(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105364
(43)【公開日】2022-07-14
(54)【発明の名称】フィラメント3次元結合体の製造装置、フィラメント3次元結合体、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D01D 5/08 20060101AFI20220707BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20220707BHJP
D01D 10/00 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
D01D5/08 A
D04H3/16
D01D10/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000084
(22)【出願日】2021-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】505290531
【氏名又は名称】株式会社エアウィーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】小島 昌和
(72)【発明者】
【氏名】上村 敦
【テーマコード(参考)】
4L045
4L047
【Fターム(参考)】
4L045AA05
4L045BA03
4L045BA37
4L045DA02
4L045DA11
4L045DA45
4L045DA46
4L047AB03
4L047BA09
4L047EA05
4L047EA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】位置に応じて反発力が異なるフィラメント3次元結合体を容易に製造することが可能となる製造装置を提供する。
【解決手段】複数の溶融フィラメントMFを下方へ並進させてなる溶融フィラメント群を排出する溶融フィラメント供給部10と、槽21内に収容された液体の冷媒Wによって前記溶融フィラメント群を冷却して融着結合させ、フィラメント3次元結合体3を形成する融着結合形成部20と、を有するフィラメント3次元結合体3の製造装置1であって、上方視での異なる位置同士で温度差がある所定の温度状態となるように、前記溶融フィラメント群の温度を調節する温度調節手段を備えた製造装置としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の溶融フィラメントを下方へ並進させてなる溶融フィラメント群を排出する溶融フィラメント供給部と、
槽内に収容された液体の冷媒によって前記溶融フィラメント群を冷却して融着結合させ、フィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部と、を有するフィラメント3次元結合体の製造装置であって、
上方視での異なる位置同士で温度差がある所定の温度状態となるように、前記溶融フィラメント群の温度を調節する温度調節手段を備えたことを特徴とする製造装置。
【請求項2】
前記温度調節手段は、前記溶融フィラメント群が到達する前記冷媒の表面近傍部の温度を調節することにより、前記溶融フィラメント群の温度を調節することを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記温度調節手段は、前記冷媒の表面付近に設置されて当該冷媒を加熱する加熱装置を有することを特徴とする請求項2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記温度調節手段は、前記冷媒の表面付近に当該冷媒とは異なる温度の補助冷媒を供給する供給装置を有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の製造装置。
【請求項5】
前記融着結合形成部は、前記溶融フィラメント群を受ける前後一対の受け板を有し、
一対の前記受け板それぞれは、下方へ進むにつれて前後方向へ互いに近づくように傾斜した傾斜部と、当該傾斜部の下端部から下方へ延びる鉛直部と、を有し、
前後の前記鉛直部同士の間に、前記冷媒の表面が位置しており、
前記供給装置は、前後の前記傾斜部それぞれに前記補助冷媒を供給することを特徴とする請求項4に記載の製造装置。
【請求項6】
前記融着結合形成部は、前記槽内に配置されるコンベアを有し、
前記コンベアは、上下方向に並ぶ一対のローラを前記フィラメント3次元結合体の厚み方向に対応する前後方向に2つ並べて有し、
一対の前記ローラに含まれる上側のローラに巻かれたベルトに、前記溶融フィラメント群が到達するように形成されており、
前記供給装置は、前記ベルトに前記補助冷媒を供給することを特徴とする請求項4に記載の製造装置。
【請求項7】
前記温度調節手段は、排出された前記溶融フィラメント群が前記冷媒に到達するまでに通るエアギャップの空気の温度を調節することにより、前記溶融フィラメント群の温度を調節することを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項8】
前記温度調節手段は、前記エアギャップの側方の解放状態を調節可能とする開閉部材を有することを特徴とする請求項7に記載の製造装置。
【請求項9】
前記温度調節手段として、
前記溶融フィラメント群が到達する前記冷媒の表面近傍部の温度を調節することにより、前記溶融フィラメント群の温度を調節する冷媒温度調節手段と、
