(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105420
(43)【公開日】2022-07-14
(54)【発明の名称】シート及び空調システム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/04 20060101AFI20220707BHJP
【FI】
B32B27/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000203
(22)【出願日】2021-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】興梠 仁
(72)【発明者】
【氏名】坂本 直士
(72)【発明者】
【氏名】那須 健太
(72)【発明者】
【氏名】武内 信貴
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AH06A
4F100AK01B
4F100AK12B
4F100AK25B
4F100AK42C
4F100AK42D
4F100AL05B
4F100BA04
4F100BA05
4F100CA02B
4F100DG11A
4F100DG12A
4F100EH46B
4F100EJ17
4F100EJ38C
4F100EJ54
4F100EJ82B
4F100JB12B
4F100JK04
4F100JN01
4F100JN01C
4F100JN18A
4F100JN18B
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】 発熱機器を収容する複数のラックと、空気調和機と、空気調和機から流れる冷気をラックに送るコールドアイルと、冷気がラックを通過することにより温められてなる暖気を流すホットアイルと、を備える空調システムにおいて、コールドアイルとホットアイルとを区画するシートで、支持フレーム等に取り付けて使用する場合にシワに起因する視認性の低下を抑制し、かつ、燃えにくい性質を有するシートの提供。
【解決手段】 コールドアイルとホットアイルを区画するシートであって、ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層を備え、全光線透過率80%以上、ヘーズ20%以下、発熱性試験において加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m
2を超えず、総発熱量が8MJ/m
2以下、純曲げ試験機KES-FB2―Sで測定した曲げ剛性が10gf・cm
2/cm以上であるシート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱機器を収容する複数のラックと、空気調和機と、前記空気調和機から流れる冷気を前記ラックに送るコールドアイルと、前記冷気が前記ラックを通過することにより温められてなる暖気を流すホットアイルと、を備える室内において、前記コールドアイルと前記ホットアイルとを区画するために用いられるシートであって、
前記シートが、ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層を備え、全光線透過率が80%以上、ヘーズが20%以下であり、一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ、カトーテック株式会社製の純曲げ試験機KES-FB2―Sで測定した曲げ剛性が10gf・cm2/cm以上である、シート。
【請求項2】
発熱機器を収容する複数のラックと、空気調和機と、前記空気調和機から流れる冷気を前記ラックに送るコールドアイルと、前記冷気が前記ラックを通過することにより温められてなる暖気を流すホットアイルと、前記コールドアイルと前記ホットアイルとを区画するシートと、を備える空調システムであって、
前記シートが、ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層を備え、全光線透過率が80%以上、ヘーズが20%以下であり、一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ、カトーテック株式会社製の純曲げ試験機KES-FB2―Sで測定した曲げ剛性が10gf・cm2/cm以上である、空調システム。
【請求項3】
発熱機器を収容する複数のラックと、空気調和機と、前記空気調和機から流れる冷気を前記ラックに送るコールドアイルと、前記冷気が前記ラックを通過することにより温められてなる暖気を流すホットアイルと、前記コールドアイルと前記ホットアイルとを区画するシートと、を備える空調システムにおける、前記シートのシワ抑制方法であって、
前記シートとして、ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層を備え、全光線透過率が80%以上、ヘーズが20%以下であり、一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ、カトーテック株式会社製の純曲げ試験機KES-FB2―Sで測定した曲げ剛性が10gf・cm2/cm以上であるシートを用いる、シワ抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデータセンター等におけるコールドアイルとホットアイルとを区画するシート、及び該シートを備える空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
データセンター等で、サーバー等の発熱機器を収容するラックは、効率的に冷却する必要がある。このため従来技術では、コールドアイルとホットアイルとに空間を区切る工夫がされている。
【0003】
発熱機器用ラックの空調機構として、例えば、発熱機器を収容する複数のラックを結合して構成されるラック列の複数を、それらの長手方向を対向させて間隔を置いて配置すると共に、対向する一対のラック列間の床面から上方に空調機からの冷気を供給する構成とし、前記夫々のラック列の上端側から、対向する他方のラック列の上端方向に庇状に板体を突設すると共に、夫々のラック列から突設した板体の端縁間には間隔を設けて、天井側に隙間を有するコールドアイル空間を構成し、前記隙間は、上記床面から供給される冷気によってコールドアイル空間が、天井側外側空間との間に圧力差を生じない間隔に設定されている発熱機器用ラックの空調機構が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、コールドアイル空間の奥行方向の端部に間仕切り扉部材を支持することにより、奥行方向の端部を経ての暖気の流入を阻止する構成で、このような構成により冷却効率の向上を図ること、コールドアイル空間の奥行方向の端部に対応する一対のラックの庇状の板体の外側に支持フレームを支持して間隔を置いて対向させ、これらの支持フレームにより、コールドアイル空間の奥行方向の端部にビニールカーテン等の可撓シート体で間仕切り扉部材を支持する構成としたこと、が記載されている。
【0004】
また、情報通信機械室の空調システムとして、複数のサーバラック列により、複数のコールドアイルと複数のホットアイルとが形成される情報通信機械室を、複数の空調機により冷却する空調システムであって、該機械室内を、複数のコールドアイル部(8a)及びこれと連通する共有部(8b)の集合空間であるコールドゾーン(8)と、複数のホットアイル部(9a)及びこれと連通する共有部(9b)の集合空間であるホットゾーン(9)と、に区画し、かつ、両ゾーン間の空気流通を実質的に遮断するように構成した、情報通信機械室の空調システムが知られている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2には、コールドゾーン(8)および前記ホットゾーン(9)の間の空気流通を実質的に遮断する仕切壁を設けること、境界面仕切壁は必ずしも板材質のものを用いる必要はなく、例えば樹脂材質の透明シート等を用いることもできることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-153006号公報
