(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105268
(43)【公開日】2022-07-13
(54)【発明の名称】誘電体及びそれを含む積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
C04B 35/468 20060101AFI20220706BHJP
C01G 23/00 20060101ALI20220706BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
C04B35/468
C01G23/00 C
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183045
(22)【出願日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0189832
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェ スン
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ヒー スン
(72)【発明者】
【氏名】セオ、イン テ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ヒュン ジョーン
(72)【発明者】
【氏名】リー、チャン ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョン ハン
【テーマコード(参考)】
4G047
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
4G047CA07
4G047CA08
4G047CB08
4G047CC02
4G047CD04
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E082AB03
5E082BC35
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い誘電率を有しながらも、耐電圧特性に優れた誘電体及び積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による誘電体は、(Ba
1-XCa
X)(Ti
1-y(Zr,Sn,Hf)
y)O
3(但し、0≦X≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分と、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Nb、Tb、Eu、Tm、La、Lu、及びYbのうち1つ以上の元素を含む第1副成分と、Si及び/またはAlを含む第2副成分と、Ba及び/またはCaを含む第3副成分と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Ba1-XCaX)(Ti1-y(Zr,Sn,Hf)y)O3(但し、0≦X≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分と、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Nb、Tb、Eu、Tm、La、Lu、及びYbのうち1つ以上の元素を含む第1副成分と、Si及び/またはAlを含む第2副成分と、Ba及び/またはCaを含む第3副成分と、を含み、下記関係式1~6のうち少なくとも2つの関係式を満たす、誘電体。
[関係式1]
0.162≦MTb/MDy≦1.20
[関係式2]
0.176≦MGd/MDy≦0.60
[関係式3]
0.081≦MSm/MDy≦0.176
[関係式4]
0.081≦MNb/MDy≦0.176
[関係式5]
0.60≦M2/M1≦1.16
[関係式6]
0.263≦M3/M2≦0.455
(関係式1~4中、MTb、MDy、MGd、MSm、及びMNbは、主成分のBサイト元素の合計100モルに対する第1副成分の各成分のモル数であり、関係式5及び6中、M1は主成分のTi100モルに対する第1副成分の総合計モル数であり、M2は主成分のTi100モルに対する第2副成分の総合計モル数であり、M3は主成分のBサイト元素の合計100モルに対する第3副成分の総合計モル数である。)
【請求項2】
前記関係式1~関係式4のうち少なくとも2つの関係式を満たす、請求項1に記載の誘電体。
【請求項3】
前記関係式5及び6を満たす、請求項1に記載の誘電体。
【請求項4】
前記関係式1~関係式4のうち1つの関係式を満たし、
前記関係式5及び6のうち1つの関係式を満たす、請求項1に記載の誘電体。
【請求項5】
前記関係式1~関係式4のうち少なくとも2つの関係式を満たし、
前記関係式5及び6を満たす、請求項1に記載の誘電体。
【請求項6】
前記関係式1~関係式6を満たす、請求項1に記載の誘電体。
【請求項7】
前記関係式1~4は、それぞれ下記関係式1-1~4-1に対応し、
前記関係式1~4のうち何れか1つ以上を満たす場合、下記関係式1-1~4-1のうち対応する関係式をさらに満たす、請求項1から6の何れか一項に記載の誘電体。
[関係式1-1]
0.108≦(MTb/MDy)/M3≦0.800
[関係式2-1]
0.118≦(MGd/MDy)/M3≦0.400
[関係式3-1]
0.054≦(MSm/MDy)/M3≦0.118
[関係式4-1]
0.054≦(MNb/MDy)/M3≦0.118
【請求項8】
前記第3副成分の含量は、主成分のBサイト元素の合計100モルに対して、0.5モル部以上及び/または3.0モル部以下の範囲を満たす、請求項1から7のいずれか一項に記載の誘電体。
【請求項9】
Mgを含む第4副成分をさらに含み、
前記第4副成分の含量は、主成分のBサイト元素の合計100モルに対して、0.25モル部以上及び/または1.0モル部以下の範囲を満たす、請求項1から8のいずれか一項に記載の誘電体。
【請求項10】
前記第3副成分の含量M3に対する第4副成分の含量M4の比率M4/M3は、0.125以上及び/または0.500以下の範囲を満たす、請求項9に記載の誘電体。
【請求項11】
前記第1副成分の含量は、主成分のBサイト元素の合計100モルに対して、0.3モル部以上及び/または5.7モル部以下の範囲を満たし、
前記第2副成分の含量は、主成分のBサイト元素の合計100モルに対して、0.5モル部以上及び/または6.5モル部以下の範囲を満たす、請求項1から10のいずれか一項に記載の誘電体。
【請求項12】
Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち1つ以上を含む第5副成分を含み、
前記第5副成分の含量は、Bサイト元素の合計100モルに対して、0.1モル部以上及び/または1.0モル部以下の範囲を満たす、請求項1から11のいずれか一項に記載の誘電体。
【請求項13】
前記主成分を含む複数の結晶粒と、2以上の結晶粒の間に配置される結晶粒界と、を含み、
結晶粒のコア部の平均直径D1は5nm以上、100nm以下であり、
結晶粒の平均直径D2は50nm以上、600nm以下である、請求項1から12のいずれか一項に記載の誘電体。
【請求項14】
(Ba1-XCaX)(Ti1-y(Zr,Sn,Hf)y)O3(但し、0≦X≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分を含み、
Si及び/またはAlを含む第2副成分が表面にコーティングされた複数の結晶粒と、2以上の結晶粒の間に配置される結晶粒界と、を含み、
結晶粒のコア部の平均直径D1は5nm以上、100nm以下であり、
結晶粒の平均直径D2は50nm以上、600nm以下である、誘電体。
【請求項15】
誘電体層、第1内部電極、及び第2内部電極を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体の外部面に配置され、前記第1内部電極及び第2内部電極とそれぞれ連結される第1外部電極及び第2外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、(Ba1-XCaX)(Ti1-y(Zr,Sn,Hf)y)O3(但し、0≦X≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分と、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Nb、Tb、Eu、Tm、La、Lu、及びYbのうち1つ以上の元素を含む第1副成分と、Si及び/またはAlを含む第2副成分と、Ba及び/またはCaを含む第3副成分と、を含み、下記関係式1~6のうち少なくとも2つの関係式を満たす、積層セラミック電子部品。
[関係式1]
0.162≦MTb/MDy≦1.20
[関係式2]
0.176≦MGd/MDy≦0.60
[関係式3]
0.081≦MSm/MDy≦0.176
[関係式4]
0.081≦MNb/MDy≦0.176
[関係式5]
0.60≦M2/M1≦1.36
[関係式6]
0.263≦M3/M2≦0.455
(関係式1~4中、MTb、MDy、MGd、MSm、及びMNbは、主成分のBサイト元素の合計100モルに対する第1副成分の各成分のモル数であり、関係式5及び6中、M1は主成分のTi100モルに対する第1副成分の総合計モル数であり、M2は主成分のTi100モルに対する第2副成分の総合計モル数であり、M3は主成分のBサイト元素の合計100モルに対する第3副成分の総合計モル数である。)
【請求項16】
前記関係式1~4は、それぞれ下記関係式1-1~4-1に対応し、
前記関係式1~4のうち何れか1つ以上を満たす場合、下記関係式1-1~4-1のうち対応する関係式をさらに満たす、請求項15に記載の積層セラミック電子部品。
[関係式1-1]
0.108≦(MTb/MDy)/M3≦0.800
[関係式2-1]
0.118≦(MGd/MDy)/M3≦0.400
[関係式3-1]
0.054≦(MSm/MDy)/M3≦0.118
[関係式4-1]
0.054≦(MNb/MDy)/M3≦0.118
【請求項17】
Mgを含む第4副成分をさらに含み、
前記第3副成分の含量M3に対する第4副成分の含量M4の比率M4/M3は、0.125以上及び/または0.500以下の範囲を満たす、請求項15または16に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項18】
前記主成分を含む複数の結晶粒と、2以上の結晶粒の間に配置される結晶粒界と、を含み、
結晶粒のコア部の平均直径D1は5nm以上、100nm以下であり、
結晶粒の平均直径D2は50nm以上、600nm以下である、請求項15から17のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体及びそれを含む積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子製品の小型化の傾向に伴い、積層セラミック電子部品においても小型化及び大容量化が求められている。積層セラミック電子部品の小型化及び大容量化の要求に応じて、積層セラミック電子部品の誘電体シートも薄層化している。
【0003】
一方、電子部品の耐電圧特性などは、部品内部の微細構造から大きい影響を受けることで知られている。誘電体シートの薄層化により、誘電体層の結晶粒のサイズ、成分の分布などが影響を受けるようになり、チップの耐電圧及び信頼性の特性が劣化するという問題が生じている。一般に、電子部品の結晶粒間の結晶粒界は高抵抗成分を有するため、誘電体層の内部の結晶粒界の比率を増加させることで、高信頼性を有する電子部品を提供するための研究が行われてきた。
【0004】
しかし、電子部品の超小型化/高容量化による誘電体層の薄層化により、製品の信頼性、高温耐電圧特性、及びdc-bias特性が低下するという問題は、依然として存在している。また、上記のような信頼性などの低下を防止するとともに、dc-biasが印加された条件で高い有効誘電率もしくは容量が実現される特性が益々求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の様々な目的の1つは、高い誘電率を有しながらも、耐電圧特性に優れた誘電体及び積層セラミック電子部品を提供することにある。
【0006】
本発明の様々な目的の1つは、高温信頼性に優れた誘電体及び積層セラミック電子部品を提供することにある。
【0007】
本発明の様々な目的の1つは、誘電体の緻密度及び微細構造の均一性に優れるとともに、二次相を制御可能な誘電体及び積層セラミック電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態による誘電体は、(Ba1-XCaX)(Ti1-y(Zr,Sn,Hf)y)O3(但し、0≦X≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分と、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Eu、Tm、La、Lu、及びYbのうち1つ以上の元素を含む第1副成分と、Si及び/またはAlを含む第2副成分と、Ba及び/またはCaを含む第3副成分と、を含み、下記関係式1~6のうち少なくとも2つの関係式を満たすことができる。