排出された前記溶融フィラメント群が前記冷媒に到達するまでに通るエアギャップの空気の温度を調節することにより、前記溶融フィラメント群の温度を調節する空気温度調節手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の製造装置により製造されたことを特徴とするフィラメント3次元結合体。
【請求項11】
複数の溶融フィラメントを下方へ並進させてなる溶融フィラメント群を排出する排出工程と、
上方視での異なる位置同士で温度差がある所定の温度状態となるように、前記溶融フィラメント群の温度を調節する温度調節工程と、
前記溶融フィラメント群を冷却して融着結合させ、フィラメント3次元結合体を形成する冷却工程と、
を含むことを特徴とするフィラメント3次元結合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメント3次元結合体の製造装置、フィラメント3次元結合体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種用途のクッション体に利用され得る素材として、熱可塑性樹脂からなるフィラメントを3次元的に融着結合させて得られるフィラメント3次元結合体(立体網状構造体)が知られている。フィラメント3次元結合体は良好な通気性を有し、また水洗い等も容易であるため、清潔に使用できる点でも優れている。
【0003】
このようなフィラメント3次元結合体を製造する方法として、例えば特許文献1には、溶融フィラメントをヒーター等により加熱することにより、フィラメントを供給させる水槽中の水面を沸騰状態とし、フィラメントの接触融着の度合い(リンキング強度)を高め、製造されるフィラメント3次元結合体の反発力(フィラメント弾性)を高める方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィラメント3次元結合体を各種用途のクッション体に適用するにあたり、フィラメント3次元結合体の反発力特性を様々な状態に調節して、各々のクッション体の用途に適合させることが重要となる。そのため、厚み方向や幅方向等の位置に応じて反発力が異なるフィラメント3次元結合体を容易に製造することが可能な装置が要望されている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み、位置に応じて反発力が異なるフィラメント3次元結合体を容易に製造することが可能となる製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る製造装置は、複数の溶融フィラメントを下方へ並進させてなる溶融フィラメント群を排出する溶融フィラメント供給部と、槽内に収容された液体の冷媒によって前記溶融フィラメント群を冷却して融着結合させ、フィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部と、を有するフィラメント3次元結合体の製造装置であって、上方視での異なる位置同士で温度差がある所定の温度状態となるように、前記溶融フィラメント群の温度を調節する温度調節手段を備えた構成とする。本構成によれば、位置に応じて反発力が異なるフィラメント3次元結合体を容易に製造することが可能となる。
【0008】
上記構成としてより具体的には、前記温度調節手段は、前記溶融フィラメント群が到達する前記冷媒の表面近傍部の温度を調節することにより、前記溶融フィラメント群の温度を調節する構成としても良い。また上記構成としてより具体的には、前記温度調節手段は、前記冷媒の表面付近に設置されて当該冷媒を加熱する加熱装置を有する構成としても良い。更に上記構成としてより具体的には、前記温度調節手段は、前記冷媒の表面付近に当該冷媒とは異なる温度の補助冷媒を供給する供給装置を有する構成としても良い。
【0009】
上記構成としてより具体的には、前記融着結合形成部は、前記溶融フィラメント群を受ける前後一対の受け板を有し、一対の前記受け板それぞれは、下方へ進むにつれて前後方向へ互いに近づくように傾斜した傾斜部と、当該傾斜部の下端部から下方へ延びる鉛直部と、を有し、前後の前記鉛直部同士の間に、前記冷媒の表面が位置しており、前記供給装置は、前後の前記傾斜部それぞれに前記補助冷媒を供給する構成としても良い。
【0010】
上記構成としてより具体的には、前記融着結合形成部は、前記槽内に配置されるコンベアを有し、前記コンベアは、上下方向に並ぶ一対のローラを前記フィラメント3次元結合体の厚み方向に対応する前後方向に2つ並べて有し、一対の前記ローラに含まれる上側のローラに巻かれたベルトに、前記溶融フィラメント群が到達するように形成されており、前記供給装置は、前記ベルトに前記補助冷媒を供給する構成としても良い。
【0011】
上記構成としてより具体的には、前記温度調節手段は、排出された前記溶融フィラメント群が前記冷媒に到達するまでに通るエアギャップの温度を調節することにより、前記溶融フィラメント群の温度を調節する構成としても良い。また当該構成としてより具体的には、前記温度調節手段は、前記エアギャップの側方の解放状態を調節可能とする開閉部材を有する構成としても良い。
【0012】
上記構成としてより具体的には、前記温度調節手段として、前記溶融フィラメント群が到達する前記冷媒の表面近傍部の温度を調節することにより、前記溶融フィラメント群の温度を調節する第1温度調節手段と、排出された前記溶融フィラメント群が前記冷媒に到達するまでに通るエアギャップの温度を調節することにより、前記溶融フィラメント群の温度を調節する第2温度調節手段と、を有する構成としても良い。