【特許文献2】特開2014-156981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に開示されているように、発熱機器を収容する複数のラックと、空気調和機と、前記空気調和機から流れる冷気を前記ラックに送るコールドアイルと、前記冷気が前記ラックを通過することにより温められてなる暖気を流すホットアイルと、を備える空調システムにおいて、コールドアイルとホットアイルとを区画する部材として、ビニールカーテン等の透明シートを使用することが知られている。しかしながら、例えば、上記コールドアイルとホットアイルとを区画する部材として、軟質塩化ビニル(PVC)製の透明シートを支持フレームに取り付けたものを使用する場合、取り付けの際にシートにシワが発生する場合があった。そして、本発明者は、シートにシワが発生すると、シートを透かした視認性が悪化し、モニター監視等がしづらくなるという問題があることを知得した。
【0007】
また、特許文献1及び2のような空調システムは、建築物の室内に設けられるため、当該システムに使用されるシートについて燃えにくい性質を有するものが望まれる。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、発熱機器を収容する複数のラックと、空気調和機と、前記空気調和機から流れる冷気を前記ラックに送るコールドアイルと、前記冷気が前記ラックを通過することにより温められてなる暖気を流すホットアイルと、を備える空調システムにおいて、コールドアイルとホットアイルとを区画するシートであって、当該シートを例えば支持フレーム等に取り付けて使用する場合にも、シワに起因する視認性の低下を抑制し、かつ、燃えにくい性質を有するシートの提供を主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記課題の原因について検討したところ、コールドアイルとホットアイルとを区画するシートの剛性により、当該シートを支持フレーム等に取り付けて使用する場合にシワが発生する場合があることを知得した。具体的に、例えば、厚さ300μm程度の軟質塩化ビニルシートを上記シートとして使用した場合、当該シートは剛性に劣り、シワが発生しやすくなることを知得した。
【0010】
一方、シートの剛性を向上させるために、シートの厚さを増加させることも考えられる。しかしながら、単にシートの厚さを増加させると、シートの単位面積当たりの有機質量が増加し、燃焼時の発熱量等が増加し、燃えやすいものになってしまうという問題があった。
【0011】
そこで、本発明者がさらに鋭意検討したところ、ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層を備え、全光線透過率が80%以上、ヘーズが20%以下であり、一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ、カトーテック株式会社製の純曲げ試験機KES-FB2―Sで測定した曲げ剛性が10gf・cm2/cm以上であるシートは、例えば支持フレーム等に取り付けて使用する場合にも、シワに起因する視認性の低下を抑制し、かつ、燃えにくい性質を有すること、そして、当該シートは、発熱機器を収容する複数のラックと、空気調和機と、前記空気調和機から流れる冷気を前記ラックに送るコールドアイルと、前記冷気が前記ラックを通過することにより温められてなる暖気を流すホットアイルと、を備える空調システムにおいて、コールドアイルとホットアイルとを区画する部材として好適に使用できることを見出した。また、上記曲げ剛性とするには、ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層を備えたものとすること、また、必要に応じて硬化性樹脂層の厚さ等を調整することにより可能となることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.発熱機器を収容する複数のラックと、空気調和機と、前記空気調和機から流れる冷気を前記ラックに送るコールドアイルと、前記冷気が前記ラックを通過することにより温められてなる暖気を流すホットアイルと、を備える室内において、前記コールドアイルと前記ホットアイルとを区画するために用いられるシートであって、前記シートが、ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層を備え、全光線透過率が80%以上、ヘーズが20%以下であり、一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ、カトーテック株式会社製の純曲げ試験機KES-FB2―Sで測定した曲げ剛性が10gf・cm2/cm以上である、シート。
項2.発熱機器を収容する複数のラックと、空気調和機と、前記空気調和機から流れる冷気を前記ラックに送るコールドアイルと、前記冷気が前記ラックを通過することにより温められてなる暖気を流すホットアイルと、前記コールドアイルと前記ホットアイルとを区画するシートと、を備える空調システムであって、前記シートが、ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層を備え、全光線透過率が80%以上、ヘーズが20%以下であり、一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ、カトーテック株式会社製の純曲げ試験機KES-FB2―Sで測定した曲げ剛性が10gf・cm2/cm以上である、空調システム。
項3.発熱機器を収容する複数のラックと、空気調和機と、前記空気調和機から流れる冷気を前記ラックに送るコールドアイルと、前記冷気が前記ラックを通過することにより温められてなる暖気を流すホットアイルと、前記コールドアイルと前記ホットアイルとを区画するシートと、を備える空調システムにおける、前記シートのシワ抑制方法であって、前記シートとして、ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層を備え、全光線透過率が80%以上、ヘーズが20%以下であり、一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ、カトーテック株式会社製の純曲げ試験機KES-FB2―Sで測定した曲げ剛性が10gf・cm2/cm以上であるシートを用いる、シワ抑制方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシートは、例えば支持フレーム等に取り付けて使用する場合にも、シワに起因する視認性の低下を抑制し、かつ、燃えにくい性質を有する。そして、当該シートは、上記効果を奏することから、発熱機器を収容する複数のラックと、空気調和機と、前記空気調和機から流れる冷気を前記ラックに送るコールドアイルと、前記冷気が前記ラックを通過することにより温められてなる暖気を流すホットアイルと、を備える空調システムにおいて、コールドアイルとホットアイルとを区画する部材として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のシートの一例を示す略図的断面図である。
【
図2】本発明のシートの一例を示す略図的断面図である。
【
図3】本発明のシートの一例を示す略図的断面図である。
【
図4】本発明のシートの一例を示す略図的断面図である。
【
図5】本発明の引裂強度の測定方法を説明する略図的平面図である。
【
図6】本発明の空調システムの一例を説明する平面模式図である。
【
