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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105107
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】針廃棄用容器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
A61M5/32 510
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073447
(22)【出願日】2022-04-27
(62)【分割の表示】P 2017161170の分割
【原出願日】2017-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2017116300
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508292235
【氏名又は名称】株式会社ファインプロ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中神 裕之
(72)【発明者】
【氏名】茂呂 拓実
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数種類の針ユニットを同じ操作により、注射器から取り外して廃棄できる、針廃棄用容器を提供する。
【解決手段】針廃棄用容器は、針ユニットを、収容部内へ落下させる開口部121を有する蓋体102とを備えている。蓋体102は、移動部131を有し、移動部131は、開口部121と組み合わされて、針ユニットの針ハブを挿入可能な挿入孔123を形成し、移動部又は開口部は、挿入孔123に挿入された針ハブの回転を阻止する回転阻止部125を有している。回転阻止部は、2つの凸部126を有し、2つの凸部の外側の側壁に第1針ハブの回転を阻止する第1の回転阻止部が形成され、内側の側壁に第2針ハブの回転を阻止する第2の回転阻止部が形成される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器本体から分離された針ユニットを収容する収容部と、
前記針ユニットを、前記収容部内へ落下させる開口部を有する蓋体とを備え、
前記蓋体は、第1の位置と第2の位置との間を移動可能な移動部を有し、
前記移動部は、前記第1の位置において、前記開口部と組み合わされて前記針ユニットの針ハブを挿入可能な挿入孔を形成すると共に、前記第2の位置において、前記開口部と組み合わされて落下孔を形成し、
前記移動部又は前記開口部は、前記挿入孔に挿入された前記針ハブの回転を阻止する回転阻止部を有し、
前記回転阻止部は、互いに間隔をおいて形成された2つの凸部を有し、
前記2つの凸部の外側の側壁は、第1針ハブと挿入孔との相対回転を規制可能な第1の回転阻止部を形成し、
前記2つの凸部の内側の側壁は、第1針ハブとは別の外部形状を有する第2針ハブと挿入孔との相対回転を規制可能な第2の回転阻止部を形成する、針廃棄用容器。
【請求項2】
前記2つの凸部の外側の側壁同士の間隔は、1.1mmより大きく、2.8mm未満である、請求項1に記載の針廃棄用容器。
【請求項3】
前記第1の回転阻止部は、前記2つの凸部における外側の側壁のそれぞれに、前記第1針ハブと挿入孔とがいずれの方向にも回転できないように規制する回転阻止部分を有する、請求項1又は2記載の針廃棄用容器。
【請求項4】
前記回転阻止部分同士の間隔が1.1mmより大きく、2.8mm未満である、請求項3に記載の針廃棄用容器。
【請求項5】
前記第1の回転阻止部と前記第2の回転阻止部とが同一周上に形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の針廃棄用容器。
【請求項6】
前記2つの凸部は、軸方向に延びており、
前記2つの凸部の外側の側壁同士の間隔は、下部から上部に向かって次第に狭くなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の針廃棄用容器。
【請求項7】
前記挿入孔は、挿入された前記針ハブが所定位置よりも下方に移動することを阻止するストッパ部を有している、請求項1~6のいずれか1項に記載の針廃棄用容器。
【請求項8】
前記回転阻止部は、前記移動部の前記挿入孔を形成する部分と、前記開口部の前記挿入孔を形成する部分とのそれぞれにおける、前記移動部の移動方向上において対向する位置に形成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の針廃棄用容器。
