(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105472
(43)【公開日】2022-07-14
(54)【発明の名称】三相インバータおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220707BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/48 F
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186695
(22)【出願日】2021-11-16
(31)【優先権主張番号】202110002553.0
(32)【優先日】2021-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】511268432
【氏名又は名称】台達電子企業管理(上海)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】言超
(72)【発明者】
【氏名】夏涛
(72)【発明者】
【氏名】▲ヂァン▼凱良
(72)【発明者】
【氏名】劉新偉
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA02
5H770AA05
5H770DA03
5H770DA32
5H770DA41
5H770EA01
5H770EA23
5H770EA27
5H770KA01Y
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スイッチング周波数の変化が比較的に小さい範囲内に制限される三相インバータ及びその制御方法を提供する。
【解決手段】三相インバータ1は、交流端子11、3つのフィルタ回路14、3つのブリッジアーム回路13、キャパシタモジュール15、直流端子12及び制御部を備える。フィルタコンデンサー中性点141は、キャパシタモジュールの直流コンデンサー中性点151と接続する。交流電源の1つの線間電圧周期において、制御部は、各ブリッジアーム回路が時間別で第1モード及び第2モードで動作するように制御する。ブリッジアーム回路は、第1モードではクランプモードで動作し、第2モードではDCMモード又はTCMモードで動作するように切替可能である。スイッチング周波数は、予め設定される周波数以下に制限される。三相インバータが定格負荷の80%以上動作する時、第2モードで動作する時間は線間電圧周期の1/3~2/3である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相インバータであって、1つの交流端子と、1つの直流端子と、3つのブリッジアーム回路と、3つのフィルタ回路と、キャパシタモジュールと、制御部とを備え、
前記交流端子は、交流電源に電気接続され、前記直流端子は、直流電源または直流負荷に電気接続され、
前記3つのブリッジアーム回路は、三相ブリッジアーム回路を形成し、かつ前記直流端子に電気接続され、各前記ブリッジアーム回路はブリッジアーム中性点を有し、
前記3つのフィルタ回路は、三相フィルタ回路を形成し、前記三相フィルタ回路は、前記三相ブリッジアーム回路と前記交流端子との間に電気接続され、前記3つのフィルタ回路は、それぞれ、前記3つのブリッジアーム回路の前記ブリッジアーム中性点に電気接続され、各前記フィルタ回路は、フィルタインダクタンスとフィルタコンデンサーとを備え、前記フィルタインダクタンスは、前記交流端子と対応の前記ブリッジアーム中性点との間に電気接続され、前記フィルタコンデンサーの一端は、前記交流端子と前記フィルタインダクタンスとの間に電気接続され、前記3つのフィルタ回路の3つの前記フィルタコンデンサーの他端は互いに電気接続してフィルタコンデンサー中性点を形成し、
前記キャパシタモジュールは、前記三相ブリッジアーム回路の両端に並列に電気接続され、かつ、2つのコンデンサーと直流コンデンサー中性点を備え、前記直流コンデンサー中性点は、前記2つのコンデンサー同士の間に位置され、かつ前記フィルタコンデンサー中性点に電気接続され、
前記交流電源の1つの線間電圧周期において、前記制御部は、各前記ブリッジアーム回路が時間別に第1モードおよび第2モードで動作するように制御し、前記第1モードでは、前記ブリッジアーム回路がクランプモードで動作し、前記第2モードでは、前記ブリッジアーム回路がDCMモードまたはTCMモードで動作するように切替可能であり、前記三相インバータのスイッチング周波数は予め設定される周波数以下に制限され、前記三相インバータが定格負荷の80%以上動作する時、前記ブリッジアーム回路が前記第2モードで動作する時間は、前記線間電圧周期の1/3~2/3である、ことを特徴とする三相インバータ。
【請求項2】
前記三相インバータは、DPWM変調方式であり、前記制御部は、前記三相ブリッジアーム回路の三相初期変調波と三相コモンモード変調波とを重ね合わせて、前記三相ブリッジアーム回路に対応する三相変調波を生成し、前記三相コモンモード変調波の波形では、垂直ホッピングがない、ことを特徴とする請求項1に記載の三相インバータ。
【請求項3】
前記クランプモードは、正のクランプモードと負のクランプモードとを含み、前記ブリッジアーム回路は、対応の前記変調波が正の限界値まで達すると、前記正のクランプモードで動作し、前記ブリッジアーム回路は、対応の前記変調波が負の限界値まで達すると、前記負のクランプモードで動作する、ことを特徴とする請求項2に記載の三相インバータ。
【請求項4】
各前記ブリッジアーム回路は、直列に接続される主スイッチ素子と補スイッチ素子とを備え、前記主スイッチ素子と前記補スイッチ素子は同時にスイッチオン状態とならず、各前記ブリッジアーム回路は、前記主スイッチ素子と前記補スイッチ素子のそれぞれに並列に接続される主キャパシタと補キャパシタとを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の三相インバータ。
