、2量子ビットゲート
によって作用される量子ビットに対応する量子ビット記録の量子ビット位相アキュムレー
タΔφ
qが更新されるようにする。様々な実施形態では、Transport、SQGa
te、及び/又はTQGateコマンドの実行は、前のコマンドが実行されてからの時間
に基づいて、1つ以上の量子ビットに対応する量子ビット記録(複数可)の量子ビット位
相アキュムレータΔφ
qが更新されるようにし得る。
【0060】
例えば、時間t1において、Configureコマンドが、量子ビットの位置を初
期化し、量子ビットに対応する量子ビット記録の量子ビット位相アキュムレータΔφqを
リセットするために(例えば、処理デバイス805によって)実行されてもよい。Con
figureコマンドはまた、それぞれのセクションの周波数(例えば、実行された較正
に基づいて決定される)を設定し得る。
【0061】
時間t2において、Transportationコマンドが(例えば、処理デバイ
ス805によって)実行され得る。例えば、Transportationコマンドは、
イオントラップ50内の量子ビット0及び2のセクション変更に基づいて、量子ビット0
及び量子ビット2に対応する量子ビット記録が更新されるようにし得る。
【0062】
時間t3において、StatePrepコマンドが(例えば、処理デバイス805に
よって)実行され得る。StatePrepコマンドは、イオントラップ50の特定のセ
クション(例えば、セクションB及びF)に位置する量子ビットに作用して、セクション
B及びFに位置する量子ビットに対応する量子ビット記録の量子ビット位相アキュムレー
タΔφqをゼロに設定し、並びに/又はセクションB及びFに位置する量子ビットに対応
する量子ビット記録の量子ビット位相アキュムレータΔφqが、更新/累積されるための
準備が整っている、及び/若しくはそのために有効化されていることを示し得る。例えば
、セクションB及びFにそれぞれ位置する、量子ビット0及び2に対応する量子ビット記
録の量子ビット位相アキュムレータΔφqはゼロに設定されてもよく、並びに/又は、量
子ビット0及び2に対応する量子ビット記録は、量子ビット記録の量子ビット位相アキュ
ムレータΔφqが更新/累積されるための準備が整っている、及び/若しくはそのために
有効化されていることを示すために更新されてもよい。
【0063】
時間t4において、SQGateコマンドが(例えば、処理デバイス805によって
)実行される。例えば、SQGateコマンドは、1つ以上の単一量子ビットゲートによ
って、それぞれの量子ビット(例えば、セクションB及びFに位置する量子ビット0及び
2)の相互作用時間位相(phaseq)の決定が作用されるようにし得る。例えば、量
子ビット0の相互作用時間位相は、Δφ0+φmとして決定されてもよく、これは、量子
ビット0が位置するセクションBに対応する位相である。例えば、例示的な一実施形態で
は、φm=fB
*(t4-t3)であり、ここで、fBはセクションBにおけるウェル周
波数である。同様に、例示的な一実施形態では、量子ビット2の相互作用時間位相は、Δ
φ2+φnとして決定され得、φn=fF
*(t4-t3)であり、fFはセクションF
におけるウェル周波数である。単一量子ビットゲートが完了した後、及び/又はSQGa
teコマンドを実行した結果として、単一量子ビットゲートによって作用されるセクショ
ン(複数可)内に位置する量子ビットに対応する量子ビット記録の量子ビット位相アキュ
ムレータΔφqが、単一量子ビットゲートによって作用された結果として量子ビットによ
って累積されたシュタルクシフト又は他の量子演算効果を含むように更新される。
【0064】
時間t5において、Transportコマンドが(例えば、処理デバイス805に
よって)実行され得る。例えば、Transportコマンドは、イオントラップ50内
での量子ビットのセクション変更及び/又は量子ビットの移送に基づいて、量子ビット0
、1、2、及び3に対応する量子ビット記録が更新されるようにし得る。例示的な一実施
形態では、Transportコマンドの実行に基づいてそれぞれの量子ビットの場所を
更新する前に、それぞれの量子ビット記録の量子ビット位相アキュムレータΔφqが、単
一の量子ビットゲートが実行されている時間中に特定のセクションに位置する量子ビット
の場所効果を考慮するように更新される。例えば、量子ビット0及び量子ビット2の量子
ビット位相アキュムレータΔφqは、それぞれ(t4-t3)*fB及び(t4-t3)
*fFだけ増加され得る。Transportコマンドの実行は、イオントラップの1つ
以上のセクションにわたる量子ビットの移送に基づいて、それぞれの量子ビット記録のビ
ット位相アキュムレータΔφqが更に更新されるようにし得る。例えば、量子ビット0及
び量子ビット2の量子ビット位相アキュムレータΔφqは、2πfT
*(tt5-t4)
だけ増加され得る。例示的な一実施形態では、fTは、イオントラップ50の特定のセク
ションの対に対応し得る。
【0065】
時間t6において、StatePrepコマンドが(例えば、処理デバイス805に
よって)実行され得る。StatePrepコマンドは、イオントラップ50の特定のセ
