(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105470
(43)【公開日】2022-07-14
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220707BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 515
H01G4/30 512
H01G4/30 201M
H01G4/30 517
H01G4/30 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173139
(22)【出願日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0000511
(32)【優先日】2021-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ムーン スー
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ジン ウー
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】本発明は、内部電極が配置されたコアとマージン間、及びコアとカバー部位間の収縮率の差を低減することで、信頼性の確保された積層型電子部品を提供する。
【解決手段】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、複数の第1誘電体層と、内部電極とが交互に配置される活性部、及び上記複数の第1誘電体層が積層された方向である第1方向に上記活性部の両端にそれぞれ配置され、第2誘電体層を含むカバー部を含む本体と、上記本体の外部に配置されて上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記本体は、上記内部電極において、上記外部電極と接続された側面を除く残りの側面をカバーし、上記第1誘電体層よりも気孔率の高い誘電体パターンを含むマージン部を含むことができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1誘電体層と、内部電極とが交互に配置される活性部、及び前記複数の第1誘電体層が積層された方向である第1方向に前記活性部の両端にそれぞれ配置され、第2誘電体層を含むカバー部を含む本体と、
前記本体の外部に配置されて前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記本体は、前記内部電極の前記外部電極と接続された側面を除く残りの側面をカバーし、前記第1誘電体層よりも気孔率の高い誘電体パターンを含むマージン部を含む、積層型電子部品。
【請求項2】
前記活性部に含まれた第1誘電体層の気孔率と前記カバー部の気孔率は互いに異なる、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記カバー部は、前記第2誘電体層が積層されて形成される、請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記カバー部は、前記第1誘電体層及び前記第2誘電体層が交互に配置されて形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記誘電体パターンの誘電体組成と前記第2誘電体層の誘電体組成は互いに同一である、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記活性部において、前記内部電極と重なった領域に配置された前記第1誘電体層の誘電体結晶粒の平均サイズと、前記マージン部に配置された誘電体結晶粒の平均サイズは50nm以下のばらつきを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記誘電体パターンは、前記内部電極と前記第1方向に少なくとも一部の領域が互いに重なる、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記誘電体パターンの前記第1方向に対する平均高さをt1と、前記内部電極の前記第1方向に対する平均高さをt2と定義するとき、前記t1は0.3t2≦t1≦0.9t2を満たす、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記本体は、
前記第1方向に互いに対向する第1面及び第2面、前記第1面及び第2面と連結され、前記第1方向に垂直な第2方向に互いに対向する第3面及び第4面、前記第1面から第4面と連結され、前記第1方向及び第2方向に垂直な第3方向に互いに対向する第5面及び第6面を含み、
前記内部電極は、
前記本体の第3面と接続され、前記第4面、第5面、及び第6面と離隔配置される第1内部電極と、前記第4面と接続され、前記第3面、第5面、及び第6面と離隔配置される第2内部電極と、を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
複数個の第1内部電極パターンが形成された複数個の第1セラミックグリーンシート及び複数個の第2内部電極パターンが形成された複数個の第1セラミックグリーンシートを設ける段階と、
前記複数個の第1セラミックグリーンシートのそれぞれに対して、前記第1内部電極パターン及び第2内部電極パターンを除く残りの領域のうち少なくとも一部の領域に誘電物質を設ける段階と、
前記第1内部電極パターン及び第2内部電極パターンが交差するように前記複数個の第1セラミックグリーンシートを積層し、その積層方向の両端に第2セラミックグリーンシートを積層して積層本体を形成する段階と、
前記積層本体を焼成して、第1誘電体層、内部電極、及び誘電体パターンを含む活性部と、第2誘電体層を含むカバー部を含む本体を設ける段階と、を含み、
前記誘電体パターンは、前記第1誘電体層よりも気孔率の高い、積層型電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記第1セラミックグリーンシートに含まれるバインダーの体積分率をAと、前記内部電極パターンに含まれるバインダーの体積分率をBと、前記誘電物質に含まれるバインダーの体積分率をCと定義するとき、A>C≧Bを満たす、請求項10に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記活性部に含まれた第1誘電体層の気孔率と前記カバー部の気孔率は互いに異なる、請求項10または11に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記第2セラミックグリーンシートの誘電体組成と前記誘電物質の組成は互いに同一である、請求項10から12のいずれか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項14】
