(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105460
(43)【公開日】2022-07-14
(54)【発明の名称】内容物充填チョコレートの製造方法及びこの方法で製造された内容物充填チョコレート
(51)【国際特許分類】
A23G 1/00 20060101AFI20220707BHJP
【FI】
A23G1/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000291
(22)【出願日】2021-01-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】513290978
【氏名又は名称】アルカピア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148127
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 耕太
(72)【発明者】
【氏名】竹下 知則
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GE02
4B014GP01
4B014GP21
4B014GQ06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】容易に、水に近い比重の液体を充填した内容物充填チョコレートを製造する、製造方法を提供する。
【解決手段】型を準備する第1ステップs1と、この型にチョコレートを溶かし入れて上部が開口となっている器状のチョコレートである凹部材を用意する第2ステップs2と、凹部材の凹部に内容物である液体を充填する第3ステップs3と、液体の上にオイルを注いでオイル層を形成する第4ステップs4と、オイル層を凝固させる第5ステップs5と、凝固したオイル層の上に溶けたチョコレートを注いで凹部材の前記開口を塞ぎ、成形する第6ステップs6と、固まったチョコレートを方から外すステップs7とを含む実施形態の、内容物充填チョコレートの製造方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口となっている器状のチョコレートである凹部材を用意するステップと、前記凹部材の凹部に内容物を充填するステップと、前記内容物の上にオイルを注ぐステップと、前記オイル層を凝固させオイル層を形成するステップと、凝固した前記オイル層の上に溶けたチョコレートを注いで前記凹部材の前記開口を塞ぎ、成形するステップと、を含む、内容物充填チョコレートの製造方法。
【請求項2】
前記オイルを凝固させるステップにおいては、常温下において前記オイルが凝固する温度下に冷ますことにより、前記オイルを凝結させる、請求項1に記載の内容物充填チョコレートの製造方法。
【請求項3】
前記オイルは、前記内容物より比重が軽い、請求項1または2に記載の内容物充填チョコレートの製造方法。
【請求項4】
前記オイルは、チョコレートよりも融点が低い、請求項1から3のいずれかに記載の内容物充填チョコレートの製造方法。
【請求項5】
前記オイルは、15度よりも融点が高い、請求項1から4のいずれかに記載の内容物充填チョコレートの製造方法。
【請求項6】
前記オイルは、飽和脂肪酸含有オイルである、請求項5に記載の内容物充填チョコレートの製造方法。
【請求項7】
器状のチョコレートである凹部材と、前記凹部材の凹部に充填された内容物と、前記内容物の上においてオイルにより形成されたオイル層と、前記オイル層を覆い前記凹部材の開口を塞ぐように形成された上部チョコレート層と、を有する、内容物充填チョコレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレートに関し、特に、内容物充填チョコレートの製造方法及びこの方法で製造された内容物充填チョコレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部空間に液体が充填されたチョコレートを製造する際、上部が開口した器状のチョコレートの内部空洞に液体を充填しチョコレートで蓋をしようとすると、チョコレートは通常、液体よりも重いため、液体に沈んでしまい、蓋とならない。そのため、これを解決する技術が必要となる。
【0003】