クション(例えば、セクションB及びF)に位置する量子ビットに作用して、セクション
B及びFに位置する量子ビットに対応する量子ビット記録の量子ビット位相アキュムレー
タΔφqをゼロに設定し、並びに/又はセクションB及びFに位置する量子ビットに対応
する量子ビット記録の量子ビット位相アキュムレータΔφqが、更新/累積されるための
準備が整っている、及び/若しくはそのために有効化されていることを示し得る。例えば
、セクションB及びFにそれぞれ位置する、量子ビット1及び3に対応する量子ビット記
録の量子ビット位相アキュムレータΔφqはゼロに設定されてもよく、並びに/又は、量
子ビット1及び3に対応する量子ビット記録は、量子ビット記録の量子ビット位相アキュ
ムレータΔφqが更新/累積されるための準備が整っている、及び/若しくはそのために
有効化されていることを示すために更新されてもよい。加えて、StatePrepコマ
ンドの実行は、位置効果に基づいて、量子ビット0及び2の量子ビット位相アキュムレー
タΔφqが更新されるようにし得る。例えば、量子ビット0及び2の量子ビット位相アキ
ュムレータΔφqは、それぞれ値(t6-t5)*fA(t6-t5)*fEだけ増分さ
れ得る。
【0066】
時間t7において、SQGateコマンドが(例えば、処理デバイス805によって
)実行される。例えば、SQGateコマンドは、1つ以上の単一量子ビットゲートによ
って、それぞれの量子ビット(例えば、セクションB及びFに位置する量子ビット1及び
3)の相互作用時間位相(phaseq)の決定が作用されるようにし得る。例えば、量
子ビット1の相互作用時間位相は、Δφ0+φmとして決定されてもよく、これは、量子
ビット1が位置するセクションBに対応する位相である。例えば、例示的な一実施形態で
は、φm=fB
*(t7-t6)であり、ここで、fBはセクションBにおけるウェル周
波数である。同様に、例示的な一実施形態では、量子ビット3の相互作用時間位相は、Δ
φ2+φnとして決定され得、φn=fF
*(t7-t6)であり、fFはセクションF
におけるウェル周波数である。単一量子ビットゲートが完了した後、及び/又はSQGa
teコマンドを実行した結果として、単一量子ビットゲートによって作用されるセクショ
ン(複数可)内に位置する量子ビットに対応する量子ビット記録の量子ビット位相アキュ
ムレータΔφqが、単一量子ビットゲートによって作用された結果として量子ビットによ
って累積されたシュタルクシフト又は他の量子演算効果を含むように更新される。
【0067】
時間t8において、Transportコマンドが(例えば、処理デバイス805に
よって)実行され得る。例えば、Transportコマンドは、イオントラップ50内
での量子ビットのセクション変更に基づいて、量子ビット0、1、2、及び3に対応する
量子ビット記録が更新されるようにし得る。例示的な一実施形態では、Transpor
tコマンドの実行に基づいてそれぞれの量子ビットの場所を更新する前に、それぞれの量
子ビット記録の量子ビット位相アキュムレータΔφqが、単一の量子ビットゲートが実行
されている時間中に特定のセクションに位置する量子ビットの場所効果を考慮するように
更新される。例えば、量子ビット0の量子ビット位相アキュムレータΔφqは、値fA
*
(t7-t6)だけ増分され得る。Transportコマンドの実行は、イオントラッ
プの1つ以上のセクションにわたる量子ビットの移送に基づいて、それぞれの量子ビット
記録のビット位相アキュムレータΔφqが更に更新されるようにし得る。例えば、量子ビ
ット0の量子ビット位相アキュムレータΔφqは、値2πfT
*(t8-t7)だけ増分
され得る。
【0068】
時間t9において、TQGateコマンドが(例えば、処理デバイス805によって
)実行される。TQGateコマンドは、セクションB及びFにおいて実行されている2
量子ビットゲートに対応する。図示されたシナリオでは、位相不感の2量子ビットゲート
が使用され、それゆえ、相互作用時間位相は決定される必要はない。しかしながら、TQ
Gateコマンドの実行により、セクションB及びFに位置する量子ビットに対応するそ
れぞれの量子ビット記録の量子ビット位相アキュムレータΔφqは、量子ビットに対して
2量子ビットゲートが実行された結果として、量子ビットの位相に影響を及ぼしたシュタ
ルクシフト又は他の量子演算効果に基づいて更新される。それぞれの量子ビット記録の量
子ビット位相アキュムレータΔφqはまた、2量子ビットゲートが実行されていた時間中
に特定のセクションに位置していた量子ビットの場所効果を考慮するように更新され得る
。例えば、量子ビット0の量子ビット位相アキュムレータΔφqは、値fB
*(t9-t
8)だけ増分され得る。
【0069】
理解されるように、
図5は、例示的な一実施形態による、量子コンピュータ110の
量子ビットのリアルタイム又はほぼリアルタイムの位相追跡の一例を示しており、例を説
明するものとして提供される。本明細書で提供される開示に基づいて当業者には明らかで
あるように、様々な他のシナリオが様々な他の実施形態に従って実行されてもよい。
技術的利点
【0070】
様々な実施形態は、量子システムの量子オブジェクト(例えば、原子、イオンなど)
