(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105144
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 299/00 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
C08F299/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075865
(22)【出願日】2022-05-02
(62)【分割の表示】P 2019557091の分割
【原出願日】2018-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2017228924
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 一郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】保存安定性、硬化性及び洗浄性に優れる硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】硬化性樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を含み、(B)の一部又は全部と(C)の一部又は全部とは反応していてもよく、(B)は、(b1)カルバジド化合物、(b2)イミダゾールをエポキシ樹脂にアダクトさせた化合物、(b3)多価アミン化合物をエポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及び尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物にアダクトさせた化合物、(b4)2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶、(b5)1種以上のモノ又は多価アミン化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶並びに(b6)1種以上のイミダゾール化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶からなる群から選択される少なくとも1種である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記潜在性硬化剤(B)の一部又は全部と前記イソシアネート化合物(C)の一部又は全部とは、反応していてもよく、
前記潜在硬化剤(B)は、(b1)カルバジド化合物、(b2)イミダゾール化合物をエポキシ樹脂にアダクトさせた化合物、(b3)多価アミン化合物をエポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及び尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物にアダクトさせた化合物(但し、(b3)における多価アミン化合物は、ヒドラジン、ヒドラジド化合物、及び(b1)カルバジド化合物を含まない)、(b4)2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶、(b5)1種以上のモノ又は多価アミン化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶並びに(b6)1種以上のイミダゾール化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶からなる群から選択される少なくとも1種である硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
潜在性硬化剤(B)100質量部に対して、イソシアネート化合物(C)を0.02~28質量部含む請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに光開始剤(D)を含む請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
液晶表示素子用シール剤組成物である請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
硬化性樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を含む硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を予め反応させることなく、硬化性樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を混合する工程を含み、
前記潜在硬化剤(B)は、(b1)カルバジド化合物、(b2)イミダゾール化合物をエポキシ樹脂にアダクトさせた化合物、(b3)多価アミン化合物をエポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及び尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物にアダクトさせた化合物(但し、(b3)における多価アミン化合物は、ヒドラジン、ヒドラジド化合物、及び(b1)カルバジド化合物を含まない)、(b4)2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶、(b5)1種以上のモノ又は多価アミン化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶並びに(b6)1種以上のイミダゾール化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶からなる群から選択される少なくとも1種である、
硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を用いて得られる、液晶表示パネル。
【請求項7】
液晶滴下工法において、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を用いて、光硬化及び/又は熱硬化を行う液晶表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、液晶ディスプレイ等の液晶表示素子に好適に使用可能な硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示セルの製造方法は、一方の基材に形成されたシール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、他方の基材を貼り合わせて液晶表示セルを製造する方法や、シール剤の塗布時に注入口となる部分を設け、基材を貼り合わせた後に液晶を注入し、その後注入口を封止して液晶表示セルを製造する方法がある。貼り合わせは、加熱により行われる工程を含むため、液晶表示セルの製造のためのシール剤組成物として、加熱硬化成分としてエポキシ基を含有する樹脂を含む熱硬化型の樹脂組成物が用いられる。
【0003】
このエポキシ基を含有する樹脂の硬化剤として、熱、光、圧力等が加えられることにより、エポキシ基等と反応が可能となる潜在性硬化剤を用いることが行われている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
特許文献2では、エポキシ及び/又はポリイソシアネート変性アミンの微粉末を、水、ポリイソシアネート及びエポキシ樹脂の反応物で表面処理した潜在性硬化剤を含有する硬化性エポキシ樹脂組成物が開示されている。
特許文献3では、イソシアネート基を有する化合物によって被覆されたヒドラジド系硬化剤を含む液晶滴下工法用シール剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-133794号公報
【特許文献2】特開2010-90295号公報
【特許文献3】特開2012-93582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、低温硬化の硬化剤を用いると室温でも硬化反応が徐々に始まるので液安定性が悪くなるという問題があった。
特許文献2に記載されたイソシアネート化合物と反応させた潜在性硬化剤は、硬化性樹脂と混合する前にあらかじめ製造する必要があった。
特許文献3では、組成物の保存安定性は確認されているものの、硬化性については確認されていなかった。またシール剤組成物は、通常シリンジに充填して、基材に塗工され、シリンジはアセトン等有機溶媒で洗浄して繰り返して使用される場合、エポキシアダクト系硬化剤を用いると洗浄性が悪いという問題があった。
そこで、本発明は、保存安定性、硬化性及び洗浄性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]硬化性樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記潜在性硬化剤(B)の一部又は全部と前記イソシアネート化合物(C)の一部又は全部とは、反応していてもよく、
前記潜在硬化剤(B)は、(b1)カルバジド化合物、(b2)イミダゾール化合物をエポキシ樹脂にアダクトさせた化合物、(b3)多価アミン化合物をエポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及び尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物にアダクトさせた化合物(但し、(b3)における多価アミン化合物は、ヒドラジン、ヒドラジド化合物、及び(b1)カルバジド化合物を含まない)、(b4)2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶、(b5)1種以上のモノ又は多価アミン化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶並びに(b6)1種以上のイミダゾール化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶からなる群から選択される少なくとも1種である硬化性樹脂組成物。
[2]潜在性硬化剤(B)100質量部に対して、イソシアネート化合物(C)を0.02~28質量部含む[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
[3]さらに光開始剤(D)を含む[1]又は[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
[4]液晶表示素子用シール剤組成物である[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