前記複数個の第1セラミックグリーンシートのそれぞれに対して、前記第1内部電極パターン及び第2内部電極パターンを除く残りの領域のうち少なくとも一部の領域に誘電物質を設ける段階は、
前記誘電物質を前記第1内部電極パターン及び第2内部電極パターンと一部の領域が互いに重なるように設ける段階を含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項15】
前記誘電体パターンの前記積層方向に対する平均高さをt1と、前記内部電極の前記積層方向に対する平均高さをt2と定義するとき、前記t1は0.3t2≦t1≦0.9t2を満たす、請求項10から14のいずれか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層型セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
このような積層型セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用することができる。最近、電子装置の部品の小型化に伴い、積層型セラミックキャパシタの小型化及び高容量化に対する要求が増加している。
【0004】
積層型セラミックキャパシタの小型化及び高容量化のためには、内部電極及び誘電体層の厚さを薄く形成して多層に積層する方式を使用する。しかしながら、このように交互に積層された誘電体層と内部電極間の物性の差、特に焼結時の収縮率の差によって構成間のミスマッチ(mismatch)が発生し、積層型セラミックキャパシタの信頼性が低下するという問題がある。
【0005】
このとき、誘電体層と内部電極とが交互に配置されたコア(活性部)とは異なり、内部電極が配置されないマージンやカバー部位は、純粋な誘電体シートのみが存在するため、これにより、可塑及び焼結時に収縮または膨張の程度において差が発生する。すると、コアとマージン間、またはコアとカバー部間に互いに不均一な応力によって歪みなどの変形が生じることがあり、これは積層型セラミックキャパシタのクラック(crack)や逆結による切断などの製品不良につながるようになる。
【0006】
これにより、積層型セラミックキャパシタの小型化及び高容量化に対する技術的要求とともに、内部電極が配置されたコアとマージン間、及びコアとカバー部位間の収縮率の差を低減することで、製品の信頼性を確保するための技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許公報第2019-0015453号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的のうち一つは、内部電極が配置されたコアとマージン間、及びコアとカバー部位間の収縮率の差を低減することで、信頼性の確保された積層型電子部品を提供することである。
【0009】
但し、本発明の目的は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程で、より容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、複数の第1誘電体層と、内部電極とが交互に配置される活性部、及び上記複数の第1誘電体層が積層された方向である第1方向に上記活性部の両端にそれぞれ配置され、第2誘電体層を含むカバー部を含む本体と、上記本体の外部に配置されて上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記本体は、上記内部電極において上記外部電極と接続された側面を除く残りの側面をカバーし、上記第1誘電体層よりも気孔率の高い誘電体パターンを含むマージン部を含むことができる。
【0011】
本発明の他の実施形態による積層型電子部品の製造方法は、複数個の第1内部電極パターンが形成された複数個の第1セラミックグリーンシート及び複数個の第2内部電極パターンが形成された複数個の第1セラミックグリーンシートを設ける段階と、上記複数の第1セラミックグリーンシートのそれぞれに対し、上記第1及び第2内部電極パターンを除く残りの領域のうち少なくとも一部の領域に誘電物質を設ける段階と、上記第1及び第2内部電極パターンが交差するように上記複数個の第1セラミックグリーンシートを積層し、その積層方向の両端に第2セラミックグリーンシートを積層して積層本体を形成する段階と、上記積層本体を焼成して、第1誘電体層、内部電極、及び誘電体パターンを含む活性部と、第2誘電体層を含むカバー部とを含む本体を設ける段階と、を含み、上記誘電体パターンは上記第1誘電体層よりも気孔率が高くてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によると、内部電極及び誘電体層が配置された複合構造の活性部と、側面マージン部に配置された誘電体層間の収縮率の差が減少して、側面マージン部の不均一な変形や逆結が防止される効果がある。
【0013】
また、本発明の一実施形態によると、内部電極及び誘電体層が配置された複合構造の活性部と、その上下部に配置されたカバー部間の収縮率の差が減少して、活性部とカバーの境界部分でのクラックが防止され、信頼性が確保される効果がある。
【0014】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程で、より容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【
図5】
図4の本体に対する変形例を示したX-Z線に沿って切断して示した平面正面図である。
【
図6】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の活性部とマージン部との境界を拡大して撮影した写真である。
【
図7】(a)及び(b)は、従来の積層型電子部品の活性部とマージン部との境界を拡大して撮影した写真である。
【
図8】本発明の他の実施形態による誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【
図9】
図2の積層型電子部品に対する変形例を示したI-I'線に沿った断面図である。
【
図10】
図9の第1内部電極のX-Y線に沿って切断して示した平面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及びサイズなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0017】
また、本発明を明確に説明するために、図面において説明と関係ない部分は省略し、複数の層、及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を使用して説明する。さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0018】