図7】本発明の空調システムの一例を説明する平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のシートは、発熱機器を収容する複数のラックと、空気調和機と、前記空気調和機から流れる冷気を前記ラックに送るコールドアイルと、前記冷気が前記ラックを通過することにより温められてなる暖気を流すホットアイルと、を備える室内において、前記コールドアイルと前記ホットアイルとを区画するために用いられるシートであって、前記シートが、ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層を備え、全光線透過率が80%以上、ヘーズが20%以下であり、一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ、カトーテック株式会社製の純曲げ試験機KES-FB2―Sで測定した曲げ剛性が10gf・cm2/cm以上である。以下、本発明のシートについて詳述する。
【0016】
1.シートについて
まず、本発明のシート1の構成について詳述する。
【0017】
例えば
図1~4に示すように、本発明のシート1は、ガラス繊維織物2と、ガラス繊維織物2に含浸された硬化性樹脂層3と、を含む積層構造を有する。シート1において、ガラス繊維織物2は、少なくとも1層含まれていればよく、複数層含まれていてもよい。
【0018】
また、
図2~4に示すように、本発明のシート1は、ガラス繊維織物2と、ガラス繊維織物2に含浸された硬化性樹脂層3と、該硬化性樹脂層3の少なくとも片面上、好ましくは両面上に、フィルム層4を含む積層構造とすることもできる。また、
図3及び
図4に示すように、本発明のシート1は、硬化性樹脂層3又はフィルム層4の少なくとも片面上、好ましくは両面上に、コールドアイルとホットアイルとを区画するために用いるときに剥離される、剥離可能な保護フィルム5を含むことができる。
【0019】
図1~4において、硬化性樹脂層3は、ガラス繊維織物2を構成している複数のガラス繊維の隙間を埋めており、硬化性樹脂層3の一方の表面側部分31と、他方の表面側部分と32とは、当該隙間部分を介して通じている。また、本発明のシート1においては、透明性を高める観点から、例えば
図1~4に示されるように、ガラス繊維織物2の層の少なくとも一方の面上に当該硬化性樹脂層3が形成されていることが好ましく、ガラス繊維織物2の層の両面上に当該硬化性樹脂層3が形成されていることがより好ましい。
【0020】
図1に示す、フィルム層4を積層しない場合は硬化性樹脂層3の表面側(
図1でいう31、32側)、又は、
図2、3に示す、フィルム層4を積層する場合は該フィルム層4の表面側(
図2、3でいう41、42側)には、例えば
図4に示すように、金属又は金属化合物を含む帯電防止層6を設けることができる。金属又は金属化合物を含む帯電防止層6は、シート1の使用時に表面層となるように配置することがより好ましい。以下、本発明のシート1を構成する各層の組成について詳述する。
【0021】
(ガラス繊維織物2)
本発明のシート1において、ガラス繊維織物2は、複数のガラス繊維により構成されている。ガラス繊維織物の織組織としては、特に制限されず、例えば、平織、朱子織、綾織、斜子織、畦織などが挙げられる。
【0022】
ガラス繊維織物2を構成するガラス繊維のガラス材料としては、特に制限されず、例えば公知のガラス材料を用いることができる。ガラス材料としては、例えば、無アルカリガラス(Eガラス)、耐酸性の含アルカリガラス(Cガラス)、高強度・高弾性率ガラス(Sガラス、Tガラス等)、耐アルカリ性ガラス(ARガラス)等が挙げられ、好ましくは汎用性の高い無アルカリガラス(Eガラス)が挙げられる。ガラス繊維織物2を構成するガラス繊維は、1種類のガラス材料からなるものであってもよいし、異なるガラス材料からなるガラス繊維を2種類以上組み合わせたものであってもよい。また、透明性を向上させる観点から、後述する、硬化性樹脂層3の屈折率と近似するガラス材料を選択することが好ましい。
【0023】
ガラス繊維織物2を構成するガラス繊維の番手は、ガラス繊維織物2を形成できれば、特定のものに制限されない。ガラス繊維の番手としては、透明性を向上させる観点から、好ましくは20tex以下が挙げられ、3~6texが好ましく、3~5texがより好ましい。ガラス繊維の番手は、1種類単独であってもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。なお、ガラス繊維のtex番手は、1000m当たりのグラム数に相当している。
【0024】
ガラス繊維織物2を構成するガラス繊維としては、ガラス長繊維である単繊維が複数本撚りまとめられたガラスヤーンが好ましい。ガラスヤーンにおける単繊維の本数は、30~400本程度が好ましく、40~120本程度がより好ましい。また、ガラスヤーンにおける単繊維の直径は、シート1の透明性を向上させる観点から3.0~6.0μm程度が好ましく、3.0~5.0μm程度がより好ましい。ガラスヤーンの番手は、透明性を向上させる観点から3~30texが好ましく、3~12texがより好ましく、3~5texがさらに好ましい。ガラス繊維織物2を構成するガラスヤーンにおける単繊維の直径及びガラスヤーンの番手が上記の範囲内にあることにより、シート1の透明性を向上させる機序の詳細は明らかではないが、このような条件を充足することにより、ガラスヤーンと硬化性樹脂層3との界面における収縮がより効果的に抑制され、結果として、シート1の透明性が向上されるものと考えられる。
【0025】
シート1において、ガラス繊維織物2の割合(質量%)は、透明性を向上させる観点から、ガラス繊維織物2と後述の硬化性樹脂層3との合計量中、20~50質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましく、20~30質量%がより好ましい。また、ガラス繊維織物2の1枚の質量(g/m2)は、10~120(g/m2)が好ましく、10~60(g/m2)がより好ましく、10~40(g/m2)がさらに好ましい。
【0026】
ガラス繊維織物2の厚さとしては、例えば10~100μm程度が挙げられ、透明性を向上させる観点から、10~55μmが好ましく、10~35μm程度がより好ましい。ガラス繊維織物2の厚さを10~35μmとする場合、ガラス繊維織物2は、下記式(II)にて算出されるガラス体積率が38%以上であることが特に好ましい。10~35μmの厚さであって、ガラス体積率が38%以上であるガラス繊維織物2は、例えば、ガラス繊維に開繊処理を施すことにより得られる。
【0027】
ガラス体積(%)=(A/(B×C))×100 (II)
A:ガラス繊維織物の質量(g/m2)
B:ガラス繊維織物を構成するガラス材料の比重(g/m3)
C:ガラス繊維織物の厚さ(m)
【0028】
ガラス繊維織物2と後述の硬化性樹脂層3の屈折率の差としては、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.02以下、さらに好ましくは0.01以下が挙げられる。ガラス繊維織物2の屈折率としては、好ましくは1.45~1.65程度、より好ましくは1.50~1.60程度が挙げられる。
【0029】
なお、上記ガラス繊維織物2の屈折率の測定は、JIS K 7142:2008のB法に準じて行う。具体的には、ガラス繊維織物2を構成するガラス繊維について、浸液としてヨウ化メチレン(nD
231.747)、フタル酸ブチル(nD
231.491)及び炭酸ジメチル(nD
231.366)を用い、アッベ屈折計として(株)アタゴ製のNAR-2Tを用い、光源として波長589nmのナトリウムD線を用いて温度23℃で測定を行い、試験数5回の平均値を屈折率の値とする。また、硬化性樹脂層3の屈折率の測定は、JIS K 7142:2008のB法に準じて行う。具体的には、硬化性樹脂層3を粉体化し、浸液としてヨウ化メチレン(nD
231.747)、フタル酸ブチル(nD
231.491)及び炭酸ジメチル(nD
231.366)を用い、顕微鏡として小型測定顕微鏡STM5-311(オリンパス社製、観察倍率400倍)を用い、光源として波長589nmのナトリウムD線を用いて温度23℃で測定を行い、試験数5回の平均値を屈折率の値とする。
【0030】
ガラス繊維織物2と硬化性樹脂層3とのアッベ数の差としては、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。ガラス繊維織物2のアッベ数としては、30~80が好ましく、40~70がより好ましく、50~65がさらに好ましい。なお、硬化性樹脂層、ガラス繊維織物のアッベ数は、次のように測定する。