【0009】
本発明の他の実施形態による積層セラミック電子部品は、誘電体層、第1内部電極、及び第2内部電極を含むセラミック本体と、上記セラミック本体の外部面に配置され、上記第1内部電極及び第2内部電極とそれぞれ連結される第1外部電極及び第2外部電極と、を含み、上記誘電体層は、(Ba1-XCaX)(Ti1-y(Zr,Sn,Hf)y)O3(但し、0≦X≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分と、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Eu、Tm、La、Lu、及びYbのうち1つ以上の元素を含む第1副成分と、Si及び/またはAlを含む第2副成分と、Ba及び/またはCaを含む第3副成分と、を含み、下記関係式1~6のうち少なくとも2つの関係式を満たすことができる。
【0010】
[関係式1]
0.162≦MTb/MDy≦1.20
【0011】
[関係式2]
0.176≦MGd/MDy≦0.60
【0012】
[関係式3]
0.081≦MSm/MDy≦0.176
【0013】
[関係式4]
0.081≦MNb/MDy≦0.176
【0014】
[関係式5]
0.60≦M2/M1≦1.36
【0015】
[関係式6]
0.263≦M3/M2≦0.455
【0016】
関係式1~4中、MTb、MDy、MGd、MSm、及びMNbは、主成分のBサイト元素の合計100モルに対する第1副成分の各成分のモル数であり、関係式5及び6中、M1は主成分のTi100モルに対する第1副成分の総合計モル数であり、M2は主成分のTi100モルに対する第2副成分の総合計モル数であり、M3は主成分のBサイト元素の合計100モルに対する第3副成分の総合計モル数である。
【発明の効果】
【0017】
本発明による様々な効果の1つは、高い誘電率を有しながらも、耐電圧特性に優れた誘電体及び積層セラミック電子部品を提供することができることである。
【0018】
本発明による様々な効果の1つは、高温耐電圧に優れた誘電体及び積層セラミック電子部品を提供することができることである。
【0019】
本発明による様々な効果の1つは、誘電体の緻密度及び微細構造の均一性に優れるとともに、二次相を制御可能な誘電体及び積層セラミック電子部品を提供することができることである。
【0020】
但し、本発明の多様で且つ有益な利点と効果は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のセラミック本体を概略的に示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態による主成分のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。これは、本明細書に記載された技術を特定の実施形態に限定しようとするのではなく、本発明の実施例の多様な変更(modifications)、均等物(equivalents)、及び/または代替物(alternatives)を含むと理解されるべきである。図面の説明に係わり、類似の構成要素に対しては、類似の参照符号が用いられる。
【0023】
なお、本発明を明確に説明すべく、図面において説明と関係ない部分は省略し、様々な層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。
【0024】
本明細書において、「有する」、「有することができる」、「含む」、または「含むことができる」などの表現は、該当特徴(例えば、数値、機能、動作、または部品などの構成要素)の存在を指し、追加的な特徴の存在を排除しない。
【0025】
本明細書において、「AまたはB」、「Aまたは/及びBのうち少なくとも1つ」、または「Aまたは/及びBのうち1つまたはそれ以上」などの表現は、ともに挙げられた項目の全ての可能な組み合わせを含み得る。例えば、「AまたはB」、「A及びBのうち少なくとも1つ」、または「AまたはBのうち少なくとも1つ」は、(1)少なくとも1つのAを含む場合、(2)少なくとも1つのBを含む場合、または(3)少なくとも1つのA及び少なくとも1つのBの両方を含む場合を何れも指すことができる。
【0026】
図面において、X方向は第1方向、L方向または長さ方向、Y方向は第2方向、W方向または幅方向、Z方向は第3方向、T方向、または厚さ方向と定義されることができる。
【0027】
本発明は、誘電体に関するものであって、本発明による誘電体は電子部品に適用されるものである。本発明の誘電体を含む電子部品としては、キャパシター、インダクター、圧電体素子、バリスター、またはサーミスターなどが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0028】
本発明の一実施形態による誘電体は、(Ba1-XCaX)(Ti1-y(Zr,Sn,Hf)y)O3(但し、0≦X≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分と、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Eu、Tm、La、Lu、及びYbのうち1つ以上の元素を含む第1副成分と、Si及び/またはAlを含む第2副成分と、Ba及び/またはCaを含む第3副成分と、を含み、下記関係式1~6のうち少なくとも2つの関係式を満たすことができる。
【0029】
[関係式1]
0.162≦MTb/MDy≦1.20
【0030】
[関係式2]
0.176≦MGd/MDy≦0.60
【0031】
[関係式3]
0.081≦MSm/MDy≦0.176
【0032】
[関係式4]
0.081≦MNb/MDy≦0.176
【0033】
[関係式5]
0.60≦M2/M1≦1.16
【0034】
[関係式6]
0.263≦M3/M2≦0.455
【0035】
関係式1~4中、MTb、MDy、MGd、MSm、及びMNbは、主成分のBサイト元素の合計100モルに対する第1副成分の各成分のモル数であり、関係式5及び6中、M1は主成分のTi100モルに対する第1副成分の総合計モル数であり、M2は主成分のTi100モルに対する第2副成分の総合計モル数であり、M3は主成分のBサイト元素の合計100モルに対する第3副成分の総合計モル数である。
【0036】
