(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105128
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】椅子の管理システム
(51)【国際特許分類】
A47C 7/62 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
A47C7/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074689
(22)【出願日】2022-04-28
(62)【分割の表示】P 2018108938の分割
【原出願日】2018-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】田畑 秀一郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 洋二郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】椅子の可動部の動きに関する情報を取得して可視化し、利用者に有用な情報として提供することができる、新規有用な椅子の管理システムおよび管理プログラムを提供する。
【解決手段】この椅子の管理システムMSは、可動部である座1が非可動部である脚に対して前後又は左右方向に移動可能に構成された椅子の動作を管理するものであって、座1の移動情報を取得するセンサ61、62と、センサ61、62の移動情報に基づいて座1の動作を可視的に把握するための動作データを生成するデータ処理手段8と、このデータ処理手段8が生成する動作データに基づき座1の動きを表示する表示手段である画面Pnと、を備えて構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部が非可動部に対して前後又は左右方向に移動可能に構成されている椅子の動作を管理するものであって、
前記可動部の移動情報を取得するセンサと、
前記センサの移動情報に基づいて前記可動部の動作を可視的に把握するための動作データを生成するデータ処理手段と、
このデータ処理手段が生成する動作データに基づき前記可動部の動きを表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする椅子の管理システム。
【請求項2】
前記センサとの間で通信を行う情報端末を含み、この情報端末が、前記データ処理手段および前記表示手段として機能する、請求項1に記載の椅子の管理システム。
【請求項3】
前記センサとの間で通信を行う情報端末と、この情報端末との間で通信を行うサーバとを含み、このサーバが前記データ処理手段として機能し、前記情報端末が前記表示手段として機能する、請求項1に記載の椅子の管理システム。
【請求項4】
前記センサとしての機能を備える情報端末を含み、この情報端末が、前記データ処理手段および前記表示手段としても機能する、請求項1に記載の椅子の管理システム。
【請求項5】
前記情報端末がセンサとしての機能部を併せ持っており、当該センサ機能部から取得した一連の動作データを前記情報端末内に一時保存し、処理し、表示する手段を当該情報端末が有することを特徴とする請求項2~4の何れかに記載の椅子の管理システム。
【請求項6】
前記可動部の移動情報が前後又は左右方向の加速度情報であり、前記データ処理手段は、前記可動部の動作が予め設定された特徴に合致するか否かを判断し、合致する場合には抽出すべき揺れとしてカウントして動作データである揺れ回数を生成する、請求項1~5の何れかに記載の椅子の管理システム。
【請求項7】
前記可動部の移動情報が前後又は左右方向の位置情報であり、前記データ処理手段は、動作データとして、前記可動部の現在位置に関するデータを生成し、前記表示手段が当該位置を表示する、請求項1~6の何れかに記載の椅子の管理システム。
【請求項8】
前記データ処理手段は、動作データとして、前記可動部の現在位置に関するデータを連ね、前記表示手段が移動履歴を表示する、請求項7に記載の椅子の管理システム。
【請求項9】
コンピュータに読み込まれて実行されることにより、当該コンピュータを、請求項1~8の何れかに記載の管理システムにおけるデータ処理手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス等で利用される、椅子の管理システム及び管理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のオフィスにおける業務形態において、椅子はデスクとともにPC等の操作をするうえで不可欠なものとなっている。また、これとともに、長時間座ったままで作業を続けることによる健康への影響や、作業効率の低下の問題等が、一般に認識され始めている。
【0003】
このような背景から、近時においては、座った状態でも前後左右に座を移動させつつ体を動かすことができる新たなタイプの椅子が提案されている。このような椅子は、執務中に同じ姿勢を保つことからくる体への負荷を軽減し、リフレッシュを通じて作業効率の改善につながるだけでなく、健康の維持、増進の面からも、今後益々の活用が期待されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような椅子も、機能が発揮できなければ意味がない。例えば、着座姿勢が長時間変わらなかったり、着座姿勢が悪いためにどちらか一方に偏ったりすると、いわゆる動く椅子の効果が半減し、しかも利用者本人に自覚され難いころがある。
【0006】
そこで、単に体を動かすことができる椅子が提供されるというだけでなく、椅子の動きを可視化し、楽しみながら利用者が自らにフィードバックできるサポート体制があれば、利用者のモチベーションは一層高められると考えられる。
【0007】
しかしながら、従来の椅子には、着座者の生体情報や着座状態を検出して外部に送信するものはあっても、椅子の動きに関する情報を取得して可視化するといった発想は全くなかった。
【0008】
本発明は、このような新たな着眼に立って、この種の椅子の活用を促進するうえで有用となる椅子の管理システムおよびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明に係る椅子の管理システムは、可動部が非可動部に対して前後又は左右方向に移動可能に構成された椅子の動作を管理するものであって、前記可動部の移動情報を取得するセンサと、前記センサの移動情報に基づいて前記可動部の動作を可視的に把握するための動作データを生成するデータ処理手段と、このデータ処理手段が生成する動作データに基づき前記可動部の動きを表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
ここで、可動部は座や背だけでなく、肘の移動や、背座の移動など椅子全体の動作も含む。非可動部は椅子の構成要素のうち可動部を支持する部位など、可動部に対して相対的に静止している部位をいう。
【0012】
本発明は、椅子の動きを計測して着座者の動きを算出するものと言うことができる。このように構成すれば、可動部の動きを可視化して利用者にフィードバックすることができ、利用者にしてみれば、普通であれば自覚のない自己の椅子の使い方や姿勢などについて再認識するきっかけになるので、これにより椅子利用のモチベーションを高め、ひいては椅子の効果的な利用促進につなげることができる。
【0013】
椅子の機能部の小型軽量化を図るためには、前記センサとの間で通信を行う情報端末を含み、この情報端末が、前記データ処理手段および前記表示手段として機能するように構成することが望ましい。
ここに言う情報端末には、PCやタブレット、スマートフォン等が含まれる。
【0014】
椅子の機能部の小型軽量化と、情報端末の負荷軽減を図るためには、前記センサとの間で通信を行う情報端末と、この情報端末との間で通信を行うサーバとを含み、このサーバが前記データ処理手段として機能し、前記情報端末が前記表示手段として機能するように構成することが望ましい。
【0015】
データ収集、データ処理、表示を一括で行う構成としては、前記センサとしての機能を備える情報端末を含み、この情報端末が、前記データ処理手段および前記表示手段としても機能するように構成されることが望ましい。
【0016】
上記において、前記情報端末がセンサとしての機能部を併せ持っており、当該センサ機能部から取得した一連の動作データを前記情報端末内に一時保存し、処理し、表示する手段を当該情報端末が有していることも好ましい。
【0017】
椅子の機能が適切に利用されているかどうかを把握するためには、前記可動部の移動情報が前後又は左右方向の加速度情報であり、前記データ処理手段は、前記可動部の動作が予め設定された特徴に合致するか否かを判断し、合致する場合には抽出すべき揺れとしてカウントして動作データである揺れ回数を生成するように構成されることが望ましい。
【0018】
利用者が自分の着座位置を確認するうえで有用な機能としては、前記可動部の移動情報が前後又は左右方向の位置情報であり、前記データ処理手段は、動作データとして、前記可動部の現在位置に関するデータを生成し、前記表示手段が当該位置を表示するように構成されるものが挙げられる。
【0019】
利用者が自分の着座履歴を確認するうえで有用な機能としては、前記データ処理手段は、動作データとして、前記可動部の現在位置に関するデータを連ね、前記表示手段が移動履歴を表示するように構成されるものが挙げられる。
【0020】
コンピュータに読み込まれて実行されることにより、当該コンピュータを、上記何れかに記載の管理システムにおけるデータ処理手段として機能させるプログラムを作成すれば、情報端末においてもサーバにおいても、本発明の管理システムを有効に活用できる環境を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明した本発明によれば、椅子の可動部の動きに関する情報を取得して可視化するし、利用者に有用な情報として提供することができる、新規有用な椅子の管理システムおよび管理プログラムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態が適用される椅子の斜視図。