本発明の実施形態を明確に説明するために、方向を定義すると、図面に示されるX、Y、及びZはそれぞれ積層型電子部品の長さ方向、幅方向、及び厚さ方向を示す。
【0019】
なお、本明細書において、長さ方向はX方向または第2方向、幅方向はY方向または第3方向、厚さ方向はZ方向、第1方向または積層方向とそれぞれ同一の概念で用いられることができる。
【0020】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った断面図であり、
図3は、
図1のII-II'線に沿った断面図であり、
図4は、本発明の一実施形態による誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【0021】
まず、
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について説明する。
【0022】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、複数の第1誘電体層111と、第1誘電体層111を間に挟んで配置される複数の内部電極121、122と、複数の第2誘電体層116を含む本体110及び本体110の外部に配置され、内部電極121、122と連結される外部電極131、132と、を含む。
【0023】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように六面体状やこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直方体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0024】
本体110は、積層方向(Z方向)に互いに対向する第1及び第2面(1、2)、第1及び第2面(1、2)と連結され、長さ方向(X方向)に互いに対向する第3及び第4面(3、4)、第1~第4面(1、2、3、4)と連結され、幅方向(Y方向)に互いに対向する第5及び第6面(5、6)を有することができる。
【0025】
本体110は、複数の第1誘電体層111と内部電極121、122とが交互に配置される活性部と、第1誘電体層111が積層された方向である第1方向に上記活性部の両端にそれぞれ配置され、第2誘電体層116を含むカバー部112、113と、を含むことができる。
【0026】
上記活性部は、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、第1誘電体層111を間に挟んで複数の内部電極121、122を反復的に配置して形成されてもよい。
【0027】
活性部に含まれる複数の第1誘電体層111は、焼成された状態であって、隣接する第1誘電体層111の間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認し難いほど一体化することができる。
【0028】
第1誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量を得ることができる限り、特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。
【0029】
また、第1誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されたものであってもよい。
【0030】
カバー部112、113は、上部カバー部112及び下部カバー部113を含み、基本的には、物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。カバー部112、113は、内部電極を含まなくてもよい。
【0031】
本実施形態によると、カバー部112、113は、第2誘電体層116を活性部の上下部にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができる。
【0032】
カバー部112、113に含まれる複数の第2誘電体層116は、焼成された状態であって、隣接する第2誘電体層116の間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認し難いほど一体化することができる。
【0033】
第2誘電体層116を形成する原料は、十分な静電容量を得ることができる限り、特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。
【0034】
また、第2誘電体層116を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されたものであってもよい。
【0035】
活性部に含まれる第1誘電体層111と、カバー部112、113に含まれる第2誘電体層116は、互いに異なる誘電体組成を有することができる。例えば、第1誘電体層111及び第2誘電体層116は、互いに異なる種類のセラミック材料で形成されるか、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)などの副成分を互いに異なる組成で含むことができる。
【0036】
または、活性部に含まれる第1誘電体層111と、カバー部112、113に含まれる第2誘電体層116は、互いに同一の誘電体組成を有することもできる。このとき、誘電体組成は同一であっても、第1誘電体層111と第2誘電体層116に含まれたセラミック粒子のサイズは互いに異なることができる。
【0037】
または、活性部に含まれる第1誘電体層111の気孔率と、カバー部112、113に含まれる第2誘電体層116の気孔率が互いに異なってもよい。これにより、最終製品で活性部に含まれた第1誘電体層111とカバー部112、113の平均気孔率は互いに異なることができる。
【0038】
複数の内部電極121、122は、複数の第1誘電体層111を間に挟んで交互に配置される。
【0039】
本体110の第2方向(X方向)の両端面(end surface)には、外部電極131、132が形成され、複数の内部電極121、122は、外部電極131、132とそれぞれ接続される第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。
【0040】
第1及び第2内部電極121、122は、本体110の活性部を構成する第1誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面(3、4)にそれぞれ露出することができる。
【0041】
図1~
図3を参照すると、第1内部電極121は、第4、第5、及び第6面(4、5、6)と離隔し、第3面(3)に露出し、第2内部電極122は、第3、第5、及び第6面(3、5、6)と離隔し、第4面(4)に露出することができる。