【0013】
また本発明に係るフィラメント3次元結合体は、上記構成の製造装置により製造されたものとする。また本発明に係るフィラメント3次元結合体の製造方法は、複数の溶融フィラメントを下方へ並進させてなる溶融フィラメント群を排出する排出工程と、上方視での異なる位置同士で温度差がある所定の温度状態となるように、前記溶融フィラメント群の温度を調節する温度調節工程と、前記溶融フィラメント群を冷却して融着結合させ、フィラメント3次元結合体を形成する冷却工程と、を含む製造方法とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る製造装置によれば、位置に応じて反発力が異なるフィラメント3次元結合体を容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】フィラメント3次元結合体の製造装置の概念図である。
【
図4】
図1における領域Sの構成を拡大した図である。
【
図7】水加熱装置群により冷却水を加熱した例を示す図である。
【
図8】製造されるフィラメント3次元結合体の一例の断面を示す図である。
【
図9】冷却水供給装置による冷却水の供給の一例を示す図である。
【
図11】
図10におけるコンベアを拡大した要部拡大図である。
【
図12】エアギャップ温度制御装置を説明するための製造装置の図である。
【
図13】製造されるフィラメント3次元結合体の一例の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の例示的な実施形態について各図面を参照しながら説明する。
【0017】
1.製造装置の全体構成等
図1は、本実施形態に係るフィラメント3次元結合体の製造装置1の概念図である。また
図2は、
図1に示すA-A’断面の矢視図である。なお製造装置1の説明における上下、左右、および前後の各方向(互いに直交する方向)は、
図1および
図2等に示すとおりである。上下方向は、鉛直方向である。
【0018】
フィラメント3次元結合体の製造装置1は、直径が0.5mm~3mmの複数の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群MFを鉛直方向下向きへ排出する溶融フィラメント供給部10と、溶融フィラメント群MFを3次元的に絡め合わせて接触点を融着結合させた後、冷却固化させてフィラメント3次元結合体3を形成する融着結合形成部20を備える。
【0019】
溶融フィラメント供給部10は、加圧溶融部11(押出機)とフィラメント排出部12(ダイ)を含む。加圧溶融部11は、材料投入部13(ホッパー)、スクリュー14、スクリュー14を駆動するスクリューモーター15、スクリューヒータ16、および不図示の複数の温度センサを含む。加圧溶融部11の内部には、材料投入部13から供給された熱可塑性樹脂をスクリューヒータ16により加熱溶融しながら搬送するためのシリンダー11aが形成されている。
【0020】
シリンダー11a内には、スクリュー14が回転可能に収容されている。シリンダー11aの下流側端部には、熱可塑性樹脂をフィラメント排出部12に向けて排出するためのシリンダー排出口11bが形成されている。スクリューヒータ16の加熱温度は、例えば溶融フィラメント供給部10に設けた温度センサの検知信号に基づいて制御される。
【0021】
フィラメント排出部12は、ノズル部17、ダイヒータ18、および図示しない複数の温度センサを含み、内部にはシリンダー排出口11bから排出された溶融熱可塑性樹脂をノズル部17に導く導流路12aが形成されている。
【0022】
ノズル部17は、複数の開口部が形成された略直方体の金属製の厚板であり、導流路12aの最下流部にあたるフィラメント排出部12の下部に設けられている。
【0023】
ここで、
図3は、ノズル部17を下方から視た底面図である。ノズル部17には、溶融フィラメント群を排出する複数のノズル開口部17aが形成されている。
図3に示すように、開口部17aは、前後左右方向に千鳥状に配置されている。なお、ノズル開口部17の配置形態は、千鳥状に限ることはない。また、隣接する開口部17間の距離(ピッチ)は、例えば10mmとしている。
【0024】
ダイヒータ18は、左右方向に複数個(
図2に示す例では18a~18eの5個)が設けられており、フィラメント排出部12を加熱する。ダイヒータ18の加熱温度は、例えばフィラメント排出部12に設けた温度センサの検知信号に基づいて制御される。
【0025】
フィラメント3次元結合体の材料として用いることのできる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂およびポリスチレン樹脂等や、スチレン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等の熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。
【0026】
材料投入部13から供給された熱可塑性樹脂は、シリンダー11a内で加熱溶融され、例えばスクリュー14により押し出されるようにして、溶融熱可塑性樹脂としてシリンダー排出口11bからフィラメント排出部12の導流路12aに供給される。その後、ノズル部17の複数のノズル開口部17aそれぞれから下方へ並進するように、複数の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群MFが排出される。