一般に、結晶粒及び結晶粒界を含む誘電体における結晶粒界の分率を増加させることで、界面での電位障壁(potential barrier)を用いて電荷の移動度を減少させることができる。そのために、結晶粒界の分率を増加させるために、小さい結晶粒の分布を有する誘電体が研究されてきた。しかしながら、誘電体の厚さが薄くなるほど電界強度は急激に増加するようになり、ショットキー障壁(Schottky barrier)が低くなる現象が相対的によく起こるようになる。これにより、結晶粒分布を調節するだけでは、超薄層環境での誘電体の信頼性を担保することが困難である。
【0037】
また、結晶粒の内部においては、電子部品の製造過程で、電極などの酸化を防止するために還元雰囲気で焼成される場合が多く、低い酸素分圧により酸素空孔及び電子が形成されるようになる。したがって、超薄層環境での結晶粒の内部の信頼性を向上させるためには、酸素空孔などによるイオン伝導度(ionic conductivity)及び電子/正孔などの伝導度(electronic conductivity)の両方を制御する必要がある。
【0038】
本発明者らは、上記関係式1~6により、電子部品の絶縁抵抗(IR)劣化の主要因である酸素空孔を最小化することで、電荷の発生量自体を減らすとともに、主成分の仕事関数に比べて高い仕事関数を有する成分が結晶粒界に均一に分布するようにすることにより、ショットキー障壁(Schottky Barrier)を強化することができることを見出した。本発明の一実施形態による誘電体は、上記関係式1~6のうち2つ以上の関係式を満たすことで、結晶粒界を介して移動する電荷の流れを最小化することができるとともに、結晶粒の内部が高いn-type傾向性を有するようにすることにより、結晶粒の内部の伝導現象を抑えることができる。
【0039】
本発明の一例示において、本発明による誘電体は、上述の関係式1~関係式4のうち少なくとも2つの関係式を満たすことができる。本明細書において、少なくとも2つの関係式を満たすとは、対象になる関係式のうち2つの関係式を満たすか、3つ以上の関係式を満たすことのどちらも意味し得る。
【0040】
上記関係式のうち関係式1~4は、結晶粒の内部での電荷の発生量に関するものである。希土類元素は、Aサイトに置換される場合にはドナー(donor)として作用し、Bサイトに置換される場合にはアクセプター(acceptor)として作用する傾向がある。この際、Aサイト及び/またはBサイトのうちどの位置に置換されるかを決定する重要な要因として、イオン半径が挙げられる。したがって、DyやTbなどのような両性元素は、AサイトまたはBサイトに選択的に置換され、それ以外の中間サイズのイオン半径を有するHo、Yなども、アクセプターとドナーのバランスをとる役割を果たすことができる。そして、Dyよりもイオン半径が相対的に大きい元素は、ドナーとして機能しようとする傾向性が高く、Gd、Sm、Nbなどの元素をDy及び/またはYなどとともに用いることで、Aサイトのバランスを調節することができる。これに対し、上記成分を過度に用いる場合には、電子部品の信頼性が却って低下するという問題が発生することがある。したがって、本例示の誘電体のように、上記関係式1~4のうち少なくとも2つを満たす場合、結晶粒の内部における酸素空孔の発生を最小化し、電荷の発生を抑えることができる。
【0041】
本発明の一実施形態において、本発明による誘電体は、上述の関係式5及び6を満たすことができる。
【0042】
上記関係式のうち関係式5及び関係式6は、結晶粒界の電荷移動に関するものである。上述のように、従来は、結晶粒界のサイズを減らして結晶粒界の分率を増加させ、高抵抗成分を増加させる方法が用いられていた。しかし、上記関係式5及び/または6を満たす場合、仕事関数の高い第2副成分を結晶粒の界面に均一に分布させることができ、これにより、電荷の放出現象を抑えることができる。尚、誘電率とバルク抵抗値のバランスのためには、焼結温度などを調節するための第3副成分、及び/または結晶粒の内部の電荷移動を抑えるための第1副成分の含量を両方とも考慮する必要があり、上記関係式5及び/または関係式6の範囲を外れる場合、誘電率の低下及び信頼性の低下がもたらされる恐れがある。
【0043】
1つの例示において、本発明による誘電体は、上述の関係式1~関係式4のうち1つの関係式を満たし、関係式5及び6のうち1つの関係式を満たすことができる。この場合、結晶粒内部のバルク抵抗と結晶粒界の電荷放出の抑制をともに実現することができる。
【0044】
他の例示において、本発明による誘電体は、上述の関係式1~関係式4のうち少なくとも2つの関係式を満たし、関係式5及び6を満たすことができる。すなわち、関係式1~4のうち2つ以上の関係式を満たすとともに、関係式5及び6を全て満たすことができる。本例示の場合、結晶粒の内部及び結晶粒界の信頼性の向上をさらに増大させることができる。
【0045】
本発明の一実施形態において、本発明による誘電体は、上述の関係式1~6を全て満たすことができる。この際、結晶粒の内部における電荷発生及び伝導抑制と、結晶粒界の高抵抗化を極大化することができる。
【0046】
本発明の他の実施形態において、上述の関係式1~4は、それぞれ下記関係式1-1~4-1に対応することができる。
【0047】
[関係式1-1]
0.108≦(MTb/MDy)/M3≦0.800
【0048】
[関係式2-1]
0.118≦(MGd/MDy)/M3≦0.400
【0049】
[関係式3-1]
0.054≦(MSm/MDy)/M3≦0.118
【0050】
[関係式4-1]
0.054≦(MNb/MDy)/M3≦0.118
【0051】
上記関係式1-1~4-1中、MTb、MDy、MGd、MSm、MNb、及びM3は、上述と同一の意味を有し得る。すなわち、MTb、MDy、MGd、MSm、及びMNbは主成分のBサイト元素の合計100モルに対する第1副成分の各成分のモル数であり、M3は主成分のBサイト元素の合計100モルに対する第3副成分の総合計モル数であることができる。
【0052】
本実施形態による誘電体は、上述の関係式1~4のうち何れか1つ以上を満たす場合、上記関係式1-1~4-1のうち対応する関係式をさらに満たすことができる。上記関係式1~4が上記関係式1-1~4-1にそれぞれ対応するとは、関係式1と関係式1-1が対応し、関係式2と関係式2-1が対応し、関係式3と関係式3-1が対応し、関係式4と関係式4-1が対応することを意味し得る。すなわち、本実施形態において、誘電体が関係式1を満たす場合、関係式1-1もともに満たすことを意味し得る。
【0053】
