(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105238
(43)【公開日】2022-07-13
(54)【発明の名称】埋設ボルト用引張試験機
(51)【国際特許分類】
G01N 3/08 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
G01N3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219960
(22)【出願日】2020-12-31
(71)【出願人】
【識別番号】508284850
【氏名又は名称】株式会社トラスト
(74)【代理人】
【識別番号】100129986
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓生
(72)【発明者】
【氏名】谷口 博司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA01
2G061AB01
2G061BA01
2G061CA20
2G061CB20
2G061CC08
2G061CC09
2G061DA08
2G061DA10
2G061EA02
2G061EA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】運搬が容易であって、架台などを介することなく容易に設置することができ、ジャッキアップによる引張り試験を行うことで定着力を簡易に試験することができるハンディ式の埋設ボルト用引っ張り試験機を提供する。
【解決手段】センターホールジャッキ1と、片側部に連結固定されたハンドル型のポンプ内蔵グリップ3と、ポンプを加圧作動させるトリガースイッチ4と、加圧作動状態のポンプ圧を解放させる開放バルブ6と、測定器(圧力変換器2C又は変位変換器7)とを具備する。センターホールジャッキのシリンダ10を、母材とナットとの間に所定のトルクで挟み込んだ挟み込み状態とし、油圧ポンプを作動させることで、挟み込み状態のままシリンダをストロークさせて埋設ボルトを母材から軸方向へ引っ張るように引き揚げる引っ張り状態とし、埋設ボルトの母材への定着状態を確認する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通型のセンターホールを有したシリンダを内蔵した、筒型単動式のセンターホールジャッキと、
筒型単動式のセンターホールジャッキの片側部に連結固定され、単動式ジャッキを加圧動作させるポンプを内蔵した、ハンドル型のポンプ内蔵グリップ(3)と、
往復のレバー動作(ハンドル動作)によってポンプ内蔵グリップ内のポンプを加圧作動させるトリガースイッチ(4)と、
ポンプ内蔵グリップの側面に設けられた、加圧作動するポンプ圧を調整し又は加圧作動状態のポンプ圧を解放させる開放バルブ(6)と、
ポンプ内蔵グリップの背面に設けられた、コネクタ付きの測定器と、を具備してなり、
母材に埋設固定された埋設ボルトを、センターホールジャッキのセンターホール内に遊挿貫通させ、ジャッキ背部から貫通して突出した埋設ボルト先部にナットを螺合させてセンターホールジャッキ背面に定着させることで、埋設ボルトを遊挿したセンターホールジャッキのシリンダを、母材とナットとの間に挟み込んだ挟み込み状態とし、
センターホールジャッキと一体構成されたグリップのスイッチ操作によって、グリップに内蔵した油圧ポンプを作動させることで、挟み込み状態のままシリンダをストロークさせることで、
埋設ボルトを母材から軸方向へ引っ張る引っ張り状態とし、
引っ張り状態におけるセンターホールジャッキの状態を測定器で測定することで、埋設ボルトの母材への定着状態を確認することを特徴とする、埋設ボルト用引張試験機。
【請求項2】
前記測定器に接続され、測定器による出力を記録ないし表示する記録表示器をさらに具備してなり、
測定器による前記引っ張り状態での測定結果を、測定箇所の埋設ボルトの特定及び測定日時と共に記録ないし表示することを特徴とする、請求項1に記載の埋設ボルト用引張試験機。
【請求項3】