【請求項9】
前記移動部に設けられた前記2つの凸部は、前記開口部の前記挿入孔を形成する部分に設けられた前記2つの凸部と比べて硬度が高い材料により形成されている、請求項8に記載の針廃棄用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、針廃棄用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から医療従事者の誤穿刺を防ぐために、注射器に取り付けられた針に触れることなく、注射器から針を安全に分離して廃棄する種々の針廃棄用容器が検討されている。近年では、糖尿病患者によるインスリンの自己注射が行われており、訓練を受けた医療従事者以外の者が、針を取り扱わなければならない場合もある。このため、より操作が簡便で、より安全性が高い針廃棄用容器が求められている。
【0003】
インスリンの自己注射には、ペン型注入器と呼ばれる専用の注射器を用いることが一般的である。通常のペン型注入器には、共通規格の針ユニットを取り付ける。この針ユニットはねじ込み式となっており、針ユニットをペン型注入器から分離するためには、針ユニット及びペン型注入器の一方固定して、他方を回転させる必要がある。このため、針ユニットの針ハブに設けられたリブを挟み込んで、針ユニットを回転しないようにホールドするホールド部を備えた、ペン型注入器用の針廃棄用容器が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。針ユニットをホールドした状態でペン型注入器を回転させて針ユニットをペン型注入器から分離した後、ホールドを解除することにより針ユニットを容器内に落下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-32557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ペン型注入器の針ユニットは、複数のメーカーから複数の製品が販売されており、それらは内部のねじ構造については共通の規格を満たしているが、針ハブの外部形状は同一ではない。このため、特定の針ユニットに対応したホールド部は、他の針ユニットをホールドできず、針廃棄用容器を針ユニット毎に用意する必要がある。
【0006】
針廃棄用容器に、複数種類のホールド部を設けて複数種類の針ユニットに対応したり、ホールド部を交換式にして複数種類の針ユニットに対応したりすることも考えられる。しかし、複数のホールド部を設けた場合、操作者が針ユニットに応じた正しいホールド部を選択する必要があり、糖尿病患者自身が針の廃棄を行うような場合、操作に戸惑い、うまくできないという問題がある。また、ホールド部を交換式とした場合には、煩雑な交換操作が必要となる。
【0007】
本開示の課題は、複数種類の針ユニットを同じ操作により、注射器から取り外して廃棄できる、針廃棄用容器を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
針廃棄用容器の一態様は、注射器本体から分離された針ユニットを収容する収容部と、針ユニットを、収容部内へ落下させる開口部を有する蓋体とを備え、蓋体は、第1の位置と第2の位置との間を移動可能な移動部を有し、移動部は、第1の位置において、開口部と組み合わされて針ユニットの針ハブを挿入可能な挿入孔を形成すると共に、第2の位置において、開口部と組み合わされて落下孔を形成し、移動部又は開口部は、挿入孔に挿入された針ハブの回転を阻止する回転阻止部を有し、回転阻止部は、互いに間隔をおいて形成された2つの凸部を有し、2つの凸部の外側の側壁は、第1針ハブと当接することで第1針ハブと挿入孔との相対回転を規制可能な第1の回転阻止部を形成し、2つの凸部の内側の側壁は、第1針ハブとは別の外部形状を有する第2針ハブと当接することで第2針ハブと挿入孔との相対回転を規制可能な第2の回転阻止部を形成する。
【0009】
このような構成とすることにより、一種の係合構造により複数の針ユニットをホールドすることができる。そして、注射器本体に取り付けられた針ユニットが第1針ハブ及び第1針ハブとは別の外部形状を備える第2針ハブのいずれであっても、使用者はその差異を意識することなく、針本体から容易に取り外して安全に廃棄することができる。
【0010】
針廃棄用容器の一態様において、2つの凸部の外側の側壁同士の間隔は、1.1mmより大きく、2.8mm未満とすることができる。このように従来にない幅構成とすることにより、第1針ハブの取り外しがさらに容易となる。