【
図2】同椅子の動作のうち、座の前後左右方向への移動を説明するための図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る管理システムのハードリソースを示す図。
【
図5】同管理システムを構成するデータ処理手段の機能ブロックを示す図。
【
図7】座の移動に係る変位、速度、加速度の関係を示すグラフ。
【
図8】姿勢データ生成部が生成する現姿勢データが表示された画面を示す図。
【
図9】姿勢データ生成部が生成する現姿勢データが表示された画面において姿勢が移動する様子を示す図。
【
図10】姿勢データ生成部が生成する現姿勢データとアラートの関係を示す図。
【
図11】姿勢データ生成部が生成する姿勢履歴データが表示された画面を示す図。
【
図12】姿勢データ生成部が生成する姿勢履歴データが表示された画面を示す図。
【
図13】椅子基準の加速度と設置位置基準の加速度の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態の管理システムが適用される椅子Crは、
図1~
図3に示すように、可動部である座1が、非可動部であり椅子上の基準点となる脚2に対して、前後方向(±D方向)および左右方向(±W方向)に移動可能に構成されたものである。
【0025】
そして、パーソナルコンピュータやタブレット、スマートフォン等の情報端末Cmを含んで構築される管理システムMSは、座1の脚2に対する移動情報INFや着座情報SEFを椅子Crに取り付けたセンサ41、42、43を通じて取得し、それらの情報INF、SEFに基づき、情報端末Cm内において可動部である座1の動作を可視的に把握するための動作データMDを生成して、その動作データMDに基づいて表示手段である情報端末Cmの画面pn上に可動部である座1の動きを表示するように構成されている。
【0026】
なお、椅子Crの可動部としては、座1以外に背5や図示しない可動肘などがあり、前後又は左右方向を含む動きとしては背5のロッキング動作、可動肘の旋回動作など、いくつかのものが考えられる。本実施形態では座1の動きを可視化するが、座1以外の可動部である背や可動肘の動きを可視化することにも当然に、本発明を適用することができる。
【0027】
以下、座1を可動部とする本実施形態について具体的に説明すると、この椅子Crは
図1~
図3に示すように、脚2に設けられた支持基部3に支持機構4を介して座1を支持させたもので、支持機構4は、左右移動部41及び前後移動部42を含んで構成されている。図示例の支持機構4は、支持基部3に左右移動部41を支持させ、その左右移動部41に前後移動部42を支持させて、その前後移動部42に座1を取り付けたものであり、支持機構4が全体として前後方向の動きと左右方向の動きを重畳させた動きを座1に許容し、座1を脚2に対して前後左右に移動させる動作が実現されている。
【0028】
図示例のものは、左右移動部41が一対のリンク41a、41aの下端に懸吊支持され、両リンク41a、41aの上端が支持基部3に取り付けられて、左右移動部41が左右何れに移動しても、移動先端側が下向きに傾斜しつつ、重心が持ち上がるように構成される。また、前後移動部42は、前端が当該前後移動部42に設けたガイド孔42bと左右移動部41に設けたフォロア41bとによるスライド支持部によって、当該左右移動部41に支持され、後端がリンク42cの下端に懸吊支持され、そのリンク42cの上端が左右移動部41に取り付けられていて、前後移動部42が前後何れに移動しても、移動先端側が下向きに傾斜しつつ、重心が持ち上がるように構成される。これによりこの椅子は、仮に移動先で座1に加えていた着座荷重が無くなった場合でも、自重で前後、左右の基準位置に復帰することができる。
【0029】
上記のように、この椅子は前後左右方向のみならず上下方向にも移動するものであるが、上下方向の変位は前後左右方向の変位に比べて僅かであるため、この実施形態では座1が前後又は左右方向に移動する椅子として説明を進める。
図2において、符合nは脚の中心(基準位置)を示し、mは座2の重心位置を示している。この実施形態では背5が座2とともに可動であるため、座2の重心位置というときには、当該座2とともに移動する背5の重心も含める。
【0030】
勿論、支持基部3に先に前後移動部42を支持させ、その前後移動部42に左右移動部41を支持させて、その左右移動部41に座1を取り付けても、上記に類する前後左右の動作を実現することができる。また、支持構造も、スライド支持機構によるかリンク機構によるかなどは、種々の組み合わせで実施することができる。さらに、前後のみに座1や背5が動作し、左右には移動しない椅子に対しても、本発明の適用対象である前後又は左右方向に移動する椅子に含まれるのは勿論である。
【0031】
図示の椅子Crに戻ると、この椅子Crの背5は背取付部51を介して、上記前後移動部42または左右移動部41または支持基部3などの適宜部位にその基端を取り付けられ、背5と座1の間にあって着座者が接触する面から凹んだ位置に当該背取付部51の一部が表出している。そこで、本実施形態では管理システムMSを構成するために、その背取付部51にセンサ61、62を有するセンサボックス6を配置し、座1の内部に着座センサ63を配置して、これらのセンサ61、62、63で検知する信号を
図4に示す送受信部71、72を介しデータ処理手段8に移送して、このデータ処理手段8で利用者の利用に供する可視的な動作データを生成するように構成される。送受信部71、72にはBlue-toothほか適宜の近距離無線通信規格に基づいたものが利用されている。
なお、着座センサを用いずに着座時間を推定する方法も採用可能である。これについては後述する。
【0032】
センサ61、62の取付位置は上記以外にも、例えば座1の下面や、背5の背面など、利用者の邪魔にならない位置を適宜選択することができる。ただし、適正な検出のためには、センサ61、62の取付位置は椅子Crの左右方向(W方向)の中心線上にあることが望ましい。
【0033】
本実施形態において、センサ61は、モーションセンサの一つである加速度センサであり、センサ62は、地磁気を感知して方位を示す方位センサである。
【0034】
加速度センサ61は、例えば2軸方向の加速度を検知するように構成されたもので、2つの加速度信号が出力される。この実施形態では、1軸は椅子の前後方向(D方向)を検出し、他の1軸は椅子の左右方向(W方向)を検出するように設定される。以下、これによって検出される加速度をαD、αwとする。つまり、この加速度αD、αwは、椅子基準で見たときの、前後方向と左右方向を直交2軸とする座標系上の加速度である。
【0035】
また、方位センサ62は、椅子Crに取り付けた状態で当該椅子Crがどの方位を向いているかを検出するものである。この実施形態では、地磁気Nに対して座1の前方がどの方位を向いているかを角度信号θとして出力するものとして説明を行う。すなわち、
図6に示すように、座1の前方が北「N」を向いていればθ=0、東「E」を向いていればθ=90°という具合に、方位センサ62は絶対基準で0°~360°の範囲の検出値θを出力する構成とされる。
【0036】
図1及び
図4に示す着座センサ63は、座1の下面に埋設されたリミットスイッチで、利用者が着座すると図示しない押圧部が押されてONになり、離席すると押圧部がバネで戻されてOFFになる体重検知式のものである。この信号はデータ処理手段8側に送信され、当該データ処理手段8において着座時間が管理される。着座センサ63を用いない場合の推定方法は、加速度センサー61が信号を出力している間を着座状態と捉え、出力が停止して所定時間(例えば3分)経過したことで離席と判断する。
【0037】
一方、データ処理手段8は、
図4に示すように、CPU8a、メモリ8bおよびインターフェース(I/F)8cのほか、表示手段たる画面(DP)8d、入力装置(ENT)8eなどのハードウェアリソースを備えた、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット等の情報端末Cmによって構成される。メモリ8b内には、予め本実施形態に係る椅子の管理プログラムPrが書き込まれている。この管理プログラムPrは、CPU8aに呼び出されて実行されることにより、情報端末Cmを、
図5に示す姿勢判断部81、姿勢データ生成部82、消費カロリー算出部83、着座時間算出部84などとして機能させる。
【0038】
ここで言う「姿勢」には、脚2を基準としたときの座1の姿勢、例えば「前に傾いた姿勢」「後に傾いた姿勢」、「左に傾いた姿勢」、「右に傾いた姿勢」のほか、姿勢の時間的変化である、「揺れ」や「移動軌跡」などの「姿勢履歴」が含まれる。管理プログラムPrの主機能は、これらの姿勢を判断して、画面上に表示するものである。例えば、
図8には着座者を示すオブジェクトMOを通じて椅子Crが右に傾いた状態にあることが表示され、
図9には着座者を示すオブジェクトMOを通じて椅子Crの移動の様子が表示され、
図11には着座者を示すオブジェクトMOを通じて椅子Crの揺れの履歴が表示されている。これらについては後述する。
【0039】
このことは座1に限らない。仮に可動部が図示しない可動肘である場合にも、前後左右に略水平移動したり、旋回して利用者の胸元に移動するように構成されるものがある。このようなものでは、上記と同様に可動肘の前後又は左右方向の姿勢や姿勢変化を、本発明の管理システムや管理プログラムによって管理することができる。また、可動部が背である場合には、背が座に対して後傾可能に支持され、さらには背座が連動してシンクロロッキング動作を行うように構成されるものがある。このようなものでは、後傾方向の角度や、角度変化を、可動部である背の前後又は左右方向の姿勢又は姿勢変化として、本発明の管理システムや管理プログラムによって取り扱うことができる。