に適用される信号位相を、量子オブジェクトの位相と精密かつ正確に一致させる技術的問
題に技術的解決策を提供する。例えば、様々な実施形態は、信号が量子オブジェクトと相
互作用する時間における量子オブジェクトの位相のリアルタイム又はほぼリアルタイムの
決定を提供し、それにより、信号を生成する操作源の動作は、信号の位相が相互作用時間
に量子オブジェクトの位相に対応する、一致する、かつ/又はほぼ等しくなるように修正
され得るようになる。それにより、信号との相互作用の結果として(例えば、量子オブジ
ェクトの位相と一致しない信号の位相に起因して)量子オブジェクトが経験する衝撃を軽
減することができ、量子オブジェクトを(例えば、信号の適用を介して)操作した成果が
、より堅牢で繰り返し可能な結果をもたらすことになる。加えて、様々な実施形態では、
定期的に更新された較正テーブルに基づいた(量子オブジェクトを伴う操作イベントに関
する)量子オブジェクトの相互作用時間位相の決定は、較正テーブルに記憶された情報/
データによって操作源内の任意のドリフトが考慮されるため、相互作用時間位相がより正
確に決定されることを可能にする。更に、様々な実施形態では、相互作用時間位相は、場
所及び/又は移送効果並びに量子演算効果の両方に基づいて決定され、量子オブジェクト
の相互作用時間位相のより正確な決定を可能にする。量子オブジェクトの相互作用時間位
相をより正確に決定することによって、操作源は、特定の量子ビットの実際の位相により
正確に対応する、一致する、かつ/又はほぼ等しい位相を有する(例えば、閾値位相差Δ
φtがより小さくなり得る)信号を提供するように動作され、より堅牢で繰り返し可能な
操作イベント結果をもたらす。例えば、量子システムがイオントラップ型量子コンピュー
タの一部である場合、位相追跡及び補正におけるこれらの改善は、改善された量子コヒー
レンス、量子ビットゲートの忠実度、及び全体的により低い量子コンピュータ誤り率をも
たらす。
【0071】
更に、量子オブジェクトの相互作用時間位相のリアルタイム又はほぼリアルタイムの
決定は、アルゴリズム(量子コンピュータによって実行される量子アルゴリズム)がアル
ゴリズムの実行中に更新されることを可能にする。このように、様々な実施形態は、量子
アルゴリズムが量子アルゴリズムの実行に関してリアルタイム又はほぼリアルタイムで(
例えば、量子アルゴリズムの実行中に)修正されることを可能にすることにより、量子コ
ンピュータによって実行される量子アルゴリズムの性能に更なる柔軟性をもたらす。
例示的なユーザ計算エンティティ
【0072】
図6は、本発明の実施形態と共に使用することができる例示的なユーザ計算エンティ
ティ10の例示的な概略図を提供する。様々な実施形態において、ユーザ計算エンティテ
ィ10は、ユーザが、入力を(例えば、ユーザ計算エンティティ10のユーザインターフ
ェースを介して)量子コンピュータシステム100に提供し、量子コンピュータシステム
100からの出力を受信、表示などすることを可能にするように構成される。
【0073】
図6に示されるように、ユーザ計算エンティティ10は、アンテナ612、伝送機6
04(例えば、無線機)、受信機606(例えば、無線機)、並びに伝送機604及び受
信機606のそれぞれに信号を提供し、それぞれから信号を受信する処理要素608を含
み得る。伝送機604及び受信機606のそれぞれに提供され、それぞれから受信される
信号は、システム計算エンティティ20などのような様々なエンティティと通信するため
の、適用可能な無線システムのエアインターフェース標準に従って、信号情報/データを
含み得る。この点に関して、ユーザ計算エンティティ10は、1つ以上のエアインターフ
ェース標準、通信プロトコル、変調タイプ、及びアクセスタイプで動作することが可能で
あり得る。より具体的には、ユーザ計算エンティティ10は、多数の無線通信規格及びプ
ロトコルのうちのいずれかに従って動作し得る。特定の実施形態では、ユーザ計算デバイ
ス10は、汎用パケット無線サービス(general packet radio service、GPRS)、ユ
ニバーサル移動体通信システム(Universal Mobile Telecommunications System、UMT
S)、符号分割多元接続2000(Code Division Multiple Access 2000、CDMA20
00)、CDMA2000 1X(1xRTT)、広帯域符号分割多元接続(Wideband C
ode Division Multiple Access、WCDMA)、世界移動体通信システム(Global Syste
m for Mobile Communication、GSM)、GSM革新のための強化データレート(Enhanc
ed Data rates for GSM Evolution、EDGE)、時分割-同期符号分割多元接続(Time
Division-Synchronous Code Division Multiple Access、TD-SCDMA)、ロングタ
ームエボリューション(Long Term Evolution、LTE)、進化型ユニバーサル地上無線
アクセスネットワーク(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network、E-U
