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特開2022-105287音響フィルタを有するマイクロホンアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105287
(43)【公開日】2022-07-13
(54)【発明の名称】音響フィルタを有するマイクロホンアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/22 20060101AFI20220706BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20220706BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
H04R1/22 320
H04R1/02 106
G10K11/172
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021206499
(22)【出願日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】20218015
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503021401
【氏名又は名称】ジーエヌ ヒアリング エー/エス
【氏名又は名称原語表記】GN Hearing A/S
【住所又は居所原語表記】Lautrupbjerg 7, 2750 Ballerup, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルネ クリステンセン
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ クリスチャンセン
(72)【発明者】
【氏名】エミル ホルム クヌーセン
(72)【発明者】
【氏名】ゴイコ オブラドビック
【テーマコード(参考)】
5D017
5D018
5D061
【Fターム(参考)】
5D017BC18
5D018BA01
5D061CC04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】補聴器等のリスニング装置が、強い超音波を送信する超音波センサの周囲にある状況でも、発生する不快な可聴効果を低減する。
【解決手段】マイクロホンアセンブリは、マイクロホン101およびフィルタハウジング110のリム119に取り付けられたキャリア102、103、120を備える。キャリア及びフィルタハウジングは、キャビティが音響チャンバ111および第2の音響通路112を備える。第2の音響通路は、第1の音響通路121への第1の開口と、音響チャンバへの第2の開口とを有し、音響チャンバおよび第2の音響通路が共同で、第1の音響通路を通って伝播する音波における第1の周波数帯域内の音響エネルギーを抑制するヘルムホルツ共鳴器を確立する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロホンアセンブリであって、
第1の音響ポート(106)を有するマイクロホン(101)であって、前記マイクロホン(101)は、前記第1の音響ポート(106)を通って受信された音波を電気信号に変換するように構成されている前記マイクロホン(101)と、
第2の音響ポート(117)およびリム(119)を有するフィルタハウジング(110)と、
前記マイクロホン(101)および前記フィルタハウジング(110)の前記リム(119)に取り付けられたキャリア(102、103、120)であって、前記キャリア(102、103、120)および前記フィルタハウジング(110)は、共同で、前記第1の音響ポート(106)および前記第2の音響ポート(117)を流体的に接続する第1の音響通路(121)を有するキャビティを囲み、それによって音波が前記第2の音響ポート(117)から前記第1の音響通路(121)を通って前記第1の音響ポート(106)に伝播することを可能にする、前記キャリア(102、103、120)と、を備え、
ポート軸(118)は、前記第1の音響ポート(106)を通る音響流の方向に延び、さらに前記第1の音響ポート(106)の幾何学的中心を通って延びる直線として定義され、
前記キャリア(102、103、120)および前記フィルタハウジング(110)は、前記キャビティが、音響チャンバ(111)および第2の音響通路(112)を備えるように構成され、前記第2の音響通路(112)は、前記第1の音響通路(121)への第1の開口および前記音響チャンバ(111)への第2の開口とを有し、前記音響チャンバ(111)および前記第2の音響通路(112)は、共同で、前記第1の音響通路(121)を通って伝播する音波における第1の周波数帯域内の音響エネルギーを抑制するためのヘルムホルツ共鳴器(Helmholtz resonator)を確立しており、前記第1の周波数帯域は、超音波周波数領域内にある、マイクロホンアセンブリ。
【請求項2】
前記マイクロホン(101)は、受信した音波を電気信号に変換するためのトランスデューサ素子(104)を備え、前記トランスデューサ素子(104)は、前記キャリア(102、103、120)の第1の側に配置され、前記フィルタハウジング(110)は、前記キャリア(102、103、120)の前記第1の側とは反対側の第2の側に配置され、前記トランスデューサ素子(104)は、前記第1の音響ポート(106)および前記第1の音響通路(121)を介して前記第2の音響ポート(117)に流体的に接続される、請求項1に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項3】
前記第2の音響ポート(117)を通る音響流の方向は、前記ポート軸(118)に平行であり、かつ/または、前記ポート軸(118)は、前記第2の音響ポート(117)を通って、好ましくは、前記第2の音響ポート(117)の幾何学的中心を通って延びる、請求項1または2に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項4】
前記キャリア(103、120)は、前記第1の音響通路(121)の少なくとも一部を囲むボアを有し、前記ボアの中心軸は、前記ポート軸(118)と一致する、請求項1から3のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項5】
前記フィルタハウジング(110)は、中央スカート(115)によって形成される窪み(503)を有する中央部分(502)を備える内側部分(501)を備え、前記中央スカート(115)は、前記キャリア(102、103、120)に向かって延び、前記キャリア(102、103、120)から距離を置いたところで前記第2の音響ポート(117)を囲むフランジ(116)で終端する、請求項1から4のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項6】
前記フィルタハウジング(110)は、前記リム(119)まで延びる周囲スカート(113)によって囲まれた内側部分(501)を備える、請求項1から5のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項7】
前記フィルタハウジング(110)は、前記ポート軸(118)に関して回転対称である、請求項1から6のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項8】
前記フィルタハウジング(110)の前記内側部分(501)は、トラフを有する少なくとも1つのデボス部分(601)を有し、前記デボス部分(601)は、前記周囲スカート(113)から前記第2の音響ポート(117)に向かって延び、前記トラフで前記キャリア(102、103、120)に到達し、前記音響チャンバ(111、602)および前記第2の音響通路(112、604)に加えて、前記キャビティは、さらなる音響チャンバ(603)およびさらなる音響通路(605)を備え、
前記さらなる音響通路(605)は、前記第1の音響通路(121)への第1の開口および前記さらなる音響チャンバ(603)への第2の開口を有し、前記さらなる音響チャンバ(603)および前記さらなる音響通路(605)は、共同で、前記第1の音響通路(121)を通って伝播する音波において、前記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域内の音響エネルギーを抑制するためのさらなるヘルムホルツ共鳴器を確立する、請求項6に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項9】
前記フィルタハウジング(110)は、金属の成形片であり、前記リム(119)は、はんだ材料または接着剤によって前記キャリア(102、103、120)に取り付けられている、請求項1から8のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項10】