前記測定器は、少なくとも、シリンダへの加圧力を変換して出力する圧力変換器を含むものであり、
前記引っ張り状態におけるストロークさせたシリンダへの加圧力を、圧力変換器によって、埋設ボルトの母材への定着反力に変換することを特徴とする、請求項1又は2に記載の埋設ボルト用引張試験機。
【請求項4】
前記測定器は、少なくとも、センターホールジャッキに対するシリンダのストローク量を出力する変位変換器を含むものであり、
前記引っ張り状態に至る過程におけるシリンダのストローク量を、埋設ボルトの母材からの引き揚げ量に変換することを特徴とする、請求項1、2、又は3のいずれかに記載の埋設ボルト用引張試験機。
【請求項5】
前記測定器は、シリンダへの加圧力を変換して出力する圧力変換器、及び、センターホールジャッキに対するシリンダのストローク量を出力する変位変換器、のうち少なくともいずれかと、
トリガースイッチの作動時点、シリンダのストローク開始時点、シリンダのストローク完了時点を記録するタイマーと、を含むものであり、
前記埋設ボルトの母材への定着反力、及び、埋設ボルトの母材からの引き揚げ量、のうち少なくともいずれかのデータを、
タイマーによるタイミングデータと同期させて、トリガースイッチの作動から前記引っ張り状態に至るまでの遊びを除外した実動値として出力することを特徴とする、請求項1、2、又は3のいずれかに記載の埋設ボルト用引張試験機。
【請求項6】
前記測定器又は前記記録表示器は、
複数の埋設ボルトの材質及び径に基づく伸び量データを予め記録した記録部と、
記録部から、特定された測定対象の埋設ボルトの伸び量データを読み出す読み出し装置と、を含むものであり、
出力、記録、ないし表示の際に、読み出した測定対象の埋設ボルトの伸び量データを除外した実測定値として出力することを特徴とする、請求項1、2、又は3のいずれかに記載の埋設ボルト用引張試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コンクリート等の母材に、あと施工アンカーによって、又は母材の打設時に埋設固定された埋設ボルトを試験対象とし、この試験対象の埋設ボルトについて、母材への定着力を簡易確認するための、埋設ボルト用引張試験機に関する。特に、打設済みコンクリート等の既成の定着母材にあと施工アンカーによって定着固定された埋設ボルトについて引張試験を行うことで、アンカーの定着力を確認するためのハンディ引っ張り試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート等の母材にアンカー筋が埋め込まれた母材構造(接合母材)の表面部分ないし打継境界(接合面)部分に設置されるアンカー材として、デスクアンカー、鋼管コッタ―等が存在する。
【0003】
コンクリート等の定着母材に定着固定された埋設ボルト(アンカー)は、定着固定後、定期的に引っ張り試験を行って、規定以上の定着力を有することを確認する必要がある。従来の引っ張り試験機として、特開2003-139673(アンカー試験装置および方法)、特開2001-050877(耐震補強工事におけるアンカーボルト引張耐力検査工具)などが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-139673号公報
【特許文献2】特開2001-050877
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の引っ張り試験機はいずれも、試験装置を埋設ボルト(アンカー)周りに架台などを介して設置してジャッキアップを行うものであり、運搬や設置が手間であって簡易に引っ張り試験を行うことができなかった。
【0006】
そこで本発明は、運搬が容易であって、架台などを介することなく容易に設置することができ、ジャッキアップによる引張り試験を行うことで定着力を簡易に試験することができるハンディ式の埋設ボルト用引っ張り試験機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の埋設ボルト用引張試験機は、下記の各手段を講じている。なお、構成名称に続けて記載する数字又はアルファベットの文字列は、実施例として示す各図における符号を参酌するための便宜上の符号であり、構成の名称又は構成の概念を限定するものではない。
