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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105249
(43)【公開日】2022-07-13
(54)【発明の名称】麹の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/16 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
C12M1/16 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000007
(22)【出願日】2021-01-01
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】591012680
【氏名又は名称】柳井電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】深井 愼司
(72)【発明者】
【氏名】神尾 修
(72)【発明者】
【氏名】吉村 美保
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA03
4B029AA07
4B029BB06
4B029CC07
4B029EA11
4B029FA15
4B029GB07
(57)【要約】
【課題】麹の製造工程における含有水分量を、高い精度で自動で測定することで、品質の精度とばらつき減少を抑えることのできる、麹の製造装置を提供する。
【解決手段】本発明の麹の製造装置は、製造対象となる麹を収容する麹箱と、前記麹箱を載置可能な支持台と、前記麹箱の歪量を計測する歪計測部と、前記歪計測部での計測結果である歪量を重量変化に変換する変換部と、前記変換部での変換結果である重量変化に基づいて、麹箱に収容されている麹の含有水分量を算出する水分量算出部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造対象となる麹を収容する麹箱と、
前記麹箱を載置可能な支持台と、
前記麹箱の歪量を計測する歪計測部と、
前記歪計測部での計測結果である歪量を重量変化に変換する変換部と、
前記変換部での変換結果である重量変化に基づいて、麹箱に収容されている麹の含有水分量を算出する水分量算出部と、を備える、麹の製造装置。
【請求項2】
前記歪計測部は、前記支持台と前記麹箱の支持部分に備わり、前記麹箱の歪量を計測する、請求項1記載の麹の製造装置。
【請求項3】
前記変換部は、前記歪量と前記重量変化との相関関係式に基づいて、前記歪量から前記重量変化に変換する、請求項1または2記載の麹の製造装置。
【請求項4】
前記重量変化と前記麹の前記含有水分量とは相関関係を有し、
前記水分量算出部は、前記相関関係に基づいて、前記重量変化から前記含有水分量を算出する、請求項1から3のいずれか記載の麹の製造装置。
【請求項5】
前記麹箱の底面に備わる温度計測部を更に備え、
前記温度計測部は、前記麹箱に収容される麹の温度を計測する、請求項1から4のいずれか記載の麹の製造装置。
【請求項6】
前記麹箱の熱を奪う送風を生成する送風部を更に備え、
前記温度計測部での計測結果に基づいて、前記送風部は、前記送風の有無、大きさおよび時間の少なくとも一つを制御する、請求項5記載の麹の製造装置。
【請求項7】
前記送風部は、前記麹箱の温度が所定値より高い場合には、送風を付与することで、前記麹箱の温度を所定値以下に維持可能である、請求項6記載の麹の製造装置。
【請求項8】
前記麹箱の底面は複数の空隙を備え、
前記送風部は、前記底面から前記送風を付与する、請求項6または7記載の麹の製造装置。
【請求項9】
前記送風部は、前記麹箱の温度が一定範囲に収まるように、前記麹箱に送風を付与する、請求項6記載の麹の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵食品を製造するのに必要となる麹を製造する麹の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本酒、酒類、味噌、醤油、酢など、たくさんの種類の発酵食品が様々な場所や様々な工程で製造されている。これらの発酵食品は、発酵工程を必要とするため、発酵に必要となる原料を必要とする。この発酵を生じさせる原料の一つが麹である。麹には、米を素材とする米麹、麦を素材とする麦麹等、様々な種類の麹がある。