【0027】
融着結合形成部20は、冷却水槽21、一対の受け板22、一対のコンベア24、および、複数の搬送ローラ25a~25hを含む。前側受け板22aと後側受け板22bは前後一対の受け板22として設けられており、フィラメント3次元結合体3の厚みを規制する役割を果たす。
【0028】
冷却水槽21は、冷却水Wが収容される槽であり、
図1に示すように十分な量の冷却水Wを溜めておくことが可能である。冷却水Wは、溶融フィラメント群MFを冷却して融着結合させる冷媒としての役割を果たす。但し、溶融フィラメント群MFを冷却するための冷媒は水に限られず、他の液体であっても良い。冷却水槽21の内部には、一対のコンベア24と、複数の搬送ローラ25a~25hが配設されている。一対のコンベア24および複数の搬送ローラ25a~25hは、不図示の駆動モーターにより駆動される。
【0029】
フィラメント排出部12のノズル部17から排出された溶融フィラメント群MFは、受け板22によって厚み(前後方向寸法)が整えられ、冷却水槽21内の冷却水Wの浮力作用によって撓み、その中の各フィラメントはランダムなループを形成する。ランダムなループは隣接するランダムなループと3次元的に溶融状態で絡み合い、接触点が融着結合して3次元的なフィラメントの結合体が形成される。なおこのとき、溶融フィラメント群MF中の各フィラメントは温度が高いほど接触融着の度合いが高まり、冷却後に得られるフィラメント3次元結合体3の反発力が高まることになる。
【0030】
その後、コンベア24と複数の搬送ローラ25a~25hによって、冷却水槽21内の冷却水Wで冷却されながら搬送されることによって、当該結合体はフィラメント3次元結合体3として冷却水槽21外へ排出される。このようにして、フィラメント3次元結合体3を製造することができる。
【0031】
更に本実施形態の製造装置1では、上方視での異なる位置同士で温度差がある所定の温度状態となるように、溶融フィラメント群MFの温度を調節する温度調節手段が設けられている。以下、このような温度調節手段の各種具体例について、第1~第3の温度調節手段を例に挙げて説明する。
【0032】
2-1.第1の温度調節手段
まず温度調節手段の一の具体例(第1の温度調節手段)として、水加熱装置群30a,30bを用いる例について説明する。
図4は、
図1における領域Sの構成を拡大した図である。一対の受け板22は、前後方向に配列される前側受け板22aと後側受け板22bから構成される。前側受け板22aは、後方へ向かうにつれて下方へ傾く傾斜部22a1と、傾斜部22a1の下端から鉛直方向下向きに延びる平板状の鉛直部22a2を含む屈曲部を有する金属板である。後側受け板22bは、前方へ向かうにつれて下方へ傾く傾斜部22b1と、傾斜部22b1の下端から鉛直方向下向きに延びる平板状の鉛直部22b2を含む屈曲部を有する金属板である。これらの鉛直面22a2,22b2は互いに平行であり、前後方向に対向している。前後一対の傾斜部22a1,22b1は、下方へ進むにつれて前後方向へ互いに近づくように傾斜している。
【0033】
また、
図4に示すように、製造装置1は、水加熱装置群30aと、水加熱装置群30bと、を有する。水加熱装置群30aは、鉛直部22a2の前面に沿って配置される。水加熱装置群30bは、鉛直部22b2の後面に沿って配置される。水加熱装置群30aおよび30bは、それぞれ鉛直部22a2,22b2を介して、鉛直部22a2,22b2により前後方向に挟まれる領域の冷却水W(
図4では不図示)を加熱する。なお水加熱装置群30aおよび30bの具体的形態は特に限定されないが、例えば、棒状の石英管ヒーター(石英棒ヒーター)等が適用され得る。
【0034】
図5は、
図4に示すB-B’平面の矢視図である。
図5に示す例では、水加熱装置群30aは、左右方向に並ぶ複数(ここでは5つ)の水加熱装置30aa~30aeからなる。
図6は、
図4に示すC-C’平面の矢視図である。
図6に示す例では、水加熱装置群30bは、左右方向に並ぶ複数(ここでは5つ)の水加熱装置30ba~30beからなる。水加熱装置30aa~30aeと水加熱装置30ba~30beは、それぞれ一対一で前後方向に対向する。
【0035】
図7は、水加熱装置群30a,30bにより冷却水Wを加熱した例を示す図である。なお、
図7に示すように、鉛直部22a2と22b2とで前後方向に挟まれる領域(着水領域WR)の冷却水Wの水面WSは、上方のノズル部17から下方へ排出された溶融フィラメント群MFが到達(着水)する水面である。そして、水加熱装置群30a,30bは、水面WS付近において前後方向に対向して配置されている。水加熱装置群30aは水面WSより前方に、水加熱装置群30bは水面WSより後方に配置されている。
【0036】
図7は、後側の水加熱装置群30bの方を前側の水加熱装置群30aよりも高温とする例を示しており、水加熱装置群30a,30bによる加熱により、着水領域WRの冷却水W(冷却水Wの表面近傍部)は、水加熱装置群30a側から水加熱装置群30b側にかけて順に低温部L、中間温度部M、および高温部Hとされる。例えば、低温部Lは45℃程度、中間温度部Mは60℃程度、高温部Hは75℃程度とされる。なお、水加熱装置群30a,30bによる加熱により、着水領域WRの冷却水Wは、左右方向(