TRAN)、エボリューションデータオプティマイズド(Evolution-Data Optimized、E
VDO)、高速パケットアクセス(High Speed Packet Access、HSPA)、高速ダウン
リンクパケットアクセス(High-Speed Downlink Packet Access、HSDPA)、IEE
E802.11(Wi-Fi)、Wi-Fi Direct、802.16(WiMAX
)、超広帯域(ultra-wideband、UWB)、赤外線(infrared、IR)プロトコル、近距
離通信(near field communication、NFC)プロトコル、Wibree、Blueto
othプロトコル、無線ユニバーサルシリアルバス(wireless universal serial bus、
USB)プロトコル、及び/又は任意の他の無線プロトコルなどの複数の無線通信規格及
びプロトコルに従って動作し得る。
【0074】
これらの通信規格及びプロトコルを介して、ユーザ計算エンティティ10は、非構造
付加サービス情報/データ(Unstructured Supplementary Service information/data、
USSD)、ショートメッセージサービス(Short Message Service、SMS)、マルチ
メディアメッセージサービス(Multimedia Messaging Service、MMS)、デュアルトー
ンマルチ周波数信号(Dual-Tone Multi-Frequency Signaling、DTMF)、及び/又は
加入者識別モジュールダイヤラ(Subscriber Identity Module Dialer、SIMダイヤラ
)などの概念を使用して、様々な他のエンティティと通信することができる。ユーザ計算
エンティティ10はまた、例えば、そのファームウェア、ソフトウェア(例えば、実行可
能命令、アプリケーション、プログラムモジュールを含む)、及びオペレーティングシス
テムに、変更、アドオン、及び更新をダウンロードすることができる。
【0075】
一実施形態によれば、ユーザ計算エンティティ10としては、場所決定態様、デバイ
ス、モジュール、機能(及び/又は本明細書で互換可能に使用される類似の単語)が挙げ
られ得る。例えば、ユーザ計算エンティティ10としては、例えば、緯度、経度、高度、
地理コード、コース、方向、方位、速度、UTC、日付、及び/又は様々な他の情報/デ
ータを取得するように適合される場所モジュールなどの、屋外測位態様が挙げられ得る。
一実施形態では、場所モジュールは、ビューでの衛星の数及びそれらの衛星の相対位置を
識別することによって、エフェメリスデータとして知られる場合があるデータを取得し得
る。衛星は、LEO衛星システム、DOD衛星システム、欧州連合ガリレオ測位システム
、中国コンパスナビゲーションシステム、インド領域ナビゲーション衛星システムなどを
含む、様々な異なる衛星であり得る。代替的に、場所情報/データは、セルラータワー、
Wi-Fiアクセスポイントなどを含む様々な他のシステムに関連して、ユーザ計算エン
ティティ10の位置を三角測量することによって決定され得る。同様に、ユーザ計算エン
ティティ10としては、例えば、緯度、経度、高度、地理コード、コース、方向、方位、
速度、時間、日付、及び/又は様々な他の情報/データを取得するように適合される場所
モジュールなどの、屋内測位態様が挙げられ得る。屋内態様のいくつかは、RFIDタグ
、屋内ビーコン若しくは伝送機、Wi-Fiアクセスポイント、セルラータワー、近くの
計算デバイス(例えば、スマートフォン、ラップトップ)などを含む、様々な位置又は場
所技術を使用し得る。例えば、そのような技術としては、アイビーコン、ジンバル近接ビ
ーコン、BLE伝送機、近距離無線通信(Near Field Communication、NFC)伝送機な
どが挙げられ得る。これらの屋内測位態様は、インチ又はセンチメートル以内の誰か又は
何かの場所を判定するために様々な設定で使用され得る。
【0076】
ユーザ計算エンティティ10はまた、1つ以上のユーザ入力/出力インターフェース
(例えば、処理要素608に連結されたディスプレイ616及び/又はスピーカ/スピー
カドライバ、並びに処理要素608に連結されたタッチスクリーン、キーボード、マウス
、及び/又はマイクロフォン)を備えるユーザインターフェースデバイスを含み得る。例
えば、ユーザ出力インターフェースは、アプリケーション、ブラウザ、ユーザインターフ
ェース、インターフェース、ダッシュボード、スクリーン、ウェブページ、ページ、及び
/又は本明細書で互換可能に使用される類似の単語を提供するように構成され、情報/デ
ータを表示又は可聴提示させるため、及び1つ以上のユーザ入力インターフェースを介し
て情報/データと相互作用させるように、計算エンティティ10上で実行され、かつ/又
は計算エンティティ10を介してアクセス可能であってもよい。ユーザ入力インターフェ
ースは、キーパッド618(ハード若しくはソフト)、タッチディスプレイ、音声/発話
若しくは運動インターフェース、スキャナ、リーダ、又は他の入力デバイスなど、ユーザ