【0003】
この麹を製造する麹製造が様々に行われている。麹は、その製造方法における様々なノウハウによって適切に育成される。この育成度合いが不十分であると、発酵食品を製造する際の麹として不十分であるし、育成度合いが過度であると、やはり発酵食品を製造する際の麹として不十分である。
【0004】
このため、適切な育成度合いとして麹を製造することが求められている。このような適切な育成度合いで麹を製造するために、多くの技術的あるいは技能的ノウハウが蓄積されている。ただ、このようなノウハウは、作業者の経験や勘などに依存するものであり、客観的かつ普遍的に麹の適切な製造を行うには不十分である。
【0005】
麹の適切な製造のためには、麹製造の過程での温度管理、水分管理などが必要である。従来は、作業者の経験、勘、その他の技能的ノウハウでこれらが管理されていた。また、麹の目視監視や手作業での手の感覚などにより、麹の製造過程で、育成度合いを作業者が把握することが行われていた。このため、作業者の熟練度に麹の製造レベルが依存してしまったり、熟練者が育たないと、麹の製造が困難になってしまったりの問題があった。
【0006】
このため、麹の製造の自動化や工程管理の普遍化を目指す技術が提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-98996号公報
【特許文献2】特開2011-177134号公報
【特許文献3】特開2019-208458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、固体培地に接種した麹菌を容器中で培養することにより麹を製造する方法であって、前記容器が、熱伝導率0.05W/mK~1W/mKの物質からなる厚さ1mm~10mmの本体を含み、固体培地が容器本体内壁に接触した状態で該容器の周辺空気の温度を制御することにより、該容器本体を介する周辺空気からの熱伝導を利用して該容器中の固体培地の温度を制御する麹の製造方法を、開示する。
【0009】
しかしながら、特許文献1の技術は、麹の製造過程での温度を管理するだけであり、その水分量などを管理できていない。特に、麹の水分含有量の状態を管理することが、適切な麹の製造には必要であるがこれができていない。このため、作業者の技能ノウハウに依存しない製造の実現が不十分である問題がある。
【0010】
特許文献2は、培養される麹の経時的な温度変化を予め設定してこれを設定麹温度(SeKT)曲線として記憶し、経時的に測定される測定麹温度(MeKT)と設定麹温度(SeKT)曲線とから、培養中の各時点において、両者の温度差(ΔT)に対応する標準送風量(SWQ)と標準送風温度(SWT)とを採用すると共に測定麹温度(MeKT)の温度勾配(MeKG)と設定麹温度(SeKT)曲線の温度勾配(SeKG)との温度勾配差(ΔG)を演算し、該温度勾配差(ΔG)に基づいて標準送風量(SWQ)と標準送風温度(SWT)に修正を加えることで、実送風量(RWQ)と実送風温度(RWT)を決定する構成製麹装置を、開示する。
【0011】
特許文献2も、特許文献1と同じく、麹の温度管理しかしていない。すなわち、麹の水分含有量を管理できておらず、適切な麹製造を十分に行えない問題を有している。
【0012】
特許文献3は、製麹室3を通風可能な培養床6によって床上4と床下5に仕切り、培養床6上に麹基質7を堆積させて製麹を行う製麹装置1であって、麹基質7に空気を通風させる基質通風手段20と、床上4の空間中の水蒸気を除く水分除去手段11、14と、水分除去手段11、14の運転を制御する制御機構10とを備えており、水分除去手段11、14は、麹基質7近傍と水分除去手段11、14近傍との間に水蒸気分圧差を発生させ、強制的な空気の流れがない静的環境のもとで麹基質7近傍の水蒸気の除去を行う製麹装置を開示する。
【0013】
しかしながら、特許文献3は、水分を湿度を介して把握しつつ、湿度である水蒸気の除去により制御しているに過ぎない。このため、製造過程にある麹の含有水分量を高い精度で計測できていない。この結果、特許文献1、2と同じような問題を有している。
【0014】
以上のように、従来技術の麹の製造装置や製造方法は、麹の含有水分量を客観的かつ高い精度で計測できない問題があった。この結果、製造される麹の品質などにばらつきが生じたり、自動化が困難であったりする問題に繋がっていた。