上記関係式1-1~4-1は、上述の結晶粒内における電荷の発生を抑えるための成分の最適の範囲に関するものである。本発明による誘電体の第1副成分は、ドナー及びアクセプターのバランスにより酸素空孔の発生を抑え、結晶粒内の伝導を減少させる役割を果たす。特に、上記第1副成分がAサイトに置換されてドナーとして機能する場合、酸素空孔の発生濃度を減少させるのに効果的であるが、一定量以上用いる場合には、電子濃度の増加により過度な半導体化が発生し、絶縁抵抗が急激に低下するという問題が発生する恐れがある。したがって、上記関係式1-1~4-1は、Ba-サイト、すなわち、Aサイトに作用する第1副成分の含量の適切な範囲を示すものであり、上記関係式1-1~4-1を満たすことで、結晶粒内のバルク抵抗を最大限上昇させることができる。
【0054】
本発明の一実施形態による誘電体は主成分及び副成分を含み、上記副成分は、第1~第6副成分のうち少なくとも1つ以上を含むことができる。本明細書において、「主成分」とは、他の成分と比べて相対的に多い重量比率を占める成分を意味し、全誘電体の重量を基準に50重量%以上である成分を意味し得る。また、「副成分」とは、他の成分と比べて相対的に少ない重量比率を占める成分を意味し、全誘電体の重量を基準に50重量%未満である成分を意味し得る。
【0055】
以下、本発明の一実施形態による誘電体の各成分についてより具体的に説明する。
【0056】
a)主成分
(Ba1-XCaX)(Ti1-y(Zr,Sn,Hf)y)O3(但し、0≦X≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分を含むことができる。上記主成分は、例えば、BaTiO3に、Ca、Zr、Sn、及び/またはHfが一部固溶された形態で存在する化学物であることができる。上記組成式中、Xは0以上、1以下の範囲であり、yは0以上、0.5以下の範囲であることができるが、これに制限されるものではない。例えば、上記組成式中、Xが0であり、yが0であり、zが0である場合、上記主成分はBaTiO3になることができる。
【0057】
b)第1副成分
本発明の一実施形態によると、本発明による誘電体は、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Eu、Tm、La、Lu、及びYbのうち1つ以上の元素を含む第1副成分を含むことができる。
【0058】
上記第1副成分は、主成分のBサイト元素の合計100モルに対して、0.3モル部以上及び/または5.4モル部以下の範囲で含まれることができる。上記第1副成分の含量は、酸化物または炭酸塩のような添加形態を区分せず、第1副成分に含まれるY、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Eu、Tm、La、Lu、及びYbのうち少なくとも1つ以上の元素の含量を基準とすることができる。
【0059】
上記第1副成分は、本発明の一実施形態において、誘電体が適用された積層セラミック電子部品の信頼性が低下することを防ぐ役割を果たす。上記第1副成分が上述の範囲を外れる場合、高温耐電圧特性が低下する恐れがある。
【0060】
c)第2副成分
本発明の一実施形態によると、本発明による誘電体は、Si及び/またはAlを含む第2副成分を含むことができる。上記Si元素は、原料物質の段階では、Si元素の炭酸塩、酸化物、及び/またはガラスの形態で投入されるが、焼結過程を経た後には、酸化物及び/またはガラスの形態で誘電体層に含まれることができる。上記Si成分は、主に結晶粒界に分布し、高い仕事関数を有することで、結晶粒界の抵抗を高める機能を果たすことができる。これにより、優れた信頼性の積層セラミック電子部品を実現可能である。
【0061】
上記第2副成分は、主成分のBサイト元素の合計100モルに対して、0.5モル部以上及び/または5.0モル部以下の範囲で含まれることができる。上記第2副成分の含量は、ガラス、酸化物、または炭酸塩のような添加形態を区分せず、第2副成分に含まれるSi元素の含量を基準とすることができる。
【0062】
上記第2副成分の含量が主成分のBサイト元素の合計100モルに対して0.5モル部未満である場合には、誘電率及び高温内電圧が低下する恐れがあり、5.0モル部を超えて含まれる場合には、焼結性及び緻密度が低下し、二次相生成などの問題が発生する恐れがある。
【0063】
d)第3副成分
本発明の一実施形態によると、本発明による誘電体は、Ba及び/またはCaを含む第3副成分を含むことができる。
【0064】
上記第3副成分は、主成分のBサイト元素の合計100モルに対して、0.5モル部以上及び/または3.0モル部以下の範囲で含まれることができる。上記第3副成分の下限は、例えば、主成分100モル部に対して0モル部以上または0モル部超過であることができる。上記第3副成分の含量は、酸化物または炭酸塩のような添加形態を区分せず、第3副成分に含まれるBa及びCaのうち少なくとも1つ以上の元素の含量を基準とすることができる。
【0065】
上記第3副成分を、主成分のBサイト元素の合計100モルに対して5.0モル部以下で含むことで、本発明による誘電体の結晶構造を調節することができる。
【0066】
e)第4副成分
本発明の一実施形態によると、本発明による誘電体は、Mgを含む第4副成分を含むことができる。
【0067】
上記第4副成分は、原子価固定アクセプター(fixed-valence acceptor)元素として機能することができ、主成分のBサイト元素の合計100モルに対して、0.25モル部以上及び/または1.0モル部以下の範囲で含まれることができる。上記第4副成分の含量は、酸化物または炭酸塩のような添加形態を区分せず、第4副成分に含まれるMg元素の含量を基準とすることができる。
【0068】
上記第4副成分の含量が、主成分のBサイト元素の合計100モルに対して1.0モル部を超える場合には、誘電率が低くなり、高温耐電圧特性が低下するという問題が発生する恐れがある。
【0069】
1つの例示において、上記第3副成分の含量M3に対する第4副成分の含量M4の比率M4/M3は、0.125以上及び/または0.500以下の範囲を満たすことができる。第3副成分と第4副成分の比率が上記範囲を満たすようにすることで、誘電体の異常な粒成長を抑え、均一な結晶粒の形成が可能である。
【0070】
f)第5副成分
本発明の一実施形態によると、本発明による誘電体は、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち1つ以上を含む第5副成分を含むことができる。
【0071】
上記第5副成分は、原子価可変アクセプター(variable-valence acceptor)元素として機能することができ、主成分のBサイト元素の合計100モルに対して、0.1モル部以上及び/または1.0モル部以下の範囲で含まれることができる。上記第5副成分の含量は、酸化物または炭酸塩のような添加形態を区分せず、第5副成分に含まれるMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち少なくとも1つ以上の元素の含量を基準とすることができる。例えば、上記第5副成分に含まれるVの酸化物であるV2O5が0.1モル部含まれる場合、Vの含量の総和は0.2モル部であることができる。