【0042】
本体110の第3面(3)には第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体の第4面(4)には第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0043】
このとき、第1外部電極131及び第2内部電極122、第2外部電極132及び第1内部電極121はそれぞれ第2方向(X方向)に互いに離隔するように配置され、これらの最短離隔距離は互いに同一であってもよい。
【0044】
図4を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷された第1誘電体層111と、第2内部電極122が印刷された第1誘電体層111とを厚さ方向(Z方向)に交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0045】
このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された第1誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0046】
また、第1及び第2内部電極121、122を形成する材料は、特に制限されず、貴金属材料またはニッケル(Ni)及び銅(Cu)のうち1つ以上の物質からなる導電性ペーストを使用して形成されてもよい。
【0047】
上記導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを使用することができ、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
本体110の活性部の側面にはマージン部に配置されてもよい。マージン部は、基本的に、物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0049】
マージン部は、内部電極121、122において、外部電極131、132と接続された側面を除く残りの側面をカバーすることができる。このとき、マージン部は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される個所を除いて、導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することで形成されたものであってもよい。
【0050】
本実施形態によると、内部電極121、122は、本体110の第3面(3)と接続され、第4、第5、及び第6面(4、5、6)と離隔配置される第1内部電極121と、本体110の第4面(4)と接続され、第3、第5、第6面(3、5、6)と離隔配置される第2内部電極122と、を含むことができる。そして、これらは、第3面(3)及び第4面(4)にそれぞれ外部電極131、132と接続されることができる。
【0051】
したがって、このときのマージン部は、内部電極121、122において、本体110の第4、第5、及び第6面(4、5、6)側の側面と、第3、第5、及び第6面(3、5、6)側の側面をそれぞれカバーするように配置されてもよい。
【0052】
また、
図3を参照すると、マージン部は、本体110の第6面(6)に配置されたマージン部114と第5面(5)に配置されたマージン部115とを含むことができる。すなわち、マージン部は、上記セラミック体110の幅方向の両側面に配置されるマージン部114、115を含むことができる。
【0053】
図2~
図4を参照すると、マージン部は、誘電体パターン141、142を含むことができる。すなわち、複数の第1誘電体層111にそれぞれ内部電極121、122が配置され、内部電極121、122が配置されていない領域にはマージン部が形成されてもよいが、それぞれのマージン部には誘電体パターン141、142が配置されてもよい。
【0054】
誘電体パターン141、142は、
図2に示すように、第1及び第2内部電極121、122が交互に配置されることにより、第1誘電体層111の間に発生する公差を埋めるように配置されることにより、積層型電子部品100のクラック(crack)や破損を防止する役割を果たすことができる。
【0055】
また、誘電体パターン141、142は、
図3に示すように、本体110の活性部において、第3方向(Y方向)の両端のマージン部114、115に発生する公差を埋めるように配置されることにより、積層型電子部品100の焼結時に活性部とマージン部間の不均一な収縮または膨張による破損を防止する役割を果たすことができる。
【0056】
誘電体パターン141、142は、本体110の第4、第5、及び第6面(4、5、6)と離隔配置された第1内部電極121の周囲に配置される第1誘電体パターン141と、本体110の第3、第5、及び第6面(3、5、6)と離隔配置された第2内部電極122の周囲に配置される第2誘電体パターン142と、を含むことができる。
【0057】
すなわち、
図4に示すように、第1誘電体パターン141は、第1誘電体層111において、第1内部電極121が形成されていない領域を埋めるように配置されてもよく、第2誘電体パターン142は、第1誘電体層111において、第2内部電極122が形成されていない領域を埋めるように配置されてもよい。
【0058】
誘電体パターン141、142は、誘電物質によって形成されてもよい。誘電体パターン141、142を形成する誘電物質の原料は、十分な静電容量を得ることができる限り、特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。
【0059】
また、誘電体パターン141、142を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されたものであってもよい。
【0060】
このとき、誘電体パターン141、142及び第1誘電体層111は、気孔率が異なることを特徴とすることができる。特に、誘電体パターン141、142の気孔率が、第1誘電体層111の気孔率より高くてもよい。
【0061】
誘電体パターン141、142及び第1誘電体層111の気孔率は、これらを形成する段階で適用される誘電物質及びセラミックグリーンシートにそれぞれ含まれるバインダー(binder)の含量の差に応じて異なることができる。すなわち、誘電体パターン141、142を形成する誘電物質に、より多くのバインダーが含まれることで、誘電体パターン141、142は相対的に高い気孔率を有し、第1誘電体層111は相対的に低い気孔率を有することができる。
【0062】
本実施形態による積層型電子部品100は、このように誘電体パターン141、142を形成する誘電物質に、より多くのバインダーを含ませることにより、焼結時に誘電体パターン141、142が第1誘電体層111よりも高い収縮率を有するようにすることができる。