【請求項5】
前記主スイッチ素子がスイッチオン状態である時間と前記補スイッチ素子がスイッチオン状態である時間の合計が前記予め設定される周波数に対応する予め設定される周期以上である場合、前記ブリッジアーム回路は、前記DCMモードまたは前記TCMモードで動作し、前記主スイッチ素子がスイッチオン状態である時間と前記補スイッチ素子がスイッチオン状態である時間の合計が前記予め設定される周波数に対応する予め設定される周期よりも小さい場合、前記ブリッジアーム回路が前記DCMモードで動作する、ことを特徴とする請求項4に記載の三相インバータ。
【請求項6】
任意の前記ブリッジアーム回路において、前記ブリッジアーム回路が前記TCMモードで動作する場合、対応の前記フィルタ回路の前記フィルタインダクタンス上のインダクタ電流は、前記主スイッチ素子がスイッチオン状態である時、増加し、前記インダクタ電流は、前記補スイッチ素子がスイッチオン状態である時、減少し、前記補スイッチ素子は、前記インダクタ電流が負の予め設定される電流値まで減少すると、スイッチオフとなり、前記主キャパシタ上の電圧は、負の前記インダクタ電流によって放電されて減少し、前記主スイッチ素子は、前記主キャパシタ上の電圧が予め設定される電圧まで減少すると、スイッチオンとなる、ことを特徴とする請求項4に記載の三相インバータ。
【請求項7】
前記DCMモードは、第1DCMモード、第2DCMモード、第3DCMモードを含み、任意の前記ブリッジアーム回路および対応の前記フィルタ回路において、前記フィルタコンデンサー上のフィルタ電圧と前記フィルタインダクタンス上のインダクタ電流の平均値の積が正である場合、前記ブリッジアーム回路が前記第1DCMモードまたは前記第3DCMモードで動作し、前記フィルタ電圧と前記インダクタ電流の平均値の積が負である場合、前記ブリッジアーム回路が前記第2DCMモードで動作する、ことを特徴とする請求項4に記載の三相インバータ。
【請求項8】
任意のブリッジアーム回路および対応の前記フィルタ回路において、前記ブリッジアーム回路が前記第1DCMモードで動作する時、前記インダクタ電流は、前記主スイッチ素子がスイッチオン状態である場合、増加し、前記インダクタ電流は、前記補スイッチ素子がスイッチオン状態である場合、減少し、前記補スイッチ素子は、インダクタ電流が0まで減少するとスイッチオフとなり、前記主スイッチ素子および前記補スイッチ素子はスイッチオフ状態である場合、前記フィルタインダクタンス、前記主キャパシタ、および前記補キャパシタは共振し、前記主キャパシタ上の電圧がn番目の谷に共振すると、前記主スイッチ素子がスイッチオンとなり、ここでは、nが正の整数である、ことを特徴とする請求項7に記載の三相インバータ。
【請求項9】
任意の前記ブリッジアーム回路および対応の前記フィルタ回路において、前記ブリッジアーム回路が前記第2DCMモードで動作する時、前記インダクタ電流は、前記主スイッチ素子がスイッチオン状態である場合、増加し、前記インダクタ電流は、前記補スイッチ素子がスイッチオン状態である場合、減少し、前記補スイッチ素子は、前記インダクタ電流が0まで減少すると、スイッチオフとなり、前記主スイッチ素子および前記補スイッチ素子はスイッチオフ状態である場合、前記フィルタインダクタンス、前記主キャパシタ、および前記補キャパシタは共振し、かつ前記主キャパシタ上の谷値電圧が0であり、前記主キャパシタ上の電圧がn番目の谷に共振すると、前記主スイッチ素子がスイッチオンとなり、ここでは、nが正の整数である、ことを特徴とする請求項7に記載の三相インバータ。
【請求項10】
任意の前記ブリッジアーム回路および対応の前記フィルタ回路において、前記ブリッジアーム回路が前記第3DCMモードで動作する時、前記インダクタ電流は、前記主スイッチ素子がスイッチオン状態である場合、増加し、前記インダクタ電流は、前記補スイッチ素子がスイッチオン状態である場合、減少し、前記補スイッチ素子は、前記インダクタ電流が0まで減少すると、スイッチオフとなり、前記主スイッチ素子および前記補スイッチ素子はスイッチオフ状態である場合、前記フィルタインダクタンス、前記主キャパシタ、および前記補キャパシタは共振し、前記主キャパシタ上の電圧がm番目の峰に達すると、前記インダクタ電流が負の予め設定される電流値まで減少するように、前記補スイッチ素子を予め設定される時間スイッチオンさせ、前記主キャパシタ上の電圧は、負の前記インダクタ電流によって放電されて減少し、前記主スイッチ素子は、前記主キャパシタ上の電圧が予め設定される電圧に減少する時、スイッチオンとなり、ここでは、mが正の整数である、ことを特徴とする請求項7に記載の三相インバータ。
【請求項11】
前記nおよび前記mは、前記予め設定される周波数によって決められる、ことを特徴とする請求項8~請求項10のいずれか1つに記載の三相インバータ。
【請求項12】
前記インダクタ電流の平均値の絶対値が予め設定される閾値よりも小さい場合、前記予め設定される周波数は対応して減少する、ことを特徴とする請求項8~請求項10のいずれか1つに記載の三相インバータ。
【請求項13】
任意の前記ブリッジアーム回路および対応の前記フィルタ回路において、前記ブリッジアーム回路は、複数の並列に電気接続されるブリッジアームを備え、各ブリッジアームが前記ブリッジアーム中性点を有し、前記フィルタ回路は、複数のフィルタインダクタンスを含み、前記複数のフィルタインダクタンスは、前記複数のブリッジアームに1対1に対応し、各前記フィルタインダクタンスは、前記交流端子と対応の前記ブリッジアームの前記ブリッジアーム中性点との間に電気接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の三相インバータ。