【0011】
針廃棄用容器の一態様において、第1の回転阻止部は、2つの凸部における外側の側壁のそれぞれに、第1針ハブと挿入孔とが周方向いずれの方向にも回転できないように規制する回転阻止部分を有する。このような構成とすることにより、各回転阻止部分が、第1針ハブの凹部を形成する各対向側面と当接するので、針ハブと挿入孔とのぐらつきを防止することができる。
【0012】
針廃棄用容器の一態様において、回転阻止部分同士の間隔は、1.1mmより大きく、2.8mm未満とすることができる。このように従来にない幅構成とすることにより、第1針ハブの取り外しがさらに容易となる。
【0013】
針廃棄用容器の一態様において、第1の回転阻止部と第2の回転阻止部とが同一周上に形成されている。このような構成とすることにより、第1の回転阻止部と第2の回転阻止部の形成を容易化することができる。
【0014】
針廃棄用容器の一態様において、2つの凸部は、軸方向に延びており、2つの凸部の外側の側壁同士の間隔は、下部から上部に向かって次第に小さくなるにしてもよい。このような構成とすることにより、第1針ハブをよりスムーズに挿入孔に挿入できる。
【0015】
針廃棄用容器の一態様において、挿入孔は、挿入された針ハブが所定位置よりも下方に移動することを阻止するストッパ部を有していてもよい。このような構成とすることにより、挿入孔に針ハブを挿入した際に、針ハブが下方へ抜けないようにできる。
【0016】
針廃棄用容器の一態様において、回転阻止部は、移動部の挿入孔を形成する部分と、開口部の挿入孔を形成する部分とのそれぞれにおける、移動部の移動方向上において対向する位置に形成されていてもよい。このような構成とすることにより、取り外された針ユニットを容易に収容部内に落下させることができる。
【0017】
針廃棄用容器の一態様において、移動部に設けられた2つの凸部は、開口部の挿入孔を形成する部分に設けられた2つの凸部と比べて硬度が高い材料により形成されていてもよい。このような構成とすれば、移動部側の凸部を摩耗しにくくすることができ、針廃棄用容器の寿命を長くすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の針廃棄用容器によれば、複数種類の針ユニットを同じ操作により、注射器から取り外して廃棄できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は注射器の一例を示す斜視図である。
図2図2は第1針ハブの一例を示す斜視図である。
図3図3は第1針ハブの一例を示す先端側から見た平面図である。
図4図4は第2針ハブの一例を示す斜視図である。
図5図5は第2針ハブの一例を示す先端側から見た平面図である。
図6図6は一実施形態に係る針廃棄用容器を示す斜視図である。
図7図7は一実施形態に係る針廃棄用容器の挿入孔を示す平面図である。
図8図8は移動部を示す端面図である。
図9図9は挿入孔に第1針ハブを挿入した状態を示す平面図である。
図10図10は挿入孔に第2針ハブを挿入した状態を示す平面図である。
図11図11は挿入孔の変形例を示す平面図である。
図12図12は回転阻止部の変形例を示す正面図である。
図13図13は回転阻止部の変形例を示す正面図である。
図14図14は挿入孔の変形例を示す平面図である。
図15図15は蓋体の変形例を示す平面図である。
図16図16は蓋体の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態において、図1に示すように、注射器200が、インスリン注入用のいわゆるペン型注入器である例を説明する。ペン型注入器である注射器200は、注射器本体201と針ユニット202とを有している。本実施形態の針ユニット202は、穿刺用の針本体221と、針本体221を保持する針ハブ222とを有している。針ハブ222は、注射器本体201の先端部に設けられた接続用雄ねじと係合する接続用雌ねじを有しており、針ユニット202は注射器本体201にねじ接続される。針ユニット202が注射器本体201に接続されると、針本体221の基端側に延びるバック針部分223が、注射器本体201内に収容された薬液容器(図示せず)のシールを穿刺する。
【0021】
