(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105419
(43)【公開日】2022-07-14
(54)【発明の名称】コンベア式搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 23/26 20060101AFI20220707BHJP
B65G 21/14 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
B65G23/26 B
B65G21/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000202
(22)【出願日】2021-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】500570427
【氏名又は名称】J&T環境株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599165234
【氏名又は名称】東洋精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083253
【弁理士】
【氏名又は名称】苫米地 正敏
(72)【発明者】
【氏名】水田 周作
(72)【発明者】
【氏名】及川 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】河野 政美
【テーマコード(参考)】
3F025
【Fターム(参考)】
3F025AC03
(57)【要約】
【課題】無動力のコンベア式搬送装置であって、荷物を高所から低所に適正な移動速度で安全に搬送することができる搬送装置を提供する。
【解決手段】無動力で作動するコンベア式の搬送装置であって、コンベア始端側およびコンベア終端側の非駆動型の回転体1a,1bと、この回転体1a,1b間に回動可能に巻き掛けられる無端搬送体2と、この無端搬送体2の回動を制動するとともに、その制動力が調整可能な制動機構3を備えたものであって、搬送装置が長手方向で傾斜した状態に配置されたときに、無端搬送体2上に置かれた被搬送物の荷重の傾斜方向分力によって無端搬送体2が牽引されることにより、無端搬送体2が制動機構3で制動されつつ回動するように構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無動力で作動するコンベア式の搬送装置であって、
コンベア始端側およびコンベア終端側の非駆動型の回転体(1a),(1b)と、該回転体(1a),(1b)間に回動可能に巻き掛けられる無端搬送体(2)と、該無端搬送体(2)の回動を制動するとともに、その制動力が調整可能な制動機構(3)を備え、
搬送装置が長手方向で傾斜した状態に配置されたときに、無端搬送体(2)上に置かれた被搬送物の荷重の傾斜方向分力によって無端搬送体(2)が牽引されることにより、無端搬送体(2)が制動機構(3)で制動されつつ回動するように構成されたことを特徴とするコンベア式搬送装置。
【請求項2】
無動力で作動するコンベア式の搬送機構部(A)と、該搬送機構部(A)を支持する脚部(4)を備えた搬送装置であって、
搬送機構部(A)は、コンベア始端側およびコンベア終端側の非駆動型の回転体(1a),(1b)と、該回転体(1a),(1b)間に回動可能に巻き掛けられる無端搬送体(2)と、該無端搬送体(2)の回動を制動するとともに、その制動力が調整可能な制動機構(3)を備え、
搬送機構部(A)が脚部(4)により長手方向で傾斜した状態に支持されたときに、無端搬送体(2)上に置かれた被搬送物の荷重の傾斜方向分力によって無端搬送体(2)が牽引されることにより、無端搬送体(2)が制動機構(3)で制動されつつ回動するように構成されたことを特徴とするコンベア式搬送装置。
【請求項3】
無端搬送体(2)が歯付き無端ベルトで構成され、各回転体(1a),(1b)が、前記歯付き無端ベルトと噛み合う歯付きプーリで構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のコンベア式搬送装置。
【請求項4】
無端搬送体(2)が複数条の無端ベルトで構成され、各回転体(1a),(1b)が、前記複数条の無端ベルトが巻き掛けられる複数のプーリを有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコンベア式搬送装置。
【請求項5】
無端搬送体(2)が、平ベルトの幅方向の一部に歯付きベルト部を備えた無端ベルトで構成され、各回転体(1a),(1b)が、前記歯付きベルト部と噛み合う歯付きプーリ部を備えたプーリを有することを特徴とする請求項1または2に記載のコンベア式搬送装置。
【請求項6】
無端搬送体(2)が複数条の無端チェーンで構成され、各回転体(1a),(1b)が、前記複数条の無端チェーンと噛み合う複数のスプロケットホイールを有することを特徴とする請求項1または2に記載のコンベア式搬送装置。
【請求項7】
無端搬送体(2)の外面に、無端搬送体長手方向で間隔をおいて、複数の被搬送物係止用の突起部(5)が設けられることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のコンベア式搬送装置。
【請求項8】
制動機構(3)が、回転体(1a)または回転体(1b)の回転を制動する制動機構で構成され、該制動機構により回転体(1a)または回転体(1b)の回転を制動することで無端搬送体(2)の回動が制動されるようにしたことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のコンベア式搬送装置。
【請求項9】
制動機構(3)は、回転体(1a),(1b)が回転自在に支持される支持フレーム(6)に設けられる固定側制動部材(7x)と、該固定側制動部材(7x)に接触した状態で回転体(1a)または回転体(1b)と一体に回転する回転側制動部材(7y)と、固定側制動部材(7x)と回転側制動部材(7y)との接触圧を調整する制動力調整手段(8)を備え、
該制動力調整手段(8)は、回転側制動部材(7y)と固定側制動部材(7x)のうちの一方を他方に押し付ける付勢手段を有するとともに、該付勢手段の付勢による固定側制動部材(7x)と回転側制動部材(7y)との接触圧を調整できるように構成されたことを特徴とする請求項8に記載のコンベア式搬送装置。
【請求項10】
支持フレーム(6)に軸支される回転体(1a)または回転体(1b)の回転軸(9)は、その一端側に回転側制動部材保持用の軸部(90)を有するとともに、該軸部(90)の先端側部分にはネジ部(91)が形成され、
固定側制動部材(7x)は、回転軸(9)を囲むように支持フレーム(6)に取り付けられたプレート状の固定側ブレーキシュー(10x)で構成され、
回転側制動部材(7y)は、軸部(90)に軸方向スライド可能に設けられたホルダ(11)に保持され、先端が固定側ブレーキシュー(10x)のプレート面(100)に接する複数の回転側ブレーキシュー(10y)で構成されるとともに、該各回転側ブレーキシュー(10y)は、固定側ブレーキシュー(10x)のプレート面(100)と相対するホルダ(11)の側面に形成された複数の取付穴(110)に軸方向スライド可能に嵌め込まれることによりホルダ(11)に保持され、
制動力調整手段(8)は、ホルダ(11)と、該ホルダ(11)の各取付穴(110)内に配置され、回転側ブレーキシュー(10y)を固定側ブレーキシュー(10x)方向に付勢するスプリング(12)と、ホルダ(11)に接するように軸部(90)のネジ部(91)に軸方向移動可能に装着されたホルダ位置調整ネジ(13)を備えることを特徴とする請求項9に記載のコンベア式搬送装置。
【請求項11】
無動力で作動するコンベア式の搬送装置であって、
並列して配置される回転自在な非駆動型の複数の搬送ロール(70)と、該各搬送ロール(70)の回転を制動するとともに、その制動力が調整可能な制動機構(3)を備え、
搬送装置が長手方向で傾斜した状態に配置されたときに、搬送ロール(70)上に置かれた被搬送物の荷重の傾斜方向分力によって搬送ロール(70)に回転力が付与されることにより、搬送ロール(70)が制動機構(3)で制動されつつ回転するように構成されたことを特徴とするコンベア式搬送装置。
【請求項12】
無動力で作動するコンベア式の搬送機構部(A)と、該搬送機構部(A)を支持する脚部(4)を備えた搬送装置であって、
搬送機構部(A)は、並列して配置される回転自在な非駆動型の複数の搬送ロール(70)と、該各搬送ロール(70)の回転を制動するとともに、その制動力が調整可能な制動機構(3)を備え、
搬送機構部(A)が脚部(4)により長手方向で傾斜した状態に支持されたときに、搬送ロール(70)上に置かれた被搬送物の荷重の傾斜方向分力によって搬送ロール(70)に回転力が付与されることにより、搬送ロール(70)が制動機構(3)で制動されつつ回転するように構成されたことを特徴とするコンベア式搬送装置。
【請求項13】