【請求項14】
前記ブリッジアーム回路が前記第2モードで動作する時間は、すくなくとも2/3の前記線間電圧周期の50%、75%、80%、または90%である、ことを特徴とする請求項1に記載の三相インバータ。
【請求項15】
三相インバータを制御する制御方法であって、前記三相インバータは、1つの交流端子と、1つの直流端子と、3つのブリッジアーム回路と、3つのフィルタ回路と、キャパシタモジュールとを備え、前記交流端子は交流電源に電気接続され、前記直流端子は直流電源または直流負荷に電気接続され、前記3つのブリッジアーム回路は前記直流端子に電気接続されかつ三相ブリッジアーム回路を形成し、各前記ブリッジアーム回路はブリッジアーム中性点を有し、前記3つのフィルタ回路は三相フィルタ回路を形成しかつ前記三相ブリッジアーム回路と前記交流端子との間に電気接続され、前記3つのフィルタ回路はそれぞれ前記3つのブリッジアーム回路の前記ブリッジアーム中性点に電気接続され、各前記フィルタ回路はフィルタインダクタンスとフィルタコンデンサーとを備え、前記フィルタインダクタンスは前記交流端子と対応の前記ブリッジアーム中性点との間に電気接続され、前記フィルタコンデンサーの一端は前記交流端子と前記フィルタインダクタンスとの間に電気接続され、前記3つのフィルタ回路の3つの前記フィルタコンデンサーの他端は電気接続してフィルタコンデンサー中性点を形成し、前記キャパシタモジュールは前記三相ブリッジアーム回路の両端に並列に電気接続され、かつ2つのコンデンサーと直流コンデンサー中性点とを備え、前記直流コンデンサー中性点は前記2つのコンデンサー同士の間に位置されかつ前記フィルタコンデンサー中性点に電気接続され、前記制御方法は、
前記交流電源の1つの線間電圧周期において、前記ブリッジアーム回路が時間別に第1モードおよび第2モードで動作するように制御し、前記第1モードでは、前記ブリッジアーム回路がクランプモードで動作するように制御し、前記第2モードでは、前記ブリッジアーム回路がDCMモードまたはTCMモードで動作するように切替可能であり、前記三相インバータのスイッチング周波数は予め設定される周波数以下に制限され、前記三相インバータが定格負荷の80%以上動作する時、前記ブリッジアーム回路が前記第2モードで動作する時間は前記線間電圧周期の1/3~2/3である、ことを特徴とする制御方法。
【請求項16】
前記三相インバータは、DPWM変調方式であり、前記制御方法は、前記三相ブリッジアーム回路の三相初期変調波と三相コモンモード変調波とを重ね合わせて、前記三相ブリッジアーム回路に対応する三相変調波を生成することを含み、前記三相コモンモード変調波は波形に垂直ホッピングがない、ことを特徴とする請求項15に記載の制御方法。
【請求項17】
前記クランプモードは、正のクランプモードと負のクランプモードとを備え、前記ブリッジアーム回路は、対応の前記変調波が正の限界値に達する場合、前記正のクランプモードで動作し、前記ブリッジアーム回路は、対応の前記変調波が負の限界値に達する場合、前記負のクランプモードで動作する、ことを特徴とする請求項16に記載の制御方法。
【請求項18】
各前記ブリッジアーム回路は、直列に電気接続される主スイッチ素子と補スイッチ素子とを備え、前記主スイッチ素子と前記補スイッチ素子は同時にスイッチオン状態とならず、各前記ブリッジアーム回路は、前記主スイッチ素子と前記補スイッチ素子とのそれぞれに並列に電気接続される主キャパシタと補キャパシタとを備える、ことを特徴とする請求項15に記載の制御方法。
【請求項19】
前記主スイッチ素子がスイッチオン状態である時間と前記補スイッチ素子がスイッチオン状態である時間との合計が前記予め設定される周波数に対応する予め設定される周期以上である場合、前記ブリッジアーム回路が前記DCMモードまたは前記TCMモードで動作し、前記主スイッチ素子がスイッチオン状態である時間と前記補スイッチ素子がスイッチオン状態である時間との合計が前記予め設定される周波数に対応する予め設定される周期よりも小さい場合、前記ブリッジアーム回路が前記DCMモードで動作する、ことを特徴とする請求項18に記載の制御方法。
【請求項20】
前記ブリッジアーム回路が前記第2モードで動作する時間はすくなくとも2/3の前記線間電圧周期の50%、75%、80%、または90%である、ことを特徴とする請求項15に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相インバータおよびその制御方法に関し、特に、三相デカップリング制御の実現、EMC性能の最適化、および低スイッチング損失に優れる、三相インバータおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三相インバータは、最も広く使用されているインバータトポロジの1つであり、このトポロジには、一般的に使用されるSPWM (Sinusoidal PWM)、第3変調波注入SVPWM (Space Vector PWM)などの連続変調式、DPWM (Discontinues PWM)などの不連続変調式、またはソフトスイッチングを実現することを目的とした可変周波数変調式など多くの制御および変調方式がある。
【0003】
既存の変調方式では、ハードスイッチング変調式およびソフトスイッチング変調式に大別することができる。スイッチング損失の制限のために、ハードスイッチング変調式は、高周波数、高電力密度および高効率を達成することが困難である。一方、ソフトスイッチング変調式は、スイッチング周波数の範囲が広すぎることや、三相カップリングによって分析と設計が困難になるなどの問題がある。
【0004】