計算エンティティ10がデータを受信することを可能にする多数のデバイスのうちのいず
れかを含み得る。キーパッド618を含む実施形態では、キーパッド618は、従来の数
字(0~9)及び関連するキー(#、*)、並びにユーザ計算エンティティ10を動作さ
せるために使用される他のキーを含む(又はそれらを表示させる)ことができ、英数字キ
ーの完全なセット、又は英数字キーの完全なセットを提供するように起動され得るキーの
セットを含み得る。入力を提供することに加えて、例えば、ユーザ入力インターフェース
を使用して、スクリーンセーバ及び/若しくはスリープモードなどのある特定の機能を起
動又は起動解除することができる。かかる入力により、ユーザ計算エンティティ10は、
情報/データ、ユーザ対話/入力などを収集することができる。
【0077】
ユーザ計算エンティティ10はまた、揮発性記憶域若しくはメモリ622、及び/又
は不揮発性記憶域若しくはメモリ624を含むことができ、これらは、埋め込まれてもよ
いし、かつ/又は取り外し可能であってもよい。例えば、不揮発性メモリは、ROM、P
ROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、MMC、SDメモリカード、メ
モリスティック、CBRAM、PRAM、FeRAM,RRAM、SONOS、レースト
ラックメモリなどであってもよい。揮発性メモリは、RAM、DRAM、SRAM、FP
M DRAM、EDO DRAM、SDRAM、DDR SDRAM、DDR2 SDR
AM、DDR3 SDRAM、RDRAM、RIMM、DIMM、SIMM、VRAM、
キャッシュメモリ、レジスタメモリなどであってもよい。揮発性及び不揮発性記憶域又は
メモリは、データベース、データベースインスタンス、データベース管理システムエンテ
ィティ、データ、アプリケーション、プログラム、プログラムモジュール、スクリプト、
ソースコード、オブジェクトコード、バイトコード、コンパイルされたコード、解釈され
たコード、マシンコード、実行可能命令などを記憶して、ユーザ計算エンティティ10の
機能を実装することができる。
【0078】
例示的実施形態では、ユーザ計算エンティティ10は、他のユーザ計算エンティティ
10及び/又はシステム計算エンティティ20と通信し得る。
例示的なシステム計算エンティティ
【0079】
図7は、本発明の一実施形態によるシステム計算エンティティ20の概略を提供する
。上述のように、システム計算エンティティ20は、量子コンピュータ110のコントロ
ーラ30と1つ以上のユーザ計算エンティティ10との間の仲介として機能するように構
成されてもよい。一般的に、システム計算エンティティ、計算エンティティ、エンティテ
ィ、デバイス、システムという用語、及び/又は本明細書で互換可能に使用される類似の
単語は、例えば、1つ以上のコンピュータ、計算エンティティ、デスクトップコンピュー
タ、携帯電話、タブレット、ファブレット、ノートブック、ラップトップ、分散システム
、アイテム/デバイス、端末、サーバ若しくはサーバネットワーク、ブレード、ゲートウ
ェイ、スイッチ、処理デバイス、処理エンティティ、リレー、ルーター、ネットワークア
クセスポイント、基地局など、並びに/又は本明細書に記載される、機能、動作、及び/
若しくはプロセスを実行するように適合されるデバイス若しくはエンティティの任意の組
み合わせを指し得る。そのような機能、動作、及び/又はプロセスは、例えば、伝送、受
信、動作オン、処理、表示、記憶、決定、作成/生成、監視、評価、比較(及び/又は本
明細書で互換可能に使用される類似の用語)を含み得る。一実施形態では、これらの機能
、動作、及び/又はプロセスは、データ、コンテンツ、情報(及び/又は本明細書で互換
可能に使用される類似の用語)で実行され得る。
【0080】
図7に示されるように、一実施形態では、システム計算エンティティ20は、例えば
、バスを介してシステム計算エンティティ20内の他の要素と通信する1つ以上の処理要
素705(プロセッサ、処理回路(及び/又は本明細書で互換可能に使用される類似の用
語)とも称される)を含み得るか、又はそれらと通信し得る。理解されるように、処理要
素705は、多数の異なる方法で具現化されてもよい。例えば、処理要素705は、1つ
以上のコンプレックスプログラマブル論理デバイス(complex programmable logic devic
e、CPLD)、マイクロプロセッサ、マルチコアプロセッサ、共処理エンティティ、特
定用途向け命令セットプロセッサ(application-specific instruction-set processor、
ASIP)、及び/又はコントローラとして具現化されてもよい。更に、処理要素705
は、1つ以上の他の処理デバイス又は回路として具現化されてもよい。回路機構という用
語は、ハードウェア全体の実施形態、又はハードウェア及びコンピュータプログラム製品
の組み合わせを指し得る。このように、処理要素705は、集積回路、特定用途向け集積
回路(application specific integrated circuit、ASIC)、フィールドプログラマ
ブルゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA)、プログラマブルロジ
ックアレイ(programmable logic array、PLA)、ハードウェアアクセラレータ、他の
回路などとして具現化されてもよい。したがって、理解されるように、処理要素705は
、特定の使用のために構成され得るか、又は揮発性若しくは不揮発性媒体に記憶されるか
、他の方法で処理要素705がアクセス可能な命令を実行するように構成されてもよい。
したがって、ハードウェア若しくはコンピュータプログラム製品によってか、又はそれら
の組み合わせによって構成されるかにかかわらず、処理要素705は、それに応じて構成
されると、本発明の実施形態による工程又は動作を実行することができ得る。
【0081】
一実施形態では、システム計算エンティティ20は、不揮発性媒体(不揮発性記憶域
、メモリ、メモリ記憶域、メモリ回路(及び/又は本明細書で互換可能に使用される類似
の用語)とも称される)を更に含み得るか、又はそれと通信し得る。一実施形態では、不
揮発性記憶域又はメモリとしては、ハードディスク、ROM、PROM、EPROM、E
EPROM、フラッシュメモリ、MMC、SDメモリカード、メモリスティック、CBR
AM、PRAM、FeRAM、RRAM、SONOS、レーストラックメモリなど、上述
のような1つ以上の不揮発性記憶域又はメモリ媒体710が挙げられ得る。理解されるよ
うに、不揮発性記憶域又はメモリ媒体は、データベース、データベースインスタンス、デ
ータベース管理システムエンティティ、データ、アプリケーション、プログラム、プログ
ラムモジュール、スクリプト、ソースコード、オブジェクトコード、バイトコード、コン
パイルされたコード、解釈されたコード、マシンコード、実行可能な命令などを記憶し得
る。データベース、データベースインスタンス、データベース管理システムエンティティ
という用語、及び/又は本明細書で互換的に使用される同様の用語は、リレーショナルデ
ータベース、階層データベース、及び/又はネットワークデータベースなどを介して、コ
ンピュータ可読記憶媒体に記憶された記録又は情報/データの構造化された集合を指し得
る。
【0082】
一実施形態では、システム計算エンティティ20は、揮発性媒体(揮発性記憶域、メ
モリ、メモリ記憶域、メモリ回路(及び/又は本明細書で互換可能に使用される類似の用
語)とも称される)を更に含み得るか又はそれと通信し得る。一実施形態では、揮発性記
憶域又はメモリとしてはまた、RAM、DRAM、SRAM、FPM DRAM、EDO
DRAM、SDRAM、DDR SDRAM、DDR2 SDRAM、DDR3 SD
RAM、RDRAM、RIMM、DIMM、SIMM、VRAM、キャッシュメモリ、レ
ジスタメモリなど、上述のような1つ以上の揮発性記憶域又はメモリ媒体715が挙げら
れ得る。理解されるように、揮発性記憶域又はメモリ媒体は、例えば、処理要素605に
よって実行される、データベース、データベースインスタンス、データベース管理システ
ムエンティティ、データ、アプリケーション、プログラム、プログラムモジュール、スク
リプト、ソースコード、オブジェクトコード、バイトコード、コンパイルされたコード、
解釈されたコード、マシンコード、実行可能命令などの少なくとも一部を記憶するために
使用され得る。このように、データベース、データベースインスタンス、データベース管
理システムエンティティ、データ、アプリケーション、プログラム、プログラムモジュー
ル、スクリプト、ソースコード、オブジェクトコード、バイトコード、コンパイルされた
コード、解釈されたコード、マシンコード、実行可能命令などは、処理要素705及びオ
ペレーティングシステムの援助により、システム計算エンティティ20の動作の特定の態
様を制御するために使用され得る。
【0083】
示されるように、一実施形態では、システム計算エンティティ20はまた、伝送、受
信、動作オン、処理、表示、記憶などされ得る、データ、コンテンツ、情報(及び/又は
本明細書で互換可能に使用される類似の用語)を通信することなどによって、様々な計算
エンティティと通信するための1つ以上のネットワーク及び/又は通信インターフェース
720を含み得る。例えば、システム計算エンティティ20は、1つ以上のユーザ計算エ
ンティティ10、コントローラ30などの計算エンティティ又は通信インターフェースと
通信し得る。
【0084】
示されるように、一実施形態では、システム計算エンティティ20はまた、伝送、受
信、動作オン、処理、表示、記憶などされ得る、データ、コンテンツ、情報(及び/又は
本明細書で互換可能に使用される類似の用語)を通信することなどによって、様々な計算
エンティティと通信するための1つ以上のネットワーク及び/又は通信インターフェース
720を含み得る。そのような通信は、ファイバ分散データインターフェース(fiber di
stributed data interface、FDDI)、デジタル加入者線(digital subscriber line
、DSL)、Ethernet、非同期転送モード(asynchronous transfer mode、AT
M)、フレームリレー、ケーブルによるデータサービスインターフェース仕様(data ove