【0015】
本発明は、麹の製造工程における含有水分量を、高い精度で自動で測定することで、品質の精度とばらつき減少を抑えることのできる、麹の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題に鑑み、本発明の麹の製造装置は、製造対象となる麹を収容する麹箱と、
前記麹箱を載置可能な支持台と、
前記麹箱の歪量を計測する歪計測部と、
前記歪計測部での計測結果である歪量を重量変化に変換する変換部と、
前記変換部での変換結果である重量変化に基づいて、麹箱に収容されている麹の含有水分量を算出する水分量算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の麹の製造装置は、麹箱を支える支持部材に備わる歪センサーによってその麹箱(すなわち麹箱に入っている麹)の重量変化を高い精度で計測できる。この計測によって、麹の製造過程における麹の含有水分量の変化を、高い精度で計測できる。
【0018】
この含有水分量の変化の測定により、麹の製造工程での品質の一定化や向上を実現できる。特に、含有水分量を自動で計測できるので、麹の品質などの要因となる要素を、技能者の勘や経験に頼ることなく把握できる。これにより、最終的に製造される麹の品質の一定化を実現できる。
【0019】
また、人材不足の中でも、醸造を必要とする食品製造の製造能力の維持を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態1における麹の製造装置の側面図である。
図2】本発明の実施の形態2における麹の製造工程と温度との関係を示す説明図である。
図3】本発明の実施の形態2における麹の製造装置の模式図である。
図4】本発明の実施の形態2における麹の製造装置を含む製造システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の発明に係る麹の製造装置は、製造対象となる麹を収容する麹箱と、
前記麹箱を載置可能な支持台と、
前記麹箱の歪量を計測する歪計測部と、
前記歪計測部での計測結果である歪量を重量変化に変換する変換部と、
前記変換部での変換結果である重量変化に基づいて、麹箱に収容されている麹の含有水分量を算出する水分量算出部と、を備える。
【0022】
この構成により、麹の含有水分量の変化を正確に算出し、成長度合いを把握できる。結果として、均一性で高い品質の麹を製造することができる。
【0023】
本発明の第2の発明に係る麹の製造装置では、第1の発明に加えて、前記歪計測部は、前記支持台と前記麹箱の支持部分に備わり、前記麹箱の歪量を計測する。
【0024】
この構成により、麹箱の歪量を、高い精度で計測できる。
【0025】
本発明の第3の発明に係る麹の製造装置では、第1または第2の発明に加えて、前記変換部は、前記歪量と前記重量変化との相関関係式に基づいて、前記歪量から前記重量変化に変換する。
【0026】
この構成により、麹箱の重量変化を検出できる。
【0027】
本発明の第4の発明に係る麹の製造装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、前記重量変化と前記麹の前記含有水分量とは相関関係を有し、
前記水分量算出部は、前記相関関係に基づいて、前記重量変化から前記含有水分量を算出する。
【0028】
この構成により、麹の含有水分量の変化を算出できる。これにより、麹の成長度合いを把握することができる。
【0029】
本発明の第5の発明に係る麹の製造装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、前記麹箱の底面に備わる温度計測部を更に備え、
前記温度計測部は、前記麹箱に収容される麹の温度を計測する。
【0030】
この構成により、麹の温度面での成長との相関関係を揃えることができる。
【0031】
本発明の第6の発明に係る麹の製造装置では、第5の発明に加えて、前記麹箱の熱を奪う送風を生成する送風部を更に備え、
前記温度計測部での計測結果に基づいて、前記送風部は、前記送風の有無、大きさおよび時間の少なくとも一つを制御する。
【0032】
この構成により、麹の温度を適切に制御できる。
【0033】