[5]硬化性樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を含む硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を予め反応させることなく、硬化性樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を混合する工程を含み、
前記潜在硬化剤(B)は、(b1)カルバジド化合物、(b2)イミダゾール化合物をエポキシ樹脂にアダクトさせた化合物、(b3)多価アミン化合物をエポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及び尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物にアダクトさせた化合物(但し、(b3)における多価アミン化合物は、ヒドラジン、ヒドラジド化合物、及び(b1)カルバジド化合物を含まない)、(b4)2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶、(b5)1種以上のモノ又は多価アミン化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶並びに(b6)1種以上のイミダゾール化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶からなる群から選択される少なくとも1種である、
硬化性樹脂組成物の製造方法。
[6][1]~[4]の硬化性樹脂組成物を用いて得られる、液晶表示パネル。
[7]液晶滴下工法において、[1]~[4]の硬化性樹脂組成物を用いて、光硬化及び/又は熱硬化を行う、液晶表示パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の硬化性樹脂組成物は、保存安定性及び硬化性及び洗浄性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記潜在性硬化剤(B)の一部又は全部と前記イソシアネート化合物(C)の一部又は全部とは、反応していてもよく、
前記潜在硬化剤(B)は、カルバジド化合物、イミダゾールをエポキシ樹脂にアダクトさせた化合物、多価アミン化合物をエポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及び尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物にアダクトさせた化合物、2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶、1種以上の多価アミン化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶並びに1種以上のイミダゾール化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶からなる群から選択される少なくとも1種である硬化性樹脂組成物である。
【0009】
1.硬化性樹脂(A)
硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂及び分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する樹脂(但し、不飽和結合を有するエポキシ樹脂を除く)が挙げられる。
【0010】
〔エポキシ樹脂〕
エポキシ樹脂としては、公知のものを使用することができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等を用いることが好ましい。
【0011】
また、エポキシ樹脂は、不飽和結合を有するエポキシ樹脂であってもよい。このような不飽和結合を有するエポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる、エポキシ基の一部が(メタ)アクリル酸で変性された部分エステル化エポキシ樹脂が挙げられる。このような樹脂としては、例えば、特開2012-77202号公報に記載されている。不飽和結合を有するエポキシ樹脂として、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、(メタ)アクリル酸を、好ましくは10~90当量%、より好ましくは20~80当量%、更に好ましくは30~70当量%、特に好ましくは40~60当量%の(メタ)アクリル酸を反応させて得られた部分エステル化エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0012】
部分エステル化エポキシ樹脂は、例えば、まず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とアクリル酸又はメタクリル酸を、常法に従って塩基性触媒の存在下で、エポキシ基2当量に対してカルボン酸基0.9~1.1当量となるように反応させ、この反応生成物に、質量比で約4倍のトルエンと、同量の純水を加え、60~80℃で1時間撹拌した後、静置して有機層と水層とに分離し、水層は除去する。この操作を3~5回繰り返し、最後に有機層を回収し残存するトルエンを真空蒸留により除去して水可溶イオン性物質を低減化処理した部分エステル化エポキシ樹脂を精製する方法によって得ることができる。上述のビスフェノールA型エポキシ樹脂の具体例として、例えばエピコート828、834、1001、1004(三菱化学社製)、エピクロン850、860、4055(DIC社製)、等が挙げられる。これら原料樹脂としては、好ましくは、水可溶イオン性物質の低減化処理(「高純度化処理」とも呼ばれる。)を行なった樹脂、例えばエピクロン850S(DIC社製)等が好適である。また、部分エステル化エポキシ樹脂の例としては、PR-850CRP(KSM社製)が挙げられる。
【0013】
〔分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する樹脂〕
樹脂組成物は、分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する樹脂(但し、不飽和結合を有するエポキシ樹脂を除く。)を含んでいてもよい。分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する樹脂としては、例えば、スチレン誘導体、エチレン誘導体、マレイミド誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体等が挙げられる。中でも、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を用いることが好ましい。
【0014】
(メタ)アクリル酸誘導体としては、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキシブチル等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシルのような脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;グリシジル基を有する樹脂を(メタ)アクリル酸で変性したエポキシ(メタ)アクリル酸(「エポキシ(メタ)アクリレート」とも呼ばれる。)等が挙げられる。本明細書において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸の両方を意味する。
【0015】
エポキシ樹脂と、分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する樹脂とを併用する場合には、エポキシ樹脂と、分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する樹脂との配合量は、樹脂組成物を硬化させた硬化体の目的に応じて適宜決定することが可能である。分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する樹脂が、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体である場合は、エポキシ基1当量に対して、(メタ)アクリロイル基が0.1~9.0当量になるように配合することが好ましく、(メタ)アクリロイル基が0.3~4.0当量になるように配合することがより好ましい。
【0016】
2.潜在硬化剤(B)
潜在硬化剤(B)は、(b1)カルバジド化合物、(b2)イミダゾールをエポキシ樹脂にアダクトさせた化合物、(b3)多価アミン化合物をエポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及び尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物にアダクトさせた化合物、(b4)2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶、(b5)1種以上の多価アミン化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶、並びに(b6)1種以上のイミダゾール化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶からなる群から選択される少なくとも1種である。なお、(b3)多価アミン化合物をエポキシ樹脂、イソシアネート化合物にアダクトさせた化合物において、多価アミン化合物は、ヒドラジン、ヒドラジド化合物、及び(b1)カルバジド化合物を含まないものとする。
【0017】
〔(b1)カルバジド化合物〕
カルバジド化合物としては、下記式(Ib)で表されるジセミカルバジド化合物及び下記式(IIb)で表されるセミカルバジド化合物が挙げられる。
【化1】
(式中、X
1は、C
1~C
12アルキレン、1つ若しくはそれ以上のO原子(酸素原子)で非連続的に中断されたC
2~C
12アルキレン、C
1~C
12アルキレンオキシカルボニルアルキレン、C
3~C
12シクロアルキレン、C
1~C
12アルキレン-C
3~C
12シクロアルキレン、C
1~C
12アルキレン-C
3~C
12シクロアルキレン-C
1~C
12アルキレン、C
3~C
12シクロアルキレン-C
1~C
12アルキレン-C
3~C
12シクロアルキレン、ジC
3~C
12シクロアルカンジイル、C
6~C
14アリーレン、C
1~C
4アルキレン-C
6~C
14アリーレン-C
1~C
4アルキレン、又はC
6~C
14アリーレン-C
1~C
4アルキレン-C
6~C
14アリーレン(ここで、アルキレンは、直鎖又は分岐鎖であり、ハロゲンで置換されていてもよく、C
3~C
12シクロアルキレン又はC
6~C
14アリーレンは、非置換であるか、又はハロゲン若しくはC
1~C
4アルキルで置換されている)である。)
【化2】
(式中、X
2は、C
1~C
12アルキル、1つ若しくはそれ以上のO原子(酸素原子)で非連続的に中断されたC
2~C
12アルキル、C
1~C
12アルキルオキシカルボニルアルキレン、C
3~C
12シクロアルキル、C
1~C