【0063】
より詳細には、本発明が属する技術分野において、通常的に内部電極の収縮率が誘電体層の収縮率よりも低く、電子部品の焼結段階で収縮率のばらつきが発生するようになる。これにより、不均一な収縮によって、電子部品の逆結などの変形が発生することがあり、これは信頼性を低下させる要因となる。
【0064】
したがって、本実施形態による誘電体パターン141、142は、第1誘電体層111の収縮率と内部電極121、122の収縮率との間の値に該当する収縮率を有することによって、第1誘電体層111と内部電極121、122の収縮率のばらつきによる信頼性の低下を抑制する効果を奏することができる。
【0065】
さらに、活性部に含まれる第1誘電体層111と、誘電体パターン141、142は、互いに異なる誘電体組成を有することができる。例えば、第1誘電体層111と誘電体パターン141、142は、互いに異なる種類のセラミック材料で形成されるか、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)などの副成分を互いに異なる組成で含むことができる。
【0066】
または、第1誘電体層111と誘電体パターン141、142は、焼結前のバインダーの含量を除いては、互いに同一の誘電体組成を有することもできる。このとき、誘電体組成は同一であっても、第1誘電体層111と誘電体パターン141、142に含まれたセラミック粒子のサイズは異なることができる。
【0067】
一方、本発明の一実施形態によると、誘電体パターン141、142の誘電体組成と第2誘電体層116の誘電体組成は互いに同一であってもよい。すなわち、マージン部に形成される誘電体パターン141、142と、第2誘電体層116によって形成される本体110のカバー部112、113とが、互いに同一の誘電体組成を有するようにしてもよい。
【0068】
このとき、誘電体パターン141、142と第2誘電体層116は、平均気孔率が同一であることを特徴とすることができる。言い換えると、誘電体パターン141、142を形成する誘電物質と、第2誘電体層116を形成するセラミックグリーンシートにそれぞれ含まれるバインダーの含量を同一にすることができる。これにより、誘電体パターン141、142と第2誘電体層116の焼結時に収縮率がほぼ同一になるようにすることができる。
【0069】
本実施形態による積層型電子部品100は、このように誘電体パターン141、142とカバー部112、113の収縮率を一致させることで、カバー部112、113が活性部の平均収縮率と類似した収縮率を有するようにすることができる。すなわち、カバー部112、113が活性部に含まれた第1誘電体層111、内部電極121、122及び誘電体パターン141、142の収縮率の平均値と類似した収縮率を有するようにして、活性部とカバー部112、113間の収縮率のばらつきを低減することができる。
【0070】
これにより、積層型電子部品100の焼結時に、活性部とカバー部112、113間の収縮率のばらつきによって発生する本体110の分離破損を防止することができる。
【0071】
外部電極131、132は、本体110に配置され、内部電極121、122と連結される。
【0072】
図1~
図3に示すように、外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面(3、4)にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0073】
本実施形態では、積層型電子部品100が、2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0074】
外部電極131、132は、金属などのように、電気伝導性を有する様々な物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して、具体的な物質が決定されてもよい。
【0075】
例えば、外部電極131、132は、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0076】
また、外部電極131、132は、本体110上に焼成電極及び樹脂系電極が順次に形成された形態であってもよい。また、外部電極131、132は、本体110上に導電性金属を含むシートを転写する方法で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方法で形成されたものであってもよい。
【0077】
外部電極131、132に含まれる導電性金属として電気伝導性に優れた材料を使用することができ、特に限定しない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金のうち1つ以上であってもよい。
【0078】
また、第1及び第2外部電極131、132は、めっき層をさらに含むことができる。上記めっき層は、第1及び第2ニッケル(Ni)めっき層と、上記第1及び第2ニッケルめっき層をそれぞれカバーする第1及び第2スズ(Sn)めっき層を含むことができる。
【0079】
図5は、
図4の本体の変形例を示したX-Z線に沿って切断して示した平面正面図である。
【0080】
図5を参照すると、本変形例による本体110-1は、制限された高さを有する誘電体パターン141、142を含むことができる。
【0081】
まず、本変形例による本体110-1は、
図4に示された本体110と同様に、第1誘電体層111と内部電極121、122とが交互に配置されて活性部を形成することができる。また、その積層方向(第1方向)の両端に第2誘電体層116が積層されてカバー部112、113を形成することができる。
【0082】
ここで、誘電体パターン141、142は、マージン部に対して30%~90%の充填率を有することができる。例えば、誘電体パターン141、142の第1方向に対する平均高さをt1と、内部電極121、122の第1方向に対する平均高さをt2と定義するとき、t1は0.3t2≦t1≦0.9t2を満たすことができる。
【0083】
誘電体パターン141、142が、内部電極121、122と同一の高さを有するように形成されることも可能であるが、この場合、積層型電子部品の焼結段階で収縮または膨張により逆結または途切れが発生することができる。したがって、好ましくは、誘電体パターン141、142がマージン部の第1方向に対する全高さのうち90%以下の高さを有するように形成することができる。すなわち、誘電体パターン141、142の第1方向に対する平均高さt1はt1≦0.9t2を満たすことができる。
【0084】