支持フレーム(6)に回転自在に支持される回転軸(72)と、各搬送ロール(70)の回転を回転軸(72)に伝達する回転力伝達手段(73)を備え、
制動機構(3)が、回転軸(72)の回転を制動する制動機構で構成され、該制動機構により回転軸(72)の回転を制動することで各搬送ロール(70)の回転が制動されるようにしたことを特徴とする請求項11または12に記載のコンベア式搬送装置。
【請求項14】
回転力伝達手段(73)は、コンベア始端側とコンベア終端側に配置される1対のスプロケットホイール(75a),(75b)と、該スプロケットホイール(75a),(75b)間に回動可能に巻き掛けられる無端チェーン(76)と、各搬送ロール(70)の回転軸(77)の端部に設けられ、無端チェーン(76)と噛み合うスプロケットホイール(78)を備え、
回転軸(72)は、無端チェーン(76)と噛み合うスプロケットホイール(79)を備えることを特徴とする請求項13に記載のコンベア式搬送装置。
【請求項15】
回転軸(72)は、各搬送ロール(70)に対応した位置に形成される複数のプーリ部(720)を備え、
回転力伝達手段(73)は、各搬送ロール(70)の周方向に形成された無端ベルト巻き掛け用の溝(700)と、回転軸(72)の各プーリ部(720)と各搬送ロール(70)の溝(700)間に巻き掛けられた無端ベルト(80)を備えることを特徴とする請求項13に記載のコンベア式搬送装置。
【請求項16】
制動機構(3)は、回転軸(72)が回転自在に支持される支持フレーム(6)に設けられる固定側制動部材(7x)と、該固定側制動部材(7x)に接触した状態で回転軸(72)と一体に回転する回転側制動部材(7y)と、固定側制動部材(7x)と回転側制動部材(7y)との接触圧を調整する制動力調整手段(8)を備え、
該制動力調整手段(8)は、回転側制動部材(7y)と固定側制動部材(7x)のうちの一方を他方に押し付ける付勢手段を有するとともに、該付勢手段の付勢による固定側制動部材(7x)と回転側制動部材(7y)との接触圧を調整できるように構成されたことを特徴とする請求項13~15のいずれかに記載のコンベア式搬送装置。
【請求項17】
回転軸(72)は、その一端側に回転側制動部材保持用の軸部(721)を有するとともに、該軸部(721)の先端側部分にはネジ部(722)が形成され、
固定側制動部材(7x)は、回転軸(72)を囲むように支持フレーム(6)に取り付けられたプレート状の固定側ブレーキシュー(10x)で構成され、
回転側制動部材(7y)は、軸部(721)に軸方向スライド可能に設けられたホルダ(11)に保持され、先端が固定側ブレーキシュー(10x)のプレート面(100)に接する複数の回転側ブレーキシュー(10y)で構成されるとともに、該各回転側ブレーキシュー(10y)は、固定側ブレーキシュー(10x)のプレート面(100)と相対するホルダ(11)の側面に形成された複数の取付穴(110)に軸方向スライド可能に嵌め込まれることによりホルダ(11)に保持され、
制動力調整手段(8)は、ホルダ(11)と、該ホルダ(11)の各取付穴(110)内に配置され、回転側ブレーキシュー(10y)を固定側ブレーキシュー(10x)方向に付勢するスプリング(12)と、ホルダ(11)に接するように軸部(721)のネジ部(722)に軸方向移動可能に装着されたホルダ位置調整ネジ(13)を備えることを特徴とする請求項16に記載のコンベア式搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を高所から低所に無動力で搬送するためのコンベア式搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な荷役作業では、段ボールなどの荷物を建物の階上から搬出する場合、作業者が荷物を両手で抱えて階段を利用して荷役を行うが、例えば、書類が詰められた段ボールは重量が20kg以上にもなるため、これを数多く人力で荷役するとなると、その荷役作業は非常に重労働となり、また、荷役に要する時間も長くなる。
従来、荷役用の搬送手段としてベルトコンベアやローラーコンベアが汎用されているが、駆動機構を含めて大重量で大掛かりな搬送装置であり、実施する荷役作業のたびに荷役を行う場所(建物など)に運び込んで使用することは難しい。また、仮に運び込んで設置できたとしても、動力(電源)がとれない場所では使用することができない。
一方、無動力のローラーコンベアを傾斜させた状態とし、荷物の自重を利用してローラーを回転させつつコンベア上を滑落させることにより、荷物を搬送できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したような無動力のローラーコンベアは、コンベアの傾斜角度や荷物の重量によって荷物の移動速度が異なり、その速度をコントロールできないため、コンベアの傾斜や荷物の重量によっては荷物の移動速度が大きすぎて非常に危険な荷役作業になり、また、荷物などが損傷するおそれもある。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、無動力のコンベア式搬送装置であって、荷物を高所から低所に適正な移動速度(搬送速度)で安全に搬送することができる搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決できる無動力のコンベア式搬送装置について検討を行い、コンベアを傾斜状態にして荷物の荷重を利用することにより無動力で搬送機構を作動させるとともに、その搬送機構を制動し、且つ制動力を調整できる制動手段を設けることにより、荷物を適正な移動速度(搬送速度)で安全に搬送できる新たな搬送装置を創案した。
【0006】
すなわち、上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]無動力で作動するコンベア式の搬送装置であって、
コンベア始端側およびコンベア終端側の非駆動型の回転体(1a),(1b)と、該回転体(1a),(1b)間に回動可能に巻き掛けられる無端搬送体(2)と、該無端搬送体(2)の回動を制動するとともに、その制動力が調整可能な制動機構(3)を備え、
搬送装置が長手方向で傾斜した状態に配置されたときに、無端搬送体(2)上に置かれた被搬送物の荷重の傾斜方向分力によって無端搬送体(2)が牽引されることにより、無端搬送体(2)が制動機構(3)で制動されつつ回動するように構成されたことを特徴とするコンベア式搬送装置。
【0007】
[2]無動力で作動するコンベア式の搬送機構部(A)と、該搬送機構部(A)を支持する脚部(4)を備えた搬送装置であって、
搬送機構部(A)は、コンベア始端側およびコンベア終端側の非駆動型の回転体(1a),(1b)と、該回転体(1a),(1b)間に回動可能に巻き掛けられる無端搬送体(2)と、該無端搬送体(2)の回動を制動するとともに、その制動力が調整可能な制動機構(3)を備え、
搬送機構部(A)が脚部(4)により長手方向で傾斜した状態に支持されたときに、無端搬送体(2)上に置かれた被搬送物の荷重の傾斜方向分力によって無端搬送体(2)が牽引されることにより、無端搬送体(2)が制動機構(3)で制動されつつ回動するように構成されたことを特徴とするコンベア式搬送装置。
[3]上記[1]または[2]のコンベア式搬送装置において、無端搬送体(2)が歯付き無端ベルトで構成され、各回転体(1a),(1b)が、前記歯付き無端ベルトと噛み合う歯付きプーリで構成されることを特徴とするコンベア式搬送装置。
【0008】
[4]上記[1]~[3]のいずれかのコンベア式搬送装置において、無端搬送体(2)が複数条の無端ベルトで構成され、各回転体(1a),(1b)が、前記複数条の無端ベルトが巻き掛けられる複数のプーリを有することを特徴とするコンベア式搬送装置。
[5]上記[1]または[2]コンベア式搬送装置において、無端搬送体(2)が、平ベルトの幅方向の一部に歯付きベルト部を備えた無端ベルトで構成され、各回転体(1a),(1b)が、前記歯付きベルト部と噛み合う歯付きプーリ部を備えたプーリを有することを特徴とするコンベア式搬送装置。
[6]上記[1]または[2]のコンベア式搬送装置において、無端搬送体(2)が複数条の無端チェーンで構成され、各回転体(1a),(1b)が、前記複数条の無端チェーンと噛み合う複数のスプロケットホイールを有することを特徴とするコンベア式搬送装置。
[7]上記[1]~[6]のいずれかのコンベア式搬送装置において、無端搬送体(2)の外面に、無端搬送体長手方向で間隔をおいて、複数の被搬送物係止用の突起部(5)が設けられることを特徴とするコンベア式搬送装置。
【0009】
[8]上記[1]~[7]のいずれかのコンベア式搬送装置において、制動機構(3)が、回転体(1a)または回転体(1b)の回転を制動する制動機構で構成され、該制動機構により回転体(1a)または回転体(1b)の回転を制動することで無端搬送体(2)の回動が制動されるようにしたことを特徴とするコンベア式搬送装置。