本発明の第7の発明に係る麹の製造装置では、第6の発明に加えて、前記送風部は、前記麹箱の温度が所定値より高い場合には、送風を付与することで、前記麹箱の温度を所定値以下に維持可能である。
【0034】
この構成により、麹の成長を適正にできる。
【0035】
本発明の第8の発明に係る麹の製造装置では、第6または第7の発明に加えて、前記麹箱の底面は複数の空隙を備え、
前記送風部は、前記底面から前記送風を付与する。
【0036】
この構成により、麹の温度制御を均一に行える。
【0037】
本発明の第9の発明に係る麹の製造装置では、第6の発明に加えて、前記送風部は、前記麹箱の温度が一定範囲に収まるように、前記麹箱に送風を付与する。
【0038】
この構成により、麹の製造が適正に行える。
【0039】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0040】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における麹の製造装置の側面図である。麹の製造装置1を、模式的に示したものである。麹箱2に係る部分を側面図として示し、他の要素をブロック図として示している。
【0041】
麹の製造装置1は、麹箱2、支持台3、歪計測部4、変換部5、水分量算出部6を備える。更に、必要に応じて、送風部7および温度計測部8を備える。麹の製造装置1は、麹100を適切に製造する。麹箱2は、製造対象となる麹100を収容する。
【0042】
麹は、一定の水分を必要とする。例えば、酒米の表面において麹を成長させる場合には、酒米の表面が乾いていくにつれて、酒米の中心部に菌糸を伸ばしていく。この時に、麹100の含む水分量の変化をとらえることが、麹の成長度合いを測ることに繋がる。すなわち、麹の含む水分量をより正確かつ連続的に計測することが麹の適切な成長把握に重要となる。
【0043】
また、この麹100の水分量を自動で測定することも重要である。手作業で測定していると、連続的かつ客観的な計測ができないからである。勿論、作業者の作業負担を軽減することも重要である。麹100の製造工程において、麹100の含有する水分量を正確かつ連続的に製造することは、麹の製造において、重要である。製造される麹の品質の均一化や品質向上につながるからである。
【0044】
本発明は、このような麹100の製造工程における水分量を正確かつ連続的に計測することを備えている。
【0045】
麹箱2は、製造対象となる麹100を収容する。麹100は、米や麦などの穀物に麹菌が付着されたものである。麹箱2は、麹の製造装置1での製造に必要となる量、また、製造の確実性や容易性の観点から定まる量の麹100を収容する。麹箱2は、麹100を収容して成長させる本体である。麹箱2は、箱型の形状を有していてもよいし、その他の形状を有していてもよい。麹100を収容できる形態であればよい。
【0046】
支持台3は、麹箱2を載置可能である。麹箱2では、麹100の出し入れや、麹100の手作業での攪拌が行われる。このため、麹箱2は、支持台3に載せたり、支持台3から降ろしたりできることが好都合である。また、後述するひずみ計測部4による計測を適切に行うために、麹箱2は、支持台3に載置されていることが好適である。
【0047】
支持台3は、麹箱2の歪を計測できるように、支持構造を有する支持部分31を備えることが好適である。麹箱2は、支持部分31の上に載せるようにして載置されることも好適である。このように支持部分で載置されることで、麹箱2の歪を阻害することなく、歪量を測定できるからである。
【0048】
支持台3は、麹箱2を載置可能な強度や耐久性を有している。
【0049】
歪計測部4は、麹箱2の歪量を計測する。麹箱2には、製造対象となる麹100が収容されている。この麹100は、成長するにつれて、含有する水分量を変化させる。すなわち、麹100の成長に従って、麹100そのものの重量が変化していく。麹箱2に収容されている麹100そのものの重量が変化すると、麹箱2には歪が生じる。
【0050】
麹100の含有水分量の変化による麹箱2の重量変化は非常に僅かである。このため、麹箱2の重量を直接的に計測するよりも、その歪を計測するほうがより容易かつ正確である。歪計測部4は、麹箱2の歪量を計測することができる。特に支持部分31において、麹箱2が支持台3に載置されている。このとき、この支持部分31に歪計測部4が備わる。図1に示すとおりである。
【0051】