逆に、誘電体パターン141、142が過度に低い高さで形成されると、マージン部の充填率が低く、第1誘電体層111の間に発生する公差を埋める効果がまともに発揮されないことがある。すると、積層型電子部品100の逆結など、不均一な変形が効果的に抑制されないことがある。また、マージン部の充填率が30%未満の低い値を有すると、積層型電子部品100の耐電圧特性(BDV)が必要な値に到達できない恐れがある。
【0085】
したがって、好ましくは、誘電体パターン141、142がマージン部の第1方向に対する全高さのうち30%以上の高さを有するように形成されてもよい。すなわち、誘電体パターン141、142の第1方向に対する平均高さt1は0.3t2≦t1を満たすことができる。
【0086】
一方、カバー部を形成する第2誘電体層116の第1方向に対する平均高さt11、t12は、特に制限されない。一例として、
図5に示すように、第2誘電体層116の第1方向に対する平均高さt11、t12は、誘電体パターン141、142の第1方向に対する平均高さt1と同一であってもよい。
【0087】
また、第1誘電体層111の第1方向に対する平均高さt3も特に制限されない。一例として、
図5に示すように、第1誘電体層111の第1方向に対する平均高さt3は、誘電体パターン141、142の第1方向に対する平均高さt1より大きくてもよい。そして、第1誘電体層111の第1方向に対する平均高さt3は、内部電極121、122の第1方向に対する平均高さt2と同一であってもよい。
【0088】
但し、前述した内容は例示的なものに過ぎず、必要に応じて、各誘電体層111、116の第1方向に対する高さを多様に形成することができる。
【0089】
また、ここで、各構成部分の平均高さは、積層型電子部品のX-Z平面とY-Z平面に平行な複数の断面(例えば、それぞれ同じ間隔の10個の断面)から各構成部分の第1方向の高さを測定し、その平均値を算出したものである。
【0090】
したがって、各構成部分の互いに異なる断面に対する第1方向の高さは、それぞれ異なるように形成されてもよい。すなわち、誘電体パターン141、142、第1誘電体層111、第2誘電体層116及び内部電極121、122は、一定の高さを有さず、一部の領域で突出または陥没する形態で形成されてもよい。
【0091】
以下、本発明の一実施形態による積層型電子部品100の製造方法について説明する。
【0092】
まず、複数の第1セラミックグリーンシートを用意する。
上記第1セラミックグリーンシートは、本体110の第1誘電体層111を形成するためのものであって、セラミック粉末、ポリマー及び溶剤を混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレードなどの工法によりシート(sheet)状に作製することができる。
【0093】
ここで、上記第1誘電体層を形成するスラリーに含まれるセラミック粉末は、BaTiO3を主成分とすることができる。
【0094】
その後、上記それぞれの第1セラミックグリーンシートの少なくとも一面に、内部電極用導電性ペーストを印刷して内部電極121、122を形成する。上記内部電極用導電性ペーストは、例えば、Ni粉末とCu粉末を混合するか、Ni-Cu合金粉末を含むことで形成することができる。
【0095】
内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを使用することができる。
【0096】
複数個の第1セラミックグリーンシートに、第1内部電極パターンまたは第2内部電極パターンが形成されると、上記複数の第1セラミックグリーンシートのそれぞれに対して、第1及び第2内部電極パターンを除く残りの領域のうち少なくとも一部の領域に誘電物質を設けることができる。
【0097】
ここで、誘電物質は、誘電体パターン141、142を形成する物質に該当し、誘電体パターン141、142は、第1誘電体層111より気孔率が高いことを特徴とすることができる。
【0098】
また、このとき、第1セラミックグリーンシートに含まれるバインダーの体積分率をAと、第1及び第2内部電極パターンに含まれるバインダーの体積分率をBと、誘電物質に含まれるバインダーの体積分率をCと定義するとき、A>C≧Bを満たせることができる。言い換えると、誘電体パターン141、142を形成する誘電物質のバインダーの含量が、第1セラミックグリーンシートと内部電極パターンに含まれるバインダーの含量の中間値に該当するか、内部電極パターンのバインダーの含量と同一にすることができる。
【0099】
これにより、誘電体パターン141、142の焼結時の収縮率が、第1誘電体層111と内部電極121、122の収縮率の中間値に該当するか、内部電極121、122の収縮率とほぼ同一になることができる。そして、その結果として、活性部に含まれた第1誘電体層111の気孔率よりもマージン部に含まれた誘電体パターン141、142の気孔率がより高くなることができる。
【0100】
図4を参照すると、第1内部電極パターンと第2内部電極パターンとが交差するように複数個の第1セラミックグリーンシートを交互に積層し、積層方向から加圧して積層された複数の第1セラミックグリーンシートと第1セラミックグリーンシート上に形成された内部電極を互いに圧着させて積層体を構成することができる。
【0101】
また、積層体の上下部には、少なくとも1つ以上の第2セラミックグリーンシートを積層してカバー部112、113を形成することができる。カバー部112、113は、積層体の内部に位置した第1誘電体層111と同じ組成からなることができ、内部電極を含まない点で、第1誘電体層111とは異なる。
【0102】
このとき、第2セラミックグリーンシートは、それぞれ第2誘電体層116を形成することができ、第2セラミックグリーンシートの誘電体組成と、誘電体パターン141、142を形成する誘電物質の組成は、互いに同一であってもよい。
【0103】
そして、第1セラミックグリーンシートと第2セラミックグリーンシートは、互いに異なる含量のバインダーを含むことができる。その結果として、活性部に含まれた第1誘電体層111の気孔率と、カバー部112、113の気孔率とが互いに異なることができる。
【0104】
その後、上記積層体を1つのキャパシタに対応する領域ごとに切断してチップ化した後、高温で焼成することにより、第1誘電体層111、内部電極121、122及び誘電体パターン141、142を含む活性部と、第2誘電体層116を含むカバー部112、113とを含む本体110を完成する。
【0105】
そして、本体110の両側面に露出した第1及び第2内部電極121、122の露出部分を覆って第1及び第2内部電極121、122と電気的に連結できるように、第1及び第2外部電極131、132を形成することができる。
【0106】
このとき、第1及び第2外部電極131、132の表面には、必要に応じてニッケル(Ni)またはスズ(Sn)などでめっき処理を行うことができる。
【0107】
図6の(a)及び(b)は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の活性部とマージン部との境界を拡大して撮影した写真であり、