そこで、特許文献1には、内容物を多量にかつ安定的に含有させることができる製造方法が開示されている。特許文献1によれば、砂糖10~50重量%、カカオマス0~70重量%および全脂粉乳および/または脱脂粉乳0~40重量%を含み、総量に対して30~60重量%の脂肪 分を有する第1チョコレートを凹金型に流し込み、凹金型に冷却した凸金型を嵌合させて、中空溝を有する一定厚みのシェルチョコレートを成形し、次いで、中空溝内にソースを充填し充填後、砂糖10~50重量%、カカオマス0~70重量%および全脂粉乳および/または脱脂粉乳0~40重量%を含み、総量に対して30~60重量%の脂肪分を有する第2チョコレートを、シェルチョコレートの外延と接合するように敷設して、シェルチョコレートの中空溝を閉塞するボトムチョコレートを形成することにより、従来のシェルチョコレートとは異なる新しい食感を有する内容物充填チョコレートおよびその製造方法が提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の内容物充填チョコレートの製造方法では、ジュースやリキュールなどの、水に近い比重及び粘度の液体を充填した内容物充填チョコレートを製造することは容易ではない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、容易に、水に近い比重の液体を充填した内容物充填チョコレートを製造する製造方法及びこの製造方法により製造されたチョコレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の内容物充填チョコレートの製造方法は、上部が開口となっている器状のチョコレートである凹部材を用意するステップと、前記凹部材の凹部に内容物を充填するステップと、前記内容物の上にオイルを注ぐステップと、前記オイルを凝固させオイル層を形成するステップと、凝固した前記オイル層の上に溶けたチョコレートを注いで前記凹部材の前記開口を塞ぎ、成形するステップと、を含む、内容物充填チョコレートの製造方法である。
【0008】
前記オイルを凝固させるステップにおいては、常温下においてオイルが凝固する温度下に冷ますことにより、前記オイルを凝結させることが望ましい。
【0009】
ここで、前記オイルは、前記内容物より比重が軽いことが望ましい。
【0010】
また、前記オイルは、チョコレートよりも融点が低いことが望ましい。
【0011】
さらに、前記オイルは、15度よりも融点が高いことが望ましい。
【0012】
さらに、前記オイルは、飽和脂肪酸含有オイルが最も好適である。
【0013】
本発明の内容物充填チョコレートは、器状のチョコレートである凹部材と、前記凹部材の凹部に充填された内容物と、前記内容物の上においてオイルにより形成されたオイル層と、前記オイル層を覆い前記凹部材の開口を塞ぐように形成された上部チョコレート層と、を有する、内容物充填チョコレートである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の内容物充填チョコレートの製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】実施形態の内容物充填チョコレートの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の内容物充填チョコレート及びその製造方法の実施形態について説明する。
図1は、実施形態の内容物充填チョコレートの製造方法を示すフローチャートである。また、
図2は、
図1のそれぞれのステップに対応した簡易断面図である。
【0016】
図に示すように、実施形態の内容物充填チョコレートの製造方法は、型を準備する第1ステップs1と、この型にチョコレートを溶かし入れて上部が開口となっている器状のチョコレートである凹部材を用意する第2ステップs2と、凹部材の凹部に内容物である液体を充填する第3ステップs3と、液体の上にオイルを注いでオイル層を形成する第4ステップs4と、オイル層を凝固させる第5ステップs5と、凝固したオイル層の上に溶けたチョコレートを注いで凹部材の前記開口を塞ぎ、成形する第6ステップs6と、固まったチョコレートを方から外すステップs7と、からなる。
【0017】
詳細に説明する。第1ステップs1において、チョコレートの型1を用意する。この型1は、樹脂製、金属製などが想定され、従来用いられているものである。この型1は、製品としての内容物充填チョコレートの上側を形成するものであり、一般的に、底面にレリーフなどが設けられている。樹脂製であれば、型を変形させて完成したチョコレートを取り出すのに好適である。
【0018】
第2ステップs2において、型1の凹部2に、溶けたチョコレート3を注ぎ込む。チョコレート2は、型1を介して熱を奪われ、型1に接している部分から凝固し始める。そこで、
図2にs2-2として示すように型1を逆さにすると、凝固していないチョコレート3が流れ落ち、型1に接している部分が凝固して、器状の凹部材4が完成する。なお、ここで、他の方法によって凹部材4を形成してもよい。例えば、型1の凹部2に対応した凸状の部分を有する凸型(図示省略)を上からプレスすることにより、凹部材4を形成してもよい。
【0019】