r cable service interface specification、DOCSIS)、又は任意の他の有線伝送
プロトコルなどの有線データ伝送プロトコルを使用して実行され得る。同様に、システム
計算エンティティ20は、汎用パケット無線サービス(GPRS)、ユニバーサル移動体
通信システム(UMTS)、符号分割多元接続2000(CDMA2000)、CDMA
2000 1X(1xRTT)、広帯域符号分割多元接続(WCDMA)、世界移動体通
信システム(GSM)、GSM革新のための強化データレート(EDGE)、時分割-同
期符号分割多元接続(TD-SCDMA)、ロングタームエボリューション(LTE)、
進化型ユニバーサル地上無線アクセスネットワーク(E-UTRAN)、エボリューショ
ンデータオプティマイズド(EVDO)、高速パケットアクセス(HSPA)、高速ダウ
ンリンクパケットアクセス(HSDPA)、IEEE802.11(Wi-Fi)、Wi
-Fi Direct、802.16(WiMAX)、超広帯域(UWB)、赤外線(I
R)プロトコル、近距離通信(NFC)プロトコル、Wibree、Bluetooth
プロトコル、無線ユニバーサルシリアルバス(USB)プロトコル、及び/又は任意の他
の無線プロトコルなどの様々なプロトコルのうちのいずれかを使用して、無線外部通信ネ
ットワークを介して通信するように構成され得る。システム計算エンティティ20は、か
かるプロトコル及び規格を、ボーダゲートウェイプロトコル(BGP)、動的ホスト構成
プロトコル(DHCP)、ドメイン名システム(DNS)、ファイル転送プロトコル(F
TP)、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)、HTTPオーバーTLS/SS
L/Secure、インターネットメッセージアクセスプロトコル(IMAP)、ネット
ワークタイムプロトコル(NTP)、シンプルメール転送プロトコル(SMTP)、Te
lnet、移送レイヤーセキュリティ(Transport Layer Security、TLS)、セキュア
ソケットレイヤー(SSL)、インターネットプロトコル(IP)、伝送制御プロトコル
(TCP)、ユーザデータグラムプロトコル(UDP)、データグラムコンジェスチョン
コントロールプロトコル(DCCP)、ストリーム制御伝送プロトコル(SCTP)、ハ
イパーテキストマークアップ言語(HTML)などを使用した通信のために使用すること
ができる。
【0085】
理解されるように、システム計算エンティティ20の構成要素のうちの1つ以上は、
分散システムなどで、他のシステム計算エンティティ20構成要素から離れて位置しても
よい。更に、構成要素のうちの1つ以上が統合されてもよく、本明細書に記載される機能
を実行する更なる構成要素が、システム計算エンティティ20に含まれてもよい。このよ
うに、システム計算エンティティ20は、様々なニーズ及び状況に対応するように適合さ
れ得る。
例示的なコントローラ
【0086】
図8に示されるように、様々な実施形態において、コントローラ30は、処理要素8
05、メモリ810、ドライバコントローラ要素815、通信インターフェース820、
アナログ-デジタル変換素子825などを含む様々なコントローラ要素を含んでもよい。
例えば、処理要素805は、プログラマブル論理デバイス(CPLD)、マイクロプロセ
ッサ、共処理エンティティ、特定用途向けプロセッサのための命令セット(ASIP)、
集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ
(FPGA)、プログラマブル論理アレイ(PLA)、ハードウェアアクセラレータ、他
の処理デバイス及び/若しくは回路機構など、並びに/又はコントローラを含んでもよい
。回路機構という用語は、ハードウェア全体の実施形態、又はハードウェア及びコンピュ
ータプログラム製品の組み合わせを指し得る。例示的な一実施形態では、コントローラ3
0の処理要素805は、クロックを含み、かつ/又はクロックと通信する。例えば、メモ
リ810は、ハードディスク、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシ
ュメモリ、MMC、SDメモリカード、メモリスティック、CBRAM、PRAM、Fe
RAM、RRAM、SONOS、レーストラックメモリ、RAM、DRAM、SRAM、
FPM DRAM、EDO DRAM、SDRAM、DDR SDRAM、DDR2 S
DRAM、DDR3 SDRAM、RDRAM、RIMM、DIMM、SIMM、VRA
M、キャッシュメモリ、レジスタメモリなどのうちの1つ以上のような、揮発性及び/又
は不揮発性記憶域などの非一時的なメモリを含んでもよい。様々な実施形態において、メ
モリ810は、(例えば、量子ビット記録データストア、量子ビット記録データベース、
量子ビット記録テーブルなどの)量子コンピュータの量子ビットに対応する量子ビット記
録、較正テーブル、実行可能な待ち行列、(例えば、1つ以上のコンピュータ言語、専門
コントローラ言語(複数可)などの)コンピュータプログラムコードなどを記憶し得る。
例示的な一実施形態では、メモリ810に記憶されたコンピュータプログラムコードの少