図7の紙面奥行き方向)にはほぼ一定に温度が制御される。
【0037】
これにより、上方のノズル部17から下方へ排出された溶融フィラメント群MF(例えば230℃程度)は、水面WSに到達して、前側寄りの部分は低温部Lを通過し、前後方向中央寄りの部分は中間温度部Mを通過し、後側寄りの部分は高温部Hを通過する。このとき、溶融フィラメント群MFは冷却され、低温部L、中間温度部M、および高温部Hに対応して低温、中間温度、および高温と前後方向に温度差が付与される。
【0038】
溶融フィラメント群MFは部分的に温度が高くなるように制御されるほど、その部分でのフィラメント同士の接触融着度合いが高まり、その分だけ、フィラメント3次元結合体3におけるその部分の反発力は高くなる。前後方向は、製造されるフィラメント3次元結合体3の厚み方向に対応する。そのため水加熱装置群30a,30bによれば、フィラメント3次元結合体3の接触融着度合いを厚み方向に制御することが可能となり、フィラメント3次元結合体3の反発力を厚み方向に制御することができる。水加熱装置群30a,30bにおける加熱の強さを変化させることにより、フィラメント3次元結合体3の各部の反発力を変えることができるため、フィラメント3次元結合体3の各部が所望の反発力となるように、水加熱装置群30a,30bにおける加熱の強さを調節すれば良い。
【0039】
図8は、
図7に示す例の温度制御により製造されるフィラメント3次元結合体3の一例であるフィラメント3次元結合体100の断面を示す。
図8に示す厚み方向は、製造装置1の前後方向に対応し、幅方向は製造装置1の左右方向に対応する。
図8の例では、表面100aから裏面100bにかけて順に、低温部Lに対応する低反発領域101、中間温度部Mに対応する中反発領域102、および高温部Hに対応する高反発領域103が形成されている。
【0040】
水加熱装置30aa~30aeの各々、および水加熱装置30ba~30beの各々の加熱度合いに差を設ければ、着水領域WRの冷却水Wに左右方向に温度差を付与するよう制御することも可能である。これにより、製造されるフィラメント3次元結合体3の反発力を幅方向に制御することができる。
【0041】
上述した第1の温度調節手段は、溶融フィラメント群MFが到達する冷却水W(冷媒)の表面近傍部の温度を調節することにより、溶融フィラメント群MFの温度を調節するようになっている。より具体的に説明すると、第1の温度調節手段は、冷却水Wの表面付近に設置されて冷却水Wを加熱する水加熱装置群30a,30bを有しており、水加熱装置群30a,30bによる加熱によって冷却水Wの表面近傍部の温度を調節することが可能である。
【0042】
なお第1の温度調節手段を設けた製造装置1は、水加熱装置群30a,30bにおける各水加熱装置による加熱の強さを制御できる不図示のコントローラを有する。当該コントローラは各水加熱装置による加熱の強さを、例えば、予め設定された所期の値に制御するようにしても良く、着水領域WRの冷却水Wの温度を検出する温度センサの検出値が目標値に近づくようにフィードバック制御するようにしても良い。
【0043】
2-2.第2の温度調節手段
次に、温度調節手段の別の具体例(第2の温度調節手段)として、受け板22に供給する冷却水の温度を制御する例について説明する。
図9に示すように、製造装置1は、冷却水供給装置23a,23bを有する。
【0044】
冷却水供給装置23aは、傾斜部22a1の上端部に配置され、傾斜部22a1に対して冷却水C1を供給する。なお、冷却水供給装置23aは、左右方向(
図9の紙面奥行き方向)に延び、左右方向に配列された複数のノズル23a1から冷却水C1を排出する。なお、冷却水供給装置が供給する冷媒としては、水(冷却水)に限られず他の液体が採用されても良い。
【0045】
冷却水供給装置23bは、傾斜部22b1の上端部に配置され、傾斜部22b1に対して冷却水C2を供給する。なお、冷却水供給装置23bは、左右方向に延び、左右方向に配列された複数のノズル23b1(
図6も参照)から冷却水C2を排出する。
【0046】
冷却水供給装置23aにより供給される冷却水C1は、傾斜部22a1上を下方へ流れ、着水領域WRにおける前側部分に流れ込み、当該前側部分の冷却水Wの温度を調整する。冷却水供給装置23bにより供給される冷却水C2は、傾斜部22b1上を下方へ流れ、着水領域WRにおける後側部分に流れ込み、当該後側部分の冷却水Wの温度を調整する。
【0047】
図9に示すように、例えば低温の25℃の冷却水C1と、高温の95℃の冷却水C2を供給することで、着水領域WRの冷却水Wを前方から後方へかけて順に、例えば45℃の低温部、60℃の中間温度部、75℃の高温部とすることができる。これにより、着水領域WRを通過する溶融フィラメント群MFの温度に前後方向に温度差を付与することができ、製造されるフィラメント3次元結合体3の反発力を厚み方向に制御することができる。
【0048】
なお、冷却水供給装置23a,23bから供給する冷却水C1,C2の温度に左右方向で(ノズルごとに)温度差を付与すれば、着水領域WRの冷却水Wに左右方向に温度差を付与するよう制御することも可能である。これにより、製造されるフィラメント3次元結合体3の反発力を幅方向に制御することができる。
【0049】