このような位置関係にあることで、麹箱2は、重量変化に伴う歪を生じさせやすい。歪計測部4は、この麹箱2の歪による歪量を計測できる。歪計測部4は、計測した歪量を、変換部5に出力する。
【0052】
変換部5は、歪量を重量変化に変換する。歪計測部4での計測結果である歪量を重量変化に変換する。麹箱2の歪は、重量の変化によって生じる。このため、歪量はこの重量変化と相関関係を有する。この相関関係に基づいて、変換部5は、歪量を重量変化に変換する。重量変化は、麹箱2の重量変化を示しており、すなわち麹箱2に収容されている麹100の重量変化を示している。
【0053】
水分量算出部6は、変換部5で変換された重量変化に基づいて、麹箱2に収容されている麹100の含有水分量を算出する。麹100は、成長に従って、含有水分量が変化する。この変化状態は、麹100の成長度合いを示す。水分量算出部6において麹100の含有水分量が算出されることで、麹100の成長度合いが把握される。
【0054】
このように、歪計測部4で計測される歪量に基づいて、麹100の成長度合いが把握される。麹100の含有水分量と成長度合いの間には相関関係がある。この相関関係に基づいて、麹100の成長度合いを把握できる。
【0055】
図1に示されるように、例えば、成長把握部10が備わっている。成長把握部10は、含有水分量と麹100の成長度合いとの相関関係に基づいて、麹100の成長度合いを示す。成長度合いは、段階で示されたり十分な成長であるか否かなどの基準到達などで示されたりする。
【0056】
また、成長把握部10は、成長度合いを表示する。あるいは、水分量算出部6は、算出した含有水分量を表示する。作業者や管理者は、これらの表示結果を見て、麹100の成長の十分・不十分などを判断できる。表示された結果により、作業者や管理者は、麹100について、成長が終わったと判断して麹製造を終了させる。あるいは、まだ成長が終わってないとして、製造継続する。
【0057】
上述のように、成長度合いが自動的に把握されて表示されてもよいし、含有水分量も含めた結果から作業者や管理者が、成長度合いを判断してもよい。
【0058】
いずれの場合でも、含有水分量が自動でかつ連続的に計測されるので、作業者による作業負担や目視による成長度合いの把握は不要である。含有水分量と成長度合いとの間には、高い相関関係があるからである。
【0059】
もちろん、含有水分量以外の条件や、他の点を目視したり作業したりすることで、麹100の成長度合いを把握することでもよい。この場合でも、含有水分量の変化については、自動で計測されているので、最終判断は容易となる。
【0060】
(変換部)
変換部5は、歪量と重量変化との相関関係式に基づいて、歪量から重量変化に変換する。相関関係式は、数式でもよいし、対応テーブルなどによるものでもよい。相関関係に基づくことで、歪量から重量変化へ適切に変換できる。歪量により、麹100の重量変化が確実に算出される。
【0061】
(水分量算出部)
重量変化と麹100の含有水分量との間には相関関係がある。麹100の成長に伴って、麹100は、含有する水分量を変化させるからである。この変化が、重量変化として現れる。このため、水分量算出部6は、重量変化に基づいて、麹100の含有水分量を算出できる。このとき、両社の相関関係に基づいて算出できる。
【0062】
このとき、相関関係は、相関関係式や対応テーブルにより処理されればよい。勿論、相関関係に置き換える対応表によって重量変化から含有水分量が算出されればよい。
【0063】
含有水分量は、そのままの値として表示されてもよい。麹の製造に係る作業者や管理者は、この表示された含有水分量を見て、麹100の成長度合いを確認できる。この確認を通して、作業者や管理者は、麹の製造装置1で製造している麹100の製造完了などを判断できる。
【0064】
あるいは、図1に示されるように水分算出部6の結果は、成長把握部10に出力される。成長把握部10は、含有水分量と成長度合いとの相関関係に基づいて、麹100の成長度合いを、段階であったり数値であったりで判断する。この判断結果が、表示あるいは出力される。例えば、麹100の成長度合いを「1」~「10」として判断して表示等を行う。
【0065】
作業者や管理者は、この判断結果に基づいて、麹100の製造を完了させる判断をしたり、麹100の製造に必要となる水分、温度、湿度などの環境の補填を行なったりする。例えば、麹の製造装置1の置かれている作業環境の温度を変化させたりする。