本実施形態において、針ハブ222が、第1針ハブ222A及び第2針ハブ222Bのいずれかである例について説明する。図2図5に示すように、第1針ハブ222Aは、外周面に尖頭アーチ状の第1針ハブ凹部224を等間隔で4つ有しており、第2針ハブ222Bは、外周面に設けられた複数の柱状の第2針ハブ凸部225を有している。図には第1針ハブ凹部224が、基端側に向かって次第に幅が狭くなる形状であり、最大幅w1maxが2.8mmであり、第2針ハブ凸部225が、軸方向において0.9mmの幅で一定である例を示している。第1針ハブ凹部224の最大幅w1maxは、第2針ハブ凸部225の幅w2よりも大きい(w1max>w2)く、第1針ハブ222Aの最大外径φmax1は、第2針ハブ222Bの最大外径φmax2よりも大きい。また、第1針ハブ凹部224における外径は、第2針ハブ凸部225における外径よりも小さい。
【0022】
本実施形態の針廃棄用容器は、図6に示すように、注射器本体201から分離された針ユニット202を収容する収容部101と、針ユニット202を収容部101内へ落下させる開口部121を有する蓋体102とを有している。蓋体102には、第1の位置P1と第2の位置P2との間を移動可能な移動部131が開口部121に対して組み付けられている。
【0023】
図7、14に示すように、移動部121は、第1の位置P1において、係合凹部146が蓋体120に設けられた可撓片147と係合し、第1の位置P1に固定することができる。第1の位置P1において、移動部131は、開口部121と組み合わされて、挿入孔123を形成する。挿入孔123の最大内径φmax3は、第1針ハブ222Aの最大外径φmax1よりも大きく、第1針ハブ222A及び第2針ハブ222Bのいずれも挿入可能である。
【0024】
図7に示すように、係合凹部146と可撓片147との係合を解除し、スライド用溝148に沿って移動部131を第2の位置P2に移動させると、移動部131は開口部121と組み合わされて、針ハブ222を収容部101に落下させるのに十分な空間を有する落下孔を形成する。針ハブ222は移動部131又は開口部121との摩擦力に比して重力の方が大きければ自重で落下孔から収容部101に落下する。
【0025】
図8に示すように、移動部131の端部には、軸方向に延びる移動部湾曲壁134が設けられており、開口部121の移動部湾曲壁134と対向する部分には、開口部湾曲壁124が設けられている。移動部湾曲壁134と開口部湾曲壁124とが組み合わされて挿入孔123が形成される。移動部湾曲壁134と開口部湾曲壁124の軸方向の長さ(高さ)を、第1針ハブ222A及び第2針ハブ222Bの高さよりも長くすれば、使用者は廃棄用容器の奥まで針ハブ222を押し込むことができる。このため、針ハブ222と挿入孔123との相対回転を阻止する際の支点を下方にすることができ、注射器200と廃棄用容器との相対安定時の安定感を向上させることができる。
【0026】
挿入孔123には、挿入された第1針ハブ222A及び第2針ハブ222Bの回転を阻止する回転阻止部125が設けられている。本実施形態において回転阻止部125は、移動部湾曲壁134及び開口部湾曲壁124の中央部にそれぞれ設けられている。図7及び図8に示すように、回転阻止部125は、近接して互いに間隔を置いて、軸方向に一定の幅で延びる2つの凸部126を有している。なお、2つの凸部126は、その一部に回転阻止部125としての機能である、第1針ハブ凹部224及び第2針ハブ凸部225と当接する機能を有していればよい。例えば、2つの凸部126の突出方向先端を第1針ハブ222A及び第2針ハブ222Bと当接する回転阻止部125とし、2つの凸部126の突出方向基端は第1針ハブ222A及び第2針ハブ222Bと当接しない構成としてもよい。また、2つの凸部126の突出方向中間部や突出方向基端を回転阻止部125とすることもできる。なお、2つの凸部126は、回転阻止部125ではない部分において針ハブ222の挿入に影響がない限り離間させなくてもよく、2つの凸部126の一部において離間距離が異なっていてもよい。
【0027】
第1針ハブ222Aを挿入孔123に挿入した場合には、図9に示すように、第1針ハブ凹部224の内側に、2つの凸部126が位置する。このため、第1針ハブ222Aを回転させようとすると、2つの凸部126の外側の側壁127のいずれかが、第1針ハブ凹部224の側壁と当接し、第1針ハブ222Aの回転を阻止する。なお、2つの凸部126の互いに対向する側壁を内側の側壁128とし、内側の側壁128と反対側の互いに対向していない側壁を外側の側壁127とする。このように、外側の側壁127の少なくとも一部は、第1針ハブ222Aの回転を阻止する第1の回転阻止部となる。
【0028】
第2針ハブ222Bを挿入孔123に挿入した場合には、図10に示すように、2つの凸部126の間に第2針ハブ凸部225が位置する。このため、第2針ハブ222Bを回転させようとすると、2つの凸部126の互いに対向する内側の側壁128のいずれかが、第2針ハブ凸部225の側壁と当接し、第2針ハブ222Bの回転を阻止する。このように、内側の側壁128の少なくとも一部は、第2針ハブ222Bの回転を阻止する第2の回転阻止部となる。