続いて、第3ステップs3において、凹部材4の凹部4aに、内容物である液体5を充填する。ここで、液体とは、ジュース、シロップ、コーヒー、アルコールなどが考えられる。その他、ペースト状やジェル状のものであっても、個体でなければ内容物とすることができる。
【0020】
さらに、第4ステップs4において、液体5の上にオイル6が注ぎ込まれる。ここで、オイル6は、内容物である液体5より比重の軽い液体であり、後述するチョコレートを注入する際に個体化していることが必要である。具体的には、ココナッツオイルをはじめとする飽和脂肪酸含有オイルが適している。ココナッツオイルであれば23度程度で溶解し液体となるので、液体の状態で内容物の上に注ぎ込むことが容易である。この際、ココナッツオイルは上述の内容物よりも比重が軽いため、内容物である液体5の上に膜を作る。ココナッツオイルは凝固点がチョコレートの融点27~32度よりも少し低いので、チョコレートで作られた凹部材4を溶かしてしまうこともない。なお、オイル6として食用加工油脂を使用することもできる。
【0021】
続いて、第5ステップs5において、オイル6を凝固させ、オイル層7を形成する。すなわち、上述の状態で23度以下に保持すると、ココナッツオイルは凝固し、個体となり、オイル層7となる。このように、ココナッツオイルは凝固点が常温に近いので、加熱及び冷却に使うエネルギーが少なくてすむ。
【0022】
第6ステップにおいて、凝固したオイル層7の上に溶けたチョコレート8を注いで凹部材4の開口を塞ぎ、成形する。この際、オイル層7は個体であるから、チョコレート8が凹部材4の液体5内に入ることを防ぐ。また、オイル層7がココナッツオイルなどチョコレートの融点27~32度よりも少し融点の低いオイルであれば、チョコレート8の温度でオイル層7の表面が若干溶ける可能性はあるが、その前にチョコレート8がオイル層7に接して熱を奪われ凝固するので、オイル層7が溶けてチョコレート8が凹部材4の液体5内に入ってしまうことはない。このようにして、チョコレート8がオイル層7を覆い、凹部材4の開口を塞ぐように形成された上部チョコレート層9を形成する。
【0023】
このようにして形成された内容物充填チョコレート10は、逆さにされ、すなわち上部チョコレート層9が底部となった状態で販売される。
【0024】
このような内容物充填チョコレート10を人が食べた場合には、チョコレートが体温で溶け、液体が流出するという体験を得ることができる。ここで、オイル層がチョコレートよりも凝固点の低いオイルにより形成されていれば、チョコレートが溶けた際にオイル層も溶けるので、違和感を与えることがない。また、ココナッツオイルであれば、チョコレートの風味に対しても邪魔をすることがない。
【0025】
一方で、40度超えの融点の牛脂や50度ほどの融点のパームオイルでも本発明を実現することはできるが、チョコレートが溶けた後までオイル層が溶け残ってしまう可能性があり、違和感を残す可能性がある。逆に冷凍しないと固化しない菜種油、米油、オリーブオイル等でも本発明を実現することができるが、オイル層を固化するために冷蔵または冷凍しなければならず、エネルギー消費量は大きくなる。また、一般的に、チョコレートを固めるのには15~18度が適しており、それを下回ると、15~18度程度に戻して提供することが必要になるので、手間とエネルギー消費量は大きくなってしまう。
【0026】
このようにして、本発明の内容物充填チョコレートの製造方法によれば、常温に近い温度下で、容易に内容物充填チョコレートを製造し、提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 型2 凹部3 チョコレート4 凹部材5 液体6 オイル7 オイル層8 チョコレート9 上部チョコレート層10 内容物充填チョコレート
【手続補正書】
【提出日】2022-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口となっている器状のチョコレートである凹部材を用意するステップと、前記凹部材の凹部に内容物を充填するステップと、前記内容物の上にココナッツオイルを注ぐステップと、前記ココナッツオイルを凝固させオイル層を形成するステップと、凝固した前記オイル層の上に溶けたチョコレートを注いで前記凹部材の前記開口を塞ぎ、成形するステップと、を含む、内容物充填チョコレートの製造方法。
【請求項2】
前記オイルを凝固させるステップにおいては、常温下において前記オイルが凝固する温度下に冷ますことにより、前記オイルを凝結させる、請求項1に記載の内容物充填チョコレートの製造方法。
【請求項3】
器状のチョコレートである凹部材と、前記凹部材の凹部に充填された内容物と、前記内容物の上においてココナッツオイルにより形成されたオイル層と、前記オイル層を覆い前記凹部材の開口を塞ぐように形成された上部チョコレート層と、を有する、内容物充填チョコレート。