【0072】
上記第5副成分は、誘電体組成物の耐還元性を改善させ、且つ誘電体が適用された積層セラミック電子部品の高温耐電圧特性を向上させる役割を果たす。
【0073】
1つの例示において、本発明の誘電体は、上述の主成分を含む複数の結晶粒(grain)と、2以上の結晶粒の間に配置される結晶粒界(grain boundary)と、を含むことができる。
図4は本発明の一実施形態による誘電体の微細構造を説明するための概略図である。本発明による誘電体は、上述の主成分及び副成分を焼結して形成されたものであることができる。主成分及び副成分を焼結して形成された誘電体111は、結晶粒(grain)11と結晶粒界(grain boundary)11cを含むことができる。
【0074】
上記結晶粒はコア部及びシェル部を含むことができ、上記コア部を囲むようにシェル部が配置されることができる。この際、上記コア部の平均直径D1は、5nm以上、100nm以下であり、上記結晶粒の平均直径D2は、50nm以上、600nm以下であることができる。
図5は上記結晶粒を模式的に示す図である。
図5を参照すると、上記結晶粒は、シェル部の内部にコア部が配置されていることができる。上記コア部は、副成分が固溶されていない領域を意味し、上記シェル部は、コア部を除いた残りの領域を意味し得る。上記コア部及びシェル部は、上記切断面のTEM-EDS画像を分析することで区別することができる。
【0075】
コア部の平均直径D1及び結晶粒の平均直径D2は、本体の幅方向の中央で切断した長さ及び厚さ方向の断面(L-T断面)の中央部を1万倍率の透過電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)を用いてスキャンしたイメージで測定することができる。上記イメージでエネルギー分散型分光分析(EDS、Energy Disperse X-Ray Spectrometer)を用いてコア部及びシェル部を区別することができる。このとき、コア部及びシェル部は、副成分の固溶有無によって相違する色で区分することができる。コア部及びシェル部を区別した後、上記イメージにおいてコア-シェル構造を有する任意の10個の結晶粒を選択して、それぞれの結晶粒の最大直径を測定した値の平均値をD2にすることができ、それぞれの結晶粒において、コア部の最大直径を測定した値の平均値をD1にすることができる。
【0076】
本発明の他の実施形態において、本発明による誘電体は、(Ba1-XCaX)(Ti1-y(Zr,Sn,Hf)y)O3(但し、0≦X≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分を含み、Si及び/またはAlを含む第2副成分が表面にコーティングされた複数の結晶粒、及び2以上の結晶粒の間に配置される結晶粒界を含み、結晶粒のコア部の平均直径D1が5nm以上、100nm以下であり、結晶粒の平均直径D2が50nm以上、600nm以下であることができる。
【0077】
図6は表面にSiO
2がコーティングされたチタン酸バリウム(BaTiO
3)粒子を撮影したSEM画像である。
図6を参照すると、主成分の製造段階でSiを母材の表面に付着し、それを熱処理すると、主成分の表面にSiを均一にコーティング可能であることが分かる。表面にSiが均一にコーティングされた主成分を用いて誘電体を形成する場合、結晶粒の表面にSiをコーティングすることができ、焼結後に結晶粒界の領域にSiが均一に分布されるようにすることで、結晶粒界の抵抗の向上を極大化することができる。
【0078】
また、本発明は、積層セラミック電子部品に関する。
【0079】
図1は本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を示す概略的な斜視図であり、
図2は
図1のセラミック本体を示す斜視図であり、
図3は
図1のI-I'線に沿った断面図であり、
図4は
図3のA領域の拡大図である。
【0080】
図1から
図4を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100は、誘電体層111、第1内部電極121、及び第2内部電極122を含むセラミック本体110を含むことができる。上記セラミック本体110の外部面に、上記第1内部電極121と連結される第1外部電極131と、上記第2内部電極122と連結される第2外部電極132と、を含むことができる。
【0081】
この際、上記誘電体層は、(Ba1-XCaX)(Ti1-y(Zr,Sn,Hf)y)O3(但し、0≦X≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分と、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Eu、Tm、La、Lu、及びYbのうち1つ以上の元素を含む第1副成分と、Si及び/またはAlを含む第2副成分と、Ba及び/またはCaを含む第3副成分と、を含み、下記関係式1~6のうち少なくとも2つの関係式を満たすことができる。
【0082】
[関係式1]
0.162≦MTb/MDy≦1.20
【0083】
[関係式2]
0.176≦MGd/MDy≦0.60
【0084】
[関係式3]
0.081≦MSm/MDy≦0.176
【0085】
[関係式4]
0.081≦MNb/MDy≦0.176
【0086】
[関係式5]
0.60≦M2/M1≦1.16
【0087】
[関係式6]
0.263≦M3/M2≦0.455
【0088】
関係式1~4中、MTb、MDy、MGd、MSm、及びMNbは、主成分のBサイト元素の合計100モルに対する第1副成分の各成分のモル数であり、関係式5及び6中、M1は主成分のTi100モルに対する第1副成分の総合計モル数であり、M2は主成分のTi100モルに対する第2副成分の総合計モル数であり、M3は主成分のBサイト元素の合計100モルに対する第3副成分の総合計モル数である。
【0089】
上記セラミック本体110の具体的な形状は特に制限されないが、図示されたように、セラミック本体110は、六面体形状またはそれに類似の形状からなることができる。焼成過程における、セラミック本体110に含まれているセラミック粉末の収縮により、セラミック本体110は、完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0090】