上述した第2の温度調節手段は、溶融フィラメント群MFが到達する冷却水W(冷媒)の表面近傍部の温度を調節することにより、溶融フィラメント群MFの温度を調節するようになっている。より具体的に説明すると、第2の温度調節手段は、冷却水Wの表面付近に冷却水Wとは異なる温度の冷却水C1,C2(本発明の補助冷媒に相当する)を供給する冷却水供給装置23a,23bを有しており、冷却水C1,C2の供給によって冷却水Wの表面近傍部の温度を調節することが可能である。
【0050】
なお融着結合形成部20は、溶融フィラメント群MFを受ける前後一対の受け板22を有しており、受け板22における前後の鉛直部22a2,22b2同士の間に冷却水Wの表面が位置している。冷却水供給装置23a,23bは、受け板22における前後の傾斜部それぞれに冷却水C1,C2を供給することにより、溶融フィラメント群MFが受け板22上を円滑に移動するようにしつつ、冷却水Wの表面近傍部の温度を調節することが可能となっている。
【0051】
なお第2の温度調節手段を設けた製造装置1は、冷却水C1および冷却水C2の各温度を個別に制御できる不図示のコントローラを有する。当該コントローラは冷却水C1および冷却水C2の各温度を、例えば、予め設定された所期の値に制御するようにしても良く、着水領域WRの冷却水Wの温度を検出する温度センサの検出値が目標値に近づくようにフィードバック制御するようにしても良い。
【0052】
また、冷却水供給装置23a,23bを使用する第2の温度調節手段を設けた実施形態として、次のような変形例を採用してもよい。
図10に示すように、当該変形例に係る製造装置51は、コンベア54を有しており、受け板22(
図1を参照)の設置は省略されている。
【0053】
図11は、コンベア54を拡大した要部拡大図である。
図11に示すように、コンベア54は、一対のローラ56a,57aと、ベルト55aと、一対のローラ56b,57bと、ベルト55bと、を有する。一対のローラ56a,57aと、一対のローラ56b,57bは、前後方向に対向して配置される。一対のローラ56a,57aのほうが前側に配置される。
【0054】
ローラ56a,57aは冷却水槽21内部において上下方向に配列される。上側のローラ56aは、ノズル部17(
図10を参照)の下方に位置する。ローラ56a,57aには、ベルト55aが巻き回されている。ローラ56b,57bは冷却水槽21内部において上下方向に配列される。上側のローラ56bは、ノズル部17の下方に位置する。ローラ56b,57bには、ベルト55bが巻き回されている。
【0055】
ローラ56a,56bに巻かれるベルト55a,55bの一部分55a1,55b1は、それぞれ、ノズル部17から下方へ排出される溶融フィラメント群MF(
図10を参照)と接触可能に配置される。ベルト55a,55bの前後方向内側において互いに対向する一部分55a2,55b2が下方へ移動するようにローラ56a,57aとローラ56b,57bは回転駆動される。なお、
図11に、白抜き矢印で一部分55a2,55b2の移動方向を、実線矢印でローラの駆動方向を示す。
【0056】
このような構成により、ノズル部17から下方へ排出された溶融フィラメント群MFは、一部分55a1,55b1に接触すると、ベルト55a,55bの移動とともに、ローラ56a,56bにより前後方向に挟まれる着水領域WRへ引き込まれる。従って、溶融フィラメント群MFは、前後方向の厚みを規制されつつ下方へ誘導される。
【0057】
このとき、
図11に示すように、冷却水供給装置23aにより冷却水C1はベルト55aの一部分55a1に供給されるので、冷却水C1は一部分55a1に沿って流れ、着水領域WRにおける前側に流れ込む。また、冷却水供給装置23bにより冷却水C2はベルト55bの一部分55b1に供給されるので、冷却水C2は一部分55b1に沿って流れ、着水領域WRにおける後側に流れ込む。
【0058】
これにより、例えば先述した
図9の場合と同様に、着水領域WRにおいて冷却水Wの温度に前後方向に温度差を設けることができる。従って、コンベア54により下方へ誘導される溶融フィラメント群MFは、着水領域WRにおいて冷却され、前後方向に温度差が付与される。なおベルト55a,55bは、金属メッシュベルトで構成されることが好ましい。
【0059】
2-3.第3の温度調節手段
次に、温度調節手段のさらに別の具体例(第3の温度調節手段)として、開閉部材群31a,31bを用いる例について説明する。ここで、
図12に示すように、製造装置1は、温度調節手段としてのエアギャップ温度制御装置35(
図1にも図示)を有する。
図12は、
図2と同様に
図1に示すA-A’断面の矢視図であるが、開閉部材の状態が
図2と異なっている。
【0060】
エアギャップ温度制御装置35は、開閉部材群31aと、開閉駆動部33aと、開閉部材群31bと、開閉駆動部33bと、を有する(
図1)。開閉部材群31aは、左右方向に配列される複数(ここでは一例として5つ)の開閉部材31aa~31aeからなる(
図12)。開閉部材31aa~31aeは、各々独立して開閉駆動部33aにより上下方向に開閉駆動される。
図12の例では、開閉部材31aa,31aeは完全に閉まった状態であり、開閉部材31ab~31adは開き気味の状態である。
【0061】
開閉部材群31bは、左右方向に配列される複数(ここでは一例として5つ)の開閉部材31ba~31beからなる。開閉部材31ba~31beは、各々独立して開閉駆動部33bにより上下方向に開閉駆動される。開閉部材31aa~31aeおよび開閉部材31ba~31beは、遮熱性(断熱性)を有する扉状部材である。
【0062】