図7の(a)及び(b)は、従来の積層型電子部品の活性部とマージン部との境界を拡大して撮影した写真である。
【0108】
すなわち、
図6及び
図7の各写真において、左側は内部電極が含まれた活性部、右側は内部電極が含まれていないマージン部を示す。そして、中間地点は、内部電極の先端、すなわち、活性部とマージン部間の境界部分を示す。
【0109】
図6及び
図7を共に参照すると、
図7に示された従来の積層型電子部品と対比するとき、
図6に示された本発明の一実施形態による積層型電子部品の写真から気孔がより多く観察されることが確認できる。特に、
図6の(a)及び(b)では、左側の活性部より右側のマージン部からより多くの気孔が観察される。
【0110】
これは、本発明の一実施形態による本体110を形成する段階において、マージン部に含まれる誘電体パターン141、142を形成する誘電物質に多量のバインダー(binder)を含ませたことによる結果であると解釈される。すなわち、マージン部の誘電体パターン141、142及び活性部の第1誘電体層111は、これらを形成する段階で適用される誘電物質及びセラミックグリーンシートにそれぞれ含まれるバインダー(binder)の含量の差に応じて互いに異なる気孔率を有するようになると解釈される。誘電体パターン141、142を形成する誘電物質に、より多くのバインダーが含まれることで、誘電体パターン141、142は相対的に高い気孔率を有し、第1誘電体層111は相対的に低い気孔率を有する。
【0111】
本実施形態による積層型電子部品100は、このように誘電体パターン141、142を形成する誘電物質に、より多くのバインダーを含ませることで、焼結時に誘電体パターン141、142が第1誘電体層111よりも高い収縮率を有するようにすることができる。そして、電子部品の焼結段階で発生する収縮率のばらつきを低減して、積層型電子部品100の信頼性を確保することができる。
【0112】
下記の表1は、
図6に示された本発明の一実施形態による積層型電子部品100を製造するにあたり、各構成部分を形成する物質のバインダー(binder)の含有量に応じた収縮率を測定して示したものである。
【0113】
このとき、表1に記載された収縮率は、理論線形収縮率を計算した値に該当する。本明細書において、理論線形収縮率とは、内部にaの気孔率を有する物体に対してX、Y、Z方向にそれぞれ同様に等方向収縮が起こり、当該物体が完全緻密化に到達したときの収縮率を意味することができる。したがって、理論線形収縮率は、X、Y、Z方向のうちいずれか一方向に対する線形収縮率を意味することができる。
【0114】
このような定義に基づいて、表1の実験例による各物質の理論線形収縮率を下記のような数式を用いて計算した。
【0115】
すなわち、各物質の気孔率をaとしたとき、当該物質の理論線形収縮率(S_linear)(%)は、
S_linear={1-(1-a)(1/3)}*100
で計算することができる。
【0116】
さらに、ここで、第1誘電体層のバインダーの含有量は、焼結前に第1誘電体層を形成する第1セラミックグリーンシートにおいて、BaTiO3などのセラミック材料を含む全体積に対するバインダーの体積比率を示したものである。また、内部電極のバインダーの含有量は、焼結前に内部電極パターンを形成する内部電極ペーストにおいて、Niなどの導電性金属を含む全体積に対するバインダーの体積比率を示したものである。また、第2誘電体層のバインダーの含有量は、焼結前に第2誘電体層を形成する第2セラミックグリーンシートにおいて、BaTiO3などのセラミック材料を含む全体積に対するバインダーの体積比率を示したものである。また、誘電体パターンのバインダーの含有量は、焼結前に誘電体パターンを形成する誘電物質において、BaTiO3などのセラミック材料を含む全体積に対するバインダーの体積比率を示したものである。
【0117】
【0118】
上記表1を参照すると、各構成部分において、バインダーの含量が高いほど、理論線形収縮率が高いことが確認できる。そして、表1に記載された本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体パターン141、142のバインダーの含量を、第1誘電体層111及び内部電極121、122のバインダーの含量の中間値に設定することで、第1誘電体層111と内部電極121、122間の収縮率のばらつきを低減する効果を奏することができる。これにより、活性部とマージン部間の収縮率のばらつきが低減され、積層型電子部品100の変形または逆結による信頼性の低下が抑制される効果が期待できる。
【0119】
また、第1誘電体層111に含まれたバインダーの含量が、内部電極121、122と同一である場合には、第1誘電体層111と内部電極121、122間の収縮率がほぼ同一になるため、上記実験例のような効果を奏することができると解釈される。
【0120】
したがって、本実施形態によると、第1セラミックグリーンシートに含まれるバインダーの体積分率をAと、上記内部電極パターンに含まれるバインダーの体積分率をBと、上記誘電物質に含まれるバインダーの体積分率をCと定義するとき、A>C≧Bを満たすことを特徴とすることができる。
【0121】
また、表1に記載された本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、カバー部112、113を形成する第2誘電体層116のバインダーの含量を、第1誘電体層111及び内部電極121、122のバインダーの含量の中間値に設定することで、活性部とカバー部112、113間の収縮率のばらつきを低減する効果を奏することができる。これにより、積層型電子部品100の不均一な変形によってカバー部112、113が分離破損されることを抑制する効果が期待できる。
【0122】
図6及び
図7を共に参照すると、
図6に示された本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、活性部に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズとマージン部に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズとのばらつきが相対的に小さいことが確認できる。これに対し、
図7に示された従来の積層型電子部品は、活性部に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズとマージン部に含まれた誘電体結晶粒の平均サイズとのばらつきが相対的に大きい。
【0123】
より具体的に、各写真から各誘電体結晶粒の平均サイズを測定した結果、
図7の(a)において、活性部に含まれた誘電体層の誘電体結晶粒の平均サイズは0.28μm、マージン部に配置された誘電体結晶粒の平均サイズは0.42μmであった。また、