【0029】
図9及び図10に示すように、第1針ハブ222A又は第2針ハブ222Bを挿入孔123に挿入した際に、2つの凸部126の外側の側壁127同士の間隔t1は第1針ハブ凹部224の最大幅w1maxよりも小さいか同等の距離を有している。本実施形態において第1針ハブ凹部224は最大幅w1maxが2.8mmであり、2つの凸部126の間隔t2は第2針ハブ凸部225の幅w2より大きくなければならないことを考慮すると、t1は2.8mmより小さく、1.1mmより大きく、成型精度を考慮すると、1.4mmより大きいことが好ましい。但し、樹脂製の針ハブは押圧により変形するため、t1は2.8mmと同等又は少し大きくしてもよい。本実施形態においては、2つの凸部126のうち、第1針ハブ凹部224に当接して回転を規定する部分は、軸方向に向かって延びる2つの凸部126における外側の側壁127の先端角のいずれかである。外側の側壁127の先端角同士の間隔はすなわち第1回転阻止部の幅であり、第1回転阻止部の幅は1.1mmより大きく、好ましくは1.4mmより大きく、2.8mm未満であることが好ましい。なお、間隔t1及び間隔t2の値は、針廃棄用容器の平面視(図9の視点)における間隔の値である。
【0030】
凸部126の軸方向の長さは特に限定されないが、ある程度長い方が、第2針ハブ222Bの回転阻止に有利である。また、図11に示すように2つの凸部126における外側の側壁127のそれぞれについて、その一部を第1針ハブ凹部224の尖頭アーチ状を構成する各側面の一部と当接する回転阻止部分129とすることで、針ハブ222を放射方向のいずれにも回転できないように規制して針ハブ222が挿入孔123に対してぐらつかないようにすることができる。具体的には、本実施形態においては、2つの凸部126における外側の側壁127の両方の先端角を回転阻止部分129とし、使用者が第1針ハブ222Aを挿入孔123に挿入していくと、第1針ハブ222Aの尖頭アーチ状を構成する各側面の一部に、回転阻止部分129である対応する先端角が当接するように設計されている。このため、本実施形態においては、針ハブを放射方向のいずれにも回転できないように規制すると同時に、針ハブ挿入深さを規定している。
【0031】
第1針ハブ222A用の第1の回転阻止部と、第2針ハブ222B用の第2の回転阻止部とを、挿入孔123内に別々に設けようとすると、一方の回転阻止部が、他方の針ハブの挿入を阻害したり、移動部131を移動させた際に針ハブの自重落下を阻害したりしてしまう可能性があるが、並べて設けられた2つの凸部126の対向していない外側の側壁127を第1針ハブ222Aの回転阻止に用い、互いに対向する内側の側壁128を第2針ハブ222Bの回転阻止に用いることにより、上記阻害の可能性を低減することができる。なお、本実施形態において、第1の回転阻止部と、第2の回転阻止部とは同一周上に形成されているが、高さ方向(図8における上下方向)において第1の回転阻止部と第2の回転阻止部とが異なるようにしてもよい。
【0032】
挿入孔123は、回転阻止部125以外の全部分を第1針ハブ222Aの最大径φmax1よりも大きくすることができる。このようにすることで、第1針ハブ222Aを挿入孔123に挿入することができる。
【0033】
本実施形態において、回転阻止部125が、移動部湾曲壁134及び開口部湾曲壁124のそれぞれに1つずつ設けられている例を示した。回転阻止部125を、移動部湾曲壁134と、開口部湾曲壁124とに、移動部131の移動方向上において互いに対向させて設けることにより、移動部131を第2の位置P2に移動させる際に回転阻止部125が針ハブ222を強固に保持しすぎてしまい針ハブ222が収容部101に落ちないといった事態を低減することができると共に、より確実に第1針ハブ222A及び第2針ハブ222Bの回転を阻止することができる。しかし、回転阻止部125は、移動部湾曲壁134及び開口部湾曲壁124の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0034】
本実施形態の針廃棄用容器において、針ハブ222を挿入孔123に挿入した場合に、針ハブ222が径方向に押圧されることが好ましい。このようにすれば、針ハブ222の回転をより確実に阻止することができる。また、押圧されていることにより、注射器本体201と針ユニット202とのねじ係合を解除した後、注射器本体201を上側に引き上げた際に、バック針部分223が薬液容器のシールキャップから抜けないという問題を生じにくくすることができる。