[9]上記[8]のコンベア式搬送装置において、制動機構(3)は、回転体(1a),(1b)が回転自在に支持される支持フレーム(6)に設けられる固定側制動部材(7x)と、該固定側制動部材(7x)に接触した状態で回転体(1a)または回転体(1b)と一体に回転する回転側制動部材(7y)と、固定側制動部材(7x)と回転側制動部材(7y)との接触圧を調整する制動力調整手段(8)を備え、
該制動力調整手段(8)は、回転側制動部材(7y)と固定側制動部材(7x)のうちの一方を他方に押し付ける付勢手段を有するとともに、該付勢手段の付勢による固定側制動部材(7x)と回転側制動部材(7y)との接触圧を調整できるように構成されたことを特徴とするコンベア式搬送装置。
【0010】
[10]上記[9]のコンベア式搬送装置において、支持フレーム(6)に軸支される回転体(1a)または回転体(1b)の回転軸(9)は、その一端側に回転側制動部材保持用の軸部(90)を有するとともに、該軸部(90)の先端側部分にはネジ部(91)が形成され、
固定側制動部材(7x)は、回転軸(9)を囲むように支持フレーム(6)に取り付けられたプレート状の固定側ブレーキシュー(10x)で構成され、
回転側制動部材(7y)は、軸部(90)に軸方向スライド可能に設けられたホルダ(11)に保持され、先端が固定側ブレーキシュー(10x)のプレート面(100)に接する複数の回転側ブレーキシュー(10y)で構成されるとともに、該各回転側ブレーキシュー(10y)は、固定側ブレーキシュー(10x)のプレート面(100)と相対するホルダ(11)の側面に形成された複数の取付穴(110)に軸方向スライド可能に嵌め込まれることによりホルダ(11)に保持され、
制動力調整手段(8)は、ホルダ(11)と、該ホルダ(11)の各取付穴(110)内に配置され、回転側ブレーキシュー(10y)を固定側ブレーキシュー(10x)方向に付勢するスプリング(12)と、ホルダ(11)に接するように軸部(90)のネジ部(91)に軸方向移動可能に装着されたホルダ位置調整ネジ(13)を備えることを特徴とするコンベア式搬送装置。
【0011】
[11]無動力で作動するコンベア式の搬送装置であって、
並列して配置される回転自在な非駆動型の複数の搬送ロール(70)と、該各搬送ロール(70)の回転を制動するとともに、その制動力が調整可能な制動機構(3)を備え、
搬送装置が長手方向で傾斜した状態に配置されたときに、搬送ロール(70)上に置かれた被搬送物の荷重の傾斜方向分力によって搬送ロール(70)に回転力が付与されることにより、搬送ロール(70)が制動機構(3)で制動されつつ回転するように構成されたことを特徴とするコンベア式搬送装置。
【0012】
[12]無動力で作動するコンベア式の搬送機構部(A)と、該搬送機構部(A)を支持する脚部(4)を備えた搬送装置であって、
搬送機構部(A)は、並列して配置される回転自在な非駆動型の複数の搬送ロール(70)と、該各搬送ロール(70)の回転を制動するとともに、その制動力が調整可能な制動機構(3)を備え、
搬送機構部(A)が脚部(4)により長手方向で傾斜した状態に支持されたときに、搬送ロール(70)上に置かれた被搬送物の荷重の傾斜方向分力によって搬送ロール(70)に回転力が付与されることにより、搬送ロール(70)が制動機構(3)で制動されつつ回転するように構成されたことを特徴とするコンベア式搬送装置。
【0013】
[13]上記[11]または[12]のコンベア式搬送装置において、支持フレーム(6)に回転自在に支持される回転軸(72)と、各搬送ロール(70)の回転を回転軸(72)に伝達する回転力伝達手段(73)を備え、
制動機構(3)が、回転軸(72)の回転を制動する制動機構で構成され、該制動機構により回転軸(72)の回転を制動することで各搬送ロール(70)の回転が制動されるようにしたことを特徴とするコンベア式搬送装置。
[14]上記[13]のコンベア式搬送装置において、回転力伝達手段(73)は、コンベア始端側とコンベア終端側に配置される1対のスプロケットホイール(75a),(75b)と、該スプロケットホイール(75a),(75b)間に回動可能に巻き掛けられる無端チェーン(76)と、各搬送ロール(70)の回転軸(77)の端部に設けられ、無端チェーン(76)と噛み合うスプロケットホイール(78)を備え、
回転軸(72)は、無端チェーン(76)と噛み合うスプロケットホイール(79)を備えることを特徴とするコンベア式搬送装置。
【0014】
[15]上記[13]のコンベア式搬送装置において、回転軸(72)は、各搬送ロール(70)に対応した位置に形成される複数のプーリ部(720)を備え、
回転力伝達手段(73)は、各搬送ロール(70)の周方向に形成された無端ベルト巻き掛け用の溝(700)と、回転軸(72)の各プーリ部(720)と各搬送ロール(70)の溝(700)間に巻き掛けられた無端ベルト(80)を備えることを特徴とするコンベア式搬送装置。
[16]上記[13]~[15]のいずれかのコンベア式搬送装置において、制動機構(3)は、回転軸(72)が回転自在に支持される支持フレーム(6)に設けられる固定側制動部材(7x)と、該固定側制動部材(7x)に接触した状態で回転軸(72)と一体に回転する回転側制動部材(7y)と、固定側制動部材(7x)と回転側制動部材(7y)との接触圧を調整する制動力調整手段(8)を備え、
該制動力調整手段(8)は、回転側制動部材(7y)と固定側制動部材(7x)のうちの一方を他方に押し付ける付勢手段を有するとともに、該付勢手段の付勢による固定側制動部材(7x)と回転側制動部材(7y)との接触圧を調整できるように構成されたことを特徴とするコンベア式搬送装置。
【0015】
[17]上記[16]のコンベア式搬送装置において、回転軸(72)は、その一端側に回転側制動部材保持用の軸部(721)を有するとともに、該軸部(721)の先端側部分にはネジ部(722)が形成され、
固定側制動部材(7x)は、回転軸(72)を囲むように支持フレーム(6)に取り付けられたプレート状の固定側ブレーキシュー(10x)で構成され、
回転側制動部材(7y)は、軸部(721)に軸方向スライド可能に設けられたホルダ(11)に保持され、先端が固定側ブレーキシュー(10x)のプレート面(100)に接する複数の回転側ブレーキシュー(10y)で構成されるとともに、該各回転側ブレーキシュー(10y)は、固定側ブレーキシュー(10x)のプレート面(100)と相対するホルダ(11)の側面に形成された複数の取付穴(110)に軸方向スライド可能に嵌め込まれることによりホルダ(11)に保持され、
制動力調整手段(8)は、ホルダ(11)と、該ホルダ(11)の各取付穴(110)内に配置され、回転側ブレーキシュー(10y)を固定側ブレーキシュー(10x)方向に付勢するスプリング(12)と、ホルダ(11)に接するように軸部(721)のネジ部(722)に軸方向移動可能に装着されたホルダ位置調整ネジ(13)を備えることを特徴とするコンベア式搬送装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコンベア式搬送装置は、長手方向で傾斜した状態に配置されたときに、(i)無端搬送体(2)上に置かれた被搬送物の荷重の傾斜方向分力によって無端搬送体(2)が牽引されることにより、無端搬送体(2)が制動機構(3)で制動されつつ回動するように構成され、若しくは、(ii)搬送ロール(70)上に置かれた被搬送物の荷重の傾斜方向分力によって搬送ロール(70)に回転力が付与されることにより、搬送ロール(70)が制動機構(3)で制動されつつ回転するように構成されているので、被搬送物を無動力で高所から低所に適正な移動速度(搬送速度)で安全に搬送することができる。本発明のコンベア式搬送装置は、電源のない場所でも使用でき、高所から低所に荷物を搬送する荷役作業を効率化できるとともに、作業者の負担を軽減できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のコンベア式搬送装置の一実施形態を模式的に示す側面図
【
図3】本発明のコンベア式搬送装置が備える制動機構の一実施形態を模式的に示す説明図
【
図4】
図1のコンベア式搬送装置の使用状態を示す説明図
【
図5-1】本発明のコンベア式搬送装置の他の実施形態を具体的に示すもので、装置長手方向におけるコンベア始端側の半分を示す側面図
【
図5-2】
図5-1のコンベア式搬送装置について、装置長手方向におけるコンベア終端側の半分を示す側面図
【
図8】
図5のコンベア式搬送装置におけるコンベア始端側を部分的に示すもので、回転体と制動機構の構成部材を断面した状態で示す平面図
【
図10】
図5のコンベア式搬送装置において、搬送機構部を構成する支持フレームの断面図であり、
図10(ア)は
図5-1中のX-X線に沿う断面図、
図10(イ)は
図10(ア)中のイ-イ断面図
【
図11】
図5のコンベア式搬送装置において、搬送機構部を構成する無端ベルトの一部と、これに設けられた突起部を部分的に示す平面図
【
図13】
図5のコンベア式搬送装置の使用状態を示す説明図
【
図14】本発明のコンベア式搬送装置が備える制動機構の他の実施形態を模式的に示すもので、
図14(ア)は制動用プーリの配置のみを示す側面図、