【0066】
以上のように、実施の形態1における麹の製造装置1は、歪量の計測に基づいて、麹100の含有水分量を算出できる。これも自動かつ連続的に行える。この含有水分量により、麹100の成長度合いを把握でき、作業者の作業負担を軽減した状態で、麹100の製造の品質向上や製造の自動化を実現できる。
【0067】
(実施の形態2)
【0068】
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、麹の製造装置1において、麹箱2の温度管理を行うことについて説明する。麹100は、図2に示される仕舞仕事の後で徐々に発熱して温度が上がっていく。麹100が、例えば日本酒製造に用いられる場合には、造る日本酒の種類によって、上がっていく温度での最高温度が異なる。すなわち、造る種類によって、最高温度を適切に制御することが求められる。
【0069】
また、最高温度の絶対値に加えて、この最高温度を始めとした製造工程での温度を、一定範囲内に制御することも求められる。
【0070】
実施の形態2では、このような麹箱2を通じた麹100の温度管理を行う態様について説明する。図2は、本発明の実施の形態2における麹の製造工程と温度との関係を示す説明図である。麹100の製造工程のそれぞれでの作業名称と、その場合の温度変化の一例を示している。温度変化は、一例であり、すべての麹がこのようになるあるいはならなければならないものではない。
【0071】
このように、麹の製造装置1においては、麹箱2の温度すなわち麹100の温度の制御が重要となる。温度が適切に制御されることで、製造される麹100の品質やレベルが適切になるからである。
【0072】
図3は、本発明の実施の形態2における麹の製造装置の模式図である。図3においては、温度計測部8、温度制御部9が示されている。また、図1と同様に、送風部7も備わっている。それ以外の要素については、図1とこれを用いて説明したのと同様である。
【0073】
麹箱2の底面に温度計測部8が備わっている。麹箱2には麹100が収容されており、麹箱2の底面に温度計測部8が備わることで、麹100の温度をより正確に計測できる。温度計測部8は、麹箱2の温度を計測すると共に麹100の温度を計測する。すなわち、温度計測部8は、麹箱2の温度を計測しているとも言えるし、麹箱2内部の麹100の温度を計測しているともいえる。
【0074】
麹100の温度変化は、麹箱2に伝導するので、温度計測部8が底面に備わっていることで、麹箱2の温度を介して、麹100の温度を計測している。
【0075】
温度計測部8による温度計測結果は、図2のように表れる。
【0076】
ここで、麹100の成長度合いや外部環境の変化によって、麹100の温度変化は、あるべき温度変化にならない可能性がある。図2のように、製造する麹100の使用目的などに応じて理想的な温度変化が生じてほしい。上述したように、最高温度の絶対値や、製造工程での温度を一定範囲に収めることなどが求められる。
【0077】
温度計測部8は、このような製造を適正化するための温度制御の前提としての麹100の(麹箱2の)温度を計測する。また、後述する温度制御の後での温度を計測し、温度制御が適切に結果をもたらしているかを確認するデータを提供できる。
【0078】
温度制御部9は、温度計測部8の計測結果を受信する。温度計測部8の結果は、電子データなどで温度制御部9に計測結果を出力する。温度制御部9は、受信した温度計測の結果を受けて、必要に応じて送風部7を制御する。
【0079】
送風部7は、麹箱2の熱を奪う送風を生成する。温度制御部9は、この送風部7を制御する。温度計測部8での計測結果に基づいて、送風部7は、送風の有無、送風の大きさおよび送風時間の少なくとも一つを制御する。
【0080】
送風部7は、麹箱2に送風を付与する。送風の付与により、麹箱2の温度を制御できる。すなわち、麹箱2の温度制御を介して、麹100の温度を制御できる。麹箱2に送風が付与されると、麹100の温度が上がりすぎている状態を是正できる。麹100の成長の中で発熱が生じて温度が上がりすぎることがある。
【0081】
この温度が上がりすぎるのは、最高温度が仕様よりも高すぎる場合もあるし、ある製造工程での温度範囲を超えている場合もある。このような状態では、製造される麹100の品質に問題が生じかねない。
【0082】