そのため、従来技術における上記問題点を改善できる、三相インバータおよびその制御方法をどのように開発するかは、当面の急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、三相インバータのブリッジアーム回路をクランプモード、DCM(Discontinuous Conduction Modulation)モードまたはTCM(Triangular Current Modulation)モードに動作させるように切替可能にし、各ブリッジアーム回路では、ゼロ電圧スイッチングまたはバレースイッチングを実現し、スイッチング周波数を予め設定される周波数以下に制限させることで、スイッチング周波数の変化は比較的に小さい範囲内に制限される、三相インバータおよびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、交流端子、直流端子、3つのブリッジアーム回路、3つのフィルタ回路、キャパシタモジュール、制御部を備える、三相インバータを提供する。交流端子は交流電源に電気接続され、直流端子は直流電源または直流負荷に電気接続される。3つのブリッジアーム回路は三相ブリッジアーム回路を形成し、かつ直流端子に電気接続される。各ブリッジアーム回路はブリッジアーム中性点を有する。3つのフィルタ回路は三相フィルタ回路を形成し、前記三相フィルタ回路は三相ブリッジアーム回路と交流端子との間に電気接続され、前記3つのフィルタ回路はそれぞれ3つのブリッジアーム回路のブリッジアーム中性点に電気接続される。各フィルタ回路はフィルタインダクタンスとフィルタコンデンサーとを含む。フィルタインダクタンスは交流端子と対応のブリッジアーム中性点との間に電気接続される。フィルタコンデンサーの一端は交流端子とフィルタインダクタンスとの間に電気接続される。3つのフィルタ回路の3つのフィルタコンデンサーの他端は電気接続してフィルタコンデンサー中性点を形成する。キャパシタモジュールは三相ブリッジアーム回路の両端に並列に電気接続され、かつ2つのコンデンサーおよび直流コンデンサー中性点を有する。直流コンデンサー中性点は2つのコンデンサー同士の間に位置されかつフィルタコンデンサー中性点に電気接続される。交流電源の1つの線間電圧周期において、制御部は、各ブリッジアーム回路が時間別に第1モードおよび第2モードで動作するように制御する。第1モードでは、ブリッジアーム回路がクランプモードで動作し、第2モードでは、ブリッジアーム回路がDCMモードまたはTCMモードで動作するように切替可能であり、三相インバータのスイッチング周波数が予め設定される周波数以下に制限され、三相インバータが定格負荷80%以上動作する時、ブリッジアーム回路が第2モードで動作する時間は線間電圧周期の1/3~2/3である。
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、本発明の三相インバータを制御するための制御方法を提供している。制御方法は、交流電源の1つの線間電圧周期において、各ブリッジアーム回路が時間別に第1モードおよび第2モードで動作するように制御し、第1モードでは、ブリッジアーム回路がクランプモードで動作するように制御し、第2モードでは、ブリッジアーム回路がDCMモードまたはTCMモードで動作するように切替可能に制御し、三相インバータのスイッチング周波数が予め設定される周波数以下に制限され、三相インバータが定格負荷の80%以上動作するとき、ブリッジアーム回路が第2モードで動作する時間は線間電圧周期の1/3~2/3であることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の好ましい実施形態における三相インバータの回路構造の概念図である。
【
図2】
図1に示す三相インバータの変調波形を示す図である。
【
図3】
図1に示すブリッジアーム回路の回路構造を示す図である。
【
図4A】
図3に示すブリッジアーム回路のTCMモードの動作波形を示す図である。
【
図4B】
図3に示すブリッジアーム回路の第1DCMモードの動作波形を示す図である。
【
図4C】
図3に示すブリッジアーム回路の第2DCMモードの動作波形を示す図である。
【
図4D】
図3に示すブリッジアーム回路の第3DCMモードの動作波形を示す図である。
【
図5】本発明の好ましい実施形態における三相インバータの動作波形を示す図である。
【
図6】本発明の他の実施形態における三相インバータの動作波形を示す図である。
【
図7】
図1に示す三相インバータの変化例を示す図である。
【
図8】
図1に示す三相インバータの変化例を示す図である。
【
図9】
図1に示す三相インバータの変化例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の特徴および利点を具体化するいくつかの典型的な実施形態について詳細に説明する。本発明は、本願特許請求の範囲から逸脱しない様々な変更および改良を加えることができる。また、本明細書における以下の内容および図面は、本願発明を理解するためのものであり、本願発明を限定するものではない。
【0010】
図1は、本発明の好ましい実施形態における三相インバータの回路構造の概念図である。