図14(イ)は
図14(ア)中のXIV-XIV線に沿う制動機構の断面図
【
図15】本発明のコンベア式搬送装置が備える制動機構の他の実施形態を模式的に示すもので、
図15(ア)は制動用プーリの配置のみを示す側面図、
図15(イ)は
図15(ア)中のXV-XV線に沿う制動機構の断面図
【
図16】本発明のコンベア式搬送装置の他の実施形態を模式的に示すもので、搬送機構部を部分的に示す平面図
【
図18】本発明のコンベア式搬送装置の他の実施形態を模式的に示すもので、搬送機構部を部分的に示す側面図
【
図20】
図18の搬送機構部において、無端チェーンの上部回動部分を支持するサポート部材の実施形態を模式的に示す縦断面図
【
図21】本発明のコンベア式搬送装置の他の実施形態を模式的に示すもので、搬送機構部を部分的に示す平面図
【
図24】本発明のコンベア式搬送装置の他の実施形態を模式的に示すもので、搬送機構部を部分的に示す平面図
【
図25】
図24の搬送機構部において、各搬送ロールの回転を1つの回転軸に伝達する回転力伝達手段を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1および
図2は、本発明のコンベア式搬送装置の一実施形態を模式的に示すもので、
図1は側面図、
図2は平面図である。また、
図3は、この搬送装置が備える制動機構3の一実施形態を模式的に示す説明図である。
このコンベア式搬送装置は、無動力で作動するものであり、コンベア始端(搬送装置が
図4に示すように長手方向で傾斜して配置された場合に傾斜上部側となる端部)側およびコンベア終端(同じく傾斜下部側となる端部)側の非駆動型の回転体1a,1b(回転車)と、これら回転体1a,1b間に回動可能に巻き掛けられる無端搬送体2と、この無端搬送体2の回動を制動するとともに、その制動力が調整可能な制動機構3を備え、搬送装置が長手方向で傾斜した状態に配置されたときに、無端搬送体2上に置かれた被搬送物(以下「荷物」という)の荷重の傾斜方向分力(傾斜した無端搬送体面に平行な分力)によって無端搬送体2が牽引されることにより、無端搬送体2が制動機構3で制動されつつ回動するように構成される。
【0019】
このコンベア式搬送装置は、脚部を介することなく階段などに傾斜状に配置して使用することができるが、本実施形態では搬送装置本体を支持する脚部4(4a,4b)を備えている。すなわち、本実施形態の搬送装置は、コンベア式の搬送機構部Aと、この搬送機構部Aを支持する脚部4を備え、搬送機構部Aが、上記の通り、コンベア始端側およびコンベア終端側の非駆動型の回転体1a,1bと、これら回転体1a,1b間に回動可能に巻き掛けられる無端搬送体2と、この無端搬送体2の回動を制動するとともに、その制動力が調整可能な制動機構3を備えている。
【0020】
本実施形態のコンベア式搬送装置は、ベルトコンベア式の搬送装置であり、無端搬送体2が幅の小さい1対(2条)の平行な無端ベルト14で構成され、各回転体1a,1bが、それぞれ1対の無端ベルト14が巻き掛けられる1対のプーリ15を有している。無端搬送体2と回転体1a,1bをこのように構成するのは、搬送装置全体を軽量化するためである。ここで、無端ベルト14とプーリ15間での滑りを防止するため、無端ベルト14は歯付き無端ベルトとし、プーリ15はその歯付き無端ベルトと噛み合う歯付きプーリとすることが好ましい。
各回転体1a,1bは、装置長手方向に沿った支持フレーム6の両端に回転(フリー回転)自在に支持(軸支)されている。支持フレーム6は、装置幅方向両側の側板60と、この両側板60を複数個所で連結する連結部材61などで構成されている。また、支持フレーム6(両側板60)の長手方向に沿って、無端搬送体2(本実施形態では2条の無端ベルト14)の上部回動部分を支持するサポート部材16(無端搬送体2の受け部材)が設けられており、荷物が載せられる無端搬送体2の上部回動部分は、このサポート部材16の上を摺動しながら移動する。
なお、無端搬送体2を構成する無端ベルト14は3条以上であってもよく、この無端ベルト14の本数に応じて、各回転体1a,1bに複数のプーリ15が備えられる。
【0021】
制動機構3は、無端搬送体2の回動を制動するとともに、その制動力が調整可能なものであれば、どのような形態・構造のものでもよいが、特に、回転体1aまたは回転体1bの回転を制動することで無端搬送体2の回動が制動されるようにしたものが簡便で好ましく、本実施形態でも、コンベア始端側の回転体1aの回転を制動する制動機構3が設けられている。また、このようにコンベア始端側の回転体1aの回転を制動する制動機構3を設けることにより、コンベア上に荷物を載せる作業者が手元で制動機構3の制動力の調整を行うことができるので、作業性・操作性がよい。
【0022】
制動機構3は、例えば、支持フレーム6に設けられる固定側制動部材7xと、この固定側制動部材7xに接触した状態で回転体1aまたは回転体1bと一体に回転する回転側制動部材7yと、固定側制動部材7xと回転側制動部材7yのうちの一方を他方に押し付けるとともに、その押し付け圧力(接触圧)を調整する制動力調整手段8を備えたものとすることができる。ここで、固定側制動部材7xとは、回転側制動部材7yに対して回転しない側の制動部材という意味である。この制動力調整手段8は、通常、回転側制動部材7yと固定側制動部材7xのうちの一方を他方に押し付ける付勢手段を有するとともに、この付勢手段の付勢による固定側制動部材7xと回転側制動部材7yとの接触圧を調整でき且つその接触圧を保持できるように構成される。
【0023】
図3は、そのような制動機構3の一実施形態を模式的に示すもので、制動力調整手段8は、回転側制動部材7yをスライド可能に保持し、回転体1aの回転軸9に軸方向位置調整可能に設けられた保持手段f(この保持手段fも回転体1aと一体に回転する)と、この保持手段fと回転側制動部材7yとの間に介在し、回転側制動部材7yを固定側制動部材7xに対して押し付ける付勢手段eを有している。この制動力調整手段8は、保持手段fを回転軸9の軸方向で移動させて位置調整することで、付勢手段eの付勢による固定側制動部材7xと回転側制動部材7yとの接触圧(固定側制動部材7xに対する回転側制動部材7yの押し付け圧力)を調整でき且つその接触圧を保持できるようにしている。保持手段fは、例えば、ネジ機構などを利用することで軸方向で位置調整(移動)可能とし且つその調整された位置に保持されるようにすればよい。このような制動力調整手段8で、固定側制動部材7xと回転側制動部材7yとの接触圧を調整することにより、回転体1aの回転の制動力を調整することができる。
このような制動機構3は、比較的簡易な機構により回転体1aの回転を適切に制動できるともに、使用者による簡単な操作で制動力を調整できる利点がある。
【0024】
また、制動機構3の他の実施形態としては、制動力調整手段8を支持フレーム6側に設け、この制動力調整手段8の付勢手段eにより、固定側制動部材7xを回転側制動部材7yに対して押し付けるようにしてもよい。この場合には、制動力調整手段8は、固定側制動部材7xをスライド可能に保持し、支持フレーム6に回転軸9の軸方向で位置調整可能に設けられる保持手段fと、この保持手段fと固定側制動部材7xとの間に介在し、固定側制動部材7xを回転側制動部材7yに対して押し付ける付勢手段eを有する。この場合も、支持フレーム6側に設けられた保持手段fを回転軸9の軸方向で移動させて位置調整することで、付勢手段eの付勢による固定側制動部材7xと回転側制動部材7yとの接触圧(回転側制動部材7yに対する固定側制動部材7xの押し付け圧力)を調整でき且つその接触圧を保持できるようにする。保持手段fを軸方向で位置調整(移動)可能とし且つその調整された位置に保持されるようにするには、例えば、上述したようなネジ機構などを利用すればよい。
【0025】
制動機構3は、固定側制動部材7xと回転側制動部材7yとの摩擦により制動力が得られるものであればよく、したがって、上述した実施形態の制動機構3は、固定側制動部材7xと回転側制動部材7yのうちの一方を他方に押し付けることにより制動力を得る方式であるが、例えば、金属ディスクなどの回転側制動部材7yをブレーキシューなどの固定側制動部材7xで挟み込んで制動力を得る方式としてもよい。
また、上述した実施形態の制動機構3は、回転体1a(プーリ15)の回転を制動することで無端搬送体2(無端ベルト14)の回動が制動されるようにしたものであるが、制動機構3は、後述する実施形態に示すように、無端搬送体2の回動を直に制動するようなものでもよい。
固定側制動部材7xと回転側制動部材7yの材質は任意であり、両部材を同材質または異なる材質の摩擦材で構成してもよいし、一方(例えば回転側制動部材7y)を金属ディスクで構成し、他方(例えば固定側制動部材7x)を摩擦材で構成してもよい。
【0026】
脚部4(4a,4b)は、コンベア始端側とコンベア終端側にそれぞれ設けられ、この両脚部4a,4bにより搬送機構部Aが支持される。