このような場合には、温度制御部9は、送風部7を制御して送風を生じさせる。送風部7が麹箱2に送風を付与することで、麹箱2の温度を低下させることができる。麹箱2の温度が低下することで、麹箱2に収容されている麹100の温度も低下させることができる。この温度低下により、最高温度や一定の温度範囲内であるべき状態を超えている麹100の温度を、適正にできる。
【0083】
すなわち、送風部7は、麹箱2の温度が所定値より高い場合には、送風を付与することで麹箱2の温度を所定値以下に維持可能である。つまり、麹箱2に収容されている麹100の温度を所定値以下に維持可能である。
【0084】
これは、麹100の製造工程に応じた適正な麹100のあるべき温度範囲に、麹100の温度を維持できる。この維持によって、最高温度や温度範囲の逸脱を防止でき、製造される麹100の製造品質の適正化を実現できる。
【0085】
また、送風部7は、麹箱2の温度が一定範囲に収まるように麹箱2に送風を付与する。温度制御部9が、温度計測部8の結果と連動させながら、送風部7の送風量や送風時間を制御する。これにより、一定範囲に収めることができる。
【0086】
麹箱2の底面は、複数の空隙を備えることも好適である。例えば、メッシュなどの網目を備えることも好適である。網目などであることで、送風部7からの送風を麹100が受けやすくなり、麹100の温度制御が適切に行われやすいからである。また、温度計測部8での温度計測の精度も高まるからである。
【0087】
また、底面が網目などの複数の空隙を有する場合には、送風部7による送風が、麹100に均一に当たりやすくなる。これにより、麹100全体の温度制御が可能となる。また、このような均一での温度制御が可能であることで、麹100の均一的かつ全体的な成長が可能となる。
【0088】
もちろん、網目などは、麹100が落下しない程度の隙間や空隙である。送風による温度制御の均一化が図りやすい隙間や空隙の分布であることが好ましい。
【0089】
(クラウドによるシステム)
【0090】
図4は、本発明の実施の形態2における麹の製造装置を含む製造システムを示す模式図である。図4は、実施の形態1、2で説明した麹の製造装置1を含み、麹の製造装置1での麹製造を管理するシステムを示している。
【0091】
麹の製造装置1は、水分量算出部6や温度計測部8などの計測結果を、ネットワークを通じてコントローラー11に出力する。また、コントローラー11は、ネットワークを介してクラウドサーバー200と接続されている。クラウドサーバー200は、インターネット端末によりコントロールされる。
【0092】
また、クラウドサーバー200もしくはインターネット端末は、コントローラー11経由での麹の製造装置1での各種計測結果を記憶する。また、麹の製造装置1に関して、直接的あるいは間接的に種々の内容をセンシングするセンサー20も備わっている。このセンサー20も、温度や水分量を含めて、麹100の成長度合いに関する内容を検出する。
【0093】
これらのセンサー20の検出結果も、コントローラー11に出力される。また、コントローラー11からネットワークを介してクラウドサーバー200に出力される。クラウドサーバー200は、これらの検出結果などを記憶していく。
【0094】
コントローラー11は、実施の形態1、2で説明したように、送風部7の制御を行う。これにより温度制御を行う。また、含有水分量の変化に基づいて、麹の製造を終了させるなどの制御を行う。
【0095】
また、これらのコントローラー11での制御結果もクラウドサーバー200に出力される。クラウドサーバー200は、これらを記憶していく。この記憶が蓄積していくと、クラウドサーバー200は、コントローラー11による(温度制御部9など)制御レベルを調整することができる。この調整によって、より精度の高い麹の製造が可能となる。
【0096】
このようにクラウドサーバー200を基点としたシステムが構築されることで、麹の製造の自動化がより促進される。また、種々の記録が蓄積されることで、制御や麹の製造確認の精度を向上させることができる。
【0097】
なお、実施の形態1~2で説明された麹の製造装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0098】
1 麹の製造装置
2 麹箱
3 支持台
31 支持部分
4 歪計測部
5 変換部
6 水分量算出部
7 送風部
8 温度計測部
9 温度制御部
10 成長把握部
100 麹
図1
図2
図3
図4