エアギャップは、ノズル部17と水面WS(溶融フィラメント群MFが着水する水面)との間における空間であり、ノズル部17から出た溶融フィラメント群MFはエアギャップを通って水面WSに到達することになる。開閉部材群31a,31bは、エアギャップの前後端をそれぞれ開閉する。エアギャップ温度制御装置35は、開閉部材群31a,31bの開閉制御によりエアギャップにおける溶融フィラメント群MFの温度制御を行う。高温の溶融フィラメント群MFが通るエアギャップの空気の温度に比べ、その外部の空間における空気の方が温度が低い。そのため、開き度合いが大きい開閉部材に近い溶融フィラメント群MFは、その分、温度が低く制御されることになる。
【0063】
開閉部材群31a,31bの開閉制御により、例えば、開閉部材群31a側の溶融フィラメント群MFの温度を開閉部材群31b側よりも低く制御できる。さらに、開閉部材群31aにおける内側寄りの開閉部材31ab~31ad近くの溶融フィラメント群MFの温度を、開閉部材群31aにおける両外側寄りの開閉部材31aa,31aeよりも低く制御できる。同様に、開閉部材群31bにおける内側寄りの開閉部材31bb~31bd近くの溶融フィラメント群MFの温度を、開閉部材群31bにおける両外側寄りの開閉部材31ba,31beよりも低く制御できる。
【0064】
図13は、上記のような温度制御例により製造されるフィラメント3次元結合体3の一例であるフィラメント3次元結合体200の断面を示す。
図13の例では、幅方向両外側においては、表面200aから裏面200bにかけて順に、低反発領域211、中反発領域212、および高反発領域213が形成されている。また、幅方向内側においては、表面200aから裏面200bにかけて順に、低反発領域201、中反発領域202、および高反発領域203が形成されている。このように、厚み方向に反発力を制御することができる。
【0065】
また、低反発領域201は、幅方向両側の低反発領域211よりも反発力が低く、中反発領域202は、幅方向両側の中反発領域212よりも反発力が低く、高反発領域203は、幅方向両側の高反発領域213よりも反発力が低い。このように、幅方向に反発力を制御することも可能となっている。
【0066】
なお、
図12に示すように、製造装置1は、エアギャップの左右両端をそれぞれ開閉する開閉部材32a,32bと、開閉部材32a,32bをそれぞれ駆動する開閉駆動部34a,34bと、を備えてもよい。また開閉部材32a,32bを備える代わりに、エアギャップの左右両端は、常時解放された状態としても良く、常時閉鎖された状態としても良い。
【0067】
上述した第3の温度調節手段は、ノズル部17から排出された溶融フィラメント群MFが冷却水Wに到達するまでに通るエアギャップの空気の温度を調節することにより、溶融フィラメント群MFの温度を調節するようになっている。より具体的に説明すると、第3の温度調節手段は、エアギャップの側方(上下と直交する方向)の解放状態を調節可能とする開閉部材群31a,31bを有しており、開閉部材群31a,31bの開閉によってエアギャップの空気の温度を調節することが可能である。
【0068】
なお第3の温度調節手段を設けた製造装置1は、開閉部材群31a,31bにおける各開閉部材の開閉を個別に制御できる不図示のコントローラを有する。当該コントローラは各開閉部材の開閉を、例えば、予め設定された所期の状態に制御するようにしても良く、エアギャップの空気の温度を検出する温度センサの検出値が目標値に近づくようにフィードバック制御するようにしても良い。なお、その他の温度調節手段としては、例えばノズル部17の温度を各ノズル開口部17aに対応する部分ごとに調節する手段(ノズル部温度調節手段)が採用され得る。この場合は、あるノズル開口部17aに対応するノズル部17の部分の温度を高くするほど、そのノズル開口部17aから排出される溶融フィラメントの温度が高められ、この溶融フィラメントに対応する溶融フィラメント群MFの部分の温度を高くすることが可能となる。
【0069】
3.その他の反発力調節手段
上述した各温度調節手段は、製造するフィラメント3次元結合体の反発力を調節するための反発力調節手段の一種と見ることもできる。製造装置1は、上述した温度調節手段による反発力調節手段に加えて、以下のような反発力調節手段を備えるようにしても良い。
【0070】
反発力調節手段の一つの具体例(第1の反発力調節手段)として、コンベア24(
図1を参照)による溶融フィラメント群MFの引き込み速度を調節する手段が挙げられる。ノズル部17から排出される溶融フィラメント群MFの量は一定であるため、当該引き込み速度を遅くするほど、その際に融着結合する溶融フィラメント群MFの量が多くなり、これに対応するフィラメント3次元結合体3の部分の樹脂密度が大きくなって(空隙率が小さくなり)反発力が高くなる。当該引き込み速度を時間的に可変制御すれば、製造されるフィラメント3次元結合体3の反発力を上下方向の位置によって異なるように調節することが可能である。
【0071】
また、反発力調節手段の別の具体例(第2の反発力調節手段)として、ノズル部17におけるノズル開口部17a(
図3を参照)の密度(下方視によるノズル開口部17aが占める面積の割合)を調節する手段が挙げられる。ノズル部17の一部の領域で当該密度が高いほど、この領域に対応する溶融フィラメント群MFの量が多くなり、これに対応するフィラメント3次元結合体3の部分の樹脂密度が大きくなって(空隙率が小さくなり)反発力が高くなる。ノズル開口部17aの密度を調節する手法としては、例えばノズル開口部17aごとにこれを開閉するシャッターを設けておき、当該シャッターを制御してノズル開口部17aの密度を調節する手法を採用しても良い。