少なくとも前記ヘルムホルツ共鳴器の共振周波数よりも低い周波数で音響エネルギーを減衰させる空気透過性フィルタ部材をさらに備え、前記空気透過性部材は、前記第1の音響ポート(106)の内側または前記第1の音響ポート(106)に配置される、請求項1から9のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項11】
前記キャリアは、シリコン基板(103)および/または回路基板(120)を備える、請求項1から10のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項12】
前記キャリア(103、120)は、凹部またはボアを有し、前記凹部またはボアは、前記フィルタハウジング(110)を完全にまたは部分的に収容する、請求項11に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項13】
前記キャリアは、シリコン基板(103)および/またはマイクロホンハウジング(102)を備える、請求項1から12のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項14】
前記マイクロホン(101)は、シリコン基板(103)と、前記シリコン基板(103)まで下方に延びる周囲スカートによって囲まれた頂部を有するマイクロホンハウジング(102)とを備え、
前記第1の音響ポート(106)は、前記頂部を通って延び、
前記マイクロホンハウジング(102)は、前記シリコン基板(103)の第1の側に取り付けられ、
前記キャリアは、前記マイクロホンハウジング(102)を備え、
前記フィルタハウジング(110)は、前記マイクロホンハウジング(102)上または前記マイクロホンハウジング(102)の周囲で、前記シリコン基板(103)の前記第1の側に配置される、請求項13に記載のマイクロホンアセンブリ。
【請求項15】
少なくとも1つの請求項1から14のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリを備えるリスニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響フィルタを有するマイクロホンアセンブリに関する。本発明は、例えば、補聴器、ヘッドセット、および他のリスニング装置によってピックアップされる音声信号に対する環境内の超音波からの望ましくない影響を低減するために使用されてもよい。
【0002】
(導入)
超音波の送信と受信に基づく超音波センサは、環境内の障害物を車両運転者に知らせる運転者支援システムなどにますます使用されている。良好な精度および十分な範囲を得るために、比較的強い音波信号が超音波範囲内で送信され得る。比較的強い音波信号は、超音波センサを取り囲む環境の空気中を伝播する。人間の聴覚周波数範囲を超える周波数で発生するので、超音波センサを取り囲む環境に存在するにもかかわらず、人間は通常はこれらの超音波信号を聞くことができない。
【0003】
しかし、環境からの音波を捕捉する補聴器、ヘッドセットおよび他のタイプの電子装置のようなリスニング装置も、日常生活において多くの状況で使用されている。リスニング装置は、しばしばユーザによって着用され、ますますコンパクトになり、非常に小さいサイズを有し得る。そのため、小型マイクロホン、または小型マイクロホンのアレイがしばしば使用される。小さいサイズは、典型的には、そのようなマイクロホンを超音波音に対して敏感にする。いわゆるMEMSマイクロホンと呼ばれる例としての多くのマイクロホンは、広い帯域幅を有し、30~60KHzの範囲のような超音波範囲内で上限カットオフ周波数に到達する。
【0004】
リスニング装置が超音波を送信する超音波センサの周囲にある状況では、マイクロホンに過負荷をかける大きなリスクがある。このような過負荷のために、例えば補聴器やヘッドセットのユーザは、これらの超音波信号をピックアップし、それらを不快な可聴アーチファクトとして再生する彼らのリスニング装置に苦情を呈してきた。このようなアーチファクトは、マイクロホンによって再生される電気マイクロホン音声信号におけるクリッピングおよび歪みによって引き起こされ得る。例えばマイクロホンと一体化されたアナログ-デジタル変換を採用するデジタルリスニング装置の場合には、超音波周波数のエイリアスがとても低い周波数(場合によっては可聴周波数)で現れるように、強いエイリアシング効果が生じることも観察される。
【0005】
したがって、強い超音波の、音波信号によって生じるこれらの不快な可聴効果を低減する解決策が必要とされている。特に、超音波信号の受動的または音響的抑制に関する改良が必要とされている。そもそも電子フィルタはマイクロホンが飽和するのを妨げないので、電子的または能動的な抑制はあまり望ましくない。
【背景技術】
【0006】
US 2013/0129136 A1(その文面でAnalog Devices Inc.に譲渡)は、音波が基板を通過することを可能にする開口を有する基板と、第1の内容積を規定するために基板に取り付けられた蓋と、第1の内容積内で基板に取り付けられたマイクロホンとを有するマイクロホンモジュールを開示している。これにより、ボトムポートマイクロホンが提供される。さらに、マイクロホンモジュールは、基板に結合されており、開口を覆うハウジングを含む。ハウジングは、第2の内容積を形成し、音が第2の内容積に入ることを可能にするように構成された音響ポートを含む。モジュールは、ハウジング内の音響ポートから延びるパイプと、第2の内容積の外部の少なくとも1つの外部インターフェースパッドとをさらに含む。パイプは、音波を受信し、それらをハウジング内の音響ポートに向けるために、開放端を有する。このマイクロホンモジュールは、ホストシステム内でのマイクロホンの配置に関連するいくつかの問題を解決し、音響信号がマイクロホンに確実に到達できるようにすることを目的としていると主張されている。
【0007】
しかしながら、強い超音波信号の抑制に関連する問題が残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術のマイクロホンアセンブリの幾つかの欠点を有していない、音響フィルタを備えたマイクロホンアセンブリを提供することである。
【0009】
本発明のこれらおよび他の目的は、独立請求項に定義され、以下の説明でさらに説明される本発明によって達成される。本発明のさらなる目的は、従属請求項および本発明の詳細な説明において定義される実施形態によって達成される。
【0010】
本明細書では、単数形「a」、「an」、および「the」は、特徴、動作、要素、または構成要素などのそれぞれの実体の存在を特定するが、さらなる実体の存在または追加を排除するものではない。同様に、「有する(have)」、「含む(include)」、および「備える(comprise)」という語は、それぞれの実体の存在を特定するが、さらなる実体の存在または追加を排除するものではない。用語「および/または」は、関連する実体のうちの1つまたは複数の存在を特定する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
マイクロホンアセンブリは、第1の音響ポートを有するマイクロホンを備え、マイクロホンは、第1の音響ポートを通って受信された音波を電気信号に変換するように構成される。マイクロホンアセンブリは、第2の音響ポートおよびリムを有するフィルタハウジングを備える。マイクロホンアセンブリは、マイクロホンおよびフィルタハウジングのリムに取り付けられたキャリアを備え、キャリアおよびフィルタハウジングは、共同で、第1の音響ポートおよび第2の音響ポートとを流体的に接続する第1の音響通路を有するキャビティを囲み、それによって、音波が第2の音響ポートから第1の音響通路を通って第1の音響ポートへ伝播することを可能にする。ポート軸は、第1の音響ポートを通る音響流の方向に延び、さらに第1の音響ポートの幾何学的中心を通って延びる直線として定義される。ポートを通る音響流の方向は、使用時に音波がポートを通って進む主方向または平均方向として理解されるべきである。
【0012】
キャリアおよびフィルタハウジングは、キャビティが、音響チャンバおよび第2の音響通路を備えるように構成され、第2の音響通路は、第1の音響通路への第1の開口と、音響チャンバへの第2の開口とを有し、音響チャンバおよび第2の音響通路は、共同で、第1の音響通路を通って伝播する音波における第1の周波数帯域内の音響エネルギーを抑制するためのヘルムホルツ共鳴器(Helmholtz resonator)を確立する。
【0013】
ヘルムホルツ共鳴器は、音響フィルタであり、この構成の1つの利点は、空中の音波がマイクロホンの第1の音響ポートに到達する前に、第1の周波数帯域内、例えば超音波周波数で、空中の音波の効率的な抑制を可能にすることである。これは、同様に、電子回路を含むマイクロホンの飽和のリスクを効果的に低減するために有利である。また、A/D変換時のエイリアシング効果を低減する点でも有利である。