【0040】
以下、可動部が座1である本実施形態に戻って、上記データ処理手段8の各機能について説明する。
【0041】
図8に示す姿勢判断部81は、座1の前後又は左右方向の位置を判断する位置判断部81a、その位置変化を判断する位置変化判断部81b、座1の前後又は左右方向の揺れを判断する揺れ判断部81cを含む。また、姿勢データ生成部82は、座1の現在位置に関するデータである現姿勢データ(リアルタイム姿勢データ)82a、その履歴である姿勢履歴データ82b、揺れ回数データ82cなどを動作データとして生成する。
【0042】
姿勢判断部81は、位置判断部81aや位置変化判断部81bを機能させるために、利用開始時にキャリブレーションを行う。
【0043】
キャリブレーションは、
図6(b)に示すように、着座時に例えば椅子CrをデスクDkに正対させ、
図2(a)、(b)に示す座1の中心mを脚2の前後左右の中心位置n、すなわち自重で復帰する基準位置に位置づけた状態で、利用者が情報端末Cm上の実行ボタンを操作することによって実行される。これにより、椅子基準で見たときの座の前後位置および左右位置を、
(D、W)=(0、0)
に初期化し、椅子Crの方位と地磁気の方位を関連づける。例えば、椅子の前方(D方向)の方向が、地磁気のN方向に対して角度θ
0だけずれているときにキャリブレーションを行えば、θ(=θ
0)が検出される位置を(D、W)=(0、0)として初期設定される。そして、その後に椅子がδθだけ回転すれば、方位センサ62の検出値θはθ
0+δθに相当するため、このときの座1のデスクDKに対する相対座標上の回転位相角δθは、θ-θ
0として算出される。
【0044】
図11は椅子Crが負方向にδθだけ回転した状態を利用者のオブジェクトMOを通じて示しており、椅子基準で見たときの前後左右のDW座標が設置先のXY座標に対して同じ角度回転している。この状態で座1が前後左右に移動または揺れると、オブジェクトMOの表示は図示の位置からD方向および/またはW方向に移動する。
【0045】
以下、椅子1の動きを検知するアルゴリズムについて簡単に説明する。
設置先基準の座1のXY座標は、座1が回転しないのであれば、
図13(a)に示すように椅子基準のDW座標と一致し、座1のXY座標上の加速度(αx、αy)はDW座標上の加速度(α
W、α
D)に等しい。すなわち、
αx=α
W
αy=α
D
である。
【0046】
しかし、
図13(b)に示すように座1は回転し、その回転位置において椅子基準でDW座標上を前後左右にも移動する。
【0047】
そこで、
図5(a)に示す位置変化判断部81bは、2軸方向の加速度センサ61のデータ(α
D、α
W)と、
図6(b)に示した方位センサ62の出力θとから、下記のように設置先基準の座標(X、Y)上での加速度(αx、αy)を判別する。fx、fyは一般的な座標変換関数である。
αx=fx(α
D、α
W、δθ)
αy=fy(α
D、α
W、δθ)
【0048】
図5(a)に示す位置判断部81aは、位置変化判断部81bが取り扱う加速度(α
x、α
y)を各軸ごとに積分することによって、刻々変化する現在速度(dx/dt、dy/dt)や、最初の位置から移動した移動先の現在位置の座標(X、Y)を、例えば次式によって算出する。
(dx/dt、dy/dt)=(∫α
xdt、∫α
ydt)
(X、Y)=(∬α
xd
2t、∬α
yd
2t)
【0049】
これにより、椅子Crがどちらの方位を向いていても、さらには座1が椅子基準で前後左右にどのように移動し(傾い)ても、設置先基準のXY座標上において座1の現在位置やその向きなどの現姿勢、あるいは、その時間変化を追跡することができる。勿論、これらの現在速度や現在位置の算出手法は例示に過ぎない。このため、センサの特性やサンプリング周期、或いは誤差の集積状態を考慮して、種々の近似式を用いたり、適時に補正を掛け、更には一般に知られている全く別異の算出方法によって現姿勢やその時間変化を算出することができるのは言うまでもない。
【0050】
図5(a)に示す揺れ判定部81cは、加速度センサ61のデータ(α
D、α
W)を取り込み、それが所定の条件を満たした場合に、座1の「揺れ」と判定する。揺れは椅子がどちらの方向を向いているかによらないため、揺れの判定を行ううえで加速度センサ61のデータ(α
D、α
W)があれば、それを設置先基準のXY座標系データに変換する必要は必ずしもない。
【0051】
通常、椅子Crを振り子のように揺らした場合は、
図7に示すように、変位-速度-加速度を表す波が位相のずれた状態で周期的に現れる。例えば、座の前方を+の変位とすると、変位は前端で最大に正に振れ(時刻t1、t5)、後端で最大に負に振れる(時刻t3)。速度は、前端(時刻t1、t5)と後端(時刻t3)で0となり、その間の後退途中または前進途中で負の最大値、正の最大値をとる(時刻t2、t4)。加速度は、速度の増減が入れ替わるとき、すなわち座1が脚2の中心すなわち基準位置を通過するころに0になり(時刻t2、t4)、停止前後で移動の向きが変わる前端と後端で負の最大値または正の最大値になる(時刻t1、t3、t5)。したがって、単純に考えれば、加速度センサ61が検出する加速度の極性が入れ替わるゼロクロス点が2箇所に現れたことをもって、座1の往復1回の揺れとカウントすることができる。
【0052】
しかしながら、同じ座1を揺らすにしても、緩やかに座1を移動させた場合には加速度は0すなわち等速度運動に近くなり、「揺れ」とは言えなくなる。「揺れ」と判断するためには、振り子のように重力やバネ等による蓄積エネルギーと運動エネルギーが交互に入れ替わる必要があり、そのためには、加速度の符合の反転に加え、最大加速度が少なくともある程度実効性をもった値であることが必要である。そこで、検出される加速度の絶対値に閾値を設けて、閾値を上回ることも、「揺れ」の判定要件として必要とされる。
【0053】
さらに言えば、椅子Crの座1を使った着座者の動きは、座の前後方向(D方向)の揺れ(ピッチングに相当)、左右方向(W方向)の揺れ(ローリングに相当)、鉛直軸回りの捩じり回転(ヨーイングに相当)、又はこれらの組み合わせ動作、さらにはこれらに該当しない椅子Crに固有の動作、利用者に特徴的な動作の複合からなる。さらには、座1の可動範囲は、前後方向が左右方向より広く、前後方向については基準位置よりも後方の方が前方よりも広いといった、椅子本来の特徴的な構成がある。このように、前後左右、さらには捩じり方向について、想定される揺れの性質や大きさ、特徴は様々である。
【0054】
このような種々の動きを補足するために、
図5(a)に示す揺れ判断部81cは、移動情報として入力される加速度データα
D、α
Wのみならず、椅子Crの方位データθも含めて、双方の波形から「揺れ」と判断するために必要な、極性や閾値等の条件を定めている。
【0055】
さらには、
図5(b)に示すように、揺れ判断部81cは、予め座1の特徴的な動きごとに座1の加速度の大きさや方向、座1の回転、移動軌跡などをパターン化して揺れ参照データrefとして記憶しておき、これらの揺れ参照データrefと、移動情報infとして実際に検出される座1の加速度データα
D、α
Wや座の方位データθ等とをパターンマッチングなどの手法によって比較して、最も近い動作パターンを取り出し、当該動作パターン毎に予め設定されている揺れの条件に基づいて、実際のデータから「揺れ」か否かの判定を行い、揺れ回数データを生成するように構成されてもよい。
【0056】
図5に示す姿勢データ生成部82は、前記姿勢判断部81の位置判断部81aが算出した現在位置をXY座標上に表示するための現姿勢データ82aを生成する。
図6(a)は表示手段である情報端末Cmの画面Dp上の姿勢表示フィールドF0に現姿勢データ82aを表示させたものである。この姿勢表示フィールドF0は、設置先基準の座標(X、Y)上に椅子基準の座標(D、W)を重ねたもので、着座者の頭を表す円と着座の鼻を表す三角とによって着座者を表すオブジェクトMOを表示し、このオブジェクトMOを通じて可動部である座1の位置と方位を表している。座1が回転すれば
図11に示すように画面上の動的オブジェクトも回転し、座1が前後左右に水平移動すれば、
図8に示すように画面上の動的オブジェクトも前後左右に移動するのは既に述べたところである。
【0057】
この画面Dpには、姿勢表示フィールドF0のほかに、アラート表示フィールドF1、着座時間表示フィールドF2、振れ回数表示フィールドF3、消費CalフィールドF4が設けてある。これらのフィールドF1~F4には、姿勢データ生成部82について後述する現姿勢データ82a、姿勢履歴データ82b、揺れ回数データ82cのほか、消費Cal算出部が算出する消費Cal、着座時間算出部84が算出する着座時間が表示される。これについては以下に説明する。
【0058】
アラート表示は、利用者に姿勢の良否を了知させるためになされる。このアラート表示を行うにあたり、姿勢データ生成部82は、
図10に示すようにDW座標上の座1の位置を16の区分に仕分ける設定がされており、現在位置が例えば「6」に該当すれば、予め
図10の右欄に用意したアラートメッセージ欄からアラートメッセージを取り出して、座1の重心位置が少し右に傾いている旨の表示をなすように構成されている。因みに、
図9の状態は座1の重心位置が上記区分6に該当するため、アラート表示フィールドF1に「少し右に傾いています」と表示され、
図11の状態は座1の重心位置が上記区分1に該当するため、アラート表示フィールドF1に「バランスは良好です」と表示されている。
【0059】
姿勢データ生成部82はまた、姿勢履歴データ82bを生成する。この姿勢履歴データ82bは、前記姿勢判断部81の位置判断部81aが判断する座1の絶対座標(X、Y)上の位置を、所定のサンプリング周期Δtごとに、ログ情報の一つとして取り込み、記憶したものである。そして、表示手段である画面Dp上の姿勢表示フィールドF0において