図7の(b)では、活性部に含まれた誘電体層の誘電体結晶粒の平均サイズが0.32μm、マージン部に配置された誘電体結晶粒の平均サイズが0.42μmであった。
【0124】
すなわち、従来の積層型電子部品は、活性部に含まれた誘電体層とマージン部の誘電体結晶粒の平均サイズは100nm~140nm程度の差を示した。
【0125】
これとは異なり、
図6の(a)において、活性部に含まれた第1誘電体層の誘電体結晶粒の平均サイズは0.27μm、マージン部に配置された誘電体結晶粒の平均サイズは0.32μmであった。また、
図6の(b)では、活性部に含まれた第1誘電体層の誘電体結晶粒の平均サイズが0.31μm、マージン部に配置された誘電体結晶粒の平均サイズは0.32μmであった。
【0126】
すなわち、本発明の一実施形態によると、活性部において内部電極121、122と重なった領域に配置された第1誘電体層111の誘電体結晶粒の平均サイズと、マージン部に配置された誘電体結晶粒の平均サイズとは、50nm以下のばらつきを有することができる。
【0127】
このように、活性部において、内部電極121、122と重なった領域に配置された第1誘電体層111の誘電体結晶粒の平均サイズと、マージン部に配置された誘電体結晶粒の平均サイズのばらつきが相対的に小さく示されることで、内部電極121、122の先端部位で漏れ電流が発生することを抑制することができる効果がある。
【0128】
図8は、本発明の他の実施形態による誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【0129】
本実施形態による本体110-2は、複数の第1誘電体層111と、第1誘電体層111を間に挟んで交互に配置される複数の内部電極121、122を含む活性部、及びその積層方向の両端に配置されるカバー部112 '、113'を含む。
【0130】
このとき、第1及び第2内部電極121、122が配置されたそれぞれの第1誘電体層111には、誘電体パターン141、142が形成されてもよい。
【0131】
図8を参照すると、本実施形態によるカバー部112 '、113'は、第1誘電体層111及び第2誘電体層116aが交互に配置されて形成されてもよい。例えば、カバー部112 '、113'は、第1誘電体層111と第2誘電体層116aとを交互に積層する方法で形成することもでき、それぞれの第1誘電体層111に第2誘電体層116aを先にコーティングした後、これを積層する方法で形成することもできる。
【0132】
ここで、第1誘電体層111は、内部電極121、122が形成される活性部に含まれた第1誘電体層111と同一のものであってもよい。
【0133】
本実施形態に従って、カバー部112 '、113'に含まれる第2誘電体層116aは、前述したように、誘電体パターン141、142と同一の誘電体組成を有することもでき、それとは異なる誘電体組成を有することもできる。また、第2誘電体層116aと誘電体パターン141、142は、互いに同一の気孔率を有するか、異なる気孔率を有することができる。
【0134】
そして、このとき、第2誘電体層116aは、内部電極121、122と互いに同一の気孔率を有するか、同一の収縮率を有するなど、内部電極121、122と一部または全部の性質が同一であるように形成されてもよい。
【0135】
図8に示された本実施形態の場合、
図4に示された実施形態とは異なり、互いに異なる第1及び第2誘電体層111、116aが交互に積層されるようにする。これにより、カバー部112、113と活性部間に共通して第1誘電体層111を含むことで、誘電体結晶粒の平均サイズのばらつきを低減することができる。また、カバー部112、113と活性部間の収縮率のばらつきも、より効果的に低減することができる。
【0136】
図9は、
図2の積層型電子部品に対する変形例を示したI-I'線に沿った断面図であり、
図10は、
図9の第1内部電極に対するX-Y線に沿って切断して示した平面正面図である。
【0137】
図9及び
図10を共に参照すると、本変形例による積層型電子部品101は、複数の第1誘電体層111と、第1誘電体層111を間に挟んで交互に配置される複数の内部電極121、122を含む本体110-3、及び本体110-3の外部に配置され、内部電極121、122と連結される外部電極131、132と、を含む。
【0138】
ここで、複数の内部電極121、122が形成されていないマージン部には、誘電体パターン141a、141b、142a、142bが形成されてもよい。本変形例による誘電体パターン141a、141b、142a、142bは、第1内部電極121と同一の層に形成される第1誘電体パターン141a、141b及び第2内部電極122と同一の層に形成される第2誘電体パターン142a、142bを含むことができる。
【0139】
図10に示すように、第1誘電体パターン141a、141bは、第1内部電極121と重ならない周辺部141a、及び第1内部電極121と重なる重なり部141bを含むことができる。すなわち、第1誘電体パターン141a、141bは、第1内部電極121と積層方向(第1方向)に少なくとも一部の領域が互いに重なることができる。
【0140】
同様に、第2誘電体パターン142a、142bは、第2内部電極122と重ならない周辺部142a、及び第2内部電極122と重なる重なり部142bを含むことができる。すなわち、第2誘電体パターン142a、142bは、第2内部電極122と積層方向(第1方向)に少なくとも一部の領域が互いに重なることができる。
【0141】
このように、本変形例による誘電体パターン141a、141b、142a、142bが内部電極121、122と一部の領域で重なるように形成されることで、誘電体パターン141a、141b、142a、142bを形成する誘電物質の印刷がより容易になることができる。
【0142】
また、この場合、誘電体パターン141a、141b、142a、142bと内部電極121、122間の接着力がより強化されることができる。すると、本体110-3のマージン部と活性部間の接合力も強化されることができるため、積層型電子部品101の耐久性及び信頼性が確保できる効果がある。すなわち、焼結による変形にもかかわらず、マージン部と活性部間の逆結または分離が起こらないように抑制することができる。
【0143】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【符号の説明】
【0144】
100、101:積層型電子部品
110、110-1、110-2、110-3:本体
111:第1誘電体層
112、113:カバー部
114、115:マージン部
116:第2誘電体層
121、122:第1及び第2内部電極
131、132:第1及び第2外部電極
141、142:誘電体パターン