【0014】
有効性に関しては、ヘルムホルツ共鳴器は、第1の周波数帯域内の空中の音波の抑制、例えば30~35dBの大幅に改善された抑制を可能にする。第1の周波数帯域は、超音波周波数領域におけるインターバルであってもよい。本文脈では、超音波周波数領域は、10kHzより上、好ましくは20kHzより上の周波数をカバーする。いくつかの例では、ヘルムホルツ共鳴器は、20~50kHzのより広い範囲内にある狭い周波数帯域(例えば30~40kHzの範囲内)で最大の抑制が達成されるように構成される。
【0015】
さらに、例えば10dB以上のより広範囲の抑制が、10kHzを超える周波数、例えば15kHzを超える周波数、例えば20kHzを超える周波数で既に行われている場合がある。より広い範囲の抑制は、周波数ディケード以上にわたって行われてもよい。
【0016】
マイクロホンアセンブリは、可聴音をピックアップする装置に利用されてもよい。装置は、人間に着用されてもよい。本文脈では、可聴音は、20Hz~20kHzの周波数をカバーすると理解されるべきである。典型的には、本発明のマイクロホンアセンブリは、補聴器、ヘッドセット、イヤバッド、能動的聴覚保護装置などのリスニング装置に適している。リスニング装置は、可聴音に加えて、より高い周波数の信号をピックアップする場合がある。しかしながら、これらの周波数は、ユーザを妨害し得るので、好ましくは抑制されるべきである。
【0017】
いくつかの例では、フィルタハウジングは、約4~8mmの直径と、約1mm、例えば、約0.5~2mmの範囲内にある高さとを有する。いくつかの例では、第2の音響通路の長さは、約0.4~0.6mmである。いくつかの例では、第2の音響ポートの直径は、約1.3~1.6mmである。これらの例は、限定的ではなく、主に、マイクロホン音響入口ポートでの超音波エネルギーの抑制のために構成された場合の、ヘルムホルツ共鳴器の可能な小型サイズを示すために与えられる。
【0018】
有効性に関して言えば、ヘルムホルツ共鳴器は、部品自体のコストと他の生産コストの両方の点で非常に低いコストを有する、コンパクトで小さな外形のマイクロホンアセンブリを可能にする受動的部品である。
【0019】
別の利点は、例えばマイクロホンに具現化されたアンチエイリアシングフィルタのような電子ローパスフィルタを省略することができ、またはそのフィルタ次数を低減することができることである。これにより、電力消費の低減が可能になり、これは、マイクロホンアセンブリを含む電池で作動する装置にとって少なからず重要な改善である。
【0020】
さらなる利点としては、フィルタハウジングを高精度で製造し、取り付けることができ、これにより、フィルタ効果を正確に調整することができる。製造に関して言えば、フィルタハウジングは、例えば、いわゆるリフローはんだ付けプロセスの間に、他の構成要素と一緒に組立ライン上で自動的に取り付けることができる。いくつかの例では、いくつかのフィルタハウジングが、機械による自動組み立てのために、いわゆるテープまたはリールに取り付けられる。フィルタハウジングがキャリアにはんだ付けされると、はんだ付けは、はんだによる気密封止を容易に確立することができる。
【0021】
第2の音響通路は、ヘルムホルツ共鳴器の構成を記述する際に、「チャンバ」という用語と関連して一般的に使用される用語である「ネック」とも示されることに留意されたい。概して、ネックは、第1の音響通路と音響チャンバとの間の空中の音波の通過を可能にする。概して、第1の音響通路と第2の音響通路は、接合部分で合流する。概して、第2の音響ポートは、周囲の環境からの音波を受信するためのマイクロホンアセンブリの「自由端」である。
【0022】
いくつかの非限定的な実施例では、マイクロホンは、例えばシリコン基板のような基板を備え、基板は、音波を電気信号に変換するために、ダイヤフラムを備えるマイクロ電気機械システム(MEMS)のようなトランスデューサ素子を覆うマイクロホンハウジングを有し、オプションとして、電子部品、例えば、基板上に配置される特定用途向け集積回路(ASIC)を有する。MEMSマイクロホンは、一般にサイズが小さく、超軽量膜であるため、超音波周波数のようなより高い周波数の音波を捕捉し、応答する傾向が特に高い。したがって、上述の問題および利点は、MEMSマイクロホンに関連して、特に関係し得る。他の例では、マイクロホンは、マイクロホンカプセル内に配置されたコンデンサマイクロホン、またはエレクトレットマイクロホンである。
【0023】
いくつかの例では、キャリアは、基板、例えばプリント回路基板(PCB)などの回路基板、およびマイクロホンハウジングのうちの1つまたは複数を備える。例えば、第1の音響ポートは、基板、回路基板、またはマイクロホンハウジング、および/またはこれらの組み合わせにおける隙間または孔によって形成されてもよい。例えば、第1の音響通路は、フィルタハウジング、基板、回路基板、マイクロホンハウジング、および/またはこれらの組み合わせによって少なくとも部分的に形成されてもよい。
【0024】
キャリアは、第1の音響ポートを、例えば、キャリアを通るボアの形態で、少なくとも部分的に形成してもよい。第1の音響ポートは、さらに、他の物体によって形成されてもよい。
【0025】
いくつかの例では、第1の音響ポートは、マイクロホンを支える基板、例えばシリコン基板の開口または孔である。いくつかの例では、第1の音響ポートは、マイクロホンを支える回路基板の開口または孔である。これらの例は、いわゆるボトムポートマイクロホンを含む。
【0026】
いくつかの他の例では、第1の音響ポートは、マイクロホンハウジングとも呼ばれる、マイクロホンを覆うハウジング内の開口または孔である。また、マイクロホンハウジングは、蓋と表記されてもよい。これらの例は、いわゆるトップポートマイクロホンを含む。
【0027】
いくつかの例では、マイクロホンハウジングは、カプセルと呼ばれる。
【0028】
具体的には、いくつかの例では、フィルタハウジングは、製造中に、例えば基板、例えば回路基板へのリフローはんだ付けのために、金属またはメタライズされたSMD部品として構成される。リフローはんだ付けは、はんだペーストを使用して、コンタクトパッドにおいて部品を一時的に基板に取り付け、その後、制御された熱によってはんだペーストを溶融し、電気接続を確立するプロセスである。いくつかの非限定的な例では、フィルタハウジングは、リング形状で構成され、いくつかの態様では、リングパンのように見える。
【0029】
マイクロホンは、受信した音波を電気信号に変換するためのトランスデューサ素子を備えてもよい。トランスデューサ素子は、キャリアの第1の側に配置されてもよく、フィルタハウジングは、トランスデューサ素子が、第1の音響ポートおよび第1の音響通路を通って第2の音響ポートに流体的に接続されるように、キャリアの第1の側とは反対側の第2の側に配置されてもよい。
【0030】
この構成は、マイクロホンが従来のタイプ、例えばいわゆるボトムポートタイプであってもよく、従来の製造方法を用いて例えば回路基板に取り付けられるという利点を提供する。マイクロホン自体が、キャリアを備えてもよく、キャリアは、例えば第1の側でマイクロホンハウジングを支える基板としてもよい。フィルタハウジングは、第1の側とは反対側の基板の第2の側に配置することができる。フィルタハウジングは、わずかな追加スペースのみを必要とする点で有効であり、この事は、多くの装置、例えば、マイクロホンの使用が非常に小さいサイズである聴覚装置のようなリスニング装置において重要である。
【0031】
したがって、いくつかの例では、キャリアは、基板および/または回路基板を含む。いくつかの例では、キャリアは、基板のスタックを含む。
【0032】
いくつかの例では、マイクロホンは、キャリアの第1の側に取り付けられたマイクロホンハウジングを含み、フィルタハウジングは、キャリアの第1の側とは反対側の第2の側に取り付けられる。
【0033】
第2の音響ポートを通る音響流の方向は、ポート軸と平行であってもよい。代替的に、または追加的に、ポート軸は、第2の音響ポートを通って、好ましくは、第2の音響ポートの幾何学的中心を通って延びてもよい。
【0034】
キャリアは、第1の音響通路の少なくとも一部を囲むボアを有してもよく、ボアの中心軸は、ポート軸と一致してもよい。
【0035】
したがって、第1の音響通路は、マイクロホンに直接通じる直線ウェルの形状を有してもよい。これは、マイクロホンが機械的構造物からの干渉を最小限に抑えて周囲からの音波を捕捉することができるという利点を有する。この構成は、ボトムポート構成を有し、コンパクトで小さな外形のマイクロホンアセンブリの実装を可能にするマイクロホンで好ましい。
【0036】
フィルタハウジングは、中央スカートによって形成される窪みを有する中央部分を備える内側部分を備えてもよく、中央スカートは、キャリアに向かって延び、キャリアから距離を置いたところで第2の音響ポートを囲むフランジで終端する。
【0037】