12アルキル-C
3~C
12シクロアルキレン、C
3~C
12シクロアルキル-C
1~C
12アルキレン-C
3~C
12シクロアルキレン、C
6~C
14アリール、C
1~C
4アルキル-C
6~C
14アリーレン、C
6~C
14アリール-C
1~C
4アルキレン-C
6~C
14アリーレン(ここで、アルキレンは、直鎖又は分岐鎖であり、ハロゲンで置換されていてもよく、C
3~C
12シクロアルキル、C
3~C
12シクロアルキレン、C
6~C
14アリール又はC
6~C
14アリーレンは、非置換であるか、又はハロゲン若しくはC
1~C
4アルキルで置換されている。)、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキルである。)
【0018】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「C1~C12アルキル」は、直鎖又は分岐鎖のものであり、ハロゲンで置換されていてもよく、1つ若しくはそれ以上のO原子(酸素原子)で非連続的に中断されていてもよく、好ましくは直鎖のものである。アルキルの炭素数の範囲は、C1~C12であり、より好ましくはC1~C8、更に好ましくはC1~C6、特に好ましくはC1~C4の範囲が挙げられる。その具体例としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル等の直鎖のもの、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、イソオクチル、t-オクチル、2-エチルヘキシル、t-ノニル等の分岐鎖のものが挙げられる。ハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。置換基としてのハロゲンは、好ましくはフッ素原子又は塩素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。置換数は、1~12個、好ましくは1~6個、より好ましくは1~4個、特に好ましくは1~3個である。
【0019】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「C1~C12アルキレン」は、直鎖又は分岐鎖のものであり、ハロゲンで置換されていてもよく、1つ若しくはそれ以上のNH(イミノ基)若しくはO原子(酸素原子)で非連続的に中断されていてもよく(N原子(窒素原子)に結合するH原子(水素原子)は、アミノ基又はC1~C12のアルキルアミノ基で置換されていてもよい)、好ましくは直鎖のものである。アルキレンの炭素数の範囲は、C1~C12であり、より好ましくはC1~C8、更に好ましくはC1~C6、特に好ましくはC1~C4の範囲が挙げられる。その具体例としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、1-メチルトリメチレン、2-メチルトリメチレン、3-メチルトリメチレン、ペンタメチレン、1-メチルテトラメチレン、4-メチルテトラメチレン、ヘキサメチレン、5-メチルペンタメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン等が挙げられる。ハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。置換基としてのハロゲンは、好ましくはフッ素原子又は塩素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。置換数は、1~12個、好ましくは1~6個、より好ましくは1~4個、特に好ましくは1~3個である。
【0020】
本明細書において、「C1~C12アルキルオキシカルボニルアルキレン」又は「C1~C12アルキレンオキシカルボニルアルキレン」のアルキルオキシ又はアルキレンオキシの炭素数の範囲は、C1~C12であり、より好ましくはC1~C8、更に好ましくはC1~C6、特に好ましくはC1~C4の範囲が挙げられる。その具体例としては、例えば、メトキシカルボニルメチレン、エトキシカルボニルメチレン、n-プロポキシカルボニルメチレン、n-ブトキシカルボニルメチレン、n-ペンチルオキシカルボニルメチレン、n-ヘキルオキシカルボニルメチレン、n-ヘプチルオキシカルボニルメチレン、n-オクチルオキシカルボニルメチレン、n-ノニルオキシカルボニルメチレン、n-デシルオキシカルボニルメチレン、n-ウンデシルオキシカルボニルメチレン、n-ドデシルオキシカルボニルメチレン等の直鎖のもの、イソプロポキシカルボニルメチレン、イソブトキシカルボニルメチレン、sec-ブトキシカルボニルメチレン、t-ブトキシカルボニルメチレン、2-メチルブトキシカルボニルメチレン、イソオクチルオキシカルボニルメチレン、t-オクチルオキシカルボニルメチレン、2-エチルヘキシルオキシカルボニルメチレン等の分岐鎖のものが挙げられる。
【0021】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「C3~C12シクロアルキル」の炭素数の範囲は、C3~C12であり、より好ましくはC3~C8、更に好ましくはC3~C6、特に好ましくはC4~C6の範囲が挙げられる。その具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル及びシクロドデシルが挙げられる。C3~C12シクロアルキルは、好ましくはシクロペンチル又はシクロヘキシルである。C3~C12シクロアルキルは、非置換であるか、又はハロゲン若しくはC1~C4アルキルで置換されていてもよく、ハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換基としてのハロゲンは、好ましくはフッ素原子又は塩素原子であり、より好ましくは塩素原子である。置換基としてのC1~C4アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びt-ブチルが挙げられる。置換基としてのC1~C4アルキルは、好ましくはメチル、エチル又はn-プロピルであり、より好ましくはメチル又はエチルである。置換基を有する場合の置換数は、1~5個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個、特に好ましくは1個である。
【0022】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「C3~C12シクロアルキレン」の炭素数の範囲は、C3~C12であり、より好ましくはC3~C8、更に好ましくはC3~C6、特に好ましくはC4~C6の範囲が挙げられる。その具体例としては、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレン、シクロノニレン、シクロデシレン、シクロウンデシレン及びシクロドデシレンが挙げられる。C3~C12シクロアルキレンは、好ましくはシクロペンチレン又はシクロヘキシレンである。C3~C12シクロアルキレンは、非置換であるか、又はハロゲン若しくはC1~C4アルキルで置換されていてもよく、ハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。置換基としてのハロゲンは、好ましくはフッ素原子又は塩素原子であり、より好ましくは塩素原子である。置換基としてのC1~C4アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びt-ブチルが挙げられる。置換基としてのC1~C4アルキルは、好ましくはメチル、エチル又はn-プロピルであり、より好ましくはメチル又はエチルである。置換基を有する場合の置換数は、1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個、特に好ましくは1個である。
【0023】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「C6~C14アリール」は、少なくとも1個の芳香族環を有する1価の基である。その具体例としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラニル、フェナントレン等が挙げられる。好ましくはフェニル、ビフェニル又はナフチルであり、より好ましくはフェニル又はナフチルである。C6~C14アリールは、非置換であるか、又はハロゲン若しくはC1~C4アルキルで置換されていてもよく、ハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。置換基としてのハロゲンは、好ましくはフッ素原子又は塩素原子であり、より好ましくは塩素原子である。置換基としてのC1~C4アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びt-ブチルが挙げられる。置換基としてのC1~C4アルキルは、好ましくはメチル、エチル又はn-プロピルであり、より好ましくはメチル又はエチルである。置換基を有する場合の置換数は、1~5個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個、特に好ましくは1個である。
【0024】
本明細書において、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、「C6~C14アリーレン」は、少なくとも1個の芳香族環を有する2価の基である。その具体例としては、フェニレン、ナフチレン、アントラニレン、フェナントラニレン等が挙げられる。好ましくはフェニレン、ナフチレンであり、より好ましくはフェニレン、ナフチレンである。C6~C14アリーレンは、非置換であるか、又はハロゲン若しくはC1~C4アルキルで置換されていてもよく、ハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。置換基としてのハロゲンは、好ましくはフッ素原子、塩素原子又は臭素原子であり、より好ましくはフッ素原子又は塩素原子である。置換基としてのC1~C4アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びt-ブチルが挙げられる。置換基としてのC1~C4アルキルは、好ましくはメチル、エチル又はn-プロピルであり、より好ましくはメチル又はエチルである。置換基を有する場合の置換数は、1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個、特に好ましくは1個である。
【0025】
〔(b2)イミダゾール化合物をエポキシ樹脂にアダクトさせた化合物〕
イミダゾール化合物は、分子内に第1級アミノ基を有さないイミダゾール化合物であり、このようなイミダゾール化合物として、1位の窒素原子が非置換であるイミダゾール環を含む化合物、例えば2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、及び2-メチルイミダゾリン;並びに、1位の窒素原子が置換されたイミダゾール化合物、例えば1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、及び1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト等が挙げられる。