上記セラミック本体110は、誘電体層111に第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、誘電体層111に第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを厚さ方向(Z方向)に交互に積層することで形成されることができる。
【0091】
上記セラミック本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が第3方向に交互に積層されていることができる。セラミック本体110を形成する複数の誘電体層111は焼結された状態であって、隣接する誘電体層111の間の境界は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いずには確認が困難な程度に一体化されていることができる。
【0092】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111は、上述の誘電体が層状構造を有するものであり、(Ba1-XCaX)(Ti1-y(Zr,Sn,Hf)y)O3(但し、0≦X≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分及び副成分を含むことができる。また、上記誘電体層111を形成する材料は、上述の誘電体の主成分及び副成分の他に、本発明の目的に応じて、種々のセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0093】
上記誘電体層111は、上述の主成分及び副成分を含むスラリーに、必要に応じて添加剤を追加し、それをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥して複数のセラミックシートを準備することで形成されることができる。上記セラミックシートは、上記スラリーをドクターブレード法により数μmの厚さを有するシート(sheet)状に製作することで形成されることができるが、これに限定されるものではない。
【0094】
本発明の他の実施形態において、上述の関係式1~4は、それぞれ下記関係式1-1~4-1に対応することができる。
【0095】
[関係式1-1]
0.162≦(MTb/MDy)/M3≦1.20
【0096】
[関係式2-1]
0.176≦(MGd/MDy)/M3≦0.60
【0097】
[関係式3-1]
0.081≦(MSm/MDy)/M3≦0.176
【0098】
[関係式4-1]
0.081≦(MNb/MDy)/M3≦0.176
【0099】
本発明の一実施形態において、本発明による積層セラミック電子部品は、Mgを含む第4副成分をさらに含み、第3副成分の含量M3に対する第4副成分の含量M4の比率M4/M3は、0.125以上及び/または0.500以下の範囲を満たすことができる。
【0100】
本発明の他の実施形態において、本発明による積層セラミック電子部品は、上述の主成分を含む複数の結晶粒と、2以上の結晶粒の間に配置される結晶粒界と、を含み、結晶粒のコア部の平均直径D1が5nm以上、100nm以下であり、結晶粒の平均直径D2が50nm以上、600nm以下であることができる。
【0101】
上記誘電体層は、上述の主成分及び第1~第5副成分を含むことができる。上記主成分、副成分、関係式、及び平均直径などについての内容は上述のとおりであるため省略する。
【0102】
第1及び第2内部電極121、122は、各端面がセラミック本体110の対向する両端部にそれぞれ露出するように積層されることができる。上記第1及び第2内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1つ以上の物質を含む導電性ペーストを用いて形成されることができる。上記導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0103】
本発明の一例示による積層セラミック電子部品は、セラミック本体の外部面に第1外部電極131及び第2外部電極132が配置されることができる。第1外部電極131は第1内部電極121と連結され、第2外部電極132は第2内部電極122と連結されることができる。
【0104】
第1外部電極131及び第2外部電極132は導電性金属を含むことができる。上記導電性金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、タングステン(W)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、及びこれらの合金のうち1つ以上の導電性金属であることができるが、これに制限されるものではない。
【0105】
以下、実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、これは発明の具体的な理解のためのものにすぎず、本発明の範囲が実験例によって限定されるものではない。
【0106】
[実験例]
主成分の原料物質として、平均粒子サイズが30nm~100nmであるBaTiO3粉末を使用した。下記表1に明示された組成1-1~組成5-3に該当する主成分と副成分の原料を、ジルコニアボールを混合/分散メディアとして用い、エタノール/トルエンと分散剤を混合し、機械的ミリング(milling)を10時間行った。そして、上記混合液にバインダーを混合した後、10時間さらにミリング(milling)を行った。
【0107】
製造されたスラリーを用いて、ヘッド吐出方式のオン-ロールコーター(on roll coater)により厚さ0.8μmと10μmの成形シートを製造した。そして、上記成形シートにNi内部電極を印刷した。
【0108】
上記成形シートを複数層積層し、カバー用シート及びチップの両面にマージン領域のためのセラミックシートを付着して圧着バー(bar)を製作した。上記圧着バーを切断器を用いて0603サイズ(横X縦X高さ:0.6mmX0.3mmX0.3mm)のグリーンチップを製作した。
【0109】
製作が完了した0603サイズのプロトタイプチップは、約900℃でか焼を行った後、還元雰囲気0.1%のH2/99.9%のN2~1.0%のH2/99.0%のN2(H2O/H2/N2雰囲気)で、約1200℃の温度、維持時間10分~1時間の範囲で焼成した後、950℃においてN2雰囲気で再酸化熱処理を3時間行った。
【0110】