使用時に配置される階段などの傾斜に関わりなく搬送機構部Aを適正な傾斜角度に支持できるようにするため、各脚部4a,4bは伸縮可能に構成され、長さ調整ができるようにしてある。同様に、各脚部4a,4bは、上端が搬送機構部Aを構成する支持フレーム6に回動自在に枢支17されるとともに、固定手段(図示せず)で任意の回動位置で固定できるようにしてある。また、搬送装置を運搬しやすくするため、各脚部4a,4bを枢支部17で回動させることにより、搬送機構部Aと略平行な状態に折り畳みできるようにするのが好ましい。
また、搬送機構部Aを緩い傾斜角度に支持できるようにするため、コンベア始端側の脚部4aよりもコンベア終端側の脚部4bを長くできるように、すなわち伸縮可能な脚部4の最大長さが脚部4b>脚部4aとなるように構成してある。
【0027】
搬送装置の使用時に、長手方向で傾斜した無端搬送体2(本実施形態では無端ベルト14)の上に置かれた荷物が滑ってコンベア終端側から滑り落ちないようにするために、無端搬送体2の外面に、無端搬送体長手方向で間隔をおいて、複数の被搬送物係止用の突起部5が設けられている。この突起部5は、荷物が無端搬送体2から滑り落ちないように係止するためのものであるため、形状や設置形態は任意であり、例えば、ピンのような突起でもよいし、所定の幅を有するものでもよいし、無端搬送体2の幅方向に沿って設けられる突条でもよい。突起部5は、荷物を確実に係止でき且つ無端搬送体2の回動に支障を生じないような高さであればよく、一般には5~20mm程度の高さが好ましい。無端搬送体長手方向での突起部5の設置間隔は、無端搬送体2上を滑り落ちようとする荷物が必ず引っ掛かって係止されるような間隔であればよく、例えば、搬送機構部Aの全長が2~3m程度である場合、0.5~1.5m程度の間隔にすればよい。
【0028】
また、本実施形態のように無端搬送体2が無端ベルト14の場合には、無端ベルト14の外面に荷物滑り止め用のゴムライニングを施す(例えば、ゴムシートを貼り付ける)ことが好ましい。
なお、本実施形態では、無端搬送体2上で荷物が滑っても係止されるように安全のために突起部5を設けているが、荷物をコンベア(無端搬送体2)に載せた時点で荷物が必ず突起部5に係止されるようにすることもでき、この場合には、無端搬送体長手方向における突起部5の設置間隔は比較的狭くなる。
本発明の搬送装置の長さは特に制限はないが、一般には運搬性などの観点からは2~3m程度が適当である。
【0029】
図4は、本実施形態のコンベア式搬送装置の使用状態を示している。
この使用例は、階段に搬送装置を配置して荷物g(段ボール)の搬送を行う場合を示しており、脚部4a,4bの長さを調整して、搬送機構部Aが所定の傾斜角度θ(例えば30~40°)となるように階段に搬送装置を設置するとともに、傾斜角度と荷物gの重量に応じて制動機構3の制動力が調整される。作業者P1がコンベア始端側の無端搬送体2上に荷物gを載せると、この荷物gの荷重の傾斜方向分力(傾斜した無端搬送体面に平行な分力)によって無端搬送体2が牽引されることにより、無端搬送体2が制動機構3で制動されつつ回動し、荷物gが搬送機構部Aの長手方向で搬送され、コンベア終端側で作業者P2により受け取られる。また、作業者P1は、荷物gの移動速度を目視で確認しながら制動機構3による無端搬送体2(回転体1a)の制動力を調整し、荷物gの移動速度をコントロールすることができる。
また、荷物gが無端搬送体2上を滑り下りるようなことがあっても、その途中で突起部5(図示せず)に引っ掛かり係止されるので、コンベア終端側から滑り落ちることはない。
【0030】
本実施形態では、無端搬送体2が幅の小さい複数条(2条)の無端ベルト14(好ましくは歯付き無端ベルト)で構成され、各回転体1a,1bが、前記複数条の無端ベルト14が巻き掛けられる複数のプーリ15(好ましくは歯付きプーリ)を有する構成としたが、本発明のコンベア式搬送装置は、例えば、以下のような無端搬送体2と回転体1a,1bを有するものとしてもよい。
(i)無端搬送体2が、平ベルトの幅方向の一部に歯付きベルト部を備えた無端ベルトで構成され、各回転体1a,1bが、前記歯付きベルト部と噛み合う歯付きプーリ部を備えたプーリを有する。
(ii)無端搬送体2が複数条の無端チェーンで構成され、各回転体1a,1bが、前記複数条の無端チェーンと噛み合う複数のスプロケットホイールを有する。
【0031】
図5~
図12は、ベルトコンベア式の本発明の搬送装置の他の実施形態を具体的に示すものであり、
図5-1は装置長手方向におけるコンベア始端側の半分を示す側面図、
図5-2は装置長手方向におけるコンベア終端側の半分を示す側面図、
図6は平面図、
図7は
図5-2中のVII-VII線に沿う断面図である。
図8はコンベア始端側を部分的に示すもので、回転体1a(プーリ15)と制動機構3の構成部材を断面した状態で示す平面図、
図9は
図8に示す制動機構3の側面図である。
図10は、搬送機構部Aを構成する支持フレーム6の断面図であり、
図10(ア)は
図5-1中のX-X線に沿う断面図、
図10(イ)は
図10(ア)中のイ-イ断面図である。
図11は、搬送機構部Aを構成する無端ベルト14の一部と、これに設けられた突起部5を部分的に示す平面図、
図12は
図11中のXII-XII線に沿う断面図である。
なお、便宜上、
図5-1、
図5-2、
図8、
図9では無端搬送体2(無端ベルト14)を仮想線で表し、
図6では無端搬送体2(無端ベルト14)の図示を省略してある。
【0032】
本実施形態の搬送装置の基本構成は、
図1および
図2の実施形態と共通しており、同一の符号を付してある。すなわち、図において、Aはベルトコンベア式の搬送機構部、4(4a,4b)はこの搬送機構部Aを支持する脚部である。搬送機構部Aにおいて、6は支持フレーム、1a,1bはコンベア始端側およびコンベア終端側において支持フレーム6に回転自在に支持(軸支)された非駆動型の回転体、2はこれら回転体1a,1b間に回動可能に巻き掛けられる無端搬送体、3はこの無端搬送体2の回動を制動するとともに、その制動力が調整可能な制動機構である。そして、この搬送機構部Aは、脚部4により長手方向で傾斜した状態に支持されたときに、無端搬送体2上に置かれた荷物の荷重の傾斜方向分力(傾斜した無端搬送体面に平行な分力)によって無端搬送体2が牽引されることにより、無端搬送体2が制動機構3で制動されつつ回動するように構成される。
【0033】
支持フレーム6は、装置幅方向両側の側板60と、この両側板60を複数個所で連結する連結部材61などで構成されている。この支持フレーム6の両側板60は、そのコンベア始端側とコンベア終端側に、側板本体の下端に連設されたブラケット62(62a,62b)を有している。
コンベア始端側の回転体1aは、支持フレーム6を構成する両側板60に軸受23を介して回転自在に支持(軸支)された回転軸9と、この回転軸9に保持された1対のプーリ15aで構成されている。なお、1対のプーリ15a間の回転軸部分にはスリーブ19が緩く外装され、このスリーブ19が、この搬送装置を持ち運ぶ際に使用するコンベア始端側の把手18aを構成している。
一方、コンベア終端側の回転体1bは、支持フレーム6を構成する両側板60にそれぞれ軸受ブラケット20を介して回転自在に支持(軸支)された1対のプーリ15bで構成されている。この1対のプーリ15b間には、搬送装置を持ち運ぶ際に使用するコンベア終端側の把手18bが設けられ、支持フレーム6を構成する連結部材61に固定されている。
【0034】
無端搬送体2は、回転体1a,1bをそれぞれ構成する各1対のプーリ15a,15b間に回動可能に巻き掛けられる幅の小さい1対(2条)の平行な無端ベルト14で構成されている。無端ベルト14とプーリ15a,15b間での滑りを防止するため、無端ベルト14は歯付き無端ベルトとし、プーリ15a,15bはその歯付き無端ベルトと噛み合う歯付きプーリとしてある。無端ベルト14の材質は特に制限はないが、通常はゴム製である。
無端ベルト14の外面には、荷物滑り止め用のゴムシート33(例えば、EPDMシートのような摩擦抵抗が高いシート)が貼り付けられている。
また、支持フレーム6(両側板60)の長手方向に沿って、1対の無端ベルト14の上部回動部分を支持するサポート部材16(ベルト受け)が設けられている。このサポート部材16の上面にはガイド溝160が形成され、荷物が載せられる無端ベルト14の上部回動部分は、このサポート部材16のガイド溝160内を摺動しながら移動する。このサポート部材16は、通常、無端ベルト14の材質がゴムであるため、無端ベルト14との間の摩擦抵抗をなるべく少なくするために、ポリエチレンなどの樹脂材で構成するのが好ましい。
【0035】
コンベア始端側の両側板60間には、荷物をコンベア(搬送機構部A)上にスムーズに載せることができるように、コンベア上に載せた荷物をスライド移動させることができる荷物支持板21が配置され、両側板60および連結部材61に支持固定されている。この荷物支持板21は、その上面が無端ベルト14の上面よりも若干低くなるように設けられている。