【0008】
本発明の埋設ボルト用引っ張り試験機は、
貫通型のセンターホールを有したシリンダを内蔵した、筒型単動式のセンターホールジャッキと、
筒型単動式のセンターホールジャッキの片側部に連結固定され、単動式ジャッキを加圧動作させるポンプを内蔵した、ハンドル型のポンプ内蔵グリップ(3)と、
往復のレバー動作(ハンドル動作)によってポンプ内蔵グリップ内のポンプを加圧作動させるトリガースイッチ(4)と、
ポンプ内蔵グリップの側面に設けられた、加圧作動するポンプ圧を調整し又は加圧作動状態のポンプ圧を解放させる開放バルブ(6)と、
ポンプ内蔵グリップの背面に設けられた、コネクタ付きの測定器(圧力変換器(2C)又は変位変換器(7))と、を具備してなり、
母材(C)に埋設して定着固定された、外螺子付きの埋設ボルト(B)を、センターホールジャッキ(1)のシリンダ(10)のセンターホール(10H)内に遊挿貫通させ、ジャッキ背部から貫通して突出した埋設ボルト先部に、埋設ボルトの外螺子に対応するナット(N)を螺合させてシリンダ背面(10E)に所定のトルクで定着させることで、埋設ボルトを遊挿したセンターホールジャッキのシリンダ(10)を、母材(C)とナット(N)との間に所定のトルクで挟み込んだ挟み込み状態とし、
挟み込み状態におけるトリガースイッチ(4)へのスイッチ操作によって、センターホールジャッキと一体構成されたポンプ内蔵グリップに内蔵した油圧ポンプを作動させることで、挟み込み状態のままシリンダをストロークさせ、これによって埋設ボルトを母材から軸方向へ引っ張るように引き揚げる引っ張り状態とし、
引っ張り状態におけるセンターホールジャッキの状態を測定器で測定することで、埋設ボルトの母材への定着状態を確認することを特徴とする。
【0009】
前記埋設ボルト用引っ張り試験機においては、
前記測定器に接続され、測定器による出力を記録ないし表示する記録表示器(9)をさらに具備してなり、
測定器による前記引っ張り状態での測定結果を、埋設ボルト(B)の測定箇所の特定及び測定日時と共に記録ないし表示することを特徴とする。
【0010】
前記いずれか記載の埋設ボルト用引張試験機においては、
前記測定器は、少なくとも、シリンダへの加圧力を変換して出力する圧力変換器(2C)を含むものであり、
前記引っ張り状態におけるストロークさせたシリンダ(10)への加圧力を、圧力変換器によって、埋設ボルトの母材への定着反力に変換することを特徴とする。
【0011】
前記いずれか記載の埋設ボルト用引張試験機において、
測定器は、少なくとも、センターホールジャッキに対するシリンダのストローク量を出力する変位変換器(7)を含むものであり、
前記引っ張り状態に至る過程におけるシリンダのストローク量を、埋設ボルトの母材からの引き揚げ量に変換することを特徴とする。
【0012】
前記いずれかに記載の埋設ボルト用引張試験機において、
測定器は、シリンダへの加圧力を変換して出力する圧力変換器、及び、センターホールジャッキに対するシリンダのストローク量を出力する変位変換器、のうち少なくともいずれかと、
トリガースイッチの作動時点、シリンダのストローク開始時点、シリンダのストローク完了時点を記録するタイマーと、を含むものであり、
前記埋設ボルトの母材への定着反力、及び、埋設ボルトの母材からの引き揚げ量、のうち少なくともいずれかのデータを、
タイマーによるタイミングデータと同期させて、トリガースイッチの作動から前記引っ張り状態に至るまでの遊びを除外した実動値として出力することを特徴とする。
【0013】
前記いずれかに記載の埋設ボルト用引張試験機において、
測定器又は前記記録表示器は、
複数の埋設ボルトの材質及び径に基づく伸び量データを予め記録した記録部と、
記録部から、特定された測定対象の埋設ボルトの伸び量データを読み出す読み出し装置と、を含むものであり、
出力、記録、ないし表示の際に、読み出した測定対象の埋設ボルトの伸び量データを除外した実測定値として出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