【0031】
(硬化性樹脂層のアッベ数)
ガラス繊維織物が含まれていない硬化性樹脂層のみのシートを、ガラス繊維織物を含む場合と同じ条件で同じ厚さとして作製し、試験片を幅8mm、長さ20mmとして表面をよく研磨し、JIS K 7142A法に準じ、アッベ屈折計として(株)アタゴ製のNAR-2T、接触液としてジヨードメタン、光源として波長589nmのナトリウムD線を用い、測定温度を23℃として、波長589nmの屈折率を測定する。続いて、光源を自然光として分散値を測定、算出し、下記式(I)に従い、アッベ数を算出する。
アッベ数=(波長589nmの屈折率-1)/分散値 (I)
【0032】
(ガラス繊維織物のアッベ数)
ガラス繊維を構成するガラス材料を用いて、幅8mm、長さ20mm、厚さ5mmのガラスシートを作製し、表面をよく研磨し、JIS K 7142A法に準じ、アッベ屈折計として(株)アタゴ製のNAR-2T、接触液としてジヨードメタン、光源として波長589nmのナトリウムD線を用い、測定温度を23℃として、波長589nmの屈折率を測定する。続いて、光源を自然光として分散値を測定、算出し、上記式(I)に従い、アッベ数を算出する。
【0033】
(硬化性樹脂層3)
本発明のシート1において、硬化性樹脂層3は、ガラス繊維織物2に含浸されており、硬化性樹脂が硬化又は固化されて得られるものにより形成されている。硬化性樹脂層は、硬化性樹脂を含む樹脂組成物に対して、光、熱などのエネルギーを与えることによって樹脂組成物が硬化した硬化物(光硬化された樹脂組成物又は熱硬化された樹脂組成物)とすることができる。
【0034】
硬化性樹脂としては、シート1の透明性を向上させる観点から、硬化性樹脂層3と前述したガラス繊維織物2の屈折率とを近似させることができるものが好ましい。好ましい硬化性樹脂としては、硬化性樹脂組成物が光硬化性となるものが好ましく、例えば、ビニルエステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フルオレンアクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、硬化性アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、フィルム層4を設ける場合に、フィルム層4との接着性をより向上させるという観点から、硬化性アクリル樹脂がより好ましく、アクリルシラップを含む樹脂組成物を硬化したものが特に好ましい。本発明において、アクリルシラップとは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの(メタ)アクリル酸エステルポリマーをメタクリル酸メチルなどのアクリル単量体に溶解した重合性液状混合物をいう。上記アクリルシラップの中でも、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体、及びメタクリル酸メチル/アクリル酸ノルマルブチル共重合体からなる群より選ばれる1種以上のアクリル酸エステルポリマーをメタクリル酸メチル単量体に溶解したアクリルシラップが特に好ましい。
【0035】
硬化性樹脂層3を形成する樹脂組成物は、硬化促進剤、難燃剤、紫外線吸収剤、充填剤、光重合開始剤などの添加物をさらに含んでいてもよい。難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、トリクロロエチルホスフェート、トリアリルホスフェート、ポリリン酸アンモニウム、リン酸エステルなどが挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、タルクなどが挙げられる。光重合開始剤としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6,-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。中でも、硬化性樹脂層3を構成する硬化性樹脂として硬化性アクリル樹脂を用いる場合は、透明性向上の観点から、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンが好ましい。これらの添加剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本発明のシート1において、硬化性樹脂層3の質量としては、例えば、20~400g/m2が挙げられ、透明性と不燃性とをより両立するという観点から、20~250g/m2が好ましく挙げられ、20~100g/m2がより好ましく挙げられ、さらに、後述するシート1の曲げ剛性を特定の範囲としつつ、透明性と不燃性とを並立させやすくするという観点から、60~100g/m2が特に好ましく挙げられる。また、硬化性樹脂層3の厚さとしては、例えば、20~500μmが挙げられ、透明性と不燃性とをより両立するという観点から、20~300μmが好ましく挙げられ、30~150μmがより好ましく挙げられ、さらに、後述するシート1の曲げ剛性を特定の範囲としつつ、透明性と不燃性とを並立させやすくするという観点から、80~150μmが特に好ましく挙げられる。
【0037】
本発明のシート1において、フィルム層4を設けた場合、ガラス繊維織物2の、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を剥離後のシート1の全質量(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を除く質量)中の割合(=ガラス繊維織物2の質量(g)/使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を除く質量(g)×100(%))としては、例えば、3~20質量%が挙げられ、3~15質量%が好ましく挙げられ、7~13質量%がより好ましく挙げられる。
【0038】
(フィルム層4)
本発明のシート1において、フィルム層4は、必要に応じて、ガラス繊維織物2に含浸された硬化性樹脂層3上に積層され、シート1の透明性をより向上させつつ、引裂強度をより向上させる役割を果たす。
【0039】
フィルム層4は、特に制限されないが、ポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。ポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、可塑剤の量が少なくてもフィルム化が可能なものが挙げられ、ポリ塩化ビニル樹脂以外の非晶性の熱可塑性樹脂を含む2軸延伸フィルムが好ましく挙げられる。ポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリアミド樹脂が挙げられ、これらを少なくとも1種以上含むものとすることもできる。また、フィルム層4は、ポリ塩化ビニル樹脂を含まないものとすることもできる。シート1の引裂強度をより一層優れたものとする観点から、フィルム層4は、エレメンドルフ引裂伝播抵抗が、たて方向及びよこ方向ともに1N/mm以上のものが挙げられ、3~20N/mmのものが好ましく挙げられ、5~15N/mmのものがより好ましく挙げられる。中でも、耐薬品性、引裂強度の向上及び透明性をより一層両立させるという観点からは、フィルム層4は、ポリエステル樹脂を含むものとすることが好ましい。該ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリエチレンナフタレート(PEN)とすることが挙げられる。なお、エレメンドルフ引裂伝播抵抗は、株式会社東洋精機製作所製エレメンドルフ引裂機を用い、JIS K7128-2・1998に基づいて引裂強さ(N)を測定し、この測定値をフィルム厚さで除した引裂伝播抵抗(N/mm)を意味する。また、引裂強さは、たて方向及びよこ方向それぞれ20サンプルの試験結果の平均値とする。
【0040】