また、コンベア始端側の一方の側板60の外側には、コンベア(搬送機構部A)上に荷物を載せる際に、荷物の側面を押し当ててその位置決め(荷物のセンター出し)をするための当て板22が設けられている。この当て板22は断面L状の部材であり、側板60の外側に張り出すようにして、側板60の上端に固定されている。
【0036】
制動機構3は、コンベア始端側の回転体1aの回転を制動することで無端搬送体2(無端ベルト14)の回動が制動されるようにしたものであり、
図3と同様に、支持フレーム6側に設けられる固定側制動部材7xと、この固定側制動部材7xに接触した状態で回転体1aと一体に回転する回転側制動部材7yと、回転側制動部材7yを固定側制動部材7xに押し付けるとともに、その押し付け圧力(接触圧)を調整するための制動力調整手段8を備えている。この制動力調整手段8は、固定側制動部材7xに対する回転側制動部材7yの押し付け圧力(接触圧)を調整でき且つその接触圧を保持できるように構成されている。
支持フレーム6に軸受23を介して回転自在に支持(軸支)される回転体1aの回転軸9は、その一端側に回転側制動部材保持用の軸部90を有するとともに、この軸部90の先端側部分にはネジ部91が形成されている。
【0037】
固定側制動部材7xは、プレート状(円盤状)の固定側ブレーキシュー10xで構成され、この固定側ブレーキシュー10xは、回転軸9(および軸受23)を囲むようにして支持フレーム6の側板60に取付固定されている。
回転側制動部材7yは、先端が固定側ブレーキシュー10xのプレート面100に接する複数(本実施形態では8個)の小筒状の回転側ブレーキシュー10yで構成され、この複数の回転側ブレーキシュー10yは、制動力調整手段8を構成するホルダ11にスライド可能に保持されている。
固定側ブレーキシュー10xと回転側ブレーキシュー10yの材質(摩擦材の材質)は特に限定されないが、無動力の回転体の制動にはそれほど大きな制動力は要求されないので、例えば、布ベークライト(布基材フェノール樹脂積層板)などのような安価な材料で構成することができる。
【0038】
制動力調整手段8は、回転側ブレーキシュー10yをスライド可能に保持するリング状のホルダ11と、このホルダ11にスライド可能に保持された回転側ブレーキシュー10yを固定側ブレーキシュー10x方向に付勢する(すなわち、回転側ブレーキシュー10yを固定側ブレーキシュー10xに押し付ける)スプリング12(コイルスプリング)と、ホルダ11の軸方向での位置調整を行うダイヤル式のホルダ位置調整ネジ13を備えている。これらの構成を
図3に示した手段と対応させると、ホルダ11とホルダ位置調整ネジ13が保持手段fに、スプリング12が付勢手段eにそれぞれ相当する。
【0039】
ホルダ11は、固定側ブレーキシュー10xのプレート面100と相対する側面(前面)に、回転側ブレーキシュー10yを保持するための複数の取付穴110が形成されており、回転軸9の軸部90に軸方向スライド可能に取付けられている。ホルダ11の中央部には、軸部90に対して非回転且つ軸方向スライド自在に嵌められる取付孔111が貫設されており、ホルダ11は、この取付孔111を介して軸部90に軸方向スライド可能に(且つ軸部90に対して回転しないように)取付られている。ホルダ11の側面に形成される複数の取付穴110は、軸部90を中心として周方向において等間隔で設けられている。そして、各回転側ブレーキシュー10yは、ホルダ11の各取付穴110に軸方向スライド可能に嵌め込まれることによりホルダ11に保持されている。
【0040】
スプリング12は、各取付穴110内部に配置され、取付穴110に嵌め込まれた回転側ブレーキシュー10yと取付穴110の底部間に介在することにより、回転側ブレーキシュー10yを固定側ブレーキシュー10x方向に付勢する。より詳細には、小筒状の各回転側ブレーキシュー10yは、先端が閉じ、後端が開放した中空体であり、スプリング12は、その一部が中空体内に位置するようにして取付穴110内部に配置される。したがって、スプリング12はその一端が中空体の内方端に、他端が取付穴110の底部にそれぞれ係止された状態で、回転側ブレーキシュー10yを固定側ブレーキシュー10x方向に付勢する。
【0041】
ホルダ位置調整ネジ13はナット部材であり、軸部90のネジ部91に軸方向移動可能に装着(螺装)される。このホルダ位置調整ネジ13はホルダ11の他方の側面(後面)に接しており、ホルダ位置調整ネジ13を手で回してスプリング12の弾性力に抗して軸方向で移動させることで、ホルダ11の位置調整を行う。このホルダ位置調整ネジ13によるホルダ11の位置調整により、固定側ブレーキシュー10xに対する回転側ブレーキシュー10yの押し付け圧力(接触圧)が調整され、回転体1aの回転を制動する制動力が調整される。すなわち、ホルダ位置調整ネジ13をスプリング12の弾性力に抗して締め込むことにより、固定側ブレーキシュー10xに対する回転側ブレーキシュー10yの押し付け圧力(接触圧)が大きくなり、回転体1aの回転を制動する制動力(無端搬送体2の回動を制動する制動力)が大きくなる。
回転側ブレーキシュー10yの設置個数や設置間隔は特に制限はなく、得ようとする制動力の程度などに応じて適宜選択すればよい。
なお、
図1および
図2の実施形態に関しても述べたように、本実施形態のようにコンベア始端側の回転体1aの回転を制動する制動機構3を設けることにより、コンベア上に荷物を載せる作業者が手元で制動機構3の制動力の調整を行うことができるので、作業性・操作性がよい。
【0042】
本実施形態(
図8および
図9)の制動機構3は、(i)ホルダ位置調整ネジ13を手で回すだけの簡単な操作で制動力を容易に調整することができる、(ii)回転側のブレーキシューを複数に分割して(すなわち回転側のブレーキシューを複数の回転側ブレーキシュー10yで構成した)、それぞれを小型のスプリング12で付勢するようにしたので、細かい制動力調整を行うことができる、(iii)加えて、ホルダ位置調整ネジ13によるホルダ11の位置調整により制動力を調整するので、制動力の微調整が可能である、(iv)ホルダ位置調整ネジ13とスプリング12の弾性力により、位置調整されるホルダ11がその位置に保持されるため、回転体1a(無端搬送体2)に制動力を作用させた状態(ブレーキが利いた状態)を保持できる、というような利点があり、制動機構として特に性能が高い。
【0043】
脚部4(4a,4b)はコンベア始端側とコンベア終端側に設けられ、これら脚部4で搬送機構部Aを傾斜した状態に支持することができる。各脚部4は、上端が支持フレーム6のブラケット62(62a,62b)に回動自在に枢支17されている。使用時に配置される階段などの傾斜に関わりなく搬送機構部Aを適正な傾斜角度で支持できるようにするため、回動自在な脚部4は任意の回動位置で固定できるようにしてある。また、搬送装置を運搬しやすくするため、各脚部4a,4bを枢支部17で回動させることにより、搬送機構部Aと略平行な状態に折り畳みできるようにしてある。
【0044】
この回動自在な各脚部4(4a,4b)の固定手段として、ブラケット62(62a,62b)には円弧状のガイド孔620が設けられ、脚部4の最上端(枢支部17よりも上部部分)には、ガイド孔620に挿通するボルト24が取り付けられている。そして、ガイド孔620に挿通されたボルト24には、ナット部材を備えた固定用レバー25が装着(螺装)されている。なお、コンベア終端側の脚部4bの固定手段については、脚部4bが垂直状態よりもさらに装置外側方向に回動できるような円弧のガイド孔620が形成されている。これは、搬送装置を階段などで使用する際に、脚部4bが
図13(使用状態を示す図面)に示すような回動位置になるためである。
各脚部4は、ボルト24に対する固定用レバー25の締め込みを緩めた状態で回動可能であり、回動する際にボルト24がガイド孔620に沿って案内される。各脚部4を所定の回動位置で固定する場合には、その回動位置においてボルト24に対して固定用レバー25を締め込むことにより、ボルト24と固定用レバー25(ナット部材)でブラケット62と脚部4を挟んでクランプする。これにより各脚部4(4a,4b)をブラケット62(62a,62b)に固定することができる。
【0045】
各脚部4(4a,4b)は、伸縮可能に構成され、長さ調整ができるようにしてある。すなわち、各脚部4(4a,4b)は、ブラケット62(62a,62b)に枢支17される上脚部材26と、この上脚部材26に対して上下スライド自在に設けられる下脚部材27からなり、この下脚部材27を任意のスライド位置で上脚部材26に脱着可能に固定するための固定手段を有している。
上脚部材26は、両側板6のブラケット62にそれぞれ枢支17される1対のフレーム材260からなる。一方、下脚部材27は、上脚部材26の1対のフレーム材260に、それぞれ上下スライド自在に取り付けられる1対のフレーム材270と、この1対のフレーム材270の下端が固定されることで、フレーム材270どうしを連結する水平フレーム材271と、この水平フレーム材271の両端に設けられる接地部材272などで構成されている。
【0046】