なくとも一部分(例えば、処理要素805による)の実行により、コントローラ30は、
量子システム内の量子オブジェクトの位相を追跡し、1つ以上の操作源及び/又はそれに
よって生成された信号の位相の調整を引き起こすための、本明細書に記載された1つ以上
の工程、動作、プロセス、手順などを実行する。
【0087】
様々な実施形態において、ドライバコントローラ要素815としては、それぞれが1
つ以上のドライバを制御するように構成された、1つ以上のドライバ及び/又はコントロ
ーラ要素が挙げられ得る。様々な実施形態において、ドライバコントローラ要素815は
、ドライバ及び/又はドライバコントローラを含み得る。例えば、ドライバコントローラ
は、コントローラ30によって(例えば、処理要素805によって)スケジュール及び実
行される実行可能命令、コマンドなどに従って、1つ以上の対応するドライバを動作させ
るように構成され得る。様々な実施形態において、ドライバコントローラ要素815は、
コントローラ30が操作源64を動作させること、及び/又は操作源64によって生成さ
れた信号の位相を制御するように操作源64の動作を修正することを可能にし得る。様々
な実施形態において、ドライバは、レーザードライバ、真空構成要素ドライバ、直流(D
C)、高周波(RF)、トラップ/移送、並びに/又はイオントラップ50のイオントラ
ップ電位を維持及び/若しくは制御するために使用される他の電極に印加される電流及び
/又は電圧の流れを制御するためのドライバ、極低温及び/又は真空システム構成要素ド
ライバなどであり得る。様々な実施形態において、コントローラ30は、カメラ、MEM
カメラ、CCDカメラ、フォトダイオード、光電子増倍管などのような1つ以上の光学受
信機構成要素から信号を通信及び/又は受信するための手段を備える。例えば、コントロ
ーラ30は、1つ以上の光受信機構成要素、較正センサ62などから信号を受信するよう
に構成された1つ以上のアナログ-デジタル変換機要素825を含み得る。様々な実施形
態において、コントローラ30は、システム計算エンティティ20とインターフェース接
続及び/又は通信するための通信インターフェース820を含み得る。例えば、コントロ
ーラ30は、実行可能命令、コマンドセットなどをシステム計算エンティティ20から受
信し、量子コンピュータ110から(例えば、光学収集システムから)受信した出力及び
/又はシステム計算エンティティ20への出力を処理した結果を提供するための通信イン
ターフェース820を含み得る。様々な実施形態において、システム計算エンティティ2
0及びコントローラ30は、直接有線及び/若しくは無線接続、並びに/又は1つ以上の
有線及び/若しくは無線ネットワークを介して通信し得る。
結論:
【0088】
本明細書に記載される本発明の多くの修正例及び他の実施形態は、前述の説明及び関
連付けられた図面に提示される教示の利益を有する、本発明に関係がある当業者に着想さ
れるであろう。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されるものでは
ないこと、並びに修正例及び他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが
意図されることを理解されたい。特定の用語が本明細書で用いられているが、これらは一
般的かつ記述的な意味でのみ使用され、限定の目的では使用されない。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子システムに対応するコントローラによって、前記量子システムの特定の量子オブジェクトの位相更新トリガを識別するステップであって、前記位相更新トリガは、相互作用時間に対応する、ステップと、
前記位相更新トリガを識別することに応答して、前記コントローラによって、前記特定の量子オブジェクトの位置と、前記特定の量子オブジェクトが経験する移送効果と、特定の量子オブジェクトが経験する量子演算効果と、前記相互作用時間とのうちの少なくとも1つに基づいて、前記特定の量子オブジェクトの相互作用時間位相を決定すること、および
前記コントローラによって、(a)1つ又は複数の操作源によって生成され、(b)前記位相更新トリガに対応する1つ又は複数の信号の位相を、前記1つ又は複数の信号の位相が前記相互作用時間における特定の量子オブジェクトの前記相互作用時間位相に対応するように調整させるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ又は複数の信号は、前記相互作用時間において前記特定の量子オブジェクトに入射する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位相更新トリガは、前記特定の量子オブジェクトへの前記1つ又は複数の信号の印加が前記相互作用時間に発生するようスケジュールされると決定することによって識別され、特定の量子オブジェクトの前記相互作用時間位相は、前記特定の量子オブジェクトの位置、特定の量子オブジェクトが経験する前記移送効果、前記特定の量子オブジェクトが経験する前記量子演算効果、又は前記相互作用時間のうちの2つ以上に基づいて決定される、請求項1に記載の方法。