その利点は、フィルタハウジングが、例えば、ディスクからプレス成形されるか、金属の薄いシートから打ち抜かれるか、または粉末からプレス成形されることによって、低コストで製造され得ることである。
【0038】
フランジとキャリアは互いに距離を置いており、第2の音響通路の両側を形成する。中央スカートは、ヘルムホルツ共鳴器の音響チャンバを第2の音響通路に向かって限定する。したがって、第2の音響通路は、それによって、音響チャンバよりも狭くなる。いくつかの例では、フランジとキャリアは、少なくとも第2の音響通路の領域において、実質的に平行である。
【0039】
フィルタハウジングは、リムまで延びる周囲スカートによって囲まれた内側部分を備えてもよい。
【0040】
それによって、内側部分またはその一部は、キャリアから離れるように隆起しており、キャリアと内側部分またはその一部との間に音響チャンバを確立する。音響チャンバは、周囲スカートによって外側で限定される。
【0041】
その利点は、フィルタハウジングが、例えば、ディスクからプレス成形されるか、金属の薄いシートから打ち抜かれるか、または粉末からプレス成形されることによって、低コストで製造され得ることである。
【0042】
フィルタハウジングは、ポート軸に関して回転対称であってもよい。
【0043】
これは、フィルタハウジングをキャリアに取り付けることをさらに容易にし、ヘルムホルツ共鳴器のより良い音響応答をさらに提供し得る。
【0044】
フィルタハウジングの内側部分は、トラフを有する少なくとも1つのデボス部分を有してもよく、デボス部分は、周囲スカートから第2の音響ポートに向かって延び、トラフでキャリアに到達し、音響チャンバおよび第2の音響通路に加えて、キャビティは、さらなる音響チャンバおよびさらなる音響通路を備えてもよい。さらなる音響通路は、第1の音響通路への第1の開口と、さらなる音響チャンバへの第2の開口とを有してもよく、さらなる音響チャンバとさらなる音響通路は、共同で、第1の音響通路を通って伝播する音波において、第1の周波数帯域とは異なる、第2の周波数帯域内の音響エネルギーを抑制するためのさらなるヘルムホルツ共鳴器を確立してもよい。
【0045】
その利点は、フィルタハウジングを例えばシート部材から低コストで製造することができ、異なるように構成された2つのヘルムホルツ共鳴器を収容できることである。これにより、より広帯域の周波数または複数帯域の周波数を抑制することができる。フィルタハウジングは、追加のデボス部分を含むことによって、追加のチャンバおよびそれぞれのネック部分を収容してもよい。
【0046】
いくつかの例では、フィルタハウジングの内側部分は、ポート軸に対して1つまたは複数の第1の角度範囲内で支持面に到達するデボス部分を有し、デボス部分は、残りの角度範囲内でキャリアから距離を置いたところで終端する。これは、フィルタハウジングを低コストで製造することができる一方で、異なるネック寸法を容易に達成することができるように、第2の音響通路の角度方向の拡がりを残りの角度範囲に制限することができる。
【0047】
フィルタハウジングは、金属の成形片であってもよく、リムは、はんだ材料または接着剤によってキャリアに取り付けられてもよい。
【0048】
いくつかの例では、金属の成形片は、金属シートから打ち抜かれる。他の態様では、フィルタハウジングは、キャリアに接着されたシリコン、セラミック、またはプラスチック材料から作製される。いくつかの例では、フィルタハウジングは、メタライズされ、はんだ材料によってキャリアに取り付けられる。
【0049】
マイクロホンアセンブリは、少なくともヘルムホルツ共鳴器の共振周波数よりも低い周波数で音響エネルギーを減衰させる空気透過性フィルタ部材をさらに備えてもよく、空気透過性フィルタ部材は、第1の音響ポートの内側または第1の音響ポートに配置されてもよい。
【0050】
その利点は、例えば、より平坦な周波数応答を達成するために、ヘルムホルツ共鳴器の構成要素とマイクロホンアセンブリの他の音響構成要素との間の望ましくない共振の影響が緩和され得ることである。例えば、マイクロホンの周波数-利得特性における望ましくないピークは、空気透過性フィルタ部材によって抑制され得る。空気透過性フィルタ部材は、メッシュタイプまたはスポンジタイプの構造を有してもよい。空気透過性フィルタ部材は、ほこりおよび小さい粒子がマイクロホンに到達するのを防止するための保護部材として付加的に働いてもよい。
【0051】
キャリアは、シリコン基板などの基板、および/または回路基板を備えてもよい。
【0052】
その利点は、マイクロホンアセンブリが、基板、例えばシリコン基板上に実装されており、ボトムポート構成を有するマイクロホン、例えばMEMSマイクロホンのような、従来のマイクロホンを含むことができることである。それでも、マイクロホンアセンブリは、回路基板に近い非常にコンパクトな構成を有することができる。
【0053】
基板は、単結晶シリコン基板であってもよい。回路基板、例えばプリント回路基板(PCB)は、非導電性基板のシート層上および/またはシート層間に積層された銅の1つまたは複数のシート層からエッチングされた導電性トラック、パッド、および他の形態を使用して、電子部品を機械的に支持し、電気的に接続することができる。部品は、概して、PCB上にはんだ付けされ、電気的に接続され、機械的に固定される。
【0054】
キャリアは、凹部またはボアを有してもよく、凹部またはボアは、フィルタハウジングを完全にまたは部分的に収容してもよい。
【0055】
これにより、キャビティの少なくとも一部を凹部またはボア内に収容することができるので、マイクロホンアセンブリの外形高さをさらに低くすることができる。いくつかの例では、キャリアは、導電性回路パスまたは導電層を有する層状回路基板のような回路基板を備えてもよい。
【0056】
実施形態のいくつかの例では、回路基板は、フィルタハウジングを完全にまたは部分的に収容するボアを含み、マイクロホンは、基板の第1の側に取り付けられ、フィルタハウジングは、基板の第1の側とは反対側の第2の側に取り付けられる。
【0057】
実施形態のいくつかの例では、回路基板は、フィルタハウジングを完全にまたは部分的に収容する凹部を含み、マイクロホンは、基板の第1の側に取り付けられ、フィルタハウジングは、回路基板の凹部内の基板の第1の側とは反対側の第2の側に取り付けられる。このように、凹部は、マイクロホンの反対側のキャリアに形成される。凹部は、凹部がキャリアを貫通して延びないという点で、ボアとは区別される。
【0058】
いくつかの例では、フィルタハウジングは、凹部の底部で回路基板に取り付けられるか、または凹部を取り囲む回路基板のリム部分で回路基板に取り付けられる。
【0059】
いくつかの例では、マイクロホンアセンブリは、フィルタハウジングに対して張り出し部分を有する基板を備えてもよく、マイクロホンは、張り出し部分に金属パッドを備えて構成されてもよい。
【0060】
これにより、マイクロホンアセンブリは、タイトな集積化と小型化を可能にする、小さな外形の高さを有することができる。利点は、マイクロホンを張り出し部分で回路基板に取り付けることができることである。フィルタハウジングは、例えば、接着剤、はんだ、締結手段、例えばねじ、リベット、またはこれらの組み合わせによって取り付けられてもよい。また、この構成は、マイクロホンまたはむしろマイクロホンハウジングが、フィルタハウジングよりも大きな断面(「占有面積」)を有する場合に有用である。
【0061】
いくつかの例では、回路基板は、フィルタハウジングの断面を収容するのに十分な広さの断面を有するボアまたは凹部を有する。ここで、フィルタハウジングは、例えば、接着剤、はんだ、締結手段、またはこれらの組み合わせによって、凹部の底部に取り付けられてもよい。いくつかの例では、張り出し部分は、ディスク形状、長方形形状、または複数のノーズを含む。ここで、フィルタハウジングは、例えば、接着剤、はんだ、締結手段、またはこれらの組み合わせによって、基板の張り出し部分に取り付けられてもよい。
【0062】
他のいくつかの態様では、マイクロホンアセンブリは、マイクロホンまたはむしろマイクロホンハウジングに対して張り出し部分を有する基板を含み、マイクロホンは、張り出し部分に金属パッドを備えるよう構成される。利点は、マイクロホンを張り出し部分で回路基板に取り付けることができることである。また、この構成は、フィルタハウジングが、マイクロホンまたはむしろマイクロホンハウジングよりも大きい断面を有する場合に有用である。フィルタハウジングは、例えば、接着剤、はんだ、締結手段、またはこれらの組み合わせによって、張り出し部分に取り付けられてもよい。この態様では、いくつかの例では、回路基板は、マイクロホンまたはむしろマイクロホンハウジングの断面を収容するのに十分な広さの断面を有するボアまたは凹部を有する。この態様では、金属パッドは、張り出し部分において、例えば1つ以上の「ビア」またはボンディングワイヤを介して、細長いパッドとしてマイクロホンから張り出し部分に延びる。
【0063】
キャリアは、基板および/またはマイクロホンハウジングを備えてもよい。