図1に示すように、三相インバータ1は、交流端子11と、直流端子12と、3つのブリッジアーム回路13と、3つのフィルタ回路14と、キャパシタモジュール15と、制御部(図示せず)とを備える。交流端子11は、交流電源VR、VSおよびVTに電気接続され、直流端子12は、直流電源または直流負荷に電気接続される。3つのブリッジアーム回路13は、三相ブリッジアーム回路を形成し、かつ3つのブリッジアーム回路13は前記直流端子12に電気接続されている。各ブリッジアーム回路13は、ブリッジアーム中性点131を有する。3つのフィルタ回路14は、三相フィルタ回路を形成し、三相フィルタ回路は、三相ブリッジアーム回路と交流端子11との間に電気接続され、3つのフィルタ回路14は、3つのブリッジアーム回路13の3つのブリッジアーム中性点131に電気接続されている。各フィルタ回路14は、フィルタインダクタンスLとフィルタコンデンサーCfとを備える。フィルタ回路14において、フィルタインダクタンスLが、交流端子11と対応のブリッジアーム中性点131との間に電気接続され、フィルタコンデンサーCfの一端が、交流端子11とフィルタインダクタンスLとの間に電気接続され、3つのフィルタ回路14の3つのフィルタコンデンサーCfの他端が電気接続してフィルタコンデンサー中性点141を形成する。キャパシタモジュール15は、三相ブリッジアーム回路の両端に並列に接続され、かつ2つのコンデンサーC1,C2と直流コンデンサー中性点151とを備え、前記直流コンデンサー中性点151がコンデンサーC1とコンデンサーC2との間に位置され、直流コンデンサー中性点151がフィルタコンデンサー中性点141に電気接続される。制御部は、三相ブリッジアーム回路のスイッチ動作を制御するように構成されている。フィルタコンデンサー中性点141が直流コンデンサー中性点151に電気接続されるので、各相回路の制御はデカップリングされており、回路の分析および設計に有利である。ある実施形態では、三相インバータ1は、EMI(Electromagnetic interference)除去フィルタを備えており、EMI除去フィルタは、交流端子11と三相フィルタ回路との間に電気接続される。フィルタコンデンサー中性点141が直流コンデンサー中性点151に電気接続されるので、内部コモンモード成分の回路を提供し、MI除去フィルタの負荷を低減させることができる。
【0011】
なお、フィルタ回路14は、LCL構造であるば、本発明はこれに限定されない。本実施形態では、ブリッジアーム回路13におけるスイッチ素子がMOSFETであり、他の実施形態では、IGBTまたは他種類のスイッチ素子であっても良い。なお、本発明はこれに限定されない。
【0012】
本実施形態では、フィルタコンデンサー中性点141と直流コンデンサー中性点151は、ワイヤによって直接接続されている。ただし、本発明はこれに限定されず、他の実施形態では、フィルタコンデンサー中性点141と直流コンデンサー中性点151との間には、他の電子部品を直列接続することもできる。
【0013】
図2に示すように、交流電源VR、VSおよびVT(
図2では、VRを交流電源として例示している)の1つの線間電圧周期に、制御部は、各ブリッジアーム回路13を第1モードM1または第2モードM2で動作させるように制御する。第1モードM1では、ブリッジアーム回路13がクランプモードで動作する。第2モードM2では、ブリッジアーム回路13がDCMモードまたはTCMモードで動作するように切り替え可能であり、結果として、ブリッジアーム回路13におけるスイッチ素子によってゼロ電圧スイッチングまたはバレースイッチングを実現することができる。それにより、三相インバータ1のスイッチング周波数fsが予め設定される周波数fmax以下に制限される。好ましい実施形態では、三相インバータ1が定格負荷の80%以上で動作する場合、第2モードM2で動作するブリッジアーム回路13の継続時間は、線間電圧周期の1/3~2/3であり、すなわち、第2モードM2で動作する継続時間は、2/3の線間電圧周期の50%~100%である。ある実施形態では、第2モードM2で動作するブリッジアーム回路13の継続時間は、少なくとも2/3の線間電圧周期の50%、75%、80%、または90%である。
【0014】
なお、本発明では、交流電源の線間電圧周期において、ブリッジアーム回路13は、第1モードM1および第2モードM2に加えて、例えば、CCMモード(Continuous Conduction Modulation)などの第3モードM3で動作することもできる。動作シーケンスに関して、第3モードM3は、第1モードM1と第2モードM2との間にあり(例えば、ブリッジアーム回路13は、M1-M3-M2-M3-M1のシーケンスで動作できる)、また、第2モードM2同士の間に(例えば、ブリッジアーム回路13は、M1-M2-M3-M2-M1のシーケンスで動作できる)に実行させても良い。異なるモードで動作するブリッジアーム回路13の継続時間は、負荷などの要因に関連し、負荷が小さい時、第2モードM2で動作するブリッジアーム回路13の継続時間は長く、負荷が小さい時、例えば定格負荷の50%または80%以上である場合、第2モードM2で動作するブリッジアーム回路13の継続時間は、2/3の線間電圧周期の50%、75%、80%、または90%以上である。
【0015】
ある実施形態では、三相インバータ1がDPWM(Digitally adjusted Pulse-Width Modulation)方式である。より具体的に、
図2に示すように、制御部は、三相ブリッジアーム回路の三相初期変調波と三相コモンモード変調波とを重ね合わせて、三相ブリッジアーム回路に対応する三相変調波を生成する。三相コモンモード変調波の波形に垂直ホッピング(Vertical hopping)が生じなく、すなわち、三相コモンモード変調波が正から負または負から正に遷移(変化)する時の傾きが無限大ではない。実際応用に応じて、所定の傾き、可変傾き、またはリアルタイムで変化する傾きを予め設定することができる。なお、本発明は傾きの数値を限定しない。このように、三相変調波に傾きがあり、スイッチング損失を制限するとともにコモンモード電流を制限することができる。
図2に示すように、交流電源VRを例示として、制御部は、初期変調波(すなわち、交流電源VR)とコモンモード変調波Vcmとを重ね合わせて対応のブリッジアーム回路13の変調波VMを生成する。
【0016】