下脚部材27の1対のフレーム材270は、ガイド機構(図示せず)を介して上脚部材26の1対のフレーム材260に上下スライド可能に取付られるとともに、フレーム材260に設けられるクランプ機構でフレーム材270の一部を脱着可能にクランプすることにより、上脚部材26の1対のフレーム材260に固定される。フレーム材260に設けられるクランプ機構としては、例えば、ボルト部材である固定用レバー261と、この固定用レバー261が螺装されるナット部材(図示せず)からなり、このナット部材を固定用レバー261で締め込むことにより、ナット部材とフレーム材260間でフレーム材270の一部をクランプできるようにした機構とすることができる。
接地部材272は、脚部4の長さの微調整や装置幅方向での高さ調整を行えるようにしたものであり、水平フレーム材271の両端に設けられたナット部材273と、このナット部材273に装着(螺装)されて垂直状態に保持されるネジ軸274と、このネジ軸274の下端にボールジョイントを介して保持される接地ソケット275と、ネジ軸274に装着(螺装)されたロックナット276などで構成されている。また、接地ソケット275の下面にはゴム材などのクッション材277が貼られている。
【0047】
この接地部材272は、ネジ軸274を手で回すことにより、ネジ軸274がナット部材273に対して上下動し、接地ソケット275の高さを変えることができる。ロックナット276は、ナット部材273に接するように締め込むことにより、ネジ軸274をロックすることができる。また、接地ソケット275はネジ軸274の下端にボールジョイントを介して保持されているため、搬送装置を階段などに設置した際に脚部4が斜めの状態になった場合でも、接地ソケット275はネジ軸274に対して回動して角度を変えるため、その底面が適切に接地することができる。
また、搬送機構部Aを緩い傾斜状態に支持できるようにするため、コンベア始端側の脚部4aよりもコンベア終端側の脚部4bを長くできるように、すなわち、脚部4の最大長さが脚部4b>脚部4aとなるように構成してある。このため、上脚部材26、下脚部材27ともに、脚部4aよりも脚部4bの方が長く構成されている。
本実施形態の搬送装置は、以上のような脚部4(4a,4b)を備えることにより、階段などの荷役現場において搬送機構部Aを適当な傾斜角度に特に安定して支持することができる。
【0048】
搬送装置の使用時に、長手方向で傾斜した無端ベルト14(無端搬送体2)の上に置かれた荷物が滑り、コンベア終端側から滑り落ちないようにするために、無端ベルト14の外面に、無端ベルト長手方向で間隔をおいて、複数の被搬送物(荷物)係止用の突起部5が設けられている。本実施形態の突起部5は、無端ベルト14と略同じ幅の直方体の樹脂製の突起部用部材28を無端ベルト14に固定することで構成されている。このため、無端ベルト14の上面に長手方向で間隔をおいて取付用の雌ネジ部材29が接着または溶着などで固定され、この雌ネジ部材29に突起部用部材28を装着し、雌ネジ部材29にネジ30でネジ止めすることにより、突起部5が形成されている。
本発明の搬送装置の長さ、突起部5の高さ、無端搬送体長手方向における突起部5の設置間隔などは、
図1および
図2の実施形態において説明したとおりである。
【0049】
また、本実施形態の搬送装置は、複数台を直列に配置して使用することができるが、その際に、隣り合う搬送装置の支持フレーム6どうしを連結プレートで連結することにより、複数台の搬送装置を適正な位置関係で安定して設置することができる。このためコンベア始端側とコンベア終端側の各ブラケット62(62a,62b)には、連結プレートを取り付けるための取付孔31(ボルト挿通孔)が設けられている。
本実施形態の搬送装置は、回転側ブレーキシュー10yの数を増減したり、スプリング12の弾性力を増減する(すなわちスプリングを弾性力が異なるものに交換する)ことにより、最大制動力を変えることができる。このため、搬送装置を使用するに際して、例えば、(i)ホルダ11に形成した複数の取付穴110に対して装着する回転側ブレーキシュー10yの数を増減すること、および/または、(ii)使用するスプリング12を弾性力が異なるスプリングの中から選択すること、により現場の状況(設置する搬送装置の傾斜の度合い、荷物の重量など)に応じて制動装置の最大制動力を簡単に調整することができる。
【0050】
図13は、本実施形態のコンベア式搬送装置の使用状態を示している。なお、この
図13でも無端搬送体2は仮想線で表わしてある。
この使用例は、階段に複数台の搬送装置を直列に配置して荷物の搬送を行う場合を示しており、隣り合う搬送装置の支持フレーム6どうしを連結プレート32で連結することにより、複数台の搬送装置を適正な位置関係で安定して設置することができる。連結プレート32は、隣り合う搬送装置のコンベア始端側とコンベア終端側の各ブラケット62(62a,62b)の取付孔31(ボルト挿通孔)にボルト止めされ、隣り合う搬送装置の支持フレーム6どうしが連結される。
【0051】
各搬送装置は脚部4(4a,4b)の長さを調整して、搬送機構部Aが所定の傾斜角度(例えば30~40°)となるように階段に設置されるとともに、荷物の重量に応じて制動機構3の制動力が調整される。
図4で説明した通り、作業者がコンベア始端側の無端ベルト14上に荷物を載せると、この荷物の荷重の傾斜方向分力によって無端ベルト14が牽引されることにより、無端ベルト14が制動機構3で制動されつつ回動し、荷物が搬送機構部Aの長手方向で搬送され、コンベア終端側で別の作業者により受け取られる。また、コンベア始端側の作業者は、荷物の移動速度を目視で確認しながら制動機構3による無端ベルト14の制動力を調整し、荷物の移動速度をコントロールすることができる。また、荷物が無端ベルト14上を滑り下りるようなことがあっても、その途中で突起部5に引っ掛かり係止されるので、コンベア終端側から滑り落ちることはない。
【0052】
図14および
図15は、それぞれ本発明のコンベア式搬送装置が備える制動機構の他の実施形態を模式的に示すものであり、これらは、制動機構3が無端搬送体2(無端ベルト14)の回動を直に制動するようにしたものである。
図14(ア)は制動用プーリの配置のみを示す側面図、
図14(イ)は
図14(ア)中のXIV-XIV線に沿う制動機構の断面図である。この
図14の実施形態は、回転体1a(または回転体1b)との間で無端ベルト14を挟むようにして制動用プーリ34を設け、この制動用プーリ34の回転を制動する制動機構3を設けたものである。この制動用プーリ34は、回転軸35を介して支持フレーム6に回転可能に支持(軸支)されており、無端搬送体2(無端ベルト14)との間の摩擦力により無端搬送体2の回動と同期して回転するように構成されている。このため、制動用プーリ34の表面の材質・性状や無端搬送体2に対する接触圧などを選択・調整することで、無端搬送体2と制動用プーリ34間の摩擦係数を十分に高くすることが好ましい。
【0053】
制動用プーリ34の回転軸35と支持フレーム6に対して、
図8に準じた構成の制動機構3が設けられる。すなわち、回転軸35は、その一端側に回転側制動部材保持用の軸部350を有し、この軸部350の先端側部分にはネジ部351が形成されている。そして、この回転軸35の軸部350にホルダ11とホルダ位置調整ネジ13が装着され、ホルダ11には複数の回転側ブレーキシュー10yがスライド可能に保持される。支持フレーム6には、固定側ブレーキシュー10xが設けられ、ホルダ11に保持された複数の回転側ブレーキシュー10yが、スプリング12による付勢により固定側ブレーキシュー10xのプレート面100に押し付けられ、制動用プーリ34の制動力が得られる。この制動機構3の構造の詳細は、
図8に関して説明した通りである。
無端搬送体2(無端ベルト14)とこれに接する制動用プーリ34は同期して回動・回転するため、制動機構3による制動用プーリ34の制動力は無端搬送体2(無端ベルト14)の回動を制動することになる。
【0054】
図15(ア)は制動用プーリの配置のみを示す側面図、
図15(イ)は
図15(ア)中のXV-XV線に沿う制動機構の断面図である。この
図15の実施形態は、サポート用プーリ36との間で無端ベルト14を挟むようにして制動用プーリ34を設け、この制動用プーリ34の回転を制動する制動機構3を設けたものである。
図14と同様に、制動用プーリ34は、回転軸35を介して支持フレーム6に回転可能に支持(軸支)されている。また、サポート用プーリ36も支持フレーム6に回転可能に支持(軸支)されている。制動用プーリ34は、無端搬送体2(無端ベルト14)との間の摩擦力により無端搬送体2の回動と同期して回転するように構成されている。このため、制動用プーリ34の表面の材質・性状や無端搬送体2に対する接触圧などを選択・調整することで、無端搬送体2と制動用プーリ34間の摩擦係数を十分に高くすることが好ましい。
制動用プーリ34の回転軸35と支持フレーム6に対して、
図8に準じた構成の制動機構3が設けられる。その構成は、
図14の実施形態と同様である。