【0064】
これにより、ヘルムホルツ共鳴器を有するボトムポートマイクロホンまたはトップポートマイクロホンを構成することができる。
【0065】
マイクロホンは、基板と、基板まで下方に延びる周囲スカートによって囲まれた頂部を有するマイクロホンハウジングとを備えてもよい。第1の音響ポートは、頂部を通って延びてもよい。マイクロホンハウジングは、基板の第1の側に取り付けられてもよい。キャリアは、マイクロホンハウジングを備えてもよい。フィルタハウジングは、マイクロホンハウジング上またはマイクロホンハウジングの周囲で、基板の第1の側に配置されてもよい。
【0066】
これにより、ヘルムホルツ共鳴器を有する、いわゆるトップポートマイクロホンが構成される。いくつかの例では、フィルタハウジングは、頂部に取り付けられる。いくつかの例では、フィルタハウジングは、下方に延びるスカートに取り付けられる。いくつかの例では、フィルタハウジングは、マイクロホンの基板に取り付けられ、マイクロホンハウジングを囲む。
【0067】
リスニング装置は、少なくとも1つの本明細書で説明されるマイクロホンアセンブリを備えてもよい。
【0068】
例示的なリスニング装置は、1つまたは複数のマイクロホンを有する、補聴器、聴覚保護具、ヘッドセット、イヤホン、およびヘッドホンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0069】
本発明は、好ましい実施形態と共に、図面を参照して、以下により詳細に説明される。
図1】回路基板の両側に配置されたフィルタハウジングとマイクロホンとを含むマイクロホンアセンブリの断面図を示す。
図2】マイクロホンに取り付けられたフィルタハウジングを含むマイクロホンアセンブリの断面図を示す。
図3】回路基板の窪みに配置されたフィルタハウジングと、フィルタハウジングの反対側に配置されたマイクロホンとを含むマイクロホンアセンブリの断面図を示す。
図4】ヘルムホルツ共鳴器を有するものを含む様々な構成のマイクロホンアセンブリに含まれるマイクロホンの周波数-利得特性の例を示す。
図5】シングルチャンバ回転対称フィルタハウジングの実施形態のトポグラフィック図および3D図を示す。
図6】デュアルチャンバフィルタハウジングの実施形態のトポグラフィック図および3D図を示す。
図7】マイクロホンハウジングの頂部にあるフィルタハウジングを含むマイクロホンアセンブリの断面図を示す。
図8】マイクロホンハウジングを囲むフィルタハウジングを含むマイクロホンアセンブリの断面図である。
図9】例示的なリスニング装置の3D図を示す。
【0070】
概して、本明細書では、用語「上」および「下」ならびに「上の」および「下の」は、図面に示される向きを指す。しかしながら、これは、相対的な幾何学的関係をより便利に説明するために使用され、これらの用語は、例えばリスニング装置において使用されるときに説明される要素の向きを指すものではないので、特許請求の範囲を限定すべきではない。
【0071】
(図面の詳細な説明)
図1は、回路基板120によって構成されるキャリアの両側に配置されたフィルタハウジング110とマイクロホン101とを含むマイクロホンアセンブリの断面図を示す。
【0072】
マイクロホン101は、第1の音響ポート106を有し、このポートは、本実施形態では、シリコン基板などの基板103内に配置される。基板103は、一方の側でマイクロホンの電子部品を支え、他方の側で回路基板120に取り付けられる。これは、いわゆるボトムポート型のマイクロホンである。フィルタハウジング110は、回路基板120の反対側に取り付けられ、第2の音響ポート117を有する。第1の音響ポート106および第2の音響ポート117は、それぞれ、基板103およびフィルタハウジング110における孔として具現化される。回路基板120を貫通するボアは、第1の音響ポート106と第2の音響ポート117とを流体的に接続する第1の音響通路121の一部を確立する。フィルタハウジング110は、ポート軸118に関して実質的に回転対称であり、ポート軸118は、第1の音響ポート106を通る音響流の方向に延び、さらに第1の音響ポート106の幾何学的中心を通って延びる直線として定義される。
【0073】
これにより、マイクロホン101は、回路基板120によって形成されるキャリアの第1の側に配置され、フィルタハウジング110は、キャリアの第1の側とは反対側の第2の側に配置される。
【0074】
概して、マイクロホン101は、第1の音響ポート106を通して受信した音波を電気信号に変換するように構成される。図示のマイクロホンアセンブリでは、音波は、環境から第2の音響ポート117を通って第1の音響通路121に入る。マイクロホン101は、例えばボンディングワイヤ107を介して電子回路105に取り付けられるトランスデューサ素子104を備える。電子回路105は、増幅器、例えば前置増幅器、および例えばアナログ-デジタル(A/D)変換器を含むことができる。したがって、電気信号は、アナログ信号またはデジタル信号であってもよい。
【0075】
フィルタハウジング110は、回路基板120に取り付けられたリム119を有し、それにより、フィルタハウジング110と回路基板120は、共同で、音響チャンバ111と第2の音響通路112、ならびに第1の音響通路121を備えるキャビティを囲む。第2の音響通路112は、第1の音響通路121への第1の開口と、音響チャンバ111への第2の開口とを有する。第1の開口は、第1の音響通路121と第2の音響通路112との間の音波の通過を可能にする。第2の開口は、第2の音響通路112と音響チャンバ111との間の音波の通過を可能にする。音響チャンバ111および第2の音響通路112は、第1の音響通路121を通って伝播する音波、特に第2の音響ポート117からマイクロホンの第1の音響ポート106に向かって伝播する音波における第1の周波数帯域内の音響エネルギーを抑制するためのヘルムホルツ共鳴器のチャンバおよびネックのそれぞれを一体に形成する。
【0076】
したがって、音響チャンバ111および第2の音響通路112は、フィルタハウジング110および回路基板120によって限定される。また、第2の音響通路112は、ヘルムホルツ共鳴器が形成されるように、音響チャンバ111よりも狭くなっていることが分かる。ヘルムホルツ共鳴器の共振周波数および近くの周波数では、ネック112を通る空気の過剰な動き、ならびに音響チャンバ111内の空気の過剰な加圧および減圧が、音響エネルギーを熱エネルギーとして消散させ、その結果、ネック112に入る音響エネルギーの一部が除去され、それによって、第1の音響通路121を通って伝播する音波における音響エネルギーが抑制される。
【0077】
ヘルムホルツ共鳴器の共振周波数は、以下の周知の式で与えられる:
(数式1)
ここで、f [Hz]は共振周波数であり、c [m/s]は空気中の音速であり、l [m]は共鳴器のネックの長さであり、A[m2]はネックの断面積であり、V[m3]はチャンバの容積である。図1を参照すると、ネックの長さは、破線のボックス112によって近似的に示される第2の音響通路112の水平方向(ポート軸118に直交する方向)の伸長に等しい。ネックの断面積は、ポート軸線118から半径方向に見たときの第2の音響通路112の平均断面積に等しく、これは、第2の音響通路112の(第1の音響通路121内への)第1の開口の断面積と、第2の音響通路112の(音響チャンバ111内への)第2の開口の断面積との間のどこかの値によって近似されてもよい。したがって、ネックの断面積は、第2の音響通路112の半径方向の内径、第2の音響通路112の半径方向の外径、および第2の音響通路112の(ポート軸118と平行な)高さから計算されてもよい。高さは、ネック部112におけるフィルタハウジング110と回路基板120との間の距離に等しい。音響チャンバ111の容積は、参照番号111の点線のボックスを回転対称容積と見なすことによって計算することができる。図から分かるように、音響チャンバ111は、フィルタハウジング110の主部114と回路基板120との間に確立されている。その周囲では、音響チャンバ111は、フィルタハウジング110の周囲スカート113によって限定される。中央で、音響チャンバ111は、第2の音響通路112へと狭まる。
【0078】
図2は、マイクロホン101の基板103によって構成されるキャリアに取り付けられたリム119を有するフィルタハウジング110を含むマイクロホンアセンブリの断面図を示す。この図においても、フィルタハウジング110は、ポート軸線118に関して実質的に回転対称である。
【0079】
この実施形態では、回路基板120は、ボアを有し、ボアは、フィルタハウジング110を少なくとも部分的に収容する。従って、ボアは、例えば、実質的に円形または長方形の、十分に広い断面を有する「ウェル」を形成し、フィルタハウジングをボア内に沈み込ませることができ、少なくとも部分的にはボア内に収容することができる。フィルタハウジングの主部114は、回路基板120の下面と同一平面上にあってもよく、または、より低くても、またはより高くてもよい。