コンクリート等の母材に埋設して定着固定された埋設ボルト(あと施工アンカーを介して接続された埋設ボルトを含む)を垂直に引き揚げることで正確な引張試験を簡易に行うことができ、しかもポンプ内蔵グリップとその近傍のレバーによってコンパクトな形態とすぐれた操作性を有する。天井、壁面などの定着力試験に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1の埋設ボルト用引張試験機の構成例を示す斜視図。
【
図2】実施例1の埋設ボルト用引張試験機の構成を示す側面図。
【
図3】実施例1の埋設ボルト用引張試験機の構成を示す正面図。
【
図4】実施例1の埋設ボルト用引張試験機を用いた試験方法の各状態を示す側面説明図。
【
図5】本発明の実施例2の埋設ボルト用引張試験機の構成を示す側面図。
【
図6】実施例2の埋設ボルト用引張試験機の構成を示す正面図。
【
図7】実施例2の埋設ボルト用引張試験機を用いた試験方法の各状態を示す側面説明図。
【
図8】本発明の実施例3の埋設ボルト用引張試験機を用いた試験方法の各状態を示す側面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明を実施するための形態例について実施例として示す各図とともに説明する。
【0017】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物などの、アンカー筋を埋め込んで一端を突出させた母材の表面部分の強度確保、ないし、アンカー筋を埋め込んだ母材同士を、アンカー筋の突出延長先に打継ぎ打設して接合する場合の接合部分の強度確保に用いられる。例えば鉄鋼像柱脚アンカーボルトのベースプレートの下部や、駐車場などの車止めの固定ボルトなど、軸方向に直交する力が発生する箇所に用いることができる。
【0018】
母材としては、コンクリート材、レンガ材、石材、アスファルト面などの固化済の高圧縮強度材、ないし、固化前のコンクリート部材があげられる。
【0019】
本発明の埋設ボルト用引っ張り試験機は、
貫通型のセンターホールを有したシリンダを内蔵した、筒型単動式のセンターホールジャッキと、
筒型単動式のセンターホールジャッキの片側部に連結固定され、単動式ジャッキを加圧動作させるポンプを内蔵した、ハンドル型のポンプ内蔵グリップ(3)と、
往復のレバー動作(ハンドル動作)によってポンプ内蔵グリップ内のポンプを加圧作動させるトリガースイッチ(4)と、
ポンプ内蔵グリップの側面に設けられた、加圧作動するポンプ圧を調整し又は加圧作動状態のポンプ圧を解放させる開放バルブ(6)と、
ポンプ内蔵グリップの背面に設けられた、コネクタ付きの測定器(圧力変換器(2C)又は変位変換器(7))と、を具備してなり、
母材(C)に埋設して定着固定された、外螺子付きの埋設ボルト(B)を、センターホールジャッキ(1)のシリンダ(10)のセンターホール(10H)内に遊挿貫通させ、ジャッキ背部から貫通して突出した埋設ボルト先部に、埋設ボルトの外螺子に対応するナット(N)を螺合させてシリンダ背面(10E)に所定のトルクで定着させることで、埋設ボルトを遊挿したセンターホールジャッキのシリンダ(10)を、母材(C)とナット(N)との間に所定のトルクで挟み込んだ挟み込み状態とし、
挟み込み状態におけるトリガースイッチ(4)へのスイッチ操作によって、センターホールジャッキと一体構成されたポンプ内蔵グリップに内蔵した油圧ポンプを作動させることで、挟み込み状態のままシリンダをストロークさせ、これによって埋設ボルトを母材から軸方向へ引っ張るように引き揚げる引っ張り状態とし、
引っ張り状態におけるセンターホールジャッキの状態を測定器で測定することで、埋設ボルトの母材への定着状態を確認することを特徴とする。
【0020】
前記埋設ボルト用引っ張り試験機においては、
前記測定器に接続され、測定器による出力を記録ないし表示する記録表示器(9)をさらに具備してなり、
測定器による前記引っ張り状態での測定結果を、埋設ボルト(B)の測定箇所の特定及び測定日時と共に記録ないし表示することを特徴とする。
【0021】
前記いずれか記載の埋設ボルト用引張試験機においては、