イミダゾール化合物をエポキシ樹脂にアダクトさせた化合物におけるエポキシ樹脂としては、硬化性樹脂(A)に例示したものが挙げられる。
イミダゾール化合物をエポキシ樹脂にアダクトさせた化合物の市販品としては、EH-5011S(株式会社ADEKA製)、FXR-1121(株式会社T&K TOKA製)が挙げられる。
【0026】
〔(b3)多価アミン化合物をエポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及び尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物にアダクトさせた化合物〕
(多価アミン化合物)
多価アミン化合物は、少なくとも2個の第1級アミノ基を有する化合物であり、2個の第1級アミノ基を有するジアミン化合物、3個の第1級アミノ基を有するトリアミン化合物等が挙げられる。
【0027】
(2個の第1級アミノ基を有するジアミン化合物)
2個の第1級アミノ基を有するジアミン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられる。また、2個の第1級アミノ基を有するジアミン化合物の具体例としては、下記式(5a)で示される多価アミン化合物が挙げられる。
【0028】
【化3】
式中、Lは、C
1~C
12アルキレン、1つ若しくはそれ以上のNH(イミノ基)若しくはO原子(酸素原子)で非連続的に中断されたC
2~C
12アルキレン(N原子(窒素原子)に結合するH原子(水素原子)は、アミノ基又はC
1~C
12アルキルアミノ基で置換されていてもよい)、C
3~C
12シクロアルキレン、C
1~C
12アルキレン-C
3~C
12シクロアルキレン、C
1~C
12アルキレン-C
3~C
12シクロアルキレン-C
1~C
12アルキレン、C
3~C
12シクロアルキレン-C
1~C
4アルキレン-C
3~C
12シクロアルキレン、C
6~C
14アリーレン、C
1~C
4アルキレン-C
6~C
14アリーレン、C
1~C
4アルキレン-C
6~C
14アリーレン-C
1~C
4アルキレン、又はC
6~C
14アリーレン-C
1~C
4アルキレン-C
6~C
14アリーレン(ここで、アルキレンは、直鎖又は分岐鎖であり、ハロゲンで置換されていてもよく、C
3~C
12シクロアルキレン又はC
6~C
14アリーレンは、非置換であるか、又はハロゲン若しくはC
1~C
4アルキルで置換されていてもよい。)である。
【0029】
脂肪族ジアミンのうち、式(5a)において、LがC1~C12アルキレンである化合物として、具体的には、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、プロパン-1,2-ジアミン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン等が挙げられる。
【0030】
脂肪族ジアミンのうち、式(5a)において、Lが1つ若しくはそれ以上のO原子(酸素原子)で非連続的に中断された直鎖若しくは分岐鎖のC2~C12のアルキレンである化合物として、具体的には、例えば、2,2’-オキシビス(エチルアミン)、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、1,11-ジアミノ-3,6,9-トリオキサウンデカン、ビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,4-ブタンジオールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、エチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル等が挙げられる。
【0031】
脂肪族ジアミンのうち、式(5a)において、Lが1つ若しくはそれ以上のNH(イミノ基)で非連続的に中断された直鎖若しくは分岐鎖のC2~C12のアルキレン(N原子(窒素原子)に結合するH原子(水素原子)は、アミノ基又はC1~C12のアルキルアミノ基で置換されていてもよい)である化合物として、具体的には、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、3,3’-ジアミノジプロピルアミン、ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン等が挙げられる。
【0032】
脂環族ジアミンとして、具体的には、例えば、イソホロンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、trans-1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)1,4-ジアミノ-3,6-ジエチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0033】
芳香族ジアミンとして、具体的には、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノ-6-〔2’-メチルイミダゾリル-(1’)〕-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-〔2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)〕-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-〔2’-エチル4’-メチルイミダゾリル-(1’)〕-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-〔2’-メチルイミダゾリル-(1’)〕-エチル-s-トリアジン、イソシアヌル酸付加物等の1位の窒素原子が置換されたイミダゾリル基を有する第1級ジアミン、ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0034】
3個の第1級アミノ基を有するトリアミン化合物として、具体的には、例えば、トリス(4-アミノフェニル)アミン、トリス(3-アミノプロピル)アミン、下記式で示されるトリス(2-アミノエチル)アミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキルポリアミン等が挙げられる。
【化4】
【0035】
(b3)における多価アミン化合物は、ヒドラジン(NH2NH2)、ヒドラジド化合物、及び(b1)カルバジド化合物を含まない。(b3)における多価アミン化合物は、ヒドラジノ基(NH2NH-)を有する化合物を含まないことが好ましい。ここで、ヒドラジド化合物は、後述のヒドラジド化合物に例示するものが挙げられる。また、(b3)以外の多価アミン化合物は、多価アミン化合物は、ヒドラジン、ヒドラジド化合物、及び(b1)カルバジド化合物が含まれる。しかし、(b3)以外の多価アミン化合物は、多価アミン化合物は、ヒドラジン、ヒドラジド化合物、及び(b1)カルバジド化合物を含まなくてもよい。
【0036】
(エポキシ樹脂)
多価アミン化合物をエポキシ樹脂にアダクトした化合物におけるエポキシ樹脂としては、硬化性樹脂(A)に例示したものが挙げられる。
【0037】
(イソシアネート化合物)
多価アミン化合物をイソシアネート化合物にアダクトした化合物におけるイソシアネート化合物としては、後述のイソシアネート化合物(C)に例示するものが挙げられる。
【0038】
多価アミン化合物とエポキシ樹脂とのアダクト化物との市販品としては、EH-5001P、EH-4370S、EH-5015S、EH-4375S、EH-5030S、EH-5057P、EH-4358S(以上株式会社ADEKA製)、FXR-1020、FXR-1030、FXR-1081(以上株式会社T&K TOKA製)が挙げられる。
【0039】
(好ましい態様)
硬化性樹脂(A)との反応性がより高まり、硬化時間をより短縮することが可能である観点から、(b3)多価アミン化合物をエポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及び尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物にアダクトさせた化合物としては、多価アミン化合物をイソシアネート化合物にアダクトさせた化合物が好ましい。
【0040】
[(b4)2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶、(b5)1種以上のモノ又は多価アミン化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶及び(b6)1種以上のイミダゾール化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶]
2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶、1種以上のモノ又は多価アミン化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶並びに1種以上のイミダゾール化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶は、混合結晶に含まれる単独の成分の結晶系とは異なる結晶系を有する混合結晶である。混合結晶のX線回折スペクトルと、混合結晶に含まれる原料の1種類のモノ又は多価アミン化合物のX線回折スペクトルとを比較して、原料に由来するピーク以外のピークの存在を確認することにより、混合結晶の存在を推認することができる。
これらの混合結晶における、ヒドラジド化合物としては、後述のヒドラジド化合物に例示するものが挙げられる。
(b5)1種以上のモノ又は多価アミン化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶における多価アミン化合物としては、(b3)多価アミン化合物をエポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及び尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物にアダクトさせた化合物に例示したものが挙げられる。
(b6)1種以上のイミダゾール化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶におけるイミダゾール化合物としては、(b2)イミダゾールをエポキシ樹脂にアダクトさせた化合物に例示したものが挙げられる。
【0041】
(ヒドラジド化合物)