ある実施形態では、第1モードM1において、クランプモードは、正のクランプモードおよび負のクランプモードを含み、各ブリッジアーム回路13は、対応する変調波が正の限界値に達するとき、正のクランプモードで動作し、対応する変調波が負の限界値に達するとき、負のクランプモードで動作する。第1モードM1で動作する時間は、線間電圧周期の1/3の範囲内で変動可能であり、その変動は、DPWM変調の方式およびコモンモード変調波Vcmの傾きに依存する。好ましい実施形態では、正のクランプモードで動作する時間は、負のクランプモードで動作する時間に等しく、すなわち、両者は第1モードM1での合計時間を均等的に分割する。なお、本発明はこれに限定されない。
【0017】
理解を容易にするために、
図3では、本発明の好ましい実施形態によって提供されるブリッジアーム回路の回路構造を示している。本発明の三相インバータ1では、各回路が同様な回路構造を有するので、
図3では、説明のために、交流電源VRおよびそれに対応するブリッジアーム回路13とフィルタ回路14のみを示している。
図3に示すように、ブリッジアーム回路13は、直列に電気接続される、主スイッチ素子S1と補スイッチ素子S2とを備える。なお、主スイッチ素子S1および補スイッチ素子S2は、同時にスイッチオン状態とならない。また、ブリッジアーム回路13は、主キャパシタCS1と補キャパシタCS2とを備え、主キャパシタCS1と主スイッチ素子S1は並列に電気接続され、補キャパシタCS2と補スイッチ素子S2は並列に電気接続される。主キャパシタCS1および補キャパシタCS2は、それぞれ、主スイッチ素子S1と補スイッチ素子S2との接合コンデンサー、またはスイッチ素子の両端に接続されたコンデンサーであるが、本発明はこれに限定されない。
【0018】
主スイッチ素子S1がスイッチオン状態である時間と補スイッチ素子S2がスイッチオン状態である時間との合計が予め設定される周波数fmaxに対応する予め設定される周期Tmin以上である場合、ブリッジアーム回路13がDCMモードまたはTCMモードで動作する。TCMモードで動作することを選択すると、ソフトスイッチングの実現に有利である。DCMモードで動作することを選択すると、スイッチング周波数がさらに減少するのに有利であるが、ターンオン損失が少し発生する場合がある。主スイッチ素子S1がスイッチオン状態である時間と補スイッチ素子S2がスイッチオン状態である時間が予め設定される周期Tminよりも小さい場合、ブリッジアーム回路13がDCMモードで動作する。
【0019】
したがって、ブリッジアーム回路13が第2モードM2である場合、制御部は、上述状況に応じて、ブリッジアーム回路13をTCMモードまたはDCMモードで動作させるように制御することができる。DCMモードは、第1DCMモード、第2DCMモード、および第3DCMモードを含む。
図3に示すように、フィルタコンデンサーCf上のフィルタ電圧Vfについて、上を正とし、下を負とする場合、フィルタ電圧Vfの符号が正であり、逆では負となる。フィルタインダクタンスL上のインダクタ電流iLがブリッジアーム中性点131に流れる場合、インダクタ電流iLの符号が正であり、逆では負である。任意のブリッジアーム回路13およびそれに対応するフィルタ回路14では、フィルタコンデンサーCf上のフィルタ電圧VfとフィルタインダクタンスL上のインダクタ電流iLの平均値の積が正である場合、ブリッジアーム回路13が第1DCMモードまたは第3DCMモードで動作し、フィルタ電圧Vfとインダクタ電流iLとの平均値の積が負である場合、ブリッジアーム回路13が第2DCMモードで動作する。以下、
図4A、
図4B、
図4Cおよび
図4Dを例示してブリッジアーム回路13がTCMモード、第1DCMモード、第2DCMモードおよび第3DCMモードで動作する時の波形を説明する。ここでは、VGS1が主スイッチ素子S1の駆動電圧であり、すなわち、主スイッチ素子S1上のグリッド-ソース電圧であり、VGS2が補スイッチ素子S2の駆動電圧であり、すなわち、補スイッチ素子S2上のグリッド-ソース電圧であり、VDS1が主キャパシタCS1上の電圧である。
【0020】
図4Aに示すように、ブリッジアーム回路13がTCMモードで動作する。時間t1において、主スイッチ素子S1がスイッチオンであり、補スイッチ素子S2がスイッチオフである。時間t1からt2までの期間中、主スイッチ素子S1がスイッチオン状態であり、対応のフィルタ回路14のフィルタインダクタンスL上のインダクタ電流iLが増加する。時間t2において、主スイッチ素子S1がスイッチオフである。時間t2からt3までの期間はデッドタイムである。時間t3において、補スイッチ素子S2がスイッチオンであり、主スイッチ素子S1がスイッチオフのままである。時間t3からt5までの期間中、補スイッチ素子S2がスイッチオン状態であり、インダクタ電流iLが減少し(インダクタ電流iLは、時間t4でゼロに減少する)、補スイッチ素子S2が時間t5までスイッチオンのままであり、インダクタ電流iLが負である。時間t5において、インダクタ電流iLが負の予め設定される電流値にまで減少し、この時、補スイッチ素子S2がスイッチオフとなる。時間t5の後、主キャパシタCS1上の電圧VDS1は、負のインダクタ電流iLによって放電されて減少し、主スイッチ素子S1は、主キャパシタCS1上の電圧VDS1が予め設定される電圧(例えば、時間t6では0Vである)にまで減少すると、スイッチオンとなる。予め設定される電圧は、0に近い電圧値であっても良い。これによって、主スイッチ素子S1のゼロ電圧スイッチングを実現することができる。
【0021】