図11に示すように姿勢履歴データ82bを表示する。
図11では、着座時間表示フィールドF2に着座開始後の経過時間(9秒)が表示されており、姿勢履歴データ82bはこの間の姿勢履歴として姿勢表示フィールドF0にプロットされている。
【0060】
着座時間は、データ処理部8の着座時間算出部84がカウントする。この着座時間算出部は、前述した着座センサ63がONになるとタイマーが作動して着座開始からの経過時間をカウントし、OFFになるとカウントを停止するように構成されていて、カウントした着座時間が
図11の着座時間表示フィールドF2に表示されている。着座センサ63によらない場合は、加速度センサ61が信号を出力し始めてからの経過時間がカウントされる。
【0061】
なお、姿勢履歴は、上記のような一定時間ごとのログ情報に基づくほか、振幅が最も大きいpeak-to-peak時の揺れ位置を点としてプロットし、点と点の間を線で繋ぐことによっても、
図11に示したように姿勢履歴を表示することができる。
【0062】
また、
図5に示す姿勢データ生成部82は、前記揺れ判定部81cが「揺れ」と判定した場合に、揺れ回数をカウントして揺れ回数データ82cを生成し、画面上の揺れ回数フィールドF3に揺れ回数を表示する。
図11では9秒間に21回揺れた旨が表示されている。
【0063】
また、
図5に示す姿勢データ生成部82は、姿勢履歴データ82bの一つとして着座位置の解析データを生成する。この解析データは、所定時間内において利用者が座1をどの位置に移動させることが多いかを、
図10に示した座1の区分単位で比率計算し、その滞在時間の比率を割り出したもので、この解析データは
図12に示すように姿勢表示フィールドF0に表示される。この場合は70%が中心(区分1)にあり、25%が少し後ろ(区分10)にあること等が表示されている。併せて、傾向として少し後ろに位置しているため、アラート表示フィールドFには「少し後に傾いています」と表示されている。
【0064】
さらに、
図5に示すデータ処理手段8は、消費カロリー算出部83を備える。消費カロリーは、一般に呼気を通じて測定できることが知られている。同じ運動量でも、所定距離を移動する速度や加速度によって、また、体重によって、消費カロリーは異なる。そこで、椅子Crに着座した状態で種々の加速度で座を揺らしたときの加速度と、利用者の体重と、呼気を通じた消費カロリーの関係について種々の試験を行い、その結果として、体重と揺れ回数が入力されることで消費カロリーを算出する演算式が予め作成されて、メモリ8b内に格納されている。そして、消費Cal算出部83は、予め登録された体重と、揺れ判断部81cの判断を通じて生成される揺れ回数データ82cとに基づいて消費カロリーを算出し、
図11等に示す消費Cal表示フィールドF4に着座後の消費Calを表示するようにしている。この画面では、着座時間9秒の間に21回揺れ、その消費Calが0.96である旨が表示されている。
【0065】
この管理システムMSは、着座時間と揺れによるカロリー値から座り過ぎ、すなわち体を動かさない状態が持続していることに対して注意を促すモードも設定されている。具体的には、例えば所定時間(60分)で所定cal(3kcal)以上カロリーを消費しなければ、「座り過ぎています。体を動かしてリフレッシュしましょう」といった文字がアラート表示フィールドFやその他の測定表示画面に表れるようになっている。
【0066】
さらに、この管理システムMSは、
図14に示すように情報端末Cm1、Cm2、…Cmjからの動作データがサーバSVに送られて、サーバSVは利用者IDごとに椅子Cr1、Cr2、…、Crkの利用状況を管理する。そのために、アプリケーションの起動時に最初に
図4に示す送受信部71、72同士のペアリングとともにユーザーIDとパスワードPWの入力要求がなされ、このユーザーについてその椅子Crを利用する間の情報が取得されてサーバSVに送られるように構成されている。
【0067】
情報端末Cmにおいては、
図15に示すように、日付、着座時間、揺れ回数、消費Cal、姿勢判断等を一覧で表示するプログラムが随時実行されている。姿勢判断とは、
図10に示した解析結果等を表示する欄である。再生とあるのは、姿勢表示フィールドF0に姿勢履歴を随時表示させるためのコマンドである。利用者は随時、この画面を使って自己の利用状況を確認することができる。
【0068】
一方、
図16はサーバSVの管理画面であり、サーバSVでも管理プログラムPrの一部が随時実行されている。この管理画面には、ID、氏名、年齢、性、職種、着座時間、揺れ回数、消費Cal、姿勢判断等を一覧で表示している。この管理プログラムPrは、権限を有するものの要求によって閲覧が可能であり、当該プログラムや蓄積したデータの加工が許可されるものとなっている。この権限によって、例えば単位時間あたりの揺れ回数が閾値よりも少ない利用者に対して、サーバSVから情報端末Cmにアラートを表示させるような設定、使い方も可能となっている。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る椅子の管理システムMSは、可動部である座1が非可動部である脚2に対して前途又は左右方向に移動可能に構成された椅子の動作を管理するものであって、座1の移動情報を取得するセンサ61、62と、センサ61、62の移動情報に基づいて座1の動作を可視的に把握するための動作データを生成するデータ処理手段8と、このデータ処理手段8が生成する動作データに基づき座1の動きを表示する表示手段である画面Pnと、を備えたものである。
【0070】
このように構成すれば、可動部である座1の動きを可視化して利用者にフィードバックすることができ、利用者にしてみれば、普通であれば自覚のない自己の椅子の使い方や着座姿勢などについて再認識するきっかけになるので、これにより椅子利用のモチベーションを高め、ひいては椅子の効果的な利用促進につなげることができる。
【0071】
特に、可動部である座1の移動情報を取得するにあたっては、(1)可動部である座1の移動情報のみをセンサで取得して演算処理で可動部である座1の地面に対する移動情報を得る態様、(2)演算処理で可動部たる座1のの非可動部に対する相対的な移動情報を得る態様であって、非可動部の移動情報は演算で予測して差し引きする態様、(3)可動部たる座1と非可動部例えば脚2の両方にセンサを取付けて差し引き演算し、非可動部である脚2に対する可動部である座1の相対的な移動情報を得る態様、を含んでいる。
(3)の態様が一番精度が高いが、多くのセンサを必要とする。これに対して本実施形態では、(1)の態様を採用しているので、センサ数や演算工程を抑えて低コストで目的を達成することができる。
【0072】
また、この管理システムMSは、センサ61、62との間で通信を行う情報端末Cmを含み、この情報端末Cmが、データ処理手段8および表示手段である画面Pnとして機能しているので、こうした機能分離により、椅子Cr側にはセンサ61、62のみを設ければ足り、椅子Crの機能部の小型軽量化につなげることができる。
【0073】
また、情報端末Cmとの間で通信を行うサーバSVを含み、このサーバSVが少なくとも情報端末Cmより送信された動作データを、椅子の利用者と関連づけて蓄積するようにしているので、中央で利用者の状況を一括管理するとともに、収集した各種データをビッグデータとして有効活用することができる。
【0074】
また、この管理システムMSは、前記センサが加速度センサ61を含んで構成されている。このように、少なくとも加速度センサ61を採用すれば、加速度以外に、速度や位置も演算によって求めることができ、微分処理が必要でないことから演算負荷も少ない。よって、現行GPSなどでは難しい小さい揺れなども的確に検知することができる。
【0075】
この場合、加速度センサ61は、複数の異なる方向に沿った2軸の加速度を検知するように構成されているので、平面的な可動部の動きを的確に捉えることができる。勿論、3軸以上にすれば、3次元的、あるいは4以上の多次元的な可動部の動きを検知することも可能である。
【0076】
本実施形態について言えば、前記センサは、加速度センサ61と方位センサ62を併用して構成されているため、
図6等の姿勢表示フィールドF0において、座1の位置や方位を適切に表示することができる。
【0077】
内容的には、可動部である座1の移動情報が前後又は左右方向の加速度情報であり、データ処理手段8は、座1の動作が予め設定された特徴に合致するか否かを判断し、合致する場合には抽出すべき揺れとしてカウントして動作データである揺れ回数を生成するため、揺れる椅子の機能が適切に利用されているかどうかを適切に把握することができる。
【0078】
また、座1の移動情報が前後又は左右方向の加速度情報であり、データ処理手段8は、予め記憶した複数の挙動に関する揺れ参照データrefと比較して、最も近い揺れ参照データrefが示す揺れであると判断するようにした場合には、座1が複雑な動きをする場合であっても、適切に揺れ判定を行うことができる。
【0079】
また、データ処理手段8は、揺れ回数に基づいて利用者の消費カロリーを算出するように構成されているため、揺れる椅子を使って軽い運動を行う啓発に利用することができる。
【0080】
また、可動部である座1の移動情報が前後又は左右方向の位置情報であり、データ処理手段8は、動作データとして、座1の現在位置に関するデータを生成し、表示手段である画面Dpが非可動部に対する可動部の位置を表示するように構成されているため、利用者が自分の着座位置を確認するうえで有用な機能を提供することができる。
【0081】
この場合、データ処理手段8は、動作データとして、可動部である座1の現在位置に関するデータを連ねて、表示手段である画面Dpが非可動部に対する座1の移動履歴を表示するように構成されているため、利用者が自分の着座履歴を確認するうえで有用な機能を提供することができる。
【0082】