フィルム層4における可塑剤の含有量としては、例えば、10質量%以下が挙げられ、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく挙げられる。上記可塑剤としては、塩化ビニル樹脂の可塑剤として公知のものが挙げられ、例えば、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-n-オクチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジオチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、イソフタル酸ジ-2-エチルヘキシルなどのフタル酸系可塑剤、アジピン酸-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジ-2-デシル、セバチン酸ジブチル、セバチン酸-2-エチルヘキシルなどの脂肪酸エステル可塑剤、リン酸トリブチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸-2-エチルヘキシルジフェニル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチルなどのトリメリット酸エステル系可塑剤、アジピン酸系ポリエステル可塑剤、フタル酸系ポリエステル可塑剤などのポリエステル系可塑剤、テレフタル酸系可塑剤が挙げられる。
【0041】
フィルム層4は、硬化性樹脂層3側となる面(
図2~4でいう、硬化性樹脂層3の表面側部分31及び32に接する面)に、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、ケイ酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデン、アクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂等の無機粒子または有機粒子からなる粒子を含むことができる。これにより、硬化性樹脂層3とフィルム層4との密着性が向上する。フィルム層4には、必要に応じて、コロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施すことができ、また、易滑性、易接着性などの各種機能を付与するコーティング層、耐摩耗性を向上させるハードコート層等を設けたものであってもよい。
【0042】
本発明のシートにおいて、フィルム層4とするフィルムは、透明性及び平滑性に優れたものであることが好ましい。フィルム層4とするフィルムの透明性として、例えば、全光線透過率(JIS K 7105:1981)は90%以上が好ましく、91~98%がより好ましい。また、例えば、ヘーズ(JIS K 7105:1981)は1.5%以下が好ましく、0.3~1.0%がより好ましい。
【0043】
(シート1の物性、性能)
本発明のシート1は、曲げ剛性が10gf・cm2/cm以上であることが必要である。本発明者が検討したところ、例えば市販されているガラス繊維織物を透明なポリ塩化ビニル樹脂フィルムで挟んだシートは、曲げ剛性が1~5gf・cm2/cm程度であり、例えば支持フレーム等に取り付ける際にシワが発生しやすく、シートを透かした視認性を十分担保できないものであることが判明した。そこで、本発明者が鋭意検討したところ、曲げ剛性を10gf・cm2/cm以上とすることにより、支持フレーム等に取り付ける際にシワが発生しにくくなり、シートを透かした視認性を担保できることを見出した。曲げ剛性として、より好ましくは15gf・cm2/cm以上が挙げられる。上限については特に制限されないが、透明性と不燃性をより向上させる観点から、例えば、50gf・cm2/cm以下が挙げられ、40gf・cm2/cm以下が好ましく挙げられ、35gf・cm2/cm以下がより好ましく挙げられる。
【0044】
なお、上記曲げ剛性は、測定装置としてカトーテック株式会社製の純曲げ試験機KES-FB2―Sを用い、シートの所定領域の1cm幅を試料として1cm間隔のチャック間に固定し、曲率+1cm-1まで表側に曲げ、次に、曲率-1cm-1まで裏側に曲げた後に元に戻すことによって測定する。上記曲げ剛性とするには、ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層を備えたものとすることに加え、例えば、硬化性樹脂層3の厚さを80μm以上にすることや、ガラス繊維織物2を構成するガラスヤーンの番手、織密度、厚さ等を調整することにより可能である。
【0045】
本発明のシート1においては、透明性を担保する観点から、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を剥離後のシート1の全光線透過率は、80%以上であり、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。また、本発明のシート1の、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を剥離後のシート1のヘーズは、20%以下であり、10%以下がより好ましく挙げられ、5%以下がさらに好ましく挙げられ、3%以下が特に好ましく挙げられ、1%以下が一層好ましく挙げられる。シート1の全光線透過率及びヘーズは、それぞれ、JIS K7375 2008「プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に従って測定して得られた値である。
【0046】
上記のように高い透明性を担保するには、例えばガラス繊維織物2の厚さ、ガラス繊維織物2と硬化性樹脂層3との屈折率差、ガラス繊維の平均フィラメント径、フィラメント本数、ガラス繊維織物2の織密度を調整したりすること等が挙げられる。
【0047】
本発明のシート1は、ガラス繊維織物2を含むため、燃えにくい性質(不燃性)を備えることができる。なお、本発明のシート1の不燃性としては、一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、総発熱量が8MJ/m2以下である。不燃性をより一層向上させるためには、例えば、硬化性樹脂層3及びフィルム層4において、質量の調整や、難燃剤の添加や有機物量の減量等を行なえばよい。
【0048】
本発明のシート1の厚さとしては、例えば、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を剥離後のシート1の厚さ(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を除く厚さ)としては、100~500μm、好ましくは150~300μmが挙げられる。また、本発明のシート1の質量として、例えば、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を剥離後のシート1の質量(すなわち、使用時に剥離される剥離可能な保護フィルム5を除く質量)として、100~500g/m2が挙げられ、150~300g/m2が好ましく挙げられる。また、本発明のシート1において、前記硬化性樹脂層及びフィルム層の合計質量が150~300g/m2、より好ましくは150~250g/m2であると、不燃性と、シートを例えば支持フレーム等に取り付けて使用する場合におけるシワに起因する視認性の低下を抑制することと、を一層両立しやすくなるので好ましい。
【0049】
本発明のシート1においては、フィルム層4を設けると、引裂強度をより高いものとし得る。より高い引裂強度を担保する観点から、引裂強度は、30~100(N)が好ましく、40~100(N)がより好ましく、50~100(N)が特に好ましい。本発明において、引裂強度は、次のように測定、算出される。
(試験方法)
JIS R 3420:2013の7.16のC法(トラペゾイド法)に準じ、シートから75mm×150mmの試験片をたて方向、よこ方向にそれぞれ採取し、直角を含む2つの台形部(
図5に例示する台形A部に相当)それぞれに裏表両面に滑り止めのためのテープ(積水化学株式会社製商品名600S)を貼付し、切れ目は入れずに、定速荷重型引張試験機(株式会社オリエンテック製商品名RTC-1310A)を用いておこない、最大荷重を測定し、たて方向最大荷重及びよこ方向最大荷重の平均値(=(たて方向最大荷重(N)+よこ方向最大荷重(N))/2)を引裂強度(N)とする。