【0080】
見て分かるように、マイクロホン101および特にその基板103は、フィルタハウジング110に対して張り出し部分を有する。これは、概して、マイクロホン101がフィルタハウジング110と比較して広い占有面積を有する場合に有用であり得る。マイクロホン101と回路基板120との間の電気的接続を確立するために、マイクロホン101は、張り出し部分に金属パッドを備えて構成されてもよい。すなわち、金属パッドが張り出しの下側に配置され、対応する金属パッドが回路基板120の上側にそれに応じて配置される。
【0081】
図1に示されるフィルタハウジングによく似ているが、フィルタハウジング110の形状、特にその中央部分をより詳細に参照する符号のために、図2にはより多くのスペースが残されている。中央部分は、主部114から基板103に向かって延び、基板103から距離を置いたところで第2の音響ポート117を取り囲むフランジ116で終端する中央スカート115によって形成される窪みを有する。したがって、フランジ116および基板103は、互いに距離を置いており、第2の音響通路112(図1参照)の両側を形成する。中央スカート115は、ヘルムホルツ共鳴器の音響チャンバ111(図1参照)を中央で限定し、音響チャンバ111に対して第2の音響通路112を狭くする。したがって、第2の音響通路112は、フランジ116と基板103との間に画定された空間内に形成される。図1と同様に、第2の音響通路112は、第1の音響通路121への第1の開口と、音響チャンバ111への第2の開口とを有する。いくつかの例では、フランジ116またはフランジ116の少なくとも一部と基板103とは実質的に平行である。
【0082】
いくつかの例では、図示されていないが、フィルタハウジング110は、回路基板120の一体部分であってもよい。このような例では、フィルタハウジング110は、回路基板120の上面に、図2に示すボアの直径と同様の直径を有する凹部を形成し、この凹部の底部を、第2の音響ポート117を構成する中央ボアまで半径方向内側に延ばすことによって製造することができる。したがって、回路基板120は、図3に示す回路基板120の垂直方向に裏返されたバージョンと等しくすることができる。凹部の半径方向内側部分の深さは、凹部の半径方向外側部分の深さよりも小さくてもよく、その結果、凹部は、第2の音響通路112の狭小化に寄与する。さらに、または代替的に、凹部の半径方向内側部分は、基板103の対応する隆起部分によって達成されてもよい。例えば、基板103の隆起部分は、第2の音響通路112の長さに対応する肉厚を有する中空円筒であってもよい。言い換えれば、キャリア103およびフィルタハウジング110のいずれか一方または両方の形状は、所望の共振周波数、共振の所望の帯域幅、および/またはマイクロホンアセンブリの所望の物理的寸法を達成するために、ヘルムホルツ共鳴器111、112の特性を規定するように適合され得る。
【0083】
図3は、回路基板120によって構成されるキャリア内の窪みに配置されたフィルタハウジング110を含むマイクロホンアセンブリの断面図を示し、マイクロホンアセンブリは、さらに、フィルタハウジング110の反対側に配置されたマイクロホン101を含む。この実施形態では、回路基板120は、フィルタハウジング110を少なくとも部分的に収容する凹部を有する。したがって、凹部は、フィルタハウジング110が凹部内に挿入され得、少なくとも部分的に収容され得るように、例えば、実質的に円形または長方形の、十分に広い断面を有する「ウェル」を形成する。フィルタハウジング110のリム119は、凹部内で回路基板120に取り付けられている。いくつかの例では、フィルタハウジング110のリム119は、凹部の底部に取り付けられる。いくつかの例では、フィルタハウジング110のリム119は、凹部の側部および/または壁部に取り付けられる。フィルタハウジングの主部114は、回路基板120の下面と同一平面上にあってもよく、または、より低くても、またはより高くてもよい。
【0084】
いくつかの例では、ここでは310で示され、破線で示されるフィルタハウジングは、より平坦であってもよい。このような例では、フィルタハウジング310のリム119は、代わりに、凹部の周囲、例えば凹部の外側で回路基板120に取り付けられてもよい。したがって、フィルタハウジング310は、フィルタハウジング110の代替物である。フィルタハウジング310は、利用可能な空間をさらに有効に利用し、コンパクトな集積を可能にするという利点を有することができる。
【0085】
いくつかの例では、図示されていないが、フィルタハウジングは、周囲スカート113を有しておらず、むしろ平坦またはディスク状の形状を有している。フィルタハウジングのリム119は、代替フィルタハウジング310と同様の方法で、凹部の外側で、凹部の周囲で回路基板120に取り付けられる。
【0086】
いくつかの例では、図示されていないが、フィルタハウジング110、310の中央スカート115は、より低く、または平坦な部分で置き換えられ、回路基板120の凹部は、凹部の半径方向内側部分の深さが、凹部の半径方向外側部分の深さよりも小さくなるように、または負にさえなるように、リング形状であり、その結果、凹部は、第2の音響通路112の狭小化に寄与する。第2の音響通路112は、さらに、フィルタハウジング110、310の突き出し部分と内側の窪み115との組み合わせによって境界を定めることができる。言い換えれば、キャリア120およびフィルタハウジング110、310のいずれか一方または両方の形状は、所望の共振周波数、共振の所望の帯域幅、および/またはマイクロホンアセンブリの所望の物理的寸法を達成するために、ヘルムホルツ共鳴器111、112の特性を規定するように適合され得る。
【0087】
また、この例では、第2の音響通路112は、第1の音響通路121への第1の開口と、音響チャンバ111への第2の開口とを有する。このような例では、第2の音響通路112の第1の開口の位置は、マイクロホン101からさまざまな距離で配置することができる。
【0088】
図4は、ヘルムホルツ共鳴器111、112を確立するキャリア103、120およびフィルタハウジング110、310を有するものを含む、様々な構成のマイクロホンアセンブリに含まれるマイクロホン101の周波数-利得特性の例を示す。
【0089】
比較のために、特性402は、マイクロホンアセンブリに含まれるがヘルムホルツ共鳴器111、112を有さないマイクロホン101についてのものである。見て分かるように、特性402は、20~30kHzの間のピークと、50kHzのすぐ下の対応する下落とを示す。しかしながら、この例では、1kHzでの利得に対して約-10dBの下落は、超音波距離センサからのもののような強い超音波信号からの望ましくない影響を低減するのに十分ではない。
【0090】
周波数-利得特性401は、ヘルムホルツ共鳴器111、112を確立するキャリア103、120およびフィルタハウジング110、310を含むマイクロホンアセンブリに含まれるマイクロホン101を表す。この特性は、40kHzのすぐ下に下落を示し、この例では、1kHzでの利得に対して約-35dBの大きさを有し、これは、典型的には、強い超音波信号からの望ましくない影響を大幅に低減するのに十分である。下落は、ヘルムホルツ共鳴器111、112の共振周波数に位置する。見て分かるように、特性402に関する利得の低下は、下落からより高い周波数に拡がってており、例えば、40kHzでは、利得は、1kHzでの利得よりも約20dB低い。残念ながら、特性401も、20kHzのすぐ下で約+20dBのピークを示す。このピークは、主に、ヘルムホルツ共鳴器111、112の構成要素とマイクロホンアセンブリの他の音響構成要素との間の相互作用によって生じる。少なくとも、例えば言及した支援システムからの強い信号がこの周波数範囲に必ずしも存在しないので、ピークは問題ではないかもしれない。
【0091】