そして、コンピュータに読み込まれて実行されることにより、当該コンピュータを、上記何れかに記載の管理システムにおけるデータ処理手段として機能させるプログラムを作成すれば、情報端末CmにおいてもサーバSVにおいても、本実施形態の管理システムMSを有効に活用することができるようになる。
【0083】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0084】
また、
図17に示すように、センサ61等との間で通信を行う情報端末Cmと、この情報端末Cmとの間で通信を行うサーバSVとを含み、このサーバSVがデータ処理手段8として機能し、情報端末Cmが表示手段である画面Dpの役割をなすように、管理システムを構築してもよい。
【0085】
こうした機能分離により、椅子側にはセンサ61のみを設ければよく、椅子の機能部の小型軽量化になる。しかも、データ処理はサーバSVが行うため、複数の情報端末Cmからのデータ処理を一括してサーバSVに担わせ、中央管理に利用することができる。これに伴い、各情報端末Cmには表示の役割だけをもたせて負荷分散することができる。
【0086】
勿論、スマートフォンに加速度センサ、方位センサの機能が備わっていれば、スマートフォン自体を椅子の適宜位置にセットして可動部の平面方向の移動に関する情報を検知するようにしてもよい。このようにすれば、情報端末さえあれば、別途センサを用いることも不要にすることができる。
【0087】
スマートフォンをセンサとしてのみ使用し、情報端末であるPCをデータ処理手段や表示手段として用いる態様も勿論あり得る。
【0088】
また、以上の各構成において、情報端末がセンサとしての機能部を併せ持っているように構成し、当該センサ機能部から取得した一連の動作データを情報端末内に一時保存し、処理し、表示する手段を当該情報端末が有するように構成しても勿論構わない。
【0089】
また、GPSの精度が向上すれば、方位センサや加速度センサにかえて、GPSだけで着座位置や方位、履歴等を検出することも可能になる。
【0090】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…可動部(座)
2…非可動部(脚)
8…データ処理手段
61…加速度センサ
62…方位センサ
Cm…情報端末
INF…移動情報
Pn…表示手段(画面)
Pr…管理プログラム
ref…参照データ
【手続補正書】
【提出日】2022-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座が脚に対して前後又は左右方向に移動可能に構成されている椅子の動作を管理するものであって、
前記座の前後又は左右方向の加速度を取得する加速度センサと、
前記加速度センサが信号を出力している間を着座状態と捉えるデータ処理手段と、
を備えることを特徴とする椅子の管理システム。
【請求項2】
前記データ処理手段は、前記加速度センサが信号を出力し始めてからの経過時間を着座時間としてカウントする、請求項1に記載の椅子の管理システム。
【請求項3】
前記データ処理手段は、前記加速度センサからの信号の出力が停止している時間が所定時間を経過したことで離席と判断する、請求項1に記載の椅子の管理システム。
【請求項4】
前記データ処理手段は、前記加速度センサからの信号が所定条件を満たしたときに揺れと判断する、請求項1に記載の椅子の管理システム。
【請求項5】
前記加速度センサは、複数の異なる方向に沿った多軸の揺れを検知する、請求項1に記載の椅子の管理システム。
【請求項6】
座の方位を検出する方位センサを更に備え、
前記データ処理手段は、前記加速度センサと前記方位センサを併用して、座の位置や方位を検出する、請求項1に記載の椅子の管理システム。
【請求項7】
前記加速度センサが背と座の間に設けてある、請求項1に記載の椅子の管理システム。
【請求項8】
前記加速度センサが、背と座の間にあって着座者が接触する面から凹んだ位置に表出する背取付部に設けてある、請求項7に記載の椅子の管理システム。
【請求項9】
前記加速度センサの機能を備えるスマートフォンをセットするためのセット部を、座の移動に関する情報を検知する位置に設けている、請求項1に記載の椅子の管理システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス等で利用される、椅子の管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のオフィスにおける業務形態において、椅子はデスクとともにPC等の操作をするうえで不可欠なものとなっている。また、これとともに、長時間座ったままで作業を続けることによる健康への影響や、作業効率の低下の問題等が、一般に認識され始めている。
【0003】
このような背景から、近時においては、座った状態でも前後左右に座を移動させつつ体を動かすことができる新たなタイプの椅子が提案されている。このような椅子は、執務中に同じ姿勢を保つことからくる体への負荷を軽減し、リフレッシュを通じて作業効率の改善につながるだけでなく、健康の維持、増進の面からも、今後益々の活用が期待されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような椅子も、機能が発揮できなければ意味がない。例えば、着座姿勢が長時間変わらなかったり、着座姿勢が悪いためにどちらか一方に偏ったりすると、いわゆる動く椅子の効果が半減し、しかも利用者本人に自覚され難いころがある。
【0006】
そこで、単に体を動かすことができる椅子が提供されるというだけでなく、椅子の動きを可視化し、楽しみながら利用者が自らにフィードバックできるサポート体制があれば、利用者のモチベーションは一層高められると考えられる。
【0007】
しかしながら、従来の椅子には、着座者の生体情報や着座状態を検出して外部に送信するものはあっても、椅子の動きに関する情報を取得して可視化するといった発想は全くなかった。
【0008】
本発明は、このような新たな着眼に立って、この種の椅子の活用を促進するうえで有用となる椅子の管理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明に係る椅子の管理システムは、座が脚に対して前後又は左右方向に移動可能に構成されている椅子の動作を管理するものであって、前記座の前後又は左右方向の加速度を取得する加速度センサと、前記加速度センサが信号を出力している間を着座状態と捉えるデータ処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
前記データ処理手段は、前記加速度センサが信号を出力し始めてからの経過時間を着座時間としてカウントすることが望ましい。
【0012】
前記データ処理手段は、前記加速度センサからの信号の出力が停止している時間が所定時間を経過したことで離席と判断することが望ましい。
【0013】
前記データ処理手段は、前記加速度センサからの信号が所定条件を満たしたときに揺れと判断することが望ましい。
【0014】
前記加速度センサは、複数の異なる方向に沿った多軸の揺れを検知することが望ましい。
【0015】
座の方位を検出する方位センサを更に備え、前記データ処理手段は、前記加速度センサと前記方位センサを併用して、座の位置や方位を検出することが望ましい。
【0016】
前記加速度センサが背と座の間に設けてあることが望ましい。
【0017】
前記加速度センサが、背と座の間にあって着座者が接触する面から凹んだ位置に表出する背取付部に設けてあることが望ましい。
【0018】
前記加速度センサの機能を備えるスマートフォンをセットするためのセット部を、座の移動に関する情報を検知する位置に設けていることが望ましい。
【0019】
【0020】
【発明の効果】
【0021】
以上説明した本発明によれば、椅子の座の動きに関する情報を取得して、利用者に有用な情報として提供することができる、新規有用な椅子の管理システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態が適用される椅子の斜視図。
【
図2】同椅子の動作のうち、座の前後左右方向への移動を説明するための図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る管理システムのハードリソースを示す図。
【
図5】同管理システムを構成するデータ処理手段の機能ブロックを示す図。
【
図7】座の移動に係る変位、速度、加速度の関係を示すグラフ。
【
図8】姿勢データ生成部が生成する現姿勢データが表示された画面を示す図。
【
図9】姿勢データ生成部が生成する現姿勢データが表示された画面において姿勢が移動する様子を示す図。
【
図10】姿勢データ生成部が生成する現姿勢データとアラートの関係を示す図。
【
図11】姿勢データ生成部が生成する姿勢履歴データが表示された画面を示す図。
【
図12】姿勢データ生成部が生成する姿勢履歴データが表示された画面を示す図。
【
図13】椅子基準の加速度と設置位置基準の加速度の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態の管理システムが適用される椅子Crは、
図1~
図3に示すように、可動部である座1が、非可動部であり椅子上の基準点となる脚2に対して、前後方向(±D方向)および左右方向(±W方向)に移動可能に構成されたものである。
【0025】
そして、パーソナルコンピュータやタブレット、スマートフォン等の情報端末Cmを含んで構築される管理システムMSは、座1の脚2に対する移動情報INFや着座情報SEFを椅子Crに取り付けたセンサ41、42、43を通じて取得し、それらの情報INF、SEFに基づき、情報端末Cm内において可動部である座1の動作を可視的に把握するための動作データMDを生成して、その動作データMDに基づいて表示手段である情報端末Cmの画面pn上に可動部である座1の動きを表示するように構成されている。
【0026】