ヒドラジド化合物としては、分子内に1個のヒドラジド基を有する一塩基酸ヒドラジド、分子内に2個のヒドラジド基を有する二塩基酸ヒドラジド、分子内に3個のヒドラジド基を有する三塩基酸ヒドラジド、分子内に4個以上のヒドラジド基を有する多官能ヒドラジドが挙げられる。
【0042】
一塩基酸ヒドラジドとして、具体的には、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、ペンタン酸ヒドラジド、ラウリル酸ヒドラジド、シクロヘキサンカルボヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、ベンゼンスルホノヒドラジドが挙げられる。
【0043】
二塩基酸ヒドラジドとしては、具体的には、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデンカンニ酸ジヒドラジド、ヘキサデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ酸ジヒドラジド、1,4-ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4’-ビスベンゼンジヒドラジド、ハイドロキノンジグリコール酸ジヒドラジド、レゾルシノールジグリコール酸ジヒドラジド、カテコールジグリコール酸ジヒドラジド、4,4’-エチリデンビスフェノール-ジグリコール酸ジヒドラジド、4,4’-ビニリデンビスフェノール-ジグリコール酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0044】
三塩基酸ヒドラジドとしては、例えば、1,3,5-トリス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等の1,3,5-トリス(2-ヒドラジノカルボニルアルキル)イソシアヌレート等が挙げられる。
多官能ヒドラジドとしては、例えば、ポリアクリル酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0045】
また、ヒドラジド化合物が2種以上のヒドラジド化合物の組み合わせである場合、ヒドラジド化合物の少なくとも1種が二塩基酸ジヒドラジドであることが好ましく、特にすべてのヒドラジド化合物が二塩基酸ジヒドラジドであることがより好ましい。すべてのヒドラジド化合物が二塩基酸ジヒドラジドである、ヒドラジド化合物の組合せとしては、例えば、アジピン酸ジヒドラジドとセバシン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドとデカン二酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドとデカン二酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドとドデカン二酸ジヒドラジドの組合せ等を挙げることができ、セバシン酸ジヒドラジドとドデカン二酸ジヒドラジドの組合せがより好ましい。
【0046】
2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶は、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の20~25°の間で強い回折ピークが2~3本程度観察される結晶変態を有する。また、混合結晶に用いられるヒドラジド化合物は、結晶性ヒドラジド化合物であることが好ましい。ここで、結晶性ヒドラジド化合物は、CuKα線(波長1.541Å)に対するX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度2θ(誤差2θ±0.2°)の5.0~7.5°の範囲にピークを有する、ヒドラジド化合物をいう。
【0047】
(混合結晶の組成等)
混合結晶に用いられる、モノ若しくは多価アミン化合物、イミダゾール化合物及び/又はヒドラジド化合物の併用割合は、硬化させるべきエポキシ樹脂の種類、用途、要求される硬化時間や硬化温度等の各種条件に応じて適宜決定できる。例えば、全混合結晶中に1種の化合物が通常1~99重量%、好ましくは10~90重量%、より好ましくは30~70重量%含有されるように、2種以上の化合物を併用するのがよい。
【0048】
(混合結晶に含まれる更なる成分)
混合結晶は、混合結晶に含まれる化合物と錯体形成可能な金属元素をさらに含むことができる。金属元素を含む混合結晶は、液安定性の改善効果をさらに向上させることができるため好ましい。好ましくは、2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶と、当該2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶に含まれるヒドラジド化合物と錯体形成可能な金属元素とを含む、2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶である。
【0049】
金属元素として、好ましくは、アルミニウム、チタン、スズ、ジルコニウム、亜鉛、鉄、マグネシウム、コバルト、ニッケル、ビスマス、モリブデン、銅、アンチモン、バリウム、ホウ素、マンガン、インジウム、セシウム、ホルミウム、イットリウム、シリコン、カルシウム、銀、ゲルマニウム、及び金よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。金属元素として、より好ましくは、アルミニウム、チタン、スズ、ジルコニウム、亜鉛、鉄、マグネシウム、コバルト、ニッケル、ビスマス、モリブデン、銅、アンチモン、バリウム及びホウ素よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。金属元素は、1種又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。また、金属元素は、金属酸化物、金属水酸化物の形態のものを用いることができる。
【0050】
金属元素の含有量は、混合結晶と金属元素との合計量に対して、好ましくは0.1~20.0質量%、より好ましくは1.0~10.0質量%である。金属元素の含有量が、混合結晶に含まれる化合物と金属元素との合計に対して、0.1~20.0質量%であると、金属元素と混合結晶に含まれる化合物、例えば結晶性ヒドラジド化合物が良好な錯体を形成すると推測される。
【0051】
(混合結晶の製造方法)
混合結晶の製造方法は、原料である2種以上のアミン化合物(即ち、2種以上のヒドラジド化合物の組合せ、1種以上のモノ若しくは多価アミン化合物と1種以上のヒドラジド化合物との組合せ、又は、1種以上のイミダゾール化合物と1種以上のヒドラジド化合物との組合せ)を融点以上に加熱溶融し混合して、混合物を得る工程、及び該混合物を冷却して固化する工程を含む方法である。具体的には、混合結晶の製造方法は、(b4’)2種以上のヒドラジド化合物の組み合わせ、(b5’)1種以上のモノ若しくは多価アミン化合物(分子内に1個以上の第1級アミノ基を有する第1級モノ、ジ及びポリアミン化合物、分子内に1個以上の第2級アミノ基を有する第2級モノ、ジ及びポリアミン化合物)と、1種以上のヒドラジド化合物との組み合わせ、並びに、(b6’)1種以上のイミダゾール化合物と1種以上のヒドラジド化合物との組み合わせ、からなる群より選択される原料である2種以上のアミン化合物を、融点以上に加熱溶融し混合して、混合物を得る工程、及び該混合物を冷却して固化する工程を含む方法である。
【0052】
加熱溶融及び混合する工程においては、原料である2種以上のアミン化合物を加熱する温度は、特に限定されないが、原料である2種以上のアミン化合物の混合物がほぼ液体の状態となる温度であることが好ましい。原料である2種以上のアミン化合物がほぼ液体の状態となる温度としては、原料である2種以上のアミン化合物の融点付近の温度、例えば融点よりも10℃程度低い温度から該融点よりも10℃程度高い温度であることが好ましい。ここで、原料である2種以上のアミン化合物の融点は、原料である2種以上のアミン化合物の融点のうち、一番高い融点の温度をいう。
【0053】
原料である2種以上のアミン化合物の溶融混合物を冷却して固化する工程における冷却速度は、好ましくは20~0.01℃/分、より好ましくは10~0.05℃/分、さらに好ましくは5~0.1℃/分である。冷却は多段階、例えば2段階で行っても良い。たとえば、1段目に100~50℃まで冷却し、その温度で結晶を成長させ、2段目で室温まで冷却することが可能である。
【0054】
また、この原料である2種以上のアミン化合物の混合結晶と、原料であるアミン化合物と錯体形成可能な金属を含む、混合結晶の製造方法は、モノ若しくは多価アミン化合物、イミダゾール化合物、又はヒドラジド化合物と、このモノ若しくは多価アミン化合物、イミダゾール化合物、又はヒドラジド化合物と錯形成可能な金属元素とを加熱溶融し混合して、混合物を得る工程と、混合物を恒温処理する工程と、混合物を冷却して固化体を得る工程とを含む。
【0055】
加熱溶融し混合して、混合物を得る工程及び混合物を冷却して固化体を得る工程については、上記のとおりである。
混合物を恒温処理する工程は、混合物を、一定時間、一定の温度で恒温処理を行う工程である。恒温処理とは、混合物を一定の温度(誤差範囲±10℃)で一定の時間保持することを意味する。恒温処理する温度は、特に限定されないが、好ましくは100~280℃、より好ましくは130~250℃である。恒温処理する時間は、特に限定されないが、硬化剤として使用する際の使用目的等に合わせて最適な処理時間、例えば0.01~10時間とすることができる。
【0056】
さらに混合結晶の製造方法は、冷却して得られた固化体を粉砕し、平均粒子径が0.1~20.0μmの粒子状に粉砕する工程を含むことが好ましい。
粉砕する方法としては、固化体は、例えば高圧粉砕機を使用して粉砕することが好ましい。高圧粉砕機としては、例えばクロスジェットミル(栗源鉄工所社製)、カウンタージェットミル(ホソカワミクロン社製)、ナノジェットマイザー(アイシンナノテクノロジーズ社製)等が挙げられる。
【0057】
(潜在硬化剤(B)の好ましい態様)
潜在硬化剤(B)は、粒状の形態を有することが好ましい。潜在硬化剤(B)の平均粒子径は、特に制限されるものではないが、好ましくは0.1~20.0μmであり、より好ましくは0.2~10.0μmである。なお、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定装置によって求めることができ、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定における体積平均値D50(D50は累積体積が50%になるときの粒子径、すなわちメジアン径)として測定した値である。粒状の形態を有する潜在硬化剤(B)は、潜在硬化剤(B)を粉砕することにより得ることができる。
【0058】
3.イソシアネート化合物(C)