しかしながら、改善は、ヘルムホルツ共鳴器111、112を確立するキャリア103、120およびフィルタハウジング110、310を含むマイクロホンアセンブリであって、ヘルムホルツ共鳴器111、112の共振周波数未満の周波数で音響エネルギーを減衰する空気透過性フィルタ部材をさらに追加したマイクロホンアセンブリに含まれるマイクロホン101を表す周波数-利得特性403によって示される。空気透過性フィルタ部材は、好ましくは、第1の音響ポート106(例えば、図1を参照)内またはその位置に、例えば、基板103の下面または上面に、あるいは、第2の音響通路112と第1の音響ポート106との間の他の位置に、例えば、回路基板120のボア内またはその位置に配置される。これにより、周波数-利得特性403が示すように、ピークが大きく減衰する。この例では、ピークは、周波数-利得特性401に対して約15dB減衰される。それにより、マイクロホンアセンブリは、ヘルムホルツ共鳴器111、112の共振周波数以下の過剰なピークを実質的に回避しながら、超音波信号の大幅な抑制を達成する。このように、利点は、20~30kHz未満でのより平坦な周波数応答、および超音波範囲内の周波数での顕著な抑制である。キャリア103およびフィルタハウジング110のいずれか1つまたは両方の形状を適合させることによって、ヘルムホルツ共鳴器111、112の特性を変更して、それによって、所望の共振周波数、共振の所望の帯域幅、および/またはマイクロホンアセンブリの所望の物理的寸法を達成することができる。さらに、共鳴器の寸法、例えば、第2の音響通路および/または音響チャンバの寸法を操作することによって、共鳴器の共振周波数は、様々な周波数を有する音波が抑制され得るように調整され得る。言い換えると、ヘルムホルツ共鳴器は、超音波周波数領域内の任意の周波数帯域内の音響エネルギーを抑制するように設計することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、空気透過性フィルタ部材は、約280 RaylMKSの空気流抵抗または100~500RaylMKSの空気流抵抗を有する。これは、超音波周波数の抑制のために寸法決めされたヘルムホルツ共鳴器の共振周波数以下で起こり得る共振ピークを減衰させる利点を有する。
【0093】
「HHR缶、フィルタなし」を参照する図中の説明は、特性401を指し、ヘルムホルツ共鳴器111、112を含むマイクロホンアセンブリについての簡略表記である。また、「HHR缶、280RaylsMKSのフィルタあり」を参照する説明は、特性403を指し、ヘルムホルツ共鳴器111、112および上述の空気透過性フィルタ部材を含むマイクロホンアセンブリについての簡略表記である。最後に、「露出したPCB実装マイクロホン」を参照する説明は、特性402を指し、回路基板120上に実装され、ヘルムホルツ共鳴器を含まないマイクロホン101についての簡略表記である。
【0094】
図5は、シングルチャンバ回転対称フィルタハウジング110のトポグラフィック図および3D図を示す。ここでは502で示される中央部分が、中央スカート115によって形成される窪みを有することもここでは示されている。中央スカート115は、主部114からキャリア103、120(ここでは図示せず)に向かって延びており、キャリア103、120から距離を置いたところで第2の音響ポート117を取り囲むフランジ116で終端する。したがって、フランジ116およびキャリア103、120は、互いに距離を置いており、第2の音響通路112を形成する(図1および図2参照)。中央スカート115は、ヘルムホルツ共鳴器の音響チャンバ111(図1参照)を中央で限定し、音響チャンバ111に対して第2の音響通路112を狭くする。したがって、第2の音響通路112は、フランジ116とキャリア103、120との間に画定された空間に形成される。また、主部114からリム119まで延びてリム119で終端する周囲スカート113が見ることができる。フィルタハウジングは、リム119でキャリア103、120に取り付けることができる。
【0095】
図6は、デュアルチャンバフィルタハウジング110のトポグラフィック図および斜視図を示す。ここに示される実施形態は、追加のチャンバおよび対応する追加のネック部分を有する追加のヘルムホルツ共鳴器を含むことによって、前述の実施形態とは異なる。
【0096】
したがって、図6の左側に関しては、第1のヘルムホルツ共鳴器が、第1の音響チャンバ602と、第1のネック部分または音響通路604とによって形成される。第2のヘルムホルツ共鳴器は、第2の音響チャンバ603と、第2のネック部分または音響通路605とによって形成される。第1のヘルムホルツ共鳴器および第2のヘルムホルツ共鳴器は、それぞれ、第2の音響ポート117と流体接続している。第1および第2の音響チャンバ602および603は、図6の右側の斜視図にも見ることができるデボス部分601によって分離されている。
【0097】
また、ここでは、フィルタハウジング110は、フィルタハウジングをキャリア103、120に取り付けることができるリム119まで延びる周囲スカート113によって囲まれた内側部分501を有することが分かる。内側部分501、またはむしろ、この実施形態では、その一部は、キャリア103、120から離れるように隆起しており、キャリア103、120と内側部分501との間に第1および第2の音響チャンバ602、603を確立する。第1および第2の音響チャンバ602、603は、周囲スカート113によって周囲で限定される。
【0098】
この実施形態では、特に、フィルタハウジング110の内側部分501は、トラフを有するデボス部分601を有し、デボス部分601は、周囲スカート113から第2の音響ポート117に向かって延び、トラフでキャリア103、120に到達し、それによって、第1の音響チャンバ602と第2の音響チャンバ603との間に仕切壁を確立する。さらに、デボス部分601は、第1の音響通路604が第1の音響チャンバ602よりも狭く、第2の音響通路605が第2の音響チャンバ603よりも狭くなるように、第1の音響チャンバ602と第2の音響ポート117との間、および、第2の音響チャンバ603と第2の音響ポート117との間に、それぞれ第1および第2の音響通路604および605を限定している。これにより、追加のヘルムホルツ共鳴器が実装される。同様にして、さらなるヘルムホルツ共鳴器を実装することができる。
【0099】
図7は、マイクロホンハウジング102の上にあるフィルタハウジング110を含むマイクロホンアセンブリの断面図を示す。この実施形態では、マイクロホン101は、下方に延びる周囲スカートによって囲まれた頂部を有するマイクロホンハウジング102を含む。第1の音響ポート106は、頂部を通って延び、したがって、マイクロホン101は、いわゆるトップポートマイクロホンである。マイクロホンハウジング102は、基板103の第1の側に、例えば基板に取り付けられる。フィルタハウジング110は、マイクロホンハウジング102の上に配置され、フィルタハウジング110のリム119は、第1の音響ポート106を取り囲むように、頂部に取り付けられる。この例では、キャリアは、ヘルムホルツ共鳴器111、112および第1の音響通路121を備えるキャビティをフィルタハウジング110と共同で囲むマイクロホンハウジング102によって構成される。
【0100】
いくつかの例では、フィルタハウジング110のリム119は、例えばマイクロホンハウジング102の側壁で、マイクロホンハウジング102の下方に延びる周囲スカートに取り付けられる。
【0101】
図8は、マイクロホンハウジング102を囲むフィルタハウジング110を含むマイクロホンアセンブリの断面図を示す。また、この実施形態では、マイクロホン101は、下方に延びる周囲スカートによって囲まれた頂部を有するマイクロホンハウジング102を含む。第1の音響ポート106は、頂部を通って延び、したがって、マイクロホン101は、いわゆるトップポートマイクロホンである。マイクロホンハウジング102は、基板103、例えばシリコン基板の第1の側に取り付けられる。フィルタハウジング110は、マイクロホンハウジング102を覆って配置され、フィルタハウジング110のリム119は、基板103の第1の側に取り付けられる。この例では、キャリアは、基板103と、ヘルムホルツ共鳴器111、112および第1の音響通路121を備えるキャビティをフィルタハウジング110と共同で囲むマイクロホンハウジング102と、によって構成される。
【0102】
概して、上述のようなヘルムホルツ共鳴器を有する2つ以上の音響フィルタが積み重ねられてもよく、その結果、環境からの音波は、それぞれが個別に調整されたヘルムホルツ共鳴器を有するいくつかの第1の音響通路121を通って進む。いくつかの例では、さらなるフィルタハウジング110のリム119は、別のフィルタハウジング110の主部に取り付けられてもよい。いくつかの例では、さらなるフィルタハウジング110のリム119は、シリコン基板103または回路基板120に取り付けられ、それによって別のフィルタハウジング110を囲んでもよい。
【0103】
概して、本明細書では、フィルタハウジング110およびマイクロホンハウジング102の一方または両方は、実質的に円形または実質的に長方形の断面形状、またはヘルムホルツ共鳴器111、112を備えるキャビティを少なくとも部分的に囲む目的に資する任意の他の形状を有してもよい。
【0104】
図9は、右耳装置905および左耳装置906を備える一対のリスニング装置の一例を示す。リスニング装置905、906は、それぞれが本体902を有する鏡像形状ではあるが、実質的に同様の形状を有する。リスニング装置の各々は、本明細書で説明される1つ、2つ、またはそれ以上のマイクロホンアセンブリを有することができる。周囲から音波を受信するために、リスニング装置の各々は、1つ以上の小さな穴903を有し、これにより、環境からの音波が、備えられたマイクロホンアセンブリのそれぞれの第2の音響ポート117を通過することが可能になる。
【0105】