なお、椅子Crの可動部としては、座1以外に背5や図示しない可動肘などがあり、前後又は左右方向を含む動きとしては背5のロッキング動作、可動肘の旋回動作など、いくつかのものが考えられる。本実施形態では座1の動きを可視化するが、座1以外の可動部である背や可動肘の動きを可視化することにも当然に、本発明を適用することができる。
【0027】
以下、座1を可動部とする本実施形態について具体的に説明すると、この椅子Crは
図1~
図3に示すように、脚2に設けられた支持基部3に支持機構4を介して座1を支持させたもので、支持機構4は、左右移動部41及び前後移動部42を含んで構成されている。図示例の支持機構4は、支持基部3に左右移動部41を支持させ、その左右移動部41に前後移動部42を支持させて、その前後移動部42に座1を取り付けたものであり、支持機構4が全体として前後方向の動きと左右方向の動きを重畳させた動きを座1に許容し、座1を脚2に対して前後左右に移動させる動作が実現されている。
【0028】
図示例のものは、左右移動部41が一対のリンク41a、41aの下端に懸吊支持され、両リンク41a、41aの上端が支持基部3に取り付けられて、左右移動部41が左右何れに移動しても、移動先端側が下向きに傾斜しつつ、重心が持ち上がるように構成される。また、前後移動部42は、前端が当該前後移動部42に設けたガイド孔42bと左右移動部41に設けたフォロア41bとによるスライド支持部によって、当該左右移動部41に支持され、後端がリンク42cの下端に懸吊支持され、そのリンク42cの上端が左右移動部41に取り付けられていて、前後移動部42が前後何れに移動しても、移動先端側が下向きに傾斜しつつ、重心が持ち上がるように構成される。これによりこの椅子は、仮に移動先で座1に加えていた着座荷重が無くなった場合でも、自重で前後、左右の基準位置に復帰することができる。
【0029】
上記のように、この椅子は前後左右方向のみならず上下方向にも移動するものであるが、上下方向の変位は前後左右方向の変位に比べて僅かであるため、この実施形態では座1が前後又は左右方向に移動する椅子として説明を進める。
図2において、符合nは脚の中心(基準位置)を示し、mは座2の重心位置を示している。この実施形態では背5が座2とともに可動であるため、座2の重心位置というときには、当該座2とともに移動する背5の重心も含める。
【0030】
勿論、支持基部3に先に前後移動部42を支持させ、その前後移動部42に左右移動部41を支持させて、その左右移動部41に座1を取り付けても、上記に類する前後左右の動作を実現することができる。また、支持構造も、スライド支持機構によるかリンク機構によるかなどは、種々の組み合わせで実施することができる。さらに、前後のみに座1や背5が動作し、左右には移動しない椅子に対しても、本発明の適用対象である前後又は左右方向に移動する椅子に含まれるのは勿論である。
【0031】
図示の椅子Crに戻ると、この椅子Crの背5は背取付部51を介して、上記前後移動部42または左右移動部41または支持基部3などの適宜部位にその基端を取り付けられ、背5と座1の間にあって着座者が接触する面から凹んだ位置に当該背取付部51の一部が表出している。そこで、本実施形態では管理システムMSを構成するために、その背取付部51にセンサ61、62を有するセンサボックス6を配置し、座1の内部に着座センサ63を配置して、これらのセンサ61、62、63で検知する信号を
図4に示す送受信部71、72を介しデータ処理手段8に移送して、このデータ処理手段8で利用者の利用に供する可視的な動作データを生成するように構成される。送受信部71、72にはBlue-toothほか適宜の近距離無線通信規格に基づいたものが利用されている。
なお、着座センサを用いずに着座時間を推定する方法も採用可能である。これについては後述する。
【0032】
センサ61、62の取付位置は上記以外にも、例えば座1の下面や、背5の背面など、利用者の邪魔にならない位置を適宜選択することができる。ただし、適正な検出のためには、センサ61、62の取付位置は椅子Crの左右方向(W方向)の中心線上にあることが望ましい。
【0033】
本実施形態において、センサ61は、モーションセンサの一つである加速度センサであり、センサ62は、地磁気を感知して方位を示す方位センサである。
【0034】
加速度センサ61は、例えば2軸方向の加速度を検知するように構成されたもので、2つの加速度信号が出力される。この実施形態では、1軸は椅子の前後方向(D方向)を検出し、他の1軸は椅子の左右方向(W方向)を検出するように設定される。以下、これによって検出される加速度をαD、αwとする。つまり、この加速度αD、αwは、椅子基準で見たときの、前後方向と左右方向を直交2軸とする座標系上の加速度である。
【0035】
また、方位センサ62は、椅子Crに取り付けた状態で当該椅子Crがどの方位を向いているかを検出するものである。この実施形態では、地磁気Nに対して座1の前方がどの方位を向いているかを角度信号θとして出力するものとして説明を行う。すなわち、
図6に示すように、座1の前方が北「N」を向いていればθ=0、東「E」を向いていればθ=90°という具合に、方位センサ62は絶対基準で0°~360°の範囲の検出値θを出力する構成とされる。
【0036】
図1及び
図4に示す着座センサ63は、座1の下面に埋設されたリミットスイッチで、利用者が着座すると図示しない押圧部が押されてONになり、離席すると押圧部がバネで戻されてOFFになる体重検知式のものである。この信号はデータ処理手段8側に送信され、当該データ処理手段8において着座時間が管理される。着座センサ63を用いない場合の推定方法は、加速度センサー61が信号を出力している間を着座状態と捉え、出力が停止して所定時間(例えば3分)経過したことで離席と判断する。
【0037】
一方、データ処理手段8は、
図4に示すように、CPU8a、メモリ8bおよびインターフェース(I/F)8cのほか、表示手段たる画面(DP)8d、入力装置(ENT)8eなどのハードウェアリソースを備えた、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット等の情報端末Cmによって構成される。メモリ8b内には、予め本実施形態に係る椅子の管理プログラムPrが書き込まれている。この管理プログラムPrは、CPU8aに呼び出されて実行されることにより、情報端末Cmを、
図5に示す姿勢判断部81、姿勢データ生成部82、消費カロリー算出部83、着座時間算出部84などとして機能させる。
【0038】
ここで言う「姿勢」には、脚2を基準としたときの座1の姿勢、例えば「前に傾いた姿勢」「後に傾いた姿勢」、「左に傾いた姿勢」、「右に傾いた姿勢」のほか、姿勢の時間的変化である、「揺れ」や「移動軌跡」などの「姿勢履歴」が含まれる。管理プログラムPrの主機能は、これらの姿勢を判断して、画面上に表示するものである。例えば、
図8には着座者を示すオブジェクトMOを通じて椅子Crが右に傾いた状態にあることが表示され、
図9には着座者を示すオブジェクトMOを通じて椅子Crの移動の様子が表示され、
図11には着座者を示すオブジェクトMOを通じて椅子Crの揺れの履歴が表示されている。これらについては後述する。
【0039】
このことは座1に限らない。仮に可動部が図示しない可動肘である場合にも、前後左右に略水平移動したり、旋回して利用者の胸元に移動するように構成されるものがある。このようなものでは、上記と同様に可動肘の前後又は左右方向の姿勢や姿勢変化を、本発明の管理システムや管理プログラムによって管理することができる。また、可動部が背である場合には、背が座に対して後傾可能に支持され、さらには背座が連動してシンクロロッキング動作を行うように構成されるものがある。このようなものでは、後傾方向の角度や、角度変化を、可動部である背の前後又は左右方向の姿勢又は姿勢変化として、本発明の管理システムや管理プログラムによって取り扱うことができる。
【0040】
以下、可動部が座1である本実施形態に戻って、上記データ処理手段8の各機能について説明する。
【0041】
図8に示す姿勢判断部81は、座1の前後又は左右方向の位置を判断する位置判断部81a、その位置変化を判断する位置変化判断部81b、座1の前後又は左右方向の揺れを判断する揺れ判断部81cを含む。また、姿勢データ生成部82は、座1の現在位置に関するデータである現姿勢データ(リアルタイム姿勢データ)82a、その履歴である姿勢履歴データ82b、揺れ回数データ82cなどを動作データとして生成する。
【0042】
姿勢判断部81は、位置判断部81aや位置変化判断部81bを機能させるために、利用開始時にキャリブレーションを行う。
【0043】
キャリブレーションは、
図6(b)に示すように、着座時に例えば椅子CrをデスクDkに正対させ、
図2(a)、(b)に示す座1の中心mを脚2の前後左右の中心位置n、すなわち自重で復帰する基準位置に位置づけた状態で、利用者が情報端末Cm上の実行ボタンを操作することによって実行される。これにより、椅子基準で見たときの座の前後位置および左右位置を、
(D、W)=(0、0)
に初期化し、椅子Crの方位と地磁気の方位を関連づける。例えば、椅子の前方(D方向)の方向が、地磁気のN方向に対して角度θ
0だけずれているときにキャリブレーションを行えば、θ(=θ
0)が検出される位置を(D、W)=(0、0)として初期設定される。そして、その後に椅子がδθだけ回転すれば、方位センサ62の検出値θはθ
0+δθに相当するため、このときの座1のデスクDKに対する相対座標上の回転位相角δθは、θ-θ
0として算出される。
【0044】
図11は椅子Crが負方向にδθだけ回転した状態を利用者のオブジェクトMOを通じて示しており、椅子基準で見たときの前後左右のDW座標が設置先のXY座標に対して同じ角度回転している。この状態で座1が前後左右に移動または揺れると、オブジェクトMOの表示は図示の位置からD方向および/またはW方向に移動する。
【0045】
以下、椅子1の動きを検知するアルゴリズムについて簡単に説明する。
設置先基準の座1のXY座標は、座1が回転しないのであれば、