【0035】
針ハブ222の径方向の押圧は、凸部126の径方向端部が、針ハブ222の外壁に当接することにより行われることが好ましい。挿入孔123の内壁面全体又は大部分が針ハブ222と当接し、押圧する構成の場合、移動部131を第1の位置P1から第2の位置P2へ移動させても、針ハブ222が壁面から外れないおそれがある。しかし、凸部126だけが押圧当接している場合には、移動部131を第2の位置P2へ移動させると、容易に針ハブ222を落下させることができる。
【0036】
また、挿入孔123を、その周の1/2を越えた部分が移動部湾曲壁134又は開口部湾曲壁124により構成されるようにすれば、移動部131を第1の位置P1から第2の位置P2に移動させた際に、針ハブ222をより落下させやすくすることができる。
【0037】
移動部131は、蓋体102の他の部分と同じ材料により形成することができる。また、移動部131を蓋体102の他の部分よりも硬い材料により形成することもできる。例えば、移動部131をアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂又はポリアセタール樹脂等により形成し、他の部分をポリエチレン又はポリプロピレン等により形成することができる。このようにすれば、移動部131の耐久性を向上させることができる。また、移動部131以外の蓋体102と収容部101とを一体成形することもできる。
【0038】
移動部湾曲壁134と開口部湾曲壁124との両方に回転阻止部125の2つの凸部126が設けられている場合、移動部湾曲壁134に設けられた2つの凸部126を、開口部湾曲壁124に設けられた2つの凸部126よりも硬度が高い材料により形成することができる。移動部湾曲壁134側の2つの凸部126が硬い材料により形成されていれば、開口部湾曲壁124側の2つの凸部126が摩耗したとしても、針ハブ222の回転を阻止して、針ハブ222の取り外しを行うことができ、針廃棄用容器の寿命を長くすることができる。蓋体102全体と比べると小さな部品である移動部131は、材料選択の幅が広く、硬い材料により形成することが容易にできる。
【0039】
図8には、2つの凸部126の外側の側壁127同士の間隔t1がほぼ一定である例を示した。しかし、図12に示す変形例のように、間隔t1が挿入孔123の上部(挿入口側)から下部(収容容器側)に向かって次第に大きくなる形状とすることもできる。このようにすることにより、2つの凸部126の外側の側壁127を尖頭アーチ状の第1針ハブ凹部224の側面に沿わせることが可能となる。これにより、外側の側壁127における第1針ハブ凹部224の側面と当接する回転阻止部分129を大きくすることができ、第1針ハブ222Aの回転をより確実に規制することが可能となる。また、回転阻止部分129が大きくなることにより、回転阻止部分129に加わる力が分散するため、回転阻止部125の耐久性を向上することもできる。
【0040】
図12において、2つの凸部126の外側の側壁127が直線状に形成されている例を示したが、第1針ハブ凹部224の側面に合わせて曲線状に形成することもできる。図12において、凸部126の幅が一定である例を示したが、凸部126の幅は一定でなくてもよい。また、2つの凸部126の内側の側壁128同士の間隔t2が一定となるようにすることもできる。例えば、凸部126の幅が上部において狭く、下部において広くなっている構成とし、2つの凸部126の内側の側壁128同士の間隔t2が一定となるようにすることもできる。このようにすれば、2つの凸部126の外側の側壁127同士の距離が下部から上部に向かって次第に狭くなるので、第1針ハブ凸部224をよりスムーズに挿入口123に挿入できる。また、2つの凸部126の外側の側壁127を第1針ハブ凸部224に、内側の側壁128を第2針ハブ凸部225に沿った形状にでき、第1針ハブ凸部222A及び第2針ハブ222Bの回転をより確実に行うことが可能となる。
【0041】