イソシアネート化合物は、少なくとも1個のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物であり、特に限定されるものではないが、モノイソシアネート化合物、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、テトライソシアネート化合物等が挙げられる。
【0059】
(モノイソシアネート化合物)
モノイソシアネート化合物としては、下記式(1a)で示される化合物が挙げられる。
【化5】
式(1a)において、X
4は、C
1~C
12アルキル、1つ若しくはそれ以上のO原子(酸素原子)で非連続的に中断されたC
2~C
12アルキル、C
1~C
12アルキルオキシカルボニルアルキレン、C
3~C
12シクロアルキル、C
1~C
12アルキル-C
3~C
12シクロアルキレン、C
3~C
12シクロアルキル-C
1~C
12アルキレン-C
3~C
12シクロアルキレン、C
6~C
14アリール、C
1~C
4アルキル-C
6~C
14アリーレン、C
6~C
14アリール-C
1~C
4アルキレン-C
6~C
14アリーレン(ここで、アルキレンは、直鎖又は分岐鎖であり、ハロゲンで置換されていてもよく、C
3~C
12シクロアルキル、C
3~C
12シクロアルキレン、C
6~C
14アリール、又はC
6~C
14アリーレンは、非置換であるか、又はハロゲン若しくはC
1~C
4アルキルで置換されている)、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキルである。
【0060】
モノイソシアネート化合物としての(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネートとしては、下記式(1b)で示される化合物が挙げられる。
【化6】
式(1b)において、R
6は水素原子又はメチル基を示し、R
7はC
1~C
6アルキレンを示す。R
7のC
1~C
6アルキレンの炭素数の範囲は、好ましくはC
2~C
6、より好ましくはC
3~C
6である。
【0061】
モノイソシアネート化合物として、具体的には、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、n-ヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、2-エチルヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘプチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、イソシアネート酢酸エチル、イソシアネート酢酸ブチル、(S)-(-)-2-イソシアネートプロピオン酸メチル、イソシアン酸フェニル、ルイソシアン酸1-ナフチル、イソシアン酸4-クロロフェニル、イソシアン酸4-フルオロフェニル、イソシアン酸フェネチル、イソシアン酸p-トリル、イソシアン酸m-トリル、イソシアン酸3,5-ジメチルフェニル、イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル等が挙げられる。
【0062】
(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネートとして、具体的には、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
(ジイソシアネート化合物)
ジイソシアネート化合物としては、下記式(2a)で示される化合物が挙げられる。
【化7】
式(2a)において、X
5は、C
1~C
12アルキレン、1つ若しくはそれ以上のO原子(酸素原子)で非連続的に中断されたC
2~C
12アルキレン、C
1~C
12アルキレンオキシカルボニルアルキレン、C
3~C
12シクロアルキレン、C
1~C
12アルキレン-C
3~C
12シクロアルキレン、C
1~C
12アルキレン-C
3~C
12シクロアルキレン-C
1~C
12アルキレン、C
3~C
12シクロアルキレン-C
1~C
12アルキレン-C
3~C
12シクロアルキレン、ジC
3~C
12シクロアルカンジイル、C
6~C
14アリーレン、C
1~C
4アルキレン-C
6~C
14アリーレン-C
1~C
4アルキレン、又はC
6~C
14アリーレン-C
1~C
4アルキレン-C
6~C
14アリーレン(ここで、アルキレンは、直鎖又は分岐鎖であり、ハロゲンで置換されていてもよく、C
3~C
12シクロアルキレン又はC
6~C
14アリーレンは、非置換であるか、又はハロゲン若しくはC
1~C
4アルキルで置換されている)である。
【0064】
ジイソシアネート化合物として、具体的には、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、水添キシレンジイソシアネート(水添XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリジンジイソシアネート(TPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、3,5,5-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、4,4’-ジイソシアネート3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジイソシアネート3,3’-ジメチルジフェニルメタン、2,2-ビス(4-イソシアネートフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,4-ジイソシアネートトルエン、1,3-ビス(2-イソシアネート2-プロピル)ベンゼン、トリレン-2,6-ジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,5-ジイソシアネートナフタレン等が挙げられる。
【0065】
(トリイソシアネート化合物)
トリイソシアネート化合物としては、3末端にイソシアネート基を有する、イソシアヌレート構造、ビウレット構造又はアダクト構造を有する化合物が挙げられる。イソシアヌレート構造を有するトリイソシアネート化合物としては、下記式(3a)で示されるイソシアヌレート構造を有する化合物が挙げられる。
【化8】
式中、R
2は、同一又は異なり、直鎖又は分岐鎖のC
1~C
12アルキレンである。
【0066】
ビウレット構造を有するトリイソシアネート化合物としては、下記式(3b)で示される化合物が挙げられる。
【化9】
式中、R
3は、同一又は異なり、直鎖又は分岐鎖のC
1~C
12アルキレンである。
【0067】
アダクト構造を有するトリイソシアネート化合物としては、下記式(3c)で示される化合物が挙げられる。
【化10】
式中、R
4は、同一又は異なり、直鎖又は分岐鎖のC
1~C
12アルキレンであり、R
5は、CHである。
【0068】
トリイソシアネート化合物として、具体的には、例えば、トリ(イソシアネートメチル)イソシアヌレート、トリ(イソシアネートエチル)イソシアヌレート、トリ(イソシアネートプロピル)イソシアヌレート、トリ(イソシアネートブチル)イソシアヌレート、トリ(イソシアネートヘキシル)イソシアヌレート、N,N’-2-tris-イソシアネートメチルマロン酸アミド、N,N’-2-tris-イソシアネートヘキシルマロン酸アミド等が挙げられる。
【0069】
(テトライソシアネート化合物)
テトライソシアネート化合物としては、下記式(4a)で示される化合物が挙げられる。
【化11】
式中、X
3は、C
3~C
12シクロアルキル-C
1~C
12アルキレン-C
3~C
12シクロアルキル、又はC
6~C
14アリール-C
1~C
4アルキレン-C
6~C
14アリール(アルキレンは、直鎖又は分岐鎖であり、ハロゲンで置換されていてもよく、C
3~C
12シクロアルキル又はC
6~C
14アリールは、非置換であるか、又はハロゲン若しくはC
1~C
4アルキルで置換されていてもよい)から誘導される4価の基である。
【0070】
また、テトライソシアネート化合物としては、下記式(4b)で示されるテトライソシアネートシランが挙げられる。
【化12】
【0071】
テトライソシアネート化合物として、具体的には、例えば、4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート、テトライソシアネートシラン等が挙げられる。
【0072】
4.製造方法
硬化性樹脂組成物の製造方法は、硬化性樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を含む硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を予め反応させることなく、硬化性樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)、イソシアネート化合物(C)及び任意成分を混合する工程を含む。
混合方法は、硬化性樹脂(A)及びイソシアネート化合物(C)を撹拌混合してから、潜在性硬化剤(B)を撹拌混合してもよく、硬化性樹脂(A)及び潜在性硬化剤(B)を撹拌混合してから、イソシアネート化合物(C)を撹拌混合してもよい。
混合の際の温度が、混合する潜在性硬化剤(B)の融点付近での温度、又は、反応活性温度帯の温度であると、硬化性樹脂(A)と潜在性硬化剤(B)とが反応してしまうため好ましくない。また、混合の際の温度が低温すぎると、樹脂の流動性が抑制され攪拌しにくくなる。よって混合の際の温度は、0~40℃が好ましく、10~40℃がより好ましく、20~40℃がさらに好ましい。
【0073】
従来の硬化性樹脂組成物の製造方法においては、潜在性硬化剤及びイソシアネート化合物を予め反応させ、潜在性硬化剤の表面をイソシアネート化合物で覆ったものを、硬化性樹脂組成物に加えていた。
しかしながら、本発明では、硬化性樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を混合する工程を含むのみで、簡便に硬化性樹脂組成物を製造することができる。その理由としては、硬化性樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を混合すると、潜在性硬化剤(B)とイソシアネート化合物(C)との反応性が高いために、混合した組成物中で、潜在性硬化剤の表面のアミノ基とイソシアネート化合物の反応が進むからである。
【0074】
5.潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)の状態