図13(a)に示すように椅子基準のDW座標と一致し、座1のXY座標上の加速度(αx、αy)はDW座標上の加速度(α
W、α
D)に等しい。すなわち、
αx=α
W
αy=α
D
である。
【0046】
しかし、
図13(b)に示すように座1は回転し、その回転位置において椅子基準でDW座標上を前後左右にも移動する。
【0047】
そこで、
図5(a)に示す位置変化判断部81bは、2軸方向の加速度センサ61のデータ(α
D、α
W)と、
図6(b)に示した方位センサ62の出力θとから、下記のように設置先基準の座標(X、Y)上での加速度(αx、αy)を判別する。fx、fyは一般的な座標変換関数である。
αx=fx(α
D、α
W、δθ)
αy=fy(α
D、α
W、δθ)
【0048】
図5(a)に示す位置判断部81aは、位置変化判断部81bが取り扱う加速度(α
x、α
y)を各軸ごとに積分することによって、刻々変化する現在速度(dx/dt、dy/dt)や、最初の位置から移動した移動先の現在位置の座標(X、Y)を、例えば次式によって算出する。
(dx/dt、dy/dt)=(∫α
xdt、∫α
ydt)
(X、Y)=(∬α
xd
2t、∬α
yd
2t)
【0049】
これにより、椅子Crがどちらの方位を向いていても、さらには座1が椅子基準で前後左右にどのように移動し(傾い)ても、設置先基準のXY座標上において座1の現在位置やその向きなどの現姿勢、あるいは、その時間変化を追跡することができる。勿論、これらの現在速度や現在位置の算出手法は例示に過ぎない。このため、センサの特性やサンプリング周期、或いは誤差の集積状態を考慮して、種々の近似式を用いたり、適時に補正を掛け、更には一般に知られている全く別異の算出方法によって現姿勢やその時間変化を算出することができるのは言うまでもない。
【0050】
図5(a)に示す揺れ判定部81cは、加速度センサ61のデータ(α
D、α
W)を取り込み、それが所定の条件を満たした場合に、座1の「揺れ」と判定する。揺れは椅子がどちらの方向を向いているかによらないため、揺れの判定を行ううえで加速度センサ61のデータ(α
D、α
W)があれば、それを設置先基準のXY座標系データに変換する必要は必ずしもない。
【0051】
通常、椅子Crを振り子のように揺らした場合は、
図7に示すように、変位-速度-加速度を表す波が位相のずれた状態で周期的に現れる。例えば、座の前方を+の変位とすると、変位は前端で最大に正に振れ(時刻t1、t5)、後端で最大に負に振れる(時刻t3)。速度は、前端(時刻t1、t5)と後端(時刻t3)で0となり、その間の後退途中または前進途中で負の最大値、正の最大値をとる(時刻t2、t4)。加速度は、速度の増減が入れ替わるとき、すなわち座1が脚2の中心すなわち基準位置を通過するころに0になり(時刻t2、t4)、停止前後で移動の向きが変わる前端と後端で負の最大値または正の最大値になる(時刻t1、t3、t5)。したがって、単純に考えれば、加速度センサ61が検出する加速度の極性が入れ替わるゼロクロス点が2箇所に現れたことをもって、座1の往復1回の揺れとカウントすることができる。
【0052】
しかしながら、同じ座1を揺らすにしても、緩やかに座1を移動させた場合には加速度は0すなわち等速度運動に近くなり、「揺れ」とは言えなくなる。「揺れ」と判断するためには、振り子のように重力やバネ等による蓄積エネルギーと運動エネルギーが交互に入れ替わる必要があり、そのためには、加速度の符合の反転に加え、最大加速度が少なくともある程度実効性をもった値であることが必要である。そこで、検出される加速度の絶対値に閾値を設けて、閾値を上回ることも、「揺れ」の判定要件として必要とされる。
【0053】
さらに言えば、椅子Crの座1を使った着座者の動きは、座の前後方向(D方向)の揺れ(ピッチングに相当)、左右方向(W方向)の揺れ(ローリングに相当)、鉛直軸回りの捩じり回転(ヨーイングに相当)、又はこれらの組み合わせ動作、さらにはこれらに該当しない椅子Crに固有の動作、利用者に特徴的な動作の複合からなる。さらには、座1の可動範囲は、前後方向が左右方向より広く、前後方向については基準位置よりも後方の方が前方よりも広いといった、椅子本来の特徴的な構成がある。このように、前後左右、さらには捩じり方向について、想定される揺れの性質や大きさ、特徴は様々である。
【0054】
このような種々の動きを補足するために、
図5(a)に示す揺れ判断部81cは、移動情報として入力される加速度データα
D、α
Wのみならず、椅子Crの方位データθも含めて、双方の波形から「揺れ」と判断するために必要な、極性や閾値等の条件を定めている。
【0055】
さらには、
図5(b)に示すように、揺れ判断部81cは、予め座1の特徴的な動きごとに座1の加速度の大きさや方向、座1の回転、移動軌跡などをパターン化して揺れ参照データrefとして記憶しておき、これらの揺れ参照データrefと、移動情報infとして実際に検出される座1の加速度データα
D、α
Wや座の方位データθ等とをパターンマッチングなどの手法によって比較して、最も近い動作パターンを取り出し、当該動作パターン毎に予め設定されている揺れの条件に基づいて、実際のデータから「揺れ」か否かの判定を行い、揺れ回数データを生成するように構成されてもよい。
【0056】
図5に示す姿勢データ生成部82は、前記姿勢判断部81の位置判断部81aが算出した現在位置をXY座標上に表示するための現姿勢データ82aを生成する。
図6(a)は表示手段である情報端末Cmの画面Dp上の姿勢表示フィールドF0に現姿勢データ82aを表示させたものである。この姿勢表示フィールドF0は、設置先基準の座標(X、Y)上に椅子基準の座標(D、W)を重ねたもので、着座者の頭を表す円と着座の鼻を表す三角とによって着座者を表すオブジェクトMOを表示し、このオブジェクトMOを通じて可動部である座1の位置と方位を表している。座1が回転すれば
図11に示すように画面上の動的オブジェクトも回転し、座1が前後左右に水平移動すれば、
図8に示すように画面上の動的オブジェクトも前後左右に移動するのは既に述べたところである。
【0057】
この画面Dpには、姿勢表示フィールドF0のほかに、アラート表示フィールドF1、着座時間表示フィールドF2、振れ回数表示フィールドF3、消費CalフィールドF4が設けてある。これらのフィールドF1~F4には、姿勢データ生成部82について後述する現姿勢データ82a、姿勢履歴データ82b、揺れ回数データ82cのほか、消費Cal算出部が算出する消費Cal、着座時間算出部84が算出する着座時間が表示される。これについては以下に説明する。
【0058】
アラート表示は、利用者に姿勢の良否を了知させるためになされる。このアラート表示を行うにあたり、姿勢データ生成部82は、
図10に示すようにDW座標上の座1の位置を16の区分に仕分ける設定がされており、現在位置が例えば「6」に該当すれば、予め
図10の右欄に用意したアラートメッセージ欄からアラートメッセージを取り出して、座1の重心位置が少し右に傾いている旨の表示をなすように構成されている。因みに、
図9の状態は座1の重心位置が上記区分6に該当するため、アラート表示フィールドF1に「少し右に傾いています」と表示され、
図11の状態は座1の重心位置が上記区分1に該当するため、アラート表示フィールドF1に「バランスは良好です」と表示されている。
【0059】
姿勢データ生成部82はまた、姿勢履歴データ82bを生成する。この姿勢履歴データ82bは、前記姿勢判断部81の位置判断部81aが判断する座1の絶対座標(X、Y)上の位置を、所定のサンプリング周期Δtごとに、ログ情報の一つとして取り込み、記憶したものである。そして、表示手段である画面Dp上の姿勢表示フィールドF0において
図11に示すように姿勢履歴データ82bを表示する。
図11では、着座時間表示フィールドF2に着座開始後の経過時間(9秒)が表示されており、姿勢履歴データ82bはこの間の姿勢履歴として姿勢表示フィールドF0にプロットされている。
【0060】
着座時間は、データ処理部8の着座時間算出部84がカウントする。この着座時間算出部は、前述した着座センサ63がONになるとタイマーが作動して着座開始からの経過時間をカウントし、OFFになるとカウントを停止するように構成されていて、カウントした着座時間が
図11の着座時間表示フィールドF2に表示されている。着座センサ63によらない場合は、加速度センサ61が信号を出力し始めてからの経過時間がカウントされる。
【0061】
なお、姿勢履歴は、上記のような一定時間ごとのログ情報に基づくほか、振幅が最も大きいpeak-to-peak時の揺れ位置を点としてプロットし、点と点の間を線で繋ぐことによっても、
図11に示したように姿勢履歴を表示することができる。
【0062】
また、
図5に示す姿勢データ生成部82は、前記揺れ判定部81cが「揺れ」と判定した場合に、揺れ回数をカウントして揺れ回数データ82cを生成し、画面上の揺れ回数フィールドF3に揺れ回数を表示する。
図11では9秒間に21回揺れた旨が表示されている。
【0063】
また、
図5に示す姿勢データ生成部82は、姿勢履歴データ82bの一つとして着座位置の解析データを生成する。この解析データは、所定時間内において利用者が座1をどの位置に移動させることが多いかを、
図10に示した座1の区分単位で比率計算し、その滞在時間の比率を割り出したもので、この解析データは
図12に示すように姿勢表示フィールドF0に表示される。この場合は70%が中心(区分1)にあり、25%が少し後ろ(区分10)にあること等が表示されている。併せて、傾向として少し後ろに位置しているため、アラート表示フィールドFには「少し後に傾いています」と表示されている。
【0064】
さらに、