図13に示すように、挿入孔123に針ハブ222を挿入した際に、針ハブ222が下方へ抜けることを阻止するために、挿入孔123の内側方向に突出するストッパ部141を設けることができる。図13において、ストッパ部141は回転阻止部125の下方に設けられているが、ストッパ部141はこのような構成に限らず、針ハブ222の最大外径よりも小さく、針ハブ222が通過できない部分を挿入孔123に設けることができればどのような構成としてもよい。例えば、ストッパ部141を挿入孔123の全周に亘って又は部分的にフランジ状に設けることができる。また、ストッパ部141を1ヶ所又は複数箇所に設けられた凸部とすることもできる。ストッパ部141は、開口部側湾曲壁124側のみに設けることも、移動部側湾曲壁134側のみに設けることも、その両方に設けることもできる。ストッパ部141は、挿入孔123の下端部に設けることができるが、挿入孔123の深さに応じて設ける位置を調整することができる。なお、図12のような構成の場合にもストッパ部141を設けることができる。
【0042】
本実施形態において、挿入孔123の周壁のうち2つの凸部126の間の部分は、図7及び図10に示すように、挿入孔123の周壁の他の部分と比べて肉厚となっている。このような構成とすることにより、図10に示すように、第2針ハブ凸部225が2つの凸部126の間の壁面に当接するようにできるため、第2針ハブ222Bを挿入孔123に挿入した際に、よりがたつきにくくすることができる。
【0043】
また、図14に示すように、回転阻止部125の2つの凸部126の外側の部分にも周壁が肉厚となった肉厚部143を設けることもできる。このようにすれば、凸部126の強度を高め、耐久性を向上させることができる。また、第1針ハブ222A及び第2針ハブ222Bと挿入孔123の周壁との間隔をより小さくして、第1針ハブ222A及び第2針ハブ222Bを挿入孔123に挿入した際に、よりがたつきにくくすることもできる。さらに、肉厚部143又は凸部126を、ハブの内側に向かって力を加える、ハブ付勢部とすることもできる。ハブ付勢部を設け、第1の位置において針ハブに対しハブの内側に向かって力が加えられた状態で保持するようにすることで、ハブ回転時及び注射器本体をハブから分離させる際によりがたつきにくくすることができる。なお、回転阻止部125以外の部分にも第1針ハブ222A及び第2針ハブ222Bが挿入できる範囲で肉厚部144を設けることもできる。肉厚部144は、回転阻止部125に近い側の側面144aが移動部131の移動方向に対してほぼ平行となった形状とすることができる。このようにすることにより、移動部131が第1位置から第2位置に移動した際に、肉厚部144が第1針ハブ222A及び第2針ハブ222Bと干渉しないようにすることができる。
【0044】
本実施形態において、蓋体102は、挿入孔123の周囲においてほぼ平坦である例を示した。このような構成とすることにより形成が容易となるという利点が得られる。一方、図15に示すように、蓋体102の挿入孔123の周囲に凹部145を設けることもできる。挿入孔123の周囲に凹部145を設けることにより、注射器本体201の径が大きい場合にも、操作が容易となる。
【0045】
本実施形態において、挿入孔123は、回転阻止部125以外の部分が第1針ハブ222Aの最大径φmax1よりも大きく、第1針ハブ凹部224と回転阻止部125とを位置合わせすれば、第1針ハブ222Aをほぼ抵抗なく挿入孔123に挿入できる構成を示した。しかし、図16に示すように、第1針ハブ222Aを挿入していない際の挿入孔123の最大外径を第1針ハブ222Aの最大外径よりも小さくし、第1針ハブ222Aを挿入孔123に挿入した際に、開口部側湾曲壁124と移動部側湾曲壁134との間に僅かに隙間ができ、挿入孔123が拡径するように変形する構成とすることもできる。
【0046】
挿入孔123を拡径するように変形させる方法として、例えば、移動部131を第1の位置P1に保持する可撓片147の形状及び強度等を、拡径を許容するように調整する方法等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本開示の針廃棄用容器は、複数種類の針ユニットを同じ操作により、注射器から取り外して廃棄でき、針廃棄用容器として有用である。
【符号の説明】
【0048】
101 収容部
102 蓋体
121 開口部
123 挿入孔
124 開口部側湾曲壁
125 回転阻止部
126 凸部
127 外側の側壁
128 内側の側壁
129 回転阻止部分
131 移動部
134 移動部側湾曲壁
141 ストッパ部
143 肉厚部
144 肉厚部
144a 側面
145 凹部
146 係合用凹部
147 可撓片
148 スライド用溝部
200 注射器
201 注射器本体
202 針ユニット
221 針本体
222 針ハブ
222A 第1針ハブ
222B 第2針ハブ
223 バック針部分
224 第1針ハブ凹部
225 第2針ハブ凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16