前記測定器は、少なくとも、シリンダへの加圧力を変換して出力する圧力変換器(2C)を含むものであり、
前記引っ張り状態におけるストロークさせたシリンダ(10)への加圧力を、圧力変換器によって、埋設ボルトの母材への定着反力に変換することを特徴とする。
【0022】
前記いずれか記載の埋設ボルト用引張試験機において、
測定器は、少なくとも、センターホールジャッキに対するシリンダのストローク量を出力する変位変換器(7)を含むものであり、
前記引っ張り状態に至る過程におけるシリンダのストローク量を、埋設ボルトの母材からの引き揚げ量に変換することを特徴とする。
【0023】
前記いずれかに記載の埋設ボルト用引張試験機において、
測定器は、シリンダへの加圧力を変換して出力する圧力変換器、及び、センターホールジャッキに対するシリンダのストローク量を出力する変位変換器、のうち少なくともいずれかと、
トリガースイッチの作動時点、シリンダのストローク開始時点、シリンダのストローク完了時点を記録するタイマーと、を含むものであり、
前記埋設ボルトの母材への定着反力、及び、埋設ボルトの母材からの引き揚げ量、のうち少なくともいずれかのデータを、
タイマーによるタイミングデータと同期させて、トリガースイッチの作動から前記引っ張り状態に至るまでの遊びを除外した実動値として出力することを特徴とする。
【0024】
前記いずれかに記載の埋設ボルト用引張試験機において、
測定器又は前記記録表示器は、
複数の埋設ボルトの材質及び径に基づく伸び量データを予め記録した記録部と、
記録部から、特定された測定対象の埋設ボルトの伸び量データを読み出す読み出し装置と、を含むものであり、
出力、記録、ないし表示の際に、読み出した測定対象の埋設ボルトの伸び量データを除外した実測定値として出力することを特徴とする。
【0025】
前記いずれかに記載の埋設ボルト用引張試験機において、
センターホールジャッキは、シリンダを内蔵した円柱型又は多角形柱型のケーシングを具備してなり、
ケーシングの一側面に、箱状の調整器が一体連結され、
さらにこの箱型の調整器の一側面に、ケーシングの柱軸に対して斜め方向に伸長した棒状のポンプ内蔵グリップが一体連結され、
箱型の調整器の内部を可動軸として、トリガースイッチが調整器の箱面からポンプ内蔵グリップ側へ突出して設けられることを特徴とする。
【0026】
さらに、箱型の調整器の箱面であってポンプ内蔵グリップ寄りの位置に調整バルブが設けられ、前記引っ張り状態から調整バルブを操作することでシリンダへの圧力を開放して引っ張り状態を解除した解除状態にすることができる。
【0027】
棒状のポンプ内蔵グリップ(3)は、調整器の一側面から前記柱型の斜め側部後方に伸長する。
【0028】
圧力変換器(2C)は、センターホールジャッキ(1)に対するシリンダ(10)への加圧力を変換することで、埋設ボルトの引っ張り状態の定着反力を出力することを特徴とする。
【0029】
さらに、変位変換器(7)を備えたものとしてもよい。変位変換器(7)は、センターホールジャッキ(1)に対するシリンダ(10)のストローク量に基づき、埋設ボルトの引っ張り時の定着反力を出力する。
【0030】
またさらに、コネクタを介して接続された記録表示器(9)を一体的に又は別体として具備してなり、変換した圧力を記録するものとしてもよい。
【0031】
センターホールジャッキ(1)はジャッキ先端面(1FE)の周囲に、母材(コンクリート面)と密着するための調整具(11)又は緩衝具(12)を具備してなり、埋設ボルト(B)の軸方向に沿ってシリンダをストロークさせることを特徴とする。
【0032】
ハンドル型の油圧ポンプ内蔵グリップ(3)は、上端側がトリガースイッチ(4)を内蔵した板状の調整器(2)と一体構成されると共に、
下端側が着脱式のバッテリー(5)と連結構成されてなり、
トリガースイッチ(4)のスイッチ操作に伴い、設定された所定の油圧トルクで油圧ポンプが油圧作動することを特徴とする。
【0033】
圧力変換器には、コネクタ接続された配線を介して記録表示器が有線接続される。
【0034】
圧力センサーまたは記録表示器は、ポンプによる引張圧力を測定すると共に規定の定着力に至っているか否かを検知し、点灯又は報知する機能を有する。