硬化性樹脂組成物は、上述のとおり、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を予め反応させることなく、硬化性樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を混合することにより製造される。このように硬化性樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を混合した後は、潜在性硬化剤(B)の表面アミンの量が減少することが確認されている。ここで、表面アミン量とは、粒子状の潜在性硬化剤(B)の表面又は表層に存在するアミノ基の量をいう。したがって、潜在性硬化剤(B)の一部又は全部とイソシアネート化合物(C)の一部又は全部とは、反応している。好ましくは、潜在性硬化剤(B)の全部とイソシアネート化合物(C)の全部とが反応している。例えば、潜在性硬化剤(B)の全部が反応している場合、硬化性樹脂組成物中に潜在性硬化剤(B)は未反応の状態では含まれていないが、潜在性硬化剤(B)とイソシアネート化合物(C)との反応物が確認されれば、本願発明の硬化性樹脂組成物であるとする。
このように潜在性硬化剤(B)の一部又は全部とイソシアネート化合物(C)の一部又は全部とが、反応していると、潜在性硬化剤(B)の表面の少なくとも一部にはイソシアネート化合物(C)が反応していることになる。すなわち、潜在性硬化剤(B)とイソシアネート化合物(C)との反応性が高いために、潜在性硬化剤(B)とイソシアネート化合物(C)とを混合した後、時間の経過とともにイソシアネート化合物(C)が潜在性硬化剤(B)の表面に付加すると考えられる。したがって、硬化性樹脂組成物中では、時間の経過とともに、潜在性硬化剤(B)の表面のアミン量が減少していくこととなる。
【0075】
潜在性硬化剤(B)とイソシアネート化合物(C)とが反応している状態とは、イソシアネート化合物(C)中の反応イソシアネート基が潜在性硬化剤(B)の第1級アミノ基、及び/又は、第2級アミノ基と反応し、ウレア結合、ビュウレット結合、又はアロファネート結合が形成される状態であると推測される。
【0076】
6.配合量
硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂(A)100質量部に対して、潜在性硬化剤(B)を1~100質量部含むことが好ましく、2~70質量部含むことがより好ましく、2~50質量部含むことがさらに好ましい。また硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂(A)100質量部に対して、イソシアネート化合物(C)を0.0002~28質量部ことが好ましく、0.002~28質量部含むことがより好ましく、0.02~28質量部含むことがさらに好ましい。このような配合割合であると、液安定性及び組成物の硬化性の観点から好ましい。
【0077】
また、硬化性樹脂組成物は、潜在性硬化剤(B)100質量部に対して、イソシアネート化合物(C)を0.02~28質量部含むことが好ましく、0.04~28質量部含むことがより好ましく、0.05~25質量部含むことがさらに好ましい。このような配合割合であると、液安定性及び組成物の硬化性の観点から好ましい。
【0078】
7.その他の成分
硬化性樹脂組成物は、上記成分に加え、光重合開始剤(D)と、その他必要に応じて無機充填剤(E)、有機充填剤(F)、カップリング剤(G)とを含むことが好ましい。
【0079】
〔光重合開始剤(D)〕
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン等が挙げられる。また、光重合開始剤として、市販されている光ラジカル重合開始剤を使用してもよい。市販されている光ラジカル重合開始剤としては、例えば、イルガキュア907、イルガキュア819、イルガキュア651、イルガキュア369、ベンソインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ルシリンTPO(以上、いずれもBASFジャパン社製)等が挙げられる。
【0080】
〔無機充填剤(E)〕
無機充填剤としては、特に限定されず、例えば、球状シリカ、球状アルミナ、球状酸化チタン、球状酸化アルミニウム、球状炭酸カルシウム等が挙げられる。なかでも、分散性に優れ、液晶滴下工法に適するシール剤の接着性、硬化物の耐湿性を向上させる効果に優れることから、球状シリカが好適である。
【0081】
硬化性樹脂組成物の各成分の配合割合としては、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、(D)光重合開始剤が、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.5~7質量部、さらに好ましくは0.8~4質量部である。また、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、(E)無機充填剤が、好ましくは0~40質量部、より好ましくは2~30質量部、さらに好ましくは3~20質量部である。また、液晶シール剤組成物の全質量中に、(D)光重合開始剤は0.5~3質量%であることが好ましい。また、液晶シール剤組成物の全質量中に、(E)無機充填剤は0~40質量%であることが好ましい。
【0082】
硬化性樹脂組成物は、特に無機充填剤等の固形物の均一、完全なる分散に留意し、ペイントロール等を用いて充分に混練して製造することが好ましい。
【0083】
〔有機充填剤(F)〕
有機充填剤としては、特に限定されず、例えば、モノマー又はポリマーの微粒子、具体的にはポリエステル微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子、ポリウレタン微粒子が挙げられる。なかでも、透明性に優れることから、アクリル樹脂フィラーが好適である。
【0084】
〔カップリング剤(G)〕
カップリング剤としては、特に限定されず、例えば、シランカップリング剤が挙げられる。
【0085】
〔その他の成分〕
硬化性樹脂組成物には、上記樹脂以外に必要に応じて、シリコーン樹脂、ウレア樹脂、イミド樹脂、ガラス等を含有してもよい。
【0086】
また、硬化性樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤として、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、無機粒子、老化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等を配合してもよい。
【0087】
〔液晶表示パネル〕
硬化性樹脂組成物は、細線化及び接着性の多様化の要求を満たすとともに、セルの切り出し時及び液晶セル駆動用のICの実装時等の剥がれを抑制できる接着強度を発現することができ、液晶表示パネルの製造に好適に用いることができる。このように、硬化性樹脂組成物は、液晶表示素子用シール剤組成物として使用することが好ましい。また、液晶表示パネルは、対向するガラス基板と、対向するガラス基板を接着する硬化性樹脂組成物の硬化物と、対向するガラス基板及び硬化性樹脂組成物の硬化物で封止された液晶とを備える。
【0088】
〔液晶表示パネルの製造方法〕
液晶表示セル等の液晶表示素子の製造方法の一つとして、液晶滴下工法が知られている。液晶滴下工法は、例えば、一方の基板上に液晶表示素子用シール剤の枠を形成し、その中に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせることによって、液晶を封止し液晶表示素子を製造する方法である。最近では、光熱併用型の硬化性樹脂組成物が使用され、二つの基板で挟んだ後、第一段階として、紫外線照射等により硬化性樹脂組成物を光硬化させ、第二段階として加熱硬化させる手法が採用されている。また、液晶を滴下した後、硬化性樹脂組成物を光硬化のみで液晶表示セルを製造する方法、熱硬化のみで液晶表示セルを製造する方法も検討されている。
また、その他の製造方法の一つとして、液晶注入法も知られている。液晶注入工法は、例えば、シール剤の枠の形成時に液晶の注入口となる部分を設け、基材を貼り合わせ熱硬化をした後に液晶を注入し、その後注入口を封止剤で封口し光硬化して液晶表示セルを製造する方法である。
硬化性樹脂組成物は、上記の工法に限られるものではなく、液晶パネルの製造方法に広く好適に用いられる。
【実施例0089】
[製造例1:1,1’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(2-アミノエチル)ウレア(多価アミンとイソシアネート化合物とのアダクト物(製造物1)の製造方法]
【化13】
【0090】
エタノール118gにヘキサメチレンジイソシアナート17.17g溶解した溶解液Aと、エタノール150gにエチレンジアミン61.36gを溶解した溶解液Bを用意した。三口フラスコで溶解液Bを25℃で制御し撹拌しているところに溶解液Aを1.4g/分のペースで滴下した。溶解液Aの滴下終了後、反応液をフーリエ変換赤外分光光度計にて測定し、イソシアナート基由来の2250cm-1付近のピークが無い事を確認し反応終了した。ヘキサメチレンジイソシアナート1モルに対して、エチレンジアミン10モル(モル比で1:10)となるように反応させた。
反応終了後、ろ紙(桐山社製No.4)を使い桐山ロート(桐山社製)にてろ過し、脱液を行い、得られた濾取物をエタノール100mlで洗浄し、更にろ過を行い、得られた濾取物を真空オーブンにて50℃で乾燥させた。乾燥後室温まで自然冷却し、高圧粉砕機(商品名:ナノジェットマイザー、アイシンナノテクノロジーズ社製)で粉砕し、平均粒径(メジアン径)2.2μmの上記化学式(A-5)多価アミンとイソシアネート化合物とのアダクト物(以下、「製造物1」ともいう)を製造した。
【0091】
[製造例2:多価アミンと尿素とのアダクト物(製造物2)の製造方法]
1Lのナスフラスコにm-キシリレンジアミン750g(5.5mol)と尿素50g(0.832mol)を仕込み、175℃で5.5時間攪拌した。その後室温まで冷却した。THF(テトラヒドロフラン)500mlを加え攪拌し濾過を行った。ろ取物をTHF600mlで攪拌洗浄し、再度ろ過をおこなった。ここで、得られたろ液にトルエン2000gを加え、析出してきた結晶をろ過した。得られた濾取物を50℃で真空乾燥したものを高圧粉砕機(商品名:ナノジェットマイザー、アイシンナノテクノロジーズ社製)で粉砕し、平均粒径(メジアン径)2.0μmの多価アミンと尿素とのアダクト物(以下、「製造物2」ともいう)を製造した。
【0092】
[製造例3:4,4’-ヘキサメチレンビス(セミカルバジド)(製造物3)の製造方法]
【化14】
【0093】
エタノール150gにヘキサメチレンジイソシアネートを16.8g溶解した溶解液Aと、エタノール150gにヒドラジン10gを溶解した溶解液Bを用意した。溶解液Bを25℃で制御し撹拌しているところに溶解液Aを1.4g/分のペースで滴下した。溶解液Aの滴下終了後、反応液をフーリエ変換赤外分光光度計にて測定し、イソシアネート基由来の2250cm-1付近のピークが無いことを確認し反応終了とした。ヘキサメチレンジイソシアネート1モルに対して、ヒドラジンが2モル(モル比で1:2)となるように反応させた。
反応終了後、ろ紙(桐山社製No.4)を使い桐山ロート(桐山社製)にてろ過し、脱液を行い、得られた濾取物をエタノール50mlで洗浄し、更にろ過を行い、得られた濾取物を真空オーブンにて50℃で乾燥させた。乾燥後、高圧粉砕機(商品名:ナノジェットマイザー、アイシンナノテクノロジーズ社製)で粉砕し、平均粒径(メジアン径)2.1μmの上記化学式(B-2)で表されるカルバジド化合物(以下、「製造物3」ともいう)を製造した。