【0050】
本発明のシート1の製造方法としては、特に制限されず、例えば次のような製造方法が挙げられる。まず、上記のガラス繊維織物2と、硬化性樹脂層3を構成する未硬化の硬化性樹脂組成物を準備する。該硬化性樹脂組成物をフィルム層4とするフィルム(例えばポリエステルフィルム等)に塗布し、該硬化性樹脂組成物の上にガラス繊維織物2を載せてガラス繊維2に硬化性樹脂組成物を含浸させ、さらに、フィルム層4とするフィルムをもう1枚ガラス繊維織物2に載せ、2枚のフィルム層4それぞれの表面から圧力を加え、ガラス繊維織物2に硬化性樹脂組成物をさらに含浸させ、硬化性樹脂組成物を加熱や光照射により硬化させて、ガラス繊維織物2に硬化性樹脂層3が含浸され、該硬化性樹脂層3にフィルム層4が積層された、シート1(フィルム層4/ガラス繊維織物2に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層3/フィルム層4の順で積層されたシート1)が得られる。なお、シート1がフィルム層4を含まないものとする場合は、上記フィルム層4に代えて使用時に剥離される保護フィルム5とし、該保護フィルム5を剥離すればよい。
【0051】
また、本発明のシートの製造方法としては、ガラス繊維織物と、前記ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる光硬化性樹脂層と、前記光硬化性樹脂層に積層された、フィルム層と、を含むシートの製造方法であって、光透過性の保護フィルムが積層された光透過性の熱可塑性樹脂フィルムを少なくとも2枚準備する工程Aと、ガラス繊維織物が浸漬された未硬化の光硬化性樹脂組成物を、前記工程Aで得られた前記熱可塑性樹脂フィルム2枚で、光透過性の保護フィルムが外側となるようにして挟んだ状態で、前記未硬化の光硬化性樹脂組成物に光を照射し、前記未硬化の光硬化性樹脂組成物を硬化させる工程Bと、を含むものとすることができる。
【0052】
2.空調システムについて
本発明の空調システムは、発熱機器を収容する複数のラックと、空気調和機と、前記空気調和機から流れる冷気を前記ラックに送るコールドアイルと、前記冷気が前記ラックを通過することにより温められてなる暖気を流すホットアイルと、前記コールドアイルと前記ホットアイルとを区画するシートと、を備える空調システムであって、前記シートが、ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層を備え、全光線透過率が80%以上、ヘーズが20%以下であり、一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ、カトーテック株式会社製の純曲げ試験機KES-FB2―Sで測定した曲げ剛性が10gf・cm2/cm以上である。
【0053】
図6は、本発明の空調システムの一例を説明する平面模式図である。
図6の空調システムは、室100に、発熱機器を収容する複数のラック101と、空気調和機102と、空気調和機102から流れる冷気(
図6において、冷気の流れを白抜き矢印により示す。)をラック101に送るコールドアイル103と、前記冷気が前記ラック101を通過することにより温められてなる暖気(
図6において暖気の流れをハッチングした矢印により示す。)を流すホットアイル104と、コールドアイル103とホットアイル104とを区画する、前述したシート1を備えるパネル105と、を備える。発熱機器としては、ラックマウント型サーバーや通信機器等が挙げられる。また、パネル105は、前述した本発明のシート1が、アルミニウム等の材質からなる支持フレームにより支持されている。
【0054】
図6においては、ラック101が複数連結してラック列を形成しており、当該ラック列が複数長手方向を対向させて間隔をおいて配置されている。そして、一対のラック列の排気面同士が対向し、当該一対の排気面と、パネル105によりホットアイル104が形成されている。
【0055】
本実施形態において、ホットアイル104に流れた暖気は、ホットアイル上方にある暖気の流路(図示しない)を通り、空気調和機102に還流される。ここで、パネル105は、ホットアイル104に流れた暖気が、コールドアイル103に空気調和機102に還流されずに流れること、及びコールドアイル103の冷気がラック101を通過せずにホットアイル104に流れることを抑制する。
【0056】
また、
図6の空調システムにおいて、室100内の床下に床下空間を設け、空気調和機102から流れる冷気を床下空間に通し、コールドアイル103におけるラック101の吸気側面近くの床に、床下空間から室内に当該冷気を送る通風口を設け、当該通風口からラック101の吸気口に冷気を流すこともできる。
【0057】
図7は、本発明の空調システムの一例を説明する平面模式図である。
図7の空調システムは、室100に、発熱機器を収容する複数のラック101と、空気調和機102と、空気調和機102から流れる冷気(
図6において、冷気の流れを白抜き矢印により示す。)をラック101に送るコールドアイル103と、前記冷気が前記ラック101を通過することにより温められてなる暖気(
図6において暖気の流れをハッチングした矢印により示す。)を流すホットアイル104と、コールドアイル103とホットアイル104とを区画する、前述したシート1を備えるパネル105と、を備える。
【0058】
図7においては、ラック101が複数連結してラック列を形成しており、当該ラック列が複数長手方向を対向させて間隔をおいて配置されている。そして、一対のラック列の吸気面同士が対向し、当該一対の吸気面と、パネル105によりコールドアイル103が形成されている。
【0059】
また、
図7の空調システムにおいて、室100内の床下に床下空間を設け、空気調和機102から流れる冷気を床下空間に通し、コールドアイル103におけるラック101の吸気側面近くの床に、床下空間から室内に当該冷気を送る通風口を設け、当該通風口からラック101の吸気口に冷気を流すことができる。
【0060】
なお、
図6及び
図7において、パネル105は、コールドアイル103とホットアイル104とを完全に遮断することもできるし、パネル105の一部が開口しており、当該開口によりコールドアイル103とホットアイル104とが当該開口により空間的に連通しているものとすることもできる。また、パネル105は、監視員や作業員がコールドアイル103とホットアイル104とを往来できるよう、開閉手段を備えたものとしてもよい。
【0061】
また、本発明の空調システムは、例えば特許文献1の
図1に開示されているような、ラック列の上端側から伸びる板体として、本発明のシート1を備えるパネルを用いることができる。また、前述した、
図6におけるホットアイル104上方にある暖気の流路(図示しない)を、本発明のシート1を備えるパネルで形成することができる。
【0062】
また、例えば
図6、
図7において、本発明の空調システムは、コールドアイル103又はホットアイル104のいずれかに監視カメラを設け、シート1を透して監視カメラを設置しない他方の空間を監視することができる。
【実施例0063】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0064】
ガラス繊維織物2に含浸させる、硬化性樹脂層3を構成する硬化性樹脂組成物としては、表1の組成となるようにして、アクリルシラップ(株式会社菱晃製商品名「アクリシラップXD-8005」(屈折率1.550)及び「アクリシラップXD-8006」(屈折率1.570)を質量比で1:1となるよう混合したもの)、ビニルエステル樹脂(日本ユピカ株式会社製)、スチレンモノマー(日本ユピカ株式会社製)、2官能(メタ)アクリレート、光重合開始剤(IGM社製Omnirad 184))の混合物を使用した。なお、硬化剤である2官能(メタ)アクリレートとしては、表1に記載のNPGDA(ネオペンチルグリコールジアクリレート、分子量212、(日本ユピカ株式会社製))を用いた。また、光重合開始剤の量は、アクリルシラップ100質量部、又は、ビニルエステル樹脂とスチレンモノマーと2官能(メタ)アクリレートの合計100質量部、に対して3質量部とした。