いくつかの例では、本明細書で説明されるマイクロホンアセンブリを備えるリスニング装置は、聴力損失を補償すること、周囲の大きなサウンドレベルから保護すること、音声信号を再生すること、および/または遠距離通信のためのヘッドセットとして動作することのうちの1つまたは複数を行うように構成される。
【0106】
少なくともリスニング装置が聴力損失を補償するように構成される例では、リスニング装置は、例えば、いわゆるReceiver-in-Ear(RIE)タイプ、Behind the Ear(BTE)タイプ、Completely-in-Canal(CIC)タイプ、または補聴器を含むリスニング装置の技術分野で知られている別のタイプであってもよい。他の用途では、リスニング装置は、例えば、いわゆるイヤバッド(earbud)タイプ、オンザイヤー型イヤホン(on-the-ear earphone)タイプ、またはオーバーザイヤー型イヤホン(over-the-ear earphone)タイプであってもよい。さらに、リスニング装置は、モノラルリスニング装置として、またはバイノーラルリスニング装置として構成されてもよい。
【0107】
以下の項目は、本出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
[項目1]
マイクロホンアセンブリであって、
第1の音響ポート(106)を有するマイクロホン(101)であって、前記マイクロホン(101)は、前記第1の音響ポート(106)を通って受信された音波を電気信号に変換するように構成されている前記マイクロホン(101)と、
第2の音響ポート(117)およびリム(119)を有するフィルタハウジング(110)と、
前記マイクロホン(101)および前記フィルタハウジング(110)の前記リム(119)に取り付けられたキャリア(102、103、120)であって、前記キャリア(102、103、120)および前記フィルタハウジング(110)は、共同で、前記第1の音響ポート(106)および前記第2の音響ポート(117)を流体的に接続する第1の音響通路(121)を有するキャビティを囲み、それによって音波が前記第2の音響ポート(117)から前記第1の音響通路(121)を通って前記第1の音響ポート(106)に伝播することを可能にする、前記キャリア(102、103、120)と、を備え、
ポート軸(118)は、前記第1の音響ポート(106)を通る音響流の方向に延び、さらに前記第1の音響ポート(106)の幾何学的中心を通って延びる直線として定義され、
前記キャリア(102、103、120)および前記フィルタハウジング(110)は、前記キャビティが、音響チャンバ(111)および第2の音響通路(112)を備えるように構成され、前記第2の音響通路(112)は、前記第1の音響通路(121)への第1の開口および前記音響チャンバ(111)への第2の開口とを有し、前記音響チャンバ(111)および前記第2の音響通路(112)は、共同で、前記第1の音響通路(121)を通って伝播する音波における第1の周波数帯域内の音響エネルギーを抑制するためのヘルムホルツ共鳴器(Helmholtz resonator)を確立しており、前記第1の周波数帯域は、超音波周波数領域内にある、マイクロホンアセンブリ。
[項目2]
前記マイクロホン(101)は、受信した音波を電気信号に変換するためのトランスデューサ素子(104)を備え、前記トランスデューサ素子(104)は、前記キャリア(102、103、120)の第1の側に配置され、前記フィルタハウジング(110)は、前記キャリア(102、103、120)の前記第1の側とは反対側の第2の側に配置され、前記トランスデューサ素子(104)は、前記第1の音響ポート(106)および前記第1の音響通路(121)を介して前記第2の音響ポート(117)に流体的に接続される、項目1に記載のマイクロホンアセンブリ。
[項目3]
前記第2の音響ポート(117)を通る音響流の方向は、前記ポート軸(118)に平行であり、かつ/または、前記ポート軸(118)は、前記第2の音響ポート(117)を通って、好ましくは、前記第2の音響ポート(117)の幾何学的中心を通って延びる、項目1または2に記載のマイクロホンアセンブリ。
[項目4]
前記キャリア(103、120)は、前記第1の音響通路(121)の少なくとも一部を囲むボアを有し、前記ボアの中心軸は、前記ポート軸(118)と一致する、項目1から3のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
[項目5]
前記フィルタハウジング(110)は、中央スカート(115)によって形成される窪み(503)を有する中央部分(502)を備える内側部分(501)を備え、前記中央スカート(115)は、前記キャリア(102、103、120)に向かって延び、前記キャリア(102、103、120)から距離を置いたところで前記第2の音響ポート(117)を囲むフランジ(116)で終端する、項目1から4のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
[項目6]
前記フィルタハウジング(110)は、前記リム(119)まで延びる周囲スカート(113)によって囲まれた内側部分(501)を備える、項目1から5のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
[項目7]
前記フィルタハウジング(110)は、前記ポート軸(118)に関して回転対称である、項目1から6のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
[項目8]
前記フィルタハウジング(110)の前記内側部分(501)は、トラフを有する少なくとも1つのデボス部分(601)を有し、前記デボス部分(601)は、前記周囲スカート(113)から前記第2の音響ポート(117)に向かって延び、前記トラフで前記キャリア(102、103、120)に到達し、前記音響チャンバ(111、602)および前記第2の音響通路(112、604)に加えて、前記キャビティは、さらなる音響チャンバ(603)およびさらなる音響通路(605)を備え、
前記さらなる音響通路(605)は、前記第1の音響通路(121)への第1の開口および前記さらなる音響チャンバ(603)への第2の開口を有し、前記さらなる音響チャンバ(603)および前記さらなる音響通路(605)は、共同で、前記第1の音響通路(121)を通って伝播する音波において、前記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域内の音響エネルギーを抑制するためのさらなるヘルムホルツ共鳴器を確立する、項目6に記載のマイクロホンアセンブリ。
[項目9]
前記フィルタハウジング(110)は、金属の成形片であり、前記リム(119)は、はんだ材料または接着剤によって前記キャリア(102、103、120)に取り付けられている、項目1から8のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
[項目10]
少なくとも前記ヘルムホルツ共鳴器の共振周波数よりも低い周波数で音響エネルギーを減衰させる空気透過性フィルタ部材をさらに備え、前記空気透過性部材は、前記第1の音響ポート(106)の内側または前記第1の音響ポート(106)に配置される、項目1から9のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
[項目11]
前記キャリアは、シリコン基板(103)および/または回路基板(120)を備える、項目1から10のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
[項目12]
前記キャリア(103、120)は、凹部またはボアを有し、前記凹部またはボアは、前記フィルタハウジング(110)を完全にまたは部分的に収容する、項目11に記載のマイクロホンアセンブリ。
[項目13]
前記キャリアは、シリコン基板(103)および/またはマイクロホンハウジング(102)を備える、項目1から12のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリ。
[項目14]
前記マイクロホン(101)は、シリコン基板(103)と、前記シリコン基板(103)まで下方に延びる周囲スカートによって囲まれた頂部を有するマイクロホンハウジング(102)とを備え、
前記第1の音響ポート(106)は、前記頂部を通って延び、
前記マイクロホンハウジング(102)は、前記シリコン基板(103)の第1の側に取り付けられ、
前記キャリアは、前記マイクロホンハウジング(102)を備え、
前記フィルタハウジング(110)は、前記マイクロホンハウジング(102)上または前記マイクロホンハウジング(102)の周囲で、前記シリコン基板(103)の前記第1の側に配置される、項目13に記載のマイクロホンアセンブリ。
[項目15]
少なくとも1つの項目1から14のいずれかに記載のマイクロホンアセンブリを備えるリスニング装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】