製造されたプロトタイプチップに対して電気的特性を測定し、緻密度、微細構造の均一性、及び二次相の生成などを総合的に確認した。下記試料の含量は、成分分析誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)分析により測定し、上記ICP分析は、誘導結合プラズマ発光分光分析器(ICP-OES;Optima 7300DV、PerkinElmer社)を用いて行った。また、各元素の存在有無及び元素の相対的な比率は、FEI社製のTiatan cubed G2 60-300などのようなTEM、STEMマッピング(mapping)装備により測定した。
【0111】
【0112】
上記表1において、MREはDyを除いた第1副成分のモル数であり、MDyはDyのモル数であり、M1は第1副成分の合計モル数であり、Coated SiはSiO2酸化物をイオン化してBaTiO3の表面に均一にコーティングした場合を表す。
【0113】
【0114】
上記表2は、表1に明示された番号のサンプルに該当するプロトタイプチップの特性を示す。上記表2において、M2は第2副成分の合計モル数であり、M3は第3副成分の合計モル数である。
【0115】
上記表1及び表2において、誘電率は、LCR meterを用いて1kHz、AC0.5V/μmの条件で容量を測定し、静電容量とプロトタイプチップの誘電体の厚さ、内部電極の面積、積層数からプロトタイプチップの誘電体の誘電率を計算した。その結果、誘電率が1500未満である場合を×、1500以上2000未満である場合を△、2000以上3000未満である場合を○、3000以上である場合を◎とそれぞれ定義した。
【0116】
耐電圧特性は、製造されたプロトタイプチップから任意に10個ずつサンプルを取り、DC10V/μmを印加した状態で、印加電圧を増加させながら測定した。絶縁破壊が起こるしきい電圧値が20V未満である場合を×、20V以上30V未満である場合を△、30V以上40V未満である場合を○、40V以上である場合を◎とそれぞれ定義した。
【0117】
高温信頼性は、STEP-IR装備を用いて、105℃の高温環境でDC10V/μmを印加して30分間維持してから昇圧する条件で測定し、IR劣化寿命を比較した。高温信頼性の判定基準は、IR degradationが発生する寿命時間から判断した。10個全てのチップに故障が発生する時間が3時間未満である場合を×、3時間以上6時間未満である場合を△、6時間以上10時間未満である場合を○、10時間以上である場合を◎とそれぞれ定義した。
【0118】
チップの構造的特性については、焼結チップの破断面及び研磨面においてSEMにより観察された各部位毎の緻密度と平均結晶粒のサイズ変化などの差を比較した。このうち緻密度と二次相頻度は、50Kの倍率の写真で観察される、面積当たりの気孔及び二次相の個数がそれぞれ100個以上である場合を×、100個未満70個以上である場合を△、70個未満40個以上である場合を○、40個未満である場合を◎とそれぞれ定義した。
【0119】
微細構造の均一性は、全体平均結晶粒のサイズに対する標準偏差値(STDEV)が150以上の値を有する場合を×、150未満120以上である場合を△、120未満80以上である場合を○、80未満である場合を◎とそれぞれ定義した。
【0120】
試料1~8を参照すると、Tb/Dyが0.162よりも小さい場合、誘電率は優れた結果が得られるが、構造的特性、耐電圧、及び高温信頼性などが低下する結果が得られることが分かる。また、Tb/Dyが1.20を超える場合、構造的特性は優れるが、耐電圧と高温信頼性などの電気的特性が低下することが確認できる。したがって、Tb/Dyの含量の比率が0.162以上及び/または1.20以下の範囲を満たすことが必要であることが確認できる。
【0121】
試料9~15を参照すると、Gd/Dyが0.176よりも小さい場合、構造的特性及び誘電率は優れた結果が得られるが、耐電圧及び高温信頼性などが低下する結果が得られることが分かる。また、Gd/Dyが0.60を超える場合にも、同様に耐電圧と高温信頼性などの電気的特性が低下することが確認できる。したがって、Gd/Dyの含量の比率が0.176以上及び/または0.60以下の範囲を満たすことが必要であることが確認できる。
【0122】
試料16~22を参照すると、Sm/Dyが0.081よりも小さい場合、耐電圧及び高温信頼性などにおいて非常に良くない結果が得られることが分かる。また、Sm/Dyが0.176を超える場合、非常に優れた誘電率を示すが、耐電圧と高温信頼性などの電気的特性が低下することが確認できる。したがって、Sm/Dyの含量の比率が0.081以上及び/または0.176以下の範囲を満たすことが必要であることが確認できる。
【0123】
試料23~29を参照すると、Nb/Dyが0.081よりも小さい場合、耐電圧及び高温信頼性などにおいて非常に良くない結果が得られることが分かる。また、Nb/Dyが0.176を超える場合、非常に優れた誘電率を示すが、耐電圧と高温信頼性などの電気的特性が低下することが確認できる。したがって、Nb/Dyの含量の比率が0.081以上及び/または0.176以下の範囲を満たすことが必要であることが確認できる。
【0124】
試料30~49を参照すると、同一の第1副成分の含量を適用しても、第2副成分の含量が適正範囲を外れた比率で添加される場合、誘電率及び緻密度などが低下することが確認でき、同一のSiの含量を適用しても、第3副成分との含量の比率が所定範囲を外れる場合、誘電率が低下することが分かる。したがって、希土類に該当する第1副成分が同一の含量であっても、第2副成分及び第3副成分との含量の比率が重要な影響を与えることが確認できる。
【0125】
試料50~54は、表面にSiがコーティングされた主成分を用いた結果を示す。試料50~54を参照すると、主成分の表面にSiが均一に分布する場合、第1副成分の含量が同一であっても、電気的特性がより優れた結果が得られることが確認できる。すなわち、主成分の表面にSiが均一に分布するように調節する場合、結晶粒界の界面抵抗をより効果的に向上させることができることが確認できる。
【0126】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態及び添付図面により限定されず、添付の特許請求の範囲により限定しようとする。よって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者による多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0127】
100 積層セラミック電子部品
110 セラミック本体
111 誘電体層
121、122 第1内部電極及び第2内部電極
131、132 第1外部電極及び第2外部電極
11 結晶粒
11a コア
11b シェル
11c 結晶粒界