【0065】
<実施例1>
(ガラス繊維織物2の製造)
経糸及び緯糸としてユニチカグラスファイバー株式会社製商品名「ECC1200 1/0 1.0Z」(平均フィラメント径4.5μm、平均フィラメント本数100本、撚り数1.0Z)を用い、エアージェット織機で製織し、経糸密度が90本/25mm、緯糸密度が90本/25mmの平織のガラス繊維織物(生機)を得た。ついで、得られたガラス繊維織物(生機)に付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.5MPaの水流加工でガラス繊維織物の張力を経方向が100N/mとしながら拡幅処理を1回施し、ガラス繊維織物2を得た。得られたガラス繊維織物2は、経糸密度90本/25mm、緯糸密度90本/25mm、厚さ27μm、質量30g/m2、屈折率1.561であった。
【0066】
(フィルム層4)
フィルム層4として、市販の東洋紡株式会社製2軸延伸ポリエステルフィルム(商品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」、厚さ50μm、質量70g/m2、全光線透過率(JIS K 7105:1981)93%、ヘーズ(JIS K 7105:1981)0.9%)を使用した。フィルム層4は2枚準備した。
【0067】
(シートの製造)
上記フィルム層4のうち1枚の片面に、硬化性樹脂層3とする表1に記載の硬化性樹脂組成物を塗布した。次に、樹脂組成物3とする該硬化性樹脂組成物の上に、上記得られたガラス繊維織物2を載せ、1分間静置してガラス繊維織物2の隙間に上記の硬化性樹脂組成物を含浸させた。次いで、他方のフィルム層4を載せ、当該フィルム層4の上からローラで硬化性樹脂層3の質量が90g/m
2となるように加圧した。その後、硬化性樹脂層3とする硬化性樹脂組成物にブラックライト蛍光ランプ(株式会社東芝製商品名FL15BLB)を用いてフィルム層4を透して光照射(光照射条件:積算光量200mJ/cm
2)して該硬化性樹脂組成物を硬化させ、硬化性樹脂層3を形成し、
図2に例示する積層構造(フィルム層4/ガラス繊維織物2に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層3/フィルム層4)であるシートを得た。得られたシートにおいて、ガラス繊維織物のガラス繊維間の隙間には、硬化性樹脂層3(樹脂組成物の硬化物)が含浸されており、ガラス繊維織物の層の両面上には硬化性樹脂層3が形成されていた。
【0068】
<実施例2>
(ガラス繊維織物2の製造)
実施例1と同様の製造方法で、ガラス繊維織物2とするガラス繊維織物を得た。
【0069】
(フィルム層4)
フィルム層4として、市販の東洋紡株式会社製2軸延伸ポリエステルフィルム(商品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」、厚さ75μm、質量105g/m2、全光線透過率(JIS K 7105:1981)93%、ヘーズ(JIS K 7105:1981)0.9%)を使用した。フィルム層4は2枚準備した。
【0070】
(シートの製造)
上記フィルム層4のうち1枚の片面に、硬化性樹脂層3とする表1に記載の硬化性樹脂組成物を塗布した。次に、樹脂組成物3とする該硬化性樹脂組成物の上に、上記得られたガラス繊維織物2を載せ、1分間静置してガラス繊維織物2の隙間に上記の硬化性樹脂組成物を含浸させた。次いで、他方のフィルム層4を載せ、当該フィルム層4の上からローラで硬化性樹脂層3の質量が70g/m
2となるように加圧した。その後、硬化性樹脂層3とする硬化性樹脂組成物にブラックライト蛍光ランプ(株式会社東芝製商品名FL15BLB)を用いてフィルム層4を透して光照射(光照射条件:積算光量200mJ/cm
2)して該硬化性樹脂組成物を硬化させ、硬化性樹脂層3を形成し、
図2に例示する積層構造(フィルム層4/ガラス繊維織物2に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層3/フィルム層4)であるシートを得た。得られたシートにおいて、ガラス繊維織物のガラス繊維間の隙間には、硬化性樹脂層3(樹脂組成物の硬化物)が含浸されており、ガラス繊維織物の層の両面上には硬化性樹脂層3が形成されていた。
【0071】
<実施例3>
(ガラス繊維織物2の製造)
実施例1と同様の製造方法で、ガラス繊維織物2とするガラス繊維織物を得た。
【0072】
(フィルム層4)
フィルム層4として、市販の東洋紡株式会社製2軸延伸ポリエステルフィルム(商品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」、厚さ50μm、質量70g/m2、全光線透過率(JIS K 7105:1981)93%、ヘーズ(JIS K 7105:1981)0.9%)を使用した。フィルム層4は2枚準備した。
【0073】
(シートの製造)
上記フィルム層4のうち1枚の片面に、硬化性樹脂層3とする表1に記載の硬化性樹脂組成物を塗布した。次に、樹脂組成物3とする該硬化性樹脂組成物の上に、上記得られたガラス繊維織物2を載せ、1分間静置してガラス繊維織物2の隙間に上記の硬化性樹脂組成物を含浸させた。次いで、他方のフィルム層4を載せ、当該フィルム層4の上からローラで硬化性樹脂層3の質量が90g/m
2となるように加圧した。その後、硬化性樹脂層3とする硬化性樹脂組成物にブラックライト蛍光ランプ(株式会社東芝製商品名FL15BLB)を用いてフィルム層4を透して光照射(光照射条件:積算光量200mJ/cm
2)して該硬化性樹脂組成物を硬化させ、硬化性樹脂層3を形成し、
図2に例示する積層構造(フィルム層4/ガラス繊維織物2に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層3/フィルム層4)であるシートを得た。得られたシートにおいて、ガラス繊維織物のガラス繊維間の隙間には、硬化性樹脂層3(樹脂組成物の硬化物)が含浸されており、ガラス繊維織物の層の両面上には硬化性樹脂層3が形成されていた。
【0074】
<実施例4>
(ガラス繊維織物2の製造)
実施例1と同様の製造方法で、ガラス繊維織物2とするガラス繊維織物を得た。
【0075】
(フィルム層4)
フィルム層4として、市販のポリ塩化ビニル樹脂フィルム(オカモト株式会社製、一般用PVC#320、厚さ100μm、質量120g/m2)を使用した。フィルム層4は2枚準備した。
【0076】
(シートの製造)
上記フィルム層4のうち1枚の片面に、硬化性樹脂層3とする表1に記載の硬化性樹脂組成物を塗布した。次に、樹脂組成物3とする該硬化性樹脂組成物の上に、上記得られたガラス繊維織物2を載せ、1分間静置してガラス繊維織物2の隙間に上記の硬化性樹脂組成物を含浸させた。次いで、他方のフィルム層4を載せ、当該フィルム層4の上からローラで硬化性樹脂層3の質量が90g/m
2となるように加圧した。その後、硬化性樹脂層3とする硬化性樹脂組成物にブラックライト蛍光ランプ(株式会社東芝製商品名FL15BLB)を用いてフィルム層4を透して光照射(光照射条件:積算光量200mJ/cm
2)して該硬化性樹脂組成物を硬化させ、硬化性樹脂層3を形成し、
図2に例示する積層構造(フィルム層4/ガラス繊維織物2に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層3/フィルム層4)であるシートを得た。得られたシートにおいて、ガラス繊維織物のガラス繊維間の隙間には、硬化性樹脂層3(樹脂組成物の硬化物)が含浸されており、ガラス繊維織物の層の両面上には硬化性樹脂層3が形成されていた。
【0077】
<比較例1>
(ガラス繊維織物2の製造)
実施例1と同様の製造方法で、ガラス繊維織物2とするガラス繊維織物を得た。
【0078】
(フィルム層4)