図4Bに示すように、ブリッジアーム回路13が第1DCMモードで動作する。時間t1において、主スイッチ素子S1がスイッチオンであり、補スイッチ素子S2がスイッチオフである。時間t1からt2までの期間中、主スイッチ素子S1がスイッチオン状態であり、対応するフィルタ回路14のフィルタインダクタンスL上のインダクタ電流iLが増加する。時間t2において、主スイッチ素子S1がスイッチオフである。時間t2からt3までの期間はデッドタイムである。時間t3において、補スイッチ素子S2がスイッチオンである。時間t3からt4までの期間中、補スイッチ素子S2がスイッチオン状態であり、インダクタ電流iLが減少する。時間t4において、インダクタ電流iLが0まで減少し、補スイッチ素子S2がスイッチオフとなる。時間t4からt6までの期間中、主スイッチ素子S1および補スイッチ素子S2は、いずれもスイッチオフ状態であり、フィルタインダクタンスL、主キャパシタCS1、および補キャパシタCS2は共振する。主キャパシタCS1上の電圧VDS1がn番目の谷(バレー)に共振すると、主スイッチ素子S1がスイッチオンとなり、ここでは、nが正の整数である。この実施形態では、nが2であり、すなわち、主スイッチ素子S1は、主キャパシタCS1上の電圧VDS1が2番目の谷に共振すると、スイッチオンとなる。なお、nの数値は、スイッチング周波数fsと予め設定される周波数fmaxの関係によって決まる。nが大きいほど、共振時間が長くなり、スイッチング周波数fsは、共振時間の増加につれて減少する。それによって、スイッチング周波数fsを効果的に制御して、スイッチング損失を減らすことができる。また、主スイッチ素子S1が谷値電圧でスイッチオンする場合、スイッチオンの損失が小さい。
【0022】
図4Cに示すように、ブリッジアーム回路13が第2DCMモードで動作し、その動作は第1DCMモードと同様であるため、詳細を省略する。第1DCMモードに対して、ブリッジアーム回路13が第2DCMモードで動作し、主キャパシタCS1上の電圧VDS1の谷値電圧が0であり、すなわち、主スイッチ素子S1のゼロ電圧スイッチングを実現でき、スイッチオンの損失が0である。
【0023】
図4Dに示すように、ブリッジアーム回路13が第3DCMモードで動作し、第1DCMモードと比較して、スイッチオン損失をさらに減らすことができる。時間t1において、主スイッチ素子S1がスイッチオンであり、補スイッチ素子S2がスイッチオフである。時間t1からt2までの期間中、主スイッチ素子S1がスイッチオン状態であり、対応のフィルタ回路14のフィルタインダクタンスL上のインダクタ電流iLが増加する。時間t2において、主スイッチ素子S1がスイッチオフである。時間t2からt3までの期間はデッドタイムである。時間t3において、補スイッチ素子S2がスイッチオンである。時間t3からt4までの期間中、補スイッチ素子S2がスイッチオン状態であり、インダクタ電流iLが減少する。時間t4において、インダクタ電流iLが0まで減少し、補スイッチ素子S2がスイッチオフとなる。時間t4からt6までの期間中、主スイッチ素子S1および補スイッチ素子S2はいずれもスイッチオフ状態であり、フィルタインダクタンスL、主キャパシタCS1および補キャパシタCS2は共振する。主キャパシタCS1上の電圧VDS1がm番目の峰まで共振し、補キャパシタCS2上の電圧VDS2がm番目の谷に共振すると、補スイッチ素子S2がスイッチオンとなり、補スイッチ素子S2が予め設定される時間(例えば、時間t6からt7までの期間)スイッチオンし、ここでは、mが正の整数である。この実施形態では、mが3であり、すなわち、補スイッチ素子S2は、主キャパシタCS1上の電圧VDS1が3番目の峰に共振すると、スイッチオンとなる。mの数値は、スイッチング周波数fsと予め設定される周波数fmaxとの関係によって決まり、mが大きいほど共振時間が長くなり、スイッチング周波数fsは、共振時間の増加につれて減少する。それによって、スイッチング周波数fsを効果的に制御することができる。時間t6からt7までの期間中、補スイッチ素子S2がスイッチオン状態であり、インダクタ電流iLが負の予め設定される電流値まで徐々に減少する。時間t7において、補スイッチ素子S2がスイッチオフとなる。時間t7の後、主キャパシタCS1上の電圧VDS1は、負のインダクタ電流iLによって放電されて減少し、主スイッチ素子S1は、主キャパシタCS1上の電圧VDS1が予め設定される電圧(例えば、時間t8では0Vである)まで減少すると、スイッチオンとなる。これによって、主スイッチ素子S1のゼロ電圧スイッチングを実現し、スイッチオンの損失はほぼゼロである。
【0024】
なお、主スイッチ素子S1と補スイッチ素子S2のオン・オフ切り替えタイミングを逆にしても、補スイッチ素子S2のゼロ電圧スイッチングまたはボトム電圧駆動を実現することもできる。
【0025】
したがって、ブリッジアーム回路13を制御してTCMモードまたは様々なDCMモードで動作させることにより、スイッチング周波数fsの変動を効果的に狭い範囲に制限することができ、本発明の三相インバータ1をより実用的にすることができる。また、ソフトスイッチングまたはボトムバレースイッチングを実現でき、スイッチング損失を低減し、インバータの効率をさらに向上させることができる。
【0026】
図5を例示としてブリッジアーム回路13の制御について説明し、より詳しくは、期間P1、P2およびP3でのブリッジアーム回路13の動作状態を説明する。他期間の制御は同様方法で推測できるため、ここでは詳細を省略する。
図5は、インダクタ電流iLの包絡線を示している。
図5に示すように、期間P1において、スイッチング周波数fsは予め設定される周波数fmaxよりも小さく、かつスイッチング周波数fsと予め設定される周波数fmaxとの差は比較的に大きいので、ブリッジアーム回路13がTCMモードで動作することに制御できる。期間P2において、インダクタ電流iLが減少し、ブリッジアーム回路13がTCMモードで動作し続けると、スイッチング周波数fsは、予め設定される周波数fmaxに近づくひいては予め設定される周波数fmaxよりも高くなる可能性がある。同時に、フィルタコンデンサーCf上のフィルタ電圧Vfと、フィルタインダクタンスL上のインダクタ電流iLとの平均値の積が正であるため、ブリッジアーム回路13を第1DCMモードで動作させるように制御し、変調周期の回数制御によって、スイッチング周波数fsを制御する。期間P3において、インダクタ電流iLが減少し続け、かつフィルタ電圧Vfとインダクタ電流iLとの平均値の積が負であるため、ブリッジアーム回路13を第2DCMモードで動作させるように制御できる。