【0035】
(使用方法)
本発明の引張試験機を使用する際は、以下の各ステップを経る。
【0036】
まず、センターホールを全螺子棒に遊挿貫通させて本体の先端面をコンクリート定着面に当接させ((a)(b))、全螺子棒の貫通した突出先部にナットを螺着して、ナットの下面を本体の基端面に当接させ((b)(c))る。具体的には、母材(C)に埋設して定着固定された、外螺子付きの埋設ボルト(B)を、センターホールジャッキ(1)のシリンダ(10)のセンターホール(10H)内に遊挿貫通させ、ジャッキ背部から貫通して突出した埋設ボルト先部に、埋設ボルトの外螺子に対応するナット(N)を螺合させてシリンダ背面(10E)に所定のトルクで定着させることで、埋設ボルトを遊挿したセンターホールジャッキのシリンダ(10)を、母材(C)とナット(N)との間に所定のトルクで挟み込んだ挟み込み状態とする。
【0037】
次に、操作者がハンドルを握りながらレバーをハンドル操作することで、本体内のシリンダを引き揚げ方向へ引き揚げ移動させ(d)、
挟み込み状態におけるトリガースイッチ(4)へのスイッチ操作によって、センターホールジャッキと一体構成されたポンプ内蔵グリップに内蔵した油圧ポンプを作動させることで、挟み込み状態のままシリンダをストロークさせ、これによって埋設ボルトを母材から軸方向へ引っ張るように引き揚げる引っ張り状態とする。
【0038】
そして、引っ張り状態におけるセンターホールジャッキの状態を測定器で測定することで、埋設ボルトの母材への定着状態を確認することを特徴とする。例えば、シリンダの引き揚げ移動時の、加圧作動状態のポンプの圧力が規定の圧力に至っていることを検知した場合には、接続された圧力センサーが点灯及び報知音を発する報知動作を行い(e)、これによって全螺子棒がコンクリート(定着母体)に対して所定以上の定着力を確保していることを確認する。
【0039】
なお、レバーのストローク回数が閾値以上になっても、加圧作動状態のポンプの圧力が規定の圧力に至っていることを検知しない場合には、その旨の表示或いは前記と異なる点灯、報知音を発する第二の報知動作を行う。
【実施例0040】
図1~4に示す実施例1の埋設ボルト用引っ張り試験機は、
貫通型のセンターホールを有したシリンダを内蔵した、筒型単動式のセンターホールジャッキ(1)と、
筒型単動式のセンターホールジャッキの片側部に連結固定された、箱型の調整器(2)と、
箱型の調整器の角部から斜め後方へ伸長するように一体的に固定された、ハンドル型のポンプ内蔵グリップ(3)と、
ポンプ内蔵グリップ側へのトリガー動作によってポンプ内蔵グリップ内のポンプを加圧作動させるトリガースイッチ(4)と、
ポンプ内蔵グリップの先部に着脱可能に取り付けられ、油圧ポンプ及び測定器に駆動電力を供給するバッテリー(5)と、
調整器の片側の箱面に設けられた、加圧作動するポンプ圧を調整し又は加圧作動状態のポンプ圧を解放させる開放バルブ(6)と、
ジャッキ本体の円柱型のケーシングの背部及び側部に設けられた、コネクタ付きの圧力変換器(2C)及び変位変換器(7)と、を具備してなる。
【0041】
トリガースイッチ4は一辺が凹状に凹んだプレート板からなり、調整器2の内部にてギヤ構造を介して軸回転可能に固定され、一回転方向へ弾性付勢される。プレート板のグリップ側への引き操作によってポンプ内蔵グリップ内の油圧ポンプを定格作動させる。
【0042】
着脱式バッテリー5はポンプ内蔵グリップの先部へ着脱式に取り付けられる箱体からなる。
【0043】
開放バルブ6は油圧ポンプによるジャッキへの加圧状態を開放するための円板状の操作バルブであり、円板中心の軸部によって調整器の片側面に回転操作又は引っ張り操作可能に取り付けられる。
【0044】
変位変換器7はジャッキ1の円筒側部に付属固定され、シリンダのストローク量又はジャッキの母材への距離をレーザーセンサー又はゲージによって測定して、対象の埋設ボルトの伸び量データに基づいて、引っ張り状態におけるこれら測定値の変位量を、埋設ボルトの引き揚げ量に変換する。
【0045】
変位変換器7は後部にコネクタ7Cが突出され、コネクタ7Cの先部が記録表示器に有線接続される。