フィルム層4として、市販のポリ塩化ビニル樹脂フィルム(オカモト株式会社製、一般用PVC#320、厚さ130μm、質量156g/m2)を使用した。フィルム層4は2枚準備した。
【0079】
(シートの製造)
上記フィルム層4のうち1枚の片面に、硬化性樹脂層3とする表1に記載の硬化性樹脂組成物を塗布した。次に、樹脂組成物3とする該硬化性樹脂組成物の上に、上記得られたガラス繊維織物2を載せ、1分間静置してガラス繊維織物2の隙間に上記の硬化性樹脂組成物を含浸させた。次いで、他方のフィルム層4を載せ、当該フィルム層4の上からローラで硬化性樹脂層3の質量が50g/m
2となるように加圧した。その後、硬化性樹脂層3とする硬化性樹脂組成物にブラックライト蛍光ランプ(株式会社東芝製商品名FL15BLB)を用いてフィルム層4を透して光照射(光照射条件:積算光量200mJ/cm
2)して該硬化性樹脂組成物を硬化させ、硬化性樹脂層3を形成し、
図2に例示する積層構造(フィルム層4/ガラス繊維織物2に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層3/フィルム層4)であるシートを得た。得られたシートにおいて、ガラス繊維織物のガラス繊維間の隙間には、硬化性樹脂層3(樹脂組成物の硬化物)が含浸されており、ガラス繊維織物の層の両面上には硬化性樹脂層3が形成されていた。
【0080】
<比較例2>
(ガラス繊維織物2の製造)
経糸及び緯糸としてユニチカグラスファイバー株式会社製商品名「ECD450 1/0 1.0Z」(平均フィラメント径5.0μm、平均フィラメント本数200本、撚り数1.0Z)を用い、エアージェット織機で製織し、経糸密度が60本/25mm、緯糸密度が60本/25mmの平織のガラス繊維織物(生機)を得た。ついで、得られたガラス繊維織物(生機)に付着している紡糸集束剤と製織集束剤を400℃で30時間加熱して除去した。その後、表面処理剤のシランカップリング剤(S-350:N-ビニルベンジル-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(塩酸塩)チッソ株式会社)を15g/Lの濃度に調整しパダーロールで絞った後、120℃で1分乾燥・キュアリングした。そして、圧力1.5MPaの水流加工でガラス繊維織物の張力を経方向が100N/mとしながら拡幅処理を1回施し、ガラス繊維織物2とするガラス繊維織物を得た。得られたガラス繊維織物2は、経糸密度60本/25mm、緯糸密度60本/25mm、厚さ50μm、質量53g/m2、屈折率1.561であった。
【0081】
(フィルム層4)
フィルム層4として、市販のポリ塩化ビニル樹脂フィルム(オカモト株式会社製、一般用PVC#320、厚さ100μm、質量120g/m2)を使用した。フィルム層4は2枚準備した。
【0082】
(シートの製造)
上記フィルム層4のうち1枚の片面に、硬化性樹脂層3とする表1に記載の硬化性樹脂組成物を塗布した。次に、樹脂組成物3とする該硬化性樹脂組成物の上に、上記得られたガラス繊維織物2を載せ、1分間静置してガラス繊維織物2の隙間に上記の硬化性樹脂組成物を含浸させた。次いで、他方のフィルム層4を載せ、当該フィルム層4の上からローラで硬化性樹脂層3の質量が40g/m
2となるように加圧した。その後、硬化性樹脂層3とする硬化性樹脂組成物にブラックライト蛍光ランプ(株式会社東芝製商品名FL15BLB)を用いてフィルム層4を透して光照射(光照射条件:積算光量200mJ/cm
2)して該硬化性樹脂組成物を硬化させ、硬化性樹脂層3を形成し、
図2に例示する積層構造(フィルム層4/ガラス繊維織物2に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層3/フィルム層4)であるシートを得た。得られたシートにおいて、ガラス繊維織物のガラス繊維間の隙間には、硬化性樹脂層3(樹脂組成物の硬化物)が含浸されており、ガラス繊維織物の層の両面上には硬化性樹脂層3が形成されていた。
【0083】
<比較例3>
比較例3のシートとして、市販の東洋紡株式会社製2軸延伸ポリエステルフィルム(商品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」、厚さ75μm、質量105g/m2、全光線透過率(JIS K 7105:1981)93%、ヘーズ(JIS K 7105:1981)0.9%)を準備した。
【0084】
<比較例4>
比較例4のシートとして、市販のポリ塩化ビニル樹脂フィルム(オカモト株式会社製、一般用PVC#320、厚さ100μm、質量120g/m2)を使用した。
【0085】
なお、実施例及び比較例において、ガラス繊維織物の織密度は、JIS R 3420 2013 7.9に従い、測定及び算出した。また、ガラス繊維織物の厚さは、JIS R 3420 2013 7.10.1A法に従い、測定及び算出した。ガラス繊維織物の質量は、JIS R 3420 2013 7.2に従い、測定及び算出した。硬化性樹脂層3及びガラス繊維織物2の屈折率は、前述の方法で測定及び算出した。硬化性樹脂層3及びガラス繊維織物2のアッベ数は、上記の方法で測定及び算出した。
【0086】
(引裂強度)
前述した方法により行った。
【0087】
(曲げ剛性)
前述した方法により行った。
【0088】
(フレームに取り付けた際のシワ)
長さ1.5m、幅1mに切り出したシートを、長辺1.5m、短辺1mの矩形枠上のアルミニウム製フレームに取り付け、当該フレームの長辺側の両端を手で持って吊り上げて観察し、シートのシワの発生について以下の基準により評価した。
○:シワの発生が無く、外観上及び視認性に問題ないレベルであった。
×:シワの発生があり、外観上及び視認性に問題あるレベルであった。
【0089】
(不燃性評価)
一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、(I)加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、(II)加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、(III)加熱開始後20分間、0.5mm四方以上の貫通孔がないものを○、上記(I)~(III)の3つの要件のうち、一つでも満足しないものがある場合は×として評価した。
【0090】
各評価結果を表1に示す。
【0091】
【0092】
実施例1~4のシートは、ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂層を備え、全光線透過率が80%以上、ヘーズが20%以下であり、一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ、カトーテック株式会社製の純曲げ試験機KES-FB2―Sで測定した曲げ剛性が10gf・cm2/cm以上であることから、支持フレーム等に取り付けて使用する場合にも、シワに起因する視認性の低下を抑制し、かつ、燃えにくい性質を有するものであった。そして、実施例1~4のシートは、上記効果を奏することから、発熱機器を収容する複数のラックと、空気調和機と、前記空気調和機から流れる冷気を前記ラックに送るコールドアイルと、前記冷気が前記ラックを通過することにより温められてなる暖気を流すホットアイルと、を備える空調システムにおいて、コールドアイルとホットアイルとを区画する部材として好適に使用できるものであった。
【0093】
一方、比較例1及び2のシートは、カトーテック株式会社製の純曲げ試験機KES-FB2―Sで測定した曲げ剛性が10gf・cm2/cm未満であったことから、支持フレーム等に取り付けて使用する場合にも、シワに起因する視認性の低下を抑制することができないものであった。そして、比較例1及び2のシートは、シワに起因する視認性の低下を抑制することができないことから、発熱機器を収容する複数のラックと、空気調和機と、前記空気調和機から流れる冷気を前記ラックに送るコールドアイルと、前記冷気が前記ラックを通過することにより温められてなる暖気を流すホットアイルと、を備える空調システムにおいて、コールドアイルとホットアイルとを区画する部材として好適に使用できないものであった。