【0072】
4.その他
上述したとおり製造装置1は、複数の溶融フィラメントを下方へ並進させてなる溶融フィラメント群MFを排出する溶融フィラメント供給部10と、冷却水槽21内に収容された冷却水Wによって溶融フィラメント群MFを冷却して融着結合させ、フィラメント3次元結合体3を形成する融着結合形成部20と、を有する。更に製造装置1は、上方視での異なる位置同士で温度差がある所定の温度状態となるように、溶融フィラメント群MFの温度を調節する温度調節手段を備えている。
【0073】
そのため製造装置1によれば、特に厚み方向(製造装置1の前後方向に対応する)や幅方向(製造装置1の左右方向に対応する)の位置に応じて、フィラメントの接触融着の度合いを変化させて、反発力が異なるフィラメント3次元結合体3を容易に製造することが可能となっている。なお、フィラメントの接触融着の度合いを変化させて反発力を変える場合、フィラメントの太さやフィラメントの密度(単位体積あたりの樹脂量)を変化させて反発力を変える場合に比べて、反発力以外の特性の変動は極力抑えられる。
【0074】
なお上述した製造装置1は、複数の溶融フィラメントを下方へ並進させてなる溶融フィラメント群MFを排出する排出工程と、上方視での異なる位置同士で温度差がある所定の温度状態となるように、溶融フィラメント群MFの温度を調節する温度調節工程と、溶融フィラメント群MFを冷却して融着結合させ、フィラメント3次元結合体3を形成する冷却工程と、を含む各工程を実施して、フィラメント3次元結合体を製造することが可能である。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0076】
上述した第1~第3の温度調節手段は、製造装置1においていずれか1種類のみが備えられても良く、2種類以上が備えられても良い。また製造装置1においては、第1~第3の温度調節手段のうちの少なくとも1種類に加えて、先述したノズル部温度調節手段が備えられても良い。
【0077】
なお、第1および第2の温度調節手段は、冷却水Wの表面近傍部の温度を調節することにより溶融フィラメント群MFの温度を調節する冷媒温度調節手段と見ることができ、第3の温度調節手段は、エアギャップの空気の温度を調節することにより溶融フィラメント群MFの温度を調節する空気温度調節手段と見ることができる。冷媒温度調節手段と空気温度調節手段の両方を備えた製造装置1とすることにより、冷却水Wの表面近傍部の温度とエアギャップの空気の温度の両方を調節することができ、溶融フィラメント群MFの温度をより効果的に制御することが容易となる。
【0078】
また製造装置1は、第1~第3の温度調節手段のうちの少なくとも一つを備えるとともに、第1および第2の反発力調節手段の少なくとも一方を備えるようにしても良い。特に、製造装置1が第1~第3の温度調節手段のうちの少なくとも一つを備えるとともに、第1の反発力調節手段を備えるようにすれば、第1~第3の温度調節手段の何れかによってフィラメント3次元結合体3の厚み方向或いは幅方向に反発力を変えるとともに、第1の反発力調節手段によってフィラメント3次元結合体3の長さ方向(製造装置1の上下方向に対応する)にも反発力を変えることが容易となる。これにより、フィラメント3次元結合体3の反発力をより多彩なパターンに調節することが容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、例えばマットレス、ソファー用クッションに用いられるクッション体の製造等に利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 製造装置
3 フィラメント3次元結合体
10 溶融フィラメント供給部
11 加圧溶融部
11a シリンダー
11b シリンダー排出口
12 フィラメント排出部
12a 導流路
13 材料投入部
14 スクリュー
15 スクリューモーター
16 スクリューヒータ
17 ノズル部
17a ノズル開口部17a
18 ダイヒータ
20 融着結合形成部
21 冷却水槽
22 受け板
22a 前側受け板
22a1 傾斜部
22a2 鉛直部
22b 後側受け板
22b1 傾斜部
22b2 鉛直部
23a,23b 冷却水供給装置
23a1,23b1 ノズル
24 コンベア
25a~25h 搬送ローラ
30a,30b 水加熱装置群
30aa~30ae 水加熱装置
30ba~30be 水加熱装置
31a,31b 開閉部材群
31aa~31ae 開閉部材
31ba~31be 開閉部材
32a,32b 開閉部材
33a,33b 開閉駆動部
34a,34b 開閉駆動部
35 エアギャップ温度制御装置
51 製造装置
54 コンベア
55a,55b ベルト
56a,56b ローラ
57a,57b ローラ
100 フィラメント3次元結合体
100a 表面
100b 裏面
101 低反発領域
102 中反発領域
103 高反発領域
200 フィラメント3次元結合体
200a 表面
200b 裏面
201 低反発領域
202 中反発領域
203 高反発領域
211 低反発領域
212 中反発領域
213 高反発領域
C1,C2 冷却水
H 高温部
L 低温部
M 中間温度部
MF 溶融フィラメント群
W 冷却水
WR 着水領域
WS 水面