【0094】
[製造例4:2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶(製造物4)の製造方法]
セバシン酸ジヒドラジド(SDH、大塚化学社製)500質量部と、ドデカン二酸ジヒドラジド(DDH、大塚化学社製)500質量部と、酸化アルミニウム(AEROXIDE AluC、日本アエロジル社製)50質量部(アルミニウムの含有量が2.5質量%)を5000mlのセパラブルフラスコに入れ、200℃で加熱し、2種の結晶性ヒドラジド化合物をほぼ液体の状態となるように溶解させた混合物を得た。この混合物を200℃で2時間恒温処理を行った。
その後、混合物を200℃に予備加熱したパイレックス(登録商標)製のガラストレーに移し、200℃のオーブンにセットした。そして、溶融混合物を、オーブン中で、1.0℃/分程度の冷却速度で室温まで冷却して、固化体を得た。室温まで完全に冷却した固化体をカッターミル(オリエント社製)で粗粉砕し、最終的に高圧粉砕機(商品名:ナノジェットマイザー、アイシンナノテクノロジーズ社製)で粉砕し、平均粒子径(メジアン径)2.5μmのヒドラジド化合物(以下、「製造物4」ともいう)を製造した。
【0095】
[実施例1]
部分メタクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(KSM社製、PR-850CRP)100質量部と、無機充填剤としてシリカフィラー(日本触媒社製、シーホスターKE-C050HG)10質量部と、有機充填剤としてアクリル樹脂フィラー(アイカ工業社製、F-351)10質量部と、光ラジカル開始剤(KSM社製、EYレジン KR-2)2質量部及びラジカル重合禁止剤(東京化成工業社製、BHT:ジブチルヒドロキシトルエン)0.15質量部と、シランカップリング剤(信越化学工業社製,KBM-403)1.0質量部、潜在性硬化剤として製造例1で得られた製造物1を15質量部と、イソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネート0.1質量部とを配合し、室温(25℃)でスリーワンモーター(IKA社製、商品名;RW28basic)で均一に分散し硬化性樹脂組成物を得た。
【0096】
[実施例2~41及び比較例1~14]
硬化性樹脂組成物の配合を、表1~5の配合とした以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物を得た。
表中の略号は、以下の通りである。
PR-850CRP:部分メタクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(KSM社製、製品名PR-850CRP)
850S:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製、製品名 エピクロン850S)
KE-C050HG:シリカフィラー(日本触媒社製、製品名シーホスターKE-C050HG)
F-351:アクリル樹脂フィラー(アイカ工業社製、製品名F-351)
KR-2:光ラジカル開始剤(KSM社製、製品名EYレジン KR-2)
BHT:ラジカル重合禁止剤ジブチルヒドロキシトルエン(東京化成工業 社製、製品名BHT)
KBM-403:シランカップリング剤(信越化学工業社製,製品名KBM-403)
TPA-100:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート(旭化成社製、製品名TPA-100)
E402-100:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート(旭化成社製、製品名E402-100)
TSE-100:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート(旭化成 社製、製品名TSE-100)
カレンズAOI:2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社製、製品名カレンズAOI)
EH-5057P:多価アミンとエポキシ樹脂とのアダクト物(株式会社ADEKA製、製品名EH-5057P)
EH-5030S:多価アミンとエポキシ樹脂とのアダクト物(株式会社ADEKA製、製品名EH-5030S)
FXR-1020:多価アミンとエポキシ樹脂とのアダクト物(株式会社T&K TOKA製、製品名FXR-1020)
EH-5011S:イミダゾールとエポキシ樹脂とのアダクト物(株式会社ADEKA製、製品名EH-5011S)
EH-4070S:多価アミンとエポキシ樹脂とのアダクト物(株式会社ADEKA製、製品名EH-4070S)
ADH:アジピン酸ヒドラジド(大塚化学株式会社製)
【0097】
[評価]
(室温保存安定性)
実施例及び比較例の樹脂組成物の粘度を調製直後(2時間以内)に測定し、初期粘度とした。さらに実施例及び比較例の樹脂組成物を25℃で7日間放置後の粘度及び25℃で14日間放置後の粘度をそれぞれ測定し、初期粘度を基準にして粘度の変化率(%)を算出した。
なお、粘度は以下のようにして測定した。RE-105U型粘度計(東機産業社製)に3°×R7.7コーンロータを取り付け、対象となる樹脂組成物0.15mlをコーンロータ内にセットし、2.5rpmで25℃での樹脂組成物の粘度を測定した。測定レンジオーバーの場合は、測定不可とした。なお、測定レンジオーバーの基準は、1,200,000mPa・sである。
【0098】
(加温保存安定性)
(1)40℃加温後保存安定性
実施例及び比較例の樹脂組成物の粘度を調製直後(2時間以内)に測定し、初期粘度とした。その後実施例及び比較例の樹脂組成物を40℃で2時間加温後の粘度、さらに25℃で7日間放置後の粘度及び25℃で14日間放置後の粘度をそれぞれ測定し、初期粘度を基準にして粘度の変化率(%)を算出した。
【0099】
(2)50℃加温後保存安定性
実施例及び比較例の樹脂組成物の粘度を調製直後(2時間以内)に測定し、初期粘度とした。その後実施例及び比較例の樹脂組成物を50℃で2時間加温後の粘度、さらに25℃で7日間放置後の粘度及び25℃で14日間放置後の粘度をそれぞれ測定し、初期粘度を基準にして粘度の変化率(%)を算出した。
なお、粘度は、液安定性の評価と同様にして測定した。
【0100】
(硬化性試験)
実施例及び比較例の樹脂組成物を、1)120℃で1時間硬化処理した場合、及び2)UV3000mJ/cm2処理後120℃1時間硬化処理した場合のそれぞれの硬化片について、硬化性を以下の方法で評価した。
【0101】
上記条件で硬化して得られたそれぞれの硬化片をFT-IR測定装置(Spectrum one、パーキンエルマー社製)にて測定し、硬化性の評価を行った。エポキシ硬化率の算出方法は、以下の式を用いた。式中、樹脂組成物とは、未硬化物である。イソシアネート未添加の樹脂組成物をブランクとし、ブランクとの差を○×で評価した。
【0102】
【0103】
基準ピークの存在する領域;1540~1480cm-1(ピークトップ1510cm-1付近)
エポキシ基のピークの存在する領域;925~895cm-1(ピークトップ910cm-1付近)
○:硬化率がブランクに対して、0~-20%
×:硬化率がブランクに対して、-20%未満
【0104】
(アセトン洗浄性試験)
1mlテルモシリンジに、未硬化の実施例及び比較例の樹脂組成物を0.1ml取り、ガラス板に線状に2cm塗布した。300mlビーカーにアセトンを200ml入れ、その中に、スライドガラスに塗布した組成物が浸かるように立てかけた。5分静置した後、超音波洗浄装置(装置名;株式会社エスエヌディ社製US-20PS)に5分かけ、それからガラス板をアセトン浴から取出し、ガラスの状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
×:樹脂組成物が残っている。
○:樹脂組成物が残っていない。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
上記結果から、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性が良好で、イソシアネート化合物を含まない比較例よりも、液安定性及びアセトン洗浄性が優れる。また、潜在性硬化剤としてヒドラジド系硬化剤を用いた比較例9~12より、硬化性が優れるか、液安定性が優れる。
【0110】
(表面アミン量)
実施例41の硬化性樹脂組成物5.75質量部と比較例14の硬化性樹脂組成物5.75質量部をそれぞれ別にアセトニトリル20質量部に溶解させ、1μmメンブレンフィルターを使用し吸引ろ過を行い、さらにアセトニトリル15質量部で掛け洗い洗浄を行った。濾取物を25℃で真空乾燥し、実施例41から得られたものを処理物1、比較例14から得られたものを処理物2とした。
処理物1及び2をそれぞれ別にバイアル瓶に約0.05質量部採取し、メチルシクロヘキサンにイソシアン酸フェニルを20ppmに調整した溶液を20質量部加えた。
超音波洗浄槽(株式会社エヌエスディ社製 US―20PS)に入れて、超音波をかけながら3分間分散させた。このときにバイアル瓶を手で振り、分散させた。その後70℃の湯浴に1時間漬け込んだ。20分毎にバイアル瓶を手で振った。70℃の湯浴に1時間漬け込み終わったら、超音波洗浄槽に入れて、超音波をかけながらバイアル瓶を手で振り3分分散させた。
室温まで冷えたら上澄みをシリンジに取りPTFE製0.2μmフィルターでろ過したろ液を分光光度計(日本分光株式会社製 V-570)にて吸光度を測定した。ブランクをメチルシクロヘキサンにし、20ppmイソシアン酸フェニル-メチルシクロヘキサン溶液とそれぞれのサンプルの226nmの吸光度を読み取った。事前に作成しておいたイソシアン酸フェニル検量線を用いてイソシアン酸フェニルの濃度を算出し、濃度減少分から製造物1及び処理物1の1gあたりの表面のアミノ基量(mmol)を算出し、表面アミン量とした。
その結果、処理物2は表面アミン量0.77mmol/g、処理物1の表面アミン量は0.10mmol/gであることがわかった。
この結果から、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を含む実施例41から得られた処理物1は、イソシアネート化合物(C)を含まない比較例14から得られた処理物2よりも、表面アミン量がかなり減少している。したがって、硬化性樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)及びイソシアネート化合物(C)を混合することにより、潜在性硬化剤(B)の一部又は全部とイソシアネート化合物(C)の一部又は全部とが反応していることが確認されるとともに、潜在性硬化剤(B)の表面アミン量が減少していることが確認された。これらの液安定性の評価を行なった。結果を表5に示す。
【0111】