【0046】
出力調整つまみ8は調整器の片側面に回転可能に設けられた回転体形状のつまみであり、油圧ポンプの油圧トルクの出力、ないし、出力の増加速度を調整する調整器である。
【0047】
記録表示器9は、測定器たる圧力変換機2C又は/及び変位変換器7と有線接続され、測定器による出力を表示し又は試験データとして、試験体の埋設ボルトの特定及び測定日時と共に記録する。試験体の埋設ボルトの特定とは、試験体を区別するための識別情報、試験体の埋設ボルトの径及び材質に基づく種別情報、位置情報、再試験回数といった各種情報を含む。
【0048】
実施例ではエンターボタン90、表示部91、電源ボタン920、作動・停止ボタン921、設定ボタン922、エスケープボタン923を有する。
【0049】
本実施例の埋設ボルト用引張試験機において、
センターホールジャッキは、シリンダを内蔵した円柱型のケーシングを具備してなり、
このケーシングの一側面に、箱状の調整器が一体連結され、
さらにこの箱型の調整器の一側面に、ケーシングの柱軸に対して斜め方向に伸長した棒状のポンプ内蔵グリップが一体連結され、
箱型の調整器の内部を可動軸として、トリガースイッチが調整器の箱面からポンプ内蔵グリップ側へ突出して設けられることを特徴とする。
【0050】
さらに、箱型の調整器の箱面であってポンプ内蔵グリップ寄りの位置に調整バルブが設けられ、前記引っ張り状態から調整バルブを操作することでシリンダへの圧力を開放して引っ張り状態を解除した解除状態にすることができる。
棒状のポンプ内蔵グリップ(3)は、調整器の一側面から前記柱型の斜め側部後方に伸長する。
圧力変換器(2C)は、センターホールジャッキ(1)に対するシリンダ(10)への加圧力を変換することで、埋設ボルトの引っ張り状態の定着反力を出力することを特徴とする。
【0051】
さらに、変位変換器(7)を備えたものとしてもよい。変位変換器(7)は、センターホールジャッキ(1)に対するシリンダ(10)のストローク量に基づき、埋設ボルトの引っ張り時の定着反力を出力する。
【0052】
またさらに、コネクタを介して接続された記録表示器(9)を一体的に又は別体として具備してなり、変換した圧力を記録するものとしてもよい。
【0053】
センターホールジャッキ(1)はジャッキ先端面(1FE)の周囲に、母材(コンクリート面)と密着するための調整具(11)又は緩衝具(12)を具備してなり、埋設ボルト(B)の軸方向に沿ってシリンダをストロークさせることを特徴とする。
【0054】
ハンドル型の油圧ポンプ内蔵グリップ(3)は、上端側がトリガースイッチ(4)を内蔵した板状の調整器(2)と一体構成されると共に、
下端側が着脱式のバッテリー(5)と連結構成されてなり、
トリガースイッチ(4)のスイッチ操作に伴い、設定された所定の油圧トルクで油圧ポンプが油圧作動することを特徴とする。
圧力変換器には、コネクタ接続された配線を介して記録表示器が有線接続される。
【0055】
圧力センサーまたは記録表示器は、ポンプによる引張圧力を測定すると共に規定の定着力に至っているか否かを検知し、点灯又は報知する機能を有する。
【0056】
(使用方法)
本発明の引張試験機を使用する際は、
図4に示すように、
センターホールを全螺子棒に遊挿貫通させて本体の先端面をコンクリート定着面に当接させ((a)(b))、
全螺子棒の貫通した突出先部にナットを螺着して、ナットの下面を本体の基端面に当接させ((b)(c))、
操作者がハンドルを握りながらレバーをハンドル操作することで、本体内のシリンダを引き揚げ方向へ引き揚げ移動させ(d)、
シリンダの引き揚げ移動時の、加圧作動状態のポンプの圧力が規定の圧力に至っていることを検知した場合には、接続された圧力センサーが点灯及び報知音を発する報知動作を行い(e)、これによって全螺子棒がコンクリート(定着母体)に対して所定以上の定着力を確保していることを確認する。
なお、レバーのストローク回数が閾値以上になっても、加圧作動状態のポンプの圧力が規定の圧力に至っていることを検知しない場合には、その旨の表示或いは前記と異なる点灯、報知音を発する第二の報知動作を行う。