図5に示すデータ処理手段8は、消費カロリー算出部83を備える。消費カロリーは、一般に呼気を通じて測定できることが知られている。同じ運動量でも、所定距離を移動する速度や加速度によって、また、体重によって、消費カロリーは異なる。そこで、椅子Crに着座した状態で種々の加速度で座を揺らしたときの加速度と、利用者の体重と、呼気を通じた消費カロリーの関係について種々の試験を行い、その結果として、体重と揺れ回数が入力されることで消費カロリーを算出する演算式が予め作成されて、メモリ8b内に格納されている。そして、消費Cal算出部83は、予め登録された体重と、揺れ判断部81cの判断を通じて生成される揺れ回数データ82cとに基づいて消費カロリーを算出し、
図11等に示す消費Cal表示フィールドF4に着座後の消費Calを表示するようにしている。この画面では、着座時間9秒の間に21回揺れ、その消費Calが0.96である旨が表示されている。
【0065】
この管理システムMSは、着座時間と揺れによるカロリー値から座り過ぎ、すなわち体を動かさない状態が持続していることに対して注意を促すモードも設定されている。具体的には、例えば所定時間(60分)で所定cal(3kcal)以上カロリーを消費しなければ、「座り過ぎています。体を動かしてリフレッシュしましょう」といった文字がアラート表示フィールドFやその他の測定表示画面に表れるようになっている。
【0066】
さらに、この管理システムMSは、
図14に示すように情報端末Cm1、Cm2、…Cmjからの動作データがサーバSVに送られて、サーバSVは利用者IDごとに椅子Cr1、Cr2、…、Crkの利用状況を管理する。そのために、アプリケーションの起動時に最初に
図4に示す送受信部71、72同士のペアリングとともにユーザーIDとパスワードPWの入力要求がなされ、このユーザーについてその椅子Crを利用する間の情報が取得されてサーバSVに送られるように構成されている。
【0067】
情報端末Cmにおいては、
図15に示すように、日付、着座時間、揺れ回数、消費Cal、姿勢判断等を一覧で表示するプログラムが随時実行されている。姿勢判断とは、
図10に示した解析結果等を表示する欄である。再生とあるのは、姿勢表示フィールドF0に姿勢履歴を随時表示させるためのコマンドである。利用者は随時、この画面を使って自己の利用状況を確認することができる。
【0068】
一方、
図16はサーバSVの管理画面であり、サーバSVでも管理プログラムPrの一部が随時実行されている。この管理画面には、ID、氏名、年齢、性、職種、着座時間、揺れ回数、消費Cal、姿勢判断等を一覧で表示している。この管理プログラムPrは、権限を有するものの要求によって閲覧が可能であり、当該プログラムや蓄積したデータの加工が許可されるものとなっている。この権限によって、例えば単位時間あたりの揺れ回数が閾値よりも少ない利用者に対して、サーバSVから情報端末Cmにアラートを表示させるような設定、使い方も可能となっている。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る椅子の管理システムMSは、可動部である座1が非可動部である脚2に対して前途又は左右方向に移動可能に構成された椅子の動作を管理するものであって、座1の移動情報を取得するセンサ61、62と、センサ61、62の移動情報に基づいて座1の動作を可視的に把握するための動作データを生成するデータ処理手段8と、このデータ処理手段8が生成する動作データに基づき座1の動きを表示する表示手段である画面Pnと、を備えたものである。
【0070】
このように構成すれば、可動部である座1の動きを可視化して利用者にフィードバックすることができ、利用者にしてみれば、普通であれば自覚のない自己の椅子の使い方や着座姿勢などについて再認識するきっかけになるので、これにより椅子利用のモチベーションを高め、ひいては椅子の効果的な利用促進につなげることができる。
【0071】
特に、可動部である座1の移動情報を取得するにあたっては、(1)可動部である座1の移動情報のみをセンサで取得して演算処理で可動部である座1の地面に対する移動情報を得る態様、(2)演算処理で可動部たる座1のの非可動部に対する相対的な移動情報を得る態様であって、非可動部の移動情報は演算で予測して差し引きする態様、(3)可動部たる座1と非可動部例えば脚2の両方にセンサを取付けて差し引き演算し、非可動部である脚2に対する可動部である座1の相対的な移動情報を得る態様、を含んでいる。
(3)の態様が一番精度が高いが、多くのセンサを必要とする。これに対して本実施形態では、(1)の態様を採用しているので、センサ数や演算工程を抑えて低コストで目的を達成することができる。
【0072】
また、この管理システムMSは、センサ61、62との間で通信を行う情報端末Cmを含み、この情報端末Cmが、データ処理手段8および表示手段である画面Pnとして機能しているので、こうした機能分離により、椅子Cr側にはセンサ61、62のみを設ければ足り、椅子Crの機能部の小型軽量化につなげることができる。
【0073】
また、情報端末Cmとの間で通信を行うサーバSVを含み、このサーバSVが少なくとも情報端末Cmより送信された動作データを、椅子の利用者と関連づけて蓄積するようにしているので、中央で利用者の状況を一括管理するとともに、収集した各種データをビッグデータとして有効活用することができる。
【0074】
また、この管理システムMSは、前記センサが加速度センサ61を含んで構成されている。このように、少なくとも加速度センサ61を採用すれば、加速度以外に、速度や位置も演算によって求めることができ、微分処理が必要でないことから演算負荷も少ない。よって、現行GPSなどでは難しい小さい揺れなども的確に検知することができる。
【0075】
この場合、加速度センサ61は、複数の異なる方向に沿った2軸の加速度を検知するように構成されているので、平面的な可動部の動きを的確に捉えることができる。勿論、3軸以上にすれば、3次元的、あるいは4以上の多次元的な可動部の動きを検知することも可能である。
【0076】
本実施形態について言えば、前記センサは、加速度センサ61と方位センサ62を併用して構成されているため、
図6等の姿勢表示フィールドF0において、座1の位置や方位を適切に表示することができる。
【0077】
内容的には、可動部である座1の移動情報が前後又は左右方向の加速度情報であり、データ処理手段8は、座1の動作が予め設定された特徴に合致するか否かを判断し、合致する場合には抽出すべき揺れとしてカウントして動作データである揺れ回数を生成するため、揺れる椅子の機能が適切に利用されているかどうかを適切に把握することができる。
【0078】
また、座1の移動情報が前後又は左右方向の加速度情報であり、データ処理手段8は、予め記憶した複数の挙動に関する揺れ参照データrefと比較して、最も近い揺れ参照データrefが示す揺れであると判断するようにした場合には、座1が複雑な動きをする場合であっても、適切に揺れ判定を行うことができる。
【0079】
また、データ処理手段8は、揺れ回数に基づいて利用者の消費カロリーを算出するように構成されているため、揺れる椅子を使って軽い運動を行う啓発に利用することができる。
【0080】
また、可動部である座1の移動情報が前後又は左右方向の位置情報であり、データ処理手段8は、動作データとして、座1の現在位置に関するデータを生成し、表示手段である画面Dpが非可動部に対する可動部の位置を表示するように構成されているため、利用者が自分の着座位置を確認するうえで有用な機能を提供することができる。
【0081】
この場合、データ処理手段8は、動作データとして、可動部である座1の現在位置に関するデータを連ねて、表示手段である画面Dpが非可動部に対する座1の移動履歴を表示するように構成されているため、利用者が自分の着座履歴を確認するうえで有用な機能を提供することができる。
【0082】
そして、コンピュータに読み込まれて実行されることにより、当該コンピュータを、上記何れかに記載の管理システムにおけるデータ処理手段として機能させるプログラムを作成すれば、情報端末CmにおいてもサーバSVにおいても、本実施形態の管理システムMSを有効に活用することができるようになる。
【0083】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0084】
また、
図17に示すように、センサ61等との間で通信を行う情報端末Cmと、この情報端末Cmとの間で通信を行うサーバSVとを含み、このサーバSVがデータ処理手段8として機能し、情報端末Cmが表示手段である画面Dpの役割をなすように、管理システムを構築してもよい。
【0085】
こうした機能分離により、椅子側にはセンサ61のみを設ければよく、椅子の機能部の小型軽量化になる。しかも、データ処理はサーバSVが行うため、複数の情報端末Cmからのデータ処理を一括してサーバSVに担わせ、中央管理に利用することができる。これに伴い、各情報端末Cmには表示の役割だけをもたせて負荷分散することができる。
【0086】
勿論、スマートフォンに加速度センサ、方位センサの機能が備わっていれば、スマートフォン自体を椅子の適宜位置にセットして可動部の平面方向の移動に関する情報を検知するようにしてもよい。このようにすれば、情報端末さえあれば、別途センサを用いることも不要にすることができる。
【0087】
スマートフォンをセンサとしてのみ使用し、情報端末であるPCをデータ処理手段や表示手段として用いる態様も勿論あり得る。
【0088】
また、以上の各構成において、情報端末がセンサとしての機能部を併せ持っているように構成し、当該センサ機能部から取得した一連の動作データを情報端末内に一時保存し、処理し、表示する手段を当該情報端末が有するように構成しても勿論構わない。
【0089】
また、GPSの精度が向上すれば、方位センサや加速度センサにかえて、GPSだけで着座位置や方位、履歴等を検出することも可能になる。
【0090】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…可動部(座)
2…非可動部(脚)
8…データ処理手段
61…加速度センサ
62…方位センサ
Cm…情報端末
INF…移動情報
Pn…表示手段(画面)
Pr…管理プログラム
ref…参照データ