【0027】
ある実施形態では、期間P1において、ブリッジアーム回路13を第1または第3DCMモードで動作させるように制御してもよい。他の実施形態では、期間P2において、ブリッジアーム回路13を第3DCMモードで動作させるように制御してもよい。
【0028】
図6に示すように、ある実施形態では、インダクタ電流iLの平均値の絶対値が予め設定される閾値よりも小さい場合、予め設定される周波数fmaxをそれに応じて減少させることができ、それによって、スイッチング損失が低減し、全体的な効率を向上させることができる。なお、本発明では、予め設定される周波数fmaxは、一定の数値またはインダクタ電流iLの平均値に応じて変化する数値のいずれか1つであり、段階的に変化、または線形変化であっても良い。なお、本発明はこれに限定されない。
【0029】
また、
図1に示す三相インバータ1は三相2レベルインバータであるが、本発明の三相インバータの実施形態はこれに限定されない。ある実施形態では、
図7に示すように、三相インバータは、三相3レベルインバータ1aである。本実施形態では、3レベルインバータの構造を例示として提示しているが、当該概念図は、例えば、ANPC (active neutral point clamped)、DNPC (diode neutral point clamped)または、TNPC (T-type neutral point clamped)など各種の中性点クランプ型3レベルインバータ、またはフライオーバーコンデンサー型3レベルインバータであるが、本発明はこれに限定されない。
【0030】
さらに、ある実施形態では、フィルタコンデンサーCfおよびコンデンサーC11,C2に流れる電流リプルを低減し、EMI除去フィルタの負荷を低減しながら、インターリーブ並列技術を利用してより高い電力を達成することができる。
図8および
図9は、それぞれ2系統の交互に並列に接続された三相2レベルインバータ1bおよび三相3レベルインバータ1cを示している。
図8に示すように、任意のブリッジアーム回路13および対応のフィルタ回路14では、ブリッジアーム回路13は、複数の並列に接続されるブリッジアームを含み、各ブリッジアームは、1つのブリッジアーム中性点131を含み、フィルタ回路141は、複数のフィルタインダクタンスLを含み、すべてのフィルタインダクタンスLは1対1でブリッジアームに対応し、かつ各フィルタインダクタンスLは交流端子11と対応のブリッジアームのブリッジアーム中性点131との間に電気接続されている。
図8に示す実施形態では、各ブリッジアーム回路13は、2つのブリッジアームを含み、各フィルタ回路14は、2つのフィルタインダクタンスLを含んでいる。
図9に示す三相3レベルインバータ1cでは、同様な構造を有し、ブリッジアーム回路13の構造に相違点がある。同じ原理に基づいて、複数の(2つ以上)並列に接続される三相インバータを実現でき、ここでは詳細を省略する。
【0031】
上述したように、本発明は、三相インバータおよびその制御方法を提供しており、三相インバータのブリッジアーム回路を、クランプモード、DCMモード、またはTCMモードに切替可能に動作させることで、各ブリッジアーム回路では、ゼロ電圧スイッチングまたはバレースイッチングを実現するできる。同時に、スイッチング周波数が予め設定される周波数以下に制限され、スイッチング損失を低減し、インバータの効率を向上させることができる。また、フィルタコンデンサー中性点が直流コンデンサー中性点に電気接続されているので、各相電気回路の制御が互いにデカップリングされ、回路の分析および設計に有利であるとともに、内部コモンモード成分のループを設けることで、EMI除去フィルタの負荷を軽減することができる。
【0032】
なお、上述した内容は、本発明を説明するための好ましい実施形態であり、本発明は、上記の実施形態には限定されず、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定されている。また、本発明は、当業者によって多くの変更および改良を実施することができるが、その変更および改良のいずれも本特許請求の範囲に含まれている。
【符号の説明】
【0033】
1:三相インバータ
VR、VS、VT:交流電源
11:交流端子
12:直流端子
13:ブリッジアーム回路
131:ブリッジアーム中性点
S1:主スイッチ素子
S2:補スイッチ素子
CS1:主キャパシタ
CS2:補キャパシタ
14:フィルタ回路
141:フィルタコンデンサー中性点
L:フィルタインダクタンス
iL:インダクタ電流
Cf:フィルタコンデンサー
Vf:フィルタ電圧
15:キャパシタモジュール
151:直流コンデンサー中性点
C1、C2:コンデンサー
M1:第1モード
M2:第2モード
M3:第3モード
fs:スイッチング周波数
fmax:予め設定される周波数
Tmin:予め設定される周期
Vcm:コモンモード変調波
VM:三相変調波
VGS1、VGS2:グリッド-ソース電圧
VDS1:主キャパシタ上の電圧
VDS2:補キャパシタ上の電圧
t1、t2、t3、t4、t5、t6、t7、t8:時間
P1、P2、P3:期間
1a:三相3レベルインバータ
1b:インターリーブされた2つの並列回路を持つ三相2レベルインバータ
1c:インターリーブされた2つの並列回路を持つ三相3レベルインバータ