この実施形態の場合も、無端搬送体2(無端ベルト14)とこれに接する制動用プーリ34は同期して回動・回転するため、制動機構3による制動用プーリ34の制動力は無端搬送体2(無端ベルト14)の回動を制動することになる。
【0055】
図16および
図17は、本発明のコンベア式搬送装置の他の実施形態を模式的に示すもので、
図16は搬送機構部を部分的に示す平面図(無端ベルトの一部を切り欠いた状態で示す平面図)、
図17は
図16中のXVII-XVII線に沿う断面図である。
この実施形態では、無端搬送体2が、平ベルトの幅方向の一部(本実施形態では幅方向の中央部)に歯付きベルト部370を備えた無端ベルト37で構成され、各回転体1a,1bが、前記歯付きベルト部370と噛み合う歯付きプーリ部380を備えたプーリ38を有している。
サポート部材16は、平ベルトの幅方向全体を支持できるように、板状のものが設けられている。また、突起部5は平ベルト幅方向に沿って設けられる突条により構成されている。
制動機構3や脚部4の構成は、
図5~
図12の実施形態と同様である。
【0056】
図18および
図19は、本発明のコンベア式搬送装置の他の実施形態を模式的に示すもので、
図18は搬送機構部を部分的に示す側面図、
図19は同じく平面図である。
図20は、
図18の搬送機構部において無端チェーンの上部回動部分を支持するサポート部材の実施形態を模式的に示す縦断面図である。なお、便宜上、各図では無端チェーンを仮想線で表してある。
この実施形態では、無端搬送体2が平行な複数条(本実施形態では2条)の無端チェーン39で構成され、各回転体1a,1bが、前記複数条の無端チェーン39と噛み合う複数のスプロケットホイール40a,40bを有している。
サポート部材16は、例えば、
図20(ア)に示すように無端チェーン39が収まるガイド溝160を有するもの、
図20(イ)に示すように無端チェーン39の両プレート390間に嵌るガイドレール161を有するもの、などで構成することができる。また、突起部5は、両無端チェーン39間に架け渡される棒状部材41からなる突条で構成されている。この棒状部材41は、適当な固定手段により無端チェーン39の両プレート390に固定される。
制動機構3や脚部4の構成は、
図5~
図12の実施形態と同様である。
【0057】
次に、ローラーコンベア式の本発明の搬送装置について説明する。
図21~
図23は、ローラーコンベア式の本発明の搬送装置の一実施形態を模式的に示すもので、
図21は搬送機構部を部分的に示す平面図、
図22は同じく側面図、
図23は
図22中のXXIII-XXIII線に沿う断面図である。
このコンベア式搬送装置は、無動力で作動するものであり、並列して配置される回転自在な非駆動型の複数の搬送ロール70と、各搬送ロール70の回転を制動するとともに、その制動力が調整可能な制動機構3を備え、搬送装置が長手方向で傾斜した状態に配置されたときに、搬送ロール70上に置かれた荷物の荷重の傾斜方向分力(傾斜した搬送ロール群上面に平行な分力)によって搬送ロール70に回転力が付与されることにより、搬送ロール70が制動機構3で制動されつつ回転するように構成される。
【0058】
このコンベア式搬送装置も、脚部を介することなく階段などに斜状に配置して使用することができるが、
図1の実施形態と同様、搬送装置本体を支持する脚部を備えることが好ましい。すなわち、この場合のコンベア式搬送装置は、コンベア式の搬送機構部Aと、この搬送機構部Aを支持する脚部4(図示せず)を備え、搬送機構部Aが、上記の通り、並列して配置される回転自在な非駆動型の複数の搬送ロール70と、各搬送ロール70の回転を制動するとともに、その制動力が調整可能な制動機構3を備える。
各搬送ロール70は、装置長手方向に沿った支持フレーム6に回転(フリー回転)自在に支持(軸支)されている。
なお、上述したローラーコンベア式の搬送装置の基本構成は、後述する
図24および
図25の実施形態の搬送装置も同様である。
【0059】
本実施形態では、制動機構3を設けるために、支持フレーム6に回転自在に支持(軸支)される回転軸72と、各搬送ロール70の回転を回転軸72に伝達する回転力伝達手段73を有している。
回転力伝達手段73は、コンベア始端側とコンベア終端側に配置され、支持フレーム6に回転自在に支持(軸支)される1対のスプロケットホイール75a,75bと、このスプロケットホイール75a,75b間に回動可能に巻き掛けられる無端チェーン76と、支持フレーム6に軸支された各搬送ロール70の回転軸77の端部に設けられ、それぞれが無端チェーン76と噛み合うスプロケットホイール78を備えている。
一方、回転軸72は、無端チェーン76と噛み合うスプロケットホイール79を備えている。
【0060】
回転軸72と支持フレーム6に対して、
図8に準じた構成の制動機構3が設けられる。すなわち、回転軸72は、その一端側に回転側制動部材保持用の軸部721を有し、この軸部721の先端側部分にはネジ部722が形成されている。そして、この回転軸72の軸部721にホルダ11とホルダ位置調整ネジ13が装着され、ホルダ11には複数の回転側ブレーキシュー10yがスライド可能に保持される。支持フレーム6には、固定側ブレーキシュー10xが設けられ、ホルダ11に保持された複数の回転側ブレーキシュー10yが、スプリング12による付勢により固定側ブレーキシュー10xのプレート面100に押し付けられ、回転軸72の制動力が得られる。この制動機構3の構造の詳細は、
図8に関して説明した通りである。
各搬送ロール70の回転力は回転力伝達手段73(スプロケットホイール75a,75b、無端チェーン76、スプロケットホイール78)とスプロケットホイール79を介して回転軸72に伝わるため、制動機構3による回転軸72の制動力は各搬送ロール70の回転を制動することになる。
脚部4などの構成は、
図5~
図12の実施形態と同様である。
【0061】
図24および
図25は、ローラーコンベア式の本発明の搬送装置の他の実施形態を模式的に示すもので、
図24は搬送機構部を部分的に示す平面図、
図25は搬送機構部において各搬送ロールの回転を1つの回転軸に伝達する回転力伝達手段を示す説明図である。
本実施形態でも、制動機構3を設けるために、搬送装置長手方向に沿って配置され、支持フレーム6に回転自在に支持(軸支)される回転軸72と、各搬送ロール70の回転を回転軸72に伝達する回転力伝達手段73を有している。
回転軸72は、各搬送ロール70に対応した位置に形成された複数のプーリ部720を有している。
【0062】
回転力伝達手段73は、各搬送ロール70の周方向に形成された無端ベルト巻き掛け用の溝700と、回転軸72の各プーリ部720と各搬送ロール70の溝700間に巻き掛けられた無端ベルト80を備えている。
回転軸72と支持フレーム6に対して、
図8に準じた構成の制動機構3が設けられる。その構成は、
図21~
図23の実施形態と同様である。
各搬送ロール70の回転力は回転力伝達手段73(溝700、無端ベルト80)とプーリ部720を介して回転軸72に伝わるため、
図21~
図23の実施形態と同様、制動機構3による回転軸72の制動力は各搬送ロール70の回転を制動することになる。
脚部4などの構成は、
図5~
図12の実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0063】
1a,1b 回転体
2 無端搬送体
3 制動機構
4,4a,4b 脚部
5 突起部
6 支持フレーム
7x 固定側制動部材
7y 回転側制動部材
8 制動力調整手段
9 回転軸
10x 固定側ブレーキシュー
10y 回転側ブレーキシュー
11 ホルダ
12 スプリング
13 ホルダ位置調整ネジ
14 無端ベルト
15,15a,15b プーリ
16 サポート部材
17 枢支部
18a,18b 把手
19 スリーブ
20 軸受ブラケット
21 荷物支持板
22 当て板
23 軸受
24 ボルト
25 固定用レバー
26 上脚部材
27 下脚部材
28 突起部用部材
29 雌ネジ部材
30 ネジ
31 取付孔
32 連結プレート
33 ゴムシート
34 制動用プーリ
35 回転軸
36 サポート用プーリ
37 無端ベルト
38 プーリ
39 チェーン
40a,40b スプロケットホイール
41 棒状部材
60 側板
61 連結部材
62,62a,62b ブラケット
70 搬送ロール
72 回転軸
73 回転力伝達手段
75a,75b スプロケットホイール
76 無端チェーン
77 回転軸
78 スプロケットホイール
79 スプロケットホイール
80 無端ベルト
90 軸部
91 ネジ部
100 プレート面
110 取付穴
111 取付孔
160 ガイド溝
161 ガイドレール
260 フレーム材
261 固定用レバー
270 フレーム材
271 水平フレーム材
272 接地部材
273 ナット部材
274 ネジ軸
275 接地ソケット
276 ロックナット
277 クッション材
350 軸部
351 ネジ部
370 歯付きベルト部
380 歯付きプーリ部
390 プレート
620 ガイド孔
700 溝
720 プーリ部
721 軸部
722 ネジ部
A 搬送機構部
e 付勢手段
f 保持手段